説明

支持部材の配設構造、及び太陽電池パネルを含む外装構造

【課題】太陽電池パネル等を設置する際に、連続材を用いないことで調整を容易にし、さらに、連続材を用いなくても固定部材の取付箇所と太陽電池の働き幅のズレを吸収することができる支持部材の配設構造、及び太陽電池パネルを含む外装構造を提供する。
【解決手段】本発明は、下地4C上に固定される固定部材2Aに取り付けられ、流れ方向に直交するように配される桟部材5Aを介して外設部材6Aが設置される支持部材1Aの配設構造であって、前記固定部材2Aは、下地4Cに固定する固定部21と、固定部21から立ち上がる持出部22と、該持出部22に設けられる取付部222と、を有し、支持部材1Aは、固定部材2Aの取付部222に取り付けられる取付受部3aを有し、流れ方向に沿って配設される支持部材1Aは、少なくとも水下側、水上側が間隔を介して分割状に構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池パネル等の外設部材を設置する際に、連続材を用いないことで調整を容易にし、さらに、連続材を用いなくても固定部材の取付箇所と太陽電池の働き幅のズレを吸収することができる支持部材の配設構造、及び太陽電池パネルを含む外装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、既存屋根上に太陽電池パネル等を設置する場合、縦方向、横方向或いは両方に桟部材を配して各種パネルを取り付けるものが提案されている(特許文献1)。
この特許文献1に記載の固定構造は、ピース状の支持部材10に、流れ方向に連続する桟部材20を固定し、該桟部材20に太陽電池パネル2を載置して固定する構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−261257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1は、桟部材20を流れ方向に連続させるという構成を採用している。即ち太陽電池パネルの敷設対象となる屋根下地(既存屋根を含む)は、どのような箇所にも固定できるものではなく、下地の構成や既存屋根材の有無、種類等によって様々な制限を受ける。一方で太陽電池パネルは、様々なサイズが存在するため、前述の制限を受けた取付箇所と太陽電池パネルの取付箇所が合致しないことが多々有った。そのような太陽電池パネルと固定箇所が制限を受けなくするために、前記特許文献1のように太陽電池を(直接もしくは間接的に)支持する桟部材を流れ方向に連続させて配設している。
しかしながら、このように桟部材を流れ方向に連続させる場合、太陽電池を流れ方向に何枚配するかによって、2枚用、3枚用等のように異なる長さの桟部材を用意するか、長尺な桟部材を現場にて切断して用いられている。
前者の場合には、想定される枚数分の桟部材をそれぞれ準備(製品として)し、さらにこのような長さの異なる桟部材は、サイズが異なるパネル毎に用意する必要があり、部材数が膨大になり、管理が煩雑になるという問題があった。
後者の場合には、工場や現場にて都度切断するため手間がかかるという問題があるとともに、切断した余り(部材のロス)が発生するという問題もあった。
また、太陽電池を敷設する場合、このような桟部材を複数列配設するが、固定部材の施工誤差、固定部材へ支持部材を取り付けるときの施工誤差や、桟部材の長さ等に成形時(加工時)の誤差等があると、軒先、棟側等に出っ張りや引っ込みができ、太陽電池の周辺に取り付けられる化粧カバー等が「出」によって取り付けられない恐れもあった。このような「出」は、連続材であるが故に流れ方向の数カ所で固定されているため調整が難しいものである。
【0005】
そこで、本発明者らは、太陽電池パネル等の外設部材を設置する際に、連続材を用いないことで調整を容易にし、さらに、連続材を用いなくても固定部材の取付箇所と太陽電池の働き幅のズレを吸収することができる支持部材の配設構造、及び太陽電池パネルを含む外装構造を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記に鑑み提案されたものであって、下地上に固定される固定部材に取り付けられ、流れ方向に直交するように配される桟部材を介して太陽電池パネル等の外設部材が設置される支持部材の配設構造であって、前記固定部材は、下地に固定する固定部と、固定部から立ち上がる持出部と、該持出部に設けられる取付部と、を有し、前記支持部材は、前記固定部材の取付部に取り付けられる取付受部を有し、流れ方向に沿って配設される支持部材は、少なくとも水下側、水上側が間隔を介して分割状に構成されていることを特徴とする支持部材の配設構造に関するものである。
