説明

改良された重亜硫酸塩によるDNAの変換

【課題】改良された重亜硫酸塩によるDNAの変換方法を提供する。
【解決手段】ジオキサン、その誘導体、及び類似の脂肪族環式エーテルからなる群から選択された化合物の存在下でゲノムDNAと重亜硫酸塩を反応させ、該化合物の濃度が10〜35体積%であることを特徴とする重亜硫酸塩によるDNAの変換方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNA中のシトシンのメチル化を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
5−メチルシトシンは、真核細胞のDNA中、最も頻繁に共有結合による修飾が行われた塩基である。5−メチルシトシンは、例えば、転写の調節、遺伝子のインプリンティング、及び腫瘍発生に関与している(総説:Millar et al.: Five not four: History and significance of the fifth base. In: S. Beck and A. Olek, eds. : The Epigenome. Wiley−VCH Verlag Weinheim 2003, 3−20)。したがって、遺伝子情報の構成要素として、5−メチルシトシンを同定することは非常に興味深いことである。しかしながら、5−メチルシトシンはシトシンと同様の塩基対挙動を有しているので、5−メチルシトシンの位置を同定することはできない。しかも、PCRで増幅すると、5−メチルシトシンによるエピジェネティック情報は完全に失われる。
【0003】
メチル化解析のための従来方法は、本質的に2つの異なる原理に基づいて行われる。メチル化特異的制限酵素の使用、あるいは非メチル化シトシンからウラシルへの選択的な化学変換(重亜硫酸塩処理)を行うことである。上記酵素又は化学的に前処理を施したDNAは、次いで、増幅され、種々の方法で解析される(総説:Fraga and Esteller: DNA Methylation: A Profile of Methods and Applications. Biotechniques 33: 632−649, Sept. 2002). WO 02/072880 pp.1ff)。
【0004】
メチル化特異的酵素の使用は、該酵素で認識される制限部位を含む配列に限定されるため、大部分の適用に対しては、重亜硫酸塩処理が行われる(総説:US 10/311,661)。
【0005】
本発明において、“重亜硫酸塩反応”、“重亜硫酸塩処理”又は“重亜硫酸塩方法”は、重亜硫酸イオンの存在下、核酸中のシトシン塩基はウラシル塩基に変換し、5−メチルシトシン塩基は顕著に変換しない反応を意味するものとする。重亜硫酸塩反応は、別々又は同時に行われる脱アミノ化と脱スルホン化を含んでいる(EP 1394172A1には、さらなる詳細が記載されており、反応スキームが示されている。ここでは、該文献全体を参照として挙げる)。重亜硫酸塩反応の特異的な面を記述した種々の文献があり、その中には、Hayatsu et al., Biochemistry 9 (1970) 2858−28659; Slae and Shapiro, J.Org. Chem. 43(1978) 4197−4200; Paulin et al., Nucl. Acids Res. 26 (1998) 5009−5010; Raizis et al., Anal Biochem. 226 (1995), 161−1666; Wang et al. Nucleic Acids Res. 8(1980) 4777−4790が含まれる。これらの文献は、EP 1394172A1(ここでは、該文献全体を参照として挙げる)に要約されている。
【0006】
重亜硫酸塩処理は、通常、以下のようにして行われる。すなわち、ゲノムDNAを分離し、機械的又は酵素的に断片化し、NaOHで変性し、濃重亜硫酸塩溶液により数時間かけて変換し、最終的に、脱スルホン化及び脱塩化する(例えば、Frommer et al.: A genomic sequencing protocol that yields a positive display of 5−methylcytosine residues in individual DNA strands. Proc Natl Acad Sci USA. 1992 Mar 1; 89(5) : 1827−31; ここでは、該文献全体を参照として挙げる)。
【0007】
近時、重亜硫酸塩を用いる方法の技術的改良がなされている。アガロースビーズ法は、検討すべきDNAをアガロースマトリックス内に組み込み、それにより、DNAの拡散と再生を防止しており(重亜硫酸塩は1本鎖DNAとのみ反応する)、全ての沈降及び精製の工程は、急速透析に置き換えている(Olek et al. A modified and improved method for bisulphite based cytosine methylation analysis, Nucl. Acids Res. 1996, 24, 5064−5066)。特許出願 WO 01/98528(=DE 100 29 915; =US出願 10/311,661)において、DNAサンプルを、変性剤及び/又は溶媒及び少なくともスカベンジャーの存在下で、濃度範囲が0.1mol/lから6mol/lである重亜硫酸塩溶液と共にインキュベートする重亜硫酸塩による変換が記載されている。上記特許出願においては、いくつかの好適な変性剤及びスカベンジャーが記載されている(ここでは、該文献全体を参照として挙げる)。特許出願WO 03/038121(=DE 101 54 317; =10/416, 624)では、重亜硫酸塩処理の間、検討すべきDNAを固体表面に結合させる方法が記載されている。その結果、精製及び洗浄の工程が容易になる。さらなる改良が特許出願EP1394173A1及びEP1394172A1に記載されている(ここでは、該文献全体を参照として挙げる)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、重亜硫酸塩処理の基本的な問題は、完全な変換を確保し、また、誤った陽性の結果を排除するには、長い反応時間が必要となることである。