説明

改良された凝固因子調節剤

本発明は、凝固を阻害する改良された核酸リガンド、および凝固の理想的な調節剤を生じさせるための核酸の改良された調節剤を提供する。これらの改良された核酸酸およびモジュレータは、手術または冠動脈バイパスなどの治療行動を受けている宿主における凝固の阻害に特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝固因子の薬理活性を核酸リガンド(例えば、アプタマー)で調整するための改良された薬剤、組成物および方法である。
【背景技術】
【0002】
血栓性事象を治療および予防するための実質的な努力にもかかわらず、動脈血栓症は、先進国の成人人口の主要な死因であり続けている。血栓症を治療するために非常に多数の戦略が存在するが、バイオアベイラビリティと効能、両方の治療目的を満たすと同時に妥当な安全性プロフィールも有する、利用可能な薬剤はない(例えば、Feuersteinら(1999)Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.19:2554−2562参照)。
【0003】
正常な環境下では、血管の内側を覆う血管内皮細胞の損傷は、凝固「カスケード」と一般には呼ばれる事象の連鎖により止血反応を作動させる。このカスケードは、最終的に可溶性フィブリノーゲンを不溶性フィブリンに転化させ、このフィブリンが血小板と一緒に局在性血餅または血栓を形成し、これが血液成分の血管外放出を防止する。次に創傷治癒が起こり、次いで、血餅融解ならびに血管の完全性および流れの修復が起こり得る。
【0004】
血液凝固の開始は、2つの異なる経路(内因系経路および外因系経路)で生じる。内因系経路は、負の電荷を有する人工的な表面、例えばガラスと血液由来因子の接触によりインビトロで誘発され得る。対照的に、外因系経路は、循環系から正常に隔離された組織因子(TF)が損傷後に血液と接触したとき、インビボまたはインビトロで開始され得る。血液に暴露されたTFは、第IX因子(「FIX」)および第X因子(「FX」)の第VIIa因子(「FVIIa」)触媒活性化の補因子として作用する。これは、FXaおよび血栓の急速な形成を導き、次いで、これが重合してフィブリン凝塊を形成する。内因系経路と外因形両方が、凝血促進性表面での多数のタンパク質複合体の集合を特徴とし、これが損傷部位に反応を局在化する(Mann,K.G.ら(1990)Blood 76:1参照)。
【0005】
抗凝固療法
クマリン薬、例えばワファリン、ならびにグリコサミノグリカン、ヘパリンおよびヘパラン硫酸は、抗凝固薬として一般に使用されている。ワファリン(クマリン誘導体)は、プロトロンビンおよび他のビタミンK依存性凝固因子のビタミンK依存性後翻訳修飾と競合することにより作用する。この作用は、ヘパリンより多少遅くおよび長い永続作用である。クマリン薬は、トロンビンの機能に必要なビタミンK依存性カルボキシル化反応、ならびに第VII、第IXおよび第X因子、ならびにプロテインCおよびSを阻害することにより、凝固を阻害する。これらの薬物は、ビタミンKのキノン誘導体がこれらの活性ヒドロキノン形態に還元するのを阻害することによって作用する。クマリン薬のこの作用方式のため、最大効果の実現には数日かかる。ヘパリンは、抗トロンビンIIIに結合し、これを活性化し、これが、次いで、凝固カスケードのセリンプロテアーゼを阻害する。これらの効力に一部起因して、ヘパリンおよびLMWへパインには欠点がある。制御できない出血が、主要な合併症であり、持続注入を受けている患者の7%以下、間欠的ボーラス用量を与えられた患者の14%以下において観察される。患者を出血の危険のある状態にすることなく効能を達成する治療範囲は狭く、血漿のmLあたり、ヘパリン約1から3ug未満である。4ug/mLより高いヘパリンの濃度では、凝固活性を検出することができない。従って、患者の血漿濃度をこの治療範囲内に保つように多大な配慮を払わねばならない。
【0006】
複数のグループが、凝血因子に対する抗体を使用して、凝血カスケードを調整した。例えば、Schering AktiengesellschaftのPCT国際公開パンフレット第03/093422号には、単独の組織因子(TF)より大きな親和性で第VIIa因子/組織因子(FVIIa/TF)複合体に結合する抗体が開示されている。申し立てによると、これらの抗体は、組織因子への結合については第VII因子および第X因子と競合せず、ならびにFX活性化を阻害する。
【0007】
Hamilton Civic Hospitals Reserarch Development Inc.の米国特許第6,001,820号は、(1)血餅中のフィブリンにまたは何らかの他の表面に結合しているトロンビンを選択的に不活性化することができるが、遊離トロンビンに対しては最小の阻害活性しか有さない触媒作用因子;(2)内因性テナーゼ(tenase)複合体の集合を阻害し、この結果、第IXa因子による第X因子の活性化を阻害することができる触媒作用因子;ならびに(3)第XIa因子による第IX因子の活性化を阻害することができる触媒作用因子に特異的なヘパリン補因子IIを提供している。
【0008】
アプタマー
核酸は、生物学的プロセスにおいて情報を提供する役割を主として果たすと従来考えられてきた。過去10年の間に、核酸の三次元構造により核酸がタンパク質と相互作用し、これらを調整する能力を得ることができることが明らかになった。こうした核酸リガンドまたは「アプタマー」は、高い親和性および特異性で所定のリガンドに結合することができる短いDNAまたはRNAオリゴマーである。1つの類として、アプタマーの三次元構造は、アプタマーが、モノマー化合物であれ、ポリマー化合物であれ、事実上、あらゆる化学的化合物に結合し、リガンドとして作用できるために十分な可変性がある。アプタマーは、特に癌療法および血液凝固調整において有望な新規診断用および治療用化合物として登場した。
【0009】
核酸リガンドは、指数関数的富化によるリガンドの系統的進化(Systematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment(SELEX))と呼ばれる方法に関連した方法により同定することができる。SELEXは、候補オリゴヌクレオチドの混合物からのタンパク質結合核酸のセレクション、ならびに結合親和性および選択性の所望の基準を達成するための結合、分配および増幅の段階的相互作用を含む。SELEXプロセスは、最初にGoldおよびTuerkにより米国特許第5,475,096号に記載され、次いで、米国特許第5,270,163号に記載された(国際公開パンフレット第91/19813号;Tuerkら(1990)Science 249:505−10も参照)。
【0010】
多数の第三者が、アプタマーの同定、製造および使用を包含する特許を出願し、獲得している。上述のとおり、GoldおよびTuerkは、アプタマーを単離するためのSELEX法を最初に開発したと一般に信じられており、これらの方法は、米国特許第5,670,637号、同第5,696,249号、同第5,843,653号、同第6,110,900号および同第5,270,163号をはじめとする多数の米国特許に記載されている。Thomas Bruiceらは、米国特許第5,686,242号においてアプタマーの生産プロセスを報告しており、これは、配列のスクリーニング中に厳密にランダムなオリゴヌクレオチドを用いるため、TuerkおよびGoldにより報告された原型SELEXプロセスとは異なる。前記242特許においてスクリーニングされるオリゴヌクレオチドには、SELEXプロセスでスクリーニングされるオリゴヌクレオチド中の存在するオリゴヌクレオチドプライマーがない。
【0011】
Goldらの幾つかの特許は、トロンビンに対するアプタマーを包含する請求事項を含んでいる。例えば、米国特許第5,670,637号は、タンパク質に結合するアプタマーを包含する請求事項を含む。米国特許第5,696,249号は、SELEXプロセスにより生産されるアプタマーを特許請求の範囲に記載している。O’Tooleの米国特許第5,756,291号および同第5,582,981号は、ヌクレオチド数6の被定義配列を含む標識アプタマーを使用するトロンビンの検出方法を開示し、特許請求の範囲に記載している。米国特許第5,476,766号および同第6,177,577号は、SELEXを用いてトロンビンに対する核酸リガンド溶液を同定するための化合物および方法を開示している。
【0012】
Sullenger、Rusconi,KontosおよびWhiteは、止血および他の生物学的事象の調節に有用な、凝固因子、E2Fファミリー転写因子、Ang1、Ang2、およびこれらのフラグメントまたはペプチド、転写因子、自己免疫抗体ならびに細胞表面受容体に結合するRNAアプタマーを国際公開パンフレット第02/26932号に記載している。Rusconiら,Thrombosis and Haemostasis 83:841−848(2000)、Whiteら,J.Clin Invest 106:929−34(2000)、Ishizakiら,Nat Med 2:1386−1389(1996)、およびLeeら,Nat.Biotechnol.15:41−45(1997)も参照のこと。
【0013】
アプタマーの調節
Duke UniversityのPCT国際公開パンフレット第02/096926号には、調節剤の投与により核酸リガンドの生物学的活性を調節するための薬剤および方法が記載されている。この公報には、核酸であり得る調節剤により制御されるアプタマーが記載されている。これらの調節可能アプタマーは、凝固、伸長因子2活性または脈管形成を阻害することが重要である疾病の治療に有用であると記載されている。凝固を制御するための調節可能アプタマーとしては、凝固第VII因子または凝固第VIIa因子、凝固第VIII因子または凝固第VIIIa因子、凝固第IX因子または凝固第IXa因子、凝固第V因子または凝固第Va因子、凝固第X因子または凝固第Xa因子、これらの因子とで形成される複合体、ならびに血小板受容体に対するアプタマーが挙げられる。この調節剤は、核酸リガンドのこの標的への結合を変化させることができ、核酸リガンドがこの作用を発揮している間に、核酸リガンドを分解もしくは別様に切断、代謝または破壊することができる。調節剤は、患者の経過ならびに最適な治療を達成する方法に関する医師の自由裁量をはじめとする様々な因子に基づき、必要に応じて即時投与することができる。
【0014】
アプタマーの使用効果の最大化
アプタマーが有用な治療試薬であるためには、タンパク質に緊密に結合しなければならず、拮抗薬が望まれる場合にはこのタンパク質の特定機能を阻害せねばならず、および有害な副作用がないものでなければならない。血液にはリボヌクレアーゼが豊富であるので、現実としては、未修飾RNAは治療薬として使用されない。1本鎖RNAおよびDNAの何らかの修飾が、血液中で安定な分子を生じさせることがあり、ある種の公知アプタマーは、各々のピリミジンヌクレオチドの中に2’F基または2’NH基を有する。
【0015】
しかし、個々の修飾が如何にしてアプタマーを変化させるのかを予測する方法はない。特に、調節可能アプタマーでの場合のようにさらなる制限が求められる場合、アプタマーがそのリガンドを調整し、同時に解毒剤結合による調整を受け続けることができる能力に、1つまたはそれ以上の修飾がどのように影響を及ぼすかを予測する技術は存在しない。
【0016】
治療薬としてのアプタマーの使用の成功は、これらの効能および特異性ばかりでなく、経済性にも依存する。現在利用可能なアプタマーの最も成功した動物実験から推測して、通常、体重のkgあたり1から2mgのアプタマー用量が有効用量である(VEGF、PDGF、L−セレクチンおよびP−セレクチンを阻害するアプタマーでの実験から導出)。70kgの成人については、各注射用量が70から140mgということになる。急性適応症、例えば、臓器移植、心筋梗塞、毒素もしくは敗血症性ショック、血管形成術、または肺動脈塞栓症治療については、15日間、3日おきに、$700から$1400の製品コストが必要となるであろう。明らかに、慢性の適応についての製品コストは問題である。従って、アプタマーの製造コストを低下させる必要がある。
【0017】
基本SELEXプロセスを修正して修飾アプタマーを得る幾つかの方法が開発された。例えば、改良された特性を示すアプタマーを得るための、SELEXプロセスにおける修飾ヌクレオチドの使用が特許に開示されている。米国特許第5,660,985号は、申し立てによると向上したインビボ安定性を提示する2’−修飾ヌクレオチドを提供している。米国特許第6,083,696号には、非核酸機能単位に共有結合で連結されたオリゴヌクレオチドを標的分子に結合する能力についてスクリーニングする、「融合型(blended)」SELEXプロセスが開示されている。他の特許には、サイズを低下させる、安定性を上昇させる、または標的結合親和性を増大させるようなアプタマーに対するSELEX後修飾が記載されている(例えば、米国特許第5,817,785号および同第5,648,214号参照)。
【0018】
米国特許第5,245,022号において、Weisらは、ポリアルキレングリコールにより末端が置換されている塩基数約12から25のオリゴヌクレオチドを開示している。これらの修飾オリゴヌクレオチドは、エキソヌクレアーゼ活性に対して耐性であると報告されている。
【0019】
Cookらの米国特許第5,670,633号および同第6,005,087号には、RNAまたはDNA塩基配列に相補的である熱安定性2’−フルオロオリゴヌクレオチドが記載されている。Cookeらの米国特許第6,222,025号および同第5,760,202号には、2’−O置換ピリミジンおよびこれら修飾ピリミジンを含有するオリゴマーの合成が記載されている。欧州特許第0 593 901号B1には、末端3’,3’−および5’,5’−ヌクレオシド結合を有する、オリゴヌクレオチドおよびリボザイム類似体が開示されている。Goldらの米国特許第6,011,020号には、ポリエチレングリコールによって修飾されたアプタマーが開示されており、特許請求の範囲に記載されている。
【0020】
現在、抗凝固療法が必要な患者および特に手術または他の医学的介入中の患者を治療するための方法および組成物の提供が、依然として強く求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
従って、本発明の目的は、抗凝固療法が必要な患者および特に手術または他の医学的介入中の患者を治療するための方法および組成物を提供することである。
【0022】
本発明のもう1つの目的は、抗凝固療法の治療効果、薬物動態および活性の持続時間をもっと制御することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
抗凝固療法のための改良核酸リガンドを開示し、ならびに核酸リガンドのその標的への結合を変化させる、または核酸リガンドがその作用をまだ発揮している間にこの核酸リガンドを分解もしくは別様に切断、代謝または破壊する解毒剤との組み合わせでの改良核酸リガンドを開示する。これらの改良アプタマーは、人間の手術または獣医学的手術中の適用を含むインビボでの適用に好適な抗凝固特性を提供する。この改良アプタマーの抗凝固機能は、外科医または他の医療スペシャリストが望む場合には、この解毒剤の投与により適便に中和される。
【0024】
本発明の1つの側面において、血液凝固カスケードにおける一定の因子に対する改良核酸リガンドまたはアプタマーを提供する。幾つかの実施態様において、前記因子としては、第IX因子(FIX)または分解産物第IXa因子(FIXa)が挙げられる。幾つかの実施態様において、前記アプタマーは、「内因性テナーゼ複合体」としても知られている、第VIIIa因子(FVIIIa)とFIXaによって形成された複合体に対するリガンドである。幾つかの実施態様において、前記アプタマーは、FIXaとFVIIIaの間の複合体形成を阻害するリガンドである。副次的実施態様において、本発明のアプタマーは、FIXとFVIIIaの複合体に結合し、第X因子(FX)の活性を阻害する。これらのアプタマーは、FIX、FIXaと、または追加のカルシウムの存在下または不在下でFVIIIaとで形成された複合体と、相互作用することができる。これらのアプタマーは、細胞膜で前記複合体の因子と相互作用することもできる。1つの実施態様において、前記アプタマーは、膜表面で内因性テナーゼ複合体に結合する。
【0025】
本発明のもう1つの側面において、本出願人らは、凝固第IX因子(FIX)の遺伝子産物に対する、およびこの分解産物第IXa因子(FIXa)に対する改良されたアプタマーを発見した。1つの実施態様において、この核酸リガンドは、Watson−Crick塩基対合により分子の別の領域に結合する領域(ステム)を少なくとも1つ、および生理条件下ではこの分子のいずれの他の領域にも結合しない領域(ループ)を少なくとも1つ含む。さらなる実施態様において、この核酸リガンドは、2つのステム(ステム1およびステム2)ならびに2つのループ(ループ1およびループ2)を含む。典型的に、ステム1は、1から15または1から20ヌクレオチド対の長さである。ステム1は、10、9、8、7、6、5、4、3または2ヌクレオチド長であってもよい。一般に、ステム2は、1から10ヌクレオチド長である。ステム2は、9、8、7、6、5、4、3または2ヌクレオチド長であってもよい。ループ1およびループ2の長さも様々であり得る。ループ2は、10ヌクレオチドほどの長さである場合もあるが、7、6、5、4、3または2ヌクレオチド長をはじめとする8またはそれ以下のヌクレオチド長である場合もある。ループ1の長さも様々であり得、1つの実施態様では、5’−3’方向に10または9のヌクレオチド、および3’−5’方向に1個のヌクレオチドを含む。
【0026】
本発明の第IX因子遺伝子産物に対するアプタマーは、リボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチドまたはこれらの組み合わせから成り得る。一般に、本改良アプタマーは、少なくとも25ヌクレオチド長であり、典型的には35から45以下のヌクレオチド長である。1つの実施態様において、アプタマーは、長さが少なくとも25、30、35または40ヌクレオチドである。特定の実施態様において、ステム1の配列は、5’−3’方向に5個のヌクレオチドを含む。副次的実施態様において、ステム1は、5’−3’方向に3個のグアニン(G)残基を含む。
【0027】
本改良アプタマーは、「自殺位置」を含み得る。1つの実施態様において、この位置は、この改良アプタマーへの解毒剤の結合により1本鎖となり、不安定になり、ならびに解毒剤の結合により血液または肝臓エンドヌクレアーゼなどの循環中の酵素によるこの改良アプタマーの切断を可能にし、この結果、循環から活性アプタマーを有効に除去することができる。この自殺位置は、ヒドロキシル化されているステム2内のグアニンである。1つの実施態様において、このヌクレオチドは、解毒剤と結合するまでは2本鎖配置であり、解毒剤の結合により1本鎖となり、切断に利用され得る。
【0028】
ある実施態様において、アプタマーは、ヌクレオチド配列guggおよびこの相補配列ccacを含む。1つの実施態様において、第IX因子に対するアプタマーは、ヌクレオチド:gugga cuauacc gcg uaaugc ugc c uccac t(配列番号19)を含む。
【0029】
本発明のもう1つの実施態様は、本発明のアプタマーと対合している解毒剤オリゴヌクレオチドを含む。この解毒剤オリゴヌクレオチドは、アプタマーの少なくとも一部に相補的であり得る。この解毒剤は、例えば、次の配列:(5’−3’)配列:cgcgguauaguccccau(Apt/AD;配列番号1);(5’−3’)配列:cgcgguauaguccc(Apt6/AD;配列番号2);(5’−3’)配列:cgcgguauaguccac(Apt7/AD;配列番号3);(5’−3’)配列:cgcgguauaguccauc(Apt8/AD;配列番号4);(5’−3’)配列:cgcgguauagucag(Apt9/AD;配列番号5);(5’−3’)配列:cgcgguauagucagg(Apt10/AD;配列番号6);(5’−3’)配列:cgcgguauagucagag(Apt11/AD;配列番号7);(5’−3’)配列:cgcgguauaguccucac(Apt14/AD;配列番号8)、またはこれらの任意の修飾または誘導体を含む。一定の実施態様において、解毒剤は、上記配列のうちの1つから本質的に成るか、完全に上記配列のうちの1つから成る。
【0030】
解毒剤が十分にアプタマーに結合またはハイブリダイズしていてこの活性を中和できるのであれば、この解毒剤配列がこの改良抗凝固薬アプタマーに完全に相補的である必要はない。
【0031】
本発明のアプタマーペアとしては、以下の配列が挙げられる:
【0032】
【表1】

