説明

改良型ラウドスピーカー

【課題】可聴周波数の再生を改善する。特に、ラウドスピーカーに関し、とりわけ非常に低い、低い、中間の、及び高い周波数に対する音の再生を改善する方法、及びエンクロージャの相対的な寸法を減少させる方法を提供する。
【解決手段】埋込み型音声向上モジュールを備えるスピーカーであって、該スピーカーはマグネット、該マグネット中に位置するポールピース、該ポールピースを取り囲むスリーブ、該マグネットと該ポールピースの間のスリーブ周囲に巻きつけられた導線コイル、該スリーブの周囲に取り付けられたダストキャップ又はダイアフラム、該ダストキャップ周囲のスピーカーコーン、及び密閉型チャンバーを備える。該密閉型チャンバーは、チャンバーの内部体積領域に連通するための開口部、及び該内部体積領域の一部内に配される密度交番性伝送媒体(ADTM)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2009年11月9日に出願された米国特許出願番号12/614,651号の優先権を主張するものであり、この文献は本明細書で参照することにより組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
典型的なラウドスピーカーは、一定の深さ、直径、及び、形状のダイアフラムに取り付けられた電気式の音声コイルである。エレクトロダイナミック式とは、付近の空気分子を刺激するために交流電圧源に反応して前後に動くトランスデューサを表現するものである。ラウドスピーカーのこのようなタイプのなかには、商品としてみなされ、安価なものもある。これらは既存製品又は構造の一部としてバッフル上に取り付けられる。実際の容器のための筺体形状、又は、幾つかの場合において、特殊なエンクロージャが低音域の音質を向上させるために用いられる。
【0003】
このようなタイプのラウドスピーカーに伴う1つの問題は、ドライバが、そのサイズに依存する狭い周波数帯域にのみにわたる望ましい音響インピーダンスを有するということである。小型のドライバは、通常、低周波には好ましくない音響インピーダンスを有し、大型のドライバに関しては逆もまた然りである。エンクロージャは同様に、狭い周波数帯域に有利に働き、他の周波数に関しては、エンクロージャは激しく反応して、非対称の振動パターンでダイアフラムを調節するインコヒーレントな内部定常波を生成する。このようなランダムな内部変調がドライバの自然分散パターンを阻害し、増幅源に電気フィードバック(リアクタンス)を生じさせる。そのなかでも、力に依存する方法や強力なゲージワイヤリングが、アンプの問題とその音質への作用とを最小化するために、現在試みられている。
【0004】
別の問題は、ドライバのダイアフラムのいずれかの側に存在する一般的な音響インピーダンスの差である。エンクロージャが、その周波数範囲のほとんどで、ドライバの音響インピーダンスを絶えず修正する定常波を形成するなか、ダイアフラムは、2つの異なる音響環境で同時に動作しなければならない。室内から反響した周波は、ドライバの音響インピーダンスの更なる変更を生じさせる。これは、周波数が室内の広さの音響インピーダンスに応じて低くなるためである。小型のエンクロージャでは、内部で反響する周波数がさらに高く、低周波能力が欠けているため、この問題は悪化しかねない。
【0005】
2つの同一のドライバは、それらの動作するエンクロージャゆえに異なるように聞こえる。中音域のスピーカーを用いる1つの解決法は、ダイアフラムの後ろに堅固なバスケットを有するユニットを作ることである。これによって、ランダムな定常波の他のドライバへの干渉を防ぐことが可能になるが、中音域のドライバによって生成される周波数帯域に対する過剰な背圧を形成することになる。これにより、ドライバがその動作範囲を通して特徴的な音響インピーダンスの差を見出し、それによってドライバが自然音を生成するのを防ぐ。
【0006】
ラウドスピーカーのドライバの寸法は、広範な軸の聴取が好ましい場合にすべての周波数に対する単一サイズを形成するのが困難な特定の周波数帯域に有利に働く。全周波数帯域の音波表現、低度の歪み、一定の広拡散性(wide-constant dispersion)を保ちながら、適切な音の大きさを維持する一方で、最小限のコストで必要な最小寸法のラウドスピーカーを製造することが設計目標である。解決法は、共通の音響目的のために動作する多数のドライバを用いることである。このことは、主観的に受け入れられるラウドスピーカーを製造しようとする目的で、現在のラウドスピーカー設計に反映されている。
【0007】
単一のドライバが用いられる際には、低及び高周波数帯域で音響出力を維持しようとする一方で、周波数帯域(音声)に有利に働くように設計されるのが一般的である。ラウドスピーカーに関して、小型又は大型のドライバが、低音域と高音域を拡大するために一般的に加えられる。イヤホン又はヘッドホンに関して、高い周波数は設計によって得られる一方で、低音域の周波数は、鼓膜に対して近い(及び、塞いだ)位置で一般的に増加する。
【0008】
人間の耳は中音域の周波数により敏感になりがちだが、人間の耳と脳との組み合わせは、位相又は周波数の異常(aberrations)のない、スペクトル中の周波数のすべてを聞き取る傾向にある。この位相又は周波数の異常は、事象のエネルギの流れを遮断するものであり、さもなければ、音は人工的に聞こえることになる。音の再生は、一般的には、2つの目的のいずれかのためであり、この目的とはコミュニケーション目的とエンターテインメント目的である。後者は、重荷を取り除いた音波のバランスと分散が聴取環境におけるエネルギの平衡をとる必要がある。
【0009】
