説明

改善された衝撃性を有する硬質ポリ塩化ビニルポリマー組成物

窓枠、戸枠、サイディング、フェンス、樋、管、配電盤、自動車の内装及び外装、電気器具、事務用設備又は医療機器のような用途への使用に適する硬質ポリ塩化ビニル組成物が開示される。開示された組成物は、組成物の衝撃性を改善するような量の2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートが組み込まれたポリ塩化ビニルポリマー又はコポリマーを含む。このような組成物の製造方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された衝撃性を有することによって種々の最終用途への使用に適するようになった硬質ポリ塩化ビニルポリマー組成物に関する。この組成物は、組成物の衝撃性を改善するのに充分な量で衝撃性改良剤として使用される2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートを含む。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニルポリマー及びコポリマー組成物(以下「PVC」)は、医療、電気、自動車並びに建築及び建設を含む種々の用途に有用である。例えば、PVCは以下の製品:電気器具、家具、窓枠、配水管、医療機器、電力、データ及び電気通信の配線及びケーブル、ケーブル及び線の絶縁、弾性(resilient)床材、ルーフィングメンブレン、自動車用内装及びシートカバー、自動車用外装品及び外装部品、ファッション及びフットウェア、ボトル及び包装、クレジットカード並びに合成皮革及び他のコーテイング布に使用される。
【0003】
硬質PVCは特に、サイディング、樋、窓、管及び導管、継手並びに自動車の内装品及び外装品のような種々の製品に用途がある。
【0004】
硬質PVCは多くの有用な性質を有するが、亀裂を防ぐためには又は必要とされる柔軟性を提供するためには、剛性又は脆性をある程度低下させることが必要か又は望ましいことが多い。有用な衝撃性改良剤(modifier)は、PVCと相溶性であり、且つ引張強度のようなPVCの機械的性質を保持しながら、耐衝撃性を改善することによって衝撃破壊の傾向を小さくする必要がある。衝撃性改良剤が硬質PVCに与えることができる他の特性は、改善された加工、改善された溶融速度及び低温柔軟性である。
【0005】
従来から、PVC衝撃性改良剤は、ポリアクリル酸樹脂、メタクリレート・ブタジエン・スチレン(MBS)のようなブタジエン含有ポリマー及び塩素化ポリエチレン(CPE)樹脂を含む。これらのポリマーは、衝撃性改良剤自体の固有エラストマー特性(elastomeric property)のために、硬質PVC用の衝撃性改良剤として使用されてきた。これらの材料はこのような用途に適するが、従来の衝撃性改良剤は、硬質PVCのコストに比べて高価である。改善された衝撃性を有するが、衝撃性改良剤として比較的高価なエラストマー性ポリマーの必要がない硬質PVC配合物を提供することは、明らかに技術の進歩であろう。
【0006】
従来の可塑剤は、従来の可塑剤量で使用された場合にはPVCの引張強度に悪影響を与えるので、剛性を必要とする用途には典型的に使用されていなかった。従って、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート(以下「(TXIB)」)は、フローリング及び壁装材からスポーツ用品及び玩具までの多岐にわたる用途においてPVC組成物中の可塑剤として比較的多量で用いられるのが典型的である。
【0007】
例えば、特許文献1は、ベースに適用された発泡性樹脂状ポリマー組成物を含む装飾性表面被覆材を開示している。塩化ビニルのホモポリマー又はコポリマーであることができるこの樹脂は、樹脂100部当たり可塑剤が35〜150部又は50〜80部の量で存在する濃度で可塑剤中にプラスチゾルとして分散される。適当なジエステルは、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートを含む、芳香族又は脂肪族酸のジエステルを含むと述べられている。
【0008】
特許文献2は、ゲルコアが高分子量ポリ塩化ビニル樹脂各重量部当たり6〜14重量部、好ましくは9重量部の可塑剤を含むクッションを開示している。適当な可塑剤としては、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート(TXIB)が挙げられ、これはフタル酸ジオクチルのようなそれほど揮発性でないジエステルを併用するのが好ましい。
【0009】
特許文献3は、樹脂100部当たり25〜150部の可塑剤を含むゲル化プラスチゾル又は焼結ドライブレンドポリ塩化ビニル組成物のようなポリ塩化ビニル組成物中への着色剤の浸透方法を開示している。この引用文献は、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートを含む大きい群の可塑剤を開示している。ポリ塩化ビニルプラスチゾル組成物中の一次可塑剤及び二次可塑剤の両方の総重量は組成物の20〜60重量%、好ましくは30〜50重量%に達する。実施例XVIIの配合物は合計910gの分散及び増量剤グレードのポリ塩化ビニル並びに合計409gの5種の一次及び二次可塑剤(このうち80gは2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートである)を含む。
【0010】
