説明

改善された導電性層を有する熱現像可能な材料

増加した導電効率を有する埋込型導電性層を、保護上塗りを直接的に導電性層の上に配置するために、特定の有機溶剤混合物を用いて熱現像可能な材料に提供することができる。該有機溶剤混合物は、配合物に用いられる1種又は2種以上の皮膜形成ポリマーが室温で可溶性である有機溶剤混合物であるアルコールを含む。当該アルコールは、該有機溶剤混合物の10重量%超〜最大90重量%の量で用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された裏側導電性層を有する熱現像可能な材料に関する。具体的には、本発明は、「導電効率」が改善された「埋込み型」裏側導電性層を有するサーモグラフィ及びフォトサーモグラフィ材料に関する。本発明はまた、これらの熱現像可能な材料を使用した画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱を用いて、しかも液体処理なしで画像形成及び/又は現像される銀含有サーモグラフィ及びフォトサーモグラフィ画像形成材料(すなわち熱現像可能な画像形成材料)が長年にわたって当業者に知られている。
【0003】
銀含有サーモグラフィ画像形成材料は、画像が熱エネルギーの使用により発生させられるような記録プロセスにおいて使用される非感光性材料である。これらの材料は、一般に、(a)相対的に又は完全に非感光性の被還元性銀イオン源、(b)被還元性銀イオンのための還元性組成物(通常は現像剤を含む)、及び(c)好適な親水性又は疎水性のバインダー、が配置されている支持体を含む。
【0004】
典型的なサーモグラフィ構造において、画像形成層は、長鎖脂肪酸の銀塩を基剤としている。典型的には、好ましい非感光性の被還元性銀源は、炭素原子数10〜30の長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩である。ベヘン酸又は同様の分子量の酸の混合物の銀塩が一般に使用される。高温において、カルボン酸銀塩の銀は、銀イオンのための還元剤、例えば没食子酸メチル、ヒドロキノン、置換型ヒドロキノン、ヒンダード・フェノール、カテコール、ピロガロール、アスコルビン酸、及びアスコルビン酸誘導体によって還元され、これにより元素銀の画像が形成される。いくつかのサーモグラフィ構造は、これらをサーモグラフィ記録装置、例えば感熱式プリンター又は感熱式ファクシミリ機のサーマルヘッドと接触させることにより画像形成される。このような構造において、画像形成層の上側に粘着防止層を塗布することにより、利用される装置のサーマルヘッドにサーモグラフィ構造がくっつくのを防止する。その結果得られるサーモグラフィ構造を次いで高温まで、典型的には60〜225℃まで加熱することにより、画像を形成する。
【0005】
化学線によって画像形成され、次いで熱を用いて、しかも液体処理なしで現像される銀含有フォトサーモグラフィ画像形成材料(すなわち感光性の熱現像可能な画像形成材料)も長年にわたって当業者に知られている。このような材料は、特定の電磁線による像様露光をフォトサーモグラフィ材料に施すことにより画像が形成され、そしてこの画像が熱エネルギーの使用により現像されるような記録プロセスにおいて使用される。「ドライシルバー」材料としても知られているこれらの材料は、一般に、(a)このような露光が施されると、続いて銀画像を現像工程において形成するための触媒として作用することができる露光された粒子に、潜像を提供する光触媒(すなわちハロゲン化銀のような感光性化合物)、(b)相対的に又は完全に非感光性の被還元性銀イオン源、(c)被還元性銀イオンのための還元性組成物(通常は現像剤を含む)、及び(d)親水性又は疎水性のバインダー、が塗布されている支持体を含む。この潜像は次いで熱エネルギーを加えることにより現像される。
【0006】
フォトサーモグラフィ材料において、写真ハロゲン化銀に露光を施すと、銀原子を含有する小さな塊(Ag0)nが生成される。潜像として当業者に知られるこれらの塊の像様分布は一般に、通常の手段によっては見ることができない。このように感光性材料は、潜像の銀含有塊を担持するハロゲン化銀粒子に触媒的に近接した関係にある銀イオンを還元することにより、可視像を生成するためにさらに現像しなければならない。このことは黒白画像を生成する。非感光性銀源は可視黒白ネガティブ画像を形成するために触媒的に還元されるが、これに対して、ハロゲン化銀のほとんどは一般にはハロゲン化銀として残り、還元されない。
【0007】
フォトサーモグラフィ材料の場合、「現像剤」としばしば呼ばれる被還元性銀イオンのための還元剤は、潜像の存在において、銀イオンを金属銀に還元することができ、そして好ましくは、反応を引き起こすのに十分な温度に加熱されるまで、相対的に低い活性を有するいかなる化合物であってもよい。フォトサーモグラフィ材料のための現像剤として機能する、種々のクラスの化合物が文献に開示されている。高温において、被還元性銀イオンは還元剤によって還元される。この反応は、潜像を取り囲む領域内に優先的に発生する。この反応は、フォトサーモグラフィ画像形成層内のトーニング剤及び他の成分の存在に応じて、黄色から濃い黒色までの範囲の色を有する金属銀のネガティブ画像を生成する。
【0008】
フォトサーモグラフィと写真との違い
画像形成の当業者は以前より、フォトサーモグラフィ分野は写真分野とは明らかに区別されることを認識している。フォトサーモグラフィ材料は、水性処理溶液による処理を必要とするコンベンショナルなハロゲン化銀写真材料とは著しく異なる。
【0009】
フォトサーモグラフィ画像形成材料の場合、材料内部に内蔵された現像剤の反応の結果としての熱によって、可視像が形成される。この乾式現像のためには50℃以上での加熱が必須である。対照的に、コンベンショナルな写真画像形成材料は、可視像を提供するために、より穏やかな温度(30℃〜50℃)の水性処理浴内で処理することを必要とする。
【0010】
フォトサーモグラフィ材料の場合、光を捕らえるためにハロゲン化銀は少量しか使用されず、そして熱現像によって可視像を発生させるために、非感光性の被還元性銀イオン源(例えばカルボン酸銀塩又は銀ベンゾトリアゾール)が使用される。このように、画像形成された感光性ハロゲン化銀は、非感光性の被還元性銀イオン源及び内蔵された還元剤に関与する物理的現像プロセスのための触媒として役立つ。対照的に、コンベンショナルな湿式処理型黒白写真材料は、化学的現像時にそれ自体が少なくとも部分的に銀画像に変換されるか、又は、物理的現像時に外部銀源(又は、対応する金属に還元されると黒画像を形成する他の被還元性金属イオン)の添加を必要とする、1つの銀形態(すなわちハロゲン化銀)だけを使用する。このように、フォトサーモグラフィ材料が必要とする単位面積当たりのハロゲン化銀量は、コンベンショナルな湿式処理型写真材料中に使用される量のわずかな割合にすぎない。
【0011】
フォトサーモグラフィ材料の場合、画像形成のための「化学物質」の全てが、材料自体内部に内蔵される。例えば、このような材料は現像剤(すなわち、被還元性金属イオンのための還元剤)を含むのに対して、コンベンショナルな写真材料は通常これを含まない。フォトサーモグラフィ材料内に現像剤を内蔵することにより、種々のタイプの「カブリ」又はその他の望ましくないセンシトメトリックな副作用の形成が増大するおそれがある。従って、これらの問題を最小限に抑えるべく、フォトサーモグラフィ材料の調製及び製造に多大の努力が為されている。
【0012】
さらに、フォトサーモグラフィ材料の場合、未露光のハロゲン化銀は一般に、現像後に無傷のまま残り、材料はさらなる画像形成及び現像に対して安定化されなければならない。対照的に、溶液現像後には、(水性定着工程における)更なる画像形成を防止するために、コンベンショナルな写真材料からハロゲン化銀が除去される。
【0013】
フォトサーモグラフィ材料は乾式熱処理を必要とするので、コンベンショナルな湿式処理型ハロゲン化銀写真材料と比較して、明らかに異なる問題を提示し、そして製造時及び使用時に異なる材料を必要とする。コンベンショナルなハロゲン化銀写真材料において1つの効果を有する添加剤は、化学物質が著しく込み入っているフォトサーモグラフィ材料中に内蔵されると、全く異なった挙動を示すことがある。コンベンショナルな写真材料中に安定剤、カブリ防止剤、スピード促進剤、超増感剤、並びに分光増感剤及び化学増感剤のような添加剤を内蔵しても、このような添加剤がフォトサーモグラフィ材料において有益であるか又は有害であるかは予測できない。例えば、コンベンショナルな写真材料において有用な写真カブリ防止剤がフォトサーモグラフィ材料中に内蔵されると種々のタイプのカブリを引き起こすこと、又は、写真材料において効果的な超増感剤が、フォトサーモグラフィ材料中では不活性であることは珍しいことではない。
【0014】
フォトサーモグラフィ材料と写真材料とのこれらの違い及びその他の違いは、Unconventional Imaging Processes(従来にはない画像形成プロセス), E. Brinckman他(編), The Focal Press, London and New York, 1978, 第74-75, D. H. Klosterboer, Imaging Processes and Materials(画像形成プロセス及び材料), (Nebletteの第8版), J. Sturge, V. Walworth ,及びA. Shepp編, Van Nostrand-Reinhold, New York, 1989, 第9章, 第279-291頁、Zou他, J. Imaging Sci. Technol. 1996, 40, 第94-103頁、及びM. R. V. Sahyun, J. Imaging Sci. Technol. 1998, 42, 23に記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
熱現像可能な材料内の支持体又は支持される層を形成するために使用される化学物質の多くは、電気絶縁特性を有しており、製造中、包装中、及び使用中に静電荷が材料上にしばしば蓄積する。蓄積された電荷は種々の問題を招くおそれがある。例えば、感光性ハロゲン化銀を含有するフォトサーモグラフィ材料の場合、蓄積された静電荷は、ハロゲン化銀がそれに対して感光してしまうような光を発生させるおそれがある。このことは、画像が医療診断に使用される場合に特に問題になる画像形成欠陥をもたらすことがある。
【0016】
静電荷の蓄積は、熱処理可能な材料から成るシートをくっつき合わせて、処理装置内部でのフィード失敗及び詰まりを引き起こすおそれもある。加えて、蓄積された静電荷は、ダスト又はその他の粒子状物質を材料に引き付けることがあり、これにより、処理装置内の迅速な搬送及び高品質画像形成を保証するためにより多くのクリーニングを必要とする。
【0017】
静電荷の蓄積はまた、画像形成された材料から成る現像されたシートの取り扱いをより難しくしてしまう。例えば放射線技師は、ライトボックス上で見るための、静電気が発生しないシートを望む。この問題は、長時間にわたって貯蔵されている画像形成されたフィルムを再び見るときに特に深刻になり得る。なぜならば、多くの静電防止材料は時間とともにその効力を失うからである。
【0018】
一般に、静電荷は、表面抵抗率(オーム/□で測定)及び電荷レベルに関連する。画像形成材料のいずれの層にも静電荷制御剤(又は静電防止剤)を含むことができる一方、表面抵抗率を低減するか又は電荷レベルを低下させることにより、静電荷の蓄積を防止することができる。これらの結果は普通、保護上塗り層のような表面層内に電荷制御剤を含むことにより達成することができる。熱処理可能な材料の場合、支持体の、画像形成層とは反対側に位置する裏層内に、電荷制御剤を使用することができる。表面抵抗率を低減するために採用される別のアプローチは、導電性粒子を内蔵する「埋込み型」導電性層を含むことである。
【0019】
静電荷制御のために無機及び有機両方の種々様々な電荷制御剤が考案され使用されており、多くの刊行物にこのような電荷制御剤が記載されている。米国特許第5,340,676号明細書(Anderson他)、同第6,464,413号明細書(Oyamada)、同第5,368,995号明細書(Christian他)、米国特許第5,731,119号明細書(Eichorst他)、及び同第5,457,013号明細書(Christian他)に、導電性層内の金属酸化物が記載されている。
【0020】
米国特許第6,355,405号明細書(Ludemann他)には、支持体のいずれかの側に極めて薄い付着促進層を含む熱現像可能な材料が記載されている。これらの付着促進層は、ポリマーと、付着を促進するための他の化合物との特定の混合物を含み、「キャリヤ」層としても知られている。
【0021】
米国特許第6,689,546号明細書(LaBelle他)には、非針状金属アンチモン酸塩ナノ粒子を40〜55%(総乾燥重量を基準とする)の量で含む裏側導電性層を含有する熱現像可能な材料が記載されている。同時係属中の同一譲受人による米国特許出願第10/930,428号明細書(Ludemann, LaBelle, Koestner, Hefley, Bhave, Geisler, 及びPhilipにより2004年8月31日付けで出願)には、熱現像可能な材料に有用な、バインダーに対する金属アンチモン酸塩の比が高い導電性層も記載されている。同時係属中の同一譲受人による米国特許出願第10/930,438号明細書(Ludemann, LaBelle, Philip, Koestner, 及びBhaveにより2004年8月31日付けで出願)には、1種又は2種以上のバインダー・ポリマー中に非針状金属アンチモン酸塩ナノ粒子を含む埋込み型裏側導電性層、及び非画像形成性裏側上塗り層が記載されている。
【0022】
導電性アンチモン酸亜鉛を含有する商品が、Nissan Chemical Industriesによって、CELNAX(商標)の商品名で販売されている。これらの製品は、メタノールを含有するヒドロゾル又はオルガノゾル中のコロイド状アンチモン酸亜鉛複酸化物の分散体である。この分散体は、有機溶剤中で樹脂バインダーと配合されると透明静電防止塗膜を形成する。米国特許第6,689,546号明細書(上記)に記載されているように、この製品を使用した裏側導電性層配合物は、種々の有機溶剤から塗布することができ、メチルエチルケトンが最も広く使用される溶剤である。裏側導電性層上に配置される保護上塗り層も、有機溶剤から塗布され、やはりこの場合もメチルエチルケトンが最も広く使用される溶剤である。
【0023】
制御されたサイズの金属酸化物から成る「クラスター」を含有する導電性配合物を使用することを見いだすことにより、この技術分野において有意な進歩がもたらされた。この概念は、同時係属中の同一譲受人による米国特許出願第10/978,205号明細書(Ludemann, LaBelle, Koestner, 及びChenにより2004年10月29日付けで出願)に記載されているような熱画像形成性材料における「埋込み型」裏側導電性層内で、例外的な導電率を可能にする。
【0024】
しかし、特に熱現像可能な画像形成材料の裏側に「埋込み型」導電性層を使用することにより、静電荷を低減するためのより効率的でより低コストの方法を見いだすことが、この産業分野において引き続き必要である。また、商業的なアンチモン酸亜鉛分散体は高価であり、また、より少ない量の導電性材料、及びより薄い導電性層塗膜を使用して同じ静電防止性能を達成することも必要である。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、 バインダー、及び反応するように組み合わされた、非感光性の被還元性銀イオン源と、前記非感光性の被還元性銀イオン源のための還元剤組成物とを含む1つ又は2つ以上の熱現像可能な画像形成層を、支持体の一方の側に有し、そして
該支持体の裏側に配置された、1種又は2種以上のバインダー・ポリマー中に導電性金属酸化物を含む非画像形成性裏側導電性層、及び該裏側導電性層上に直接に配置された、1種又は2種以上の皮膜形成ポリマーを含む上塗り層を、
有する支持体を含んで成る熱現像可能な材料であって、
該裏側導電性層及び該上塗り層が、同じか又は異なる有機溶剤から同時に塗布されており、
該上塗り層を塗布するために使用される該有機溶剤が、当該溶剤混合物の10重量%超〜最大90重量%の量のアルコールを含む有機溶剤混合物であり、
該裏側導電性層の正規化平均ギャップ密度が、該上塗り層を塗布するために使用される有機溶剤がアルコールを含有しない場合の該裏側導電性層の正規化平均ギャップ密度を少なくとも20%上回る増大を示す、
熱現像可能な材料を提供する。
【0026】
好ましい態様の場合、金属酸化物は粒子又はクラスターとして存在しており、そして:
1) 裏側導電性層の水電極抵抗率が、21.1℃及び50%相対湿度で測定して、1×1012オーム/□以下であり、
2) 裏側導電性層内の1種又は2種以上のバインダー・ポリマーの総量が、少なくとも25重量%であり、
3) 導電性金属酸化物が、2 g/m2未満の量で存在しており、
4) 裏側導電性層の正規化平均ギャップ密度が、少なくとも0.06(ギャップ/μm3)/(mg/ft2)[0.65(ギャップ/μm3)/(mg/m2)]であり、ギャップが、導電性粒子又はクラスターの間で少なくとも0.25 μmであり、そして
5) 裏側導電性層の正規化平均金属酸化物クラスター・サイズ分布が少なくとも0.012(μm)/(mg/ft2)[0.13 μm/(mg/m2)]である。
【0027】
加えて、本発明のフォトサーモグラフィ材料は、バインダー、及び、反応するように組み合わされた、感光性ハロゲン化銀と、非感光性の被還元性銀イオン源と、該非感光性の被還元性銀イオン源のための還元剤組成物とを含む1つ又は2つ以上の熱現像可能な画像形成層を、支持体の一方の側に有し、そして
該支持体の裏側に配置された、
a) 1つ又は2つ以上の皮膜形成ポリマーを含む上塗り層、及び
b) 該支持体と該上塗り層との間に挟まれて該支持体に該上塗り層を直接に付着させる、該支持体に対する該裏側導電性層の直接的な付着を促進するのに役立つ第1ポリマーと該第1ポリマーとは異なっており且つ該第1ポリマーと単一相混合物を形成する第2ポリマーとを含む2種又は3種以上のポリマーの混合物中に非針状金属アンチモン酸塩から成る粒子又はクラスターを含んで成る、非画像形成性裏側導電性層を
有する支持体を含んで成るフォトサーモグラフィ材料であり、
該裏側導電性層及び該上塗り層は、同じか又は異なる有機溶剤から同時に塗布されており、
該上塗り層のための該有機溶剤は、該1種又は2種以上の皮膜形成ポリマーが室温で可溶性である有機溶剤混合物であり、該有機溶剤混合物は、該有機溶剤混合物の20〜60重量%の量のアルコールを含み、そして、
該裏側導電性層の正規化平均ギャップ密度は、該上塗り層を塗布するために使用される有機溶剤がアルコールを含有しない場合の該裏側導電性層の正規化平均ギャップ密度を少なくとも20%上回る増大を示す。
【0028】
さらに、この材料は、下記特徴を有することができ、すなわち:
1) 裏側導電性層の水電極抵抗率が、21.1℃及び50%相対湿度で測定して、1×1012オーム/□以下であり、
2) 裏側導電性層内の2種又は3種以上のポリマーの混合物の総量が、少なくとも25重量%であり、
3) 非針状金属アンチモン酸塩が、2 g/m2未満の量で存在しており、
4) 上塗り層の皮膜形成ポリマーと、裏側導電性層の第2ポリマーとが、同じか又は異なるポリビニルアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、セルロースポリマー、無水マレイン酸-エステルコポリマー、又はビニルポリマーであり、
5) 裏側導電性層の正規化平均ギャップ密度が、少なくとも0.06(ギャップ/μm3)/(mg/ft2)[0.65(ギャップ/μm3)/(mg/m2)]であり、ギャップが、導電性粒子又はクラスターの間で少なくとも0.25 μmであり、そして
6) 裏側導電性層の正規化平均金属酸化物クラスター・サイズ分布が少なくとも0.012(μm)/(mg/ft2)[0.13 μm/(mg/m2)]である、
ことを特徴とすることもできる。
【0029】
