説明

改善されたエネルギー効率を有する潤滑剤

DIN51354に従う改良方法により40〜120℃の温度で測定される0.6〜0.8の境界損失係数XLGを有する潤滑組成物であって、この潤滑組成物が基油、任意の添加剤を含有し、さらに、この基油が複合エステルから選択され、前記複合エステルが400超〜50,000mm/秒までの40℃での動粘度を有する潤滑組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は潤滑剤、特に、油圧油、エンジン用潤滑剤およびタービン油(特に風力タービン用の潤滑剤)などの工業用潤滑剤に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑剤の最も重要な機能は、摩擦および摩耗の低減である。内燃エンジン、車両用および工業用ギアボックス、コンプレッサー、タービンまたは油圧システムにおける重要な用途とは別に、大部分は特定の目的に適合した潤滑剤を必要とする膨大な数の他の用途が存在する。特に、ギア潤滑剤はトランスミッションとって重要である。滑り転がり接触を潤滑にするという重要な機能とは別に、油は、滑り転がり接触において発生する摩擦熱を冷却して取り除く役割を果たす。歯車における滑り転がり接触を特徴付ける潤滑条件は、ジャーナル軸受けおよびころ軸受けにおける滑り転がり接触を特徴付ける潤滑条件と異なるため、歯車駆動のトライボロジーとジャーナル軸受けおよびころ軸受けのトライボロジーとには大きな違いがある。
【0003】
いろいろな種類の機械にギアボックスは存在しているため、数多くの異なるギアが知られている。異なる種類のギアについて、使用する潤滑剤の様々な特性が適合しなければならない。ギアに対する、ならびに各潤滑剤に対する重要な利用分野は、風力タービンである。
【0004】
代替再生可能エネルギー源として、風力発電地帯または風力発電所において使用される風力タービンなどの風力タービン用途は、ますます多くの注目を集めている。風力タービンとして知られる風力−電気タービン発電機は、ローター(すなわち、翼とハブ)を回転させるために風に含まれるエネルギーを使用する。風力タービンのローターを空気が流れる時、ローターが回転し、発電機のシャフトを動かし、電気を発生させる。
【0005】
従来の風力タービンを使用してエネルギーを発生させるために、一般的に、ギアボックスは風力タービンのローターと発電機のローターの間に設置されている。より具体的には、ギアボックスは、1分間に約30〜60回転で風力タービンローターにより回転する低速シャフトを、約1200〜1600rpm(電気を発生させるための多くの発電機に要求される回転速度)まで回転速度を上げるために、発電機を動かす高速シャフトと接続する。このギアによる手法は、このシステムを通じて200万Nmに近いトルクをもたらす。この高いトルクは、ギアとギア付き風力タービンのベアリング(軸受け)に大きなストレスを加えことになり得る。風力タービン油には、風力タービンのベアリングおよびギアの疲労寿命を改善することが求められる。ギアのない直結駆動風力タービンが開発されており、そのような風力タービンは、維持のための稼働部分がより少ないという長所を有するが、一般的により重く、一般的に冷気が吹き抜けるオープンモデルであるという欠点を有しており、特に沖合施設での腐食のリスクを高めるであろう。いずれにしても、しばらくの間は、両方の型の風力タービンが共存することが予測される。したがって、ギア付き風力タービンに使用されるギアボックスにおけるベアリングおよびギアの疲労寿命を改善する風力タービン油は、最も効率的で、信頼性があり費用効果のよい方法でギアによる手法を使用する機会を増やすであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、このような用途のための潤滑剤は、種々の役割を果たさなければならない。潤滑剤は、ギアボックス内の温度低下に貢献しながら、より高い稼働荷重で機能しなければならない。潤滑剤は、作業員が扱い易く(漏れのない)、非発泡性、耐水性であり、かつオペレーターに無害でありながら、ギアにおける疲労関連の損傷(例えばピッティング)および摩耗(粘着、すり減り、研磨および毛羽立ち)を防止しなければならない。また、風力タービンにおいてギアボックスは、任意のメンテナンスおよびサービス間隔の間、長時間使用されることが多いので、長期間優れたサービス性能を提供するために長時間の潤滑安定性が求められる。最後に、風力タービンは山頂、沖合または海岸沿い、砂漠など世界中に設置される。前記潤滑剤は、寿命の問題に加えて、耐酸化性であり腐食を防ぐことができ、さらに、最高最低温度および湿度を含む様々な環境に耐えることができなければならない。
【0007】