特許文献4は、第1層(A)及び少なくとも1つの他の層(B)を含み、各層がポリ塩化ビニル組成物を含む多層組成物を開示している。この組成物は、クロロフルオロカーボン化合物に対して化学耐性を有すると述べられている。少なくとも1種の任意の可塑剤を、任意の層中に樹脂100部当たり1〜20部又は1〜10部の量で含ませることができる。適当なカルボン酸エステル可塑剤にはイソ酪酸の誘導体があると述べられている。この文献は、更に、少なくとも1種の衝撃性改良剤が少なくとも1つの層中に必要であること及び衝撃性改良剤が2つの以上の層に存在できることを示している。一般にゴム状コア成分を含むと述べられている適当な衝撃性改良剤には、Rohm & Haas製の種々のPARALOID製品がある。
【0011】
特許文献5は、乾燥粒状PVC分散型樹脂を含むプラスチゾル中に種々の硫黄含有添加剤を組み込むことによって製造された、白色化PVCフォームの製造に使用されるポリ塩化ビニル樹脂組成物を開示している。このプラスチゾルは、場合によっては、PVCブレンド用樹脂を含む[0054]。PVC分散型樹脂70重量部、PVCブレンド用樹脂30重量部、フタル酸ジオクチル可塑剤55重量部及び2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート可塑剤5重量部を含む「標準的な一般的フォーム処方」が開示されている。
【0012】
特許文献6は、安定剤、粉末抗菌剤、界面活性剤、PVC樹脂80〜120重量部及び可塑剤ブレンド35〜125重量部を含むグローブのような抗菌物品を製造するための配合物を開示している。この可塑剤ブレンドは好ましくは2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート10〜30重量部とフタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、テレフタル酸ジオクチル、フタル酸ブチルベンジル及びそれらの組合せからなる群から選ばれた別の可塑剤20〜95重量部を含む。
【0013】
特許文献7は、着色シートが結合されたプラスチックシートを含む積層プラスチックサイディングパネルを開示している。このプラスチックシートは、添加剤として衝撃性改良剤、例えばRohm & Haasから入手可能なACRYLOID製品を含むことができる。着色シートは、顔料と好ましくはビニル樹脂(好ましくはPVC)、少なくとも1種の可塑剤及び少なくとも1種の有機溶剤を含むバインダーを含む。好ましい可塑剤はジカルボン酸と飽和アルコールとのジエステル、例えばフタル酸ジイソデシル、ノナン二酸の2−エチルヘキシルエステル及び2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートである。
【0014】
ビニルプラスチゾルは好ましくは25〜50重量%、より好ましくは42〜48重量%、最も好ましくは45重量%のPVCと好ましくは16〜24重量%、より好ましくは20〜23重量%、最も好ましくは21重量%の可塑剤を含む。特に好ましいプラスチゾルは3種の可塑剤:フタル酸ジイソデシル9.9重量%、ノナン二酸の2−エチルヘキシルエステル5.9重量%及び2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート5.4重量%を含む。
【0015】
特許文献8は、乾燥ポリ塩化ビニル粉末100重量部と2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート60重量部とを混合し、ディゾルバー式ミキサーを用いてこの混合物を25℃、800rpmにおいて30分間混練し、そして得られた粒子を艶消被覆用組成物中に組み込むことによって製造された艶消被覆用添加剤を開示している。
【0016】
【特許文献1】米国特許第3,674,611号
【特許文献2】米国特許第3,737,930号
【特許文献3】米国特許第4,232,076号
【特許文献4】米国特許第5,248,546号
【特許文献5】米国特許出願公開第2003/0100620号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2003/0157150号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2005/0003154号明細書
【特許文献8】特願2000−048917号明細書(特開2000−309742号)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
高価な衝撃性改良剤を必要とせずに許容され得る衝撃性を示す硬質ポリ塩化ビニル組成物が当業界で依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、PVC組成物の衝撃性を改善するのに充分な量の、例えば10phr未満の量の2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートが組み込まれたポリ塩化ビニル(PVC)組成物に関する。
【0019】
本発明は、ポリ塩化ビニル樹脂と10phr以下の量の2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート(TXIB)を含んでなり、前記TXIBがポリ塩化ビニル樹脂中に分散されている、改善された衝撃性を示す硬質ポリ塩化ビニル組成物に関する。
【0020】