本発明はまた、バインダー、及び反応するように組み合わされた、非感光性の被還元性銀イオン源と、前記非感光性の被還元性銀イオン源のための還元剤組成物とを含む1つ又は2つ以上の熱現像可能な画像形成層を、一方の側に有する支持体を含んで成る熱現像可能な材料の製造方法であって、
非画像形成性裏側導電性層上に上塗り層を直接に提供するために、1種又は2種以上のバインダー・ポリマー中に導電性金属酸化物を含む非画像形成性裏側導電性配合物と、1種又は2種以上の皮膜形成ポリマーを含む上塗り層配合物との両方を、該支持体の裏側に同時に塗布することを含み、
該裏側導電性配合物と上塗り層配合物とが、同じか又は異なる有機溶剤から塗布され、
該上塗り層配合物のための該有機溶剤が、該1種又は2種以上の皮膜形成ポリマーが室温で可溶性である、当該有機溶剤混合物の10重量%超〜最大90重量%を占めるアルコールと、沸点130℃未満のケトン、エステル、エーテル、又はグリコールエーテルとの有機溶剤混合物である
熱現像可能な材料の製造方法を提供する。
【0030】
本発明はまた、
(A) 潜像を形成するために、本発明の材料に電磁線による像様露光し、
(B) 同時に又は続いて、潜像を現像して可視像にするために、露光されたフォトサーモグラフィ材料を加熱する、
ことを含む、可視像形成方法を提供する。
【0031】
本発明の別の方法の場合、可視像形成方法は、
(A') サーモグラフィ材料である本発明の熱現像可能な材料を熱画像形成する
ことを含む。
【0032】
これらの画像形成法は、ヒト又は動物の患者の医療診断を行うのに特に有用である。
【発明の効果】
【0033】
本発明は、より少ない量の導電性金属酸化物を使用して、埋込み型裏側金属酸化物の改善された導電率のための手段を提供する。本発明はまた、性能を損なうことなしに、より薄い裏側導電性層を塗布する可能性を提供する。我々は、上塗り層配合物のために独自の溶剤混合物を使用して、埋込み型裏側導電層上に非導電性上塗り層を同時に塗布することにより、これらの利点を見いだした。具体的には、我々は、上塗り層の皮膜形成バインダーが室温で可溶性であるアルコールを含む溶剤混合物から、非導電性上塗り層を塗布すべきであることを見いだした。アルコールは、溶剤混合物の10重量%超〜最大90重量%を占める。
【0034】
加えて、上塗り層内にアルコールを内蔵すると、塗布された金属酸化物の正規化平均ギャップ密度は、少なくとも0.04(ギャップ/μm3)/(mg/ft2)[0.43(ギャップ/μm3)/(mg/m2)]に増大する。これは、上塗り層を塗布するために使用される有機溶剤がアルコールを含有しない場合の裏側導電性層の正規化平均ギャップ密度と比較して20%〜50%増大することを意味する。
【0035】
好ましい態様において、導電性金属酸化物は、導電性層配合物が調製される剪断条件を制御することにより得られる、或る特定の制御されたサイズを有する「クラスター」として塗布用配合物中に存在する。この好ましい特徴の更なる詳細を下記に示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本明細書に記載された熱現像可能な材料は、サーモグラフィ材料及びフォトサーモグラフィ材料の両方である。下記の論議はしばしば、好ましいフォトサーモグラフィ態様に関するものであるが、適宜の画像形成用化学薬品及び特に非感光性の有機銀塩、還元剤、トナー、バインダー、及び当業者に知られている他の成分を使用して黒白又はカラー画像を提供するために、サーモグラフィ材料を同様に構成して使用し得ることが当業者には明らかである。サーモグラフィ材料及びフォトサーモグラフィ材料の両方において、本明細書中に記載される金属酸化物クラスターは、裏側の別個の埋込み型導電性(「静電防止」)層内に内蔵される。
【0037】
本発明の熱現像可能な材料は、黒白又はカラーのサーモグラフィ及びフォトサーモグラフィ、並びに電子的に生成される黒白及びカラーのハードコピー記録に使用することができる。これらの材料は、マイクロフィルム用途、ラジオグラフィ画像形成(例えばデジタル医療用画像形成)、X線ラジオグラフィ、及び工業用ラジオグラフィにおいて使用することができる。さらに、これらの材料をグラフィックアート分野(例えばイメージセッティング、写真植字)、印刷版の製造、密着印画、複写(「デューピング」)及び校正に使用可能にするために、これらのフォトサーモグラフィ材料の350〜450 nmの吸光度は低い(0.5未満)ことが望ましい。
【0038】
熱現像可能な材料は、医療診断に使用するための可視光、X線、又は赤外線に応答して、ヒト又は動物の患者の画像を形成するのに特に有用である。このような用途の一例としては、胸部画像形成、マンモグラフィ用、歯科用画像形成、整形外科用画像形成、一般医療用ラジオグラフィ、治療用ラジオグラフィ、獣医用ラジオグラフィ、及びオートラジオグラフィが挙げられる。X線と一緒に使用される場合には、フォトサーモグラフィ材料は、1つ又は2つ以上の燐光増感スクリーンとの組み合わせで使用するか、フォトサーモグラフィ乳剤内部に燐光体が内蔵された状態で使用するか、又はこれらの組み合わせで使用することができる。このような材料は、X線によって直接に画像形成される場合、歯科用ラジオグラフィに特に有用である。材料は、X線の非医療用途、例えばX線リソグラフィ及び工業用ラジオグラフィにも有用である。
【0039】
フォトサーモグラフィ材料を、任意の好適な波長の輻射線に対して感光させることができる。従っていくつかの態様の場合、これらの材料は、電磁スペクトルの紫外線、可視光、赤外線、又は近赤外線波長で感光する。好ましい態様の場合、材料は、700 nmを上回る輻射線(おおむね最大1150 nm)に対して感光する。特定のスペクトル領域に対する感度を増大させることは、種々の分光増感色素を使用することにより行われる。
【0040】
フォトサーモグラフィ材料の場合、画像形成に必要な成分は、支持体の一方の側(「表側」)上の1つ又は2つ以上のフォトサーモグラフィ画像形成層内にあってよい。感光性光触媒(例えば感光性ハロゲン化銀)又は非感光性の被還元性銀イオン源、又はその両方を含有する層を、本明細書においてはフォトサーモグラフィ乳剤層と呼ぶ。光触媒と非感光性の被還元性銀イオン源とは、触媒的に近接した関係にあり、好ましくは同じ乳剤層内にある。
【0041】
同様に、本発明のサーモグラフィ材料の場合も、画像形成に必要な成分は、1つ又は2つ以上の層内にあってよい。非感光性の被還元性銀イオン源を含有する層は、本明細書中ではサーモグラフィ乳剤層と呼ばれる。
【0042】
材料は支持体の一方の側にだけ画像形成層を含有するので、材料の「裏側」(非乳剤側又は非画像形成側)上には、通常、本明細書中に記載された、金属酸化物粒子を含有する少なくとも1つの埋込み型裏側導電性層、及び少なくとも1つの上塗り層、並びに任意にはハレーション防止層、付着促進層、及び搬送可能化層を含む種々の非画像形成層が配置される。
【0043】
支持体の「表側」又は画像形成側又は乳剤側上には、保護トップ塗布層、プライマー層、中間層、不透明層、静電防止層、ハレーション防止層、アキュータンス層、補助層、及び当業者にとっては容易に明らかなその他の層を含む種々の非画像形成層を配置することもできる。
【0044】
熱現像可能な材料が、像様露光後又は像様露光と同時にほとんど水のない状態で下記のように熱現像されると、銀画像(好ましくは黒白銀画像)が得られる。
【0045】
定義
本明細書中に使用する場合:
熱現像可能な材料の説明中、成分をいう場合、その成分の少なくとも1種をいう(例えば、本明細書中に記載された溶剤として使用されるアルコール)。
【0046】
特に断りのない限り、「熱現像可能な材料」、「フォトサーモグラフィ材料」及び「サーモグラフィ材料」という用語が本明細書中に使用される場合、これらの用語は、本発明の材料を意味する。
【0047】
本明細書中に使用される、ほとんど水のない状態における加熱とは、存在する周囲水蒸気をほとんど上回らない状態で50℃〜250℃の温度で加熱することを意味する。「ほとんど水のない状態」という用語は、反応系が空気中の水とほぼ平衡しており、反応を誘発又は促進するための水が、材料外部からことさら又は積極的に供給されることはないことを意味する。このような状態は、T. H. James, The Theory of the Photographic Process(写真プロセスの理論), 第4版, Eastman Kodak Company, Rochester, NY, 1977, 第374頁に記載されている。
【0048】
「フォトサーモグラフィ材料」は、支持体と、少なくとも1つのフォトサーモグラフィ乳剤層又はフォトサーモグラフィ乳剤層セット(この場合、感光性ハロゲン化銀及び被還元性銀イオン源は1つの層内にあり、その他の所要成分又は添加剤は、所望の通りに、同じ層又は塗布された隣接層内に分配される)とを含む構造を意味する。これらの材料はまた、1種又は2種以上の画像形成成分は異なる層内にあるが、しかし「反応するように組み合わされた関係」にある多層構造を含む。例えば、1つの層が非感光性の被還元性銀イオン源を含むことができ、別の層が還元用組成物を含むことができるが、しかしこれら2つの反応性成分は、反応するように組み合わされた関係にある。
【0049】
「サーモグラフィ材料」は、感光性ハロゲン化銀触媒が意図的に添加又は形成されることがない点を除けば、同様に定義される。
【0050】
フォトサーモグラフィにおいて使用される場合、「像様露光する」又は「像様露光する」という用語は、電磁線を用いて潜像を提供する任意の露光手段によって材料が画像形成されることを意味する。このことは、例えば感光性材料上への投影によって画像が形成されるアナログ露光によるもの、並びに、走査レーザー線の変調のような、一度に1画素ずつ画像が形成されるデジタル露光によるものを含む。
【0051】
「像様暴露する」又は「像様暴露」という用語は、サーモグラフィにおいて使用される場合、熱を使用して画像を提供する任意の手段によって、材料が画像形成されることを意味する。このことは、例えばサーマル・ブランケット又は赤外線源を使用して、マスクを通して示差接触加熱することにより画像が形成されるアナログ露光、並びに、例えばサーマル印刷ヘッドの変調によって又は走査レーザー線による加熱によって、一度に1画素ずつ画像が形成されるデジタル露光を含む。
【0052】
「触媒的に近接した関係」又は「反応するように組み合わされた関係」は、反応性成分が同一層内又は隣接層内にあるので、これらの材料が熱画像形成中及び熱現像中に互いに容易に接触するようになっていることを意味する。
【0053】
「乳剤層」、「画像形成層」、「サーモグラフィ乳剤層」、又は「フォトサーモグラフィ乳剤層」は、感光性ハロゲン化銀(使用される場合)及び/又は非感光性の被還元性銀イオン源、又は還元用組成物を含有するサーモグラフィ又はフォトサーモグラフィ材料層を意味する。このような層は、追加の成分又は望ましい添加剤を含有することもできる。これらの層は通常、支持体の「表側」と呼ばれる側に位置する。
【0054】
「光触媒」とは、輻射線による露光の際に、フォトサーモグラフィ材料の引き続き行われる現像のための触媒として作用することができる化合物を提供する、ハロゲン化銀のような感光性化合物を意味する。
【0055】
「同時塗布」又は「ウェット・オン・ウェット」塗布は、複数の層が塗布されるときに、最初に塗布された層が乾燥する前に、最初に塗布された層上に後続の層が塗布されることを意味する。同時塗布は、支持体の表側、裏側、又は両側に層を適用するために使用することができる。
【0056】
本明細書中に使用される材料の多くは溶液として提供される。「活性成分」という用語は、試料中に含有される所望の材料の量又はパーセンテージを意味する。本明細書中に挙げられた全ての量は、特に断りのない限り、添加される活性成分の量である。
【0057】
「非感光性」は、意図的には感光性でないことを意味する。
センシトメトリックな用語であるDmin、Dmax、「フォトスピード」、「スピード」又は「写真スピード」(感度としても知られる)、吸光度(光学濃度)、及びコントラストは、画像形成分野の当業者に知られている従来通りの定義を有する。
【0058】
「透明」とは、さほどの散乱又は吸収なしに可視光又は画像形成用輻射線を透過させることができることを意味する。
【0059】
本明細書中に使用されるように「銀塩」という用語は、銀原子と一緒に結合を形成することができる有機分子を意味する。このように形成された化合物は技術的には銀配位化合物であるが、銀塩ともしばしば呼ばれる。
【0060】
「埋込み型層」という用語は、その層(例えば埋込み型裏側導電性層)上に配置された少なくとも1つの他の層があることを意味する。
【0061】
「塗布重量」、「塗膜重量」及び「被覆量」は同義であり、通常、単位面積当たりの重量、例えばg/m2で表される。
【0062】
「導電効率」は、所与の導電率を達成するために必要な導電性粒子の量を意味する。導電効率が高い試料ほど、所与の導電率を達成するために必要とする導電性粒子数は、比較試料よりも少ない。或いは、導電効率は、粒子数が同じ(すなわち同じ塗膜重量)状態で、より高い導電率を有する試料を意味することもできる。
【0063】
「平均クラスター・サイズ分布」は、埋込み型裏側導電性層内に存在する金属酸化物のクラスター化量の尺度である。
【0064】
「平均ギャップ密度」は、導電性種(粒子又はクラスター)間の距離の尺度である。
【0065】
当業者にはよく理解されているように、本明細書中に記載された化合物の場合、置換は許容されるだけではなくしばしば望ましいものであり、そして特に断りのない限り、本発明において使用される化合物に関して、種々の置換基が予想される。従って、化合物が所与の式の「構造を有する」と称されるときには、当該置換が言語によって特定して排除されない限り、式の結合構造又はその構造内部の示された原子を変えない任意の置換が式内部に含まれる。
【0066】
或る特定の置換基の論議及び列挙を簡単にする手段として、「基」という用語は、置換することができる化学種、並びにこのように置換されない化学種を意味する。このように、「アルキル基」という用語は、純粋な炭化水素アルキル鎖、例えばメチル、エチル、n-プロピル、t-ブチル、シクロヘキシル、イソ-オクチル、及びオクタデシルだけでなく、当業者に知られた置換基を担持するアルキル鎖、例えばヒドロキシ、アルコキシ、フェニル、ハロゲン原子(F、Cl、Br及びI)、シアノ、ニトロ、アミノ及びカルボキシをも含むものとする。例えば、アルキル基は、エーテル及びチオエーテル基(例えばCH3-CH2-CH2-O-CH2-及びCH3-CH2-CH2-S-CH2-)、ハロアルキル、ニトロアルキル、アルキルカルボキシ、カルボキシアルキル、カルボキサミド、ヒドロキシアルキル、スフホアルキル、及び当業者に容易に明らかな他の基を含む。他の活性成分と不都合に反応する置換基、例えば求電子性又は酸化性が極めて強い置換基はもちろん、不活性又は無害でないものとして当業者によって排除されることになる。
【0067】
リサーチディスクロージャ(Research Disclosure)(http://www.researchdisclosure.com)は、Kenneth Mason Publications Ltd, The Book Barn, Westbourne, Hampshire PO10 8RS, UKの刊行物である。これは、Emsworth Design Inc., 200 Park Avenue South, Room 1101, New York, NY 10003からも入手可能である。
【0068】
本発明の他の観点、利点、及び利益は、本出願において提供された詳細な説明、例及び特許請求の範囲から明らかである。
【0069】
光触媒
上述のように、フォトサーモグラフィ材料は、フォトサーモグラフィ乳剤層内に1種又は2種以上の光触媒を含む。有用な光触媒は、典型的には感光性ハロゲン化銀、例えば臭化銀、ヨウ化銀、塩化銀、臭ヨウ化銀、塩臭ヨウ化銀、塩臭化銀、及び当業者には容易に明らかなその他のハロゲン化銀である。適切な比率でハロゲン化銀の混合物を使用することもできる。臭化銀及びヨウ化銀が好ましい。より好ましいのは、任意の好適な量のヨウ化物が最大でほとんど100モル%ヨウ化物で存在するブロモヨウ化銀である。さらにより好ましくは、臭ヨウ化銀は、(総ハロゲン化銀量を基準として)少なくとも70モル%(好ましくは少なくとも85モル%、そして最も好ましくは少なくとも90モル%)の臭化物を含む。ハロゲン化物の残りは、ヨウ化物又は塩化物、又はその両方である。好ましくは、追加のハロゲン化物は、ヨウ化物である。臭化銀及びブロモヨウ化銀が最も好ましく、後者のハロゲン化銀は一般に最大10モル%のヨウ化銀を有する。
【0070】
水性フォトサーモグラフィ材料のいくつかの態様の場合、例えば米国特許出願公開第2004/0053173号明細書(Maskasky)に記載されているように、より多量の、具体的には20モル%からヨウ化物の飽和限界までの量のヨウ化物が、均質な感光性ハロゲン化銀粒子内に存在することができる。
【0071】
ハロゲン化銀粒子は、立方体状、八面体状、四面体状、斜方晶系、菱形、十二面体状、その他の多面体状、平板状、薄層状、双晶状、又は小板状の形態を含む任意の晶癖又は形態を有してよく、また、結晶のエピタキシャル成長を有してよい。所望の場合には、異なる形態を有する粒子の混合物を採用することができる。立方体状及び平板状の形態(又は両方)を有するハロゲン化銀粒子が好ましい。
【0072】
ハロゲン化銀粒子は、全体にわたってハロゲン化物の均一な比を有していてよい。ハロゲン化銀粒子は、例えば臭化銀とヨウ化銀との比が連続的に変化する漸変ハロゲン化物含量を有してもよく、又は、1種又は2種以上のハロゲン化銀から成る不連続的なコアと、1種又は2種以上の異なるハロゲン化銀から成る不連続的なシェルとを有するコア・シェル型から成っていてもよい。フォトサーモグラフィ材料に有用なコア・シェル型ハロゲン化銀粒子、及びこれらの材料の調製方法は、例えば米国特許第5,382,504号明細書(Shor他)に記載されている。イリジウム及び/又は銅でドープされたコア・シェル型及び非コア・シェル型粒子が、米国特許第5,434,043号明細書(Zou他)及び同第5,939,249号明細書(Zou)に記載されている。
【0073】
いくつかの事例において、米国特許第6,413,710号明細書(Shor他)に記載されているように、ヒドロキシテトラザインデン(例えば4-ヒドロキシ-6-メチル-1,3,3a,7-テトラザインデン)、又は少なくとも1つのメルカプト基を含むN-複素環式化合物(例えば1-フェニル-5-メルカプトテトラゾール)の存在において、感光性ハロゲン化銀粒子を調製することが、有用であり得る。
【0074】
感光性ハロゲン化銀は、非感光性の被還元性銀イオン源と触媒的に近接した関係にある限り任意の様式で、乳剤層に添加する(又は乳剤層内部に形成する)ことができる。
【0075】
ハロゲン化銀粒子がex-situ(別所)プロセスによって予め形成され、調製されることが好ましい。この技術を用いて、ハロゲン化銀の粒子サイズ、粒子サイズ分布、ドーパント・レベル及び組成をより正確に制御することができるので、ハロゲン化銀粒子及びその結果として生じるフォトサーモグラフィ材料の両方に、より特異的な特性を付与することができる。
【0076】
いくつかの配合物において、ex-situで調製されたハロゲン化銀の存在において、非感光性の被還元性銀イオン源を形成することが好ましい。このようなプロセスにおいて、被還元性銀イオン源、例えば長鎖脂肪酸カルボン酸銀塩(一般に銀「石鹸」と呼ばれる)は、予め形成されたハロゲン化銀粒子の存在において形成される。ハロゲン化銀の存在において被還元性銀イオン源が共沈されると、しばしば「予め形成された石鹸」と呼ばれる材料を提供するように、2種の材料のより緊密な混合物が提供される[例えば米国特許第3,839,049号明細書(Simons)参照]。
【0077】
いくつかの構造において、予め形成されたハロゲン化銀粒子が非感光性の被還元性銀イオン源に添加され、そしてこれと「物理的に混合」されることが好ましい。
【0078】
