説明

改変された特異性を有するプロテアーゼを作製する方法およびスクリーニングする方法

【課題】基質配列を切断する酵素であるプロテアーゼを作製する方法及びスクリーニングする方法を提供する。
【解決手段】プロテアーゼを同定する方法は、プロテアーゼ配列のライブラリーを生成する工程からなり、該ライブラリーの各メンバーが、野生型骨格配列に対してN個の変異を有するプロテアーゼ骨格を有する工程;該基質配列を切断する際における該ライブラリーの各メンバーの活性を測定する工程;および各メンバーの該活性を該ライブラリーの平均活性に対して比較する工程であって、それによりどのプロテアーゼが最も高い切断活性を有するかを同定する、工程を包含する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
酵素は、広範な適用において使用される。重要な群の酵素は、プロテアーゼであり、これはタンパク質を切断する。多くのプロテアーゼは、規定の基質配列で特異的に標的タンパク質を切断する。プロテアーゼによる特異的切断のこの傾向は、基質(または基質配列)特異性と称される。多様なファミリーのタンパク質分解酵素の異なるメンバーと関連した基質特異性は、部分的には、結合ドメイン内の異なるセットのアミノ酸(基質認識および触媒について各酵素ファミリーによって使用される)に帰せられ得る。変異体酵素を操作する合理的なアプローチが、いくつかのプロテアーゼについて成功している。サブチリシンの保存されたアミノ酸残基(グリシン166)(これは、結合割れ目内に留まると結晶学的データから知られている)が、いくつかの異なるアミノ酸残基の1つに変更された。得られた酵素誘導体は、疎水性およびアミノ酸サイズの増大と共に、基質に対する特異性において劇的な変化を示した(Wellsら,Cold Spring Harb.Symp.Quant.Biol.,(1987)52:647−52)。細菌によりコードされた別のセリンエンドペプチダーゼであるα−溶解性プロテアーゼはまた、192位のメチオニンをアラニンに変更することにより合理的に変化された。酵素の活性部位内での得られた変異は、酵素活性部位の構造可撓性を増大したようである。得られたα−溶解性プロテアーゼ誘導体は、より大きなより疎水性の標的に対してより広い基質特異性を有する(Boneら,Biochemistry,1991,(43):10388−98)。
【0002】
セリンプロテアーゼは、広範に研究されたファミリーの関連エンドペプチダーゼであり、それらのいわゆる触媒性三つ組Asp His Serによって特徴付けられる。類似タンパク質のファミリー内では、保存された一次構造、二次構造、および三次構造の領域が、活性部位(1つまたは複数)に関与する残基、ならびに活性に重要な他の残基を含む傾向がある。例えば、触媒性三つ組のメンバーは、セリンプロテアーゼの一次構造(アミノ酸配列)ではかなり離れているが、これらの残基は、これらのタンパク質の三次構造(または折り畳み)によって結合形成距離内にもたらされる。
【0003】
セリンプロテアーゼは、基質配列認識特性において顕著に異なる:いくつかは非常に特異的であり(すなわち、血液凝固および免疫補体系に関与するプロテアーゼ);いくつかは部分的にのみ特異的であり(すなわち、哺乳動物消化性プロテアーゼトリプシンおよびキモトリプシン);そしてスブチリシン(細菌性プロテアーゼ)のような他のものは、完全に非特異的である。特異性におけるこれらの差異にも関わらず、セリンプロテアーゼの触媒性機構は十分に保存され、これは、5つの水素結合を有する活性部位中に切断され易いペプチドを正確に配置する基質配列結合部位からなる。ペプチドが一旦結合されれば、触媒性三つ組の3つの不変残基間の水素結合網が、ペプチド結合の加水分解を触媒する。この大きなファミリーのプロテアーゼは、それらの触媒機構が高度に保存されているに関わらず、それらの配列特異性が広く異なり得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Wellsら,Cold Spring Harb.Symp.Quant.Biol.,(1987)52:647−52
【非特許文献2】Boneら,Biochemistry,1991,(43):10388−98
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、疾患に関与することが知られるタンパク質を切断するプロテアーゼの生成およびスクリーニングに関する。得られたタンパク質は、インビボ治療のための薬剤として使用され得る。
【0006】
本発明は、広く、それらの基質配列特異性を変化させるプロテアーゼの改変に関し、それにより、改変プロテアーゼは、病状と関係するか、または病状を引き起こす標的タンパク質を切断する。本発明の1つの実施形態では、この改変プロテアーゼはセリンプロテアーゼである。本発明の別の実施形態では、この改変プロテアーゼはシステインプロテアーゼである。
【0007】
本発明の1つの実施形態は、所望の基質配列で所望の標的タンパク質を切断する改変プロテアーゼについてスクリーニングするために使用されるプロテアーゼ配列のライブラリーを生成することを包含する。この実施形態の1つの局面では、ライブラリーの各メンバーは、ライブラリーの各メンバーに対してなされる、ある数の変異を有するプロテアーゼ骨格である。プロテアーゼ骨格は、公知のプロテアーゼに対して同じまたは類似の配列を有する。1つの実施形態では、この骨格はセリンプロテアーゼである。本発明の別の実施形態では、この骨格はシステインプロテアーゼである。ライブラリーの各メンバーの切断活性は、所望の標的タンパク質からの所望の基質配列を用いて測定される。結果として、所望の基質配列に関して最も高い切断活性を有するプロテアーゼが検出される。
【0008】
この実施形態の別の局面では、プロテアーゼ骨格に対してなされる変異の数は、1、2〜5(例えば、2、3、4、または5)、5〜10(例えば、5、6、7、8、9、または10)、または10〜20(例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20)である。
【0009】
この実施形態の別の局面では、公知のプロテアーゼ骨格は、以下のアミノ酸配列を含み得る:トリプシン、キモトリプシン、サブチリシン(substilisin)、トロンビン、プラスミン、第Xa因子、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、膜型セリンプロテアーゼ−1(MTSP−1)、グランザイムA、グランザイムB、グランザイムM、エラスターゼ、カイメース、パパイン、好中球エラスターゼ、血漿カリクレイン、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子、補体因子セリンプロテアーゼ、ADAMTS13、神経性エンドペプチダーゼ/ネプリライシン(neprilysin)、フューリン(furin)、またはクルザイン(cruzain)。
【0010】
この実施形態の別の局面では、標的タンパク質は、病状と関係しており、例えば、標的タンパク質は、病状を引き起こす。病状は、例えば、慢性関節リウマチ、敗血症、癌、後天性免疫不全症候群、気道感染症、インフルエンザ、心血管疾患、または喘息であり得る。
【0011】
この実施形態の別の局面では、検出されたプロテアーゼの活性は、ライブラリーの平均活性よりも少なくとも10倍、100倍、または1000倍増大されている。
【0012】
本発明の別の実施形態は、改変プロテアーゼが最も効率的に切断するのはどの基質配列(1つまたは複数)であるかを検出するために、改変プロテアーゼをスクリーニングするために使用される基質配列のライブラリーの生成を包含する。ライブラリーのメンバーは、ランダム化されたアミノ酸で構成され、そしてプロテアーゼによるライブラリーの各メンバーの切断活性が測定される。プロテアーゼにより最も効率的に切断される基質配列が検出される。
【0013】
この実施形態の別の局面では、ライブラリー中の基質配列は、4、5、6、7、8、9、10、11、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20アミノ酸長である。
【0014】
この実施形態の別の局面では、基質配列は、標的タンパク質の一部である。この標的タンパク質は、病状に関与し得る。例えば、標的タンパク質は、病状を引き起こすものである。この実施形態の別の局面では、この病状は、慢性関節リウマチ、敗血症、癌、後天性免疫不全症候群、気道感染症、インフルエンザ、心血管疾患、または喘息である。
【0015】
この実施形態の別の局面では、検出された基質配列の切断の効率は、ライブラリーの平均活性よりも少なくとも10倍、少なくとも100倍、または少なくとも1000倍増大されている。
【0016】
なお別の実施形態では、本発明は、病状を有する患者を処置するための方法を包含する。この方法は、患者に、病状と関係している標的タンパク質を切断するプロテアーゼを投与する工程を包含し、それによりタンパク質の切断は病状を処置する。
【0017】
この実施形態の1つの局面では、病状は、慢性関節リウマチ、敗血症、癌、後天性免疫不全症候群、気道感染症、インフルエンザ、心血管疾患、または喘息であり得る。この実施形態の別の局面では、プロテアーゼはセリンプロテアーゼであり得る。本発明の別の実施形態では、この改変プロテアーゼは、システインプロテアーゼである。この実施形態の別の局面では、標的タンパク質は病状を引き起こす。
【0018】
病状を有する患者(例えば、本発明の方法により処置される患者)は、哺乳動物、またはより特定するとヒトであり得る。
【0019】
実施形態の別の局面では、標的タンパク質は、腫瘍壊死因子、腫瘍壊死因子レセプター、インターロイキン−1、インターロイキン−1レセプター、インターロイキン−2、インターロイキン−2レセプター、インターロイキン−4、インターロイキン−4レセプター、インターロイキン−5、インターロイキン−5レセプター、インターロイキン−12、インターロイキン−12レセプター、インターロイキン−13、インターロイキン−13レセプター、p−セレクチン、p−セレクチン糖タンパク質リガンド、サブスタンスP、ブラジキニン、PSGL、第IX因子、免疫グロブリンE、免疫グロブリンEレセプター、CCR5、CXCR4、糖タンパク質120、糖タンパク質41、CD4、ヘマグルチニン、RSウイルス融合タンパク質、B7、CD28、CD2、CD3、CD4、CD40、血管内皮増殖因子、VEGFレセプター、線維芽細胞増殖因子、内皮増殖因子、EGFレセプター、TGFレセプター、トランスフォーミング増殖因子、Her2、CCR1、CXCR3、CCR2、Src、Akt、Bcl−2、BCR−Abl、グルカゴンシンターゼキナーゼ−3、サイクリン依存性キナーゼ−2(cdk−2)、またはサイクリン依存性キナーゼ−4(cdk−4)であり得る。
【0020】
他に規定されなければ、本明細書中で使用される全ての技術用語および学術用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載された方法および材料と類似または等価な方法および材料が、本発明の実施または試験において使用され得るが、適切な方法および材料が以下に記載される。本明細書中で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体が参考として援用される。相容れない場合、本明細書(定義を含む)は制御する。さらに、この材料、方法、および実施例は、単なる例証であって、限定することは意図されない。
【0021】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、カスパーゼ−3のアミノ酸配列の模式図、およびカスパーゼ−3のアミノ酸配列(配列番号1)を含む表である。
【図2】図2は、I99A/N218AグランザイムBにより切断される不活性化配列に焦点を置いたカスパーゼ−3の構造を示すX線結晶学からのダイアグラムであり、酵素の不活性化配列部位のアミノ酸配列(配列番号2)を示すダイアグラムを共に示す。
【図3】図3Aは、P2、P3、およびP4でのI99A/N219AグランザイムBの基質特異性に対する野生型グランザイムBの基質特異性を示す一連の棒グラフを示す。図3Bは、図3Aにおけるグラフから誘導された速度論データを含む表を示す。
【図4】図4は、野生型グランザイムBの存在下およびI99A/N219AグランザイムBの存在下で、カスパーゼ−3における不活性化配列に対応するペプチドのMALDI質量分析からの一連のグラフを示す。
【図5】図5は、野生型グランザイムBおよびI99A/N219AグランザイムBによるカスパーゼ−3小サブユニットの切断産物についてのバンドを示すSDSPAGEゲルを図示する。
【図6】図6Aは、野生型グランザイムBの存在下およびI99A/N219AグランザイムBの存在下での経時的なカスパーゼ−3活性をプロットするグラフを示す。図6Bは、野生型グランザイムBの存在下およびI99A/N219AグランザイムBの存在下でのカスパーゼ−3の活性のVmaxを示す棒グラフを示す。
【図7】図7Aは、I99A/N218AグランザイムBの存在下でのカスパーゼ−3活性により測定される細胞溶解物におけるアポトーシスをプロットする棒グラフを示す。図7Bは、野生型および濃度を増大させながらI99A/N218AグランザイムBを存在させた場合におけるカスパーゼ−3によって測定される細胞溶解物におけるアポトーシスをプロットする棒グラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を詳細に記載する前に、本明細書中で使用する特定の用語を定義する。
【0024】
用語「対立遺伝子改変体」は、同じ染色体遺伝子座を占める遺伝子の2つ以上の代替形態のいずれかを示す。対立遺伝子変動は、変異から天然に生じ、集団内に表現型多型を生じ得る。遺伝子変異はサイレントであり得る(コードされるポリペプチドにおいて変化なし)か、または変化されたアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードし得る。用語「対立遺伝子改変体」はまた、遺伝子の対立遺伝子改変体によってコードされるタンパク質を示すために、本明細書中で使用される。
【0025】
用語「ポリヌクレオチドの相補体」は、参照配列に比較して相補的な塩基配列を有し、かつ逆の方向を有するポリヌクレオチド分子を示す。例えば、配列5’ATGCACGGG 3’は、5’CCCGTGCAT 3’に対して相補的である。
【0026】
用語「縮重ヌクレオチド配列」は、(ポリペプチドをコードする参照ポリヌクレオチド分子に対して比較して)1つ以上の縮重コドンを含むヌクレオチドの配列を示す。縮重コドンは、ヌクレオチドの異なるトリプレットを含むが、同じアミノ酸残基をコードする(すなわち、GAUおよびGACトリプレットは各々、Aspをコードする)。
【0027】
「DNA構築物」は、天然に見出されない様式で組み合わされ、並列されるDNAのセグメントを含む、一本鎖または二本鎖の線状または環状のDNA分子である。DNA構築物は、人為操作の結果として存在し、操作された分子のクローンおよび他のコピーを含む。
【0028】
「DNAセグメント」は、特定化された属性を有する、より大きなDNA分子の一部分である。例えば、特定化されたポリペプチドをコードするDNAセグメントは、5’から3’への方向に読み取る場合、特定化されたポリペプチドのアミノ酸の配列をコードする、より大きなDNA分子の一部分(例えば、プラスミドまたはプラスミドフラグメント)である。
【0029】
用語「発現ベクター」は、宿主細胞においてその転写を提供するさらなるセグメントに作動可能に連結された、目的のポリペプチドをコードするセグメントを含む、DNA構築物を示す。このようなさらなるセグメントは、プロモーター配列およびターミネーター配列を含み得、そして必要に応じて、1つ以上の複製起点、1つ以上の選択マーカー、エンハンサー、ポリアデニル化シグナルなどを含み得る。発現ベクターは、一般にプラスミドまたはウイルスDNAに由来するか、またはその両方のエレメントを含み得る。
【0030】
用語「単離された」は、ポリヌクレオチド分子に対して適用される場合、そのポリヌクレオチドがその天然の遺伝的環境から取り出され、従って他の外来または望ましくないコード配列を含まず、そして遺伝子操作タンパク質生産系において使用するために適した形態であることを示す。このような単離された分子は、その天然の環境から分離されたものであり、cDNAおよびゲノムクローン、ならびに合成ポリヌクレオチドを含む。本発明の単離されたDNA分子は、天然に存在する5’および3’の非翻訳領域(例えば、プロモーターおよびターミネーター)を含み得る。関連した領域の同定は、当業者に明らかである(例えば、DynanおよびTijan,Nature316:774−78,1985を参照のこと)。タンパク質に適用される場合、用語「単離された」は、タンパク質が、そのネイティブな環境以外の条件において(例えば、血液および動物組織から切り離されて)見出されることを示す。好ましい形態では、単離されたタンパク質は、他のタンパク質(特に動物起源の他のタンパク質)を実質的に含まない。高度に精製された形態(すなわち、少なくとも90%純粋、好ましくは95%よりも純粋、より好ましくは、99%よりも純粋)でタンパク質を提供することが好ましい。
【0031】
用語「作動可能に連結された」は、DNAセグメントに言及する場合、それらセグメントが、それらの意図された目的について協調してそれらが機能するように配置されることを示す。例えば、転写はプロモーターで開始し、コードセグメントを通ってターミネーターまで進行する。
【0032】
用語「オーソログ」は、異なる種からのポリペプチドまたはタンパク質の機能的相対物である、1つの種から得られるポリペプチドまたはタンパク質を示す。オーソログ間の配列差異は、種分化の結果である。
【0033】
用語「ポリヌクレオチド」は、5’から3’末端に読み取られるデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド塩基の一本鎖または二本鎖のポリマーを示す。ポリヌクレオチドは、RNAおよびDNAを含み、そして天然供給源から単離され得るか、インビトロで合成され得るか、または天然分子および合成分子の組み合わせから調製され得る。ポリヌクレオチド分子の長さは、ヌクレオチド(略して「nt」)または塩基対(略して「bp」)によって、本明細書中に示される。用語「ヌクレオチド」は、背景が許す限り一本鎖分子および二本鎖分子の両方について使用される。この用語が二本鎖分子に適用される場合、これは、全長を示すために使用され、そして用語「塩基対」に等価であることが理解される。二本鎖ポリヌクレオチドの2つの鎖は、長さがわずかに異なり得ること、およびそれらの末端は、酵素切断の結果として付着末端にされ得ることが当業者によって認識される;従って、二本鎖ポリヌクレオチド分子内の全てのヌクレオチドが対合しているわけではないこともあり得る。このような非対合末端は、一般に、長さ20ntを超えない。
【0034】
用語「プロモーター」は、RNAポリメラーゼの結合および転写の開始を提供するDNA配列を含む遺伝子の一部分を示す。プロモーター配列は、一般に(しかし常にではない)、遺伝子の5’非コード領域中に見出される。
【0035】
「プロテアーゼ」は、タンパク質中のペプチド結合を切断する酵素である。「プロテアーゼ前駆体」は、一般に別のプロテアーゼによる切断の際に活性になる酵素の相対的に不活性な形態である。
【0036】
用語「分泌シグナル配列」は、より大きなポリペプチドの一成分として、より大きなポリペプチドを、それが合成される細胞の分泌経路に指向させるポリペプチド(「分泌ペプチド」)をコードするDNA配列を示す。より大きなポリペプチドは、一般に、分泌経路を通過する間に、分泌ペプチドを除去するように切断される。
【0037】
用語「基質配列」は、プロテアーゼによる切断について特異的に標的とされる配列を示す。
【0038】
用語「標的タンパク質」は、プロテアーゼによるその基質配列で特異的に切断されるタンパク質を示す。
【0039】
用語「S1−S4」は、基質配列結合ポケットを構成する、プロテアーゼ中の残基をいう。それらは、認識部位N末端からタンパク質分解部位(切断され易い結合)に向かって順に番号付けされている。
【0040】
用語「P1−P4」および「P1’−P4’」は、上記に見出されるS1−S4残基と特異的に相互作用する、切断されるペプチド中の残基をいう。P1−P4は、一般に、基質配列を含む。P1−P4は、切断部位のN末端側に対する位置であり、一方P1’−P4’は、切断部位のC末端側に対する位置である。(図2を参照のこと)。
【0041】
用語「骨格」は、種々の変異がなされる現存のプロテアーゼをいう。一般に、これらの変異は、骨格の特異性および活性を変更する。
【0042】
「単離された」または「精製された」、ポリペプチドもしくはタンパク質またはそれらの生物学的に活性な部分は、プロテアーゼタンパク質が由来する細胞または組織供給源からの細胞性物質または他の夾雑タンパク質を実質的に含まない、または化学合成される場合化学前駆体または他の化学物質を実質的に含まない。用語「細胞性物質を実質的に含まない」は、プロテアーゼタンパク質の調製物を含むが、ここでは、そのタンパク質が、それが単離されるかまたは組換え生成される細胞の細胞成分から分離されている。1つの実施形態では、用語「細胞性物質を実質的に含まない」は、非プロテアーゼタンパク質(本明細書中では「夾雑タンパク質」とも称される)を約30%(乾燥重量基準)未満で有する、より好ましくは非プロテアーゼタンパク質を約20%未満で有する、なおより好ましくは非プロテアーゼタンパク質を約10%未満で有する、そして最も好ましくは非プロテアーゼタンパク質を約5%未満で有する、プロテアーゼタンパク質の調製物を含む。プロテアーゼタンパク質またはその生物学的に活性な部分が組換え生成されている場合、それはまた、好ましくは、培養培地を実質的に含まない(すなわち、培養培地はプロテアーゼタンパク質調製物の容量の約20%未満であり、より好ましくは約10%未満であり、最も好ましくは約5%未満である)。
【0043】
用語「化学前駆体または他の化学物質を実質的に含まない」は、プロテアーゼタンパク質の調製物を含むが、ここでは、タンパク質が、タンパク質の合成に関与する化学前駆体または他の化学物質から分離されている。1つの実施形態では、用語「化学前駆体または他の化学物質を実質的に含まない」は、化学前駆体または非プロテアーゼ化学物質を約30%(乾燥重量基準)未満で有する、より好ましくは化学前駆体または非プロテアーゼ化学物質を約20%未満で有する、なおより好ましくは化学前駆体または非プロテアーゼ化学物質を約10%未満で有する、そして最も好ましくは化学前駆体または非プロテアーゼ化学物質を約5%未満で有する、プロテアーゼタンパク質の調製物を含む。
【0044】
本発明は、所与の基質配列で標的タンパク質を切断するプロテアーゼを生成し、そしてスクリーニングする方法に関する。プロテアーゼは、標的タンパク質内のアミノ酸またはアミノ酸基質配列を認識するタンパク質分解酵素である。基質配列の認識の際に、プロテアーゼは、標的タンパク質内のペプチド結合の加水分解または切断を触媒する。標的タンパク質のこのような加水分解は、標的配列の全長配列の背景におけるペプチド結合の位置に依存して、それを不活性化し得る。プロテアーゼの特異性は、タンパク質操作によって変化され得る。プロテアーゼが、(i.)機能を変化させ(すなわち、ペプチド結合加水分解の触媒の際の標的タンパク質(1つまたは複数)の不活性化による)、そして(ii.)その標的タンパク質(1つまたは複数)が、特定の疾患(1つまたは複数)について分子介入点として認識されるかまたは認識されない、標的タンパク質(1つまたは複数)内の基質配列を認識するように操作される場合、操作されたプロテアーゼは、タンパク質分解媒介不活性化事象を介して治療効果を有する。特に、プロテアーゼは、膜貫通ドメインとサイトカイン結合ドメインとの間でレセプターを切断するように操作され得る。それにより、細胞の表面にタンパク質レセプターをつなぎとめるように機能する茎領域(stalkregion)またはループ領域が、ポリペプチド鎖中の球状ドメインから切断される。
【0045】
1つの実施形態では、切断される標的タンパク質は、病状と関係し、ここで所与の基質配列でのこの標的タンパク質の切断は、この病状のための処置として作用する。
【0046】
1つの実施形態では、プロテアーゼは、慢性関節リウマチと関係したタンパク質を切断する。例えば、プロテアーゼは、膜貫通ドメインとサイトカイン結合ドメインとの間でTNFレセプターを切断する。この切断は、このレセプターを不活性化し得る。それにより、慢性関節リウマチは、腫瘍壊死因子(TNF)の作用を阻害することにより処置される。
【0047】
プロテアーゼは、活性型プロテインCと同じ標的を切断する。この切断は、血液凝固カスケードを弱め得る。それにより、敗血症は、プロテインCの作用を補充することにより処置される。
【0048】
プロテアーゼは、腫瘍形成性の原因となる細胞表面分子を切断し、癌の蔓延を防ぐ。例えば、細胞表面分子の切断は、細胞外シグナル(特に、細胞増殖シグナル)を伝達するそれらの能力を不活性化し得る。これらのシグナルがなければ、しばしば、癌細胞は増殖できない。従って、本発明のプロテアーゼは、癌を処置するために使用され得る。この実施形態の別の局面では、プロテアーゼは、癌の蔓延の原因となる任意の標的タンパク質を切断し得る。細胞周期進行に関与する標的タンパク質の切断は、タンパク質が細胞周期を前に進行させる能力を不活性化し得る。細胞周期の進行がなければ、癌細胞は増殖できない。従って、本発明のプロテアーゼは、癌を処置するために使用され得る。
【0049】
本発明の別の実施形態では、プロテアーゼは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、RSウイルス(RSV)、またはインフルエンザで見出される膜融合タンパク質を切断し、これらのウイルスが細胞に感染する能力を阻害する。これらの膜融合タンパク質がなければ、これらのウイルスは、細胞に感染できない。従って、このプロテアーゼは、HIV、RSVmまたはインフルエンザによる感染を処置または予防するために使用され得る。
【0050】
本発明の別の実施形態では、プロテアーゼは、プラスミノーゲン活性化因子と同じタンパク質を切断する。プラスミノーゲン活性化因子の標的を切断することにより、血栓溶解カスケードが活性化される。血塊により引き起こされる脳卒中または心臓発作の場合、プロテアーゼは、心血管疾患のための処置として使用され得る。
【0051】
本発明の別の実施形態では、プロテアーゼは、喘息、または炎症と関連した他の病状のための処置として、炎症に関与するサイトカインまたはレセプターを切断する。サイトカインまたはレセプターを切断することにより、プロテアーゼは、多くの炎症性プロセスと関係するシグナリングカスケードを不活性化し得る。それにより、プロテアーゼは、炎症および関連の病状を処置するために用いられ得る。
【0052】
本発明の別の実施形態では、プロテアーゼは、種々のシグナルカスケード(アポトーシスの調節を担うシグナリングカスケードを含む)に関与するシグナリング分子を切断する。例えば、プロテアーゼは、カスパーゼを切断する。このカスパーゼは、例えば、カスパーゼ−3であり得る。シグナルカスケードに関与するタンパク質を切断することにより、プロテアーゼは、シグナルカスケードを不活性化するか、または調整するために使用され得る。
【0053】
いくつかの例では、操作されたプロテアーゼは、表1中の標的タンパク質のいずれかを切断するように設計され、それにより、タンパク質の活性を不活性化する。プロテアーゼは、標的タンパク質の1つを不活性化することにより、そのタンパク質と関連した病状を処置するために使用され得る。
【0054】
【表1】