【0007】
また、本発明は、前記配設構造において、支持部材は、定尺材からなると共に、下地上に固定される固定部材毎に構成されていることを特徴とする支持部材の配設構造をも提案する。
【0008】
また、本発明は、前記配設構造において、固定部材は、対向する側壁と、レベル調整手段とを有し、前記側壁には水上側に向かって開口する長孔溝が形成され、支持部材は、締着部材の大径部を収納し、且つ締着部材をスライド可能に保持する溝部を有し、前記支持部材を、前記固定部材の側壁間に配設し、前記支持部材の溝部に、締着部材の大径部を収納した状態で、水上側から固定部材に取り付け可能であることを特徴とする支持部材の配設構造をも提案する。
【0009】
さらに、本発明は、前記配設構造により固定された支持部材に桟部材を介して間接的に太陽電池パネルを固定してなることを特徴とする太陽電池パネルを含む外装構造をも提案するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の支持部材の配設構造は、流れ方向の水下側、水上側に間隔を介して非連続状に支持部材を配設するので、微調整を容易に行うことができ、しかもこの微調整によって他部材へ影響を及ぼさないため、下地の構成に影響されずに施工できる。また、太陽電池パネルのサイズに応じた支持部材を用意する必要もないため、材料費の低減を実現して安価に提供可能な構造となる。さらに、連続材を用いた従来の施工のように、軒先、棟側等に出っ張りや引っ込みが生ずることもないため、太陽電池パネルの周辺に化粧カバー等も容易に取り付けることができる。
【0011】
また、支持部材は、定尺材からなると共に、下地上に固定される固定部材毎に構成されている場合、固定部材は、桟部材の配設箇所付近に限定され、該固定部材に取り付けられる支持部材は、桟部材の配設箇所、即ち太陽電池パネルのサイズに調整して取り付けられるものとなる。この場合、支持部材を全て非連続状にすることで部材費の削減を図ることができる。また、水下、水上、その他部位を全て同一部材(サイズ)とすることで、部材費の低減と部材管理を容易にすることができる。
【0012】
また、固定部材が、対向する側壁と、レベル調整手段とを有し、前記側壁には水上側に向かって開口する長孔溝が形成され、支持部材は、締着部材の大径部を収納し、且つ締着部材をスライド可能に保持する溝部を有し、前記支持部材を、前記固定部材の側壁間に配設し、前記支持部材の溝部に、締着部材の大径部を収納した状態で、水上側から固定部材に取り付け可能である場合には、締着部材の大径部を支持部材の溝部に収納した状態で固定部材に水上側から取り付け可能であり、しかも締着部材は溝部内をスライド可能(相対的に支持部材の位置調整が可能)であるため、任意の位置に調整して締着することができる。なお、この締着部材としては、汎用のボルトを用いることができる。
そのため、面倒な手間を必要とすることもなく、部材の落下等も生じ難く、特殊な構成のナットを用いる必要もなく、極めて容易に太陽電池パネルを設置する支持部材を取り付けることができる。
【0013】
さらに、前記支持部材の配設構造を用いた本発明の外装構造は、極めて容易に支持部材を取り付けることができ、しかも面倒なレベル調整も必要としないので、極めて容易に太陽電池パネルを設置することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)本発明の支持部材の配設構造を用いた外装構造の一実施例(第1実施例)を示す即断面図、(b)他の一実施例(第2実施例)を示す側断面図である。
【図2】(a)水下側及び水上側を含む流れ方向の全体に沿って比較的短尺の定尺材である支持部材のみを配設した構造を示し、第1実施例の太陽電池パネルを2枚並列した状態を示す側断面図、(b)第1実施例の太陽電池パネルより幅広の太陽電池パネルを3枚並列した状態を示す側断面図、(c)第1実施例の太陽電池パネルを3枚並列した状態を示す側断面図、(d)第1実施例の太陽電池パネルより幅狭の太陽電池パネルを3枚並列した状態を示す側断面図、(e)第1実施例の太陽電池パネルを4枚並列した状態を示す側断面図、(f)第1実施例の太陽電池パネルを5枚並列した状態を示す側断面図である。
【図3】(a)第1実施例の外装構造の取付手順を示す斜視図、(b)それに用いた固定部材のシーリングを示す斜視図及び平面図、(c)それに用いた固定部材の拡大断面図、(d)それに用いた支持部材の拡大断面図である。
