説明

改良された機械的性質を有するポリカーボネート成形用組成物

【課題】高度の破断時伸び、ESC(環境応力亀裂)特性および加熱撓み温度が備わった熱可塑性成形用組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、熱可塑性ポリカーボネート、およびポリカーボネート100質量部に対して0.01〜30質量部の、平均粒子直径が1nm〜20μm、好ましくは1nm〜10μmの亜鉛化合物を含んでなる熱可塑性成形用組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、亜鉛化合物を含み、改良された機械的性質および改良された自然(生)色調を有するポリカーボネート成形用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景技術)
熱可塑性成形用組成物、特に、1種またはそれ以上のエチレン性不飽和モノマーのホモ−および/またはコポリマー、ポリカーボネート並びにポリエステルを含む組成物は、多数の刊行物から知られている。ABSポリマーの使用については特にそうである。例として、以下の文献を参照することができる:DE−A−19616、WO97/40092、EP−A−728811、EP−A−315868(=US−A−4937285)、EP−A−0174493(=US−P−4983658)、US−P−5030675、JA−5920240、EP−A−0363608(=US−PS−204394)、EP−A−0767204、EP−A−0611798、WO96/27600、EP−A−0754。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国公開第19616号公報(DE−A−19616)
【特許文献2】国際公開第97/40092号パンフレット(WO97/40092)
【特許文献3】欧州公開第728811号公報(EP−A−728811)
【特許文献4】欧州公開第315868号公報(EP−A−315868)(=US−P−4937285)
【特許文献5】欧州公開第0174493号公報(EP−A−0174493)(=US−P−4983658)
【特許文献6】米国特許第5030675号明細書(US−P−5030675)
【特許文献7】特開昭59−20240号号公報(JA−5920240)
【特許文献8】欧州公開第0363608号公報(EP−A−0363608)(=US−PS−204394)
【特許文献9】欧州公開第0767204号公報(EP−A−0767204)
【特許文献10】欧州公開第0611798号公報(EP−A−0611798)
【特許文献11】国際公開第96/27600号パンフレット(WO96/27600)
【特許文献12】欧州公開第0754号公報(EP−A−0754)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
(発明の開示)
(発明が解決しようとする技術的課題)
これら従来技術に記載された熱可塑性成形用組成物については、その機械的性質を改良する必要性がなお残っている。このことは、これら成形用組成物を安全性に関連した要素、例えば、高度の破断時伸び、ESC(環境応力亀裂)特性および加熱撓み温度が要求される自動車産業における要素(部品)に用いる場合は、特に当てはまる。既知の成形用組成物の自然色調の改良も必要である。
【0005】
EP−A−761746は、ポリカーボネートおよび所望により他の熱可塑性樹脂を基礎とし、超微粉砕無機粉末および難燃剤を含む成形用組成物を開示している。とりわけ、酸化亜鉛が説明されている。平均粒子直径として、0.1〜100nmが記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(その解決方法)
驚くべきことに、特定の粒子寸法の酸化亜鉛を添加すると、ポリカーボネート成形用組成物は改良された自然色調および改良された機械的性質を有することが見出された。従って、本発明は、熱可塑性ポリカーボネート、およびポリカーボネート100質量部に対して0.01〜30質量部の、平均粒子直径が1nm〜20μm、好ましくは1nm〜10μmの亜鉛化合物を含んでなる熱可塑性成形用組成物を提供する。
【0007】
また、本発明は、
A.芳香族ポリカーボネート40〜99質量部、好ましくは50〜95質量部、特に好ましくは60〜90質量部、
B.スチレン、α−メチルスチレン、核置換スチレン、C−C−アルキルメタクリレートおよびC−C−アルキルアクリレートからなる群から選択された少なくとも1種のモノマーと、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、C−C−アルキルメタクリレート、C−C−アルキルアクリレート、無水マレイン酸およびN−置換マレイミドからなる群から選択された少なくとも1種のモノマーとのビニル(コ)ポリマー0〜50質量部、好ましくは1〜40質量部、
C.モノ−またはポリ不飽和オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、クロロプレン、ブタジエン、イソプレンなど)、酢酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、核置換スチレン、シアン化ビニル(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなど)、無水マレイン酸およびN−置換マレイミドからなる群から選択される少なくとも2種のモノマーを含むグラフトコポリマー0.5〜60質量部、好ましくは1〜40質量部、特に好ましくは2〜30質量部、
D.1nm〜20μm、好ましくは1nm〜10μmの平均粒子直径を有する亜鉛化合物(ただし、100nmまたはそれ以下の平均粒子直径を有する酸化亜鉛を除く)0.01〜30質量部、好ましくは0.01〜20質量部、特に好ましくは0.01〜10質量部、特に好ましくは0.1〜5質量部
を含んでなる熱可塑性成形用組成物を提供する。
【0008】
本発明の成形用組成物は、添加剤(成分E)として、通常の難燃剤、超微粉砕無機化合物またはフッ素化ポリオレフィンおよびこれらの混合物をさらに含むことができる。難燃剤および超微粉砕無機化合物は、通常、それぞれ0.1〜25質量部、好ましくは2〜15質量部の量で使用される。フッ素化ポリオレフィンは、通常、0.01〜5質量部、好ましくは0.05〜2質量部の量で使用される。
