説明

改善された電力または燃料節約のためのモリブデン含有潤滑剤

(a)潤滑粘度の油;(b)モリブデン塩;(c)(i)ポリオールおよび(ii)約12〜約24個の炭素原子を含む脂肪族カルボン酸;ならびに(d)12〜24個の炭素原子を含むビシナルジオールのホウ酸エステルの潤滑剤組成物は、良好な燃料節約および内燃機関への電力出力を提供する。好ましい実施形態では、この潤滑粘度の油は、天然油組成物または合成油組成物であって、必要に応じて、粘度指数調整剤を含有し、0W−10、0W−20、0W−30、5W−20、5W−30の等級のSAEマルチグレード粘度、または20もしくは30の範囲のSAEモノグレード粘度を有するように選択され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、内燃機関において使用するための潤滑剤組成物に関する。この潤滑剤は、特に、モリブデン塩および特定のエステルおよびホウ酸化エステルを含有する。
【背景技術】
【0002】
ジチオカルバミン酸モリブデンを含有する潤滑油組成物は、公知である。米国特許第、4,846,983号は、ヒドロカルビル一級アミン(例えば、オレイルアミン)、モリブデン化合物(例えば、MoO)およびに硫化炭素から誘導される、ジチオカルバミン酸モリブデンを開示する。この参考文献は、これらのジチオカルバミン酸モリブデンが、潤滑油組成物において、酸化防止剤、抗磨耗添加剤、極圧添加剤、および摩擦調整剤として有用であることを示す。
【0003】
改善された燃料の節約および電力出力は、しばしば、エンジンおよび潤滑剤の設計における、競合する目的である。本発明の目的は、所定の速度のための最大馬力を生じる、潤滑剤を提供することである。その結果、得られた潤滑剤はまた、乗用車のモータオイルのための優れた燃料節約特徴を提供する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
本発明は、潤滑剤組成物に関し、この潤滑剤組成物は、以下:
(a)潤滑粘度の油;
(b)モリブデン塩;
(c)(i)ポリマーおよび(ii)脂肪族カルボン酸のモノエステル;ならびに
(d)12〜24個の炭素原子を含む、ビシナルジオールのホウ酸エステル、
を含有する。
【0005】
本発明は、さらに、内燃機関を潤滑させるための方法を提供し、この方法は、この内燃機関に、上記潤滑剤組成物を適用することを包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
(発明の詳細な説明)
種々の好ましい特徴および実施形態が、非限定的な説明によって、以下に記載される。
【0007】
本発明の1つの構成要素は、潤滑粘度の油である。潤滑粘度の油としては、天然潤滑剤および合成潤滑剤、ならびにその混合物が挙げられる。
【0008】
中性油としては、動物油および植物油(例えば、ヒマシ油、ラード油)ならびに液体石油および溶媒で処理された無機潤滑油または酸で処理された無機潤滑油(パラフィン系、ナフテン系、または混合パラフィン−ナフテン系のもの)が挙げられる。石炭または頁岩由来の潤滑粘度の油もまた、有用な基油である。
【0009】
合成潤滑油としては、炭化水素油(例えば、重合オレフィンおよびインターポリマー化オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン−イソブチレンコポリマー、ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−デセン)、およびこれらの混合物);アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、およびジ(2−エチルヘキシル)−ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、およびアルキル化ポリフェニル)、アルキル化ジフェニルエーテルおよびアルキル化ジフェニルスルフィド、ならびにこれらの誘導体、アナログ、およびホモログが挙げられる。
【0010】
アルキレンオキシドポリマーおよびインターポリマーならびにこれらの誘導体は、末端ヒドロキシル基がエステル化、エーテル化、または類似の反応によって修飾されている場合、別のクラスの公知の合成潤滑油を構成する。これらは、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシド、これらのポリオキシアルキレンポリマーのアルキルエステルおよびアリールエステル(例えば、1,000の平均分子量を有するメチルポリイソプロピレングリコールエーテル、500〜1,000の分子量を有するポリエチレングリコールのジフェニルエーテル、1,000〜1,500の分子量を有するポリエチレングリコールのジエチルエーテル)、またはこれらのモノポリカルボン酸エステルまたはポリカルボン酸エステル(例えば、酢酸エステル、混合C3〜C8脂肪酸エステル、あるいはテトラエチレングリコールのC13オキソ酸ジエステル)の重合を介して調製される油によって、例示される。
【0011】
別の適切なクラスの合成潤滑油は、ジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸およびアルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、およびアルケニルマロン酸)と、種々のアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、およびプロピレングリコール)とのエステルが挙げられる。これらのエステルの特定の例としては、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、フマル酸ジ−n−ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸二量体の2−エチルヘキシルジエステル、ならびに1モルのセバシン酸と2モルのテトラエチレングリコールおよび2モルの2−エチルヘキサン酸とを反応させることによって形成される複合エステルが挙げられる。
【0012】
合成油として有用な油としてはまた、C5〜C12モノカルボン酸と、ポリオールおよびポリオールエーテル(例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、およびトリペンタエリトリトール)とから作製される油が挙げられる。
【0013】
