放射性同位元素で標識したアルカン酸を使用することによる血流および組織への代謝的取込みのモニター法
【課題】 血流および組織への代謝的取込みをモニターするための新規な変形脂肪酸アナログを開発する。
【解決手段】 脂肪酸骨格上のひとつの位置に陽電子またはガンマ線放出性標識を付し、さらに、脂肪酸骨格の2,3位、3,4位、4,5位、5,6位、またはその他の配列位置を有機置換基で置換した。これらの新規脂肪酸アナログ類は、天然の脂肪酸と同様に、長鎖脂肪酸キャリヤーメカニズムによって目的組織に入り込むことを意図したものである。しかしながら、2,3位、3,4位、4,5位、5,6位、またはその他の配列位置における機能性置換基が異化経路を阻止するため、これらのアナログ類は、実質的に変形されずに目的組織内に留まる。
【解決手段】 脂肪酸骨格上のひとつの位置に陽電子またはガンマ線放出性標識を付し、さらに、脂肪酸骨格の2,3位、3,4位、4,5位、5,6位、またはその他の配列位置を有機置換基で置換した。これらの新規脂肪酸アナログ類は、天然の脂肪酸と同様に、長鎖脂肪酸キャリヤーメカニズムによって目的組織に入り込むことを意図したものである。しかしながら、2,3位、3,4位、4,5位、5,6位、またはその他の配列位置における機能性置換基が異化経路を阻止するため、これらのアナログ類は、実質的に変形されずに目的組織内に留まる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照/参考としての取込み
本出願は、2003年4月17日に受理された米国特許出願第60/463,574号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本明細書中に引用している各特許出願および特許、ならびに各特許出願および特許中に引用されている各出版物または参考文献 (発行された各特許について訴訟中のものを含む;出願引用文献) 、さらに、これらの特許出願および特許のうちの任意のものに対応する、および/または優先権を主張する米国および外国特許出願および特許、またさらに、各出願引用文献中に引用または参照されている各文献は参照として本明細書中に取り込んでおくことを特記する。より一般的には、出版物または参考文献は、参考文献一覧中または明細書の文章中のいずれかにおいて本明細書中に引用されており、これらの出版物または参考文献(「本明細書中に引用されている参考文献」)の各々、ならびに、本明細書中に引用されている参考文献中に引用されている各出版物または参考文献(メーカーの仕様書、使用説明書などを含む)も参照として本明細書に取り込んでおくことを特記する。本明細書中に参照として取り込んだ出版物は発明の実施において使用することができる。本出願は、1985年6月18日に交付された米国特許第4,524,059号を参照しており、該特許の内容を参照として本明細書中に取り入れておく。
【0003】
本発明は、環式有機置換基を有する新規脂肪酸アナログを放射性同位元素で標識した化合物に関する。ここで、脂肪酸骨格のひとつの位置に陽電子またはガンマ線放射性標識を付し、脂肪酸骨格の2,3位、3,4位、4,5位、5,6位およびその他の位置を有機置換基で置換した。これらの新規脂肪酸アナログ類は、天然の脂肪酸と同様に、長鎖脂肪酸キャリヤーメカニズムによって目的組織に入り込むことを意図したものであるが、骨格内の2,3位、3,4位、4,5位、5,6位およびその他の位置の機能性置換基が異化経路を阻止するため、これらのアナログ類は、大部分が変形されずに目的組織内に留まる。
【背景技術】
【0004】
心疾患の非侵襲性評価については、多数の画像様式が開発されている。心筋灌流および心代謝に到達することができる放射性追跡子は、虚血性心疾患および心筋症の臨床評価に有用である。有気状態においては、脂肪酸類(FA類)は、心筋内でのアデノシン三リン酸(ATP)の産生における基本的基質である。心筋のエネルギーは、約70%が基底状態の脂肪の代謝によって得られ、残りは、グルコース(15%)、乳酸塩およびピルビン酸塩(12%)ならびにアミノ酸(5%)から供給される。従って、心臓の造影にはFA類および変形脂肪酸類(MFA類)が使用されてきた。
【0005】
心筋による遊離FA類の取込みは、血中含有量の40〜60%であり、この値は、灌流と釣り合っている。FA類は、非エステル化FA類として、あるいは、超低密度リポタンパク質粒子もしくはカイロミクロン中の、または血清アルブミンに結合したトリグリセリドとして、間質組織の濃度勾配を通過して心臓に輸送される。このような条件下においては、FA類は酸化的代謝基質の70%を占めている。筋細胞による遊離FA類の抽出は、FA鎖の長さ、他の代謝基質の利用の可能性、ホルモンの循環レベル、心仕事量、ならびに虚血の有無を含むいくつかの変数によって制御されている。
【0006】
MFA類は、ミトコンドリアのβ−酸化段階までは天然型FA類と同様な挙動を示し、長時間かけて分離される(非特許文献1)。概説すると、FAの行く末は次のようである:FAは、毛細血管血から間質組織へと通過する。FAは血管へ「逆拡散」するか、または間質組織を通過し、このときに活性化されてアシルコエンザイムA(CoA)になる。次に、活性化されたFAは、エステル化されてトリグリセリドを形成し、リン脂質に取り込まれるか、または、ミトコンドリア内に輸送されて酸化される。FAからアシルCoAへの活性化にはエネルギーを要し、イン・ビボ(in vivo)においては基本的に不可逆であると考えられている。アシルCoAは細胞膜から逃避することはできないので、細胞内に蓄積する。しかしながら、トリグリセリド類の形成は不可逆的ではなく、構成するFAとグリセロールに分解されてFAプールに入る。
【0007】
上述したように、FAの代謝と心筋の集成性との間には密接な関係がある。FA類の利用度が高いことから、標識されたFA類を適切な検出技術と組み合わせることにより、イン・ビボ(in vivo)における局所的な心筋代謝の定量法を提供することができる。イン・ビボ(in vivo)における基質の使用量を定量する方法としては2つの様式がある。ひとつは、放射性標識した、陽電子放出性の生体基質を使用する方法である。この方法に従い、ウサギにおいて炭素11(11C)パルミチン酸(PA)を使用して心臓のグルコースおよびFA代謝の評価が行われている(非特許文献2)。虚血後しばらくして、心臓機能が回復し民も関わらず、PAの抽出が顕著に低下していたことが示されている(非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13;非特許文献14;非特許文献15;非特許文献16;非特許文献17;非特許文献18;非特許文献19;非特許文献20;非特許文献21;非特許文献22;非特許文献23)。さらに、流量が持続的に低下している部分においてもPA抽出の低下が認められた(非特許文献16)。
【0008】
11C−PAを使用する別の実験においては、心筋内のFAの局所分布を調査するための実験基準が提供されている。心筋の局所代謝率のイン・ビボ(in vivo)定量に対して生体的FA類を放射性標識して使用する場合には、いくつかの欠点がある。第一に、カルボキシル基を11Cで標識した11C−FA類を使用すると、1回目のβ−酸化中に標識の消失が生じる。冠動脈内に直接11CO2を投与し、心筋を直接モニターした実験においては、30秒以内に11CO2の放出が観察され、50%クリアランス時間は2〜8分であることが示された。第二に、β−酸化によって放射性標識が迅速に洗い流されてしまい、さらに、連続画像時間が短いことから、統計の計数に限界がある。第三に、心筋細胞内においては、FA類は別異のプール、すなわち、遊離FA類、トリグリセリド類、リン脂質類、ジグリセリド類およびモノグリセリド類に分布している。FAの酸化速度がトリグリセリドの加水分解速度に比例しているか否かは不明である。血中の放射活性の初期消失後に、肝臓から放射性標識代謝物が放出されることによって活性の上昇が見られる。このことから、上昇が起こる前に標識FAの検出を終了する必要がある。11C−PAを用いてイヌで行った別の実験においては、代謝物が複雑であったために、虚血期間中での定量には限界があったことが示された(非特許文献13)。代謝物が単純であることから、代替化合物として11Cアセタートの使用が提案されている。
【0009】
二番目の様式は、既知の代謝経路に入る「アナログ追跡子」の使用を含むものである。しかしながら、追跡子の化学構造が特異であることから、これらの代謝はある段階で停止し、細胞内に捕獲された放射性標識が既知の形で残る。この考え方は、1−[11C]−2−デオキシグルコース(2DG)および2−[18F]−フルオロデオキシグルコース(2FDG)などのグルコースアナログ類を用いたグルコースの代謝実験に応用されている。代謝捕獲の原理に従い、2FDG を用い、イン・ビボ(in vivo)でのヒトの局所的グルコース代謝速度の測定が行われている。心筋のグルコース代謝の測定に2FDGを使用する研究が行われている。同様に、心筋内の代謝活性の測定にはFA類も汎用されている。FA類を使用する場合の主要な欠点は、上述したように、洗い流し速度が速いことである。FAは、放射性核種の位置に応じ、β−酸化によって非常に迅速に洗い流されてしまう傾向がある。続いて、放射性標識されたFAまたは代謝物は、目的の領域(主に肝臓および肺)以外の組織内に蓄積する場合がある。放射性ハロゲン化脂肪族脂肪酸においては、そのような蓄積は頻繁に起こり、123Iを用いた場合には甲状腺に移動して貯蔵され、18Fを用いた場合には骨に貯蔵される。