質量部でA+B+C+D+Eの合計は、100となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、亜鉛化合物を含み、改良された機械的性質および改良された自然(生)色調を有するポリカーボネート成形用組成物に関する。
【0010】
本発明の成形用組成物は、あらゆる種類の成形品の製造に使用できる。特に、成形品は、射出成形により製造することができる。製造される成形品の例は次の通りである:種々のハウジング部品、例えば、家庭用機器(例えば、ジュース搾り器、コーヒーメーカー、ミキサーなど)、事務機器(例えば、コンピュータ、プリンタ、モニタなど)のハウジング、または建築分野用カバーシート、および自動車分野用部品。加えて、本発明の成形用組成物は、非常に優れた電気的特性を有しているので、電気産業分野でも使用することができる。
【0011】
本発明の成形用組成物は、使用されるプラスチックに非常に高度のノッチ付き衝撃強度および耐応力亀裂性が要求される、薄肉成形品(例えば、データ技術ハウジング要素)の製造に、とりわけ好適である。
【0012】
他の加工形態は、予め製造されたシートまたはフィルムのブロー成形または熱成形による成形品の製造である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
成分A
本発明における成分Aとして好ましい熱可塑性芳香族ポリカーボネートは、式(I):
【化1】

(式中、Aは、単結合、C−C−アルキレン、C−C−アルキリデン、C−C−シクロアルキリデン、−S−または−SO−である。
Bは、塩素または臭素である。
qは、0、1または2である。
pは、1または0である。)
で示されるジフェノール、または式(II):
【化2】

(式中、RおよびRは、相互に独立して、それぞれ水素、ハロゲン(好ましくは塩素または臭素)、C−C−アルキル、C−C−シクロアルキル、C−C10−アリール(好ましくはフェニル)、またはC−C12−アラルキル(好ましくはフェニル−C−C−アルキル,特にベンジル)を表す。
mは、4、5、6または7の整数、好ましくは4または5である。
およびR10は、各Zに対してそれぞれ独立に、水素またはC−C−アルキルを表す。
Zは、炭素原子を表す。
ただし、少なくとも1つのZ上でRおよびR10は同時にアルキルを表す。)
で示されるアルキル置換ジヒドロキシフェニルシクロアルカンに基づくポリカーボネートである。
【0014】
式(I)で示される適当なジフェノールは、ヒドロキノン、レゾルシノール、4,4'−ジヒドロキシジフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパンおよび2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパンである。
【0015】
式(I)で示される好ましいジフェノールは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパンおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサンである。
【0016】
式(II)で示される好ましいジフェノールは、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,4,4−トリメチルシクロペンタンである。
【0017】
本発明において好ましいポリカーボネートは、ホモポリカーボネートおよびコポリカーボネートの両方である。
成分Aは、記載した熱可塑性ポリカーボネートの混合物であってもよい。
ポリカーボネートは、ジフェノールから、ホスゲンを用いた相界面法または均一相法(いわゆるピリジン法)により、既知の方法で調製することができる。分子量は、既知の連鎖停止剤を用いて既知の方法により調節することができる。
【0018】
適当な連鎖停止剤は、例えば、フェノール、p−クロロフェノール、p−t−ブチルフェノール、または2,4,6−トリブロモフェノールであり、また、長鎖アルキルフェノール、例えば、DE−OS−2842005に記載の4−(1,3−テトラメチルブチル)−フェノール、またはドイツ特許出願P3506472.2に示されたような、アルキル基中に合計で8〜20個の炭素原子を有するモノアルキルフェノール若しくはジアルキルフェノール、例えば、3,5−ジ−t−ブチルフェノール、p−イソオクチルフェノール、p−t−オクチルフェノール、p−ドデシルフェノールおよび2−(3,5−ジメチルヘプチル)−フェノール並びに4−(3,5−ジメチルヘプチル)−フェノールである。
使用される連鎖停止剤の量は、使用されるジフェノール(I)および/または(II)の合計モルに対して、一般に0.5〜10モル%である。
【0019】
本発明において好ましいポリカーボネートAは、10000〜200000、好ましくは20000〜80000の平均分子量(Mw(重量平均)、例えば、超遠心または光散乱法により測定)を有する。
【0020】
本発明において特に適しているポリカーボネートAは、既知の方法により、特に好ましくは、使用されるジフェノール合計に基づき0.05〜2モル%の、3またはそれ以上の官能性を有する化合物(例えば、3個またはそれ以上のフェノール性基を有する化合物)を組み合わせることにより、分岐されていてよい。
【0021】
ビスフェノールAのホモポリカーボネートに加えて、好ましいポリカーボネートは、ビスフェノールAと(ジフェノールの合計モル量に基づき)15モル%までの2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとのコポリカーボネート、およびビスフェノールAと(ジフェノールの合計モル量に基づき)60モル%までの1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンとのコポリカーボネートである。
【0022】
ポリカーボネートAは、部分的または完全に芳香族ポリエステルカーボネートにより置換することができる。成分Aの芳香族ポリカーボネートは、ポリシロキサンブロックを含んでいてもよい。その製法は、例えばDE−OS−3334872およびUS−PS−3821325に記載されている。
【0023】
成分B
本発明により使用することができる成分Bであるビニル(コ)ポリマーは、スチレン、α−メチルスチレン、ハロゲン若しくはアルキルにより核置換されたスチレン、C−C−アルキルメタクリレートおよびC−C−アルキルアクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のモノマー(B.1)と、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、C−C−アルキルメタクリレート、C−C−アルキルアクリレート、無水マレイン酸およびN−置換マレイミドからなる群から選択される少なくとも1種のモノマー(B.2)とのコポリマーである。
