説明

改質された表面および表面を改質するための方法

表面を有する基材、基材の表面の少なくとも一部分上に配置したナノスケールの無機酸化物粒子の層(該ナノスケールの無機酸化物粒子の層は、第1の極性の電荷を有する部位を含む。)、およびナノスケールの無機酸化物粒子の層の少なくとも一部分上に配置されたポリマーの単層(ポリマーの該単層は、第2の極性の電荷を有する部位を有し、ここでこの第2の極性は、この第1の極性と反対である。)を含む、表面改質された基材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質された表面および表面を改質するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの材料、特にポリマーおよびセラミックは、それらの表面と他の材料との間の相互作用が重要である用途において使用される。触媒作用および薬物送達等の表面化学的および物理的特性は、多くの用途において最も重要であり、そして接着等の多くの工学的設計の考慮において重要な因子である場合がある。基材の表面の化学的および/または物理的特性を改質するためにプラズマ処理およびコロナ放電等の公知の技術がある。しかし、多くの場合、ポリマー表面の改質等の高エネルギー処理の効果は、長い間に散逸してしまう傾向があり、そしてそれによって与えられた表面改質の耐久力は、限定されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、耐久性のある表面改質技術への更なる要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の形態において、本発明は、
(a)表面を有する基材、
(b)基材の表面の少なくとも一部分上に配置したナノスケールの無機酸化物粒子の層、該ナノスケールの無機酸化物粒子の層は、第1の極性の電荷を有する部位を含む、および
(c)ナノスケールの無機酸化物粒子の層の少なくとも一部分上に配置されたポリマーの単層、該コポリマーの単層は、第2の極性の電荷を有する部位を含み、ここで、この第2の極性は、この第1の極性と反対である、
を含む、表面改質された基材を対象にする。
【0005】
第2の形態において、本発明は、基材の表面を改質するための方法であって、
a)基材の表面の少なくとも一部分上に多量のナノスケールの無機酸化物粒子を堆積させるために、ナノスケールの無機酸化物粒子のスラリーを用いて、基材の表面の少なくとも一部分を処理する工程、ここで、ナノスケールの無機酸化物粒子は、第1の正味電荷を有する、および
b)第2の電荷を有するユニットを含むポリマーの水溶液または分散体を用いて、第2の正味電荷の極性が第1の正味電荷の極性と反対であるpHにおいて、ナノスケールの無機酸化物粒子で処理された表面を処理する工程、
の各ステップを含む、方法を対象にする。
【0006】
この方法は、全ての種類の表面上に、所望の官能性、例えば、防汚(antifouling)、抵抗減少、水シーティング(water sheeting)、防汚(antisoiling)、付着防止、または耐放射線特性等の所望の機能性を提供する表面改質を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明による表面改質された基材の1つの態様の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書中で使用される場合、「電荷」の用語は、それぞれの場合において、所与の基準枠(a given frame of reference)内の水素イオン(proton)の数または密度に比較して、負電荷の場合、電子の過剰または高い相対密度、および正電荷の場合、電子の欠乏または低い相対密度から生じた電気的不均衡を意味する。
【0009】
表面、ポリマー、または粒子等の物体に関して、本明細書中で使用される場合、「正味電荷」の用語は、物体の相対的界面、典型的には物体の外部表面上の全ての正電荷および負電荷を等差級数的に合計することによって得られた結果を意味する。正味電荷および表面の正味電荷は、’’Zeta Potential in Colloid Science’’(Colloid Sciences Series)by Robert J.Hunter、Academic Pr;New Ed edition(January 1989)pp.59〜129に記載された等の公知の方法により表面の流動電位を測定することにより定量化できる。
【0010】
電荷に関して本明細書中で使用される場合、「極性」の用語は、電荷の「正」または「負」のいずれかである特別な状態を意味する。
【0011】
多くの場合、正味電荷の極性は、物体の相対的界面上のカチオン性およびアニオン性部位の相対量の定性的評価に基づいて、正味電荷を計算したり、または測定したりすることなく信頼性を持って予測できる。例えば、優位なアニオン性部位を有する表面の正味電荷の極性は負であろう。同様に、優位なカチオン性部位を有する表面の正味電荷の極性は正であろう。
【0012】
本明細書中で使用される場合、第2の正味電荷の極性が、第1の正味電荷の極性と「反対」であることを示すことは、それぞれの正味電荷の一方の極性が負であり、そしてもう一方の正味電荷の極性が正であることを意味する。
【0013】
ナノスケールの無機酸化物粒子の層の表面上に配置されたポリマーに関して本明細書中で使用される場合、「単層」の用語は、ポリマーの層であって、コポリマーのそれぞれの分子の少なくとも一部分が、ナノスケールの無機酸化物粒子の層の表面と直接接触しているポリマーの層を意味する。典型的には、ポリマーの単層の平均厚さは、ポリマー分子の平均特徴的寸法に相当するであろう。
【0014】
以下の記載は、図1中に示された本発明による表面改質された基材の態様の断面図に言及する。
【0015】
単層のポリマー(3)は、ナノスケールの無機粒子(2)上の第1の極性の電荷を帯びた部位と、ポリマー層(3)上の反対の極性の電荷を帯びた部位との間の引力から生じる静電力により、ナノスケールの無機粒子(2)の層に付着すると考えられている。
【0016】
一態様では、ナノスケールの無機粒子(2)の層は、基材(1)の表面(4)と接触している第1の表面(5)および基材(1)の表面(4)から外に向かって配向した第2の表面(6)を有する。ポリマー(3)の単層の堆積の前に、ナノスケールの無機粒子の層の第2の表面(6)は、ポリマーが堆積される水性ポリマー溶液または分散体との接触に使用可能である「自由」表面である。
【0017】
一態様では、ナノスケールの無機粒子(2)の層の第2の表面(6)の電荷を帯びた部位は、負の極性を有し、そしてポリマーの電荷を帯びた部位は、正の極性を有する。
【0018】
一態様では、ナノスケールの無機粒子(2)の層の第2の表面(6)の電荷を帯びた部位は、正の正味極性を有し、そしてポリマーの電荷を帯びた部位は、負の極性を有する。
【0019】
一態様では、ナノスケールの粒子(2)の層の第2の表面(6)は、ナノスケールの無機酸化物粒子の第2の表面層に、第1の極性の正味電荷を与えるのに効果的な量の第1の極性を有する電荷を帯びた部位を含む。
【0020】
一態様では、単層のポリマー(3)は、ナノスケールの無機酸化物粒子の層(2)の第2の表面(6)と接触した第1の表面(7)を有し、そして単層のポリマー(3)の第1の表面(7)は、単層のポリマー(3)の第1の表面(7)に、第2の極性の正味電荷を与えるのに効果的な量の第2の極性を有する電荷を帯びた部位を含む。
【0021】
一態様では、ナノスケールの無機粒子(2)の層の第2の表面(6)は、負の正味電荷を有し、そしてポリマー(3)の層の第1の表面(7)は、正の正味電荷を有する。
【0022】
一態様では、ナノスケールの無機粒子(2)の層の第2の表面(6)は、正の正味電荷を有し、そしてポリマーの層の第1の表面は、負の正味電荷を有する。
【0023】