【0010】
エヴァンス(Evans)および共同研究者らは、オレイン酸の二重結合を131Iで飽和させることによって直鎖FAを放射性標識し、イヌの心臓のフォトスキャンを得たが、最終生成物の比放射能が低かったことから臨床使用はできないことがわかった(非特許文献24;非特許文献25)。それ以後、心臓造影用に多数のMFA類が開発されている。ポー(Poe)および共同研究者らは、[123I]−ヘキサデカン酸(IHXA)および[123I]−ヘプタデカン酸(IHDA)が実験イヌモデルにおける心筋灌流の指示物質であること、ならびに、得られた消失速度が11C−PAのそれと類似していることを示した(非特許文献26;非特許文献27)。前心筋梗塞状態の全ての被験者において、追跡子の局所取込みが減少していることが示された。マチュラ(Muchulla)らは、ω−末端を標識したFA類は、α位を標識したアナログ類よりも効率的に抽出され、さらに、IHDAの取込みが最も多かったことを報告している(非特許文献28)。
【0011】
IHDAおよびIHXAは、心筋灌流物質としての能力を有するが、患者の心筋代謝への侵入能については疑問視されている(非特許文献29;非特許文献30)。放射性標識したヨウ化アルキルFA類の臨床使用に関しては、次のような点から限界がある:1)遊離の放射性ヨウ素がすぐに出現することから、心筋における活性と血液プールにおけるそれとの区別をするための特別な補正手段を要する;2)排出半減期が短いことから、単一光子画像用の物質としては不適である;3)データから、排出速度はβ−酸化を反映しているとは考えづらく、むしろ、膜を透過した追跡子の脱ヨウ素化および逆拡散を反映していることが示唆される。さらに、二次元画像用に開発されたプロトコールおよびアルゴリズムは、単一光子画像(SPECT)には適用不可能であり、このような代謝パラメーターの測定に関する画像様式候補にすぎないとして完全に除外される。IHDAおよびIHXAを用いた画像化には脱ヨウ素化に伴う難点があることから、最終的に、分岐FA類の開発に至った。
【0012】
FA類の分子構造を変形することにより、心筋代謝を減弱させる、心臓での保持時間を延長させる、また、洗い流しの影響を避けることができる。アルキルFA類の急速な脱ヨウ素化の防御およびヨウ素放射性標識の安定性の促進を目的として、代替化合物として15−(p−ヨードフェニル)ペンタデカン酸(IPPA)が開発された(非特許文献31)。末端フェニル環のオルト位またはパラ位に123I標識を導入することにより、脱ヨウ素化に対する安定性が得られた。灌流ラット心臓における[123I]−IPPAの動態は、生理学的基質である11C−PAのそれと類似していた(非特許文献32)。IPPAの取込みは灌流に連動しており、一般的に、IPPAはβ−酸化の正常代謝経路に入る(非特許文献33)。ヨウ化安息香酸およびその代謝物であるヨウ化馬尿酸塩は、IPPAの酸化による生成物であり、それらはヨウ素部位を付けたままの形で腎臓から迅速に排出されるが、これによって遊離の放射性ヨウ素の蓄積が回避される。
【0013】
心筋の生検試料を用いた実験により、正常な心筋から複指数関数的に迅速に排出されることが示されており、このとき、迅速コンポーネントはt1/2=3.5分(流速)、緩徐コンポーネントはt1/2=130分(代謝)、血中クリアランスはt1/2=5分(排出)であった(非特許文献34)。アルキル長鎖FA類と比較すると、IPPAには、心筋への迅速な取込み、ヨウ素安定性、および代謝物の迅速な体外放出という利点がある。IPPAは、優れた画質の提供、ならびに代謝速度の推定を伴うSPECT画像の収集および定量化に関して直鎖FA類より遥かに改良されてはいるが、IPPAの代謝およびクリアランスの速度はSPECT画像法にはまだ速すぎた。故に、酸化的代謝が抑制された放射性標識FAアナログ類の開発に努力が払われた。
【0014】
メチル分岐鎖を導入して心筋クリアランス速度を低下させ、定量的画像の精度を向上させた(非特許文献35;非特許文献36;非特許文献37;非特許文献38;非特許文献39;非特許文献40)。3位の炭素にメチル基を付加すると、5−L-ヒドロキシScoA中間体の脱水素化を介して進行する3−カルボキシ中間体(β−ケトアシル−ScoA)の形成が阻止されることにより、β酸化が阻止される。より長時間心筋に保持されるヨウ素標識MFA類としては、15−(p−ヨードフェニル)−3−(R,S)−メチル−ペンタデカン酸(BMIPP)および15−(p−ヨードフェニル)−3,3−ジメチル−ペンタデカン酸(DMIPP)の2種類がある。これらのメチル分岐鎖FA類の動態および細胞レベルでの分布については評価がなされており、DMIPPの心筋保持時間が最も長く、その間にほとんど代謝されなかった(非特許文献41;非特許文献42)。しかしながら、DMIPPの心筋クリアランスは非常に遅く(6〜7時間)、用途が限定される。さらに、DMIPPは、肝臓などの外組織内においても検出されている(非特許文献43)。BMIPPも肝臓に蓄積するが、その量はDMIPPよりも少ない。
【0015】
心臓画像法において現在最も汎用されているのはBMIPPである。BMIPPの心筋保持時間は長く(30〜45分)、初期のα−酸化および酸化的脱炭酸化によって中間体であるα−ヒドロキシ−BMIPPが生成した後に、筋細胞内でβ−酸化が進行する(非特許文献44)。プロピオン酸が除去された後、β−酸化の連続サイクルを通過してさらに分解が進み、最終生成物である(p−ヨードフェニル)−酢酸が生成する。さらに、BMIPPを注射した直後の数分間における初期分布は、灌流追跡子である201タリウムおよび99mテクネチウム化合物などのそれと同様である。 従って、心筋の生存率を高精度で評価するために必要なことは、BMIPPを単独使用して注射直後およびある時間を経過した後に得た画像であるということができる。同様に、多くの研究グループが血流用のマーカーとしてのFA類に関して研究を行っており、それらのデータから、ある種のFA類を単回投与することにより、201Tl、11C−PAまたはカリウムによって得られる画像と同様の画像が得られることがわかった(非特許文献45;非特許文献46;非特許文献47;非特許文献48)。従って、単回投与をすることによって、患者の放射線暴露量が抑えられ、かつ経済的でもある。BMIPPは、血流および代謝に関して汎用されているFAであるが、当該分野においては、明らかな代謝を受けることなく、また、所望しない他の部位に放射性標識が移動せずに、心筋にさらに長時間保持されるMFA類が希求されている。BMIPPおよびその代謝物は、肺組織中にかなり高レベルで検出されている(非特許文献43)。
【0016】
画像法に適したMFA類は多数存在するが、それらの大多数は、β−酸化を著しく受けて放射性標識代謝物を生成し、他の組織内に蓄積するか、または、心筋内に効率的に輸送されず、逆拡散したり再エステル化を受けてトリグリセリドプールに入る。従って、外的、生理学的手段によって目的組織に輸送されるが、分岐有機置換基の存在によってβ−酸化の進行が不能になるような放射性標識MFAアナログが必要とされている。このような要求が満たされることにより、MFAは、実質的に変形されることなく、従来技術による検出に必要な十分な時間にわたって、目的組織(すなわち、心臓組織)内に保持される。さらに、上述した特性を有し、臓器の所望しない部分への移動がほとんどなく、目的組織内に保持されるような放射性標識MFAが必要とされている。
【非特許文献1】リヴニ(Livni), E.ら、1990, Lipids 25:238-40
【非特許文献2】ライクル(Raichle), M.E.ら、(1978) Science 199:986-987
【非特許文献3】クレイン(Klein), M.S.ら、(1979) J.Am.Physiol. 237: H51-H58
【非特許文献4】ゴールドステイン(Goldstein), R.A.ら、(1980) J.Nucl.Med. 21:342-348
【非特許文献5】ウェイス(Weiss), E.S.ら、(1969) Circulation 19: 25-32
【非特許文献6】フォックス(Fox), K.A.ら、(1975) Circ.Res. 57: 232-243
【非特許文献7】ホフマン(Hoffman), E.J.ら、(1977) J.Nucl.Med. 18:57-61
【非特許文献8】ターポゴシアン(Ter-Pogossian), M.M.ら、(1980) Circulation 61:242-255