【図4】(a)第1実施例の外装構造の水下側(軒先納め)を示す分解斜視図、(b)水上側(頂部納め)を示す分解斜視図、(c)用いた桟部材の拡大断面図である。
【図5】固定部材の調整部の役割を説明する側断面図である。
【図6】(a)本発明における固定部材のバリエーションを示す斜視図であり、第1実施例における固定部材を示す斜視図、(b)他の一実施例における固定部材を示す斜視図、(c)他の一実施例における固定部材を示す斜視図、(d)他の一実施例における固定部材を示す斜視図である。
【図7】(a)固定部材、支持部材及び桟部材が別の態様の外装構造を示す側断面図、(b)それに用いた固定部材及び支持部材を示す斜視図、(c)固定部材、支持部材及び桟部材が更に別の態様の外装構造を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の配設構造における支持部材は、下地上に固定される固定部材に取り付けられ、流れ方向に直交するように配される桟部材を介して太陽電池パネル等の外設部材が設置されるものであり、流れ方向に沿って配設される支持部材は、少なくとも水下側、水上側が間隔を介して分割状に構成されている。
【0016】
この支持部材は、前記固定部材に取り付けられる取付受部を有するものであればよく、それ以外の構成は特に限定するものではない。
【0017】
本発明における下地は、既存屋根を含む太陽電池パネル等の外設部材を固定する取付対象を指し、既存屋根についても特にその構成を限定するものではなく、後述する図示実施例ではスレート等の表面が平坦状の下地であるが、和がわら、洋瓦等の波形状の下地に対しては、平坦状となるスペーサを介して固定してもよい。
【0018】
前記固定部材は、下地に固定する固定部と、固定部から立ち上がる持出部と、該持出部に設けられる取付部と、を有するものであればよく、それ以外の構成は特に限定するものではない。また、この固定部材は、一部材からなるものであっても、複数部材から構成されるものであってもよい。
【0019】
前記支持部材は、比較的短尺な定尺材からなると共に、下地上に固定される固定部材毎に構成されていることが望ましい。この場合、水下側、水上側ばかりでなく、流れ方向全体に非連続状に比較的短尺な定尺材である支持部材を配設するものとなり、部材作製(製造)や管理が容易である。
【0020】
本発明の支持部材の配設構造により固定された支持部材に桟部材を介して間接的に取り付ける太陽電池パネルとしては、特にその具体的構成を限定するものではなく、例えば後述する図示実施例に示すように面板部に太陽エネルギー変換モジュール(以下、太陽電池という)を備え、該面板部の少なくとも対向する側縁に成形部(フレーム材)を設けた構成でもよいし、桟部材を介在させて太陽電池パネルを取り付けるようにしてもよい。
前記太陽電池は、特にその構成及び形状を限定するものではなく、多結晶,単結晶,アモルファス等のシリコン系、化合物系、有機系などどのような太陽電池を用いてもよい。
【0021】
このように、本発明に用いる支持部材や固定部材については特にその形状等を限定するものではないが、後述する図示実施例に示す望ましい態様について以下に説明する。
【0022】
好ましい固定部材としては、前記下地に固定する固定部と、この固定部から立ち上がる左右一対の側壁と、レベル調整手段とを有する構成であり、前記側壁には水上側に向かって開口する長孔溝が形成される。
この態様の固定部材において、前記持出部とは側壁を指し、この持出部に設けられる取付部とは長孔溝を指す。
【0023】
前記側壁は、鉛直状でもよいし、支持部材を包持する内側への傾斜部分である折曲部を有する構成でもよい。後者の場合には、上方への持ち上がりを防止する規制手段の役割を果たすばかりでなく、傾斜状の側壁に長孔溝を設ける(但し、支持部材の溝部が側方でなくやや上方を向くと想定して)ことで締着作業をより容易に行うことができる。
【0024】
前記レベル調整手段としては、例えば後述する図示実施例のように側壁の下方をテーパ状とすることで既存スレート屋根の勾配を太陽電池パネル等の新設用レベルに調整してもよいし、或いは固定部の下方にスペーサ(断面三角状)を介在させることにより、固定部材自体のレベル調整を行うようにしてもよい。この固定部材と別体のスペーサについては、固定部材に一体化させたものでも、下地に対して固定したものでも、一体成形したものでもよい。
【0025】