一態様では、単層のポリマー(3)は、不連続的な層である。単層のポリマー(3)に関して本明細書中で使用される場合、「不連続的な」の用語は、単層がボイドを含み、そのボイドを通して、無機ナノ粒子(2)の層が部分的に曝され、無機ナノ粒子の層がポリマー(3)の単層に覆われている範囲間または範囲中で画定されていることを意味する。
【0024】
一態様では、単層のポリマー(3)は、少なくとも実質的に連続的であり、さらに典型的には、連続的である。単層のポリマー(3)の範囲に関して本明細書中で使用される場合、「連続的な」の用語は、単層のポリマー(3)が空隙空間を有さない領域で、無機ナノ粒子(2)の層を覆うことを意味する。
【0025】
一態様では、単層のポリマー(3)は、ナノスケールの無機酸化物粒子の層(2)から外向きに配向した第2の表面(8)を有する。
【0026】
一態様では、単層のポリマー(3)の第2の表面(8)は、単層のポリマー(3)の第2の表面(8)に第1の極性の正味電荷を与えるのに効果的な量の第1の極性の電荷を帯びた部位を含む。電荷を帯びた部位が単層のポリマー(3)の第2の表面(8)上に存在する態様では、本発明の工程のいずれかまたは両方のステップは、基材の表面上に、ナノ粒子およびコポリマーの積み重なった層を積み上げるように繰り返すことができる。
【0027】
一態様では、単層のポリマーの第2の表面(8)は、ポリマー層の表面を少なくとも実質的に非極性にするのに効果的な量の非極性部位を含む。
【0028】
(a)基材
本発明の改質工程は、基材の表面の化学的および物理的特性に敏感ではなく、そして本発明の基材は、任意の固体材料であることができる。
【0029】
一態様では、基材は、有機ポリマー、有機ケイ素ポリマー、セラミック、金属、複合材料、または無機材料以外のセラミックまたは金属である。好適な有機ポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびポリスチレン等のポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリレート、ポリテトラフルオロエチレン等のハロゲン化ポリマー、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリナフタレン、ポリ(p−フェニレンスルフィド)、ポリ(パラフェニレンビニレン)等の導電性ポリマー、ポリアミド、ポリ(エーテルケトン)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリウレタン等のエンプラ等のホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、ならびにポリマーブレンドを含む。好適な有機ケイ素ポリマーは、例えば、ポリジメチルシロキサンを含む。好適なセラミックは、例えば、アルミナ、ジルコニア、シリカ、シリコーンカーバイド、窒化ケイ素を含む。好適な金属は、クロム、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅、白金、パラジウム、金およびこれらの金属の合金を含む。好適な複合物は、例えば、シリカ充填エチレンプロピレンジエンゴム、カーボンナノチューブポリマー複合物および金属粒粒子充填ポリマー等の繊維または粒子強化ポリマーを含む。さらなる基材としては、溶融ガラス、石英、フッ化カルシウム、マイカ、ケイ素、ゲルマニウムおよびインジウムスズ酸化物等の材料をまた含む。
【0030】
基材は、例えば、繊維、平面または成形シート、中空管、球体を含む成形品等の、または連続的もしくは不連続的であることができ、第2の基材上に支持された層としての任意の物理的形状であることができる。
【0031】
一態様では、基材の表面は、約200nm未満、さらに典型的には、約100〜約200nmの二乗平均平方根(「RMS」)表面粗さを有する。
【0032】
(b)ナノスケールの無機粒子の層
一態様では、基材は、約10nm未満、さらに典型的には、約2nm未満のRMS表面粗さを有する。
【0033】
本明細書中で使用される場合、「一次粒子」の用語は、単一の離散した粒子を意味し、そして「二次粒子」の用語は、2つまたは3つ以上の一次粒子の凝集体を意味する。「一次」または「二次」を特定しない「粒子」への言及は、一次粒子、または二次粒子、または一次粒子および二次粒子を意味する。
【0034】
本明細書中で使用される場合、粒子に関して「ナノスケール」の用語は、粒子が約1〜約1000ナノメートル(「nm」)の平均粒子直径(「D50」)を有することを意味する。一態様では、ナノスケールの一次粒子は、約5〜約1000nm、またさらに典型的には、約10〜約800nm、そしてまたさらに典型的には、約20〜約500nmのD50を有する。一態様では、ナノスケールの一次粒子は、約1〜約500nm、またさらに典型的には、約1〜約100nm、そしてまたさらに典型的には、約1〜約50nmのD50を有する。粒径は、動的光散乱法を使用して決定できる。
【0035】
好適な無機酸化物は、酸化セリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化タングステンおよび酸化ビスマス、酸化亜鉛、酸化インジウム、および酸化スズ、酸化鉄、シリカ、およびこれらの酸化物の混合物等の単一元素の酸化物、ならびにセリウムジルコニウム酸化物等のこれらの元素の混合物の酸化物を含む。
【0036】
無機酸化物粒子は、例えば、金属イオン、硝酸イオン等の架橋したまたは吸収されたイオンを含むことができる。
【0037】
一態様では、無機酸化物は、結晶の固体である。さらに典型的には、無機酸化物の粒子の水性ゾルは、帯電および/または静水圧力によって安定化されており、そしてpH、イオン性強度、および濃度の摂動による不安定化に曝されている。これらの無機酸化物は、典型的には高酸性または高塩基性の反応条件下で合成される。
【0038】
一態様では、無機酸化物は、酸化鉄、酸化ジルコニウムおよび酸化セリウムから選択される。さらに典型的には、無機酸化物は、酸化セリウムである。
【0039】
ゾルゲル技術、水添加、金属塩の強制加水分解または金属アルコキシドと金属ハロゲン化物との反応による金属アルコキシドの直接加水分解等の好適な無機酸化物粒子を製造するための方法は、公知である。
【0040】
一態様では、ナノスケールの無機酸化物粒子は、セリウム塩の沈殿によって製造される。
【0041】
一態様では、ナノスケールの無機酸化物粒子は、また「スラリー」とも呼ばれる、水性媒体中に分散した該粒子のゾルの形態で最初に存在する。典型的には、水性媒体は、少なくとも40wt%、さらに典型的には、少なくとも50wt%の水、そしてまたさらに典型的には、少なくとも60wt%の水を含む。一態様では、水性媒体は水から本質的になる。水性媒体は、任意選択的に、例えば、テトラヒドロフラン、N。N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、メタノール、エタノール、2−プロパノール等の(C〜C)アルカノールおよびエチレングリコールまたは、プロピレングリコール等のジオール等の1種または2種以上の水混和性有機液体をさらに含むことができる。
【0042】
一態様では、ゾルの水性媒体は、100重量部(「pbw」)の水性媒体を基準として、約0〜約100pbw、さらに典型的には、約40〜約100pbw、そしてまたさらに典型的には、約50〜約100pbwの水、そして0〜約90pbw、さらに典型的には、0〜約60pbw、そしてまたさらに典型的には、約0〜約50pbwの1種または2種以上の水混和性有機液体を含む。
【0043】
ゾルは、ナノスケールの無機酸化物粒子が、水性媒体中で分散したままである傾向があるゾルである安定なゾルを提供するのに効果的なpHを少なくとも最初に示す。一態様では、ナノスケールの無機酸化物粒子スラリーは、ナノスケールの酸化セリウム粒子を含み、そして約2以下のpHを示す安定なスラリーである。別の態様では、ナノスケールの無機酸化物粒子スラリーは、ナノスケールの酸化ケイ素粒子を含み、そして約7.5〜約8.5のpHを示す安定なスラリーである。
