放射ガスバーナ用膜および放射エネルギー出力量の増加方法
【課題】放射エネルギー出力量および放射効率が増大した放射バーナの提供を可能にする。
【解決手段】金属スクリーンと金属繊維の織地とを備える放射ガスバーナ用の膜であって、前記金属スクリーンが恒久的な波形状の表面を有し、前記波形状の表面積が、比較対象として同範囲内に平らな金属スクリーンが広がった場合の表面積よりも広くなっており、前記金属繊維の織地が可撓性のある非焼結性の織地であり、前記織地が前記金属スクリーンに固定され、その結果、前記波形状の表面積が、比較対象として同範囲内に平らな金属スクリーンが広がった場合の表面積よりも広くなるように、前記金属スクリーンの波形状が形成されている、放射ガスバーナ用の膜。
【解決手段】金属スクリーンと金属繊維の織地とを備える放射ガスバーナ用の膜であって、前記金属スクリーンが恒久的な波形状の表面を有し、前記波形状の表面積が、比較対象として同範囲内に平らな金属スクリーンが広がった場合の表面積よりも広くなっており、前記金属繊維の織地が可撓性のある非焼結性の織地であり、前記織地が前記金属スクリーンに固定され、その結果、前記波形状の表面積が、比較対象として同範囲内に平らな金属スクリーンが広がった場合の表面積よりも広くなるように、前記金属スクリーンの波形状が形成されている、放射ガスバーナ用の膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射ガスバーナのための膜、および、放射ガスバーナの放射エネルギー出力量を増加する方法に関する。本発明の膜は、金属繊維の織地を有する。
【背景技術】
【0002】
金属繊維の織地を含んでいる金属繊維膜は、当技術分野で既に知られており、このような金属繊維膜により、放射バーナは、非常に急速に温度上昇し、冷却することができる。例えば、PCT国際公開WO95/27871号公報が開示する、放射ガスバーナのための金属繊維膜は、複数の連続的に順次の方形で多孔性のゾーンに分割され、これにより、加熱時の熱膨張が容易になり、冷却時の熱的収縮が容易になる。しかしながら、放射バーナにおいて、放射エネルギー出力量および放射効率の向上の観点からは未だ不十分なものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の1つの目的は、放射バーナの放射エネルギー出力量を増加させることにある。本発明の他の1つの目的は、放射バーナの放射効率を増加させることにある。本発明のさらに別の1つの目的は、反射器を使用せずに放射バーナの放射エネルギー出力量および放射効率を増加させるための簡単な手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち、本発明の第1の態様では、本発明の放射ガスバーナ用の膜は、金属スクリーンと金属繊維の織地とを備える放射ガスバーナ用の膜であって、前記金属スクリーンが恒久的な波形状の表面を有し、前記波形状の表面積が、比較対象として同範囲内に平らな金属スクリーンが広がった場合の表面積よりも広くなっており、前記金属繊維の織地が可撓性のある非焼結性の織地であり、前記織地が、前記金属スクリーンに固定されることによって、前記金属スクリーンの波形状に対応することとなり、膜の表面積が、比較対象として同範囲内に平らな膜が広がった場合の表面積よりも広くなるように形成されている。
【0005】
「金属繊維」との表現は、米国特許第4930199号明細書に記載のように巻かれた金属フォイルの上部エッジを研磨することにより製造できるか、または、米国特許第3379000号明細書に記載のように集束延伸技術を使用して製造できる繊維のことである。金属繊維は、2μm〜150μmの範囲の等価直径を有し、好ましくは、40μm〜80μmの範囲の直径を有する。等価直径とは、実際の当該繊維の直径と同一の横断面を有する仮想丸形繊維の直径である。金属繊維は、好ましくは、高温および熱衝撃に対して耐性を有する組成を有する。この目的のために、金属繊維は、最小量のアルミニウムおよびクロムを含有する。特に、ヨーロッパ特許第0157432号(EP B1 0157432)明細書に記載のFeCrAlY繊維は、非常に適している。金属繊維は、さらに、たとえば、不織布ウェブ、編まれたまたは織られたまたは巻かれた布またはメッシュの形、あるいは、らせん形で斜めに交差して巻かれた金属繊維フィラメントの形の連続多孔性繊維布を形成するために処理される。
