説明

改善された標的化ヌクレオチド交換のための代替ヌクレオチド

二重鎖DNA塩基配列の標的化ヌクレオチド交換のための、方法及びオリゴヌクレオチドであって、ドナーオリゴヌクレオチドが、天然に存在するA、C、T又はGと比較して、より高い結合親和性を有する少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含んでおり、及び/又はドナーオリゴヌクレオチドが、第1のDNA塩基配列中の向かい合った位置のヌクレオチドに対して相補的な天然に存在するヌクレオチドと比較して、第1のDNA塩基配列中の向かい合った位置のヌクレオチドにより強く結合する、方法及びオリゴヌクレオチド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリゴヌクレオチドの標的細胞中への導入による、標的細胞におけるDNAの特異的部位でのヌクレオチド配列の特異的且つ選択的改変のための方法に関する。本成果は、標的DNAの配列とオリゴヌクレオチドの配列が異なる場合には、標的DNAの配列がオリゴヌクレオチドの配列に変換できるようにする、1つ又は複数のヌクレオチドの標的化交換である。さらに特に、本発明は修飾オリゴヌクレオチドを使用する標的化ヌクレオチド交換に関する。本発明はさらにオリゴヌクレオチド及びキットに関する。本発明は本方法の応用にもまた関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子修飾は、生細胞の、又は細胞が一部分を形成する生物の、若しくは細胞が再生することができる生物の、1つ又は複数の遺伝子にコードされた生物学的特性を修飾する目的で、生細胞の遺伝物質中の変化を意図的に作成する過程である。これらの変化は、遺伝物質の一部分の欠失、外因性遺伝物質の追加又は遺伝物質の既存ヌクレオチド配列中の変化の形式をとることができる。真核生物の遺伝子修飾のための方法は20年以上知られており、農業、ヒトの健康、食品品質及び環境保護の分野の改善のための、植物細胞、ヒト細胞及び動物細胞並びに微生物における広範囲での応用が明らかにされた。遺伝子修飾の一般的な方法は、細胞ゲノムへの外来性DNA断片の添加から成り、次にそのことにより既存遺伝子によってコードされた特性に加えて、その細胞又はその生物へ新しい特性が付与されるだろう(DNA断片の添加の結果として、既存遺伝子の発現が抑制される応用を含む)。外来性DNA断片が挿入されるゲノム位置(及び従って発現の最終的なレベル)は制御されないので、並びに所望の効果が、もとのバランスのとれたゲノムによってコードされた天然の特性を超えて現われなければならないので、多くのそのような例は所望の特性を得るのに効果的であるが、それにもかかわらずこれらの方法はあまり正確ではない。これに反して、前もって定めたゲノムの遺伝子座におけるヌクレオチドの追加、欠失又は変換をもたらす遺伝子修飾の方法は、既存遺伝子の正確な修飾を可能にするだろう。
【0003】
現在、真核生物の細胞における正確な標的化遺伝子変化の生成については、以下の2つの方法が既知である:相同組換えを介する遺伝子ターゲティング及びオリゴヌクレオチド依存性標的化ヌクレオチド交換。
【0004】
相同組換えに基づいた方法は、ゲノムDNA中の天然に存在する二本鎖切断又はあらかじめ誘導された二本鎖切断が、切断に近接する隣接領域に対して或る程度のヌクレオチド配列相同性を有する任意の利用可能な鋳型DNA断片を使用して、細胞によって修復されるという原理を利用する(非特許文献1、非特許文献2)。そのような細胞に必要とされる配列相同性を有するドナーDNAを供給することによって、切断のいずれかの末端での相同組換えは正確な修復をもたらす可能性があり、それによってドナーDNAの相同性領域間に人工的にデザインされた任意の修飾が既存の遺伝子座中に組み込まれるだろう。真核生物の細胞においては、配列の一部分が失なわれ、無関係なDNA塩基配列が組み込まれる可能性のある、それほど正確でない修復機構のために、この正確な切断修復はむしろ低い頻度で生じる。
【0005】
オリゴヌクレオチド依存性標的化ヌクレオチド交換(TNE、時には、ODTNE)は、合成オリゴヌクレオチド(ワトソン−クリック塩基対合特性においてはDNAに類似しているが、化学的にはDNAと異なってもよいヌクレオチド様部分の短いストレッチから成る分子)の真核生物細胞核への送達に基づく方法である(非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5)。オリゴヌクレオチドの相同配列中にミスマッチヌクレオチドを意図的にデザインすることによって、ミスマッチヌクレオチドがゲノムDNA配列中に組み込まれてもよい。この方法は、既存の遺伝子座中の単一のヌクレオチド又は多くとも数ヌクレオチドの変換を可能にするが、既存の遺伝子中に遺伝子機能の破壊をもたらす終止コドンを作り出すため、又はタンパク質をコードする遺伝子に改変されたアミノ酸組成をもたらすコドン変化を作り出すために適用されてもよい(タンパク質工学)。
【0006】
標的化ヌクレオチド交換は、植物細胞、動物細胞及び酵母細胞において記述されている。最初のTNE報告によれば、オリゴヌクレオチドがRNA−DNAハイブリッド分子として合成され得る、いわゆるキメラを利用するものであり(非特許文献6、非特許文献7の第174頁)、それは染色体の標的部位で挿入されようにデザインされ得る、自己相補的なオリゴヌクレオチドから成っていた。キメラは、染色体標的で変異を導入するための鋳型を形成する、ミスマッチヌクレオチドを含んでいる。キメラを使用する最初の実施例は、ヒト細胞から生じた(非特許文献4総説の第321-326頁、非特許文献8を参照)。キメラの使用は植物種のタバコ、コメ、及びトウモロコシでさらに成功した(非特許文献9、非特許文献7の第174-184頁、非特許文献10、非特許文献11)。これらの研究は、除草剤抵抗性を付与する点変異の導入に基づいていた。TNEを研究するのに最も扱いやすい系は酵母のサッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)であった(非特許文献12)。酵母変異体の使用により、TNEで重要な役割を果たすと思われるいくつかの遺伝子(RAD51、RAD52及びRAD54)が同定された。
【0007】
TNEの代替的な方法は、特異的染色体突然変異を導入するために一本鎖(ss)オリゴヌクレオチドを利用するものである。今までのところ、ssオリゴヌクレオチドは、酵母細胞及びヒト細胞においてのみ調べられた(非特許文献13、非特許文献14の総説)。
【0008】
ヒト細胞がS期において停止された場合、TNEの効率が増加し(非特許文献15)、このことから効率的なTNEが起こるためにはDNAが開いた立体構造を有していなければならないことが示唆される。ssオリゴヌクレオチドを使用するTNEは、遺伝子修復の複製様式を介して起こることが提示されている。このような場合において、ssオリゴヌクレオチドは複製フォークでアニールし、ラギング鎖の岡崎フラグメント間の娘鎖へと組み込まれるだろう。これによって、新しく複製されたDNA鎖のうちの1つにおいてミスマッチが生じる。ssオリゴヌクレオチド中の変異は、親鎖におけるヌクレオチドを変換させることができるが、方向性のある修復の可能性は恐らく低い。これは、複製の最中のミスマッチ修復についての現在の見解が、娘鎖中のエラーを修復するために、親鎖が鋳型として使用されるという考えを推進するからである(非特許文献16)。キメラオリゴヌクレオチドを使用するTNEは、DNA二重鎖の中へのキメラの挿入によって起こると考えられる。キメラRNA鎖は、標的配列の1つの鎖に結合する。このRNA/DNA結合はDNA/DNA相互作用よりも安定しており、二重鎖中のキメラの安定化を支援するだろう。遺伝子修正は、他の標的鎖に結合するキメラのDNA鎖によって実行され、結果として標的配列の1つの鎖中の塩基変化をもたらす。キメラの分解又は解離後に、標的中に結果として生じるミスマッチは、恐らくミスマッチ修復経路からのタンパク質によって解消されるが、これはまだ未確認である。
【0009】
植物のような高等生物の細胞におけるTNEの応用が直面する最も重大な問題は、これまでに報告されている低効率である。トウモロコシにおいて、(非特許文献17)は、1×10−4の変換頻度を報告した。タバコ(非特許文献18)及びコメ(非特許文献10)において、続いて行なわれた研究では、それぞれ1×10−6及び1×10−4の頻度が報告されている。これらの頻度はTNEの実用化のためには、あまりにも低いままである。
【0010】
正確なDNAの複製は、ゲノム安定性の維持を仲介し、DNA中に含まれる遺伝子情報が変異のない状態で1つの世代から次の世代へと受け渡されることを保証する、重要な基準の1つである。多くのエラーが、親DNA鎖中の損傷から生じるか、又はDNA塩基と反応する薬剤(紫外線、環境有害物質)によって生じる。すべての生物は、これらの変異を防止又は修正するために安全装置を維持しなければならない。ミスマッチ修復系(MMR)は、DNA損傷の監視及び異なった配列間の組換えの防止において、DNA複製の最中にもたらされたミスマッチ塩基又は不対塩基を認識して修正すると考えられ(非特許文献19)、生細胞におけるDNA複製の忠実度に貢献する。
【0011】
MMRは、複製の最中の切り出し/再合成過程によって新しく合成された鎖上の誤って組み込まれたヌクレオチドを認識して除去し、したがって鋳型鎖上に含まれている情報を回復させる(非特許文献20、非特許文献21、非特許文献22、非特許文献23、非特許文献19)。このタイプの複製エラーは、自然に起こり、複製型DNAポリメラーゼ酵素複合体の3’−5’エキソヌクレアーゼプルーフリーディング活性によって時々検出されないか、又は鋳型鎖中の修飾ヌクレオチドによって引き起こされる(非特許文献19)。ヒトMMRタンパク質中の変異はマイクロサテライト配列の発生に結びつくことが発見されている(非特許文献19)。マイクロサテライトは、最大30回反復する1〜5塩基対のタンデム反復の遺伝子座である。これらの配列は、複製の最中のDNAポリメラーゼのスリップを引き起こす場合があり、鋳型DNA鎖又は新生DNA鎖中の1つ又は複数のヌクレオチドの小さなループヘテロ二重鎖の形成をもたらす。これらのヘテロ二重鎖の除去の失敗は、続いて起こる各々の複製ラウンドにおいて異なるサイズの対立遺伝子を産生する。これらの対立遺伝子は、欠損MMRタンパク質と共に癌患者において存在することが示されている(非特許文献24、非特許文献19、非特許文献25)。
【0012】
MMRは、DNA損傷の存在下において、細胞周期チェックポイント活性化及びアポトーシス開始経路への関連を介してDNA損傷シグナリングにも関与する(非特許文献26)。MMRは多数の変異の蓄積を回避するためにアポトーシスを誘導し、したがってこの系が不在である場合について、抗腫瘍薬剤との相互作用の点から検討された。MMR系が損なわれている患者は、腫瘍細胞の破壊における抗腫瘍物質による治療に対してそれほど効果的に反応せず、したがって薬物応答においてMMR系のアポトーシス誘導が重要であることが示された(非特許文献27)。