さらに、前記潤滑剤の潤滑特性を改善し、摩擦を少なくし、このような潤滑剤を備える装置においてエネルギー消費を抑える一定の要求が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
特定の選択されたエステル油が、上記の全要求を満たすことがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は連続ギア負荷試験機を示す。
【図2】図2は荷重下の損失係数を示す。
【図3】図3は境界損失係数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
したがって、本発明の第1の実施態様は、DIN51354に従う改良方法により40〜120℃の温度で測定される0.5〜0.9の、好ましくは0.6〜0.8の境界損失係数XLGを有する潤滑組成物であって、この潤滑組成物が基油、任意の添加剤を含有し、この基油がエステルから選択され、さらに前記エステルが400超〜50,000mm/秒までの40℃での動粘度を有し、
a)ポリオールならびにモノカルボン酸およびジカルボン酸、または
b)ポリオールおよびモノアルコールならびにジカルボン酸、または
c)ポリオールおよびモノアルコールならびにモノカルボン酸およびジカルボン酸
の反応により得られる潤滑組成物である。
【0011】
境界損失係数XLGの前記測定方法は、研究プロジェクトに対するFVA情報シート第345, 6月、2003年、レポートNo.3781の付属書類Bおよびレポート3416の付属書類Cに詳細に記載されている。
【0012】
本発明の潤滑剤は、荷重下におけるその特異的な挙動、特に低い摩擦損失を特徴とする。ギアボックスの全動力損失Pは、ギアの損失PVZPおよびPVZ0、ベアリングの損失(PVLPおよびPVL0)およびシールやポンプなどの補助損失源(PVX0)に分けることができる。全動力損失は、荷重依存性損失および荷重非依存性損失に分けることもできる。下記式1に従う。
【0013】

【0014】
損失係数は、基準油と比較した油の相対的な損失を示す。境界損失係数は最も重視される。この係数は、通常境界潤滑が生じる条件で、基準と比較した相対的な荷重依存性損失を表す。境界損失係数は、特に高い粘性油の摩擦挙動のための指標である。したがって、前述した特定の境界損失係数XLGの選択基準は、本発明を行うために極めて重要である。例えば、XLGに対する0.6の数値は、この潤滑剤が基準油に対して40%向上したエネルギー消費を示すことを意味する。
【0015】
上記所定の境界損失係数の油を選択した場合、稼働条件下でのエネルギー消費は低下するであろう。したがって、そのようなエステルの使用は、これらの潤滑剤を備える装置、好ましくは風力タービンにおけるギアのエネルギー効率を改善するであろう。
【0016】
使用するエステルの動粘度は、好ましくは800〜25000mm/sであり、特に1200〜10000mm/sであり、より好ましくは1300〜5000mm/sであり、最も好ましくは1500〜3000mm/sである。驚くべきことに、これらのエステルの使用が、永久せん断後の潤滑組成物の動粘度における損失をほとんど引き起こさないことがわかった。この特性は、高いせん断応力にさらされる潤滑剤での使用を可能にする。
【0017】
構造的特性ならびに上述したような技術的特性の両方を満たすこれらのエステルのみを選択することは、本教示にとって極めて重要である。
【0018】
上述したようなエステルは、原則、当業者に既知である。これらのエステルおよび潤滑剤としてのそれらの応用をより詳細に記載する本出願人の欧州特許出願第2027234号または国際特許出願第05/019395号が参照される。
【0019】
他の選択基準を満たす限りにおいて上述した全ての構造のエステルがエネルギー消費の低下に有益であるであろうが、タイプa)のエステルが特に好ましい。好ましい実施態様において、潤滑組成物はa)に従った反応で使用されるモノカルボン酸が、分枝モノカルボン酸、または直鎖および分枝モノカルボン酸の混合物であり、それらの各々が5〜40炭素原子の炭素数を有し、分枝モノ酸の含有量が好ましくは酸混合物の合計含有量に基づいて90mol%を超えることを特徴とする。
【0020】