前記長孔溝は、水上側に向かって開口しており、後述する支持部材の溝部に大径部が収容された状態の締着部材(大径部を除く部分)が遊嵌可能である。前述のように締着部材としては汎用のボルトを用いることができるので、この場合には頭部が大径部であり、雄ねじ部分が長孔溝に遊嵌する。
【0026】
好ましい支持部材としては、締着部材の大径部を収納し、且つ締着部材をスライド可能に保持する溝部を有する構成である。また、この支持部材は、前記固定部材の側壁間に配設されて取り付けられるものであり、取付状態において前記固定部材の側壁の内側に沿う側面に溝部が形成される。したがって、この支持部材の幅は前記固定部材の側壁間より僅かに小さく形成され、溝部は、側方が開放する構成である。
この態様の取付受部とは、溝部に保持される締着部材を指す。
【0027】
前記溝部は、前述のように締着部材の大径部を収納し、且つ締着部材をスライド可能に保持するものであって、側方が開放し、内部に断面が略矩形状の空間を有するものであって、開放部に内側へせり出した突出部が設けられ、収納した大径部の脱落を防止する構成である。
【0028】
前記溝部に保持させる締着部材は、特に限定するものではないが、前述のように汎用のボルトを用いることができ、その場合には溝部内に収納する大径部が頭部であり、雄ねじ部分が溝部外へ突出する。
この締着部材としては、予め緩くナットを連結しておいてもよく、この状態でも大径部(頭部)を支持部材の溝部に収納した状態で固定部材に水上側から取り付け可能であるから、ナットを落下させることなく、速やかに締着作業に取りかかることができる。
【0029】
以上説明した支持部材及び固定部材を用いることにより、以下の効果が果たされる。
締着部材の大径部を支持部材の溝部に収納した状態で固定部材に水上側から取り付け可能であり、しかも締着部材は溝部内をスライド可能(相対的に支持部材の位置調整が可能)であるため、任意の位置に調整して締着することができる。なお、この締着部材としては、汎用のボルトを用いることができる。
特に締着部材として、予め緩くナットを連結しておくことにより、固定部材に水上側から取り付けて速やかに締着することができる。
したがって、前述の従来の固定構造に比べて面倒な手間を必要とすることもなく、部材の落下等も生じ難く、特殊な構成のナットを用いる必要もなく、極めて容易に太陽電池パネルを直接的又は間接的に設置する支持部材を取り付けることができる。
【実施例】
【0030】
図1(a),(b)に示す本発明の第1実施例及び第2実施例は、下地4C上に固定される固定部材2Aに取り付けられ、流れ方向に直交するように配される桟部材5Aを介して太陽電池パネル6A等の外設部材が設置される支持部材1Aの配設構造であって、前記固定部材2Aは、下地4Cに固定する固定部21と、固定部21から立ち上がる持出部22と、該持出部22に設けられる取付部222と、を有し、前記支持部材1Aは、前記固定部材2Aの取付部222に取り付けられる取付受部3aを有し、流れ方向に沿って配設される支持部材1Aは、少なくとも水下側、水上側が間隔を介して分割状に構成されている。
即ち図1(a)に示す第1実施例では、水下側及び水上側に、比較的短尺の定尺材である支持部材1A,1Aを用い、それ以外には比較的長尺の支持部材1A'を用いており、図1(b)に示す第2実施例では、水下側及び水上側を含む流れ方向の全体に沿って比較的短尺の定尺材である支持部材1Aのみを配設した構造である。
【0031】
図2には、前記図1(b)の第2実施例と同様に水下側及び水上側を含む流れ方向の全体に沿って比較的短尺の定尺材である支持部材1Aのみを配設した構造を示し、図2(a),(c),(e),(f)は前記第1実施例の太陽電池パネル6Aを取り付ける構造として示し、それぞれの屋根面(太陽電池部分の長さ)が整数倍(2倍〜5倍)の流れ寸法のようになっている。例えば図2(e)には、固定部材2Aに対して支持部材1Aが直上、軒側もしくは棟側に調整した態様が示されている(桟部材5Aの位置がずれている)。これは太陽電池パネル6Aを支持する桟部材5Aの位置が太陽電池パネル6Aの幅によって桟部材5Aの位置が決まることによるものである。
また、図2(b),(d)は、図2(c)と同様に太陽電池パネル6W,6Nを流れ方向に3枚ずつ(3列ずつ)敷設したものであり、図2(b)の太陽電池パネル6Wは前記太陽電池パネル6Aよりも幅広サイズであり、図2(d)の太陽電池パネル6Nは前記太陽電池パネル6Aより幅狭サイズであり、それぞれに応じて桟部材5Aの位置が設定され、微調整することができる。このように取り付ける太陽電池パネル6W,6A,6Nの寸法に応じてどのような屋根面の長さにも対応できることが明らかである。