【0044】
一態様では、安定なナノスケールの無機酸化物粒子のゾルと表面とを接触させること、そして次にゾルを不安定化させるようにゾルのpHを調整し、そしてゾルからのナノスケールの無機酸化物粒子の沈殿を表面上に生じさせることによって、ナノスケールの無機酸化物粒子は、基材の表面上に堆積される。
【0045】
一態様では、ゾルは、ゾルの全重量を基準として、0〜約10wt% (wt%’’)より多い、さらに典型的には、約0.01〜約5wt%のナノスケールの無機酸化物粒子を含む。一態様では、ゾルは、約0.01〜約1.0wt%の、そしてまたさらに典型的には、約0.01〜約0.5wt%のナノスケールの無機酸化物粒子を含む。
【0046】
一態様では、安定なゾルのpHは、最初、約2以下、さらに典型的には、約1.5以下であり、そして約3〜約14、さらに典型的には、約4〜約12、そしてさらに典型的には、約5〜約8の値に調整されて、ゾルからナノスケールの無機粒子を沈殿させる。
【0047】
一態様では、安定なゾルのpHは、最初、約10以上、さらに典型的には、約11以上であり、そして約1〜約9、さらに典型的には、約4〜約9、そしてまたさらに典型的には、約5〜約8の値に調整されて、ゾルからナノスケールの無機粒子を沈殿させる。
【0048】
一態様では、ゾルの水性媒体は、ゾルを不安定化させることなく基材の表面上にゾルからの粒子の堆積を促すのに効果的な量で溶解された電解質をさらに含む。理論に拘束されることを望まないが、電解質の存在は、ゾルのナノスケールの無機酸化物粒子間の静電相互作用を低下させ、そしてナノスケールの無機酸化物粒子が、ゾルから基材の表面上に堆積するにつれて帯電の増加を防止すると考えられている。一態様では、電解質の有効量は、水とゾルの任意の水混和性有機液体成分とを合せた量である100pbwの水性媒体当たり、0超〜約1pbwの、さらに典型的には、約0.01〜約0.1pbwの電解質である。
【0049】
好適な電解質は、ゾルから基材の表面上に粒子の堆積を促すのに効果的な量で存在する場合、ゾルを不安定化しないものであり、そして有機塩、無機塩、およびそれらの混合物を含む。電解質は、典型的には、カチオン性成分およびアニオン性成分を有する塩を含む。好適なカチオンは、一価または多価であることができ、有機物または無機物であることができ、そして、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、セシウム、およびリチウムカチオン、ならびに第一級、第二級、第三級もしくは第四級アンモニウムまたはピリジニウムカチオンを含む。好適なアニオンは、一価または多価であることができ、有機物または無機物であることができ、そして例えば、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、シアネートアセテート、安息香酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩、およびホスホン酸塩のアニオンを含む。好適な電解質は、例えば、ピロリン酸カリウム、ポリリン酸カリウム、およびクエン酸ナトリウム等の多価アニオンと一価のカチオンとの塩、塩化カルシウム、臭化カルシウム、亜鉛ハロゲン化物、塩化バリウム、および硝酸カルシウム等の多価カチオンと一価のアニオンとの塩、ならびに塩化ナトリウム、塩化カリウム、ヨウ化カリウム、臭化ナトリウム、臭化アンモニウム、アルカリ金属硝酸塩、および硝酸アンモニウム等の一価のカチオンと一価のアニオンとの塩を含む。
【0050】
一態様では、電解質は、多価アニオンと一価のカチオンとのおよび一価のカチオンと一価のアニオンとの1種または2種以上の塩を含む。
【0051】
一態様では、電解質は、一価のカチオン性成分および一価のまたは多価アニオン性成分を含む。一態様では、電解質は、硝酸塩を含む。好適な硝酸塩は、硝酸ナトリウムおよび硝酸カリウム、および硝酸アンモニウム、またはそれらの混合物等のアルカリ金属硝酸塩を含む。
【0052】
一態様では、電解質およびナノスケールの無機酸化物粒子を含む安定なナノスケールの無機酸化物粒子のゾルは、表面と安定な電解質を含むナノスケールの無機酸化物粒子のゾルとを接触させることによって、ゾルから基材の表面上へ堆積される。
【0053】
一態様では、ゾルは、安定な電解質を含むナノスケールの酸化セリウム粒子のゾルであり、そして約2以下、さらに典型的には、約1.5以下であるpHを示す。
【0054】
基材の表面は、安定な電解質を含むナノスケールの無機酸化物粒子のゾルと接触させられ、そしてその表面は、その後に水性のすすぎ溶液中ですすがれる。
【0055】
一態様では、基材の表面は、ゾル中に基材を浸すことによってゾルと接触させられる。
【0056】
基材の表面は、ゾルから基材の表面の少なくとも一部分上への多量のナノスケールの無機酸化物粒子の堆積を可能にするのに効果的な時間の間ゾルと接触させられる。所与のゾルでは、より長い接触時間は、典型的には、ゾルから基材の表面上へのより多量の堆積となる。一態様では、充分な接触時間は、0秒超、さらに典型的には、0秒超〜約100時間の任意の時間である。一態様では、接触時間は、0秒超〜約24時間、さらに典型的には、約1以上秒〜約5時間、そしてまたさらに典型的には、約10秒〜約1時間である。
【0057】
一般的に、処理された表面とゾルとの接触の終了と、処理された表面のすすぎとの間の時間は重要ではない。一態様では、処理された表面は、処理された表面から任意の弱く付着したナノスケールの無機酸化物粒子を除去するように、すすがれる。典型的には、表面とゾルとの接触が終了し、そして表面とゾルとの接触の直後にまたは実質的に直後に、表面は、水性のすすぎ溶液ですすがれる。任意選択的に、処理された表面は、表面とゾルとの接触が終了し、そしてすすぐ前の時間の間に乾燥させることができる。
【0058】
水性のすすぎ溶液は、水を含み、そして、任意選択的に、約70wt%まで、さらに典型的には、約30wt%までの水混和性有機液体をさらに含むことができる。
【0059】
一態様では、すすぎ溶液は、処理された表面からの堆積されたナノスケールの無機酸化物粒子の脱着を抑制するのに効果的な量で電解質をさらに含み、これは典型的には0超〜約1wt%の、さらに典型的には、約0.01wt% 〜約0.1wt%の電解質である。
【0060】
すすぎ溶液のpHは重要ではない。ゾルのナノスケールの無機酸化物粒子がナノスケールの酸化セリウム粒子である一態様では、すすぎ溶液は、7以上、さらに典型的には、7〜約12、そしてさらに典型的には、約10〜約12であるpHを示す。
【0061】
一態様では、表面上のナノスケールの粒子の層は、単層である。ナノスケールの無機粒子に関して本明細書中で使用される場合、「単層」の用語は、1つの粒子厚みの層を意味する。
【0062】
一態様では、疎水性表面上のナノスケールの粒子の層は、粒子の不連続層である。粒子の層に関して本明細書中で使用される場合、「不連続的な」の用語は、層が離散した粒子の間および/またはさらに緊密に充填された粒子の間の領域で画定される空隙空間の領域を含むことを意味する。
【0063】
一態様では、疎水性の表面上のナノスケールの粒子の層は、少なくとも実質的に粒子の連続的な層である。粒子の単層に関して本明細書中で使用される場合、「連続的な」の用語は、層の典型的な粒子が実質的に層の他の粒子によって囲まれかつ接触するように、層の粒子が緊密に充填されていることを意味する。
【0064】
一態様では、堆積された無機粒子を含む基材は、水蒸気で飽和できるか、または飽和できない環境中で298°K 〜773°K、さらに典型的には、298°K〜473°K、そしてまたさらに典型的には、298°K 〜298°Kの温度で、更なる時間の間アニーリングできる。
【0065】
無機酸化物粒子は、これらの粒子の間で共有結合を形成するように、その隣接した粒子のヒドロキシル基との縮合を受けるのに有用な表面のヒドロキシル基を含むことができる。
【0066】
