改善された細菌(モリクテス綱)混入の検出
本発明は、非特異的増幅産物を抑制することによって改善された標的配列のPCR増幅を提供する。上記の改善は、第1生物のゲノムDNAのバックグラウンドにおける混入物の核酸を増幅するように最適化されるプライマー対の使用に関する。該混入物を含むことが疑われる第2生物由来のDNAを同じPCR増幅反応に供する場合に、第1生物のある量のゲノムDNAが増幅反応物に存在すれば、上記混入物の検出感度及び特異度が増強される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非特異的増幅産物を抑制することによって改善された標的配列のPCR増幅を提供する。上記の改善は、第1生物のゲノムDNAのバックグラウンドにおける混入物の核酸を増幅するように最適化されるプライマー対の使用に関する。該混入物を含むことが疑われる第2生物由来のDNAを同じPCR増幅反応に供する場合に、第1生物のある量のゲノムDNAが増幅反応物に存在すれば、上記混入物の検出感度及び特異度が増強される。
【背景技術】
【0002】
マイコプラズマ(Mycoplasma)は、細胞壁がないモリクテス綱(Mollicutes)に属する細菌の属である。細胞壁がないため、マイコプラズマ菌は、原核細胞壁の合成を標的とする多くの一般的抗生物質(例えばペニシリン)又はその他のβラクタム抗生物質による作用を受けない。モリクテス綱の複数の属のうちの一つであるマイコプラズマ属には、100を超える認識された種がある。モリクテス綱は、ヒト、ヒト以外の動物(昆虫を含む)、及び植物の寄生生物又は共生生物であり、マイコプラズマ属は、定義によれば、脊椎動物宿主に限定される。マイコプラズマ属の種の増殖のためには、モリクテス綱のいくつかの他の属と同様に、コレステロールが必要である。その最適増殖温度は、往々にして、宿主が恒温動物であれば該宿主の体温(例:ヒトでは37℃)であり、あるいは、宿主が自身の体内温度を調節することができない場合には周囲温度である。16SリボソームRNA配列、さらには遺伝子内容物の分析から、マイコプラズマを含むモリクテス綱が、系統樹のラクトバチルス又はクロストリジウムのいずれかの枝に極めて近縁(厳密にいえばフィルミクテス門(Firmicutes))であることが強く示唆されている。
【0003】
マイコプラズマ種は、往々にして細胞培養物中の混入物として研究実験室で見いだされる。マイコプラズマ細胞培養物の混入は、個体からの混入、又は混入された細胞培地成分によって起こる可能性がある。マイコプラズマ細胞は、物理的には小さい(1μm未満)ため、通常の顕微鏡では検出するのが難しい。マイコプラズマは、細胞の変化、例えば、染色体異常、代謝及び細胞成長における変化を誘導しうる。重度のマイコプラズマ感染は、細胞系を破壊する可能性を有する。
【0004】
マイコプラズマはまた、いくつかの疾患において病原体としても関与している。マイコプラズマ肺炎は、地域感染型肺炎の主な原因因子である。
【0005】
スピロプラズマ(Spiroplasma)種は、分子及び血清学研究(Bastian, F.O., J Neuropathol Exp Neurol 64 (2005) 833-838)により、近年、感染性海綿状脳症(TSE)と関連付けられている。しかし、スピロプラズマ種とTSEとの関連は、例えば、スクレイピー感染ハムスター脳におけるスピロプラズマのフットプリントを検出しようとしたrRNA種の盲検試験の失敗(Alexeeva, I.ら、J Clin Microbiol 44 (2006) 91-97)を考慮すると、依然として議論の余地がある。それでも、考慮されるTSEとしては、ヒツジのスクレイピー、シカの慢性消耗病(CWD)及びヒトのクロイツフェルト-ヤコブ病がある。スクレイピー感染ヒツジ脳及びCWD感染シカ脳からのスピロプラズマ種分離株をヒツジ及びヤギに頭蓋内接種したところ、これらの動物で、天然TSEと酷似した海綿状脳症が誘発された。これらのデータは、スピロプラズマがTSEと関連することを明らかに示している。
【0006】
スピロプラズマ菌は、孵化卵で増殖するため、こうした培養系において継代させることができることが明らかにされている(Bastian, F.O.ら、Journal of Medical Microbiology 56 (2007) 1235-1242)。
【0007】
孵化卵は、ワクチンの生産に主要な役割を果たしている。例えば、インフルエンザに対するヒトワクチンは、ほぼ60年にわたり利用可能であったし、近年まで、ほぼ完全に、9〜11日齢の孵化鶏卵の尿膜腔中で増殖させたウイルスから作製していた。従って、スピノプラズマの病原性によって、モリクテス綱病原体の検出は、孵化卵から作製されたあらゆる製品の安全性を確実にするための最も重要な手段となる。
【0008】
さらに、生物薬剤生産、細胞療法、及び組織再生過程におけるマイコプラズマ混入の可能性は、特に大きな問題である。世界中の薬局方及び薬剤取締機関によって要求される伝統的検出方法は、培地での増殖を用いて、混入生物を同定する。こうした培養に基づく技法は、結果を達成するのに長い時間を必要とする。さらに、あるマイコプラズマ種の培養は、可能でなかったり又は信頼性がないことがある。従って、改善され、特により高速で、かつ信頼性の高い微生物アッセイが求められる。
【0009】
Eldering, J.A.ら、Biologicals 32(2004) 183-193は、チャイニーズハムスター卵巣細胞培養物のマイコプラズマ試験のためのPCR方法を開示する。該試験の原理は、最初に細胞培養物(細胞と上清)からゲノムDNAを単離し、次に、マイコプラズマ種の16S-rRNA遺伝子における領域に特異的なプライマーと、鋳型としての単離されたDNAを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施することである。結果が陽性であれば、標的領域に対応する増幅産物が形成されて、検出される。増幅産物が全く形成されなければ、結果は陰性である。
【0010】
本方法で用いられるプライマーは、以前公表されたユニバーサルマイコプラズマプライマーである(Wong-Lee,J.G.及びLovett, M., “Rapid and sensitive PCR method for identification of Mycoplasma species in tissue culture” Diagnostic molecular microbiology - principles and applications; Persing, DH, Smith, TF, Tenover,FC, White, TJ (編者), Washington, DC, American Society for Microbiology (1993) 257-260)。Eldering, J.A.らの方法(前掲)は、アッセイ最適化の結果であり、マイコプラズマ検出の感度及び特異度を改善する以下の6つの要素を組み合わせたものである:(1)マイコプラズマゲノムの増幅物と比較して異なる大きさのPCR産物についての陽性対照プラスミド、(2)マイコプラズマ菌で混入されていることが疑われる細胞培養物から単離されるDNAの精製及び濃縮、(3)ホットスタートTaq DNAポリメラーゼの使用、(4)70℃〜60℃のアニーリング温度勾配を使用するいわゆるタッチダウンPCR技術の使用、(5)PCR試薬の混入除去、並びに(6)専用装置及び材料の使用。
【0011】
特に、前記最適化PCR法の要素(2)に関して、著者らは、以下のステップ:(a)上記細胞培養物(細胞と培地)を溶解させるステップと、(b)エタノールで溶解物からDNAを沈殿させて、沈殿DNAを単離するステップを含む、DNA精製及び濃縮方法を選択した。
【0012】
さらに、上記の沈殿方法は、スピンカラムを用いたDNA精製のための別の方法に対して有利であることが開示されている。スピンカラムは、典型的に、シリカ表面を有するフィルター材料を含む。任意でアルコールも含む高塩濃度及び/又はカオトロピックバッファー中に溶解するDNAは、例えば、遠心分離により、スピンカラムにバッファーを通過させることによってフィルター材料に結合させる。次のステップでは、非カオトロピック低塩濃度バッファー又は純水を用いて、DNAをフィルター材料から溶離することができる。最適化試験において、スピンカラムに存在しうる微量の混入物と一致する結果が得られた。上記カラムをCHOゲノムDNAと接触させたとき、微量の混入物をスピンカラムから除去した。CHOゲノムDNAの考えられる作用は、混入物のキャリアの作用として記載されている。
【0013】
Eldering, J.A.ら(前掲)の知見及びそこに開示されたワークフローに基づき、Roche Applied Science (Roche Diagnostics GmbH、マンハイム、ドイツ)は、MYCOTOOL試験キットをさらに最適化し、開発した。該試験キットを用いて実施する上記アッセイは、細胞系及び無細胞系の両方について、極めて感度の高いマイコプラズマアッセイを提供する。MYCOTOOLは、特に医薬品質管理に向けられている。
【0014】
以前の試験は、16S rRNA遺伝子特異的プライマーからのPCR生成人工産物に向けられていた(Osborne, C.A.,ら、FEMS Microbiology Letters 248 (2005) 183-187)。特定のプライマー対を用いて生成された人工産物は、増幅反応のための様々なプライマーを用いることによって回避することができると結論付けられた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の発明者は、MYCOTOOLアッセイのPCRによって、人工産物である可能性のある断片が生成された偶然の事例を見いだした(実施例を参照のこと)。Eldering, J.A.ら(前掲)の最適化アッセイと、特に、そこで用いられるプライマーが、モリクテス綱についての非常に優れた検出系を基本的に構築することに留意して、本発明の目的は、不規則な増幅産物の発生が最小化されるようにPCR工程を改善することである。特に、このような所望の効果は、上記プライマーの配列を変更することなく、達成されるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明において、前述した目的の1つ以上は、本発明の実施形態によって満たされた。
【0017】
本発明の第1の態様は、生体材料を含む液体サンプル中の細菌混入物の存在又は非存在を決定するための改善された方法であって、以下のステップ:
(a)上記サンプルを処理して、処理済サンプルから核酸を精製するステップ;次に、
(b)PCR増幅反応のための組成物(反応混合物)を形成するステップであって、該組成物が、
−配列番号1の第1プライマー、
−配列番号2の第2プライマー、及び
−鋳型としての、ステップ(a)の精製された核酸又はその測定画分
である、上記ステップ;次いで
(c)ステップ(b)の組成物を用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施するステップ;続いて
(d)増幅された標的配列の存在又は非存在を検出するステップであって、ここで、該増幅された標的配列の存在は、上記サンプル中の細菌混入物の存在を示し、また、該増幅された標的配列の非存在は、上記サンプル中の細菌混入物の非存在を示すものである、上記ステップ
を含み、上記の改善が、上記サンプルの量に対して、CHO細胞由来の所定量のDNAを、(i)サンプル、又は(ii)ステップ(a)の処理済サンプル、又は(iii)ステップ(a)で得られた精製された核酸、又は(iv)ステップ(b)の組成物、に添加し、これにより、添加されたCHO細胞由来のDNAによって、ステップ(d)における非特異的増幅を低減することを特徴とする、上記方法である。本発明の第2の態様は、孵化卵由来の羊水とCHO細胞由来のDNAとを含む組成物である。本発明の第3の態様は、(i)羊水、真核細胞の懸濁液、及び真核細胞の懸濁液の上清からなる群より選択されるサンプル由来の精製された核酸と、(ii)原核生物DNAを含まないCHO細胞由来のDNAとを含む組成物である。本発明の第4の態様は、羊水、真核細胞の懸濁液、及び真核細胞の懸濁液の上清からなる群より選択されるサンプルから単離されたDNAから原核生物混入物のDNAを増幅するための方法における本発明の組成物の使用である。本発明の第5の態様は、(i)溶解試薬と、(ii)原核生物DNAを含まない、所定濃度のCHO細胞由来の精製DNAと、(iii)配列番号1の第1プライマー及び配列番号2の第2プライマーと、を別個の容器に含むキットである。本発明の第6の態様は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施するための改善された方法であって、約100bp〜約1,500bpの範囲のサイズの特異的増幅産物が、1対のオリゴヌクレオチドプライマーのDNAポリメラーゼ触媒伸長によって形成され、上記プライマーは各々、1以上の原核生物の16S-rRNAのゲノム相補配列に含まれる標的配列にハイブリダイズするものであり、上記オリゴヌクレオチドプライマー対は、PCRにおいて第1鋳型からの特異的増幅鋳型産物を形成することができ、該PCRは、所定の組成物を含む反応混合物(Q)において所定の条件(R)下で実施され、第1鋳型は、第1真核生物のゲノムDNAと1以上の原核生物のゲノムDNAを含ものであり、また、PCRにおいて、上記オリゴヌクレオチドプライマー対は、上記反応混合物(Q)において上記と同じ条件(R)下で第2鋳型から増幅産物を形成せず、第2鋳型には、1以上の原核生物のゲノムDNAは存在しないが、第1真核生物のゲノムDNAは含まれており、上記改善された方法は、以下のステップ:
(a)上記オリゴヌクレオチドプライマー対を用意するステップ;
(b)第1真核生物のゲノムDNAを用意するステップ;
(c)1以上の原核生物のゲノムDNAを含むことが疑われる第2真核生物のゲノムDNAを含む第3鋳型を用意するステップ;
(d)上記反応混合物(Q)において、(a)のプライマー対、(c)の第3鋳型、及び(b)の第1真核生物のゲノムDNAの測定量を混合して、上記条件(R)下でPCRを実施するステップ
を含み、非特異的PCR増幅産物の形成が抑制される、上記方法である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】PCRによって増幅された産物のゲルを示す。
【図2】PCRによって増幅された産物のゲルを示す。
【図3】PCRによって増幅された産物のゲルを示す。
【図4】PCRによって増幅された産物のゲルを示す。
【図5】PCRによって増幅された産物のゲルを示す。
【図6】PCRによって増幅された産物のゲルを示す。
【図7】PCRによって増幅された産物のゲルを示す。
【図8】PCRによって増幅された産物のゲルを示す。
【図9】PCRによって増幅された産物のゲルを示す。
【図10】PCRによって増幅された産物のゲルを示す。
【図11】PCRによって増幅された産物のゲルを示す。
【図12】PCRによって増幅された産物のゲルを示す。
【図13】PCRによって増幅された産物のゲルを示す。
【図14】PCRによって増幅された産物のゲルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
いくつかの用語は、特定の意味で用いられるか、あるいは、本発明の説明において初めて定義される。本発明を目的として、用いられる用語は、その定義が、以下に記載する定義とコンフリクトするか、又は部分的にコンフリクトする場合を除いて、当分野で認容されている定義(存在する場合には)によって定義されるものとする。定義にコンフリクトがある場合には、用語の意味は、以下に記載する定義のいずれかによって第1に定義されるものとする。
【0020】
本発明の説明及び特許請求の範囲において用いられる「含む」という用語は、「〜を含むが、必ずしもそれに限定されないこと」を意味する。
【0021】
本明細書で用いられる冠詞「1つの(a、an)」は、冠詞の文法上の1又は1を超える(すなわち少なくとも1つ)の対象を指す。例として、「微生物(a microorganism)」とは、1微生物又は1を超える微生物を意味する。
【0022】
濃度範囲などの数値の範囲を示す場合には、該範囲は、第1の値n1、「と」という文字、第2の値n2に続いて「の間」の文字によって示すことができる。さらに、明示される範囲は、「n1〜n2の範囲の」という表現によって示すことができる。別途記載のない限り、明示される範囲が示されると、明示される範囲の下限は、第1の値と等しいか、又は該値より高いものとして理解される。明示される範囲の上限は、第2の値と等しいか、又は該値より低いものとして理解される。従って、明示される範囲において値xは、n1≦x≦n2によって与えられる。
【0023】
さらに、数値nと一緒に用いる用語「約」は、その値の数値±5%によって与えられる区間にある値xを示す、すなわちn - 0.05*n ≦ x ≦ n +0.05*nであることが理解されよう。用語「約」は、本発明の好ましい実施形態において、数値nと一緒に用いられる場合には、別途記載のない限り、nの値が最も好ましい。
【0024】
