説明

改装サッシの下枠水抜き装置

【課題】 カバー工法による改装サッシにおける既設下枠の突出レール上に近接配置した新設下枠からの雨水排出を可及的に簡易な現場作業によって確実になし得るようにする。
【解決手段】 新設下枠2の中央部と片側端部に設けた水抜孔218に排水キャップ3を嵌合配置し,該排水キャップ3の下位に,該水抜孔218から新設サッシ2の室外端に設置した排水孔219間に水抜ピース5を配置するとともに既設下枠1の室外側突出レール11を該水抜ピース5の幅に応じて室内側に折り曲げて,該水抜ピース5がこの折り曲げ部分を通過できるようにする。突出レール5の折り曲げは,例えばペンチで突出レール11交差方向に切り込みを入れて室内側に折曲すればよく,現場作業を極く容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,所謂カバー工法によって改装した改装サッシの下枠水抜き装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従前の鋼製サッシのアルミ製サッシへの改装に代えて,近時長年月を経たアルミ製の既設サッシを同じくアルミ製のサッシに改装するアルミ対アルミの改装サッシが求められており,本出願人は,これに沿って,例えば該アルミ対アルミの改装を行うについて,騒音や塵埃の発生を抑制しつつ可及的効率よく改装工事をなし得る長所を有する所謂カバー工法を採用しつつ,その欠点である開口部の狭小化を可及的に防止し得るようにした改装サッシを提案済みである。これによると,サッシ改装を,既設下枠の室内外一対の突出レールを残存して該既設下枠の上記突出レール上にこれに近接して新設下枠の下枠基板を被覆配置して施したものとされ,このとき既設下枠に対する新設縦枠の被覆は,これを,該新設下枠の上端突出高さ,例えばその下枠基板に起立した引違い障子開閉案内用の室内外一対の突出レールと該障子との間で気密を確保する各突出レール室内側の気密条の上端を,既設下枠を設置した既設額縁(下側の額縁)と略同等乃至これより低くするように新設下枠の突出高さ吸収措置を施して行ったものとされ,該突出高さ吸収措置は,上記新設下枠を,下枠本体と,室内側上位の額縁載置条及び室外側下位の支持条を具備したブラケットとの室内外幅方向に2部材構成とするとともにブラケットの額縁載置条を直接又は既設下枠既存の額縁載置条を介して既設額縁に載置固定する一方,該ブラケットの室外側下位の支持条上に下枠本体の幅方向室内側部分を載置固定し且つ該新設下枠の室外側下端部位を既設下枠又はその躯体に対接固定することによって既設下枠に対する新設下枠の被覆を水平に行うとともに上記新設下枠を可及的に既設下枠の突出レールに近接するように配置したものとされている。
【0003】
【特許文献1】特願2005−334147号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしこの場合,既設下枠の突出レールに近接して新設下枠の下枠基板が配置され,該既設下枠の突出レールが新設下枠の下位空間を室内外に遮断する結果,例えば新設下枠に浸入することある雨水を,該新設下枠に配置した水抜孔から外部に排出しようとしても,既設下枠の突出レールが室内外を遮断するために,該突出レールが排出障壁となって排出し得ないという結果を招くことがある。即ちこの種改装サッシを既設サッシと同じく引違い障子用のものとして構成すると,一般に室内外のうち室内側の障子は,既設下枠の室内外一対の突出レール間に位置することになるために,新設下枠の下枠基板における該室内側の障子を案内する突出レール近傍,特にその室外側位置に水抜孔を配置すると,該水抜孔は既設下枠の突出レール間に位置して,その室外側の突出レールが上記排出障害となるに至る。この場合突出レールに排出孔を設ければ,水抜孔からの排水の排出をある程度行うことが可能となるが,必ずしも排水を有効になし得ずに,雨水が既設下枠上に残る傾向を生じるし,また改装現場で既設下枠の突出レールに排出孔を設けるのは煩雑な作業を必要とすることになり適切ではない。