予め形成されたハロゲン化銀乳剤は、水性プロセス又は有機プロセスによって調製することができ、そして洗浄せずにおくか、又は可溶性塩を除去するために洗浄することができる。可溶性塩は、例えば、米国特許第2,618,556号明細書(Hewitson他)、同第2,614,928号明細書(Yutzy他)、同第2,565,418号明細書(Yackel)、同第3,241,969号(Hart他)、及び同第2,489,341号明細書(Waller他)に記載された任意の所望の手順によって除去することができる。
【0079】
有機銀塩の銀をハロゲン化銀に部分的に変換するために、ハロゲン化物含有化合物又はハロゲン含有化合物が有機銀塩に添加されるin-situ(現場)プロセスを用いるのも効果的である。無機ハロゲン化物(例えば臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、臭化カルシウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、又はこれらの混合物)、又は有機ハロゲン含有化合物(例えばN-ブロモスクシニミド又は臭化水素酸ピリジニウムペルブロミド)を使用することができる。このようなハロゲン化銀in-situ生成の詳細は、よく知られており、例えば米国特許第3,457,075号明細書(Morgan他)に記載されている。
【0080】
予め形成されたハロゲン化銀及びin-situ生成されたハロゲン化銀の両方の混合物を使用することが特に効果的である。予め形成されたハロゲン化銀は好ましくは、予め形成された石鹸中に存在する。
【0081】
ハロゲン化銀及び有機銀塩を調製してこれらをブレンドする追加の方法が、リサーチディスクロージャ, 1978年6月, 第17029項、米国特許第3,700,458号明細書(Lindholm)及び同第4,076,539号明細書(Ikenoue他)、特開昭49-013224号公報(Fuji)、特開昭50-017216号公報(Fuji)、及び特開昭51-042529号公報(Fuji)に記載されている。
【0082】
画像形成用配合物において使用されるハロゲン化銀粒子の、最大で数マイクロメートル(μm)の平均直径は、これらの所望の用途に応じて変化することができる。カルボン酸銀塩を含有する予め形成された乳剤中で使用するための好ましいハロゲン化銀粒子は、平均粒子サイズ0.01〜1.5 μmの立方体状粒子であり、より好ましいのは、平均粒子サイズ0.03〜1.0 μmの立方体状粒子であり、そして最も好ましいのは、平均粒子サイズ0.03〜0.3 μmの立方体状粒子である。高速フォトサーモグラフィ用途のための好ましいハロゲン化銀粒子は、平均厚が少なくとも0.02 μm、最大0.10 μm(この値を含む)であり、等価円直径が少なくとも0.5 μm、最大8 μm(この値を含む)であり、そしてアスペクト比が5:1以上である平板状粒子である。より好ましいのは、平均厚が少なくとも0.03 μm、最大0.08 μm(この値を含む)であり、等価円直径が少なくとも0.75 μm、最大6 μm(この値を含む)であり、そしてアスペクト比が少なくとも10:1である平板状粒子である。
【0083】
感光性ハロゲン化銀粒子の平均粒子サイズは、これらの粒子が球体の場合には平均直径によって表現され、これらの粒子が立方体形状又はその他の非球体形状の場合には、投影画像に対応する等価円の直径の平均によって表現される。粒子サイズ測定法が、「Particle Size Analysis(粒子サイズ分析)」, ASTM Symposium on Light Microscopy, R.P. Loveland, 1955, 第94-122頁、及びC. E. K. Mees 及びT. H. James, The Theory of the Photographic Process, 第3版, Macmillan, New York, 1966, 第2章に記載されている。粒子サイズ測定値は、粒子の投影面積又は直径の概算値で表すことができる。これらの測定値は、当該粒子の形状が実質的に均一ならば、相応に正確な結果をもたらす。
【0084】
1種又は2種以上の感光性ハロゲン化銀は、好ましくは、非感光性の被還元性銀イオン源1モル当たり、0.005〜0.5モル、より好ましくは0.01〜0.25モル、最も好ましくは0.03〜0.15モルの量で存在する。
【0085】
化学増感
感光性ハロゲン化銀は、硫黄、テルリウム又はセレンを含有する任意の有用な化合物を使用して、化学増感することができ、或いは、金、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム又はイリジウムを含有する化合物、又はこれらの組み合わせ、還元剤、例えばハロゲン化錫、又はこれらのうちのいずれかの組み合わせを含んでよい。これらの材料の詳細は、例えば、T. H. James, The Theory of the Photographic Process, 第4版, Eastman Kodak Company, Rochester, NY, 1977, 第5章, 第149-169頁に記載されている。好適なコンベンショナルな化学増感処置は、米国特許第1,623,499号明細書(Sheppard他)、同第2,399,083号明細書(Waller他)、同第3,297,447号明細書(McVeigh)、同第3,297,446号明細書(Dunn)、同第5,049,485号明細書(Deaton)、同第5,252,455号明細書(Deaton)、同第5,391,727号明細書(Deaton)、同第5,912,111号明細書(Lok他)、同第5,759,761号明細書(Lushington他)、及び欧州特許出願公開第0 915 371号明細書(Lok他)にも記載されている。
【0086】
米国特許第5,691,127号明細書(Daubendiek他)(本明細書中に引用する)に記載されたメルカプトテトラゾール及びテトラアジンデンを、平板状ハロゲン化銀粒子のための好適な添加剤として使用することもできる。
【0087】
米国特許第6,368,779号明細書(Lynch他)に記載されたものを含む、或る特定の置換型及び無置換型チオ尿素化合物を、化学増感剤として使用することができる。
【0088】
さらに他の有用な化学増感剤は、米国特許第6,699,647号明細書(Lynch他)に記載された或る特定のテルリウム含有化合物、及び米国特許第6,620,577号明細書(Lynch他)に記載された或る特定のセレン含有化合物を含む。上記明細書を本明細書中に引用する。
【0089】
米国特許第6,423,481号明細書(Simpson他)(本明細書中に引用する)に記載されているように、金(III)含有化合物と、硫黄、テルリウム、セレンを含有する化合物との組み合わせも、化学増感剤として有用である。
【0090】
加えて、米国特許第5,891,615号明細書(Winslow他)の教示に従って、酸化性環境においてハロゲン化銀粒子上で硫黄含有化合物を分解することができる。このように使用することができる硫黄含有化合物の例は、硫黄含有分光増感色素を含む。酸化環境において分解することができる他の有用な硫黄含有化学増感化合物は、同時係属中の同一譲受人による米国特許出願第10/731,251号明細書(Simpson, Burleva, 及びSakizadehにより2003年12月9日付けで出願)に記載されたジフェニルホスフィンスルフィド化合物である。
【0091】
化学増感剤は、一般にハロゲン化銀粒子の平均サイズに依存するコンベンショナルな量で存在することができる。一般に総量は、平均サイズ0.01〜2 μmのハロゲン化銀粒子の場合、総銀量の1モル当たり少なくとも10-10モルであり、そして好ましくは、総銀量の1モル当た10-8モル〜10-2モルである。
【0092】
分光増感
感光性ハロゲン化銀は、紫外線、可視光及び/又は赤外線に対するハロゲン化銀の感光度(すなわち300〜1400 nmの感光度)を高めることが知られている1種又は2種以上の分光増感色素で分光増感することができる。採用可能な増感色素の一例としては、シアニン色素、メロシアニン色素、複合シアニン色素、複合メロシアニン色素、ホロポラー・シアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素及びヘミオキサノール色素が挙げられる。分光増感色素は、フォトサーモグラフィ乳剤の化学的な仕上げ時における任意の段階で添加することができるが、しかし一般には、化学増感が達成された後に添加される。
【0093】
好適な増感色素、例えば、米国特許第3,719,495号明細書(Lea)、同第4,396,712号明細書(Kinoshita他)、同第4,439,520号明細書(Kofron他)、同第4,690,883号明細書(Kubodera他)、同第4,840,882号明細書(Iwagaki他)、同第5,064,753号明細書(Kohno他)、同第5,281,515号明細書(Delprato他)、同第5,393,654号明細書(Burrows他)、同第5,441,866号明細書(Miller他)、同第5,508,162号明細書(Dankosh)、同第5,510,236号明細書(Dankosh)、同第5,541,054号明細書(Miller他)、特開2000-063690号公報(Tanaka他)、同2000-112054号公報(Fukusaka他)、同2000-273329号公報(Tanaka他)、同2001-005145号公報(Arai他)、同2001-064527号公報(Oshiyama他)、及び同2001-154305号公報(Kita他) に記載されているものを、本発明の実施に使用することができる。これらの刊行物の全てを本明細書中に引用する。リサーチディスクロージャ、1989年12月、第308119項、セクションIV、及びリサーチディスクロージャ、1994年、第36544項、セクションVにも、有用な分光増感色素が記載されている。
【0094】
分光増感色素の特定の組み合わせに関する教示はまた、米国特許第4,581,329号明細書(Sugimoto他)、同第4,582,786号明細書(Ikeda他)、同第4,609,621号明細書(Sugimoto他)、同第4,675,279号明細書(Shuto他)、同第4,678,741号明細書(Yamada他)、同第4,720,451号明細書(Shuto他)、同第4,818,675号明細書(Miyasaka他)、同第4,945,036号明細書(Arai他)、及び同第4,952,491号明細書(Nishikawa他)にも提供されている。
【0095】
米国特許第4,524,128号明細書(Edwards他)、特開2001-109101号公報(Adachi)、同2001-154305号公報(Kita他)、及び同2001-183770号公報(Hanyu他)(すべて本明細書に引用する)に記載されているように、光又は熱の作用により色を失う分光増感色素も有用である。
【0096】
各色素を単独で使用することにより達成可能な感度の和よりも著しく高い感度を得るように、超色増感の目的で色素を選択することができる。
【0097】
添加される分光増感色素の適量は一般に、ハロゲン化銀1モル当たり、約10-10〜10-1モルであり、好ましくは約10-7〜10-2モルである。
【0098】
非感光性の被還元性銀イオン源
熱現像可能な材料に使用される非感光性の被還元性銀イオン源は、被還元性銀(I)イオンを含有する銀-有機化合物である。このような化合物は一般に、光に対して比較的安定であり、そして、露光された光触媒(フォトサーモグラフィ材料中で使用される場合には、例えばハロゲン化銀)及び還元剤組成物の存在において50℃以上に加熱されると、銀画像を形成する銀有機配位子の銀塩である。
【0099】
主要な有機銀塩は、しばしば脂肪族カルボン酸銀塩(下記)である。脂肪族カルボン酸銀塩の混合物は、混合物が少なくともベヘン酸銀を含む場合に特に有用である。
【0100】
有用なカルボン酸銀塩は、長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩を含む。脂肪族カルボン酸は一般に、炭素原子数10〜30、好ましくは15〜28の脂肪族鎖を有する。このような好ましい銀塩の例は、ベヘン酸銀、アラキン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプリン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、マレイン酸銀、フマル酸銀、酒石酸銀、フロ酸銀、リノレン酸銀、酪酸銀、樟脳酸銀、及びこれらの混合物を含む。最も好ましくは、少なくともベヘン酸銀が単独で、又は他のカルボン酸銀塩と一緒に使用される。
【0101】
上記カルボン酸銀塩以外の銀塩を使用することもできる。このような銀塩は、米国特許第3,330,663号明細書(Weyde他)に記載されているような、チオエーテル基を含有する脂肪族カルボン酸の銀塩、米国特許第5,491,059号明細書(Whitcomb)に記載されているような、(炭化水素基上の)α-位置又は(芳香族基上の)オルト-位置にエーテル又はチオエーテル結合、又は立体障害置換を内蔵する炭化水素鎖を含む可溶性カルボン酸銀塩、ジカルボン酸銀塩、米国特許第4,504,575号明細書(Lee)に記載されているようなスルホン酸銀塩、欧州特許出願公開第0 227 141号明細書(Leenders他)に記載されているようなスルホ琥珀酸銀塩、芳香族カルボン酸銀塩(例えば安息香酸銀)、例えば米国特許第4,761,361号明細書(Ozaki他)及び同第4,775,613号明細書(Hirai他)に記載されているようなアセチレンの銀塩、米国特許第4,123,274号明細書(Knight他)及び同第3,785,830号明細書(Sullivan他)に記載されているような、メルカプト又はチオン基及び誘導体を含有する複素環式化合物の銀塩を含む。
【0102】
銀半石鹸、例えば、アンモニウム又は商業的に入手可能な脂肪カルボン酸のアルカリ金属塩の水溶液からの沈澱により、又は銀石鹸に遊離脂肪酸を添加することにより調製される、ブレンド中14.5重量%が銀固形分であると分析される、カルボン酸銀塩とカルボン酸との等モル・ブレンドを使用するのも便利である。
【0103】
銀石鹸乳剤を形成するのに用いられる方法は当業者によく知られており、リサーチディスクロージャ, 1983年4月, 第22812項、リサーチディスクロージャ, 1983年10月, 第23419項、米国特許第3,985,565号明細書(Gabrielson他)、及び上に引用した参考文献に開示されている。
【0104】
非感光性の被還元性銀イオン源は、米国特許第6,355,408号明細書(Whitcomb他)に記載されているようなコア・シェル型銀塩であってもよい。銀塩のうちの1つがカルボン酸銀塩である限り、コアは1種又は2種以上の銀塩を有し、そしてシェルは1種又は2種以上の異なる銀源を有する。
【0105】
他の有用な非感光性の被還元性銀イオン源は、米国特許第6,472,131号明細書(Whitcomb)(本明細書中に引用する)に記載されているような2種の異なる銀塩を含む銀二量体化合物である。
【0106】
さらに別の有用な非感光性の被還元性銀イオン源は、1種又は2種以上の感光性ハロゲン化銀、又は1種又は2種以上の非感光性無機金属塩又は銀非含有有機塩を含む一次コアと、一次コアを少なくとも部分的に覆うシェルとを含む銀コア・シェル化合物であり、シェルは1種又は2種以上の非感光性銀塩を含み、これらの銀塩のそれぞれは有機銀配位子を含む。このような化合物は、米国特許第6,802,177号明細書(Bokhonov他)に記載されている。
【0107】
有機溶剤系サーモグラフィ及びフォトサーモグラフィ材料中で特に有用な有機銀塩は、カルボン酸銀塩(脂肪族及び芳香族双方のカルボン酸塩)、銀トリアゾレート、スルホン酸銀塩、スルホ琥珀酸銀塩、及び銀アセチリドを含む。炭素原子数15〜28の長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩が特に好ましい。
【0108】
水性のサーモグラフィ及びフォトサーモグラフィ材料中で特に有用な有機銀塩は、イミノ基を含有する化合物の銀塩を含む。これらの化合物の好ましい一例としては、ベンゾトリアゾール及びこれらの置換型誘導体の銀塩(例えば、銀メチルベンゾトリアゾール及び銀5-クロロベンゾトリアゾール)、1,2,4-トリアゾール又は1-H-テトラゾール、例えば米国特許第4,220,709号明細書(deMauriac)に記載されているようなフェニルメルカプトテトラゾールの銀塩、及び、米国特許第4,260,677号明細書(Winslow他)に記載されているようなイミダゾール及びイミダゾール誘導体の銀塩が挙げられる。このタイプの特に有用な銀塩は、ベンゾトリアゾール、その置換型誘導体の銀塩である。水性のサーモグラフィ及びフォトサーモグラフィ配合物中では、ベンゾトリアゾールの銀塩が特に好ましい。
【0109】
有用な窒素含有有機銀塩及びこれらの製造方法が、同時係属中の同一譲受人による米国特許出願第10/826,417号明細書(Zou及びHasbergにより2004年4月16日付けで出願)に記載されている。このような銀塩(具体的には銀ベンゾトリアゾール)はロッド様形状であり、そしてその平均アスペクト比は少なくとも3:1であり、そして粒子直径の幅指数は1.25以下である。銀塩粒子の長さは一般に1 μm未満である。また、イミノ基を含有する窒素含有複素環化合物の銀塩とメルカプトトリアゾールの銀塩とを含む銀塩トナー共沈ナノ結晶も有用である。このような共沈塩は、同時係属中の同一譲受人による米国特許出願第10/935,384号明細書(Hasberg、Lynch、Chen-Ho、及びZouにより2004年9月7日付けで出願)に記載されている。これらの特許出願の両方を本明細書中に引用する。
【0110】
1種又は2種以上の非感光性の被還元性銀イオン源は、乳剤層の総乾燥重量を基準として、好ましくは約5 %〜約70 %の量で、より好ましくは約10 %〜約50 %の量で存在する。別の言い方をすれば、被還元性銀イオン源の量は一般に、乾燥フォトサーモグラフィ材料の約0.001〜約0.2モル/m2 (好ましくは約0.01〜約0.05モル/m2の量)である。
【0111】
サーモグラフィ及びフォトサーモグラフィ材料中の(全ての銀源から得られる)銀の総量は、一般に少なくとも0.002モル/m2であり、好ましくは約0.01〜約0.05モル/m2である。
【0112】
還元剤
被還元性銀イオン源のための還元剤(又は、2種又は3種以上の成分を含む還元剤組成物)は、銀(I)イオンを金属銀に還元することのできる任意の材料(好ましくは有機材料)であってよい。「還元剤」は「現像剤」又は「現像主薬」と呼ばれることがある。
【0113】
銀ベンゾトリアゾール銀源が使用される場合、アスコルビン酸還元剤が好ましい。「アスコルビン酸」還元剤(現像剤又は現像主薬とも呼ばれる)とは、アスコルビン酸、その複合体及びその誘導体を意味する。「アスコルビン酸」還元剤はアスコルビン酸、その複合体及びその誘導体を意味する。アスコルビン酸還元剤は、米国特許第5,236,816号明細書(Purol他)及びこの明細書に引用された参考文献を含む相当数の刊行物に記載されている。有用なアスコルビン酸現像主薬は、アスコルビン酸及びこれらの類似体、異性体、及び誘導体を含む。このような化合物の一例としては、欧州特許出願公開第0 585 792号明細書(Passarella他)、同第0 573 700号明細書(Lingier他)、同第0 588 408号明細書(Hieronymus他)、米国特許第5,089,819号明細書(Knapp)、米国特許第2,688,549号明細書(James他)、同第5,278,035号明細書(Knapp)、同第5,384,232号明細書(Bishop他)、同第5,376,510号明細書(Parker他)、米国特許第5,498,511号明細書(Yamashita他)、特開平7-56286号公報(Toyoda)、及びリサーチディスクロージャ、第37152項、1995年3月に記載されているような、D-又はL-アスコルビン酸、これらの糖型誘導体(例えばソルボアスコルビン酸、γ-ラクトアスコルビン酸、6-デソキシ-L-アスコルビン酸、L-ラムノアスコルビン酸、イミノ-6-デソキシ-L-アスコルビン酸、グルコアスコルビン酸、フコアスコルビン酸、グルコヘプトアスコルビン酸、マルトアスコルビン酸、L-アラボアスコルビン酸)、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、イソアスコルビン酸(又はL-エリトロアスコルビン酸)、及びこれらの塩(例えばアルカリ金属、アンモニウム又は当業者に知られているその他のもの)、エンジオール型アスコルビン酸、エナミノール型アスコルビン酸、チオエノール型アスコルビン酸、及びエナミン-チオール型アスコルビン酸が挙げられる。所望の場合には、これらの現像主薬の混合物を使用することもできる。