【0006】
「恒久的な波形状」との表現は、バーナが動作しているか否かと無関係に際立った波形状が存在することを意味する。すなわち、恒久的波形状は、熱膨張または熱的収縮の結果ではない。「波形状」との表現は、形状と無関係に各タイプの波形状を意味する。この表現は、波形状が一方向で際立ち、ピーク線を形成し、この方向に垂直の方向では際立たない1次元波形状も、波形状が、2つの異なる方向で際立ち、ピークスポットあるいはピークポイントを形成する2次元波形状も意味する。放射ガスバーナは、好適には、それらの膜が、金属フレームに固定されている。「比較対象として同範囲内に平らな膜が広がった場合」との表現は、同様の形状寸法のフレームの中に固定され、平らな表面を有する膜が広がった場合を意味する。「平らな」膜の比較的小さい隆起が、動作条件下で発生することは許容される。このような小さい隆起があったとしても、この膜は、平らな膜と呼ばれる。
【0007】
いくつかの凹部を有するセラミック膜を有する放射バーナは、たとえば米国特許第1731053号明細書によって当技術分野に知られている。しかし、これらの凹部の機能は、安定性を向上させ、炎の逆行的な動きを阻止することにある。セラミック膜を有する放射バーナと、本発明のように金属繊維の織地を含む膜を有する放射バーナとの大きい相違は、金属繊維の織地により、炎の安定性の問題が、膜のグローバルな形状と無関係にすでに解決されたことにある。したがって、平らな膜においてさえも、炎の安定性の問題は、存在しない。
【0008】
本発明の第1の態様に係る膜の波形状は、動作中、熱が第1の側面から近傍の側面へ放射され、その近傍側面から再び第1の側面に反射され、以下同様に繰返されるような振幅およびピッチを有し、したがって、膜の温度は大幅に増加する。ボディにより放出される放射熱の量は、温度の4乗に比例する。したがって、膜の温度が増加すると、本発明に係る膜を有するバーナの放射出力量は大幅に増加する。これにより、ガスバーナの放射出力量は、膜表面積の増加に起因して増加するだけでなく、膜温度の増加に起因しても増加する。
【0009】
本発明の1つの実施の形態では、バーナ膜は、多孔性金属スクリーンを有し、このスクリーンは、波形を膜に与え、金属繊維の可撓性織地を支持する。好ましくは、この織地は、焼結されない織地であり、最も好ましくは、この織地は、編み構造である。このような編み構造は、非常に急速に温度上昇する長所を有する。この織地は、たとえば点溶接により、スクリーンに固定できる。本発明の第2の態様では、本発明の放射ガスバーナの放射エネルギー出力量および効率を増加する方法は、(a)金属スクリーンおよび金属繊維の織地を備えるバーナ用の膜を提供するステップと、(b)前記バーナ用の膜が、比較対象として同範囲内に平らなバーナ用の膜が広がった場合の表面積よりも広い表面積となるように、前記金属スクリーンを波形状に形成するステップと、(c)前記バーナ用の膜が前記金属スクリーンの波形状に対応して波形状に形成されるステップとを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるバーナ用の膜の波形状設計は、より広い表面領域を提供する。表面領域の増加に加えて、波形状は、膜表面からの放射熱が再び膜表面に反射するのを促し、これにより、膜表面の温度が上昇し、ひいては、より大量のエネルギーが、バーナから放射される。これらの2つの相乗的な効果により、より大量のエネルギー出力量と、より高いバーナ効率とが得られる。そして、エネルギー出力量および効率における30%以上の増加が、僅か15%程度の表面積の増加で得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に本発明を、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の第1の態様による放射ガスバーナの断面図を概略的に示す。混合ガスの入口管12は、ハウジング13に固定され、ハウジング13は、好ましくはステンレススチールまたはセラミックからなる。有孔スチールプレートの形の配分手段14が、バーナのアクティブ表面のできるだけ広範囲にわたりガス混合物を配分する。ステンレススチールの中に孔(図示せず)を有する前もって形成されたスクリーン16は、膜に波形状を与える。FeCrAlY繊維の編み構造18は、スクリーンに点溶接され、スクリーン16の波形状をとる。波形状は、等間隔に配置されている谷部20と山部22とを形状を有し、側面24が谷部20と山部22との間に位置する。具体的には、山部22の高さは、例えば5mm〜10mmであり、山部22と山部22との間の間隔は、例えば25mm〜40mmである。