プロテアーゼ骨格はまた、表2中で以下に開示されたタンパク質のいずれかである。
【0055】
【表2−1】




【0056】
【表2−2】



【0057】
【表2−3】



【0058】
【表2−4】



【0059】
【表2−5】



(プロテアーゼ操作)
プロテアーゼの事実上全ての局面が再操作され得る。この局面には、酵素基質配列特異性、熱安定性、pHプロフィール、触媒効率、酸化安定性、および触媒機能が含まれる。
【0060】
現存のプロテアーゼが、それらの基質特異性を変更する種々の変異を含む骨格として使用される。骨格は、大部分に、以下のアミノ酸配列を含み得る:トリプシン、キモトリプシン、サブチリシン(substilisin)、トロンビン、プラスミン、第Xa因子、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、グランザイムB、エラスターゼ、パパイン、クルザイン、膜型セリンプロテアーゼ−1(MTSP−1)、カイメース、好中球エラスターゼ、グランザイムA、血漿カリクレイン、グランザイムM、補体因子セリンプロテアーゼ、ADAMTS13、神経性エンドペプチダーゼ/ネプリライシン、およびフューリン、またはそれらの組み合わせ。好ましい骨格には、以下が含まれる:グランザイムB、MTSP−1、カイメース、好中球エラスターゼ、グランザイムA、血漿カリクレイン、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子、グランザイムM、キモトリプシン、トロンビン、補体因子セリンプロテアーゼ、ADAMTS13、神経性エンドペプチダーゼ/ネプリライシン、フューリン、およびプラスミン。セリンプロテアーゼにおける基質配列特異性の決定は、活性部位中のS1−S4位から生じ、この位置で、プロテアーゼは、ペプチド基質配列のP1−P4残基と接触する。いくつかの場合、活性部位のS1〜S4のポケットの間に(もしあるとしても)相互作用はほとんどなく、各ポケットは、他のポケットとは独立して、ペプチド基質配列上の対応する残基を認識し、結合しているようである。従って、特異性決定基は、一般に、1つのポケットにおいて、他のポケットの特異性に影響することなく変更され得る。
【0061】
例えば、特定結合部位での残基について、または特定配列について、低い特異性を有するプロテアーゼは、基質配列結合ポケットにおいて点変異を行うことによって、その特異性が変化される。いくつかの場合、得られた変異体は、部位での特異性または特定配列についての特異性が、野生型の10倍よりも高い。別の実施形態では、得られた変異体は、部位での特異性または特定配列についての特異性が、野生型の100倍よりも高い。別の実施形態では、得られた変異体は、部位での特異性または特定配列についての特異性が、野生型よりも1000倍を超えて高い。
【0062】
また、本発明によって意図されるのは、種々の変異を有する骨格のライブラリーであり、これは、当該分野で公知の方法および以下に詳述する方法を用いて生成され、スクリーニングされる。ライブラリーは、メンバーの基質配列特異性を確認するためにスクリーニングされる。骨格のライブラリーは、メンバーを基質ペプチド配列に露出することによって、特異性について試験される。基質配列の切断を可能にする変異を有するメンバーが同定される。ライブラリーは、任意の基質ペプチド配列がライブラリーのメンバーによって切断されるのに十分な種の変異を、骨格において有するように構築される。従って、任意の標的タンパク質に対して特異的であるプロテアーゼが生成され得る。
【0063】
(プロセス)
(1.骨格の選択)
本発明の別の実施形態では、骨格プロテアーゼが、以下の要件を用いて選択される:1)プロテアーゼは、公知の配列のヒトまたは哺乳動物プロテアーゼである;2)プロテアーゼは、現在の分子生物学技術によって操作され得る;3)プロテアーゼは、適切な宿主において相対的に高いレベルで異種発現され得る;および4)プロテアーゼは、スクリーニングに十分なレベルで化学的にコンピテントな形態(chemicallycompetent form)にまで精製され得る。本発明の他の実施形態では、変異される骨格プロテアーゼは、細胞外に見出されるタンパク質を切断する。この細胞外タンパク質は、例えば、レセプター、シグナリングタンパク質、またはサイトカインである。変異の際に骨格プロテアーゼの2つのファミリーの活性および特異性に影響する残基を、ここに記載する。好ましくは、プロテアーゼに関する三次元構造情報が利用可能である。また、プロテアーゼの初期基質特異性の知識があることが好ましい。また、プロテアーゼがインビトロで活性であり、かつ安定性であること、およびプロテアーゼの高分子モジュレーターの知識が利用可能であることが好ましい。また、病状に影響を及ぼす(例えば、病状のタンパク質エフェクターを不活性化する)のに関連している標的を切断するプロテアーゼが、好ましい。
【0064】
(セリンプロテアーゼ)
本発明の別の実施形態では、変化した特異性を有するセリンプロテアーゼが、構造ベースの設計アプローチによって生成される。各プロテアーゼは、活性部位ポケットを並べ、基質と直接接触させる一連のアミノ酸を有する。キモトリプシンファミリー中で、基質と酵素との間の骨格の相互作用は完全に保存されるが、側鎖の相互作用はファミリー中でかなり変動する。活性部位決定基のS1〜S4ポケットを含むアミノ酸の同一性(identity)が、その特定ポケットの基質特異性を決定する。1つのセリンプロテアーゼのアミノ酸を同じ折り畳みの別のプロテアーゼに対して継ぎ合わせることにより、そのプロテアーゼの特異性を他方のプロテアーゼの特異性に改変する。例えば、S2ポケット中99位で小さなアミノ酸に変異させることにより、P2基質位置中の大きな疎水性の残基に対する優先性が付与される。この選択的変異誘発プロセス、続いて基質ライブラリースクリーニングを用いて、種々の疾患と関係するタンパク質に対して新規な基質特異性を有するプロテアーゼが設計される。
【0065】
セリンプロテアーゼは、キモトリプシンと同じファミリーのメンバーであり、それらは、キモトリプシンと配列および構造相同性を共有する。活性部位残基は、Asp102、His57、およびSer195である。この線状アミノ酸配列は、キモトリプシンのアミノ酸配列と整列され得、そしてキモトリプシンのβシートに従って番号付けされ得る。挿入および欠失がβシート間のループ中に生じるが、構造ファミリー中で、そのコアシートは保存される。セリンプロテアーゼは、βシートが保存されるように、基質と相互作用する。基質と酵素との間で、6までの保存された水素結合が生じ得る。
【0066】
(システインプロテアーゼ)
パパイン様システインプロテアーゼは、パパインに対する構造類似性によって関連されるチオール依存性エンドペプチダーゼのファミリーである。それらは、2ドメインタンパク質を形成し、これらドメインは、RおよびL(右および左に対して)と示され、そして両ドメインからのループは、基質認識割れ目を形成する。それらは、Cys25、His159、およびAsn175のアミノ酸で構成される触媒性三つ組を有する。セリンプロテアーゼ(これは、基質のβシートコンフォメーションに基づいて標的ペプチドを認識し、タンパク質分解する)とは異なり、プロテアーゼのこのファミリーは、基質認識についての十分に規定されたポケットを有さない。主要な基質認識は、(セリンプロテアーゼにおけるP1残基に比較して)、P2アミノ酸で生じる。
【0067】
S2ポケットは、プロテアーゼ基質認識部位のうち最も選択的で、最も特徴付けられている。それは、以下の空間位置(パパイン番号付け)でのアミノ酸により規定される:66、67、68、133、157、160、および205位。205位は、セリンプロテアーゼの189位(特異性を決定するポケットの底部に包埋された残基)に類似の役割を演じる。
【0068】
多数のシステインプロテアーゼ(ヒトカテプシンL、V、K、S、F、B、パパイン、およびクルザイン)の基質特異性を、完全に多様な位置走査合成コンビナトリアルライブラリー(positionalscanning synthetic combinatoriallibrary)(PS−SCL)を用いてプロファイリングした。完全ライブラリーは、P1、P2、P3、およびP4テトラペプチド基質からなり、ここでは、他の3つの位置が20の可能なアミノ酸の等モル混合物でランダム化されているのに対し、1つの位置が固定された状態にあり、全部で約160,000のテトラペプチド配列の多様性を生じる。
【0069】
全般的に、P1特異性は、カテプシン間でほとんど同一であり、ArgとLysとが強く好まれたが、小さな脂肪族アミノ酸は許容された。選択性の多くは、P2位で見られ、ここでは、ヒトカテプシンは、疎水性アミノ酸に対して厳密に選択的であった。興味深いことに、疎水性残基に対するP2特異性は、芳香族アミノ酸間(例えば、Phe、Tyr、およびTrp)(カテプシンL、V)、および嵩の大きな脂肪族アミノ酸間(例えば、ValまたはLeu)(カテプシンK、S、F)で分けられた。P2位に比較して、P3位での選択性は、有意に厳密ではなかった。しかし、これらプロテアーゼのいくつかは、プロリン(カテプシンV、S、およびパパイン)、ロイシン(カテプシンB)、またはアルギニン(カテプシンS、クルザイン)に対して異なる優先性を示した。これらプロテアーゼは、P4位で広範な特異性を示し、どのアミノ酸も、他のアミノ酸よりも選択されたわけではなかった。
【0070】
(基質認識プロフィール)
変化した基質認識プロフィールを有する改変体プロテアーゼを作製するために、基質選択性に寄与する三次元構造中のアミノ酸(特異性決定基)が、変異誘発の標的とされる。セリンプロテアーゼについて、ファミリーメンバーの多数の構造は、拡張された基質特異性に寄与する表面残基を規定した(Wangら,Biochemistry2001 Aug28;40(34):10038−46;Hopfnerら,Structure Fold Des.1999Aug 15;7(8):989−96;FriedrichらJBiol Chem.2002Jan 18;277(3):2160−8;Waughら,NatStruct Biol.2000Sep;7(9):762−5)。種々のプロテアーゼについての構造決定基を、拡張された特異性が知られていると決定されたファミリーメンバーのサブセット中のアミノ酸の列挙と共に、表3中に列挙する。セリンプロテアーゼについては、一次配列中の以下のアミノ酸は、特異性の決定基である:195、102、57(触媒性三つ組);189、190、191、192、および226(P1);57、58と64との間のループ、および99(P2);192、217、218(P3)、Cys168とCys180との間のループ、215、および97〜100(P4)。
【0071】
【表3】