【0013】
したがってMMRは、ゲノムの安定性の維持において2つの役割を有する:1)ミスマッチを認識及び補正すること、並びに2)変異の蓄積を防止するためにアポトーシスをシグナル伝達すること。
【0014】
細菌のMMR系は3つの主要なタンパク質から成り、それらはMutHLSタンパク質と呼ばれる。MutSはミスマッチ認識で必要とされるATPアーゼである。MutSはミスマッチ塩基ペアを結合する過程におけるATPを結合し、加水分解する(非特許文献28)。ATPはミスマッチからのMutSの遊離を促進する。MutLは、MutSとMutHの間の結合の形成において、ミスマッチ修復の開始及び調整によりミスマッチ認識を支援する。このタンパク質のN−末端ドメインはATPアーゼドメインである(非特許文献29)。MutLの各ドメインは、UvrDヘリカーゼ活性及び二本鎖DNAを一本鎖形式へほどく能力を活性化するために、UvrDヘリカーゼと相互作用する。この系の3番目のタンパク質、MutHは、MboI及びSau3AIと同様な認識部位のDNAと結合しニックを入れる(非特許文献28、非特許文献30、非特許文献31)。MutHは、協調的及び金属依存的(Mg2+)様式で任意のDNAを非特異的に結合する(非特許文献28)。ATPとのMutLの組み合わせ及び相互作用により、MutHは完全にメチル化されたDNAへより強く特異的に結合する。
【0015】
TNEは、とりわけ特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6におけるKmiecの様々な特許出願においても記述されている。特許文献1中で、未修飾DNAオリゴヌクレオチドを使用して得られる遺伝子改変の低効率は、主として反応混合物又は標的細胞中に存在するヌクレアーゼによるドナーオリゴヌクレオチドの分解の結果であると考えられることが検討される。この問題を改善するために、もたらされるオリゴヌクレオチドにヌクレアーゼに対する耐性を与えるような修飾ヌクレオチドを組み込むことが提案されている。代表例は、ホスホロチオエート結合、2’−O−メチル−アナログ又はロックされた核酸(LNA)を有するヌクレオチドを含む。好ましくは、標的とされる塩基の周囲の中心部DNAドメインはそのままで、これらの修飾はオリゴヌクレオチドの末端に置かれる。更にこの公報には、変換するオリゴヌクレオチドと変換に関与するタンパク質の間の特異的な化学的相互作用が必要とされることが記述されている。改変過程に関与するタンパク質及びオリゴヌクレオチド置換基との化学的相互作用がまだ知られておらず、特許文献1の発明者らによれば予測することができないので、オリゴヌクレオチド中のLNA、ホスホロチオエート結合又は2’−O−メチルアナログの組み込み以外の修飾を使用してヌクレアーゼ耐性末端を産生するためのそのような化学的相互作用の効果を予測することは不可能である。
【0016】
哺乳類においては、DNAメチル化の間の関係は細菌におけるほど単純ではない。DNA複製の後に、哺乳類DNAは、親鎖中に一時的な鎖特異的CpGヘミメチル化を有する(非特許文献32)。次に維持シトシンメチルトランスフェラーゼにより、ヘミメチル化されたCpG部位に対する完全なメチル化が回復される。
【0017】
アクセプターDNAの両方の鎖が脱メチル化される系において、ドナー鎖又はミスマッチを保有するアクセプター鎖に対する選択性は存在しないこともまた既知である。どちらのヌクレオチドも等しい確率で置換される(例えば、非特許文献33を参照)。
【0018】
ODTNEの現行方法の効率が比較的低いので(90%のオリゴヌクレオチドの高送達率が報告されているにもかかわらず、先に述べられたように10−6から10−4の間である)、より効率的なTNEのための方法への当技術分野における必要性がある。したがって本発明者らは、既存のTNE技術についての改善を立案した。
【0019】
【特許文献1】国際公開第01/73002号
【特許文献2】国際公開第03/027265号
【特許文献3】国際公開第01/87914号
【特許文献4】国際公開第99/58702号
【特許文献5】国際公開第97/48714号
【特許文献6】国際公開第02/10364号
【特許文献7】国際公開第01/92512号
【特許文献8】国際公開第92/20702号
【特許文献9】国際公開第92/20703号
【特許文献10】国際公開第93/12129号
【特許文献11】米国特許第5,539,082号明細書
【特許文献12】国際公開第99/14226号
【特許文献13】国際公開第00/56748号
【特許文献14】国際公開第00/66604号
【特許文献15】国際公開第98/39352号
【特許文献16】米国特許第6,043,060号明細書
【特許文献17】米国特許第6,268,490号明細書
【非特許文献1】Puchta, Plant Mol. Biol. 48: 173, 2002.
【非特許文献2】J. Exp. Botany, 2005, 56, 1
【非特許文献3】Alexeev and Yoon, Nature Biotechnol. 16: 1343, 1998.
【非特許文献4】Rice, Nature Biotechnol. 19: 321-326, 2001.
【非特許文献5】Kmiec, J. Clin. Invest. 112: 632, 2003.
【非特許文献6】Beetham et al., PNAS 96: 8774, 1999.
【非特許文献7】Kochevenko and Willmitzer, Plant Physiol. 132:174-184,2003.
【非特許文献8】Alexeev et al. Nature Biotech, 2000, 18, 43.
【非特許文献9】Beetham et al. 1999 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96: 8774-8778.
【非特許文献10】Okuzaki et al. 2004 Plant Cell Rep. 22: 509-512.
【非特許文献11】Zhu et al. PNAS 1999, 96, 8768.
【非特許文献12】Rice et al. 2001 Mol. Microbiol. 40: 857-868.
【非特許文献13】Liu et al. 2002 Nucl. Acids Res. 30: 2742-2750.
【非特許文献14】Parekh-Olmedo et al. 2005 Gene Therapy 12, 639-646.
【非特許文献15】Brachman et al. 2005 DNA Rep. (Amst) 4: 445-457.
【非特許文献16】Stojic et al. 2004 DNA Repair (Amst) 3: 1091-1101.
【非特許文献17】Zhu et al.(2000 Nature Biotech. 18: 555-558.
【非特許文献18】Kochevenko et al. 2003 Plant Phys. 132: 174-184.
【非特許文献19】Fedier and Fink, 2004 Int. J Oncol. 2004; 24(4): 1039-47.
【非特許文献20】Jiricny, Mutat Res., 1998,409(3), 107-21.
【非特許文献21】Kolodner and Marsischky, Mol Cell. 1999, 4(3), 439-444.
【非特許文献22】J. Biol. Chem. 1999, 274(38), 26668-26682.
【非特許文献23】Curr. Opin. Genet. Dev., 1999, 9(1), 89-96.
【非特許文献24】Peltomaki, J Clin Oncol. 2003, 21(6), 1174-9.
【非特許文献25】Jiricny and Nystrom-Lahti, Curr Opin Genet Dev. 2000, 10(2), 157-61.
【非特許文献26】Bellacosa, J Cell Physiol. 2001, 187(2), 137-44.
【非特許文献27】Aquilina and Bignami, J Cell Physiol. 2001 May; 187(2): 145-54.
【非特許文献28】Baitinger et al., J Biol Chem. 2003 Dec 5; 278(49): 49505-11.
【非特許文献29】Guarne et al., EMBO J. 2004 Oct 27; 23 (21): 4134-45.
【非特許文献30】Giron-Monzon et al., Biol Chem. 2004 Nov 19; 279(47): 49338-45.
【非特許文献31】Joseph et al., DNA Repair (Amst). 2004 Dec 2; 3(12): 1561-77.
【非特許文献32】Drummond and Bellacosa, Nucleic Acids Res. 2001 Jun 1; 29(11): 2234-43.
【非特許文献33】Alberts et al.「細胞の分子生物学(Molecular Biology of the Cell)」、第二版、1989, Garland publishing, pp234ff
【非特許文献34】Patel, Nature, 1993, 365, 490.
【非特許文献35】Nielsen et al., Science, 1991, 254, 1497.
【非特許文献36】Egholm et al, J. Am. Chem. Soc., 1992, 114, 1895 and 9677.
【非特許文献37】Knudson et al., Nucleic Acids Research, 1996, 24, 494.
【非特許文献38】Nielsen et al., J. Am. Chem. Soc., 1996, 118, 2287.
【非特許文献39】Egholm et al., Science, 1991, 254, 1497.
【非特許文献40】Murashige, T. and Skoog, F., Physiologia Plantarum, 15: 473-497, 1962.
【非特許文献41】Heller, R., Ann Sci Nat Bot Biol Veg 14: 1-223, 1953.
【非特許文献42】Morel, G. and R. H. Wetmore, Amer. J. Bot. 38: 138-40, 1951.
【非特許文献43】Murashige, T. and Skoog, F., Physiologia Plantarum, 15: 473-497, 1962.