【0012】
矢印26により示されているように、熱は、左側側面24’から右側側面24”へ放射され、あるいはその逆に放射され、右側側面24”に到達した熱は、再び反射されて近傍・隣接の左側側面24’に到達することもある。この繰り返し行き来する反射に起因して、膜の温度は上昇し、これにより、バーナの熱放射出力量も増加する。以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0013】
実施例1および比較例1本発明の第1の態様による波形状膜を有するバーナを、平らな膜を有する類似のバーナと比較した。波形状膜を有するバーナのフレームと、平らな膜を有するバーナのフレームとは、同一であり、150mmの幅および200mmの長さを有する。バーナは、6740ワット(23000Btu/hr)の熱入力量および8499ワット(29000Btu/hr)で、10%の過剰空気量で燃焼された。
【0014】
実験のために使用された装置は、次の部品を有する。
− TESTO−350シリーズポータブル分析器。
− K型熱電対およびYOKOGAWA LR4110型温度連続記録器を有する温度測定装置を有する温度測定装置。
− バーナ表面に平行にかつバーナ表面から正確に6インチ(約150mm)離れた個所に配置されている高度に酸化されたスチール(ε=0.9)から成る平たい黒体プレート(230mm×300mm)。
− 燃料流量および空気流量を制御するための一連のロータメータおよび圧力ゲージ。
プロパンおよび圧縮大気が、これらの実験のために使用された。
【0015】
K型熱電対を、黒体プレートの裏面の中心に配置して、プレートの中心における温度と、バーナ中心に相当する温度とを測定した。熱電対を、1塊のスチール、すなわちプレートの裏面に溶接された0.5インチ×0.5インチ×1インチ(=12.75mm×12.75mm×25.5mm)のバーによりカバーして、室内の温度および空気流の変化に起因する、この個所での対流による大気へ熱損失量を最小化した。特別の配慮が、たとえば10%の過剰空気量等の完全な条件を達成するためになされた。黒体は、テスト条件がバーナの中で達成されるまで、1インチ(=25.5mm)の厚さのセラミックプレートにより放射熱から絶縁された。いったんテスト条件が達成されると、絶縁セラミックプレートは、引っ込められ、バーナは直ちに放射熱に曝された。次いで温度記録器が、温度対時間を連続的に記録した。いったん温度が、定常状態に到達すると、プロパン燃料の流れが遮断されたが、しかし空気は、バーナを冷却するためにそのまま流された。定常状態に到達する時間と、最大温度すなわち定常状態温度とが、記録されたデータから抽出された。
【0016】
バーナの温度は、2つの個所で測定された。第1の個所は、バーナ表面から0.5インチ(=12.75mm)離れて位置し、この個所での温度、すなわち第1の温度は、TESTO350シリーズポータブルガス分析器を使用して測定された。第2の温度は、バーナ表面の中心で、MINOLTA−CYCLOPS339シリーズ赤外線温度計を使用して測定された。放射出力量および放射効率は、次の理論モデルを使用して実験データから導出された。
q12=σ(T14−T24)/{(1−ε1)/ε1A1+1/A1F12+(1−ε2)/ε2A2}
【0017】
ただし、
− q12は、バーナ表面と黒体プレート表面との間で交換された正味放射エネルギーであり、
− ε1は、黒体の放射率であり、0.68の値の定数である仮定され、
− ε2はステファン・ボルツマン定数であり、5.67×10−8W/m2K4であり、
− T1およびT2は、それぞれ膜または黒体の表面の温度であり、
− F12は形状係数であり、次式により定められ、
F12={((W1+W2)2+4)1/2−((W2−W1)2+4)1/2}/2W1
ここで、W1=L1/LおよびW2=L2/Lであり、L1およびL2は、表面の長さ、Lは表面と表面との間の距離である。
