説明

改良型橋梁支持構造及びその構築法

【課題】小支間でほとんど伸縮量のない橋梁では伸縮継手を無くしても支障がないものがあり、伸縮継手の除去により止水化や走行車両による騒音の発生を抑制できるが、現時点で伸縮継手を除去しようとする試みはなされていない。
【解決手段】本発明にかかる改良型橋梁支持構造は、橋梁(1)の端部(11)が橋台(2)に固定されている。該橋台(2)の直立胸壁部(21)の頂部(22)は該直立胸壁部(21)と一体となった打替部(23)が位置している。該橋梁(1)と該直立胸壁部(21)の遊間(3)が、自身の一端部(41)が該橋梁(1)に形成された欠除部(12)で該橋梁(1)と一体化されかつ他端部(42)が該打替部(23)上に伸張している、被覆床版(4)で覆われている。そして、該打替部(23)と該被覆床版(4)間に滑り沓(5)が介装されている。構築法はこの構造を構築するためのものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は改良型橋梁支持構造及びその構築法に関し、小支間でほとんど伸縮量のない橋梁の伸縮継手をなくそうとするものである。
【背景技術】
【0002】
橋梁の非排水化されていない伸縮継手では漏水が多く起こり、特に寒冷地では凍結防止剤に使用する塩化ナトリウムによる塩害が深刻である。この中で、コンクリート橋の場合、桁遊間が狭く、特にワイヤーも入る余裕がないような遊間の場合、遊間に止水材を注入することによる止水化は不可能であった。
【0003】
伸縮継手の位置をずらすことにより、橋梁の振動・騒音を低減しようとする延長床版に関する発明が、特開2005−315017号公報(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−315017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
遊間に止水材を注入することによる止水化が不可能な場合、橋梁上部工の荷重・温度等による下部工との変異を小さくすることにより、舗装を連続化するとともに、桁遊間の上部をふさいで漏水をなくす必要があった。
【0006】
また、特許文献1に開示されている発明は、伸縮継手が地盤上に移動しただけで伸縮継手自体を無くすまでには至っていないので、伸縮継手での漏水問題を解決できておらず、その上、耐久性や、設置コストの問題も残っている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(請求項1)本発明にかかる改良型橋梁支持構造は、橋梁の端部が橋台に固定されている。該橋台の直立胸壁部の頂部は該直立胸壁部と一体となった打替部が位置している。該橋梁と該直立胸壁部の遊間が、自身の一端部が該橋梁に形成された欠除部で該橋梁と一体化されかつ他端部が該打替部上に伸張している、被覆床版で覆われている。そして、該打替部と該被覆床版間に滑り沓が介装されている。
【0008】
以下の説明では、本発明の構造を、その構造を構成する構築法と共に述べる。
通常のように、該橋台の直立胸壁部は橋台の上部の橋梁を受ける側の面に形成された顎部から上方へ突き出た部分をいい、この顎部上面に橋梁の固定支承が設けられる。
【0009】
本発明では、橋梁の橋軸方向の端部が橋台の顎部の支承に、固定されている場合はそのままで、橋軸方向に移動自在に支持されている場合は固定支承に変え、橋梁の端面と土工部側の床版間に伸縮継手が介装されている場合はこれを取り除く。従って、橋梁は橋軸方向の伸長は規制され、車両荷重によるキックアップには対応できる。
【0010】
ここで、橋台の直立胸壁部の頂部をはつり、通常のように適宜配筋してコンクリートを打設し、直立胸壁部と一体となった打替部を位置させる。そして、この代替部の上面に滑り沓を配設する。
【0011】
次いで、橋梁の直立胸壁部端部側の端部をはつる。はつる対象はコンクリートで、鋼桁橋の場合は上面の床版、コンクリート橋の場合はそれ自体の床版部となる。コンクリートの表面に舗装が施されている場合は、この舗装もはつりの対象となる。型枠をこの橋梁端部から直立胸壁部上に遊間を跨いで組み立て、適宜配筋してコンクリートを打設し、被覆床版を形成する。
【0012】