他の潤滑粘度の油(これは、合成油として分類され得る)は、気体−液体転換プロセス、またはFischer−Tropschプロセス由来のものである。このような液体は、Fischer−Tropsch触媒を使用して、HおよびCOを含有する合成気体から作製される。得られた炭化水素は、代表的に、さらなる加工(例えば、水素異性化、水素化分解法、または脱ろう)に供される。
【0014】
本明細書中で上に開示される型の未精製油、精製油、および再精製油(ならびに互いとの各々の混合物)が、本発明の潤滑剤組成物において使用され得る。未精製油とは、天然供給源または合成供給源から、さらなる精製処理なしで直接得られるものである。例えば、レトルト操作から直接得られる頁岩油、蒸留から直接得られる石油、またはエステル化プロセスから直接得られ、そしてさらなる処理なしで使用されるエステル油は、未精製油である。精製油とは、これらが1回以上の精製工程に供されて、1つ以上の特性を改善されている点を除いて、未精製油と類似である。多くのこのような精製技術は、当業者に公知であり、例えば、溶媒抽出、酸抽出もしくは塩基抽出、濾過、パーコレーション、または類似の精製技術である。再精製油は、再生油を得るために使用されるものに類似のプロセスによって得られる、すでに使用された油である。このような再精製油は、再生油または再処理油として公知であり、そしてしばしば、使用済み添加剤および油分解生成物の処理に関する技術によって、さらに加工される。
【0015】
潤滑粘度の油はまた、硫黄含有量、飽和物質の量、および粘度指数(I群〜III群について)に基づいて、I群、II群、III群、IV群、およびV群として、APIによって特徴付けられており、全てのポリαオレフィンは、IV群と称され、そしてI群〜IV群ではない他の全てのものが、V群と称される。III群の油は、しばしば、合成油とブレンドされる。本発明は、これらのAPI群またはそれらのブレンドのいずれかにおいて使用され得る。
【0016】
さらなる成分(これは、ベースストックの一部分として、潤滑粘度の油と一緒に考慮される)として、粘度指数調整剤がある。粘度調整剤は、自然の潤滑処方物において通常使用されており、そして時々、高いグレードの合成処方物においては、不必要である。粘度調整剤は、一般に、潤滑処方物の当業者に周知のポリマー材料であり、そしてポリイソブテン、ポリメタクリレート酸エステル、ポリアクリレート酸エステル、ジエンポリマー、ポリアルキルスチレン、アルケニルアリール共役ジエンコポリマー、ポリオレフィンおよび多官能性粘度改善剤(分散剤粘度調整剤(これは、分散性と粘度改善との両方を付与する)が挙げられる)が挙げられる。
【0017】
本発明の処方物は、粘度グレードに関して特定の制限なく、潤滑油において使用され得る。例えば、これらの処方物は、必要に応じて粘度調整剤を含有し、0W−10、0W−20、0W−30、5W−20、5W−30の等級のSAEマルチグレード粘度、または20もしくは30の範囲SAE粘度を有するモノグレード粘度を有する油において、使用され得る。
【0018】
潤滑油処方物が合成油ベースストックにおいて使用される場合、この油は、有利には、ポリαオレフィンおよび合成エステルのブレンドであり得る。このポリαオレフィンおよび合成エステルは、例えば、95:5〜80:20または約90:10の重量比で存在し得る。これらの油は、その組成物に、粘度調整剤の存在ありまたはなしで、0W−10の粘度グレードを与えるために適切な粘度を有する材料から選択され得る。このような処方物は、非常に高性能の用途または競走の用途のために望ましくあり得る。
【0019】
潤滑粘度の油は、代表的に、潤滑剤の主成分であり、添加剤が考慮された後の、その組成物の残りの部分を構成する。代表的に、この油は、その組成物の50〜99重量%、または80〜97重量%、または85〜95重量%を構成する。この組成物が、添加剤の濃度が約1桁増加している濃縮物の形態で存在する場合、油の量は、それに対応して減少する。
【0020】
潤滑粘度の油に、モリブデン塩が添加される。特に有用なモリブデン塩としては、ジチオカルバミン酸モリブデン(または通常は、ジヒドロカルビルジチオカルバミン酸モリブデン、「MoDTC」)が挙げられ、これは一般に、以下の式によって表される:
[RN−C(=S)S−]−(Mo
ここで、RおよびRは、同じかまたは異なる基であり、ヒドロカルビル基(例えば、アルキル基)または水素を含有する;代表的に、RおよびRは、C〜C18ヒドロカルビル基である;mおよびnは、これらの合計が4である正の整数である。代表的に、mは、1〜4であり、そしてnは、0〜3である;好ましくは、mは2〜4または2〜3であり、そしてnは、それぞれ0〜2または1〜2である。特に好ましい材料において、mは2であり、そしてnは2である。
【0021】
MoDTCの特定の例としては、市販の材料(例えば、R.T.Vanderbilt Co.,Ltd.製のVanlubeTM 822およびMolyvanTM A、ならびにAsahi Denka Kogyo K.K.製のAdeka Sakura−LubeTM S−100、S−165およびS−600)が挙げられる。他のモリブデンジチオカルバメートは、Tomizawaによって、米国特許第5,688,748号;Wardによって、米国特許第4,846,983号;Vriesらによって、米国特許第4,265,773号;およびInoueらによって、米国特許第4,529,536号に記載されている。RおよびRについての共通の基は、2−エチルヘキシル基、および一般に6〜18個の炭素原子を含むアルキル基であり、1つの例において、6〜13個の炭素原子を含むアルキル基の混合物が挙げられる。
【0022】
およびRは、各々独立して、ヒドロカルビル基のみでなく、アミノアルキル基またはアシル化アミノアルキル基であり得る。より一般的には、任意のこのようなR基は、米国特許第4,265,773号に詳細に記載されるような、塩基性窒素化合物(R−N−Rを含む)から誘導される。これらがヒドロカルビル基である場合、これらは、4〜24個の炭素、代表的には、6〜18個の炭素、または8〜12個の炭素のアルキル基であり得る。有用なC−8の基は、2−エチルヘキシル基である;従って、ジ−2−エチルヘキシルジチオカルバメートが、好ましい基である。
【0023】