【0033】
アプタマーと解毒剤のいずれかまたは両方に対する二次修飾を含めることにより、より安定で、より生物活性である改良されたアプタマー−解毒剤ペアを開発する。1つの実施態様において、第IX因子に対する改良アプタマーは、1つまたはそれ以上の2’−O−メチル修飾ヌクレオチドを含む。もう1つの実施態様において、改良アプタマーは、1つまたはそれ以上の2’−O−メチル修飾および1つまたはそれ以上の2’−フルオロ修飾を含む。もう1つの実施態様において、アプタマーおよび解毒剤は、2’−フルオロ修飾を含まない。さらにもう1つの実施態様において、改良アプタマーは、ステムに対する1つまたはそれ以上の2’−O−メチル修飾および1つまたはそれ以上の2’−フルオロ修飾を含む。1つの実施態様において、改良アプタマーのステム2内の少なくとも1つのグアニンは、ヒドロキシル糖(2’−OH)を含む。もう1つの実施態様において、改良アプタマーのステム1内またはステム2内の少なくとも1つのウリジンは、2’−フルオロまたは2’−O−メチルのいずれかで修飾されている。もう1つの実施態様において、改良アプタマーのステム2内の少なくとも1つのシチジンは、2’−フルオロ修飾されている。
【0034】
改良アプタマーおよび解毒剤が、水溶性ポリマーで修飾されているヌクレオチドも含むこともある。こうしたポリマーとしては、ポリエチレングリコール、ポリアミン、ポリエーテル、ポリ無水物、ポリエステル、または他の生体分解性で医薬適合性のポリマーを挙げることができる。
【0035】
本発明は、FIX、FIXa、またはこの内因性テナーゼ複合体に結合させるための改良アプタマーの使用を含む。この結合は、インビトロである場合もあり、インビボである場合もある。FIX、FIXa、またはこのテナーゼ複合体への結合の結果は、このタンパク質または複合体の生物活性の阻害であり得る。
【0036】
1つの実施態様において、この改良アプタマーは、FIXと同じ遺伝子産物に由来するFIXaへの結合により、血液凝固を阻害する。本発明は、本発明の改良アプタマーをこの必要がある哺乳動物に投与して、血液凝固を阻害することを含む。本発明のもう1つの実施態様は、治療的行動の中での改良アプタマーおよび解毒剤の使用方法を提供する。
【0037】
1つの実施態様では、本発明の改良アプタマーに対する解毒剤をこの必要がある哺乳動物に供給して、この改良アプタマーの抗凝固薬作用を反転させる。改良アプタマーおよびアプタマー−解毒剤ペアは、患者の経過ならびに最適な治療を達成する方法に関する医師の自由裁量をはじめとする様々な因子に基づき、必要に応じて即時間で投与することができる。従って、本発明は、血液凝固のための核酸リガンド療法の過程に関する改善された調整可能な治療的行動を開示する。一例では、医師または他のヘルスケア提供者が望む場合には、本改良アプタマーの作用を中和して抗凝固活性を止める解毒剤を供給する。もう1つの実施態様において、血液凝固因子に対する本改良アプタマーおよび解毒剤は、アプタマーを投与し、解毒剤を使用してこれら改良アプタマーの活性を制限し、次いで、これらのアプタマーをこの必要がある患者に再び投与するという一連の段階で投与される。1つの実施態様において、解毒剤は、改良アプタマーへの結合またはハイブリダイゼーションによってこの中和作用を達成する。
【0038】
本改良アプタマーは、凝固により誘発される事象の原因となるか、結果的にこうした事象を生じさせる、新血管疾患または介入(外科的介入を含む)に煩っている、または煩う危険がある患者に投与することができる。例としては、急性心筋梗塞(心臓発作)、脳血管障害(脳卒中)、虚血、血管形成術、CABG(冠動脈バイパス移植術)、心肺バイパス、心臓バイパス装置の循環におけるおよび腎臓透析を受けている患者における血栓症、不安定性狭心症、肺動脈塞栓症、深在静脈血栓症、動脈血栓症、ならびに播種性血管内凝固が挙げられる。
【0039】
本改良アプタマーは、凝固誘発性炎症を予防するために投与することもできる。初期炎症は、凝固カスケードの活性化により誘発されるようである。従って、本改良アプタマーは、炎症成分を含む心血管疾患、例えば、アテローム性動脈硬化症、急性冠動脈症候群(ACS)、心筋梗塞(これらは、結果的に再潅流障害を生じさせることがある)を治療するために、または血管形成術後再狭窄に関連した有害事象を治療するために使用することができる。
【0040】
1.定義
「核酸リガンド」または「アプタマー」は、リガンドとして標的分子と相互作用することを可能ならしめる三次元構造を形成することできる核酸である。この用語は、一定の環境で所定の標的分子と複合体を形成することができる特異的結合領域を有するオリゴヌクレオチドを指し、この場合、同環境にある他の物質は、このオリゴヌクレオチドと複合体化されない。この結合の特異性は、この環境でのアプタマーおよび他の材料または一般には非関連分子に関する解離定数(K)と比較した場合の標的に対するアプタマーの比較解離定数によって定義される。典型的に、標的に関するアプタマーのKは、この環境における非関連材料または付随材料に関するKより10倍、50倍、100倍または200倍小さいであろう。
【0041】
「アプタマー解毒剤ペア」は、標的分子に対する特定アプタマー、およびこのアプタマーがもはやこの標的と相互作用することができないようにこのアプタマーの三次元配置を変化させるオリゴヌクレオチドを含む。解毒剤は、アプタマーの一部に相補的なオリゴヌクレオチドであり得る。解毒剤は、生理条件下でのアプタマーの標的結合能力を10から100%、20から100%、25%、40%、50%、60%、70%、80%、90%もしくは100%、または10%と100%の間の範囲内の任意のパーセンテージ低下させるように、アプタマーの配座を変化させることができる。解毒剤は、標的分子への結合活性を有する三次元構造を形成することもできる。この標的は、アプタマーの標的と同じである場合もあり、異なる場合もある。
【0042】
「解毒剤」、「調整剤」または「調節剤」は、アプタマーに結合し、このアプタマー間の相互作用を修飾する、(例えば、アプタマーの構造を修飾することにより)このアプタマーとその標的分子の間の相互作用を望みどおりに修飾することができる、あらゆる医薬適合性の作用因子を指す。
【0043】
用語「結合活性」および「結合親和性」は、標的に結合するまたは結合しないリガンド分子の傾向を指すものとする。「結合活性」および「結合親和性」において前記相互作用のエネルギーは有意である。なぜならば、「結合活性」および「結合親和性」は、相互作用パートナーの必要濃度、これらのパートナーが会合できる速度、溶液中の結合分子と遊離分子の相対濃度を決定するためである。結合の特異性は、その環境での他の材料または一般には非関連分子に関する解離定数と比較した場合の核酸リガンドの解毒剤の比較解離定数(K)によって定義される。
【0044】
本明細書で用いる「コンセンサス配列」は、少なくとも2つの核酸配列の1つまたはそれ以上の領域において見出されるヌクレオチド配列または領域(隣接ヌクレオチドから成るものであってもよいし、なくてもよい)を指す。コンセンサス配列は、3ヌクレオチド長ほどの短さである場合もある。1つまたはそれ以上の非隣接配列から成り、数百塩基長以下のヌクレオチド配列またはポリマーが、コンセンサス配列間に挿入されている場合もある。コンセンサス配列は、個々の核酸種間の配列比較により同定することができ、この比較には、配列情報から二次および三次構造をモデリングするためのコンピュータプログラムおよび他のツールを利用することができる。一般に、コンセンサス配列は、少なくとも約3から20個のヌクレオチド、より一般的には6から10個のヌクレオチドを含有する。
【0045】
用語「心血管疾患(単数)」および「心血管疾患(複数)」は、通常の当業者により理解されているようなあらゆる新血管疾患を指すものとする。特に考えられる新血管疾患の日限定的な例としては、アテローム性動脈硬化症、血栓形成傾向、閉塞症、心臓の梗塞(例えば、心筋梗塞)、血栓症、アンギナ、発作、敗血症性ショック、高血圧、高コレステロール血症、再狭窄および糖尿病(ならびに関連糖尿病性網膜症)が挙げられるが、これらに限定されない。心血管疾患は、早期発症心血管疾患の治療ならびに進行心血管疾患の治療など、進行のあらゆる段階で治療することができる。凝固の調節により心血管疾患の悪化を抑制する方向に向かわせる治療方法も本発明に含まれる。
【0046】
2.第IX因子に対するアプタマー
本発明は、血液凝固カスケードにおける特定の因子との相互作用により血液凝固を調整する、改良された核酸リガンドまたはアプタマーを提供する。本発明は、凝固を調整する改良されたアプタマー−解毒剤ペアも提供する。本改良アプタマーは、第IX遺伝子産物(これは、第IXa因子を含む)を標的にし、故に、他の血液凝固因子標的に関連した不特定の副作用を減少させる。凝固カスケードにおける大部分の因子は、様々な生理的役割を有する広範なタンパク質(すなわち、トロンビン)である。
【0047】
損傷と血餅形成の間に起こる事象は、綿密に調整され、一連の反応につながる。細胞ベースの凝固モデルでは、開始は、組織因子を有する細胞(単核細胞、マクロファージ、内皮細胞)上で起こる。(組織因子と複合体化した)FVIIaの存在下、FIXおよびFXの活性化により、プロトロンビンから少量のトロンビンが生成する(これが、次いで、FVを活性化する)。増幅期(プライミング期とも呼ばれる)において、この生成した少量のトロンビンが血小板を活性化し、これに起因してFVa、FXIaおよびFVIIIaの放出が生じる。凝固の最終期、伝播、の間に、FIXaがFVIIIaと複合体化し、FXを活性化する。FXa−FVa複合体は、カルシウムおよびリン脂質基質(プロプロトロンビナーゼ複合体)の存在下、トロンビン生成の「群発」を導く。
【0048】
抗凝固作用の細胞ベースのモデルは、凝固プロテアーゼ標的の定義付けに貢献した。大部分の以前の研究は、トロンビンなどの様々な因子による血液凝固に焦点を合わせていた。トロンビンは、体全体にわたって効果がある作用範囲の広いタンパク質である。従って、トロンビンの阻害剤は、凝固に対する作用のほかに、思いがけない副作用を及ぼすことがある。トロンビンは、内皮細胞を活性化し、白血球浸潤および浮腫を誘導するばかりでなく、星状神経膠細胞および小神経膠細胞も活性化して、病巣性炎を伝播したり、潜在的神経毒性作用を生じさせたりする。
【0049】
本発明者は、特に第IXa因子が魅力的なターゲットであると判定した。なぜならば、凝固の開始期と伝播期の両方へのその関与のためである。インタラクティブ・インビトロ・セレクション法を用いて、高い親和性(K 0.65 ± 0.2nM)でFIXaに結合することができるオリゴヌクレオチドを同定した。実験的研究は、FIXaが血栓症ならびに止血において重要な役割を有し得ることを示唆している。ウサギへの精製FIXaの注入は、血栓症を誘導した(Gitelら(1977)PNAS 74:3028−32; Gurewichら(1979)Thromb.Rsch.14:931−940)。対照的に、活性部位遮断FIXaは、血餅形成を防止し、冠動脈内血栓症を減少させた(Lowe(2001)Brit.J.Haem.115:507−513)。
【0050】
第IX因子に対する抗体は、モルモットおよびラットの血漿において、内因性テナーゼ複合体の機能、第XIa因子によるおよび組織因子:第VIIa因子複合体による酵素原第IX因子の活性化に干渉することならびに活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)を強く抑制することも証明された(Refino,C.J.ら(1999)Thromb and Haemost,82:1188−1195; Feuerstein GZら(1999)Arterioscler Thromb Vasc Biol 19(10):2554−62; Toomey JRら(2000)Thromb Res.100(1):73−9)。
【0051】
1つの実施態様において、本発明は、血液凝固カスケードにおける因子に対する核酸リガンドまたはアプタマーを提供する。幾つかの実施態様において、前記因子としては、第IX因子(FIX)またはこの分解産物第IXa因子(FIXa)が挙げられる。幾つかの実施態様において、前記アプタマーは、「内因性テナーゼ複合体」としても知られている、FIXaと第VIIIa因子(FVIIIa)によって形成された複合体に対するリガンドである。幾つかの実施態様において、前記アプタマーは、FIXaとFVIIIaの間の複合体形成を阻害するリガンドである。副次的実施態様において、本発明のアプタマーは、FIXとFVIIIaの複合体に結合し、第X因子(FX)の活性化を阻害する。これらのアプタマーは、FIX、FIXaと、または追加のカルシウムの存在下または不在下でFVIIIaとで形成された複合体と、相互作用することができる。これらのアプタマーは、細胞膜で前記複合体の因子と相互作用することもできる。1つの実施態様において、前記アプタマーは、細胞表面で内因性テナーゼ複合体に結合する。
【0052】
1つの実施態様において、本出願人らは、凝固第IX因子(FIX)の遺伝子産物に対する、およびその分解産物、第IXa因子(FIXa)に対する改良されたアプタマーを発見した。1つの実施態様において、この核酸リガンドは、Watson−Crick塩基対合によりこの分子の別の領域に結合する領域(ステム)を少なくとも1つ、および生理条件下ではこの分子のいずれの他の領域にも結合しない領域(ループ)を少なくとも1つ含む。さらなる実施態様において、この核酸リガンドは、2つのステム(ステム1およびステム2)ならびに2つのループ(ループ1およびループ2)を含む。1つの実施態様において、ステム1は、1から20ヌクレオチド長である。さらなる実施態様において、ステム1は、1から10ヌクレオチド長である。さらなる副次的実施態様において、ステム1は、7、6、5、4、3または2ヌクレオチド長である。もう1つの実施態様において、ステム2は、1から20ヌクレオチド長である。さらなる実施態様において、ステム2は、1から10ヌクレオチド長である。さらなる副次的実施態様において、ステム2は、7、6、5、4、3または2ヌクレオチド長である。
【0053】
本発明の第IX因子遺伝子産物に対するアプタマーは、リボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチドまたはこれらの組み合わせから成り得る。一般に、本改良アプタマーは、少なくとも25ヌクレオチド長であり、典型的には35から40ヌクレオチド長以下である。1つの実施態様において、アプタマーは、長さが少なくとも25、30、35または40ヌクレオチドである。特定の実施態様において、ステム1の配列は、5’−3’方向に5個のヌクレオチドを含む。副次的実施態様において、ステム1は、5’−3’方向に3個のグアニン(G)残基を含む。
【0054】
ある実施態様におけるアプタマーは、コンセンサスヌクレオチド配列guggおよびこの相補配列ccacを含む。単一の標的分子に対する多数の個々の、別個のアプタマー配列を得、配列決定したら、これらの配列を「コンセンサス配列」について検査することができる。本明細書で用いる「コンセンサス配列」は、少なくとも2つのアプタマーの1つまたはそれ以上の領域において見出されるヌクレオチド配列または領域(隣接ヌクレオチドから成るものであってもよいし、なくてもよい)を指し、この存在は、アプタマーと標的の結合とまたはアプタマー構造と相関させることができる。
【0055】
コンセンサス配列は、3ヌクレオチド長ほどの短さである場合もある。1つまたはそれ以上の非隣接配列から成る場合もある。数百塩基長のヌクレオチド配列またはポリマーが、コンセンサス配列間に挿入されている。コンセンサス配列は、個々のアプタマー種間の配列比較により同定することができ、この比較には、配列情報から二次および三次構造をモデリングするためのコンピュータプログラムおよび他のツールを利用することができる。一般に、コンセンサス配列は、少なくとも約3から20個のヌクレオチド、より一般的には6から10個のヌクレオチドを含有するであろう。混合物中のすべてのオリゴヌクレオチドが、こうした位置に同じヌクレオチドを有し得るとは限らず、例えば、コンセンサス配列が、既知比率の特定のヌクレオチドを含有する場合もある。例えば、コンセンサス配列は、ひと続きの4つの位置を含むことができ、この場合、第一の位置は、この混合物のすべてのメンバーがAであり、第二の位置は、25% A、35% Tおよび40% Cであり、第三の位置は、すべてのオリゴヌクレオチドがTであり、ならびに第四の位置は、50%のオリゴヌクレオチドがGであり、50%のオリゴヌクレオチドがCである。
【0056】
特定の実施態様において、本アプタマーは、以下の配列番号のヌクレオチド配列を含む:
【0057】
【表2】