しかしながら、このことは同時に、長い反応時間によるDNAの分解を招く。実際、反応温度が高くなると、変換率は高くなるが、DNAの分解がより一層激しくなる。近年、温度、反応時間、変換率及び分解率の相互作用について体系的に研究が行われた。こうして、最も高い変換率は55℃(反応時間は4〜18時間)及び95℃(反応時間は1時間)の温度で達成されることが示された。しかしながら、重大な問題は、この操作の間におけるDNAの分解である。55℃の反応温度では、DNAの84〜96%が分解する。実際、95℃では、かなり大きな分解が生じる(Grunau et al.: Bisulfite genomic sequencing: systematic investigation of critical experimental parameters. Nucleic Acids Res. 2001 Jul 1; 29(13): E65−5; (ここでは、該文献全体を参照として挙げる)。大部分の著者は、約50℃の反応温度を使用している(参照:Frommer et al., loc. cit. 1992, p. 1827; Olek et al., loc. cit. 1996, p. 5065; Raizis et al: A bisulfite method of 5−methylcytosine mapping that minimizes template degradation. Anal Biochem. 1995 Mar 20; 226(1): 161−6, 162)。
【0009】
DNAの高い分解率に加えて、従来の重亜硫酸塩方法には別の問題がある。それは、変換したDNAを効果的に精製する方法が未だ開示されていないということである。多くの著者は沈降方法を使用している(Grunau et al., loc. cit. 参照)。DNAが結合した担体表面を介する精製も開示されている(Kawakami et al.: Hypermethylated APC DNA in plasma and prognosis of patients with esophageal adenocarcinoma. Journal of the National Cancer Institute, Vol. 92, No. 22, 2000, pp. 1805−11参照)。しかしながら、これらの精製による収率は頭打ちである。
【0010】
従来の重亜硫酸塩方法では、多くのDNAが失われるため、解析するDNAの量が限られている研究に、これらの方法を使用することには問題がある。しかしながら、メチル化解析の非常に興味深い分野は、癌又はメチル化状態の変化に関連した他の異状を、血液や尿などの体液から得られたDNAを解析することによって診断することである。しかしながら、DNAは体液中で低い濃度で存在しており、そのため、従来の重亜硫酸塩処理の低い収率により、メチル化解析への適用は限定されている。
【0011】
したがって、シトシンのメチル化解析には特別な重要性があり、また、既に記載した従来方法には欠点があることから、重亜硫酸塩による変換の改良方法に対する大きな技術的要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ある変性溶媒は、予期しない驚くべき形で、重亜硫酸塩反応の変換率を上昇させることを見出した。それと同時に、必要とする反応時間及び結果として分解率を低下させる。変性溶媒の使用は既に公知ではあるが、当業者は、本発明において選択された溶媒が非常に絶大な効果をもたらすことを予期できなかった。明らかに改良された変換率及び減少した分解率に加えて、上記溶媒の使用は、もう1つの重要な利点をもたらす。通常、重亜硫酸塩処理は、高濃度の重亜硫酸塩の存在下で行われる(Fraga and Esteller recommend a final concentration of 5mol/l; 上記参照、p.642, 左欄、第2段落)。しかしながら、そのような高濃度の塩は、大きな分解を招来し、後の精製及び増幅において問題となる。公知の変性剤と比較して、本発明に係る変性剤であるn−アルキレングリコールを使用することの、さらなる利点は、水溶性がより高いことである。その結果、スカベンジャーを含む反応化合物を、より広い濃度範囲で適用することができる。最適化した反応条件で新たな溶媒と新たな精製方法を組み合わせることにより、変換の効果をさらに向上させることができる。組織又は体液に対する高感度のDNAメチル化解析が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の1つの態様は、DNAが重亜硫酸塩試薬と反応を行う、重亜硫酸塩によるDNAの変換方法であって、ジオキサン、その誘導体、及び類似の脂肪族環式エーテルからなる群から選択された化合物の存在下で該反応を行うことを特徴とする。
【0014】
本発明の他の態様は、DNAが重亜硫酸塩試薬と反応を行う、重亜硫酸塩によるDNAの変換方法であって、次式の化合物の存在下で上記反応を行うことを特徴とする。

【0015】
n−アルキレングリコール化合物が好ましく、特にそのジアルキルエーテル、さらには、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DME)が好ましい。
【0016】
いずれの態様においても、検査するDNAは、診断上又は科学上の目的に基づいて、種々の供給源から得られるものでよい。診断上の検査に対しては、組織サンプルを最初の材料として使用することが好ましいが、体液、特に血清又は血漿も使用することができる。また、痰、大便、尿、又は脳脊髄液から得たDNAを使用することも可能である。DNAは生物学的標本から単離したものであることが好ましい。DNAは一般的方法に従って、例えば、Qiagen UltraSens DNA抽出キットを用いて血液から抽出する。DNAを精製する他の方法は当業者にとって公知である。
【0017】
次いで、単離したDNAは、例えば、制限酵素との反応により断片化する。その反応条件及び使用する酵素については、業者が提供するプロトコール等によって当業者に公知である。