本明細書で用いられる用語「サンプル」とは、複合サンプル、さらに好ましくは生体サンプル、すなわち生体材料を含むサンプルを指す。サンプルは、複数の有機及び無機化合物を含みうるが、該化合物は、生体材料に含まれる核酸から分離するのが望ましい。「サンプル」という用語はまた、他の供給源、例えば、化学若しくは酵素反応混合物からの、又は生体サンプル材料の前精製物からの核酸を含む水溶液も包含する。生体サンプル(そこから核酸を精製する)という用語は、ウイルス又は細菌細胞、並びにヒト及び動物細胞のような多細胞生物からの単離細胞、さらには組織の一次培養物及び細胞系の培養物、さらにまたその上清及びすすぎ液を含むサンプルも包含する。本発明はまた、ヒト又は動物身体からの液体などの生体サンプルも包含する。特に、上記サンプルは、全血、血清、血漿、脳脊髄液、唾液、便、生検試料、骨髄、口腔すすぎ液、組織、尿又はこれらの混合物であってよい。
【0025】
本発明において、好ましいサンプルは、「液体サンプル」である。すなわちサンプルは、液体状であり、サンプル液は、水と生体材料を含む。生体材料は、好ましくは細胞又は細胞成分を含む。極めて好ましくは、本発明において液体サンプルは、細胞培養上清、培養細胞の懸濁液及び羊水からなる群より選択される。さらに好ましくは、羊水は、鳥類の孵化卵に由来するものである。
【0026】
本発明の目的のために、「液体サンプル」と一緒に用いられる用語「処理する」又は「処理(済)」の意味は、1つ以上の化合物を添加し、1つ以上の化合物を液体サンプルと混合して、これにより「処理済サンプル」を得ることによって、サンプルを処理することである。こうした処理に用いることができる好ましい化合物は、洗浄剤(detergent)、界面活性剤(surfactant)、有機溶剤、カオトロピック試薬、プロテアーゼ、及びヌクレアーゼ阻害剤からなる群より選択される。本発明において「カオトロピック試薬」は、液体水の規則構造をかき乱す任意の化学物質である。カオトロピック試薬はまた、タンパク質のアンフォールディング、伸長及び解離を促進する(Dandliker, W., B.及びde Saussure, V., A., The Chemistry of Biosurfaces, Hair, M., L.,編、Marcel Dekker,Inc. New York (1971) p. 18)。
【0027】
本発明において好ましい処理済サンプルは、溶解物である。「溶解物」又は「溶解サンプル」は、細胞、好ましくは微生物細胞、極めて好ましくは細菌細胞を含むものから得ることができ、ここで、存在する細胞の実質的な部分の構造完全性は破壊されている。このために、細胞壁が存在する場合には、これを破壊しなければならない。破砕された細菌細胞の内容物を放出させるために、該材料を所定の薬剤で処理して、微生物細胞の細胞壁を崩壊させたり、多孔性にしたり、溶解させたり、分解したり、又は変性させる。さらに、細胞膜も破壊する必要がある。細胞、組織から、又はより一般的には、生体サンプルに含まれる粒子から内容物を放出させるために、上記材料を酵素又は化学薬品で処理して、上記生物の細胞壁及び細胞膜を溶解させたり、分解したり、又は変性させることができる。いずれの場合でも、溶解(「溶菌」)プロセスは、細菌混入物の構造完全性も破壊し、これによって混入物の核酸を遊離させる。
【0028】
溶解プロセスのためには、該プロセスにおいて核酸を遊離させる場合、カオトロピック試薬、例えばグアニジニウム塩、及び/又はアニオン、カチオン、双性イオン若しくは非イオン性洗浄剤を用いるのが一般的である。また、核酸分解活性を有する酵素及びその他の不要なタンパク質を迅速に分解するプロテアーゼを用いるのも有利である。粒子、すなわち、溶解プロセス後にサンプル材料の非溶解物質が残っている場合には、該粒状物質を溶解物から分離することによって、清浄化溶解物を取得する。これは、例えば、フィルターろ過又は遠心分離によって実施することができる。従って、「溶解物」という用語は、清浄化溶解物も包含する。
【0029】
処理済サンプルからの「核酸の精製」は、標準技術である多様な方法を用いて実施することができる。こうした方法は、例えばアルコールを用いた、水溶液からの核酸の沈殿(エタノール又はイソプロパノールによる沈殿が当分野で周知である)、次いで沈殿物の分離を含みうる。その他の方法は、固相(例えば、シリカのような酸化表面を有する)に核酸を吸着させて、固相を分離した後、該固相から核酸を溶離することを含む。
【0030】
「ポリメラーゼ連鎖反応」(PCR)は、特定の標的DNA配列の単一又は数個のコピーを数桁にまで増幅する技術であり、これによってDNA配列のコピーが生成される。PCRは、熱サイクルに依存するものであり、該サイクルは、反応混合物の加熱及び冷却を繰り返すサイクルから構成され、これによってDNA融解、次いでDNAの酵素的複製を実施する。DNAポリメラーゼと一緒に標的DNA配列に相補的な配列を含むプライマー(DNAオリゴヌクレオチド)は、選択的及び反復増幅を可能にするための重要な要素である。PCRが進行するにつれ、生成されたDNAはそれ自体が複製のための鋳型として用いられて、DNA鋳型が指数関数的に増幅される連鎖反応が開始する。これに関して「反応混合物」は、DNAポリメラーゼ、dNTP、イオン、バッファー、及び標的DNA配列にハイブリダイズ(アニーリング)したプライマーの伸長を実施するのに必要なその他すべての化合物を含む。
【0031】
本発明者は、Eldering, J.A.らによって開示された方法(前掲)において、細菌混入物の存在又は非存在を決定するのに重要なPCR条件は、もっぱらCHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞培養物及び/又は培養上清に関して最適化されると結論付けた。さらに、本発明者は、配列番号1及び配列番号2のプライマー対が、時折、不規則な増幅物又は人工物(すなわち、所望の標的DNA断片とは大きさの異なる断片の非特異的増幅物)を生成することを観測した。これは、特に、他の動物種又はヒト由来の細胞の培養物からのサンプル材料より調製したDNAを鋳型として用いる場合に当てはまることである。こうした状況では、本発明の基礎となる重要な観測結果は、CHO細胞DNAの存在下でPCRを実施するとき、PCR人工産物の形成を抑制することができるというものである。しかし、この望ましい技術的効果には、CHO細胞DNAが、プライマー対によって増幅することができる細菌DNAによる混入のないことが必要である。従って、最も広義には、本発明の第1の態様は以下の通りである:
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施するための改善された方法であって、
約100bp〜約1500bpの範囲のサイズを有する特異的増幅産物が、1対のオリゴヌクレオチドプライマーのDNAポリメラーゼ触媒伸長(PCR)によって形成され、該プライマーは各々、1つ以上の原核生物の16S-rRNAのゲノム相補配列に含まれる標的配列にハイブリダイズすることができ、
上記オリゴヌクレオチドプライマー対は、PCRにおいて、第1鋳型から特異的増幅産物を形成することができ、該PCRは、所定の組成物を含む反応混合物(Q)において所定の条件(R)下で実施され、第1鋳型は、第1真核生物のゲノムDNAと1つ以上の原核生物のゲノムDNAとを含むものであり、
上記PCRにおいて、上記オリゴヌクレオチドプライマー対は、上記反応混合物(Q)において同じ条件(R)下で第2鋳型から増幅産物を形成せず、第2鋳型には、1つ以上の原核生物のゲノムDNAは存在しないが、第1真核生物のゲノムDNAは含まれており、
上記改善された方法は、以下のステップ:
(a)上記オリゴヌクレオチドプライマー対を用意するステップと;
(b)第1真核生物のゲノムDNAを用意するステップと;
(c)1以上の原核生物のゲノムDNAを含むことが疑われる第2真核生物のゲノムDNAを含む第3の鋳型を用意するステップと;
(d)上記反応混合物(Q)において、(a)のプライマー対、(c)の第3鋳型、及び(b)の第1真核生物のゲノムDNAの測定量を混合し、上記条件(R)下でPCRを実施するステップ
を含み、非特異的PCR増幅産物の形成が抑制される方法である。
【0032】
本発明に関して、PCRの条件(R)は、パラメーター、例えば温度計画、インキュベーション時間、PCRサイクルの数、及びPCRの分野で当業者に公知の他の物理的パラメーターを表すものである。反応混合物(Q)は、PCRプロセスを実施するのに用いる最終混合物の全成分を含み、これには、プライマー伸長に必要なすべての化合物が含まれる。上記反応混合物(Q)はまた、上記プライマー対を、各々それぞれの所定濃度で含む。明瞭にするために、この意味で上記反応混合物(Q)は、個別に添加される鋳型DNAを含まない。上記鋳型DNAは、どの鋳型を用いても、最終混合物(すなわち、鋳型DNAの添加後)において、他のすべての成分の濃度が同じであるように添加する。
【0033】
本発明において、CHO細胞以外の別の生物のゲノムDNAを含む鋳型も、測定量の、すなわち所定濃度で、CHO細胞DNAをさらに含有する必要がある。
【0034】
本発明の好ましい実施形態では、上記オリゴヌクレオチド対は、複数の原核生物種にハイブリダイズするが、該プライマーと16S-rRNA遺伝子の標的領域とのハイブリダイゼーションにおいて0〜3個のミスマッチが発生してもよい。上記のいずれのケースでも、どのミスマッチ(存在する場合)も、それぞれのオリゴヌクレオチドの3'-OH基をもたらす末端ヌクレオチドを排除する。
【0035】
本発明の好ましい実施形態では、1つ以上の原核生物は、モリクテス(Mollicutes)種、バチルス(Bacillus)種、クロストリジウム(Clostridium)種、コリネバクテリウム(Corynebacterium)種、ミクロコッカス(Micrococcus)種、スタフィロコッカス(Staphylococcus)種、及びストレプトコッカス(Streptococcus)種からなる群より選択される種である。さらに好ましくは、上記の種はモリクテスの種である。さらにまた好ましくは、上記種はマイコプラズマ種であり、より好ましくはマイコプラズマ・ハイオライニス(M. hyorhinis)、マイコプラズマ・アルギニーニ(M. arginini)、マイコプラズマ・ニューモニエ(M. pneumoniae)、マイコプラズマ・ファーメンタンス(M.fermentans)、マイコプラズマ・オラーレ(M. orale)、及びマイコプラズマ・ピラム(M. pirium)からなる群より選択される種であり、あるいは、上記の種はアコレプラズマ種、より好ましくはアコレプラズマ・レイドラウイ(Acholeplasma laidlawii)であり、あるいはまた、上記種はスピロプラズマ種であり、より好ましくはスピロプラズマ・ミリアム(Spiroplasma mirium)である。
【0036】
本発明の極めて好ましい実施形態では、第1真核生物は、CHO細胞、又は複数のCHO細胞を含む培養物である。さらに好ましくは、前記プライマー対は、配列番号1及び配列番号2のいずれか一方、又は両方を含む。
【0037】
本発明のさらに好ましい実施形態では、前記条件(R)及び反応混合物(Q)は、MYCOTOOL試験キットの説明書に記載されているRoche Diagnostics GmbH、マンハイム(ドイツ)による、MYCOTOOLアッセイの条件及び混合物である。
【0038】
本発明のより好ましい実施形態を以下の項目のリストに記載する:
1.液体サンプル中の細菌混入物の存在又は非存在を決定するための改善された方法であって、以下のステップ:
(a)上記サンプルを処理して、処理済サンプルから核酸を精製するステップ;次に、
(b)PCR増幅反応のための組成物を形成するステップであって、該組成物が、
−配列番号1の第1プライマー、
−配列番号2の第2プライマー、及び
−鋳型としての、ステップ(a)の精製された核酸又はその測定画分
を含む、上記ステップ;次に
(c)ステップ(b)の組成物を用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施し、これにより、原核生物16S-rRNA遺伝子に含まれる標的配列が鋳型に存在する場合には該標的配列を増幅するステップ;続いて
(d)増幅された標的配列の存在又は非存在を検出するステップであって、ここで、該増幅された標的配列の存在は、上記サンプル中の細菌混入物の存在を示し、また、該増幅された標的配列の非存在は、上記サンプル中の細菌混入物の非存在を示すものである、上記ステップ
を含み、
上記の改善が、上記サンプルの量に対して、CHO細胞由来の所定量のDNAを、(i)サンプル、又は(ii)ステップ(a)の処理済サンプル、又は(iii)ステップ(a)で得られた精製された核酸、又は(iv)ステップ(b)の組成物、に添加し、これにより、添加されたCHO細胞由来のDNAによって、ステップ(d)における非特異的増幅を低減させることを特徴とする、上記方法。
【0039】
2.前記液体サンプル1ml当たりの所定量のDNAが、約5x106個のCHO細胞からのDNA内容物である、第1項に記載の方法。
【0040】
3.前記液体サンプルが、培養細胞を含む細胞培地、無細胞培養上清、及び羊水からなる群より選択される、第1項及び第2項に記載の方法。
【0041】
4.前記液体サンプルが羊水である、第3項に記載の方法。
【0042】
5.前記羊水が孵化卵に由来する、第4項に記載の方法。
【0043】
6.前記細菌混入物が、アコレプラズマ、バチルス、クロストリジウム、コリネバクテリウム、ミクロコッカス、マイコプラズマ、スピロプラズマ、スタフィロコッカス、及びストレプトコッカスからなる群より選択される属である、第1項〜第5項のいずれかに記載の方法。
【0044】
7.前記細菌混入物が、マイコプラズマ・ハイオライニス、マイコプラズマ・アルギニーニ、マイコプラズマ・ニューモニエ、マイコプラズマ・ファーメンタンス、マイコプラズマ・オラーレ、及びマイコプラズマ・ピラムからなる群より選択されるマイコプラズマ種であるか、又は、該細菌混入物がアコレプラズマ・レイドラウイであるか、又は、該細菌混入物がスピロプラズマ・ミリアムである、第6項に記載の方法。
【0045】
8.孵化卵由来の羊水及びCHO細胞由来のDNAを含む組成物。
【0046】
9.カオトロピック試薬及びプロテアーゼから選択される溶解試薬をさらに含む、第8項に記載の組成物。
【0047】
10.(i)羊水、真核細胞の懸濁液、及び真核細胞の懸濁液の上清からなる群より選択されるサンプル由来の精製された核酸と、(ii)原核生物DNAを含まないCHO細胞由来のDNAとを含む組成物。
【0048】
11.配列番号1の第1プライマーと、配列番号2の第2プライマーと、ヌクレオチド三リン酸と、耐熱性DNAポリメラーゼとをさらに含む、第10項に記載の組成物。
【0049】
12.インターカレーション色素をさらに含む、第11項に記載の組成物。
【0050】
13.(i)溶解試薬と、(ii)原核生物DNAを含まない、所定濃度のCHO細胞由来の精製されたDNAと、(iii)配列番号1の第1プライマー及び配列番号2の第2プライマーと、を別個の容器に含むキット。
【0051】
14.羊水、真核細胞の懸濁液、及び真核細胞の懸濁液の上清からなる群より選択されるサンプルから単離されたDNAから原核生物混入物のDNAを増幅するための、第10項〜第12項のいずれかに記載の組成物の使用。
【0052】
15.改善されたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施するための改善された方法であって、
約100bp〜約1,500bpの範囲のサイズの特異的増幅産物が、1対のオリゴヌクレオチドプライマーのDNAポリメラーゼ触媒伸長によって形成され、上記プライマーは各々、1以上の原核生物の16S-rRNAのゲノム相補配列に含まれる標的配列にハイブリダイズするものであり、
上記オリゴヌクレオチドプライマー対は、PCR(P)において第1鋳型からの特異的増幅産物を形成することができ、該PCR(P)は、所定の組成物を含む反応混合物(Q)において所定の条件(R)下で実施され、第1鋳型は、第1真核生物のゲノムDNAと1以上の原核生物のゲノムDNAを含むものであり、
また、Pにおいて、上記オリゴヌクレオチドプライマー対は、上記反応混合物(Q)において上記と同じ条件(R)下で第2鋳型から増幅産物を形成せず、第2鋳型には、1以上の原核生物のゲノムDNAは存在しないが、第1真核生物のゲノムDNAは含まれており、
上記改善された方法は、以下のステップ:
(a)上記オリゴヌクレオチドプライマー対と、第1真核生物のゲノムDNAを用意するステップ;
(b)1以上の原核生物のゲノムDNAを含むことが疑われる第2真核生物のゲノムDNAを含む第3鋳型を用意するステップ;
(c)上記反応混合物(Q)において、(a)のプライマー対、(b)の第3鋳型、及び第1真核生物のゲノムDNAの測定量を混合し、上記条件(R)下でPCRを実施するステップ
を含み、非特異的PCR増幅産物の形成が抑制される、上記方法。
【0053】
配列表の説明
配列番号1:マイコプラズマ及び関連種の検出のためのユニバーサルプライマー(フォワード);以前、Wong-Lee,J.G.,及びLovett, M., “Rapid and sensitive PCR method for identification of Mycoplasma species in tissue culture” Diagnostic molecular microbiology - principles and applications; Persing, DH, Smith, TF, Tenover,FC, White, TJ (編者)Washington, DC, American Society for Microbiology (1993) 257-260, 及びEldering, J.A.,ら、Biologicals 32 (2004) 183-193に開示されたもの。
