説明

改善された性質を有する水乳化可能なイソシアネート

本発明は、水乳化可能なポリイソシアネート製剤の製造のための2段階方法に関する。第1工程(A)において、分散活性反応生成物を、少なくとも1個のジイソシアネートおよび少なくとも1個のポリアルカンエーテルとから製造し、かつ第2工程(B)で、アロファネート触媒の存在下で、反応生成物を脂肪族ポリイソシアネートと混合する。さらに本発明は、前記方法によって得ることが可能な、水分散可能なポリイソシアネート製剤ならびに水性被覆剤および接着剤分散液中での前記製剤の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1工程(A)中で、少なくとも1種のジイソシアネートと少なくとも1種のポリアルキレンエーテルアルコールとから成る分散活性反応生成物を製造し、かつ第2工程(B)で、アロファネート化触媒の存在下で、この反応生成物を脂肪族ポリイソシアネートと混合することを特徴とする、水乳化可能なポリイソシアネート製剤を製造するための2段階方法に関する。さらに本発明は、この方法により得られた水乳化可能なポリイソシアネート製剤ならびにこの製剤の水性被覆剤および接着剤分散液中での使用に関する。
【0002】
水乳化可能なポリイソシアネート製剤は、原則として公知である。今日では、好ましくは、水希釈可能な二成分系ポリウレタン(2K−PUR)ラッカーのための架橋剤成分としての役割が知られている。水性ポリオール分散液との組み合わせにおいて、すでに室温で高い質を有する被覆に硬化する、溶剤不含のラッカー系配合物を達成し、この場合、これらは、耐溶剤性および耐化学薬品性または機械的負荷安定性に関して常用のラッカーにひけをとらないものである。
【0003】
このような製剤中でのポリイソシアネート成分として、特に、脂肪族および/または脂環式ジイソシアネートをベースとする、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネートを使用する。水中での乳化性を達成するために、一方でポリイソシアネートを、適した様式および方法で、親水性ポリオキシアルキレン基と直接反応させることが知られている。
【0004】
このような反応または製剤に関する例は、それぞれEP−A206059、EP−A959087またはWO01/40347で開示されている。
【0005】
さらに2段階方法が公知である。EP−A 486881では、第1工程で最初にジイソシアネートとポリアルキレンエーテルアルコールとから成る乳化剤を合成する2段階方法が開示されている。この乳化剤は、第2工程で、少なくとも1種の脂肪族ポリイソシアネートと混合し、これにより水乳化可能な製剤を得る。2段階方法は、1段階方法と比較して、性質の集中的調整を最終的に可能にする。しかしながら、たとえばポリアルキレンエーテル基の高濃度での使用による良好な乳化性は、しばしば他の性質、たとえばラッカーの硬度を損なう。
【0006】
したがって本発明の課題は、水乳化可能なポリイソシアネート製剤を製造するための2段階方法を提供することであり、この場合、この方法は、改善された乳化性と、改善された性能特性、特に改善されたラッカー硬度および耐水性とを併せ持つ製剤を提供する。したがって、水乳化可能なポリイソシアネート製剤を製造するための2段階方法は、第1工程で、
(A)テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、4,4’−ジ−(イソ−シアナトシクロヘキシル)−メタン、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサン−ジ−イソシアネート、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2,4−および2,6−トルイレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレン−ジイソシアネート、p−キシリレン−ジイソシアネート、2,4’−および4、4’−ジイソシアナトジフェニルメタンの群から選択された少なくとも1種のジイソシアネートと、
アルキレン基中2〜4個の炭素原子を有し、少なくとも8個のエチレンオキシド単位を有するポリエーテル基を含む、少なくとも1種の一価または多価ポリアルキレンエーテルアルコールとから、分散活性反応生成物(E)を製造し、かつ
(B)得られた反応生成物(E)を、第2工程で、平均NCO−官能価2.5〜3.5を有する、少なくとも1種の脂肪族ポリイソシアネートと混合し、