本発明は、また、組成物の衝撃性を改善するために2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートを10phr以下の量で組み込む、硬質ポリ塩化ビニル組成物の製造方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、以下の発明の詳細な説明及び実施例を参照することによってより理解し易くなるであろう。硬質PVC組成物を加工するための具体的な方法及び加工条件は様々であり得るので、本発明は記載した具体的な方法及び条件に限定するものではないことを理解すべきである。また、使用する用語はその実施態様の説明のみを目的とし、限定を目的としないことも理解すべきである。
【0022】
明細書及び特許請求の範囲において使用する単数形(a,an及びthe)は、前後関係からそうでないことが明白に指示されない限り、複数の指示対象を含む。
【0023】
「含んでなる」又は「含む」は、少なくとも名前を挙げた化合物、要素、粒子などはその組成物又は物品中に存在しなければならないが、他の化合物、材料、粒子などが名前を挙げたものと同一の機能を有するとしても、他のこのような化合物、材料、粒子などの存在を排除しないことを意味する。
【0024】
本発明によれば、ポリ塩化ビニル(PVC)組成物の衝撃性を改善するのに充分な量で衝撃性改良剤として使用される2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートを含むPVC組成物が提供される。衝撃性を改善するのに充分な2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートの量は10phr以下又は8phr以下又は5phr以下の様々な量である。例えば、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートは0.8〜9phr若しくは1〜5phr若しくは2〜4phrの量で又は本明細書中の他の場所で更に記載する量で加える。
【0025】
2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートのようなジエステルはPVC組成物用可塑剤としての使用が知られているが、その目的で使用する場合には、それらは典型的にはこのような組成物中に高濃度で、例えば20phr超から100phrまで又はそれ以上の量で含まれる。可塑剤として使用する場合には、PVCの耐衝撃性は、PVCの引張強度に悪影響を与えることなく改善することはできない。しかし、本発明中に示した量で使用する場合には、PVC組成物は、引張強度のような他の望ましい機械的性質を保持しながら、改善された衝撃特性を示す。
【0026】
本発明に係るPVC組成物中に存在する2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートの量は10phr未満の任意の量であることができる。例えば、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートの適当な量は、PVC組成物中のポリマーの重量に基づき0.8〜9phr若しくは1〜5phrの広い範囲内で又は既に記載したように変動することができる。本発明者らは、これらの量で又は可塑剤として働く場合の典型的な使用量よりも少ない量で使用する場合には、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートが、組成物の衝撃性を改善するために硬質PVC配合物に添加する際に、このような組成物の引張強度に悪影響を及ぼすことなく、衝撃性改良剤として使用できることを発見した。得られる硬質PVC配合物は、従来のエラストマー性衝撃性改良剤を含む組成物と同程度の衝撃特性を示すが、コストがはるかに低い。
【0027】
従って、本発明は、硬質PVC組成物用の衝撃性改良剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートを使用することによって、改善された衝撃性を得ること、及びこのような組成物の製造方法及び使用方法に関する。
【0028】
本発明者らは、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート(CAS#6846−50−0)が、米国特許第4,110,539号(引用することによって本明細書中に組み入れる)に記載した方法を含む公知の方法によって製造できることを確認している。この分子は、PVC組成物を含む種々のポリマー組成物中に可塑剤として使用でき、Eastman Chemcial Company(Kingsport,Tennessee)製のTXIB配合物添加剤として入手可能である。
【0029】
本発明に従って有用なポリ塩化ビニルポリマーとしては、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,Vol.24,4th ed.,(1997)1017−1053頁の”Vniyl Chloride Polymers”の項目中に記載されているものが挙げられ、この文献のこの項目を引用することによって本明細書中に組み入れる。
【0030】
例えば、本発明に従って有用なPVCポリマーとしては、塩化ビニルのホモポリマー、並びに塩化ビニルモノマーから重合された反復単位を少なくとも70重量%若しくは少なくとも80重量%若しくは少なくとも90重量%又は更には95重量%若しくはそれ以上含むそれらの塩化ビニルポリマー樹脂が挙げられる。
【0031】