配列番号2:マイコプラズマ及び関連種の検出のためのユニバーサルプライマー(リバース);以前、Wong-Lee,J.G.,ら(前掲)及びEldering, J.A.,ら(前掲)に開示されたもの。
配列番号3:グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子における標的配列(対照配列)に特異的なフォワードプライマー。
配列番号4:グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子における標的配列(対照配列)に特異的なリバースプライマー。
【0054】
図面の説明
図1:レーン:コメント/希釈
1〜5:GAPDH対照PCR;MDCK細胞から単離されたDNA、CHO細胞DNAなし、アコレプラズマ・レイドラウイDNAを混入(spike)
1:非希釈
2:10-1
3:10-2
4:10-3
5:10-4
6:サイズマーカー(50bpステップ)
7〜11:GAPDH対照PCR;MDCK細胞から単離されたDNA、CHO細胞DNAなし、混入なし
7:10-1
8:10-2
9:10-3
10:10-4
11:サイズマーカー(50bpステップ)
【0055】
図2:レーン:コメント/希釈
1〜5:GAPDH対照PCR;MDCK細胞から単離されたDNA、CHO細胞DNA添加、アコレプラズマ・レイドラウイDNAを混入
1:非希釈
2:10-1
3:10-2
4:10-3
5:10-4
6:サイズマーカー(50bpステップ)
7〜11:GAPDH対照PCR;MDCK細胞から単離されたDNA、CHO細胞DNAなし、混入なし
7:10-1
8:10-2
9:10-3
10:10-4
11:サイズマーカー(50bpステップ)
【0056】
図3:レーン:コメント/希釈
1〜8:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;ASCから単離されたDNA、マイコプラズマ・オラーレDNAを混入、CHO細胞DNAなし
1〜8:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;8つの独立に抜き出したアリコートを用いたPCR
6:バンドのサイズは、特異的標的DNA増幅産物について観測されたサイズ範囲と一致している。
【0057】
図4:レーン:コメント/希釈
1〜8:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;ASCから単離されたDNA、マイコプラズマ・オラーレDNAを混入、CHO細胞DNAを添加
1〜8:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;8つの独立に抜き出したアリコートを用いたPCR
9〜12:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;バッファー(「鋳型なし」対照)を用いたPCR
13:サイズマーカー(50bpステップ)
【0058】
図5:レーン:コメント/希釈
1〜8:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;アコレプラズマ・レイドラウイDNAを混入したトリスバッファー、CHO細胞DNAなし
1〜4:10cfuアコレプラズマ・レイドラウイDNA
5〜8:1cfuアコレプラズマ・レイドラウイDNA
9〜12:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;トリスバッファー、混入なし、CHO細胞DNAなし
13、14:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;トリスバッファー、PCR反応混合物毎に約10コピーの陽性対照プラスミド(MYCOTOOLキットの一部)、CHO細胞DNAなし
15:サイズマーカー(50bpステップ)
【0059】
図6:レーン:コメント/希釈
1〜8:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;アコレプラズマ・レイドラウイDNAを混入したトリスバッファー、CHO細胞DNAを添加
1〜4:10cfuアコレプラズマ・レイドラウイDNA
5〜8:1cfuアコレプラズマ・レイドラウイDNA
9〜12:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;トリスバッファー、混入なし、CHO細胞DNAを添加
13、14:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;トリスバッファー、PCR反応混合物毎に約10コピーの陽性対照プラスミド(MYCOTOOLキットの一部)、CHO細胞DNAを添加
15:サイズマーカー(50bpステップ)
【0060】
図7:レーン:コメント/希釈
1〜4:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;アコレプラズマ・レイドラウイDNAを混入したベロ細胞懸濁液、CHO細胞DNAなし
1〜4:10cfu アコレプラズマ・レイドラウイDNA
5〜8:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;ベロ細胞懸濁液、混入なし、CHO細胞DNAなし
9、10:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;トリスバッファー、PCR反応混合物毎に約10コピーの陽性対照プラスミド(MYCOTOOLキットの一部)、CHO細胞DNAなし
11、12:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;バッファー(「鋳型なし」対照)を用いたPCR
13:サイズマーカー(50bpステップ)
【0061】
図8:レーン:コメント/希釈
1〜4:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;アコレプラズマ・レイドラウイDNAを混入したベロ細胞懸濁液、CHO細胞DNA添加
1〜4:3cfuアコレプラズマ・レイドラウイDNA
5〜8:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;ベロ細胞懸濁液、混入なし、CHO細胞DNAを添加
9、10:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;トリスバッファー、PCR反応混合物毎に約10コピーの陽性対照プラスミド(MYCOTOOLキットの一部)、CHO細胞DNAを添加
11、12:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;バッファー(「鋳型なし」対照)を用いたPCR
13:サイズマーカー(50bpステップ)
【0062】
図9:レーン:コメント/希釈
1〜4:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;アコレプラズマ・レイドラウイを「接種」した尿膜液、CHO細胞DNAなし
1〜4:3cfuアコレプラズマ・レイドラウイDNA
5〜8:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;尿膜液、接種なし、CHO細胞DNA添加なし
9,10:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;トリスバッファー、PCR反応混合物毎に約10コピーの陽性対照プラスミド(MYCOTOOLキットの一部)、CHO細胞DNAなし
11:サイズマーカー(50bpステップ)
矢印は、非特異的に増幅されたPCR産物が泳動するゲルの領域を示す。
【0063】
図10:レーン:コメント/希釈
1〜4:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;アコレプラズマ・レイドラウイを「接種」した尿膜液、2.5μg/50μlのCHO細胞DNA
1〜4:3cfuアコレプラズマ・レイドラウイDNA
5〜8:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;尿膜液、接種なし、2.5μg/50μlのCHO細胞DNA
9,10:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;トリスバッファー、PCR反応混合物毎に約10コピーの陽性対照プラスミド(MYCOTOOLキットの一部)、CHO細胞DNAなし
11:サイズマーカー(50bpステップ)
矢印は、非特異的に増幅されたPCR産物が泳動するゲルの領域を示す。
【0064】
図11:レーン:コメント/希釈
1〜4:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;アコレプラズマ・レイドラウイを「接種」した尿膜液、5μg/50μlのCHO細胞DNA
1〜4:3cfuアコレプラズマ・レイドラウイDNA
5〜8:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;尿膜液、接種なし、5μg/50μlのCHO細胞DNA
9、10:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;バッファー(「鋳型なし」対照)を用いたPCR
11:サイズマーカー(50bpステップ)
矢印は、非特異的に増幅されたPCR産物が泳動するゲルの領域を示す。
【0065】
図12:レーン:コメント/希釈
1〜4:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;アコレプラズマ・レイドラウイを「接種」した尿膜液、10μg/50μlのCHO細胞DNA
1〜4:3cfuアコレプラズマ・レイドラウイDNA
5〜8:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;尿膜液、接種なし、10μg/50μlのCHO細胞DNA
9、10:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;バッファー(「鋳型なし」対照)を用いたPCR
11:サイズマーカー(50bpステップ)
矢印は、非特異的に増幅されたPCR産物が泳動するゲルの領域を示す。
【0066】
図13:レーン:コメント/希釈
1〜8:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;アコレプラズマ・レイドラウイDNAを混入したトリスバッファー
1〜4:3cfuアコレプラズマ・レイドラウイDNA、仔ウシ胸腺DNAなし
5〜8:1cfuアコレプラズマ・レイドラウイDNA、仔ウシ胸腺DNAを添加
9〜12:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;非混入トリスバッファー、仔ウシ胸腺DNA添加
13、14:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;トリスバッファー、PCR反応混合物毎に約10コピーの陽性対照プラスミド(MYCOTOOLキットの一部)、仔ウシ胸腺DNAなし
15:サイズマーカー(50bpステップ)
【0067】
図14:レーン:コメント/希釈
1〜8:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;アコレプラズマ・レイドラウイを「接種」した尿膜液、仔ウシ胸腺DNAを添加
1〜4:3cfuアコレプラズマ・レイドラウイDNA
5〜8:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;尿膜液、接種なし、仔ウシ胸腺DNA添加
9〜12:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;トリスバッファー、接種なし、仔ウシ胸腺DNA添加
13、14:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;バッファー(「鋳型なし」対照)を用いたPCR
15:サイズマーカー(50bpステップ)
【実施例】
【0068】
実施例1
MYCOTOOLキット及びアッセイ
MYCOTOOL PCRマイコプラズマ検出キットは、モリクテス綱に属する細菌の検出のために最適化されたin vitro核酸増幅試験である。該細菌としては、マイコプラズマ・ハイオライニス、マイコプラズマ・アルギニーニ、マイコプラズマ・ニューモニエ、マイコプラズマ・ファーメンタンス、マイコプラズマ・オラーレ、マイコプラズマ・ピラム、マイコプラズマ・サリバルム、マイコプラズマ・ホミニス、マイコプラズマ・シノビエ、スピロプラズマ・ミリアム、スピロプラズマ・シトリ、及びアコレプラズマ・レイドラウイがある。
【0069】
上記MycoToolキットは、2つのサブキット、すなわちサブキット1(“Detection Prep Kit”; RocheApplied Scienceカタログ番号: 05184592001)とサブキット2(“Detection Amplification Kit”; Roche Applied Scienceカタログ番号:05184240001)を含む。
【0070】
上記キットは、製造者の説明書に厳密に従って使用した。
【0071】
別途記載のない限り、(i)細胞培養上清、(ii)培養細胞の懸濁液、及び(iii)羊水から選択される液体サンプルを、グアニジニウム塩とプロテイナーゼKを含む水性バッファーを添加し、該バッファーと上記サンプルとを混合し、該混合物をインキュベートして溶解を実施することにより、溶解させた。
【0072】
溶解後、典型的には、サンプル1ml当たり10〜250μgのCHO細胞DNAを溶解物に添加して、混合した。CHO細胞DNAは、個別に試験するので、混入物である原核生物DNAを含まなかった。続いて、アルコールを添加することにより、核酸を混合物から沈殿させた。沈殿物を遠心分離によって回収し、70%エタノールで洗浄した後、乾燥させた。乾燥ペレットを規定バッファーに溶解させてから、PCR分析に付した。
【0073】
また、内部対照として、MYCOTOOLキットは、GAPDHハウスキーピング遺伝子のプライマー対も含む。
【0074】
PCR増幅の前に、ウラシル-N-グリコシラーゼ酵素(キットの要素)を加えることにより、アンプリコン混入の危険性を軽減した。
【0075】
以下の各実施例では、製造者による説明書に厳密に従ってPCRを実施した。PCR産物は、標準的条件下で、ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動させた。バンドは、RESOLIGHT化合物及びUV照明を用いて視覚化し、バンド検出を520nmで行った。
【0076】
モリクテスの検出に用いるMYCOTOOLキットのプライマーは、配列番号1及び配列番号2に示すものである。GAPDHに特異的な対照プライマーも用意する(配列番号3及び配列番号4)。
【0077】
各MYCOTOOLキットは、マイコプラズマDNAを含む対照プラスミドをさらに含むが、これは、単離された細菌DNA(陽性対照)から増幅されたPCR断片と比較して、認識できるほど大きさの異なるPCR断片を生成する。このために、該プラスミドを開示するEldering, J.A.,ら、Biologicals 32 (2004) 183-193を参照する。
【0078】
実施例2
サンプルに混入するためのモリクテス種由来のDNA
本実施例で用いるサンプルはすべて、原核生物混入物を含まない培養物から得たものである。
【0079】
モリクテス種に感染したサンプル材料の代わりに、アコレプラズマ・レイドラウイ又はマイコプラズマ・オラーレから調製したDNAを、溶解前のいずれかのサンプル材料、又はサンプル材料から調製した単離DNAに混入した(別途記載のない限り)。混入する目的で、DNAをアコレプラズマ・レイドラウイ(ATCC 27556)及びマイコプラズマ・オラーレ(ATCC 23714)の基準培養物(標準的条件)から調製した。各培養物について、コロニー形成単位(cfu)として表される細胞力価を決定した。使用した混入DNAの量は、DNAを調製するそれぞれの培養物について決定されるcfuの数を反映していた。
【0080】
前述のように示されるモリクテスDNAを以下に記載する混入実験で用いた。モリクテスDNA(特異的増幅産物)から増幅された典型的な特異的PCR断片の大きさは、約430〜470bpの範囲であった。
【0081】
実施例3
MDCK細胞培養物(懸濁細胞)からのサンプルにおけるGAPDHゲノム標的配列の検出
原核生物を含まず、かつ細胞力価が0.79・106細胞/mlのMDCK細胞の培養物を用いた。アコレプラズマ・レイドラウイDNAをサンプル1ml当たり3コロニー形成単位(cfu)の濃度でサンプルに添加した。MYCOTOOLキットの説明書に明記されているように、混入したサンプル材料から核酸を単離した(実施例1も参照のこと)。2つの異なる核酸調製物を、第1は、CHO細胞DNAの添加なしで、また第2はサンプル材料にCHO細胞DNAを添加して(サンプル1ml当たり50 mg)調製した。