【非特許文献9】ウェイス(Weiss), E.S.ら、(1977) Circulation 55: 66-73
【非特許文献10】ショーン(Schon), H.R.ら、(1982) Am.Heart J. 103: 532-547
【非特許文献11】ショーン(Schon), H.R.ら、(1982) Am.Heart J. 103: 548-561
【非特許文献12】シェルバート(Schelbert), H.R.ら、(1983) Am.Heart J. 105: 492-504
【非特許文献13】シェルバート(Schelbert), H.R.ら、(1983) Am.Heart J. 106: 736-750
【非特許文献14】ソベル(Sobel), B.E.ら、(1982) Am.Heart J. 103: 673-681
【非特許文献15】シェルバート(Schelbert), H.R.ら、(1983) Am.Heart J. 105: 522-526
【非特許文献16】シェルバート(Schelbert), H.R.ら、(1985) Circulation 72: TV122-133
【非特許文献17】ソベル(Sobel), B.E.ら、Circulation 72: IV22-30
【非特許文献18】ロザモンド(Rosamond), T.L.ら、(1987) J.Nucl.Med. 28: 1322-1329
【非特許文献19】グローヴァー−マッカイ(Grover-McKay), M.ら、(1986) Circulation 74: 282-292
【非特許文献20】シェルバート(Schelbert), H.R.ら、(1986) Am.Heart J. 111: 1055-1064
【非特許文献21】ヤッフェ(Jaffe), A.S.ら、(1987) Int.J.Cardiol. 15: 77-89
【非特許文献22】ナブ(Knabb), R.M.ら、(1987) J.Nucl.Med. 28:1563-1570
【非特許文献23】マイアーズ(Myars), D.W.ら、(1987) Am.J.Physiol. 253: 107-114
【非特許文献24】エヴァンス(Evans), J.ら、(1965) Circ.Res. 16: 1-10
【非特許文献25】コルベット(Corbett), J.R.ら、(1999) Semin.Nucl.Med. 29(3): 1999-2006
【非特許文献26】ポー(Poe),N.ら、(1976) J.Nucl.Med. 16:17-21
【非特許文献27】ポー(Poe),N.ら、(1977) Radiology 124: 419-424
【非特許文献28】マチュラ(Machulla),H.ら、(1978) J.Nucl.Med. 19:298-302
【非特許文献29】フロインドリーブ(Freundlieb),C.ら、(1980) J.Nucl.Med. 21(11): 1043-1050
【非特許文献30】ヴィッサー(Visser),F.C.ら、(1985) Circulation 72(3): 565-571
【非特許文献31】マチュラ(Machulla),H.ら、(1980) Eur.J.Nucl.Med. 5: 171-173
【非特許文献32】レスケ(Reske),S.ら、(1984) J.Nucl.Med. 25: 1335-1342
【非特許文献33】カルドウェル(Caldwell),J.ら、(1990) J.Nucl.Med. 31:99-105
【非特許文献34】チエン(Chien),K.ら、(1983) Am.J.Physiol 245: H693-H697
【非特許文献35】リヴニ(Livni), E.ら、(1982) J.Nucl.Med. 23: 169-175
【非特許文献36】エルマレー(Elmaleh), D.R.ら、(1981) J.Nucl.Med. 22:994-999
【非特許文献37】エルマレー(Elmaleh), D.R.ら、(1983) Int.J.Nucl.Med.Biol. 10: 181-187
【非特許文献38】グッドマン(Goodman), M.M.ら、(1984) J.Org.Chem. 49: 2322-2325
【非特許文献39】リヴニ(Livni), E.ら、(1985) Eur.Heart J. 6(Suppl B): 85-89
【非特許文献40】ビアンコ(Bianco), J.A.ら、Eur.J.Nucl.Med. 12: 120-124
【非特許文献41】ナップ(Knapp),F.ら、(1986) Eur.J.Nucl.Med. 12: S39-S44
【非特許文献42】アンブロース(Ambrose),K.ら、(1987) Eur.J.Nucl.Med. 12: 489-491
【非特許文献43】スローフ(Sloof)ら、(1997) Nucl.Med.Commun. 18(11): 1065-70
【非特許文献44】ヤマミチ(Yamamichi),Y.ら、(1995) J.Nucl.Med. 36:1042-1050
【非特許文献45】ヴァン・デル・ウォール(van der Wall),E.E.ら、(1980) Eur.J.Nucl.Med. 5(5): 401-405
【非特許文献46】カイレント(Kairento)A.L.ら、(1988) Int.J.Rad.Appl.Instrum. B15(3): 333-338
【非特許文献47】コバヤシ(Kobayashi), H.ら、(1997) J.Nucl.Med. 39(7):1117-1122
【非特許文献48】カワモト(Kawamoto), M.ら、(1994) J.Nucl.Cardiol. 1(16): 522-528
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0017】
FA取込みに関する代替化合物は、虚血および心筋損傷の感受性マーカーであると考えられる。初期には心筋血流を呈示し、結果的には代謝活性に基づいて適切な心筋への保持を示すような放射性標識FA類は、虚血性心疾患および心筋症時に起こる、心血流およびFA代謝の局所的不均衡に対する臨床評価に有効な候補物質である。
【0018】
故に、本発明は、環式有機置換基を有する新規な放射性標識FAアナログ類に関し、このとき、FA骨格内に陽電子またはガンマ線放出標識を付し、さらに、FA骨格の2,3位、3,4位、4,5位、5,6位およびその他の配列位置を有機置換基で置換した。これらの新規FAアナログ類は、天然のFA類と同様に、長鎖FAキャリヤーメカニズムによって目的組織内に侵入することを意図したものである。しかしながら、2,3位、3,4位、4,5位、5,6位およびその他の配列位置における機能的置換基が異化経路を阻止することにより、これらのアナログ類は目的組織内に捕獲される。
【0019】
従って、本発明をひとつの側面から見ると、放射性標識を付され、哺乳類の組織に取り込まれる脂肪酸のアナログに関し、該アナログは以下の構造式を有する:
R−(CH2)n−Z−(CH2)mCO2H
ここで、nは8〜22であり、mは0〜10であり、RはCH3、アリールもしくは複素環基であり、さらに、Zは環式もしくは複素環式有機置換基であり、これらの置換基によって該アナログが該組織内に代謝的に捕獲される。
【0020】
本明細書において使用している「アリール」とは、5、6または7員環を含むが、これらに限定されるわけではない。さらに、「環式」とは、シクロプロピル、シクロブチルおよびシクロペンチルなどの環式アルカン類をさすが、これらに限定されるわけではない。同様に、「複素環式」とは、窒素、硫黄または酸素原子などを含む3〜5個の元素からなる任意の環構造をさす。
【0021】
本発明を別の側面から見ると、放射性標識を付され、哺乳類の組織に取り込まれる脂肪酸のアナログに関し、該アナログは以下の構造式を有する:
【化1】
【0022】
ここで、DはCH2またはCH2CH2であり、EはCH2またはCH2CH2であり、mは0〜10であり、nは8〜14であり、さらに、RはCH3、アリールもしくは複素環基であり、有機環式置換基−CDCE−によって該アナログが該組織内に代謝的に捕獲される。
【0023】
本発明を別の側面から見ると、放射性標識を付され、哺乳類の組織に取り込まれる脂肪酸のアナログに関し、該アナログは以下の構造式を有する:
【化2】
【0024】
ここで、Aは(CH2)x、OまたはSであり;Xは1、2、3および4であり;シスおよびトランス異性体であるR,RおよびS,S、ならびにそれらのラセミ体であり;mは0〜10であり;nは14〜8であり;Rは18F−フェニルまたは123I−フェニルであり、環式または複素環式有機置換基−CH−A−CH−によって該アナログが該組織内に代謝的に捕獲される。
【0025】
本発明をまた別の側面から見ると、放射性標識を付され、哺乳類の組織に取り込まれる脂肪酸のアナログに関し、該アナログは以下の構造式を有する:
【化3】
【0026】