またはRとして働き得るアミノアルキル基は、代表的に、ジチオカルバメート部分の合成においてポリアルキレンポリアミンの使用から生じる。代表的なポリアルケンポリアミンとしては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、および対応するより高級なホモログ、ならびにこれらの混合物が挙げられる。このようなポリアミンは、Kink Othmerの「Encyclopedia of Chemical Technology」第2版、第7巻、22〜37頁,Interscience Publishers,New York(1965)のEthylene Aminesの表題の下に詳細に記載されている。このようなポリアミンは、エチレンジクロリドとアンモニアとの反応、またはエチレンイミンと開環試薬(例えば、水またはアンモニア)との反応によって、調製され得る。これらの反応は、ポリアルキレンポリアミンの複雑な混合物(ピペラジンのような環状縮合生成物を含む)の生成を生じ、この混合物もまた有用である。他の有用な型のポリアミン混合物は、上記ポリアミン混合物をストリッピングして、しばしば「ポリアミンボトムス」と称される残渣を残すことによって生じるものである。
【0024】
およびRは、アシル化アミノアルキレン基であり得、特に、ジチオカルバメート部分の合成におけるアシル化ポリアルキレンポリアミンの使用から生じる。アシル化ポリアルキレンポリアミンは、代表的に、潤滑用途のための分散剤として用途を見出す。ヒドロカルビル置換されたコハク酸または無水物のような、アシル化剤としてヒドロカルビル二酸が、ポリアルキレンポリアミンと反応される場合、その生成物は、代表的に、スクシンイミド分散剤として公知である。モノカルボン酸(例えば、イソステアリン酸)がアシル化剤として使用される場合、得られる生成物は、代表的に、アミドであるが、イミダゾリン構造を形成する環化もまた起こり得る。
【0025】
この例において、モリブデン塩は、(a)例えば8〜34個の炭素原子を有する、カルボン酸またはその反応性等価物を、アルキレンポリアミンと反応させた生成物;ならびに(b)(a)の生成物を、任意の順序で、(i)MoO、HMoO、Mo(CO)、Mo(OH)、MoS、またはリンモリブデン酸のようなモリブデン化合物と、(ii)二硫化炭素とを反応させ(これによって、ジチオカルバミン酸モリブデンを形成し)た生成物として、記載され得る。
【0026】
全てのこのような材料は、当業者に周知である。スクシンイミド分散剤およびこれらの合成は、例えば、米国特許第4,234,435号に開示されている。イミダゾリンは、米国特許第2,466,517号に開示されている。
【0027】
上記塩基性窒素化合物からのチオカルバミン酸モリブデンの調製は、米国特許第4,265,773号により詳細に記載されている。簡単に言えば、これらは、従来、酸性モリブデン化合物(例えば、モリブデン酸(または上述のMo化合物のいずれか))と、塩基性窒素化合物との反応、および引き続く、二硫化炭素との反応によって、調製される。
【実施例】
【0028】
(実施例A)
ポリエチレンアミンボトムス(1.31kg、31.7当量)を、Dean−Stark蒸留トラップ、攪拌器、温度計、および8.5L/時間(1時間あたり0.3標準立方フィート)に設定された表面下Nスパージを備えた12Lのフラスコに充填し、そして75〜85℃に加熱する。イソステアリン酸(5.92kg、19.4当量)を5分間にわたって添加する。この混合物を1.5時間にわたって220℃まで加熱し、そして留出物を除去しながら、この温度で6.5時間維持する。この混合物を150℃まで冷却し、そして120gの濾過助剤を使用して濾過して、6.56gの中間体物質を得る。
【0029】
400gのトルエン中のこの中間体物質830g、1.18当量を、上記のように(HSの除去のためのカセイトラップを含めて)備え付けた3Lのフラスコに充填する。この混合物を30分間にわたって40℃まで加熱し、次いで、MoO(68.2g、0.47当量)および水(30g)を、攪拌しながら添加する。この反応混合物を、65℃まで加熱する。加熱を止め、そして二硫化炭素(99.2g、1.3当量)を、この混合物に、15分間にわたって滴下する。次いで、この混合物を攪拌し、そして85℃までゆっくりと加熱し、そしてこの温度で24時間維持する。この反応混合物を、1時間にわたって、145℃/1.3kPa(10mmHg)まで減圧ストリップする。その残渣を100℃まで冷却する。この残渣に、111.3gのC16〜C19のαオレフィンを攪拌しながら添加する。この反応混合物を125℃まで加熱し、そして6時間攪拌し、次いで、1時間にわたって、125℃/53kPa(400mmHg)まで減圧ストリップする。濾過助剤に通して濾過したその残渣が、生成物である。
【0030】
(実施例B)
ポリエチレンアミンボトムスを当量のテトラエチレンペンタミンで置き換えること以外は、実質的に実施例Aを繰り返す。
【0031】
最終潤滑剤組成物中のモリブデン塩の量は、この組成物に対して50〜4000重量ppm、または50〜3000重量ppm、または50〜2000重量ppmのMoを提供するために適切な量である。他の量は、100〜1500重量部、125〜1300重量部、140〜500重量部、または150〜350重量ppmを提供する。これらのレベルのMoを提供するためのモリブデン化合物の量は、もちろん、その化合物の特定の本質に依存する。代表的に、この塩の量は、100部の基油あたり0.025〜1重量部、より具体的には、0.05〜0.75重量部、0.062〜0.65重量部、0.07〜0.25重量部、または0.75〜0.38重量部であり得る。濃縮物中のその量は、例えば、0.5〜10重量部に増加する。
【0032】
本発明の他の成分は、ポリオールおよび脂肪族カルボン酸(代表的に、12〜24個の炭素原子を含む)のモノエステル(または部分エステル)である。
【0033】
ポリオールとしては、ジオール、トリオール、およびより大きい数のアルコール性OH基を有するアルコールが挙げられる。多価アルコールとしては、エチレングリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、およびテトラエチレングリコールが挙げられる);プロピレングリコール(ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、およびテトラプロピレングリコールが挙げられる);グリセロール;ブタンジオール;ヘキサンジオール;ソルビトール;アラビトール;マンニトール;スクロース;フルクトース;グルコース;シクロヘキサンジオール;エリトリトール;およびペンタエリトリトール(ジペンタエリトリトールおよびトリペンタエリトリトールが挙げられる);が挙げられる;好ましくは、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセロール、ソルビトール、ペンタエリトリトールおよびジペンタエリトリトールである。
【0034】
エステルを形成する脂肪族カルボン酸は、12〜24個の炭素原子を含む酸である。このような酸は、以下の一般式によって特徴付けられ得る:
