説明

放射性医薬品用輸送容器における衝撃に対する本体側遮蔽体と蓋側遮蔽体との分離防止方法

【課題】 間接容器として使用される放射性医薬品用輸送容器において、落下等による衝撃を受けて本体側外装材が破損した場合でも、直接容器内の放射性医薬品から放射される放射線の遮蔽が維持されるようにする。
【解決手段】 本体側外装材15と本体側遮蔽体17とを有する容器本体7と、蓋側外装材9と蓋側遮蔽体11とを有する蓋5とを備え、本体側外装材の上部には外装材膨出部42が形成され、この外装材膨出部に蓋側連結部30と連結される本体側連結部32が設けられている放射性医薬品用輸送容器において、外装材膨出部の内側部分と略同形状の遮蔽体凸部44を本体側遮蔽体に形成し、外装材膨出部の内側部分に遮蔽体凸部が入り込むようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性医薬品が収納された容器を収納して輸送する放射性医薬品用輸送容器に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性医薬品を収納して輸送する容器は、一般に、例えば図4に示すように、放射性医薬品を直接収納する直接容器100と、その直接容器を収納する間接容器102とからなる。直接容器としては、内部に放射性医薬品を予め充填したガラス容器であるバイアル瓶、あるいは薬液充填済み注射器(プレフィルドシリンジ)が使用されることが多い。
【0003】
間接容器は、容器本体104と蓋106とからなり、術者および被投与者の被曝を低減するために、通常、容器本体および蓋には、鉛やタングステン合金のような放射線遮蔽効果のある高比重の放射線遮蔽体で形成された本体側遮蔽体108および蓋側遮蔽体110が用いられる。また、これら放射線遮蔽体の外側には、プラスチック製等の本体側外装材112および蓋側外装材114がそれぞれ配置される。
【0004】
上述したプラスチック製等の本体側外装材および蓋側外装材には、例えば互いに嵌合する凹凸や互いに螺合するネジ等の連結機構を用いた連結部116(凹凸やネジ等は図示省略)が設けられている。そして、蓋側外装材と本体側外装材とが上記連結部で連結することにより容器本体と蓋とが固定され、内部に収納した直接容器内の放射性医薬品から放射される放射線を遮蔽体により遮蔽して間接容器外部への放射を防ぐ構造となっている(例えば特許文献1〜3参照)。
【0005】
上記間接容器は、放射線遮蔽効果のある鉛やタングステン合金等の高比重の放射線遮蔽体が用いられた重量物であるので、容器本体と蓋との連結部の強度を高めるために、本体側外装材の上部に他部分より径の大きい膨出部118を形成し、この膨出部に凹凸やネジ等の連結機構を設けることにより、本体側外装材の蓋側外装材との連結部分の強度を強化する場合がある。このような技術は、例えば特許文献1〜3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−231925
【特許文献2】特開平8−11907
【特許文献3】特開平8−98869
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した間接容器は、通常、内部に直接容器を収納した状態で、ダンボール製等の輸送箱内に緩衝材とともに収納されて輸送されるが、輸送中に落下等による衝撃を受けて本体側外装材が破損することがある。この場合、本体側外装材の蓋側外装材との連結部分が設けられている膨出部は、本体側外装材の他部分より径が大きいために、図4に示すように内側の放射線遮蔽体との間に大きい空洞120が生じており、この空洞によって衝撃に対する強度が低くなっている。
【0008】
そのため、図4に示したような本体側外装材とその内側の放射線遮蔽体との間に大きい空洞を有する間接容器は、該容器に落下等による衝撃が加わった際に本体側外装材の蓋側外装材との連結部分が破損することがあり、このように本体側外装材の蓋側外装材との連結部分が破損した場合には、本体側外装材と蓋側外装材との連結が外れ、その結果、容器本体の放射線遮蔽体と蓋の放射線遮蔽体とが分離して、直接容器内に収納した放射性医薬品から放射される放射線の遮蔽ができない状態となるものであった。
