説明

改良型の支持構造を備えた超伝導マグネット

【課題】マグネットの安定性の改善を達成するような改良型の支持構造をもつ超伝導マグネットを提供すること。
【解決手段】少なくとも1つの超伝導コイルと、該超伝導コイルに結合された少なくとも1つの支持部材と、これら超伝導コイルと支持部材の間にある少なくとも1つのコンプライアント界面と、を含むような超伝導マグネットについて記載している。超伝導コイルは半径方向を規定している。超伝導コイルは、半径方向と実質的に直交した軸方向で超伝導コイルを支持している。コンプライアント界面は、超伝導マグネットが付勢されたときに半径方向に移動するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全般的には超伝導マグネットに関し、またさらに詳細には超伝導コイルを支持するための改良型の支持構造を備えた超伝導マグネットに関する。
【背景技術】
【0002】
超伝導マグネットは、磁気共鳴撮像システムやサイクロトロンマグネットシステムなど多くの用途で使用される。超伝導マグネットは一般に、磁場を発生させるための複数の超伝導コイルと、超伝導コイルを支持するための1つまたは複数の支持部材と、を有する。簡略とするために本明細書の以下において「超伝導コイル」のことを「コイル」と呼ぶ。
【0003】
超伝導マグネットを付勢させると、コイルは軸方向の電磁気(EM)力と半径方向のEM力を発生させる。軸方向EM力に抗してコイルを支持するために1つまたは複数の支持部材が使用される。半径方向EM力は一般にコイル自体のフープ(hoop)応力によって説明されており、これによりコイル内にフープ歪み及び半径方向の伸長が生じる。コイルのこうした半径方向伸長は、コイルと1つまたは複数の支持部材との間の接触界面に摩擦性の動きを生じさせる可能性がある。この摩擦性の動きは熱を発生させ、これによりコイルがクエンチすると共に超伝導マグネットの磁場不安定につながる可能性がある。このことは、液体ヘリウム温度など低い温度においては(コイルが有する熱容量が非常に小さくかつ僅かな熱外乱によってコイルの温度がそのしきい値を超えるまで上昇しコイルをクエンチさせる可能性があるため)特に顕著である。
【0004】
従来の幾つかの超伝導マグネットは、熱外乱を吸収するためにコイル内により多くの超伝導性または通常の金属材料を有することによって接触界面におけるある種の摩擦性の動きを許容している。しかし超伝導材料は高価であると共に、コイル内に追加する材料が多くなることによって製造コストが上昇することになる。従来の別の超伝導マグネットではそのコイルを支持構造に直接ボンディングさせている。ボンディング界面におけるボンディング強度によって、1つまたは複数の支持部材はコイルと一緒に移動する。しかしその動きが整合的でないとボンディング界面にクラックを生じさせ、これによりコイルに熱外乱が生じる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5708405号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、マグネットの安定性の改善を達成するような改良型の支持構造をもつ超伝導マグネットを提供することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態による超伝導マグネットは、少なくとも1つの超伝導コイルと、少なくとも1つの支持部材と、これら超伝導コイルと支持部材の間に介在させた少なくとも1つのコンプライアント界面と、を備える。超伝導コイルは半径方向を規定している。支持部材は超伝導コイルに結合されると共に、半径方向と実質的に直交した軸方向で超伝導コイルを支持している。コンプライアント界面は、超伝導マグネットが付勢されたときの半径方向の動きに対応している。
【0008】
別の実施形態による超伝導マグネットは、半径方向を規定している少なくとも1つの超伝導コイルと、半径方向と実質的に直交した軸方向で超伝導コイルを支持している少なくとも1つの支持部材と、を備える。支持部材は、超伝導コイルに付着させたコンプライアント部分を備えると共に、超伝導マグネットが付勢されたときの超伝導コイルによる動きに対応した半径方向の動きを生成するように構成されている。
【0009】
別の実施形態による超伝導マグネットは、複数の超伝導コイル、複数の支持リング及び複数の支持バーを備える。これらの超伝導コイルは軸方向で互いから離間させている。支持リングは超伝導コイルの外径表面にそれぞれ結合させている。各支持バーは、支持リングを軸方向で支持するために支持リングの外径表面に付着させている。
【0010】