グランザイムBは、キモトリプシン折り畳みセリンプロテアーゼのファミリーのメンバーであり、そしてグランザイムファミリーの他のメンバー(グランザイムC−G、カテプシンG、およびラット肥胖細胞プロテアーゼIIが含まれる)に対して50%より大きな同一性を有する。このタンパク質は、短いα−へリックスによって連結された6本の逆平行鎖のβ−樽型ドメイン2つによるサンドイッチである。触媒性三つ組は、Asp102、His57、およびSer195で構成される。これら表面ループは、α−キモトリプシンに比較した付加および欠失に従って番号付けられ、この構造ファミリーの最も可変の領域を表す。特異性の決定基は、エコチン(ecotin)[IEPD](基質様結合ループを有する高分子インヒビター(Waughら,NatureStruct.Biol))と複合体化したラットグランザイムBの三次元構造によって規定される。特異性のこれらの構造決定基は、以下を含む:Ile99、Arg192、Asn218、Tyr215、Tyr174、Leu172、Arg226、およびTyr151(キモトリプシン番号付けによる)。興味深いことに、セリンプロテアーゼのグランザイムファミリーの他のメンバーは、これらのアミノ酸の2つのみをグランザイムBと共有する。それらは、Tyr215およびLeu172であり、これら2つの残基は、全構造ファミリーにわたってまさにほとんど変動しない。このことは、これらグランザイムの配列同一性は高いが、それらの基質特異性は非常に異なることを示唆する。
【0072】
拡張された特異性におけるこれらのアミノ酸の役割を決定するために、Ile99、Arg192、Asn218、およびTyr174を、アミノ酸アラニンに変異させた。Ile99はP2特異性に寄与し、Asn218およびArg192はP3特異性に寄与し、そしてTyr174はP4特異性に寄与することが決定された。各改変プロテアーゼを、拡張された特異性に対する変異の効果を決定するために、コンビナトリアル基質ライブラリーを用いてプロファイリングした。プロテアーゼのP1特異性が、プロテアーゼの特異性の大部分を表すので、これら改変は、P1アスパラギン酸アミノ酸に対するグランザイムBの独特の特異性を破壊しないが、拡張されたP2からP4の部位における特異性を変調する。
【0073】
P3およびP4サブ部位について、Tyr174、Arg192、およびAsn218での変異は、特異性に有意に影響を及ぼさなかった(以下の表4を参照のこと)。Y174AがP4でのLeuに対する活性を増大するが、残りのアミノ酸は、あまり選択性がないままである。R192AおよびN218Aは共に、P3での特異性を広げた。グルタミン酸に対する強い優先性に代わって、この変異体においては、Ala、Ser、Glu、およびGlnが同様に好まれる。変異体の全体活性(kcat/Km)は、理想野生型基質であるN−アセチル−Ile−Glu−Pro−Asp−AMC(7−アミノ−4−メチルクマリン)(Ac−IEPD−AMC)に対して、野生型活性の10%未満である。
【0074】
ずっとより劇的な効果が、P2サブ部位において観察される(以下の表4を参照のこと)。野生型グランザイムBにおいて、優先性は広く、Pro残基についてわずかに優先性である。I99Aは、P2特異性をPheおよびTyr残基にしぼる。Pheは、この位置の他のアミノ酸の平均活性のほぼ5倍で好まれる。セリンプロテアーゼのキモトリプシンファミリーにおいて、1ダースより多くのプロテアーゼが、この構造部位で小さな残基(アスパラギン、セリン、トレオニン、アラニン、またはグリシンのいずれか)を有する。この基から、2つのプロテアーゼが、コンビナトリアル基質ライブラリーを用いてプロファイリングされ(血漿カリクレインおよびプラスミン)、そしてこの両方ともが、PheおよびTyrに対して強い優先性を示す。これらの2つの結果は、99位でAsn、Ser、Thr、Gly、またはAlaに変異されている任意のセリンプロテアーゼが、血漿カリクレイン、プラスミン、およびI99AグランザイムB変異体で見いだされる同じ疎水性特異性を示すことを示唆する。
【0075】
P2特異性決定基の理解は、対比する変異および基質優先性に拡張され得る。ほぼ2ダースのキモトリプシン折り畳みセリンプロテアーゼが、99位に芳香族アミノ酸を有する。これらのプロテアーゼのうち4つが、コンビナトリアル基質ライブラリーを用いてプロファイリングされている:ヒトグランザイムB、組織型プラスミノーゲン活性化因子、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子、および膜型セリンプロテアーゼ1。グランザイムBを除く全てが、基質P2位で、セリン、グリシン、およびアラニンのアミノ酸についての優先性を有する。
【0076】
【表4】



【0077】
【表5】



表4および5から、ラットグランザイムBにおいて変化されるように選択される特異性の決定基は、以下の通りである:Ser195、Asp102、His57、Ala189、Ser190、Phe191、Arg192、Arg226、Ser58、Gly59、Ser60、Lys61、Ile62、Asn63、Ile99、Gln217、Asn218、Glu169、Ser170、Tyr171、Leu171A(キモトリプシンに比較して1アミノ酸の挿入があることに留意のこと)、Lys172、Asn173、Tyr174、Phe175、Asp176、Lys177、Ala178、Asn179、Glu180、Ile181、Tyr215、Lys97、Thr98、Ile99、およびSer100。
【0078】
システインプロテアーゼについては、改変されるように選択されるアミノ酸は、より十分ではないが記載される。S2ポケットは、プロテアーゼ基質認識部位のうち、最も選択的であり、最も特徴付けられている。それは、以下の三次元位置でのアミノ酸によって規定される(パパイン番号付け):66、67、68、133、157、160、および205。205位は、セリンプロテアーゼ中の189位(特異性を決定するポケットの底部に包埋された残基)に類似した役割を演じる。他の特異性決定基は、以下のアミノ酸残基(パパインに従って番号付け)を含む:61および66(P3);19、20、および158(P1)。
【0079】
【表6】