ここで、Aは(CH2)y、OまたはSであり;yは1、2、3および4であり;シスおよびトランス異性体であるR,RおよびS,S、ならびにそれらのラセミ体であり;mは0〜10であり;nは14〜8であり;RはCH3であり;さらにXは放射性標識である。
【0027】
さらに本発明は、放射性標識を付され、哺乳類の組織に取り込まれる脂肪酸のアナログを提供し、該アナログは以下の構造式を有する:
【化4】
【0028】
ここで、XはH、18F、123I、121I、34mCl、75Br、76Br、77Br、アルキルおよびそれらのヘテロアルキル類であり;Yは、H、18F、123I、121I、34mCl、75Br、76Br、77Br、それらのアルキルおよびヘテロアルキル類であり;Aは(CH2)z、OまたはSであり;zは1〜4であり;mは0〜10であり;nは8〜14であり;pは0〜6であり;RはCH3、アリールまたは複素環であり、環式または複素環式有機置換基−CH−A−CH−によって該アナログが該組織内に代謝的に捕獲される。
【0029】
さらに本発明を別の側面から見ると、放射性標識を付され、哺乳類の組織に取り込まれる脂肪酸のアナログに関し、該アナログは以下の構造式を有する:
【化5】
【0030】
ここで、Aは(CH2)y、OまたはSであり;yは1〜4であり;mは1〜10であり;nは8〜14であり;pは0〜6であり;RはCH3、アリールまたは複素環であり;Xは18F、123I、121I、34mCl、75Br、76Brまたは77Brであり;環式または複素環式有機置換基−CH−A−CH−によって該アナログが該組織内に代謝的に捕獲される。
【0031】
好ましくは、新規脂肪酸は18F、123I、121I、34mCl、75Br、76Brまたは77Brで標識された環式有機置換基を有する。
【0032】
別の実施態様においては、環式有機置換基を有する新規脂肪酸は飽和している。
【0033】
また別の実施態様においては、1またはそれ以上の二重結合を含む環式有機置換基を有する新規脂肪酸について記述している。
【0034】
ひとつの実施態様においては、有機置換基は3〜5員環構造である。
【0035】
本発明の別の側面においては、患者の血流の測定法が提供され、次のような工程を含む:
a)目的組織に、本発明に従うFA組成物の検出可能量を局在させ;
b)投与後約1〜5分以内に、目的組織内の該FA組成物から放出されるシグナルを検出し;
c)目的組織の画像化を行い;さらに、
d)目的組織内の血流を求める。
【0036】
別の側面においては、患者の代謝の測定法が提供され、次のような工程を含む:
a)目的組織に、本発明に従うFA組成物の検出可能量を局在させ;
b)投与後約30〜120分以内に、目的組織内の該FA組成物から放出されるシグナルを検出し;
c)目的組織の画像化を行い;さらに、
d)目的組織の代謝速度を求める。
【0037】
さらに本発明の別の側面においては、脂肪酸のアナログを含む組成物を目的組織内に保持する方法が提供され、次のような工程を含む:
a)目的組織に、検出可能量の組成物を局在させ;
b)組成物の輸送および逆拡散を減少させることにより、該組成物またはその代謝誘導体を組織内に保持させ;さらに、
c)組織内の該組成物または代謝誘導体を検出する。
【0038】
またさらに本発明は、本発明に従う脂肪酸組成物を目的組織内に保持する方法を提供し、次のような工程を含む:
a)検出可能量の組成物を組織内に局在させ;
b)組成物の脱水素化を低下させることにより、該組成物またはその代謝物を組織内に保持させ;さらに、
c)組織内の該組成物または代謝誘導体を検出する。
【0039】
また別の側面から見ると、本発明は、本発明に従う脂肪酸組成物を目的組織内に保持する方法を提供し、次のような工程を含む:
a)検出可能量の組成物を組織内に局在させ;
b)組成物のヒドロキシル化を低下させることにより、該組成物またはその代謝物を組織内に保持させ;さらに、
c)組織内の該組成物または代謝誘導体を検出する。
【0040】
さらに本発明は、本発明に従う脂肪酸組成物を目的組織内に保持する方法を提供し、次のような工程を含む:
a)検出可能量の組成物を組織内に局在させ;
b)組成物のケトアシル形成を低下させることにより、該組成物またはその代謝物を組織内に保持させ;さらに、
c)組織内の該組成物または代謝誘導体を検出する。
【0041】
またさらに別の側面においては、本発明は、本発明に従う脂肪酸組成物を目的組織内に保持する方法を提供し、次のような工程を含む:
a)検出可能量の組成物を組織内に局在させ;
b)組成物のケトアセチル脱離を低下させることにより、該組成物またはその代謝物を組織内に保持させ;さらに、
c)組織内の該組成物または代謝誘導体を検出する。
【0042】
ひとつの実施態様においては、目的組織は心臓組織である。
【0043】
別の実施態様においては、目的組織は肝臓組織である。
【0044】
好ましくは、本発明は、腫瘍組織を目的組織として記載する。
【0045】
ひとつの実施態様においては、組織は病変している。
【0046】
別の実施態様においては、組織は正常である。
【0047】
好ましくは、運動誘導性ストレスまたは薬剤誘導性ストレスに組織をさらすことができる。
【0048】
別の側面から見ると、本発明は、本発明に従う脂肪酸組成物の合成法を提供し、次のような工程を含む:
a)出発化合物からモノ保護一級アルコールを合成し;
b)モノ保護一級アルコールに環式または複素環式有機置換基を付加することにより、環式モノ保護一級アルコールを生成させ;さらに、
c)環式モノ保護一級アルコールを処理することによって脂肪酸アナログを生成させる。
本発明のひとつの実施態様においては、出発化合物は飽和炭素骨格を有する。
【0049】
別の実施態様においては、出発化合物は不飽和炭素骨格を有する。
【0050】
また別の実施態様においては、出発化合物は末端フェニル基を有する。
【0051】
さらに別の実施態様においては、出発化合物は環式一級アルコールである。
【0052】
本発明のひとつの実施態様においては、環式有機置換基として環式アルカンを使用している。
【0053】
別の実施態様においては、3〜5員環構造の複素環式構造を有する複素環式有機置換基を使用している。
【0054】
また別の実施態様においては、放射活性標識を付加することを追有し、そのような標識はアナログの炭素原子に結合している。
【0055】
本発明はさらに、放射性標識した脂肪酸のアナログを投与するためのキットを提供し、そのようなキットは、本発明の方法に従って合成された脂肪酸アナログ、放射活性同位元素、薬剤学的に許容されるキャリヤー、ならびに、必要に応じて、放射性標識されたアナログの調製法もしくはそれらの使用法に関する指示書を含む。
【0056】
好ましくは放射活性同位元素は、18F、123I、121I、34mCl、75Br、76Brまたは77Brを含む群から選択される。
【0057】
請求の範囲および本明細書において、「含む」という語または「含んでいる」などの類似語は、表記した整数または整数群を包含する意味であるが、その他の任意の整数または整数群を除外するものではない。
【0058】
これらおよびその他の実施態様は、以下の記載から自明であるかまたは記載に包含されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
本発明に従えば、環式有機置換基を有し、放射性標識を付した新規脂肪酸組成物を動物(ヒトを含む)に投与することにより、臓器への血流および該動物の体内臓器による代謝を測定することができる。本発明においては、「変形脂肪酸」という語は、合成によって変形された合成または天然に存在する脂肪酸を指す。さらに、本発明においては、「有機置換基」という語は、脂肪酸に結合している有機化学構造を指し、目的組織内における脂肪酸のβ−酸化のイン・ビボ(in vivo)速度低下に有効である。
【0060】
本明細書に記載している新規FA類は、放射性標識を付されており、さらに、2,3位、3,4位、4,5位、5,6位および他の位置において有機置換基によって変形されている。「2,3位」とは、カルボキシル炭素原子から数えてC2およびC3位に存在する炭素原子間の炭素結合を指す。そのようにすると、「3,4位」とは、C3およびC4位に存在する炭素原子を指す。同様に、「2,3位」は、当業者においては、炭素原子について、対応する語である「ベータ−ガンマ」または「βγ」と言い換えることができる。従って、「3,4」位は、炭素原子について、対応する語である「ガンマ−デルタ」または「γδ」と言い換えることができる。分子のカルボキシル末端は、これ以後、分子の「右」末端と称し、反対側の末端を分子の「左」末端と称する。化合物の一般式については、図2にも示している。
【化6】
【0061】
以下の全ての実施形態において、有機置換基は、飽和または不飽和である。有機置換基は、少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくはN、OまたはS、最も好ましくはOまたはSを有する場合がある。窒素原子も用いることができ、当業者であれば、窒素原子の適切な置換を判断し、かつ、得られたアナログの適切な生体分布を測定することは容易である。脂肪酸の炭素骨格は、本明細書において定義している少なくとも1個のヘテロ原子を用いて置換することができる。