【0024】
−C−アルキルアクリレートおよびC−C−アルキルメタクリレートは、アクリル酸およびメタクリル酸それぞれと、1〜8個の炭素原子を有する1価アルコールとのエステルである。メチル、エチルおよびプロピルメタクリレートが特に好ましい。メチルメタクリレートは、とりわけ好ましいメタクリル酸エステルである。
【0025】
成分Bに従った組成を有する熱可塑性(コ)ポリマーは、成分Cを調製するためのグラフト重合中に副生物として、特に少量のゴム成分に多量のモノマーがグラフトされた場合に、生成されることがある。本発明に従って使用される(コ)ポリマーBの量は、グラフト重合の副生物を含まない。
本発明で成分Bとして使用する(コ)ポリマーは、樹脂、熱可塑性かつゴム不含有である。
【0026】
熱可塑性(コ)ポリマーBは、50〜99、好ましくは60〜95質量部のB.1、および50〜1、好ましくは40〜5質量部のB.2を含んでいる。
【0027】
特に好ましい(コ)ポリマーBは、スチレンとアクリロニトリルおよび所望によりメチルメタクリレートのコポリマー、α−メチルスチレンとアクリロニトリルおよび所望によりメチルメタクリレートのコポリマー、スチレンおよびα−メチルスチレンとアクリロニトリルおよび所望によりメチルメタクリレートのコポリマーである。
【0028】
成分Bとしてのスチレン/アクリロニトリルコポリマーは既知であり、ラジカル重合、特に乳化、懸濁、溶液または塊状重合により調製することができる。好ましくは、成分Bとしての(コ)ポリマーは、15000〜200000の分子量Mw(重量平均分子量;光散乱または沈降により測定)を有する。
【0029】
本発明によると、特に好ましいコポリマーBも、スチレンおよび無水マレイン酸のランダムコポリマーであり、これは、対応するモノマーから、例えば不完全転化連続塊状または溶液重合により調製することができる。本発明において好ましいスチレン/無水マレイン酸ランダム共重合体中の両成分の含有量は、広い範囲で変えることができる。好ましい無水マレイン酸の量は、5〜25質量%である。
【0030】
本発明において好ましい成分Bとしてのスチレン/無水マレイン酸ランダムコポリマーの分子量(数平均分子量Mn)は、広い範囲で変えることができる。60000〜200000の範囲が好ましい。このような生成物では、0.3〜0.9の極限粘度が好ましい(ジメチルホルムアミド中25℃で測定。Hoffmann, Kroemer, Kuhn, Polymeranalytik I [Polymer Analysis I], Stuttgart 1977, 316頁以降参照)。
【0031】
ビニル(コ)ポリマーBは、スチレンに代えて、核置換されたスチレン、例えばp−メチルスチレン、ビニルトルエンおよび2,4−ジメチルスチレン、他の置換スチレン、例えばα−メチルスチレン(場合によりハロゲン化されていてもよい)を含むことができる。
成分Bは、ビニル(コ)ポリマーの混合物であってもよい。
【0032】
成分C
グラフトポリマーCは、例えば、ゴム弾性特性を有するグラフトコポリマーを含み、これは、以下のモノマーの少なくとも2種から実質的に得ることができる:クロロプレン、1,3−ブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、アルコール成分に1〜18個の炭素原子を含む(メタ)アクリル酸エステル。このようなポリマーは、例えば、Methoden der Organischen Chemie (Houben-Weyl), Vol. 14/1, Georg Thieme-Verlag, Stuttgart, 1961, 393-406頁、およびC.B. Bucknall, "Toughened Plastics", Appl. Science Publishers, London 1977に記載されている。好ましいコポリマーCは、部分的に架橋され、通常20質量%超、好ましくは40質量%超、特に60質量%超のゲル含量を有する。
【0033】
好ましいグラフトポリマーCは、
C.1 下記C.1.1とC.1.2の混合物5〜95質量部、好ましくは30〜80質量部:
C.1.1 スチレン、α−メチルスチレン、ハロゲンまたはメチルにより核置換されたスチレン、C−Cアルキルメタクリレート、特にメチルメタクリレート、C−Cアルキルアクリレート、特にメチル(メタ)アクレートまたはこれらの混合物50〜95質量部、
C.1.2 アクリロニトリル、メタクリロニトリル、C−Cアルキルメタクリレート、特にメチルメタクリレート、C−Cアルキルアクリレート、特にメチルアクリレート、無水マレイン酸、C−CアルキルまたはフェニルによりN−置換されたマレイミド、若しくはこれらの化合物の混合物5〜50質量部、
および
C.2 −10℃未満のガラス転移温度を有するポリマー5〜95質量部、好ましくは20〜70質量部
のグラフトポリマーを含む。
【0034】
好ましいグラフトポリマーCは、例えば、スチレンおよび/またはアクリロニトリルおよび/またはアルキル(メタ)アクリレートによりグラフトされたポリブタジエン、ブタジエン/スチレンコポリマーおよびアクリレートゴム;すなわち、例えばDE−OS−194173(=US−PS−3564077)に記載された種類のコポリマー;DE−OS−2348377(=US−PS−3919353)に記載されているような、アクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレンおよび/またはアルキルスチレンによりグラフトされたポリブタジエン、ブタジエン/スチレンコポリマー、ブタジエン/アクリロニトリルコポリマー、ポリイソブテンまたはポリイソプレンである。
【0035】
特に好ましいポリマーCは、例えばDE−OS−2035390(=US−PS−3644574)またはDE−OS−2248242(=GB−PS−1409275)に記載されているような、ABSポリマーである。
【0036】
特に好ましいグラフトポリマーCは、
I.少なくとも1つのアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル10〜70質量%、好ましくは15〜50質量%、特に20〜40質量%(グラフトポリマーに基づき)、またはアクリロニトリル、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル10〜50質量%、好ましくは20〜35質量%(混合物に基づき)とスチレン50〜90質量%、好ましくは65〜80質量%(混合物に基づき)との混合物10〜70質量%、好ましくは15〜50質量%、特に20〜40質量%を、