本発明のポリ塩化ビニル組成物は、塩化ビニルモノマーから重合された反応単位を含むことができ、また、限定的ではないが、アクリル酸のエステル、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸シアノエチルなど;ビニルエステル、例えば酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル;メタクリル酸のエステル、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ブチルなど;ニトリル、例えばアクリロニトリル及びメタクリロニトリル;アクリルアミド、例えばメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメタクリルアミドなど;ハロゲン含有ビニルモノマー、例えば塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン及び臭化ビニル;ビニルエーテル、例えばエチルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテルなど;ビニルケトン、スチレン誘導体、例えばα−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン;ビニルナフタレン:オレフィン、例えばエチレン、ブテン、イソブチレン、プロピレン及びヘキセン;並びに塩化ビニルとの適当な反応性比を有する、当業者に知られた他の共重合性モノマー又はモノマー混合物のうち1種又はそれ以上からのコモノマーを、コポリマーの30重量%まで含むことができる。
【0032】
本発明のいくつかの実施態様は、架橋PVCとのPVCブレンド又は架橋PVC単独を使用できる。架橋PVCポリマーは、米国特許第4,755,699号及び第5,248,546号(引用することによって本明細書中に組み入れる)に教示されたように、塩化ビニルを、前記のフタル酸ジアリル、トリメチロールプロパントリアクリレート、メタクリル酸アリルなどのような架橋モノマーの存在下で重合させることによって製造できる。
【0033】
前記ホモポリマー又はコポリマーは市販されており、懸濁、分散又はブレンドを含む任意の適当な重合方法によって製造できる。例えば懸濁法を用いて製造されたポリ塩化ビニルポリマーは本発明に用いるのに適している。
【0034】
本発明者らが本発明に係るPVC組成物が硬質であると述べる場合には、例えば、組成物が、可塑剤を少量含むか又は全く含まない非改質又は非可塑化PVCであることを意味する。これに対して、軟質又は可塑化PVCは典型的には12phrより高いレベルで可塑剤を含むことができる。従って、本発明に係る硬質PVCは、軟質と分類される改質PVC組成物よりも高レベルの引張強度を有することを特徴とする。
【0035】
また、本発明によれば、硬質PVCは一定の引張弾性率を超える引張弾性率を有する所定の化合物の特性を意味する。例えば、PVCは、105psi(又は689MPa)を超える引張弾性率を有する場合には硬質と見なされ、その引張弾性率が3×103〜105psi(又は20.7MPa)の範囲内にある場合には半硬質と見なされ、それが3×103psi(又は20.7MPa)未満の引張弾性率を有する場合には軟質と見なされる(引張弾性率値は、23℃及び相対湿度50%の標準ASTM条件に基づく)。従って、本発明に係る硬質PVCは広範囲にわたって変化する引張弾性率を有することができ、例えば、引張弾性率値は800〜1000MPa又は1000から2000MPaまで又は3000MPaまで又はそれ以上であることができる。
【0036】
2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートをPVC組成物中に組み込むことができる方法は特には限定しない。PVC配合物中に衝撃性改良剤を組み込むための、当業者に知られた任意の常法を使用できる。例えば、乾燥型のPVCと2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートを任意の適当な方法で、例えば二本ロール機上で又は混練頭部付きの押出機中で混合できる。更なる例として、これらの組成物は本明細書中に記載した方法を用いて製造できる。
【0037】
硬質PVC組成物の衝撃性に対する2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートの効果は、従来の試験法を用いて引張強度、引張弾性率又は耐衝撃性によって判定できる。
【0038】
本発明の別の態様においては、場合によっては追加の衝撃性改良剤を本発明の組成物に添加して、PVCポリマーの性能特性を向上させることができる。適当な衝撃性改良剤としては、従来のエラストマー性衝撃性改良剤、例えば、実質的にメタクリレート、スチレン及びブタジエンから製造されたポリマー(例えば「MBS」樹脂)、アクリロニトリルモノマーを更に含むMBS(例えば、「MABS」)、ポリアクリル酸樹脂並びにアクリルゴム(例えばポリアルキルアクリレート)及びアクリル酸アウターステージ(outer stage)(例えばポリメタクリル酸メチル)を基材とするアクリル系衝撃性改良剤(例えばAIM)、塩素化ポリエチレン(「CPE」)、並びにシロキサンゴムを有するポリマーが挙げられる。種々のMBS及びAIM衝撃性改良剤がRohm and Haas Company(Philadelphia,Pa)から入手できる。
【0039】