その際、工程(B)を、アロファネート化触媒の存在下におこない、かつ(E)とポリイソシアネートとの間に、アロファネート基が形成されるような条件を選択することを特徴とする。
【0007】
さらに、本発明の方法により得られる水乳化可能なポリイソシアネート製剤ならびに水性被覆剤中および接着剤分散液中でのその製剤の使用が見出された。
【0008】
本発明による製剤は、EP−A486881により製造された生成物と比較して、改善された乳化特性と一緒に、改善された性能特性を有する。本発明による製剤を用いて製造されたラッカーは、より高い硬度および改善された耐水性を有する。
【0009】
本発明に関して、具体的には以下のように実施する:
本発明の方法の工程(A)において、最初に、少なくとも1種のジイソシアネートと少なくとも1種のポリアルキレンエーテルアルコールとから成る分散活性反応生成物(E)を合成する。(E)、またはこれらのポリイソシアネートとの反応生成物はアロファネートを形成し、適用のために非水性製剤を水性媒体中で乳化するかあるいは分散させる場合には乳化剤として働く。ジイソシアネートは、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、4,4’−ジ−(イソシアナトシクロヘキシル)−メタン、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサンジイソシアネート、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、2,4−トルイレンジイソシアネート、2,6−トルイレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレン−ジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネートまたは2,4’−ジイソシアナトジフェニルメタンおよび4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタンの群から選択された少なくとも1種である。
【0010】
好ましくは、2,4’−および4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)および4,4’−ジ−(イソシアナトシクロヘキシル)−メタン(HMDI)ならびに特に2,4−および2,6−トルイレンジイソシアネート(TDI)である。多くの場合において、さらにヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)および1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(IPDI)が有用であることが見いだされた。
【0011】
ジイソシアネート成分は、ポリアルキレンエーテルアルコールと反応させる。ポリアルキレンエーテルアルコール中のアルキレン基は、通常は2〜4個の炭素原子を有し、典型的には−CH−CH(CH)−、−(CH−であり、かつ、好ましくは−(CH−である。ポリアルキレンエーテルアルコールの製造は、公知の様式および方法で、適した出発材料、たとえばアルコールのアルコキシル化により実施することができる。多官能性出発材料または好ましくは単官能性出発材料を使用することができ、したがって、さらに多価または好ましくは一価のポリアルキレンエーテルアルコールであってもよい。たとえば、適した出発材料分子は、グリコヘキサノール、3−メチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、フェノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、アニリン、ペンタエリトリット、トリメチロールプロパンまたはグリセリンを含む。好ましくはC〜C−アルカノール、たとえばメタノール、エタノール、n−プロパノールまたはn−ブタノールである。通常は、製造は、酸性触媒または塩基性触媒の存在下で実施する。多くの使用のために、ポリアルキレンエーテルアルコールは、引き続いて、通常は生成物の脱塩を実施する。ポリアルキレンエーテル鎖は混合されていてもよく、たとえばエチレンオキシド単位およびプロピレンオキシド単位から構成される。鎖は、一般に8〜70個、好ましくは10〜20個のエチレンオキシド単位を含む。良好な結果は、ポリアルキレンエーテルアルコールが、少なくとも60質量%、好ましくは少なくとも80質量%のエチレンオキシド単位を含有する場合に得られる。特に好ましくは、純粋なポリエチレンオキシド鎖である。
【0012】