【0062】
さらに、AはC1〜C6のアルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、このとき、1個またはそれ以上のC原子、好ましくは1、2または3個のC原子がヘテロ原子、好ましくはN、OまたはS、最も好ましくはOまたはSで置換されている。得られたアナログの適切な生体分布を測定することに加えて、窒素原子の適切な置換を定めることは、当業者の技量の範ちゅうである。
【0063】
さらに、本明細書において使用している「アリール」とは、5員、6員または7員環を含むが、これらに限定されるわけではない。また、本明細書において使用している「ヘテロ原子」は、1個、2個または3個のヘテロ原子を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0064】
FAの鎖の長さもそれらが主に取り込まれる組織に影響を及ぼす。一般的に、炭素数が12〜20である鎖は心筋組織による選択的取込みに最適であり、一方、肝臓は、炭素数が5〜11である鎖を選択的に取り込む。アナログの炭素鎖は飽和または不飽和である。本発明の好ましい実施態様においては、FA骨格は飽和しており、環式有機置換基を有する。
【0065】
本発明の別の実施態様においては、FA骨格は、1個またはそれ以上のビニル基を有し、それによって炭素−炭素結合の1個またはそれ以上が不飽和になっている。好ましくは、ビニル基は、カルボキシル基と反対側に存在しているか、または、上記の一般式中「A」で表されている置換基の左側に存在している。別の好ましい実施態様においては、ビニル基は、それらがFA鎖から分岐しているような状態でFA骨格に結合している。より好ましくは、1〜6個の炭素原子が「A」で表される置換基からビニル基を隔離している。これらの好ましい実施態様についての一般的な図は図11および図13に示す。
【0066】
FAの活性化は、それらの目的組織内への輸送および隔離に必要なエネルギーに依存性の過程である。本発明の好ましい実施態様は、FA代謝経路(本明細書においては「β−酸化」とも称する)の操作に関連する。この過程は、アシルコエンザイムA(CoA)シンターゼによって開始し、該酵素は、アデノシン三リン酸(ATP)の存在下、ミトコンドリアの膜外で末端COOHの脱炭酸化を行うことにより、サイトゾル性の遊離FAを活性化する。この過程によってアシル−アデニレート混合アンヒドリドが生成し、これらがCoAと反応して脂肪アシルCoAとAMP(アデノシン一リン酸)とを生成する。当業者であれば、アシル−CoAシンターゼの別異のイソ型は、多様な鎖長を有するFAに対して特異的であることは既知である。本明細書においては、「CoA」という語は「ScoA」と同義で使用している。
【0067】
FA類からアシルCoAへの活性化が首尾良く進行しない場合には、血管空隙への「逆拡散」が生じていることが多く、逆拡散したこれらのFAは代謝されない。しかしながら、一旦活性化されると、FAはミトコンドリア内膜を通過し、段階的β−酸化過程に入る。本明細書においては、ミトコンドリア内膜を通過する輸送は、FA類の「代謝的捕獲」または「代謝的保持」とも表記する。活性化された脂肪アシル−CoAは、ミトコンドリア内膜を通過して直接輸送されることはできず、アシル鎖は、アシル−カルニチン/カルニチン輸送担体によってカルニチンに転移されねばならない。ミトコンドリア内膜を通過するこの促進拡散は、FA類の酸化の律速段階である。心臓に重い負荷がかかっている場合、または心筋虚血の場合、エステル化FA類は、サイトゾル性トリグリセリド類および膜リン脂質として貯蔵プール内に転送される。本明細書に記載されいている新規なアナログ類の活性化および目的の代謝組織内への輸送は正常に進行するが、アナログの分解に関する次の段階は阻止されていると考えられる。
【0068】
ミトコンドリアマトリックス内においては、FA類は4段階を経て代謝される。1)アシルCoAデヒドロゲナーゼによって脂肪アシル−CoA前駆体からトランス2,3−二重結合が形成され、トランス−Δ2−エノイル−CoAが形成される。2)次に、エノイル−CoAヒドラターゼによってトランス二重結合が水和されて3−L−ヒドロキシアシル−CoAが形成され、続いて、3)3−L−ヒドロキシアシル−CoAデヒドロゲナーゼによって脱水素化が生じてβ−ケトアシル−CoAが生成する。4)β−ケトアシル−CoAチオラーゼによって2,3−炭素−炭素結合を解裂させることにより、アセチル−CoAおよび出発分子よりも炭素鎖が2個短い新しいアシル−CoAが形成される。この過程が繰り返され、それぞれ、炭素数が2個のフラグメントが残る。
【0069】
本発明は、ひとつまたは幾通りかの方法で代謝配列を阻害する、または阻止することにより、β−酸化経路を減弱させるような環式有機置換基を有するFA類に関する。例えば、中間体は、β−酸化経路中に必要な酵素群のうちのひとつに対する基質ではなく、あるいは、中間体は、代謝的水素付加段階、脱水素段階もしくはヒドロキシル化段階に入り得ない。血流および初期取込みに関連する初期捕獲段階は、血流に関連する画像の収集に役立つと考えられる。ひとつまたはいくつかの代謝段階を経た後に生じる代謝的捕獲または保持は、標的組織の代謝的集積状態を表している。本発明に従うFA類の代謝誘導体類の形成を「低下させる」とは、代謝反応を全体的または部分的に阻害または排除することを意味し、そのような代謝反応としては、輸送、逆拡散、水素付加、脱水素化、ヒドロキシル化、ケトアシル形成およびアセチル脱離などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。そのような観点からすると、本発明のひとつの側面においては、β−ケトアシル−CoAの形成(段階3)を低下させる。別の側面においては、トランス−Δ2−エノイル−CoA誘導体の形成(段階1)を低下させる。さらに本発明の別の側面においては、FA骨格上の有機置換基の位置に依存して、連続的β−酸化段階での生成物の生成を低下させる。FA骨格上の有機置換機の位置により、該分子がβ−酸化および代謝を受ける度合いが決まる。
【0070】
不飽和シス−二重結合の存在などのようなFA類の変形によってもFA代謝を減弱させることができる。シス−3,4−二重結合は、エノイル−CoAの基質ではなく、エノイル−CoAイソメラーゼを必要とするが、該酵素は、シス−二重結合をより安定なエステル縮合型のトランス型に転換する反応を触媒する。一旦この異性化が生じると、代謝は、β−酸化の5サイクル目まで正常に進行するが、偶数番号の炭素原子に別の二重結合が存在すると、2,4−ジエノイル−CoAが生成する。この分子はエノイル−CoAヒドラターゼの基質としては不適であり、NADPH−依存性2,4−ジエノイル−CoA還元酵素という別の酵素を必要とする。生成したトランス−2−エノイル−CoAは、3,2−エノイル−CoAイソメラーゼによってさらに異性化されてトランス−3−エノイル−CoAが得られる。同様に、分岐メチルまたはフェニル基などのその他の有機置換基を付加することによりβ−酸化経路の減弱に役立ち、目的の代謝組織において分子がより長時間保持される。
【0071】
本発明の実施態様においては、FA鎖骨格上を有機置換基または置換基群で置換する。この有機置換基は、2,3位、3,4位、4,5位、5,6位およびその他の配列位置において置換することができ、FA骨格から分岐した位置に置換基を付加することができる。FA骨格上の有機置換基の位置により、該分子がβ−酸化および代謝を受ける度合いが決まる。好ましい実施態様においては、3,4−位に有機置換基が結合していることにより、FAアナログのカルボキシル炭素原子に対してCoA置換が起こり、アナログが目的組織内に代謝的に捕獲される。得られた脂肪アシル−CoA分子に対する次の2段階の代謝、すなわち、トランス−Δ2−エノイル−CoAおよび3−L−ヒドロキシアシル−CoAの誘導体類の形成は、通常、3,4−置換によって起こる。しかしながら、得られた3−L−ヒドロキシアシル−CoA誘導体は、有機置換基が存在することから、3−L−ヒドロキシアシル−CoAデヒドロゲナーゼの基質ではなく、従って、β−ケトアシルCoAの形成が阻害される。別の好ましい実施態様においては、2,3−位に有機置換基が結合していることにより、FAアナログのカルボキシル炭素原子に対してCoA置換が起こり、アナログが目的組織内に代謝的に捕獲される。しかしながら、アナログを脱水素化して明らかにトランス−Δ2−エノイル−CoA誘導体が生成する反応を含む代謝の第一段階が起こらず、従って、アナログのさらなる代謝が阻害される。これらの特別な実施態様は、血流の測定に有効利用できると考えられる。
【0072】