予測可能な結果フィールドを用いて音の再生を完全なものにしようとする継続的な努力は、エンクロージャのジレンマを解決する解決法に大きく依存している。エンジニアたちは、ドライバのエンクロージャを設計上の挑戦と認識している。審査中の出願において説明された装置を用いることで音質を改善することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本装置の出願は、可聴周波数の再生を改善する。特に、提案される本発明はラウドスピーカーに関し、とりわけ、非常に低い、低い、中間の、及び、高い周波数に対する音の再生を改善する方法、エンクロージャの相対的な寸法を減少させる方法、一貫した結果のための特定の物理的位置の音響への依存度を減らすとともにコストを削減する方法に関する。
【0011】
1つの一般的な態様において、音声向上モジュールは一連の壁部を備え、この壁部は、密閉型チャンバと、該密閉型チャンバと外部空間との間を移動する可聴波の経路を提供するための壁部の1つにおける開口部と、及び、密閉型チャンバ内に配された密度交番性伝送媒体(Alternate Density Transmission Medium)とを定義する。
【0012】
実施形態は、以下の特性の1以上を備えることができる。例えば、ディスクは、開口部の近くに配されてもよい。ディスクは金属製であってもよく、開口部に対して同軸に配される円形の穴部を有してもよい。棚部が開口部を囲んでもよく、ディスクは、ディスクの外面がモジュール壁部の1つの外面と同一平面となって棚部のなかに配されることが可能である。
【0013】
モジュール壁部は、長方形の箱として構成される6つの壁部を備える。壁部は、合成した木質材料から作られてもよい。
【0014】
別の特性として、密閉型チャンバが円筒形状を有することができる。チャンバの密度交番性伝送媒体は、連続気泡発泡体(open cell foam)であってもよい。
【0015】
さらに別の一般的な態様において、音声向上モジュールは複数の壁部を備え、この壁部は、密閉型チャンバと、該密閉型チャンバと外部空間との間を移動する可聴波の経路を提供するための壁部の1つにおける開口部と、該開口部を囲む棚部と、その円形穴部が開口部に対して同軸上に配されるディスクと、及び、密閉型チャンバ内に配された密度交番性伝送媒体とを定義する。
【0016】
実施形態は、上記の、又は、以下の特性の1以上を備える。例えば、モジュールは、前壁部と後壁部を有することができる。前壁部は、棚部と、開口部と、及び、密閉型チャンバとを備え、後壁部は、前壁部に取り付ける長方形パネルである。別の実施形態において、密閉型チャンバ、棚部、及び、開口部は、前壁部内の第1、第2、及び、第3の円形穴部である。
【0017】
さらに別の実施形態において、上記の特性を有する音声向上モジュールを用いてスピーカーシステムからの音質を改善する方法は、音声向上モジュールを用いてスピーカーシステムを改良する工程を備える。
【0018】
実施形態は、以下の動作の1以上を備えることができる。例えば、改良は、キャビネットの壁部を除去すること、スピーカーキャビネットの内部に音声向上モジュールを固定すること、及び、スピーカーキャビネットの壁部を再度取り付けることを含んでもよい。開口部の中心は、スピーカーキャビネット内のスピーカーの中心軸に沿って配される。別の例として、音声向上モジュールは、スピーカーキャビネットの前壁部に取り付けられたスピーカーの後方に配されてもよい。さらなる特性として、音声向上モジュールは、スピーカーキャビネットの後壁部に固定されてもよい。
【0019】
別の一般的な態様において、埋め込み型音声向上モジュールを有するスピーカーは、マグネット、マグネット内部に配されたポールピース、ポールピースを囲むスリーブ、マグネットとポールピースとの間のスリーブ周囲で巻かれた導線コイル、スリーブの外周に取り付けられたダストキャップ又はダイアフラム、ダストキャップを囲むスピーカーコーン、及び、チャンバの内部体積と該内部体積の一部内部に配された密度交番性伝送媒体(ADTM)とに連通する開口部を有する密閉型チャンバを備える。
【0020】
実施形態は、以下の特性の1以上を備える。例えば、チャンバは、ダストキャップにもっとも近いポールピースの第1端部に、又は、ダストキャップにより遠位のポールピースの第2端部に配されることもある。
【0021】
チャンバがダストキャップに近接していない場合、通風路(air passage)は、チャンバの内部体積領域をダストキャップ後方の体積領域に接続させる。通風路はポールピースを通る通路である。
【0022】
チャンバは、マグネット、又は、ポールピース内部の空洞として構成されてもよい。開口部は、マグネットの表面、又は、ポールピースの表面の開口部であってもよい。
【0023】
チャンバは、第1の内部表面を備えることができ、密度交番性伝送媒体はその第1の内部表面に取り付け可能である。第1の内部表面の表面積(X)は、X=√Aであり、式中、Aは、スピーカーコーン面積を備える。別の実施形態において、第1の内部表面の表面積(X)は、X=√0.7AからX=√1.2Aの幅を含む。
【0024】
開口部の大きさ(Φ)は、r/πであり、式中、rは、スピーカーコーンの半径(r)を備える。
【0025】
チャンバは、第1の内部表面と第2の内部表面とを含み、密度交番性伝送媒体は、第1の内部表面に取り付け可能である。第1の内部表面と第2の内部表面との間の距離は、密度交番性伝送媒体の厚み(t)と空隙(T)の長さとを備える。密度交番性伝送媒体の厚みは、t=√rであり、式中、rは、スピーカーコーンの半径を備え、空隙の長さは、T=√Φであり、Φは、スピーカーコーンの直径を備える。
【0026】
密度交番性伝送媒体は、圧縮性の発泡体材料、又は、独立気泡発泡体(a closed cell foam)であってもよい。
【0027】
特定の実施形態において、チャンバは、ポールピース、マグネット、スピーカーコーン、又は、ダストキャップの放射軸に沿って中心に置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1A】本発明の実施形態の1つによる、スピーカーエンクロージャの垂直及び正面断面図である。