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので,その解決課題とするところは,改装現場における作業を可及的に簡易になし得るとともに新設下枠に浸入した雨水を可及的有効且つ確実に室外に排出することができるようにした改装サッシの下枠水抜き装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に添って本発明は,新設下枠の下枠基板に,雨水を既設下枠側に排出する水抜孔を透設するとともに該新設下枠の室外側端部に雨水を外部に排出する排水孔をそれぞれ透設して,該水抜孔と排水孔との間に,該水抜孔からの雨水を排水孔に誘導流下する水抜ピースを配置する一方,新設下枠の下枠基板を近接して被覆配置した既設下枠の突出レールにその長手方向部分的に前後に開口する部分開口部を形成し,上記水抜ピースを該部分開口部を通過してその配置を可能とし,改装現場で該部分開口部を形成する可及的に簡易な作業によって水抜ピースを用いた雨水の可及的有効且つ確実な室外排出をなし得るようにしたものであって,即ち請求項1に記載の発明を,既設下枠の室内外一対の突出レールを残存してカバー工法によって該既設下枠の上記突出レール上にこれに近接して新設下枠の下枠基板を被覆配置してサッシ改装を施した改装サッシであって,上記既設下枠における室内外一対のうちの室外側突出レールにおける長手方向部分的に室内外に開口した突出レールの部分開口部と,上記新設下枠の長手方向対応位置の下枠基板を透設することによって該下枠基板に配置した水抜孔及び該新設下枠の室外側端部に透設した排水孔と,下枠基板の水抜孔と排水孔間を連結するように上記部分開口部を通過して配置した水抜ピースとを備えてなることを特徴とする改装サッシの下枠水抜き装置としたものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は,上記に加えて,既設下枠がアルミ製であることを利用して,上記部分開口部の形成を,例えば現場で手持工具のペンチによって突出レールに切込みを入れ,上記水抜ピースの通過を可能とするように該突出レールの全部又は一部を室内側乃至室外側に折り曲げることによって行うようにして,現場での作業を容易になし得るものとするように,これを,上記突出レールの部分開口部を,該突出レールをその突出方向一部又は全部を現場曲げして形成してなることを特徴とする請求項1に記載の改装サッシの下枠水抜き装置としたものである。
【0008】
請求項3に記載の発明は,同じく上記に加えて,同様に既設下枠がアルミ製であることを利用して,上記部分開口部の形成を,例えば現場で手持工具のペンチによって突出レールを切欠くことによって行うようにして,現場での作業を可及的容易になし得るものとするように,これを,上記突出レールの部分開口部を,該突出レールをその突出方向一部又は全部を現場切欠きして形成してなることを特徴とする請求項1に記載の改装サッシの下枠水抜き装置としたものである。
【0009】
請求項4に記載の発明は,同じく上記に加えて,雨水の排水を有効に行うように,水抜孔を比較的大きく形成することによる外観不良と異物落下等を防止するように水抜孔にデザインを考慮し且つ異物の落下防止をするように透孔を多数区分し,必要に応じてメッシュを張る等した適宜の排水キャップを設けて,水抜きを該排水キャップを介して行う形態のものとするように,これを,上記下枠基板の水抜孔が排水キャップを備え,上記水抜ピースを新設下枠の下面側で該排水キャップ下位に配置してなることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の改装サッシの下枠水抜き装置としたものである。
【0010】
本発明はこれらをそれぞれ発明の要旨として上記課題解決の手段としたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は以上のとおりに構成したから,請求項1に記載の発明は,新設下枠の下枠基板に,雨水を既設下枠側に排出する水抜孔を透設するとともに該新設下枠の室外側端部に雨水を外部に排出する排水孔をそれぞれ透設して,該水抜孔と排水孔との間に,該水抜孔からの雨水を排水孔に誘導流下する水抜ピースを配置する一方,新設下枠の下枠基板を近接して被覆配置した既設下枠の突出レールにその長手方向部分的に前後に開口する部分開口部を形成し,上記水抜ピースを該部分開口部を通過してその配置を可能とすることにより,改装現場における作業を可及的に簡易になし得るとともに新設下枠に浸入した雨水を可及的有効且つ確実に室外に排出することができるようにした改装サッシの