工程(A)中でのOH基とNCO基との数比は、通常は0.6〜1.2、好ましくは0.8〜1.2、さらに好ましくは0.9〜1.1および特に好ましくは約1:1である。ポリアルキレンエーテルアルコールとジイソシアネートとのこれらの反応は公知であり、かつ通常は10〜150℃の温度、好ましくは20〜100℃の温度で実施する。反応時間は、一般に、イソシアネート基と反応性のポリアルキレンエーテルアルコールの基が、少なくとも90モル%の範囲でイソシアネート基と反応する程度である。この反応は、公知の触媒作用物質を使用することにより、促進することができる。
【0013】
本発明による方法の工程(B)において、反応生成物(E)を、平均NCO−官能価2.5〜3.5を有する脂肪族ポリイソシアネートと混合し、かつアロファネートに変換する。
【0014】
工程(B)は、好ましくは直接的に工程(A)に接続するが、しかしながら(E)を、最初に単離および/または精製し、その後に新規バッチの範囲で、ポリイソシアネートと反応させることも可能である。
【0015】
脂肪族ポリイソシアネートは、一般にはNCO−含量5〜30質量%、好ましくは10〜25質量%を有する。
【0016】
脂肪族ポリイソシアネートは、本発明の範囲内で:
1.脂肪族および/または脂環式ジイソシアネートをベースとする、イソシアヌレート基を有するポリイソシアネート。特に好ましくは、1,6−ジイソシアナトヘキサンおよび/または1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート(IPDI))をベースとする、相当するイソシアナト−イソシアヌレートである。このようなイソシアヌレート基を有するポリイソシアネートの製造は、たとえば、DE−A2616416、EP−A3765、EP−A10589、EP−A47452、US−A4288586またはUS−A4324879に記載されている。原則的に、本発明によるポリイソシアネート製剤において、これらの特に好ましい化合物ばかりでなく、さらに脂肪族および/または脂環式ジイソシアネートをベースとする、イソシアヌレート基を有する任意のポリイソシアネートが存在していてもよい。適したイソシアナト−イソシアヌレートは、特に式
【0017】
【化1】

の簡単なトリス−イソシアナトアルキル−(または−シクロアルキル−)イソシアヌレートまたは1個以上のイソシアヌレート環を有するその高級同族体との混合物であり、式中X、XおよびXは、同一または異なる基を示し、かつ出発化合物ジイソシアネートのベースとなる炭化水素基を意味する。イソシアナト−イソシアヌレートは、一般に10〜30、好ましくは15〜25質量%のNCO−含量を有し、かつ平均NCO−官能価2.6〜3.5を有する。
【0018】
さらに脂肪族ポリイソシアネートは、本発明の範囲内において:
2.脂肪族結合したイソシアネート基を有する、ビュレット基含有ポリイソシアネート、特にトリス(6−イソシアナトヘキシル)−ビュレットまたはその高級同族体との混合物。これらのビュレット基含有ポリイソシアネートは、一般に、NCO−含量18〜22質量%および平均NCO−官能価3〜3.5を有する。
【0019】
さらに脂肪族ポリイソシアネートは、本発明の範囲内において:
3.脂肪族または脂環式結合イソシアネート基を有する、ウレタン−および/またはアルファネート基含有ポリイソシアネート、たとえば、過剰量のヘキサメチレンジイソシアネートまたはIPDIを、簡単な多価アルコール、たとえばトリメチロールプロパン、グリセリン、1,2−ジヒドロキシプロパンまたはこれらの混合物と反応させることによって得ることができるものである。これらのウレタン−および/またはアロファネート基含有ポリイソシアネートは、一般にNCO−含量12〜20質量%および平均NCO−官能価2.5〜3を有する。
【0020】
好ましくは、第1群および第2群のポリイソシアネートを使用する。さらに前記ポリイソシアネートの混合物を使用できることは自明である。
【0021】
反応生成物(E)は、通常は、水乳化可能なポリイソシアネート製剤を1〜25質量%、好ましくは5〜20質量%および特に好ましくは10〜15質量%の量で含有する。
【0022】
さらに工程(B)を、適したアロファネート化触媒の存在下で実施する。その際、アルファネート化触媒の添加は、工程(B)前または工程(B)中で実施する。しかしながら、さらにアロファネート触媒を、すでに工程(A)前に添加するか、あるいは、工程(A)中に添加することも可能である。NCO−基は有利には存在するOH基と反応することから、工程(A)中でのアロファネート基形成は一般に考慮しなくてもよい。