【0018】
重亜硫酸塩による変換は、上記した公知のプロトコールに従って行うことができる。該反応は溶液中及び固相に結合したDNA上で行うことができる。亜硫酸ナトリウムよりも水によく溶けることから、二亜硫酸ナトリウム(=重亜硫酸ナトリウム/メタ重亜硫酸ナトリウム)を使用することが好ましい。水溶液中において、二亜硫酸塩は、シトシンの変換に必要な硫酸水素アニオンに不均化する。以下において、重亜硫酸塩濃度について言及した場合、それは反応溶液中における亜硫酸水素及び亜硫酸アニオンの濃度を意味する。本発明方法では、0.1〜6mol/lの濃度範囲が可能である(上記参照)。特に好ましい濃度範囲は、1〜6mol/l、最も好ましいのは、2〜4mol/lである。しかしながら、ジオキサンを用いる場合、使用しうる重亜硫酸塩の最大濃度は小さくなる(下記参照)。重亜硫酸塩濃度を選択する場合、高濃度の重亜硫酸塩は高い変換率をもたらすが、pHが低くなるため、分解率が高くなることも考慮する必要がある。
【0019】
ジオキサンは種々の濃度で使用することができる。ジオキサンの濃度は10〜35%(vol/vol)が好ましく、特に好ましくは20〜30%、最も好ましくは22〜28%、特に25%である。ジオキサンの濃度が35%よりも高いと、反応溶液内に2つの相が形成されることになるという問題がある。ジオキサンの濃度が22〜28%の特に好ましい態様では、最終の好ましい重亜硫酸塩濃度は、3.3〜3.6 mol/lとなり、ジオキサンの濃度が25%の最も好ましい態様では、3.5 mol/lとなる(実施例参照)。
【0020】
本発明では、n−アルキレングリコール化合物を各種濃度範囲で使用することができる。DMEは、好ましくは1〜35%(vol/vol)の範囲の濃度で使用する。さらには5〜25%の間が好ましく、最も好ましくは10%のDMEである。
【0021】
本発明において使用する好ましいスカベンジャーは、クロマン誘導体であり、例えば、6−ヒドロキシ−2,5,7,8、−テトラメチルクロマン2−カルボン酸(Trolox−C、商標)である。その他のスカベンジャーについては、特許出願WO 01/98528(=DE 100 29 915;=US出願 10/311, 661;ここでは該文献全体を挙げる)に記載されている。
重亜硫酸塩による変換は0〜95℃の広い温度範囲で行うことができる(上記参照)。しかしながら、高い温度では、DNAの変換と分解の両方の程度が上昇するので、好ましい態様としては、反応温度を30〜70℃とする。特に好ましい範囲は45〜60℃であり、最も好ましくは50〜55℃である。重亜硫酸塩処理の最も好ましい反応時間は反応温度によって決まる。通常、反応温度は1〜18時間である(Grunau et al. 2001, loc. cit.参照)。反応時間は、一般には、50℃の反応温度に対し、4〜6時間である。
【0022】
本発明方法の特に好ましい態様では、重亜硫酸塩による変換を温和な反応温度で行い、該変換の間において、反応温度を少なくとも1回、短い時間、明瞭に上昇させる。このようにして、重亜硫酸塩による変換を驚異的かつ明確に増加させることができる。短い時間の上記温度上昇を以下“サーモスパイク”と言う。サーモスパイク以外の“標準的な”反応温度を基礎反応温度と言う。上記したように、基礎反応温度は0〜80℃、好ましくは30〜70℃、最も好ましくは45〜55℃である。サーモスパイクにおける反応温度は、少なくとも1つのサーモスパイクで85℃以上に上昇させる。サーモスパイクの最適な数は、基礎反応温度の関数である。サーモスパイクの最適な数が大きくなればなるほど、基礎反応温度は低くなる。各ケースにおいて、少なくとも1つのサーモスパイクは必要である。また、他方、原則として、あらゆる数のサーモスパイクとすることも考えられる。当然のことながら、温度上昇の数が大きくなると、DNAの分解率も増加し、最適な変換が得られなくなることを考慮する必要がある。したがって、サーモスパイクの好ましい数は、基礎反応温度に基づき、各回1〜10である。2〜5の数のサーモスパイクは特に好ましい。サーモスパイクでは反応温度を好ましくは85〜100℃、特に好ましくは90〜98℃、最も好ましくは94〜96℃に上昇させる。
【0023】
また、サーモスパイクの時間の長さは反応バッチの容量によって決まる。反応溶液全体にわたり、温度が均一に上昇することを確認する必要がある。20μlの反応バッチに対し、サーモサイクラーを使用する場合、15秒〜1.5分間の長さ、特に20〜50秒の長さが好ましい。特に好ましい態様は、30秒の長さである。100μlの容量の操作では、好ましい範囲は30秒〜5分間、特に1〜3分間である。特に好ましくは1.5分間である。600μlの容量に対しては、1〜6分間の長さが好ましく、特に2〜4分間である。さらに好ましくは3分間である。当業者であれば、種々の反応容量に応じて、容易にサーモスパイクの時間の長さを決定することができる。
【0024】
上記したサーモスパイクを導入することにより、上記変性溶媒を使用できない場合であっても、重亜硫酸塩変換反応における顕著に良好な変換率を得ることができる。本発明に係る重亜硫酸塩によるDNAの変換方法は、上記したように、基礎反応温度が0〜80℃であり、上記変換の間、少なくとも1回、短い時間、反応温度を85℃以上に上昇させることを特徴とする。最初の材料は上記のように処理すればよい。
【0025】
好ましい温度範囲、サーモスパイクの数、及びその長さは、上記した範囲である。したがって、基礎反応温度は0〜80℃、好ましくは30〜70℃、最も好ましくは45〜55℃である。反応温度は、少なくとも1つのサーモスパイクにおいて、85℃以上に上昇させる。サーモスパイクの好ましい数は1〜10であり、基礎反応温度に基づいて決定する。2〜5のサーモスパイクは特に好ましい。サーモスパイクの間、反応温度を好ましくは85〜100℃、特に好ましくは90〜98℃、最も好ましくは94〜96℃に上昇させる。
【0026】
また、温度上昇の時間の長さは、反応バッチの容量に基づいて決定する(上記参照)。
【0027】