モノカルボン酸は、好ましくは、8〜30個の炭素原子、特に10〜18個の炭素原子を含有する。特に、モノカルボン酸は、以下の分枝酸からなる群から選択される:2,2−ジメチルプロパン酸、ネオヘプタン酸、ネオオクタン酸、ネオノナン酸、イソヘキサン酸、ネオデカン酸、2−エチルヘキサン酸、3−プロピルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、イソヘプタン酸、イソオクタン酸、イソノナン酸、イソステアリン酸、イソパルミチン酸、ゲルベ酸C32、ゲルベ酸C34またはゲルベ酸C36、およびイソデカン酸。直鎖酸は、好ましくは、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、ミリスチン酸、セロチン酸、メリシン酸、トリコサン酸およびペンタコサン酸、2−エチルヘキサン酸、イソトリデカン酸、ミリスチン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、ペトロセリン酸、リノール酸、リノレン酸、エラエオステアリン酸、ガドレイン酸およびエルカ酸、ならびにそれらの工業用混合物からなる群から選択される。好ましい分枝モノカルボン酸は、イソノナン酸、イソステアリン酸および2−エチルヘキサン酸である。
【0021】
好ましいエステルは、1つより多い酸を含むエステルの混合物、好ましくは本発明に従うエステルの混合物、より好ましくは2以上の異なる二塩基酸の混合物である。
【0022】
これに関して、8〜18個の炭素原子を有する二塩基酸が好ましい。本発明のさらに好ましい実施態様においては、エステルの合成のために分枝二塩基酸を選択する。適する二塩基酸は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシジル酸、タプス酸およびペラルゴン酸である。好ましい二塩基酸は、セバシン酸、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸およびイソステアリン酸からなる群から選択される。上述したような2以上の異なる酸に基づくエステルが好ましい。ジカルボン酸の無水物も本発明の反応に適している。
【0023】
エステルのアルコール部分は、モノ−、ジ−またはポリ−アルコールから広く選択される。アルコールは、直鎖または分枝、飽和または不飽和であってもよく、また、環状または芳香族であってもよい。
【0024】
好ましい実施態様において、アルキルアルコールは、直鎖または分枝、飽和または不飽和の、炭素数1〜31のモノアルコール、炭素数2〜25のジオールまたはポリオールからなる群から選択される。直鎖モノアルコールは、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘネイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノール、トリコンタノールまたはヘントリアコンタノールである。これらのアルコールにおいてOH官能基は1位に位置するが、それらの全異性体も適当である。同じことが、前記アルコールの全ての種類の分枝異性体に対していえる。好ましい分枝アルコールは、いわゆるゲルベアルコールである。不飽和モノアルコールは、例えば、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、9Z−および9E−オクタデセ−9−エン−1−オール、(9Z,12Z,15Z)−オクタデカ−9,12,15−トリエン−1−オール、(9Z)−エイコセ−9−エン−1−オール、または13E−若しくは13Z−ドコデン−1−オールである。さらに、ジオール、好ましくはグリコール、それらのオリゴマーまたはポリマーも、本発明に従うエステルを調製するための適当なアルコールである。エチレングリコール若しくはジエチレングリコール、またはそれらのオリゴマーならびにプロパンジオールおよびブタンジオールも好ましいジオールである。ポリオールも適当なアルコール成分である。好ましい例は、グリセリン、オリゴグリセリン若しくはポリグリセリン、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトール、ならびにそれらのオリゴマーまたはポリマーである。
【0025】
本発明は、好ましくは、必須成分として立体障害ポリオールと直鎖および/または分枝アルコールとのエステルを含む、「複合エステル」として知られるポリオールエステルおよびその混合物に関する。
【0026】
複合エステル反応生成物への転化は、エステルを調製するためのそれ自体既知の合成法で行われる。本発明によれば、エステルの調製は、遊離カルボキシル基および/または遊離ヒドロキシル基が制御されて存在するように、既知の方法により実施することもでき、遊離カルボキシル基および/または遊離ヒドロキシル基を含有するこれらの生成物を、滑剤組成物に使用する。本発明によれば、存在する遊離カルボキシル基は、アミンとさらに反応してアミドを生じることができ、得られる化合物は、本発明における複合エステルとして、滑剤組成物中に存在してもよい。
【0027】
本発明の教示に従う潤滑剤は、基油および1つ以上の添加剤を含有する。基油は100%以下の上記説明に従うエステルを含有する。一般に、複合エステルは、潤滑剤の重量ならびに(全ての他の成分を含む)潤滑組成物の総重量に基づき主要な量で存在しなければならない。
【0028】