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らはここで、A、C、T又はGのような対応する未修飾ヌクレオチドよりも、アクセプターDNAにより強く結合できるヌクレオチドの、TNEのためのドナーオリゴヌクレオチド中への組み込みによって、TNE率を有意に増加できることを見出した。理論により束縛されるものではないが、本発明者らは、ドナーオリゴヌクレオチド中への修飾ヌクレオチドの組み込みにより、ドナーオリゴヌクレオチドがアクセプターDNAにより強く結合し、したがってTNEの比率を増加すると考える。本発明者らはここで、TNEのために使用される細胞中の脱メチル化されたゲノムDNAの使用は、改善された結合能力を有する修飾ヌクレオチドを(部分的に)含む合成オリゴヌクレオチドの使用と任意で組み合わせて、TNE遂行のために改善された方法を提供することを見出した。
【0021】
ゲノムDNAの脱メチル化は、DNA複製の前に生体物質の化学処理を介して、又はメチル化欠損変異体の使用を介して達成することができる。両方の方法により、脱メチル化された親DNA鎖がもたらされる。脱メチル化されたゲノムDNA単独の使用、修飾された合成オリゴヌクレオチド単独の使用、又は両方の組み合わせは、二重鎖又は三重鎖のDNA構造をもたらし、そこでは親鎖中のミスマッチヌクレオチドの除去、及びオリゴヌクレオチド中にデザインされた計画的なミスマッチ塩基のゲノム中への続いて起こる安定した組み込みは、高い効率で達成される。
【0022】
したがって本発明はまた、所望の標的化ヌクレオチド交換が、(部分)修飾オリゴヌクレオチドの使用によって達成できる発明の考察に基づいている。オリゴヌクレオチド修飾の場所、タイプ及び量(すなわち、修飾の状態)は、本明細書において以下に開示されるように変更することができる。
【0023】
したがって1つの態様における本発明は、((完全)修飾)オリゴヌクレオチドを提供する。オリゴヌクレオチドは植物細胞及び動物細胞又はヒト細胞に特異的な遺伝的変化を導入するために使用することができる。本発明は、生物医学研究の分野、農業、及び特異的に変異させた植物及び動物(ヒトを含む)の作製に適用可能である。本発明は、医学及び遺伝子治療の分野にも適用可能である。
【0024】
本発明のオリゴヌクレオチドの配列は、標的鎖中に塩基変化を導入するミスマッチ塩基を含む一部分を除いて、標的鎖に相同である。ミスマッチ塩基は標的配列中へ導入される。ヌクレオチドの修飾(通常のA、C、T又はGに比較される)の操作によって、及びより詳細には、ミスマッチを導入するオリゴヌクレオチドの修飾のタイプ、場所及び量の操作によって、及び/又は、オリゴヌクレオチドを挿入可能なDNA二重鎖の片方の鎖又は両方の鎖のメチル化の程度の操作によって、効率(すなわちDNA二重鎖中の所望の位置での所望のヌクレオチドの成功した組み込みの程度)を改善できる。
【0025】
本発明の他の態様は、親鎖と比較して少なくとも1つのミスマッチヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドと親DNA二重鎖を接触することによる、親DNA鎖(第1の鎖、第2の鎖)の標的化改変のための方法に属し、この方法においては、ドナーオリゴヌクレオチドは、標的化ヌクレオチド交換を可能にするタンパク質の存在下において、親(アクセプター)鎖よりも高い結合能力を有するように特定の位置で修飾されたセクションを含み、及び/又は親鎖はより低度にメチル化される。
【0026】
したがって、本発明の独創的な主旨は、未修飾の挿入オリゴヌクレオチドと比較した挿入オリゴヌクレオチド(時にはドナーと呼ばれる)の結合能力、及び/又は、DNA二重鎖(時にはアクセプター鎖と呼ばれる)の片方の鎖又は両方の鎖の修飾(脱メチル化)の改善にある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
1つの態様において、本発明は、二重鎖DNA塩基配列の標的化改変のためのオリゴヌクレオチドに関する。二重鎖DNA塩基配列は第1のDNA塩基配列及び第2のDNA塩基配列を含む。第2のDNA塩基配列は、第1のDNA塩基配列の相補物であり、二重鎖を形成するために第1のDNA塩基配列に対合する。オリゴヌクレオチドは、改変される二重鎖DNA塩基配列に関して、少なくとも1つのミスマッチを含むドメインを含む。好ましくは、ドメインは、少なくとも1つのミスマッチを含む第1の鎖に対して相補的なオリゴヌクレオチドの一部分である。
【0028】
好ましくは、ドメイン中のミスマッチは第1のDNA塩基配列に関してのものである。オリゴヌクレオチドは、第2のDNA塩基配列(の対応する一部分)よりも高い結合親和性を有する修飾された(代替ヌクレオチド又は修飾ヌクレオチドを含んでいる)セクションを含む。特定の実施の形態において、第2のDNA塩基配列は、オリゴヌクレオチド上のセクション(の対応する一部分)よりも低程度にメチル化される。特定の実施の形態において、ドナー鎖と親鎖間のメチル化に基づいた区別ができないように、アクセプター鎖及び/又はオリゴヌクレオチドは、メチル化されないか、又は同程度までメチル化される。メチル化に関与する任意のメカニズムがもはや2つの鎖を区別することができないので、任意の鎖バイアスを削除し、標的化ヌクレオチド交換を統計過程で処理してもよい。この実施の形態において、任意のTNEは、オリゴヌクレオチド中に組み込まれる修飾ヌクレオチド(ここで修飾はメチル化と等しくない)の効果から発達するだろう。
【0029】
ミスマッチを含むドメイン、及び修飾ヌクレオチド(複数可)を含むセクションは、オーバーラップしていてもよい。したがって特定の実施の形態において、ミスマッチを含むドメインは、修飾が考慮されるセクションとは異なるオリゴヌクレオチド上の位置に配置される。特定の実施の形態において、上記ドメインは上記セクションを組み込む。特定の実施の形態において、上記セクションは上記ドメインを組み込むことができる。特定の実施の形態において、上記ドメイン及び上記セクションは、オリゴヌクレオチド上の同一の位置に配置され、同一の長さを有しており、すなわち、それらの長さ及び位置は一致する。特定の実施の形態において、上記ドメイン内に2つ以上の上記セクションがある場合がある。
【0030】
本発明に関しては、これは、DNA二重鎖中に組み込まれるミスマッチを含むオリゴヌクレオチドの一部分が、修飾されるオリゴヌクレオチドの一部分から異なる位置に置くことができることを意味する。特に、特定の実施の形態において、鎖のどれがミスマッチを含むか、及びどの鎖が鋳型としてミスマッチの補正に使用されることになっているかを、細胞の修復系(又は少なくともこの系と関連したタンパク質、又は少なくともTNEに関与するタンパク質)が確定する。
【0031】
特定の実施の形態において、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つの修飾ヌクレオチドを含むセクションを含み、第2の鎖は、セクションの対応する部分よりも、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つ少ないメチル化されたヌクレオチドを含む。特定の実施の形態において、オリゴヌクレオチド上のセクションは、4、5、6、7、8、9、又は10以上の修飾ヌクレオチドを含むことができる。特定の実施の形態において、セクションは完全に修飾される。特定の実施の形態において、第2の鎖は、少なくともオリゴヌクレオチドの位置で(又は第1の鎖に相補的なセクションの長さにわたって)メチル化されない。
【0032】
特定の実施の形態において、2つ以上のミスマッチは、同時に又は連続的のいずれかで導入することができる。オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド上の隣接する場所又は離れた場所に2つ以上のミスマッチを包含することができる。特定の実施の形態において、オリゴヌクレオチドは、隣接又は遠隔の(すなわち非隣接の)2、3、4又はそれ以上のミスマッチヌクレオチドを含むことができる。オリゴヌクレオチドは、複数のミスマッチヌクレオチドを包含するために、さらなるドメイン及びセクションを含むことができ、特にいくつかのセクションを含むことができる。特定の実施の形態において、オリゴヌクレオチドは、アクセプター鎖に挿入される可能性のあるインサートを組み込んでもよい。そのようなインサートは6以上から最大100ヌクレオチド長で変化してもよい。特定の実施の形態における類似した方法において、類似した長さの変動(1〜100のヌクレオチド)の欠失を導入することができる。
【0033】
本発明のさらなる態様において、オリゴヌクレオチドのデザインは以下によって達成することができる:
−アクセプター鎖、又は交換されるヌクレオチドの周囲の少なくとも1つの配列セクションの配列を決定する。これは、典型的には、好ましくはミスマッチの各々の側でミスマッチに隣接する少なくともほぼ10ヌクレオチド程度、好ましくは15ヌクレオチド、20ヌクレオチド、25ヌクレオチド又は30ヌクレオチドであり得る(例えばGGGGGGXGGGGGG、ここでXはミスマッチである);
−ミスマッチに隣接する1つ又は両方のセクションに対して相補的で、交換される所望のヌクレオチドを含むドナーオリゴヌクレオチドをデザインする(例えばCCCCCCYCCCCCC);
−所望の位置での修飾を有するドナーオリゴヌクレオチドを(例えば合成によって)提供する。修飾は状況に依存して、大きく変化してもよい。実施例は、CYC、CCCCCCYCCCCCC、CCCCCCYC、CYCCCCCC、CCCCCCYCCCCCC、CCCCCCYCCCCCC、CCCCCCYCCCCCC、CCCCCCYCCCCCC等であり、ここで、Cは修飾ヌクレオチド残基を表わす。異なるアクセプター配列(例えばATGCGTACXGTCCATGAT)に関しては、上で概要を述べられたような可変的な修飾により、対応するドナーオリゴヌクレオチド(例えばTACGCATGYCAGGTACTA)をデザインすることができる;
−標的化ヌクレオチド交換を可能にするタンパク質、例えば、及び特に、細胞のミスマッチ修復機構において機能的なタンパク質の存在下におけるドナーオリゴヌクレオチドによりDNAを修飾する。
【0034】
オリゴヌクレオチドの送達は、核又は細胞質のいずれかに送達することができるエレクトロポレーション又は他の従来の技術を介して達成することができる。本発明の方法のインビトロ検査は、なかでも、特許文献3、特許文献2、特許文献4、特許文献7に記述されているように、無細胞系を使用して達成することができる。
【0035】
本明細書において使用されるように、TNEに影響を及ぼすドナーオリゴヌクレオチドの能力は、ドナーオリゴヌクレオチド中に組み込まれる修飾ヌクレオチドのタイプ、場所及び量に依存する。この能力は、例えば、通常のヌクレオチド間の結合親和性(又は結合エネルギー(ギブスの自由エネルギー))を1で正規化すること(すなわちAT及びGCの結合の両方に関しては、結合親和性が1で正規化される)によって、定量することができる。本発明のオリゴヌクレオチドに関しては、各修飾ヌクレオチドの相対的結合親和性(RBA)は>1である。これは以下のような数1式に例示される:
【0036】
【数1】