【0082】
調製を繰り返したが、このとき、アコレプラズマ・レイドラウイDNAをサンプルに混入せずに行った。ここでも、CHO細胞DNAを添加して、又は添加せずに核酸を調製した。
【0083】
DNA調製物のいくつかの希釈物をTEバッファーで調製した。各希釈物のアリコートをMYCOTOOL説明書に従ってGAPDH特異的PCRに付した。
【0084】
図1及び2は、得られたPCR産物を示すバンドを有するゲルを示す。図1は、CHO細胞DNAを添加せずに得られた結果を示し、図2は、CHO細胞DNAを添加して得られたPCR産物を示す。
【0085】
CHO DNAを添加すると、PCRを10-4希釈物で実施した場合であっても、GAPDH対照バンドが検出可能であることをはっきりと観測することができた。
【0086】
実施例4
脂肪幹細胞(ASC)の培養上清由来の混入サンプルにおける原核生物DNAの16S-rRNA相補配列中の標的配列の検出
原核生物を含まないASCを、遠心分離により沈降させた。MYCOTOOLキットの説明書に明記されているように、清澄化上清(細胞培地)をDNA単離に用いた(実施例1も参照のこと)。溶解ステップの前に、マイコプラズマ・オラーレDNAをサンプル1ml当たり3コロニー形成単位(cfu)の濃度でサンプルに添加した。次に、該サンプルを2つの等しい量に分割した。1つのアリコートに対して、上清1ml当たり100mgの濃度でCHO細胞DNAを添加した。全DNAを両方のアリコートから個別に単離した。各DNA調製物のアリコートを用いて複数回のPCR反応を実施した。図3及び図4は、PCRによって得られた増幅産物のDNA断片の電気泳動後のゲルを示す。
【0087】
すべての試験混入サンプルでマイコプラズマDNAが検出されたことから、CHO細胞DNAの添加によってMYCOTOOL試験がより頑健になったのは明らかである。これに対し、CHO細胞DNAを添加しない場合では、8つのPCR反応物のうち1つだけがマイコプラズマ標的DNAに特異的な断片の増幅に成功した。
【0088】
CHO細胞DNAが存在しない場合には、非特異的PCR断片は実質的に存在しないことが見とめられる(図3のレーン1は、恐らく例外である)。これは、PCR人工産物はMYCOTOOLアッセイによって一般に生成されないという発明者の観察結果を強調するものである。興味深いことに、図4からわかるように、CHO細胞DNAの添加もまた、非特異的増幅産物をもたらさない。
【0089】
実施例5
混入水性バッファーにおける原核生物DNAの16S-rRNA相補配列中の標的配列の検出
混入物を含まない10mM Tris HClバッファーに、バッファー1ml当たり1又は10cfuの濃度のアコレプラズマ・レイドラウイDNAを混入した。混入バッファー及び非混入バッファーをCHO細胞DNAと混合することによって、バッファー1ml当たり80μgの濃度を達成した。さらに、CHO細胞DNAを含まない混入バッファー及び非混入バッファーを調製した。各混入調製物及び非混入調製物から、MYCOTOOLプロトコルに従いDNAを調製した。複数回のPCR反応を、各DNA調製物のアリコートを用いて実施した。さらに、MYCOTOOLキットの一部である約10コピーの対照プラスミド(陽性対照)を含むTrisバッファーのアリコートを用いて、PCRを実施した。図5及び図6は、PCRによって得られた増幅産物のDNA断片の電気泳動後のゲルを示す図である。
【0090】
PCRは、10cfuに対応するアコレプラズマ・レイドラウイDNAを検出するのに問題はなかったが、CHO細胞DNAの存在下で、1cfuの検出が顕著に改善した。
【0091】
陽性対照プラスミドを含むレーンは、アコレプラズマ・レイドラウイ標的配列の特異的増幅産物と比較して、認識できる大きさの差を示している。
【0092】
実施例6
ベロ細胞培養物(懸濁細胞)由来の混入サンプルにおける原核生物DNAの16S-rRNA相補配列中の標的配列の検出
原核生物を含まない培養物由来の、1ml当たり105〜106個の細胞の範囲の細胞力価を有するベロ細胞の懸濁液に、細胞懸濁液1ml当たり3若しくは10cfuの濃度のアコレプラズマ・レイドラウイDNA又はマイコプラズマ・オラーレDNAを混入した。3cfu/mlで混入した培養物に、細胞懸濁液1ml当たり10、30、50、70、85、100及び150μgの濃度でCHO細胞DNAを添加した。
【0093】
ベロ細胞単独の各混入懸濁液及び非混入懸濁液から、DNAをMYCOTOOLプロトコルに従い調製した。複数回のPCR反応を、各DNA調製物のアリコートを用いて実施した。さらに、MYCOTOOLキットの一部である約10コピーの対照プラスミド(陽性対照)を含むTrisバッファー(10mM Tris HClバッファー)のアリコートを用いて、PCRを実施した。図7及び図8は、PCRによって得られた増幅産物のDNA断片の電気泳動後のゲルを示す図である。図8に示すサンプルは、細胞懸濁液1ml当たり150μgの濃度でCHO細胞DNAを含有していた。細胞懸濁液1ml当たり10、30、50、70、85、及び100μgのCHO細胞DNAの濃度を用いた場合も同等の結果が得られた。
【0094】
特に、いくつかの非特異的(人工物)PCR産物は、CHO細胞DNAの非存在下で得られた(図7参照)。いくつかのケースでは、これら人工産物バンドの大きさと特異的増幅産物の大きさ(図7のレーン1〜4)の類似性が見とめられた。驚くことに、非特異的PCR増幅産物は、CHO細胞DNAの存在下では全く産生されなかった(図8、レーン1〜4)。
【0095】
実施例7
孵化鶏卵由来の尿膜液の「接種」サンプルにおける原核生物DNAの16S-rRNA相補配列中の標的配列の検出
マイコプラズマ混入のない尿膜液を、ウイルスワクチン株を接種した孵化鶏卵(9〜11日齢)から回収した。
【0096】
力価2.45 x 103cfuのアコレプラズマ・レイドラウイの液体培養物をTEバッファーで1:1,000に希釈した。この希釈物のアリコートを尿膜液で1:10に希釈した。上記の1:10,000接種材料を尿膜液1ml当たり12.2μlの量で添加して、接種尿膜液1ml当たり3cfuの等力価を得た。接種尿膜液をそれ以上インキュベートせずに(すなわち該尿膜液中で細菌を増殖させなかった)DNA単離に付した。
【0097】
4つの異なるサンプルを用意した:(i)CHO細胞DNAを含まない接種尿膜液、(ii)CHO細胞DNAを含まない非接種尿膜液、(iii)CHO細胞DNAを添加した接種尿膜液、及び(iv)CHO細胞DNAを添加した非接種尿膜液。(iii)及び(iv)のサンプルでは、CHO細胞DNAの濃度は、尿膜液1ml当たり208mgであった。
【0098】
各接種及び非接種サンプル(i〜iv)から、MYCOTOOLプロトコルに従いDNAを調製した。複数回のPCR反応を、各DNA調製物のアリコートを用いて実施した。さらに、MYCOTOOLキットの一部である約10コピーの対照プラスミド(陽性対照)を含むTrisバッファー(10mM Tris HClバッファー、pH7.5)のアリコートを用いて、PCRを実施した。
【0099】
ここでもやはり、CHO細胞DNAの存在が(a)非特異的PCR増幅産物を抑制し、(b)PCR検出の感度を高める効果を確認することができた。
【0100】
実施例8
孵化鶏卵由来の尿膜液の「接種」サンプルにおける原核生物DNAの16S-rRNA相補配列中の標的配列の検出、PCR反応混合物への様々な濃度のCHO細胞DNAの添加
DNA精製前にCHO細胞DNAを添加しない以外は実施例7に記載したのと同様に実験を実施した。その代わり、CHO細胞DNAをPCR開始前に反応混合物に添加した。反応混合物中のCHO細胞DNAの濃度は、50μl(PCR反応混合物の量)当たり0、2.5、5、及び10μgとした。これは、最終反応混合物すなわち、PCR反応開始直前の反応混合物中の0μg/μl、0.05μg/μl、0.1μg/μl、及び0.2μg/μlに対応する。図9〜図12に結果を示す。
【0101】
実施例9
混入水性バッファーにおける原核生物DNAの16S-rRNA相補配列中の標的配列の検出
アコレプラズマ・レイドラウイDNAの濃度がバッファー1ml当たり3cfuであり、DNA精製前に、CHO細胞DNAの代わりに、仔ウシ胸腺をバッファー1ml当たり200μgの濃度で添加する以外は、実施例5に記載したのと同様に実験を実施した。図13は結果を示す。
【0102】
特に、仔ウシ胸腺DNAの存在下で産生されたPCR断片は、CHO細胞DNAの存在下で産生された断片、例えば、(特に)図6に示したものとは違って、大きさにいくらかの変動を示している。
【0103】
従って、仔ウシ胸腺DNAは、PCR人工産物の形成を抑制するのに適していない。以上の結果を考慮すると、仔ウシ胸腺DNA(及びその他の真核生物ゲノムDNA)ではなく、CHO細胞DNAの能力は、配列番号1及び配列番号2のプライマーに基づくMYCOTOOL PCRを最初にCHO細胞培養物及び培養上清に合わせて調整したことによって、所望の効果をもたらすことができたと結論付けられた。「バックグラウンド」が明らかに人工産物の形成を抑制することから、最適化を実施した時点では、CHO細胞のゲノムDNAが、プライマーに関して有益と思われる「バックグラウンド」を提供したことははっきりしていなかった。他の種由来のゲノムDNAは組成が異なり、非特異的人工産物の形成を抑制することはできない(又はそうするのに効率が低い)ことは明らかである。
【0104】
実施例10
孵化鶏卵由来の尿膜液の「接種」サンプルにおける原核生物DNAの16S-rRNA相補配列中の標的配列の検出、仔ウシ胸腺DNAの添加
DNA精製前に、CHO細胞DNAではなく、仔ウシ胸腺を添加した以外は実施例7に記載したのと同様に実験を実施した。
【0105】
4つの異なるサンプルを用意した:(i)仔ウシ胸腺DNAを含まない接種尿膜液、(ii)仔ウシ胸腺DNAを含まない非接種尿膜液、(iii)仔ウシ胸腺DNAを添加した接種尿膜液、及び(iv)仔ウシ胸腺DNAを添加した非接種尿膜液。(iii)及び(iv)のサンプルでは、仔ウシ胸腺DNAの濃度は、尿膜液1ml当たり200mgであった。
【0106】
図14は結果を示す。基本的に、結論は実施例9と同様である。ここでも、CHO細胞DNAの存在下でのPCRと対照的に、非特異的増幅産物が産生された。
【技術分野】
【0001】
本発明は、非特異的増幅産物を抑制することによって改善された標的配列のPCR増幅を提供する。上記の改善は、第1生物のゲノムDNAのバックグラウンドにおける混入物の核酸を増幅するように最適化されるプライマー対の使用に関する。該混入物を含むことが疑われる第2生物由来のDNAを同じPCR増幅反応に供する場合に、第1生物のある量のゲノムDNAが増幅反応物に存在すれば、上記混入物の検出感度及び特異度が増強される。
【背景技術】
【0002】
マイコプラズマ(Mycoplasma)は、細胞壁がないモリクテス綱(Mollicutes)に属する細菌の属である。細胞壁がないため、マイコプラズマ菌は、原核細胞壁の合成を標的とする多くの一般的抗生物質(例えばペニシリン)又はその他のβラクタム抗生物質による作用を受けない。モリクテス綱の複数の属のうちの一つであるマイコプラズマ属には、100を超える認識された種がある。モリクテス綱は、ヒト、ヒト以外の動物(昆虫を含む)、及び植物の寄生生物又は共生生物であり、マイコプラズマ属は、定義によれば、脊椎動物宿主に限定される。マイコプラズマ属の種の増殖のためには、モリクテス綱のいくつかの他の属と同様に、コレステロールが必要である。その最適増殖温度は、往々にして、宿主が恒温動物であれば該宿主の体温(例:ヒトでは37℃)であり、あるいは、宿主が自身の体内温度を調節することができない場合には周囲温度である。16SリボソームRNA配列、さらには遺伝子内容物の分析から、マイコプラズマを含むモリクテス綱が、系統樹のラクトバチルス又はクロストリジウムのいずれかの枝に極めて近縁(厳密にいえばフィルミクテス門(Firmicutes))であることが強く示唆されている。
【0003】
マイコプラズマ種は、往々にして細胞培養物中の混入物として研究実験室で見いだされる。マイコプラズマ細胞培養物の混入は、個体からの混入、又は混入された細胞培地成分によって起こる可能性がある。マイコプラズマ細胞は、物理的には小さい(1μm未満)ため、通常の顕微鏡では検出するのが難しい。マイコプラズマは、細胞の変化、例えば、染色体異常、代謝及び細胞成長における変化を誘導しうる。重度のマイコプラズマ感染は、細胞系を破壊する可能性を有する。
【0004】
マイコプラズマはまた、いくつかの疾患において病原体としても関与している。マイコプラズマ肺炎は、地域感染型肺炎の主な原因因子である。
【0005】
スピロプラズマ(Spiroplasma)種は、分子及び血清学研究(Bastian, F.O., J Neuropathol Exp Neurol 64 (2005) 833-838)により、近年、感染性海綿状脳症(TSE)と関連付けられている。しかし、スピロプラズマ種とTSEとの関連は、例えば、スクレイピー感染ハムスター脳におけるスピロプラズマのフットプリントを検出しようとしたrRNA種の盲検試験の失敗(Alexeeva, I.ら、J Clin Microbiol 44 (2006) 91-97)を考慮すると、依然として議論の余地がある。それでも、考慮されるTSEとしては、ヒツジのスクレイピー、シカの慢性消耗病(CWD)及びヒトのクロイツフェルト-ヤコブ病がある。スクレイピー感染ヒツジ脳及びCWD感染シカ脳からのスピロプラズマ種分離株をヒツジ及びヤギに頭蓋内接種したところ、これらの動物で、天然TSEと酷似した海綿状脳症が誘発された。これらのデータは、スピロプラズマがTSEと関連することを明らかに示している。
【0006】
スピロプラズマ菌は、孵化卵で増殖するため、こうした培養系において継代させることができることが明らかにされている(Bastian, F.O.ら、Journal of Medical Microbiology 56 (2007) 1235-1242)。
【0007】
孵化卵は、ワクチンの生産に主要な役割を果たしている。例えば、インフルエンザに対するヒトワクチンは、ほぼ60年にわたり利用可能であったし、近年まで、ほぼ完全に、9〜11日齢の孵化鶏卵の尿膜腔中で増殖させたウイルスから作製していた。従って、スピノプラズマの病原性によって、モリクテス綱病原体の検出は、孵化卵から作製されたあらゆる製品の安全性を確実にするための最も重要な手段となる。
【0008】
さらに、生物薬剤生産、細胞療法、及び組織再生過程におけるマイコプラズマ混入の可能性は、特に大きな問題である。世界中の薬局方及び薬剤取締機関によって要求される伝統的検出方法は、培地での増殖を用いて、混入生物を同定する。こうした培養に基づく技法は、結果を達成するのに長い時間を必要とする。さらに、あるマイコプラズマ種の培養は、可能でなかったり又は信頼性がないことがある。従って、改善され、特により高速で、かつ信頼性の高い微生物アッセイが求められる。
【0009】
Eldering, J.A.ら、Biologicals 32(2004) 183-193は、チャイニーズハムスター卵巣細胞培養物のマイコプラズマ試験のためのPCR方法を開示する。該試験の原理は、最初に細胞培養物(細胞と上清)からゲノムDNAを単離し、次に、マイコプラズマ種の16S-rRNA遺伝子における領域に特異的なプライマーと、鋳型としての単離されたDNAを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施することである。結果が陽性であれば、標的領域に対応する増幅産物が形成されて、検出される。増幅産物が全く形成されなければ、結果は陰性である。
【0010】
本方法で用いられるプライマーは、以前公表されたユニバーサルマイコプラズマプライマーである(Wong-Lee,J.G.及びLovett, M., “Rapid and sensitive PCR method for identification of Mycoplasma species in tissue culture” Diagnostic molecular microbiology - principles and applications; Persing, DH, Smith, TF, Tenover,FC, White, TJ (編者), Washington, DC, American Society for Microbiology (1993) 257-260)。Eldering, J.A.らの方法(前掲)は、アッセイ最適化の結果であり、マイコプラズマ検出の感度及び特異度を改善する以下の6つの要素を組み合わせたものである:(1)マイコプラズマゲノムの増幅物と比較して異なる大きさのPCR産物についての陽性対照プラスミド、(2)マイコプラズマ菌で混入されていることが疑われる細胞培養物から単離されるDNAの精製及び濃縮、(3)ホットスタートTaq DNAポリメラーゼの使用、(4)70℃〜60℃のアニーリング温度勾配を使用するいわゆるタッチダウンPCR技術の使用、(5)PCR試薬の混入除去、並びに(6)専用装置及び材料の使用。
【0011】
特に、前記最適化PCR法の要素(2)に関して、著者らは、以下のステップ:(a)上記細胞培養物(細胞と培地)を溶解させるステップと、(b)エタノールで溶解物からDNAを沈殿させて、沈殿DNAを単離するステップを含む、DNA精製及び濃縮方法を選択した。