(2.骨格プロテアーゼの変異誘発)
所与のアミノ酸についての所与のサブ部位(S1−S4)の基質優先性を変更するために、結合ポケットを並べる特異性決定基が変異される(個々にまたは組み合わせてのいずれかで)。本発明の1つの実施形態では、飽和変異誘発技術が用いられ、この技術では、ポケットを並べる残基(1つまたは複数)が20の可能なアミノ酸の各々に変異される。これは、Kunkle方法を用いて達成され得る(Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Inc.,Media Pa.)。簡潔に言えば、所望のコドンでNNSまたはNNKのいずれかのランダム化を含む変異誘発オリゴヌクレオチドプライマーが、合成される。このプライマーは、一本鎖DNA鋳型にアニーリングされ、そしてDNAポリメラーゼが添加されて、鋳型の相補鎖を合成する。連結後、二本鎖DNA鋳型が、増幅のためにE.coliに形質転換される。あるいは、標準的な市販の部位特異的変異誘発キット(例えば、QuikChange(Stratagene))を用いて、1アミノ酸変更がなされる。別の実施形態では、部位特異的アミノ酸変異について当該分野で一般的に知られる任意の方法が使用され得る。
【0080】
(3.改変体プロテアーゼの発現および精製)
プロテアーゼは、活性または不活性なチモーゲン形態で発現され得る。プロテアーゼは、異種発現系(例えば、E.coli、Pichia pastoris、S.cerevisae、またはバキュロウイルス発現系)中にあり得る。タンパク質は、細胞内環境において発現され得るか、または培地中に分泌され得る。プロテアーゼはまた、インビトロ発現系において発現され得る。改変体プロテアーゼを精製するために、カラムクロマトグラフィーが使用され得る。プロテアーゼは、ニッケルカラムにおける精製のために、C末端6−Hisタグを含み得る。プロテアーゼのpIに依存して、カチオン交換カラムまたはアニオン交換カラムが適切であり得る。プロテアーゼは、それ自体を分解しないように、その触媒活性を最小限にする、低いpH緩衝液中に保存され得る。精製はまた、免疫吸着、ゲル濾過、または当該分野で一般的に用いられる任意の他の精製方法によって成し遂げられ得る。
【0081】
(4.ACC位置走査ライブラリーの合成)
当業者は、本発明のペプチドおよびライブラリーを調製するために、多くの方法が用いられ得ることを認識する。例示の実施形態では、ライブラリーは、固体支持体に蛍光発生(fluorogenically)タグ化基質ペプチドを付着させることにより、スクリーニングされる。基質ペプチドからの蛍光発生遊離基は、N−Fmocクマリン誘導体を酸不安定性Rinkリンカーに縮合させることにより合成され、ACC樹脂を提供する(Backesら Nat Biotechnol.2000 Feb;18(2):187−93)。Fmoc除去により、遊離アミンを生じる。天然アミノ酸、非天然アミノ酸、および改変アミノ酸がこのアミンに結合され得、さらなるアミノ酸の結合により仕上げられ得る。ペプチドの合成が完了した後、ペプチド蛍光発生部分結合体が、固体支持体から切断され得るか、または別に、結合体は、固体支持体につなぎとめられたままであり得る。
【0082】
従って、さらなる好ましい実施形態では、本発明は、蛍光発生ペプチドまたは蛍光発生ペプチドを含む物質を調製する方法を提供する。この方法は、以下を包含する:(a)固体支持体に共有結合された蛍光発生部分を含む第一の結合体を提供する工程;(b)当該第一の結合体を、第一の保護されたアミノ酸部分および活性化剤と接触させる工程であって、それによりカルボキシル基と当該第一の結合体のアミン窒素との間にペプチド結合を形成させる、工程;(c)脱保護する工程であって、それにより反応性アミン部分を有する第二の結合体を形成させる、工程;(d)当該第二の結合体を第二の保護されたアミノ酸および活性化剤と接触させる工程であって、それによりカルボキシル基と当該反応性アミン部分との間にペプチド結合を形成させる、工程;および(e)脱保護する工程であって、それにより反応性アミン部分を有する第三の結合体を形成させる、工程。
【0083】
好ましい実施形態では、この方法は、さらに以下を包含する:(f)当該第三の結合体を第三の保護されたアミノ酸および活性化剤と接触させる工程であって、それによりカルボキシル基と当該反応性アミン部分との間にペプチド結合を形成させる、工程;および(e)脱保護する工程であって、それにより反応性アミン部分を有する第四の結合体を形成させる、工程。
【0084】
結合させるのが難しいアミノ酸(Ile,Valなど)については、遊離の未反応のアミンが、支持体上に残存し得、続く合成およびアッセイ操作を複雑にし得る。DMF中の酢酸の3−ニトロトリアゾール活性エステルを用いる特殊化されたキャッピング工程は、残存するアニリンを効率的にアシル化する。未精製基質配列溶液中に存在し得る得られた酢酸キャップされたクマリンは、一般に、プロテアーゼ基質配列ではない。これらの方法により提供されるP1置換樹脂は、任意のACC−蛍光発生基質を調製するために使用され得る。
【0085】
さらなる好ましい実施形態では、任意の特定位置または位置組み合わせでの多様性は、少なくとも2つのアミノ酸、好ましくは少なくとも6つのアミノ酸、より好ましくは少なくとも12のアミノ酸、そしてより好ましくはなお少なくとも20のアミノ酸でなる混合物を用いて、ペプチド鎖を伸長させることにより導入される。アミノ酸の混合物は、任意の有用量の特定アミノ酸を、任意の有用量の1つ以上の異なるアミノ酸と組み合わせて含み得る。本発明の好ましい実施形態では、混合物は、アミノ酸の等速性混合物(全ての成分の等モル反応性を可能にするのに適切な比の混合物)である。等速性混合物は、アミノ酸のモル比がそれらの報告された反応速度に基づいて調整されている混合物である。(Ostresh,J.M.,Winkle,J.H.,Hamashin,V.T.,& Houghten,R.A.(1994).Biopolymers 34,1681−1689)。
【0086】
固相ペプチド合成が、本発明の化合物のペプチド基幹を調製するために好ましい方法であり、この合成では、配列のC末端アミノ酸が不溶性支持体に付着されて、次いで配列中の残存アミノ酸の逐次付加が続く。固相合成のための技術は、以下によって記載される:BaranyおよびMerrifield,Solid−Phase Peptide Synthesis;pp.3−284、The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology.Vol.2;Special Methods In Peptide Synthesis,Part A.,GrossおよびMeienhofer編 Academic press,N.Y.,1980;およびStewartら,Solid Phase Peptide Synthesis,2nd ed.Pierce Chem.Co.,Rockford,Ill.(1984)(これらは、本明細書中に参考として援用される)。固相合成は、Fmocまたはt−BOC化学を利用する市販のペプチド合成機を用いて、最も容易に成し遂げられる。
【0087】
特に好ましい実施形態では、Fmoc合成化学を用いて、ペプチド合成が実施される。Asp、Ser、Thr、およびTyrの側鎖は、t−ブチルを用いて好ましく保護され、そしてCys残基の側鎖は、S−トリチルおよびS−t−ブチルチオを用いて保護され、そしてLys残基は、t−Boc、Fmoc、および4−メチルトリチルを用いて好ましく保護される。適切に保護されたアミノ酸試薬は、市販されているか、または当該分野で認知された方法を用いて調製され得る。多重保護基の使用は、蛍光体の選択的な脱ブロックおよび任意の特定の所望な側鎖への結合を可能にする。従って、例えば、t−Boc脱保護は、ジクロロメタン中のTFAを用いて成し遂げられる。Fmoc脱保護は、例えば、DMF中20%(v/v)ピペリジンまたはN−メチルピロリドンを用いて成し遂げられ、そして4−メチルトリチル脱保護は、例えば、水中1〜5%(v/v)TFA、またはDCM中1%TFAおよび5%トリイソプロピルシランを用いて成し遂げられる。S−t−ブチルチオ脱保護は、例えば、水性メルカプトエタノール(10%)を用いて成し遂げられる。t−ブチル基、t−boc基、およびS−トリチル基の除去は、例えば、TFA:フェノール:水:チオアニソール:エタンジチオール(85:5:5:2.5:2.5)またはTFA:フェノール:水(95:5:5)を用いて成し遂げられる。
【0088】
(5.特異性変化についてのプロテアーゼのスクリーニング)
本発明の方法を用いて生成されたプロテアーゼ中の必須アミノ酸は、当該分野で公知の手順に従って同定され、このような技術は、例えば、部位特異的変異誘発または活性部位残基の飽和変異誘発である。後者の技術では、特異性の重要な決定基であることが示されているS1−S4ポケットを形成する残基が、あらゆる可能なアミノ酸に変異される(単独または組み合わせのいずれかで)。例えば、Legendreら,JMB(2000)296:87−102を参照のこと。得られた変異体の基質特異性は、ACC位置走査ライブラリーを用いて、および単一基質速度論アッセイによって決定される(Harrisら、PNAS,2000,97:7754−7759)。
【0089】
変異誘発およびスクリーニングの公知の方法を用いて、多重アミノ酸置換が作製および試験され、このような方法は、例えば、Reidhaar−OlsonおよびSauer(Science 241:53−57,1988)またはBowieおよびSauer(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:2152−2156,1989)によって開示された方法である。簡潔に言えば、これらの著者は、ポリペプチド中の2つ以上の位置を同時にランダム化し、機能的ポリペプチドについて選択し、次いで変異誘発ポリペプチドを配列決定して、各位置で許容可能な置換のスペクトルを決定する方法を開示する。用いられ得る他の方法には、ファージディスプレイ(例えば、Legendreら,JMB,2000:296:87−102;Lowmanら,Biochem.30:10832−10837,1991;Ladnerら,米国特許番号5,223,409;Huse,PCT公開WO 92/06204)および領域特異的変異誘発(Derbyshireら,Gene 46:145,1986;Nerら,DNA 7:127,1988)が含まれる。
【0090】
上記に開示されたような変異誘発方法は、高スループット自動スクリーニング方法と組み合わされて、宿主細胞においてクローン化された変異誘発ポリペプチドの活性を検出し得る。タンパク質分解活性タンパク質またはそれらの前駆体をコードする変異誘発DNA分子は、宿主細胞から回収され、そして当世の装置を用いて迅速に配列決定される。これらの方法は、目的のポリペプチドにおける個々のアミノ酸残基の重要性の迅速な決定を可能にし、そして未知の構造のポリペプチドに適用され得る。
【0091】
(プロテアーゼファージディスプレイによるスクリーニング)
1つの実施形態では、プロテアーゼファージディスプレイが、以下に記載されるように、特異的基質配列に対する種々の親和性について変異体プロテアーゼのプールをスクリーニングするために使用される:Legendreら,JMB,2000:296:87−102,およびCoreyら,Gene,1993 Jun 15;128(1):129−34。ファージ技術により、タンパク質とそれをコードする遺伝情報との間の物理的な関連が提供される。目的のタンパク質は、細菌性ウイルスの表面コートタンパク質への遺伝的融合物として構築される。ウイルス粒子が細菌宿主において生成される場合、目的のタンパク質が、融合タンパク質として生成され、そしてウイルスの表面上に提示される。そしてその遺伝子が、ウイルスのカプシド粒子内にパッケージングされる。ファージディスプレイランダムタンパク質ライブラリーは、固定化された標的への結合についてスクリーニングされる。ファージのライブラリー(各ファージは、個々の変異体を提示する)は、標的に対する親和性の増強について選別される。セリンプロテアーゼがファージの表面上に提示されており、そしてこの技術は、プロテアーゼ改変体の多様ライブラリーを生成するために、適切な変異誘発技術と合わせて使用される。
【0092】
選択される標的は、プロテアーゼの治療的適用に関連した標的であり得る。例えば、標的配列は、エンドトキシン、またはウイルスタンパク質、または細菌壁タンパク質、または自己免疫状態に関連したネイティブ血液由来ペプチド(native blood−born peptide)中に存在する。ここで、選択されたプロテアーゼは、処置方法において、ペプチドをこのような処置を必要とする人に投与することにより(例えば、静脈内注射により)使用される。
【0093】
(蛍光を用いるスクリーニング)
本発明の別の実施形態では、酵素的に活性なプロテアーゼの存在についてアッセイするための方法。この方法は、以下を包含する:(a)サンプルをプロテアーゼと、当該プロテアーゼの作用の際に蛍光発生部分がペプチド基質配列から放出されるように接触させる工程であって、それにより蛍光部分を生じさせる、工程;および(b)当該サンプルが蛍光における検出可能な変化を受けているか否かを観察する工程であって、ここで当該検出可能な変化が、当該サンプル中の酵素的に活性なプロテアーゼの存在の指標である、工程。
【0094】
本発明のこの方法は、実質的に任意の公知のプロテアーゼまたは後に発見されるプロテアーゼについてアッセイするために使用され得る。プロテアーゼを含むサンプルは、実質的に任意の供給源、または生物に由来し得る。1つの実施形態では、サンプルは、被験体からの臨床サンプルである。別の実施形態では、プロテアーゼは、アスパラギン酸プロテアーゼ、システインプロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、およびセリンプロテアーゼからなる群から選択されるメンバーである。本発明の方法は、微生物(細菌、真菌、酵母、ウイルス、および原生動物を含むが、これらに限定されない)に由来するプロテアーゼのアッセイに、特に好ましい。
【0095】
溶液中でのプロテアーゼ活性についてのアッセイは、単に、多量のストック溶液を蛍光発生プロテアーゼ指標に付加する工程、および続く蛍光の増大または吸収スペクトルにおける励起バンドの減少を測定する工程を必要とする。また、溶液および蛍光発生指標が組み合わされて、プロテアーゼの活性を至適化する「消化緩衝液」中でアッセイされ得る。プロテアーゼ活性をアッセイするために適切な緩衝液は、当業者に周知である。一般に、特定プロテアーゼのpH至適に対応するpHを有する緩衝液が、選択される。例えば、エラスターゼ活性をアッセイするために特に適切な緩衝液は、50mMリン酸ナトリウム、1mM EDTA(pH8.9)からなる。測定は、蛍光計でもっとも容易になされ、この蛍光計は、蛍光体のための「励起」光源を提供し、次いで、続いて特定波長で放射される光を測定する機器である。プロテアーゼを含有しないコントロール指標溶液との比較は、プロテアーゼ活性の測定を提供する。活性レベルは、プロテアーゼ/指標組み合わせについての標準曲線を作成することにより、正確に定量され得る。ここでは、既知活性のプロテアーゼ溶液により生じた蛍光変化速度を決定する。
【0096】
好ましくは、蛍光計を用いて、蛍光発生化合物の検出が達成されるが、検出は、当業者に周知の他の種々の方法によって成し遂げられ得る。従って、例えば、蛍光体が可視波長で放射する場合、検出は、光源による励起に応じて蛍光を単に視覚的に検査することによるものであり得る。検出はまた、ディジタイザーまたは他の画像捕捉システムにインターフェースで連結されたビデオカメラを用いる画像解析システムによるものであり得る。検出はまた、蛍光顕微鏡下のように、フィルタを通して視覚化することによるものであり得る。この顕微鏡は、操作者によって単に視覚化されるシグナルを提供し得る。あるいは、このシグナルは、写真フィルム上に、またはビデオ解析システムを用いて、記録され得る。シグナルはまた、画像解析システムまたは光度計のいずれかを用いて、リアルタイムで単に定量され得る。
【0097】
従って、例えば、サンプルのプロテアーゼ活性についての基本アッセイは、当該サンプルを緩衝液(アッセイされる特定プロテアーゼのpH至適)中に懸濁するかまたは溶解する工程、当該緩衝液に蛍光発生プロテアーゼ指標を添加する工程、および分光蛍光計を用いて蛍光における生じた変化をモニタリングする工程を包含する(これらは、Harrisら,J Biol Chem,Vol.273,Issue 42,27364−27373,1998年10月16日に示される)。この分光蛍光計は、蛍光体の励起波長で蛍光体を励起し、蛍光体の放射波長で得られた蛍光を検出するように設定される。蛍光発生プロテアーゼ指標は、指標を切断するプロテアーゼに起因して蛍光を変化させる、プロテアーゼの基質配列である。
【0098】
例証となる実施形態では、本発明は、種々のセリンプロテアーゼおよびシステインプロテアーゼのプロファイリングのために有用なライブラリーを提供する。このライブラリーは、異なるアミノ酸について特異性を有するプロテアーゼを識別し得る。
【0099】
別の例証となる実施形態では、血液凝固に関与するいくつかのセリンプロテアーゼの拡張された基質配列特異性をプロービングするために、ライブラリーが提供され、ここでは、P1位が、プロテアーゼの好ましいP1特異性に依存して、LysまたはArgのいずれかであるように定常保持されている。
【0100】
PS−SCLストラテジーは、タンパク質分解基質配列特異性の迅速かつ容易な決定を可能にする。当業者は、これらの方法が、広範な種々の代替のライブラリーフォーマットを提供することを理解する。例えば、P2位を大きな疎水性アミノ酸として固定することにより、パパイン折り畳みプロテアーゼによる優先的な内部切断が回避され得、そしてその基質配列の適切な登録に至り得る。基質配列特異性決定の任意の特定の酵素または方法に関連した特定の制限の決定および考慮は、当業者の能力の範囲内である。
【0101】
選択された酵素の存在についてアッセイすることにおける使用に加えて、本発明の方法はまた、サンプル中の酵素(例えば、プロテアーゼ)の検出、同定、および定量に有用である。従って、別の好ましい実施形態では、スクリーニング方法は、以下をさらに包含する:(c)当該蛍光部分を定量する工程であって、それにより当該サンプル中に存在する当該酵素(例えば、プロテアーゼ)を定量する、工程。サンプルは、例えば、生物学的流体(例えば、血液、血清、尿、涙、乳、または精液)であり得る。
【0102】
(プロテアーゼ配列特異性アッセイを用いるスクリーニング)
別の好ましい実施形態では、標的配列を特異的に切断する酵素について、および好ましくは、酵素的に活性なプロテアーゼについて選択されるこれらの方法が使用される。この方法は、以下を包含する:(a)内部クエンチングされた蛍光体を含むランダムペプチドライブラリーであって、ここでは、蛍光体は、例えば、ο−アミノベンゾイルであり、そしてクエンチャーは、例えば、3−ニトロチロシンである;(b)切断について標的とされた配列に対応するペプチド基質配列であって、これはまた、内部クエンチングされた蛍光体を含み、ここでは、蛍光体は、例えば、Cy3Bであり、そしてクエンチャーは、例えば、Cy5Qである;(c)当該ランダムペプチドライブラリーおよびペプチド基質配列を1:1比で混合する工程;(d)当該混合物を改変体プロテアーゼに露出し、次いでο−アミノベンゾイル蛍光に対するCy3B蛍光の比を定量する工程。プロテアーゼが標的ペプチドに対して選択的である場合、これは、標的ペプチドのみを切断し、ランダムライブラリーを切断せず、従って、ο−アミノベンゾイル蛍光に対してCy3B蛍光の比は高くなる。(MeldalおよびBreddam,Anal.Biochem.(1991)195:141−147;Gronら Biochemistry(1992)31:6011−6018)。
【0103】
別の好ましい実施形態では、これらの方法は、酵素および好ましくは酵素的に活性なプロテアーゼの配列特異性を決定するために使用される。この方法は、以下を包含する:(a)当該プロテアーゼを本発明のペプチドのライブラリーと接触させる工程であって、そのようにしてそれによって蛍光発生部分がペプチド配列から放出され、それにより蛍光部分を形成する、工程;(b)当該蛍光部分を検出する工程;および(c)当該ペプチド配列の配列を決定する工程であって、それにより当該プロテアーゼのペプチド配列特異性プロフィールを決定する、工程。
【0104】
上述の方法の好ましい実施形態では、この方法は、以下をさらに包含する:(d)当該蛍光部分を定量する工程であって、それによりプロテアーゼを定量する、工程。
【0105】
さらに、本明細書中で上述した局面および実施形態の各々において、プロテアーゼは、目的とする実質的に任意のプロテアーゼであり得るが、好ましくは、アスパラギン酸プロテアーゼ、システインプロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、またはセリンプロテアーゼである。本発明の方法を用いてアッセイされるプロテアーゼは、実質的に任意の生物に由来し得、これら生物には、哺乳動物(例えば、ヒト)、鳥類、爬虫類、昆虫、植物、真菌などが含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、プロテアーゼは、微生物に由来し、この微生物には、細菌、真菌、酵母、ウイルス、および原生動物が含まれるが、これらに限定されない。
【0106】
(6.工程1〜5の反復)
方法は、拡張された結合サブ部位P2、P3、およびP4の各々で所望の特異性および選択性を有する改変体プロテアーゼを作出するために、反復して繰り返される。いくつかの場合において、セリンプロテアーゼにおける変異は、活性部位(S1−S4)を形成するサブ部位の各々が互いから独立して機能しており、1つのサブ部位での特異性の改変が隣接したサブ部位での特異性にほとんど影響しないことが示された。従って、拡張された結合部位中の基質特異性および選択性の操作は、順次的に成し遂げられ得る。
【0107】
所望の特異性プロフィールに適合する変異体プロテアーゼ(基質ライブラリーによって決定)は、次いで、所望の切断配列に対応する個々のペプチド基質を用いてアッセイされる。改変体プロテアーゼはまた、全長タンパク質の背景で提示される場合、所望の配列を切断することを確認するためにアッセイされる。標的タンパク質の活性もまた、その機能が切断事象により破壊されていることを検証するためにアッセイされる。切断事象は、精製された全長タンパク質を改変体プロテアーゼとインキュベートした後、SDS−PAGEによりモニタリングされる。
【0108】
別の実施形態では、多重プロテアーゼの特異性を獲得するために、複数の変異体プロテアーゼが組み合わされる。骨格の1つの残基での変異(これは、1つの部位で特異性を生じる)が、同じプロテアーゼにおいて、この骨格の別の部位での別の変異と組み合わせられて、組み合わせ特異性プロテアーゼを作製する。同じ骨格における別個の部位での任意数の変異が使用されて、組み合わせ特異性プロテアーゼを作出し得る。1つの特異的な実施形態では、99位でのイソロイシンからアラニンへのグランザイムB骨格における変異が、218位でのアスパラギンからアラニンへの変異と組み合わされて、組み合わせ特異性プロテアーゼ199A/N218AグランザイムBを作出した。この特性については、本明細書中に詳述する。
【0109】