下枠水抜き装置を提供することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は,上記に加えて,既設下枠がアルミ製であることを利用して,上記部分開口部の形成を,例えば現場で手持工具のペンチによって突出レールに切込みを入れ,上記水抜ピースの通過を可能とするように該突出レールの全部又は一部を室内側乃至室外側に折り曲げることによって行うようにして,現場での作業を容易になし得るものとすることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は,同じく上記に加えて,同様に既設下枠がアルミ製であることを利用して,上記部分開口部の形成を,例えば現場で手持工具のペンチによって突出レールを切欠くことによって行うようにして,現場での作業を可及的容易になし得るものとすることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は,同じく上記に加えて,雨水の排水を有効に行うように,水抜孔を比較的大きく形成することによる外観不良と異物落下等を防止するように水抜孔にデザインを考慮し且つ異物の落下防止をするように透孔を多数区分し,必要に応じてメッシュを張る等した適宜の排水キャップを設けて,水抜きを該排水キャップを介して行う形態のものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下図面の例に従って本発明を更に具体的に説明すれば,Aは改装サッシの下枠であり,サッシ改装における該下枠Aの改装は,既設下枠1の室内外一対の突出レール11を残存して該既設下枠の上記突出レール11上にこれに近接して新設下枠2の下枠基板211を被覆配置して施したものとされ,このサッシ改装によって,新設下枠2が既設額縁13の上方に突出して外観を損なったり,開口の狭小化を招いたりするのを防止したものとしてある。
【0016】
本例にあって上記既設下枠1に対する新設下枠2の被覆は,これを,該新設下枠2の上端突出高さ,例えば本例にあって水平乃至段差付の水平に形成した下枠基板211に起立した引違い障子開閉案内用の室内外一対の突出レール212と該障子とその室内側との間で気密を確保する各突出レール212室内側に配置した室内外一対の気密条213の上端を,既設下枠1を設置した既設額縁13と略同等乃至これより低くするように新設下枠2の突出高さ吸収措置を施して行ったものとしてある。このとき本例の該突出高さ吸収措置は,上記新設下枠2を,下枠本体21と,室内側上位の額縁載置条221及び室外側下位の支持条222を具備したブラケット22との室内外幅方向に2部材構成とし,該ブラケット22の額縁載置条221を直接又は既設下枠1既存の額縁載置条を介して既設額縁13,即ち下側の既設額縁に載置固定する一方,該ブラケット22の室外側下位の支持条222上に下枠本体21の幅方向室内側部分に配置した,本例にあって下枠基板211から下向きに突設した支持脚214を載置固定し且つ該新設下枠2の室外側下端部位を既設下枠1又はその躯体,本例にあっては下枠本体21の下枠基板211から室外側に傾斜突出した傾斜支持条215の室外側先端に垂直に配置した室外側固定片216を既設下枠1の網戸レール12に対接固定して行ってあり,これによって既設下枠1に対する新設下枠2の被覆を可及的に水平に行うとともに上記新設下枠2を可及的に既設下枠1の突出レール11に近接するように配置したものとされている。
【0017】
このとき該改装サッシの下枠Aは,上記既設下枠1における室内外一対のうちの室外側突出レール11における長手方向部分的に室内外に開口した突出レール11の部分開口部4と,上記新設下枠2の長手方向対応位置の下枠基板21を透設して該下枠基板21に配置した水抜孔218及び該新設下枠2の室外側端部に透設した排水孔219と,下枠基板21の水抜孔218と排水孔219間を連結するように上記部分開口部4を通過して配置した水抜ピース5とを備えて,その水抜き装置を形成して配置したものとしてあり,本例にあって上記下枠基板21の水抜孔218が排水キャップ3を備え,上記水抜ピース5を新設下枠2の下面側で該排水キャップ3下位に配置してある。
【0018】