−COOH
ここで、Rは、ヒドロカルビル基であり、このヒドロカルビル基は、直鎖ヒドロカルビル基、分枝鎖ヒドロカルビル基、または環含有ヒドロカルビル基、あるいはこれらの混合物であり得る。12〜24個の炭素原子(例えば、14〜20個、または16〜18個の炭素原子)を含む直鎖ヒドロカルビル基が好ましい。このような酸は、より多いかまたはより少ない炭素原子を有する酸と組み合わせてもまた、使用され得る。
【0035】
一般に、酸R−COOHは、モノカルボン酸である。なぜなら、ポリカルボン酸は、反応条件および反応物の量が注意深く調節されない場合、ポリマー生成物を形成する傾向があるからである。しかし、モノカルボン酸と少量のジカルボン酸または酸無水物の混合物は、エステルを調製する際に使用され得る。カルボン酸の例としては、ドデカン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ベヘン酸、およびオレイン酸が挙げられる。
【0036】
カルボン酸エステルは、少なくとも1つのカルボン酸(またはその反応等価物(例えば、エステル、ハロゲン化物、もしくは無水物))と、少なくとも1つの上記ポリヒドロキシ化合物との非常に周知の反応によって、調製される。
【0037】
本発明において用いられるエステルは、特に、このようなポリオールおよびこのようなカルボン酸のモノエステルである。好ましいエステルは、グリセロールモノオレエートである。グリセロールモノオレエートは、他のこのような物質を用いた場合と同様に、その市販グレードにおいて、グリセロール、オレイン酸、他の長鎖酸、グリセロールジオレエート、およびグリセロールトリオレエートのような物質を含む混合物であることが理解されるべきである。商業的物質は、約60±5重量パーセントの化学種「グリセロールモノオレエート」を、35±5パーセントの二オレイン酸グリセロールおよび約5パーセント未満の三オレイン酸エステルおよびオレイン酸とともに含むと考えられる。下記に記載される、モノエステルの量は、任意のこのような混合物中に存在する、実際の正確な量のポリオールモノエステルに基づいて算出される。同様の物質は、名称UNIFLEX 1803TMの下で、Arizona Chemicalから入手可能である。
【0038】
本発明の組成物中のポリオールエステルの量は、代表的に、潤滑粘度の油100部あたり0.03部〜0.2部である。代替的な量は、油100部あたり、0.05〜1.0、または0.7〜0.75、または0.1〜0.3、または約0.15部である。濃縮物中のその量は、対応して増加する(例えば、0.3〜10部)。
【0039】
本発明の別の成分は、12〜24個の炭素原子を含むホウ酸化エポキシドである。この物質は、あるいは、12〜24個の炭素原子を含むビシナルジオールのホウ酸エステルとして記載され得る。このような物質は、以下の構造によって表され得る:
【0040】
【化1】

ここで、R、R、R、およびRの各々は、独立して、水素もしくは脂肪族ラジカルであるか、またはこれらのうちの任意の2つは、これらが結合する炭素原子と一緒になって、環状ラジカルを形成する。好ましくは、R基のうちの少なくとも1つは、少なくとも8個または少なくとも10個の炭素原子を含む、アルキル基である。1つの実施形態では、R基のうちの1つはこのようなアルキル基であり、残りのR基は水素である。ホウ酸化エポキシドは、米国特許第4,584,115号に詳細に記載される。ホウ酸化エポキシドは、一般に、エポキシドを、ホウ素源(例えば、ホウ酸または三酸化ホウ素(boron trioxide))と反応させることによって調製される。ホウ酸化エポキシドは、それ自体はエポキシドではないが、エポキシドの反応生成物を含む開環状ホウ素である。適切なエポキシドとしては、C4−l6エポキシドまたはC14−18エポキシドまたはC16−18エポキシドの市販の混合物である。このような混合物は、Elf−AtochemまたはUnion Carbideから購入され得、そしてこれらは、公知の方法によって対応するオレフィンから調製され得る。精製されたエポキシ化合物(例えば、1,2−エポキシヘキサデカン)は、Aldrich Chemicalsから購入され得る。ホウ酸化化合物は、ホウ素化合物とエポキシドとをブレンドし、そして所望の反応が生じるまで、これらを適切な温度(代表的には80℃〜250℃)で加熱することにより調製される。不活性液体(例えば、トルエン、キシレンまたはジメチルホルムアミド)は、反応媒体として用いられ得る。水が形成され、反応の間に代表的には蒸留される。アルカリ試薬は、反応を触媒するために用いられ得る。好ましいホウ酸化エポキシドは、主に16炭素オレフィンのホウ酸化エポキシドである。
【0041】
ホウ酸エステルの量は代表的に、ホウ素が、組成物に対して、30〜2000重量ppmであるが、あるいは、40〜1500ppm、50〜1200ppm、または60〜800ppmである。別に表現されると、この量は、この組成物の0.05〜2.0重量部、あるいは、0.1〜1.75パーセント、0.2〜1.5パーセント、0.1〜1.2パーセント、または約1パーセントであり得る。濃縮物中でのその量は、例えば、0.5部〜20部まで対応して増加する。
【0042】
個々にまた存在し得る(または存在しなくてもよい)さらなる物質としては、潤滑剤処方物(例えば、分散剤、高塩基性清浄剤、ジアルキルジチオホスフェートの金属塩、硫化油、および他のホウ素化合物(上記の12〜24個の炭素原子を含むビシナルジオールのホウ酸エステル以外のもの)中に代表的に見出される物質が挙げられる。
【0043】
分散剤は、潤滑剤の分野で周知であり、そして主に、「無灰(ashless)」分散剤と時々言われる分散剤を含む。なぜなら、(潤滑剤組成物への混合前に)分散剤は、灰形成金属を含まず、そしてそれらは、通常、潤滑剤に添加される場合にもいかなる灰形成金属にも貢献しないからである。分散剤は、比較的高分子量の炭化水素鎖に連結される極性基により、特徴付けられる。
【0044】
分散剤の一つのクラスは、マンニッヒ(Mannich)塩基である。それらは、より高分子量の、アルキル置換されたフェノール、アルキレンポリアミド、およびアルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド)の縮合により形成される物質である。
【0045】
分散剤の別のクラスは、高分子量エステルである。これらの物質は、これらが、ヒドロカルビルアシル化剤と多価脂肪酸アルコール(例えば、グリセロール、ペンタエリスリトールまたはソルビトール)との反応によって調製されたと見られ得ること以外は、上記のマンニッヒ分散剤または以下のスクシンイミドと類似している。