【0058】
1つの実施態様において、第IX因子に対するアプタマーは、ヌクレオチド:gugga cuauacc gcg uaaugc ugc c uccac t(配列番号19)、を含む、から成るまたはから本質的に成る。
【0059】
3.アプタマー解毒剤
血液凝固因子の阻害を免除できることも重要である。第IX因子などの血液凝固因子の過剰阻害の結果、生命を脅かす疾病が生じることがある。例えば、血友病Bは、第IX因子欠損の結果、生じる。血友病Bに罹患しているすべての患者が、凝固時間の延長および第IX因子凝固活性の低下を有する。血友病A同様、重症、中程度および軽症型の血友病Bがあり、血漿における第IX因子活性を反映している。
【0060】
従って、本発明のもう1つの実施態様は、本発明のアプタマーと対合した解毒剤を含む。解毒剤または調節剤は、アプタマーに結合し、(例えば、アプタマーの構造を修飾することにより)アプタマーとその標的分子の間の相互作用を望みどおりに修飾することができる、あらゆる医薬適合性の作用因子を包含し得る。こうした解毒剤の例としては、(A)アプタマー配列の少なくとも一部に相補的なオリゴヌクレオチド(リボザイムまたはDNAザイムまたはペプチド核酸(PNA)を含む)、(B)核酸結合ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質(核酸結合トリポリペプチド(一般に、Hwangら(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:12997参照)を含む)、および(C)オリゴ糖(例えば、アミノグリコシド(一般に、Davisら(1993)Chapter 8,p.185,RNA World,Cold Spring Harbor Laboratory Press,eds.Gestlaad and Atkins; Werstuckら(1998)Sciende 282:296; 米国特許第5,935,776号および同第5,534,408号参照)が挙げられる。(本発明に従って使用することができる解毒剤のタイプを開示している次のものも参照のこと: Chaseら(1986)Ann.Rev.Biochem.56:103、Eichornら(1968)J.Am.Chem.Soc.90:7323、Daleら(1975)Biochemistry 14:2447、およびLippardら(1978)Acc.Chem.Res.11:211)。
【0061】
1つの実施態様において、本解毒剤オリゴヌクレオチドは、本アプタマーの抗凝固活性の少なくとも25%、50%、75%、80%、または90%を反転または中和する。解毒剤は、一般に、1μM未満、または0.1μM未満、さらに好ましくは0.01μM未満の解毒剤濃度で、溶液中の核酸リガンドに実質的に結合する能力を有する。1つの実施態様において、この解毒剤は、本アプタマーの生物活性を50%低下させる。
【0062】
相補性オリゴヌクレオチド
1つの実施態様において、本発明の改良解毒剤は、被標的アプタマー配列の少なくとも一部に相補的な配列を含む。絶対相補性は必要ない。1つの実施態様におけるその配列は、アプタマーとハイブリダイズすることができる十分な相補性を有する。ハイブリダイズする能力は、相補性度とアンチセンス核酸の長さの両方に依存する。有利なことに、本解毒剤オリゴヌクレオチドは、被標的アプタマーの6から25個の連続するヌクレオチド、好ましくは8から20個の連続するヌクレオチド、さらに好ましくは10から15個の連続するヌクレオチドに対して相補的な配列を含む。特定の側面において、本解毒剤は、少なくとも10から25ヌクレオチド、少なくとも15から25、少なくとも20から25、少なくとも14、17または少なくとも25ヌクレオチド長である。本発明の解毒剤は、1本鎖の、DNAもしくはRNAまたはこれらのキメラ混合物もしくは誘導体もしくは修飾バージョンであり得る。
【0063】
短いオリゴヌクレオチドの相補対の結合による二重鎖の形成は、相当速い反応であり、二次会合速度定数は、一般に1x10と3x10の間である。短い二重鎖の安定性は、この二重鎖の長さおよび塩基組成に非常に依存し得る。短い核酸二重鎖の形成についての熱力学的パラメータを厳密に測定した結果、自由エネルギー、Tmおよび従って所定のオリゴヌクレオチド二重鎖の半減期の正確な予測を計算できるような、すべての可能な塩基対についての近傍決定則を得た(例えば、Xiaら(1998)Biochem.34:14719)(Eguchiら(1991)Antigensis RNA,Annu.Rev.Biochem.60:631も参照)。
【0064】
特定の実施態様において、本発明は、凝固経路の構成要素を標的にする改良されたアプタマー、特にFIXおよびFIXaに対するアプタマー、の抗凝固作用および抗血栓作用を特異的、および、急速に反転させる改良された解毒剤を提供する。これらの解毒剤は、前記アプタマーの活性を反転させるために、医師または他のヘルスケア提供者によって投与され得る。特定の実施態様において、本発明の改良解毒剤は、次の配列番号に対応する核酸またはこれらの任意の修飾もしくは誘導体である:(5’−3’)配列:cgcgguauaguccccau(Apt/AD;配列番号1);(5’−3’)配列:cgcgguauaguccc(Apt6/AD 配列番号2);(5’−3’)配列:cgcgguauaguccac(Apt7/AD;配列番号3);(5’−3’)配列:cgcgguauaguccauc(Apt8/AD;配列番号4);(5’−3’)配列:cgcgguauagucag(Apt9/AD;配列番号5);(5’−3’)配列:cgcgguauagucagg(Apt1O/AD;配列番号6);(5’−3’)配列:cgcgguauagucagag(Apt11/AD;配列番号7);(5’−3’)配列:cgcgguauaguccucac(Apt14/AD;配列番号8)。この解毒剤配列は、対応するアプタマーの配列と少なくとも20%、50%、75%または90%相同であり得る。1つの実施態様では、このアンチセンス配列が、別途、投与される。
【0065】
アンチセンス技術は、例えば、Okanoら(1991)J.Neurochem.56:560および「Oligodeoxynucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression」,(1988)CRC Press,Boca Raton FLにおいて論じられている。1つの実施態様において、本発明のオリゴヌクレオチド解毒剤は、有利なことに、アプタマーの1本鎖領域を標的にする。これは、核形成および従ってアプタマー活性調節速度を促進し得、ならびにまた、一般に、この被標的アプタマーより多くの塩基対を含む分子間二重鎖を導く。本発明の第IXa因子に対するアプタマーを使用して、アンチセンスオリゴヌクレオチドを設計することができる。このアンチセンスオリゴヌクレオチドは、インビボでアプタマーにハイブリダイズすることができ、および第IXa因子へのアプタマーの結合を阻止する。
【0066】
本発明の改良されたアプタマーに対する改良された解毒剤を設計するために、様々な戦略を用いて最適な結合部位を判定することができる。アプタマーの周りを相補的オリゴヌクレオチドに「ウォーク」させることができる。この「ウォーキング」手順は、所定の改良アプタマーについての最小コンセンサスリガンド配列を決定した後、この最小コンセンサスリガンド配列にランダム配列を付加させること、および別であるが隣接したドメイン内にあるような標的とのさらなる接触を展開させることを含む。ウォーキング実験は、逐次的に行われる2つの実験を含み得る。この候補混合物の各構成員が関心のある核酸リガンドに対応する固定核酸領域を有する、新規候補混合物を生成する。この候補混合物の各構成員は、配列のランダム化領域も含む。この方法に従って、標的の1つより多くの結合領域に結合することができる領域を含む、「拡張」核酸リガンドと呼ばれるものを特定することができる。
【0067】
RNA様オリゴヌクレオチドを生じさせる糖修飾、例えば20−フルオロまたは20−メトキシ、がRNアーゼ Hの基質としての役割を果たすようであることを、一部、理由として、糖の変化は、解毒剤の安定性に影響を及ぼし得る。塩基への糖の配向の変化も、RNアーゼ Hの活性化に影響を及ぼし得る。加えて、骨格修飾は、RNアーゼ Hを活性化するオリゴヌクレオチドの能力に影響を及ぼす。メチルホスホネートは、これを活性化しないが、ホスホロチオエートは、卓越した基質である。加えて、RNAに結合し、RNアーゼ Hを活性化するオリゴヌクレオチドとして、キメラ分子が研究されている。例えば、20−メトキシホスホネートのウイングとデオキシオリゴヌクレオチドの5塩基ギャップとを含むオリゴヌクレオチドは、これらの標的RNAに結合し、RNアーゼ Hを活性化する。
【0068】
1つの実施態様において、約15ヌクレオチドの長さの2’−O−メチル修飾解毒剤(例えば、2’−O−メチルオリゴヌクレオチド)を使用することができ、この相補性は、アプタマーに対して約5ヌクレオチドずれている(例えば、ヌクレオチド1から15、6から20、11から25などに相補的なオリゴヌクレオチド)。ハイブリダイゼーション効率に対する本改良アプタマーの三次構造の影響力は、予測困難である。後続の実施例において説明するアッセイは、特定のアプタマーにハイブリダイズする種々のオリゴヌクレオチドの能力をアッセイするために用いることができる。アプタマーのその標的分子からの解離速度、またはアプタマーとその標的分子の会合速度を上昇させる種々のオリゴヌクレオチド解毒剤の能力も、例えばBIACOREアッセイを利用して動態検査を行うことにより判定することができる。アプタマーとその標的分子との相互作用を望みどおりに修飾するために5から50倍またはそれ以下モル過剰のオリゴヌクレオチドを必要とするようなオリゴヌクレオチド解毒剤を選択することができる。
【0069】
本発明の解毒剤は、別の分子、例えば、ペプチド、ハイブリダイゼーション誘発型架橋剤、輸送体、ハイブリダイゼーション誘発分解剤などにコンジュゲートさせることができる。
【0070】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、5−フルオロウラシル、5−フルオロシトシン、5−ブロモウラシル、5−ブロモシトシン、5−クロロウラシル、5−クロロシトシン、5−ヨードウラシル、5−ヨードシトシン、5−メチルシトシン、5−メチルウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−カルボキシメチラミン−O−メチルチオウリジン、5−カルボキシメチラミン−O−メチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ−D−ガラクトシルケオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、6−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチラミン−O−メチルウラシル、5−メトキシアミン−O−メチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルケオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、5−メトキシシトシン、2−メチルチオ−N&イソペンテニルアデニン、ウラシルオキシ酢酸(v)、ブトキソシン、プソイドウラシル、ケオシン、2−チオシトシン、5−メチルチオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシルオキシ酢酸(v)、5−メチルチオウラシル、3−(3−アミノ−3−N カルボキシプロピル)uldeil、(acp3)w、および2,6−ジアミノプリンから選択されるものをはじめとする(しかし、これらに限定されない)少なくとも1つの修飾塩基部分を場合により含むことがある。
【0071】
本解毒剤は、アラビノース、2−フルオロアラビノース、キシルロース、ヘキソース、2’−フルオロリボース、2’−O−メチルリボース、2’−O−メトキシエチルリボース、2’−O−プロピルリボース、2’−O−メチルチオエチルリボース、2’−O−ジエチルアミノオキシエチルリボース、2’−O−(3−アミノプロピル)リボース、2’−O−(ジメチルアミノプロピル)リボース、2’−O−(メチルアセトアミド)リボース、および2’−O−(ジメチルアミノエチルオキシエチル)リボースを含む(しかし、これらに限定されない)群から選択される少なくとも1つの修飾糖部分も含むことがある。さらにもう1つの実施態様において、このアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロアミドチオエート、ホスホロアミデート、ホスホロジアミデート、メチルホスホネート、アルキルリン酸トリエステル、およびこれらのホルムアセタールまたは類似体を含む(しかし、これらに限定されない)群から選択される少なくとも1つの修飾リン酸骨格を含む。
【0072】
リボザイムおよびDNAザイム
改良アプタマーまたは解毒剤は、酵素核酸で場合もある。こうしたリボザイムまたはDNAザイムは、先ず、標的RNAまたはDNAに結合し(Cech 米国特許第5,180,818号参照)、次いで、この標的を切断することによって作用する。酵素核酸は、新たな標的への結合および切断を繰り返し行うことができ、これによってRNAアプタマーを不活性化することができる。リボザイムには少なくとも5つの種類があり、これらの各々が異なるタイプの特異性を提示する。解毒剤の場合、この酵素活性が、改良アプタマーへの「自殺位置」の導入を補足するか、代わりになることができる。
【0073】
リボザイムの酵素特性は、治療的処置を行うために必要なリボザイムの有効濃度がアンチセンスオリゴヌクレオチドのものより低いため、他の技法より有利である。単一のリボザイム分子によって標的RNAの多くの分子を切断することができる。加えて、リボザイムは、非常に特異的な阻害剤であり、この阻害の特異性は、塩基対合の結合メカニズムに依存するばかりでなく、この分子が結合するRNAの発現をこの分子が阻害するというメカニズムにも依存する。すなわち、この阻害は、RNAの切断によって生じ、このため特異性は、非被標的RNAの切断速度に対する被標的RNAの切断速度の比と定義される。この切断メカニズムは、塩基対合に関与するものに加えて、複数の因子に依存する。従って、リボザイムの作用の特異性は、同じRNA部位に結合するアンチセンスオリゴヌクレオチドのものより高い場合もある。
【0074】
触媒性分子のもう1つの種類は、「DNAザイム」と呼ばれる。DNAザイムは、1本鎖であり、RNAとDNAの両方を切断する。DNAザイムの一般的なモデルが提案されており、これは、「10−23」モデルとして知られている。簡単に「10−23 DNAザイム」とも呼ばれる、「10−23」モデルに続くDNAザイムは、各々デオキシヌクレオチド数7から9の2つの基質認識ドメインに隣接しているデオキシリボヌクレオチド数15の触媒ドメインを有する。インビトロ分析は、このタイプのDNAザイムが、生理条件下、この基質RNAをプリン:ピリミジン接合部で有効に切断し得ることを示す。本明細書で用いる「DNAザイム」は、DNAであってもよいしRNAであってもよい別個の標的核酸配列を特異的に認識および切断するDNA分子を意味する。
【0075】
適合した核酸
本発明のもう1つの側面において、本改良アプタマーの解毒剤は、ペプチド核酸(Peptide Nucleic Acids(PNA))である。PNAは、オリゴヌクレオチドに類似しているが、オリゴヌクレオチドのデオキシリボース骨格がペプチド骨格により置換されている点で組成が異なる。このペプチド骨格の各サブユニットは、自然発生または非自然発生核酸塩基に付いている。
【0076】
PNAは、対応する改良アプタマーと非置換オリゴヌクレオチド対応物より緊密に結合するため、速効性解毒剤として有利であり得る。PNAは、DNAとRNAの両方と結合し、結果として生じるPNA/DNAまたはPNA/RNA二重鎖は、これらのほうが高い融解温度(Tm)によって証明されるように、対応するDNA/DNAまたはDNA/RNA二重鎖より緊密に結合している。PNA/DNA(RNA)二重鎖のもう1つの利点は、Tmが、事実上、塩濃度に依存する点である。PNAは、DNA類似体(骨格が糖ではなくプソイドペプチドである)であるので、DNAの挙動を模倣し、相補核酸鎖に結合する。
【0077】
PNAは、メチレンカルボニル基によって核酸塩基 アデニン、シトシン、グアニン、チミンおよびウラシルが取り付けられているアミノ酸の繰り返し単位、N−(2−アミノエチル)−グリシンから成る合成ポリアミドである。天然および非天然核酸塩基、例えば、数ある中でも、プソイドイソシトシン、5−メチルシトシンおよび2,6−ジアミノプリン、イノシン、ウラシル、5−メチルシトシン、チオウラシル、2,6−ジアミノプリン、ブロモチミン、アザアデニンまたはアザグアニンも、PNAシントンに組み込むことができる。PNAは、t−Boc/ベンジル保護戦略に従って保護されたモノマー(PNAシントン)から最も一般的に合成され、この戦略では、成長ポリマーの骨格アミノ基が、t−ブチルオキシカルボニル(t−Boc)基で保護され、およびこの核酸塩基の環外アミノ基が、存在する場合には、ベンジルオキシカルボニル(ベンジル)基で保護される。このt−Boc/ベンジル戦略を用いて保護されたPNAシントンは、現在、市販されている。
【0078】
モルホリノ核酸(MNA)も解毒剤の調製に有利であり得る。モルホリノは、ヌクレアーゼに対して完全に耐性であり、S−DNAに災いをもたらす非アンチセンス作用の大部分またはすべてを免れているようであるからである。MNAは、6員モルホリン環に連結した4つの遺伝子塩基(アデニン、シトシン、グアニンおよびチミン)のうちの1つを各々が含むモルホリノサブユニットで、組み立てられている。これらのサブユニットは、非イオン性ホスホロジアミデートサブユニット間結合により連結されて、MNAをもたらす。これらのMNAは、RNAおよびDMA、ならびにイオン結合により連結された5員リボースまたはデオキシリボース骨格部分を有するこれらの類似体より、実質的に良好なアンチセンス特性を有し得る(wwwgene−tools.com/Morpholinos/body_morpholinos.HTML参照)。
【0079】
Manoharaらの米国特許第6,153,737号は、連結されたヌクレオシドがペプチド、タンパク質、水溶性ビタミンまたは脂溶性ビタミンで官能化されている、誘導体化オリゴヌクレオチドに関する。この開示は、核包膜への複合体の選択的侵入を助長するペプチドまたはタンパク質配列でのオリゴヌクレオチドの修飾によるアンチセンス療法に関する。同様に、水溶性および脂溶性ビタミンを使用して、細胞膜を貫通するアンチセンス療法または診断薬の輸送を援助することができる。
【0080】
ロックド核酸(LNA)も本発明の解毒剤を調製するために使用することができる。LNAは、核酸特性を改良するための主要候補にこれらをする一定の特徴を有する新たな種類のDNA類似体である。LNAモノマーは、RNAモノマーに構造的に類似している二環式化合物である。LNAは、DNAおよびRNAの化学特性の大部分を共有しており、水溶性であり、電気泳動法、エタノール沈殿法などにより分離することができる(Tetrahedron,54,3607−3630(1998))。しかし、DNAオリゴまたはRNAオリゴ、いずれへのLNAモノマーの導入によっても、相補的DNAまたはRNAを有すると同時にWatson−Crick塩基対合則に従う二重鎖の高温安定性が得られる。3’局所LNAを含むプライマーが酵素的伸張、例えばPCR反応、のための基質であるという発見と共に、LNAオリゴマーとで形成された二重鎖のこの高温安定性から、これらの化合物は本発明の解毒剤に適するものとなる。LNAの例については、米国特許第6,316,198号参照。
【0081】
他の実施態様において、前記安定化核酸は、PCO(プソイド環状オリゴ核酸塩基)、または2’−O,4’−C−エチレン架橋核酸(ENA)であり得る。
【0082】
4.修飾
本発明の改良アプタマーおよびアプタマーと解毒剤の組み合わせは、特定の糖残基を置換することによって、アプタマーの組成およびアプタマーの特定の領域のサイズを変えることによって、ならびに解毒剤によりさらに有効に阻害され得るアプタマーを設計することによって修飾される。アプタマーの設計は、アプタマーの二次構造(図1参照)およびこの二次構造と解毒剤対照の間の関係についての正しい認識を含む。従来の核酸修飾法とは異なり、本発明に包含されるFIX遺伝子産物に対する改良されたアプタマーの設計は、解毒剤対照の考察を含まねばならない。制御されたアプタマーには、このアプタマーが循環の際には安定であるが、解毒剤で制御されないほど安定ではないことが求められる。アプタマーは、切り詰めによって修飾することができるが、解毒剤は、切り詰めされたときの各アプタマーを制御するように設計する必要がある。さらに、一定の修飾、特に、ステムとループの界面での修飾は、2’−フルオロから修飾されるばずはなく、このアプタマーは、活性を失うことがある。
【0083】
1つの実施態様において、この設計は、アプタマーもしくは解毒剤、または両方の2’−ヒドロキシ含有率の低減を含む。もう1つの実施態様において、この設計は、アプタマーもしくは解毒剤、または両方のフルオロ含有率の低減を含む。さらなる実施態様において、この設計は、アプタマーもしくは解毒剤、または両方のO−メチル含有率の増大を含む。さらなる実施態様において、この設計は、アプタマーのサイズの増大を含む。もう1つの実施態様では、解毒剤のサイズをアプタマーのサイズと関連させて変化させる。さらにもう1つの実施態様では、グアニンストリングを4グアニン未満、または3グアニン未満、または2グアニン未満、または無グアニンに減少させる。しかし、これらの変更の共同作用は、適切な活性を生じさせるが解毒剤によって容易に中和される抗凝固薬を作り出すという努力目標に満たすものでなければならない。
【0084】
さらにもう1つの実施態様は、対合した解毒剤によってさらに有効に調整することができる「自殺位置」を有するアプタマーの設計法を含む。1つの実施態様において、この位置は、本改良アプタマーへの解毒剤の結合により1本鎖となり、不安定になり、ならびに解毒剤の結合により血液または肝臓エンドヌクレアーゼなどの循環中の酵素によるこの改良アプタマーの分解を可能にし、この結果、循環から活性アプタマーを有効に除去することができる。この自殺位置は、1つの実施態様では、ヒドロキシル化されているステム2内のグアニンであり得る。1つの実施態様において、このアプタマーは、解毒剤と結合するまでは2本鎖配置であり、解毒剤の結合により1本鎖となり、切断に利用され得る。
【0085】
本出願人らは、アプタマーまたは解毒剤のいずれかまたは両方に対する二次修飾を含めることにより安定で生物活性であるアプタマー−解毒剤ペアを発見した。特定の実施態様において、第IX因子に対するアプタマーは、修飾ヌクレオチドを含む。1つの実施態様において、アプタマーは、1つまたはそれ以上の2’−O−メチル基を含む。もう1つの実施態様において、アプタマーおよび解毒剤は、1つまたはそれ以上の2’−O−メチル修飾および1つまたはそれ以上の2’−フルオロ修飾を含む。もう1つの実施態様において、アプタマーおよび解毒剤は、2’−フルオロ修飾を含まない。さらにもう1つの実施態様において、アプタマーは、1つまたはそれ以上の2’−O−メチル修飾および1つまたはそれ以上の2’−フルオロ修飾をこのステムに含む。これらのアプタマーは、可溶性ポリマーで修飾されているヌクレオチドも含むことができる。こうしたポリマーとしては、ポリエチレングリコール、ポリアミン、ポリエステル、ポリ無水物、ポリエーテル、または他の水溶性で医薬適合性のポリマーを挙げることができる。
【0086】
FIX阻害剤の所定のアプタマー配列内のプリンは、現行の2’ヒドロキシル糖の2’−O−メチル糖での置換を許容することができる(実施例1、図1)。本出願人らは、これらのアプタマーが次の3つの種類に分類されることを発見した:(1)抗凝固活性の増大(Apt−4);(2)活性の中等度損失(Apt−1、2および3);ならびに(3)活性の重度損失(Apt5)(図2)。Apt−5からのデータは、2’ヒドロキシルプリンを2’−O−メチルプリンですべて置換することの影響力は、いずれかの個々のセクターの単独置換より有意に大きいことを示している(図2)。このアプタマーの場合、これがセクター間の潜在的相互作用を示唆する可能性があり、またはセクターのうちの1つにおける置換に起因する障害が追加の修飾により悪化する(すなわち、セクターのうちの1つがアキレス腱である)可能性ある。Apt−1、2および3によって示される改善された解毒剤制御は、解毒剤結合部位内への2’O−メチル残基の導入が、解毒剤オリゴヌクレオチドのアプタマーへの結合能力を改善することを示唆している。これは、各鎖に2’−O−メチルRNA残基を含有する二重鎖について観察される熱力学的安定性の増大と一致し、ならびに2’−O−メチル−2’−O−メチル鎖の二重鎖が、2’O−エチル−2’フルオロ鎖からなる二重鎖より熱力学的に安定であることを示唆している。代替の結論は、Apt−1、2および3の活性の低下によってあらゆる所定の時点における血漿中の「遊離」アプタマーがより多くなり、従って、これらに解毒剤オリゴヌクレオチドがより容易に結合するということである。
【0087】
もう1つの実施態様において、本発明のアプタマーは、修飾されたピリミジンヌクレオチドを含むことができる。ステム1内の2’フルオロピリミジンを2’−O−メチルで置換することにより、活性を改善し、より大きな置換レベルを許容する化合物を生じさせた。Apt 30および33の活性とApt 31および32の活性の比較により、C16は2’フルオロ糖を含む必要があり、G25は2’ヒドロキシル糖を含む必要があることが実証される(図16a)。Apt 31と32の間で観察される活性は、ステム2の中の残りの位置が2’−O−メチル糖を含むことができることを示唆している。実際、Apt 31は、Apt 32よりわずかに大きな効力を有するようであり、これは、C16に2’フルオロ、G25に2’ヒドロキシルを有し、残りの残基が2’−O−メチルである化合物が、Apt 33より大きい効力を示し得ることを示している。Apt 33は、Apt 30より容易に中和可能であり、これは、アプタマーの解毒剤結合部位内の追加の2’−O−メチル残基が解毒剤結合を改善することを示唆している。Apt 34は、C16を2’−O−メチルヌクレオシドではなく2’フルオロとして有する(図16b)。置換は、(Apt 34とApt 33を比較して)抗凝固活性を増大させたが、34は、90%中和を達成するために親Apt A化合物より低い解毒剤過多(〜5:1 対 10:1)をいまだ必要とするとはいえ、「中和能力」の小規模な喪失ももたらさなかった(図16b)。両方の結果が、2’−O−メチル置換に起因するステム2の安定性の増大と一致する。他者が、2’−フルオロピリミジンの2’−O−メチル置換を明らかに追求していないのは意外である。こうした置換は、合成コストが低減しならびにステム安定性増大のためアプタマー修飾を増大させることができるようであるからである。
【0088】
1つの実施態様において、アプタマーのステム2内の少なくとも1つのグアニンは、ヒドロキシル糖(2’−OH)を含む。1つの実施態様において、ステム1内またはステム2内の少なくとも1つのウリジンは、修飾塩基である。これは、2’−フルオロ(2’−F)修飾されていてもよいし、2’−O−メチル(2’−OCH)修飾されていてもよい。1つの実施態様において、ステム1またはステム2内の少なくとも1つのウリジンは、2’−O−メチル修飾されている。1つの実施態様において、ステム2内の少なくとも1つのシチジンは修飾されている。1つの実施態様において、ステム2内の少なくとも1つのシチジンは、2’−フルオロ修飾されている。
【0089】
しかし、Apt 12とApt 13および17の抗凝固活性の比較(図6)により、Apt 6から11について観察される活性の喪失は、1つまたはそれ以上の重要な残基における2’−O−メチルの存在に起因すること(図7)が実証される。Apt 14とApt 12の抗凝固活性の比較は、抗凝固活性に有意な影響を及ぼすことなくステム1の中の4つの連続するグアノシンの伸長を変化させることができることを示している。Apt 15およびApt 16とApt 2、12および17の比較は、a)ステム1の頂部の終わりのA−U対を除くステム1の中の各位置における2’−O−糖の存在が活性を向上させることを実証し;b)この塩基対におけるUの糖が、このアプタマーが効力を保持するための2’−フルオロであるに違いないことを実証し、ならびにc)この塩基対におけるAの糖が、抗凝固活性に有意な影響を及ぼさない2’−O−メチル糖であり得ることを示唆している。実際、Apt 16は本質的に完全な効力を保持する。
【0090】
データは、この二重鎖の両方の鎖が2’−O−メチル残基を多く含む場合とは対照的に、ステム1が2’−O−メチル−2’フルオロステムである場合には解毒剤がより容易にアプタマーに結合できることを示唆している。これは、また、両方の鎖が2’−O−メチル残基から成る二重鎖は、大部分が2’−O−メチルの鎖および大部分が2’フルオロの鎖からなるものより安定であるという見解と一致する。Apt 15に対してApt 16の向上した抗凝固活性もこれと一致する。または、14、15および16の間の中和能力の相違は、これら2つの化合物と比較して向上したApt 16の効力に起因し得る。にもかかわらず、すべて、ならびにApt Aが、少なくとも中和される。Apt 14および15の抗凝固活性が似ているという観察を基に、ステム1の停止位置におけるAの糖は、2’−O−メチル置換されていた(Apt 21、図8)。
【0091】
このアデノシン残基での2’−O−メチル糖の置換は、大部分が2’−O−メチルのステムの骨格において十分に許容される(図9)。実際、Apt 21の効力は、Apt 16と15の中間である。Apt 21の解毒剤中和は、Apt 16と比較して強化される(特に、図9における2.5:1および5:1 AD:薬物データ点を参照のこと)。
【0092】
糖修飾は、安定性を保証し得るが、アプタマーが治療活性であるために十分な薬物動態を保証するわけではない。健常な個体において、アプタマーは、おそらく腎排泄により、IV注射から数分以内に血漿から一掃される。注射後数時間から数日の間、無傷アプタマーを保つことを、より大きな高分子化合物、例えばポリエチレングリコール(PEG)にこれらをコンジュゲートさせることによって達成した。もう1つの実施態様において、アプタマーの血漿クリアランスを、これらをリポソームに埋め込むことによっても増大させた。
【0093】
本発明の核酸アプタマーは、ステムおよびループのサイズを変化させることによって修飾することもできる。様々なレベルの抗凝固活性を示す、ステム1領域に4、5または6の2−O−メチル修飾塩基対を有するアプタマーの2つのファミリーは、抗凝固活性および解毒剤対照のレベルの変化を示した(実施例2、図3から5参照)。ステム1突然変異体(図3)は、APTTアッセイで測定すると、抗凝固活性の喪失を示す(図4および5)。すべてのステム1変異体は、完全2’−O−メチルプリン/2’−フルオロピリミジン化合物 Apt 5より小さい活性を示し、これは、ステム1の中のピリミジンの1つが、この化合物が効力を保持するために2’フルオロ糖を含むに違いないことを示唆している。しかし、すべてが同様の活性レベルを示し、これは、ステム長が活性喪失の原因にならない場合があることを示唆している。しかし、5塩基対ステム1構築物(Apt 10および7)は、6塩基対より迅速に解毒剤制御されるようである。データは、解毒剤中和を強化するには、5塩基対のステム1のほうが4、6または7塩基対から成るものより好適であり得ることを示唆している。
【0094】
解毒剤の標的設定のために、1本鎖尾部(3’または5’)を含むように改良アプタマー修飾して、オリゴヌクレオチド解毒剤との会合を促進するようにしてもよい。適する尾部は、1から20個のヌクレオチド、好ましくは1から10個のヌクレオチド、さらに好ましくは1から5個のヌクレオチド、最も好ましくは3から5個のヌクレオチド(例えば、2’−O−メチル配列などの修飾ヌクレオチド)を含むことができる。尾部のあるアプタマーを結合および生体活性に関して(例えば、下で説明するように)検査して、1本鎖尾部の付加がアプタマーの活性構造を破壊しないことを証明することができる。例えば、尾部配列を有する1、3または5塩基対を形成することができる一連のオリゴヌクレオチド(例えば、2’−O−メチルオリゴヌクレオチド)を設計することができ、尾部を有するアプタマーのみと会合するこれらの能力、ならびにこのアプタマーがこの標的分子から解離するまたはこの標的分子と会合する速度を増加させるこれらの能力について検査することができる。スクランブルした配列対照を利用して、これらの作用が二重鎖形成に起因し、非特異的作用ではないことを証明することができる。
【0095】
オリゴヌクレオチド解毒剤は、(例えば、単独で、またはリポソーム製剤で、または担体、例えばPEGと複合体化して)直接投与することができる。(例えば、米国特許第6,147,204号、同第6,011,020号参照)。驚くべきことに、PEG分子の付加は、ステム1の長さが短いほど第IX因子に結合するアプタマーを減少させず、実際、PEG化されている短縮形ステム1は、中和能力を増大させ、この結果、潜在的にさらに有効な治療効果をもたらすようである。図10は、5塩基対ステムを有するPEG化アプタマー(Apt 19)の活性および中和能力を示すものである。Apt 19は、7塩基対ステム1を有するPEG化Apt 16に非常に類似した抗凝固活性を有するが、この活性の〜90%は、わずか2.5:1過剰の解毒剤:薬物で中和することができる。
【0096】
従って、1つの実施態様において、本改良アプタマーまたは解毒剤は、非免疫原性の高分子量化合物、例えばポリエチレングリコール(PEG)または本明細書に記載するような他の水溶性で医薬適合性のポリマーに取り付けることができる。1つの実施態様において、本アプタマーまたは解毒剤は、共有結合によりPEG分子と会合している。共有結合による取り付けを利用する場合、PEGは、この改良アプタマーまたは解毒剤上の様々な位置に共有結合させることができる。もう1つの実施態様において、オリゴヌクレオチドアプタマーまたは解毒剤をマレイミドまたはビニルスルホン官能性により5’−チオールに結合させる。1つの実施態様において、多数の改良アプタマーまたは解毒剤を単一のPEG分子と会合させることができる。これらの改良アプタマーおよび解毒剤は、同じ配列および修飾であってもよいし、異なる配列および修飾であってもよい。なお、さらなる実施態様において、多数のPEG分子を互いに取り付けることができる。この実施態様では、同じ標的または異なる標的に対する1つまたはそれ以上のアプタマーまたは解毒剤を各PEG分子と会合させることができる。同じ標的に対して特異的な多数のアプタマーまたは解毒剤をPEGに取り付ける実施態様では、同じ標的を極めて接近させてしまって同じ標的間で特異的な相互作用を生じさせる可能性がある。異なる標的に対して特異的な多数のアプタマーまたは解毒剤をPEGに取り付ける実施態様では、別個の標的を互いに極めて接近させてしまって、これら標的間に特異的相互作用を生じさせる可能性がある。加えて、PEGと会合している同じ標的または異なる標的に対するアプタマーまたは解毒剤がある実施態様では、薬物もPEGと会合する場合がある。従って、この複合体が、目標を定めた薬物送達をもたらし、PEGは、リンカーとしての役割を果たす。
【0097】
本発明のアプタマーまたは解毒剤は、第一または第二ヒドロキシル基などの官能基に共有結合した他のコンジュゲート基も含むことができる。本発明のコンジュゲート基としては、ポリアミン、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、オリゴマーの薬力学的特性を向上させる基、ならびにオリゴマーの薬物動態特性を向上させる基が挙げられる。本発明に関連して、薬力学的特性を向上させる基としては、オリゴマーのバイオアベイラビリティを改善する、オリゴマーの耐分解性を向上させる、および/またはRNAとの配列特異的ハイブリダイゼーションを強化する基が挙げられる。
【0098】
特定の実施態様において、本アプタマーは、以下の配列のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む。(「A」は、2’OH Aであり;「a」は、2’−O−メチル Aであり;「G」は、2’−OH Gであり;「g」は、2’−O−メチル Gであり;「C」は、2’−フルオロ Cであり:「c」は、2’−O−メチル Cであり;「U」は、2’フルオロ Uであり;「u」は、2’−O−メチル Uであり;ならびに「T」は、逆向き2’H Tである)。
【0099】
【表3】