【0032】
図3〜図5に記載の外装構造の説明に際しては、前記図1及び図2に示す外装構造に用いた支持部材1A、固定部材2A、及び桟部材5Aの詳細な機能等について説明する。
即ち図示実施例の外装構造は、対向する側壁(持出部)22を有する固定部材2Aと、締着部材3aの大径部31を収納し、且つ締着部材3aをスライド可能に保持する溝部11a,11aを有する支持部材1Aとからなる持出構造により固定された支持部材1Aに、桟部材5Aを介して間接的に太陽電池パネル6Aを固定してなる。
【0033】
前記固定部材2Aは、図3(b),(c)及び図6(a)に示すように下地4Cに固定する固定部21と、この固定部21から立ち上がる左右一対の側壁(持出部)22と、レベル調整手段24とを有する構成であり、前記側壁22には水上側に向かって開口する長孔溝(取付部)222が形成される。この固定部材2Aでは、側壁22が持出部であり、長孔溝222が取付部に相当する。
図示実施例の固定部材2Aは、側壁22,22が水上側に設けられ、水下側には内側が、内側が開放する略コ字状の保持部23,23が設けられているピース材である。この保持部23は、上方への規制手段の一態様である。
また、前記固定部21には、複数の孔211が設けられ、孔211に固定具20にて下地4Cに固定するが、図3(b)に示すように孔211(固定具20頭部)や固定部21の下面及び周縁には接着材兼シーリング材25が配されている。
【0034】
図示実施例の側壁22は、内側への傾斜部分である折曲部221を有する構成(側壁22の下半が略垂直状、側壁22の上半が内側へ傾斜状)であり、その配設状態において左右から支持部材1Aを包持することができ、その上方への持ち上がりを防止することができる。即ちこの折曲部221は、上方への規制手段の一態様である。
また、この側壁22に設けられる長孔溝222は、前述のように水上側に向かって開口しており、前記折曲部221より上方に設けられ、後述する支持部材1Aの溝部11aに大径部31が収容された状態の締着部材3Aが遊嵌可能である。
【0035】
前記レベル調整手段24は、この固定部材2Aに取り付ける支持部材1Aへ固定する太陽電池システム等のレベルを調整するものであり、このレベル調整手段24より上方の側壁22等と下地面(既存屋根)の勾配に沿う固定部21間を側面視テーパー状とした。
このレベル調整手段24の役割については、図5に示すように、一点鎖線で示された取付基準面にレベル調整したものであり、図面の右側が水上側、左側が水下側を示すが、この固定部材2Cの取付位置が水上側或いは水下側にずれたとしても、図示するように取付基準面に沿ってレベル調整手段24を調整した支持部材1Aを固定すればよく、太陽電池パネル6Aを敷設する際にレベル調整をする必要が無く、容易に太陽電池パネル6Aを敷設することができる。なお、ここで用いた固定部材2Cは、図6(c)に示すように側壁22に折曲部221が設けられない以外は、前記固定部材2Aと全く同様である。
【0036】
前記支持部材1Aは、図3(d)に示すように前述のように締着部材3aの大径部31を収納し、且つ締着部材3aをスライド可能に保持する溝部11aを有する構成である。
図示実施例の支持部材1Aは、中央に空間部12を有する略門型成形体である比較的短尺な定尺材であって、左右及び頂部に合計5つの溝部11a〜11cを有する構成であり、各溝部11a〜11cは、何れも内部に断面が略矩形状の空間を備え、開放部に内側へせり出した突出部が設けられ、内部空間に収納する取付ボルト等の脱落を防止する構成である。
【0037】
これらの溝部11a〜11cのうち、左右の中段に設けられ、外側やや上方が開放する溝部11a,11aが、前記固定部材2Aとの連結に用いられる締着部材3aを保持するものであり、頂部の上方が開放する溝部11bは、後述する桟部材5Aの取り付けに用いられるものであり、左右の下段に設けられる外側が開放する溝部11cは、調整機構として用いられていないが、その下方側面が、取付状態において、前記固定部材2Aのレベル調整手段24,24上に載置させる設置部13,13であり、その略L字状の先端14が前記固定部材2Aの保持部23に保持される被保持部14である。
【0038】
また、この支持部材1Aは、前記固定部材2Aの側壁22,22間に配設されて取り付けられるものであり、取付状態において、前記固定部材2Aの側壁22の長孔溝222の内側に溝部11aが連通するように配置される。