切断および不活性化について標的とされるタンパク質は、以下の基準によって同定される:1)そのタンパク質が、病状に関与している;2)そのタンパク質が、病状を処置することに関する介入の臨界点である、強い証拠がある。;3)そのタンパク質のタンパク質分解切断が、その機能を破壊するようである。標的タンパク質内の切断部位は、以下の基準によって同定される:1)それらは、タンパク質の露出表面上に位置する;2)それらは、原子構造または構造推定アルゴリズムによって決定されるような二次構造が欠けている領域中に位置する(すなわち、βシートにもαへリックスにも位置しない);(これらの領域は、タンパク質の表面上のループまたは細胞表面レセプター上の茎部である傾向がある);3)それらは、その公知の機能に基づいてタンパク質を不活性化するようである部位に位置する。切断配列は、例えば、多くのセリンプロテアーゼの拡張された基質特異性に適合する4残基長であるが、これより長くも短くもあり得る。
【0110】
本発明の別の実施形態では、標的タンパク質補助触媒が、標的タンパク質について特異的であるプロテアーゼを生成するために使用される。標的タンパク質補助触媒では、セリンプロテアーゼにおける触媒性三つ組の一部である不変ヒスチジンが、アラニンに変異され、プロテアーゼを不活性化させる。標的タンパク質における適切な位置のヒスチジンは、プロテアーゼにおいて変異ヒスチジンと同じ役割を演じる効果において、水素受容体として機能し得、それにより、触媒活性を回復する。しかし、これは、基質配列(P2またはP1’)における適切な位置にヒスチジンを有するために、厳密な要求を配する。プロテアーゼの基質配列結合部位における単一変異は、そのプロテアーゼの特異性を変化し得、そしてそのプロテアーゼが基質配列特異性において変化を有するようにし得る。基質配列特異性は、少数の変異を用いて変化され得る。
【0111】
上記に開示された方法を用いて、当業者は、プロテアーゼ骨格またはそれらの対立遺伝子改変体に実質的に相同であり、かつ野生型タンパク質のタンパク質分解特性を維持する種々のポリペプチドを同定および/または調製し得る。1つの実施形態では、これらの骨格は、トリプシン、キモトリプシン、サブチリシン、トロンビン、プラスミン、第Xa因子、uPA、tPA、グランザイムB、グランザイムA、カイメース、MTSP−1、カテプシンG、エラスターゼ、パパイン、またはクルザインのアミノ酸配列を含む。このようなポリペプチドは、独立して折り畳む結合ドメインを形成するさらなるアミノ酸残基を含む標的化部分を含み得る。このようなドメインには、例えば、以下が含まれる:サイトカインレセプターの細胞外リガンド結合ドメイン(例えば、1つ以上のフィブロネクチンIII型ドメイン);免疫グロブリンドメイン;DNA結合ドメイン(例えば、Heら,Nature 378:92−96,1995を参照のこと);親和性タグなど。このようなポリペプチドはまた、上記に広く開示されるようなさらなるポリペプチドセグメントを含み得る。
【0112】
(プロテアーゼポリペプチド)
本発明に従うポリペプチドは、プロテアーゼのアミノ酸配列を含むポリペプチドを含み、その配列が、本明細書中に記載の骨格のいずれか1つにおいて提供される。本発明はまた、変異体または改変体プロテアーゼ、またはそれらの機能的フラグメントを含むが、これらプロテアーゼでは残基のいずれかが、そのプロテアーゼ活性および生理学的機能を維持するタンパク質をなおコードしながらも、本明細書中に記載の骨格のいずれか1つにおいて示される対応残基から変更され得る。好ましい実施形態では、変異は、本明細書中に詳述するように、プロテアーゼのS1−S4領域において生じる。
【0113】
一般に、プロテアーゼ様機能を保持するプロテアーゼ改変体は、任意の改変体であって、配列中の特定位置の残基が他のアミノ酸によって置換されたものを含み、親タンパク質の2つの残基の間にさらなる残基(1つまたは複数)を挿入する可能性ならびに親配列から1つ以上の残基を欠失する可能性をさらに含む。任意のアミノ酸置換、挿入、または欠失が、本発明によって包含される。好都合な環境において、置換は、上述で規定されるような保存的置換である。
【0114】
本発明の1つの局面は、単離されたプロテアーゼ、およびそれらの生物学的に活性な部分、またはそれらの誘導体、フラグメント、アナログもしくはホモログに関する。また、抗プロテアーゼ抗体を惹起させる免疫原としての使用に適したポリペプチドフラグメントが提供される。別の実施形態では、プロテアーゼは、組換えDNA技術によって生成される。組換え発現に対する代替として、プロテアーゼタンパク質またはポリペプチドが、標準ペプチド合成技術を用いて化学合成され得る。
【0115】
プロテアーゼタンパク質の生物学的に活性な部分としては、全長プロテアーゼタンパク質よりも少ないアミノ酸を含み、かつプロテアーゼタンパク質の少なくとも1つの活性を呈示する、プロテアーゼタンパク質のアミノ酸配列に十分に相同であるかまたは由来するアミノ酸配列を含むペプチドが挙げられる。代表的には、生物学的に活性な部分は、プロテアーゼタンパク質の少なくとも1つの活性を有するドメインまたはモチーフを含む。プロテアーゼタンパク質の生物学的に活性な部分は、例えば、10、25、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300またはそれより多くのアミノ酸残基の長さのポリペプチドである。
【0116】
さらに、タンパク質の他の生物学的に活性な部分は、タンパク質の他の領域が欠失しているが、これは、組換え技術によって調製され得、そしてネイティブプロテアーゼの機能的活性の1つ以上について評価され得る。
【0117】
一実施形態では、プロテアーゼは、本明細書中に記載の骨格の1つまたはこの骨格の変異体の1つのアミノ酸配列を有する。プロテアーゼタンパク質は、本明細書中に記載の骨格の1つまたはこの骨格の変異体の1つに対して実質的に相同であり、そしてタンパク質の機能的活性を保持しているが、天然の対立遺伝子変動または変異誘発に起因してアミノ酸配列が異なる。従って、別の実施形態では、プロテアーゼは、本明細書中に記載の骨格の1つまたはこの骨格の変異体の1つのアミノ酸配列に対して少なくとも約45%相同であるアミノ酸配列を含み、そして本明細書中に記載の骨格の1つまたはこの骨格の変異体の1つの機能的活性を保持している。好ましい実施形態では、プロテアーゼは、骨格の1つのアミノ酸配列に対して少なくとも約90%相同であるアミノ酸配列を含む。別の好ましい実施形態では、プロテアーゼは、骨格の1つのアミノ酸配列に対して少なくとも約95%相同であるアミノ酸配列を含む。別の好ましい実施形態では、プロテアーゼは、骨格の1つのアミノ酸配列に対して少なくとも約99%相同であるアミノ酸配列を含む。
【0118】
(2つ以上の配列間の相同性の決定)
2つのアミノ酸配列または2つの核酸の相同性パーセントを決定するために、これら配列が最適比較目的に整列される(例えば、第二のアミノ酸または核酸配列との最適な整列のために、ギャップが、第一のアミノ酸または核酸配列の配列中に導入され得る)。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドが比較される。第一の配列における位置が、第二の配列における対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占められる場合、これら分子は、その位置で相同である(すなわち、本明細書中に使用されるアミノ酸または核酸「相同性」は、アミノ酸または核酸「同一性」と等価である)。
【0119】
核酸配列相同性は、2つの配列間の同一性の度合いとして決定され得る。相同性は、当該分野で公知のコンピュータープログラムを用いて決定され得る(例えば、GCGプログラムパッケージで提供されるGAPソフトウェア)。NeedlemanおよびWunsch,1970.JMol Biol 48:443−453を参照のこと。核酸配列比較について以下の設定:GAP作出ペナルティ5.0およびGAP拡張ペナルティ0.3を有するGCG GAPソフトウェアを用いて、上記に言及したこれら類似の核酸配列のコード領域は、好ましくは、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%の同一性度合いを示す。
【0120】
用語「配列同一性」は、2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列が、比較する特定領域にわたって、一残基ごとに同一である度合いをいう。用語「配列同一性パーセント」は、2つの最適に整列された配列を、比較するその領域にわたって比較し、両配列において同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、U、またはI(核酸の場合))が存在する位置の数を決定して、適合した位置の数を得、適合した数を、比較する領域における位置の総数(すなわち、ウィンドウサイズ)で割り、そしてその結果に100を掛けて配列同一性パーセントを得ることによって算定される。本明細書中で使用される用語「実質的同一性」は、ポリヌクレオチド配列の特徴を示し、ここでこのポリヌクレオチドは、比較領域にわたって、参照配列に比較して、少なくとも80%配列同一性、好ましくは少なくとも85%同一性、しばしば90〜95%配列同一性、より通常には少なくとも99%同一性を有する配列を含む。
【0121】
(キメラおよび融合タンパク質)
本発明はまた、プロテアーゼキメラまたは融合タンパク質を提供する。本明細書中で使用されるように、プロテアーゼ「キメラタンパク質」または「融合タンパク質」は、非プロテアーゼポリペプチドに作動可能に連結されたプロテアーゼポリペプチドを含む。「プロテアーゼポリペプチド」は、本明細書中に記載の骨格の1つまたはこの骨格の変異体の1つに対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドをいうが、「非プロテアーゼポリペプチド」は、骨格の1つに実質的に相同ではないタンパク質(例えば、その骨格とは異なり、同じ生物または異なる生物に由来するタンパク質)に対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドをいう。プロテアーゼ融合タンパク質においては、プロテアーゼポリペプチドは、プロテアーゼタンパク質の全てまたは一部に対応し得る。1つの実施形態では、プロテアーゼ融合タンパク質は、プロテアーゼタンパク質の少なくとも1つの生物学的に活性な部分を含む。別の実施形態では、プロテアーゼ融合タンパク質は、プロテアーゼタンパク質の少なくとも2つの生物学的に活性な部分を含む。なお別の実施形態では、プロテアーゼ融合タンパク質は、プロテアーゼタンパク質の少なくとも3つの生物学的に活性な部分を含む。融合タンパク質においては、用語「作動可能に連結された」は、プロテアーゼポリペプチドと非プロテアーゼポリペプチドとが互いとインフレームに融合されることを示すことが意図される。非プロテアーゼポリペプチドは、プロテアーゼポリペプチドのN末端またはC末端に融合され得る。
【0122】
1つの実施形態では、融合タンパク質は、GST−プロテアーゼ融合タンパク質であり、ここではプロテアーゼ配列が、GST(グルタチオンS−トランスフェラーゼ)配列のN末端に融合されている。このような融合タンパク質は、組換えプロテアーゼポリペプチドの精製を容易にし得る。
【0123】
別の実施形態では、融合タンパク質は、Fc融合であり、ここではプロテアーゼ配列が、免疫グロブリンG由来のFcドメインのN末端に融合されている。このような融合タンパク質、増大されたインビボ薬力学特性を有し得る。
【0124】
別の実施形態では、融合タンパク質は、そのN末端に異種シグナル配列を含むプロテアーゼタンパク質である。特定の宿主細胞(例えば、哺乳動物宿主細胞)では、異種シグナル配列の使用によって、プロテアーゼの発現および/または分泌が増大され得る。
【0125】
本発明のプロテアーゼキメラまたは融合タンパク質は、標準的な組換えDNA技術によって生成され得る。例えば、異なるポリペプチド配列をコードするDNAフラグメントが、従来の技術に従って、インフレームで共に連結される(例えば、連結用の平滑末端または付着末端、制限酵素消化(適切な末端を提供する)、適切な場合には突出末端の埋め込み、アルカリホスファターゼ処理(望ましくない接合を避ける)、および酵素連結を用いることにより)。別の実施形態では、融合遺伝子は、従来の技術(自動DNA合成機を含む)によって合成され得る。あるいは、遺伝子フラグメントのPCR増幅がアンカープライマーを用いて実施され得、これらプライマーは、2つの連続的な遺伝子フラグメントの間に相補的な突出部を生じ、これらのプライマーが続いてアニーリングされ、再増幅されて、キメラ遺伝子配列を生成し得る(例えば、Ausubelら(編)CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley & Sons,1992を参照のこと)。さらに、融合部分(例えば、GSTポリペプチド)を予めコードする多くの発現ベクターが市販されている。プロテアーゼをコードする核酸は、融合部分がプロテアーゼタンパク質にインフレームに連結されるように、このような発現ベクター中にクローニングされ得る。
【0126】
(プロテアーゼアゴニストおよびアンタゴニスト)
本発明はまた、プロテアーゼアゴニスト(すなわち、模倣物)またはプロテアーゼアンタゴニストのいずれかとして機能する、プロテアーゼタンパク質の改変体に関する。プロテアーゼタンパク質の改変体は、変異誘発(例えば、プロテアーゼタンパク質の個別の点変異または短縮化)によって生成され得る。プロテアーゼタンパク質のアゴニストは、プロテアーゼタンパク質の天然に存在する形態の生物学的活性と実質的に同じ活性、またはその生物学的活性のサブセットを保持し得る。プロテアーゼタンパク質のアンタゴニストは、プロテアーゼタンパク質の天然に存在する形態の活性の1つ以上を阻害し得る(例えば、プロテアーゼタンパク質と同じ標的タンパク質を切断することにより)。従って、特異的生物学的効果は、限定された機能の改変体での処置によって誘起され得る。1つの実施形態では、タンパク質の天然に存在する形態の生物学的活性のサブセットを有する改変体での被験体の処置は、被験体において、プロテアーゼタンパク質の天然に存在する形態での処置よりも副作用が少ない。
【0127】
(アポトーシス)
(アポトーシスを阻害する方法)
また、本発明には、アポトーシスを阻害する方法が含まれる。アポトーシス(これは、プログラムされた細胞死としても公知である)は、発生、加齢、および種々の病状状態において役割を演じる。生物(脊椎動物および無脊椎動物の両方)の発生において、細胞は、通常の形態発生プロセスの部分として特定時に特定位置で死亡する。アポトーシスのプロセスは、いくつかの事象によって特徴付けられるが、これらに限定されない。細胞は、それらの細胞接合および微絨毛を喪失し、細胞質が凝縮し、そして核クロマチンは、多数の別個の塊に縁を付ける。核が断片化するにつれ、細胞質は収縮し、そしてミトコンドリアおよびリボソームは密に圧縮されるようになる。小胞体の拡張およびその原形質膜との融合後、細胞はばらならになって、いくつかの膜結合型小胞、アポトーシス体になり、これらは、通常、隣接する本体によって貪食される。オリゴヌクレオチドフラグメントへのクロマチンの断片化がアポトーシスの最終段階の特徴であるので、DNA切断パターンが、その発生についてのインビトロアッセイとして使用され得る(Cory,Nature 367:317−18,1994)。
【0128】
1つの局面では、本発明は、その必要のある被験体においてアポトーシス関連障害を処置または予防する方法であって、当該被験体に、治療的に有効な量のプロテアーゼインヒビターを投与し、それによりアポトーシスが阻害される、方法を提供する。被験体は、例えば、任意の哺乳動物(例えば、ヒト、霊長類(例えば、ヒト)、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、またはブタ)であり得る。用語「治療的に有効な」とは、例えば、用いられるプロテアーゼインヒビターの量が、アポトーシス関連障害を改善するのに十分な量であることを意味する。
【0129】
アポトーシス関連障害には、例えば、免疫不全疾患(AIDS/HIVを含む)、老化、神経変性疾患、任意の変性障害、虚血性および再灌流細胞死、急性虚血性損傷、不妊症、創傷治癒などが含まれる。
【0130】
アポトーシスを測定するための多くの方法(本明細書中に記載の方法を含む)は、当業者に公知であり、このような方法には、ゲル電気泳動によるDNAはしご形成および電子顕微鏡による形態学的検査という古典的な方法が含まれるが、これらに限定されない。アポトーシスを測定するためのより最近でかつ容易に使用される方法は、フローサイトメトリーである。フローサイトメトリーは、アポトーシス細胞に対する迅速かつ定量的な測定を可能にする。細胞におけるアポトーシスの測定のための多くの異なるフローサイトメトリー方法が、記載されている(Darzynkiewiczら,Cytometry 13:795−808,1992)。これらの方法の多くは、種々のDNA染料(すなわち、ヨウ化プロピジウム(PI)、DAPI、Hoechst 33342)での染色によって細胞におけるアポトーシス変化を測定するが、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TUNNEL)を用いる技術またはニックトランスレーションアッセイもまた、開発されている(Gorczycaら,Cancer Res 53:1945−1951,1993)。近年、アポトーシスのマーカーとして細胞表面上のホスファチジルセリン露出の検出のためにアネキシンVを使用する、迅速フローサイトメトリー染色法が、市販されるようになっている。最新のフローサイトメトリーアッセイは、カスパーゼ−3活性(アポトーシスを受けている細胞の早期マーカー)を測定し、そしてこのアッセイを行うためのキットが市販されている(Nicholsonら,Nature 376:37−43,1995)。
【0131】
プロテアーゼは、カスパーゼを切断するために投与されて、それによりその活性を阻害し得る。好ましい実施形態では、プロテアーゼは、カスパーゼ−3を切断するために投与され得る。プロテアーゼはまた、アポトーシスに関与する他のタンパク質(例えば、ヒトチトクロームc、ヒトApaf−1、ヒトカスパーゼ−9、ヒトカスパーゼ−7、ヒトカスパーゼ−6、ヒトカスパーゼ−2、ヒトBAD、ヒトBID、ヒトBAX、ヒトPARP、またはヒトp53)を切断し得る。これらのタンパク質を切断することによって、プロテアーゼは、それによりそれらを不活性化する。このようにして、プロテアーゼは、アポトーシスを阻害するために使用され得る。
【0132】
別の局面では、アポトーシスは、アポトーシスを阻害するのに十分な量でプロテアーゼと細胞を接触させることにより、細胞において阻害される。プロテアーゼに露出されている(すなわち、プロテアーゼと接触されている)細胞集団は、任意数の細胞(すなわち1つ以上の細胞)であり得、そしてインビトロ、インビボ、またはエクスビボで提供され得る。細胞は、プロテアーゼタンパク質と接触されるか、またはプロテアーゼをコードするポリオヌクレオチドでトランスフェクトされる。
【0133】
(アポトーシスを誘発する方法)
また、本発明には、アポトーシスを誘発する方法が含まれる。1つの局面では、アポトーシスは、アポトーシスを誘発するのに十分な量でプロテアーゼを投与することにより、その必要のある被験体において誘発される。被験体は、例えば、任意の哺乳動物、霊長類(例えば、ヒト)、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、またはブタであり得る。種々の局面では、被験体は、癌または自己免疫障害に対して感受性である。
【0134】
プロテアーゼは、抗脈管形成化合物と共に投与され得る。抗脈管形成化合物の例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:チロシンキナーゼインヒビター、表皮由来増殖因子インヒビター、線維芽細胞由来増殖因子インヒビター、血小板由来増殖因子インヒビター、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)インヒビター、インテグリンブロッカー、インターフェロンα、インターフェロン誘導性タンパク質10、インターロイキン−12、ペントサンポリサルフェート、シクロオキシゲナーゼインヒビター、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)、シクロオキシゲナーゼ−2インヒビター、カルボキシアミドトリアゾール、テトラヒドロコルチゾール、コンブレタスタチンA−4、スクアラミン、6−O−クロロアセチル−カルボニル)−フマギロール、サリドマイド、アンギオスタチン、エンドスタチン、トロポニン−1、VEGFに対する抗体、血小板因子4またはトロンボスポンジン。
【0135】
いくつかの実施形態では、プロテアーゼはさらに、化学治療化合物と共に投与され得る。化学治療化合物の例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:パクリタキセル、タキソール、ロバスタチン、ミノシン、タモキシフェン、ゲムシタビン、5−フルオロウラシル(5−FU)、メトトレキセート(MTX)、ドセタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、テニポシド、エトポシド、アドリアマイシン、エポチロン、ナベルビン、カンプトテシン、ダウノルビシン(daunonibicin)、ダクチノマイシン、ミトキサントロン、アムサクリン、エピルビシン、またはイダルビシン。
【0136】
別の局面では、アポトーシスは、アポトーシスを誘発するのに十分な量のプロテアーゼと細胞を接触させることにより、細胞において誘発される。プロテアーゼに露出されている(すなわち、プロテアーゼと接触されている)細胞集団は、任意数の細胞(すなわち1つ以上の細胞)であり得、そしてインビトロ、インビボ、またはエクスビボで提供され得る。細胞は、プロテアーゼタンパク質と接触され得るか、またはプロテアーゼをコードするポリオヌクレオチドでトランスフェクトされ得る。
【0137】
いくつかの疾患状態は、罹患細胞におけるアポトーシスの不完全ダウンレギュレーションの発達に関連付けられている。例えば、新形成は、少なくとも一部分には、アポトーシス耐性状態から生じる。この状態では、細胞増殖シグナルが細胞死シグナルを不適切に上回る。さらに、いくつかのDNAウイルス(例えば、エプスタイン−バーウイルス、アフリカ豚コレラウイルス、およびアデノウイルス)が、宿主細胞機構に寄生し、それら自身の複製を駆動する。同時に、それらはアポトーシスを調整して、細胞死を抑制し、標的細胞にウイルスを複製させる。さらに、特定の疾患状態(例えば、リンパ球増殖性状態、癌(薬物耐性癌を含む)、関節炎、炎症、自己免疫疾患など)は、細胞死調節のダウンレギュレーションから生じ得る。このような疾患状態においては、アポトーシス機構を促進することが望ましい。
【実施例】
【0138】
(実施例1.I99AグランザイムBの調製および貯蔵)
野生型ラットグランザイムB構築物を、以前に記載(Harrisら,JBC,1998,(273):27364−27373)されたように調製した。以下の点変異を、pPICZαAプラスミドに導入した:N218A、N218T、N218V、I99A、I99F、I99R、Y174A、Y174V。各変異を、5’AOX領域および3’AOX領域に対するプライマーを用いて配列決定し、続いてX33細胞に形質転換し、ゼオシン(Invitrogen,La Jolla CA)を用いて選択することにより、確認した。各改変体についての発現および精製は、野生型ラットグランザイムBについて以前に記載された方法(Harrisら,JBC,1998,(273):27364−27373)と同一とした。
【0139】
プロテアーゼラットグランザイムBを、部位特異的変異誘発のQuikChange(Stratagene)法を用いて、Ile99をアラニンに変異させた。I99A変異を導入するためのDNAプライマーは以下の通りであった:順方向プライマー:
【0140】
【化1】