しかしながら、いくつかの他の既知の基油物質を使用してもよい。基油が総重量に基づき10〜98重量%の、好ましくは50〜95重量%の上述したようなエステル油由来の基油を含有することが好ましい。潤滑剤の総重量に基づき、複合エステルは、好ましくは1〜99.9重量%、より好ましくは10〜80重量%、最も好ましくは50〜75重量%の量で存在する。
【0029】
本発明において、潤滑組成物中に存在する基油は、鉱油、高精製鉱油、アルキル化鉱油、ポリ−α−オレフィン、ポリアルキレングリコール、リン酸エステル、シリコーン油、エステル、Solvent Neutral類の鉱油、ならびにXHVI、VHVI、群IIおよび群IIIおよびGTL basestock(gas−to−liquid基油)類の鉱油からなる群から選択される油を意味すると理解される。ポリ−α−オレフィンは、好ましくは、C6〜C18−α−オレフィンおよびその混合物からなり得る。ポリ−α−デセンが特に好ましい。
【0030】
記載したさらなる成分に加えて、本発明の滑剤組成物は、ポリマー増粘剤、溶媒、粘度指数(VI)改良剤、酸化防止剤、腐食防止剤、洗剤、分散剤、解乳化剤、消泡剤、染料、摩耗保護添加剤、極圧(EP)添加剤および耐摩耗(AW)添加剤、ならびに摩擦緩和剤からなる群から選択されるさらなる添加剤を含有してよい。このような添加剤は、潤滑剤の総重量に基づき0.001〜15重量%の量で存在し得る。好ましい範囲は、0.01〜5重量%である。
【0031】
別の好ましい実施態様において、本発明の潤滑組成物は、潤滑組成物の総重量に基づき0.5〜30重量%の濃度の極性ポリマーをさらなる成分として含有することができる。好ましい濃度は、1〜18重量%であり、より好ましくは2〜12重量%である。本発明に従って使用される極性ポリマーは、好ましくは、アルキルフマレート−α−オレフィンコポリマー、アルキルマレエート−α−オレフィンコポリマー、ポリアルキルメタクリレート、プロピレンオキシドポリマー、エチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマーおよびアルキルメタクリレート−α−オレフィンコポリマーからなる群から選択される。
【0032】
本発明の特定の実施態様は、さらなる油として、潤滑剤の総重量に基づいて1〜60重量%、好ましくは5〜45重量%の、請求項1に記載されるエステル油とは異なるエステル油、ポリ−α−オレフィン、鉱油、ポリマー、ポリアルキレングリコールまたはそれらの混合物を含む潤滑剤である。
【0033】
さらに、本発明は、本発明の潤滑組成物の使用、特に好ましい実施態様においては、車両用トランスミッション油、アクセル油、工業用トランスミッション油、コンプレッサー油、タービン油またはモーター油としての本発明の潤滑組成物の使用を提供する。本発明の潤滑油は、機械的な力が機械またはギアの金属部分の直接接触を介して転送されるような用途において好適に有益である。アクセル油、クラッチ油または工業的若しくは特定のギア油用途としての使用が特に好ましい。風力タービン油としての潤滑剤の使用、特に風力タービンにおけるギア用の潤滑剤としての使用が最も好ましい。
【実施例】
【0034】
本発明の教示に従う潤滑剤の改善されたエネルギー効率を示すため試験を行った。これに関して、円筒ギアの摩擦損失を、DIN 51354に従い改良した連続ギア負荷試験機(back-to-back gear test rig:図1参照)にて測定した。テストギアにおけるテストピニオンおよびテストギアは、スレーブギアステージに接続されている2つの平行軸に取り付けられている。スレーブギアステージには、テストギアと同一の2つのギアが取り付けられており、2つの均等のステージはパワーサークルにおいて近接している。ピニオン軸は、荷重クラッチにより接続された2つの分割部品からなる。荷重レバー上の規定重量を用いる荷重クラッチをねじることにより規定の静的トルクを加える。電気モーターは、パワーサークルの摩擦損失を補えればよい。損失トルクの測定のために、トルクメーター軸を電気エンジンとスレーブギアボックスの間に取り付ける。適用荷重を荷重クランチに隣接する負荷トルクメーター軸により測定する。試験の間、異なる稼働条件を適用し、円周速度を0.5〜20m/sまで変化させ、荷重を非荷重から1720N/mmのヘルツ応力まで変化させ、温度を40〜120℃まで変化させた。試験方法は飛沫潤滑を用いた。
【0035】
上述したような試験装置において、2つの異なる潤滑剤を試験した。潤滑剤1は、市販のPAO生成物であり、これを比較として使用し、潤滑剤2は、アルコールとしてペンタエリスリトール、セバシン酸およびイソステアリン酸の混合物から構成される本発明に従うエステルである。DIN 51354に従う試験方法において用いた基準油は、4%のリン酸イオウ添加剤〔Anglamol(登録商標)99〕を含み、鉱油に基づく。