そして、図示実施例では、水下(軒側)、水上(棟側)が間隔を介して分割状(非連続状)に配するようにしている。図4(a)が水下側の納めを示し、図4(b)が水上側の納めを示している。なお、この図4において、7B,7Cは納めカバー材を示す。
【0039】
前記溝部11aに保持させる締着部材3aは、汎用の六角ボルトであって、その頭部が前記溝部11a内に収納させる大径部31であり、雄ねじ部分が溝部11a外へ突出するので、この雄ねじ部分を把持して所定位置に調整してもよい。また、この締着部材3aとしては、予め緩くナット3bを連結しておいてもよい。
なお、この締着部材3aは、前記支持部材1Aの溝部11aに保持されるので、取付受部に相当する。
【0040】
図示実施例の下地4Cは、流れ方向に配設された躯体4A上に略平坦状に略ボード状の下地材4Bが敷設され、更にその上面にスレート屋根材4Cが段状に敷設されている構成である。なお、前記固定部材2Aを配設する水上側のスレート屋根材4Cには、水切り板4Dが配設され、固定部材2Aの固定部21の周縁に水の溜まりが形成されるのを抑制するようにした。
【0041】
また、前記桟部材5Aは、流れ方向に取り付けられる前記支持部材1Aに対して直交するように配設される、即ち桁行き方向に配設される連続材である。
図示実施例の桟部材5Aは、図4(c)に示すように高さの中程に、太陽電池パネル6Aのフレーム材6bの下端を支持する段状部51,51が設けられ、頂部53には、隣接する太陽電池パネル6A,6A間を塞ぐ覆い材7aや納めカバー材7B,7C等がビス止めされる。また、流れ方向に向く両下端に、略L字状の係止片52,52を有し、該係止片52に被さるように押さえ材5bが配設され、前記支持部材1Aの溝部11bに保持させた締着部材3cとナット3dにて取り付けられている。
【0042】
前記桟部材5Aに取り付けられる太陽電池パネル6Aは、太陽電池の側縁に裏面側に中空部分を備えるフレーム材6bを周設した構成であって、このフレーム材6bの下端が前記桟部材5Aの段状部52に支持される状態で取り付けられる。
また、流れ方向に隣接する太陽電池パネル6A,6A間に、覆い材7aを配してビス止めすることにより、水下側の太陽電池パネル6Aのフレーム材6bを、覆い材7aと桟部材5Aとで挟むように一体的に固定すると共に、太陽電池パネル6A,6A間へのゴミ等の浸入を防止している。
【0043】
これらの各部材から構成される第1実施例の外装構造は、図3(a)に矢印にて示すように組み付けられる。
図3(a)には、(1)前記固定部材2Aの固定部21に設けた複数の孔211に、固定具20を打ち込んで下地4Cに固定すること、(2)前記固定部材2Aを前記六角ボルトである締着部材3aを支持部材1Aの溝部11aに挿入すること、(3)該締着部材3aを固定部材2Aの長孔溝222に遊嵌させること、(4)更に締着部材3aの雄ねじ部分に座金とワッシャーと共にナット3bを取り付けること、(5)固定部材2Aの水上側のスレート屋根材4Cの下面に水切り板4Dを配設すること、(6)支持部材1Aの溝部11bに締着部材3cを保持させ、押さえ部材5bにて前記桟部材5Aを押さえ付けて座金とワッシャーと共にナット3dを締め付けて取り付けること、が矢印で示され、加えて(7)前記桟部材5Aに対し、流れ方向に隣接する太陽電池パネル6A,6Aを、覆い材7aを介在させつつ取り付けることが示されているが、それらの手順は特に限定するものではない。
特に前記(2)〜(4)の作業に関し、前述のように予め締着部材3aには緩くナット3bを連結しておいてもよい。より詳しくは締着部材3aの雄ねじ部分の先端付近にナット3bを螺合しておき、この状態で、締着部材3aの頭部31を支持部材1Aの溝部11aに収納し、ナット3bを把持しつつ、既に下地4Cに固定した固定部材2Aの長孔溝222に、水上側からスライドさせるように臨ませて取り付ける。締着部材3aを固定部材2Aの長孔溝222にスライド状に取り付ける操作は、支持部材1Aを固定部材2Aの側壁22,22間にスライド状に取り付けつつ行う。
【0044】
図4(a)は、前述の(1)〜(7)の作業を行って、固定部材2A及び支持部材1Aを取り付けた後、前記構成の桟部材5A及び太陽電池パネル6Aを取り付けた水下側の納めを示すものであって、図4(b)はその水上側の納めを示す。
【0045】
このように施工される本発明の外装構造は、面倒な手間を必要とすることもなく、部材(締着部材3a,3b等)の落下等も生じ難く、また特殊な構成のナットを用いる必要もなく、極めて容易に支持部材1Aを取り付けることができ、太陽電池パネル6Aを極めて容易に設置することができる。