II.(グラフトベースとして)少なくとも50質量%(IIに基づき)のブタジエン基を有するブタジエンポリマー30〜90質量%、好ましくは50〜85質量%、特に60〜80質量%(グラフトポリマーに基づき)に
グラフト化反応して得られるグラフトポリマーである。
【0037】
一般に、グラフトベースIIのゲル含量は少なくとも20質量%、好ましくは少なくとも40質量%(トルエン中で測定)であり、グラフト率Gは0.15〜0.55である。グラフトポリマーの平均粒子直径d50は、0.05〜2μm、好ましくは0.1〜0.6μmである。
【0038】
(メタ)アクリル酸エステルIは、アクリル酸またはメタクリル酸と、炭素原子数1〜18の1価アルコールとのエステルである。特に好ましいのは、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルおよびメタクリル酸プロピルである。
【0039】
グラフトベースIIは、ブタジエン基に加え、(IIに基づき)50質量%までの他のエチレン性不飽和モノマー(例えば、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸またはメタクリル酸のC−C−アルキルエステル(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなど)、ビニルエステルおよび/またはビニルエーテル)の基を含むことができる。好ましいグラフトベースIIは、純ポリブタジエンである。
【0040】
グラフト率Gは、グラフトされたグラフト用モノマーのグラフトベースに対する重量の比であり、無次元である。
【0041】
平均粒子直径d50は、それ以上およびそれ以下にそれぞれ50重量%の粒子が存在する直径である。この値は、超遠心測定により決定することができる(W. Scholtan, H. Lange, Kolloid, Z. und. Z. Polymere 250 (1972), 782-796)。
【0042】
特に好ましいポリマーCは、
(a)グラフトベースとしての、−20℃未満のガラス転移点を有するアクリレートゴム20〜90質量%(Cに基づき)、および
(b)グラフトモノマーとしての、少なくとも1種の重合性エチレン性不飽和モノマー(C.1参照)10〜80質量%(Cに基づき)
のグラフトポリマーである。
【0043】
ポリマーCのアクリレートゴム(a)は、好ましくは、所望により40質量%まで(aに基づき)の他の重合性エチレン性不飽和モノマーを有するアクリル酸アルキルエステルのポリマーである。好ましい重合性アクリル酸エステルには、C−C−アルキルエステル、例えばメチル、エチル、ブチル、n−オクチルおよび2−エチルヘキシルエステル;ハロアルキルエステル、好ましくはハロ−C−C−アルキルエステル、例えばクロロエチルアクリレート、並びにこれらモノマーの混合物が含まれる。
【0044】
架橋のために、2以上の重合性二重結合を有するモノマーを共重合することができる。架橋モノマーの好ましい例は、炭素原子数3〜8の不飽和モノカルボン酸と、炭素原子数3〜12の不飽和1価アルコールまたは2〜4個のOH基および2〜20個の炭素原子を有する飽和ポリオールとのエステル(例えば、エチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート);ポリ不飽和複素環化合物(例えば、トリビニルおよびトリアリルシアヌレート);多官能性ビニル化合物(例えば、ジ−およびトリ−ビニルベンゼン);並びにトリアリルホスフェートおよびジアリルフタレートである。
【0045】
好ましい架橋モノマーは、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジアリルフタレートおよび少なくとも3個のエチレン性不飽和基を有する複素環化合物である。
特に好ましい架橋モノマーは、環式モノマーであるトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリビニルシアヌレート、トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジンおよびトリアリルベンゼンである。
【0046】
架橋モノマーの量は、グラフトベース(a)に基づき、好ましくは0.02〜5質量%、特に0.05〜2質量%である。
少なくとも3個のエチレン性不飽和基を有する環式架橋モノマーの場合、その量をグラフトベース(a)の1質量%未満に制限するのが有利である。
【0047】
アクリル酸エステルに加えて所望によりグラフトベース(a)の製造に用いられる、好ましい「他の」重合性エチレン性不飽和モノマーは、例えば、アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、アクリルアミド、ビニル−C−C−アルキルエーテル、メチルメタクリレート、ブタジエンである。グラフトベース(a)として好ましいアクリレートゴムは、少なくとも60質量%のゲル含有量を有する乳化重合ポリマーである。
【0048】
適している他のグラフトベースは、例えばDE−OS−3704657、DE−OS−3704655、DE−OS−3631540およびDE−OS−3631539に記載されているような、グラフト活性サイトを有するシリコーンゴムである。
【0049】
グラフトベース(a)のゲル含量は、ジメチルホルムアミド中、25℃で測定される(M. Hoffmann, H. Kroemer, R. Kuhn, Polymeranalytik I und II, Georg-Thieme-Verlag, Stuttgart 1977)。
知られているように、グラフトモノマーはグラフト反応中に完全にはグラフトベースにグラフトされる必要はないから、本発明のグラフトポリマーCは、グラフトベースの存在下にグラフトモノマーを重合して得られる生成物であるとも理解される。
成分Cは、グラフトポリマーの混合物であってもよい。
【0050】
成分D
成分Dとして、亜鉛と周期律表の3〜5主族および1〜8亜族、好ましくは3〜5主族または4〜8亜族の金属と、酸素、炭素、窒素、水素、硫黄および珪素からなる群から選択される少なくとも1種の元素との化合物を用いることができる。
【0051】
本発明において好ましく用いることができる亜鉛化合物は、例えば、酸化亜鉛、硫化亜鉛、燐酸亜鉛、ホウ酸亜鉛および/または硫酸亜鉛である。硫化亜鉛およびホウ酸亜鉛が特に好ましい。硫酸亜鉛が非常に好ましい。