【図1B】本発明の実施形態の1つによる、スピーカーエンクロージャの垂直及び正面断面図である。
【図2】従来のスピーカーエンクロージャの断面図である。
【図3】本発明の実施形態の1つによる、スピーカーエンクロージャの断面図である。
【図4A】反射ポートが加えられたスピーカーエンクロージャの正面及び垂直断面図である。
【図4B】反射ポートが加えられたスピーカーエンクロージャの正面及び垂直断面図である。
【図5】本発明の実施形態の1つによる、直結(DC)埋め込み型音響伝送ライン(EATL)の断面図である。
【図6】減衰していない標準的なバスレフレックス型エンクロージャと物理的に組み合わせたDC EATLの断面図である。
【図7】平面スピーカーを用いるEATL技術の特性を強調した図である。
【図8A】多方向周波数が分割されたIDC EATL方式を示す。
【図8B】単一幅でSPLを増加させるためのDRE又はIRE EATLエンクロージャのクラスタである。
【図9】ホーン連結装置を用いるEATL技術の使用に関して記載している。
【図10】図1のスピーカーシステムの垂直断面図であり、ポートは、ドライバを用いてバッフルボード上に取り付けられたパッシブラジエータに置き換えられた。
【図11】図1のシステムの動作のバンドパスモードを図示し、音を放射させるためにポートを用いるドライバの前部に結合した音響ローパスフィルタを示している。
【図12A】音声向上モジュールの垂直断面図及び正面図である。
【図12B】音声向上モジュールの垂直断面図及び正面図である。
【図13】コイルダイアフラムチャンバに配された音声向上モジュールを示す。
【図14】ポールピースの後方に配されたETLモジュール(1402)を示す。
【図15】ポールピースに取り付けられたETLモジュールを示す。
【図16】2つのETLモジュールを有するスピーカーを示す。
【図17】2つのETLモジュールを有するスピーカーを示す。
【図18】ETLモジュールを有するマイクロフォンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本書類にわたって、特定の項目、数字、名称、言い回し、及び、重要な単語に参照を付す。これらの項目は、まず太い大文字で頭文字が表記され、その後、以下の内容で名称を表す太字で省略される。大文字で太い頭文字、及び、省略は、記憶を呼び起こすために同時に現れる。本明細書において重要性を有するものの本明細書の特徴に直接的には関連しない特定の用語は、この形態においては、強調されたり、下線を引かれたりはしない。
【0030】
図1は、本発明の実施形態を示す。図1A及び図1Bは、本発明により構築された、完全なダイレクト・ラジエータ・エンクロージャ(Direct Radiator Enclosure)(DRE)(29D)スピーカーを示す。流体力学に関するベルヌーイの定理は、流体が容器から排出口を通って容器の圧力と同じ圧力領域に流れるためには、圧力差が存在しなければならないということを明白に明示している。このことは、高品質の音(流体)がラウドスピーカーによって生じる場合、そのダイアフラムの圧力と大気圧との間の圧力差が存在しなければならず、その圧力差は、すべての周波数と音響条件に関して一定でなければならないことを示す。本発明にかかる全てのドライバは双方向性であり、このことはドライバがダイアフラムの両側から音を放射するということを意味する。ドライバダイアフラム(Driver Diaphragm)(DD3)の一方の側は、内部又は外部からの反射に関係なく、全ての周波数の範囲内で、全ての周波数の大気圧から動的に分離しなければならない。動的分離とは、動作中に大気圧の影響を受けないことを言い、静的な状態のことをいうのではない。
【0031】
図1Aは、DRE(29)エンクロージャの垂直断面図を示す。DRE(29)エンクロージャは、間接連結(IDC)された埋込み型音響伝送ライン(EATL(5))を備える。IDC EATLは、スロート部/マウス部(6)を介して空気圧を受ける。スロート部/マウス部(6)は、ドライバ(41)の後方に取り付けられる。ドライバ(41)は、バッフルボード(7)上に取り付けられるとともに、図1Aの空気チャンバ(10)により衝撃を緩和される。EATL(5)は、従来型の伝送ラインとは異なり、同じ位置にスロート部およびマウス部を重ね合わせた構造を有する。IDC(間接連結)とは、EATL(5)に入る音波が相対的な体積の空気チャンバ(10)を介してEATL(5)に入り、この音波がDD(3)に対して間接的な影響を与えることを意味する。EATL(5)は、外部キャビネット(1)の導波路(20)と、スペーサ(9)によって離間された内部エンクロージャ(2)の導波路(21)で構成される。EATL(5)は、キャビネット壁部の導波路(21)を用いて延長できる。この側部の内部キャビネット壁部の導波路(21)は、導波路(20)の延長部と接続した内部ボックス構造に元々備えられている。EATL(5)が有するこれら拡張部(20A)及び(21A)は、EATL(5)が導波路(20)及び(21)のみを備える場合と比較して、EATL(5)がより低い周波数に対しても作動することを可能とする。しかし、拡張部(20A)及び(21A)は通常、ドライバ(41)のサイズに応じて定められる。
【0032】