また、固定部材2Aにレベル調整手段24を設けているので、太陽電池パネル6A等の外設部材を敷設する際にレベル調整をする必要が無く、そのために部材や時間を必要とすることなく、容易に太陽電池パネル6A等の外設部材を敷設することができる。
【0046】
また、本発明の支持部材1Aの配設構造は、流れ方向の水下側、水上側に間隔を介して非連続状に(分割状に)支持部材1Aを配設するので、微調整を容易に行うことができ、しかもこの微調整によって他部材へ影響を及ぼさないため、下地4Cの構成に影響されずに施工できる。また、太陽電池パネル6A、6W,6N等のサイズに応じた支持部材を用意する必要もないため、材料費の低減を実現して安価に提供可能な構造となる。さらに、連続材を用いた従来の施工のように、軒先、棟側等に出っ張りや引っ込みが生ずることもないため、太陽電池パネル6A等の周辺に化粧カバー7B,7C等も容易に取り付けることができる。
【0047】
さらに、図示実施例では、支持部材1Aと固定部材2Aが、上方への規制手段(側壁22の折曲部221、保持部23など)を有して組み付けられているので、固定部材2Aと支持部材1Aとの取付強度が向上し、支持部材1Aの上方への持ち上がりを防止することができる。
また、この図示実施例では、固定部材2Aの側壁22が、支持部材1Aを包持する折曲部221を有するので、この構成自体が前記上方への規制手段の一態様となるばかりでなく、傾斜状の側壁22(の上半)に長孔溝222を設けることとなるため、締着作業をより容易に行うことができる。即ち前記支持部材1Aの溝部11aが外側やや上方が開放する構成と相俟って、締着部材3aの雄ねじ部分が外側やや上方へ向いているため、この状態でナット3bを締め付けるレンチ等の治具の回動操作も容易となる。
さらに、この図示実施例では支持部材1Aを、流れ方向に沿って、水下側、水上側が間隔を介して分割状(非連続状)に配するようにしたので、配設位置の微調整を行っても、他の支持部材1Aに影響を及ぼすことがない。しかも、部材作製(製造)や管理の観点からも、取り扱いが容易な所定寸法の支持部材1Aを用意しておけばよいので、この点でも望ましい。
【0048】
次に、図6(a)に示す固定部材2A、図6(b)に示す固定部材2B、図6(c)に示す固定部材2C、及び図6(d)に示す固定部材2Dについて説明する。
図6(a)に示す固定部材2Aは、前記図示実施例にも用いたので、既に説明したとおりであるが、側壁22には長孔溝222の水下側に略円状の孔223を設けているので、この孔223から図示しないビスを打ち込んで支持部材1Aとビス止めしてもよい。このビスも、上方への規制手段の一態様である。
【0049】
図6(b)に示す固定部材2Bは、側壁22,22が水上側ばかりでなく水下側にまで延在しており、保持部23が設けられない以外は、前記図6(a)の固定部材2Aとほぼ同様であるから、図面に同一符号を付して説明を省略する。
この固定部材2Bでは、前記上方への規制手段として前記固定部材2Aと同様に折曲部221が支持部材1Aを包持する効果が果たされる。さらに側壁22,22間に支持部材1Aを保持する部分が前記固定部材2Aより大きいので、支持部材1Aのぐらつき(仮置き)を押さえる作用が大きい。
【0050】
図6(c)に示す固定部材2Cは、前記図5のレベル調整手段24の説明に用いたものであり、側壁22,22が上端まで略鉛直状であって、折曲部221が設けられない以外は、前記図6(a)の固定部材2Aとほぼ同様であるから、図面に同一符号を付して説明を省略する。
この固定部材2Cでは、前記上方への規制手段として前記固定部材2Aと同様に保持部23が支持部材1Aの被保持部14を保持する効果が果たされる。
【0051】
図6(d)に示す固定部材2Dは、保持部23も折曲部221も設けられない以外は、前記図6(a)の固定部材2Aとほぼ同様であるから、図面に同一符号を付して説明を省略する。
この固定部材2Dでは、前記上方への規制手段が設けられていないが、側壁22,22間に支持部材1Aを保持する部分が前記固定部材2Aより大きいので、支持部材1Aのぐらつき(仮置き)を押さえる作用は大きい。
【0052】
図7(a),(b)に示す実施例、及び図7(c)に示す実施例は、固定部材、支持部材、及び桟部材が別の態様を示すものである。