【0037】
式中、RBAは総相対的結合親和性であり、RBA(修飾)は、nヌクレオチド長の修飾オリゴヌクレオチドの相対的結合親和性の合計であり、RBA(未修飾)は、mヌクレオチド長の未修飾オリゴヌクレオチドの相対的結合親和性の合計である。例えば、100bpオリゴヌクレオチドは、各々1.1の相対的な結合親和性で、10の修飾を含んでいる。次に、総RBAは次の式:RBA=[(10×1.1)+(90×1.0)]−(100×1.0)=1に等しい。
【0038】
RBAの定義が原則として、比較されるヌクレオチド鎖長に非依存的であることに注目されたい。しかしながら異なる鎖のRBAが比較される場合、鎖がほぼ同一の長さを有するか、又は同等の長さのセクションが採用されることが好ましい。RBAは、鎖上の修飾がグループ化できることを考慮に入れないことに注目されたい。したがって鎖Bと比較される特定の鎖Aのより高度な修飾は、RBA(A)>RBA(B)を意味する。上流セクション及び下流セクションに関しては、対応する(局所的)RBA値が定義され使用されてもよい。修飾ヌクレオチドの位置の効果を包含するために、重み付け係数をRBA値へ導入することができる。例えば、ミスマッチに隣接するドナーオリゴヌクレオチド上の修飾ヌクレオチドの効果は、ミスマッチから5ヌクレオチド離れた距離で配置された修飾ヌクレオチドよりも大きくなり得る。本発明の文脈において、RBA(ドナー)>RBA(アクセプター)である。
【0039】
特定の実施の形態において、ドナーのRBA値は、アクセプターのRBA値よりも少なくとも0.1大きくてもよい。特定の実施の形態において、ドナーのRBA値は、アクセプターのRBA値よりも少なくとも0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5大きくてもよい。RBA値は、分子モデル化、熱力学的測定等により、ヌクレオチドの修飾された結合親和性の従来の分析から導き出され得る。或いは、それらは、修飾鎖と未修飾鎖とのTm値差の測定により決定することができる。或いはRBA値は、1セットのヌクレオチドのTm値の計算のための従来の式を使用する計算若しくは測定、又は計算及び測定の組み合わせのいずれかによって、未修飾鎖と修飾鎖とのTm値の差として表わすことができる。
【0040】
本発明に記載のドナーオリゴヌクレオチドは、ドナーが標的DNA鎖への親和性の増加を示すことでドナーの挿入がより容易になるように、ハイブリダイゼーション特性を改善するための修飾を含んでもよい。ドナーオリゴヌクレオチドは、三重鎖構造又は四重鎖構造を安定させるために、ヌクレアーゼに対してもより耐性を持つようにさらに修飾され得る。ドナーオリゴヌクレオチドの修飾は、ホスホロチオエート修飾、2−OMe置換、LNA(ロックされた核酸)の使用、PNA(ペプチド核酸)、リボヌクレオチド、及びオリゴヌクレオチドとアクセプター鎖との間のハイブリッドの安定性を修飾、好ましくは促進する他の塩基を含むことができる。
【0041】
そのような修飾の中で特に有益なのは、PNAであり、それらはオリゴヌクレオチドのデオキシリボース骨格がペプチド骨格と置換される、オリゴヌクレオチドアナログである。そのようなペプチド骨格の1つは、アミド結合を経て結合するN−(2−アミノエチル)グリシンの反復単位から構築される。ペプチド骨格の各サブユニットは、核酸塩基(「塩基」とも呼ばれる)へ結合され、それは天然に存在する塩基、天然に存在しない塩基又は修飾塩基であってもよい。PNAオリゴマーは、DNA又はRNAのいずれかよりも高い親和性で、相補的なDNA又はRNAへ配列特異的に結合する。したがって、もたらされるPNA/DNA二重鎖又はPNA/RNA二重鎖は、より高い融解温度(Tm値)を有する。さらに、PNA/DNA二重鎖又はPNA/RNA二重鎖のTm値は、DNA/DNA二重鎖又はDNA/RNA二重鎖よりも塩濃度に対してそれほど影響を受けない。PNAのポリアミド骨格は、酵素分解に対しても耐性が高い。PNAの合成は、例えば、特許文献8及び特許文献9に記述されており、それらの内容はその全体が参照により本明細書に援用される。他のPNAは、例えば、特許文献10及び1996年7月23日に発行された特許文献11において示され、それらの内容はその全体が参照により本明細書に援用される。さらに、多くの科学的な出版物には、PNAの特性及び用途だけでなく、それらの合成も記述される。例えば、非特許文献34、非特許文献35、非特許文献36、非特許文献37、非特許文献38、非特許文献39、非特許文献36の第1895頁及び第9677頁を参照されたい。
【0042】
有益な修飾もスーパーA(Super A)及びスーパーT(Super T)として既知であり、ドイツのエポック・バイオサイエンス(Epoch Biosciences)社から入手可能である。これらの修飾ヌクレオチドがDNA二重鎖中の塩基の積み重ねを改善すると考えられる、DNAの主溝の中へとどまる付加的な置換基を含む(図4参照)。
【0043】
有用な修飾は、ロックされた核酸(LNA)として既知の合成分子クラスからの1つ又は複数のモノマーも含む。LNAは、二環式及び三環式のヌクレオシドアナログ及びヌクレオチドアナログ、並びにそのようなアナログを含んでいるオリゴヌクレオチドである。LNA及び関連したアナログの基本構造的及び機能的な特性は、特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16、及び特許文献17を含む、様々な公報及び特許中に開示され、それらのすべては、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0044】
本発明のドナーオリゴヌクレオチドはキメラとして、すなわち、DNA、RNA、LNA、PNA又はその組み合わせのセクションを含むものとしても作製することができる。
【0045】
したがって特定の実施の形態において、本発明のオリゴヌクレオチドは、他の(任意に非メチル化した)修飾ヌクレオチドをさらに含む。
【0046】
特定の実施の形態において、オリゴヌクレオチドはヌクレアーゼに対して耐性を持つ。これはオリゴヌクレオチドのヌクレアーゼによる分解を防止するのに有利であり、ドナーオリゴヌクレオチドが標的(アクセプター分子)を発見できる可能性を大きくする。
【0047】
下記の表1及び表1−1は、DNA結合親和性の増加及び/又はヌクレアーゼ分解抵抗性の増加を示すヌクレオチドの選択を示す。
【0048】
【表1】