【0023】
アロファネート化触媒は、原則として当業者に公知である。
【0024】
本発明による方法を実施するために、適したアロファネート化触媒は、特に亜鉛化合物、たとえば亜鉛−(II)−n−オクタノエート、亜鉛−(II)−2−エチル−1−ヘキサノエートまたは亜鉛−(II)−アセチルアセトネート、アンモニウム塩、たとえばN,N,N−トリメチル−N−(2−ヒドロキシプロピル)−アンモニウム−2−エチルヘキサノエート、アルカリ金属塩、たとえばオクタン酸カリウム、酢酸カリウムまたは蟻酸カリウムを含む。
【0025】
本発明による方法のための好ましい触媒は、前記の種類の亜鉛化合物およびアルカリ金属塩である。特に好ましくはカリウム塩、および特に好ましくは酢酸カリウムである。
【0026】
これらの触媒は、本発明による方法により、反応体の全質量に対して0.001〜5質量%、好ましくは0.005〜1質量%の量を使用する。
【0027】
一般的にアロファネート化は、高められた温度で、たとえば40〜140℃、好ましくは60〜100℃の温度で実施する。
【0028】
反応過程は、たとえばNCO−含量を滴定することによって観察することができる。
【0029】
アロファネート化の程度は、それぞれ水乳化可能な製剤の好ましい性質にしたがって当業者が定めることができる。工程(A)で形成された反応生成物(E)の少なくとも10モル%のウレタン基を反応させ、アロファネート基にすることが有用である。好ましくは15〜100モル%および特に好ましくは20〜100モル%の反応率である。
【0030】
混合および反応は、好ましくはインテンシブミキサを用いて実施することができる。高い粘度を回避するために、さらに不活性溶剤が存在していてもよい。
【0031】
このようにして製造されたポリイソシアネート製剤は、好ましくは固体の形で使用する。その使用前に製剤を、さらに少量、たとえば溶剤不含の製剤に対して1〜40質量%の有機溶剤、たとえば酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、酢酸メトキシプロピル、プロピレンカーボネートまたはメチルエチルケトンを添加し、その粘度を減少させる。さらに前記溶剤の混合物を使用できることは自明であってもよい。さらに、本発明によるポリイソシアネート製剤を、一般に90〜35質量%の含水量の水性エマルションまたは分散液に加工することが可能である。これらの分散液またはエマルションの製造は、ポリイソシアネート製剤と水との簡単な混合によって実施される。この場合、低い剪断力が大きな利点となる。当業者に公知の混合装置、たとえば簡単な撹拌装置を使用することができる。
【0032】
本発明のポリイソシアネート製剤は、金属、木材、紙、厚紙、プラスチック、織物および特に皮革のための水性被覆剤を改良するために適しており、この場合、これらは、固体含量5〜40質量%、好ましくは5〜20質量%を有する水性分散液または溶液をベースとする。適した被覆剤は、オレフィン系不飽和モノマーのホモポリマーおよびコポリマーまたはポリウレタンの常用の水性分散液またはさらに天然物質の溶液、たとえばカゼインを含む。
【0033】
本発明によるポリイソシアネート製剤は、水性被覆剤に、被覆剤の固体含量に対して一般には1〜25、好ましくは2.5〜20質量%の量で添加する。
【0034】
公知方法では、支持体上に噴霧することにより塗布する。皮革または人工皮革を、このように改質化した分散液または溶液を用いて被覆する場合には、特に良好な湿潤摩擦性および曲げ抵抗性を生じる。
【0035】
本発明によるポリイソシアネート製剤は、特に、たとえば結合剤含量10〜65質量%、好ましくは20〜60質量%に相当する固体含量を有する水性分散剤をベースとする水性接着剤、たとえば天然ゴム、オレフィン系不飽和モノマーのホモポリマーまたはコポリマー水性分散液および通常の水性ポリウレタン分散液を改質化するのに適している。
【0036】