【0018】
放射バーナ効率は、膜表面と黒体表面との間で交換された放射エネルギーを基礎にして計算され、熱入力量は、全バーナ効率が約0.8との仮定で計算された。放射効率は次式により定められた。
η=q12/(0.8×qinput)
ただし、qinputは熱入力量または燃料入力量のカロリー値である。実験結果を、下記の表1に示す。
【0019】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の態様による放射ガスバーナの断面図を概略的に示す。
【符号の説明】
【0021】
10 放射ガスバーナ
12 入口管
13 ハウジング
14 配分手段
16 有孔スクリーン
18 編み構造
20 谷部
22 山部
24 側面
24’ 左側側面
24” 右側側面
26 熱放射方向を示す矢印
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射ガスバーナのための膜、および、放射ガスバーナの放射エネルギー出力量を増加する方法に関する。本発明の膜は、金属繊維の織地を有する。
【背景技術】
【0002】
金属繊維の織地を含んでいる金属繊維膜は、当技術分野で既に知られており、このような金属繊維膜により、放射バーナは、非常に急速に温度上昇し、冷却することができる。例えば、PCT国際公開WO95/27871号公報が開示する、放射ガスバーナのための金属繊維膜は、複数の連続的に順次の方形で多孔性のゾーンに分割され、これにより、加熱時の熱膨張が容易になり、冷却時の熱的収縮が容易になる。しかしながら、放射バーナにおいて、放射エネルギー出力量および放射効率の向上の観点からは未だ不十分なものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の1つの目的は、放射バーナの放射エネルギー出力量を増加させることにある。本発明の他の1つの目的は、放射バーナの放射効率を増加させることにある。本発明のさらに別の1つの目的は、反射器を使用せずに放射バーナの放射エネルギー出力量および放射効率を増加させるための簡単な手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち、本発明の第1の態様では、本発明の放射ガスバーナ用の膜は、金属スクリーンと金属繊維の織地とを備える放射ガスバーナ用の膜であって、前記金属スクリーンが恒久的な波形状の表面を有し、前記波形状の表面積が、比較対象として同範囲内に平らな金属スクリーンが広がった場合の表面積よりも広くなっており、前記金属繊維の織地が可撓性のある非焼結性の織地であり、前記織地が、前記金属スクリーンに固定されることによって、前記金属スクリーンの波形状に対応することとなり、膜の表面積が、比較対象として同範囲内に平らな膜が広がった場合の表面積よりも広くなるように形成されている。
【0005】
「金属繊維」との表現は、米国特許第4930199号明細書に記載のように巻かれた金属フォイルの上部エッジを研磨することにより製造できるか、または、米国特許第3379000号明細書に記載のように集束延伸技術を使用して製造できる繊維のことである。金属繊維は、2μm〜150μmの範囲の等価直径を有し、好ましくは、40μm〜80μmの範囲の直径を有する。等価直径とは、実際の当該繊維の直径と同一の横断面を有する仮想丸形繊維の直径である。金属繊維は、好ましくは、高温および熱衝撃に対して耐性を有する組成を有する。この目的のために、金属繊維は、最小量のアルミニウムおよびクロムを含有する。特に、ヨーロッパ特許第0157432号(EP B1 0157432)明細書に記載のFeCrAlY繊維は、非常に適している。金属繊維は、さらに、たとえば、不織布ウェブ、編まれたまたは織られたまたは巻かれた布またはメッシュの形、あるいは、らせん形で斜めに交差して巻かれた金属繊維フィラメントの形の連続多孔性繊維布を形成するために処理される。
【0006】