(配列番号3)逆方向プライマー:
【0141】
【化2】



(配列番号5)。以下を含むポリメラーゼ連鎖反応を行った:野生型二本鎖DNA、変異に重なり合う2つのプライマー、反応緩衝液、dNTP’s、およびDNAポリメラーゼ。アニーリングおよび増幅を30ラウンド行った後、反応を停止させた。酵素DpnIを添加し、改変塩基対を含む野生型DNAを消化し、得られたニックDNA鎖を細菌に形質転換した。ゼオシンに対する選択は、ポジティブクローンのみが増殖することを確実にする。この変異を、グランザイムB遺伝子を配列決定することにより確認した。同じプロトコルを用いて、変異誘発プライマーに適切な変更を加えて、残りのグランザイムB変異体を作製した。
【0142】
改変体グランザイムBプロテアーゼを含むDNAを、公開されたプロトコル(Invitrogen)によって、Pichia pastoris X33細胞に形質転換し、そしてポジティブな形質転換体を、ゼオシンで選択した。コロニーを1L液体培地に移し、OD600=1.0よりも大きい細胞密度にまで増殖させた。タンパク質発現を、0.5%メタノールの添加によって誘発し、72時間にわたって定常保持した。改変体プロテアーゼを精製するために、培養物を遠心分離し、そして上清を採集した。密度ベースのローディングによって、上清をSP−Sepharose Fast Flowカチオン交換カラムに流した。カラムを50mM Mes、pH6.0、100mM NaClで、およびよりストリンジェントに50mM MES、pH6.0、250mM NaClで洗浄した。タンパク質を、50mM MES、pH 6.0、1 M NaClで溶出し、そしてカラムを50mM MES、pH 6.0、2M NaCl、および0.5M NaOHで洗浄した。得られたプロテアーゼは、90%未満の純度であった。4℃での貯蔵のために、最終プロテアーゼを交換し、50mM MES、pH6.0、100mM NaCl中に濃縮した。
【0143】
あるいは、精製後、各改変体を、280nm(e280=13000M−1cm−1)での吸光度によって計量し、野生型エコチン(ecotin)またはM84Dエコチンで以前に記載されたように滴定し、50mM MES、pH 6.0および100mM NaClの緩衝液中に交換し、4℃で保存した。
【0144】
(実施例2.ACC位置走査ライブラリーの合成およびスクリーニング)
(ACC−樹脂合成)
7−Fmoc−アミノクマリン−4−酢酸を、7−アミノクマリン−4−酢酸をFmoc−Clで処理することにより調製した。7−アミノクマリン−4−酢酸(10.0g、45.6mmol)とH0(228ml)とを混合した。NaHCO(3.92g、45.6mmol)を少しずつ添加し、続いてアセトン(228ml)を添加した。この溶液を、氷浴を用いて冷却し、そしてFmoc−Cl(10.7g、41.5mmol)を、1時間にわたって攪拌しながら添加した。この氷浴を除去し、そしてこの溶液を終夜攪拌した。ロータリーエバポレーションを用いてアセトンを除去し、そして得られた粘着性の固体を濾過によって採集し、数部分にわたってヘキサンで洗浄した。ACC−樹脂を、Rink Amide AM樹脂と7−Fmoc−アミノクマリン−4−酢酸との縮合によって調製した。Rink Amide AM樹脂(21g、17mmol)をDMF(200ml)で溶媒和した。この混合物を30分間かき混ぜ、そしてフィルターカニューレを用いて濾過し、それに20%ピペリジン(DMF(200ml)中)を添加した。25分間かき混ぜた後、この樹脂を濾過し、そしてDMF(3回、各200ml)で洗浄した。7−Fmoc−アミノクマリン−4−酢酸(15g、34mmol)、HOBt(4.6g、34mmol)、およびDMF(150ml)を添加し、続いてジイソプロピルカルボジイミド(DICI)(5.3ml、34mmol)を添加した。この混合物を終夜かき混ぜ、濾過し、洗浄し(DMF、200mlで3回;テトラヒドロフラン、200mlで3回;MeOH、200mlで3回)、そしてPOで乾燥させた。樹脂の置換レベルは、0.58mmol/g(>95%)であった(Fmoc分析により決定)。
【0145】
(P1多様ライブラリー合成)
個別P1置換Fmoc−アミノ酸ACC−樹脂(約25mg、0.013mmol)をMultiChem 96ウェル反応装置のウェルに添加した。樹脂含有ウェルをDMF(0.5ml)で溶媒和した。濾過した後、20%ピペリジン(DMF溶液(0.5ml)中)を添加し、続いて30分間かき混ぜた。反応ブロックのウェルを濾過し、そしてDMF(0.5mlで3回)で洗浄した。ランダム化したP2位を導入するために、Fmoc−アミノ酸の等速性混合物[4.8mmol、10当量/ウェル;Fmoc−アミノ酸、mol%:Fmoc−Ala−OH、3.4;Fmoc−Arg(Pbf)−OH、6.5;Fmoc−Asn(Trt)−OH、5.3;Fmoc−Asp(O−t−Bu)OH、3.5;Fmoc−Glu(O−t−Bu)−OH、3.6;Fmoc−Gln(Trt)−OH、5.3;Fmoc−Gly−OH、2.9;Fmoc−His(Trt)−OH、3.5;Fmoc−Ile−OH、17.4;Fmoc−Leu−OH、4.9;Fmoc−Lys(Boc)−OH、6.2;Fmoc−Nle−OH、3.8;Fmoc−Phe−OH、2.5;Fmoc−Pro−OH、4.3;Fmoc−Ser(O−t−Bu)−OH、2.8;Fmoc− Thr(O−t−Bu)−OH、4.8;Fmoc−Trp(Boc)−OH、3.8;Fmoc−Tyr(O−t−Bu)−OH、4.1;Fmoc−Val−OH、11.3]をDICI(390μl、2.5mmol)、およびHOBt(340mg、2.5mmol)(DMF(10ml)中)でプレ活性化した。この溶液(0.5ml)をウェルの各々に添加した。反応ブロックを3時間かき混ぜ、濾過し、そしてDMF(0.5mlで3回)で洗浄した。ランダム化されたP3位およびP4位を、同様にして組み込んだ。P4アミノ酸のFmocを除去し、そして樹脂をDMF(0.5mlで3回)で洗浄し、そしてAcOH(150μl、2.5mmol)、HOBt(340mg、2.5mmol)、およびDICI(390μl、2.5mmol)(DMF(10ml)中)のキャッピング溶液0.5mlで処理した。4時間かき混ぜたあと、樹脂をDMF(0.5mlで3回)およびCHCl(0.5mlで3回)で洗浄し、そして95:2.5:2.5のTFA/TIS/HOの溶液で処理した。1時間インキュベートしたあと、反応ブロックを開いて、96深ウェルタイタープレート上に配し、そしてウェルをさらなる切断溶液(0.5mlで2回)で洗浄した。採集プレートを濃縮し、そして基質含有ウェル中の物質をEtOH(0.5ml)で希釈して、2倍濃縮した。個々のウェルの内容物をCHCN/HO混合物から凍結乾燥した。単一基質の収量に基づいて、各ウェル中の基質の総量を内輪に見積もると、0.0063mmol(50%)であった。
【0146】
(P1固定ライブラリー合成)
数グラム量のP1置換ACC−樹脂を、記載の方法によって合成し得た。Fmoc−アミノ酸置換ACC−樹脂を、96ウェル反応ブロックの57ウェル中に配した:サブライブラリーを、19アミノ酸でなる第二の固定位置(P4、P3、P2)によって示した(システインを省き、ノルロイシンをメチオニンの代わりに用いた)。基質の合成、キャッピング、および切断は、P2、P3、およびP4サブライブラリーについて、等速性混合物ではなく、個々のアミノ酸(5当量のFmoc−アミノ酸モノマー、5当量のDICI、および5当量のHOBt(DMF中))を、空間的に配置されたP2位、P3位、またはP4位に取り込んだことを除いて、前の節の記載と同一とした。
【0147】
完全で多様でかつP1を固定したコンビナトリアルライブラリーの調製を、上記のように実施した。ライブラリーを96ウェルプレート中に分別し、250μMの最終濃度にした。改変体プロテアーゼをグランザイム活性緩衝液(50mM Na Hepes、pH8.0、100mM NaCl、0.01% Tween−20)中に希釈し、50nM〜1μMの間の濃度にした。Ac−IEPD−AMCに対する初期活性を用いて、改変体プロテアーゼ濃度を50nM野生型ラットグランザイムBにほぼ等しい濃度にまで調整した。P1−Aspライブラリーにおける酵素活性を、Spectra−Max Delta蛍光計(flourimeter)(会社名)において30℃で1時間アッセイした。励起および放射を、それぞれ380nmおよび460nmで測定した。
【0148】
(実施例3.I99AグランザイムBの個別速度論測定)
個別速度論測定を、Spectra−Max Delta蛍光計(fluorimeter)を用いて実施した。各プロテアーゼを、アッセイ緩衝液中50nM〜1μMの間に希釈した。全てのACC基質を、5〜500μMの間にMeSOで希釈し、AMC基質を20〜2000μMの間に希釈した。各アッセイは、5%未満のMeSOを含んだ。酵素活性を、全部で10分の間、それぞれ380nmの励起波長および460nmの放射波長で、15秒毎にモニタリングした。全てのアッセイを、1%DMSO中で実施した。
【0149】
この方法を使用して、I99AグランザイムBをスクリーニングした。I99Aグランザイムを、位置走査コンビナトリアル基質ライブラリーにおいてプロファイリングし、変異の効果を決定した。ライブラリーを上記のようにして調製し、そして96ウェルプレート中に分別し、250μMの最終濃度にした。改変体プロテアーゼを、グランザイム活性緩衝液(50mM Na Hepes、pH8.0、100mM NaCl、0.01%Tween−20)中に50nM〜1μMの間の濃度に希釈した。Ac−IEPD−AMCに対する初期濃度を用いて、改変体プロテアーゼ濃度を50nM野生型ラットグランザイムBにほぼ等しい濃度に調整した。P1−Aspライブラリーにおける酵素活性を、Spectra−Max Delta蛍光計で30℃で1時間アッセイした。励起および放射を、それぞれ、380nmおよび460nmで測定した。グランザイムB改変体のプロフィールを、野生型プロフィールと比較し、その相違を決定した。I99A変異体について、例えば、P2アミノ酸での特異性が、野生型から顕著に変更された。プロリンについてわずかな選択性を有する前者の広範な優先性が、PheおよびTyrのような疎水性残基についての強い優先性と置き換えられた。改変体プロテアーゼの選択性もまた変更された。野生型は、P2サブ部位で無差別であり、その部位に任意のアミノ酸を含む基質を加水分解した。I99Aプロテアーゼはずっとより選択的である。P2部位でのPheが、いかなる他のアミノ酸よりもずっと高い度合いで好まれる(上記表5を参照のこと)。
【0150】
(実施例4.腫瘍壊死因子および腫瘍壊死因子レセプターのタンパク質分解切断および不活性化)
(レセプター切断)
新鮮に単離された好中球(PMN)を、0.2%ウシ胎児血清(FCS)を有するRPMI1640中1×10細胞/mlで再懸濁し、そしてTNF−RlまたはTNF−R2の茎部領域に特異的なプロテアーゼの種々の濃度とインキュベートした。37℃での1〜40分にインキュベーション後、プロテアーゼインヒビターを添加し、反応を停止させ、そして培地中に放出されたTNF−Rの量を、ELISA(Roche)を用いて定量した。
【0151】
(TNF切断)
125I−TNF(40,000cpm)を種々の濃度のプロテアーゼとインキュベートし、次いでこのサンプルをSDS−PAGEサンプル緩衝液中でボイルし、そして12%ポリアクリルアミドゲル上で調べた。ゲルを乾燥し、そして−70℃でX線フィルム(Kodak)に露出させた。
【0152】
(TNF結合アッセイ)
125I−TNFまたはPMNを、上述のように、種々の濃度のプロテアーゼとインキュベートした。正常PMNへのプロテアーゼに露出された125I−TNFの結合、またはプロテアーゼに露出されたPMNへの正常125I−TNFの結合を、シンチレーションを用いて定量した。簡潔に言えば、10細胞を、プロテアーゼインヒビターの存在下で、96ウェルフィルタープレート(Millipore)中の種々の濃度の125I−TNFとインキュベートした。次いで、細胞を真空吸引によって3回洗浄し、次いで、30μlのシンチレーション液(Wallac)を各ウェルに添加した。次いで、シンチレーションをWallac Microbetaシンチレーションカウンターで計数した。(van Kesselら,J.Immunol.(1991)147:3862−3868、およびPorteauら,JBC(1991)266:18846−18853から採用)。
【0153】
(実施例5.プロテアーゼファージディスプレイを用いた、ペプチド配列特異的標的切断を可能にする酵素の選択)
ファージミドを、このファージミドが、(i)M13ファージ形態発生に必要な遺伝子の全てを有し;(ii)パッケージングシグナルを有し(このシグナルは、ファージ複製起点と相互作用して、一本鎖DNAの生産を開始させる);(iii)破壊されたファージ複製起点を有し;そして(iv)アンピシリン耐性遺伝子を有するように、構築する。
【0154】
不十分な(inefficient)ファージ複製起点とインタクトなプラスミド複製起点との組み合わせは、宿主細菌におけるベクターの増殖において、ファージよりもプラスミド(RF、複製形態、DNAとして)の方を好む。従って、それは、宿主を殺傷することなく維持され得る。さらに、プラスミド起点の保有は、それが、ファージミドの効率的なファージ様増殖とは独立して複製し得ることを意味する。アンピシリン耐性遺伝子によって、このベクターは増幅され得、次にはファージ粒子へのファージミドDNAのパッケージングを増大し得る。
【0155】
遺伝子3または遺伝子8のいずれかのM13コートタンパク質へのプロテアーゼ遺伝子の融合物を、標準的なクローニング方法を用いて構築し得る。(Sidhu,Methods in Enzymology,2000,V328,p333)。次いで、プロテアーゼをコードする遺伝子内での改変体のコンビナトリアルライブラリーを、p3またはp8のM13コードタンパク質への融合物としてM13の表面上に提示し、そして目的の標的切断に対応する固定化されたアルデヒド含有ペプチドに対してパンニングする。アルデヒド部分は、プロテアーゼの切断され易い結合を切断するプロテアーゼの能力を阻害するが、この部分は、ペプチドのプロテアーゼ認識に干渉しない。固定化された標的ペプチドに対する特異性を有する改変体プロテアーゼ提示ファージが、標的ペプチドでコーティングされたプレートに結合するが、非特異的ファージは洗い流される。パンニングの継続ラウンドを通して、標的配列に対して増大された特異性を有するプロテアーゼを単離し得る。次いで、標的配列を、アルデヒドなしで合成し得、そして単離されたファージを、ペプチドの特異的加水分解について試験し得る。