即ち本例にあって改装サッシの下枠は,その新設下枠2の下枠基板21が水平乃至段差付の水平とされるとともにこれによる既設下枠1の被覆を可及的水平に行うものとしてあるから,該下枠基板21上に雨水が滞留する傾向が生じるところ,該下枠基板21における室内外一対の室外側レール212部分の雨水は,例えば上記傾斜支持条215の突出位置より室外側に室外側の水抜孔217を透設することによって,下枠基板21の該室外側レール212部分の雨水を該水抜孔217から室外に排出可能とし得るが,一方で室内外一対の室内側突出レール212部分の雨水は,本例にあって室外側突出レール212と対をなす室外側の気密条213によって仕切られ且つ該室内側レール212部分が,上記既設下枠1の室内外一対の突出レール11間の上位に位置して,既設下枠の室外側レール11が排出障害をなすために,該室内側突出レール212部分の下枠基板21に室内側の水抜孔218を透設しても,既設下枠2の室内外一対の突出レール11間に該水抜孔218からの雨水が滞留する結果となるところ,上記水抜き装置によって新設下枠2における下枠基板21の室内側突出レール212部分の雨水を簡易且つ確実に室外に排出し得るようにしてあり,これによって,例えば室内側の水抜孔218からの雨水を,例えば既設下枠1の室外側突出レール11に現場加工によって排水用の透孔を形成してその排出を可能とする等,現場作業の煩雑さを解消したものとしてある。
【0019】
本例の室内側の水抜孔218は,例えば幅を1cm程度とするも,その長さを10cm程度とする長寸の比較的大きなものとして,その水抜作用を可及的に有効とするようにする一方,該水抜孔218には上記排水キャップ3を嵌着してあるところ,該排水キャップ3は,該水抜孔218に嵌合するこれと同等の平面寸法を有したものとし,その深さを短寸の1cm以下,例えば0.5cm程度としたキャップ基部31と,該キャップ基部31の開口を多数区分する仕切片32と,幅方向両側上端に配置して水抜孔218前後方向縁部に引掛状に係止する載置突片33,例えば複数舌片状の載置突片と,長手方向両端に配置した同じく載置突片34及び該載置突片34とともに水抜孔縁部を弾発的に挟持する係止突片35とを備えて,例えば射出成形した合成樹脂製一体のものとしてあり,該排水キャップ3は,そのキャップ基部31を水抜孔218に嵌合押圧することによって載置突片33,34がそれぞれ水抜孔218縁部に載置した状態で長手方向両端の係止突片35によって水抜孔218に嵌着固定されるように構成してあり,このときキャップ基部31に仕切片32を配置してその開口を多数区分することによって異物が水抜孔に落下するのを防止するとともにデザインを良好として,比較的大きく形成した水抜孔218の配置による外観不良を解消して該水抜孔の外観を違和感のないようにしてある。
【0020】
本例にあって新設下枠2の室外側端部に透設した排水孔219は,上記下枠基板21から傾斜突出した傾斜支持条215とその室外側先端に垂直に配置して,既設下枠の網戸レール12に対接固定した室外側固定片216とを連結するように上記傾斜支持条215から室内側に向けて水平に突出して室外側固定片216に至る,例えば水平の連結部に透設して形成してあり,このとき該排水孔219は,後述の水抜ピース5の排出口の寸法に応じてその透設を行ってあり,本例にあって該排水孔219は,例えば前後に数mmにしてその長さを上記水抜孔218の長さに合せて10cm程度としてある。
【0021】
上記水抜ピース5は,該下枠基板21の水抜孔218と上記排水孔219との間に雨水排出経路をなすように,上端から下降傾斜し下位を排水孔219に向けて垂直とすることによって雨水を誘導流下する排水基板51と,該排水基板51両端に起立した起立壁52と,該両端の起立壁42の側方,即ち下枠基板21長手方向に向けて突出した下枠基板21の裏面に対接する対接突条53と,該対接突片53の下位に上記起立壁の室外側を切欠いたスリット54とを備えて,上面及び室外面を開放してその断面を略S字状に形成した,同じく射出成形による合成樹脂製一体のものとしてあり,本例にあって該水抜ピース5は,これを水抜孔の幅と長さ,本例にあっては該室内側の水抜孔218に嵌着固定した上記排水キャップ3を覆う幅と長さ,即ち該排水キャップ3より幾分大きめとした,例えば下枠基板21長手方向に10cm程度の長さを有するものとしてある。
【0022】