【0049】
【表1−1】

【0050】
ホスホロチオエート結合
市販で入手可能なヌクレオチド修飾の多くは、遺伝子治療に対するアンチセンスの適用における使用のために開発されている。アンチセンス適用(「第一世代」アンチセンスオリゴヌクレオチド)に利用可能な最も単純で最も広く用いられているヌクレアーゼ耐性の化学作用は、ホスホロチオエート(PS)修飾である。これらの分子において、硫黄原子は、オリゴヌクレオチドリン酸骨格の非架橋酸素を置換し(図3a)、エンドヌクレアーゼ活性及びエキソヌクレアーゼ活性に対する耐性をもたらす。遺伝子治療のためには、ホスホロチオエート/ホスホジエステルのキメラは、一般に、未修飾DNAの中心部コアと共に、5’末端及び3’末端の両方で1〜4つのPSに修飾されるヌクレオシド間結合を有する。しかしながら、ホスホロチオエート結合を、オリゴヌクレオチドの任意の所望の位置で組み込むことができる。
【0051】
6−クロロ−2−メトキシアクリジン
どちらかの末端で又は配列中に6−クロロ−2−メトキシアクリジン分子を持つオリゴヌクレオチドは、二重らせんの中への効率的な挿入能を有する。6−クロロ−2−メトキシアクリジン基は、リン酸骨格の遊離水酸基のうちの1つに連結される(図3c)。したがってアクリジン標識オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドハイブリッドの安定性の増加が重大である適用において使用することができる。3’末端への修飾の付加も、エキソヌクレアーゼ分解からオリゴヌクレオチドを保護する。これらのオリゴヌクレオチドは、三重鎖ヘリックス形成能及び、相対的な疎水性に起因して正常オリゴヌクレオチドよりも容易な膜通過能を有する。
【0052】
メチルホスホネート
メチルホスホネートは、天然に存在する負に荷電したホスホジエステル結合の代わりに、メチルホスホネート結合を含んでいる核酸アナログである(図3b)。これらのアナログは非イオン性かつ疎水性であり、受動拡散を介して哺乳類細胞により組み込まれる。それらの融解温度は、塩条件に対してそれほど影響を受けやすくはない。それらは、mRNAのレベルで、ウイルス又は細胞の遺伝子発現を特異的に制御できる効果的なアンチセンス試薬であることが見出された。メチルホスホネートは、標準的なワトソン−クリック塩基対相互作用によって相補的な核酸と二重鎖ハイブリッドを形成する。メチルホスホネート骨格は、ヌクレアーゼ分解に対して完全に耐性である。
【0053】
ロックされた核酸
ロックされた核酸(LNA)は、アンチセンス遺伝子治療で使用される非常に興味深い特性を備えたDNAアナログである。具体的には、LNAは、非常に高い生物安定性(低ターンオーバー)及び前例のない親和性(標的への非常に高い結合強度)と、正確な標的と不正確な標的を区別する能力(高い特異性)を兼ね備える。実際、LNAで記録された親和性増加は、先に報告された低値から中等値の範囲のすべてのアナログの親和性を追い越すものである。
【0054】
LNAは、2’−酸素原子と4’−炭素原子との間のメチレン架橋によりリボースが構造的に制限されるRNAアナログである(図4)。この架橋は、リボフラノース環の柔軟性を限定し、固定した二環式形成へと構造をロックする。このいわゆるN型(すなわち3’−エンド)コンフォーメーションは、LNAを含む二重鎖のT値の増加、並びに結果的に、より高い結合親和性及びより高い特異性をもたらす。NMRスペクトル研究は、LNA糖のロックされたN型コンフォーメーションを実際に実証しただけでなく、LNAモノマーがN型コンフォーメーションに向かってそれらの隣接する未修飾ヌクレオチドをねじることができることを明らかにした。重要なことには、LNAの好ましい特性は、核酸アナログでしばしば観察されるように、他の重要な特性を犠牲にして成り立つというものではない。
【0055】
LNAは、DNAアナログ集団を構成する他のすべての化学物質と自由に混合することができる。LNA塩基は短い全LNA配列、又はより長いLNA/DNAキメラとして、オリゴヌクレオチド中へと組み込むことができる。LNAは、内部、3’−位又は5’−位に配置することができる。しかしながら、それらの固定した二環式コンフォーメーションのために、LNA残基は、時には核酸鎖のらせんのねじれを妨害する。したがって一般には、2つ又は複数の近接するLNA残基を有するオリゴヌクレオチドのデザインは、あまり好ましくない。好ましくは、LNA残基は、らせんのねじれを妨害しない通常のヌクレオチド(A、C、T又はG)のような少なくとも1つの(修飾された)ヌクレオチドにより隔てられる。
【0056】
もともと開発されたLNAモノマー(β−D−オキシ−LNAモノマー)は、新しいLNAモノマーへと修飾された(図4)。新規α−L−オキシ−LNAは、3’エキソヌクレアーゼ活性に対する優れた安定性を示し、さらに性能の高いアンチセンスオリゴヌクレオチドのデザインにおいては、β−D−オキシ−LNAよりも有力であり、用途が広い。特許文献12、特許文献13、特許文献14号において開示されるように、キシロ−LNA及びL−リボ−LNAもまた使用することができる。
【0057】
メチル化ヌクレオチド、プロピニル化ヌクレオチド及びアミノ化ヌクレオチド
シトシンC原子のメチル化は天然に存在するDNAのC−メチル化である(植物において5’−CG−3’及び5’−CNG−3’、並びに原核生物において5’−CCNGG−3’)。メチル化の生物学的機能とは別に、その化学的効果は、二重鎖形成のT値における1メチル化シトシン当たり1.3℃の上昇である。もっぱらオリゴヌクレオチドの二重鎖安定性を増加するために、オリゴヌクレオチド中にそのようなメチル化C残基(5−メチル−デオキシシトシン、図5a)を組み込んでもよい。
【0058】
さらにより高い熱安定性が、C位でのプロピニル基(三重結合を有する3−C鎖)により得られる(図5b)。単一のC−プロピニル−シトシン残基はT値を2.8℃、単一のC−プロピニル−チミジン残基はT値を1.7℃増加する。
【0059】
他の一般に記述されるヌクレオチド修飾(アンチセンスオリゴヌクレオチドの「第2の世代」)は、RNA残基の2’−Oメチル化である。このメチル化は、エキソヌクレアーゼ活性に対する耐性を提供し、RNAヌクレオチドのうちのいずれかに対しても適用することができる。図5cにおいて、二重にメチル化された分子は、リボシル2’−O及びシトシンCの両方でのメチル基を保有することが示される。この分子、2’−O−メチル−5−メチル−リボシチジン(2’−OMe−5−Me−C)は、結合親和性の増加及びエキソヌクレアーゼ抵抗性の両方を有する。
【0060】
最も高い熱安定性増加が、2’−アミノ化アデノシン残基について記述されてきた。これらのいわゆる2−アミノ−A分子(図5d)は外部に面する環での追加のNH基を保有し、アデニンがチミジンと3つの(2つではない)水素結合を形成することを可能にし、それは各々の単一の2−アミノ−A残基についてT値を3.0℃増加する。
【0061】
シクロヘキセン核酸
シクロヘキセン核酸(CeNA)は、五員フラノース環が六員環と置換されたヌクレオチドである(図6)。このことは、オリゴマーの高度の構造的な硬さをもたらす。CeNAは、RNA及びDNAと安定した二重鎖を形成し、核酸分解に対して保護する。CeNAのRNAへの結合親和性がDNAに対してよりもはるかに高いので、及びCeNA/RNA二重鎖はRNaseのH分解を活性化するので、この分子は治療上のアンチセンス研究に対する第一候補である。
【0062】
本発明の特定の実施の形態において、オリゴヌクレオチド中のヌクレオチドは、ミスマッチの位置で修飾され得る。ミスマッチを修飾することができるかどうかは、ドナー鎖とアクセプター鎖と間の親和性の差を使用して、標的化ヌクレオチド交換の正確なメカニズム又は細胞のDNA修復メカニズムに大いに依存するだろう。ミスマッチの傍又は周辺にある他の修飾位置の正確な場所の場合にも同じことが言える。しかしながら、本明細書において示された開示に基づいて、そのようなオリゴヌクレオチドは容易にデザインすることができ、本明細書において別に記述されるような適切なオリゴヌクレオチドに対する試験手順を考慮して検査した。特定の実施の形態において、ミスマッチの位置でヌクレオチドは修飾されない。特定の実施の形態において、修飾はミスマッチに対して近接し、好ましくはミスマッチから2ヌクレオチド、3ヌクレオチド、4ヌクレオチド、5ヌクレオチド、6ヌクレオチド又は7ヌクレオチド以内にある。特定の実施の形態において、修飾はミスマッチから下流の位置にある。特定の実施の形態において、修飾はミスマッチから上流の位置にある。特定の実施の形態において、修飾は、ミスマッチから10bp〜10kB、ミスマッチから好ましくは50〜5000bp、より好ましくは100〜500bpにある。
【0063】
ドナーとして使用されるオリゴヌクレオチドの長さは変化させることができるが、一般に10〜500ヌクレオチド長、好みにより11〜100ヌクレオチド長、好ましくは15〜90ヌクレオチド長、より好ましくは20〜70ヌクレオチド長、最も好ましくは30〜60ヌクレオチド長で変化させることができる。
【0064】
1つの態様において、本発明は、ドナーオリゴヌクレオチドと二重鎖アクセプターDNA塩基配列を組み合わせることを含む、二重鎖アクセプターDNA塩基配列の標的化改変のための方法であって、二重鎖アクセプターDNA塩基配列が、第1のDNA塩基配列、及び第1のDNA塩基配列の相補物である第2のDNA塩基配列を含み、ドナーオリゴヌクレオチドが、改変される二重鎖アクセプターDNA塩基配列に関して、好ましくは第1のDNA塩基配列に関して、少なくとも1つのミスマッチを含むドメインを含み、ドナーオリゴヌクレオチドのセクションが、オリゴヌクレオチド中のその位置での未修飾ヌクレオチドと比較して、第1のDNA塩基配列に対してより高親和性を示すように修飾されており、及び/又は第2のDNAが、標的化ヌクレオチド交換を可能にするタンパク質の存在下においてドナーオリゴヌクレオチドの対応するセクションよりも低メチル化度にメチル化される、二重鎖アクセプターDNA塩基配列の標的化改変のための方法に関する。
【0065】
本発明は、最も広範囲の形式で、ヒト、動物、植物、魚類、爬虫類、昆虫、真菌及び細菌等のすべての種類の生物に一般的に適用可能である。本発明は、ゲノムDNA、線状DNA、人工染色体、核の染色体DNA、オルガネラ染色体DNA、BAC、YACに由来するDNAのような、任意のタイプのDNAの修飾に対して適用可能である。本発明は、エクスビボだけでなくインビボで行なうことができる。
【0066】
本発明は、最も広範囲の形式で、細胞の改変、野生型への復帰による変異の修正、変異の誘導、コード領域の破壊による酵素の不活性化、コード領域の改変による酵素の生物活性の修飾、コード領域の破壊によるタンパク質の修飾等の多くの目的に対して適用可能である。
【0067】
上述されるように、本発明は、本質的には、細胞の改変、野生型への復帰による変異の修正、変異の誘導、コード領域の破壊による酵素の不活性化、コード領域の改変による酵素の生物活性の修飾、コード領域の破壊によるタンパク質の修飾、ミスマッチ修復、遺伝子変異を含む(植物)遺伝物質の標的化改変、標的化遺伝子修復及び遺伝子ノックアウトのためのオリゴヌクレオチドの使用にも関する。
【0068】
さらに本発明は、本明細書における他の部分で定義されるような、MRMの誘導が可能な、特にTNEが可能なタンパク質と任意で組み合わせた、1つ又は複数のオリゴヌクレオチドを含むキットに関する。
【0069】
さらに本発明は、本発明の方法によって得られる修飾された遺伝物質に、修飾された遺伝物質を含む細胞及び生物に、そのようにして得られる植物又は植物の一部分に関する。
【0070】
特定の実施の形態において、例えばゲノムDNA、又はゲノムDNAを含む培養物若しくはTNEにさらされるゲノムDNAを含む他の生体物質を、アザシチジンを使用する方法のような通常の脱メチル化処理にさらすことによって、ゲノムDNAはTNEの前に脱メチル化することができる。
【0071】
本発明の特定の実施の形態において、オリゴヌクレオチドが1つ又は複数のLNA残基、好ましくはミスマッチから少なくとも1塩基対の距離で配置された1つのLNA残基を含む場合、標的化ヌクレオチド交換率における有意な増加(200〜800%)が達成されることが見出された。好ましくはオリゴヌクレオチドは、ミスマッチのどちらかの側に、好ましくは各々は独立してミスマッチから少なくとも1塩基対の距離で配置された2つ又は複数の、好ましくは2つのLNAを含む。言いかえれば、本発明の好ましい実施の形態において、少なくとも1つ、好ましくは1つのLNAは、ミスマッチの各側に、好ましくは独立してミスマッチから少なくとも1塩基対の位置にある。これは以下のように図式的に示すことができる:L−N−M−N−L、ここでL=1つ又は複数の、好ましくは1つのLNA残基であり;Nは、Mの各側に独立して、1つの正常ヌクレオチド(A、C、T又はG)、又はジヌクレオチド(すなわち2つのヌクレオチド)若しくはトリヌクレオチド(すなわち3つのヌクレオチド)であり;Mはミスマッチの位置を表わす。したがって、特定の好ましい実施の形態において、ミスマッチに隣接するLNA残基は、互いから3塩基対又は4塩基対で置かれる。
【0072】
本発明の特定の他の実施の形態において、標的化ヌクレオチド交換率の有意な増加は、1つ又は複数の5−プロピニル化ヌクレオチドを使用して達成されることが見出された。プロピニル化ヌクレオチドは、ミスマッチに隣接した位置で配置されてもよいし、又はミスマッチから少なくとも1塩基対の距離で配置されてもよい。好ましくはオリゴヌクレオチドは、好ましくはミスマッチのどちらかの側に配置された、好ましくは各々独立して隣接して又はミスマッチから少なくとも1塩基対の距離で配置された、2つ又は複数の、好ましくは2つの5−プロピニル化ヌクレオチドを含む。言いかえれば、本発明の好ましい実施の形態において、少なくとも1つの、好ましくは1つの5−のプロピニル化ヌクレオチドは、ミスマッチの各側に、好ましくは独立してミスマッチに近接する位置で配置されるか、又はミスマッチから少なくとも1塩基対の距離で配置される。これは以下のように図式的に示すことができる:P−N−M−N−P、ここで、P=1つ又は複数の5−プロピニル化ヌクレオチド残基、好ましくは1つの5−プロピニル化ヌクレオチド残基であり;Nは、Mの各側に独立して、0若しくは1つの正常ヌクレオチド(A、C、T又はG)又はジヌクレオチド(すなわち2つのヌクレオチド)若しくはトリヌクレオチド(すなわち3つのヌクレオチド)であり;Mはミスマッチの位置を表わす。したがって、特定の好ましい実施の形態において、ミスマッチに隣接する5−プロピニル化ヌクレオチド残基は、互いから1塩基対(すなわちミスマッチ自体)、2塩基対、3塩基対又は4塩基対で置かれる。特定の好ましい5−プロピニル化ヌクレオチドは、5−プロピニル−2−デオキシシチジン及び/又は5−プロピニル−2−デオキシウラシルである。5−プロピニル化ヌクレオチドは組み合わせて使用されてもよく、すなわち特定の実施の形態において、オリゴヌクレオチドは5−プロピニル−2−デオキシシチジン単独、5−プロピニル−2−デオキシウラシル単独又は両方の組み合わせのいずれかを含んでもよい。