【0052】
本発明において、亜鉛化合物の平均粒子直径は、1nm〜20μm、好ましくは1nm〜10μmである。
硫化亜鉛を用いる場合、その平均粒子直径が150〜1800nm、好ましくは200〜500nm、特に好ましくは280〜400nmであると、非常に有利である。
ホウ酸亜鉛を用いる場合、その平均粒子直径は0.5〜15μm、好ましくは1〜12μm、特に好ましくは2〜10μmである。
【0053】
粒子寸法および粒子直径は、通常、平均粒子直径d50を意味し、これは、W. Scholtanら, Kolloid, Z. und. Z. Polymere 250 (1972), 782-796による超遠心測定により決定することができる。
【0054】
亜鉛化合物は、粉末、ペースト、ゾル、分散体または懸濁体の形状であってよい。粉末は、分散体、ペーストまたは懸濁体からの沈殿により得ることができる。
【0055】
成分E
本発明の成形用組成物は、一般に、0.01〜25質量部の難燃剤を含むことができる。難燃剤として例示できるものは、有機ハロゲン化合物、例えば、デカブロモビスフェニルエーテルおよびテトラブロモビスフェノール;無機ハロゲン化合物、例えば臭化アンモニウム;窒素化合物、例えばメラミンおよびメラミン−ホルムアルデヒド樹脂;無機水酸化化合物、例えば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;無機化合物、例えば酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化アンチモン、メタホウ酸バリウム、ヒドロキソアンチモネート、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、ホウ酸錫、ホウ酸アンモニウム、メタホウ酸バリウムおよび酸化錫、さらにシロキサン化合物である。
【0056】
さらにEP−A−363608、EP−A−345522またはEP−A−640655に記載されているような燐化合物も難燃剤として使用することができる。
【0057】
そのような燐化合物は、例えば、式(III):
【化3】

[式中、R、R、RおよびRは、相互に独立して、場合によりハロゲン化されていてよい、C−C−アルキル、C−C−シクロアルキル、C−C30−アリール、またはC−C12−アラルキルであり、これらはいずれも場合により、アルキル(好ましくはC−C−アルキル)および/またはハロゲン(好ましくは塩素および臭素)により置換されていてよい。]
で示される燐化合物である。
【0058】
、R、RおよびRは、好ましくは、C−C−アルキル、フェニル、ナフチルまたはフェニル−C−C−アルキルである。芳香族基R、R、RおよびRは、ハロゲンおよび/またはアルキル基、好ましくは塩素、臭素および/またはC−C−アルキルにより置換されていてよい。特に好ましいアリール基は、クレシル、フェニル、キシレニル、プロピルフェニルまたはブチルフェニル、および対応するそれらの臭素化並びに塩素化誘導体である。
【0059】
式(III)中のXは、6〜30個の炭素原子を有する単核または多核芳香族基である。好ましくは、この基は、式(I)のビフェノールから誘導される。ジフェニルフェノール、ビスフェノールA、レゾルシノールまたはヒドロキノン若しくはこれらの塩素化または臭素化誘導体が特に好ましい。
【0060】
式(III)中のkは、相互に独立して、0または1であり、好ましくは1である。
Nは、0〜30の数、好ましくは0(ゼロ)を表し、平均値は好ましくは0.3〜20、特に0.5〜10、とりわけ0.5〜6である。
【0061】
また、式(III)の燐化合物の混合物は、好ましくは、少なくとも1種のモノ燐化合物10〜90質量%、好ましくは12〜40質量%と、オリゴマー燐化合物少なくとも1種またはオリゴマー燐化合物混合物10〜90質量%、好ましくは60〜88質量%(燐化合物全量に基づく)とを含む。
【0062】
式(III)のモノ燐化合物は、特に、トリブチルホスフェート、トリス−(2−クロロエチル) ホスフェート、トリス−(2,3−ジブロモプロピル) ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレシルホスフェート、ジフェニルクレシルホスフェート、ジフェニルオクチルホスフェート、ジフェニル−2−エチルクレシルホスフェート、トリ−(イソプロピルフェニル) ホスフェート、ハロゲン置換アリールホスフェート、メチルホスホン酸ジメチルエステル、メチルホスホン酸ジフェニルエステル、フェニルホスホン酸ジエチルエステル、トリフェニルホスフィンオキシドまたはトリクレシルホスフィンオキシドである。
【0063】
式(III)のモノマーおよびオリゴマー燐化合物の混合物では、Nの平均値は、0.3〜20、好ましくは0.5〜10、特に0.5〜6である。
【0064】
上記式(III)の燐化合物は既知である(例えば、EP−A−363608、EP−A−640655およびEP−A−542522参照)か、または既知の方法により類似の手法で調製することができる(例えば、Ullmann, Enzyklopaedie der technischen Chemie, Vol. 18, 301頁以降, 1979; Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, Vol. 12/1, 43頁; Beilstein Vol. 6, 177頁参照)。
【0065】
本発明において使用することができる別の燐化合物は、式(IIIa)の直鎖ホスファゼンおよび式(IIIb)の環式ホスファゼンである:
【化4】


【化5】

(式中、
置換基Rは、それぞれ同一または異なって、アミノ;C−C−アルキルまたはC−C−アルコキシ(これらはそれぞれ、場合によりハロゲン化、好ましくはフッ素化されていてよい);C−C−シクロアルキル、C−C20−アリール、好ましくはフェニルまたはナフチル、C−C20−アリールオキシ、好ましくはフェノキシ、ナフチルオキシ、またはC−C12−アラルキル、好ましくはフェニル−C−C−アルキル(これらはそれぞれ、場合によりアルキル、好ましくはC−C−アルキルおよび/またはハロゲン、好ましくは塩素および/または臭素により置換されていてよい)を表す。
kは、0または1〜15の数、好ましくは1〜10の数を表す。)
【0066】
このような化合物としては、プロポキシホスファゼン、フェノキシホスファゼン、メチルフェノキシホスファゼン、アミノホスファゼンおよびフルオロアルキルホスファゼンが例示できる。フェノキシホスファゼンが好ましい。