これら及びその他の利点及び特徴についてはさらに、添付の図面と連携させて提供している本発明の実施形態に関する以下の詳細な説明から理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態による超伝導マグネットの概要斜視図である。
【図2】図1の線w−wに沿って切って見た超伝導マグネットの部分斜視図である。
【図3】本発明の別の実施形態による超伝導マグネットの部分斜視図である。
【図4】本発明のさらに別の実施形態による超伝導マグネットの部分斜視図である。
【図5】本発明のさらに別の実施形態による超伝導マグネットの部分斜視図である。
【図6】本発明のさらに別の実施形態による超伝導マグネットの部分斜視図である。
【図7】本発明のさらに別の実施形態による超伝導マグネットの斜視図である。
【図8】図7の超伝導マグネットの部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の実施形態について添付の図面を参照しながら本明細書の以下で説明することにする。以下の説明では、本開示が不必要な細部に覆い隠されることを避けるために、よく知られた機能や構造については詳細に記載していない。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態による超伝導マグネット10を表している。超伝導マグネット10は、軸方向に沿って別々に位置決めされた2つのコイル12と、軸方向の支持を提供するために2つの隣接するコイル12の周りに介在させた支持部材14と、を含む。一実施形態ではそのコイル12及び支持部材14は、円筒状とすると共に、互いに軸方向で整列させかつ同心性としている。さらに別の実施形態ではその超伝導マグネット10は、その各々が図1に示したのと同様の構成を有する複数のセクションを含む。
【0014】
この例では、コイル12と支持部材14の間に介在させてコンプライアント界面17を存在させており、このコンプライアント界面17は超伝導マグネット10を付勢させたときにコイル12の半径方向の動きを吸収し、摩擦性の動き及び熱外乱を最小化するか排除するように構成される。さらに、コンプライアント界面17の製造に使用する材料はコイル上に直接追加される材料と比べてより低コストであり、このため超伝導マグネット10がコンプライアント界面17を備えることにより製造コストが上昇することはない。
【0015】
図1及び2を参照するとこの例の超伝導マグネット10は、超伝導マグネット10の支持構造全体を形成するために支持部材14と協働するコンプライアント界面17を含む。この例のコンプライアント界面は、複数のコンプライアントブロック16(図1参照)と、一実施形態では複数のコンプライアントパッド18を含むようなコンプライアント層と、を含む。この例のコンプライアントブロック16は、支持部材14の端部表面20上で環状に分布させると共に、互いから等しく離間させている。一実施形態ではそのコンプライアントブロック16は、アルミニウム、真鍮、ステンレス鋼などの金属から製作される。コンプライアントパッド18は対応するコンプライアントブロック16とコイル12の端部表面21とによって挟まれている。
【0016】
各コンプライアントブロック16はこの例では、2つの側部プレート22及び2つのコンプライアントプレート24を有する。一方の側部プレート22は支持部材14の端部表面20に対して付着または結合させており、またもう一方の側部プレート22はコンプライアントパッド18及びコイル12の端部表面21に対して付着または結合させている。一実施形態ではその側部プレート22は、図2に示したような2つの閉鎖部分26を用いることによって位置決めしかつ付着させている。図2では、2つの閉鎖部分26を側部プレート22の上表面から延び出させると共に、コイル12及び支持部材14の外径(OD)表面にそれぞれ付着させている。図1に示すように閉鎖部分26はコンプライアントブロック16及びコンプライアントパッド18を確保するための唯一の手段であることを理解されたい。別の実施形態ではその側部プレート22を、ボルト、ボンディング剤または適当な別の手段によってコイル12、コンプライアントパッド18及び支持部材14に結合させている。
【0017】
2つのコンプライアントプレート24は、互いに概ね平行でかつ離間するように一方の側部プレート22から延び出させてもう一方の側部プレート22で終わらせている。一実施形態ではその2つのコンプライアントプレート24は、コイル12に対して傾きをもつように角度付けされている。別の実施形態では、3つ以上のコンプライアントプレート24を存在させている。こうした構成では、軸方向EM力を受けたときに側部プレート22が平行に移動することが可能であり、かつコンプライアントプレート24が半径方向に曲がることが可能である。さらにコンプライアントブロック16の様々なパラメータを調整し、超伝導マグネット10の動作時におけるコンプライアントブロック16の半径方向変位をコイル12の半径方向伸長に整合させることが可能である。