【0114】
加えて、同時係属中の同一譲受人による米国特許出願第10/764,704号明細書(Ramsden、Lynch、Skoug、及びPhilipにより2004年1月26日付けで出願)に記載されているアスコルビン酸還元剤も有用である。また、同時係属中の同一譲受人による米国特許出願第10/935,645号明細書(Brick、Ramsden、及びLynchにより2004年9月7日付けで出願)に記載されている粒子成長改質剤の存在において調製される或る特定のアスコルビン酸エステルの固形粒子分散体も有用である。
【0115】
カルボン酸銀塩の銀源がフォトサーモグラフィ材料中に使用される場合、1種又は2種以上のヒンダード・フェノール還元剤が好ましい。いくつかの事例において、還元剤組成物は、2種又は3種以上の成分、例えばヒンダード・フェノール現像剤、及び、下記の種々のクラスの共現像剤及び還元剤から選ぶことができる共現像剤を含む。コントラスト促進剤のさらなる添加に関与する三元現像剤混合物も有用である。このようなコントラスト促進剤は、下記の種々のクラスの還元剤から選ぶことができる。
【0116】
「ヒンダード・フェノール還元剤」は、所与のフェニル環上に唯1つのヒドロキシ基を含有し、そして、このヒドロキシ基に対してオルトに配置された少なくとも1つの追加の置換基を有する化合物である。
【0117】
ヒンダード・フェノールの1タイプは、ヒンダード・フェノール及びヒンダード・ナフトールを含む。
【0118】
ヒンダード・フェノール還元剤の別のタイプは、ヒンダード・ビスフェノールである。これらの化合物は、それぞれが異なるフェニル環上に配置された2つ以上のヒドロキシ基を含有する。このタイプのヒンダード・フェノール還元剤は、例えばビナフトール(すなわちジヒドロキシビナフチル)、ビフェノール(すなわちジヒドロキシビフェニル)、ビス(ヒドロキシナフチル)メタン、ビス(ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、及びビス(ヒドロキシフェニル)チオエーテルを含む。これらはそれぞれ、追加の置換基を有してよい。
【0119】
好ましいヒンダード・フェノール還元剤は、ビス(ヒドロキシ-フェニル)メタン、例えばビス(2-ヒドロキシ-3-t-ブチル-5-メチルフェニル)メタン(CAO-5)、1,1'-ビス(2-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,5,5-トリメチルヘキサン(NONOX(商標)又はPERMANAX WSO)、及び1,1'-ビス(2-ヒドロキシ-3,4-ジメチルフェニル)-イソブタン(LOWINOX(商標)221B46)である。所望の場合には、ヒンダード・フェノール還元剤の混合物を使用することができる。
【0120】
使用することができる追加のクラスの還元剤は、米国特許第5,464,738号明細書(Lynch他)に記載されたスルホニルヒドラジドを含む置換型ヒドラジンである。さらに別の有用な還元剤は、例えば米国特許第3,074,809号明細書(Owen)、同第3,094,417号明細書(Workman)、同第3,080,254号明細書(Grant, Jr.)、同第3,887,417号明細書(Klein他)、及び米国特許第5,981,151号明細書(Leenders他)に記載されている。
【0121】
使用することができる追加のクラスの還元剤は、アミドキシム、アジン、脂肪族カルボン酸アリールヒドラジドとアスコルビン酸との組み合わせ、レダクトン及び/又はヒドラジン、ピペリジノヘキソース・レダクトン又はホルミル-4-メチルフェニルヒドラジン、ヒドロキサム酸、アジンとスルホナミドフェノールとの組み合わせ、α-シアノフェニル-酢酸誘導体、レダクトン、インダン-1,3-ジオン、クロマン、1,4-ジヒドロピリジン、及び3-ピラゾリドンを含む。
【0122】
例えば米国特許第6,387,605号明細書(Lynch他)に記載されているように、有用な共現像・還元剤を使用することもできる。共現像剤として使用することができる還元剤の追加のクラスは、米国特許第5,496,695号明細書(Simpson他)に記載されているようなトリチルヒドラジド及びホルミルフェニルヒドラジド、米国特許第5,654,130号明細書(Murray)に記載されているような2-置換型マロンジアルデヒド化合物、及び米国特許第5,705,324号明細書(Murray)に記載されているような4-置換型イソキサゾール化合物である。追加の現像剤が、米国特許第6,100,022号明細書(Inoue他)に記載されている。さらに別のクラスの共現像剤は、置換型アクリロニトリル化合物、例えば米国特許第5,635,339号明細書(Murray)でHET-01及びHET-02として、また米国特許第5,545,515号明細書(Murray他)でCN-01〜CN-13として同定された化合物を含む。
【0123】
いくつかのフォトサーモグラフィ材料において、特定の共現像剤とともに種々のコントラスト促進剤を使用することができる。有用なコントラスト促進剤の一例としては、ヒドロキシルアミン、アルカノールアミン、及び米国特許第5,545,505号明細書(Simpson)に記載されているようなフタルアミド酸アンモニウム化合物、例えば米国特許第5,545,507号明細書(Simpson他)に記載されているようなヒドロキサム酸化合物、例えば米国特許第5,558,983号明細書(Simpson他)に記載されているようなN-アシルヒドラジン化合物、及び米国特許第5,637,449号明細書(Harring他)に記載されているような水素原子供与体化合物が挙げられる。
【0124】
サーモグラフィ材料中のカルボン酸銀塩の銀源とともに使用される場合、好ましい還元剤は、同じ芳香核上にオルト又はパラの関係で少なくとも2つのヒドロキシ基を有する芳香族ジ-及びトリ-ヒドロキシ化合物である。例は、ヒドロキノン及び置換型ヒドロキノン、カテコール、ピロガロール、没食子酸及び没食子酸エステル(例えば没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピル)、及びタンニン酸である。
【0125】
特に好ましいのは、オルトの関係で2つ以下のヒドロキシ基を有するカテコール型還元剤である。
【0126】
1つの特に好ましいクラスのカテコール型還元剤は、ベンゼン核が2つ以下のヒドロキシ基によって置換されているベンゼン化合物であり、これらのヒドロキシ基は、核上の2,3-位置に存在し、そして核の1-位置に、カルボニル基によって核に結合された置換基を有する。このタイプの化合物は、2,3-ジヒドロキシ-安息香酸、及び2,3-ジヒドロキシ-安息香酸エステル(例えばメチル-2,3-ジヒドロキシ-ベンゾエート、及びエチル2,3-ジヒドロキシ-ベンゾエート)を含む。
【0127】
別の好ましいクラスのカテコール型還元剤は、ベンゼン核が、核上の3,4-位置に存在してカルボニル基によって核に結合された置換基を核の1-位置に有する2つ以下のヒドロキシ基によって置換されているベンゼン化合物である。このタイプの化合物は、例えば3,4-ジヒドロキシ-安息香酸、3-(3,4-ジヒドロキシ-フェニル)-プロピオン酸、3,4-ジヒドロキシ-安息香酸エステル(例えばメチル-3,4-ジヒドロキシ-ベンゾエート、及びエチル3,4-ジヒドロキシ-ベンゾエート)、3,4-ジヒドロキシ-ベンズアルデヒド、3,4-ジヒドロキシ-ベンゾニトリル、及びフェニル-(3,4-ジヒドロキシフェニル)ケトンを含む。このような化合物は例えば、米国特許第5,582,953号明細書(Uyttendaele他)に記載されている。
【0128】
さらに別の有用なクラスの還元剤は、米国特許第3,440,049号明細書(Moede)に写真タンニング剤として記載されたポリヒドロキシスピロ-ビス-インダン化合物を含む。
【0129】
ヒンダード・フェノール還元剤との組み合わせで、そしてさらに、1種又は2種以上の高コントラスト共現像主薬及び共現像・コントラスト促進剤との組み合わせで、芳香族ジ-及びトリヒドロキシ還元剤を使用することもできる。
【0130】
本明細書中に記載された還元剤(又はその混合物)は一般に、乳剤層の1〜10 %(乾燥重量)として存在する。多層構造において、還元剤が乳剤層以外の層に添加される場合、還元剤は約2〜15重量%という僅かに高い比率で存在することがより望ましい。共現像剤は一般に、乳剤層塗膜の約0.001 %〜約1.5 %(乾燥重量)の量で存在してよい。
【0131】
その他の添加物
熱現像可能な材料は、その他の添加剤、例えば貯蔵寿命安定剤、カブリ防止剤、コントラスト促進剤、現像促進剤、アキュータンス色素、処理後安定剤又は安定剤前駆体、熱溶剤(メルトフォーマーとしても知られる)、及び当業者には容易に明らかなその他の画像改質剤を含有することもできる。
【0132】
フォトサーモグラフィ材料の特性(例えばコントラスト、Dmin、スピード又はカブリ)をさらに制御するために、式Ar-S-M1及びAr-S-S-Arの1種又は2種以上の複素環式芳香族メルカプト化合物又は複素環式芳香族ジスルフィド化合物を添加することが好ましいことがあり、上記式中、M1は水素原子又はアルカリ金属原子を表し、Arは、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子又はテルリウム原子のうちの1種又は2種以上を含有する複素環式芳香族環又は縮合複素環式芳香族環を表す。好ましくは、複素環式芳香族環は、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、ベンゾチアゾール、ナフトチアゾール、ベンゾキサゾール、ナフトキサゾール、ベンゾセレナゾール、ベンゾテルラゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、チアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、トリアジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピリジン、プリン、キノリン又はキナゾリノンを含む。有用な複素環式芳香族メルカプト化合物が、欧州特許第0 559 228号明細書(Philip Jr.他)において赤外フォトサーモグラフィ材料のための超色増感剤として記載されている。
【0133】
複素環式芳香族メルカプト化合物が最も好ましい。好ましい複素環式芳香族メルカプト化合物の例は、2-メルカプト-ベンズイミダゾール、2-メルカプト-5-メチルベンズイミダゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、及び2-メルカプトベンゾキサゾール、及びこれらの混合物である。
【0134】
複素環式芳香族メルカプト化合物は一般に、乳剤層内の総銀量の1モル当たり少なくとも0.0001モル (好ましくは約0.001〜約1.0モル)の量で、乳剤層内に存在する。
【0135】
フォトサーモグラフィ材料はさらに、カブリの生成に対して保護することができ、また、貯蔵中の感度の損失に対して安定化することができる。単独又は組み合わせで使用することができる好適なカブリ防止剤及び安定剤は、米国特許第2,131,038号明細書(Brooker他)及び同第2,694,716号明細書(Allen)に記載されているようなチアゾリウム塩、米国特許第2,886,437号明細書(Piper)に記載されているようなアザインデン、米国特許第2,444,605号明細書(Hembach他)に記載されているようなトリアザインドリジン、米国特許第3,287,135号明細書(Anderson他)に記載されているようなウラゾール、米国特許第3,235,652号明細書(Kennard他)に記載されているようなスルホカテコール、英国特許第623,448号明細書(Carrol他)に記載されているようなオキシム、米国特許第2,839,405号明細書(Jones)に記載されているような多価金属塩、米国特許第3,220,839号明細書(Herz)に記載されているようなチウロニウム塩、米国特許第2,566,263号明細書(Trirelli)及び同第2,597,915号明細書(Damshroder)に記載されているようなパラジウム塩、白金塩、及び金塩を含む。
【0136】
好ましくは、フォトサーモグラフィ材料は、1種又は2種以上のポリハロ置換基、例えばジクロロ基、ジブロモ基、トリクロロ基及びトリブロモ基を含有するカブリ防止剤及び/又は安定剤として機能する1種又は2種以上のポリハロ化合物を含む。カブリ防止剤は、芳香族複素環式化合物及び炭素環式化合物を含む、脂肪族、脂環式又は芳香族化合物であってよい。特に有用なカブリ防止剤は、ポリハロ・カブリ防止剤、例えば-SO2C(X')3基(この式中、X'は同じか又は異なるハロゲン原子を表わす)を有するポリハロカブリ防止剤である。好ましい化合物は、米国特許第3,874,946号明細書(Costa他)、同第5,374,514号明細書(Kirk他)、同第5,460,938号明細書(Kirk他)、及び同第5,594,143号明細書(Kirk他)に記載されているような-SO2CBr3基を有する化合物である。このような化合物の一例としては、2-トリブロモメチルスルホニルキノリン、2-トリブロモメチルスルホニルピリジン、トリブロモメチルベンゼン、及びこれらの化合物の置換型誘導体が挙げられる。これらのポリハロ・カブリ防止剤がもし存在するならば、総銀量1モル当たり少なくとも0.005モル、好ましくは総銀量1モル当たり約0.02〜約0.10モル、より好ましくは総銀量1モル当たり0.029〜0.10モルの量で存在する。
【0137】
現像中に熱を加えると安定剤を放出することができる安定剤前駆体化合物を、例えば米国特許第5,158,866号明細書(Simpson他)、同第5,175,081号明細書(Krepski他)、同第5,298,390号明細書(Sakizadeh他)、及び同第5,300,420号明細書(Kenney他)に記載されているように使用することもできる。
【0138】
加えて、米国特許第6,171,767号明細書(Kong他)に記載されているように、ベンゾトリアゾールの或る特定の置換型スルホニル誘導体(例えばアルキルスルホニルベンゾトリアゾール及びアリールスルホニルベンゾトリアゾール)が、有用である場合がある。
【0139】
別の有用なカブリ防止剤/安定剤が、米国特許第6,083,681号明細書(Lynch他)に記載されている。さらに他のカブリ防止剤は、米国特許第5,028,523号明細書(Skoug)に記載されているような複素環式化合物の臭化水素酸塩(例えば臭化水素酸ピリジニウムペルブロミド)、米国特許第4,784,939号明細書(Pham)に記載されているようなベンゾイル酸化合物、米国特許第5,686,228号明細書(Murray他)に記載されているような置換型プロペンニトリル化合物、米国特許第5,358,843号明細書(Sakizadeh他)に記載されているようなシリル・ブロック型化合物、米国特許第6,143,487号明細書(Philip, Jr.他)に記載されているようなビニルスルホン、欧州特許出願公開第0 600 586号明細書(Philip, Jr.他)に記載されているようなジイソシアネート化合物、及び欧州特許出願公開第0 600 587号明細書(Oliff他)に記載されているようなトリブロモメチルケトンである。
【0140】
フォトサーモグラフィ材料は、例えば米国特許第3,438,776号明細書(Yudelson)、同第5,250,386号明細書(Aono他)、同第5,368,979号明細書(Freedman他)、同第5,716,772号明細書(Taguchi他)、及び同第6,013,420号明細書(Windender)に開示されたような1種又は2種以上の熱溶剤(又はメルトフォーマー)を含むこともできる。
【0141】
フォトサーモグラフィ材料中に塩基放出剤又は塩基前駆体を含むことが、しばしば有利である。代表的な塩基放出剤又は塩基前駆体は、グアニジニウム化合物、及び、米国特許第4,123,274号明細書(Knight他)に記載されているように、塩基を放出するがしかし写真ハロゲン化銀材料に不都合な影響を与えないことが知られているその他の化合物(例えばフェニルスルホニルアセテート)を含む。
【0142】
画像を改善する「トナー」又はこれらの誘導体は、熱現像可能な材料の強く望まれる成分である。トナー(「トーニング剤」としても知られる)は、画像形成層に添加されると、現像された銀画像の色を、黄色がかった橙色から茶色がかった黒又は濃い藍色にシフトし、且つ/又は現像速度を高める化合物である。一般に、本明細書中に記載された1種又は2種以上のトナーは、これが含まれる層の総乾燥重量を基準として、約0.01〜約10重量%、より好ましくは約0.1〜約10重量%の量で存在する。トナーは、フォトサーモグラフィ乳剤層内又は隣接する非画像形成層内に内蔵することができる。
【0143】
トナーとして有用な化合物は、米国特許第3,074,809号明細書(Owen)、同第3,080,254号明細書(Grant, Jr.)、同第3,446,648号明細書(Workman)、同第3,844,797号明細書(Willems他)、同第3,847,612号明細書(Winslow)、同第3,951,660号明細書(Hagemann他)、同第4,082,901号明細書(Laridon他)、同第4,123,282号明細書(Winslow)、同第5,599,647号明細書(Defieuw他)、及び英国特許第1,439,478号明細書(AGFA)に記載されている。
【0144】
フタラジン及びフタラジン誘導体[例えば米国特許第6,146,822号明細書(Asanuma他)に記載されたもの]、フタラジノン及びフタラジノン誘導体が、特に有用なトナーである。
【0145】
追加の有用なトナーは、例えば米国特許第3,832,186号明細書(Masuda他)、同第5,149,620号明細書(Simpson他)、同第6,165,704号明細書(Miyake他)、同第6,713,240号明細書(Lynch他)、同第6,841,343号明細書(Lynch他)に記載されているような置換型及び無置換型メルカプトトリアゾールである。
【0146】
また、米国特許第6,605,418号明細書(Ramsden他)に記載されたフタラジン化合物、米国特許第6,703,191号明細書(Lynch他)に記載されたトリアジンチオン化合物、及び米国特許第6,737,227号明細書(Lynch他)に記載された複素環式ジスルフィド化合物も有用である。これらの明細書すべてを本明細書中に引用する。
【0147】
さらに有用なのは、米国特許出願第10/935,384号明細書(上記)に記載された銀塩トナー共沈ナノ結晶である。
【0148】
フォトサーモグラフィ材料は、通常は「裏側」層内に内蔵された1種又は2種以上の画像安定化化合物を含むこともできる。このような化合物の一例としては、具体的には米国特許第6,599,685号明細書(Kong)に記載されているように、フタラジノン及びその誘導体、ピリダジン及びその誘導体、ベンゾキサジン及びベンゾキサジン誘導体、ベンゾチアジンジオン及びその誘導体、及びキナゾリンジオン及びその誘導体が挙げられる。その他の有用な裏側画像安定剤は、アントラセン化合物、クマリン化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、ナフタル酸イミド化合物、ピラゾリン化合物、又は例えば米国特許第6,465,162号明細書(Kong他)及び英国特許第1,565,043号明細書(Fuji Photo)に記載された化合物を含む。
【0149】