【0067】
ホスファゼンは、単独で、または混合物として使用することができる。基Rは、常に同一であっても、あるいは式(IIIa)および(IIIb)中で2つまたはそれ以上が異なっていてもよい。
ホスファゼンおよびその製造方法は、例えば、EP−A−728811、DE−A−1961668およびWO97/40092に記載されている。
【0068】
本発明の成形用組成物は、場合により、式(III)、(IIIa)および(IIIb)の化合物とは異なる難燃剤を、20質量部までの量で含むことができる。相乗効果を発揮する難燃剤が好ましい。他の難燃剤として、有機ハロゲン化合物、例えば、デカブロモビスフェニルエーテルおよびテトラブロモビスフェノール;無機ハロゲン化合物、例えば臭化アンモニウム;窒素化合物、例えばメラミンおよびメラミン−ホルムアルデヒド樹脂;またはシロキサン化合物を挙げることができる。本発明の成形用組成物は、所望により、無機化合物Dとは異なる無機物質、例えば無機水酸化物(例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム)、無機化合物(例えば、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、メタホウ酸バリウム、ヒドロキソアンチモネート、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アンモニウム、メタホウ酸バリウムおよび酸化錫)を含むことができる。
【0069】
好ましい難燃剤は、式(III)、(IIIa)および(IIIb)の化合物またはこれらの混合物から選択される。式(III)の化合物が特に好ましい。
【0070】
本発明の熱可塑性成形用組成物は、この成形用組成物の難燃特性に好ましい効果を有する微粉砕無機化合物をさらに含んでいてよい。そのような無機化合物は、好ましくは、周期律表の1〜5主族または1〜8亜族、好ましくは2〜5主族または4〜8亜族、特に3〜5主族または4〜8亜族の1種またはそれ以上の金属と、酸素、硫黄、ホウ素、燐、炭素、窒素、水素および/または珪素からなる群から選択される少なくとも1種の元素との化合物からなる。ただし、化合物Dである亜鉛化合物は除外される。
【0071】
好ましい化合物は、例えば、酸化物、水酸化物、含水酸化物、硫酸塩、亜硫酸塩、硫化物、炭酸塩、炭化物、硝酸塩、亜硝酸塩、窒化物、ホウ酸塩、珪酸塩、燐酸塩、水素化物、亜燐酸塩またはホスホン酸塩である。
【0072】
好ましい微粉砕無機化合物は、例えば、TiN、TiO2、SnO2、WC、Al2O3、AlO(OH)、ZrO2、Sb2O3、SiO2、酸化鉄、Na2SO4、BaSO4、酸化バナジウム、珪酸塩(例えば、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、一次元、二次元および三次元珪酸塩)である。これらの混合物またはドープされた化合物も同様に使用できる。更に、これらナノスケール粒子は、ポリマーに対する許容性を改善するために、有機分子により表面改質することができる。表面改質により、疎水性または親水性表面を形成することができる。
【0073】
無機化合物の平均粒子直径は、200nmまたはそれ以下、好ましくは150nmまたはそれ以下、特に1〜100nmである。
粒子寸法および粒子直径は、平均粒子直径d50を意味し、これは、W. Scholtanら, Kolloid-Z. und Z. Polymere 250 (1972), 782-796頁に記載の超遠心測定により決定される。
【0074】
無機化合物は、粉末、ペースト、ゾル、分散液または懸濁液の形状であってよい。粉末は、沈澱により分散液、ゾルまたは懸濁液から得ることができる。
【0075】
粉末は、常套の方法、例えば成形用組成物の成分と微粉砕無機粉末との直接混練または押出により、熱可塑性プラスチックに配合することができる。好ましい方法は、例えば、難燃剤、他の添加剤、モノマー、溶媒中または成分A中でマスターバッチを製造するか、あるいは成分BまたはCを微粉砕無機化合物の分散液、懸濁液、ペーストまたはゾルと共沈澱させる方法である。
【0076】
フッ素化ポリオレフィンをさらに添加することができる。フッ素化ポリオレフィンは、高い分子量を有し、−30℃を越える、一般に100℃を越えるガラス転移温度を有する。フッ素化ポリオレフィンのフッ素含量は、好ましくは65〜76質量%、特に70〜76質量%である。その平均粒子直径d50は、一般に0.05〜1000μm、好ましくは0.08〜20μmである。通常、フッ素化ポリオレフィンは、1.2〜2.3g/cmの密度を有する。
【0077】
好ましいフッ素化ポリオレフィンは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、およびエチレン/テトラフルオロエチレンコポリマーである。
【0078】
フッ素化ポリオレフィンは既知である(Schildknecht著"Vinyl and Related Polymers", John Wiley & Sons, Inc., New York, 1962, 484-494頁; Wall著"Fluoropolymers", Wiley-Interscience, John Wiley & Sons, Inc., New York, Volume 13, 1970, 623-654頁; "Modern Plastics Encyclopedia", 1970-1971, Volume 47, No. 10A, October 1970, McGraw-Hill, Inc., New York, 134頁および774頁; "Modern Plastics Encyclopedia", 1975-1976, October 1975, Volume 52, No. 10A, McGraw-Hill, Inc., New York, 27, 28および472頁、並びにUS−PS−3671487、3723373および338092参照)。
【0079】
フッ素化ポリオレフィンは、既知の方法により調製することができる。例えば、ラジカルを生成する触媒、例えばナトリウム、カリウムまたはアンモニウムパーオキシジスルフェートを用い、水性媒体中、7〜71kg/cmの圧力下、0〜200℃の温度、好ましくは20〜100℃の温度で、テトラフルオロエチレンを重合することにより調製することができる(詳細は、例えばUS−P−2393967を参照)。フッ素化ポリオレフィンが使用される形態に応じて、その密度は、1.2〜2.3g/cmであってよく、平均粒子直径は0.05〜1000nmであってよい。