EATL(5)は末端部材(13)により閉塞されており、この末端部材(13)は、EATL(5)の1つの端部において音波を受け止め、この音波を反対方向に向け、図1Bに記載の中心部(各角部から)に配されたスロート部/マウス部(6)において動的定常波(DSW Dynamic Standing Wave)を発生させる。スロート部/マウス部(6)という用語は、反射される音波の出口と入口が同じ位置に存在することに由来する。入射する音波と出射する音波が互いに重畳することにより、本発明独特の圧力フィードバック原理が可能となる。EATL(5)内の空気の体積は、図1の空気チャンバ(10)(図6においては符号(19)により表される)において機能している空気の体積と比べて常に小さく、閉塞型バンド・パス・ボックス(closed band-pass box)とは区別されるべきものである。EATL(5)全体の容積は、小型構造化技術を用いてさらに小さくすることによって、リア・ウェーブ(rear wave)が集められて有用な定常波に戻されるOEMツイータ構造だけでなく、小さな空間でも小型ドライバの出力を向上させる。スペーシングの容積は、必要に応じて増減可能であり、20Aおよび21Aの長さが適切でない場合には、必要に応じてEATL(5)を複数回折り返してその長さを伸ばすことができる。
【0033】
EATL(5)は、密度交番性伝送媒体(ADTL)(4)で囲まれており、ADTL(4)は、この好適な実施形態において、連続気泡のウレタン発泡体である。このウレタン発泡体は、標準的な空気密度で高周波数下において不活性であり、ランダムに新しい空気分子を受け入れる。しかし、このウレタン発泡体は加圧されると、新たな空気分子がその気泡構造内部で容積上、拡張する。一方で、熱放散で増加分の体積は消失する。したがって、この不可逆的な過程は、DSWと、ドライバ振動最高値(DRP Driver Resonance Peak)の減衰とをもたらす。このことは、図10A及び図10Bに対照的に示されている。図10Aは、実施形態における曲線である。減衰(Damping)との語は、刺激を取り除いた場合に振動体が即座に運動を停止する能力を表す。
【0034】
EATL(5)のスロート部/マウス部(6)に入る比較的高周波の音波は、標準的な密度の空気中でその波長に達するためには、ドライバ・ダイアフラム(3)からわずか数インチの範囲に入る必要がある。図2に示すエンクロージャの奥行きは僅か数インチであり、このことは、周波数10kHz以下の音波はすべて、ほぼすぐにエンクロージャに反射されることを意味する。図2は、エンクロージャ内の空気の占有領域(11)を示す。このエンクロージャの外形寸法は図1のエンクロージャと等しいが、内部エンクロージャ(2)及びADTL(4)を備えていない。
【0035】
ストリームライン(15)のように移動するこの音波は、EATL(5)のマウス部(6)に入った後、EATL(5)を通ってADTM(4)の表面の気泡とわずかに相互作用する。この音波は末端部材(13)に至るまではほぼすぐに拡散する。末端部材(13)は、この音波を反射してドライバ・ダイアフラム(3)へ方向付ける。EATL(5)の入口部に位置するスロート部/マウス部(6)に(DSWの波の)節と波の腹が位置する。波の節と波の腹は重なり合って、ドライバ(41)後方のチャンバ(10)内の圧力に影響を与える。この圧力は大気に対して正圧であると考えられる。
【0036】
周波数が最初に影響を受けた周波数より下がると、EATL(5)はドライバ・ダイアフラム(3)に対して一定の正圧状態を保つようになる。これは空気スペース(8)のDSW状態と、ストリームライン(14)により示すような深度マイグレーションによって生じるDSW状態とにより可能となる。様々な波長/強度が、ADTM(4)の気泡構造のより深い領域を占有するにつれて、それぞれのDSWが生み出され、したがって、ドライバ・ダイアフラム(3)の動きが動的に改善される。こうして生み出されたそれぞれのDSWは圧力を集約し、複数の周波数が(重畳して)同時に存在するなかで、合成DSWを生み出す。
【0037】
導波路(20)と導波路(21)の間の間隔を小さく保つことにより、音波エネルギを保存して末端部材(13)へ方向付けることができる。実施例において、導波路(20)と導波路(21)の間隔と、延長部(20A)と延長部(21A)の間隔は、それぞれ、12mmと9mmとし、これらの間隔はドライバの直径およびシステムの用途に依存してある程度変化する。ドライバ(41)において、これらDSWは音響インピーダンスに影響を及ぼす。これは、大気圧との圧力差が周波数に応じて維持されるからである。DSWは、周波数と、ドライバの弾性(compliance)と、ADTM(4)の材料がその気泡に入る音エネルギに対して有する抵抗性とを変化させることにより生み出される。
【0038】
この3つの変数の相互作用の結果として、ドライバ速度が線形に保たれながら周波数が変化するにつれて、チャンバ(10)内の圧力が一定に保たれる。チャンバ(10)内の圧力は、音声コイル(28)信号インプットとDD(3)の初期動作により生じる合成DSWと、チャンバ(10)内の静的圧力と、及び、EATL(5)内で形成される正圧である。結果として得られる合成圧力は一定であるとともに、EATL(5)内の強度及び波長に比例し、DD(3)の動作を決定する。
【0039】
振動体は、同一の刺激を受けた場合、その周波数の上下への周波数の変動が少ないとき、共鳴による運動が最大となる。出力(動作)は、共振周波数を下回るときは弾性に起因して急速に減少し、一方で、共振周波数を上回るときは質量に起因して徐々に減少する。共振周波数を上回る状態での出力のロスは質量に直接関係している(高周波数において必要となるとき、DD(3)の加速度に影響を及ぼす)。EATL(5)内のDSWは周波数に直接関連するとともに、圧力を増加させてロスを補い、圧力を一定に保つ(動作中のDD(3))。EATL(5)のマウス部において内方へDSWが生み出されるとすぐに、DSWはEATL(5)のチャンバ(10)内の空気により緩和された正圧を生み出す。これは、それぞれの周波数が、大気圧に対して最大の信号伝達を維持できる合成波を必要とするからである。図2のエンクロージャ内に存在するランダム定常波は、DD(3)の様々な場所でランダムな圧力を生み出すことにより拡散パターンを乱して、騒音を発生させる。
【0040】