一態様では、表面上のナノスケールの粒子の層は、少なくとも実質的に粒子の連続的な単層であり、層の典型的な粒子は、実質的に単層の他の粒子によって囲まれ、接触し、そして結合している。
【0067】
ナノスケールの無機酸化物粒子の層は、本発明の表面改質された基材の化学的および/または物理的特性、例えば、化学的反応性および/または表面エネルギーを改変する。
【0068】
一態様では、表面改質された基材は親水性化された基材であって、この親水性化された基材は、疎水性表面を最初に有する基材、およびこの疎水性表面のそうした部分の親水性を高めるのに効果的な量で、基材の疎水性表面の少なくとも一部分上に配置されたナノスケールの無機酸化物粒子の層を含む。
【0069】
本明細書中で使用される場合、「疎水性の表面」は、70°以上、さらに典型的には、90°以上の水での接触角から明らかなように、水を撥き、従って水による膨潤に抵抗する傾向を示す表面を示す、「親水性の表面」は、70°未満、さらに典型的には、60°未満、そしてまたさらに典型的には、20°未満の水との接触角から明らかなように、水への親和性を示し、従って水によって濡れることができる表面を意味し、そして疎水性の表面の「親水性化」は、低下した水との接触角によって示されるように、表面にさらなる親水性、従ってより少ない疎水性を与えることを意味し、それぞれの場合において、水との接触角は、25℃で、典型的には実質的に平面の表面上に水滴を配置し、液滴の写真を撮り、そして写真の画像中に示された接触角を測定することである従来の画像分析法によって測定される。
【0070】
処理された疎水性の表面の増加した親水性の一つの目安は、未処理の表面と水滴との接触角と比較した、処理された表面との水滴の減少した接触角である。水滴の接触角は、実質的に平面が無いことによる繊維表面の形状のせいで典型的な繊維に関しては決定しにくい。繊維表面の代表例である水滴の接触角測定は、関心の対象の繊維と同じ材料の平面シートまたはサンプル片を使用して、簡便に決定できる。典型的には、処理された表面は、70°未満、さらに典型的には、60°未満、またさらに典型的には、45°未満の水滴の接触角を示す。
【0071】
一態様では、未処理の疎水性の基材は、約70°以上、さらに典型的には、80°以上の水滴の前進接触角(θ)を有し、そして続く本発明による表面改質により、約40°以下、さらに典型的には、約20°以下の水の前進接触角(θ)、および約60°以下、さらに典型的には、約45°以下の水の後退接触角(θ)を示す。
【0072】
本発明による表面改質によって与えられた親水性の特性は、かなり耐久性があり、そして本発明による親水性に改質された基材は、続く処理において45°未満のθおよび20°未満のθを維持する。これは、プラズマおよびバルク官能化等の古典的な処理の直ぐ後で典型的にみられるポリプロピレン等のポリマーでのアモルファス領域の疎水性の回復と対照的である。本発明の層の表面改質された基材の有機酸化物層は、下地をなす表面に固くしっかりと固定され、そして酸化物層平面中で架橋したかのように機能し、あらゆる自由エネルギー最小化のために行われる下地をなす表面の再組織化を妨げるようである。
【0073】
疎水性の表面を有する好適な基材は、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびポリスチレン等のポリオレフィン基材、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリレート基材、ポリテトラフルオロエチレン等のハロゲン化ポリマー基材。およびポリジメチルシロキサン等の有機ケイ素ポリマー基材を含む。
【0074】
一態様では、基材は、ポリオレフィンシートまたは、例えば、自動車の構成部分等の成形されたポリオレフィン物品である。
【0075】
それぞれの場合において、表面処理は、耐久性があり、そして水の存在下で、基材からの脱着に抵抗する。
【0076】
(c)ポリマーの単層
一態様では、ポリマーは、1種または2種以上のホモポリマーを含み、そのそれぞれは、モノマー単位のホモポリマーであり、そのそれぞれは、電荷を帯びた置換基、典型的には、カチオン性置換基またはイオン性置換基であるイオン性置換を有する。一態様では、ポリマーは、1種または2種以上のポリカチオン性ホモポリマーを含み、そのそれぞれは、カチオン性モノマー単位のホモポリマーであり、そのそれぞれはカチオン性置換基を有する。一態様では、ポリマーは、1種または2種以上のポリアニオン性ホモポリマーを含み、そのそれぞれは、アニオン性モノマー単位のホモポリマーであり、そのそれぞれは、アニオン性置換基を有する。
【0077】
一態様では、ポリマーは、電荷を帯びた部分Aおよび電気的に中性の部分Bを含む1種または2種以上のコポリマーを含む。一態様では、ポリマーは1種または2種以上のポリカチオン性コポリマーを含む、そのそれぞれはカチオン性モノマー単位を含むコポリマーであり、そのそれぞれはカチオン性置換基および中性のモノマー単位を有する。一態様では、ポリマーは1種または2種以上のポリアニオン性コポリマーを含む、そのそれぞれはアニオン性モノマー単位を含むコポリマーであり、そのそれぞれはアニオン性置換基および中性のモノマー単位を有する。
【0078】
ポリマーは、極性部分および中性の部分を含む任意の好適なコポリマーであることができる。典型的には、コポリマーの極性部分は、水性媒体中でイオン化して、コポリマー上に電荷を帯びた部位を形成するイオン性置換基である。例えば、コポリマーは、ブロックコポリマーまたは櫛状コポリマーであることができる。一態様では、コポリマーは、部分Aおよび部分Bとして本明細書中に記載された少なくとも2つのブロックを含むブロックコポリマーであり、部分Aは1つのブロックに相当し、および部分Bは別のブロックに相当する。部分Aはまた任意選択的には、組成の勾配を含むことができる。典型的には、本発明による櫛状コポリマーまたはグラフト化コポリマーは、部分Aおよび部分Bとして本明細書中に記載された主鎖および側鎖を含み、部分Aは主鎖に相当し、そして部分Bは側鎖に相当し、または逆に相当する。
【0079】
一態様では、コポリマーは、少なくとも2つの異なるブロック、ブロックA、およびブロックBを含むブロックコポリマーであり、該コポリマー溶液のpH条件において、部分Aはポリイオン性であり、そして部分Bは中性である。
【0080】
コポリマーの部分Aは、部分Aが含む繰り返し単位により規定されている。A部分は、ポリマーの名前、またはポリマーが誘導されるモノマーの名前により規定できる。本明細書において、モノマーから得られた単位は、重合によって該モノマーから直接得ることができる単位と理解される。部分Aは、幾つかのモノマーから誘導された幾つかの種類の繰り返し単位を含むコポリマーであることができる。それ故に、部分Aと部分Bとは、異なるモノマーから誘導された異なるポリマーであるが、いくつかの共通の繰り返し単位(コポリマー)を含むことができる。部分Aおよび部分Bは、典型的には、50%超の(同じモノマーから誘導された)共通の繰り返し単位を含まない。
【0081】
一態様では、部分Aは、調合物のpH条件中でポリイオン性(ポリアニオン性またはポリカチオン性)である。これは、部分AがpHに関わらずイオン性(アニオン性またはカチオン性)の繰り返し単位を含むこと、または部分Aが調合物のpHによって中性またはイオン性(アニオン性またはカチオン性)であることができる繰り返し単位(この単位は、電位的にイオン性である)を含むことを意味する。組成物のpHによって中性またはイオン性(アニオン性またはカチオン性)であることができるA単位は、その後、A単位が中性形態に、またはイオン性形態(アニオン性またはカチオン性)にある場合はいつでも、イオン性単位(アニオン性またはカチオン性)として、またはイオン性モノマー(アニオン性またはカチオン性)から誘導された単位と称されることができる。好適なコポリマーは、米国特許出願公開第2005/0176863号明細書および米2006年1月6日出願の米国特許出願番号第11/445、115号明細書、米国特許第6933340号明細書に記載されており、これらの出願および特許を参照により本明細書中へ取り込む。