重亜硫酸塩による変換が終了した後、DNAを脱スルホン化し、精製する。この目的のために、各種方法が知られている(例えば、DE 101 54 317 A1=US 10/416, 624; Grunau et al. 2001, loc. cit. 参照)。一般には、反応溶液は最初水酸化ナトリウムで処理する。次いで、中和し、アルコールによりDNAを沈殿させる。本発明に係る上記態様における好ましい態様では、ゲルろ過、例えば、Sephadex−G25カラムを用いて精製を行う。この方法により、さらなる洗浄工程を行う必要なく、非常に効果的に重亜硫酸塩を除去することができる。第2の好ましい態様では、DNA結合表面、例えば、Promega社のWizard DNA精製樹脂で精製を行う。第3の好ましい態様では、Magna−Pure処理等により、磁気粒子を使用して精製を行う。本発明においては、これらの精製方法を、n−アルキレングリコール、特にDMEと組み合わせることによって、非常に良好な結果を得ることができる。精製は業者の説明書に従って行う。標準的な実験を行って業者の説明書のバリエーションを行うことにより、さらなる高い収率を得ることができることは、当業者にとって公知である。その結果、最適化したプロトコールも本発明の一部である。ゲルろ過、DNA結合表面及び磁気粒子を用いた核酸を精製するための他の技術的説明は当業者にとって公知であり、例えば、業者の説明書により提供される。最も好ましい態様は、限外ろ過を行うことである。この方法には、いくつかの技術上における利点があり、結果的に変換DNAを驚くほど良好に精製することができる。変換DNAの回収率は非常に高い(>85%、実施例6参照)。このことは、高分子量DNA及び体液等に認められる断片化DNAのいずれにも当てはまる。重亜硫酸塩処理DNAを分離する従来方法は、対照的に、約25%の回収率にしかならない。また、限外ろ過には、他の利点もある。例えば、精製については、使用するサンプルの容量に関して非常に柔軟性がある。さらに、重亜硫酸塩をほとんど完全に除去することができる。その上、脱スルホン化をフィルター膜上で行うことができ、このことは、また時間の節約になる。各種の商業的に利用できる限外ろ過システムが当業者に知られており、それらは本発明の方法に使用することができる。好ましい態様においては、Millipore社のMicrocon(商標)カラムを使用する。また、変更した業者のプロトコールに従って精製を行うことができる。この目的のため、重亜硫酸塩反応溶液を水と混合し、限外ろ過膜に載せる。次いで、反応溶液を約15分間遠心分離し、その後、1×TEバッファーで洗浄する。DNAはこの処理で上記膜に残る。次いで、脱スルホン化を行う。この目的のため、0.2mol/lのNaOHを加え、DNAを10分間インキュベートする。その後、再度遠心分離(10分間)を行った後、1×TEバッファーで洗浄する。次いで、DNAを溶離する。この目的のため、50μlの暖かい1×TEバッファー(50℃)とDNAを10分間混合する。業者の説明書に従って、上記膜を回転させ、遠心分離を行う。これにより、DNAは該膜より除去される。これで該溶離物は、目的とする検出反応に直接使用することできる。他の限外ろ過システムには他の操作が必要となることがあり、また、上記条件を変更することにより、良好な収率を得ることもできることは当業者にとって公知であり、それらに相当する態様も本発明に含まれる。
【0028】
上記した変性溶媒を使用しない場合あるいはサーモスパイクなしで変換を行う場合も、上記した限外ろ過を利用することにより、重亜硫酸塩で変換したDNAの精製を明らかに向上させることができる。したがって、本発明では、重亜硫酸塩によるDNAの変換方法は、変換DNAの精製を限外ろ過で行うことを特徴とする。最初の材料は上記のように処理される。サーモスパイクを導入することもできる。好ましい温度範囲、サーモスパイクの数、及びその長さは、上記した範囲である(上記参照)。また、限外ろ過は、好ましくは上記のように行う。したがって、種々の限外ろ過システムを使用することができる。好ましい態様では、Millipore社のMicrocon(商標)カラムを使用する。精製は、上で述べたように、好ましくは、業者のプロトコールを変更して行う。他の限外ろ過システムには他の操作が必要となりうること、及び上記条件を変えることにより、さらに良好な収率を得ることができることは当業者にとって公知である。それらに該当する態様も本発明の一部である。
【0029】
上記した種々の態様により変換、精製したDNAは、種々の方法で解析することができる。最初にポリメラーゼ連鎖反応により該DNAを増幅することが特に好ましい。当初メチル化又は非メチル化DNAの選択的増幅は、各種方法、例えば、いわゆる“Heavy Methyl”法(Cottrell et al.; A real-time PCR assay for DNA-methylation using methylation-specific blockers. Nucleic Acids Res. 2004 Jan 13; 32 (1): e10. WO 02/072880)又は、いわゆる“メチル化感受性PCR”(“MSP”;Herman et al.: Methylation-specific PCR: a novel PCR assay for methylation status of CpG islands. Proc Natl Acad Sci USA. 1996 Sep 3; 93(18): 9821−6参照)で行うことができる。得られた増幅物は、従来方法、例えば、プライマー伸長反応(“MsSNuPE”;DE 100 10 280=10/220,090等参照)又はオリゴマーアレイへのハイブリダイゼーション(例えば、Adorjan et al., Tumour class prediction and discovery by microarray-based DNA methylation analysis. Nucleic Acids Res. 2002 Mar 1; 30(5): e21参照)で検出することができる。他の特に好ましい態様では、増幅物をPCRリアルタイム変法(US 6,331,393 “Methyl Light”)で解析する。したがって、好ましい変法は、“Taqman” 法及び “Lightcycler”法である。