特定の製品のパラメータを決定するのは困難である。なぜなら、実際の使用場面でのエンクロージャの影響を予測できないためである。エンエンクロージャSWがDD(3)の放射パターンに作用することが許される場合には、任意の直径のドライバの振動特性と拡散を予測するために開発された仕様は有用ではない。このことを主な理由の一つとして、エンジニアたちは、さまざまな種類のサスペンジョン(27)とDD(3)材料を解決策として模索し、このような未知の原因によって生じるDD(3)の破損の防止を試みている。このような破損パターンはランダムな定常波により引き起こされる。これらDSWは、動的であるとともに、エンクロージャ(1)と関連しており、ソース及び信号を増幅する。ドライバの中性的な表出(neutral expression)が観察される場合は、ランダムな内部定常波は、既存のエンクロージャ設計における抵抗波ではなく有益な波に変換されなければならない。ランダムな内部定常波を排除し、有用な干渉性の内部定常波を生み出すことにより、ドライバ(41)が、材料、直径、及び、構築に関して明細書に記載の如く、動作することが可能になる。
【0041】
このようにして音響的に生み出された内部正圧は、さらなる結果としてダイアフラムの破損をさらに低減する。これは圧力がダイアフラムの全面に対して加わることにより、固体伝達破損モードの効果を低減することができるからである。これらの破損モードは、音声コイル(28)が刺激された際に引き起こされる。
【0042】
音声コイル(28)に対する最初の刺激は、DD(3)の動作、全ての部材の屈曲、及び、音響的な機械的エネルギの波としてのDD(3)の周縁部への物理的伝達を招く。DD(3)の外周部には、任意の種類の可撓性材料(27)が配される。可撓性材料(27)はダイアフラムを取囲んで固定する。これにより、音声コイル(28)により刺激を受けると、アセンブリの可動部分全体が動作することになる。
【0043】
このようなパスを伝わる波エネルギが、ダイアフラムの材料中で消費され、運動エネルギとして周辺部材料(27)に入ることが望ましい。実際、多くの場合にこのような現象が起こる。ダイアフラムと周辺部材料(27)は全ての周波数を吸収するわけではなく、波の一部は中心又は発生源点に向かって反射される。このとき波(干渉性の波と非干渉性の波)は、DD(3)の材料に物理的に衝突し、正の定常波と負の定常波の領域がDD(3)表面に存在することとなる。結果として拡散パターンが変化する。これらの種類のパターンは、設計段階において発見及び防止することができる。それによりドライバ(41)の性能が向上する。EATL(5)はこれらの種類の破損モードの発生率を最小化するが、完全に防止することはできない。
【0044】
図4は、図1又は図3のエンクロージャを表す。このエンクロージャは、低音域周波数を増強するためのポート(17)を備える。ポート(17)を付加しても、スロート部/マウス部(6)のDSW、及び、EATL(5)による高周波の加速の維持は影響を受けない。この実施形態におけるEATL(5)の主要な用途は、ドライバ(41)の共振周波数以上での信号ロスを生じさせる質量を相殺することである。EATL(5)はDD(3)を効果的にダンピングし、低周波数における安定性を向上させる。このことは図1のエンクロージャのインピーダンスを表す図12Bと、図2のエンクロージャのインピーダンスを表す図12Dに対照的に示される。これらのインピーダンスを表す曲線は、両方のエンクロージャにおいて、共振周波数がほぼ同一に保たれることを示す。しかしながら、図12B中のピークAがDD(3)の適切なダンピングを示す(つまり、ピーク率が制御されており、滑らかで幅広い低音応答及び特徴が実現している)。一方で、図12Dのインピーダンスを表す曲線は、ドライバ(41)が高く鋭い音響ピークCを有することを示す(鋭い音と鈍い音が交互に繰り返す共鳴音を示す)。
【0045】
この高減衰状態が、図4A及び4B記載の、低音の応答を拡張するために含まれるポート(17)を備える機器内で維持される。
【0046】
図10で示されるのは、ポートの代わりに適切なパッシブラジエータ(30)を用いる簡略図である。該ラジエーター(30)は、ドライバ(41)とともに機能し、より低い周波数へ低音を拡張する。パッシブラジエータ(30)を使用することで、音響システムの密閉状態が維持される。しかしながらすべての構造がこの種の共鳴システムから効果を得るわけではない。パッシブラジエータ(30)は一般的により多くの取り付け領域を必要とし、バッフルボード(7)のより利用可能な領域を備えるより大きなシステムに適する。パッシブラジエータ(30)を備える形態のEATL(5)は、適切に配置され図13Bと同じ曲線を有するならば、ポートを備えるシステムと同じ一般的な特性を維持する。
【0047】
DRE(29I)の他の配置は、図11で示されるように、ドライバ(41)の前面を音響ローパスフィルタへ接続する配置である。ポート(17)又はパッシブラジエータ(30)は、空気体(31)とともに音響ローパスフィルタとして作用する能力がある。ここでEATL(5)は、一定の圧力ローディング、圧力減衰、及び増強された上級の低音出力、及びコントロールを提供すると同時に、ポート(17)は、空気体積領域(31)にボックス・ローディング(box loading)を加え、DD(3)の優位を減少させる。これにより、空気チャンバ(11)の密閉とより良い減衰を可能にする。この形態のエンクロージャは、他のポートを有する形態のEATL(5)と同様に3つのインピーダンスのピークを有する。ポートを有するEATL(5)の他の形態としては、ポートをDRFの前方に有する形態と後方に有する形態が挙げられる。
【0048】
前述の実施例のように、パッシブラジエータ(30)は、追加エンクロージャ(32)の少なくとも1つの壁面に取り付けられたとき、ドライバ(41)の前方に存在する新しい空気体積領域(31)を共鳴するために存在し得る。IDC EATL(5)は、ほぼすべての従来型のドライバとローディング方法に対し、理想的なインピーダンス・マッチング・デバイスとして作用する。IDC EATL(5)は、2つの範囲の増加した圧力を生み出し、ドライバの共振周波数より高い及び低い周波数に有効である。共振周波数を上回る周波数は、フルレンジにおいて直接放射され得る。もしくは、DD(3)は音響ローパスフィルタに負荷されることで、低音域周波数の範囲に焦点を当てることができる。