「恒久的な波形状」との表現は、バーナが動作しているか否かと無関係に際立った波形状が存在することを意味する。すなわち、恒久的波形状は、熱膨張または熱的収縮の結果ではない。「波形状」との表現は、形状と無関係に各タイプの波形状を意味する。この表現は、波形状が一方向で際立ち、ピーク線を形成し、この方向に垂直の方向では際立たない1次元波形状も、波形状が、2つの異なる方向で際立ち、ピークスポットあるいはピークポイントを形成する2次元波形状も意味する。放射ガスバーナは、好適には、それらの膜が、金属フレームに固定されている。「比較対象として同範囲内に平らな膜が広がった場合」との表現は、同様の形状寸法のフレームの中に固定され、平らな表面を有する膜が広がった場合を意味する。「平らな」膜の比較的小さい隆起が、動作条件下で発生することは許容される。このような小さい隆起があったとしても、この膜は、平らな膜と呼ばれる。
【0007】
いくつかの凹部を有するセラミック膜を有する放射バーナは、たとえば米国特許第1731053号明細書によって当技術分野に知られている。しかし、これらの凹部の機能は、安定性を向上させ、炎の逆行的な動きを阻止することにある。セラミック膜を有する放射バーナと、本発明のように金属繊維の織地を含む膜を有する放射バーナとの大きい相違は、金属繊維の織地により、炎の安定性の問題が、膜のグローバルな形状と無関係にすでに解決されたことにある。したがって、平らな膜においてさえも、炎の安定性の問題は、存在しない。
【0008】
本発明の第1の態様に係る膜の波形状は、動作中、熱が第1の側面から近傍の側面へ放射され、その近傍側面から再び第1の側面に反射され、以下同様に繰返されるような振幅およびピッチを有し、したがって、膜の温度は大幅に増加する。ボディにより放出される放射熱の量は、温度の4乗に比例する。したがって、膜の温度が増加すると、本発明に係る膜を有するバーナの放射出力量は大幅に増加する。これにより、ガスバーナの放射出力量は、膜表面積の増加に起因して増加するだけでなく、膜温度の増加に起因しても増加する。
【0009】
本発明の1つの実施の形態では、バーナ膜は、多孔性金属スクリーンを有し、このスクリーンは、波形を膜に与え、金属繊維の可撓性織地を支持する。好ましくは、この織地は、焼結されない織地であり、最も好ましくは、この織地は、編み構造である。このような編み構造は、非常に急速に温度上昇する長所を有する。この織地は、たとえば点溶接により、スクリーンに固定できる。本発明の第2の態様では、本発明の放射ガスバーナの放射エネルギー出力量および効率を増加する方法は、(a)金属スクリーンおよび金属繊維の織地を備えるバーナ用の膜を提供するステップと、(b)前記バーナ用の膜が、比較対象として同範囲内に平らなバーナ用の膜が広がった場合の表面積よりも広い表面積となるように、前記金属スクリーンを波形状に形成するステップと、(c)前記バーナ用の膜が前記金属スクリーンの波形状に対応して波形状に形成されるステップとを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるバーナ用の膜の波形状設計は、より広い表面領域を提供する。表面領域の増加に加えて、波形状は、膜表面からの放射熱が再び膜表面に反射するのを促し、これにより、膜表面の温度が上昇し、ひいては、より大量のエネルギーが、バーナから放射される。これらの2つの相乗的な効果により、より大量のエネルギー出力量と、より高いバーナ効率とが得られる。そして、エネルギー出力量および効率における30%以上の増加が、僅か15%程度の表面積の増加で得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に本発明を、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の第1の態様による放射ガスバーナの断面図を概略的に示す。混合ガスの入口管12は、ハウジング13に固定され、ハウジング13は、好ましくはステンレススチールまたはセラミックからなる。有孔スチールプレートの形の配分手段14が、バーナのアクティブ表面のできるだけ広範囲にわたりガス混合物を配分する。ステンレススチールの中に孔(図示せず)を有する前もって形成されたスクリーン16は、膜に波形状を与える。FeCrAlY繊維の編み構造18は、スクリーンに点溶接され、スクリーン16の波形状をとる。波形状は、等間隔に配置されている谷部20と山部22とを形状を有し、側面24が谷部20と山部22との間に位置する。具体的には、山部22の高さは、例えば5mm〜10mmであり、山部22と山部22との間の間隔は、例えば25mm〜40mmである。
【0012】