【0073】
本発明の特定の他の実施の形態において、標的化ヌクレオチド交換率の有意な増加は、N4−エチル−2’−デオキシシチジンを使用して達成されることが見出された。
【0074】
N4−エチル−2’−デオキシシチジンはミスマッチに隣接した位置で配置されてもよいし、又はミスマッチから少なくとも1塩基対の距離で配置されてもよい。好ましくは、オリゴヌクレオチドは、好ましくはミスマッチのどちらかの側に配置され、好ましくは各々独立して隣接して又はミスマッチから少なくとも1塩基対の距離で配置された、2つ又は複数の、好ましくは2つのN4−エチル−2’−デオキシシチジンを含む。言いかえれば、本発明の好ましい実施の形態において、少なくとも1つの、好ましくは1つのN4−エチル−2’−デオキシシチジンは、ミスマッチの各側に、好ましくは、独立してミスマッチに近接する位置で配置されるか、又はミスマッチから少なくとも1塩基対の距離で配置される。これは以下のように図式的に示すことができる:D−N−M−N−D、ここで、D=1つ又は複数のN4−エチル−2’−デオキシシチジン残基、好ましくは1つのN4−エチル−2’−デオキシシチジン残基であり;Nは、Mの各側に独立して、0若しくは1つの正常ヌクレオチド(A、C、T又はG)又はジヌクレオチド(すなわち2つのヌクレオチド)若しくはトリヌクレオチド(すなわち3つのヌクレオチド)であり;Mはミスマッチの位置を表わす。したがって、特定の好ましい実施の形態において、ミスマッチに隣接するN4−エチル−2’−デオキシシチジン残基は、互いから1塩基対(すなわちミスマッチ自体)、2塩基対、3塩基対又は4塩基対で置かれる。
【0075】
理論により束縛されるものではないが、本明細書において他の部分で述べられるように、TNEの効率が、正常DNAと比較して特性を改変した新規ヌクレオチドのオリゴヌクレオチド中への組み込みによって改善できることを、出願人は確信する。TNEにとって重要であると考えられる特性は以下のとおりである:(1)ヌクレアーゼ抵抗性、その結果オリゴヌクレオチドは植物細胞中で損なわれないままであり、及び(2)高結合親和性、したがってオリゴヌクレオチドが相同標的を見つけて結合したままである可能性を増加する。同様に重要なこととして考慮される1つの他のパラメーターは、オリゴヌクレオチド二次構造を最小限にすることである。オリゴヌクレオチド自体の内部の小さな相補的な領域は、核へのオリゴヌクレオチド輸送、オリゴヌクレオチドの標的の発見又はTNE反応自体を阻害するヘアーピンループ構造をもたらすことが可能である。
【実施例】
【0076】
タバコにおけるALS遺伝子の標的化ヌクレオチド交換
タバコ芽の培養
この実施例のための原材料はタバコSRlのインビトロの芽の培養物である。それらを、25/20℃(昼間/夜間)の温度、及び16/24時間の光周期の80μE・m−2・s−1の光量子束密度で、増殖チャンバー内のMS20培地中で、大きなガラスジャー(750ml容量)において無菌の条件下で増殖させる。MS20培地は、2%(w/v)ショ糖含有、ホルモン無添加、及び0.8%のディフコ(Difco)アガー含有のムラシゲ−スクーグ基本培地(非特許文献42)である。その芽を、3週間ごとに新しい培地へ継代培養する。
【0077】
アザシチジンによる脱メチル化
プロトプラスト単離の2週間の前に、タバコのインビトロの芽の培養物を、標的遺伝子座DNAを脱メチル化するために、75μg/mlの5−アザシチジンを含むMS20培地上で継代培養する。
【0078】
プロトプラスト単離
葉肉プロトプラストの単離のために、3〜6週間齢の芽の培養植物の完全に展開した葉を採取する。葉を、下層表皮を通って中央脈から外へ1mmの薄い小片へと注意深くスライスする。スライスした葉を、30分の前原形質分離処理のための45mlのMDE基本培地を含む大きな(100mm×100mm)シャーレへ移す。MDE基本培地は、900mlの全容量中に、0.25gのKCl、1.0gのMgSO・7HO、0.136gのKHPO、2.5gのポリビニルピロリドン(分子量10000)、6mgのナフタレン酢酸及び2mgの6−ベンジルアミノプリンを含んでいた。溶液の浸透圧をソルビトールにより600mOsm・kg−1へ調整し、pHは5.7とした。
【0079】
前原形質分離後に、5mlの酵素ストックを各シャーレへ追加する。酵素ストックは、100ml当たり、750mgのセルラーゼオノズカR10、500mgのドリセラーゼ及び250mgのマセロザイムR10から成り、ワットマン紙上でろ過し、フィルター滅菌する。シャーレを、細胞壁を消化するために、振盪なしで25℃、暗中で一晩密閉してインキュベートする。
【0080】
翌朝、シャーレをプロトプラストの放出のために穏やかに旋回する。プロトプラスト懸濁液を250mlのエルレンマイヤーフラスコの中へ500μm及び100μmのふるいを通してろ過し、等容量のKCl洗浄液と混合し、及び10分間85×gで50mlのチューブ中で遠心分離する。KCl洗浄液は、1リットル当たり2.0gのCaCl・2HO及び浸透圧を540mOsm・kg−1にする量のKClから成っていた。
【0081】
遠心分離沈殿から回収したプロトプラストを、MLm洗浄液中で再懸濁し、10mlのガラス管中で10分間85×gでもう一度遠心分離する。MLm洗浄培地は、正常濃度の2分の1でMS培地(参照)の多量養素、1リットル当たり2.2gのCaCl・2HO及び浸透圧を540mOsm・kg−1にする量のマンニトールを含んでいた。
【0082】
この第2の遠心分離工程の沈殿から回収されたプロトプラストを、MLs洗浄培地中で再懸濁し、10mlのガラス管中で10分間85〜100×gで再び遠心分離する。MLs洗浄培地は、正常濃度の2分の1でMS培地(参照)の多量養素、1リットル当たり2.2gのCaCl・2HO及び浸透圧を540mOsm・kg−1にする量のショ糖を含んでいた。
【0083】
プロトプラストは浮遊バンドから回収され、等容量のKCl洗浄液中で再懸濁する。それらの密度を血球計数器を使用してカウントする。続いてプロトプラストを、5分間85×gで10mlのガラス管中で再び遠心分離し、沈殿をエレクトロポレーション培地中で1ml当たり1×10プロトプラストの密度で再懸濁する。すべての溶液を無菌に保ち、すべての操作を無菌条件下で行う。
【0084】
ALS標的遺伝子及び一本鎖オリゴヌクレオチドのデザイン
タバコのアセト乳酸シンターゼ(ALS)SurA遺伝子(GeneBankアクセッション番号X07644)におけるアミノ酸変換P194Qにより、ALSタンパク質は、スルホニル尿素除草剤のクロルスルフロンに対して非感受性になる。一本鎖オリゴヌクレオチドNtALSPl94Qは、TNEによってタバコALS遺伝子で単一のヌクレオチド変化を導入するモデルとして使用することができる。
【0085】
NtALSP194Q
5’ CAACAATAGGAGTTTCCTGAAAAGCATCAGTACCTATCATCCTACGTGCACTTGACCTGTTATAGCAACAATGGGGAC 3’[配列番号:1]
5’末端からの位置48のミスマッチヌクレオチドに下線が引かれている。
【0086】
プロトプラストエレクトロポレーション
エレクトロポレーション培地としてPHBS(10mM HEPES、pH7.2;0.2Mマンニトール、150mM NaCL;5mM CaCL2)及びエレクトロポレーション中の培地中での約1×10/mlの密度のプロトプラストを使用して、エレクトロポレーションの設定は、パルスと培養の間の回復時間が10分で、250V(625Vcm−1)チャージ及び800μFキャパシタンスである。各エレクトロポレーションのために、約1〜2μgのオリゴヌクレオチドを使用し、800マイクロリットルのエレクトロポレーション当たり20μgのプラスミド=25μg/mlである。
【0087】
プロトプラスト再生及びクロルスルフロン選択
エレクトロポレーション処理後に、プロトプラストを回復させるために30分間氷上に置く。次に1ml当たり1×10プロトプラストの密度で、T培養培地中に再懸濁する。T培養液は、950mgのKNO、825mgのNHNO、220mgのCaCl・2HO、185mgのMgSO・7HO、85mgのKHPO、27.85mgのFeSO・7HO、37.25mgのNaEDTA・2HO、ヘラー培地(非特許文献41)に従う微量養素、モレル−ウェットモア培地に従うビタミン(非特許文献42)、2%(w/v)ショ糖、3mgのナフタレン酢酸、1mgの6−ベンジルアミノプリン及び浸透圧を540mOsm・kg−1にする量のマンニトールを含んでいた(1リットル当たり、pH5.7)。
【0088】
次にT培養液中に再懸濁したプロトプラストを、T培養液中の1.6%のシープラーク(SeaPlaque)低融点アガロースの溶液の等容量と混合し、オートクレーブ滅菌後に水浴中30℃で液体状態にしておく。混合後に、懸濁液を、5cmのシャーレ中へ2.5mlの一定分量で穏やかにピペットで移す。ディッシュを密閉し、暗中で25/20℃(16/24時間の光周期)でインキュベートする。
【0089】
暗中で8〜10日のインキュベーション後に、アガロース培地を6等分のパイ形部分へと切断し、22.5mlの液体MAPAO培地を各々含む10cmのシャーレへ移す。この培地は、950mgのKNO、825mgのNHNO、220mgのCaCl・2HO、185mgのMgSO・7HO、85mgのKHPO、27.85mgのFeSO・7HO、37.25mgのNaEDTA・2HO、もとの濃度の10分の1でムラシゲ−スクーグ培地(非特許文献43)に従う微量養素、モレル−ウェットモア培地(非特許文献42)に従うビタミン、6mgのピルビン酸、各々12mgでリンゴ酸、フマル酸及びクエン酸、3%(w/v)ショ糖、6%(w/v)マンニトール、0.03mgのナフタレン酢酸及び0.1mgの6−ベンジルアミノプリンから成っていた(1リットル当たり、pH5.7)。成功した塩基変換のコロニー選択の目的のために、41nMのクロルスルフロンも培地へ追加する。シャーレを、16/24時間の光周期で微小光(20μE・m−2・s−1の光量子束密度)において25/20℃でインキュベートする。2週間後に、シャーレを強光(80μE・m−2・s−1)へ移す。選択のこの期間の間に、大部分のプロトプラストは消滅した。オリゴヌクレオチドの作用を介して、除草剤に対する耐性を付与するように標的遺伝子中で塩基変化が起こったプロトプラストのみが、プロトプラストに由来するミクロコロニーへと分裂し増殖する。
【0090】
単離の6〜8週間後に、プロトプラスト由来コロニーをMAP培地へ移す。アガロースビーズは、この時までに、無菌の広口ピペットでミクロコロニーを移せるほど十分にばらばらになるか、そうでなければピンセットで個別に移す。MAP培地はMAPAO培地と同様な組成であるが、6%(w/v)マンニトールの代わりに3%マンニトール、及び46.2mg・l−1ヒスチジン(pH5.7)を含む。MAP培地を0.8%(w/v)ディフコアガーで凝固させた。
【0091】
この固形培地上での2〜3週間の増殖後に、10cmのシャーレ当たり50コロニーで、コロニーを再生培地RPへ移す。RP培地は273mgのKNO、416mgのCa(NO・4HO、392mgのMg(NO・6HO、57mgのMgSO・7HO、233mgの(NHSO、271mgのKHPO、27.85mgのFeSO・7HO、37.25mgのNaEDTA・2HO、公表された濃度の5分の1でムラシゲ−スクーグ培地(非特許文献40)に従う微量養素、モレル−ウェットモア培地(Morel, G. and R. H. Wetmore, Amer. J. Bot. 38: 138-40, 1951)に従うビタミン、0.05%(w/v)ショ糖、1.8%(w/v)マンニトール、0.25mgのゼアチン及び41nMクロルスルフロンから成り(1リットル当たり、pH5.7)、並びに0.8%(w/v)ディフコアガーで凝固させる。
【0092】
標的遺伝子のPCR増幅
DNeasyキット(キアゲン(Qiagen)社)を使用して、ブタフェナシル耐性及びクロルスルフロン耐性のタバコのミクロコロニーから、DNAを単離する。次に、タバコの全DNAをPCR反応における鋳型として使用する。コドン194を含むこの遺伝子の776bp断片を増幅する、プライマー5’GGTCAAGTGCCACGTAGGAT[配列番号2]及びプライマー5’GGGTGCTTCACTTTCTGCTC[配列番号3]を使用して、タバコALS遺伝子中の標的化コドンの変換を検出する。
【0093】
ヌクレオチド変換を証明するシークエンシング
除草剤耐性タバコカルス中のヌクレオチド変換は、そのようなカルスから得たPCR産物のシークエンシングによって確認される。タバコALSのP194コドンの変換(CCAからCAA)は、コドンの2番目の位置(C/A)で二重のピークをもたらす。
【0094】
以下の一本鎖オリゴヌクレオチドを、除草剤抵抗性をもたらすタバコALS遺伝子中の点変異の産生について検査する。オリゴヌクレオチドは、標的化ヌクレオチド交換の効率を増加させる修飾ヌクレオチドを含む。
【0095】
5’−CAACAATAGGAGTTTCCTGAAAAGCATCAGTACCTATCATCCTACGTGCACTTGACCTGTTATAGCAACAATGGGGAC−3’[配列番号:4]
上記の標的オリゴヌクレオチドは79ヌクレオチド長である。5’末端からの位置48のオリゴヌクレオチド中のミスマッチに下線が引かれている。残りのオリゴヌクレオチドはALS遺伝子と同一である。修飾オリゴヌクレオチドは塩基又は糖において改変される(その場合には配列中の改変されたヌクレオチドが示される)。或いは、ヌクレオチドを結合するリン酸結合も改変することができる。この場合には、そのような結合の位置を示すために、星印(*)がヌクレオチド間に挿入される。
【0096】
オリゴヌクレオチド1:モルホリノホスホロアミデート