【0049】
ドライバは、ドライバが再生に最も適する動作の最適な周波数範囲を有する。20Hzを超え20000Hzまで、特に高域出力レベルの範囲の1つのドライバ(41)にとって、完全な動作を得ることは、不可能ではないにしても非常に困難である。個々のEATL(5)最適化されたエンクロージャDRE(29)は、狭い音波領域に対して優位性を有することにより、ドライバの最適範囲における動作を補助する。
【0050】
このことは、個々に最適化されたEATL(5)エンクロージャを用いて各範囲で最適なドライバ(図8B、29H、29M、29VL)を使用し、音域を分割する目的とする。もしくはこのことは、同じ周波数領域で動作する複数のEATL(5)エンクロージャを用いて(図8A、29A、29B、29C、29D)、同じ領域において音域レベルを向上させる目的、又はその両方の目的を同時に達成するためのものである。この種の動作は、それぞれのドライバの後方に生じる正圧と、その結果他のダイアフラムが干渉しあうことによって生じる抵抗により改善される。
【0051】
従来のドライバの接近した間隔は、多くの予測できない影響を引き起こす。なぜなら個々の内部定常波のランダム性は拡散パターンをさらに変更するからである。EATL(5)のコヒーレント出力は、マルチウェイスピーカーにおいて集約し、一つのドライバから他のスムーザーへのクロスオーバーが生み出され、より多くのローブを自由にさせる。クラスターであろうとラインであろうと一団とされた強化ドライバからのコヒーレント出力は、それらの意図された理論に従って実行する。特別なハウジング(16)は、DRE(29)ユニットを用途に合わせて適切に調節するために使用され得る。
【0052】
EATL(5)はまた、静電的及び動的な平面型ダイアフラムなどを備える外部音響トランスデューサ(ドライバ)とともに使用され得る。典型的には、エンクロージャ又は接近した壁部の配置が繊細なダイアフラムの一側面への否定的な効果を有しているため、フラットパネル型ラウドスピーカーは、双方向に放射する。ランダムに反射された定常波は、これらのタイプを用いて重要な音響レベルを作り出すために必要とされる大きなダイアフラム表面積のせいで、さらにより大きな悪影響を与える。
【0053】
図7は、これらのフラットパネル型ラウドスピーカーとともにEATL(5)を使用するための重要な参照部分を示す簡略図である。EATL(5)は、ダイナミックドライバ(41)バージョンのみの大型パネルとして図示される同じ基本部分、及びEATL(5)構造に関連する特定の他のパラメータを調節する手段からなる。特定の外部ドライバが適任であり、EATL(5)のIDCからしか効果を得ることができず、これは平面スピーカーDD(3)の場合にも当てはまる。
【0054】
図9で図示されるのは、さらなる伝送効果のためのIDC EATL(5)と接続するホーン状装置の使用である。ホーン状装置は一般的に、他の音域に対してシャドウイング(shadowing)すると同時に、特定の区域において、レベル、距離、及び時々範囲を増大させるために使用される。ホーン状装置の自立型DD(3)へのホーン状装置の延長部の強い接続により、DD(3)中へ戻る集中した反射を生み出す。典型的には、ドライバ(41)と接続したホーン状装置は、慢性的に破損に苦しむ。なぜならこれらの反射特性は、音響的に増幅され、DD(3)は競争するその表面でのホーンベル型の反射に苦しむからである。
【0055】
フェーズプラグ(25)は、ダイアフラムの種類に応じて、圧力伝送を最大化するのに必要である。周囲の補助を受けてEATL(5)の正圧とともに動作するドライバ(41)は、これらの反射に影響されず、適切に設計されたホーン状装置の接続から多くのより明瞭な出力を生み出す。
【0056】
従来のラウドスピーカーは、低周波数を生み出すと同時にその過程において高い効果を達成するために、大きなダイアフラム面積及び/又は高質量を必要とする。低音の再生のための現在の過程は、本質的に効率的である。なぜなら、それらはドライバの共振周波数において及びその近傍で動作するが、これはまた音質にとって弱点であるからである。共鳴というパラメータはあらゆるスピーカーシステムの実行に関連するが、完成した音響システムの第1の敵である。DC EATL(5)動作モードは、非常に小さなドライバが低い低音域周波数を生み出し、影響を低く抑えることを可能にする。3インチドライバが有用なレベルで非常に低い周波数を生み出す能力があるときは、影響(efficiency)はその性能を特徴付けるのには適切な用語ではない。
【0057】
図5は、非常に低い周波数だけを生成する目的で、ダイナミックドライバ(41)と併用したEATL(5)の応用を示し、直接連結型(DC:Direct Coupled)EATL(5)と呼ばれる。EATL構造は、ドライバの直径と等しいより大きなスロート/マウス部(6)を除くIDC、及びドライバ(41)の正面すぐに位置する圧縮プラグ(12)と非常に相似している。EATL(5)は、ドライバ(41)へ直接結合(DC)であり、該ドライバ(41)は、ドライバとEATL(5)のスロート/マウス部(6)との間のチャンバ(10)の最小領域空気容積を備える。ドライバは、ドライバローディングのための高圧力チャンバ(10)を作るために、EATL(5)マウス部(6)に面する前面に取り付けられる。このモードにおいてドライバ(41)は、圧力が負荷され、圧力プラグ(12)は、EATL(5)中への音波の動きを方向付ける助けをし、及びEATL(5)のスロート/マウス部(6)での乱流を最小化するため、及びEATL(5)のための正しいスロート/マウス部(6)領域を確立するために、使用される。