【0030】
ここに開示した方法は、好ましくは、患者又は個人に対し、診断及び/又は副作用の予測のために使用する。該副作用は少なくとも以下のカテゴリーの1つに該当する。望まない薬物相互作用;癌;中枢神経系(CNS)の不全、損傷又は疾患;悪化の兆候又は行動不全;脳の損傷の診療、心理的及び社会的結果;精神障害及び人格障害;痴呆及び/又は関連した症候群;心臓の疾患、不全及び損傷;胃腸管の不全、損傷又は疾患;呼吸器系の不全、損傷、又は疾患;障害、炎症、感染症、免疫及び/又は健康回復;成長過程での異常性の結果としての体の損傷又は疾患;肌、筋肉、結合組織又は骨の不全、損傷又は障害;内分泌性及び代謝性の不全、損傷又は障害;頭痛又は性機能不全である。
【0031】
また、本発明方法は、細胞型又は組織を区別するため、あるいは、細胞の分化を調べるためにも好適である。
【0032】
また、本発明方法は、薬物治療に対する患者の反応を解析するのにも好適である。
【0033】
本発明の主題には、キットも含まれる。該キットには、重亜硫酸塩を含む試薬、変性試薬又は溶媒、スカベンジャー、増幅物を産生するためのプライマー、及び選択的に限外ろ過チューブ又はアッセイを行うための説明書を含む。
【実施例】
【0034】
以下の実施例により本発明を説明する。
実施例1:
重亜硫酸塩反応の自動伝導
ゲノムDNAサンプルであるファクターVIII遺伝子に対して、シトシンのメチル化状態を検出する方法の適用を本実施例で述べる。該ゲノムDNAサンプルは、業者の説明書に従って制限エンドヌクレアーゼで処理している。該方法では、交換可能なピペットチップのための垂直に動く4つの独立したアダプターを備えた自動ピペットシステム(MWG RoboSeq 4204)を使用し、それにより、交差汚染を排除している。該ピペットシステムによって、±2μl 以下の誤差で100μl[アリコート]をピペットすることができる。自動ピペットシステムの作動プレートには、2つは冷却することができる、ピペットチップとピペットする8つの位置のためのラック、冷却することができる試薬ラック、10個のマイクロタイタープレートのためのスタッキングシステム、ピペットチップ洗浄ステーション、及びアダプターからピペットチップを分離するための装置が設けられている。
自動ピペットシステムは、シリアルインターフェイスによりコンピューターと接続しており、また、ソフトウエアプログラムでコントロールされており、これにより、本発明方法の適用に必要な全てのピペット工程を自由にプログラミングできる。
【0035】
本方法の最初の工程では、アリコートのDNAサンプルを手で、マイクロタイタープレートの96の自由に選択できる位置のうちの1つにピペットする。次いで、Eppendorf MasterCyclerを用いて96℃でマイクロタイタープレートを加熱して、前処理DNAサンプルを変性させる。その後、マイクロタイタープレートを自動ピペットシステムに移動させる。アリコートの変性剤(ジオキサン)、3.3M 重亜硫酸ナトリウム溶液、及び使用した該変性剤のスカベンジャー溶液を順次、プログラムコントロール化した方法にて、試薬ラックからDNAを含む全ての位置にピペットする。次いで、マイクロタイタープレートをEppendorf MasterCyclerでインキュベートして、DNAサンプル中の全ての非メチル化シトシン残基を重亜硫酸ナトリウムの作用により重亜硫酸塩反応生成物に変換する。
重亜硫酸塩処理の後、マイクロタイタープレートをサーモサイクラーから自動ピペットシステムに移動させる。次いで、同様のタイプの第2マイクロタイタープレートを配置する。最初に、基礎のTris−HClバッファー(pH9.5)及び、その次にアリコートの重亜硫酸塩処理DNAを、全てのチャンバーにある第2マイクロタイタープレートの、重亜硫酸塩処理DNAを含む第1マイクロタイタープレートの位置に対応する位置に移動させる。非メチル化シトシン残基の重亜硫酸塩反応生成物は、上記基礎溶液中でウラシル残基に変換する。
重亜硫酸塩処理DNAの1本鎖(本実施例ではセンス鎖)の標的増幅をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)にて行う。タイプ1のプライマーのペア(AGG GAG TTT TTT TTA GGG AAT AGA GGG A ( SEQ. ID: 1) 及びTAA TCC CAA AAC CTC TCC ACT ACA ACA A ( SEQ. ID: 2) を使用する。これにより、重亜硫酸塩処理したDNA鎖の特異的増幅が可能になる。非メチル化シトシン残基がウラシル残基に変換しなかったか、又は不完全に変換したDNA鎖は特異的増幅はされない。PCR反応のため、同様のタイプの第3マイクロタイタープレートを自動ピペットシステムに配置する。第1マイクロタイタープレートの対応する位置に重亜硫酸塩処理DNAを含む全てのチャンバーに、PCRバッファー、DNAポリメラーゼ、及びタイプ1のプライマーを含むアリコートのストック溶液を最初に自動的にピペットする。その後、PCR反応を行うために第3のマイクロタイタープレートをサイクラーに移動させる前に、アリコートの希釈重亜硫酸塩処理DNAを第2マイクロタイタープレートから第3マイクロタイタープレートの対応する位置に移動させる。PCR産物はアガロースゲル電気泳動及びその後の臭化エチジウムによる染色で同定する(図1)。図1は、PCRで増幅した重亜硫酸塩処理DNA鎖のゲルイメージを示す(左:分子量マーカー、右:PCR産物)。
【0036】
実施例2:血漿サンプル中のDNAを検出するためにジオキサンを添加する最適化された重亜硫酸塩変換