【0009】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたもので、間接容器として使用される放射性医薬品用輸送容器であって、落下等による衝撃を受けて本体側外装材が破損した場合でも、本体側外装材と蓋側外装材との連結が維持されて容器本体の放射線遮蔽体と蓋の放射線遮蔽体とが分離せず、したがって直接容器内の放射性医薬品から放射される放射線の遮蔽が維持される放射性医薬品用輸送容器における本体側遮蔽体と蓋側遮蔽体との分離防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記目的を達成するため、
放射性医薬品を直接収納する直接容器を収納する間接容器として用いられる放射性医薬品用輸送容器において、
前記放射性医薬品用輸送容器を、容器本体と蓋とからなる構成とし、前記容器本体を、外側を形成する本体側外装材と、この本体側外装材の内側に配置される本体側遮蔽体とを有する構成とし、前記蓋を、外側を形成する蓋側外装材と、この蓋側外装材の内側に配置される蓋側遮蔽体とを有する構成とし、
前記本体側外装材および蓋側外装材を、互いに連結される本体側連結部および蓋側連結部をそれぞれ有する構成とし、
前記本体側外装材には、本体側外装材の他部分より径が大きい外装材膨出部を形成し、この外装材膨出部に前記本体側連結部を設けるとともに、前記本体側遮蔽体には、前記外装材膨出部の内側部分と略同形状の遮蔽体凸部を形成し、前記遮蔽体凸部を前記外装材膨出部の内側部分に入り込む形状とすることを特徴とする、放射性医薬品用輸送容器における衝撃に対する本体側遮蔽体と蓋側遮蔽体との分離防止方法を提供する。
【0011】
本発明では、外装材膨出部の内面と遮蔽体凸部の外面とを接触させることが好ましく、これによって蓋側外装材と本体側外装材との連結部分の衝撃に対する強度をより高くすることができる。
【0012】
また、本発明では、本体側連結部と蓋側連結部とをネジ機構によって連結することが好ましく、これによって容器本体と蓋との上下方向における連結強度をより高くすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に用いる放射性医薬品用輸送容器は、外装材膨出部の内側部分と略同形状の遮蔽体凸部を本体側遮蔽体に形成し、外装材膨出部の内側部分に遮蔽体凸部が入り込むようにしてある。そのため、本体側外装材と本体側遮蔽体との間の隙間、すなわち外装材膨出部の内側に生じる空洞を極力小さくすることができ、それにより外装材膨出部が内側から補強され、蓋側外装材と本体側外装材との連結部分の衝撃に対する強度が高くなる。したがって、本発明の放射性医薬品用輸送容器における本体側遮蔽体と蓋側遮蔽体との分離防止方法によれば、落下等による衝撃を受けて本体側外装材に破損が生じた場合でも、本体側外装材と蓋側外装材との連結部分が完全に破壊されることはなく、そのため容器本体と蓋とが分離することを防止して、直接容器内に収納した放射性医薬品から放射される放射線の遮蔽を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に用いる放射性医薬品用輸送容器の一実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1の放射性医薬品用輸送容器の外観正面図である。
【図3】遮蔽体凸部が設けられていない放射性医薬品用輸送容器の縦断面図である。
【図4】従来の放射性医薬品用輸送容器の一例を模式的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に用いる放射性医薬品用輸送容器の実施形態を図1および図2に示す。図1、図2に示すように、この実施形態の放射性医薬品用輸送容器1は、放射性医薬品としての注射液を直接収納する直接容器であるバイアル瓶3を収納する間接容器として用いられる。
【0016】
本例の放射性医薬品用輸送容器1は、蓋5と容器本体7とからなる。蓋5は、下部が拡径した形状を有し、外側を形成する略有頭円筒状のプラスチック製蓋側外装材9の内側に、鉛やタングステン合金等の放射線遮蔽体からなる蓋側遮蔽体11が配置されている。容器本体7は、外側を形成する略有底円筒状のプラスチック製本体側外装材15の内側に、上記と同様の放射線遮蔽体からなる本体側遮蔽体17が配置されている。本体側遮蔽体17の中央には収納凹部21が形成されている。この収納凹部21には吸収紙22が配され、バイアル瓶3が収納されている。なお、蓋側外装材9および本体側外装材15を形成するプラスチックとしては、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂等が挙げられる。
【0017】