同様に、有機置換基がFA骨格上の4,5位、およびその他の連続位(すなわち、5,6位、6,7位など)に存在する場合には、β−酸化の中のひとつまたはそれ以上の段階が停止し、続いて阻止される。本発明のさらに別の好ましい実施態様においては、FA骨格上のカルボキシル末端からさらに離れた位置(例えば、4,5位、5,6位、6,7位などが挙げられるが、これらに限定されない)に有機置換基を付加することを含む。当業者であれば、FA骨格上の有機置換基の位置がβ−酸化の進行度合いを決定することは既知である。本実施態様においては、本発明の代謝活性は、β−酸化経路を介する代謝の進行によって首尾良く測定することができる。
【0073】
アナログ上の任意の有機置換基は、脂肪酸のβ−酸化過程に含まれている第一の化学中間体の形成が可能である程度の大きさでなければならない。あまり大きすぎると、置換基がアナログの取込みおよび挙動を所望以上に大きく変化させる。任意の置換基に関する化学的性質ならびに大きさがアナログの特性に影響を及ぼす。一般的に、アナログの極性を極度に変化させないような置換基(例えば、非置換アルキル類など)を有するアナログは最初に心臓に取り込まれるが、極性化基(例えば、アルコールまたはエーテルなど)を有するアナログは最初に肝臓に取り込まれる。
【0074】
本発明のさらに別の側面においては、上述の一般式中、「A」で表される官能基は、分岐アルキル基、ジメチル基、環式アルカン類(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、または、3〜5個の元素からなる任意の複素環式構造など)を含む場合がある。複素環は窒素、硫黄または酸素原子を含む。本発明の好ましい実施態様は、シクロプロピル環置換基である。本発明の別の好ましい実施態様は、図10の一般的図式に示しているようなシクロブチルおよびシクロペンチル環置換基である。
【0075】
本発明のさらに別の目的は、FA骨格上に有機置換基をシス型にもトランス型にも付加できるようにすることである。シクロプロパン環形成法(シモンズ−スミス(Simmons-Smith)反応)については、本明細書に実施例の項に記載しており、改良法は、チャレット(Charette)ら(J.Org.Chem.(1995)60:1081)による。反応の構成要素は、シクロプロピル部位の付加に使用したFA前駆体に従い、シスまたはトランス異性体として存在する。CH2Cl2中で事前に形成させたZn(CH2I)2・DMEのコンプレックス(このコンプレックスの詳細については実施例1を参照)を3等量使用し、−10℃以下で3時間インキュベートすることにより、シスジアステレオ異性体が優位に合成され、一方、シスオレフィンおよび事前に形成させたコンプレックスを用い、混合物を−10℃で2時間インキュベートすることにより、シスジアステレオ異性体が形成される。当業者であれば、FA骨格上のシクロプロピル基は2個のキラル中心を有し、従って、分子にはR,RまたはS,Sという2つの鏡像異性体が存在することは既知である。本発明の実施態様は、ジアステレオ異性体およびそれらに対応する鏡像異性体、ならびに任意のラセミ混合物もしくはそれらのメソ化合物をも包含する。
【0076】
本発明に従う新規脂肪酸は、当該分野において既知の陽電子またはガンマ線放出標識を用いて放射性標識することができる。本発明の好ましい実施態様においては、18F、123I、121I、34mCl、75Br、76Brまたは77Brを含む。当業者であれば、別異の放射性核種は、生体組織からの排出、クリアランス、ならびに/または、生体組織への蓄積および半減期(t1/2)などに関して別異の薬物動態学的特性を示すことは既知である。一般的に、放射性核種はサイクロトロンによって合成されるが、該装置は、イオン源から発生させた原子スケール以下の粒子を円周軌道に沿って加速する。チャンバー内での粒子の加速は2つの交流電磁場によって制御されている。加速されたこれらの粒子はエネルギーを獲得し、光速に近づいたときに標的に衝突する。粒子が標的に衝突した結果、不安定で放射活性な同位体元素が得られ、次に、それらを本発明に例示しているような生体関連分子に結合させる。別の方法としては、市販の放射性核種が広く利用されており、当業者に既知である化学合成技術によって生体関連分子に付加することができる。一般的に、画像用の放射性追跡子の半減期は比較的短く、従って、放射性追跡子の検出装置(例えば、PETおよびSPECTスキャナー、またはガンマカメラなど)の重要な特徴は多数のサイクロトロンを配備していることである。当業者であれば、放射性同位元素の崩壊の原理については既知であり、本概念に関しては本明細書中ではこれ以上ふれない。
【0077】
本発明の好ましい実施態様においては、FAの代謝および他組織への移動中に放射性標識が著しく消失することがないような位置に、陽電子またはガンマ線放出放射性標識を付する。十分な技術を有する当業者であれば、末端のカルボキシル基に放射性標識を付することはふさわしくないと判断するであろうが、これは、目的組織内でのFA代謝の初期段階において、特異的酵素によってこのカルボキシル基が除去されるからである。本発明のひとつの側面においては、放射性標識は、FA骨格のC9位に付する。本発明の別の側面においては、FA骨格上でカルボン酸基とは反対側に位置する末端フェニル基に放射性標識を付する。さらに別の側面においては、FA骨格のひとつまたはそれ以上の炭素−炭素結合は不飽和であり、ビニル基を形成していることから、ビニル基に放射性標識を直接付加する。さらにまた別の側面においては、放射性標識したビニル基をFA骨格上に付加し、FA骨格から分岐させる。
【0078】
環式有機置換基を有する放射性標識FA類は、当該分野において既知である伝統的な有機化学合成によって合成することができる。同様に、本発明は多様な方法によって生成および分析することができ、そのような方法としては例えば、カラム精製、薄層クロマトグラフィー(TLC)、逆相クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、赤外線吸収スペクトル(IR)、核磁気共鳴(NMR)(相関スペクトル(COSY)、核オーバーハウザー効果スペクトル(NOESY)、および回転フレーム核オーバーハウザー効果スペクトル(ROESY)、ならびにフーリエ変換などの変形様式を含む)、質量分析(MS)などのその他の分析技術(エレクトロスプレー、化学イオン化、マトリックス支持レーザー脱離イオン化、飛行時間型、高速原子衝突・液体二次イオン化およびその他の多数の技術を含む)などが挙げられる。
【0079】
本発明に従い、環式有機置換基を有する新規な放射性標識FA類を含む薬剤学的組成物は、従来から知られている多様なデポー製剤にすることができる。これらには例えば、固体、半固体および液体投与剤型があり、錠剤、丸剤、粉末、液状溶液もしくは懸濁液、リポソーム、カプセル、坐剤、注射可能もしくは輸液可能な溶液などが挙げられる。そのような投与剤型には、薬剤学的に許容されるキャリヤーおよびアジュバントを使用することができ、それらは当業者においては既知である。これらのキャリヤーおよびアジュバントとしては、例えば、RIBI、ISCOM、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レチシン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミンなど)、緩衝物質(例えば、リン酸塩類、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウムなど)、植物性飽和脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩類もしくは電解質類(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩類、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウムなど)、ポリビニルピロリドン、セルロースに基づく物質、ならびにポリエチレングリコールなどが挙げられる。局所用製剤またはゲル化製剤用のアジュバントは、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック重合体類、ポリエチレングリコールおよび木ロウアルコール類を含む群から選択される。本発明における好ましい剤型は、注射剤である。従って、この剤型は、許容性向上のための準備中に他の処置に用いることができる。
【0080】
上述したように、目的の動物、好ましくはヒトに対して、環式有機置換基を有する放射性標識FA類を投与することができる。非経口、静脈内、筋肉内、病巣内または皮下注射を含む薬剤学的に許容される任意の投与経路により、本発明に従う新規FA組成物を投与することができる。例えば、薬剤学的に許容される任意の投与剤型で、組成物を患者に投与することができ、そのような剤型としては、ボーラス静注によって患者に投与できるもの、ある一定の時間、日数、週数または月数にわたって行う連続輸液、筋肉内(脊椎傍、関節周囲を含む)、皮下、皮内、関節内、滑膜内、クモ膜下、病巣内、骨膜への投与、または経口もしくは局所投与によって患者に投与できるものなどが挙げられる。好ましくは、本発明の組成物は、単位投与量を含有する剤型であり、通常、ボーラス静注によって投与する。