【0046】
他の分散剤としては、ポリマー分散添加剤が挙げられる。これは、一般に、ポリマーに分散特性を付与する極性官能基を含む、炭化水素に基づくポリマーである。
【0047】
好ましいクラスの分散剤は、カルボン酸分散剤である。カルボン酸分散剤としては、コハク酸に基づく分散剤が挙げられ、この分散剤は、ヒドロカルビル置換されたコハク酸アシル化剤と、有機ヒドロキシ化合物もしくは、好ましくは、窒素原子に連結された少なくとも一つの水素を含むアミンとの反応生成物、または上記ヒドロキシ化合物とアミンとの混合物である。用語「コハク酸アシル化剤」とは、炭化水素置換された、コハク酸もしくはコハク酸生成化合物をいう(この用語はまた、酸自体を包含する)。このような物質としては、代表的に、ヒドロカルビル置換されたコハク酸無水物、(半エステルを含む)エステルおよびハライドが挙げられる。
【0048】
コハク酸に基づく分散剤(代表的には、スクシンイミド分散剤として公知)は、代表的に、以下のような構造を含め、広範な種々の化学構造を有する:
【0049】
【化2】

上記の構造では、各Rは、独立して、ヒドロカルビル基(好ましくは、500または700〜10,000の数平均分子量を有するポリオレフィン由来基)である。代表的に、このヒドロカルビル基は、アルキル基であり、頻繁に、500または700〜5000(好ましくは、1500または2000〜5000)の分子量を有するポリイソブチル基である。Rは、アルケニル基(通常、エチレニル(C)基である。このような分子は、通常、アルケニルアシル化剤とポリアミンとの反応に由来し、そして2つの実体の間では、広範な種々の連結が可能である。
【0050】
コハク酸アシル化剤と反応してカルボン酸分散剤組成物を形成するアミンは、モノアミンまたはポリアミンであり得、そして通常、それらの構造内での、少なくとも1つのH−N<基(すなわち、少なくとも1つの一級アミノ(すなわち、HN−)または二級アミンノ(すなわち、H−N<)基)の存在によって特徴付けられる。モノアミンの例としては、エチルアミン、ジエチルアミン、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、アリルアミン、イソブチルアミン、ココアミン(cocoamine)、ステアリルアミン、ラウリルアミン、メチルラウリルアミン、オレイル−アミン、N−メチル−オクチルアミン、ドデシルアミン、およびオクタデシルアミンが挙げられる。ポリアミンの例としては、以下が挙げられる:アルキレンポリアミン(例えば、エチレンジアミン、トリエチレンテトラアミン、プロピレンジアミン、デカメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ジ(ヘプタメチレン)トリアミン、トリプロピレンテトラアミン、テトラエチレンペントアミン、トリメチレンジアミン、ペンタエチレンヘキサアミン、ジ(−トリメチレン)トリアミン。より高度の均質性(例えば、上記に例示したアルキレンアミンのうちの2以上を同様に縮合することによって得られる)が有用である。テトラエチレンペントアミンは、特に有用である。窒素原子にいてヒドロキシアルキル置換アルキレンアミン(すなわち、1以上のヒドロキシアルキル置換基を有するアルキレンアミン)は同様に有用である。
【0051】
スクシンイミド分散剤は、米国特許4,234,435および米国特許3,172,892に、より十分に記載される。
【0052】
この分散剤は、ホウ酸化物質であり得る。ホウ酸化分散剤は、周知の物質であり、ホウ酸化剤(例えば、ホウ酸)での処理によって調製され得る。代表的な条件としては、分散剤をホウ酸とともに100〜150℃にて加熱することが挙げられる。この分散剤はまた、無水マレイン酸との反応によって処理され得る。
【0053】
完全に処方された潤滑剤中の分散剤の量は、存在する場合、代表的に、0.5〜10重量パーセント、好ましくは1〜8重量パーセント、より好ましくは3〜7重量パーセントである。濃縮物中のその濃度は、例えば、5〜80重量パーセントまで対応して増加する。
【0054】
清浄剤は一般に、有機酸の塩であり、これはしばしば高塩基性である。有機酸の金属高塩基性塩は、当業者に広く知られており、一般に、存在する金属の量が化学量論量を超える金属塩を含む。このような塩は、100%を超える変換レベルを有するといわれる(すなわち、これらは、その酸をその「正」塩または「中性」塩に変換するために必要とされる理論量の100%を超えた金属を含む)。これらは、通常、高塩基性(overbased)、過剰塩基性(hyperbased)または超塩基性(superbased)の塩といわれ、通常、有機硫黄酸、有機リン酸、カルボン酸、フェノールまたはこれらのいずれか2つ以上の混合物の塩である。当業者が理解するように、このような高塩基性塩の混合物もまた用いられ得る。
【0055】
用語「金属比」とは、2つの反応物の公知の化学反応性および化学量論に従って、高塩基性にされるべき有機酸と塩基性の反応性金属化合物との間での反応で生じると推定される、高塩基性塩中の金属の化学当量の合計の、この塩中の金属の化学当量に対する比を称する。従って、正塩または中性塩において金属比は1であり、高塩基性塩において、金属比は1より大きい。本発明において成分(A)として用いる高塩基性塩は、通常、少なくとも3:1の金属比を有する。代表的に、これらは、少なくとも12:1の比を有する。通常、これらは、40:1を超えない金属比を有する。代表的に、12:1〜20:1の比を有する塩が用いられる。
【0056】
高塩基性組成物は周知であり、そして種々の周知の有機酸物質(スルホン酸、カルボン酸(置換サリチル酸が挙げられる)、フェノール、ホスホン酸およびこれらのうちの任意の2以上の組み合わせが挙げられる)に基づいて調製され得る。これらを高塩基性にするためのこれらの物質および方法は、多数の米国特許(2,501,731;2,616,905;2,616,911;2,616,925;2,777,874;3,256,186;3,384,585;3,365,396;3,320,162;3,318,809;3,488,284;および3,629,109が挙げられる)から周知であり、さらに詳細に記載する必要はない。
【0057】
好ましい高塩基性物質としては、以下が挙げられる:アルキル化フェノールの反応に由来した高塩基性フェネート;アルキル化アリールスルホン酸由来の高塩基性スルホネート;また、脂肪酸由来の高塩基性カルボキシレート;高塩基性アルキル置換サリチレート;米国特許6,310,009に記載される通りの高塩基性サリゲニン誘導体;および米国特許6,200,936およびPCT公開WO 01/56968に記載される通りの高塩基性サリキサレート(salixarate)。