【0012】
さらに、上記の沈殿方法は、スピンカラムを用いたDNA精製のための別の方法に対して有利であることが開示されている。スピンカラムは、典型的に、シリカ表面を有するフィルター材料を含む。任意でアルコールも含む高塩濃度及び/又はカオトロピックバッファー中に溶解するDNAは、例えば、遠心分離により、スピンカラムにバッファーを通過させることによってフィルター材料に結合させる。次のステップでは、非カオトロピック低塩濃度バッファー又は純水を用いて、DNAをフィルター材料から溶離することができる。最適化試験において、スピンカラムに存在しうる微量の混入物と一致する結果が得られた。上記カラムをCHOゲノムDNAと接触させたとき、微量の混入物をスピンカラムから除去した。CHOゲノムDNAの考えられる作用は、混入物のキャリアの作用として記載されている。
【0013】
Eldering, J.A.ら(前掲)の知見及びそこに開示されたワークフローに基づき、Roche Applied Science (Roche Diagnostics GmbH、マンハイム、ドイツ)は、MYCOTOOL試験キットをさらに最適化し、開発した。該試験キットを用いて実施する上記アッセイは、細胞系及び無細胞系の両方について、極めて感度の高いマイコプラズマアッセイを提供する。MYCOTOOLは、特に医薬品質管理に向けられている。
【0014】
以前の試験は、16S rRNA遺伝子特異的プライマーからのPCR生成人工産物に向けられていた(Osborne, C.A.,ら、FEMS Microbiology Letters 248 (2005) 183-187)。特定のプライマー対を用いて生成された人工産物は、増幅反応のための様々なプライマーを用いることによって回避することができると結論付けられた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の発明者は、MYCOTOOLアッセイのPCRによって、人工産物である可能性のある断片が生成された偶然の事例を見いだした(実施例を参照のこと)。Eldering, J.A.ら(前掲)の最適化アッセイと、特に、そこで用いられるプライマーが、モリクテス綱についての非常に優れた検出系を基本的に構築することに留意して、本発明の目的は、不規則な増幅産物の発生が最小化されるようにPCR工程を改善することである。特に、このような所望の効果は、上記プライマーの配列を変更することなく、達成されるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明において、前述した目的の1つ以上は、本発明の実施形態によって満たされた。
【0017】
本発明の第1の態様は、生体材料を含む液体サンプル中の細菌混入物の存在又は非存在を決定するための改善された方法であって、以下のステップ:
(a)上記サンプルを処理して、処理済サンプルから核酸を精製するステップ;次に、
(b)PCR増幅反応のための組成物(反応混合物)を形成するステップであって、該組成物が、
−配列番号1の第1プライマー、
−配列番号2の第2プライマー、及び
−鋳型としての、ステップ(a)の精製された核酸又はその測定画分
である、上記ステップ;次いで
(c)ステップ(b)の組成物を用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施するステップ;続いて
(d)増幅された標的配列の存在又は非存在を検出するステップであって、ここで、該増幅された標的配列の存在は、上記サンプル中の細菌混入物の存在を示し、また、該増幅された標的配列の非存在は、上記サンプル中の細菌混入物の非存在を示すものである、上記ステップ
を含み、上記の改善が、上記サンプルの量に対して、CHO細胞由来の所定量のDNAを、(i)サンプル、又は(ii)ステップ(a)の処理済サンプル、又は(iii)ステップ(a)で得られた精製された核酸、又は(iv)ステップ(b)の組成物、に添加し、これにより、添加されたCHO細胞由来のDNAによって、ステップ(d)における非特異的増幅を低減することを特徴とする、上記方法である。本発明の第2の態様は、孵化卵由来の羊水とCHO細胞由来のDNAとを含む組成物である。本発明の第3の態様は、(i)羊水、真核細胞の懸濁液、及び真核細胞の懸濁液の上清からなる群より選択されるサンプル由来の精製された核酸と、(ii)原核生物DNAを含まないCHO細胞由来のDNAとを含む組成物である。本発明の第4の態様は、羊水、真核細胞の懸濁液、及び真核細胞の懸濁液の上清からなる群より選択されるサンプルから単離されたDNAから原核生物混入物のDNAを増幅するための方法における本発明の組成物の使用である。本発明の第5の態様は、(i)溶解試薬と、(ii)原核生物DNAを含まない、所定濃度のCHO細胞由来の精製DNAと、(iii)配列番号1の第1プライマー及び配列番号2の第2プライマーと、を別個の容器に含むキットである。本発明の第6の態様は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施するための改善された方法であって、約100bp〜約1,500bpの範囲のサイズの特異的増幅産物が、1対のオリゴヌクレオチドプライマーのDNAポリメラーゼ触媒伸長によって形成され、上記プライマーは各々、1以上の原核生物の16S-rRNAのゲノム相補配列に含まれる標的配列にハイブリダイズするものであり、上記オリゴヌクレオチドプライマー対は、PCRにおいて第1鋳型からの特異的増幅鋳型産物を形成することができ、該PCRは、所定の組成物を含む反応混合物(Q)において所定の条件(R)下で実施され、第1鋳型は、第1真核生物のゲノムDNAと1以上の原核生物のゲノムDNAを含ものであり、また、PCRにおいて、上記オリゴヌクレオチドプライマー対は、上記反応混合物(Q)において上記と同じ条件(R)下で第2鋳型から増幅産物を形成せず、第2鋳型には、1以上の原核生物のゲノムDNAは存在しないが、第1真核生物のゲノムDNAは含まれており、上記改善された方法は、以下のステップ:
(a)上記オリゴヌクレオチドプライマー対を用意するステップ;
(b)第1真核生物のゲノムDNAを用意するステップ;
(c)1以上の原核生物のゲノムDNAを含むことが疑われる第2真核生物のゲノムDNAを含む第3鋳型を用意するステップ;
(d)上記反応混合物(Q)において、(a)のプライマー対、(c)の第3鋳型、及び(b)の第1真核生物のゲノムDNAの測定量を混合して、上記条件(R)下でPCRを実施するステップ
を含み、非特異的PCR増幅産物の形成が抑制される、上記方法である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】PCRによって増幅された産物のゲルを示す。
【図2】PCRによって増幅された産物のゲルを示す。
【図3】PCRによって増幅された産物のゲルを示す。
【図4】PCRによって増幅された産物のゲルを示す。
【図5】PCRによって増幅された産物のゲルを示す。
【図6】PCRによって増幅された産物のゲルを示す。
【図7】PCRによって増幅された産物のゲルを示す。
【図8】PCRによって増幅された産物のゲルを示す。
【図9】PCRによって増幅された産物のゲルを示す。
【図10】PCRによって増幅された産物のゲルを示す。
【図11】PCRによって増幅された産物のゲルを示す。
【図12】PCRによって増幅された産物のゲルを示す。
【図13】PCRによって増幅された産物のゲルを示す。
【図14】PCRによって増幅された産物のゲルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
いくつかの用語は、特定の意味で用いられるか、あるいは、本発明の説明において初めて定義される。本発明を目的として、用いられる用語は、その定義が、以下に記載する定義とコンフリクトするか、又は部分的にコンフリクトする場合を除いて、当分野で認容されている定義(存在する場合には)によって定義されるものとする。定義にコンフリクトがある場合には、用語の意味は、以下に記載する定義のいずれかによって第1に定義されるものとする。
【0020】
本発明の説明及び特許請求の範囲において用いられる「含む」という用語は、「〜を含むが、必ずしもそれに限定されないこと」を意味する。
【0021】
本明細書で用いられる冠詞「1つの(a、an)」は、冠詞の文法上の1又は1を超える(すなわち少なくとも1つ)の対象を指す。例として、「微生物(a microorganism)」とは、1微生物又は1を超える微生物を意味する。
【0022】
濃度範囲などの数値の範囲を示す場合には、該範囲は、第1の値n1、「と」という文字、第2の値n2に続いて「の間」の文字によって示すことができる。さらに、明示される範囲は、「n1〜n2の範囲の」という表現によって示すことができる。別途記載のない限り、明示される範囲が示されると、明示される範囲の下限は、第1の値と等しいか、又は該値より高いものとして理解される。明示される範囲の上限は、第2の値と等しいか、又は該値より低いものとして理解される。従って、明示される範囲において値xは、n1≦x≦n2によって与えられる。
【0023】
さらに、数値nと一緒に用いる用語「約」は、その値の数値±5%によって与えられる区間にある値xを示す、すなわちn - 0.05*n ≦ x ≦ n +0.05*nであることが理解されよう。用語「約」は、本発明の好ましい実施形態において、数値nと一緒に用いられる場合には、別途記載のない限り、nの値が最も好ましい。
【0024】
本明細書で用いられる用語「サンプル」とは、複合サンプル、さらに好ましくは生体サンプル、すなわち生体材料を含むサンプルを指す。サンプルは、複数の有機及び無機化合物を含みうるが、該化合物は、生体材料に含まれる核酸から分離するのが望ましい。「サンプル」という用語はまた、他の供給源、例えば、化学若しくは酵素反応混合物からの、又は生体サンプル材料の前精製物からの核酸を含む水溶液も包含する。生体サンプル(そこから核酸を精製する)という用語は、ウイルス又は細菌細胞、並びにヒト及び動物細胞のような多細胞生物からの単離細胞、さらには組織の一次培養物及び細胞系の培養物、さらにまたその上清及びすすぎ液を含むサンプルも包含する。本発明はまた、ヒト又は動物身体からの液体などの生体サンプルも包含する。特に、上記サンプルは、全血、血清、血漿、脳脊髄液、唾液、便、生検試料、骨髄、口腔すすぎ液、組織、尿又はこれらの混合物であってよい。
【0025】
本発明において、好ましいサンプルは、「液体サンプル」である。すなわちサンプルは、液体状であり、サンプル液は、水と生体材料を含む。生体材料は、好ましくは細胞又は細胞成分を含む。極めて好ましくは、本発明において液体サンプルは、細胞培養上清、培養細胞の懸濁液及び羊水からなる群より選択される。さらに好ましくは、羊水は、鳥類の孵化卵に由来するものである。
【0026】
本発明の目的のために、「液体サンプル」と一緒に用いられる用語「処理する」又は「処理(済)」の意味は、1つ以上の化合物を添加し、1つ以上の化合物を液体サンプルと混合して、これにより「処理済サンプル」を得ることによって、サンプルを処理することである。こうした処理に用いることができる好ましい化合物は、洗浄剤(detergent)、界面活性剤(surfactant)、有機溶剤、カオトロピック試薬、プロテアーゼ、及びヌクレアーゼ阻害剤からなる群より選択される。本発明において「カオトロピック試薬」は、液体水の規則構造をかき乱す任意の化学物質である。カオトロピック試薬はまた、タンパク質のアンフォールディング、伸長及び解離を促進する(Dandliker, W., B.及びde Saussure, V., A., The Chemistry of Biosurfaces, Hair, M., L.,編、Marcel Dekker,Inc. New York (1971) p. 18)。
【0027】
本発明において好ましい処理済サンプルは、溶解物である。「溶解物」又は「溶解サンプル」は、細胞、好ましくは微生物細胞、極めて好ましくは細菌細胞を含むものから得ることができ、ここで、存在する細胞の実質的な部分の構造完全性は破壊されている。このために、細胞壁が存在する場合には、これを破壊しなければならない。破砕された細菌細胞の内容物を放出させるために、該材料を所定の薬剤で処理して、微生物細胞の細胞壁を崩壊させたり、多孔性にしたり、溶解させたり、分解したり、又は変性させる。さらに、細胞膜も破壊する必要がある。細胞、組織から、又はより一般的には、生体サンプルに含まれる粒子から内容物を放出させるために、上記材料を酵素又は化学薬品で処理して、上記生物の細胞壁及び細胞膜を溶解させたり、分解したり、又は変性させることができる。いずれの場合でも、溶解(「溶菌」)プロセスは、細菌混入物の構造完全性も破壊し、これによって混入物の核酸を遊離させる。
【0028】
溶解プロセスのためには、該プロセスにおいて核酸を遊離させる場合、カオトロピック試薬、例えばグアニジニウム塩、及び/又はアニオン、カチオン、双性イオン若しくは非イオン性洗浄剤を用いるのが一般的である。また、核酸分解活性を有する酵素及びその他の不要なタンパク質を迅速に分解するプロテアーゼを用いるのも有利である。粒子、すなわち、溶解プロセス後にサンプル材料の非溶解物質が残っている場合には、該粒状物質を溶解物から分離することによって、清浄化溶解物を取得する。これは、例えば、フィルターろ過又は遠心分離によって実施することができる。従って、「溶解物」という用語は、清浄化溶解物も包含する。
【0029】
処理済サンプルからの「核酸の精製」は、標準技術である多様な方法を用いて実施することができる。こうした方法は、例えばアルコールを用いた、水溶液からの核酸の沈殿(エタノール又はイソプロパノールによる沈殿が当分野で周知である)、次いで沈殿物の分離を含みうる。その他の方法は、固相(例えば、シリカのような酸化表面を有する)に核酸を吸着させて、固相を分離した後、該固相から核酸を溶離することを含む。
【0030】
「ポリメラーゼ連鎖反応」(PCR)は、特定の標的DNA配列の単一又は数個のコピーを数桁にまで増幅する技術であり、これによってDNA配列のコピーが生成される。PCRは、熱サイクルに依存するものであり、該サイクルは、反応混合物の加熱及び冷却を繰り返すサイクルから構成され、これによってDNA融解、次いでDNAの酵素的複製を実施する。DNAポリメラーゼと一緒に標的DNA配列に相補的な配列を含むプライマー(DNAオリゴヌクレオチド)は、選択的及び反復増幅を可能にするための重要な要素である。PCRが進行するにつれ、生成されたDNAはそれ自体が複製のための鋳型として用いられて、DNA鋳型が指数関数的に増幅される連鎖反応が開始する。これに関して「反応混合物」は、DNAポリメラーゼ、dNTP、イオン、バッファー、及び標的DNA配列にハイブリダイズ(アニーリング)したプライマーの伸長を実施するのに必要なその他すべての化合物を含む。
【0031】
本発明者は、Eldering, J.A.らによって開示された方法(前掲)において、細菌混入物の存在又は非存在を決定するのに重要なPCR条件は、もっぱらCHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞培養物及び/又は培養上清に関して最適化されると結論付けた。さらに、本発明者は、配列番号1及び配列番号2のプライマー対が、時折、不規則な増幅物又は人工物(すなわち、所望の標的DNA断片とは大きさの異なる断片の非特異的増幅物)を生成することを観測した。これは、特に、他の動物種又はヒト由来の細胞の培養物からのサンプル材料より調製したDNAを鋳型として用いる場合に当てはまることである。こうした状況では、本発明の基礎となる重要な観測結果は、CHO細胞DNAの存在下でPCRを実施するとき、PCR人工産物の形成を抑制することができるというものである。しかし、この望ましい技術的効果には、CHO細胞DNAが、プライマー対によって増幅することができる細菌DNAによる混入のないことが必要である。従って、最も広義には、本発明の第1の態様は以下の通りである:
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施するための改善された方法であって、
約100bp〜約1500bpの範囲のサイズを有する特異的増幅産物が、1対のオリゴヌクレオチドプライマーのDNAポリメラーゼ触媒伸長(PCR)によって形成され、該プライマーは各々、1つ以上の原核生物の16S-rRNAのゲノム相補配列に含まれる標的配列にハイブリダイズすることができ、
上記オリゴヌクレオチドプライマー対は、PCRにおいて、第1鋳型から特異的増幅産物を形成することができ、該PCRは、所定の組成物を含む反応混合物(Q)において所定の条件(R)下で実施され、第1鋳型は、第1真核生物のゲノムDNAと1つ以上の原核生物のゲノムDNAとを含むものであり、
上記PCRにおいて、上記オリゴヌクレオチドプライマー対は、上記反応混合物(Q)において同じ条件(R)下で第2鋳型から増幅産物を形成せず、第2鋳型には、1つ以上の原核生物のゲノムDNAは存在しないが、第1真核生物のゲノムDNAは含まれており、
上記改善された方法は、以下のステップ:
(a)上記オリゴヌクレオチドプライマー対を用意するステップと;
(b)第1真核生物のゲノムDNAを用意するステップと;