【0081】
精製FAは、静脈内輸送に適した濃度の生理食塩水などの溶液中に入れることができる。これらのFA類は、血流中の非エステル化FA類に結合する血清タンパク質であるアルブミンとコンプレックスを形成することができる。一般的には、アルブミンは2〜10%添加し、好ましくは、4〜6%添加する。別の方法としては、非イオン性界面活性剤中でこれらのFA類を乳化し、さらに、注射前にアルブミン含有または不含の溶液に再懸濁することができる。そのような界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート誘導体類(Tween)、Nonidet P-40、β−D−オクチルグルコシド、ウルソデオキシコール酸(UDCA)、またはTriton X-100などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。環式置換基を有する放射性標識FAの投与量は、投与前に各患者に対して決定せねばならず、一般的な投与量範囲は、0.1〜25mCiであり、より好ましくは1〜5mCiである。
【0082】
さらに別の側面においては、本発明に従うFA類を含む薬剤学的組成物を任意の動物に投与することができ、そのような動物としては、ウマ、ウシ、サル、鳥類、愛玩動物(例えば、イヌ、ネコ、トリ、フェレット、ハムスター、齧歯類、リスおよびウサギなど)などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。本発明の好ましい実施態様は、血流、FA代謝に関連のある疾病もしくは疾病状態をモニターすること、または、ヒトの体内の目的臓器を画像化することである。
【0083】
さらに本発明は、目的組織内において、疾病状態、運動、薬物に影響を受けて生じる血流および代謝の変化を測定、ならびに/または認識する方法、あるいは、診断用画像化法に関する。
【0084】
本発明のひとつの好ましい実施態様は、患者の体内の血流を測定する方法であって、次の工程を含む:
a)目的組織内に、検出可能量の本発明に従うFA組成物を局在させ;
b)投与後約1〜5分以内に、目的組織内の該放射性標識FA組成物から放出されるシグナルを検出し;
c)目的組織の画像化を行い;さらに、
d)目的組織内の血流速度を求める。
【0085】
さらに本発明は、患者の体内の代謝を測定する方法を提供し、該方法は次の工程を含む:
a)目的組織内に、検出可能量の本発明に従うFA組成物を局在させ;
b)投与後約30〜120分以内に、目的組織内の該放射性標識FA組成物から放出されるシグナルを検出し;
c)目的組織の画像化を行い;さらに、
d)目的組織内の代謝速度を求める。
【0086】
本発明の別の実施態様においては、目的組織内に脂肪酸組成物を保持するための方法を提供し、該方法は次のような工程を含む:
a)検出可能量の組成物を目的組織内に局在させ;
b)該組成物の輸送および逆拡散を低下させることによって組織内に該組成物またはそれらの代謝誘導体を保持させ;さらに、
c)組織内の該組成物またはそれらの代謝誘導体を検出する。
【0087】
本発明のまた別の実施態様においては、目的組織内に脂肪酸組成物を保持するための方法を提供し、該方法は次のような工程を含む:
a)検出可能量の組成物を目的組織内に局在させ;
b)該組成物の脱水素化を低下させることによって組織内に該組成物またはそれらの代謝誘導体を保持させ;さらに、
c)組織内の該組成物またはそれらの代謝誘導体を検出する。
【0088】
さらに本発明は、目的組織内に脂肪酸組成物を保持するための方法を提供し、該方法は次のような工程を含む:
a)検出可能量の組成物を目的組織内に局在させ;
b)該組成物のヒドロキシル化を低下させることによって組織内に該組成物またはそれらの代謝誘導体を保持させ;さらに、
c)組織内の該組成物またはそれらの代謝誘導体を検出する。
【0089】
本発明のさらに別の実施態様においては、目的組織内に脂肪酸組成物を保持するための方法を提供し、該方法は次のような工程を含む:
a)検出可能量の組成物を目的組織内に局在させ;
b)該組成物のケトアシル形成を低下させることによって組織内に該組成物またはそれらの代謝誘導体を保持させ;さらに、
c)組織内の該組成物またはそれらの代謝誘導体を検出する。
【0090】
本発明のまたさらに別の実施態様においては、目的組織内に脂肪酸組成物を保持するための方法を提供し、該方法は次のような工程を含む:
a)検出可能量の組成物を目的組織内に局在させ;
b)該組成物のケトアセチル脱離を低下させることによって組織内に該組成物またはそれらの代謝誘導体を保持させ;さらに、
c)組織内の該組成物またはそれらの代謝誘導体を検出する。
【0091】
画像化、血流およびFA代謝の測定に関して、本発明を利用する多様な方法は、単独で、または他の画像化様式と組み合わせて使用できる。例えば、一般的には、心臓画像様式においては、血流(灌流)および心筋生存力(代謝)の2つのパラメーターを測定する。これらの測定は、多くの心臓疾患に対して有効である。血流測定の動物モデルにはマイクロスフェアーを使用することが多いが(ミラー(Miller),D.D.ら、(1988) Circ.Res. 63:681-692)、マイクロスフェアーは循環を阻止することから、ヒトでの使用は除外される。心筋の灌流および代謝の観察に従来から使用されている方法では、2つの別異の追跡子をそれぞれ別異に使用して血流または代謝を測定する。血流測定用に汎用されているマーカーとしては、例えば、201タリウム(201Tl)、99mテクネチウム(99mTc)、13N−アンモニアおよび82ルビジウムなどが挙げられる。しかしながら、用途が灌流測定に限定される201Tl、99mTc、13N−アンモニアおよび82ルビジウムとは異なり、ある種のFA追跡子は、血流および代謝の両方を測定することができる(ポー(Poe),N.D.ら、(1977) Radiology 124:419-424;ヴァン・デル・ウォール(van der Wall), E.E.ら、(1980) Eur.J.Nucl.Med 5:401-405;カイレント(Kairento), A.L. ら、(1988) Nucl.Med.Biol. 15:333-338;カワモト(Kawamoto), M.ら、(1994) J.Nucl.Cardiol. 1:522-528;コバヤシ(Kobayashi), H.ら、(1997) J.Nucl.Med. 39:1117-1122;ミラー(Miller),D.D.ら、(1988) Circ.Res. 63:681-692)。
【0092】
同様に、本発明を多様な方法に利用して、診断に伴う特定の疑問点に答えることができる。例えば、方法には、安静状態下、および/または、運動、疾病状態もしくは薬物によって誘起されたストレス状態下において本発明の投与を行うことを含む。同様に、使用する放射性同位元素によっては、環式有機置換基を有する放射性標識FA類 を連続画像化に使用することもできる。動物体内の臓器への血流は、環式置換基を有する放射性標識FAを動物に投与後、1秒〜約10分以内に測定することができ、好ましくは、約1分〜約5分以内に測定する。目的臓器による代謝は、動物の血流中に放射性標識FAを投与後、約10分〜約24時間内、好ましくは約30分〜約120分以内に測定することができる。
【0093】
核を用い、本発明に従う心臓画像化を利用することにより、多様な心臓障害を検出することができる。当業者であれば、環式置換基を有する放射性標識FAは、血流および心臓代謝用のマーカーとして単独使用できること、あるいは、別の追跡子と組み合わせて使用できることは自明である。そのような追跡子としては、13N−アンモニア、57Co−シアノコバラミン、59Fe−クエン酸第一鉄、18F−フルオロデオキシグルコース、67Ga−クエン酸ガリウム、111In−オキシキノリンインジウム、111In−インジウムペンテテート、111In−ペンテトレオチド、111In−インジウムサチュモマブペンデチド(Indium Satumomab Pendetide)、放射性ヨウ素化ヨーベンガン(Radioiodinated Iobenguane)、123I−ヨウ化馬尿酸ナトリウム、131I−ヨウ化馬尿酸ナトリウム、123I−ヨーフェタミン、125I−ヨータラム酸ナトリウム、81クリプトン、11C−メチオニン、放射性ヨウ素化アルブミン、82ルビジウム、51クロム酸ナトリウム、18フッ化ナトリウム、123ヨウ化ナトリウム、131ヨウ化ナトリウム、99m過テクネチウム酸ナトリウム、99mTc−アルブミン、99mTc−アルブミン(凝集型)、99mTc−アルブミン(コロイド状)、99mTc−アーシツモマブ(Arcitumomab)、99mTc−ビシセート(Bicisate)、99mTc−ジソフェニン(Disofenin)、99mTc−エグザメタジム(Exametazime)、99mTc−グルセプテート、99mTc−リドフェニン(Lidofenin)、99mTc−メブロフェニン(Mebrofenin)、99mTc−メドロナート(Medronate)、99mTc−マーチアチド(Martiatide)、99mTc−ノフェツモマブマーペンタン(Nofetumomab Merpentan)、99mTc−オキシドロナート(Oxidronate)、99mTc−ペンテテート(Pentetate)、99mTc−ピロホスフェート、99mTc−(ピロおよびトリメタ)ホスフェート類、99mTc−セスタミビ(Sestamibi)、99mTc−スクシマー(Succimer)、99mTc−硫黄(コロイド状)、99mTc−テボロキシム(Teboroxime)、99mTc−テトロフォスミン(Tetrofosmin)、塩化201タリウム、127キセノン、133キセノンなどが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。上述した全ての追跡子が心臓画像化に適しているわけではなく、また、本発明の用途は、心血管性疾患に関連する疾患に限定する必要性がないことは自明である。