C[配列番号:5]

モルホリノホスホロアミデート結合はリン酸骨格の修飾である。DNA/モルホリノホスホロアミデートハイブリッドの作製がまだ可能ではないので、この実施形態においてオリゴヌクレオチド中のすべてのリン酸は修飾されている。
【0097】

オリゴヌクレオチド2:2’−フルオロアラビノ核酸(小文字)

caACAATAGGAGTTTCCTGAAAAGCATCAGTACCTATCATCCTACGTGCACTTGACCTGTTATAGCAACAATGGGGac[配列番号:6]

オリゴヌクレオチド3:6−クロロ−2−メトキシアクリジン修飾ヌクレオチド(アスタリスク、

AACAATAGGAGTTTCCTGAAAAGCATCAGTACCTATCATCCTACGTGCACTTGACCTGTTATAGCAACAATGGGGAC[配列番号:7]

CAACAATAGGAGTTTCCTGAAAAGCATCAGTACCTATCATCCTACGCACTTGACCTGTTATAGCAACAATGGGGAC[配列番号:8]

CAACAATAGGAGTTTCCTGAAAAGCATCAGTACCTATCATCCTACG1TC1ACTTGACCTGTTATAGCAACAATGGGGAC[配列番号:9]

CAACAATAGGAGTTTCCTGAAAAGCATCAGTACCTATCATCCTACGTGCACTTGACCTGTTATAGCAACAATGGGGAC[配列番号:10]

AACAATAGGAGTTTCCTGAAAAGCATCAGTACCTATCATCCTACGCACTTGACCTGTTATAGCAACAATGGGGAC[配列番号:11]

AACAATAGGAGTTTCCTGAAAAGCATCAGTACCTATCATCCTACACTTGACCTGTTATAGCAACAATGGGGAC[配列番号:12]

AACAATAGGAGTTTCCTGAAAAGCATCAGTACCTATCATCCTACGTGCACTTGACCTGTTATAGCAACAATGGGGAC[配列番号:13]

オリゴヌクレオチド4:ホスホロチオエート結合(アスタリスク、

AATAGGAGTTTCCTGAAAAGCATCAGTACCTATCATCCTACGTGCACTTGACCTGTTATAGCAACAATGGC[配列番号:14]

オリゴヌクレオチド5:メチルホスホネート結合(アスタリスク、

C[配列番号:15]

オリゴヌクレオチド6:αL−LNA(小文字)

CaAcAaTaGgAgTtTcCtGaAaAgCaTcAgTaCcTaTcAtCcTaCgTGcAcTtGaCcTgTtAtAgCaAcAaTgGgGaC[配列番号:16]

cAaCaAtAgGaGtTtCcTgAaAaGcAtCaGtAcCtAtCaTcCtAcGtgCaCtTgAcCtGtTaTaGcAaCaAtGgGgAc[配列番号:17]

オリゴヌクレオチド7:2’−O−メチルイノシン(Iで示す)
IIACAATAGGAGTTTCCTGAAAAGCATCAGTACCTATCATCCTACGTGCACTTGACCTGTTATAGCAACAATGGGGII[配列番号:18]

IIACAATAGGAGTTTCCTGAAAAGCATCAGTACCTATCATCCTACGIICACTTGACCTGTTATAGCAACAATGGGGII[配列番号:19]

オリゴヌクレオチド8:2’−フルオロ−RNA(C及びU)(C及びU/T残基に関して可能なもののみ、小文字で示す)
cAACAATAGGAGTTTCCTGAAAAGCATCAGTACCTATCATCCTACGTGCACTTGACCTGTTATAGCAACAATGGGGAc[配列番号:20]

cAACAATAGGAGTTTCCTGAAAAGCATCAGTACCTATCATCCTACGuGcACTTGACCTGTTATAGCAACAATGGGGAc[配列番号:21]

オリゴヌクレオチド9:2’−O−メトキシエチルRNA(MOE)(RNAヌクレオチド は小文字で示す)

caACAATAGGAGTTTCCTGAAAAGCATCAGTACCTATCATCCTACGTGCACTTGACCTGTTATAGCAACAATGGGGac[配列番号:22]

CAACAATAGGAGTTTCCTGAAAAGCATCAGTACCTATCATCCTACGugCACTTGACCTGTTATAGCAACAATGGGGAC[配列番号:23]

caACAATAGGAGTTTCCTGAAAAGCATCAGTACCTATCATCCTACGugCACTTGACCTGTTATAGCAACAATGGGGac[配列番号:24]

オリゴヌクレオチド10:N−P−ホスホロアミデート結合(アスタリスク、

C[配列番号:25]

オリゴヌクレオチド11:2−アミノ−アデノシン(小文字)

CAACAATAGGAGTTTCCTGAAAAGCATCAGTACCTATCATCCTaCGTTGCaCTTGACCTGTTATAGCAACAATGGGGAC[配列番号:26]

オリゴヌクレオチド12:スーパーA(小文字)

CaaCaaTaGGaGTTTCCTGaaaaGCaTCaGTaCCTaTCaTCCTaCGTGCaCTTGaCCTGTTaTaGCaaCaaTGGGGaC[配列番号:27]

オリゴヌクレオチド13:スーパーT(小文字)

CAACAAtAGGAGtttCCtGAAAAGCAtCAGtACCtAtCAtCCtACGtGCACttGACCtGttAtAGCAACAAtGGGGAC[配列番号:28]

オリゴヌクレオチド14:5−メチル−イソデオキシシチジン(小文字)

CAACAATAGGAGTTTCCTGAAAAGCATCAGTACCTATCATCcTAcGTGcAcTTGACCTGTTATAGCAACAATGGGGAC[配列番号:29]

オリゴヌクレオチド15:5−プロピニル−2−デオキシヌクレオシド(小文字)

CAACAATAGGAGTTTCCTGAAAAGCATCAGTACCTATCATCCTACGtgCACTTGACCTGTTATAGCAACAATGGGGAC[配列番号:30]

CAACAATAGGAGTTTCCTGAAAAGCATCAGTACCTATCATCCTACgTGcACTTGACCTGTTATAGCAACAATGGGGAC[配列番号:31]

CAACAATAGGAGTTTCCTGAAAAGCATCAGTACCTATCATCCTACgtgcACTTGACCTGTTATAGCAACAATGGGGAC[配列番号:32]

オリゴヌクレオチド16:N−エチル−2’−デオキシシチジン(小文字)

CAACAATAGGAGTTTCCTGAAAAGCATCAGTACCTATCATCCTACGtgCACTTGACCTGTTATAGCAACAATGGGGAC[配列番号:33]

CAACAATAGGAGTTTCCTGAAAAGCATCAGTACCTATCATCCTACgTGcACTTGACCTGTTATAGCAACAATGGGGAC[配列番号:34]

CAACAATAGGAGTTTCCTGAAAAGCATCAGTACCTATCATCCTACgtgcACTTGACCTGTTATAGCAACAATGGGGAC[配列番号:35]

本出願において使用される配列は、5’末端からカウントされ、修飾位置と共に、以下の表中で記載される。xとx+1の間の骨格修飾はxに位置付けられる。(位置4と位置5の間では、4として示される)。
【0098】
【表2】

【0099】
【表2−1】

【0100】
【表2−2】

【0101】
【表2−3】

【0102】
【表2−4】

【0103】
実施例A:
様々なオリゴヌクレオチドデザインを、本明細書において別に記述されるような無細胞系を使用して検査した。本質的には、無細胞系は試験管中のTNE反応溶液である。そのような反応溶液は3つの成分を有する。(1)機能的カルベニシリン耐性遺伝子及び欠損カナマイシン耐性遺伝子を含むプラスミド。終止コドンを生じるカナマイシン遺伝子(NPTII)中のコドン22での点変異(TATからTAG)。(2)TNEのために必要なすべてのタンパク質を含むシロイヌナズナからの総抽出タンパク質及び(3)カナマイシン終止コドンのGをCに変換するようにデザインしたミスマッチを保有するオリゴヌクレオチド(したがってカナマイシン遺伝子活性を回復させる)。これらの3つの成分を混合し、1時間インキュベートし、プラスミドDNAを単離し、次に大腸菌へエレクトロポレーションする。カナマイシン耐性コロニー数は、規定のオリゴヌクレオチドのTNE活性の測定値である。カルベニシリン耐性コロニーの数は、エレクトロポレーション効率を計算するために使用される。
【0104】
下記の表3において、無細胞系を使用してTNE活性を検査したオリゴヌクレオチドが記載される。各実験において、正常DNAから作製されたオリゴヌクレオチドを使用する。修飾オリゴヌクレオチドのTNE活性は、1として任意に設定される正常DNAオリゴヌクレオチドと比較して、倍変化として示される。したがって、1以下の倍変化は修飾オリゴヌクレオチドが本分析中の正常DNAオリゴヌクレオチドよりも低く機能し、1以上の倍変化はオリゴヌクレオチドが改善されたTNE活性を示すことを意味する。
【0105】
【表3】