【0058】
完全に処方された潤滑剤中の清浄剤成分の量は、存在する場合、代表的には、0.5〜10重量パーセント、好ましくは1〜7重量パーセント、より好ましくは1.2〜4重量パーセントである。濃縮物中でのその濃度は、例えば、5〜65重量パーセントまで、対応して増加する。
【0059】
ジアルキルジチオホスフェートの金属塩は、代表的に、以下の式の物質である:
【0060】
【化3】

ここで、RおよびRは、独立して、3〜30個の炭素原子を含むヒドロカルビル基である。これらは、五硫化リンとアルコールまたはフェノールとの反応によって以下の式に対応するO,O−ジヒドロカルビルホスホロジチオン酸を形成することによって容易に入手可能である周知の物質である。
【0061】
【化4】

nの価数を有する金属Mは、一般に、アルミニウム、鉛、スズ、マンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛または銅であり、最も好ましくは亜鉛である。従って、この塩基性金属化合物は、好ましくは、酸化亜鉛であり、得られる金属化合物は、以下の式によって表される:
【0062】
【化5】

基およびR基は、独立してヒドロカルビル基であり、このヒドロカルビル基は、好ましくは、アセチレン性不飽和を含まず、通常、エチレン性不飽和を含まない。これらは、代表的に、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基またはアルカリール基であり、3〜20個の炭素原子、好ましくは3〜16個の炭素原子、最も好ましくは13個までの炭素原子(例えば、3〜12個の炭素原子)を有する。反応してR基およびR基を提供するアルコールは、1以上の一級アルコール、1以上の二級アルコール、二級アルコールと一級アルコールとの混合物であり得る。2種の二級アルコール(例えば、イソプロパノールおよび4−メチル−2−ペンタノール)の混合物がしばしば望ましい。
【0063】
完全に処方された潤滑剤中の金属ジアルキルジチオホスホネートの量は、存在する場合、代表的には、0.1〜5重量パーセント、好ましくは0.3〜2重量パーセント、より好ましくは0.5〜1.5重量パーセントである。濃縮物中でのその濃度は、例えば、5〜60重量パーセントまで対応して増加する。
【0064】
硫化油としては、硫化植物油、硫化動物脂(例えば、硫化ラード油)および硫化オレフィン(例えば、C16−18オレフィン)、およびこのような物質の混合物が挙げられる。硫化油は、それらの抗酸化特性、抗摩耗特性、摩擦調整特性および優れた圧力保護特性から有用である。これらは、(例えば、適切な油、脂肪酸、オレフィンまたはそれらの混合物を、水酸化ナトリウムおよびリン酸のような物質の存在下で、イオウおよび/または硫化ナトリウムもしくは水硫化ナトリウムで処理することにより)周知の方法によって調製され得る。
【0065】
他の任意のホウ素化合物としては、PCT広報WO02/062930に開示されるホウ素化合物が挙げられる。このようなホウ素化合物としては、以下の一般式のいずれかのホウ酸化エステルが挙げられる:
【0066】
【化6】

ここで、各Rは、独立して水素もしくは好ましくは有機基(例えば、ヒドロカルビル基またはアルキル基)であるか、または任意の2つの隣接したR基が一緒になって環状環を形成し得る。
【0067】
このようなホウ素化合物の例は、ホウ酸2−エチルヘキシルである。他の例としては、式B(OC11またはB(OCによって表される物質が挙げられる。他の例は、Crompton Corporationから商品名LA−2607で入手可能なフェノール性ホウ酸である。
【0068】
他の物質としては、消泡剤、酸化防止剤(例えば、立体妨害を受けたフェノール、アルキル化ジフェニルアミン)、抗摩耗剤、高圧剤(extreme pressure agent)、流動点降下剤、錆止め剤、腐食防止剤、摩擦調節剤、および酸化防止剤が挙げられる。(酸化防止剤としては、妨害を受けたフェノール、エステルを含有する妨害を受けたフェノール(米国特許6,559,105に開示される通り)、アルキル化ジフェニルアミン、およびイオウ源とDiels−Alder付加物との反応生成物(Diels−Alder付加物は、次いで、カルボン酸エステル基を有するジエノフィルからから調製され得る)が挙げられる。)潤滑剤において用いられるこれらの物質および他の物質は、市販されており、そしてこれらの多くは、C.V.SmalheerおよびR.Kennedy Smith,「潤滑剤Additives」,Lezius−Hiles Co.,Cleveland,Ohio,1967,特に1−12頁に、より詳細に記載される。
【0069】
本明細書中で使用される場合、用語「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」は、その通常の意味で用いられる。通常の意味は、当業者に周知である。特に、これは、この分子の残部に直接結合した炭素原子を有し、かつ主に炭化水素の特徴を有する、基をいう。ヒドロカルビル基の例としては、以下が挙げられる:
炭化水素置換基、すなわち、脂肪族(例えば、アルキルもしくはアルケニル)置換基、脂環式(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、ならびに芳香族置換された芳香族置換基、脂肪族置換された芳香族置換基、および脂環式置換された芳香族置換基、ならびに分子の別の部分を通して環が完成される(例えば、二つの置換基が一緒になって環を形成する)環状置換基;
置換された炭化水素置換基、すなわち、本発明に関して、置換基の炭化水素としての性質を主に変化させない非炭化水素基(例えば、ハロ(特に、クロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、およびスルホキシ)を含む置換基;
ヘテロ置換基、すなわち、主に炭化水素の特徴を有するが、本発明に関して、通常は炭素原子から構成される環もしくは鎖において炭素以外を含む置換基。ヘテロ原子としては、硫黄、酸素、窒素が挙げられ、そしてピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルのような置換基を包含する。一般に、二つ以下(好ましくは一つ以下)の非炭化水素置換基が、ヒドロカルビル基において10炭素原子ごとに存在する;代表的には、ヒドロカルビル基において、非炭化水素置換基は存在しない。
【0070】