重亜硫酸塩を用いる最適化した方法によって、体液から得たDNAに対する高感度のメチル化解析ができることを示す。この目的のため、1mlのヒト血漿と特定量のヒトDNAを混合した。Magna Pure法(ロシュ)を業者の説明書に従って行うことにより、該DNAを血漿サンプルから分離した。精製によって得た100μlの溶離液を以下の重亜硫酸塩反応に使用した。標準的方法(Frommer et al., loc. cit.)に基づく変換をコントロールとして行った。本発明方法の手順は以下のとおりであった。該溶離液を354μlの重亜硫酸塩溶液(5.89mol/l)及びラジカルスカベンジャー(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン2−カルボン酸、ジオキサン2.5ml中98.6mg)を含む146μlのジオキサンと混合した。該反応混合物を3分間、99℃で変性し、次いで、以下の温度プログラムに従って合計5時間インキュベートした。50℃で3時間、1つのサーモスパイク(99.9℃)で3分間;50℃で1.5時間;1つのサーモスパイク(99.9℃)で3分間;50℃で3時間。次いで、コントロール及び本発明方法に係る反応混合物を、Millipore Microcon(商標)カラムを用いた限外ろ過により精製した。該精製は本質的に業者の説明書に従って行った。この目的のため、上記反応混合物を300μlの水と混合し、限外ろ過膜に載せ、15分間遠心分離し、次いで、1×TEバッファーで洗浄した。この処理で、DNAは上記膜に残る。その後、脱スルホン化を行った。この目的のため、0.2mol/l のNaOHを添加し、10分間インキュベートした。その後、遠心分離(10分間)を行い、次いで1×TEバッファーで洗浄した。この後、DNAを溶離した。この目的のため、上記膜を10分間、50μlの暖かい1×TEバッファー(50℃)と混合した。上記膜は業者の説明書に従い回転させた。次いで、遠心分離を再度行って、該膜からDNAを除去した。そして、10μlの溶離液を、Lightcycler Real Time PCRに用いた。ヒトベータアクチン遺伝子の領域を解析した(Miyamoto: Nucleotide sequence of the human beta-actin promoter 5' flanking region; Nucleic Acids Res. 15 (21), 9095(1987) 参照)。以下のプライマー及びプローブを使用した。フォワードプライマー:TGG TGA TGG AGG AGG TTT AGT AAG T (SEQ ID 3) ; リバースプライマー:AAC CAA TAA AAC CTA CTC CTC CCT TAA (SEQ ID 4) ; ドナープローブ:TTG TGA ATT TGT GTT TGT TAT TGT GTG TTG −flou (SEQ ID 5) ;アクセプタープローブ:LC Red640−TGG TGG TTA TTT TTT TTA TTA GGT TGT GGT−Phos (SEQ ID 6)。増幅は重亜硫酸塩特異的アッセイにより行った。蛍光シグナルを検出し、Lightcycleソフトウエアで計算した。変換DNAと分離DNAの量は、キャリブレーション曲線を用いて比較することにより定量した。最適化した方法では、DNA濃度は133.21ng/100μlとなったのに対し、従来方法では濃度は41.03ng/100μlとなった。したがって、本発明方法により、従来方法よりも3倍高い収率を得ることが可能になった。
【0037】
実施例3:血漿サンプル中のDNAを検出するためにDMEを添加する最適化された重亜硫酸塩変換
重亜硫酸塩を用いる最適化した方法によって、体液から得たDNAに対する高感度のメチル化解析ができることを示す。この目的のため、1mlのヒト血漿と特定量のヒトDNAを混合した。Magna Pure法(ロシュ)を業者の説明書に従って行うことにより、該DNAを血漿サンプルから分離した。該精製によって得た100μlの溶離液を以下の重亜硫酸塩反応に使用した。標準的方法(Frommer et al., loc. cit.)に基づく変換をコントロールとして行った。本発明方法の手順は以下のとおりであった。上記溶離液を354μlの重亜硫酸塩溶液(5.89mol/l)及びラジカルスカベンジャー(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン2−カルボン酸、DME787μl中98.6mg)を含む46μlのDMEと混合した。該反応混合物を3分間、99℃で変性し、次いで、以下の温度プログラムに従って合計5時間インキュベートした。50℃で30分間、1つのサーモスパイク(99.9℃)で3分間;50℃で1.5時間;1つのサーモスパイク(99.9℃)で3分間;50℃で3時間。次いで、コントロール及び本発明方法に係る反応混合物を、Millipore Microcon(商標)カラムを用いた限外ろ過により精製した。該精製は本質的に業者の説明書に従って行った。この目的のため、上記反応混合物を300μlの水と混合し、限外ろ過膜に載せ、15分間遠心分離し、次いで、1×TEバッファーで洗浄した。この処理で、DNAは上記膜に残る。その後、脱スルホン化を行った。この目的のため、0.2mol/lのNaOHを添加し、10分間インキュベートした。その後、遠心分離(10分間)を行い、次いで1×TEバッファーで洗浄した。この後、DNAを溶離した。この目的のため、上記膜を10分間、50μlの暖かい1×TEバッファー(50℃)と混合した。該膜は業者の説明書に従い回転させた。次いで、遠心分離を再度行って、該膜からDNAを除去した。そして、10μlの溶離液をLightcycler Real Time PCRに用いた。ヒトベータアクチン遺伝子の領域を、実施例2に記載したプライマー及びプローブを使用して解析した。増幅は重亜硫酸塩特異的アッセイにより行った。Lightcyclerソフトウエアで計算した結果を図2に示す。左の曲線は最適化した方法であり、右の曲線は従来方法である。最適化した方法では、サイクルが少ない数であっても、重要な蛍光シグナルが発生することが示されている。DNA収率はこのように従来方法よりも高い。変換DNAの量はキャリブレーション曲線を用いて比較することにより定量することができる。最適化した方法では、DNA濃度は133.27ng/100μlとなったのに対し、従来方法では濃度は41.03ng/100μlとなった。したがって、本発明方法により、従来方法よりも3倍高い収率を得ることが可能になった。
【0038】
実施例4
サーモスパイクを導入した重亜硫酸塩による変換