【0100】
1つの実施態様において、第IX因子に対するアプタマーは、核酸配列:gugga CUaUaCC gCg UaaUgC uGc C Uccac T(Apt39;配列番号59)、を含む、から成る、またはから本質的に成る。
【0101】
本明細書において説明する改良アプタマーは、当該技術分野において公知の技法を用いて製造することができる。例えば、アプタマーを製造するために用いることができる大規模製造法が記載されている米国特許が発行されている。Caruthersらは、例えば、米国特許第4,973,679号、同第4,668,777号および同第4,415,732号に、オリゴヌクレオチドの製造に有用であるホスホロアミダイト化合物の一類を記載している。もう1つの系列の特許において、Caruthersらは、無機ポリマー支持体を使用するオリゴヌクレオチドの合成法を開示している。例えば、米国特許第4,500,707号、同第4,458,066号および同第5,153,319号参照。さらにもう1つの系列の特許において、Caruthersらは、オリゴヌクレオチドを製造するために使用することができるヌクレオシドホスホロジチオエートの一類を開示している。例えば、米国特許第5,278,302号、同第5,453,496号および同第5,602,244号参照。
【0102】
5.使用方法
改良アプタマーでの凝固の調整
本発明は、FIX、FIXa、またはこの内因性テナーゼ複合体に結合させるための改良されたアプタマーの使用を包含する。この結合は、インビトロである場合もあり、インビボである場合もある。FIX、FIXa、またはこの内因性テナーゼ複合体への結合の結果は、これらタンパク質または複合体の生物活性の阻害であり得る。本改良アプタマーを使用して、深在静脈血栓症、動脈血栓症、手術後血栓症、冠動脈バイパスグラフト(CABG)、経皮的冠動脈形成術(PTCA)、発作、腫瘍転移、炎症、敗血症性ショック、高血圧、ARDS、肺動脈塞栓症、播種性血管内凝固(DIC)、血管再狭窄、血小板沈着、心筋梗塞、脈管形成などの疾患を治療すること、またはアテローム硬化性血管に罹患しており血栓症の危険がある哺乳動物の予防的治療を行うことができる。
【0103】
1つの実施態様において、本改良アプタマーは、FIXaに結合することにより血液凝固を阻害する。本発明は、血液凝固を阻害するために、この必要がある哺乳動物、例えばヒトに本発明のアプタマーを投与することを包含する。本発明のもう1つの実施態様は、治療的行動の中で投与によく適するアプタマーを使用する方法を提供する。
【0104】
改善の必要がある哺乳動物における改善された凝固調整法を提供する。1つの実施態様において、この方法は、(a)凝固経路FIX、FIXa、もしくはこの内因性テナーゼ複合体に選択的に結合する、またはこの内因性テナーゼ複合体のサブユニット(すなわち、FIX、FIXa、FVIIIのFXへの結合またはFXの活性化)を阻害する改良アプタマーの有効量を、その必要がある温血脊椎動物または哺乳動物に投与すること;(b)段階(a)でのアプタマーの投与により温血脊椎動物における凝固経路因子の生物活性を調節すること;ならびに(c)このアプタマーの作用を反転させるように改良解毒剤を供給することを含む。一定の実施態様において、前記温血脊椎動物はヒトである。
【0105】
本明細書で用いる用語「哺乳動物」は、ブタ(porcine)、ヒツジ(ovine)、ウシ(bovine)、齧歯動物、有蹄動物、豚(pig)、羊(sheep)、子羊、ヤギ、畜牛(cattle)、シカ、ウマ、イヌ、ネコ、ラットおよびマウスをはじめとする(しかし、これらに限定されない)あらゆるヒトまたは非ヒト哺乳動物を包含するものとする。
【0106】
重要な考慮分野は、血漿中半減期である。修飾は、改良アプタマーのインビボ半減期を数分から12時間またはそれ以上変化させ得る。本発明の改良アプタマーは、血管損傷が特定の時間、特定の場所で生じて、突然に比較的短時間の前血栓(prothrombotic)刺激をもたらしている経皮的冠動脈介入の処置に使用することができる。これは、頚動脈形成術後の場合もある。もう1つの実施態様において、本改良アプタマーは、冠動脈バイパス移植術および血液透析の際に利用される体外循環において使用することができる。後者の状態は、動静脈(AV)シャントに固有の血栓形成性のため、多少複雑である。本発明のアプタマーは、血栓塞栓疾患、人工心臓弁置換術、心房性細動を治療するために使用することもでき、および考えられるところでは、事前事象、好ましくない危険プロフィール、文献に掲載されている多血管床疾患(documented multibed vascular disease)、血管の炎症(アテローム硬化性血管疾患の初期)を有する患者の中での心血管事象の一次または二次予防に使用することもできる。
【0107】
温血脊椎動物における心血管疾患の治療方法も提供する。この方法は、凝固経路第IX因子、第IXa因子、もしくはこの内因性テナーゼ複合体に選択的に結合する、またはこの内因性テナーゼ複合体のサブユニット(すなわち、FIX、FIXa、FVIIIのFXへの結合またはFXの活性化)を阻害する改良アプタマーの有効量を、心血管疾患に罹患している脊椎動物被験者に投与することを含む。このアプタマーの投与により、脊椎動物被験者における心血管疾患が治療される。この方法は、解毒剤を供給して、この解毒剤の投与によりこの改良アプタマーの作用を反転させることを含む。
【0108】
本改良アプタマーは、血液凝固療法を必要とする哺乳動物に投与することができる。本発明は、血液凝固を阻害するためのアプタマーでの哺乳動物の治療方法を提供する。対になる解毒剤を投与して、アプタマーの作用を反転させることができる。この発見の利点は、血液凝固を現時間で制御できる点および血液凝固が哺乳動物自体の代謝に依存しない点である。
【0109】
本発明の組成物および方法は、心臓バイパス装置の循環におけるおよび腎臓透析を受けている患者における血栓症の予防に、ならびに血栓関連心血管疾患、例えば不安定狭心症、急性心筋梗塞(心臓発作)、脳血管障害(脳卒中)、肺動脈塞栓症、深在静脈血栓症、動脈血栓症、CABG術および播種性血管内凝固を煩っているまたは煩う危険がある患者の治療に、特に有用である。
【0110】
加えて、本発明の改良アプタマーおよび解毒剤は、FIXまたはFIX調整性カスケードに関連した他の心血管疾患を抑制することができる。凝固は、虚血性心血管疾患において重要な役割を果たす。研究結果は、虚血性心血管疾患に対する極端な凝固低下保護状態を示した。血友病患者に見られる凝固性の軽度の低下は、致死性虚血性心疾患に対して保護作用がある場合もある(Srametk Aら(2003)Lancet 362(9381):351−4; Bilora Fら(1999)Clin Appl Thromb Hemost.5(4):232−5)。
【0111】
本アプタマーを投与して、凝固誘発性炎症を予防することができる。微小血管閉塞および再潅流障害の一因となり得る急性心筋梗塞(AMI)に罹患している患者では、血栓溶解療法により炎症が誘発される。本発明の改良アプタマーは、この早期炎症反応を抑制することができる。1つの実施態様において、本発明の改良アプタマーを投与することにより、早期炎症応答の減少の必要がある哺乳動物において早期炎症応答を減少させる方法を提供する。
【0112】
本発明の改良アプタマーおよび解毒剤を使用して、アテローム性動脈硬化症を抑制することができる。アテローム性硬化症における幾つかの有害事象は、プラーク破裂と関連しており、これはアテローム性動脈硬化症にまつわる罹患率および死亡率の主因である。通常の冠動脈性心疾患危険因子に加えて、凝固第IX因子活性化ペプチドおよびおよびフィブリノーゲンは、冠動脈性心疾患の危険に明確に関連し得る(R.Rosenbergら(2001)Thromb Haemost 86:41−50; JA Cooperら(2000)Circulation 102:2816−2822)。この内因系経路は、内皮層の除去ならびに血流へのSMCおよびマクロファージの暴露後のアテローム硬化性病変の血栓形成性を有意に強化し得る(Ananyeva NMら(2002)Blood 99:4475−4485)。加えて、本改良アプタマーを供給して、炎症を随伴する急性冠動脈症候群(ACS)に罹患している哺乳動物における病的状態を予防することもできる。
【0113】
一定の臨床シナリオでは、この接触経路が血液凝固の主要経路となる。これらは、血液製剤が身体から除去される外科的手順、例えば前記血液と心肺バイパス(CPB)回路および酸素付加装置との接触は、CPB中および後に炎症状態を誘導する。遺伝疫学および前向き(prospective)臨床試験は、冠動脈再生手順中の炎症反応の大きさを、腎臓損傷、心房性細動、発作、腸損傷およびニューロン損傷をはじめするCPBの多数の有害作用と結びつけた。凝固経路の活性化によって誘導される炎症反応は、凝固第Xa因子およびトロンビンによって媒介され、これらは、血餅形成におけるこれらの役割に加えて、これら自体が炎症性(proinflammatory)および分裂誘起シグナル伝達タンパク質である。本改良アプタマーを投与して、血管形成術後再狭窄に関連した有害作用を予防することもできる。
【0114】
改良されたアプタマー−解毒剤ペアでの凝固の調整
血栓性疾患に罹患しているか、凝固誘発性事象中の患者の治療に関する多くの課題の中に、抗凝固薬物療法に関連した出血の潜在的危険がある。出血の危険の根底にあるメカニズムは複雑であるが、薬物のばらつき(血栓形成度または血栓負荷度に対して過剰な抗凝固作用)、薬物濃度と抗凝固作用の間の比較的不良な相関関係、止血の障害(血小板の動作、血管の完全性、多段階凝固)に対する広範にわたる妥協および抗凝固薬の挙動の限定制御の関数であることは議論の余地がない。
【0115】
抗血栓性または抗凝固薬核酸リガンドの活性を急速に反転させる能力が望ましい、少なくとも3つの臨床シナリオが存在する。第一のケースは、抗凝固薬または抗血栓治療が、頭蓋内または胃腸の出血をはじめとする出血を導くケースである。より安全な標的タンパク質を特定することがこの危険を低減し得るが、このタイプの出血事象からの罹患または死亡の可能性は、この危険を見過ごすことができない。第二のケースは、抗血栓治療を受けている患者に緊急手術が必要とされる場合である。この臨床状況は、GPIIb/IIIa阻害剤適用下で経皮冠動脈介入を受けている一方、緊急冠動脈バイパス移植術(CABG)を必要とする患者の割合で生じる。この状況での現行の診療は、(エプチフィバチドなどの小分子拮抗薬のために)化合物のクリアランス(これは、2から4時間かかることがある)または(アブシキマブ治療のために)血小板注入を可能ならしめることである。第三のケースは、抗凝固薬核酸リガンドが心肺バイパス手順中に使用されるケースである。バイパス患者は、手術後に出血する素因を有する。各ケース、解毒剤(例えば、抗凝固または抗血栓性核酸リガンドを標的にする本発明のオリゴヌクレオチド解毒剤)による化合物の抗凝固作用の急激な反転により、この抗凝固または抗血栓性化合物の改良された、より安全である可能性が高い医学的制御が可能となる。
【0116】
本出願人らは、血液凝固カスケードにおいてタンパク質を正確に調整する改良されたアプタマー−解毒剤ペアを発見した。1つの実施態様では、本発明の解毒剤を本発明のアプタマーの後にこの必要がある哺乳動物に供給して、これらのアプタマーの作用を反転させる。アプタマーおよびアプタマー−解毒剤ペアは、患者の経過ならびに最適な治療を達成する方法に関する医師の自由裁量をはじめとする様々な因子に基づき、必要に応じて即時投与することができる。従って、本発明は、血液凝固のための核酸リガンド療法の過程での、改善された調整可能な治療的行動を開示する。
【0117】
施術を受けている個体も、本発明の改良アプタマーおよび解毒剤の使用により発生する、標的を定めた凝固調節を必要とする。一定の実施態様において、本アプタマーは、一般的外科手術を受ける患者に投与される。一定の他の実施態様において、本アプタマーは、冠動脈心疾患を包含し得る心血管疾患に罹患している患者に投与される。これらの患者はバイパス手術または経皮的冠動脈介入をはじめとする処置を受けている場合もある。本発明のアプタマーで治療することができる哺乳動物は、凝固療法を必要とする身体的損傷を有する患者も包含する。
【0118】
患者の手術前評価により、薬物誘発性、後天性、または先天性凝固異常を特定することができる。抗凝固療法での主な注意は手術前の期間に向けられる。さらに、見過ごされる場合が多いが、主要な凝固疾患の治療における管理戦略は、コストおよび個々の血液成分における凝固因子の半減期の考慮である。凝固および炎症プロセスの制御の操作により、出血の予防が可能になった。加えて、多くの場合、患者の診断が難しいため、本発明の調節可能な改良されたアプタマーと解毒剤のペアは、診断および治療が正しくない場合、確実に治療を即座に無力化できる点で、特に有用である。例えば、冠動脈梗塞の症状は、急性冠動脈解離の症状に近似していることがある。Scarabeoら(2002)Italian Heart Journal 3:490−494参照。冠動脈梗塞の診断は、急性冠動脈解離では忌避を示す抗凝固薬を直ちに求める。本明細書に記載する改良アプタマー−解毒剤ペアを用いて、ヘルスケア提供者による間違いを容易に覆すことができる。
【0119】
発作の際に血管の開通性を回復させる薬剤も、脳内出血(ICH)の危険を増大させる。第IXa因子は、内因系凝固経路における基本的な媒介物であるので、第IXa因子依存性凝固の標的を定めた阻害は、ICHを制限する外因性止血メカニズムを損なうことなく発作における微小血管血栓症を抑制することができる。本発明の改良アプタマーおよび解毒剤を使用して、心血管疾患および手術に関連した発作を抑制することができる。
【0120】
投与
組織における心血管疾患を治療するための本方法は、心血管疾患が発生しているまたは発生する危険がある組織を、凝固因子に結合することができる改良されたアプタマーの治療有効量を含む組成物と接触させること、ならびに改良された解毒剤を供給して、この解毒剤の投与によりこのアプタマーの作用を反転させることを企図している。従って、この方法は、RNAアプタマーを含有する生理学的に許容される組成物の治療有効量を患者に投与すること、ならびに解毒剤を供給して、この解毒剤の投与によりこのアプタマーの作用を反転させる方法を含む。
【0121】
解毒剤の投与の投薬量範囲は、この解毒剤の形態に依存し、医師または他のヘルスケア提供者によって評価され得る。一般に、この投薬量は、患者の年齢、状態、性別および疾病の程度によって変わるものであり、当業者はこれを決定することができる。任意の合併症の発生時に個々の医師が投薬量を調整することもできる。
【0122】
一般に、治療有効量は、凝固調節量または炎症調節量をはじめとする(しかし、これらに限定されない)、核酸リガンドの作用を測定できる程度に調節するために十分な解毒剤の量である。
【0123】
本発明の改良アプタマーの好ましい投与様式は、非経口投与様式、静脈内投与様式、皮内投与様式、関節内投与様式、滑液包内投与様式、クモ膜下投与様式、動脈内投与様式、心臓内投与様式、筋肉内投与様式、皮下投与様式、眼窩内投与様式、嚢内投与様式、髄腔内投与様式、胸骨内投与様式、局所投与様式、経皮パッチ、肛門、膣もしくは尿道座剤による投与様式、腹膜投与様式、経皮投与様式、鼻内噴霧、手術移植、インターナル・サージカル・ペイント(internal surgical paint)、注入ポンプ、またはカテーテルによる投与様式である。1つの実施態様において、薬剤および担体は、遅速放出処方、例えば、インプラント、ボーラス、微粒子、マイクロスフェア、ナノ粒子またはナノスフェアで投与される。
【0124】
本発明の解毒剤は、好ましくは、注射によって、またはある期間にわたっての漸進的注入によって経皮投与することができる。治療すべき組織には一般に全身投与により体内で接触する、従って、最も多くの場合、治療用組成物の静脈内投与によってこれらを治療するが、標的にする組織が標的分子を含有する可能性がある場合、他の組織および送達技術を提供する。従って、本発明の解毒剤は、一般に、経口投与、血管組織に局所投与、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、腔内投与、経皮投与され、ならびに蠕動技術により送達することができる。上述のように、本医薬組成物は、様々な経路、例えば経口経路、血管組織への局所経路、静脈内経路、腹腔内経路、筋肉内経路、皮下経路、腔内経路、経皮経路、によって個体に供給することができ、ならびに蠕動技術によって送達することができる。血管組織への局所投与のための代表的で非限定的なアプローチとしては、(1)インビボ送達のため、核酸リガンドを含むゲルでの血管組織の被覆または含浸、例えば、除去またはバイパスされた損傷または罹患血管組織の代わりに、前記の被覆または含浸された血管を移植するアプローチ;(2)送達が望まれる血管へのカテーテルによる送達;(3)患者に移植すべきである血管への核酸リガンド組成物のポンピング、が挙げられる。または、核酸リガンドは、マイクロインジェクションにより、またはリポソーム封入により、細胞に導入することができる。有利なことに、本発明の核酸リガンドは、1日1回量で投与することができ、またはこの全日用量を幾つかの分割量で投与することができる。次に、解毒剤を任意の適する手段によって供給して、この解毒剤の投与により核酸リガンドの作用を変化させる。
【0125】
組成物
本発明のアプタマーおよび解毒剤は、改良アプタマーに加えて解毒剤または調節剤および医薬適合性の担体、希釈剤または賦形剤を含むことができる医薬組成物に調合することができる。この組成物の正確な性質は、この改良アプタマーおよび解毒剤の性質ならびに投与経路に一部依存するであろう。最適な投薬計画は、当業者には容易に確立することができ、ならびにこの改良アプタマー、この解毒剤の組み合わせ、この患者および求められる効果によって変化し得る。
【0126】
医薬調合物に関する標準的な情報については、Anselら,Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、第六版、Williams & Wilkins,1995を参照のこと。本発明のアプタマーおよび解毒剤を含む治療用組成物は、例えば単位用量の注射により、従来どおり静脈内投与される。本発明の治療用組成物に関して用いるときの用語「単位用量」は、被験者に対する単位投薬の際に適する物理的に別個の単位を指し、この場合、各単位は、必要な希釈剤、すなわち担体またはビヒクル、と共同で所望の治療効果を生じさせるように計算された所定量の活性材料を含有する。
【0127】
本組成物は、この投薬調合物に適合した様式で、治療有効量で投与される。投与すべき量は、治療すべき被験者、被験者の器官の活性成分利用能力、および所望の治療効果の程度に依存する。投与に必要とされる活性成分の正確な量は、携わる医師の判断に依存し、個体によって異なる。しかし、全身適用に適する投薬量範囲は、本明細書に開示しており、投与経路に依存する。投与に適する計画も様々であるが、一般には、初期投与、続く1時間またはそれ以上の間隔での注射または他の投与による反復用量による。または、インビボ療法について指定されている範囲内に血中濃度を維持するために十分な持続点滴静注が考えられる。
【0128】
本発明のアプタマーまたは解毒剤を含む薬学的に有用な組成物は、医薬適合性の担体の混合などによる公知の方法に従って調合することができる。そうした担体および調合方法の例は、Remington’s Pharmaceutical Sciencesにおいて見出すことができる。有効な投与に適する医薬適合性の組成物を形成するために、そうした組成物は、アプタマーの有効量を含有するであろう。そうした組成物は、1つまたはそれ以上のアプタマーまたは解毒剤の混合物を含有する場合もある。
【0129】
本発明の改良アプタマーの有効量は、この個体の状態、体重、性別および年齢などの様々な因子によって変化し得る。他の因子としては、投与様式が挙げられる。一般に、本組成物は、体重に合わせた投薬量、例えば、体重のkgあたり約0.1mgから約100mgの範囲の投薬量で投与されるであろう。特定の実施態様において、前記投薬量は、体重のkgあたり約0.5mgから約50mgである。特定の実施態様において、前記投薬量は、体重のkgあたり0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9mgと1mgの間、およびこれらの間の任意の投薬量である。特定の投薬単位は、1ngから1gの範囲であるが、より一般的には、約0.01μg、0.1μg、1μg、10μg、100μg、500μgもしくは1gまたはこれらの間の任意の量である。
【0130】
患者に送達される抗体の有効量は、この個体の状態、体重、性別、年齢および投与される核酸リガンドの量などの様々な因子によって変化するであろう。1つの実施態様において、解毒剤は、0.5から50mg/kgの範囲である。もう1つの実施態様において、送達される解毒剤の量は、0.5から10、0.5から5、1から10または1から5mg/kgの範囲である。一般に、送達される解毒剤の量は、送達されるアプタマーの量以上である。典型的には、解毒剤の量は、アプタマーの量の約1から約20倍である。一定の実施態様において、解毒剤は、患者に送達されるアプタマーの量の約1、2、3、4、5、6、7、8、9または10倍である。
【0131】
医薬組成物中のアプタマーと解毒剤の改善された組み合わせを、治療有効量で、すなわち凝固調節応答を生じさせるために十分な量で、または予防有効量で、すなわち凝固カスケードにおいて凝固因子が作用するのを防止するために十分な量で投与する。前記治療有効量および予防有効量は、調節剤によって変化し得る。本医薬組成物は、1回量または複数回の用量で投与することができる。
【0132】
本改良解毒剤の活性は永続するため、解毒剤による核酸リガンドの所望の調節レベルが達成されたら、この解毒剤の注入を停止して、残留解毒剤をヒトまたは動物から無くすことができる。これにより、必要に応じた核酸リガンドでの後の再治療が可能となる。または、および本発明の解毒剤の特異性を考慮して、後の治療は、第二の異なる改良アプタマー/解毒剤ペアを伴うこともある。
【0133】
本明細書に開示する方法に従って合成または同定される解毒剤は、常用検査によって規定された適切な投薬量で単独使用して、あらゆる潜在的な毒性を最小限すると同時に凝固に関する核酸リガンド活性の最適な調節を達成することができる。加えて、他の薬剤の共同投与または逐次投与が望ましいこともある。1つより多くの活性薬剤での併用治療について、これらの活性薬剤が別の投薬調合物である場合、これらの活性薬剤は同時に投与することができ、またはこれらの各々を別々に、時間をずらして、投与することができる。
【0134】
本発明の改良アプタマーおよび解毒剤を利用する薬剤投与計画は、患者のタイプ、種、年齢、体重、性別および病状;治療すべき状態の重症度;投与経路;患者の腎および肝機能;ならびに利用される特定の組み合わせをはじめとする様々な因子に従って選択される。通常技術の医師は、この状態の進行を予防する、この状態の進行に対抗するまたはこの状態の進行を阻止するために必要なアプタマーの有効量を容易に決定および処方することができる。毒性を伴わずに効能を生じさせる範囲内のこの組み合わせの濃度の最適な達成精度には、アプタマーの動態および標的部位にとっての解毒剤の利用可能度に基づく計画が必要とされる。これは、この調節剤の分布、平衡および排除の考慮を必要とする。
【0135】
本発明の方法において詳細に説明する組み合わせは、活性成分を構成するものであり、ならびに所期の投与形態、すなわち経口錠剤、カプセル、エリキシル、シロップ、座剤、ゲルなど、を基準にして適切に選択され、従来の薬学的実践に矛盾しない、適する医薬用希釈剤、賦形剤または担体(本明細書では、総称して「担体」材料と呼ぶ)との混合物で、一般に投与される。
【0136】
例えば、錠剤またはカプセルの形態での経口投与のための活性薬物成分は、経口用の非毒性で医薬適合性の不活性担体、例えばエタノール、グリセロール、水などと併用することができる。さらに、所望されるまたは必要な場合には、適する結合剤、滑沢剤、崩壊剤および着色剤もこの混合物に配合することができる。適する結合剤としては、デンプン、ゼラチン、天然糖(例えばグルコースまたはベータ−ラクトース)、コーンスターチ、天然および合成ゴム(例えば、アラビアゴム、トラガカントゴムまたはアルギン酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、蝋などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの剤形において使用される滑沢剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。崩壊剤としては、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0137】
液体形態についての活性薬物成分は、適切に着香された懸濁化剤または分散剤、例えば合成および天然ゴム(例えば、トラガカントゴム、アラビアゴム、メチルセルロースなど)と併用することができる。利用することができる他の分散剤としては、グリセリンなどが挙げられる。非経口投与には、滅菌懸濁液および溶液が望ましい。静脈内投与が望まれる場合には、適する保存薬を一般に含有する等張製剤を利用する。
【0138】
本活性薬物成分を含有する局所製剤は、当該技術分野では周知の様々な担体材料、例えば、アルコール、バルバドスアロエゲル、アラントイン、グリセリン、ビタミンAおよびE油、鉱物油、PPG2 mydstyl プロピオネートなどと混合して、例えば、アルコール溶液、局所クレンザー、クレンジングクリーム、スキンゲル、スキンローション、およびクリームまたはゲル処方のシャンプーにすることができる。
【0139】
本発明のアプタマーおよび解毒剤は、リポソーム送達系、例えば小型単層小胞、大型単層小胞および多層小胞、の形態で投与することもできる。リポソームは、様々なリン脂質、例えばコレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリン、から作ることができる。
【0140】
本発明のアプタマーおよび解毒剤は、目標を定めることができる薬物担体としての可溶性ポリマーとカップリングさせることもできる。こうしたポリマーとしては、ポリビニル−ピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリル−アミドフェノール、ポリヒドロキシ−エチルアスパルタミドフェノール、またはパルミトイル残基で置換されているポリエチレンオキシドポリリシンを挙げることができる。さらに、本発明のアプタマーおよび解毒剤は、薬物の制御送達の達成に有用な種類の生体分解性ポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリ乳酸、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロ−ピラン、ポリシアノアクリレート、およびヒドロゲルの架橋または両親媒性ブロックコポリマー、と(好ましくは共有結合による連結によって)カップリングすることができる。コレステロールおよび類似の分子を本アプタマーに連結させて、バイオアベイラビリティを増大および延長することができる。
【0141】
本発明の一定の実施態様において、複合体は、このリポソームの表面と会合している標的となる核酸リガンド(複数を含む)および封入された治療または診断薬を有するリポソームを含む。既製リポソームを核酸リガンドと会合するように修飾することができる。例えば、カチオン性リポソームは、静電相互作用により核酸と会合する。または、親油性化合物、例えばコレステロールに取り付けられた核酸を既製リポソームに付加させることができ、この結果、コレステロールはリポソーム膜と会合するようになる。または、リポソームの調合中に核酸をリポソームと会合させることができる。好ましくは、核酸は、既製リポソームへの負荷によりこのリポソームと会合させる。
【0142】
後続の非限定的な実施例において、本発明の一定の側面をより詳細に説明することができる。
(実施例)
【0143】
アプタマーの凝固についての試験
以下の試験を用いて、凝固因子を阻害する改良アプタマーおよび解毒剤の能力を評価する。
【0144】
活性凝固時間試験(ACT)は、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)試験に似ているが、新鮮な全血サンプルを使用して行うスクリーニングテストである。ACTは、臨床手順、例えば、高用量のヘパリンの投与を伴うもの(例えば、CPBおよびPTCA)、に関して患者の凝固状態をモニターすることであり得る。
【0145】
活性化部分トロンボプラスチン時間試験(APTT)は、一般中央検査室試験であり、典型的には、自動凝固計、例えば Diagnostica StagoのSTA凝固計(MDA/96/23)またはこの会社により製造された、でなければ当該技術分野において公知の別の凝固計、を使用して行われる。この試験は、血漿サンプルを使用して行われ、この場合、リン脂質、活性化因子(エラグ酸、カオリンまたは微粉化シリカ)およびCa2+の添加により外因系経路を活性化する。
【0146】
止血機能不全、フォン・ウィルブランド病および血管疾患の診断には、出血時間試験を用いることができる。手術前に血小板異常についてスクリーニングするためにこれを用いることもできる。この試験は、前腕を小切開し、創傷部位から血液に触れないことにより行われる。出血が止まるのにかかる時間を記録し、対照被験者のこの時間は約3.5分である。出血時間の延長は、質的または量的な血小板の欠陥の指標となる。
【0147】
1935年にQuickによって最初に説明されたプロトロンビン時間試験(PT)は、血液または血漿の組織因子誘発性凝固を測定するものである。これは、外因系凝固経路の完全性を評価するためにスクリーニングテストとして用いられ、ならびに凝固第I、II、V、VIIおよびX因子を感知し得る。この試験は、トロンボプラスチンおよびCa2+を患者サンプルに添加し、血餅形成時間を測定することによって行うことができる。凝固時間延長は、外因系経路の1つまたはそれ以上の凝固因子に対する阻害剤の存在または前記因子の欠損の存在を示唆している。ワファリン療法を受けている患者またはビタミンK欠乏症もしくは肝機能不全に罹患している患者も、PT凝固時間が延長され得る。PT試験は、外因系凝固経路の評価をもたらすことができ、ならびに経口抗凝固療法をモニターするために幅広く用いられている。
【0148】
トロンビン凝固時間試験(TCT)は、正常な血漿対照のものとの比較で患者の血餅形成速度を測定するものである。この試験は、血小板が欠乏している患者の血漿に標準的な量のトロンビンを添加し、血餅形成に要する時間を測定することによって行うことができる。この試験は、播種性血管内凝固(DIC)および肝疾患の診断の補助として用いられている。
【0149】
患者の凝固性状態の診断の際に用いることができる多数の試験も存在する。これらは、2つのカテゴリーに分類される: 複合試験(このうちの幾つかは、上で概説したスクリーニングテストに基づく)およびイムノアッセイ。複合試験は、検査室試験、例えばAPTT、PTおよびTCT試験に基づく特異的因子アッセイを含む。1つのアッセイは、活性化因子IXaまたは第IXa因子−抗トロンビンIII複合体のレベルを測定するものである。これらの測定値を用いて、第IXa因子または第VII因子−組織媒介複合体を決定する。活性化プロテインC耐性、抗トロンビン、プロテインC欠乏、およびプロテインS欠乏についてのアッセイもこのグループの一部である。プロテインCおよびSの異種欠乏および活性化プロテインCへの耐性を有する無症候性個体は、対象と比較して、プロトロンビンフラグメント F1.2のレベルが有意に上昇している。
【実施例1】
【0150】
セクターにおける2’−ヒドロキシル糖の2’−O−メチルでの置換
プリン残基が存在する4つの二次構造単位:ステム1(Apt 1);ループ1(Apt2);ステム3(Apt 3);ループ2(Apt 4)(図1A参照)における2’−ヒドロキシルプリンを2’−O−メチルプリンで置換した。
【0151】
手順: Apt A誘導体 Apt 1から5の抗凝固活性を1uMから低ナノモルの範囲の化合物濃度での標準APTT凝固アッセイにおいて評価した(図2)。Apt 1から5の「中和能力」を5uMから下の範囲のApt A解毒剤濃度(AptA AD;配列一覧表参照)での標準APTT解毒剤アッセイにおいて評価した(図2)。これらのアッセイについてのApt Aおよび誘導体の濃度は、125nMに固定した。
【0152】
Apt 4は、抗凝固活性の増加を示し(図2)、Apt 1から3は、活性の中等度の喪失を示し、およびApt 5は、活性の重度の喪失を示した。Apt 1から3は、中和の向上を示した。これは、解毒剤結合部位への2’−O−メチルの導入が、アプタマーに結合する解毒剤オリゴヌクレオチドの能力を改善することを示唆している。
【0153】
配列一覧表:
【0154】
【表4】