例えば、アクリル系衝撃性改良剤(AIM)、メタクリレート・ブタジエン・スチレン(MBS)又は塩素化ポリエチレン(CPE)を2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートに添加して衝撃性の更なる改善を提供すると同時に、より高価なエラストマー性衝撃性改良剤の必要量を減少させることによってコストを削減することができる。これらの配合物においては、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートを8phr以下の量で添加することができ、エラストマー性衝撃性改良剤を8phr未満の量で添加することができ、組成物に添加する衝撃性改良剤の総量は10phr未満である。例えば、組成物に応じて、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートを5〜8phrで添加し、従来のエラストマー性衝撃性改良剤を2〜5phrで添加することができるであろう。
【0040】
本発明の硬質PVC組成物は、窓枠、戸枠、サイディング、フェンス、樋、管、配電盤、自動車の内装及び外装、電気器具、事務設備又は医療機器を含む種々の用途に使用するのに適する。
【実施例】
【0041】
本発明を更に好ましい実施態様の以下の例によって説明するが、これらの例は説明のためにのみ記載するのであって、特に断らない限り、本発明の範囲を限定するものではないことが理解されるであろう。
【0042】
硬質PVC配合物に、Eastman TXIBを0.2、0.6、0.8、1.0、2.0、5.0及び8.0phr(樹脂100部当たりの部)のレベルで添加した。この評価に用いた対照サンプルは、衝撃性改良剤を含まないサンプル(C1)と、Rohm & HaasのParaloid KM−334アクリル系衝撃性改良剤5phrを含むサンプル(C2)である。配合物は、アクリル系衝撃性改良剤又はTXIBを除いた、表Iに記載した成分全てをThyssen Henschel,Model FM 10 USミキサーに室温で添加することによって製造した。配合物はまた、最終製品の望ましい量に応じて200gまでスケールアップすることができる。
【0043】
【表1】

【0044】
ミキサーを始動させたらすぐに、ドライブレンドを150°Fの温度まで昇温させた。アクリル系衝撃性改良剤又はTXIBを添加する場合には、150°Fにおいて混合を続けながら、ミキサーの上部の孔を通してゆっくりと添加した。次いで、温度を190°Fまで上昇させ続け、ドライブレンドを次にヘンシェル(Henschel)ミキサーから紙袋中に計量分配した。次いで、ドライブレンドをより大きい紙上に注ぎ、室温まで冷却した。次に、ドライブレンド約200gを320〜340°FのFarrel Technolab二本ロール機上に置き、混合物が二本ロール機に粘着するまで混合することによって、ドライブレンドを融合させる。混合物が二本ロール機に粘着してから4分混合を続けた。高温のビニル樹脂を慎重に取り出し、Multipress,model#100トン,4ポストプレス(直径10”のピストンを有する)中に入れた。プレスを約350°Fに設定した。ビニル樹脂サンプルを、プレート間に70〜75milのシムを有する12”×12”の2枚のクロムメッキプレートの間に入れた。次いで、サンプルを12分間プレスし、次に冷却し、プレスから取り出した。厚さ75milの12×12完成シートを取り出し、物理的性質及び耐衝撃性のためにTS&D Physical Testing Laboratoriesに送る。引張強度及び引張弾性率はASTM法D638によって測定する。耐衝撃性はASTM法D3763によって測定する。
【0045】
TXIBを0.2phr、0.6phr、0.8phr、1.0phr、2.0phr、5.0phr及び8.0phrで用いた硬質PVC配合物の引張強度試験は、TXIBを衝撃性改良剤として本発明において必要なレベルにおいて用いた場合には引張強度が悪影響を受けないことを示している。表IIに示すように、TXIB配合物の引張強度は、衝撃性改良剤を添加しなかったC1−対照サンプル及び従来のアクリル系衝撃性改良剤を5phrで添加したC2−対照サンプルの引張強度と同じである。更に、表IIは、TXIBを本発明において必要なレベルで用いた場合には引張弾性率が依然として硬質PVCの範囲にある(689MPaより大きい)ことを示している。
【0046】
【表2】

【0047】
表IIIは、TXIBを用いた硬質PVC配合物の耐衝撃性試験が、従来の衝撃性改良剤で見られるのに等しい衝撃性の改善を示すことを示している。従って、TXIBは、引張強度を保持しながら、硬質PVC配合物の衝撃性を改善することが示された。
【0048】
【表3】

【0049】
表IVは、硬質PVC配合物中に衝撃性改良剤として使用した場合のTXIBの化学抽出性の要約を示す。一般に、高レベルのTXIBを含む従来の硬質PVC組成物を種々の媒体に暴露した場合には、TXIBは組成物から抽出されて、PVCがより脆くなり且つ時間の経過と共におそらくは亀裂し始める可能性がある。以下の一連の試験において、PVC配合物を24時間種々の媒体に暴露し、配合物を評価して、TXIBの抽出によって減量が起こったどうかを判定した。表IVに示すように、本発明の組成物においては、これらの配合物中に使用したTXIBレベルが低いので、TXIBの抽出はごくわずかしか起こらない。
【0050】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ塩化ビニル樹脂及び