2μlのddH2Oを、MssI(Promega;160ng)で消化した非常に純度の高いヒトDNA1μlと混合した。該サンプルを96℃で10分間変性した。その後、約10μlの重亜硫酸塩溶液(5.85mol/l)及び7μlのラジカルスカベンジャー/ジオキサン混合物(5μlのジオキサンプラス2μlのスカベンジャー)を添加した。この後、第1サンプル(0h値)を除去し、氷上に配置した。該反応混合物を96℃で30秒間インキュベートし、その後、50℃で59.5分間インキュベートした。第2サンプル(1h値)を除去し、氷上に配置した。第3サンプル(2h値)を再び96℃で30秒間、また、50℃で59.5分間インキュベートした。次いで、このサンプルも氷上に配置した。第4サンプル(3h値)を再び96℃で30秒間及び50℃で59.5分間インキュベートし、次いで、同様に冷却した。30μlのddH2Oを上記サンプルに添加した。上記反応混合物をG25 Sephadexカラムで精製した。該溶離液を50μlの100mmol/l Tris−HCl(pH9.5)と混合し、96℃で20分間、脱スルホン化した。この溶液2μlを各PCR反応に用いた。2つの重亜硫酸塩特異的断片、2つの非特異的断片及びゲノム断片を、それぞれPCRにて増幅した。重亜硫酸塩特異的断片は、重亜硫酸塩による変換が進行するほど、より多く増幅される。非特異的断片は重亜硫酸塩による変換とは独立して増幅し、DNA分解の兆候を示す。ゲノム断片は、重亜硫酸塩で変換していないゲノム断片が存在している場合だけに限り増幅する。このように、ゲノムDNAの増幅は、重亜硫酸塩による不完全な変換を測定することになる。アガロースゲルで分離した増幅物を図3に示す。本発明方法では、大部分のDNAが1時間後でさえ、変換していることが示されている。最も遅くとも3時間後には、ゲノムDNAを、もはや検出することができない。すなわち、重亜硫酸塩による変換は終了している。従来の重亜硫酸塩処理では、相当する値は早くとも5時間後に得られる(下記参照)。
【0039】
実施例5
サーモスパイクを有する重亜硫酸塩処理とサーモスパイクを有しない重亜硫酸塩処理の比較
実施例4で処理したサンプルを、2つのサーモスパイクで、3又は5時間の反応時間インキュベートした。コントロールはサーモスパイクなしで反応させた。精製及びPCRは下記のとおり行った。2つの重亜硫酸塩特異的断片を増幅した。そのうちの1つの断片はシトシンに富むものであった。したがって、完全に変換するには比較的長い反応時間が必要であった。対照的に、他方の断片はシトシンに乏しいものであり、そのため、比較的短い時間の後、完全に変換した。増幅の結果を図4に示す。従来の重亜硫酸塩変換は左側の図であり、サーモスパイクを有する最適化された変換は右側の図である。シトシンに富む断片は各時間左側にプロットし、シトシンに乏しい断片は右側にプロットしている。それには、本発明方法により、明らかに感度の高い検出ができることが示されている。したがって、シトシンに富む断片はサーモスパイク処理により、わずか3時間後には、はっきりと検出することができるのに対し、従来処理では、5時間の反応時間後であっても検出することができない。
【0040】
実施例6:本発明方法におけるDNAの回収率
本発明方法により、非常に効果的な重亜硫酸塩による変換及び精製が可能となることを示す。この目的のため、種々の量のM13−DNAとヒトDNAを100μlの水に溶解した。該DNA溶液を354μlの重亜硫酸塩溶液(5.89mol/l)及びラジカルスカベンジャー(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン2−カルボン酸、2.5mlのジオキサン中に98.6mg)を含む146μlのジオキサンと混合した。該反応混合物を99℃で3時間変性し、次いで、以下の温度プログラムにて合計5時間インキュベートした。50℃で30分間;1つのサーモスパイク(99.9℃)で3分間;50℃で1.5時間;1つのサーモスパイク(99.9℃)で3分間;50℃で3時間。次いで、該反応混合物をMillipore Microcon(商標)カラムによる限外ろ過によって精製した。該精製は本質的に業者の説明書に従って行った。この目的のため、該反応混合物を300μlの水と混合し、限外ろ過膜に載せ、15分間遠心分離し、次いで、1×TEバッファーで洗浄した。この処理で上記膜にDNAが残る。その後、脱スルホン化を行う。この目的のため、0.2mol/lのNaOHを添加し、10分間インキュベートした。そして、遠心分離(10分)を行った後、1×TEバッファーによる洗浄工程を行った。その後、該DNAを溶離した。この目的のため、上記膜を50μlの暖かい1×TEバッファー(50℃)と10分間混合した。業者の説明書に従って上記膜を回転させた。次いで、再度遠心分離を行い、それにより、上記膜からDNAを除去した。そして、該DNAの濃度を蛍光的に決定した(オリーブグリーン)。データを表1に示す。DNAの回収率は少なくとも75%である。公知の重亜硫酸塩によるDNA変換及び精製方法では、対照的に、回収率は25%以下である。
【0041】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例1の結果を示す。PCR増幅した重亜硫酸塩処理DNA鎖のゲルパターンを示す(左:分子量マーカー、右:PCR産物)。
【図2】実施例3(DMEの使用)の結果を示す。DNAは血漿サンプルから分離し、重亜硫酸塩で処理し、Lightcycler PCRで増幅した。Y軸は各サイクルにおいて測定した蛍光シグナルを示す。X軸はサイクルの数を示す。本発明方法に係る曲線は左側、従来方法に係る曲線は右側に示す。最適化された方法では、サイクル数が少なくても顕著な蛍光シグナルを生ずることがわかる。DNAの回収率は従来方法よりも高い。
【図3】実施例4の結果を示す。PCR増幅後の電気泳動から得られたゲルを示す。2つの異なる重亜硫酸塩特異的断片、2つの非特異的断片、及び1つのゲノム断片を、それぞれ増幅した。1番上の図はゼロ値(反応時間=0時間)を表す。上から2番目の図は、1つのサーモスパイクをもち、反応時間が合計1時間の反応を表す。上から3番目の図は、2つのサーモスパイクをもち、反応時間が合計2時間の反応を表す。最も下の図は、3つのサーモスパイクをもち、反応時間が合計3時間の反応を表す。DNAの大部分は本発明方法によって、わずか1時間後に変換する(上から2番目の図)。最も遅くでも3時間後には、ゲノムDNAはもはや検出できない(最も下の図)。