【0018】
超伝導マグネット10を付勢させたときに、コイル12は軸方向と半径方向の両方のEM力を発生させる。半径方向EM力はコイル12のフープ応力によって支持され、これにより半径方向の伸長が生じる。軸方向EM力はコンプライアントブロック16を圧縮し、これがコンプライアントプレート24を曲げると共にコイル端部位置の側部プレート22の半径方向変位を生じさせる。この半径方向変位はコイルの半径方向伸長と整合しているため側部プレート22とコイル12の間の界面に摩擦性の動きが全く存在せず、これによりマグネットの安定性が向上する。
【0019】
一実施形態ではコンプライアントパッド18はさらに、コイル12の半径方向伸長とコンプライアントブロック16の半径方向変位の間のあらゆる残留差に対応するために使用される。一例として、コンプライアントパッド18の材料は皮革など極低温においてコンプライアントなものであるが、同等の別の材料も本発明の趣旨の域内にある。
【0020】
図3は、本発明の別の実施形態による超伝導マグネット28の一部分を表している。超伝導マグネット28は、少なくとも1つのコイル30と、該コイル30を軸方向で支持するための少なくとも1つの支持部材32と、を含む。一実施形態ではそのコイル30は、図1に示したコイル12と同様に円筒状である。
【0021】
この例の支持部材32はさらに、図1に示した支持部材14と同様に円筒状断面を有する。支持部材32は支持部分34を有しており、またこの支持部分34及びクランプ部分38で接続させたコンプライアント部分36と呼ぶ一体型の界面部分を存在させている。コンプライアント部分36は支持部分34と比べて厚さをより小さくし、これによりコンプライアント部分36は半径方向でコンプライアントとなる。クランプ部分38は、コンプライアント部分36の先端上に形成させると共に、コンプライアント部分36がコイル30と一緒に移動できるようにコイル30のエッジ部分に付着または結合させている。
【0022】
図3に示すようにクランプ部分38は、コイル30のOD表面40を部分的に覆うのみならず、コイル30の端部表面42の一部分を部分的に覆うような突設したリップも有する。一例ではそのコンプライアント部分36は、コイル30に対するコンプライアント部分36の係合を容易にするためのノッチを有する。超伝導マグネット28を付勢させたときに、コンプライアント部分36は軸方向EM力を受けて半径方向に曲がり半径方向変位を生成する。
【0023】
厚さ、材料及び長さなどのコンプライアント部分36の様々なパラメータを調整することによって、コンプライアント部分36はコイル30の軸方向EM力を支持するだけの十分な圧縮強さを有すると共に、超伝導マグネット28の動作中に半径方向変位をコイル30の半径方向伸長と整合させ得るように半径方向の屈曲に関して十分にコンプライアントである。コイル30と支持部材32の間には摩擦性の動きが全く存在せず、これによりマグネット安定性が向上する。
【0024】
一実施形態ではそのコンプライアント部分36は、図3に示すように支持部分34と一体型である。別の実施形態ではそのコンプライアント部分36は、様々な手段により支持部分34に付着させた単一部材となるように構成されている。この単一部材の設計及び計算はコンプライアント部分36と同様である。
【0025】
図4は、本発明のさらに別の実施形態による超伝導マグネット44の一部分を表している。超伝導マグネット44は、少なくとも1つのコイル46と、該コイル46と支持部材48の間のコンプライアント界面によってコイル46を軸方向で支持するための少なくとも1つの支持部材48と、を含む。このコンプライアント界面はコイル46に結合させ、これによりこれらが一緒に移動できるようにしている。
【0026】
一実施形態ではそのコイル46及び支持部材48を図1に示したコイル12及び支持部材14と同様に円筒状としている。この例のコンプライアント界面は、支持部材48の一方の端部表面に環状に配置させかつ互いから等しく離間させた複数のブラケット50を備える。一例として半径が約0.5mの超伝導マグネットでは、こうしたブラケット50を16個存在させている。ブラケット50の数は、超伝導マグネット44のサイズ及び支持しようとするEM力の大きさに従って調整することが可能である。一実施形態ではそのブラケット50は、アルミニウム、真鍮、ステンレス鋼などの金属から製作される。この例のコンプライアント界面はさらに、その各々が対応するブラケット50とコイル46によって挟まれた複数のコンプライアントパッド52を備える。一実施形態ではそのコンプライアントパッド52は皮革から製作される。