燐光体は、赤外線、可視光、又は紫外線を励起時に放射する材料であり、フォトサーモグラフィ材料中に内蔵することができる。特に有用な燐光体は、X線に対して感光し、そして主に紫外線、近紫外線、又は可視光スペクトル領域(すなわち100〜700 nm)において輻射線を発する。固有の燐光体は、自然の状態で(すなわち固有に)燐光を発する材料である。「活性化型」燐光体は、1種又は2種以上のドーパントが意図的に添加された、固有燐光体であってもなくてもよい基礎材料から構成された燐光体である。これらのドーパント又はアクチベーターは、燐光体を「活性化」し、そして燐光体に紫外線、又は可視光を放射させる。複数のドーパントを使用することができ、ひいては燐光体は「アクチベーター」及び「コアクチベーター」の両方を含むことになる。
【0150】
任意のコンベンショナル又は有用な燐光体を、単独で又は混合物中で使用することができる。例えば、蛍光増感スクリーンに関連する多数の参考文献、並びに、フォトサーモグラフィ材料に関する米国特許第6,440,649号明細書(Simpson他)及び同第6,573,033号明細書(Simpson他)には、有用な燐光体が記載されている。いくつかの特に有用な燐光体は主に、リン酸塩燐光体及びホウ酸塩燐光体として知られる「活性化型」燐光体である。これらの燐光体の例は、米国特許出願第10/826,500号明細書(Simpson, Sieber及びHansenによって2004年4月16日付け出願)に記載されているような、希土類リン酸塩、リン酸イットリウム、リン酸ストロンチウム、又はフルオロホウ酸ストロンチウム(セリウム活性化型希土類リン酸塩又はセリウム活性化型リン酸イットリウム、或いは、ユーロピウム活性化型フルオロホウ酸ストロンチウムを含む)である。
【0151】
1種又は2種以上の燐光体は、フォトサーモグラフィ材料中の総銀量の1モル当たり少なくとも0.1モル、好ましくは約0.5〜約20モルの量で、フォトサーモグラフィ材料中に存在することができる。上記のように、一般には、総銀量は少なくとも0.002 モル/m2である。燐光体は、支持体の一方又は両方の側に、任意の画像形成層内に内蔵することができるが、これらは、支持体の一方又は両方の側の感光性ハロゲン化銀と同じ層内にあることが好ましい。
【0152】
バインダー
感光性ハロゲン化銀(存在する場合)、非感光性の被還元性銀イオン源、還元剤組成物、及びその他の画像形成層添加剤は一般に、性質上概ね疎水性又は親水性である1種又は2種以上のバインダーと合体される。従って本発明の熱現像可能な材料を調製するために、水性又は有機溶剤系の配合物を使用することができる。いずれかのタイプ又は両方のタイプのバインダーの混合物を使用することもできる。バインダーが、主として疎水性の高分子材料から選択されることが好ましい(総バインダーの少なくとも50乾燥重量%)。
【0153】
典型的な疎水性バインダーの例は、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセテート、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、メタクリレートコポリマー、無水マレイン酸-エステルコポリマー、ブタジエン-スチレンコポリマー、及び当業者に容易に明らかなその他の材料を含む。コポリマー(ターポリマーを含む)もポリマーの定義に含まれる。ポリビニルアセタール(例えばポリビニルブチラール及びポリビニルホルマール)、及びビニルコポリマー(例えばポリビニルアセテート及びポリ塩化ビニル)が特に好ましい。特に好適なバインダーは、BUTVAR(商標) (Solutia, Inc., St. Louis, MO)の名称で、またPIOLOFORM(商標)(Wacker Chemical Company, Adrian, MI)の名称で入手可能なポリビニルブチラール樹脂である。
【0154】
親水性バインダー又は水分散性高分子ラテックスポリマーが配合物中に存在することもできる。有用な親水性バインダーの一例としては、タンパク質及びタンパク質誘導体、ゼラチン及びゼラチン様誘導体(硬化又は未硬化)、セルロース系材料、例えばヒドロキシメチルセルロース及びセルロース系エステル、アクリルアミド/メタクリルアミドポリマー、アクリル/メタクリルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ(ビニルラクタム)、スルホアルキルアクリレート又はメタクリレートのポリマー、加水分解ポリビニルアセテート、ポリアクリルアミド、多糖、及び、水性写真乳剤に使用するものとして周知のその他の合成型又は天然発生型ビヒクル(例えば上述のリサーチディスクロージャ、第38957項参照)が挙げられる。米国特許第5,620,840号明細書(Maskasky)及び同第5,667,955号明細書(Maskasky)に記載されているように、平板状ハロゲン化銀粒子のためのペプタイザーとして、カチオン性澱粉を使用することもできる。
【0155】
種々のバインダーのための硬化剤が所望の場合に存在してよい。有用な硬化剤がよく知られており、これらは欧州特許出願公開第0 600 586号明細書(Philip, Jr.他)に記載されているようなジイソシアネート化合物、米国特許第6,143,487号明細書(Philip, Jr.他)及び欧州特許出願公開第0 640 589号明細書(Gathmann他)に記載されているようなビニルスルホン化合物、米国特許第6,190,822号明細書(Dickerson他)に記載されているようなアルデヒド及び種々の他の硬化剤を含む。フォトサーモグラフィ材料中に使用される親水性バインダーは一般に、任意のコンベンショナルな硬化剤を使用して、部分的又は完全に硬化される。有用な硬化剤がよく知られており、例えばT. H. James, The Theory of the Photographic Process, 第4版, Eastman Kodak Company, Rochester, NY, 1977, 第2章、第77-8頁に記載されている。
【0156】
熱現像可能な材料の比率及び活性が特定の現像時間及び温度を必要とする場合、バインダーはこれらの条件に耐えることが可能であるべきである。疎水性バインダーを使用する場合には、バインダー(又はその混合物)は60秒間にわたって120℃でその構造完全性を分解又は損失しないことが好ましい。親水性バインダーを使用する場合には、バインダーは60秒間にわたって150℃でその構造完全性を分解又は損失しないことが好ましい。バインダーは60秒間にわたって177℃でその構造完全性を分解又は損失しないことが、より好ましい。
【0157】
ポリマーバインダーは、バインダー中に分散された成分を担持するのに十分な量で使用される。好ましくはバインダーは、層の総乾燥重量を基準として、約10重量%〜約90重量%のレベル(より好ましくは約20重量%〜約70重量%のレベル)で使用される。熱現像可能な材料が、支持体の両側の画像形成層及び非画像形成層の両方(そして特に支持体の画像形成側)で、少なくとも50重量%の疎水性バインダーを含むことが特に有用である。
【0158】
支持体材料
熱現像可能な材料は高分子支持体を含む。この高分子支持体は、好ましくは、任意の所望の厚さを有し、そして1種又は2種以上の高分子材料から成る可撓性の透明フィルムである。支持体は、熱現像中に寸法安定性を示すこと、また、上側の層との好適な付着特性を有することが必要とされる。このような支持体を形成するための有用な高分子材料の一例としては、ポリエステル[例えばポリ(エチレンテレフタレート)及びポリ(エチレンナフタレート)]、酢酸セルロース及びその他のセルロースエステル、ポリビニルアセタール、ポリオレフィン、ポリカーボネート、及びポリスチレンが挙げられる。好ましい支持体は、良好な熱安定性を有するポリマー、例えばポリエステル及びポリカーボネートから成っている。収縮を低減し、そして寸法安定性を促進するために、支持体材料を処理又はアニールすることもできる。
【0159】
米国特許第6,630,283号明細書(Simpson他)に記載されているような、少なくとも2種の異なる高分子材料から成る多数の交互の層を含む透明多層高分子支持体を使用することも、有用である。別の支持体は、米国特許第5,795,708号明細書(Boutet)に記載されているような二色性ミラー層を含む。
【0160】
不透明な支持体、例えば高温に対して安定な色素含有高分子フィルム、及び樹脂を塗布された紙を使用することもできる。
【0161】
支持体材料は、所望の場合には、種々の着色剤、顔料、ハレーション防止色素又はアキュータンス色素を含有することができる。例えば、支持体は、結果として得られる画像形成されたフィルム内に青色を提供する1種又は2種以上の色素を含むことができる。上側の層の付着力を改善するために、コンベンショナルな処置(例えばコロナ放電)によって支持体材料を処理することができ、或いは、サビング層又はその他の付着促進層を使用することができる。
【0162】
サーモグラフィ及びフォトサーモグラフィ配合物及び構造
種々の成分と、1種又は2種以上のバインダーとを、通常は1種又は2種以上の溶剤、例えばトルエン、2-ブタノン(メチルエチルケトン)、アセトン、テトラヒドロフラン、又はこれらの混合物を含む好適な有機溶剤系中で混合することにより、サーモグラフィ及びフォトサーモグラフィ乳剤層のための有機溶剤系塗布用配合物を調製することができる。
【0163】
或いは、水性塗布用配合物を提供するために、水又は水-有機溶剤混合物中で、所望の画像形成成分を親水性バインダー(例えばゼラチン、ゼラチン誘導体、又はラテックス)と配合することもできる。
【0164】
熱現像可能な材料は、可塑剤及び潤滑剤、例えば米国特許第2,960,404号明細書(Milton他)に記載されているようなポリ(アルコール)及びジオール、米国特許第2,588,765号明細書(Robijin他)及び同第3,121,060号明細書(Duane)に記載されているような脂肪酸又はエステル、及び英国特許第955,061号明細書(DuPont)に記載されているようなシリコーン樹脂を含有することができる。これらの材料は、米国特許第2,992,101号明細書(Jelley他)及び同第2,701,245号明細書(Lynn)に記載されているような無機又は有機艶消し剤を含有することもできる。米国特許第5,468,603号明細書(Kub)に記載されているように、高分子フッ素処理界面活性剤が、1つ又は2つ以上の層内で有用である場合もある。
【0165】
ここに引用する米国特許第6,436,616号明細書(Geisler他)には、「木目(woodgrain)」効果として知られるもの、又は不均一な光学濃度を低減するための種々のフォトサーモグラフィ材料改質手段が記載されている。
【0166】
層間の付着を促進するための層も、米国特許第5,891,610号明細書(Bauer他)、同第5,804,365号明細書(Bauer他)、及び同第4,741,992号明細書(Przezdziecki) に記載されているように知られている。米国特許第5,928,857号明細書(Geisler他)に記載されているように、特定の高分子付着材料を使用して、付着を促進することもできる。
【0167】
材料からの放出を低減するための層が存在してもよい。これらの層は、米国特許第6,352,819号明細書(Kenney他)、同第6,352,820号明細書(Bauer他)、同第6,420,102号明細書(Bauer他)、及び同第6,667,148号明細書(Rao他)、及び米国特許第6,746,831号明細書(Hunt)に記載された高分子バリヤ層を含む。
【0168】
米国特許第5,532,121号明細書(Yonkoski他)に記載されているようなフッ素処理ポリマーを内蔵することにより、又は例えば米国特許第5,621,983号明細書(Ludemann他)に記載されているような特定の乾燥技術を用いることにより、斑点及びその他の表面異常を低減することができる。
【0169】
熱現像可能な材料は、支持体の表側に、1つ又は2つ以上の静電防止層又は導電性層を含むこともできる。このような層は、下記金属酸化物、又はこの目的で当業者に知られている他のコンベンショナルな静電防止剤、例えば可溶性塩(例えば塩化物又は硝酸塩)、蒸着金属層、又は米国特許第2,861,056号明細書(Minsk)及び同第3,206,312号明細書(Sterman他)に記載されているようなイオン性又は導電性ポリマー、米国特許第3,428,451号明細書(Trevoy)に記載されているような不溶性無機塩、又は米国特許第5,310,640号明細書(Markin他)に記載されているような導電性下層、上記のような、そして米国特許第5,368,995号明細書(Christian他)に記載されているような電子伝導性金属アンチモン酸塩粒子、及び米国特許第5,547,821号明細書(Melpolder他)に記載されているような高分子バインダー中に分散された導電性金属含有粒子、及び多数の刊行物に記載されているフルオロ化学物質を含有することができる。
【0170】
フォトサーモグラフィ及びサーモグラフィ材料は通常、リサーチディスクロージャ、第34390項、1992年11月に記載されているような磁気記録材料、又は透明磁気記録層、例えば米国特許第4,302,523号明細書(Audran他)に記載されているような、透明支持体の下側に磁気粒子を含有する層を含んでもよい。
【0171】
画像鮮鋭度を促進するために、フォトサーモグラフィ材料は、アキュータンス色素及び/又はハレーション防止色素を含有する1つ又は2つ以上の層を含有することができる。これらの色素は、露光波長に近い吸光度を有するように選ばれ、散乱光を吸収するように構成される。1つ又は2つ以上のハレーション防止裏層、下層又は上塗り層内に、1種又は2種以上のハレーション防止組成物を内蔵することができる。加えて、1つ又は2つ以上の表側層内に、1種又は2種以上のアキュータンス色素を内蔵することもできる。
【0172】
ハレーション防止色素及びアキュータンス色素として有用な色素は、米国特許第5,380,635号明細書(Gomez他)、同第6,063,560号明細書(Suzuki他)、及び欧州特許出願公開第1 083 459号明細書(Kimura)に記載されているスクアレイン色素、欧州特許出願公開第0 342 810号明細書(Leichter)に記載されたインドレニン色素、及び米国特許第6,689,547号明細書(Hunt他)に記載されたシアニン色素を含む。
【0173】
米国特許第5,135,842号明細書(Kitchin他)、同第5,266,452号明細書(Kitchin他)、同第5,314,795号明細書(Helland他)、同第6,306,566号明細書(Sakurada他)、特開2001-142175号公報(Hanyu他)、及び同第2001-183770号公報(Hanyu他)に記載されているように、処理中に熱で色を失うか又は白くなることになるアキュータンス色素又はハレーション防止色素を含む組成物を採用することも有用である。また、特開平11-302550号公報(Fujiwara)、特開2001-109101号公報(Adachi)、特開2001-51371号公報(Yabuki他)、及び特開2000-029168号公報(Noro)には、有用な漂白組成物が記載されている。上記刊行物の全てを本明細書中に引用する。
【0174】
他の有用な熱漂白可能なハレーション防止組成物は、赤外線吸収化合物、例えばオキソノール色素、又はヘキサアリールビイミダゾール(「HABI」としても知られる)との組み合わせで使用される及び種々のその他の化合物、又はこれらの混合物を含むことができる。HABI化合物は、米国特許第4,196,002号明細書(Levinson他)、同第5,652,091号明細書(Perry他)及び同第5,672,562号明細書(Perry他)に記載されている。このような熱漂白可能な組成物の例は、例えば米国特許第6,455,210号明細書(Irving他)、同第6,514,677号明細書(Ramsden他)及び同第6,558,880号明細書(Goswami他)に記載されている。
【0175】
実際の使用条件下で、これらの組成物は、少なくとも90℃の温度で少なくとも0.5秒にわたって、漂白を可能にするように加熱される(好ましくは、約100℃〜約200℃の温度で約5〜約20秒間)。
【0176】
熱現像可能な配合物は、巻線塗布、浸漬塗布、エアナイフ塗布、カーテン塗布、スライド塗布、スロット-ダイ塗布、又は、米国特許第2,681,294号明細書(Beguin)に記載されたタイプのホッパーを使用する押出塗布を含む種々の塗布処置によって、塗布することができる。層は一度に1つずつ塗布することができ、或いは、例えば米国特許第2,761,791号明細書(Russell)、同第4,001,024号明細書(Dittman他)、同第4,569,863号明細書(Keopke他)、同第5,340,613号明細書(Hanzalik他)、同第5,405,740号明細書(LaBelle他)、同第5,415,993号明細書(Hanzalik他)、同第5,525,376号明細書(Leonard他)、同第5,733,608号明細書(Kessel他)、同第5,849,363号明細書(Yapel他)、同第5,843,530号明細書(Jerry他)、同第5,861,195号明細書(Bhave他)、及び英国特許第837,095号(Ilford)に記載されているような処置によって同時に2つ又は3つ以上の層を塗布することもできる。乳剤層のための典型的な塗布ギャップは、約10〜約750 μmであってよく、そして層は、温度約20℃〜約100℃の強制空気中で乾燥させることができる。層の厚さは、X-rite Corporation(Granville, MI)から入手可能な、301 Visual Opticsを備えたX-rite Model 361/V 濃度計によって測定して、約0.2を上回る、そしてより好ましくは約0.5〜5.0又はそれ以上の最大画像濃度を提供するように選択されることが好ましい。
【0177】
乳剤配合物を支持体に適用した後、又は適用するのと同時に、乳剤配合物上に保護上塗り層配合物を適用することができる。好ましくは、スライド塗布によって支持体に2種又は3種以上の層配合物が同時に適用され、第1の層は、第2の層がまだ湿っている間に、第2の層の上側に塗布される。これらの層を塗布するために使用される第1及び第2の流体は同じでも異なる溶剤であってもよい。
【0178】
他の態様において、米国特許第6,355,405号明細書(Ludemann他)に記載されているように、上述の2種又は3種以上のポリマーの単一相混合物を含む「キャリヤ」層配合物を、支持体上に直接的に適用し、そしてこれにより、乳剤層の下側に配置することができる。キャリヤ層配合物は、乳剤層配合物及び任意の追加の表側上塗り層配合物の適用と同時に適用することができる。
【0179】
裏側組成物及び層
熱現像可能な材料は、高分子支持体の反対側又は裏側(非画像形成側)上に、1つ又は2つ以上の追加の上塗り層とともに、少なくとも1つの埋込み型導電性層を有する。追加の層は、付着促進層、ハレーション防止層、艶消し剤(例えばシリカ)を含有する層、又はこのような層の組み合わせを含む。好ましくは、埋込み型裏側導電性層上に配置された単一の保護上塗り層が、所望の追加の機能のうちのいくつか又は全てを実施する。
【0180】
本発明において有用な金属酸化物は一般に、好適な溶剤、例えば水、又は水混和性溶剤、例えばメタノール又はその他の低分子量アルコール中の無機コロイド又はゾル形態を成す配合物のために提供される。無機金属酸化物は、亜鉛、マグネシウム、ケイ素、カルシウム、アルミニウム、ストロンチウム、バリウム、ジルコニウム、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、錫、インジウム、モリブデン、又はバナジウムの酸化物コロイド、又はこれらの金属酸化物コロイドの混合物を含む。金属酸化物は、他の金属、例えばアルミニウム、インジウム、ニオビウム、タンタル、又はアンチモンでドープすることができる。酸化錫及び酸化アンチモン錫、及び下記金属アンチモン酸塩が好ましい。
【0181】
支持体の裏側(非画像形成側)上の埋込み型導電性層内の金属酸化物ナノ粒子は、金属酸化物ナノ粒子から成るクラスターとして存在する。これらの金属酸化物クラスターは好ましくは、一般に下記構造I又はIIによって表される組成を有する非針状金属アンチモン酸塩ナノ粒子のクラスターである。
【0182】
【化1】