【0058】
DC結合は、完全なEATL(5)の影響下でドライバ(41)を配置することになり、ドライバ(41)は作り出す周波数パターンに従う。ADTM(4)は、深度マイグレーションを介して音波の遅延を作り出し、広いDSW帯域幅を可能にする。ドライバ(41)の共振周波数よりも高い低周波数は、セル構造によって容易には影響されず、深度マイグレーションの前にEATL(5)における一定圧力を持続する。
【0059】
反射性エンクロージャは、パワー低音域周波数範囲(30Hz−60Hz)におけるDD(3)の動作をさらに減少させ、EATL(5)ピーク後の可聴周波数以下の歪みの問題を有さない。図5中のドライバ(41)/EATL(5)へ接続される音響低音フィルタ(18)は、最も低い周波数を好む。
【0060】
DCEATL(5)低周波数システムは、ジオメトリではなくダイアフラム領域からの出力を発達させる。典型的には寸法的利点を備える音響スペースとなるリスニングルームもまた、もしそれらが表れるならば、より低い周波数に有利に働く。
【0061】
もし物理的空間が現実的な考慮でないならば、低周波数再生のため、さらに動作のDC圧力モードにおけるドライバのホーン状装置ローディングは、有効であり得る。適切にローディングされたドライバ(41)は、周囲へのホーン状装置結合にとって良い候補であるが、大きな表面延長領域は、長波の開始を補助するのに必要とされる。いくつかの場合において、構築又は大きな構造における埋込み型の応用は、構造の部分がホーン状の導波管として作用することを可能にする。いくつかの場合において、必要な導波管を折り曲げることで、低周波数用のホーン状装置、さらにいえばエンクロージャ型の実施を可能にする。
【0062】
EATL(5)のDRE(29D)のエンクロージャとともに、IRE(29I)の多数のユニットが、図8に示すような結合コヒーレント源のような出力を増大させるように設計される。音はユニットが倍増するごとに、理論的には6dbにより近づく。このこと及び部屋の反射への優れた電磁波耐性は、コヒーレント源の整合性を維持する。IRE(29I)はまた、図8のように結合され、EATL(5)ピークを有し、異なる範囲において各範囲の出力を最大化する。これはまた、より広い範囲に亘る最大低周波数出力を可能にする。
【0063】
図12A及び12Bを参照して、音声向上モジュール(前述の実施形態においてETLとも呼ばれる)は、前部(152)、頂部(154)、底部(156)、後部(158)、密閉型チャンバ(160)を定義する側壁(図示されていない)のセットを含む。前壁は、奥まった棚部又は突起部(164)によって囲まれた円形開口部(162)を有する。中央の穴部(168)を備える円形ディスク(166)は、棚部に位置する。
【0064】
独立気泡発泡体(170)又は密度交番性伝送媒体(ADTMと呼ばれる)の他の種類は、密閉型チャンバ(160)に位置する。独立気泡発泡体(170)の部分は、密閉型チャンバ(160)の空間全体を満たすのに十分大きい。もう一つの実施形態において、独立気泡発泡体(170)は、後壁(158)に接着され、密閉型チャンバ(160)の空間の一部だけを占める。
【0065】
音声向上モジュールはまた、機器の音質を改善するために多くの異なるタイプの音生成機器に追加され得る。例えば、モジュールは、区分されたキャビネット又はビデオディスプレイに設置されるオーディオスピーカーに追加されても良い。モジュールはまた、ヘッドフォンの内部又は外部に追加され得る。音声向上モジュールはまた、在庫として保持される又は客先にある既存のスピーカーシステムを改良するために使用されても良い。
【0066】
図13−16で示される他の実施形態において、音声向上モジュールはスピーカーのドライバに設けられる。図13を参照して、音声向上モジュールはドーム型ドライバ(1300)のコイルダイアフラムチャンバに位置する。ドライバはポールピース(1304)周囲に巻かれた音声コイル(1302)及びマグネット(1306)及び動作を可能にするサスペンション(1307)を含む。ELT又は音声向上モジュール(1308)は、スピーカーダイアフラム又はダストキャップ(1310)のすぐ後方のマグネット(1306)の正面に取り付けられる。モジュールは壁部及び開口部(1312)によって包囲され、該開口部(1312)は、音波が選択的な圧縮性のADTM(1314)が置かれるモジュールの内部容積に入ることを可能にする。ドライバはまた、後部エアチャンバ(1316)を含む。
【0067】
図14を参照して、ETLモジュール(1402)は、ダストキャップ(1310)と相反するポールピース(1304)の端部でポールピース(1304)の後方に位置する。十分な空隙(1404)及び/又は流体連結チャンバ(1406)は、音波がダストキャップ(1310)の後方からモジュール(1402)へ進むことを可能にする。
【0068】
図15で示されるもう一つの実施形態において、ETLモジュール(1502)は、ダストキャップ(1310)すぐ後方のポールピース(1304)に取り付く。
【0069】
ETLモジュールは他の構造においてスピーカーに組み込まれ、例えば1より多いETLモジュールがスピーカーに組み込まれる。図16で示されるように2つのETLモジュール(1602)、(1604)がスピーカーに組み込まれる。図16を参照して、第1ETLモジュールはポールピースの後方に位置する。第1ETLモジュール(1602)は、ポールピース(1304)及びマグネット(1306)の後方に位置する。第2ETLモジュール(1604)は、スピーカーフレーム(1606)とスピーカーコーン(1610)の後方の内壁(1608)との間に組み込まれる。
【0070】