【0082】
一態様では、ホモポリマーまたはコポリマーの部分Aは、ポリカチオン性であり、そして、カチオン性モノマーから誘導されたモノマー単位を含む。いくつかの好ましいカチオン性モノマーは、式−NR(式中、同一であるかまたは異なるRは、水素原子、1〜10個の炭素原子を含むアルキル基、またはベンジル基を表し、任意選択的にヒドロキシル基を有する。)のアンモニウム基を含み、そして、アニオン(対イオン)を含むことができる。アニオンの例は、塩化物および臭化物等のハロゲン化物、硫酸塩、硫酸塩(hydrosulfate)、(例えば、1〜6個の炭素原子を含む)アルキル硫酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、擬酸塩、および酢酸塩である。
【0083】
好適なカチオン性モノマーは、例えば:特にメタアクリレート、および少なくとも1つの第二、第三級または第四級アミン官能、または窒素原子を含む複素環基、ビニルアミンまたはエチレンイミンを含むメタアクリルアミド誘導体を含むアミノアルキルメタアクリレート、アミノアルキルメタアクリルアミド、モノマー;ジアリルジアルキルアンモニウム塩;およびそれらの混合物、それらの塩、およびそれらから誘導されたマクロモノマーを含む。
【0084】
カチオン性モノマーの具体例は:ジメチルアミノエチルメタアクリレート、ジメチルアミノプロピルメタアクリレート、ジターシオ( ditertio)ブチルアミノエチルメタアクリレート、ジメチルアミノメチルメタアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタアクリルアミド;エチレンイミン、ビニルアミン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン;トリメチルアンモニウムエチルメタアクリレートクロライド、トリメチルアンモニウムエチルメタアクリレートメチルサルフェート、ジメチルアンモニウムエチルメタアクリレート塩化ベンジル、4−ベンゾイルベンジルジメチルアンモニウムアクリル酸エチルクロライド、トリメチルアンモニウムエチルメタアクリルアミド(2−(アクリロキシ)エチルトリメチルアンモニウム、TMAEAMS、またはPadamquat)クロライド、トリメチルアンモニウムエチルメタアクリレート(2−(アクリロキシ)エチルトリメチルアンモニウムとも呼ばれる、TMAEAMS、またはPadamquat)メチルサルフェート、トリメチルアンモニウムプロピルメタアクリルアミドクロライド、ビニルベンジルトリメチル塩化アンモニウム、ジアリルジメチル塩化アンモニウム、次式を有するモノマー:
【化1】

【0085】
(式中、
は、水素原子またはメチルもしくはエチル基であり;同一であるか又は異なるR、R、R、RおよびRは、直鎖または分枝鎖のC〜C、典型的にはC〜C、アルキル、ヒドロキシアルキルまたはアミノアルキル基であり; mは、1〜10の整数、例えば1であり; −nは、1〜6、典型的には2〜4である; Zは、−C(O)O−または−C(O)NH−基または酸素原子を表し; (CH基、1〜6、典型的には2〜4の整数であるpを表し;
【0086】
Bは、任意選択的に、1つまたは2つ以上のヘテロ原子またはヘテロ基、特にOまたはNHを鎖中に含み、そして任意選択的に、1つまたは2つ以上のヒドロキシルまたはアミノ基、典型的にはヒドロキシル基により置換された、直鎖または分枝鎖のC〜C12、有利にはC〜C、ポリメチレンを表し;そして
【0087】
同一であるか、または異なるXは、対イオン、およびそれらの混合物、およびそこから誘導されたマクロモノマーを表わす。)
を含む。
【0088】
本発明の別の態様では、ホモポリマーまたはコポリマーの部分Aは、ポリアニオン性であり、そしてアニオン性モノマーから誘導されたモノマー単位を含む。
好適なアニオン性モノマーは、例えば:
ホスフェートまたはホスホネート基を含むα−エチレン性不飽和モノマー、
α−エチレン性不飽和モノカルボン酸、
α−エチレン性不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル、
α−エチレン性不飽和ジカルボン酸のモノアルキルアミド、
スルホン酸基を含むα−エチレン性不飽和化合物、およびスルホン酸基を含むα−エチレン性不飽和化合物の塩、
を含む。
【0089】
一態様では、ポリマーのアニオン性モノマー単位は、
アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸の塩、メタクリル酸の塩、
ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸の塩、
ビニルベンゼンスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸の塩、
α−アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、α−アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸の塩、
メタクリル酸2−スルホエチル、メタクリル酸2−スルホエチルの塩、
アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の塩、および、
スチレンスルホネート(SS)、およびスチレンスルホネート(SS)の塩、
からなる群から選択される1種または2種以上のアニオン性モノマーから誘導されている。
【0090】
コポリマーの部分Bは、典型的には調合物のpH条件において中性であり、そして中性のいかなるpHであっても中性のままである中性のモノマーから誘導されたモノマー単位を含む。
好適な中性のモノマーは、例えば:
エチレンオキサイド、およびプロピレンオキサイド等のアルキルオキサイド、
アクリルアミド、メタクリルアミド、
α−エチレン性不飽和の、典型的にはモノ−α−エチレン性不飽和の、モノカルボン酸のアミド、
α−エチレン性不飽和の、典型的にはモノ−α−エチレン性不飽和の、モノカルボン酸のエステル、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルエステル、または2−ヒドロキシエチルアクリレート等のヒドロキシアルキルエステル、
ポリエチレンおよび/またはポリプロピレンオキサイドメタアクリレート(すなわち、ポリエトキシル化および/またはポリプロポキシル化メタアクリル酸)、
ビニルアルコール、
ビニルピロリドン、
ビニルアセテート、
ビニルバーサテート(versatate)、
典型的には、3〜12炭素原子を含むビニルニトリル、
アクリロニトリル、ビニルアミンアミド、
スチレン等のビニル芳香族化合物、およびそれらの混合物、
を含む。
【0091】
一態様では、ポリマーは、例えば、ポリ(トリメチルアンモニウムアクリル酸エチル硫酸メチル)ホモポリマー等のポリカチオン性ホモポリマーを含む。
【0092】
一態様では、ポリマーは、例えば、ポリ(トリメチルアンモニウムアクリル酸エチル硫酸メチル)−b−ポリアクリルアミド)ブロックコポリマー等のカチオン性ブロックおよび中性ブロックを有するブロックコポリマーである。
【0093】
一態様では、ポリマーは、例えば、ポリ(スチレンスルホネート)ホモポリマー等のポリアニオン性ホモポリマーを含む。
【0094】
一態様では、ポリマーは、例えば、ポリ(スチレンスルホネート)− b−ポリアクリルアミド)ブロックコポリマー等のアニオン性ブロックおよび中性のブロックを有するブロックコポリマーである。
【0095】