【0183】
(上式中、Mは亜鉛、ニッケル、マグネシウム、鉄、銅、マンガン、又はコバルトである)、
【0184】
【化2】

【0185】
(上式中、Maはインジウム、アルミニウム、スカンジウム、クロム、鉄、又はガリウムである)
【0186】
従って、これらの粒子は、アンチモンでドーピングされた金属酸化物である。
【0187】
最も好ましくは、非針状金属アンチモン酸塩粒子は、アンチモン酸亜鉛(ZnSb2O6)から成る。いくつかの導電性金属アンチモン酸塩は、Nissan Chemical America Corporationから商業的に入手可能であり、CELNAX(商標)CX-Z641Mの商品名で、メタノール中の60%(固形分)オルガノゾル分散体として入手可能な、好ましい非針状アンチモン酸亜鉛(ZnSb2O6)ナノ粒子を含む。
【0188】
或いは、金属アンチモン酸塩粒子は、米国特許第5,457,013号明細書(上記)及びこれに引用された参考文献に記載された方法によって調製することもできる。
【0189】
埋込み型裏側導電性層内の金属アンチモン酸塩粒子は、「針状」粒子ではなく、大部分が非針状粒子クラスターの形態を成している。「非針状」粒子とは、針状でないこと、すなわち尖ってないことを意味する。従って、金属アンチモン酸塩ナノ粒子の形状は、顆粒状、球状、卵形、立方体状、斜方形、平板状、四面体状、八面体状、二十面体状、切頭立方体状、切頭斜方形、又は任意のその他の非針状形状であってよい。
【0190】
一般に、メタノール系オルガノゾル分散体において、これらの金属酸化物ナノ粒子の平均直径は、BET法を用いて最大粒子寸法を横切るように測定して、15〜20 nmである。
【0191】
金属酸化物ナノ粒子から成るクラスターは一般に、70°F(21.1℃)及び50%相対湿度において1×1012オーム/□以下、及び好ましくは1×1011オーム/□以下の裏側の水電極抵抗率(WER)を提供するのに十分な量で存在する。
【0192】
導電性金属酸化物ナノ粒子から成るクラスターは一般に、乾燥裏側導電性層の40重量%超〜最大75重量%(好ましくは45〜55%)を構成する。加えて、粒子の量は、一般に乾燥層被覆率0.05〜2 g/m2 (好ましくは0.1〜1 g/m2、そしてより好ましくは0.15〜0.4 g/m2)の量で、裏側導電性層内に存在することである。所望の場合には、種々異なるタイプの導電性金属酸化物粒子の混合物を使用することができる。
【0193】
埋込み型裏側導電性層内に存在する金属酸化物クラスターに加えて、他の導電性材料が埋込み型裏側導電性層又は他の裏側層内に存在してよい。このような組成物は、米国特許第6,699,648号明細書(Sakizadeh他)及び米国特許第6,762,013号明細書(Sakizadeh他)に記載されたフルオロ化学物質を含む。
【0194】
裏側導電性層は、乾燥重量を基準として0.7:1を上回る、好ましくは0.7:1〜1.1:1の、総バインダーと導電性金属酸化物との比を提供するための量で、1種又は2種以上のバインダー(下に詳細に説明する)を含む。総バインダーと導電性金属酸化物との最適な比は、使用される特定のバインダー、導電性金属酸化物クラスターのサイズ、導電性金属酸化物の被覆率、及び導電性層の乾燥厚に応じて変化し得る。
【0195】
埋込み型裏側導電性層は比較的薄くてもよい。例えば、その乾燥厚は、0.05〜1.1 μm、好ましくは0.2〜0.8 μmであることが可能である。薄型「埋込み型」裏側導電性層は「キャリヤ」層として有用である。「キャリヤ層」という用語は、多層がスライド塗布によって塗布され、そして埋込み型裏側導電性層が支持体に隣接する薄層として塗布されるときに、しばしば使用される。
【0196】
1つの好ましい態様の場合、埋込み型裏側導電性層は、非針状金属アンチモン酸塩ナノ粒子を含有するキャリヤ層であり、そして、プライマー又はサビング層の使用なしに、又は他の付着促進手段、例えば支持体表面処理なしに、支持体上に直接的に配置される。このように、支持体は、埋込み型裏側導電性層が使用される場合、「無処理」そして「無塗布」の形態で使用することができる。キャリヤ層配合物は、他の裏側層配合物の適用と同時に適用され、そしてこれにより、これらの他の裏側層の下側に配置される。好ましい構造において、裏側導電性キャリヤ層配合物は、下記2種又は3種以上のポリマーと、非針状金属アンチモン酸塩粒子から成るクラスターとの単一相混合物を含む。
【0197】
上記のように、導電性金属酸化物クラスターは、支持体の裏側に「埋込まれた」1つ又は2つ以上の裏側導電性層内に存在する。埋込み型裏側導電性層と、すぐに隣接する層との関係は重要である。なぜならば、これらの層内のポリマー及びバインダーのタイプは、相互の優れた付着力を提供し、また導電性金属酸化物クラスター及び/又は層成分を許容できる程度に分散させ、そして同時に容易に塗布されるように設計されるからである。
【0198】
1つの態様では、導電性層上に直接的に配置された層は、「上塗り」層として本明細書中では理解される。好ましくはこの層は、最も外側の裏側層であり、そして「保護」層であってよい。この上塗り層は1種又は2種以上の皮膜形成ポリマーを含む。すぐ下側の裏側導電性層は、高分子支持体に対する裏側導電性層の直接的な付着を促進するのに役立つ「第1」ポリマーと、第1ポリマーとは異なっており且つ第1ポリマーと単一相混合物を形成する「第2」ポリマーとを含む2種又は3種以上のポリマーの混合物中に導電性金属酸化物(例えば非針状金属アンチモン酸塩粒子)を含む。例えば、支持体がポリエステル・フィルムである場合、導電性層内の好ましいポリマー混合物は、ポリエステル樹脂と、ポリビニルアセタール、例えばポリビニルブチラール、又はセルロースエステル、例えば酢酸酪酸セルロースとの単一相混合物である。
【0199】
上塗り層の皮膜形成ポリマーが、裏側導電性層の第2のポリマーと同じクラスであるか、又は少なくとも適合性であることが好ましい。上塗り層の好ましい皮膜形成ポリマーは、ポリビニルブチラール、又は酢酸酪酸セルロースである。
【0200】
別の態様の場合、埋込み型裏側導電性層は、上塗り層と、支持体に直接的に付着する下塗り層との間に配置されている。この態様の場合、上塗り層は、裏側導電性層の上に直接的に位置している。上塗り層は、「中間層」又は「保護層」であってよい。好ましくは、上塗り層は、最も外側の裏側層であり、或いは、その上に配置された更なる層を有する。この上塗り層は皮膜形成ポリマーを含む。上塗り層のすぐ下の導電性層は、2種又は3種以上のポリマー、すなわち下塗り層に対する導電性層の付着を促進するのに役立つ「第1」ポリマーと、上塗り層に対する導電性層の付着を促進するのに役立つ「第2」ポリマーとの混合物中に、導電性金属酸化物(例えば非針状金属アンチモン酸塩粒子)を含む。
【0201】
上塗り層の皮膜形成ポリマーが、裏側導電性層の第2のポリマーと同じクラスであるか、又は少なくとも適合性であることが好ましい。上塗り層の好ましい皮膜形成ポリマーは、ポリビニルアセタール、例えばポリビニルブチラール、又はセルロースエステル、例えば酢酸酪酸セルロースである。付着促進下塗り層のポリマーと、裏側導電性層の第1ポリマーとが同じか又は異なるポリエステル樹脂であることも好ましい。
【0202】
代表的な「第1」ポリマーは、以下のクラス:ポリビニルアセタール(例えばポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、及びポリビニルホルマール)、セルロースエステルポリマー(例えば酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、硝酸セルロース、及び酢酸酪酸セルロース)、ポリエステル、ポリカーボネート、エポキシ、ロジンポリマー、ポリケトン樹脂、ビニルポリマー(例えばポリ塩化ビニル、ポリビニルアセテート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、及びブタジエン-スチレンコポリマー)、アクリレート又はメタクリレートポリマー、及び無水マレイン酸-エステルコポリマー、のうちの1種又は2種以上から選択することができる。ポリビニルアセタール、ポリエステル、セルロースエステルポリマー、及びビニルポリマー、例えばポリビニルアセテート及びポリ塩化ビニルが特に好ましく、そして、ポリビニルアセタール、ポリエステル、及びセルロースエステルポリマーがより好ましい。ポリエステル樹脂が最も好ましい。このように、付着促進性ポリマーは性質上、一般に疎水性である。
【0203】
代表的な「第2」ポリマーは、ポリビニルアセタール、セルロースポリマー、ビニルポリマー(「第1」ポリマーに関して上述した通り)、アクリレート又はメタクリレートポリマー、及び無水マレイン酸-エステルコポリマーを含む。最も好ましい「第2」ポリマーは、ポリビニルアセタール、及びセルロースエステルポリマー(例えば酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、硝酸セルロース、及び酢酸酪酸セルロース)である。酢酸酪酸セルロース及びポリビニルブチラールが特に好ましい第2ポリマーである。もちろん、これらの第2ポリマーの混合物を裏側導電性層内に使用することもできる。これらの第2ポリマーも、上記有機溶剤中に可溶性又は分散性である。
【0204】
「第1」ポリマーと「第2」ポリマーとは互いに適合性であるか、又は同じポリマー・クラスであることが好ましい。どのポリマーが皮膜形成ポリマーと「適合性である」か、又は「同じクラス」であるかは、本明細書中の教示内容から当業者には容易に明らかになるであろう。例えば、「第1」ポリマーとしてのポリエステル樹脂と、「第2」ポリマーとしてのポリビニルアセタール、例えばポリビニルブチラール、又はセルロースエステル、例えば酢酸酪酸セルロースとの単一相混合物を使用することが最も好ましい。上塗り層において有用な皮膜形成ポリマーの多くが、本明細書の別の箇所に記載されている(例えば、画像形成層及び/又は他のコンベンショナルな裏側層内に使用されるバインダー)。
【0205】
裏側導電性層は一般に、メチルエチルケトン(2-ブタノン、MEK)、アセトン、トルエン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、又はこれらの溶剤のうちの2種又は3種以上の任意の混合物を含む1種又は2種以上の混和性有機溶剤から塗布される。これらの疎水性有機溶剤は少量(10%未満、好ましくは5%未満、そしてより好ましくは3%未満)の親水性有機溶剤、メタノール又はエタノールを含有してよい。溶剤は、下記上塗り層のための同じか又は異なる有機溶剤であってよい。
【0206】
裏側導電性層上に直接的に配置された上塗り層は、1種又は2種以上のアルコールを含む有機溶剤混合物から成る配合物として塗布され、アルコールは、溶剤混合物の総重量を基準として、10重量%超〜最大90重量%の量、好ましくは20〜60重量%、より好ましくは30〜55重量%の量で存在する。混合物の残りの溶剤は好ましくは、沸点が130℃以下、より好ましくは110℃以下、そして最も好ましくは100℃以下のケトン、エステル、エーテル又はグリコールエーテルである。このような化合物は、アセトン、2-ブタノン、2-ペンタノン、3-ペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸イソプロピル、ジプロピルエーテル、ジ-sec-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、及びエチレングリコールジエチルエーテルを含む。特に好ましい残りの溶剤は、メチルエチルケトンである。アルコールの相対量は、特定のバインダー、及び上塗り層及び裏側導電性層内に使用される残りの溶剤によって異なってよい。
【0207】
アルコールは一般に、沸点100℃未満の、より低い「沸点」のアルコールである。この溶剤混合物のための特に有用なアルコールは、メタノール、エタノール、イソ-プロパノール、及びn-プロパノールを含む。メタノールが最も好ましい。上塗り層内に使用されるポリマーが溶剤の混合物中に可溶性でなければならないことは言うまでもない。
【0208】
上塗り層は一般に、1 μm〜7 μm、好ましくは2 μm〜5 μmの乾燥厚を有する。
【0209】
上塗り層は、バインダーとして1種又は2種以上の皮膜形成ポリマーを含む。これらのバインダーは、室温で有機溶剤混合物(具体的にはアルコール)中に可溶性のいかなる疎水性ポリマーであってもよい。好ましい皮膜形成ポリマーは、裏側導電性層に関して上述したセルロースポリマー及びポリビニルアセタールを含む。酢酸酪酸セルロース及びポリビニルブチラールが最も好ましい。いくつかの好ましい態様の場合、上塗り層の皮膜形成バインダーと、裏側導電性層の第2ポリマーとは同じポリマーである。
【0210】
上塗り層は、このような配合物に一般的に添加されるその他の添加物、例えば貯蔵寿命延長剤、ハレーション防止色素、色合い及び色調をコントロールするための着色剤、データを記録するための磁気記録材料、ライトボックス安定性を改善するためのUV吸収材料、及び塗布助剤、例えば高品質塗膜を得るための界面活性剤を、全てコンベンショナルな量で含むこともできる。1つの好ましい態様において、フォトサーモグラフィ材料中に使用される場合、裏側上塗り層は、ハレーション防止組成物、例えば上述のハレーション防止組成物を含む。
【0211】
埋込み型裏側導電性層及び上塗り層は、種々の塗布手順、例えば巻線ロッド塗布、浸漬塗布、エアナイフ塗布、カーテン塗布、スライド塗布、スロット-ダイ塗布、押出塗布を用いて、同時に(ウェット・オン・ウェット)塗布される。これらの手順は、サーモグラフィ及びフォトサーモグラフィ画像形成層に関して上述したものと同じである。
【0212】
金属酸化物クラスターの形成
我々は、裏側塗布用配合物の調製中及び塗布中に生成される粒子(又は粒子クラスター)のサイズを制御することによって、金属酸化物粒子(例えば好ましい金属酸化物粒子)の塗膜の導電効率を制御できることを見いだした。
【0213】
好適な溶剤中の分散体として、例えば(例えばアンチモン酸亜鉛粒子のための)メタノール系オルガノゾル分散体として、多くの金属酸化物が供給元から提供される。このような分散体において、金属酸化物粒子の平均直径は一般に15〜20 nmである。従ってこれらは「ナノ粒子」と考えられる。金属酸化物粒子は、導電性層配合物中にこれらを内蔵する方法に応じて、クラスター又は凝塊を形成するか、又は元のサイズに戻ることができる。金属酸化物オルガノゾル分散体を製造するために用いられる方法は、粒子クラスター化度を制御することもできる。
【0214】
金属酸化物ナノ粒子の塗布された層内の導電経路は、粒子内部並びに粒子間の導電率の組み合わせに起因するものと考えられる。粒子間の伝導率は、粒子が接触し合う、又はこれらが互いに密接しているという理由から発生する。一般に導電性金属酸化物の場合には、導電率は互いに接触している粒子間で、より高くなる。クラスターが存在する場合、クラスター内部のナノ粒子は互いに接触するか、又は極めて近接しており、そしてこのような塗膜のための導電性経路は、クラスター間の電子の伝導に関与する。
【0215】
金属酸化物塗膜の場合、電子が流れる経路を完成するのに過不足のない金属酸化物粒子又は相互連通されたクラスターが存在し、そして抵抗率が丁度低下し始める点が、「パーコレーション閾値」と呼ばれる。製造の観点から、パーコレーション閾値を辛うじて上回ることが望まれることになる。
【0216】
層導電率の有意な改善をもたらす被覆率の増大とともに、導電性酸化物粒子のパーコレーション閾値が発生する。さらに、ナノ粒子クラスターのサイズがパーコレーション閾値に影響を及ぼし、クラスターが大きければ大きいほど、パーコレーション閾値が低くなると考えられている。このタイプの分析は、M. Lagues、R. Ober及びC. Taupin, J. Phys 39, 1978, L487-L491、「Study of Structure and Electrical Conductivity in Microemulsions. Evidence for percolation mechanism and phase inversion(マイクロエマルジョンにおける構造及び導電率の研究。パーコレーション・メカニズム及び位相反転の証拠)」によって記載されており、また、R. Zallen、「The Physics of Amorphous Solids(非晶質固形物の物理学)」、Wiley, New York 1983, 第153-167頁によって概説されている。
【0217】
従って、金属酸化物クラスターのサイズは臨界的なパラメータである。金属酸化物クラスターが余りにも小さいと、クラスターが効率的な静電放電のための連続経路を形成可能にするには、クラスター間のギャップ数があまりにも多くなり、導電効率は低くなる。他方において、生成された粒子が余りにも大きいと、凝集された粒子が配合物から沈澱することになる。
【0218】
ナノ粒子クラスターの形成により、典型的には、クラスター及び粒子の両方がない、樹脂豊富な領域が形成される。これらの樹脂豊富な領域は「ギャップ」と呼ばれる。しかし、クラスターが十分に連通された経路を形成できる限り、導電率は高いままであることが可能である。従って、十分な量の連通経路(すなわち網状構造)、及びこれと同時にクラスター間の多数のギャップの両方を有する状態が塗膜内に共存することができ、しかもなお、この状態は高い導電率を達成することができる。
【0219】
所与の量の金属酸化物粒子及び所与の塗膜厚の場合、クラスター化が多くなればなるほど、導電率が改善される。その理由は、クラスター化が、個別の、しかし分離された粒子の連続体よりも効率的な電荷の流れを可能にする相互連通クラスター網状構造の形成を可能にするからである。クラスター化度が増大するにつれて、ギャップ数も増大することが観察されている。
【0220】
クラスター化度を測定するために、定義された体積の金属酸化物クラスター塗膜内部の平均ギャップ密度(すなわちギャップ数)を用いることができる。平均ギャップ密度が少なくとも1.5ギャップ/μmであるとともに導電性粒子又はクラスター間のギャップが少なくとも0.25 μmである場合、金属酸化物粒子は、1×1012オーム/□以下の抵抗率を提供するのに十分なクラスターを形成したことになると、我々は考える。
【0221】
塗膜がより多量の金属酸化物を含有する場合には、ギャップはより少なくなる。従って、ギャップ密度を金属酸化物の塗膜重量で割算することにより、平均ギャップ密度を正規化することができる。少なくとも0.04(ギャップ/μm3)/(mg/ft2)[0.43(ギャップ/μm3)/(mg/m2)]、そして好ましくは少なくとも0.06(ギャップ/μm3)/(mg/ft2)[0.65(ギャップ/μm3)/(mg/m2)]の正規化平均ギャップ密度が、1×1012オーム/□以下の抵抗率を提供するのに十分である。
【0222】
我々は、裏側上塗り層配合物中にアルコールを内蔵すると、このことは、埋込み型導電性層内のギャップ密度に対して影響を与えると考える。我々は特定のメカニズムに限定しようと意図してはいないが、この結果のための1つの考えられ得るメカニズムは、同時塗布中に、アルコールが埋込み型裏側導電性層内に浸透する結果、第1ポリマー(例えばポリエステル)の膨潤又はゲル化がもたらされることである。このことは、金属酸化物粒子が強制的に接近し合うので、ギャップ密度を増大させる。上塗り層配合物にアルコールを添加すると、正規化平均ギャップ密度は、上塗り層を塗布するために使用される有機溶剤がアルコールを含有しない場合の裏側導電性層の正規化平均ギャップ密度を少なくとも20%だけ上回って増大するように見える。
【0223】
平均クラスター・サイズ分布は、埋込み型裏側導電性層における金属酸化物クラスターの平均サイズの尺度である。平均クラスター・サイズ分布が少なくとも0.32 μmであると、1×1012オーム/□以下の抵抗率を提供するのに十分な連通経路を形成するのに十分な大きさのクラスターが提供されると、我々は考える。
【0224】
しかし、塗膜がより多量の金属酸化物を含有する場合、クラスターはより多くなる。従って、平均クラスター・サイズ分布を金属酸化物の塗膜重量で割算することにより、平均クラスター・サイズ分布を正規化することができる。正規化平均クラスター・サイズ分布が0.012(μm)/(mg/ft2)[0.13(μm)/(mg/m2)]を上回る熱現像可能な材料は、1×1012オーム/□以下の抵抗率を提供するのに十分な連通経路を形成するのに十分な大きさのクラスターを提供する。
【0225】
平均サイズ50 nm〜2 μm、そしてより好ましくは0.1〜0.9 μmの「クラスター」の形態で、金属酸化物(例えば金属アンチモン酸塩)粒子を、塗布用配合物中に導入することが好ましい。パーコレーション閾値よりも高い被覆率において、意図的に「クラスター化」された金属酸化物「ナノ粒子」は、より効率的な導電率(すなわち比較可能な被覆率において、より高い導電率、又は等価の導電率に対して、より低い被覆率)を有する塗膜をもたらすことになる。
【0226】
金属酸化物クラスターは埋込み型導電性裏側層配合物の調製中に形成されるので、裏側上塗り層配合物に対するメタノール量の増大が、乾燥された塗膜における平均クラスター・サイズに及ぼす影響はほとんどない。
【0227】
平均ギャップ密度及び平均クラスター・サイズを測定する方法を、例と関連して下で説明する。
【0228】
親水性環境から疎水性環境へ、ナノ粒子を徐々に移動することが好ましい。メタノール金属アンチモン酸塩分散体の親水性環境に疎水性溶剤(例えばMEK)を添加している間、効率的に混合すると、このことは、高レベルのMEKを有する局在化領域の形成を予防するように見える。高MEK濃度の領域が、親水性の金属酸化物/メタノール分散体を不安定化し、その結果、金属酸化物の大きな凝塊(5 μm超)が沈澱すると、我々は考える。著しい量が沈澱すると、塗布されたときに導電性裏側層を提供するのに十分な金属酸化物は形成されなくなる。
【0229】
安定な裏側導電性層分散体の調製を完成させるために、金属酸化物分散体にポリマー・バインダー予混合溶液を添加している間に高剪断撹拌を行うと、所期金属酸化物クラスターの形成が妨げられるか、或いは所期金属酸化物クラスターが分解されて15〜20 nmの金属酸化物ナノ粒子に戻されることを、我々は見いだした。親水性溶剤を添加することにより、これらの金属酸化物ナノ粒子を再形成することもできる。このサイズのナノ粒子を有する塗膜は、低い導電効率を有することになる。
【0230】
レイノルズ数(NRE)は、実質的な速度勾配(剪断力)が存在するときに、任意のタイプの流れを分析する上で重要である。慣性効果と比較した粘性効果の相対有意性を示し、そして慣性力を粘性力で割算したものに対して比例するのが、無次元量である。ポリマー溶液添加中にレイノルズ数(NRE)を20,000未満に維持することにより、金属酸化物クラスターの形成が可能になり、そして、低レベルの金属酸化物を用いた薄い埋込み型裏側導電性層の使用が可能になる。レイノルズ数は
【0231】
【数1】