【0106】
太字のヌクレオチドは、修飾ヌクレオチドの位置を表わす。LNAはロックされた核酸、5PCは5−プロパニル−2−デオキシシチジン、5PUは5−プロパニル−2−デオキシウラシル、N4−EDCはN4−エチル−デオキシシチジンである。
【0107】
検査されたオリゴヌクレオチドはすべて、プラスミドでG:Gミスマッチを生じる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】標的化ヌクレオチド交換の概略図である。交換されるヌクレオチド(X)を含むアクセプター二重鎖DNA鎖は、挿入されるヌクレオチド(Y)を含むドナーオリゴヌクレオチド(NNNNNNYNNNNとして示される)に接触させられる。三重鎖構造は、TNEが可能な環境に、又は無細胞の酵素混合物又は無細胞の抽出物として既知のもののような、少なくともTNEを行なうことを可能にするタンパク質をともなう環境にさらされるか、或いは接触させられる(なかでも(i.a.)特許文献4、特許文献1を参照)。
【図2】いくつかのデオキシリボシチジンアナログの化学構造を示した図である:(a)ホスホロチオエート結合;(b)メチルホスホネート;(c)6−クロロ−2−メトキシアクリジン基に結合された5’末端のヌクレオチド残基。
【図3】シトシンヌクレオチドとして示された、ロックされた核酸の異なるジアステレオ異性体の化学構造を示した図である:(a)β−D−オキシ−LNA、C原子の「β」立体配置中に2’−O−4’−Cメチレン架橋を有するもとのLNA構造;(b)メチレン架橋中にS原子を有するβ−D−チオ−LNA;(c)C原子の「α」位において2’−O−4’−Cメチレン架橋を含む、α−L−オキシ−LNA。
【図4】スーパーA及びスーパーTの構造を示した図である。
【図5】(a)5−メチル−デオキシシトシン;(b)5−プロピニル−デオキシシトシン;(c)2’−O−メチル−5−メチル−シトシン;(d)2−アミノ−アデノシンの化学構造を示した図である。
【図6】シクロヘキセン核酸(CeNA)の化学構造を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重鎖DNA塩基配列の標的化改変のためのオリゴヌクレオチドであって、該二重鎖DNA塩基配列が、第1のDNA塩基配列、及び第1のDNA塩基配列の相補物である第2のDNA塩基配列を含み、該オリゴヌクレオチドが、前記第1のDNA塩基配列へハイブリダイズすることができるドメインであって、前記第1のDNA塩基配列に関して少なくとも1つのミスマッチを含むドメインを含み、該オリゴヌクレオチドが、天然に存在するA、C、T又はGと比較して、より高い結合親和性を有する少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む少なくとも1つのセクションを含み、前記少なくとも1つの修飾ヌクレオチドが、前記第1のDNA塩基配列中の向かい合った位置のヌクレオチドに相補的な天然に存在するヌクレオチドと比較して、前記第1のDNA塩基配列中の向かい合った位置のヌクレオチドへより強く結合することを特徴とするオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
請求項1に記載のオリゴヌクレオチドにおいて、前記オリゴヌクレオチドが、独立して少なくとも1つの修飾ヌクレオチド、好ましくは少なくとも2つの修飾ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも3、4、5、6、7、8、9又は10の修飾ヌクレオチドを含む、少なくとも2つのセクション、好ましくは少なくとも3つのセクションを含むことを特徴とするオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか一項にオリゴヌクレオチドにおいて、前記セクションが、3’末端、5’末端及び/若しくは前記ミスマッチの位置の周囲の近くに、又は3’末端、5’末端及び/若しくはミスマッチの位置の周囲にあることを特徴とするオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドにおいて、前記ミスマッチの位置の前記ヌクレオチドが修飾されないことを特徴とするオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドにおいて、前記少なくとも1つの修飾ヌクレオチドが、好ましくは前記ミスマッチから2、3、4、6、7、8、9、又は10ヌクレオチド内の、ミスマッチに隣接した位置にあることを特徴とするオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドにおいて、10〜500ヌクレオチド長であることを特徴とするオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドにおいて、前記修飾されたセクションが、ドメインであることを特徴とするオリゴヌクレオチド。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドにおいて、前記少なくとも1つの修飾ヌクレオチドが、骨格が修飾されたヌクレオチド及び/又は塩基が修飾されたヌクレオチドから成る群から選択されることを特徴とするオリゴヌクレオチド。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドにおいて、
前記ヌクレオチドは、
a.シクロヘキセン核酸(CeNA)、
b.ロックされた核酸(LNA)、
c.ペプチド核酸(PNA)、
d.2’−O−メチル置換ヌクレオチド、
e.メチルホスホネート置換ヌクレオチド、
f.6−クロロ−2−メトキシアクリジン置換ヌクレオチド、
g.2’−フルオロ−RNA、
h.2’−O−メトキシエチル−RNA、
i.2’−O−アルキル−RNA、
j.トリシクロ−DNA、
k.N3−P5−ホスホラミデート置換ヌクレオチド、
l.2,6−ジアミノプリン系ヌクレオチド、
m.メチル化、プロピニル化、及びアミノ化したヌクレオチド、並びに
n.スーパーA及びスーパーTの内の少なくとも一種
から成る群から選択されることを特徴とするオリゴヌクレオチド。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドにおいて、
前記修飾ヌクレオチドは、
α−L−LNA、
β−D−オキシ−LNA、
β−D−チオ−LNA、
α−L−オキシ−LNA、
2’−O−メチル−2−アミノプリン、
2’−O−メチル−2,6−ジアミノプリン、
2’−O−メチル−3−デアザ−5−アザシチジン、
2’−O−メチル−5−フルオロウリジン、
2’−O−メチル−5−メチルシチジン、
2’−O−メチル−5−メチルウリジン、
2’−O−メチルイノシン、
2’−フルオロ−リボシチジン、
2’−フルオロ−リボウリジン、
2’−O−メトキシエチル−リボシチジン、
2’−O−メトキシエチル−リボウリジン、
2’−O−メトキシエチル−リボアデノシン、
2’−O−メトキシエチル−リボグアニン、
2’−O−アルキル−リボシチジン、
2’−O−アルキル−リボウリジン、
2’−O−アルキル−リボアデノシン、
2’−O−アルキル−リボグアニン、
2−アミノ−アデノシン、
2,6−ジアミノプリン−2’−デオキシリボシド、
5−プロピニル−2’−デオキシシチジン
5−プロピニル−2’−デオキシウリジン
5−メチル−イソデオキシシチジン、
5−メチル−2’−デオキシシチジン、及び
N−エチル−2’−デオキシシチジン
から成る群から選択されることを特徴とするオリゴヌクレオチド。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドにおいて、前記オリゴヌクレオチドがヌクレアーゼ耐性ヌクレオチドを含むことを特徴とするオリゴヌクレオチド。
【請求項12】
請求項11に記載のオリゴヌクレオチドにおいて、前記ヌクレアーゼ耐性ヌクレオチドが、少なくとも1つ、2つ又は好ましくは少なくとも3つのホスホロチオエート結合を前記オリゴヌクレオチド中に含むような、ホスホロチオエート修飾ヌクレオチドであることを特徴とするオリゴヌクレオチド。
【請求項13】
請求項11に記載のオリゴヌクレオチドにおいて、前記ヌクレアーゼ耐性ヌクレオチドが、2’−O−メチルに置換されたヌクレオチドであることを特徴とするオリゴヌクレオチド。
【請求項14】
請求項11に記載のオリゴヌクレオチドにおいて、前記ヌクレアーゼ耐性ヌクレオチドがLNAであることを特徴とするオリゴヌクレオチド。
【請求項15】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドにおいて、前記オリゴヌクレオチドが、前記ミスマッチから少なくとも1塩基対の距離で配置された1つ又は複数のLNA残基を含むことを特徴とするオリゴヌクレオチド。
【請求項16】
請求項15に記載のオリゴヌクレオチドにおいて、1つのLNAが、前記ミスマッチから少なくとも1塩基対の位置で該ミスマッチの各側に置かれることを特徴とするオリゴヌクレオチド。
【請求項17】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドにおいて、前記オリゴヌクレオチドが、前記ミスマッチに隣接して配置されるか、又は該ミスマッチから少なくとも1塩基対の距離で配置される、1つ又は複数の5−プロピニル化ヌクレオチド及び/又はN4−エチル−2’−デオキシシチジンを含むことを特徴とするオリゴヌクレオチド。
【請求項18】
請求項15に記載のオリゴヌクレオチドにおいて、1つの5−プロピニル化ヌクレオチド又はN4−エチル−2’−デオキシシチジンが、前記ミスマッチの各側で該ミスマッチに隣接して、又は該ミスマッチから少なくとも1塩基対の位置で配置されることを特徴とするオリゴヌクレオチド。
【請求項19】
請求項17又は18に記載のオリゴヌクレオチドにおいて、前記5−プロピニル化ヌクレオチドが、5−プロピニル−2−デオキシシチジン及び/又は5−プロピニル−2−デオキシウラシル及び/又はN4−エチル−2’−デオキシシチジンであることを特徴とするオリゴヌクレオチド。
【請求項20】
ドナーオリゴヌクレオチドと二重鎖アクセプターDNA塩基配列を組み合わせることを含む、二重鎖アクセプターDNA塩基配列の標的化改変のための方法であって、該二重鎖アクセプターDNA塩基配列が、第1のDNA塩基配列、及び該第1のDNA塩基配列の相補物である第2のDNA塩基配列を含み、前記ドナーオリゴヌクレオチドが、改変される前記二重鎖アクセプターDNA塩基配列に関して、好ましくは前記第1のDNA塩基配列に関して、少なくとも1つのミスマッチを含むドメインを含み、前記オリゴヌクレオチドが、天然に存在するA、C、T又はGと比較して、より高い結合親和性を有する少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含むセクションを含み、該修飾ヌクレオチドが、標的化ヌクレオチド交換を可能にするタンパク質の存在下において、前記第1のDNA塩基配列中の向かい合った位置のヌクレオチドに相補的な天然に存在するヌクレオチドと比較して、前記第1のDNA塩基配列中の向かい合った位置のヌクレオチドにより強く結合することを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において、前記修飾ヌクレオチドが、請求項1〜19の内のいずれか一項に記載されているオリゴヌクレオチドであることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項20に記載の方法において、前記改変が、好ましくは植物細胞、真菌細胞、げっ歯類細胞、霊長類細胞、ヒト細胞又は酵母細胞から成る群から選択される細胞内のものであることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項20に記載の方法において、前記タンパク質が細胞抽出物に由来することを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法において、前記細胞抽出物が、植物細胞抽出物、真菌細胞抽出物、げっ歯類細胞抽出物、霊長類細胞抽出物、ヒト細胞抽出物又は酵母菌抽出物から成る群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項20又は21に記載の方法において、前記改変が、少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、置換又は挿入であることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項21に記載の方法において、前記細胞が、真核生物細胞、植物細胞、ヒト以外の哺乳類細胞又はヒト細胞であることを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項20〜26のいずれか一項に記載の方法において、前記標的DNAが、真菌、細菌、植物、哺乳類又はヒト由来であることを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項20〜27のいずれか一項に記載の方法において、前記二重鎖DNAが、ゲノムDNA、線状DNA、哺乳類人工染色体、バクテリア人工染色体、酵母人工染色体、植物人工染色体、核染色体DNA、オルガネラ染色体DNA、エピゾームDNA由来であることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項20〜28のいずれか一項に記載の方法において、細胞の改変、野生型への復帰による変異の修正、変異の誘導、コード領域の破壊による酵素の不活性化、コード領域の改変による酵素の生物活性の修飾、コード領域の破壊によるタンパク質の修飾に用いられることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項1〜19のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドの使用であって、細胞の改変、野生型への復帰による変異の修正、変異の誘導、コード領域の破壊による酵素の不活性化、コード領域の改変による酵素の生物活性の修飾、コード領域の破壊によるタンパク質の修飾、ミスマッチ修復、遺伝子変異を含む(植物の)遺伝物質の標的化改変、標的化遺伝子修復及び遺伝子ノックアウトに用いられることを特徴とする使用方法。
【請求項31】
二重鎖DNA塩基配列の促進された標的化改変のためのオリゴヌクレオチドの使用であって、前記二重鎖DNA塩基配列が、第1のDNA塩基配列及び該第1のDNA塩基配列の相補物である第2のDNA塩基配列を含み、前記オリゴヌクレオチドが、前記第1のDNA塩基配列にハイブリダイズすることができるドメインであって、前記第1のDNA塩基配列に関して少なくとも1つのミスマッチを含むドメインを含み、前記オリゴヌクレオチドが、修飾ヌクレオチドを含むセクションを含み、該修飾ヌクレオチドが、天然に存在するA、C、T又はGと比較してより高い結合親和性を有し、前記修飾ヌクレオチドが、前記第1のDNA塩基配列中の向かい合った位置のヌクレオチドに対して相補的な天然に存在するヌクレオチドと比較して、前記第1のDNA塩基配列中の向かい合った位置のヌクレオチドにより強く結合することを特徴とするオリゴヌクレオチドの使用方法。
【請求項32】
請求項1〜19のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドを含むことを特徴とするキット。
【請求項33】
請求項20〜29のいずれか一項に記載の方法により産生されることを特徴とする修飾された遺伝物質。
【請求項34】
請求項33に記載の修飾された遺伝物質を含むことを特徴とする細胞。
【請求項35】
請求項20〜29のいずれか一項に記載の方法により産生される植物若しくは植物の一部分、又は請求項33に記載の前記遺伝物質を含む植物若しくは植物の一部分。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2009−520495(P2009−520495A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547124(P2008−547124)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【国際出願番号】PCT/NL2006/000244
【国際公開番号】WO2007/073154
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(508186875)キージーン ナムローゼ フェンノートシャップ (5)
【Fターム(参考)】