(c)1以上の原核生物のゲノムDNAを含むことが疑われる第2真核生物のゲノムDNAを含む第3の鋳型を用意するステップと;
(d)上記反応混合物(Q)において、(a)のプライマー対、(c)の第3鋳型、及び(b)の第1真核生物のゲノムDNAの測定量を混合し、上記条件(R)下でPCRを実施するステップ
を含み、非特異的PCR増幅産物の形成が抑制される方法である。
【0032】
本発明に関して、PCRの条件(R)は、パラメーター、例えば温度計画、インキュベーション時間、PCRサイクルの数、及びPCRの分野で当業者に公知の他の物理的パラメーターを表すものである。反応混合物(Q)は、PCRプロセスを実施するのに用いる最終混合物の全成分を含み、これには、プライマー伸長に必要なすべての化合物が含まれる。上記反応混合物(Q)はまた、上記プライマー対を、各々それぞれの所定濃度で含む。明瞭にするために、この意味で上記反応混合物(Q)は、個別に添加される鋳型DNAを含まない。上記鋳型DNAは、どの鋳型を用いても、最終混合物(すなわち、鋳型DNAの添加後)において、他のすべての成分の濃度が同じであるように添加する。
【0033】
本発明において、CHO細胞以外の別の生物のゲノムDNAを含む鋳型も、測定量の、すなわち所定濃度で、CHO細胞DNAをさらに含有する必要がある。
【0034】
本発明の好ましい実施形態では、上記オリゴヌクレオチド対は、複数の原核生物種にハイブリダイズするが、該プライマーと16S-rRNA遺伝子の標的領域とのハイブリダイゼーションにおいて0〜3個のミスマッチが発生してもよい。上記のいずれのケースでも、どのミスマッチ(存在する場合)も、それぞれのオリゴヌクレオチドの3'-OH基をもたらす末端ヌクレオチドを排除する。
【0035】
本発明の好ましい実施形態では、1つ以上の原核生物は、モリクテス(Mollicutes)種、バチルス(Bacillus)種、クロストリジウム(Clostridium)種、コリネバクテリウム(Corynebacterium)種、ミクロコッカス(Micrococcus)種、スタフィロコッカス(Staphylococcus)種、及びストレプトコッカス(Streptococcus)種からなる群より選択される種である。さらに好ましくは、上記の種はモリクテスの種である。さらにまた好ましくは、上記種はマイコプラズマ種であり、より好ましくはマイコプラズマ・ハイオライニス(M. hyorhinis)、マイコプラズマ・アルギニーニ(M. arginini)、マイコプラズマ・ニューモニエ(M. pneumoniae)、マイコプラズマ・ファーメンタンス(M.fermentans)、マイコプラズマ・オラーレ(M. orale)、及びマイコプラズマ・ピラム(M. pirium)からなる群より選択される種であり、あるいは、上記の種はアコレプラズマ種、より好ましくはアコレプラズマ・レイドラウイ(Acholeplasma laidlawii)であり、あるいはまた、上記種はスピロプラズマ種であり、より好ましくはスピロプラズマ・ミリアム(Spiroplasma mirium)である。
【0036】
本発明の極めて好ましい実施形態では、第1真核生物は、CHO細胞、又は複数のCHO細胞を含む培養物である。さらに好ましくは、前記プライマー対は、配列番号1及び配列番号2のいずれか一方、又は両方を含む。
【0037】
本発明のさらに好ましい実施形態では、前記条件(R)及び反応混合物(Q)は、MYCOTOOL試験キットの説明書に記載されているRoche Diagnostics GmbH、マンハイム(ドイツ)による、MYCOTOOLアッセイの条件及び混合物である。
【0038】
本発明のより好ましい実施形態を以下の項目のリストに記載する:
1.液体サンプル中の細菌混入物の存在又は非存在を決定するための改善された方法であって、以下のステップ:
(a)上記サンプルを処理して、処理済サンプルから核酸を精製するステップ;次に、
(b)PCR増幅反応のための組成物を形成するステップであって、該組成物が、
−配列番号1の第1プライマー、
−配列番号2の第2プライマー、及び
−鋳型としての、ステップ(a)の精製された核酸又はその測定画分
を含む、上記ステップ;次に
(c)ステップ(b)の組成物を用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施し、これにより、原核生物16S-rRNA遺伝子に含まれる標的配列が鋳型に存在する場合には該標的配列を増幅するステップ;続いて
(d)増幅された標的配列の存在又は非存在を検出するステップであって、ここで、該増幅された標的配列の存在は、上記サンプル中の細菌混入物の存在を示し、また、該増幅された標的配列の非存在は、上記サンプル中の細菌混入物の非存在を示すものである、上記ステップ
を含み、
上記の改善が、上記サンプルの量に対して、CHO細胞由来の所定量のDNAを、(i)サンプル、又は(ii)ステップ(a)の処理済サンプル、又は(iii)ステップ(a)で得られた精製された核酸、又は(iv)ステップ(b)の組成物、に添加し、これにより、添加されたCHO細胞由来のDNAによって、ステップ(d)における非特異的増幅を低減させることを特徴とする、上記方法。
【0039】
2.前記液体サンプル1ml当たりの所定量のDNAが、約5x106個のCHO細胞からのDNA内容物である、第1項に記載の方法。
【0040】
3.前記液体サンプルが、培養細胞を含む細胞培地、無細胞培養上清、及び羊水からなる群より選択される、第1項及び第2項に記載の方法。
【0041】
4.前記液体サンプルが羊水である、第3項に記載の方法。
【0042】
5.前記羊水が孵化卵に由来する、第4項に記載の方法。
【0043】
6.前記細菌混入物が、アコレプラズマ、バチルス、クロストリジウム、コリネバクテリウム、ミクロコッカス、マイコプラズマ、スピロプラズマ、スタフィロコッカス、及びストレプトコッカスからなる群より選択される属である、第1項〜第5項のいずれかに記載の方法。
【0044】
7.前記細菌混入物が、マイコプラズマ・ハイオライニス、マイコプラズマ・アルギニーニ、マイコプラズマ・ニューモニエ、マイコプラズマ・ファーメンタンス、マイコプラズマ・オラーレ、及びマイコプラズマ・ピラムからなる群より選択されるマイコプラズマ種であるか、又は、該細菌混入物がアコレプラズマ・レイドラウイであるか、又は、該細菌混入物がスピロプラズマ・ミリアムである、第6項に記載の方法。
【0045】
8.孵化卵由来の羊水及びCHO細胞由来のDNAを含む組成物。
【0046】
9.カオトロピック試薬及びプロテアーゼから選択される溶解試薬をさらに含む、第8項に記載の組成物。
【0047】
10.(i)羊水、真核細胞の懸濁液、及び真核細胞の懸濁液の上清からなる群より選択されるサンプル由来の精製された核酸と、(ii)原核生物DNAを含まないCHO細胞由来のDNAとを含む組成物。
【0048】
11.配列番号1の第1プライマーと、配列番号2の第2プライマーと、ヌクレオチド三リン酸と、耐熱性DNAポリメラーゼとをさらに含む、第10項に記載の組成物。
【0049】
12.インターカレーション色素をさらに含む、第11項に記載の組成物。
【0050】
13.(i)溶解試薬と、(ii)原核生物DNAを含まない、所定濃度のCHO細胞由来の精製されたDNAと、(iii)配列番号1の第1プライマー及び配列番号2の第2プライマーと、を別個の容器に含むキット。
【0051】
14.羊水、真核細胞の懸濁液、及び真核細胞の懸濁液の上清からなる群より選択されるサンプルから単離されたDNAから原核生物混入物のDNAを増幅するための、第10項〜第12項のいずれかに記載の組成物の使用。
【0052】
15.改善されたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施するための改善された方法であって、
約100bp〜約1,500bpの範囲のサイズの特異的増幅産物が、1対のオリゴヌクレオチドプライマーのDNAポリメラーゼ触媒伸長によって形成され、上記プライマーは各々、1以上の原核生物の16S-rRNAのゲノム相補配列に含まれる標的配列にハイブリダイズするものであり、
上記オリゴヌクレオチドプライマー対は、PCR(P)において第1鋳型からの特異的増幅産物を形成することができ、該PCR(P)は、所定の組成物を含む反応混合物(Q)において所定の条件(R)下で実施され、第1鋳型は、第1真核生物のゲノムDNAと1以上の原核生物のゲノムDNAを含むものであり、
また、Pにおいて、上記オリゴヌクレオチドプライマー対は、上記反応混合物(Q)において上記と同じ条件(R)下で第2鋳型から増幅産物を形成せず、第2鋳型には、1以上の原核生物のゲノムDNAは存在しないが、第1真核生物のゲノムDNAは含まれており、
上記改善された方法は、以下のステップ:
(a)上記オリゴヌクレオチドプライマー対と、第1真核生物のゲノムDNAを用意するステップ;
(b)1以上の原核生物のゲノムDNAを含むことが疑われる第2真核生物のゲノムDNAを含む第3鋳型を用意するステップ;
(c)上記反応混合物(Q)において、(a)のプライマー対、(b)の第3鋳型、及び第1真核生物のゲノムDNAの測定量を混合し、上記条件(R)下でPCRを実施するステップ
を含み、非特異的PCR増幅産物の形成が抑制される、上記方法。
【0053】
配列表の説明
配列番号1:マイコプラズマ及び関連種の検出のためのユニバーサルプライマー(フォワード);以前、Wong-Lee,J.G.,及びLovett, M., “Rapid and sensitive PCR method for identification of Mycoplasma species in tissue culture” Diagnostic molecular microbiology - principles and applications; Persing, DH, Smith, TF, Tenover,FC, White, TJ (編者)Washington, DC, American Society for Microbiology (1993) 257-260, 及びEldering, J.A.,ら、Biologicals 32 (2004) 183-193に開示されたもの。
配列番号2:マイコプラズマ及び関連種の検出のためのユニバーサルプライマー(リバース);以前、Wong-Lee,J.G.,ら(前掲)及びEldering, J.A.,ら(前掲)に開示されたもの。
配列番号3:グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子における標的配列(対照配列)に特異的なフォワードプライマー。
配列番号4:グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子における標的配列(対照配列)に特異的なリバースプライマー。
【0054】
図面の説明
図1:レーン:コメント/希釈
1〜5:GAPDH対照PCR;MDCK細胞から単離されたDNA、CHO細胞DNAなし、アコレプラズマ・レイドラウイDNAを混入(spike)
1:非希釈
2:10-1
3:10-2
4:10-3
5:10-4
6:サイズマーカー(50bpステップ)
7〜11:GAPDH対照PCR;MDCK細胞から単離されたDNA、CHO細胞DNAなし、混入なし
7:10-1
8:10-2
9:10-3
10:10-4
11:サイズマーカー(50bpステップ)
【0055】
図2:レーン:コメント/希釈
1〜5:GAPDH対照PCR;MDCK細胞から単離されたDNA、CHO細胞DNA添加、アコレプラズマ・レイドラウイDNAを混入
1:非希釈
2:10-1
3:10-2
4:10-3
5:10-4
6:サイズマーカー(50bpステップ)
7〜11:GAPDH対照PCR;MDCK細胞から単離されたDNA、CHO細胞DNAなし、混入なし
7:10-1
8:10-2
9:10-3
10:10-4
11:サイズマーカー(50bpステップ)
【0056】
図3:レーン:コメント/希釈
1〜8:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;ASCから単離されたDNA、マイコプラズマ・オラーレDNAを混入、CHO細胞DNAなし
1〜8:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;8つの独立に抜き出したアリコートを用いたPCR
6:バンドのサイズは、特異的標的DNA増幅産物について観測されたサイズ範囲と一致している。
【0057】
図4:レーン:コメント/希釈
1〜8:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;ASCから単離されたDNA、マイコプラズマ・オラーレDNAを混入、CHO細胞DNAを添加
1〜8:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;8つの独立に抜き出したアリコートを用いたPCR
9〜12:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;バッファー(「鋳型なし」対照)を用いたPCR
13:サイズマーカー(50bpステップ)
【0058】
図5:レーン:コメント/希釈
1〜8:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;アコレプラズマ・レイドラウイDNAを混入したトリスバッファー、CHO細胞DNAなし
1〜4:10cfuアコレプラズマ・レイドラウイDNA
5〜8:1cfuアコレプラズマ・レイドラウイDNA
9〜12:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;トリスバッファー、混入なし、CHO細胞DNAなし
13、14:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;トリスバッファー、PCR反応混合物毎に約10コピーの陽性対照プラスミド(MYCOTOOLキットの一部)、CHO細胞DNAなし
15:サイズマーカー(50bpステップ)
【0059】
図6:レーン:コメント/希釈
1〜8:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;アコレプラズマ・レイドラウイDNAを混入したトリスバッファー、CHO細胞DNAを添加
1〜4:10cfuアコレプラズマ・レイドラウイDNA
5〜8:1cfuアコレプラズマ・レイドラウイDNA
9〜12:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;トリスバッファー、混入なし、CHO細胞DNAを添加
13、14:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;トリスバッファー、PCR反応混合物毎に約10コピーの陽性対照プラスミド(MYCOTOOLキットの一部)、CHO細胞DNAを添加
15:サイズマーカー(50bpステップ)
【0060】
図7:レーン:コメント/希釈
1〜4:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;アコレプラズマ・レイドラウイDNAを混入したベロ細胞懸濁液、CHO細胞DNAなし
1〜4:10cfu アコレプラズマ・レイドラウイDNA
5〜8:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;ベロ細胞懸濁液、混入なし、CHO細胞DNAなし
9、10:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;トリスバッファー、PCR反応混合物毎に約10コピーの陽性対照プラスミド(MYCOTOOLキットの一部)、CHO細胞DNAなし
11、12:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;バッファー(「鋳型なし」対照)を用いたPCR
13:サイズマーカー(50bpステップ)
【0061】
図8:レーン:コメント/希釈
1〜4:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;アコレプラズマ・レイドラウイDNAを混入したベロ細胞懸濁液、CHO細胞DNA添加
1〜4:3cfuアコレプラズマ・レイドラウイDNA
5〜8:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;ベロ細胞懸濁液、混入なし、CHO細胞DNAを添加
9、10:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;トリスバッファー、PCR反応混合物毎に約10コピーの陽性対照プラスミド(MYCOTOOLキットの一部)、CHO細胞DNAを添加
11、12:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;バッファー(「鋳型なし」対照)を用いたPCR
13:サイズマーカー(50bpステップ)
【0062】
図9:レーン:コメント/希釈
1〜4:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;アコレプラズマ・レイドラウイを「接種」した尿膜液、CHO細胞DNAなし
1〜4:3cfuアコレプラズマ・レイドラウイDNA