【図4】実施例5の結果を示す。PCR増幅後のゲル電気泳動を表す。2つの異なる重亜硫酸塩特異的断片を増幅した。左側の図は従来の重亜硫酸塩処理、右側の図は本発明方法を示す。3時間の反応時間は上、5時間の反応時間は下に示す。より高感度の検出が本発明方法によって可能であることは明らかである(サーモスパイク)。したがって、左側のレーンに示した断片は、3時間の反応時間後に検出することができるのに対し、従来方法の断片は5時間のインキュベーション後でさえ検出することができない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲノムDNAと重亜硫酸塩を反応させる、重亜硫酸塩によるDNAの変換方法であって、ジオキサン、その誘導体、及び類似の脂肪族環式エーテルからなる群から選択された化合物の存在下で上記反応を行うことを特徴とする重亜硫酸塩によるDNAの変換方法。
【請求項2】
上記化合物の濃度が10〜35体積%であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
上記化合物の濃度が20〜30体積%であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
ゲノムDNAと重亜硫酸塩を反応させる、重亜硫酸塩によるDNAの変換方法であって、次式の化合物の存在下で上記反応を行うことを特徴とする重亜硫酸塩によるDNAの変換方法。

【請求項5】
上記化合物が、n−アルキレングリコール化合物であることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
上記化合物が、ジアルキルエーテルであることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
上記化合物が、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DME)であることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
上記化合物が、1〜35体積%の濃度で存在していることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項9】
上記化合物が、5〜25体積%の濃度で存在していることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項10】
分離したゲノムDNAを重亜硫酸塩試薬と反応させる、重亜硫酸塩によるDNAの変換方法であって、該反応を0〜80Cの温度範囲で行い、該反応温度を、変換の間に短い時間85〜100Cの範囲に上昇させる(サーモスパイク)ことを特徴とする重亜硫酸塩によるDNAの変換方法。
【請求項11】
短い時間の温度上昇(サーモスパイク)の数が2〜5であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
短い時間の温度上昇(サーモスパイク)の間、反応温度が85〜100℃に上昇することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
短い時間の温度上昇(サーモスパイク)の間、反応温度が90〜98℃に上昇することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
変換DNAを磁気粒子で精製することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項15】
変換DNAを限外ろ過で精製することを特徴とする重亜硫酸塩によるDNAの変換方法。
【請求項16】
変換DNAをMSP、Heavy Methyl、MsSNuPE、Methyl Lightのうちのいずれかの方法で解析することを特徴とする請求項1、4、10又は15に記載の方法。
【請求項17】
組織サンプル又は体液のDNAを検査することを特徴とする請求項1、4、10又は15に記載の方法。
【請求項18】
患者又は個人に対し、診断及び/又は副作用の予測のための使用であって、該副作用は少なくとも以下のカテゴリー:望まない薬物相互作用;癌;中枢神経系(CNS)の不全、損傷又は疾患;悪化の兆候又は行動不全;脳の損傷の診療、心理的及び社会的結果;精神障害及び人格障害;痴呆及び/又は関連した症候群;心臓の疾患、不全及び損傷;胃腸管の不全、損傷又は疾患;呼吸器系の不全、損傷、又は疾患;障害、炎症、感染症、免疫及び/又は健康回復;成長過程での異常性の結果としての体の損傷又は疾患;肌、筋肉、結合組織又は骨の不全、損傷又は障害;内分泌性及び代謝性の不全、損傷又は障害;頭痛又は性機能不全の1つに該当する請求項1、4、10又は15に記載の方法の使用。
【請求項19】
細胞型又は組織を区別するため、あるいは、細胞の分化を調べるための請求項1、4、10又は15に記載の方法の使用。
【請求項20】
重亜硫酸塩を含む試薬、変性試薬又は溶媒、スカベンジャー、増幅物を産生するためのプライマー、及び選択的に限外ろ過チューブ又は前記請求項のうちのいずれか1項に記載された方法を行うための説明書を含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−508007(P2007−508007A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530157(P2006−530157)
【出願日】平成16年10月11日(2004.10.11)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011715
【国際公開番号】WO2005/038051
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(500247105)エピゲノミクス アーゲー (15)
【Fターム(参考)】