【実施例2】
【0155】
ステム1の修飾
4、5および6塩基対ステムから成るステム1変異体の2つの「ファミリー」を設計した(Apt 6から8および9から11;図1B)。すべての構築物は、Apt−2バックグラウンドで設計した。解毒剤が最小二次構造を含むようにステム1配列に対する相補解毒剤オリゴヌクレオチドを設計する能力、および適正な二次構造を呈するアプタマーの能力について、ステム1配列を評価した。
【0156】
ステムは、完全に2’−O−メチル修飾した。Apt A ADと同じレジスターでそれぞれの標的アプタマーに結合する、Apt6から11に対して特異的な解毒剤オリゴヌクレオチドを設計した(下の配列一覧表参照)。
実験: Apt 6から11の抗凝固活性を1uMから低ナノモルの範囲の化合物濃度での標準APTT凝固アッセイにおいて評価した。Apt 6から11の解毒剤対照を5uMから下の範囲の解毒剤濃度での標準APTT解毒剤アッセイにおいて評価した。(基準Apt AおよびApt 2実験についての125nMとは対照的に)これらのアッセイについてのApt 2およびApt 6から11の濃度は、250nMに固定した。
【0157】
Apt 6から8は、抗凝固活性の喪失を示す(図3)が、すべてが類似した活性レベルを示す。従って、ステム長は、活性喪失の主因ではない。5塩基対ステム1構築物(Apt 10およびApt 7)は、Apt 2より中和能力が大きいようである(図3および4)。データは、解毒剤中和能力の向上には5塩基対のステム1のほうが4、6または7塩基対から成るものより好適であり得ることを示唆している。
【0158】
配列一覧表:
【0159】
【表5】