該水抜ピース5は,上記排水キャップ3の下端を被嵌状に受入れてこれを収納し,その起立壁52を,新設下枠2の下枠基板21の裏面から上記傾斜支持条215の裏面に沿って対接するように配置し,該傾斜支持条215の上端に形成した垂直部から室内側に向けて突出したリブを,上記対接突条の下位に配置したスリット54に挿入し,該リブをカシメることによって該水抜ピース5を固定してその設置を行ってあり,これによって上記水抜孔218と排水孔219との間に該水抜ピース5が雨水排水経路をなすように配置したものとしてある。
【0023】
このとき,該水抜ピース5は,その雨水排出経路,本例にあっては上記排水基板51を下降傾斜したものとしたことによって,該部分が既設下枠1の突出レール11,特に室外側に位置する突出レールと交差することを避けられず,このため該水抜ピース5は,これを上記既設下枠1の室外側突出レール11に長手方向部分的に開口した部分開口部4を通過して上記水抜孔218と排水孔219との間を連結してある。
【0024】
本例にあって該突出レール11の部分開口部4は,これを,該突出レール11をその突出方向一部又は全部を現場曲げして形成したものとしてあり,即ち本例にあっては,既設下枠1がアルミ製であって,その押出成形の肉厚は2mm程度であり,従って,例えばペンチ等,現場で一般に使用される手動工具によって,短い寸法であれば,これを切断することが比較的容易にできることから,本例にあっては,例えば水抜ピース5の対応位置の2箇所に,例えば突出レール11交差方向,即ち該突出レール11の上端から1〜1.5cm程度下方に向けて,上記ペンチによる切込みを入れた後に,該切込みで区画された突出レール11の長手方向部分を,例えば室内側に向けて,ハンマー,ペンチ等の手持ちの工具によって,例えば室内側突出レール11の空間に,上記水抜ピース5の通過を許容する適宜の角度,例えば20〜30度程度の角度に折り曲げて上記部分開口4を形成したものとしてある。
【0025】
このとき本例の該部分開口4は,その室外側突出レール11の長さを,上記水抜ピース5を通過させるように,本例にあっては10cm乃至これより幾分長寸の長さにして,突出レール11の突出方向中間位置でその折り曲げを行ったものとしてあり,これによって上記ペンチ等による切込みを可及的に短く,一方の切込みを1,2回程度としてその現場での作業を可及的に容易になし得るようにしたものとしてある。因に該部分開口4は,該突出レール11をその突出方向一部又は全部を現場切欠きして形成することが可能であるが,この場合,専用工具を用いるときは別としても,一般には上記切込みとともに突出レール11長手方向に向けた切断作業が必要となり,上記折り曲げによる場合に比して,その現場作業が煩雑化する傾向を招くから,上記切込みと折り曲げによって該部分開口部4を形成するのが好ましい。
【0026】
このような下枠水抜装置を備えた新設サッシへの改装方法は,既設下枠1の室外側突出レール11の水抜き位置に,上記折り曲げによる部分開口4を形成する一方,上記水抜孔218と排水孔219間に水抜ピース5を設置した新設下枠2を,図示省略の新設上枠及び新設縦枠とともに枠組みして新設サッシのサッシ枠を形成し,該新設サッシのサッシ枠を既設サッシのサッシ枠に嵌め込み固定することによって,上記水抜ピース5が該室外側突出レール11の部分開口部4を通過して上記水抜孔218と排水孔219を結ぶように配置すればよい。
【0027】
水抜き装置は,例えば新設下枠2の長手方向中央部と長手方向一方の端部,即ち室内側の障子を閉鎖したときに新設下枠2の開放側における端部の合計2箇所配置するのが,雨水の水抜きを有効且つ適切になし得るところ,この場合でも上記部分開口の形成は2箇所で済み,このとき該部分開口部4の形成作業はいずれも室内側から行うことができ,現場作業の負担を及的に少なくしながら,既設下枠2における室外側突出レール11の排出障害を解消して,新設下枠2の水抜孔218から,下枠基板21の室内側に浸入した雨水の排出を新設下枠2の室外側端部の排水孔219に向けて有効に行うことができる。また既設下枠1の室外側突出レール11に部分開口部を形成する以外,既設下枠はそのままにして,その水抜孔218,排水孔219,これらを連結する水抜ピース5,本例にあっては更に排水キャップ3は,いずれも新設下枠2,本例にあって下枠基板21に,例えば工場で設置できるから,これらの設置を現場作業で行う必要がない。本例にあっては新設下枠2の水抜孔218を比較的大きく構成したから,雨水の排水性を向上することができる一方,該水抜孔218に排水キャップ3を装着したから,該比較的大きな水抜孔218が露出することなく,外観を良好に確保するとともに該排水キャップ3を多区分のものとしたから,異物が水抜孔218に落下するといったことも有効に防止できる。