これらの作業により構築された改良型橋梁支持構造では、橋梁の端面から遊間を跨いで橋台の直立胸壁部上面に至る被覆床版が形成されているので遊間からの水漏れを防げ、橋梁の橋面と被覆床版の版面が面一で連続しているので、そのままで、又は必要に応じ連続して舗装を施すことにより、車両走行の平坦性を確保でき、被覆床版の下面は直立胸壁部の打替部上面と滑り沓を介して接するので、両者の接触による損傷や騒音の発生を防げる。
【0013】
(請求項2)該橋梁は自動車荷重による桁の回転角が1/300以下となっていてもよい。
こうすると、無伸縮継手の構成が容易である。
【0014】
(請求項3)該欠除部は該端部の上面側の隅角部分に形成されていてもよい。
こうすると、該端部を該橋台の顎部の支承に支持させたまま該欠除部のはつりを行うことができ、作業性が向上する。
【0015】
(請求項4)該打替部は該頂部をはつった欠除部に打設され、該打替部の頂面は、該橋梁の該欠除部の底面に対し、該滑り沓の厚さ分だけ下水準に位置したものであってもよい。
こうすると、欠除部により該打替部の高さを選択することにより、該橋梁の床版と土工部側の床版との平坦性が確保され、舗装の平坦性と相まって、車両の振動を防げ、騒音防止にも役立つ。
【0016】
(請求項5)該被覆床版は該直立胸壁部の背面と面一位置まで届いていてもよい。
こうすると、該被覆床版の版面を土工部側の床版の版面と整合させやすく、走行路面の平坦性に寄与できる。
【0017】
(請求項6)該滑り沓はゴム、プラスチック又は金属の内の一つから製造されたものであってもよい。
こうすると、該被覆床版下面と打替部頂面とは直接的に接触しないで、車両走行による騒音の発生を減少でき、該被覆床版の移動も許容をできる。
【0018】
(請求項7)本発明にかかる改良型橋梁支持構造の構築法は、次の工程を包含する。即ち、橋梁の端部を橋台に固定する。該橋台の直立胸壁部の頂部を欠除して打替部を打継ぐ。該打替部上に滑り沓を配置する。そして、該橋梁と該直立胸壁部の遊間を、自身の一端部を該端部に形成した欠除部で該橋梁と一体化しかつ他端部を該打替部上の該滑り沓上に伸張させた被覆床版で覆う。
これらの一連の工程で、本発明にかかる改良型橋梁支持構造が得られる。
【0019】
この構築法の場合も、前記の「0013」から「0017」で述べた構成の採用が可能である。詳述すると反復的な表現の羅列になるので、個別の記述は省略する。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる改良型橋梁支持構造によれば、該橋台の直立胸壁部の頂部は該直立胸壁部と一体となった打替部が位置しているので直立胸壁部の高さを橋梁の橋面との関係で自由に調節でき、これにより橋梁の端面から遊間を跨いで橋台の直立胸壁部上面に至る被覆床版の版面を橋梁の橋面や土工部の床版の版面と整合させることができ、車両走行の静粛性と、遊間からの水漏れを防げ、該打替部と該被覆床版間に滑り沓が介在するので、車両走行の振動で該打替部と該被覆床版が相対的に移動しても騒音の発生も防げる等、種々の効果を奏する。
【0021】
請求項2によれば、無伸縮継手の構成が容易である。
【0022】
請求項3によれば、該端部を該橋台の顎部の支承に支持させたまま該欠除部のはつりを行うことができ、作業性が向上する。
【0023】
請求項4によれば、欠除部により該打替部の高さを選択して、該橋梁の橋面と土工部側の床版の端面との平坦性が確保され、舗装の平坦性と相まって、車両の振動を防げ、騒音防止にも役立つ。
【0024】
請求項5によれば、該被覆床版の版面を土工部側の床版の版面と整合させやすく、走行路面の平坦性に寄与できる。
【0025】
請求項6によれば、該被覆床版下面と打替部頂面とは直接的に接触しないで、車両走行による騒音の発生を減少でき、該被覆床版の移動も許容をできる。
【0026】
請求項7の本発明にかかる改良型橋梁支持構造の構築法によれば、該橋台の直立胸壁部の頂部は該直立胸壁部と一体となった打替部が位置しているので直立胸壁部の高さを橋梁の橋面との関係で自由に調節でき、これにより橋梁の端面から遊間を跨いで橋台の直立胸壁部頂面に至る被覆床版の版面を橋梁の橋面や土工部の床版の版面と整合させることができ、車両の走行の静粛性と、遊間からの水漏れを防げる継手を容易に構成できる。
【0027】
請求項7に従属する請求項8から12の各項によれば、これらの各項が各別に対応する請求項2から6の構成によって奏する各別の効果を、この請求項7の奏する効果と併合させることができる