【実施例3】
【0160】
ステム1の糖化学
Apt 12から17の抗凝固活性を1uMから低ナノモルの範囲の化合物濃度での標準APTT凝固アッセイにおいて評価した。Apt 12から17の「中和能力」を5uMから下の範囲の解毒剤濃度での標準APTT解毒剤アッセイにおいて評価した。これらのアッセイでは、Apt 12、14、15および16についてのアプタマー濃度を125nMに固定し、Apt 13および17についてのアプタマー濃度を250nMに固定した。
【0161】
Apt 12とApt 13およびApt 17の抗凝固活性の比較(図5)は、Apt 6から11について観察された活性の喪失が、1つまたはそれ以上の重要な残基における2’−O−メチル置換の存在に起因することを実証する。Apt 14とApt 12の抗凝固活性の比較は、抗凝固活性に有意な影響を及ぼすことなくステム1の中の4つの連続するグアノシンの伸長を変化させることができることを示す。Apt 15および16とApt 2、12および17の比較は、a)ステム1の頂部の終わりのA−U対を除くステム1の中の各位置における2’−O−糖の存在が活性を向上させることを実証し;b)この塩基対におけるUの糖が、このアプタマーが効力を保持するために2’−フルオロであるに違いないことを実証し、ならびにc)この塩基対におけるAの糖が、抗凝固活性に有意な影響を及ぼさない2’−O−メチル糖であり得ることを示唆している。
【0162】
Apt 14から16とApt 14/ADの中和の比較は、この二重鎖の両方の鎖が2’−O−メチル残基を多く含む場合とは対照的に、ステム1が2’−O−メチル−2’フルオロステムである場合には解毒剤がより容易にアプタマーに結合できることを示唆している。ステム1の頂部のAの糖が2’−O−メチル置換されているApt 21を設計した(図1)。このアデノシン残基での2’−O−メチル糖の置換は、2’−O−メチルが多いステムのバックグラウンドでは十分に許容される(図6)。Apt 21の解毒剤中和は、Apt 16と比較して向上される(特に、図4における2.5:1および5:1 AD:薬物のデータ点を参照のこと)。
【0163】
配列一覧表:
【0164】
【表6】