【0028】
図示した例は以上のとおりとしたが,水抜孔を比較的小さく形成することによって上記排水キャップを用いることなく,該水抜孔と排水孔を水抜ピースで連結するようにして下枠水抜装置を形成すること,新設下枠の排水孔を,例えば網戸レール等の室外端の起立条に室外側の水平方向に透設し,水抜ピースの下端を該排水孔から室外に雨水の排出をなし得るようにすること,水抜ピースをステンレス板の加工によって形成したものとすること,水抜ピースを雨水受口と雨水排出口の上下を開口した中空のものとすること等を含めて,本発明の実施に当って,改装サッシ,既設下枠の室外側突出レールに設けた部分開口,新設下枠,その水抜孔,排水孔,水抜ピース,必要に応じて用いる排水キャップ等の各具体的形状,材質,構造,これらの関係,これらに対する付加等は,上記発明の要旨に反しない限り様々の形態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】改装サッシの下枠構造を示す縦断面図である。
【図2】水抜装置の構造を示す下枠の縦断面図である。
【図3】水抜装置の外観を示す下枠の平面図である。
【図4】水抜ピースの側面図である。
【図5】水抜ピースの平面図である。
【図6】水抜ピースの斜視図である。
【図7】排水キャップの斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
A 下枠
1 既設下枠
11 突出レール
12 網戸レール
13 既設額縁
2 新設下枠
21 下枠本体
211 下枠基板
212 突出レール
213 気密条
214 支持脚
215 傾斜支持条
216 室外側固定片
217 水抜孔(室外側)
218 水抜孔(室内側)
219 排水孔
22 ブラケット
221 額縁載置条
222 支持条
3 排水キャップ
31 キャップ基部
32 仕切片
33 載置突片
34 端部載置突片
35 係止突片
4 部分開口部
5 水抜ピース
51 排水基板
52 起立壁
53 対接突条
54 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設下枠の室内外一対の突出レールを残存してカバー工法によって該既設下枠の上記突出レール上にこれに近接して新設下枠の下枠基板を被覆配置してサッシ改装を施した改装サッシであって,上記既設下枠における室内外一対のうちの室外側突出レールにおける長手方向部分的に室内外に開口した突出レールの部分開口部と,上記新設下枠の長手方向対応位置の下枠基板を透設して該下枠基板に配置した水抜孔及び該新設下枠の室外側端部に透設した排水孔と,下枠基板の水抜孔と排水孔間を連結するように上記部分開口部を通過して配置した水抜ピースとを備えてなることを特徴とする改装サッシの下枠水抜き装置。
【請求項2】
上記突出レールの部分開口部を,該突出レールをその突出方向一部又は全部を現場曲げして形成してなることを特徴とする請求項1に記載の改装サッシの下枠水抜き装置。
【請求項3】
上記突出レールの部分開口部を,該突出レールをその突出方向一部又は全部を現場切欠きして形成してなることを特徴とする請求項1に記載の改装サッシの下枠水抜き装置。
【請求項4】
上記下枠基板の水抜孔が排水キャップを備え,上記水抜ピースを新設下枠の下面側で該排水キャップ下位に配置してなることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の改装サッシの下枠水抜き装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−50909(P2008−50909A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−230651(P2006−230651)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(302045705)トステム株式会社 (949)
【Fターム(参考)】