【0027】
図4を参照すると一実施形態ではそのブラケット50は概ねT字形であると共に、その各々がコンプライアントパッド52及び支持部材48により挟まれた半径方向部分54と、コイルOD表面58と支持部材OD表面60の両方を部分的に覆うように半径方向部分54の上側端部から延び出た軸方向部分56と、を含む。図4に示した実施形態では、ボンディング剤などの様々な付着手段を介して軸方向部分56をコイルOD表面58に付着させることによって、ブラケット50はコイル46と一緒に移動している。
【0028】
別の実施形態ではその軸方向部分56は支持部材OD表面60のいずれの部分も覆うことがないように構成されている。さらに別の実施形態では軸方向部分56を利用していない。ブラケット50は、ボンディング剤や適当な別の付着手段を介してコンプライアントパッド52及びコイル46の端部表面に対して半径方向部分54を付着させることによってコイル46と一緒に移動させている。
【0029】
ブラケット50は支持部材48に押し当てて摺動することが可能であり、またこれらの間の摺動表面の少なくとも一方(参照番号を付与せず)は平滑となるように構成されている。「平滑(smooth)」という用語は、摺動表面の摩擦係数が概ね0.1未満であることを意味する。超伝導マグネット44を付勢させたとき、コイル46は半径方向の動きを伴うことがあり、これによりブラケット50と支持部材48の間に摺動性の移動を生じる。摺動表面が平滑であるため、摺動性の移動の間に発生する熱の量は僅かである。熱外乱からコイル46を保護するために、液体ヘリウムなどの冷媒を用いてコイル46に熱が伝達される前に界面を冷却することが可能である。一実施形態ではその半径方向部分54は複数の穴53を有しており、この穴53の内部の液体ヘリウムなどの冷媒によって熱外乱が軽減される。
【0030】
図5は、さらに別の実施形態による超伝導マグネット62の一部分を表している。超伝導マグネット62は超伝導マグネット44と同様であるが、コンプライアント界面の構成は異なっている。図5の実施形態ではその界面は、コイル46の端部表面上に環状分布を有する複数の摺動ブロック64を備える。一実施形態ではその摺動ブロック64は、アルミニウム、真鍮、ステンレス鋼などの金属から製作される。
【0031】
各摺動ブロック64は第1の部分66と第2の部分68を有する。第1の部分66及び第2の部分68は互いに押し当てられて摺動すると共に、これらの間に摺動表面を含んでいる。一実施形態ではその摺動表面のうちの一方が平滑である。別の実施形態では摺動表面はすべて平滑である。この例では、第1の部分66は支持部材48に付着させており、また第2の部分68はコンプライアントパッド52及びコイル46に付着させている。
【0032】
第1の部分66はくさび溝70及びカンチレバービーム74を有する。くさび溝70は第2の部分68のくさび部分72を収容するために使用される。超伝導マグネット62を付勢させたときに、第2の部分68は軸方向EM力を受けて押されてくさび溝70内で摺動性の移動が生成される。同時に、軸方向EM力を均衡させると共に半径方向変位を有するようにカンチレバービーム74を反らさせるような反作用力が生成される。この半径方向変位は、厚さ、材料、長さなどカンチレバービーム74の様々なパラメータを調整することによって半径方向EM力下におけるコイル46の半径方向伸長と整合させている。この例ではコイル46と第2の部分68の間に摩擦性の動きが全く存在しない。
【0033】
第1の部分66と第2の部分68の間の摺動表面は平滑であるため、摺動性の移動の間に発生する熱の量は僅かである。さらにこの僅かな熱もコイル46に届く前に液体ヘリウムなどの冷媒によって冷却させることがある。一実施形態ではその第2の部分68は、冷却のための液体ヘリウムなどの冷媒を保持するために複数の穴76を有する。
【0034】
図6は、さらに別の実施形態による超伝導マグネット78の一部分を表している。超伝導マグネット78は、少なくとも1つのコイル80と、該コイル80を軸方向で支持する少なくとも1つの支持部材82と、これら支持部材82とコイル80の間にあるくさびリング84と、くさびリング84とコイル80の間にあるコンプライアントリング86と、を含む。一実施形態ではそのくさびリング84は、アルミニウム、真鍮、ステンレス鋼などの金属から製作される。別の実施形態ではそのくさびリング84は複合材料から製作される。
【0035】