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明にかかる改良型橋梁支持構造の具体例を示す一部切断面図である。
【図2】同改良型橋梁支持構造の構築過程で、橋梁の端部と橋台の直立胸壁部の頂部をはつった状態を示す一部切断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明の実施の形態を、その構築法と共に、図面を参照して、説明する。
(請求項1)図1及び2で、橋梁1の端部11が橋台2に固定支承28で固定されており、橋梁1が車両の荷重によって上下方向に多少撓んでも対応できる。
【0030】
橋台2の直立胸壁部21の頂部22をはつり、鉄筋Tを適宜配筋して打替部23を打継ぐ。これにより、打替部23が直立胸壁部21の頂部22に位置することになる。
【0031】
打替部23上に滑り沓5を配置する。この滑り沓5は後記の被覆床版4と打替部23との直接的な接触による損傷や騒音の発生を防ぐためのもので、頂部22に対する配置は、滑り沓5が打替部23上から脱落しないように、接着材等で固定するのが望ましい。
【0032】
橋梁1の橋台2側の端部11をはつって欠除部12を形成し、この欠除部12と代替部23に亘って鉄筋Tを適宜配筋し、かつ型枠を巡らしてコンクリートを打設し、被覆床版4を形成する。コンクリートの固化を待って型枠を外せば、被覆床版4の一端部41は橋梁1と一体となり、他端部42は橋軸方向へ張り出して滑り沓5に載り、遊間3の上方はこの被覆床版4で覆われる。
【0033】
橋台2の直立胸壁部21の頂部22は直立胸壁部21と一体となった打替部23が位置しているので直立胸壁部21の高さを橋梁1の橋面13との関係で自由に調節でき、これにより橋梁1の欠除端面14から遊間3を跨いで橋台2の直立胸壁部21の頂面25に至る被覆床版4の版面43を橋梁1の橋面13や土工部6の床版7の版面71と整合させることができ、車両走行の静粛性と、遊間3からの水漏れを防げ、打替部23と被覆床版4間に滑り沓5が介在するので、車両走行の振動で打替部23と被覆床版4が相対的に移動しても、損傷や騒音の発生も防げる等、種々の効果を奏する。
【0034】
舗装Pは橋梁1の橋面13と被覆床版4の版面43にわたり連続して施工でき、この場合、車両の走行性が更に向上し、騒音の発生も極力抑えることができる。
【0035】
(請求項2)橋梁1は自動車荷重による桁15の回転角が1/300以下となっている。
この場合、無伸縮継手の構成が容易である。
【0036】
(請求項3)橋梁1の欠除部12は、橋梁1の端部11の橋面13側の隅角部分16に形成されている。
この場合、端部11の下面17と橋台2の顎部27に設けられて協働する固定支承28に支持させたまま欠除部12をはつれ、作業性が向上する。
【0037】
(請求項4)打替部23は頂部22をはつった欠除部24に打設され、この打替部23の頂面25は、橋梁1の欠除部12の底面18に対し、滑り沓5の厚さt分だけ下水準に位置している。
この場合、欠除部24により打替部23の高さを選択することにより、橋梁1の橋面13と土工部6側の床版7の版面71との平坦性が確保され、そのままで、又は必要に応じて橋面13、版面43及び版面71にわたって施工される舗装Pの平坦性と相まって、車両の振動を防げ、騒音防止にも役立つ。
【0038】
(請求項5)被覆床版4は直立胸壁部21の背面26と面一位置まで届いている。
この場合、被覆床版4の版面43を土工部6側の床版7の版面71と整合させ易く、走行路面の平坦性に寄与できる。
【0039】
(請求項6)滑り沓5はゴム、プラスチック又は金属の内の一つから製造されたものである。
この場合、被覆床版4の下面は打替部23の上面と直接的に接触しないので、被覆床版4と打替部23の相対移動による損傷や騒音の発生を防止できる。
【0040】
(請求項7)本発明にかかる改良型橋梁支持構造の構築法は、次の工程を包含する。即ち、橋梁1の端部11を橋台2に固定的に支持する。この橋台2の直立胸壁部21の頂部22をはつって打替部23を一体的に打継ぐ。打替部24上に滑り沓5を配置する。そして、橋梁1と直立胸壁部21の遊間3を、自身の一端部41を端部11に形成した欠除部12で橋梁1と一体化しかつ他端部42を打替部23上の滑り沓5上に伸張させた被覆床版4で覆う。