調合物のpH条件中でイオン性である部分は、通常水溶性と考えられている。従って、部分Aは、通常、水溶性と考えられている。本発明の好ましい態様では、部分Bは、水溶性、または親水性である。水溶性の部分は、同じ分子量を有するその部分以外の、同じ繰り返し単位からなりポリマーの水溶性となる他の部分がないであろうとした、その部分の水溶性をいう。水溶性の部分、ポリマーによって、その部分、ポリマーが、20℃〜30℃の温度において、0.01wt% 〜10wt%の濃度で、水中で肉眼的に相分離しないことを意図する。
【0096】
一態様では、コポリマーは、例えば、Schmolka、J.Am.OilChem.Soc.1977、54、110;またはあるいはWilczek−Veraetら、Macromolecules 1996、29、4036に記載された2モノマーの逐次添加を伴うアニオン性重合によって作られる。使用できる別の方法は、例えば、Katayose and Kataoka、Proc.Intern.Symp.Control。ReI。Bioact。Materials、1996、23、899に記載されたような他の部分ポリマーのそれぞれの終端において、部分ポリマーの重合を開始させることにある。
【0097】
一態様では、コポリマーQuirk and Lee (Polymer International 27、359 1992))によって規定されたようにリビングまたは制御重合させることによって製造される。実際、この特別な方法は、狭い分散度を有し、そしてその部分の長さおよび組成が化学量論および転化の度合いにより制御されているポリマーを調製することを可能にする。このタイプ重合と対照的に、さらに特に、例えば:国際公開第98/58974号パンフレットおよび米国特許第6、153、705号明細書の教示によりキサンテート(xanthate)によって制御されたラジカル重合、または国際公開第98/01478号パンフレットの教示によりジチオエステルにより制御されたラジカル重合等の任意のいわゆるリビングまたは制御重合法によって得ることができるコポリマーが勧められる。
【0098】
リビングまたは制御ラジカル重合プロセスにより得られたブロックコポリマーは、ポリマー鎖の終端に少なくとも1つの移動剤基(transfer agent group)を含むことができる。一態様では、これらの基は、重合の後で除去されるか、または不活性化される。
【0099】
リビングまたは制御ラジカル重合プロセスは、ブロックコポリマーを得るために、移動剤を使用すること、および異なるモノマーの添加を行うことを含む。
【0100】
制御された重合プロセスを実施するための好ましい移動剤は、ジチオエステル、チオエーテルチオン、ジチオカルバメート、またはキサンテートである。好ましい重合は、キサンテートを使用したリビングラジカル重合である。
【0101】
「ポリマー」および「コポリマー」の用語は、本明細書中で使用される場合、オリゴマーを含むが、ポリマーの重量平均分子量は、さらに典型的には、約1000〜約500、000g/molである。またさらに典型的には、100、000g/mol未満、そしてまたさらに典型的には、約15、000〜50、000g/molである。これらの範囲内で、それぞれのブロックの重量比は変化できる。しかし典型的には、それぞれのブロックは、約500g/mol、および典型的には約1000g/molの分子量を有する。
【0102】
本発明によるポリマー溶液は、典型的にはMΩの伝導度を有する脱イオン水(精製イオン交換フィルター、Millipore)に、粉末形態の所望の量のポリマーを加えることによって調製できる。ポリマーおよび水は、典型的には約24時間混合されて、典型的には、約1%以下の範囲にある濃度を有する均質性を達成する。
【0103】
一態様では、水性ポリマー溶液または分散体は、水性媒体中に、約0.001〜約5wt%、さらに典型的には、約0.01〜約1wt%のポリマーを含む。
【0104】
典型的には、上記のナノスケールの無機粒子のスラリーの水性媒体の場合として、ポリマーが溶解されるか、または分散される水性媒体は、少なくとも40wt%、さらに典型的には、少なくとも50wt%水、そしてまたさらに典型的には、少なくとも60wt%の水を含み、そして任意選択的に同じタイプの、かつナノスケールの無機粒子のスラリーの水性媒体に関して上記に記載したのと同じ相対量で、1種または2種以上の水混和性有機液体をさらに含むことができる。
【0105】
水性ポリマー溶液または分散体のpHは、成分が分解しない任意のpH、典型的には、約5〜約9のpHであることができる。
【0106】
単層のポリマーは、典型的には、例えば、ナノスケールの無機粒子をポリマーの水溶液または分散体に浸すことによる等の、ナノスケールの無機粒子の層とポリマーの水溶液または分散体とを接触させることによって、ナノスケールの無機粒子の層上に堆積される。ナノスケールの無機粒子の層は、0秒超〜約30分、さらに典型的には、約1秒〜約10分管の接触時間の間、典型的にはポリマーの水溶液または分散体と接触させられる。
【0107】
ナノスケールの無機粒子の層は、水性媒体が高速度で蒸発しない任意の温度および圧力において、典型的には、大気圧下で約20℃〜約40℃の温度において、さらに典型的には、周囲温度および大気圧において。ポリマーの水溶液または分散体と接触させられる。
【0108】
表面改質された基材は、任意選択的に、ナノスケールの無機粒子と、ポリマーの水溶液または分散体との接触の終了後に水ですすぐことができる。一般的に、処理された表面と、水性ポリマー溶液または分散体との接触の終了と、処理された表面のすすぎとの間の時間は重要ではない。一態様では、処理された表面は、処理された表面から、非常に弱く付着したポリマーを除去するためにすすがれる。典型的には、表面と水性ポリマー溶液または分散体との接触が終了し、そして表面は、表面と水性ポリマー溶液または分散体との接触の直後または実質的に直後に、水性のすすぎ溶液ですすがれる。任意選択的に、処理された表面は、表面と水性ポリマー溶液または分散体との接触が終了した後で、かつすすぎの前の時間の間に乾燥させることができる。
【0109】
ナノ粒子のゾル処理ステップの場合に上記に記載したように、水性ポリマー溶液または分散体処理ステップの後の水性のすすぎ溶液は、水を含み、そして、任意選択的に、約70wt%まで、さらに典型的には、約30wt%までの水混和性有機液体をさらに含むことができる。
【0110】
本発明の表面改質された基材のナノ粒子層は、放射吸収特性を提供する。層の放射吸収特性は、層の無機粒子成分の選択によって調整できる。例えば、酸化セリウム、TiO、およびFeは、それぞれが紫外範囲において放射を吸収し、そして酸化セリウム、TiO、および/またはFe粒子の層は、紫外線吸収特性を提供する。例えば、紫外線等の放射から合成ポリマー基材等の下地をなす基材を保護するために、放射を吸収する被膜は有用である。
【0111】
一態様では、本発明の物品は、疎水性材料でできた基材の表面に親水性特性を与える。
【0112】
本発明の表面改質された基材は、防汚特性を有する管またはパイプの内側表面等の表面を有する、例えば、管またはパイプ等の物品、また例えば、防汚特性および/または親水性特性である水シーティングを有するキッチンまたは浴室のカウンターの表面としての物品として有用である。
【実施例】
【0113】
例1
( Wafer World Incからの、1面研磨、偏光解析法で(100)の)薄いケイ素ウェハーを、約2nmの生の酸化ケイ素(SiO)層を用いて被覆した。約1.5のpHにおいて、10分間、ナノスケールの酸化セリウム粒子の0.1wt%水性ゾルに基材を浸した。ゾルの酸化セリウム粒子は、動的光散乱測定によって、約10ナノメートルの平均粒径を示した。次に、NHOHを加えることによって、約10のpHにpHを増加させた。次に全ての非吸着材料を除去するために、基材を純粋な脱イオン水を用いて充分にすすいだ。次に窒素流下で基材を乾燥させ、そして接触角を測定した。
【0114】
前進接触角(θ)は45°であった。後退接触角(θ)は、15〜20°未満であった。AFM (原子間力顕微鏡)および偏向解析測定は、層が実際ナノセリア(約6〜10nmの厚さ)の均質な単層であったことを示した。1月後に、接触角は同じままであった(約45°のθ、約15〜20°のθ)。