くさびリング84はコンプライアントリング86及びコイル80に付着させる一方、くさびリング84と支持部材82は互いに押し当てられて摺動することが可能である。軸方向EM力を受けてくさびリング84は、半径方向変位を生成するような支持部材82の勾配表面に沿った摺動性の移動を有する。くさびリング84は、超伝導マグネット78の動作時にくさびリング84とコイル80の間に摩擦性の動きが全く生じないように半径方向変位がコイル80の半径方向伸長と整合できるように構成されている。コンプライアントリング86は、くさびリング84の半径方向変位とコイル80の半径方向伸長の間の任意の小さな差に対応するために利用される。したがって超伝導マグネット78の動作時に、くさびリング84とコンプライアントリング86の間並びにコンプライアントリング86とコイル80の間に全くクラックを生じることがない。
【0036】
この例のくさびリング84は摺動表面を有しており、支持部材82の摺動表面と勾配表面の少なくとも一方が平滑であるように構成されており、したがって摺動性の移動の間に発生する熱を僅かな量とすることができる。液体ヘリウムなどの冷媒を用いて超伝導マグネット78を冷却し熱がコイル80に到達する前にこれを除去し、これによりマグネット安定性を向上させることが可能である。一実施形態ではそのくさびリング84は、冷却を強化するために冷媒を保持するための複数の穴90を有する。この例ではくさびリング84及びコンプライアントリング86が、超伝導マグネット78全体の周りで円周方向に延びている。一実施形態ではくさびリング84が、摺動ブロック64の分布(図5参照)と同様にコイル80の端部表面上に環状に分布させた分離したくさびセクションに置き換えられている。コンプライアントリング86はしたがって複数のコンプライアントパッドに置き換えられる。
【0037】
図7は、本発明のさらに別の実施形態による超伝導マグネット92を表している。超伝導マグネット92は、軸方向に沿った分離された箇所にある複数のコイル94と、該コイル94を適所に保持するための支持部材96と、を含む。支持部材96は、複数の支持リング98及び複数の支持バー100を有する。一実施形態ではそのコイル94及び支持リング98は円筒状である。
【0038】
支持リング98は一例として、対応するコイル94のOD表面(参照番号を付与せず)に対してボンディングされるか、さもなければ確保されている。一実施形態ではその支持リング98はガラス繊維または炭素繊維複合材料から製作されている。別の実施形態ではその支持リング98は、エポキシ樹脂などの接着剤によりコイル94のOD表面の周りに巻き付けかつこれに対して確保している金属ワイヤである。さらに別の実施形態ではその金属ワイヤは、アルミニウム、真鍮またはステンレス鋼である。
【0039】
図7及び8を参照すると、支持バー100は一例として空間的に互いに平行であると共に、支持リング98のOD表面(参照番号を付与せず)に沿って環状に分布させている。各支持バー100は、軸方向で支持リング98を部分的に収容しかつ位置決めするために複数の溝102を有する。一実施形態ではその支持リング98は、エポキシ樹脂や適当な別の確保手段によって溝102内に保持される。追加の例として溝102の深さは、コイル94の側面が支持バー100の影響を受けないように支持リング98の厚さと比べて若干小さくなるように構成されている。一実施形態ではその支持バー100は、ステンレス、真鍮、アルミニウムなどの複合材料や金属から製作される。
【0040】
超伝導マグネット92を付勢させたとき、支持リング98とコイル94の両者がコイル94上に生じる半径方向EM力を支持する一方、コイル94内に生じる軸方向EM力は支持リング98にまたさらには支持バー100に伝えられる。支持バー100の半径方向の屈曲によって、コイル94同士の間にある半径方向伸長の差に対処している。したがって、支持バー100とコイル94の間に支持リング98を用いることによって動作時における摩擦性の動きの発生が全くなくなり、これにより超伝導マグネット92のマグネット安定性が向上する。
【0041】
実施形態について記載する際に便宜上、超伝導マグネットの別の部品や構成要素について開示していないが、こうした記述は超伝導マグネットを記載した部品のみに制限したものではないことを理解されたい。追加の例として超伝導マグネットは、実際の用途に応じて冷却用パイプラインや同様の別の冷却機構を含むことがある。
【0042】
本発明のある種の特徴についてのみ本明細書において図示し説明してきたが、当業者によって多くの修正や変更がなされるであろう。したがって添付の特許請求の範囲が、本発明の真の精神の範囲に属するこうした修正や変更のすべてを包含させるように意図したものであることを理解されたい。
【符号の説明】
【0043】
10 超伝導マグネット
12 コイル
14 支持部材
16 コンプライアントブロック
17 コンプライアント界面
18 コンプライアントパッド
20 端部表面
21 端部表面
22 側部プレート
24 コンプライアントプレート
26 閉鎖部分
28 超伝導マグネット