【0080】
好ましいフッ素化ポリオレフィンは、テトラフルオロエチレンポリマーである。このポリマーは、0.05〜20μm、好ましくは0.08〜10μmの平均粒子直径、および1.2〜1.9g/cmの密度を有していて、好ましくは、テトラフルオロエチレンポリマーのエマルションとグラフトポリマーCのエマルションの混合物の形で使用される。
【0081】
粉末状で使用できる適当なフッ素化ポリオレフィンは、100〜1000μmの平均粒子直径および2.0〜2.3g/cmの密度を有するテトラフルオロエチレンポリマーである。
【0082】
成分Cとフッ素化ポリオレフィンの凝集混合物を調製するには、0.05〜2μm、特に0.1〜0.6μmの平均ラテックスス粒子直径を有するグラフトポリマーCの水性エマルション(ラテックス)を、まず、0.05〜20μm、特に0.08〜10μmの平均粒子直径を有するフッ素化ポリオレフィンの微粒子水性エマルションと混合する。好ましいテトラフルオロエチレンポリマーエマルションは、通常、30〜70質量%、特に50〜60質量%の固形分含有量を有する。
【0083】
グラフトポリマーCの水性エマルションは、25〜60質量%、好ましくは30〜45質量%、特に30〜35質量%の固形分含有量を有する。
成分Cについて本明細書中に記載された量は、グラフトポリマーの凝集混合物中のグラフトポリマーおよびフッ素化ポリオレフィンの含有量を含まない。
【0084】
エマルション混合物中でのグラフトポリマーCのフッ素化ポリオレフィンに対する質量比は、95:5〜60:40である。エマルション混合物は、既知の方法、例えば噴霧乾燥、凍結乾燥、あるいは、無機または有機の塩、酸または塩基若しくは水混和性有機溶媒(例えば、アルコールおよびケトン)の添加による凝固により、好ましくは20〜150℃、特に50〜100℃の温度において、凝集される。必要なら、50〜200℃、好ましくは70〜100℃で乾燥することができる。
適当なテトラフルオロエチレンポリマーエマルションは、市販製品であり、例えばTeflon(登録商標)30NとしてDuPontから入手できる。
【0085】
本発明の熱可塑性成形用組成物に用いる適当な充填材および補強材は、例えば、所望により切断または粉砕されたガラス繊維、ガラスビーズ、ガラス球、板状補強物質(例えば、カオリン、タルク、グリメライト、珪酸塩、石英、二酸化チタン、ウォラストナイト、雲母など)、炭素繊維またはこれらの混合物である。
補強材としては、切断または粉砕ガラス繊維が好ましく用いられる。補強作用を有する好ましい充填材は、ガラスビーズ、雲母、珪酸塩、石英、タルク、二酸化チタンおよびウォラストナイトである。
【0086】
充填材または補強材を含む成形用組成物は、(充填材または補強材を含む成形用組成物の全量に基づき)60質量%まで、好ましくは10〜40質量%までの充填材または補強材を含むことができる。
【0087】
本発明の成形用組成物は、常套の添加剤、例えば、滴下防止剤、滑剤および離型剤、核剤、帯電防止剤、安定剤、充填剤および補強剤、さらに着色剤および顔料を含んでいてよい。
【0088】
成分A〜Eおよび任意の他の添加剤を含む本発明の成形用組成物は、既知の方法でこれら成分を混合し、混合物を、高温、好ましくは200〜300℃で、常套の装置(例えば、密閉式ニーダー、押出機または二軸押出機)により溶融混練または溶融押出することにより調製できる。フッ素化ポリオレフィンは、好ましくは、すでに記載した凝集混合物の形で使用される。
【0089】
各成分は、既知の方法で逐次または同時に、いずれの場合も約20℃(室温)またはより高い温度で、混合することができる。
【0090】
本発明の成形用組成物は、あらゆる種類の成形品の製造に使用できる。特に、成形品は、射出成形により製造することができる。製造される成形品の例は次の通りである:種々のハウジング部品、例えば、家庭用機器(例えば、ジュース搾り器、コーヒーメーカー、ミキサーなど)、事務機器(例えば、コンピュータ、プリンタ、モニタなど)のハウジング、または建築分野用カバーシート、および自動車分野用部品。加えて、本発明の成形用組成物は、非常に優れた電気的特性を有しているので、電気産業分野でも使用することができる。
【0091】
本発明の成形用組成物は、使用されるプラスチックに非常に高度のノッチ付き衝撃強度および耐応力亀裂性が要求される、薄肉成形品(例えば、データ技術ハウジング要素)の製造に、とりわけ好適である。
【0092】
他の加工形態は、予め製造されたシートまたはフィルムのブロー成形または熱成形による成形品の製造である。
【実施例】
【0093】
成分A
1,252の溶液相対粘度を有する、ビスフェノールAに基づくポリカーボネート(相対粘度は、塩化メチレン中、濃度0.5g/100ml、25℃で測定)。
【0094】
成分B
72:28のスチレン/アクリロニトリル比および0.55dl/gの極限粘度を有するスチレン/アクリロニトリルコポリマー(極限粘度は、ジメチルホルムアミド中20℃で測定)。
【0095】
成分C
乳化重合により調製された、粒状(平均粒子直径d50=0.3μm)の、架橋ポリブタジエンゴム60質量部への73:27の比のスチレン/アクリロニトリル40質量部のグラフトポリマー。
【0096】
成分D
硫化亜鉛[Sachtholit HD(Sachtlebenchemie, Duisburg, Germany)](D1)およびホウ酸亜鉛[Firebrake ZB(Nordmann, Rassmann GmbH & Co, Hamburg, Germany)](D2)を、超微粒子無機化合物として用いる。これらの粒子の平均粒子寸法は、それぞれ約350nmおよび約7μmである。
【0097】
成分E
用いた難燃剤は、式(IV)
【化6】

の成分E.1)である。
【0098】
テトラフルオロエチレンポリマー成分E.2)は、成分CとしてのSANグラフトポリマーの水性エマルションとテトラフルオロエチレンポリマーの水性エマルションの凝集混合物として用いる。混合物中のグラフトポリマーC対テトラフルオロエチレンポリマーEの質量比は、90質量%対10質量%である。テトラフルオロエチレンポリマーエマルションは、60質量%の固形分濃度を有し、平均粒子直径は0.05〜0.5μmである。SANグラフトポリマーエマルションは、34質量%の固形分濃度を有し、平均ラテックス粒子直径は0.4μmである。
【0099】
E.2の調製