【0156】
(実施例6.ライブラリーの合成および蛍光スクリーニング)
(A.P1多様ライブラリー)
(A(i).合成)
個別P1置換Fmocアミノ酸ACC−樹脂(約25mg、0.013mmol)をMulti−Chem 96ウェル反応装置のウェルに添加した。樹脂含有ウェルを、DMF(0.5mL)で溶媒和した。20%ピペリジン(DMF溶液(0.5mL)中)を添加し、続いて30分間かき混ぜた。反応ブロックのウェルを濾過し、そしてDMF(3×0.5mL)で洗浄した。ランダム化したP2位を導入するために、Fmoc−アミノ酸の等速性混合物(Ostresh,J.M.ら,(1994)Biopolymers 34:1681−9)(4.8mmol,10当量/ウェル;Fmoc−アミノ酸、mol%:Fmoc−Ala−OH、3.4;Fmoc−Arg(Pbf)−OH、6.5;Fmoc−Asn(Trt)−OH、5.3;Fmoc−Asp(O−t−Bu)−OH、3.5;Fmoc−Glu(O−t−Bu)−OH、3.6;Fmoc−Gln(Trt)−OH、5.3;Fmoc−Gly−OH、2.9;Fmoc−His(Trt)−OH、3.5;Fmoc−Ile−OH、17.4;Fmoc−Leu−OH、4.9;Fmoc−Lys(Boc)−OH、6.2;Fmoc−Nle−OH、3.8;Fmoc−Phe−OH、2.5;Fmoc−Pro−OH、4.3;Fmoc−Ser(O−t−Bu)−OH、2.8;Fmoc−Thr(O−t−Bu)−OH、4.8;Fmoc−Trp(Boc)−OH、3.8;Fmoc−Tyr(O−t−Bu)−OH、4.1;Fmoc−Val−OH、11.3)を、DICI(390μL、2.5mmol)、およびHOBt(340mg、2.5mmol)(DMF(10mL)中)でプレ活性化した。溶液(0.5mL)をウェルの各々に添加した。反応ブロックを3時間かき混ぜ、濾過し、そしてDMF(0.5mLで3回)で洗浄した。ランダム化されたP3位およびP4位を、同様にして組み込んだ。P4アミノ酸のFmocを除去し、そして樹脂をDMF(3×0.5ml)で洗浄し、そしてAcOH(150μL、2.5mmol)、HOBt(340mg、2.5mmol)、およびDICI(390μl、2.5mmol)(DMF(10ml)中)のキャッピング溶液0.5mlで処理した。4時間かき混ぜたあと、樹脂をDMF(3×0.5mL)、CHCl(3×0.5ml)で洗浄し、そして95:2.5:2.5のTFA/TIS/HOの溶液で処理した。1時間インキュベートしたあと、反応ブロックを開いて、96深ウェルタイタープレート上に配し、そしてウェルをさらなる切断溶液(2×0.5ml)で洗浄した。採集プレートを濃縮し、そして基質含有ウェルをEtOH(0.5ml)で希釈して、2倍濃縮した。個々のウェルの内容物をCHCN/HO混合物から凍結乾燥した。単一基質の収量に基づいて、各ウェル中の基質の総量を内輪に見積もると、0.0063mmol(50%)であった。
【0157】
(A(ii).ライブラリーの酵素アッセイ)
タンパク質分解酵素の濃度を、280nmで測定した吸光度によって決定した(Gill,S.C.ら,(1989)Anal Biochem 182:319−26)。触媒活性トロンビン、プラスミン、トリプシン、uPA、tPA、およびキモトリプシンの割合を、MUGBまたはMUTMACを用いた活性部位滴定によって定量した(Jameson,G.W.ら,(1973)Biochemical Journal 131:107−117)。
【0158】
PS−SCLからの基質をDMSO中に溶解した。0.1μMの最終濃度のために、およそ1.0×10−9molのP1−Lys、P1−Arg、またはP1−Leuの各サブライブラリー(361化合物)を96ウェル微蛍光プレート(Dynex Technologies,Chantilly,Va.)の57ウェルに添加した。各化合物において0.01μMの最終濃度のために、およそ1.0×10−1molの各P1多様サブライブラリー(6859化合物)を96ウェルプレートの20ウェルに添加した。加水分解反応を、酵素(0.02nM〜100nM)の添加によって開始させ、380nmの励起および450mmまたは460nmの放射で、Perkin Elmer LS50B Luminescence Spectrometerを用いて蛍光測定によりモニタリングした。セリンプロテアーゼのアッセイを、50mM Tris、pH 8.0、100mM NaCl、0.5mM CaCl、0.01%Tween−20、および1%DMSO(基質由来)を含む緩衝液中で25℃で実施した。システインプロテアーゼ、パパイン、およびクルザインのアッセイを、100mM酢酸ナトリウム、pH5.5、100mM NaCl、5mM DTT、1mM EDTA、0.01%Brij−35、および1% DMSO(基質由来)を含む緩衝液中で25℃で実施した。
【0159】
(B.137.180基質配列のP1多様ライブラリーを用いたプロテアーゼのプロファイリング)
基質配列におけるP1部位への全てのアミノ酸の付着の可能性を調べるために、P1多様テトラペプチドライブラリーを作出した。P1多様ライブラリーは、20ウェルからなり、これらウェルでは、P1位のみが、全てのアミノ酸(システインを除き、ノルロイシンを含む)であるように系統的に一定に保持された。P2、P3、およびP4位は、ウェルあたり全部で6,859の基質配列について、全てのアミノ酸の等モル混合物からなる。いくつかのセリンおよびシステインプロテアーゼをプロファイリングし、最適なP1アミノ酸の同定についてのこのライブラリーの適用性を調べた。キモトリプシンは、大きな疎水性アミノ酸に対して期待された特異性を示した。トリプシンおよびトロンビンは、P1−塩基性アミノ酸に対して優先性を示した(Arg>Lys)。プラスミンもまた、塩基性アミノ酸に対して優先性を示した(Lys>Arg)。グランザイムB(P1−Asp特異性を有する唯一の既知の哺乳動物セリンプロテアーゼ)は、全ての他のアミノ酸(他の酸性アミノ酸Gluを含む)よりもアスパラギン酸に対して明瞭な優先性を示した。ヒト好中球エラスターゼについてのP1−プロフィールは、アラニンおよびバリンに対して通常の優先性を有する。システインプロテアーゼ、パパイン、およびクルザインは、アルギニンに対して適度の優先性があるが、これらの酵素について知られている広範なP1−基質配列特異性を示した。
【0160】
(実施例7.個別基質の切断についてのスクリーニング)
所望の特異性プロフィールに適合する変異体プロテアーゼ(基質ライブラリーによって決定)を、所望の切断配列に対応する個別ペプチド基質を用いてアッセイする。個別速度論測定を、Spectra−Max Delta 蛍光計(Molecular Devices)を用いて実施する。各プロテアーゼをアッセイ緩衝液中50nM〜1μMの間に希釈する。全てのACC基質をMeSOで5〜500μMの間に希釈し、AMC基質を20〜2000μMの間に希釈する。各アッセイは、5%未満のMeSOを含む。酵素活性を、全部で10分の間、380nmの励起波長および460nmの放射波長で、15秒毎にモニタリングする。全てのアッセイを1% DMSO中で実施する。
【0161】
(実施例8.全長タンパク質の切断についてのスクリーニング)
改変体プロテアーゼをアッセイして、全長タンパク質の背景で提示される場合にそれらが所望の配列を切断することを確認し、そして標的タンパク質の活性をアッセイして、その機能が切断事象によって破壊されたかを検証する。切断事象を、精製された全長タンパク質を改変体プロテアーゼとインキュベートした後にSDS−PAGEによってモニタリングする。タンパク質を、標準クマシーブルー染色を用いて、放射性標識タンパク質を用いるオートラジオグラフィーによって、または適切な抗体を用いるウェスタンブロットによって可視化する。あるいは、標的タンパク質が細胞表面レセプターである場合、標的タンパク質を発現する細胞を改変体プロテアーゼに露出させる。切断事象を、細胞を溶解し、次いでSDS−PAGEによってタンパク質を分離し、続いてウェスタンブロットによって可視化することによりモニタリングする。あるいは、タンパク質分解により放出された可溶性レセプターをELISAによって定量する。
【0162】
腫瘍壊死因子レセプター1および2(TNF−R1およびTNF−R2)の切断を、これらの技術を用いて測定した。新鮮に単離された好中球(PMN)を、0.2%ウシ胎児血清(FCS)を有するRPMI1640中に1×10細胞/mlで再懸濁し、そしてTNF−R1またはTNF−R2の茎部領域に特異的であるプロテアーゼの種々の濃度とインキュベートした。37℃で1〜40分のインキュベーション後、プロテアーゼインヒビターを添加し、反応を停止させ、そして培地中に放出されたTNF−Rの量をELISA(Roche)を用いて定量した。
【0163】
本発明を、標的ポリペプチド配列を切断し得る酵素を作製および使用する特定の方法に関して記載してきたが、種々の変更および改変が本発明から逸脱することなくなされ得ることが明らかである。
【0164】
(TNFの切断)
125I−TNF(40,000cpm)を種々の濃度のプロテアーゼとインキュベートし、サンプルをSDS−PAGEサンプル緩衝液中でボイルし、そして12%ポリアクリルアミドゲル上で調べた。ゲルを乾燥し、−70℃でX線フィルム(Kodak)に露出させた。
【0165】
(TNF結合アッセイ)
125I−TNFまたはPMNを、上述のように、種々の濃度のプロテアーゼとインキュベートした。正常PMNへのプロテアーゼに露出された125I−TNFの結合、またはプロテアーゼに露出されたPMNへの正常125I−TNFの結合を、シンチレーションを用いて定量した。簡潔に言えば、10細胞を、プロテアーゼインヒビターの存在下で、96ウェルフィルタープレート(Millipore)中の種々の濃度の125I−TNFとインキュベートした。細胞を真空吸引によって3回洗浄し、そして30μlのシンチレーション液(Wallac)を各ウェルに添加した。シンチレーションをWallac Microbetaシンチレーションカウンターで計数した。(van Kesselら,J.Immunol.(1991)147:3862−3868およびPorteauら,JBC(1991)266:18846−18853から採用)。
【0166】
(実施例9.標的タンパク質およびその中の切断部位の同定)
切断および不活性化について標的とされるタンパク質を、以下の基準によって同定する:1)そのタンパク質が、病状に関与している;2)そのタンパク質が、病状を処置するための介入の臨界点である、強い証拠がある;3)そのタンパク質のタンパク質分解切断が、その機能を破壊するようである。標的タンパク質内の切断部位を、以下の基準によって同定する:1)それらは、タンパク質の露出表面上に位置する;2)それらは、原子構造または構造推定アルゴリズムによって決定されるような二次構造(すなわち、βシートまたはαへリックス)が欠けている領域中に位置する;これらの領域は、タンパク質の表面上のループまたは細胞表面レセプター上の茎部である傾向がある;3)それらは、その公知の機能に基づいて、タンパク質を不活性化するようである部位に配置される。切断配列は、例えば、多くのセリンプロテアーゼの拡張された基質特異性に適合する4残基長であり得るが、これより長くも短くもあり得る。
【0167】
(腫瘍壊死因子および腫瘍壊死因子レセプター)
腫瘍壊死因子(TNF)は、単球、マクロファージ、およびリンパ球によって主に生成される炎症誘発性サイトカインである。TNFは、2つの表面結合レセプターであるp55腫瘍壊死因子レセプター(TNF−R1)およびp75腫瘍壊死因子レセプター(TNF−R2)のいずれかと相互作用することによってシグナル伝達を開始させる。TNFは、慢性関節リウマチ(RA)の病態生理学において中心的な役割を演じ、そしてRAを有する患者の滑膜および滑液の高濃度で見い出される。TNFシグナリング事象は、他の炎症誘発性サイトカイン(Il−1、Il−6、GM−CSF)の生成を生じ、メタロプロテイナーゼ(例えば、コラゲナーゼおよびストロメライシン)の生成を誘発し、そして破骨細胞の増殖および活性を増大させる;これらの事象の全てが、滑膜炎ならびに組織および骨破壊に至る。両タイプのTNFレセプターとも、それらのリガンド結合能を保持する可溶形態として細胞の表面から脱落する。これらの可溶性TNFRは、インビトロおよびインビボの両方でTNF活性を中和し得、そして天然インヒビターとして作用してTNFシグナリングを弱めると考えられる。
【0168】
(VEGFR)
血管内皮増殖因子(VEGF)は、胚形成および成体生活の間に正常に生成される内皮細胞特異的マイトジェンである。VEGFは、種々の正常プロセスおよび病状プロセス(腫瘍発達を含む)において新脈管形成の重大なメディエーターである。腫瘍血管新生は、それが転移し得る段階に腫瘍が進行する生命プロセスである。は、VEGFに対する3つの高親和性の同族レセプターが同定されている:VEGFR−l/Flt−1、VEGFR−2/KDR、およびVEGFR−3/Flt−4。VEGFRは、血管発達の間にシグナリング分子として機能する細胞表面レセプターチロシンキナーゼである。
【0169】
(EGFRおよびHER−2)
レセプターチロシンキナーゼのErbBファミリーは、4つのメンバーを含む:EGFR(Her−1)、ErbB2(Her−2)、ErbB3(Her−3)、およびErbB4(Her−4)。全てが、正常な発達に必須であり、正常細胞の機能に関与する。ErbBレセプター、特にEGFRおよびErbB2は、一般的に、ヒト癌の特定の優勢な形態において調節解除される。ErbBシグナリングの調節不全は、種々の機構(遺伝子増幅、レセプター転写を増大させる変異、またはレセプター活性を増大させる変異を含む)によって生じる。内皮増殖因子(EGF)の結合によるErbBレセプターの活性化は、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)およびAkt/ホスホイノシチド3−キナーゼ(PI3−キナーゼ)経路を通して最終的に細胞増殖、分化、および新脈管形成に至る、下流シグナリングを生じる。
【0170】
(潜在タンパク質分解切断部位)
上記のタンパク質についてのタンパク質分解切断部位を、以下、表7に示す。
【0171】
【表7】