オレフィン系不飽和モノマーのホモポリマーまたはコポリマーの適した分散液は、たとえば2〜18個、好ましくは2〜4個の炭素原子を有するカルボン酸のビニルエステル、たとえば酢酸ビニルをベースとするホモポリマーまたはコポリマーの通常の分散液、場合によってはオレフィン系不飽和モノマーの全量に対して70質量%までの他のオレフィン系不飽和モノマーを有するもの、および/または1〜18個、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルコールの(メタ)アクリル酸エステル、たとえば(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸プロピルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルエステルまたは(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルエステルのホモポリマーまたはコポリマーの分散液、場合によっては70質量%まで他のオレフィン系不飽和モノマーを有するもの、および/または約20〜60質量%のブタジエン含量を有するブタジエン−スチレン−コポリマーの分散液、および/または他のジエン−ポリマーまたは−コポリマー、たとえばポリブタジエンまたはブタジエンと他のオレフィン系モノマー、たとえば、スチレン、アクリロニトリルおよび/またはメタクリロニトリルとのコポリマー、および/または2−クロロ−ブタジエン−1,3のポリマーまたはコポリマーの水性分散液、場合によっては、上記に示された他のオレフィン系不飽和モノマーを有し、この場合、これらは、たとえば約30〜40質量%の塩素含量、特に約36質量%の塩素含量を有するもの、である。
【0037】
好ましくは、1〜4個の炭素原子を含有するアルコールのアクリレートまたはメタクリレート90〜99.5質量%、およびコポリマーの場合には、ヒドロキシアルキル基中に2〜20個の炭素原子を有するヒドロキシアルキルアクリレートおよびヒドロキシアルキルメタクリレート、たとえばヒドロキシエチル−、ヒドロキシプロピル−またはヒドロキシブチルアクリレートまたは−メタクリレート0.5〜10質量%である。このような分散液は公知であり、通常の方法で乳化重合により製造可能である(Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie,4.Auflage, Bd.E20, S.217 ff.参照)。
【0038】
適した水性ポリウレタン分散液は公知の種類のものであり、この場合、これらは、たとえばUS−A3479310、GB−A1076688、US−A4108814、US−A4108814、US−A4092286、DE−A2651505,US−A4190566、DE−A2732131またはDE−A2811148に記載されている。
【0039】
使用された水性接着剤は、接着剤工業において常用の助剤および添加剤を含有していてもよい。これらは、たとえば充填剤、たとえば石英粉、石英砂、高分散性シリカ、重晶石、炭酸カルシウム、チョーク、ドロマイトまたは滑石を含み、この場合、これらはしばしば適した湿潤剤、たとえばポリホスフェート、たとえばナトリウムヘキサメタホスフェート、ナフタリンスルホン酸、ポリアクリル酸アンモニウムまたは−ナトリウム塩を一緒に使用し、その際、湿潤剤は、一般に充填剤に対して0.2〜0.6質量%で添加する。
【0040】
さらに適した助剤は、接着剤に対して0.01〜1質量%の量で使用される有機増粘剤、たとえばセルロース誘導体、アルギン酸塩、澱粉または澱粉誘導体またはポリアクリル酸または接着剤に対して0.05〜5質量%の量で使用される無機増粘剤、たとえばベントナイトである。
【0041】
保存のための殺かび剤を、さらに接着剤に添加することができる。これらは、一般に、接着剤に対して0.02〜1質量%の量で使用する。適した殺かび剤は、たとえばフェノール−クレゾール−誘導体または有機錫化合物であってもよい。
【0042】
粘着付与される樹脂、たとえば天然樹脂または改質化樹脂、たとえばロジンエステルまたは合成樹脂、たとえばフタレート樹脂は同様に、接着剤中で公知の量で存在していてもよい。
【0043】
さらに溶剤、たとえばトルエン、キシレン、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ジオキサンまたはこれらの混合物または可塑剤、たとえばアジペートベース、フタレートベースまたはホスフェートベースのものを、水性接着剤分散液に添加することができる。
【0044】
本発明によるポリイソシアネート−製剤は、水性接着剤に、水性接着剤分散液の結合剤に対して、一般に1〜20質量%、好ましくは2〜10質量%の量で添加する。
【0045】
さらに本発明によれば、本発明による非水性ポリイソシアネート−製剤は、接着剤分散液中で、公知方法で撹拌することができる。特定の場合において、良好な結果は、最初に水性分散液を製造し、かつこれを接着剤分散液と混合する場合に達成される。
【0046】
このように改質化した水性接着剤は、同一または異なる種類の任意の好ましい材料を接着するのに適しており、この場合、この材料は、たとえば木材、紙、プラスチック材料、織物、皮革および無機材料、たとえばセラミック、石素材または石綿セメントである。