5〜8:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;尿膜液、接種なし、CHO細胞DNA添加なし
9,10:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;トリスバッファー、PCR反応混合物毎に約10コピーの陽性対照プラスミド(MYCOTOOLキットの一部)、CHO細胞DNAなし
11:サイズマーカー(50bpステップ)
矢印は、非特異的に増幅されたPCR産物が泳動するゲルの領域を示す。
【0063】
図10:レーン:コメント/希釈
1〜4:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;アコレプラズマ・レイドラウイを「接種」した尿膜液、2.5μg/50μlのCHO細胞DNA
1〜4:3cfuアコレプラズマ・レイドラウイDNA
5〜8:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;尿膜液、接種なし、2.5μg/50μlのCHO細胞DNA
9,10:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;トリスバッファー、PCR反応混合物毎に約10コピーの陽性対照プラスミド(MYCOTOOLキットの一部)、CHO細胞DNAなし
11:サイズマーカー(50bpステップ)
矢印は、非特異的に増幅されたPCR産物が泳動するゲルの領域を示す。
【0064】
図11:レーン:コメント/希釈
1〜4:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;アコレプラズマ・レイドラウイを「接種」した尿膜液、5μg/50μlのCHO細胞DNA
1〜4:3cfuアコレプラズマ・レイドラウイDNA
5〜8:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;尿膜液、接種なし、5μg/50μlのCHO細胞DNA
9、10:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;バッファー(「鋳型なし」対照)を用いたPCR
11:サイズマーカー(50bpステップ)
矢印は、非特異的に増幅されたPCR産物が泳動するゲルの領域を示す。
【0065】
図12:レーン:コメント/希釈
1〜4:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;アコレプラズマ・レイドラウイを「接種」した尿膜液、10μg/50μlのCHO細胞DNA
1〜4:3cfuアコレプラズマ・レイドラウイDNA
5〜8:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;尿膜液、接種なし、10μg/50μlのCHO細胞DNA
9、10:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;バッファー(「鋳型なし」対照)を用いたPCR
11:サイズマーカー(50bpステップ)
矢印は、非特異的に増幅されたPCR産物が泳動するゲルの領域を示す。
【0066】
図13:レーン:コメント/希釈
1〜8:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;アコレプラズマ・レイドラウイDNAを混入したトリスバッファー
1〜4:3cfuアコレプラズマ・レイドラウイDNA、仔ウシ胸腺DNAなし
5〜8:1cfuアコレプラズマ・レイドラウイDNA、仔ウシ胸腺DNAを添加
9〜12:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;非混入トリスバッファー、仔ウシ胸腺DNA添加
13、14:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;トリスバッファー、PCR反応混合物毎に約10コピーの陽性対照プラスミド(MYCOTOOLキットの一部)、仔ウシ胸腺DNAなし
15:サイズマーカー(50bpステップ)
【0067】
図14:レーン:コメント/希釈
1〜8:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;アコレプラズマ・レイドラウイを「接種」した尿膜液、仔ウシ胸腺DNAを添加
1〜4:3cfuアコレプラズマ・レイドラウイDNA
5〜8:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;尿膜液、接種なし、仔ウシ胸腺DNA添加
9〜12:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;トリスバッファー、接種なし、仔ウシ胸腺DNA添加
13、14:配列番号1及び配列番号2に示すプライマー;バッファー(「鋳型なし」対照)を用いたPCR
15:サイズマーカー(50bpステップ)
【実施例】
【0068】
実施例1
MYCOTOOLキット及びアッセイ
MYCOTOOL PCRマイコプラズマ検出キットは、モリクテス綱に属する細菌の検出のために最適化されたin vitro核酸増幅試験である。該細菌としては、マイコプラズマ・ハイオライニス、マイコプラズマ・アルギニーニ、マイコプラズマ・ニューモニエ、マイコプラズマ・ファーメンタンス、マイコプラズマ・オラーレ、マイコプラズマ・ピラム、マイコプラズマ・サリバルム、マイコプラズマ・ホミニス、マイコプラズマ・シノビエ、スピロプラズマ・ミリアム、スピロプラズマ・シトリ、及びアコレプラズマ・レイドラウイがある。
【0069】
上記MycoToolキットは、2つのサブキット、すなわちサブキット1(“Detection Prep Kit”; RocheApplied Scienceカタログ番号: 05184592001)とサブキット2(“Detection Amplification Kit”; Roche Applied Scienceカタログ番号:05184240001)を含む。
【0070】
上記キットは、製造者の説明書に厳密に従って使用した。
【0071】
別途記載のない限り、(i)細胞培養上清、(ii)培養細胞の懸濁液、及び(iii)羊水から選択される液体サンプルを、グアニジニウム塩とプロテイナーゼKを含む水性バッファーを添加し、該バッファーと上記サンプルとを混合し、該混合物をインキュベートして溶解を実施することにより、溶解させた。
【0072】
溶解後、典型的には、サンプル1ml当たり10〜250μgのCHO細胞DNAを溶解物に添加して、混合した。CHO細胞DNAは、個別に試験するので、混入物である原核生物DNAを含まなかった。続いて、アルコールを添加することにより、核酸を混合物から沈殿させた。沈殿物を遠心分離によって回収し、70%エタノールで洗浄した後、乾燥させた。乾燥ペレットを規定バッファーに溶解させてから、PCR分析に付した。
【0073】
また、内部対照として、MYCOTOOLキットは、GAPDHハウスキーピング遺伝子のプライマー対も含む。
【0074】
PCR増幅の前に、ウラシル-N-グリコシラーゼ酵素(キットの要素)を加えることにより、アンプリコン混入の危険性を軽減した。
【0075】
以下の各実施例では、製造者による説明書に厳密に従ってPCRを実施した。PCR産物は、標準的条件下で、ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動させた。バンドは、RESOLIGHT化合物及びUV照明を用いて視覚化し、バンド検出を520nmで行った。
【0076】
モリクテスの検出に用いるMYCOTOOLキットのプライマーは、配列番号1及び配列番号2に示すものである。GAPDHに特異的な対照プライマーも用意する(配列番号3及び配列番号4)。
【0077】
各MYCOTOOLキットは、マイコプラズマDNAを含む対照プラスミドをさらに含むが、これは、単離された細菌DNA(陽性対照)から増幅されたPCR断片と比較して、認識できるほど大きさの異なるPCR断片を生成する。このために、該プラスミドを開示するEldering, J.A.,ら、Biologicals 32 (2004) 183-193を参照する。
【0078】
実施例2
サンプルに混入するためのモリクテス種由来のDNA
本実施例で用いるサンプルはすべて、原核生物混入物を含まない培養物から得たものである。
【0079】
モリクテス種に感染したサンプル材料の代わりに、アコレプラズマ・レイドラウイ又はマイコプラズマ・オラーレから調製したDNAを、溶解前のいずれかのサンプル材料、又はサンプル材料から調製した単離DNAに混入した(別途記載のない限り)。混入する目的で、DNAをアコレプラズマ・レイドラウイ(ATCC 27556)及びマイコプラズマ・オラーレ(ATCC 23714)の基準培養物(標準的条件)から調製した。各培養物について、コロニー形成単位(cfu)として表される細胞力価を決定した。使用した混入DNAの量は、DNAを調製するそれぞれの培養物について決定されるcfuの数を反映していた。
【0080】
前述のように示されるモリクテスDNAを以下に記載する混入実験で用いた。モリクテスDNA(特異的増幅産物)から増幅された典型的な特異的PCR断片の大きさは、約430〜470bpの範囲であった。
【0081】
実施例3
MDCK細胞培養物(懸濁細胞)からのサンプルにおけるGAPDHゲノム標的配列の検出
原核生物を含まず、かつ細胞力価が0.79・106細胞/mlのMDCK細胞の培養物を用いた。アコレプラズマ・レイドラウイDNAをサンプル1ml当たり3コロニー形成単位(cfu)の濃度でサンプルに添加した。MYCOTOOLキットの説明書に明記されているように、混入したサンプル材料から核酸を単離した(実施例1も参照のこと)。2つの異なる核酸調製物を、第1は、CHO細胞DNAの添加なしで、また第2はサンプル材料にCHO細胞DNAを添加して(サンプル1ml当たり50 mg)調製した。
【0082】
調製を繰り返したが、このとき、アコレプラズマ・レイドラウイDNAをサンプルに混入せずに行った。ここでも、CHO細胞DNAを添加して、又は添加せずに核酸を調製した。
【0083】
DNA調製物のいくつかの希釈物をTEバッファーで調製した。各希釈物のアリコートをMYCOTOOL説明書に従ってGAPDH特異的PCRに付した。
【0084】
図1及び2は、得られたPCR産物を示すバンドを有するゲルを示す。図1は、CHO細胞DNAを添加せずに得られた結果を示し、図2は、CHO細胞DNAを添加して得られたPCR産物を示す。
【0085】
CHO DNAを添加すると、PCRを10-4希釈物で実施した場合であっても、GAPDH対照バンドが検出可能であることをはっきりと観測することができた。
【0086】
実施例4
脂肪幹細胞(ASC)の培養上清由来の混入サンプルにおける原核生物DNAの16S-rRNA相補配列中の標的配列の検出
原核生物を含まないASCを、遠心分離により沈降させた。MYCOTOOLキットの説明書に明記されているように、清澄化上清(細胞培地)をDNA単離に用いた(実施例1も参照のこと)。溶解ステップの前に、マイコプラズマ・オラーレDNAをサンプル1ml当たり3コロニー形成単位(cfu)の濃度でサンプルに添加した。次に、該サンプルを2つの等しい量に分割した。1つのアリコートに対して、上清1ml当たり100mgの濃度でCHO細胞DNAを添加した。全DNAを両方のアリコートから個別に単離した。各DNA調製物のアリコートを用いて複数回のPCR反応を実施した。図3及び図4は、PCRによって得られた増幅産物のDNA断片の電気泳動後のゲルを示す。
【0087】
すべての試験混入サンプルでマイコプラズマDNAが検出されたことから、CHO細胞DNAの添加によってMYCOTOOL試験がより頑健になったのは明らかである。これに対し、CHO細胞DNAを添加しない場合では、8つのPCR反応物のうち1つだけがマイコプラズマ標的DNAに特異的な断片の増幅に成功した。
【0088】
CHO細胞DNAが存在しない場合には、非特異的PCR断片は実質的に存在しないことが見とめられる(図3のレーン1は、恐らく例外である)。これは、PCR人工産物はMYCOTOOLアッセイによって一般に生成されないという発明者の観察結果を強調するものである。興味深いことに、図4からわかるように、CHO細胞DNAの添加もまた、非特異的増幅産物をもたらさない。
【0089】
実施例5
混入水性バッファーにおける原核生物DNAの16S-rRNA相補配列中の標的配列の検出
混入物を含まない10mM Tris HClバッファーに、バッファー1ml当たり1又は10cfuの濃度のアコレプラズマ・レイドラウイDNAを混入した。混入バッファー及び非混入バッファーをCHO細胞DNAと混合することによって、バッファー1ml当たり80μgの濃度を達成した。さらに、CHO細胞DNAを含まない混入バッファー及び非混入バッファーを調製した。各混入調製物及び非混入調製物から、MYCOTOOLプロトコルに従いDNAを調製した。複数回のPCR反応を、各DNA調製物のアリコートを用いて実施した。さらに、MYCOTOOLキットの一部である約10コピーの対照プラスミド(陽性対照)を含むTrisバッファーのアリコートを用いて、PCRを実施した。図5及び図6は、PCRによって得られた増幅産物のDNA断片の電気泳動後のゲルを示す図である。
【0090】
PCRは、10cfuに対応するアコレプラズマ・レイドラウイDNAを検出するのに問題はなかったが、CHO細胞DNAの存在下で、1cfuの検出が顕著に改善した。
【0091】
陽性対照プラスミドを含むレーンは、アコレプラズマ・レイドラウイ標的配列の特異的増幅産物と比較して、認識できる大きさの差を示している。
【0092】
実施例6
ベロ細胞培養物(懸濁細胞)由来の混入サンプルにおける原核生物DNAの16S-rRNA相補配列中の標的配列の検出
原核生物を含まない培養物由来の、1ml当たり105〜106個の細胞の範囲の細胞力価を有するベロ細胞の懸濁液に、細胞懸濁液1ml当たり3若しくは10cfuの濃度のアコレプラズマ・レイドラウイDNA又はマイコプラズマ・オラーレDNAを混入した。3cfu/mlで混入した培養物に、細胞懸濁液1ml当たり10、30、50、70、85、100及び150μgの濃度でCHO細胞DNAを添加した。
【0093】
ベロ細胞単独の各混入懸濁液及び非混入懸濁液から、DNAをMYCOTOOLプロトコルに従い調製した。複数回のPCR反応を、各DNA調製物のアリコートを用いて実施した。さらに、MYCOTOOLキットの一部である約10コピーの対照プラスミド(陽性対照)を含むTrisバッファー(10mM Tris HClバッファー)のアリコートを用いて、PCRを実施した。図7及び図8は、PCRによって得られた増幅産物のDNA断片の電気泳動後のゲルを示す図である。図8に示すサンプルは、細胞懸濁液1ml当たり150μgの濃度でCHO細胞DNAを含有していた。細胞懸濁液1ml当たり10、30、50、70、85、及び100μgのCHO細胞DNAの濃度を用いた場合も同等の結果が得られた。
【0094】
特に、いくつかの非特異的(人工物)PCR産物は、CHO細胞DNAの非存在下で得られた(図7参照)。いくつかのケースでは、これら人工産物バンドの大きさと特異的増幅産物の大きさ(図7のレーン1〜4)の類似性が見とめられた。驚くことに、非特異的PCR増幅産物は、CHO細胞DNAの存在下では全く産生されなかった(図8、レーン1〜4)。
【0095】
実施例7
孵化鶏卵由来の尿膜液の「接種」サンプルにおける原核生物DNAの16S-rRNA相補配列中の標的配列の検出
マイコプラズマ混入のない尿膜液を、ウイルスワクチン株を接種した孵化鶏卵(9〜11日齢)から回収した。
【0096】
力価2.45 x 103cfuのアコレプラズマ・レイドラウイの液体培養物をTEバッファーで1:1,000に希釈した。この希釈物のアリコートを尿膜液で1:10に希釈した。上記の1:10,000接種材料を尿膜液1ml当たり12.2μlの量で添加して、接種尿膜液1ml当たり3cfuの等力価を得た。接種尿膜液をそれ以上インキュベートせずに(すなわち該尿膜液中で細菌を増殖させなかった)DNA単離に付した。
【0097】
4つの異なるサンプルを用意した:(i)CHO細胞DNAを含まない接種尿膜液、(ii)CHO細胞DNAを含まない非接種尿膜液、(iii)CHO細胞DNAを添加した接種尿膜液、及び(iv)CHO細胞DNAを添加した非接種尿膜液。(iii)及び(iv)のサンプルでは、CHO細胞DNAの濃度は、尿膜液1ml当たり208mgであった。
【0098】
各接種及び非接種サンプル(i〜iv)から、MYCOTOOLプロトコルに従いDNAを調製した。複数回のPCR反応を、各DNA調製物のアリコートを用いて実施した。さらに、MYCOTOOLキットの一部である約10コピーの対照プラスミド(陽性対照)を含むTrisバッファー(10mM Tris HClバッファー、pH7.5)のアリコートを用いて、PCRを実施した。
【0099】
ここでもやはり、CHO細胞DNAの存在が(a)非特異的PCR増幅産物を抑制し、(b)PCR検出の感度を高める効果を確認することができた。
【0100】
実施例8
孵化鶏卵由来の尿膜液の「接種」サンプルにおける原核生物DNAの16S-rRNA相補配列中の標的配列の検出、PCR反応混合物への様々な濃度のCHO細胞DNAの添加