上記の物質のうちのいくつかは、最終処方物中で相互作用し得、その結果、最終処方物の成分は、最初に添加された成分とは異なり得ることが公知である。例えば、(例えば、清浄剤の)金属イオンは、他の分子の他の酸性部位に移動し得る。このようにして形成された生成物は、その意図された用途において本発明の組成物を用いる際に形成される生成物を含め、容易な記載が可能でないかもしれない。それにもかかわらず、全てのこのような改変および反応生成物は、本発明の範囲内に含まれる;本発明は、上記の成分を混合することによって調製される組成物を包含する。 実施例1.A レーシング油処方物を、以下の成分を混合することにより調製する:
90(重量)部の4mm/s(4cSt)合成ポリαオレフィン油;
10部の合成エステル油(EmeryTM2969B)
−一緒になってOW−10基油を形成する;および−
0.85部のジチオカルバミン酸モリブデン(ジ−2−エチルヘキシルアミンに基づく、350ppmのMoをこの組成物に付与するため(Adeka SakuralubeTM100、商業的に存在する任意の希釈剤を含む商業的物質);
0.25部のグリセロールモノオレエート(上記の通りの商業グレード);
1.0部のホウ酸化C16−18エポキシド(ニート);
1.0部のエステルおよびイミド分散剤(45パーセントの油を含む);
1.0部のスクシンイミド分散剤(53パーセントの油を含む);
1.0部の高塩基性アルキルサリチル酸カルシウム清浄剤(165 TBN(40%の油を含む));
0.6部のジアルキルジチオリン酸亜鉛(9パーセントの油を含む);
1.5部の硫化ラード油組成物(油の混合物を含む)。
【0071】
実施例2.高速車両用の潤滑組成物を、以下の成分を混合することによって調製する:
100重量部の鉱油ベースストック(粘度調整剤を含む);
0.85部のジチオカルバミン酸モリブデン(ジ−2−エチルヘキシルアミンに基づく、この組成物に対して350ppmのMoを付与するための)(上記の通り);
0.25部のグリセロールモノオレエート(上記の通りの商業グレード);
1.0部のホウ酸化C16−18エポキシド(ニート);
0.25〜3.0部のスクシンイミド分散剤(油を含まないものに基づく);
0.3〜1.0部の亜鉛ジアルキルジチオホスフェート(油を含まないものに基づく);
0.4〜3.8部の酸化防止剤;
0.7〜2.0部のカルシウム高塩基性清浄剤(油を含まないものに基づく);
0〜0.4部の脂肪エステル摩擦調整剤;
0〜3部のホウ酸トリ−2−エチルヘキシル;
40〜100ppmのシリコーン消泡剤および
付随する希釈油。
【0072】
実施例3.高速車両用代替的処方物を、以下を用いたこと以外は、実施例2に記載の通りに調製する:
0.25重量部のジチオカルバミン酸モリブデン;
0.075部のグリセロールモノオレエート;
0.3部のホウ酸化エポキシド。
【0073】
実施例4〜7。3つの参照潤滑剤(比較例)および本発明の1つの潤滑剤を調製する。これらの潤滑剤は、以下の表に示す組成を有する。これらの潤滑剤を、この表に報告して以下にさらに記載した通りの種々の性能試験に供する。量を、100部の基油あたりの部で報告し、そして活性成分(油を含まない)ものを基礎として表す。
【0074】
【表1】

順序IVAエンジン弁列磨耗試験は、1994年の日産モデルDA24Eエンジンにおいて、潤滑剤のカム軸ローブ磨耗低減能力を評価する、燃焼エンジン−ダイナモメーター潤滑剤試験である。2段階(50分間の空回り速度段階および10分間の1500r.p.m.段階)を100サイクル行った後、カムローブの7つの位置での磨耗を測定し、そして平均化する。上記の表における結果(ベースライン流体の磨耗%として表す)は、本発明の実施例7の潤滑剤が、強い通過を示すことを示す。
【0075】
順序VIB燃料試験(ASTM D 6837)は、乗用車の燃料経済性に対するエンジン油の影響を測定する。この試験を、ダイナモメーター試験スタンド上で4.6Lの火花点火エンジンを用いて実施する。この試験は、5速/ロード/温度条件下で実験室エンジンブレーキ燃料消費率を測定する工程を含んでいる。試験結果を、ベースライン較正と比較した、計量した燃料消費における変化パーセントとして表す。この結果は、本発明の実施例7の潤滑剤について優れた燃料経済性を示す。
【0076】
SRV試験は、100℃と120℃との間での潤滑剤の摩擦係数を測定して報告する、ディスク上での往復シリンダー試験である。この潤滑剤は、1mmの往復ストロークで400Nの負荷を適用しながら数分間加熱される。この結果は、本発明の実施例7の潤滑剤についての非常に低い摩擦係数を示す。
【0077】
上記で言及した文献の各々は、本明細書中に参考として援用される。実施例において、または他に明らかに示した場合を除いて、物質、反応条件、分子量、炭素原子の数などを指定する量のこの記載における全ての数値の量は、用語「約」によって修飾されると理解されるべきである。他に示されない限り、本明細書中で言及される各化学物質または組成物は、これは、商業グレードの物の中に通常存在すると理解される、異性体、副生成物、誘導体および他のこのような物質を含み得る、商業グレードの物質であると解釈されるべきである。しかし、各化学物質成分の量は、任意の溶媒の油も希釈剤の油も除いて表される。これらは、そうでないことが示されない限り、慣例として、商業的物質中に存在し得る。本明細書中に記載される量、範囲および比の上限および下限が、独立して組み合わされ得ることが理解されるべきである。同様に、本発明の各要素についての範囲および量は、他の要素のいずれかについて、範囲または量とともに一緒に用いられ得る。本明細書中で用いられる場合、発現「本質的にからなる」は、考慮している組成物の基本的性質および新規の性質に重大に影響を与えない物質を含むことを可能にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑組成物であって、以下:
(a)潤滑粘度の油;
(b)モリブデン塩;
(c)(i)ポリオールおよび(ii)約12〜約24個の炭素原子を含む脂肪族カルボン酸のモノエステル;および
(d)12〜24個の炭素原子を含むホウ酸化エポキシド、
を含有する、組成物。
【請求項2】