【0047】
以下の例は、本発明をさらに例証するものである。
【0048】
実施例
試験のために、以下の出発材料を使用する:
ポリエーテルA:
メタノールから出発し、水酸化カリウム触媒下で製造したOH数112を有する単官能性ポリエチレンオキシド(DIN53240により測定したもの)は、分子量500g/molに相当する。なおも存在する塩基性触媒残分をその後に酢酸で中和し、かつ生成物を脱塩した。その際、さらに形成された酢酸カリウムを除去する。
【0049】
ポリエーテルB:
メタノールから出発し、水酸化カリウム触媒下で製造したOH数112を有する単官能性ポリエチレンオキシド(DIN53240により測定したもの)は、分子量500g/モルに相当する。なおも存在する塩基性触媒残分をその後に酢酸で中和した。塩基性度は、HClで滴定することによって10.6mmol/kgに定めた。
【0050】
ポリエーテル75gに、p−トルエンスルホン酸無水物約0.12gを添加し、それにより塩基性度を2mmol/kg(HCl滴定)に調整した。形成された酢酸カリウムは、アロファネート化触媒として生成物中に残した。
【0051】
ポリイソシアネートA:
NCO−含量22.2%および23℃での粘度2.8Pasを有するHDI−イソシアヌレート。
【0052】
TDI−T80
80部の2,4−トルイレンジイソシアネートおよび20部の2,6−トルイレンジイソシアネートからなる混合物。
【0053】
使用した測定方法:
ハーゼン色指数:
ハーゼン色指数を用いて、工業用の黄色がかった透明な液体(たとえば、不純物または分解生成物に由来するもの)を測定した。標準としてヘキサクロロ白金酸カリウムの酸性溶液を使用した。測定方法は、DIN ISO 6271によりおこなった。
【0054】
振り子減衰試験
振り子減衰試験は、EN ISO 1522に基づいて(発行、2000年9月)、ケーニヒ−振り子(Koenig-Pendel)を用いて測定した。振り子減衰試験において、振り子を被覆表面上に置き、かつ振動させた。測定は、振り子振動によりおこなった。示された図は本来のふれ6℃から3℃までの振り子振動数である。振り子振動数が高くなればなるほど、ラッカーフィルムは硬い。
【0055】
比較例1
アロファネート化なしの場合
工程1−ポリエーテルA 150gをT80 26gと、60℃で30分に亘って、遊離NCOがもはや検出されなくなるまで反応させた。
【0056】
工程2−工程1からの生成物を、その後にポリイソシアネートA 900g中で撹拌し、かつ、この混合物を3時間に亘って60℃で撹拌した。
【0057】
得られた生成物は18.5%のNCOを有し、かつ粘度は23℃で3900mPasを示した。わずかな試料を、水中で振とうさせることにより、白色の粗粒子エマルションを生じた。24時間後にエマルションは沈澱した。
【0058】
例1
アロファネート化をおこなう場合
最初に、工程1による前生成物を、同じ種類および方法で比較例1に記載したようにして合成した。その後に、これらの前生成物176gに酢酸カリウム0.2gを添加し、かつ、これらの混合物を、室温で、ポリイソシアネートA900g中で撹拌した。さらに3時間に亘って混合物を60℃で撹拌した。得られた生成物は、NCO17.5%を有し、かつ粘度は23℃で3900mPasを示した。工程1中で合成された前生成物のウレタン基90モル%を、アロファネート基に変換した。
【0059】
わずかな試料は、水中での振とうにより、青色がかった微粒子エマルションを生じた。24時間後にエマルションはなおも完全であった。
【0060】
例2
ポリエーテル中でアロファネート化触媒を用いる場合
工程1−ポリエーテルB150gを、室温でTDI26gと一緒に混合させ、例1と同様に、遊離NCOがもはや検出されなくなるまで互いに反応させた。
【0061】
工程2−工程1からの生成物144g(約14質量%)を、ポリイソシアネートA900gに添加し、かつ例1と同様に互いに反応させた。生成物の測定したNCO値は、17.7%に達し、この場合、粘度は3900mPas(23℃で)まで測定され、かつハーゼン色指数は55ハーゼンであった。工程1で合成された前生成物のウレタン基90モル%をアロファネート基に変換した。
【0062】
わずかな試料は、水中での振とうにより、青色がかった微粒子エマルションを生じた。24時間後であってもエマルションは完全であった。
【0063】
水性ラッカーのための架橋剤としての使用
水性ラッカーのために、以下の成分からなる結合剤分散液を使用した。