蓋側外装材9にはその下端部に蓋側連結部30が形成され、また、本体側外装材15にはその上端部に本体側連結部32が形成されている。そして、蓋側連結部30と本体側連結部32とは互いに螺合するネジ機構によって連結され、これによって蓋5と容器本体7とが固定されている。上記ネジ機構は、蓋側外装材9の下端部内面に形成された凸突起34と、本体側外装材15の上端部外面に形成された凹溝36との凹凸で構成されている。
【0018】
また、上記ネジ機構には、ロック機構が備えられており、蓋5と容器本体7とはロック機構によりロックされる。ロック機構は、蓋側外装材9の下端部内面に形成された凸突起34が、本体側外装材15の上端部外面に形成された凹溝36の終点付近に設けられたロック突起(図示なし)に乗り上げるもので、ネジを締める際には凸突起34とロック突起との間にあまり抵抗がなく、ネジを外す際には凸突起34とロック突起との間に抵抗が生じるように構成されている。
【0019】
本体側外装材15の上部には、他部分より径が大きい外装材膨出部42が形成され、この外装材膨出部42に前述した本体側連結部32が設けられている。また、本体側遮蔽体17の上部には、外装材膨出部42の内側部分と略同形状の遮蔽体凸部44が形成されている。そして、外装材膨出部42の内側部分に遮蔽体凸部44が入り込んでいる。この場合、外装材膨出部42の内面と遮蔽体凸部44の外面とは接触しており、外装材膨出部42の内面と遮蔽体凸部44の外面との間に隙間がない状態になっている。
【0020】
蓋側遮蔽体11の内側には、さらにプラスチック製の蓋側内装材13が配置されている。この蓋側内装材13は蓋側外装材9に接しており、蓋側外装材9と連続した構造となっている。また、本体側遮蔽体17の内側には、さらにプラスチック製の本体側内装材19が配置されている。この本体側内装材19は本体側外装材15に接しており、本体側外装材15と連続した構造となっている。なお、蓋側内装材13および本体側内装材19を形成するプラスチックとしては、前記と同様のものが挙げられる。
【0021】
本例の容器1は、蓋側外装材9の下端に帯状のセーフティーバンド25が設けられており、容器1の開封時には、セーフティーバンド25を引き切って取り除くようになっている。
【0022】
上述した実施形態によれば、本体側外装材15の内側に配置される本体側遮蔽体17に、本体側外装材15に形成された外装材膨出部42の内側部分と略同形状の遮蔽体凸部44を設けることによって、外装材膨出部42の内面と本体側遮蔽体17の外面との間の隙間をなくすことができ、それにより蓋側外装材9と本体側外装材15との連結部分が内側から補強される。また、本例では、外装材膨出部42の内面と遮蔽体凸部44の外面とを接触させているので、蓋側外装材9と本体側外装材15との連結部分の衝撃に対する強度がより高くなる。そのため、本体側外装材15が落下等による衝撃を受けて本体側連結部32にひびが発生するなどの破損が生じても、本体側連結部32が完全に破壊されることはなく、蓋5と容器本体7とが分離することはない。このため、直接容器3内に収納した放射性医薬品から放射される放射線の遮蔽を維持することができる。
【0023】
また、この実施形態によれば、外装材膨出部42の内側部分に遮蔽体凸部44を入り込ませるようにしたので、放射性医薬品用輸送容器1が落下等による衝撃を受けて本体側外装材15の底部が破損したとしても、外装材膨出部42の段差部分に遮蔽体凸部44の段差部分が引っ掛かるため、本体側外装材15から本体側遮蔽体17が容易に脱離することはなく、直接容器3内に収納した放射性医薬品から放射される放射線の遮蔽を維持することができる。
【0024】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、外装材膨出部42および遮蔽体凸部44を上記例とは異なる形状にしてもよい。また、上記例では蓋5と容器本体7との連結機構はロック機構によりロックされるネジ機構であったが、通常のネジ機構であってもよく、互いに嵌合する凹凸であってもよい。さらに、上記例では直接容器はバイアル瓶3であったが、プレフィルドシリンジであってもよい。また、上記例ではセーフティーバンド25を設けたが、セーフティーバンドは設けなくてもよい。
【実施例】
【0025】
〔落下試験例1〕
図1および図2に示した放射性医薬品用輸送容器1を用いて落下試験を行った。この容器は、本体側遮蔽体17の遮蔽体凸部44の外径Aが73.6mm、本体側遮蔽体17の遮蔽体凸部44以外の部分の外径が67mm、本体側遮蔽体17の重量が1957gのものであった。
【0026】