DNA精製前にCHO細胞DNAを添加しない以外は実施例7に記載したのと同様に実験を実施した。その代わり、CHO細胞DNAをPCR開始前に反応混合物に添加した。反応混合物中のCHO細胞DNAの濃度は、50μl(PCR反応混合物の量)当たり0、2.5、5、及び10μgとした。これは、最終反応混合物すなわち、PCR反応開始直前の反応混合物中の0μg/μl、0.05μg/μl、0.1μg/μl、及び0.2μg/μlに対応する。図9〜図12に結果を示す。
【0101】
実施例9
混入水性バッファーにおける原核生物DNAの16S-rRNA相補配列中の標的配列の検出
アコレプラズマ・レイドラウイDNAの濃度がバッファー1ml当たり3cfuであり、DNA精製前に、CHO細胞DNAの代わりに、仔ウシ胸腺をバッファー1ml当たり200μgの濃度で添加する以外は、実施例5に記載したのと同様に実験を実施した。図13は結果を示す。
【0102】
特に、仔ウシ胸腺DNAの存在下で産生されたPCR断片は、CHO細胞DNAの存在下で産生された断片、例えば、(特に)図6に示したものとは違って、大きさにいくらかの変動を示している。
【0103】
従って、仔ウシ胸腺DNAは、PCR人工産物の形成を抑制するのに適していない。以上の結果を考慮すると、仔ウシ胸腺DNA(及びその他の真核生物ゲノムDNA)ではなく、CHO細胞DNAの能力は、配列番号1及び配列番号2のプライマーに基づくMYCOTOOL PCRを最初にCHO細胞培養物及び培養上清に合わせて調整したことによって、所望の効果をもたらすことができたと結論付けられた。「バックグラウンド」が明らかに人工産物の形成を抑制することから、最適化を実施した時点では、CHO細胞のゲノムDNAが、プライマーに関して有益と思われる「バックグラウンド」を提供したことははっきりしていなかった。他の種由来のゲノムDNAは組成が異なり、非特異的人工産物の形成を抑制することはできない(又はそうするのに効率が低い)ことは明らかである。
【0104】
実施例10
孵化鶏卵由来の尿膜液の「接種」サンプルにおける原核生物DNAの16S-rRNA相補配列中の標的配列の検出、仔ウシ胸腺DNAの添加
DNA精製前に、CHO細胞DNAではなく、仔ウシ胸腺を添加した以外は実施例7に記載したのと同様に実験を実施した。
【0105】
4つの異なるサンプルを用意した:(i)仔ウシ胸腺DNAを含まない接種尿膜液、(ii)仔ウシ胸腺DNAを含まない非接種尿膜液、(iii)仔ウシ胸腺DNAを添加した接種尿膜液、及び(iv)仔ウシ胸腺DNAを添加した非接種尿膜液。(iii)及び(iv)のサンプルでは、仔ウシ胸腺DNAの濃度は、尿膜液1ml当たり200mgであった。
【0106】
図14は結果を示す。基本的に、結論は実施例9と同様である。ここでも、CHO細胞DNAの存在下でのPCRと対照的に、非特異的増幅産物が産生された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体材料を含むサンプル中の細菌混入物の存在又は非存在を決定するための改善された方法であって、以下のステップ:
(a)上記サンプルを処理して、処理済サンプルから核酸を精製するステップ;次に、
(b)PCR増幅反応のための組成物(反応混合物)を形成するステップであって、該組成物が、
−配列番号1の第1プライマー、
−配列番号2の第2プライマー、及び
−鋳型としての、ステップ(a)の精製された核酸又はその測定画分
を含む、上記ステップ;次に
(c)ステップ(b)の組成物を用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施するステップ;続いて
(d)増幅された標的配列の存在又は非存在を検出するステップであって、ここで、該増幅された標的配列の存在は、上記サンプル中の細菌混入物の存在を示し、また、該増幅された標的配列の非存在は、上記サンプル中の細菌混入物の非存在を示すものである、上記ステップ
を含み、
上記の改善が、上記サンプルの量に対して、CHO細胞由来の所定量のDNAを、(i)サンプル、又は(ii)ステップ(a)の処理済サンプル、又は(iii)ステップ(a)で得られた精製された核酸、又は(iv)ステップ(b)の組成物、に添加し、これにより、添加されたCHO細胞由来のDNAによって、ステップ(d)における非特異的増幅を低減させることを特徴とする、上記方法。
【請求項2】
前記液体サンプル1ml当たりの所定濃度のDNAが、サンプル1ml当たり10μgからサンプル1ml当たり250μgの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液体サンプルが、培養細胞を含む細胞培地、無細胞培養上清、及び羊水からなる群より選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記液体サンプルが羊水である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記羊水が孵化卵に由来する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記細菌混入物が、アコレプラズマ(Acholeplasma)、バチルス(Bacillus)、クロストリジウム(Clostridium)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ミクロコッカス(Micrococcus)、マイコプラズマ(Mycoplasma)、スピロプラズマ(Spiroplasma)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、及びストレプトコッカス(Streptococcus)からなる群より選択される属である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記細菌混入物が、マイコプラズマ・ハイオライニス(M. hyorhinis)、マイコプラズマ・アルギニーニ(M. arginini)、マイコプラズマ・ニューモニエ(M. pneumoniae)、マイコプラズマ・ファーメンタンス(M. fermentans)、マイコプラズマ・オラーレ(M. orale)、及びマイコプラズマ・ピラム(M. pirium)からなる群より選択されるマイコプラズマ種であるか、又は、該細菌混入物がアコレプラズマ・レイドラウイ(Acholeplasma laidlawii)であるか、又は、該細菌混入物がスピロプラズマ・ミリアム(Spiroplasma mirium)である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
孵化卵由来の羊水及びCHO細胞由来のDNAを含む組成物。
【請求項9】
カオトロピック試薬及びプロテアーゼから選択される溶解試薬をさらに含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
(i)羊水、真核細胞の懸濁液、及び真核細胞の懸濁液の上清からなる群より選択されるサンプル由来の精製された核酸と、(ii)原核生物DNAを含まないCHO細胞由来のDNAとを含む組成物。
【請求項11】
配列番号1の第1プライマーと、配列番号2の第2プライマーと、ヌクレオチド三リン酸と、耐熱性DNAポリメラーゼとをさらに含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
インターカレーション色素をさらに含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
(i)溶解試薬と、(ii)原核生物DNAを含まない、所定濃度のCHO細胞由来の精製されたDNAと、(iii)配列番号1の第1プライマー及び配列番号2の第2プライマーと、を別個の容器に含むキット。
【請求項14】
羊水、真核細胞の懸濁液、及び真核細胞の懸濁液の上清からなる群より選択されるサンプルから単離されたDNAから原核生物混入物のDNAを増幅するための、請求項10〜12のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項15】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施するための改善された方法であって、
約100bp〜約1,500bpの範囲のサイズの特異的増幅産物が、1対のオリゴヌクレオチドプライマーのDNAポリメラーゼ触媒伸長によって形成され、上記プライマーは各々、1以上の原核生物の16S-rRNAのゲノム相補配列に含まれる標的配列にハイブリダイズするものであり、
上記オリゴヌクレオチドプライマー対は、PCRにおいて第1鋳型からの特異的増幅産物を形成することができ、該PCRは、所定の組成物を含む反応混合物(Q)において所定の条件(R)下で実施され、第1鋳型は、第1真核生物のゲノムDNAと1以上の原核生物のゲノムDNAを含むものであり、
また、PCRにおいて、上記オリゴヌクレオチドプライマー対は、上記反応混合物(Q)において上記と同じ条件(R)下で第2鋳型から増幅産物を形成せず、第2鋳型には、1以上の原核生物のゲノムDNAは存在しないが、第1真核生物のゲノムDNAは含まれており、
上記改善された方法は、以下のステップ:
(a)上記オリゴヌクレオチドプライマー対を用意するステップ;
(b)第1真核生物のゲノムDNAを用意するステップ;
(c)1以上の原核生物のゲノムDNAを含むことが疑われる第2真核生物のゲノムDNAを含む第3鋳型を用意するステップ;
(d)上記反応混合物(Q)において、(a)のプライマー対、(c)の第3鋳型、及び(b)の第1真核生物のゲノムDNAの測定量を混合し、上記条件(R)下でPCRを実施するステップ
を含み、非特異的PCR増幅産物の形成が抑制される、上記方法。
【請求項1】
生体材料を含むサンプル中の細菌混入物の存在又は非存在を決定するための改善された方法であって、以下のステップ:
(a)上記サンプルを処理して、処理済サンプルから核酸を精製するステップ;次に、
(b)PCR増幅反応のための組成物(反応混合物)を形成するステップであって、該組成物が、
−配列番号1の第1プライマー、
−配列番号2の第2プライマー、及び
−鋳型としての、ステップ(a)の精製された核酸又はその測定画分
を含む、上記ステップ;次に
(c)ステップ(b)の組成物を用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施するステップ;続いて
(d)増幅された標的配列の存在又は非存在を検出するステップであって、ここで、該増幅された標的配列の存在は、上記サンプル中の細菌混入物の存在を示し、また、該増幅された標的配列の非存在は、上記サンプル中の細菌混入物の非存在を示すものである、上記ステップ
を含み、
上記の改善が、上記サンプルの量に対して、CHO細胞由来の所定量のDNAを、(i)サンプル、又は(ii)ステップ(a)の処理済サンプル、又は(iii)ステップ(a)で得られた精製された核酸、又は(iv)ステップ(b)の組成物、に添加し、これにより、添加されたCHO細胞由来のDNAによって、ステップ(d)における非特異的増幅を低減させることを特徴とする、上記方法。
【請求項2】
前記液体サンプル1ml当たりの所定濃度のDNAが、サンプル1ml当たり10μgからサンプル1ml当たり250μgの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液体サンプルが、培養細胞を含む細胞培地、無細胞培養上清、及び羊水からなる群より選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記液体サンプルが羊水である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記羊水が孵化卵に由来する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記細菌混入物が、アコレプラズマ(Acholeplasma)、バチルス(Bacillus)、クロストリジウム(Clostridium)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ミクロコッカス(Micrococcus)、マイコプラズマ(Mycoplasma)、スピロプラズマ(Spiroplasma)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、及びストレプトコッカス(Streptococcus)からなる群より選択される属である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記細菌混入物が、マイコプラズマ・ハイオライニス(M. hyorhinis)、マイコプラズマ・アルギニーニ(M. arginini)、マイコプラズマ・ニューモニエ(M. pneumoniae)、マイコプラズマ・ファーメンタンス(M. fermentans)、マイコプラズマ・オラーレ(M. orale)、及びマイコプラズマ・ピラム(M. pirium)からなる群より選択されるマイコプラズマ種であるか、又は、該細菌混入物がアコレプラズマ・レイドラウイ(Acholeplasma laidlawii)であるか、又は、該細菌混入物がスピロプラズマ・ミリアム(Spiroplasma mirium)である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
孵化卵由来の羊水及びCHO細胞由来のDNAを含む組成物。
【請求項9】
カオトロピック試薬及びプロテアーゼから選択される溶解試薬をさらに含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
(i)羊水、真核細胞の懸濁液、及び真核細胞の懸濁液の上清からなる群より選択されるサンプル由来の精製された核酸と、(ii)原核生物DNAを含まないCHO細胞由来のDNAとを含む組成物。
【請求項11】
配列番号1の第1プライマーと、配列番号2の第2プライマーと、ヌクレオチド三リン酸と、耐熱性DNAポリメラーゼとをさらに含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
インターカレーション色素をさらに含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
(i)溶解試薬と、(ii)原核生物DNAを含まない、所定濃度のCHO細胞由来の精製されたDNAと、(iii)配列番号1の第1プライマー及び配列番号2の第2プライマーと、を別個の容器に含むキット。
【請求項14】
羊水、真核細胞の懸濁液、及び真核細胞の懸濁液の上清からなる群より選択されるサンプルから単離されたDNAから原核生物混入物のDNAを増幅するための、請求項10〜12のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項15】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施するための改善された方法であって、
約100bp〜約1,500bpの範囲のサイズの特異的増幅産物が、1対のオリゴヌクレオチドプライマーのDNAポリメラーゼ触媒伸長によって形成され、上記プライマーは各々、1以上の原核生物の16S-rRNAのゲノム相補配列に含まれる標的配列にハイブリダイズするものであり、
上記オリゴヌクレオチドプライマー対は、PCRにおいて第1鋳型からの特異的増幅産物を形成することができ、該PCRは、所定の組成物を含む反応混合物(Q)において所定の条件(R)下で実施され、第1鋳型は、第1真核生物のゲノムDNAと1以上の原核生物のゲノムDNAを含むものであり、
また、PCRにおいて、上記オリゴヌクレオチドプライマー対は、上記反応混合物(Q)において上記と同じ条件(R)下で第2鋳型から増幅産物を形成せず、第2鋳型には、1以上の原核生物のゲノムDNAは存在しないが、第1真核生物のゲノムDNAは含まれており、
上記改善された方法は、以下のステップ:
(a)上記オリゴヌクレオチドプライマー対を用意するステップ;
(b)第1真核生物のゲノムDNAを用意するステップ;
(c)1以上の原核生物のゲノムDNAを含むことが疑われる第2真核生物のゲノムDNAを含む第3鋳型を用意するステップ;
(d)上記反応混合物(Q)において、(a)のプライマー対、(c)の第3鋳型、及び(b)の第1真核生物のゲノムDNAの測定量を混合し、上記条件(R)下でPCRを実施するステップ
を含み、非特異的PCR増幅産物の形成が抑制される、上記方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2013−500702(P2013−500702A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522028(P2012−522028)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004655
【国際公開番号】WO2011/015312
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004655
【国際公開番号】WO2011/015312
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】
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