【0036】
図2および図3から明らかなように、荷重下の損失係数および40〜120℃の幅広い温度範囲にわたる境界損失係数によれば、本発明のエステル油組成物は常に良好な性能を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DIN51354に従う改良方法により40〜120℃の温度で測定される0.6〜0.8の境界損失係数XLGを有する潤滑組成物であって、該潤滑組成物が基油、任意の添加剤を含有し、該基油がエステルから選択され、さらに、前記エステルが400超〜50,000mm/秒までの40℃での動粘度を有し、
a)ポリオールならびにモノカルボン酸およびジカルボン酸、または
b)ポリオールおよびモノアルコールならびにジカルボン酸、または
c)ポリオールおよびモノアルコールならびにモノカルボン酸およびジカルボン酸
の反応により得られる潤滑組成物。
【請求項2】
エステルが、請求項1に記載されるタイプa)から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項3】
エステルの酸部分が、少なくとも2つの異なる二塩基酸の混合物から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の潤滑組成物。
【請求項4】
エステルの酸部分が、二塩基酸の混合物から選択され、該二塩基酸が8〜18個の炭素原子を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の潤滑組成物。
【請求項5】
エステルの酸部分が、少なくとも1つの分枝二塩基酸から選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の潤滑組成物。
【請求項6】
エステルの酸部分が、セバシン酸、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸またはイソステアリン酸あるいはそれらの混合物を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の潤滑組成物。
【請求項7】
エステルのアルコール部分が、グリセリン、ネオペンチルグリコール、オリゴグリセリン若しくはポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の潤滑組成物。
【請求項8】
エステルのアルコール部分が、ペンタエリスリトールまたはトリメチロールプロパンあるいはそれらの任意の混合物から選択されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の潤滑組成物。
【請求項9】
潤滑組成物の総重量に基づいて、0.01〜5重量%の添加剤を含有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の潤滑組成物。
【請求項10】
潤滑組成物の総重量に基づいて、1〜99.9重量%の、好ましくは10〜80重量%の、最も好ましくは50〜75重量%の複合エステルを含有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の潤滑組成物。
【請求項11】
さらなる油として、潤滑組成物の総重量に基づいて、1〜60重量%の、好ましくは5〜45重量%の、請求項1に記載する油とは異なるエステル油、ポリ−α−オレフィン、鉱油、ポリマー、ポリアルキレングリコールまたはそれらの任意の混合物を含有することを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の潤滑組成物。
【請求項12】
ギアの、好ましくは風力タービンのギアの潤滑用のエネルギー効率潤滑剤としての請求項1に記載の組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−517338(P2013−517338A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548375(P2012−548375)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【国際出願番号】PCT/EP2011/000095
【国際公開番号】WO2011/085969
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(505066718)コグニス・アイピー・マネージメント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (191)
【氏名又は名称原語表記】Cognis IP Management GmbH
【Fターム(参考)】