このような構築法の実施で、本発明にかかる改良型橋梁支持構造を構築できる。
【符号の説明】
【0041】
1 橋梁
11 端部
12 欠除部
13 橋面
14 欠除端面
15 桁
16 隅角部分
17 下面
18 底面
2 橋台
21 直立胸壁部
22 頂部
23 打替部
24 欠除部
25 頂面
26 背面
27 顎部
28 固定支承
3 遊間
4 被覆床版
41 一端部
42 他端部
43 版面
5 滑り沓
6 土工部
7 床版
71 版面
T 鉄筋
P 舗装


【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁(1)の端部(11)が橋台(2)に固定され、
該橋台(2)の直立胸壁部(21)の頂部(22)は該直立胸壁部(21)と一体となった打替部(23)が位置し、
該橋梁(1)と該直立胸壁部(21)の遊間(3)が、自身の一端部(41)が該橋梁(1)に形成された欠除部(12)で該橋梁(1)と一体化されかつ他端部(42)が該打替部(23)上に伸張している、被覆床版(4)で覆われ、
該打替部(23)と該被覆床版(4)間に滑り沓(5)が介装され
ていることを特徴とする改良型橋梁支持構造。
【請求項2】
該橋梁(1)は自動車荷重による桁(15)の回転角が1/300以下となっている請求項1に記載の改良型橋梁支持構造。
【請求項3】
該欠除部(12)は該端部(11)の上面側の隅角部分(16)に形成されている請求項1又は2に記載の改良型橋梁支持構造。
【請求項4】
該打替部(23)は該頂部(22)をはつった欠除部(24)に打設され、該打替部(23)の頂面(25)は、該橋梁(1)の該欠除部(12)の底面(18)に対し、該滑り沓(5)の厚さ(t)分だけ下水準に位置したものである請求項1、2又は3に記載の改良型橋梁支持構造。
【請求項5】
該被覆床版(4)は該直立胸壁部(21)の背面(26)と面一位置まで届いている請求項1、2、3又は4に記載の改良型橋梁支持構造。
【請求項6】
該滑り沓(5)はゴム、プラスチック又は金属の内の一つから製造されたものである請求項1、2、3、4又は5に記載の漏水防止型橋梁支持構造。
【請求項7】
橋梁(1)の端部(11)を橋台(2)に固定的に支持し、
該橋台(2)の直立胸壁部(21)の頂部(22)を欠除して打替部(23)を打継ぎ、
該打替部(23)上に滑り沓(5)を配置し、
該橋梁(1)と該直立胸壁部(21)の遊間(3)を、自身の一端部(41)を該端部(11)に形成した欠除部(12)で該橋梁(1)と一体化しかつ他端部(42)を該打替部(23)上の該滑り沓(5)上に伸張させた被覆床版(4)で覆う
ことを特徴とする改良型橋梁支持構造の構築法。
【請求項8】
該橋梁(1)は自動車荷重による桁(15)の回転角が1/300以下となっている請求項7に記載の改良型橋梁支持構造の構築法。
【請求項9】
該欠除部(12)は該端部(11)の上面側の隅角部分(16)に形成されている請求項7又は8に記載の改良型橋梁支持構造の構築法。
【請求項10】
該打替部(23)は該頂部(22)をはつった欠除部(24)に打設され、該打替部(23)の頂面(25)は、該橋梁(1)の該欠除部(12)の底面(18)に対し、該滑り沓(5)の厚さ(t)分だけ下水準に位置したものである請求項7、8又は9に記載の改良型橋梁支持構造の構築法。
【請求項11】
該被覆床版(4)は該直立胸壁部(21)の背面(26)と面一位置まで届いている請求項7、8、9又は10に記載の改良型橋梁支持構造の構築法。
【請求項12】
該滑り沓(5)はゴム、プラスチック又は金属の内の一つから製造されたものである請求項7、8、9、10又は11に記載の改良型橋梁支持構造の構築法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−112928(P2013−112928A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256892(P2011−256892)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(505398941)東日本高速道路株式会社 (66)
【Fターム(参考)】