図17を参照して、ETLモジュール(1702)、(1704)もまた使用される。第1ETLモジュール(1702)は、通気孔を設けられたポールピース(1706)のすぐ後方に構成される。該ポールピース(1706)はETLモジュール(1702)に直接固着されるマグネット(1306)を備える。第2ETLモジュール(1704)は、従来のスピーカーフレームに取って替わる成形されたエンクロージャ(1708)に組み込まれる。第2ETLモジュール(1704)は、マグネット(1306)を取り囲む輪状開口部(1710)を有する。
【0071】
図18で示されるもう一つの実施形態において、ETLモジュールはマイクロフォン(1800)に含まれている。マイクロフォンはダイアフラム(1802)及びダイアフラムサスペンションコイル(1804)を含む。空隙(1806)及びマグネットポールピース(1808)は、ダイアフラム(1802)の後方に位置する。
【0072】
初期ローディングチャンバ(1810)は、チャンバドライバ(1812)によって区分され、チャンバドライバ(1812)は中間開口部(1814)に通ずる。中間開口部(1814)は、ETL空域(1816)と呼ばれるチャンバ中へ穴部を提供する。音響的反応性材料(1818)例えば圧縮性発泡体などは、ETL空域(1816)中に位置する。
【0073】
本明細書に含まれる発明の請求の範囲から逸脱することなしに、変更が上記装置において行われても良い。従って、上記記載における又は添付図において示されるすべての事項は実例となり、具体的な実施形態に限定されない。従って、他の実施は以下の請求の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカーであって、
前記スピーカーは、
マグネット、
前記マグネット内に配置されるポールピース、
前記ポールピースを取り囲むスリーブ、
前記マグネットと前記ポールピースとの間の前記スリーブ周囲の導線コイル、
前記スリーブの外周部に取り付けられるダストキャップ又はダイアフラム、
前記ダストキャップを取り囲むスピーカーコーン、及び
密閉型チャンバー
を備え、前記チャンバーは、
前記チャンバーの内部体積領域に連通するための開口部、及び前記内部体積領域の一部内に配される密度交番性伝送媒体(ADTM)を有することを特徴とするスピーカー。
【請求項2】
前記チャンバーが、前記ダストキャップに隣接した前記ポールピースの第1端部に配されることを特徴とする請求項1記載のスピーカー。
【請求項3】
前記チャンバーが、前記ダストキャップより遠位部の前記ポールピースの第2端部に配されることを特徴とする請求項1記載のスピーカー。
【請求項4】
通風路が、前記チャンバーの前記内部体積領域を前記ダストキャップ後部の前記体積領域に接続するように構成されていることを特徴とする請求項3記載のスピーカー。
【請求項5】
前記通風路が、前記ポールピースを通る通路を備えることを特徴とする請求項4記載のスピーカー。
【請求項6】
前記ポールピースが、前記チャンバーを定義する空洞を備えることを特徴とする請求項1記載のスピーカー。
【請求項7】
前記マグネットが、前記チャンバーを定義する空洞を備えることを特徴とする請求項1記載のスピーカー。
【請求項8】
前記開口部が、前記開口部を定義するために前記マグネットの表面に穴部を備えることを特徴とする請求項1記載のスピーカー。
【請求項9】
前記チャンバーが第1内部表面を備え、前記密度交番性伝送媒体が前記第1内部表面に取り付けられることを特徴とする請求項1記載のスピーカー。
【請求項10】
前記第1内部表面の表面積(X)が、X=√Aであって、式中、Aは前記スピーカーコーンの面積を備えることを特徴とする請求項9記載のスピーカー。
【請求項11】
前記第1内部表面の表面積(X)が、X=√0.7AからX=√1.2Aの範囲を含むことを特徴とする請求項9記載のスピーカー。
【請求項12】
前記開口部の寸法(Φ)が、r/πを備え、式中、rはスピーカーコーン半径(r)を備えることを特徴とする請求項1記載のスピーカー。
【請求項13】
前記チャンバーが、第1内部表面及び第2内部表面を備え、前記密度交番性伝送媒体が、前記第1内部表面に取り付けられ、前記第1内部表面と前記第2内部表面の間の距離が、前記密度交番性伝送媒体の厚み(t)及び空隙(T)の長さを含むことを特徴とする請求項1記載のスピーカー。
【請求項14】
前記密度交番性伝送媒体の前記厚みが、t=√rを備え、式中、rがスピーカーコーン半径を備えることを特徴とする請求項13記載のスピーカー。
【請求項15】
前記空隙の前記長さが、T=√Φを備え、式中、Φがスピーカーコーンの直径を備えることを特徴とする請求項13記載のスピーカー。
【請求項16】
前記チャンバーの前記内部体積領域(V)が、V=Aを備え、式中、Aが前記スピーカーコーンの前記面積を備えることを特徴とする請求項1記載のスピーカー。
【請求項17】
前記チャンバーの前記内部体積領域(V)が、V=0.7AからV=1.2Aの範囲を含み、式中、Aが前記スピーカーコーンの前記面積を備えることを特徴とする請求項1記載のスピーカー。
【請求項18】
前記密度交番性伝送媒体が、圧縮性発泡体材料を備えることを特徴とする請求項1記載のスピーカー。
【請求項19】
前記密度交番性伝送媒体が、独立気泡発泡体を備えることを特徴とする請求項1記載のスピーカー。
【請求項20】
前記チャンバーが、前記ポールピースの半径軸に沿って中心に置かれていることを特徴とする請求項1記載のスピーカー。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−101375(P2011−101375A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251188(P2010−251188)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(507063702)ティービーアイ オーディオ システムズ エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】