(実施例11.グランザイムB I99A/N218A変異体の切断プロフィール)
図1は、カスパーゼ−3(多くの細胞型のアポトーシス経路に関係しているタンパク質)の配列を示す。野生型グランザイムBは、残基175のアスパラギン酸と残基176のセリンとの間でカスパーゼ3を切断する。グランザイムBの99位と218位での変異が、残基263のアスパラギン酸と残基264のアラニンとの間で切断するように、このプロテアーゼの特異性を変更する。
【0172】
図2は、残基260〜265(配列番号2)のI99A/N218AグランザイムBによって切断される不活性化配列に焦点を置いた、カスパーゼ−3の結晶学的モデルを示す。変異されたグランザイムBの特異性を図3Aに示し、PS−SCLライブラリーにおけるP2、P3、およびP4位での残基の変化も共に示す。P4−P3−P2−Asp−AMCの形態におけるPS−SCLライブラリーを、野生型およびN218A/I99AのグランザイムBを用いてアッセイした。そして各位置での基質特異性をアミノ酸毎にプロットする。変異体は、P2位で、野生型におけるプロリンよりもフェニルアラニンに対して5倍高い優先性を示した(図3B)。また、変異体は、P4位にフェニルアラニンおよびロイシンを含む大きな疎水性アミノ酸を収容し、この位置に、野生型は、一般に、イソロイシンおよびバリンのみを収容する。
【0173】
図4は、MALDI質量分析による、カスパーゼ−3の残基260〜265で構成されたNH−FSFDAT−COOH(配列番号2)(カスパーゼ−3不活性化配列)の切断を示す。この不活性化配列を、100nM野生型グランザイムBまたは1μM I99A/N218Aと18時間インキュベートした。第一のパネルは、ペプチド単独の分子量を示す。切断されないペプチドについての正確分子量を提示するピークが示される。第二のパネルは、野生型グランザイムBと混合されるペプチドの結果を示す。このピークは、再度、切断されないペプチドについての正確分子量を提示し、このことは、野生型グランザイムBがこのペプチドを切断しないことを示す。第三のパネルは、N218A/I99A変異体グランザイムBを有するペプチドについての結果を示す。ここで、このピークはシフトして、538.04での切断産物を提示し、これは、切断されたペプチドについての適当な大きさ(538Da)の切断産物を提示する。変異体グランザイムBは、効率的にペプチドを切断する。
【0174】
図5は、SDS−PAGEゲル上に流した3つの個別反応からの結果を示す。およそ50μMのカスパーゼ−3を含む3つの個別チューブを、以下の存在下でインキュベートした:レーン1:緩衝液のみ;レーン2:野生型グランザイムB;レーン3:グランザイムB I99A/N218A。各反応を2×SDSサンプル緩衝液の添加によって終結し、次いで95℃に加熱し、そしてトリシンゲル上に流した。第一のレーンは、カスパーゼ−3単独を示す。第二のレーンは、野生型グランザイムBとのカスパーゼ−3を示す。第三のレーンは、変異体グランザイムBとのカスパーゼ−3を示す。変異体は、カスパーゼ−3の小サブユニットを切断し得る。
【0175】
I99A/N218AグランザイムBは、全長カスパーゼ−3を切断し、不活性化した。精製されたカスパーゼ−3(2μM)を、プロテアーゼなし、100nMの野生型グランザイムB、または1μM I99A/N218AグランザイムBと、グランザイムB活性緩衝液中で18時間インキュベートした。10μLの各反応液を90μLのカスパーゼ−3活性緩衝液中に希釈し、そしてカスパーゼ−3活性を、Ac−DEVD−AMCの切断によってアッセイした。図6Aは、時間に対してプロットしたカスパーゼ−3活性のグラフを示す。I99A/N218AグランザイムBは、カスパーゼ−3を非常に低いレベルの活性にまで不活性化した。野生型グランザイムBは、カスパーゼ−3をコントロールよりも不活性化したが、変異体がカスパーゼ−3活性に対して有する効果を有さなかった。これはまた、図6B中に示され、ここでは、図6A中に提示したデータから誘導されたカスパーゼ−3活性のVmaxが示される。変異体グランザイムBの存在下でのVmaxは、ほぼゼロであり、ここで野生型は、Vmaxをコントロールに対して半分にするのみであった。
【0176】
変異体グランザイムBはまた、カスパーゼ−3活性およびカスパーゼ−3を含む細胞溶解物におけるアポトーシスを阻害するのに有効であった。図7Aでは、示した量のI99A/N218AグランザイムBを細胞溶解物に添加し、そして18時間インキュベートした。次いで、カスパーゼ−3活性を、蛍光発生基質(Ac−DEVD−AMC)を最終濃度200μMに添加することによりアッセイした。低濃度で、変異体は、活性化配列(配列番号4)で切断することによりカスパーゼ−3を活性化するが、高濃度では、これは、活性化配列で切断することによりカスパーゼ−3を阻害する。従って、I99A/N218AグランザイムBは、低濃度でアポトーシスを誘発するが、高濃度でアポトーシスを阻害する。図7Aは、I99A/N218A変異体グランザイムBの濃度の増大に対してカスパーゼ−3活性をプロットする。細胞溶解物中での変異体グランザイムBの濃度が増大するにつれて、カスパーゼ−3活性は減少した。
【0177】
アポトーシスを、示した量のI99A/N218AグランザイムBと共にまたはこれを用いることなく、100nMの野生型グランザイムB(これは、活性化配列での切断によってカスパーゼ−3を活性化する)の添加によって細胞溶解物において誘発し、そして18時間インキュベートした。カスパーゼ−3活性を、Ac−DEVD−AMCの切断によりアッセイした。データを、I99A/N218AグランザイムBにより誘発されたバックグラウンドカスパーゼ−3活性について標準化した。図7B中に示したように、I99A/N218AグランザイムBの濃度を増大させながら、またはこれを用いることなく、100nMの野生型グランザイムBを、全サンプル中で細胞抽出物に添加した。図7B中に示したように、変異体グランザイムBは、野生型グランザイムBの効果と拮抗して、カスパーゼ−3を不活性化することによるアポトーシスを誘発した。図7Bは、100nM野生型グランザイムBの存在下で変異体グランザイムBの濃度の変化と共にカスパーゼ−3活性の割合を用いたグラフを示す。変異体グランザイムBの濃度の増大と共に、カスパーゼ−3活性は、野生型グランザイムB単独の存在下であったレベル以下に減少した。
【0178】
(均等)
本明細書中において特定の実施形態を詳細に開示してきたが、これは、単なる例証の目的で例として開示したものであり、続く添付の特許請求の範囲に関して限定されることを意図しない。特に、本発明者らによって、種々の置換、変更、および改変が、特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明に対してなされ得ることが企図される。スクリーニング方法、プロテアーゼ骨格、またはライブラリータイプの選択は、本明細書中に記載した実施形態の知識を有する当業者にとって肝要の事項であると考えられる。他の局面、利点、および改変は、以下の特許請求の範囲内であると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基質配列を切断するプロテアーゼを同定する方法であって、該方法が、プロテアーゼ配列のライブラリーを生成する工程であって、該ライブラリーの各メンバーが、野生型骨格配列に対してN個の変異を有するプロテアーゼ骨格を有する、工程;該基質配列を切断する際における該ライブラリーの各メンバーの活性を測定する工程;および各メンバーの該活性を該ライブラリーの平均活性に対して比較する工程であって、それによりどのプロテアーゼが最も高い切断活性を有するかを同定する、工程を包含し、ここでNは正の整数である、方法。
【請求項2】
前記プロテアーゼが、セリンまたはシステインプロテアーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Nが1である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
Nが1〜5である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
Nが5〜10である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
Nが10〜20である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記プロテアーゼ骨格が、トリプシン、キモトリプシン、サブチリシン、トロンビン、プラスミン、第Xa因子、uPA、tPA、MTSP−1、グランザイムA、グランザイムB、グランザイムM、エラスターゼ、カイメース、パパイン、好中球エラスターゼ、血漿カリクレイン、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子、補体因子セリンプロテアーゼ、ADAMTS13、神経性エンドペプチダーゼ/ネプリライシン、フューリン、およびクルザインからなる群のメンバーの1つのアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
標的タンパク質が病状と関係している、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記病状が、慢性関節リウマチ、敗血症、癌、後天性免疫不全症候群、気道感染症、インフルエンザ、心血管疾患、および喘息からなる群のメンバーである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記標的タンパク質が、前記病状を引き起こすように関与している、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
標的タンパク質がアポトーシスに関与している、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記標的タンパク質がカスパーゼ−3である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記検出されたプロテアーゼの活性が前記ライブラリーの平均活性に比較して少なくとも10倍増大されている、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記検出されたプロテアーゼの活性が前記ライブラリーの平均活性に比較して少なくとも100倍増大されている、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記検出されたプロテアーゼの活性が前記ライブラリーの平均活性に比較して少なくとも1000倍増大されている、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
以下の工程:
増大された切断活性を有すると同定された、前記プロテアーゼライブラリーの2つ以上のメンバーを提供する工程;第一の骨格における変異と第二の骨格における変異とを組み合わせて、第三の骨格を生成する工程;および該組み合わせが、前記基質配列に関して増大された切断活性を有する組み合わせ特異性プロテアーゼを生じるか否かを同定する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
プロテアーゼにより特異的に切断される基質配列を同定する方法であって、該方法が、基質配列のライブラリーを生成する工程であって、該ライブラリーの各メンバーが、ランダム化されたアミノ酸配列を有する、工程;該プロテアーゼにより該ライブラリーの各メンバーが切断される度合いを測定する工程であって、それにより該プロテアーゼによって、どの基質配列が、該ライブラリーの他のメンバーの平均切断に比較して最も効率的に切断されるかを検出する、工程を包含する、方法。
【請求項18】
前記プロテアーゼがセリンプロテアーゼである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記基質配列ライブラリーの各メンバーが4アミノ酸長である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記基質配列ライブラリーの各メンバーが5〜10アミノ酸長である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記基質配列ライブラリーの各メンバーが15アミノ酸長である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記基質配列ライブラリーの各メンバーが20アミノ酸長である、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
標的タンパク質が前記基質配列を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記標的タンパク質が、病状に関与している、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記病状が、慢性関節リウマチ、敗血症、癌、後天性免疫不全症候群、気道感染症、インフルエンザ、心血管疾患、炎症、および喘息からなる群のメンバーである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記標的タンパク質が、前記病状を引き起こすように関与している、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記検出された基質配列の切断の効率が、前記ライブラリーの平均活性に比較して少なくとも10倍増大されている、請求項17に記載の方法。
【請求項28】
前記検出された基質配列の切断の効率が、前記ライブラリーの平均活性に比較して少なくとも100倍増大されている、請求項17に記載の方法。
【請求項29】
前記検出された基質配列の切断の効率が、前記ライブラリーの平均活性に比較して少なくとも1000倍増大されている、請求項17に記載の方法。
【請求項30】
病状を有する患者を処置するための方法であって、該方法が、該患者にN個の変異を有する野生型プロテアーゼを投与する工程を包含し、ここで該プロテアーゼが、該病状と関係している標的タンパク質を切断するのに十分な量で投与され、ここで該タンパク質の切断が、該病状の処置をもたらし、そしてここでNは、正の整数である、方法。
【請求項31】
Nが1である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
Nが1〜5である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
Nが5〜10である、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
Nが10〜20である、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記病状が、慢性関節リウマチ、敗血症、癌、後天性免疫不全症候群、気道感染症、インフルエンザ、心血管疾患、炎症、および喘息からなる群のメンバーである、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前記プロテアーゼがセリンプロテアーゼである、請求項30に記載の方法。
【請求項37】
前記標的タンパク質が、前記病状を引き起こす、請求項30に記載の方法。
【請求項38】
前記患者が哺乳動物である、請求項30に記載の方法。
【請求項39】
前記患者がヒトである、請求項30に記載の方法。
【請求項40】
前記標的タンパク質が、腫瘍壊死因子レセプター、インターロイキン−1、インターロイキン−1レセプター、インターロイキン−2、インターロイキン−2レセプター、インターロイキン−4、インターロイキン−4レセプター、インターロイキン−5、インターロイキン−5レセプター、インターロイキン−12、インターロイキン−12レセプター、インターロイキン−13、インターロイキン−13レセプター、p−セレクチン、p−セレクチン糖タンパク質リガンド、サブスタンスP、ブラジキニン、第IX因子、免疫グロブリンE、免疫グロブリンEレセプター、CCR5、CXCR4、糖タンパク質120、糖タンパク質41、CD4、ヘマグルチニン、RSウイルス融合タンパク質、B7、CD28、CD2、CD3、CD4、CD40、血管内皮増殖因子、VEGFレセプター、線維芽細胞増殖因子、FGFレセプター、内皮増殖因子、EGFレセプター、トランスフォーミング増殖因子、TGFレセプター、CCR1、CXCR3、CCR2、Src、Akt、Bcl−2、BCR−Abl、グルカゴンシンターゼキナーゼ−3、cdk−2、およびcdk−4からなる群のメンバーである、請求項30に記載の方法。
【請求項41】
グランザイムBのアミノ酸配列に95%同一のポリペプチドを含む組成物であって、ここで該ポリペプチドが、171位、174位、180位、215位、192位、218位、99位、57位、189位、190位、または226位の少なくとも1つに変異を有する、組成物。
【請求項42】
前記変異が、99位でイソロイシンがアラニンで置換されている、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
前記変異が、218位でアスパラギンがアラニンで置換されている、請求項41に記載の組成物。
【請求項44】
前記変異が、99位でイソロイシンがアラニンで置換され、かつ218位でアスパラギンがアラニンで置換されている、請求項41に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−99082(P2010−99082A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285529(P2009−285529)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【分割の表示】特願2004−541703(P2004−541703)の分割
【原出願日】平成15年10月2日(2003.10.2)
【出願人】(505117962)カタリスト バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド (3)
【出願人】(306000186)ザ リージェンツ オブ ザ ユニヴァーシティー オブ カリフォルニア (10)
【Fターム(参考)】