30 コイル
32 支持部材
34 支持部分
36 コンプライアント部分
38 クランプ部分
40 OD表面
42 端部表面
44 超伝導マグネット
46 コイル
48 支持部材
50 ブラケット
52 コンプライアントパッド
53 穴
54 半径方向部分
56 軸方向部分
60 OD表面
62 超伝導マグネット
64 摺動ブロック
66 第1の部分
68 第2の部分
70 くさび溝
72 くさび部分
74 カンチレバービーム
76 穴
78 超伝導マグネット
80 コイル
82 支持部材
84 くさびリング
86 コンプライアントリング
90 穴
92 超伝導マグネット
94 コイル
96 支持部材
98 支持リング
100 支持バー
102 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半径方向を規定している少なくとも1つの超伝導コイルと、
超伝導コイルに結合されると共に半径方向と実質的に直交した軸方向に沿って超伝導コイルを支持している少なくとも1つの支持部材と、
超伝導コイルと支持部材の間に配置された少なくとも1つのコンプライアント界面であって、超伝導マグネットが付勢されたときの半径方向の動きに対応しているコンプライアント界面と、
を備える超伝導マグネット。
【請求項2】
前記コンプライアント界面は超伝導コイルに結合されると共に支持部材に押し当てて摺動しており、かつ該コンプライアント界面及び支持部材は共にこれらの間にある摺動表面を備えると共に該摺動表面の少なくとも一方は平滑である、請求項1に記載の超伝導マグネット。
【請求項3】
前記コンプライアント界面は超伝導コイルに結合されていると共に、超伝導コイルの端部表面に沿った環状分布を有する複数のブラケットを備える、請求項1または2に記載の超伝導マグネット。
【請求項4】
前記コンプライアント界面は、その各々が支持部材に付着させた第1の部分と超伝導コイルに付着させた第2の部分とを備えた複数の摺動ブロックを備える、請求項1に記載の超伝導マグネット。
【請求項5】
前記第1の部分は溝を備えかつ前記第2の部分は該溝内を摺動すると共に、前記摺動ブロックの各々は第1の部分と第2の部分の間に2つの平滑な摺動表面を備えている、請求項4に記載の超伝導マグネット。
【請求項6】
前記コンプライアント界面は平滑な勾配表面を有するくさびリングを備えると共に、前記支持部材は該くさびリングの平滑勾配表面に押し当てて摺動するための別の平滑勾配表面を備える、請求項1に記載の超伝導マグネット。
【請求項7】
前記コンプライアント界面は半径方向にコンプライアントである、請求項1に記載の超伝導マグネット。
【請求項8】
前記コンプライアント界面は、超伝導コイル及び支持部材の2つの相対する端部表面に押し当てて隣接させた2つの側部プレートと、互いから離間させると共に該2つの側部プレートを接続している2つ以上のコンプライアントプレートと、をその各々が備えた複数のコンプライアントブロックを備える、請求項7に記載の超伝導マグネット。
【請求項9】
前記コンプライアントプレートは、超伝導マグネットの動作時における超伝導コイルの半径方向伸長と整合した半径方向変位を有するように構成されている、請求項8に記載の超伝導マグネット。
【請求項10】
前記コンプライアント界面と超伝導コイルの間に皮革層をさらに備える請求項1に記載の超伝導マグネット。
【請求項11】
前記コンプライアント界面は支持部材と一体である、請求項1に記載の超伝導マグネット。
【請求項12】
前記コンプライアント界面は対応する超伝導コイルの外径表面に付着させた複数の支持リングを備えると共に、前記支持部材は該支持リングの外径表面に付着されることにより超伝導コイルに結合された複数の支持バーを備える、請求項1に記載の超伝導マグネット。
【請求項13】
各支持バーは支持リングを保持するために複数の溝を備えており、かつ該溝の深さは支持リングの厚さ未満である、請求項12に記載の超伝導マグネット。
【請求項14】
前記支持バーは、支持リングの外径表面に沿って環状に分布させかつ互いから離間させている、請求項12に記載の超伝導マグネット。
【請求項15】
前記コンプライアント界面は金属またはガラス繊維から製作されており、かつ前記支持部材は金属または複合材料から製作されている、請求項1に記載の超伝導マグネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−171731(P2011−171731A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−23628(P2011−23628)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】