前記潤滑粘度の油が、天然油組成物または合成油組成物であって、必要に応じて、粘度指数調整剤を含有し、0W−10、0W−20、0W−30、5W−20、5W−30の等級のSAEマルチグレード粘度、または20もしくは30の範囲のSAEモノグレード粘度を有するように選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記潤滑粘度の油が、APIグレードII、III、IV、またはVの油である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記潤滑粘度の油が、合成油を含有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記合成油が、ポリαオレフィンおよび合成エステルのブレンドである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記モリブデン塩が、ジヒドロカルビルジチオカルバミン酸モリブデンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記モリブデン塩が、(a)約8〜約34個の炭素原子を有するカルボン酸またはその反応等価物を、アルキレンポリアミンと反応させた生成物;ならびに(b)(a)の生成物を、任意の順序で、(i)モリブデン化合物および(ii)二硫化炭素と反応させて、ジチオカルバミン酸モリブデンを形成した生成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記モリブデン塩の量が、前記組成物に対して約50〜約4000重量ppmのMoを提供するために適切な量である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記モノエステルが、グリセロールモノオレエートを含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記モノエステルの量が、前記潤滑粘度の油100部あたり、約0.03〜約2.0重量部である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記ホウ酸化エポキシドが、16〜18個の炭素原子を含むビシナルジオールのホウ酸エステルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
(d)のホウ酸エステルが、前記組成物に対して、約30〜約2000重量ppmのホウ素を提供する量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも1つの分散剤、少なくとも1つのジアルキルジチオホスフェート金属塩、少なくとも1つの硫化油、および少なくとも1つの高塩基性清浄剤をさらに含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
(d)のホウ素含有化合物以外の、さらなるホウ素含有化合物をさらに含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1に記載の成分を混合することによって調製される、組成物。
【請求項16】
内燃機関を潤滑するための方法であって、該内燃機関に、請求項1に記載の組成物を供給する工程を包含する、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑組成物であって、以下:
(a)潤滑粘度の油;
(b)モリブデン塩;
(c)(i)ポリオールおよび(ii)約12〜約24個の炭素原子を含む脂肪族カルボン酸のモノエステル;および
(d)12〜24個の炭素原子を含むホウ酸化エポキシド、
を含有する、組成物。
【請求項2】
滑粘度の油が、ポリαオレフィンおよび合成エステルのブレンドを含有する合成油を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記モリブデン塩が、ジヒドロカルビルジチオカルバミン酸モリブデンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記モリブデン塩の量が、前記組成物に対して約50〜約4000重量ppmのMoを提供するために適切な量である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記モノエステルが、グリセロールモノオレエートを含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記モノエステルの量が、前記潤滑粘度の油100部あたり、0.03〜約2.0重量部である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ホウ酸化エポキシド成分(d)が、ホウ酸化C14〜16エポキシド、ホウ酸化C14〜18エポキシド、ホウ酸化C16〜18エポキシド、および主にC16のホウ酸化エポキシド、からなる群より選択される少なくとも1種のホウ酸化エポキシドから本質的になる、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
(d)のホウ酸エポキシドが、前記組成物に対して、約30〜約2000重量ppmのホウ素を提供する量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも1つの分散剤、少なくとも1つのジアルキルジチオホスフェート金属塩、少なくとも1つの硫化油、および少なくとも1つの高塩基性清浄剤をさらに含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
(d)のホウ素含有化合物以外の、さらなるホウ素含有化合物をさらに含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
内燃機関を潤滑するための方法であって、該内燃機関に、請求項1に記載の組成物を供給する工程を包含する、方法。
【請求項12】
内燃機関を潤滑して、改善された燃料節約および電力出力のうちの少なくとも1つを該機関に対して付与するための潤滑組成物におけるモリブデン塩の使用であって、該潤滑組成物が、さらに、以下:
(a)潤滑粘度の油;
(c)(i)ポリオールおよび(ii)12〜約24個の炭素原子を含む脂肪族カルボン酸のモノエステル;および
(d)12〜24個の炭素原子を含むホウ酸化エポキシド、
を含有する、使用。

【公表番号】特表2006−524263(P2006−524263A)
【公表日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−559243(P2004−559243)
【出願日】平成15年12月2日(2003.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2003/038385
【国際公開番号】WO2004/053033
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】