上記放射性医薬品用輸送容器を、縦200mm、横200mm、高さ200mmのダンボール製輸送箱の中に炭酸カルシウム含有ポリプロピレンといった炭酸カルシウム含有ポリオレフィンなどからなる緩衝材とともに収容し、輸送箱の蓋を閉じた後、放射性医薬品用輸送容器の底部を下に向けた状態で輸送箱を地上10メートルの高さから地面に落下させて、放射性医薬品用輸送容器の状態を確認した。
【0027】
落下試験は12回行ったが、全ての試験において次のとおりの結果となった。すなわち、本体側外装材の外装材膨出部より下側の側面については、プラスチックが割れて欠落し、内部の本体側遮蔽体が外側から見える箇所が発生した。また、本体側外装材の底部にはひびが発生した。本体側外装材の外装材膨出部については、ひびが発生したが、蓋側外装材と本体側外装材との連結部分のプラスチックは完全には割れず、蓋側外装材と本体側外装材とは分離しなかった。
【0028】
〔落下試験例2〕
図3に示す放射性医薬品用輸送容器51を用いて落下試験例1と同様の試験を行った。この容器は、本体側遮蔽体17に遮蔽体凸部44を形成していないこと以外は落下試験例1で用いた容器と同じものであり、本体側遮蔽体17の外径Cが67mm、本体側遮蔽体17の重量が1885gのものであった。なお、図3において、図1、図2に示した容器と同一の構成部分には同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0029】
落下試験は3回行ったが、全ての試験において次のとおりの結果となった。すなわち、本体側外装材の外装材膨出部より下側の側面および底面については、プラスチックがほとんど割れて欠落した。本体側外装材の外装材膨出部については、蓋側外装材と本体側外装材との連結部分のプラスチックは完全に割れて、蓋側外装材と本体側外装材とが分離し、容器本体と蓋とが分離した。
【符号の説明】
【0030】
1…放射性医薬品用輸送容器、3…バイアル瓶、5…蓋、7…容器本体、9…蓋側外装材、11…蓋側遮蔽体、13…蓋側内装材、15…本体側外装材、17…本体側遮蔽体、19…本体側内装材、21…収納凹部、25…セーフティーバンド、30…蓋側連結部、32…本体側連結部、34…凸突起、36…凹溝、42…外装材膨出部、44…遮蔽体凸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性医薬品を直接収納する直接容器を収納する間接容器として用いられる放射性医薬品用輸送容器において、
前記放射性医薬品用輸送容器を、容器本体と蓋とからなる構成とし、前記容器本体を、外側を形成する本体側外装材と、この本体側外装材の内側に配置される本体側遮蔽体とを有する構成とし、前記蓋を、外側を形成する蓋側外装材と、この蓋側外装材の内側に配置される蓋側遮蔽体とを有する構成とし、
前記本体側外装材および蓋側外装材を、互いに連結される本体側連結部および蓋側連結部をそれぞれ有する構成とし、
前記本体側外装材には、本体側外装材の他部分より径が大きい外装材膨出部を形成し、この外装材膨出部に前記本体側連結部を設けるとともに、前記本体側遮蔽体には、前記外装材膨出部の内側部分と略同形状の遮蔽体凸部を形成し、前記遮蔽体凸部を前記外装材膨出部の内側部分に入り込む形状とすることを特徴とする、放射性医薬品用輸送容器における衝撃に対する本体側遮蔽体と蓋側遮蔽体との分離防止方法。
【請求項2】
前記外装材膨出部の内面と前記遮蔽体凸部の外面とを接触させることを特徴とする、請求項1に記載の放射性医薬品用輸送容器における衝撃に対する本体側遮蔽体と蓋側遮蔽体との分離防止方法。
【請求項3】
前記本体側連結部と前記蓋側連結部とをネジ機構によって連結させることを特徴とする、請求項1または2に記載の放射性医薬品用輸送容器における衝撃に対する本体側遮蔽体と蓋側遮蔽体との分離防止方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−67643(P2011−67643A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251609(P2010−251609)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【分割の表示】特願2004−246423(P2004−246423)の分割
【原出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000230250)日本メジフィジックス株式会社 (75)
【Fターム(参考)】