【実施例4】
【0165】
ステム1の長さの短縮
Apt 18から20の抗凝固活性を1uMから低ナノモルの範囲の化合物濃度での標準APTT凝固アッセイにおいて評価した。Apt 18から20の「中和能力」を5uMから下の範囲の解毒剤濃度(18から20に、それぞれ、解毒剤6、7および8)での標準APTT解毒剤アッセイにおいて評価した。これらのアッセイでは、アプタマー濃度を125nMに固定した。
【0166】
各アプタマー(Apt 18から20)は、Apt 2と同様に強力またはそれ以上強力な抗凝固薬である(図7)。さらに、3つすべてが、これらそれぞれの解毒剤オリゴヌクレオチドによって容易に中和される。Apt 19は、PEG化バージョンの抗凝固活性について評価した。PEG Apt 19および比較のためにPEG−Apt 16を使用する(PEGは、40KDa ポリエチレングリコール mPEG2−NHSエステル(分子量40kDa;Nektar/Shearwater 2Z3XOT01)であり、固相合成中にアプタマーに付加させるC6アミノ酸連結基へのコンジュゲーションによりこの5’末端に付属させた)。図8は、40KDa PEG付加が、Apt AおよびApt A誘導体の活性にどのように影響を及ぼすかにステム1の長さは影響しないことを示している。PEG Apt 19および16の抗凝固活性は、親Apt A配列のPEG化バージョン(PEG Apt A)およびコレステロール修飾バージョン(CH−Apt A)、両方の抗凝固活性と本質的に同一である。加えて、Apt 19同様、PEG Apt 19は、この対応解毒剤(7 AD)によって、Apt A、Apt 16またはこれらの化合物の任意のPEGもしくはコレステロール修飾バージョンより容易に中和される。図8は、2.5:1 AD:アプタマーでのPEG Apt 19の約90% 反転を示している。反転%ベースでではなくAPTTにおける絶対変化として見てみると、PEG Apt 19 + 2.5:1 7AD:アプタマーで処理した血漿のAPTTは、ベースラインより4から5秒しか上でない。
【0167】
配列一覧表:
【0168】
【表7】

【実施例5】
【0169】
ステム2およびループ2の置換
二系列の変異体によりステム2およびループ2における残基に最適な糖組成を評価する。Apt 16バックグラウンドでの第一系列。Apt 16バックグラウンドでのものだが、Apt Aにおいて見出されるヘキサヌクレオチドがFIXaアプタマー9.20(Rusconiら Nature 419,p.90−94,2002および図1参照)において見出されるテトラループで置換されている第二の系列。Apt 4に関する研究は、ループ2内の2’−O−メチルプリン置換がApt Aの効力の強化を導くのに対し、ステム2内の2’−O−メチルプリン置換は効力の中等度の喪失を導くこと、および2’−O−メチルプリンステム1に関連してステム2およびループ2内の同時2’−O−メチルプリン置換がApt A効力(Apt 5)の有意な喪失を導くことを示した。従って、ステム2(Apt 22、26)およびループ2(Apt 32、27)において独立して2’−O−メチルプリン置換した(図9)。ステム2の塩基におけるGを、この位置に2’ヒドロキシルが必要な場合には2’ヒドロキシルとして残す(Apt 25、29)が、ステム2およびループ2(Apt 24、Apt 28)内のプリンの2’−O−メチル置換が完了していることを再び評価した。
【0170】
Apt 22から29の抗凝固活性を1uMから低ナノモルの範囲の化合物濃度での標準APTT凝固アッセイにおいて評価した。Apt 22から29の「中和能力」を5uMから下の範囲の解毒剤濃度での標準APTT解毒剤アッセイにおいて評価した。これらのアッセイでは、Apt 24を除くアプタマー濃度を125nMに固定し、Apt 24の濃度は、250nMに固定した。
【0171】
Apt 3で以前に観察されたように、ループ2内の2’−O−メチルプリンの置換は、効力強化を導く(Apt 23、Apt 23と16を比較)(図9)。同様に、ステム2への2’−O−メチルプリンの置換は、活性の中等度の喪失を導く(Apt 22、24)(図14)。Apt 24は、Apt 5より有意に効力がある。ステム2の塩基におけるG残基上の2’−ヒドロキシルの維持(Apt 25)は、Apt 24と比較すると、活性向上を導かない。これは、a)この残基での2’−O−メチル糖の置換が、Apt 22および24内では問題ではないこと、ならびにb)この残基上の糖が、2’−O−メチルであってもよいことを示している。Apt A中に存在するヘキサヌクレオチドループの9.20テトラループでの置換は、活性の喪失を導いた(Apt 26から29)。Apt 23の解毒剤中和は、Apt 16と比較すると低いが、これでもやはりApt Aと同等である。
【0172】
配列一覧表:
【0173】
【表8】

【実施例6】
【0174】
ステム2の糖化学
Apt 30から33の抗凝固活性を1uMから低ナノモルの範囲の化合物濃度での標準APTT凝固アッセイにおいて評価した。Apt 30および33の「中和能力」を5uMから下の範囲の解毒剤濃度(Apt 14 AD)での標準APTT解毒剤アッセイにおいて評価した。これらのアッセイでのアプタマー濃度は、125nMに固定した(図10参照)。
【0175】
Apt 30および33とApt 31およびApt 32の活性の比較は、C16には2’フルオロ糖を含む必要があり、G25には2’ヒドロキシル糖を含む必要があることを実証する(図10a)。Apt 31と32の間で観察された活性は、ステム2内の残りの位置が2’−O−メチル糖を含み得ることを示唆している。実際、Apt 31はApt 32よりわずかに大きい効力を有すようであり、これは、C16に2’フルオロ、G25に2’ヒドロキシルを有し、残りの残基が2’−O−メチルである化合物はApt 33より大きな効力を示し得ることを示している。これにもかかわらず、Apt 33は、Apt 2より大きな活性を示し、原型Apt Aと全く同等である。Apt 33は、Apt 30より容易に中和されうる。これは、アプタマーの解毒剤結合部位内の追加の2’−O−メチル残基が解毒剤結合を改善することを示唆している。
【0176】
Apt 34は、2’−O−メチルではなく2’フルオロを有した(図10b)。抗凝固活性の増大(Apt 34とApt33を比較)。しかし、34が90%中和を達成するために親Apt A化合物より低い解毒剤過多(〜5:1対10:1)をなお必要とするとはいえ、置換の結果、「中和能力」のわずかな喪失も生じなかった。両方の結果が、2’−O−メチル置換に起因するステム2の安定性増大と一致する。
【0177】
配列一覧表:
【0178】
【表9】

【実施例7】
【0179】
個々の塩基の修飾
原型Apt Aと比較したApt 35から39(Apt Aのステム1に基づく番号付け):
1)Apt 30から31: 違いは、C16、G17、U24、G25、C26である。
【0180】
2)Apt 30から32: 違いは、C16、G17、G25である。
【0181】
3)Apt 31から32: 違いは、U24、C26である。
【0182】
Apt 35から39の抗凝固活性を1uMから低ナノモルの範囲の化合物濃度での標準APTT凝固アッセイにおいて評価した。Apt 35、38および39の「中和能力」を5uMから下の範囲の解毒剤濃度(Apt7AD)での標準APTT解毒剤アッセイにおいて評価した。これらのアッセイではアプタマー濃度を125nMに固定した(図11参照)。
【0183】
Apt 35から39: Apt 39の抗凝固活性は、Apt 19およびApt 19バックグラウンドのすべての他のステム2最適化構築物より勝っている(図11)。結果は、Apt 34で得られたものと一致した。加えて、Apt 39の効力は、親Apt Aに匹敵し、Apt 2より大きい。Apt7ADによるApt 39の中和は卓越しており、Apt 19の中和に類似している(図12)。さらに、Apt 39の糖最適化およびトランケーションは、親Apt AおよびApt 2と比較して、より低い過剰度の解毒剤:薬物で化合物を中和させた(図11)。
【0184】
配列一覧表:
【0185】
【表10】

【実施例8】
【0186】
送達ビヒクルへのアプタマーのコンジュゲーション
試験した抗凝固薬は、炭素数6のNH結合基によりアプタマー配列の5’末端にコンジュゲートした40KDaのポリエチレングリコールを有するApt 39(PEG−Apt 39)である。解毒剤は、Apt7ADである。
【0187】
PEG−Apt 39の抗凝固活性を1uMから低ナノモルの範囲の化合物濃度での標準APTT凝固アッセイにおいて評価した。Apt 39の抗凝固活性を親Apt Aの2つの調合物、CH−Apt S(5’がコレステロールで修飾されているもの)およびPEG−Apt A(5’が40KDaのPEGで修飾されているもの)と比較した。これらの試験については、「アプタマー」部分のみの分子量を用いて各化合物の濃度を計算した。PEG−Apt 39の「中和能力」を5uMから下の範囲の解毒剤濃度(Apt7AD)での標準APTT解毒剤アッセイにおいて評価した。これらのアッセイではアプタマー濃度を125nMに固定した。
【0188】
PEG−Apt 39のインビトロ抗凝固活性は、CH−Apt AおよびPEG−Apt Aと本質的に同等である(図13)。
【0189】
インビボ試験
この試験は、ブタにおいてPEG−Apt 39のインビボ抗凝固活性および解毒剤中和活性を、a)抗凝固活性の効力および永続性およびb)抗凝固活性の中和に関してCH−Apt Aで得られた以前のデータと比較するものである。3つの実験グループ(各々につき動物 n=2)は、a)全身性凝固;b)全身性凝固および薬物中和;ならびにc)全身性凝固、薬物中和および再凝固である。
【0190】
実験: 6匹の新生子子豚(週齢1週、2.5から3.5kg)を3つのグループにランダムに割り付けた。大腿動脈および静脈ラインを子豚に配置した。この動脈ラインを使用して、血圧および動脈血サンプリングをモニターした。この静脈ラインを使用して薬物および指定の試験化合物を投与した。子豚の体温を耳咽頭温度プローブでモニターした。
【0191】
PEG−Apt 39の用量は、各動物につき0.5mg/kg(核酸成分のみの分子量;10,103.2 Da、に基づくアプタマーの用量)であった。CH−Apt Aでの試験前のアプタマー用量は、0.5mg/kg(核酸成分のみの分子量に基づくアプタマーの用量)であった。Apt7 ADを解毒剤として使用する実験での解毒剤の用量は、3mg/kgであった。比較として、CH−AptA ADを使用するCH−AptAでの実験における解毒剤用量は、5mg/kgであった。
【0192】
a)全身性抗凝固。注射前血液サンプルをPEG−Apt 39の注射前に採取し、次いで、薬物を注射し(注射時間は、t=0)、血液サンプルを注射後5、15、25、60、90、120および150分の時点で取った。活性化凝固時間(ACT)は、Hemochron 801 juniorおよびガラス活性化フリップトップチューブをこれらの製造業者の説示に従って使用して二重重複で全血で血液を取った直後、その場で行った。次に、血液サンプルをクエン酸塩添加ヴァキュテーナー管に移し、氷上で保管した。低血小板血漿を調製し、APTTおよびPTアッセイを標準的なプロトコルに従って行った(図14A)。
【0193】
PEG−Apt 39のインビボ抗凝固能力は、CH−Apt Aより優れている。加えて、CH−Apt Aに対してPEG−Apt 39は、経時的な抗凝固活性の喪失が減少される。これらの結果は、インビトロ抗凝固活性試験とは対照的に、PEG−Apt39およびCH−APT Aの抗凝固活性が、プールされたヒト血漿ではインビトロで同等であることを実証している。
【0194】
b)全身性抗凝固および薬物中和。注射前サンプルをPEG−Apt 39の注射前に採取し、次いで、薬物を注射し(0.5mg/kg;注射時間は、t=0である)、薬物注射後5分および15分の時点で血液サンプルを取った。薬物注射後t=15分の時点で、REG1 S7 AD(3mg/kg)を投与し、薬物注射後25、60、90、120および150分の時点で追加の血液サンプルを取った。活性化凝固時間(ACT)は、Hemochron 801 juniorおよびガラス活性化フリップトップチューブをこれらの製造業者の説示に従って使用して二重重複で全血で血液を取った直後、その場で行った。次に、血液サンプルをクエン酸塩添加ヴァキュテーナー管に移し、氷上で保管した。低血小板血漿を調製し、APTTおよびPTアッセイを標準的なプロトコルに従って行った。
【0195】
PEG−Apt 39の抗凝固活性の本質的に完全な中和が、3mg/kgのApt7 ADの投与から10分以内に達成された。抗凝固活性は、残りの実験を通して(薬物中和の最初の実証後2時間と5分)中和を維持した。従って、PEG−Apt 39の中和は、PEG−Apt 39の同様の中和レベルが40%低い解毒剤用量で達成されたので、Ch−Apt Aのものより優れているようである(3mg/kgのApt7 AD 対 5mg/kg REG1 AD)。このインビボデータは、PEG−Apt 39がこの対応する解毒剤によってApt Aの任意の先行調合物より容易に中和される、プールされたヒト血漿におけるインビトロ実験と一致する(図14B)。
【0196】
c)全身性抗凝固、薬物中和および再凝固。注射前サンプルをPEG−Apt 39の注射前に採取し、次いで、薬物を注射し(0.5mg/kg;注射時間は、t=0である)、薬物注射後5分および15分の時点で血液サンプルを取った。薬物注射後t=15分の時点で、Apt7 AD(3mg/kg)を投与し、薬物注射後25および40分の時点で追加の血液サンプルを取った。薬物注射後t=45分(解毒剤投与後30分)の時点で、PEG−Apt 39(0.5mg/kg)を再び投与し、薬物注射後50、60、90、120および150分の時点で追加の血液サンプルを取った。活性化凝固時間(ACT)は、Hemochron 801 juniorおよびガラス活性化フリップトップチューブをこれらの製造業者の説示に従って使用して二重重複で全血で血液を取った直後、その場で行った。次に、血液サンプルをクエン酸塩添加ヴァキュテーナー管に移し、氷上で保管した。低血小板血漿を調製し、APTTおよびPTアッセイを標準的なプロトコルに従って行った(図15)。
【0197】
最初の薬用量の中和後のPEG−Apt 39の再投与は、中和用解毒剤の投与の30分以内に実行できる。第一および第二用量の投与後に達成される抗凝固レベルは、互いに同等であるように見え、これは、第二薬用量を投与する時点で循環に「遊離した」解毒剤がほとんど存在しないことを示唆している。
【実施例9】
【0198】
血漿中でのアプタマー複合体形成の定量
血漿中のアプタマーレベルは、サンドイッチ型ハイブリダイゼーションアッセイと検出のための酵素結合イムノアッセイ(ELISA)を用いて判定する。アプタマーの定量には、2つのオリゴヌクレオチドプローブ、DNA捕捉プローブおよび2’−OメチルRNA検出プローブを利用する。DNA捕捉プローブは、長さ15ヌクレオチドであり、アプタマーの3’末端15ヌクレオチドと相補的であり、およびこの5’末端にビオチン部分を含有し、これによって、このプローブを含有するオリゴヌクレオチド複合体のアビジン被覆表面への捕捉が可能となる。2’OメチルRNA検出プローブも長さ15ヌクレオチドであり、解毒剤が結合するアプタマーの部分に相補的であり、および標準的な酵素結合蛍光発生酵素/基質試薬を使用してこのプローブを含有する複合体を検出することができるジゴキシゲニン部分を含有する。
【0199】
アプタマーの定量は、血漿中のアプタマーへの前記捕捉および検出プローブのハイブリダイゼーション、および5’−ビオチン基経由でのニュートラアビジン被覆マイクロタイタプレートの表面への続く前記複合体の固定化によって達成する。このプレート固定化反応後、基質の蛍光発光を触媒するアルカリホスファターゼにコンジュゲートした抗ジゴキシゲニン抗体を使用して、ジゴキシゲニン標識2’−O−メチルRNAプローブの測定を行う。次に、蛍光強度を測定し、このシグナルは、校正標準物質および確認サンプル中に存在するアプタマーの量に正比例する。
【0200】
カニクイザルからの血漿中のアプタマーApt 39(配列番号88)のインビトロ抗凝固活性は、APTTアッセイにおける凝固までの時間の濃度依存性延長によって表される。サルの血漿におけるApt 39 APTT用量−応答曲線の解釈を助長するために、血漿FIXアッセイを行った。表Aに示すように、サルの血漿におけるAPTTは、FIXレベルに敏感である。しかし、FIXレベルの減少への応答の大きさは中等度である。FIXレベルの75%減少は、結果的にAPTTを1.4倍増加させ、FIXレベルの>95%減少は、結果的にAPTTを倍化させ、ならびに血漿FIXレベルの99.9%減少は、APTTを2.5倍増加させる。
【0201】
【表11】