【0115】
例2
ポリスチレンは、アモルファスの、ガラス状(T=100℃)かつ疎水性(θ =90°)のポリマーである。ケイ素ウェハー上に、有機溶液(トルエン中で2.5wt% )から滑らかなモデルポリスチレン層(1x1μmの面積上で約1nmのRMS)を得るために、スピンコーティングを使用した。最終の厚さは、約100nmであった。
【0116】
ポリスチレンを被覆した基材のサンプルを、例1中の手順と同じ手順によりナノセリアを用いて処理した。
【0117】
前進接触角(θ)は、約45°であった。後退接触角(θ)は、15〜20未満であった。AFM測定は、層が実際ナノセリア(6〜10nmにほぼ等しい厚さ)の均質な単層であったことを示した。1月後に、接触角は同じままであった(約45°のθ、約15〜20°のθ)。
【0118】
例3
ポリプロピレンは、半結晶の、ゴム状(約−20℃に等しいT)および疎水性の(θ =105°)ポリマーである。有機溶液(熱キシレン中で2.5wt% )からケイ素ウェハー上に、滑らかなモデルポリプロピレン層(1x1μmの面積で約2nmに等しいRMS)を得るために、スピンコーティングを使用した。最終の厚さは、約100nmであった。
【0119】
ポリプロピレンで被覆した基材のサンプルを例1に記載したのと同じ手順により、ナノセリアを用いて処理した。
【0120】
前進接触角(θ)約45°であった。後退接触角(θ)は、15〜20°未満であった。AFM測定は、層が、実際、ナノセリアの均質な単層(約6〜10nmに等しい厚さ)であったことを示した。1月後に、接触角は同じままであった(45°に等しいθ、15〜20°に等しいθ)。
【0121】
例4
HNOを加えることによって、純粋なエタノール(約9.8に等しいpH)を、約1.5に等しいpHに酸性化した。水中にナノスケールの酸化セリウム粒子を分散した1wt%のゾル(約1.5に等しいpH)を、0.1wt%の酸化セリウム粒子濃度で、50:50の体積:体積ゾルを得るために、先のエタノール溶液を用いて希釈した。ゾルの酸化セリウム粒子は、動的光散乱測定によって約10ナノメートルの平均粒径を示した。このゾルは、約30ミリニュートン/メートル(mN/m)の表面張力を有した(純粋な水は、約72mN/mである。)。
【0122】
ポリエチレンシート(2cm×1cm×1mm)を、ゾル中に浸した(ポリエチレンは、約32mn/mの臨界表面張力γを有していたので、基材は溶液で完全に濡れた)、そして10秒後に回収し、そして次に純粋な(約6に等しいpHの)脱イオン水中に直ちに浸けて、ゾルを沈殿させた。次に、基材を充分にすすぎ、そして窒素流で乾燥させた。接触角を翌日測定した。前進接触角(θ)は約45°であった。後退接触角(θ)は、15〜20°未満であった。
【0123】
例5
脱イオン水中に分散したナノスケールの酸化セリウム粒子の0.1wt%ゾルを調製し、そして硝酸を用いて、pH1.5に酸性化した。ゾルの酸化セリウム粒子は、動的光散乱測定によって約10ナノメートルの平均粒径を示した。0.1M硝酸ナトリウムの添加によって、この溶液をさらに改質した。塩の添加はナノ粒子の分散性を変化させなかった。ポリカーボネートサンプル片を、分散体中に1時間、サンプル片を浸すことによって処理した。次にこれらのサンプル片を溶液から出し、そして脱イオン水中ですすいだ。すすいだ後で、基材を空気乾燥させ、そして接触角測定を使用して、小片の処理した表面の親水性をテストした。
【0124】
NaNOの存在下で酸化セリウムナノ粒子を用いて処理したポリカーボネート片上における水の後退接触角(θ)は39°であり、一方、未処理のポリカーボネート小片上における水の後退接触角は、60°であった。
【0125】
例6
脱イオン水中に分散したナノスケールの酸化セリウム粒子の0.1wt%ゾルを調製し、そして硝酸を用いてpH1.5に酸性化した。ゾルの酸化セリウム粒子は、動的光散乱測定によって約10ナノメートルの平均粒径を示した。この溶液を、0.1Mの硝酸ナトリウムの添加によりさらに改質した。塩の添加は、ナノ粒子の分散性を変化させなかった。ナイロン6、6のサンプル片を、小片を分散体中に1時間浸すことによって処理した。次に、これらの小片を溶液から除去し、そして脱イオン水中ですすいだ。すすいだ後で、基材を空気乾燥させ、そして接触角測定を使用して、小片の処理した表面の親水性をテストした。
【0126】
NaNOの存在下で、酸化セリウムナノ粒子を用いて処理したナイロン6、6片上での水の後退接触角(θ)は、24°であり、一方未処理のナイロン6、6小片上での水の後退接触角は、53°であった。
【0127】
酸化セリウムナノ粒子のゾルを用いた類似の様式で、NaNO塩成分のないナイロン6、6小片の処理は、未処理の小片上での水の後退接触角に比較して、処理した小片上での水の後退接触角を変化させなかった。
【0128】
例7
脱イオン水中に分散したナノスケールの酸化セリウム粒子の0.1wt%ゾルを調製し、そして硝酸を用いて、pH1.5に酸性化した。ゾルの酸化セリウム粒子は、動的光散乱測定によって約10ナノメートルの平均粒径を示した。0.1M硝酸ナトリウムの添加によって、溶液をさらに改質した。塩の添加は、ナノ粒子の分散性を変化させなかった。テフロン(商標)サンプル片を、小片を分散体中に1時間浸すことによって処理した。次にこれらの小片を溶液から出し、そして脱イオン水中ですすいだ。基材をすすいだ後で、空気乾燥させ、そして接触角測定を使用して、小片の処理した表面の親水性をテストした。
【0129】
NaNOの存在下で酸化セリウムナノ粒子を用いて処理したテフロン(登録商標)片上での水の後退接触角(θ)は、51°であり、一方、未処理のテフロン(商標)片での水の後退接触角は85°であった。
【0130】
NaNO塩成分のない酸化セリウムナノ粒子のゾルを用いた類似の様式のテフロン(商標)片の処理は、未処理の称返上での水の接触角に比較して、処理された小片上での水の後退接触角における変化とならなかった。
【0131】
例8
無機酸化セリウム粒子を用いて、ポリスチレン表面を処理した。脱イオン水中に分散させたナノスケールの酸化セリウム(CeO)粒子の0.1wt%ゾルを調製し、そして硝酸を用いてpH1.5に酸性化した。ゾルの酸化セリウム粒子は、動的光散乱測定によって約10ナノメートルの平均粒径を示した。0.1M硝酸ナトリウムの添加によって溶液をさらに改質した。塩の添加は、ナノ粒子の分散性を変化させなかった。
【0132】
ポリスチレンは、アモルファスの、ガラス状(T=100℃)かつ疎水性の(θ =90°)ポリマーである。有機溶液(トルエン中2.5wt%)から、シリコンウェハー上に、滑らかなモデルポリスチレン表面(1×1μmの面積上で約1nmに等しいRMS)を堆積させるために、スピンコーティングを使用した。最終の厚さは、約100nmであった。
【0133】
次に、10分間、上記のナノセリア溶液中に、ポリスチレン表面を浸した。次に脱イオン水を用いて基材を充分にすすぎ、任意の非吸着材料を除去した。次に、基材を窒素流れ下で乾燥させ、そして接触角を測定した。前進接触角(θ)は、約45°であった。後退接触角(θ)は、15°未満であった。原子間力顕微鏡測定は、層が、約6〜10nmに等しい厚さを有するナノセリアの均質な単層であったことを示した。1月後に、接触角は同じままであった(約45°に等しいθ 、約15〜20°に等しいθ )。
【0134】
次に、ナノスケールのCeO粒子で処理したポリスチレン表面を、7K〜30K g/molの重量平均分子量を有するアニオン性ブロックおよび中性のブロック(ポリ(スチレンスルホネート)−b−ポリアクリルアミド)ブロックコポリマー)を有するブロックコポリマーの0.1wt%水溶液を用いて、約5〜約7のpHで処理した。
【0135】