【0064】
【表1】

【0065】
結合剤分散液の成分を、互いに激しく混合させた。
【0066】
ラッカーを製造するために、それぞれ同量の結合剤分散液(この場合、これは固体含量に基づく)および実施例および比較例中で合成したポリイソシアネートを、互いに激しく混合し、結合剤および架橋剤の可能な限り均質なエマルションを達成した。
【0067】
製造したエマルションを、200μmのドクターブレードを用いて、脱脂された薄鋼板上に塗布した。塗布した薄板を、勾配炉中で30分に亘って燃焼させる前に、室温で20分に亘って排気した(第1表による温度)。製造した薄板を、試験前に24時間に亘って標準条件下においた(50%大気湿分、23℃)。
【0068】
その後に、ラッカーフィルムの硬度を、振り子減衰試験を用いて、上記のように測定した。結果は第1表に示す。
【0069】
【表2】

【0070】
実施例および比較例は、ポリイソシアネートエマルションの安定性が、アロファネート化によって顕著に改善したことを示す。
【0071】
さらに、本発明によるエマルションを用いて製造されたラッカーの硬度は改善した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1工程において、
(A)テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、4,4’−ジ−(イソシアナトシクロヘキシル)−メタン、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサンジイソシアネート、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2,4−および2,6−トルイレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレン−ジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、2,4’−および4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタンから成る群から選択された、少なくとも1種のジイソシアネートと、少なくとも8個のエチレンオキシド単位を有するポリエーテル鎖を含む、アルキレン基中で2〜4個の炭素原子を有する少なくとも1種の一価または多価ポリアルキレンエーテルアルコールとからなる、分散活性の反応生成物(E)を製造し、
かつ、得られた反応生成物(E)を、第2工程で、
(B)平均NCO−官能価2.5〜3.5を有する、少なくとも1種の脂肪族ポリイソシアネートと混合する、水乳化可能なポリイソシアネート製剤を製造するための、2段階方法において、
工程(B)を、アロファネート化触媒の存在下におこない、かつ、(E)とポリイソシアネートとの間にアロファネート基が形成される条件を選択する、水乳化可能なポリイソシアネート製剤を製造するための方法。
【請求項2】
工程(A)中で、OH−基とNCO−基との数比が0.8〜1.2である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリアルキレンエーテルアルコールが、モノアルコールである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程(A)中で形成された反応生成物(E)の少なくとも10モル%のウレタン基を、アロファネート基に変換する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法により得られた、水乳化可能なポリイソシアネート製剤。
【請求項6】
製剤が、反応生成物(E)を1〜25質量%含有する、請求項5に記載の水乳化可能なポリイソシアネート製剤。
【請求項7】
水性被覆剤中での、請求項5または6に記載の水乳化可能なポリイソシアネート製剤の使用。
【請求項8】
接着剤分散液中での、請求項5または6に記載の水乳化可能なポリイソシアネート製剤の使用。

【公表番号】特表2007−509229(P2007−509229A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−537119(P2006−537119)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011639
【国際公開番号】WO2005/047357
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】