テトラフルオロエチレンポリマーのエマルション(DuPont製Teflon 30N)を、SANグラフトポリマーCのエマルションと混合し、混合物を、ポリマー固形分に対して1.8質量%のフェノール系酸化防止剤により安定化する。混合物を、MgSO(Epsom salt)の水溶液および酢酸により、4〜5のpH、85〜95℃の温度で濾過し、電解質が実質的になくなるまで濾過、洗浄し、次いで、遠心によりほとんどの水を除き、その後100℃で乾燥して、粉末を得る。次いで、この粉末を、記載の装置により、式(IV)の難燃剤および他の成分と混練することができる。
【0100】
本発明による成形用組成物の調製および試験
3リットルの内部ニーダーを用いて成分A〜Fを混合する。成形体は、Arburg 270Eタイプの射出成型機を用い、260℃で製造する。
【0101】
応力亀裂特性は、寸法80×10×4mmの試験片を用いて、物質温度260℃で試験する。試験媒体としてトルエン60体積%およびイソプロパノール40体積%の混合物を用いる。試験片を、アーク型テンプレートを用いて予備延伸し(予備延伸率1.2〜2.4%)、室温で試験媒体中に保持する。応力亀裂特性は、予備延伸率の関数としての亀裂、または試験媒体への浸漬時間の関数としての割れにより評価する。
【0102】
流れすじ(ウエルドライン)強度aは、DIN 53453の方法により測定する。
自然色調(黄色度指数YI)は、ASTM D 1925に従って測定する。
MVR(メルトボリュームフローレート)は、ISO 1133に従って測定する。
引張弾性率Eは、ISO 527の方法に従って測定する。
破断時伸びは、F3ダンベルバーを用い、ISO 527の方法に従って引張弾性率Eを測定する際に決定する。
【0103】
試験に供した物質の組成および得られたデータを以下の表1に示す。

【表1】

【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の成形用組成物は、あらゆる種類の成形品の製造に使用できる。特に、成形品は、射出成形により製造することができる。製造される成形品の例は次の通りである:種々のハウジング部品、例えば、家庭用機器(例えば、ジュース搾り器、コーヒーメーカー、ミキサーなど)、事務機器(例えば、コンピュータ、プリンタ、モニタなど)のハウジング、または建築分野用カバーシート、および自動車分野用部品。加えて、本発明の成形用組成物は、非常に優れた電気的特性を有しているので、電気産業分野でも使用することができる。
【0105】
本発明の成形用組成物は、使用されるプラスチックに非常に高度のノッチ付き衝撃強度および耐応力亀裂性が要求される、薄肉成形品(例えば、データ技術ハウジング要素)の製造に、とりわけ好適である。
【0106】
他の加工形態は、予め製造されたシートまたはフィルムのブロー成形または熱成形による成形品の製造である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリカーボネート、およびポリカーボネート100質量部に対して0.01〜30質量部の、平均粒子直径が1nm〜20μmの亜鉛化合物(ただし、100nmまたはそれ以下の平均粒子直径を有する酸化亜鉛を除く)を含んでなる熱可塑性成形用組成物。
【請求項2】
平均粒子直径は1nm〜10μmである請求項1に記載の熱可塑性成形用組成物。
【請求項3】
亜鉛化合物として、酸化亜鉛、硫化亜鉛、燐酸亜鉛、ホウ酸亜鉛および/または硫酸亜鉛を含む請求項1に記載の熱可塑性成形用組成物。
【請求項4】
A.芳香族ポリカーボネート40〜98質量部、
B.ビニルコポリマー0〜50質量部、
C.グラフトポリマー0.5〜60質量部、
D.亜鉛化合物0.1〜30質量部
を含んでなる請求項1に記載の熱可塑性成形用組成物。
【請求項5】
50〜95質量部の芳香族ポリカーボネートAを含む請求項1に記載の熱可塑性成形用組成物。
【請求項6】
−10℃未満のガラス転移温度を有するゴム5〜95質量部に、
スチレン、α−メチルスチレン、ハロゲンまたはアルキルにより核置換されたスチレン、C−C−アルキルメタクリレート、C−C−アルキルアクリレートまたはこれらの化合物の混合物50〜95質量部と、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、C−C−アルキルメタクリレート、C−C−アルキルアクリレート、無水マレイン酸、C−C−アルキルまたはフェニル−N−置換マレイミドまたはこれらの化合物の混合物5〜50質量部との混合物5〜95質量部
を共重合させて調製したグラフトポリマーCを含む請求項4に記載の熱可塑性成形用組成物。
【請求項7】
燐化合物を難燃剤として含む請求項4に記載の熱可塑性成形用組成物。
【請求項8】
式(III):
【化1】

(式中、R、R、RおよびRは、相互に独立して、場合によりハロゲン化された、C−C−アルキル、C−C−シクロアルキル、C−C30−アリールまたはC−C12−アラルキルであり、それぞれは場合によりアルキルおよび/またはハロゲン、例えば臭素により置換されていてよい。
kは、相互に独立して、0または1である。
Nは、0〜30である。
Xは、6〜30個の炭素原子を有する単核または多核芳香族基である。)
で示される燐化合物を含む請求項7に記載の熱可塑性成形用組成物。
【請求項9】
成形用組成物全体に対して0.01〜20質量%の少なくとも1種の他の難燃剤をさらに含む請求項1〜6のいずれかに記載の熱可塑性成形用組成物。
【請求項10】
安定剤、顔料、離型剤、流動助剤および/または帯電防止剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含む請求項1〜9のいずれかに記載の熱可塑性成形用組成物。
【請求項11】
成形品の製造における、請求項1〜10のいずれかに記載の熱可塑性成形用組成物の使用。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれかに記載の熱可塑性成形用組成物を成形することにより製造された成形品。

【公開番号】特開2011−94153(P2011−94153A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5821(P2011−5821)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【分割の表示】特願2000−586830(P2000−586830)の分割
【原出願日】平成11年11月25日(1999.11.25)
【出願人】(591063187)バイエル アクチェンゲゼルシャフト (67)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−51368 Leverkusen, Germany
【Fターム(参考)】