矢印26により示されているように、熱は、左側側面24’から右側側面24”へ放射され、あるいはその逆に放射され、右側側面24”に到達した熱は、再び反射されて近傍・隣接の左側側面24’に到達することもある。この繰り返し行き来する反射に起因して、膜の温度は上昇し、これにより、バーナの熱放射出力量も増加する。以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0013】
実施例1および比較例1本発明の第1の態様による波形状膜を有するバーナを、平らな膜を有する類似のバーナと比較した。波形状膜を有するバーナのフレームと、平らな膜を有するバーナのフレームとは、同一であり、150mmの幅および200mmの長さを有する。バーナは、6740ワット(23000Btu/hr)の熱入力量および8499ワット(29000Btu/hr)で、10%の過剰空気量で燃焼された。
【0014】
実験のために使用された装置は、次の部品を有する。
− TESTO−350シリーズポータブル分析器。
− K型熱電対およびYOKOGAWA LR4110型温度連続記録器を有する温度測定装置を有する温度測定装置。
− バーナ表面に平行にかつバーナ表面から正確に6インチ(約150mm)離れた個所に配置されている高度に酸化されたスチール(ε=0.9)から成る平たい黒体プレート(230mm×300mm)。
− 燃料流量および空気流量を制御するための一連のロータメータおよび圧力ゲージ。
プロパンおよび圧縮大気が、これらの実験のために使用された。
【0015】
K型熱電対を、黒体プレートの裏面の中心に配置して、プレートの中心における温度と、バーナ中心に相当する温度とを測定した。熱電対を、1塊のスチール、すなわちプレートの裏面に溶接された0.5インチ×0.5インチ×1インチ(=12.75mm×12.75mm×25.5mm)のバーによりカバーして、室内の温度および空気流の変化に起因する、この個所での対流による大気へ熱損失量を最小化した。特別の配慮が、たとえば10%の過剰空気量等の完全な条件を達成するためになされた。黒体は、テスト条件がバーナの中で達成されるまで、1インチ(=25.5mm)の厚さのセラミックプレートにより放射熱から絶縁された。いったんテスト条件が達成されると、絶縁セラミックプレートは、引っ込められ、バーナは直ちに放射熱に曝された。次いで温度記録器が、温度対時間を連続的に記録した。いったん温度が、定常状態に到達すると、プロパン燃料の流れが遮断されたが、しかし空気は、バーナを冷却するためにそのまま流された。定常状態に到達する時間と、最大温度すなわち定常状態温度とが、記録されたデータから抽出された。
【0016】
バーナの温度は、2つの個所で測定された。第1の個所は、バーナ表面から0.5インチ(=12.75mm)離れて位置し、この個所での温度、すなわち第1の温度は、TESTO350シリーズポータブルガス分析器を使用して測定された。第2の温度は、バーナ表面の中心で、MINOLTA−CYCLOPS339シリーズ赤外線温度計を使用して測定された。放射出力量および放射効率は、次の理論モデルを使用して実験データから導出された。
q12=σ(T14−T24)/{(1−ε1)/ε1A1+1/A1F12+(1−ε2)/ε2A2}
【0017】
ただし、
− q12は、バーナ表面と黒体プレート表面との間で交換された正味放射エネルギーであり、
− ε1は、黒体の放射率であり、0.68の値の定数である仮定され、
− ε2はステファン・ボルツマン定数であり、5.67×10−8W/m2K4であり、
− T1およびT2は、それぞれ膜または黒体の表面の温度であり、
− F12は形状係数であり、次式により定められ、
F12={((W1+W2)2+4)1/2−((W2−W1)2+4)1/2}/2W1
ここで、W1=L1/LおよびW2=L2/Lであり、L1およびL2は、表面の長さ、Lは表面と表面との間の距離である。
【0018】
放射バーナ効率は、膜表面と黒体表面との間で交換された放射エネルギーを基礎にして計算され、熱入力量は、全バーナ効率が約0.8との仮定で計算された。放射効率は次式により定められた。
η=q12/(0.8×qinput)
ただし、qinputは熱入力量または燃料入力量のカロリー値である。実験結果を、下記の表1に示す。