【0232】
として表すことができる。上記式中、Vは撹拌軸の速度(rpm)であり、Dは撹拌ブレードの直径(インチ)であり、ρは流体の比重であり、そしてμは流体の絶対粘度(センチポアズcP)である。
【0233】
これらの配合物中に必要となるレイノルズ数は、使用される材料にとって固有のものであることは、当業者には明らかである。レイノルズ数は、クラスターが形成されないか又は分解する臨界点を意味する。この臨界点は溶剤、ポリマー、又は溶液の固形分パーセントに基づいて変化することができ、そして同時係属中の同一譲受人による米国特許出願第10/978,205号明細書(上記)において下で説明するように、所与の系に関して決定することができる。
【0234】
我々は、裏側導電性層の第1ポリマーが不溶性であるアルコール溶剤を裏側上塗り層内に使用することにより、導電性金属酸化物クラスターのギャップ密度の増大が促進され、その結果、導電効率がさらに増大することを見いだした。上記のように、導電性層は、第1及び第2ポリマーが可溶性である1種又は2種以上の溶剤から塗布されるのに対して、裏側上塗り層は、10重量%を上回るアルコールを含む溶剤の混合物から塗布される、我々は、同時塗布中に、裏側上塗り層内に存在するアルコールの一部が埋込み型裏側導電性層内に移動すると考える。このことは、埋込み型裏側導電性層内の第1ポリマーの溶解度を低減する。溶解度が低減されるのに伴って、第1ポリマーは、金属酸化物のナノ粒子を排除する樹脂豊富な領域を形成し始める。金属酸化物粒子は強制的に一緒にさせられギャップ密度を高める。こうして形成されたクラスターの網状構造は、裏側導電性層の導電率を高める。裏側上塗り層内のアルコール濃度が高まるにつれて、より多くの経路が形成され、そして導電率がさらに高まる。しかし、所与の一連のポリマー・バインダーの場合、支持体又は下塗り層に対する埋込み型裏側導電性層の付着力が失われるまえに使用することができるアルコールの量には上限がある。例えば、酢酸酪酸セルロースの上塗り層バインダー、及びメチルエチルケトンとメタノールとの溶剤混合物の場合、我々はその上限が、55重量%のアルコール、例えばメタノールの混合物であると考える。異なるポリマーが一方又は両方の層において使用される場合には、この比は変化し得る。
【0235】
画像形成/現像
熱現像可能な材料は、任意の好適な画像形成用源(典型的には、フォトサーモグラフィ材料の場合には何らかのタイプの輻射線又は電子信号、そしてサーモグラフィ材料の場合には熱エネルギー源)を使用して、材料のタイプと呼応した任意の好適な形式で画像形成することができる。いくつかの態様の場合、材料は、少なくとも300 nm〜1400 nm、好ましくは300 nm〜850 nmの範囲の輻射線に対して感光する。他の態様の場合、材料は、700 nm以上(例えば750〜950 nm)の輻射線に対して感光する。
【0236】
潜像を提供するために、フォトサーモグラフィ材料に、材料が感光する好適な輻射線源、例えばX線、紫外線、可視光、近赤外線及び赤外線による露光を施すことにより、画像形成を達成することができる。好適な露光手段がよく知られており、白熱灯又は蛍光灯、キセノン・フラッシュランプ、レーザー、レーザーダイオード、発光ダイオード、赤外線レーザー、赤外線レーザーダイオード、赤外線発光ダイオード、赤外線ランプ、又はリサーチディスクロージャ、1996年9月、第38957項に記載されているような、当業者には容易に明らかな任意の他の紫外線、可視光、又は赤外線源を含む輻射線源を含む。特に有用な赤外線露光手段は、レーザーダイオードを含み、米国特許第5,780,207号明細書(Mohapatra他)に記載されているような多-長手方向露光技術として知られているものを用いて画像形成効率を高めるように変調されたレーザーダイオードを含む。他の露光技術が米国特許第5,493,327号明細書(McCallum他)に記載されている。
【0237】
熱現像条件は、使用される構造に応じて変化することになるが、しかし典型的には、好適に高められた温度、例えば50℃〜250℃(好ましくは80℃〜200℃、より好ましくは100℃〜200℃)で、十分な時間、一般には1〜120秒間にわたって像様露光された材料を加熱することを伴う。加熱は任意の好適な加熱手段を使用して達成することができる。疎水性バインダーにおけるフォトサーモグラフィ材料のための好ましい熱現像手順は、10〜25秒間にわたって110℃〜130℃で加熱することを含む。親水性バインダーにおけるフォトサーモグラフィ材料のための好ましい熱現像手順は、15〜25秒間にわたって140℃〜160℃で加熱することである。
【0238】
サーモグラフィ材料を画像形成する場合、画像は、サーマル・スタイラス、サーマル印刷ヘッド又はレーザーを用いて、又は熱吸収材料と接触させながら加熱することにより、好適な温度で現像と同時に「書く」ことができる。サーモグラフィ材料は、レーザー線に当てることによる直接的な現像を容易にするために、色素(例えばIR吸収色素)を含むことができる。
【0239】
フォトマスクとしての使用
サーモグラフィ及びフォトサーモグラフィ材料は、紫外線又は短波長可視光に対して感光する画像形成性媒体を引き続き露光する方法においてこれらを使用可能にするために、画像形成されていない領域において350〜450 nmの範囲で十分に透過性である。熱現像された材料は、可視像がある領域では、紫外線又は短波長可視光を吸収し、そして可視像がない領域では、紫外線又は短波長可視光を透過させる。熱現像された材料を次いでマスクとして使用し、そして画像形成用輻射線源(例えば紫外線又は短波長可視光エネルギー源)と、このような画像形成用輻射線に対して感光する画像形成性材料、例えばフォトポリマー、ジアゾ材料、フォトレジスト、又は感光性印刷版との間に配置することができる。画像形成性材料を、露光・熱現像されたサーモグラフィ又はフォトサーモグラフィ材料に含まれる可視像を通過する画像形成用輻射線に当てることにより、画像形成性材料において画像を提供する。この方法は、画像形成性媒体が印刷版を含み、そしてフォトサーモグラフィ材料がイメージセッティング・フィルムとして役立つ場合に、特に有用である。
【0240】
こうして、サーモグラフィ又はフォトサーモグラフィ材料が透明支持体を含むいくつかの他の態様において、画像形成法はさらに、上記工程(A')の後に、又は上記工程(A)及び(B)の後に:
(C) 画像形成用輻射線源と、画像形成用輻射線に対して感光する画像形成性材料との間に、画像形成・熱現像されたフォトサーモグラフィ又はサーモグラフィ材料を位置決めし、そして
(D) その後、画像形成性材料において画像を提供するために、画像形成性材料を、露光・熱現像されたフォトサーモグラフィ材料に含まれる可視像を通過する画像形成用輻射線に当てること
ことを含む。
【実施例】
【0241】
下記例は、本発明の実施を例示するために記載するものであって、本発明がこれにより限定されるものではない。
【0242】
試験及び例のための材料及び方法:
下記の例に使用される全ての材料は、他に特定しない限りは標準的な商業的供給元、例えばAldrich Chemical Co. (Milwaukee Wisconsin)から容易に入手可能である。全てのパーセンテージは、特に示さない限りは重量で示す。下記の追加の用語及び材料を使用した。
【0243】
CAB 171-15S及びCAB 381-20は、Eastman Chemical Co. (Kingsport, TN)から入手可能な酢酸酪酸セルロース樹脂である。
【0244】
CELNAX(商標)CX-Z641Mは、メタノール中60%の非針状アンチモン酸亜鉛ナノ粒子を含有するオルガノゾル分散体である。これは、Nissan Chemical America Corporation(Houston, TX)から得られた。
【0245】
DESMODUR(商標)N3300は、Bayer Chemicals (Pittsburgh, PA)から入手可能な脂肪族ヘキサメチレンジイソシアネートである。
【0246】
MEKは、メチルエチルケトン(又は2-ブタノン)である。
【0247】
PARALOID(商標)A-21は、Rohm and Haas(Philadelphia, PA)から入手可能なアクリルコポリマーである。
【0248】
SYLOID(商標)74X6000は、Grace-Davison(Columbia, MD)から入手可能な合成非晶質シリカである。
【0249】
SYLYSIA 310Pは、Fuji Silysia (Research Triangle Park, NC)から入手可能な合成非球形非晶質シリカである。
【0250】
VITEL(商標)PE-2700B LMWは、Bostik, Inc.(Middleton, MA)から入手可能なポリエステル樹脂である。
【0251】
色味付け色素TD-1は下記構造を有する:
【0252】
【化3】

【0253】
ビニルスルホン-1(VS-1)は、米国特許第6,143,487号明細書に記載され、下記構造を有する:
【0254】
【化4】

【0255】
エチル-2-シアノ-3-オキソブタノエートは、米国特許第5,686,228号明細書に記載されており、そして下記構造を有する。
【0256】
【化5】

【0257】
裏塗り層色素BC-1は、シクロブテンジイリウム、1,3-ビス[2,3-ジヒドロ-2,2-ビス[[1-オキソヘキシル)オキシ]メチル]-1H-ペリミジン-4-イル]-2,4-ジヒドロキシ-、ビス(内塩)である。これは、下記構造を有すると考えられる。
【0258】
【化6】

【0259】
アキュータンス色素AD-1は下記構造を有する:
【0260】
【化7】

【0261】
抵抗率測定
静電防止裏側導電性層の電荷制御性能は、水電極抵抗率(WER)に関して報告することができる。埋込み型導電性層の場合、WERの測定は、測定された抵抗率に対するいかなる保護上塗り層の影響をも除去する。
【0262】
「水電極抵抗率」(WER)試験によって、静電防止塗膜の抵抗率を測定した。この試験では、塩橋湿潤電極抵抗率測定技術を用いて、上塗りされた導電性静電防止層の内部抵抗率を測定することにより、静電防止性能を評価する。この技術は、R. A. Elder「Resistivity Measurements on Buried Conductive Layers(埋込み型導電性層上の抵抗率測定)」、EOS/ESD Symposium Proceedings, Lake Buena Vista, FL, 1990, 第251-254頁[EOS/ESDは、電気的過大応力/静電放電を意味する]。典型的には、WER値が1×1012オーム/□を上回る静電防止層は、写真画像形成要素のための静電防止を可能にすることにおいて効果的でないと考えられる。我々は、商業製品における使用時に静電防止材料がどのように性能を発揮するかを、WER測定が予測できることを見いだした。試料が18〜24時間にわたって順応させられた後、温度70°F(21.1℃)及び50%相対湿度(RH)で維持された室内で、抵抗率が測定された。
【0263】
ギャップ密度及び平均クラスター・サイズ分布の測定
塗布された金属酸化物層内部の粒子形態と導電率との関係を、200 kV加速電圧で動作するJEOL JEM-2000FXを使用して、透過型電子顕微鏡法(TEM)によって測定した。ダイヤモンド・ナイフを使用してReichert Ultracut Sマイクロトームで、薄い塗膜区分を形成した。塗膜内部の金属酸化物の形態を、塗膜平面内に観察方向を有するこれらの断面において試験した。個々の導電性金属酸化物ナノ粒子は直径がほぼ20 nmなので、これらのクラスター化の直接の観察は、前景及び背景の粒子及びクラスターからの観察方向におけるオーバーラップがほとんどない場合にのみ可能である。このようなオーバーラップの観察を回避するために、塗布されたフィルムを、平均粒子直径のわずか数倍の厚さに断面した。断面の深さが、公称粒子直径の3倍(ほぼ60 nm)以内であることが重要である(2倍が好ましく、そして5倍を上回ると、許容できないオーバーラップを引き起こし始める)。「灰色の」断面を、これらの断面がほぼ60 nmの深さであると評価されたたため使用した(L. D. Peachey, J. Biophys. & Biochem. Cytol. 1958, 40, 233-242参照)。マイクロトーム・プロセスによって生成された、試験によるアーチファクトに由来する混同を避けるために、粒子形態統計を生成する際には、長さ>50 μmの連続的な塗布された金属酸化物層を含有する塗布領域だけを使用した。
【0264】
導電性種(粒子又はクラスター)間の平均ギャップ濃度を、マイクロトームで切片化されたフィルムの透過型電子顕微鏡写真から得られた画像から測定した。7 μm幅の塗布厚以内に分布され、そしてほぼ60 nmの断面深さに限定された少なくとも10 μmの長さの塗布された金属酸化物層を示す断面領域から測定を行った。7 μm幅の塗布厚以内に分布され、そしてほぼ60 nmの断面深さに限定された少なくとも10 μmの長さの塗布された金属酸化物層を示す断面領域から測定を行った。これらの領域は、金属酸化物クラスター間のギャップを含有した。マイクロトームで切片化された所与の容積のフィルム区分内部の0.25 μmギャップの数をカウントすることにより、ギャップ密度を測定した。許容できない導電を引き起こすには、0.25 μmのギャップ(すなわち、粒子及びクラスターがない領域)で十分であると、我々は考える。下記例において、下記表VIに示された平均ギャップ密度を得るために、このような長さ10 μmの少なくとも10個の区分を試験した。
【0265】
塗膜がより多量の金属酸化物を含有する場合には、ギャップはより少なくなる。従って、ギャップ密度を金属酸化物の塗膜重量で割算することにより、平均ギャップ密度を正規化した。
【0266】
同時に塗布された埋込み型裏側導電性層及びすぐ隣の裏側トップ塗布層における金属酸化物クラスターの平均クラスター・サイズ分布も、マイクロトームで切片化されたフィルムの透過型電子顕微鏡写真から得られた画像から測定した。7 μm幅の塗布厚以内に分布され、そしてほぼ60 nmの断面深さに限定された少なくとも10 μmの長さの塗布された金属酸化物層を示す断面領域から測定を行った。これらの領域は、金属酸化物粒子の分布によって定義された形態においてピークと谷とを含有した。この領域内部の3つの最高ピークを、0.25 μmの「窓」内に1つにまとめた。各窓内部の各ピークの平均高さを測定した。これら3つの平均を次いで平均した。谷部に関しても同様に測定した。平均ピーク高さと平均谷部深さとの差を、平均クラスター・サイズ分布として求めた。下記例において、下記表VIに示された平均ギャップ密度を得るために、このような長さ10 μmの少なくとも10個の区分を試験した。
【0267】
塗膜がより多量の金属酸化物を含有する場合、クラスターはより多くなる。従って、平均クラスター・サイズ分布を金属酸化物の塗膜重量で割算することにより、平均クラスター・サイズ分布を正規化した。
【0268】
付着力試験
ASTM D3359-92Aに従って実施される「クロスハッチ」付着力試験を用いて、裏側導電性層と上塗り層とを有する画像形成・現像されたフォトサーモグラフィ材料の裏側塗膜を評価した。裏側塗膜を、カミソリの刃でクロスハッチ・パターンを成すようにカットし、商業的に入手可能な1インチ(2.54 cm)幅の3M 610型半透明粘着テープ片をパターン上に置き、次いで素早く持ち上げて外した。フィルムから除去された塗膜の量が付着力の尺度である。付着力試験の格付けは0から5までであり、0は塗膜の完全な除去を意味し、そして5は、除去された塗膜が全く又はほとんどないことを意味する。「2」以上の格付けが現像された試料として許容可能であると考えられる。3M 610型半透明粘着テープは、3M Company (Maplewood, MN)から得られた。
【0269】
以下の例は、埋込み型裏側導電性層を含有する熱現像可能な画像形成材料の裏側上塗り層内にメタノールが内蔵されると、導電率が改善されることを実証する。
【0270】
例1:
フォトサーモグラフィ表側塗膜
表側フォトサーモグラフィ乳剤配合物
実質的に米国特許第5,434,043号明細書(上記)の第25欄に記載されているように調製された銀塩ホモジェネートを使用して、赤外線感光性フォトサーモグラフィ乳剤塗布用配合物を調製した。次いで、実質的に米国特許第5,541,054号明細書(Miller他)の第19-24欄に記載されているように、フォトサーモグラフィ乳剤配合物を調製した。
【0271】
表側上塗り層配合物
フォトサーモグラフィ乳剤配合物上に適用するために、下記成分を有する上塗り層配合物を調製した:
【0272】
【表1】