【0202】
表Aのデータは、サルにおいて血漿FIX活性の約90%を阻害するためには〜6μg/mLのApt 39が必要である(すなわち、この濃度は、APTTを1.6倍増加させる)こと、および血漿FIX活性の>95%阻害が、10から12μg/mLのApt 39濃度で起こることを示している。
【0203】
カニクイザルにおけるApt 39およびApt 7 ADのインビボ活性
Apt 39の抗凝固特性とApt 39/Apt 7 AD複合体の抗凝固特性の間の関係およびこれらの化合物の血漿中レベルをサルにおいて評価した。簡単に言うと、12匹のサルを3つの治療グループに割り付けた。グループ1には抗FIXaアプタマーApt 39を与え、グループ2には解毒剤Apt 7 ADを与え、グループ3は、Apt 39で、および3時間後にApt 7 ADで治療した。用量は、試験品の2つの量を通して段階的に増加させ、第一の用量は、試験の4日目に行い、第二の用量は、13日目に行った。アプタマーへの用量−応答をよりよく理解するために、グループ1に割り付けた4匹のサルを13日目に2つのグループにさらに分け、2匹の動物に低い用量を与え(グループ1a、5mg/kg)、2匹の動物に高い用量を与えた(グループ1b、30mg/kg)。
【0204】
図16に示すように、5から30mg/kgの範囲の用量でのApt 39の投与は、絶大な抗凝固レベルをサルにおいて生じさせた。各用量レベルでの平均APTTは、アプタマー投与の0.25から24時間後、60秒を超えた。これは、このサルにおける<0.1%の正常血漿中FIXレベルに相当する。Apt 39投与に応答してAPTTが用量依存的に増加する。しかし、この用量−応答は、直ぐにはわからない。アプタマーの血漿中レベルが、インビトロAPTT用量−応答曲線がプラトーに近づく濃度(〜40から50μg/mL;表B参照)を、Apt 39投与後6時間以下で超えたためである。投与後6時間を越えた時点で、アプタマー濃度がこのレベルより下に低下するので、用量−応答がより明白になる。APTTは、5および15mg/kg用量を与えたサルにおいてこれがベースラインに戻るまで続けた。平均APTTは、5mg/kg用量レベルでは120時間までにベースラインに戻り、15mg/kg用量レベルでは192時間までにベースラインに戻った。これは、インビトロAPTT用量−応答曲線(データは示さない)とサルにおける約12時間の実測半減期(表B参照)の両方と一致する。全血活性化凝固時間(ACT)データは、APTTデータを反映していた(データは示さない)。
【0205】
グループ1aの動物における投与の24時間後の平均Apt 39濃度とこれらの動物の平均APTTとは非常によく対応している。24時間の時点で5mg/kgで治療した動物の平均アプタマー濃度は、15.9mg/kgであり、平均APTTは、61.1秒であった。
【0206】
【表12】

【0207】
解毒剤のみで治療したグループ2の動物において、平均APTTおよびACTは、試験したいずれの用量レベル(30および60mg/kg)でも解毒剤投与による影響を受けなかった。投与後の最初の24時間の間の幾つかの時点で、毒性動態データを収集した。表Cに示すように、4日目の30mg/kgまたは13日目の60mg/kgの注射後0.25時間の時点で解毒剤を与えた動物からの血漿中には、低いが測定可能なレベルの解毒剤が存在した。投薬後の解毒剤レベルは、IV注射後の(グループ1における)アプタマーの濃度と比較して非常に低かった。
【0208】
【表13】

【0209】
アプタマーで治療し、続いて3時間後に解毒剤で治療した動物(グループ3)からのAPTTデータを図17に示す。アプタマーのみで治療した動物からのデータと一致して、これらの用量レベルでのアプタマーの投与は、絶大な抗凝固レベルを生じさせ、投与後0.25および3時間の時点での平均APTTは、両方の用量レベルで本質的に完全なFIX阻害と一致していた。Apt 7 ADの続く投与は、サルにおけるAPT 39の抗凝固作用を急速、および、完全に中和し、平均APTTは、Apt 7 AD投与後15分以内にベースラインに戻った。30/60mg/kgのApt 39/Apt 7 ADで治療したグループ3の動物において、APTTをアプタマー投与後5日間続けた。この時間枠で収集したAPTTデータは、アプタマーの抗凝固作用が永続的に中和され、120時間またはサルにおける約10半減期にわたって抗凝固作用が元に戻った形跡がないことを示している。
【0210】
グループ3の動物においてApt 39投与後24時間にわたって毒物動態データを採取した(表D)。グループ3の動物について、遊離アプタマーと複合体化アプタマーの血漿中濃度を測定した。解毒剤投与から15分以内に遊離アプタマーの平均濃度が5,000から10,000倍低下して、利用したアッセイの定量下限値(Lower Limit of Quantitation(LLOQ))より下のレベルになった。遊離アプタマーレベルの低下と同時に、複合体化アプタマーの平均血漿中濃度が、15/30および30/60mg/kgの用量レベルで、それぞれ、アッセイのLLOQより下から、〜125から220μg/mLへと増加した。これは、遊離Apt 39濃度の急速な低下が、Apt 7 ADの結合に起因することを示唆している。遊離アプタマーの濃度は、解毒剤投与後3時間もの長きにわたりアッセイのLLOQより下のままであった。これは、APTTでの結果と一致する。解毒剤投与後21時間の時点で、非常に低いレベルのApt 39が、数匹の動物において検出された(わずかに0.17μg/またはそれ以下の平均値)。
【0211】
【表14】

【0212】
様々な特定のおよび好ましい実施態様および技法を参照しながら本発明を説明した。本発明の精神および範囲内に留まりつつ、多くの変形および変更を施すことができることは、理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0213】
【図1−1】以下で説明するApt A、1から39の提案二次元配置の略図である。図1aは、アプタマー Apt Aおよび1から5の略図である。1bは、アプタマー6から11の略図である。1cは、アプタマー Apt 12から17の略図である。1dは、アプタマー Apt 18から20の、1eは、Apt 21の略図である。1fは、アプタマー Apt 22から29の、1gは、Apt 30から34の、および1hは、Apt 35から39の略図である。
【図1−2】以下で説明するApt A、1から39の提案二次元配置の略図である。図1aは、アプタマー Apt Aおよび1から5の略図である。1bは、アプタマー6から11の略図である。1cは、アプタマー Apt 12から17の略図である。1dは、アプタマー Apt 18から20の、1eは、Apt 21の略図である。1fは、アプタマー Apt 22から29の、1gは、Apt 30から34の、および1hは、Apt 35から39の略図である。
【図1−3】以下で説明するApt A、1から39の提案二次元配置の略図である。図1aは、アプタマー Apt Aおよび1から5の略図である。1bは、アプタマー6から11の略図である。1cは、アプタマー Apt 12から17の略図である。1dは、アプタマー Apt 18から20の、1eは、Apt 21の略図である。1fは、アプタマー Apt 22から29の、1gは、Apt 30から34の、および1hは、Apt 35から39の略図である。
【図2】アプタマー Apt AおよびApt 1から5の活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)試験アッセイの結果(左のパネル)ならびに解毒剤Apt A−ADによる中和能力の結果のグラフである。
【図3】アプタマー Apt 2および6から8の活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)試験アッセイの結果(右のパネル)ならびに解毒剤による中和能力の結果(左のパネル)のグラフである。
【図4】アプタマー Apt 2および9から11の活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)試験アッセイの結果(左のパネル)ならびに解毒剤による中和能力の結果(右のパネル)のグラフである。
【図5】アプタマー Apt A、2および12から17の活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)試験アッセイの結果(左のパネル)ならびに解毒剤による中和能力の結果(右のパネル)のグラフである。
【図6】アプタマー Apt 2、15、16および21の活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)試験アッセイの結果(左のパネル)ならびに解毒剤による中和能力の結果(右のパネル)のグラフである。
【図7】アプタマー Apt 2および16から20の活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)試験アッセイの結果(左のパネル)ならびに解毒剤による中和能力の結果(右のパネル)のグラフである。
【図8】PEG化 Apt 16および19ならびにコレステロール修飾Apt A(Chol−A)と比較した活性化Apt Aの活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)試験アッセイの結果のグラフである。左のパネルは、凝固第IX因子のアプタマー制御であり、右のパネルは、解毒剤による中和能力である。
【図9】アプタマー Apt 2、16および22から27の活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)試験アッセイの結果(左のパネル)ならびに解毒剤による中和能力の結果(右のパネル)のグラフである。
【図10−A】アプタマー Apt 2および30から33の活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)試験アッセイの結果(A、左のパネル)、Apt 2、30および33の解毒剤による中和能力の結果(A、右のパネル)、アプタマー Apt 2、30、33および34のAPTT試験アッセイの結果(B、左のパネル)、ならびに解毒剤による中和能力の結果(B、右のパネル)のグラフである。
【図10−B】アプタマー Apt 2および30から33の活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)試験アッセイの結果(A、左のパネル)、Apt 2、30および33の解毒剤による中和能力の結果(A、右のパネル)、アプタマー Apt 2、30、33および34のAPTT試験アッセイの結果(B、左のパネル)、ならびに解毒剤による中和能力の結果(B、右のパネル)のグラフである。
【図11】アプタマー Apt A、2、19および35から39の活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)試験アッセイの結果(左のパネル)ならびにApt A、19、35、38および39の解毒剤による中和能力の結果(右のパネル)のグラフである。
【図12】アプタマー Apt 2、34、39およびPeg−19の解毒剤アッセイによる中和能力の結果のグラフである。
【図13】CH−Apt AおよびPEG−Apt Aと比較したPEG−Apt 39のインビトロ抗凝固活性のグラフである。
【図14−a】ブタにおけるPEG−Apt 39の全身性抗凝固活性(14a)および中和能力(14b)のグラフである。それぞれの凝固アッセイの値の変化は、この動物についてのこの時点での凝固時間と注射前ベースラインの間の差である。PEG−Apt 39で治療した動物は、n=2、およびCH−Apt Aで治療した動物は、n=3。全血ACT値を一番下のパネルに示し、血漿APTT値をこのパネルの上部に示す。
【図14−b】ブタにおけるPEG−Apt 39の全身性抗凝固活性(14a)および中和能力(14b)のグラフである。それぞれの凝固アッセイの値の変化は、この動物についてのこの時点での凝固時間と注射前ベースラインの間の差である。PEG−Apt 39で治療した動物は、n=2、およびCH−Apt Aで治療した動物は、n=3。全血ACT値を一番下のパネルに示し、血漿APTT値をこのパネルの上部に示す。
【図15】ブタにおけるPEG−Apt 39の全身性抗凝固活性(14a)および中和能力(14b)のグラフである。それぞれの凝固アッセイの値の変化は、この動物についてのこの時点での凝固時間と注射前ベースラインの間の差である。PEG−Apt 39で治療した動物は、n=2。この実験からのデータを、図3に提示するPEG−Atp 39についての抗凝固作用および中和能力と比較する。全血ACT値を左のパネルに示し、血漿APTT値をこのパネルの右に示す。
【図16】実施例9において説明したようなApt 39投与によるサルの全身性抗凝固作用のグラフである。サルにおける抗凝固作用のレベルをAPTTでモニターした。15mg/kgで治療した動物についてのApt 39データを平均±SEMとして提示する。5および30mg/kg用量レベルでの動物についてのデータは、これらの各用量レベルでの動物が2匹だけだったので、平均±範囲として提示する。
【図17】実施例9において説明したような、Apt 39でのサルの全身性抗凝固作用および解毒剤Apt7 ADでの反転のグラフである。サルにおける抗凝固作用のレベルをAPTTでモニターした。Apt7 ADを、Apt39投与後t=3時間で投与した。データは、平均±SEMとして提示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号10から配列番号59までのいずれかの配列から成る群より選択される核酸配列を含む、単離された核酸。
【請求項2】
前記配列が、配列番号19を含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
前記配列が、配列番号59を含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項4】
第一および第二ステムを含む三次元構造を含み、前記第一ステムが、5’から3’方向に5個のヌクレオチドを含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項5】
第一ステムが、3個のグアニジン残基を含む、請求項3に記載の核酸。
【請求項6】
第一ループが、5’から3’方向に10または9個のヌクレオチドを含む、請求項3に記載の核酸。
【請求項7】
前記ヌクレオチドが、解毒剤が結合すると1本鎖になる自殺位置をさらに含む、請求項3に記載の核酸。
【請求項8】
配列番号10から配列番号59までのいずれかから選択される配列を含む核酸に結合する、単離された核酸。
【請求項9】
配列番号2から配列番号8までのいずれかから選択される核酸配列を含む、単離された核酸。
【請求項10】
前記核酸が、1個またはそれ以上の2’−O−メチル修飾ヌクレオチドを含む、請求項1または9に記載の核酸。
【請求項11】
前記核酸が、1個またはそれ以上の2’−フルオロ修飾を含む、請求項1または9に記載の核酸。
【請求項12】
前記核酸が、2’−フルオロ修飾を含まない、請求項1または9に記載の核酸。
【請求項13】
ヒドロキシル糖(2’−OH)を含む第二ステムに少なくとも1個のグアニンを含む、請求項3に記載の核酸。
【請求項14】
2’−フルオロまたは2’−O−メチルで修飾された少なくとも1個のウリジンを含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項15】
2’−フルオロ修飾されている少なくとも1個のシチジンを含む、請求項4に記載の核酸。
【請求項16】
前記核酸が、水溶性ポリマーで修飾される、請求項1または9に記載の核酸。
【請求項17】
前記ポリマーが、ポリエチレングリコールである、請求項16に記載の核酸。
【請求項18】
配列番号10から配列番号59までのいずれかから成る群より選択される核酸配列を含む核酸リガンドの有効量を医薬適合性の担体と併せて含む医薬組成物。
【請求項19】
配列番号2から配列番号8までのいずれかから成る群より選択される核酸配列を有する核酸の有効量を医薬適合性の担体と併せて含む医薬組成物。
【請求項20】
全身投与に適する、請求項18または19に記載の組成物。
【請求項21】
静脈内投与に適する、請求項18または19に記載の組成物。
【請求項22】
経口投与に適する、請求項18または19に記載の組成物。
【請求項23】
非経口投与に適する、請求項18または19に記載の組成物。
【請求項24】
この必要がある宿主において凝固を抑制するための医薬品の製造における、配列番号10から配列番号59までのいずれかから成る群より選択される核酸配列を含む第一核酸リガンドの有効量の使用。
【請求項25】
この必要がある宿主において凝固を調節するための医薬品の製造における、配列番号10から配列番号590までのいずれかから成る群より選択される核酸配列を含む第一核酸リガンドの有効量および配列番号1から配列番号8までのいずれかから成る群より選択される核酸配列を含む第二核酸リガンドの有効量の使用。
【請求項26】
前記第一核酸配列が、配列番号19を含む、請求項24または25に記載の使用。
【請求項27】
前記第一核酸配列が、配列番号59を含む、請求項24または25に記載の使用。
【請求項28】
前記第二核酸配列が、配列番号3を含む、請求項25に記載の使用。
【請求項29】
前記宿主が、治療的行動を受ける、請求項24または25に記載の使用。
【請求項30】
前記宿主が、外科的介入を受ける、請求項24または25に記載の使用。
【請求項31】
前記宿主が、心血管疾患または介入に苦しんでいるまたは苦しむ危険がある、請求項24または25に記載の使用。
【請求項32】
前記宿主が、急性心筋梗塞(心臓発作)、脳血管障害(脳卒中)、虚血、血管形成術、CABG(冠動脈バイパス移植術)、心肺バイパス、心臓バイパス装置の循環におけるおよび腎臓透析を受けている患者における血栓症、不安定性狭心症、肺動脈塞栓症、深在静脈血栓症、動脈血栓症、ならびに播種性血管内凝固から成る群より選択される異常に苦しんでいるまたは苦しむ危険がある、請求項24または25に記載の使用。
【請求項33】
凝固誘発性炎症を予防するための医薬品の製造における、配列番号10から配列番号59までのいずれかから成る群より選択される核酸配列を含む核酸リガンドの有効量の使用。
【請求項34】
前記凝固誘発性炎症が、アテローム性動脈硬化症、急性冠動脈症候群(ACS)、心筋梗塞、再潅流障害および血管形成術後再狭窄から成る群より選択される疾患に関連している、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
宿主に対する配列番号1から配列番号8までのいずれかの核酸の有効量をさらに含む、請求項33に記載の使用。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−A】
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【図10−B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14−a】
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【図14−b】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2007−534324(P2007−534324A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509694(P2007−509694)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/013926
【国際公開番号】WO2005/106042
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(506353378)リガド・バイオサイエンシーズ・インコーポレーテツド (1)
【Fターム(参考)】