ナノスケールのCeO粒子で処理したポリスチレン表面の上へのブロックコポリマーの吸収をモニターするために、光反射率測定を行った。光反射率技術の詳細は、(Dijt、J.C;Cohen Stuart、M.A.;Fleer、GJ.;’’Reflectometry as a tool for adsorption studies’’;Adv. Colloid. Interface.Sci.1994、50、79)により記載されている。この測定では、ポリスチレン官能化された表面は、5立方センチメートルの内部体積を有するガラスセル中の脱イオン水中で、約10分間で最初に平衡になり、平らなベースラインを生成した。平衡後に、ポリ(スチレンスルホネート)−b−ポリアクリルアミド)ブロックコポリマーの0.1wt%水溶液をセル中に導入し、そして表面上へのコポリマーの吸着を、時間の関数として測定した。
【0136】
1分間の接触時間後に、表面上に吸着したブロックコポリマーの量は、約5mg/mの高原値に達した。有機物のこの高い値は、表面が充分に覆われたことを示す。次に(1時間当たり10ミリリッターの流量の)脱イオン水の流れを、10分間、セル中に注入した。脱イオン水流れの間にかけて、吸着量Cは一定のままであった。この結果は、吸着コポリマー層が、ナノスケールのCeO粒子で処理されたポリスチレン表面に強く結合したことを示す。
【0137】
アニオン性中性ブロックコポリマー溶液の代わりに、7K〜30K g/molの重量平均分子量を有するカチオン性ブロックおよび中性ブロック(ポリ(トリメチルアンモニウムアクリル酸エチル硫酸メチル)−b−ポリアクリルアミド)ブロックコポリマー)を有するブロックコポリマーの0.1wt%水溶液を使用して類似の実験を行ったが、この場合、結果は、ナノセリア処理表面上へのカチオン性中性ブロックコポリマーのなんらかの吸収の証拠を示さなかった。
【0138】
次に、リゾチームタンパク質の百万部の100部(「ppm」)の水溶液を、セルの中に導入した。タンパク質の吸着を、上記のものに類似の光反射率技術を使用してモニターした。10分間の接触時間後になんら注意すべき変化は記録されず、タンパク質がブロックコポリマーおよびナノスケールのCeO粒子で処理されたポリスチレン表面上に吸収しなかったことを示した。対照的に、処理されていないポリスチレン表面と、タンパク質溶液との接触は、処理されていないポリスチレン表面上へのタンパク質の約2mg/mの吸着となった。これらの結果は、ポリ(スチレンスルホネート)−b−ポリアクリルアミド)ブロックコポリマーおよびナノスケールのCeO粒子処理が、ポリスチレン表面に防汚特性を提供するのに効果的であったこと、つまり、ポリスチレン表面上のポリ(スチレンスルホネート)−b−ポリアクリルアミド)ブロックコポリマーおよびナノスケールのCeO粒子層が、タンパク質の吸着を防止するのに効果的であったことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)表面を有する基材、
(b)該基材の該表面の少なくとも一部分上に配置したナノスケールの無機酸化物粒子の層、該ナノスケールの無機酸化物粒子の層は、第1の極性の電荷を有する部位を含む、および、
(c)該ナノスケールの無機酸化物粒子の層の少なくとも一部分上に配置したポリマーの単層、コポリマーの該単層は、第2の極性の電荷を有する部位を含み、ここで、該第2の極性は、該第1の極性と反対である、
を含んで成る、表面改質された基材。
【請求項2】
該基材が、有機ポリマー、有機ケイ素ポリマー、セラミック、金属、複合材料、または無機材料以外のセラミックまたは金属である、請求項1の表面改質された基材。
【請求項3】
該ナノスケールの無機酸化物粒子が、酸化セリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化タングステンおよび酸化ビスマス、酸化亜鉛、酸化インジウム、シリカ、および酸化スズ、酸化鉄を含む、請求項1の表面改質された基材。
【請求項4】
該ナノスケールの無機酸化物粒子が、該表面上の単層中の分散している、請求項1の表面改質された基材。
【請求項5】
該ポリマーが、少なくとも2つの部分、AおよびBを含むコポリマーであり、ここで部分Aは、ポリイオン性であり、そして部分Bは、周囲のpH条件下で中性である、請求項1の表面改質された基材。
【請求項6】
ナノスケールの無機粒子の該層の該電荷を帯びた部位が、負の極性を有し、そしてポリマーの該単層の該電荷を帯びた部位が、正の極性を有する、請求項1の表面改質された基材。
【請求項7】
ナノスケールの無機粒子の該層の該電荷を帯びた部位が、正の極性を有し、そしてポリマーの該単層の該電荷を帯びた部位が、負の極性を有する、請求項1の表面改質された基材。
【請求項8】
該ナノスケールの無機粒子が、ナノスケールの酸化セリウム粒子である、請求項9の表面改質された基材。
【請求項9】
該ポリマーが、ポリ(スチレンスルホネート)−b−ポリアクリルアミド)ブロックコポリマーである、請求項9の表面改質された基材。
【請求項10】
基材の表面を改質するための方法であって、
a)該基材の該少なくとも一部分上に該粒子を堆積させるために、ナノスケールの無機酸化物粒子のスラリーを用いて、該基材の表面の少なくとも一部分を処理する工程、ここで、該ナノスケールの無機酸化物粒子は、第1の正味電荷を有する、および
b)第2の正味電荷を有するポリマーの水溶液または分散体を用いて、該第2の正味電荷の極性が該第1の正味電荷の極性と反対であるpHにおいて、第1の正味電気極性を有する該ナノスケールの無機酸化物粒子で処理された表面を処理する工程、
の各ステップを含んで成る、方法。
【請求項11】
該スラリーが、水性媒体中にナノスケールの無機酸化物粒子を有する最初は安定な分散体であり、そして該表面と該スラリーとを接触させること、および該表面がスラリーと接触している間に、該スラリーからナノスケールの無機酸化物粒子を沈殿させるために、該スラリーの該pHを調整することにより、該表面が処理される、請求項10の方法。
【請求項12】
該スラリーが、水性媒体中にナノスケールの無機酸化物粒子の安定な分散体を含み、該水性媒体が溶解された電解質を含み、そして該表面と該スラリーとを接触させること、そして次に該表面と該スラリーとの該接触を終了させることによって、該表面が処理される、請求項11の方法。
【請求項13】
ナノスケールの無機粒子が、酸化セリウム粒子を含む、請求項10の方法。
【請求項14】
該水性媒体が、約0.01〜約0.1wt%の該電解質を含む、請求項12の方法。
【請求項15】
該電解質が、硝酸塩を含む、請求項14の方法。
【請求項16】
該表面と該安定なスラリーとの接触を終了させた後で、水性のすすぎ溶液を用いて、該ナノスケールの無機酸化物粒子で処理された表面をすすぐ工程をさらに含む、請求項10の方法。
【請求項17】
該ポリマーが、少なくとも2つの部分AおよびBを有するコポリマーを含み、部分Aがポリイオン性であり、そして部分Bが該溶液または分散体のpH条件下で中性である、請求項10の方法。
【請求項18】
ナノスケールの無機粒子が、酸化セリウム粒子を含み、そして該ポリマーが、ポリ(スチレンスルホネート)−b−ポリアクリルアミド)ブロックコポリマーである、請求項17の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−540389(P2010−540389A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526960(P2010−526960)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【国際出願番号】PCT/US2008/011164
【国際公開番号】WO2009/045327
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(598109291)ローディア インコーポレイティド (41)
【出願人】(501089863)サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェサイアンティフィク(セエヌエールエス) (173)
【Fターム(参考)】