【0273】
表側キャリヤ層配合物
フォトサーモグラフィ乳剤のための表側「キャリヤ」層配合物及び上塗り層を、米国特許第6,355,405号明細書(Ludemann他)に記載されているように調製した。
【0274】
表側フォトサーモグラフィ塗膜の調製
フォトサーモグラフィ乳剤、トップコート、及びキャリヤ層の配合物を、インライン乾燥器を備えた精密多層塗布機を使用して、7ミル(178 μm)の青みがかったポリ(エチレンナフタレート)支持体上に同時に塗布した。
【0275】
裏側塗膜
埋込み型裏側導電性層配合物
アンチモン酸亜鉛クラスターを含有する裏側層導電性層配合物を、同時係属中の同一譲受人による米国特許出願第10/978,205号明細書(上記)に記載されているように、そしてまた下記のように調製した。
【0276】
10.98部のMEKを5.15部のCELNAX(商標)CX-Z641M(メタノール中60%の非針状アンチモン酸亜鉛固形分-正味3.09部を含有)に添加することにより、分散体を調製した。この添加は10分間にわたって行った。撹拌を1.5時間にわたって維持した。
【0277】
0.68部のVITEL(商標)PE-2700B LMW及び2.72部のCAB 381-20を80.47部のMEK中に溶解させることにより、ポリマー溶液を調製した。
【0278】
ポリマー溶液を低剪断撹拌しながら30分間にわたってCELNAX(商標)分散体に添加した。全ての最終配合物は、粘度12(±1) cPであり、また比重0.87(±0.01)であった。
【0279】
裏側上塗り層配合物
下記表IIに示された材料を混合することにより、裏側上塗り層配合物を調製した。メタノールとメチルエチルケトンとの比(MeOH:MEK)を、表IIIに示したように変化させた。配合物の他の成分は同じままであった。
【0280】
埋込み型裏側導電性層配合物と、裏側上塗り層配合物とを、支持体の、フォトサーモグラフィ塗膜を含有する側とは反対側に同時に塗布した。埋込み型裏側導電性層は、保護上塗り層のためのキャリヤ層として役立った。インライン乾燥器を備えた精密多層塗布機を使用した。裏側上塗り層の乾燥塗膜重量は、2 g/m2であった。埋込み型裏側導電性層は、乾燥塗膜重量0.49 g/m2を提供するように、湿潤厚8.5 μmで塗布した。ZnSb2O6の塗膜重量をX線蛍光によって測定した。
【0281】
【表2】

【0282】
下記表IIIに示された結果は、裏側上塗り層内のメタノール量が増大するのにつれて、導電率が増大することを実証する。裏側層は、支持体に対する受け入れられ得る付着力を維持した。メタノールの塗膜重量は、湿潤塗膜の重量であり、且つ溶剤蒸発前のものである。
【0283】
【表3】

【0284】
例2:
表側フォトサーモグラフィ配合物及び塗膜を例1において説明したように調製した。埋込み型裏側導電性層配合物を、例1において説明したように調製した。ただし例2における全ての原材料のロットは、例1のものとは異なる。
【0285】
裏側上塗り層配合物
下記表IVに示された材料を混合することにより、裏側上塗り層配合物を調製した。メタノールとメチルエチルケトンとの比(MeOH:MEK)を、表Vに示したように変化させた。配合物の他の成分は同じままであった。
【0286】
埋込み型裏側導電性層配合物と、裏側上塗り層配合物とを、支持体の、フォトサーモグラフィ塗膜を含有する側とは反対側に同時に塗布した。埋込み型裏側導電性層は、保護上塗り層のためのキャリヤ層として役立った。インライン乾燥器を備えた精密多層塗布機を使用した。裏側上塗り層の乾燥塗膜重量は、4 g/m2であった。埋込み型裏側導電性層は、乾燥塗膜重量0.49 g/m2を提供するように、湿潤厚8.5 μmで塗布した。ZnSb2O6の塗膜重量をX線蛍光によって測定した。
【0287】
下記表Vに示された結果は、裏側上塗り層内のメタノール量が増大するのにつれて、導電率が増大することを実証する。この改善は、MeOH:MEK比が55:45で横ばいになるように見える。例1及び2の比較は、裏側上塗り層内のメタノールの量が増大するのにつれて、導電率の増大がより大きくなることを示す。加えて、裏側上塗り層配合物が、溶剤混合物中に55重量%のメタノールを含有すると、裏側層は支持体に対する良好な付着力を維持した。
【0288】
表VIは、埋込み型裏側層配合物の調製中に形成された金属アンチモン酸クラスターは、全ての試料中で同じサイズのままであるが、しかし多層塗布中に上塗り層を通してメタノールを添加すると、クラスター間のギャップ密度に影響を与える。
【0289】
【表4】

【0290】
【表5】

【0291】
【表6】

【0292】
例3:
表側フォトサーモグラフィ配合物及び塗膜を例1において説明したように調製した。裏側上塗り層配合物を、例1において説明したように調製した。溶剤は100% MEKであった。
【0293】
埋込み型裏側導電性層配合物
例1に示された材料を混合することにより、埋込み型裏側導電性層配合物を調製した。メタノールとメチルエチルケトンとの比(MeOH:MEK)を、表VIIに示したように変化させた。配合物の他の成分は同じままであった。対照試料中に存在する2%レベルのメタノールは、金属酸化物のCELNAX分散体から得られる。ZnSb2O6の塗膜重量をこの場合もX線蛍光によって測定した。
【0294】
埋込み型裏側導電性層配合物と、裏側上塗り層配合物とを、支持体の、フォトサーモグラフィ塗膜を含有する側とは反対側に同時に塗布した。埋込み型裏側導電性層は、保護上塗り層のためのキャリヤ層として役立った。インライン乾燥器を備えた精密多層塗布機を使用した。裏側上塗り層の乾燥塗膜重量は、2 g/m2であった。埋込み型裏側導電性層の乾燥塗膜厚は、乾燥塗膜重量0.6 g/m2を提供するように、9.5 μmであった。
【0295】
下記表VIIに示された結果は、埋込み型導電性裏側キャリヤ層配合物のための溶剤としてメタノールを内蔵することにより、貧弱な導電率を有するフォトサーモグラフィ材料が提供されることを実証する。
【0296】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー、及び反応するように組み合わされた、非感光性の被還元性銀イオン源と、前記非感光性の被還元性銀イオン源のための還元剤組成物とを含む1つ又は2つ以上の熱現像可能な画像形成層を、支持体の一方の側に有し、そして
該支持体の裏側に配置された、1種又は2種以上のバインダー・ポリマー中に導電性金属酸化物を含む非画像形成性裏側導電性層、及び該裏側導電性層上に直接に配置された、1種又は2種以上の皮膜形成ポリマーを含む上塗り層を、
有する支持体を含んで成る熱現像可能な材料。
該裏側導電性層及び該上塗り層は、同じか又は異なる有機溶剤から同時に塗布されており、
該上塗り層を塗布するために使用される該有機溶剤は、当該溶剤混合物の10重量%超〜最大90重量%の量のアルコールを含む有機溶剤混合物であり、
該裏側導電性層の正規化平均ギャップ密度は、該上塗り層を塗布するために使用される有機溶剤がアルコールを含有しない場合の該裏側導電性層の正規化平均ギャップ密度を少なくとも20%上回る増大を示す。
【請求項2】
該アルコールがメタノール、エタノール、又はイソ-プロパノールであり、そして該1種又は2種以上の皮膜形成ポリマーがセルロースポリマー又はポリビニルアセタールを含む請求項1に記載の材料。
【請求項3】
該アルコールが、該有機溶剤混合物の20〜60重量%を占めるメタノールであり、そして該皮膜形成ポリマーがセルロースポリマーである請求項1に記載の材料。
【請求項4】
該裏側導電性層が、該支持体に対する該裏側導電性層の直接的な付着を促進するのに役立つ第1ポリマーと、該第1ポリマーとは異なっており且つ該第1ポリマーと単一相混合物を形成する第2ポリマーとを含む2種又は3種以上のポリマーの混合物を含み、
該上塗り層の該皮膜形成ポリマーと、該裏側導電性層の該第2ポリマーとが、同じか又は異なる、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、セルロースポリマー、無水マレイン酸-エステルコポリマー、又はビニルポリマーであり、そして、
該有機溶剤混合物が、該有機溶剤混合物の30〜55重量%の量のメタノール、エタノール、又はイソプロパノールを含む請求項1に記載の材料。
【請求項5】
該裏側導電性層の該第1ポリマーがポリエステル樹脂を含み、そして該上塗り層の該皮膜形成ポリマーと該裏側導電性層の該第2ポリマーとが、同じか又は異なるポリビニルアセタール、又はセルロースエステルポリマーである請求項4に記載の材料。
【請求項6】
該裏側導電性層の正規化平均ギャップ密度が少なくとも0.04(ギャップ/μm3)/(mg/ft2)[0.43(ギャップ/μm3)/(mg/m2)]である請求項1に記載の材料。
【請求項7】
該裏側導電性層の正規化平均ギャップ密度が少なくとも0.06(ギャップ/μm3)/(mg/ft2)[0.65(ギャップ/μm3)/(mg/m2)]である請求項6に記載の材料。
【請求項8】
該金属酸化物が、0.05〜2 g/m2の量でクラスターとして裏側導電性層内に存在し、該1種又は2種以上のバインダー・ポリマーが、25〜60重量%の量で存在し、そして該裏側導電性層の乾燥厚が、0.05〜1.1 μmである請求項1に記載の材料。
【請求項9】
該金属酸化物が非針状金属アンチモン酸塩である請求項1に記載の材料。
【請求項10】
該金属酸化物が、下記構造I又はII:
【化1】

(上記式中、Mは亜鉛、ニッケル、マグネシウム、鉄、銅、マンガン、又はコバルトである)、
【化2】

(上記式中、Maはインジウム、アルミニウム、スカンジウム、クロム、鉄、又はガリウムである)
によって表される組成を有する非針状金属アンチモン酸塩である請求項9に記載の材料。
【請求項11】
該金属酸化物が、粒子又はクラスターとして存在しており、そして:
1) 該裏側導電性層の水電極抵抗率が、21.1℃及び50%相対湿度で測定して、1×1012オーム/□以下であり、
2) 該裏側導電性層内の該1種又は2種以上のバインダー・ポリマーの総量が、少なくとも25重量%であり、
3) 該導電性金属酸化物が、2 g/m2未満の量で存在しており、
4) 該裏側導電性層の正規化平均ギャップ密度が、少なくとも0.06(ギャップ/μm3)/(mg/ft2)[0.65(ギャップ/μm3)/(mg/m2)]であり、該ギャップは、導電性粒子又はクラスターの間で少なくとも0.25 μmであり、そして
5) 該裏側導電性層の正規化平均金属酸化物クラスター・サイズ分布が少なくとも0.012(μm)/(mg/ft2)[0.13 μm/(mg/m2)]である、
請求項1に記載の材料。
【請求項12】
該非感光性の被還元性銀イオン源が、脂肪族カルボン酸銀塩であるか、又は少なくとも1種がベヘン酸銀である脂肪族カルボン酸銀塩の混合物である請求項1に記載の材料。
【請求項13】
感光性ハロゲン化銀を含む感光性フォトサーモグラフィ材料である請求項1に記載の材料。
【請求項14】
バインダー、及び、反応するように組み合わされた、感光性ハロゲン化銀と、非感光性の被還元性銀イオン源と、該非感光性の被還元性銀イオン源のための還元剤組成物とを含む1つ又は2つ以上の熱現像可能な画像形成層を、支持体の一方の側に有し、そして
該支持体の裏側に配置された、
a) 1つ又は2つ以上の皮膜形成ポリマーを含む上塗り層、及び
b) 該支持体と該上塗り層との間に挟まれて該支持体に該上塗り層を直接に付着させる、該支持体に対する該裏側導電性層の直接的な付着を促進するのに役立つ第1ポリマーと該第1ポリマーとは異なっており且つ該第1ポリマーと単一相混合物を形成する第2ポリマーとを含む2種又は3種以上のポリマーの混合物中に非針状金属アンチモン酸塩から成る粒子又はクラスターを含んで成る、非画像形成性裏側導電性層を
有する支持体を含んで成るフォトサーモグラフィ材料。
該裏側導電性層及び該上塗り層は、同じか又は異なる有機溶剤から同時に塗布されており、
該上塗り層のための該有機溶剤は、該1種又は2種以上の皮膜形成ポリマーが室温で可溶性である有機溶剤混合物であり、該有機溶剤混合物は、該有機溶剤混合物の20〜60重量%の量のアルコールを含み、そして、
該裏側導電性層の正規化平均ギャップ密度は、該上塗り層を塗布するために使用される有機溶剤がアルコールを含有しない場合の該裏側導電性層の正規化平均ギャップ密度を少なくとも20%上回る増大を示す。
【請求項15】
1) 該裏側導電性層の水電極抵抗率が、21.1℃及び50%相対湿度で測定して、1×1012オーム/□以下であり、
2) 該裏側導電性層内の2種又は3種以上のポリマーの混合物の総量が、少なくとも25重量%であり、
3) 該非針状金属アンチモン酸塩が、2 g/m2未満の量で存在しており、
4) 該上塗り層の該皮膜形成ポリマーと、該裏側導電性層の該第2ポリマーとが、同じか又は異なるポリビニルアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、セルロースポリマー、無水マレイン酸-エステルコポリマー、又はビニルポリマーであり、
5) 該裏側導電性層の正規化平均ギャップ密度が、少なくとも0.06(ギャップ/μm3)/(mg/ft2)[0.65(ギャップ/μm3)/(mg/m2)]であり、該ギャップが、導電性粒子又はクラスターの間で少なくとも0.25 μmであり、そして
6) 該裏側導電性層の正規化平均金属酸化物クラスター・サイズ分布が少なくとも0.012(μm)/(mg/ft2)[0.13 μm/(mg/m2)]である、
請求項14に記載の材料。
【請求項16】
該感光性ハロゲン化銀が、予め形成された臭化銀又はヨード臭化銀を含み、該非感光性の被還元性銀イオン源が、ベヘン酸銀を含み、該還元剤がヒンダード・フェノールを含み、該上塗り層がさらにハレーション防止組成物を含み、そして金属アンチモン酸塩が、アンチモン酸亜鉛(ZnSb2O6)から成っている請求項14に記載の材料。
【請求項17】
(A) 潜像を形成するために、フォトサーモグラフィ材料である請求項1に記載の材料を電磁線に像様露光し、
(B) 同時に又は続いて、該潜像を現像して可視像にするために、該露光されたフォトサーモグラフィ材料を加熱する、
ことを含んで成る可視像形成方法。
【請求項18】
該可視像を医療診断のために使用することを含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
サーモグラフィ材料である請求項1に記載の材料を熱画像形成することを含む可視像形成方法。
【請求項20】
バインダー、及び反応するように組み合わされた、非感光性の被還元性銀イオン源と、前記非感光性の被還元性銀イオン源のための還元剤組成物とを含む1つ又は2つ以上の熱現像可能な画像形成層を、一方の側に有する支持体を含んで成る熱現像可能な材料の製造方法であって、当該方法は、
非画像形成性裏側導電性層上に上塗り層を直接に提供するために、1種又は2種以上のバインダー・ポリマー中に導電性金属酸化物を含む非画像形成性裏側導電性配合物と、1種又は2種以上の皮膜形成ポリマーを含む上塗り層配合物との両方を、該支持体の裏側に同時に塗布することを含み、
該裏側導電性配合物と上塗り層配合物とは、同じか又は異なる有機溶剤から塗布され、
該上塗り層配合物のための該有機溶剤は、該1種又は2種以上の皮膜形成ポリマーが室温で可溶性である、当該有機溶剤混合物の10重量%超〜最大90重量%を占めるアルコールと、沸点130℃未満のケトン、エステル、エーテル、又はグリコールエーテルとの有機溶剤混合物である。
【請求項21】
該1種又は2種以上の皮膜形成ポリマーがセルロースポリマーであり、該裏側導電性配合物中のバインダー・ポリマーが、該支持体に対する該裏側導電性層の直接的な付着を促進するのに役立つポリエステルと、該ポリエステルと単一相混合物を形成するポリビニルアセタール又はセルロースポリマーである第2ポリマーとを含む2種又は3種以上のポリマーの混合物を含み、そして該有機溶剤混合物が、該有機溶剤混合物の20〜60重量%の量のメタノールと、沸点110℃以下のケトンとを含む請求項20に記載の方法。

【公表番号】特表2008−530589(P2008−530589A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554141(P2007−554141)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/002759
【国際公開番号】WO2006/086162
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(507177331)ケアストリーム ヘルス,インコーポレイティド (13)
【Fターム(参考)】