10phr未満の量の2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートを含んでなるポリ塩化ビニル組成物。
【請求項2】
前記2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートが0.8〜9phrの量で存在する請求項1に記載のポリ塩化ビニル組成物。
【請求項3】
前記2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートが1〜7phrの量で存在する請求項1に記載のポリ塩化ビニル組成物。
【請求項4】
ポリ塩化ビニル残基が塩化ビニルモノマーから重合された反復単位少なくとも70重量%と他のコモノマーからの反復単位30重量%以下を含むポリ塩化ビニルポリマー樹脂;及び
前記ポリ塩化ビニルポリマー樹脂中に1〜8phrの量で分散された2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートを含んでなり、
689MPaより大きい引張弾性率を有するポリ塩化ビニル組成物。
【請求項5】
ポリ塩化ビニル樹脂及び
前記ポリ塩化ビニル樹脂中に分散された10phr以下の量の2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートを含んでなる、
改善された衝撃性を有する硬質ポリ塩化ビニル組成物。
【請求項6】
前記2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートが1〜8phrの量で存在する請求項5に記載の硬質ポリ塩化ビニル組成物。
【請求項7】
前記2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートが2〜5phrの量で存在する請求項5に記載の硬質ポリ塩化ビニル組成物。
【請求項8】
前記ポリ塩化ビニル樹脂が塩化ビニルモノマーから重合された反復単位少なくとも70重量%と他のコモノマーからの反復単位30重量%以下を有する請求項5に記載の硬質ポリ塩化ビニル組成物。
【請求項9】
前記ポリ塩化ビニル樹脂が乾燥形であり且つ前記組成物が二本ロール機又は混合ヘッド付の押出機を用いて製造される請求項5に記載の硬質ポリ塩化ビニル組成物。
【請求項10】
ポリ塩化ビニル樹脂のドライブレンドを室温で混合し、
前記樹脂を150°Fの温度まで加熱し、
150°Fにおいて混合し続けながら、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートを10phr以下の量でゆっくり添加し、
前記樹脂と2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートとの混合物を190°Fまで加熱し、
前記混合物を室温まで冷却し、次いで前記混合物を320〜340°Fの二本ロール機上に注ぎ、
前記混合物が二本ロール機に粘着するまで二本ロール機上で混合物を混合し、
得られた高温のビニル樹脂混合物を、350°Fに設定されたマルチプレス中に入れ、混合物を数分間プレスし、次いで前記プレスから混合物を取り出し、冷却させる
ことを含んでなる、請求項5に記載の硬質ポリ塩化ビニル組成物の製造方法。
【請求項11】
ポリ塩化ビニルポリマー樹脂、
8〜2phrの量の2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート及び
2〜8phrの量のエラストマー性衝撃性改良剤を含んでなり、前記2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート及び
前記エラストマー性衝撃性改良剤が前記ポリ塩化ビニルポリマー中に分散され、そして前記組成物に添加される前記2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート及び前記エラストマー性衝撃性改良剤の量が合計で10phr未満である改善された衝撃特性を有する硬質ポリ塩化ビニル組成物。
【請求項12】
前記2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートが5〜8phrであり且つ前記エラストマー性アクリル系衝撃性改良剤が2〜5phrである請求項11に記載の硬質ポリ塩化ビニル組成物。
【請求項13】
前記エラストマー性衝撃性改良剤がアクリル系衝撃性改良剤(AIM)、メタクリレート・ブタジエン・スチレン(MBS)、メタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(MABS)、塩素化ポリエチレン(CPE)又はシロキサンゴムを有するポリマーのうちの1種又はそれ以上である請求項11に記載の硬質ポリ塩化ビニル組成物。
【請求項14】
前記組成物を窓枠、戸枠、サイディング、フェンス、樋、管、配電盤、自動車の内層及び外装、電気器具、事務用設備又は医療機器のような用途に使用する請求項5又は11に記載の硬質ポリ塩化ビニル組成物。

【公表番号】特表2009−535485(P2009−535485A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509630(P2009−509630)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/010372
【国際公開番号】WO2007/130318
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】