図7(a),(b)の実施例における固定部材2Eは、屋根面4Cに固定する第1部材26と、該第1部材26の表面側の全外周を覆う第2部材27と、前記第1部材26及び前記第2部材27を連結する第3部材28とからなり、前記第1部材26は、屋根面に防水材261を介して固定する固定部262と該固定部262に立設した縦杆263とを備え、前記第2部材27は、前記第1部材26を覆う被覆部271の外側に屋根面に防水材272を介して接地させる接地部273を周設し、前記被覆部271には前記縦杆263を挿通させる挿通孔を設け、前記第3部材28は、前記縦杆263に取り付けて締着することにより、前記第2部材27を屋根面に圧着するものである。この固定部材2Eにおいて、縦杆263が持出部であり、ナットである第3部材28が取付部に相当する。
また、図7(a),(b)の実施例における支持部材1Bは、両側面16,16上端が内側へ折曲(折曲部161)された略樋状の断面構成を有し、底面17には、長さ方向に延びる通孔171が設けられている。この支持部材1Bにおいて、通孔171が取付受部に相当する。
そして、前記構成の固定部材2Eを下地4Cに固定すると共に一体的に組み付け、その縦杆(持出部)263に、前記支持部材1Bの通孔(取付受部)171を貫通させ、第3部材(ナット)28を締め付けることにより、前記固定部材2Eと前記支持部材1Bとを一体化することができる。
さらに、固定された支持部材1Bには、桟部材5Eがボルトナットにて固定され、更に流れ方向に隣接する太陽電池パネル6A,6Aが固定され、その配設間隔には覆い材7dが配設されている。
【0053】
図7(c)の実施例における固定部材2Fは、下地4Cに沿わせる固定片291と略垂直状に立ち上がる縦片292と該縦片292の先端に設けられた溝部とからなり、前記縦片292が持出部であり、溝部に保持される締着部材3fが取付部に相当する。この溝部及び締着部材3f、及びそれに取り付けるナット3gは、機構的には前記溝部11a及び締着部材3a及びナット3bと同様であり、固定部材2Fと支持部材1Cとが一体的に固定される。
また、固定された支持部材1Cには、桟部材5Fがボルトナットにて固定され、該桟部材6Fには流れ方向に沿う流水部材8が取り付けられ、更に流れ方向に隣接する太陽電池パネル6A,6Aが固定され、その配設間隔には覆い材7eが配設されている。
【符号の説明】
【0054】
1A 支持部材
11a〜11c 溝部
2A〜2E 固定部材
21 固定部
22 持出部(側壁)
222 長孔溝(取付部)
23 保持部
24 レベル調整手段
3a 締着部材(取付受部)
31 大径部
3b ナット
4C 下地(スレート屋根材)
5A 桟部材
6A 太陽電池パネル
7a 覆い材
7B,7C 納めカバー材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地上に固定される固定部材に取り付けられ、流れ方向に直交するように配される桟部材を介して外設部材が設置される支持部材の配設構造であって、
前記固定部材は、下地に固定する固定部と、固定部から立ち上がる持出部と、該持出部に設けられる取付部と、を有し、
前記支持部材は、前記固定部材の取付部に取り付けられる取付受部を有し、
流れ方向に沿って配設される前記支持部材は、少なくとも水下側、水上側が間隔を介して分割状に構成されていることを特徴とする支持部材の配設構造。
【請求項2】
支持部材は、定尺材からなると共に、下地上に固定される固定部材毎に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の支持部材の配設構造。
【請求項3】
固定部材は、対向する側壁と、レベル調整手段とを有し、前記側壁には水上側に向かって開口する長孔溝が形成され、支持部材は、締着部材の大径部を収納し、且つ締着部材をスライド可能に保持する溝部を有し、前記支持部材を、前記固定部材の側壁間に配設し、前記支持部材の溝部に、締着部材の大径部を収納した状態で、水上側から固定部材に取り付け可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の支持部材の配設構造。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の配設構造により固定された支持部材に桟部材を介して間接的に太陽電池パネルを固定してなることを特徴とする太陽電池パネルを含む外装構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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