【0019】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の態様による放射ガスバーナの断面図を概略的に示す。
【符号の説明】
【0021】
10 放射ガスバーナ
12 入口管
13 ハウジング
14 配分手段
16 有孔スクリーン
18 編み構造
20 谷部
22 山部
24 側面
24’ 左側側面
24” 右側側面
26 熱放射方向を示す矢印
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属スクリーンと金属繊維の織地とを備える放射ガスバーナ用の膜であって、
前記金属スクリーンが恒久的な波形状の表面を有し、前記波形状の表面積が、比較対象として同範囲内に平らな金属スクリーンが広がった場合の表面積よりも広くなっており、前記金属繊維の織地が可撓性のある非焼結性の織地であり、前記織地が、前記金属スクリーンに固定されることによって、前記金属スクリーンの波形状に対応することとなり、膜の表面積が、比較対象として同範囲内に平らな膜が広がった場合の表面積よりも広くなるように形成されている、放射ガスバーナ用の膜。
【請求項2】
放射ガスバーナの放射エネルギー出力量および効率を増加する方法であって、
(a)金属スクリーンおよび金属繊維の織地を備えるバーナ用の膜を提供するステップと、
(b)前記バーナ用の膜が、比較対象として同範囲内に平らなバーナ用の膜が広がった場合の表面積よりも広い表面積となるように、前記金属スクリーンを波形状に形成するステップと、
(c)前記バーナ用の膜が前記金属スクリーンの波形状に対応して波形状に形成されるステップと
を含む方法。
【請求項1】
金属スクリーンと金属繊維の織地とを備える放射ガスバーナ用の膜であって、
前記金属スクリーンが恒久的な波形状の表面を有し、前記波形状の表面積が、比較対象として同範囲内に平らな金属スクリーンが広がった場合の表面積よりも広くなっており、前記金属繊維の織地が可撓性のある非焼結性の織地であり、前記織地が、前記金属スクリーンに固定されることによって、前記金属スクリーンの波形状に対応することとなり、膜の表面積が、比較対象として同範囲内に平らな膜が広がった場合の表面積よりも広くなるように形成されている、放射ガスバーナ用の膜。
【請求項2】
放射ガスバーナの放射エネルギー出力量および効率を増加する方法であって、
(a)金属スクリーンおよび金属繊維の織地を備えるバーナ用の膜を提供するステップと、
(b)前記バーナ用の膜が、比較対象として同範囲内に平らなバーナ用の膜が広がった場合の表面積よりも広い表面積となるように、前記金属スクリーンを波形状に形成するステップと、
(c)前記バーナ用の膜が前記金属スクリーンの波形状に対応して波形状に形成されるステップと
を含む方法。
【図1】
【公開番号】特開2009−68837(P2009−68837A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309419(P2008−309419)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【分割の表示】特願平11−242551の分割
【原出願日】平成11年8月30日(1999.8.30)
【出願人】(592014377)ナムローゼ・フェンノートシャップ・ベーカート・ソシエテ・アノニム (81)
【氏名又は名称原語表記】N V BEKAERT SOCIETE ANONYME
【出願人】(508225613)ベーカート・コンバスチョン・テクノロジー・ベスローテン・フェンノートシャップ (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【分割の表示】特願平11−242551の分割
【原出願日】平成11年8月30日(1999.8.30)
【出願人】(592014377)ナムローゼ・フェンノートシャップ・ベーカート・ソシエテ・アノニム (81)
【氏名又は名称原語表記】N V BEKAERT SOCIETE ANONYME
【出願人】(508225613)ベーカート・コンバスチョン・テクノロジー・ベスローテン・フェンノートシャップ (5)
【Fターム(参考)】
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