【0094】
目的組織は、FA類をエネルギー源として利用する任意の組織である。そのような組織としては、心臓組織、脳、肝臓、骨、脾臓、肺、血液、腎臓、胃腸管、筋肉、ならびに副腎組織などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。本発明の好ましい実施態様は、心臓組織である。別の好ましい実施態様においては、肝臓組織も含まれる。
【0095】
環式有機置換機を有する放射性標識FA類を使用することによってモニターできる心疾患または疾病状態としては、急性心筋梗塞、不安定性狭心症、慢性虚血性心疾患、冠状動脈疾患、心筋炎、拡張型、肥大型および拘束型心筋症、先天性心疾患、高血圧性心疾患、移植後心疾患、同種移植片血管障害、心臓弁膜症、ならびにドキソルビシンの心毒性などのような薬物誘導性症状などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。本明細書に示されているような放射性標識FAを使用した方法は、検査する特定の疾患に応じて変形可能であることは自明である。
【0096】
本発明は、本明細書に記載しているように、心疾患以外の多数の疾病に使用することもでき、例えば、膿瘍および感染;胆管閉塞;血液量の研究;血管疾患;脳血管疾患;骨疾患;骨髄疾患;脳の疾患および腫瘍;癌および新生物;直腸結腸疾患;糖尿病;鉄の代謝および吸収不全;心疾患;梗塞および虚血などのような心筋損傷;脳内の脳脊髄液流障害;腎疾患;肝疾患;肺疾患;副甲状腺疾患および/もしくは副甲状腺癌;悪性貧血および/もしくは腸からのビタミンB12の吸収不全;赤血球細胞疾患;唾液腺疾患;脾臓疾患;胃の不調および腸出血;涙管閉塞;甲状腺疾患および/もしくは甲状腺癌;膀胱疾患などが挙げられる。本発明の好ましい実施態様においては、血流およびFA代謝を測定することによる、心筋疾患の検出に利用する。上掲の疾患の診断には、上述したようなその他の追跡子の使用を必要とする場合があることは当然である。本発明の利用は、疾病状態の検出のみならず、健康な被験者の診断用画像にも利用できることは明らかである。
【0097】
当業者であれば、本発明において例示した心臓画像化剤を検出するための多数の方法については既知であり、かつ、別異の放射性核には別異の検出技術を要することは自明である。陽電子放射断層撮影法(PET)および単一光子放出型コンピューター断層診断法(SPECT)は、画像技術の例であり、これらの方法においては、例えば、本発明において示している放射性標識FAなどのように、生体内で有効と考えられる分子に合成的に放射性核を導入する。続いて、一定時間にわたって放射性追跡子の取込みを測定し、目的の生理的過程に関する情報を得る。PETおよびSPECTは類似した原理に基づいて画像を作成するが、装置、放射化学および実験用途に関する重要な差異は、光子放出の物理的過程における本質的な差異によって規定される。
【0098】
過量の陽子を有する不安定な核は、2つの方法のうちのいずれかを採って核の正電荷を減少させる。ひとつは放射活性崩壊様式であり、陽子を中性子に転換し、陽電子と呼ばれる粒子を放出する(ホフマン(Hoffman),E.J.およびフェルプス(Phelps),M.E.、ラーヴェンプレス(Raven Press)(ニューヨーク)、1986: 237-286;ソレンソン(Sorenson),J.A.およびフェルプス(Phelps),M.E.、W.B.サウンダース(Saunders)(フィラデルフィア)、1987: 37-50)。質量は同一だが、電荷が反対である陽電子は、電子に対応する反物質である。陽電子が核から放出されて電子と衝突すると、両方の粒子が消滅し、エネルギーを放出する。2つのγ光子が生成するが、両者のエネルギーは等しく、軌道は反対方向(一般的には180℃離れている)である。
【0099】
互いに逆方向に進む光子の軌道によって得られる特異な空間的サインは、消滅事象が生じる位置に配備したPETスキャナーにおいて利用され、そのような方法は、同時検出として知られている(ホフマン(Hoffman),E.J.およびフェルプス(Phelps),M.E.、ラーヴェンプレス(Raven Press)(ニューヨーク)、1986: 237-286;リンクス(Links),J.M.、ラーヴェンプレス(Raven Press)(ニューヨーク)、1990: 37-50)。PET(およびSPECT)スキャナーは、高密度結晶性材料(例えば、酸化ゲルマニウムビスマス、ヨウ化ナトリウムまたはフッ化セシウムなど)でつくられたシンチレーション検出器を有しており、 該検出器は、高エネルギー光子を捕獲し、それらを可視光に変換する。隣接して配備している光電子増倍管(PMT)により、この瞬時の閃光を電気波に転換する。放射線検出器は、結晶およびPMTから構成されている。PETカメラは、対向する検出器が電子的に連結されるように構成されている。従って、対になっている検出器において別異のシンチレーション事象が同時に発生した場合、消滅事象は、2つの検出器の間の仮想ラインのどこかで生じていると考えられる。この情報を利用し、コンピューター断層診断法の原理に基づき、画像を再構築する。逆に、単一事象は無視する。空間的に離れた消滅事象に由来する2個の無関係な光子が反対側の検出器に同時に到達することが考えられるが、このような偶然の一致は頻度が非常に低い。にもかかわらず、PET画像においては、バックグラウンドノイズの原因は偶然の一致によるものである(ホフマン(Hoffman),E.J.ら、J.Comput.Assist.Tomogr. (1981) 5:391-400;ホフマン(Hoffman),E.J.およびフェルプス(Phelps),M.E.、ラーヴェンプレス(Raven Press)(ニューヨーク)、1986: 237-286;リンクス(Links),J.M.、ラーヴェンプレス(Raven Press)(ニューヨーク)、1990: 37-50)。
【0100】
当業者であれば、陽電子崩壊の性質および同時検出の原理から導かれるPETの本質的な限界を認識できるであろう。特に、PETは陽電子消滅事象を認識するが、このとき、放射活性崩壊事象が同時に発生する必要はない。消滅は、陽電子発生源からある程度離れた場所で生じることが多い。破壊と消滅というこれらの2つの事象間の距離は、核から放出された時の陽電子の平均運動エネルギーによって定まり、使用した特定の放射性同位元素によっても異なる(フェルプス(Phelps),M.E.ら、J.Nucl.Med. (1975)16:649-652)。さらに、消滅時に陽電子が完全に静止していない場合には、光子は180°よりわずかにずれた角度で放出される。これらを勘案すると、離れた場所での陽電子消滅、および光子の非共線性により、PETが達成できる空間的解像度の理論的限界が明らかになる(リンクス(Links),J.M.、ラーヴェンプレス(Raven Press)(ニューヨーク)、1990: 37-50)。
【0101】
本発明の別の実施態様においては、SPECTにより、電子捕獲および/もしくはγ線放出によって崩壊する放射性同位元素を直接検出することができる。123Iおよび99mTcなどのような陽子に富んだ放射性核種は、軌道を回っている電子を捕獲する代わりに、陽子を中性子に再度変換する(ソレンソン(Sorenson),J.A.およびフェルプス(Phelps),M.E.、W.B.サウンダース(Saunders)(フィラデルフィア)、(1987))。得られた娘核種は、わずかに励起されていることが多い。続いて、この準安定配置は散逸し、それによって基底状態に達し、その過程で1個のγ光子を産生する。γ光子は崩壊部位から直接放出されるので、SPECTの空間解析においては、理論的限界はない。しかしながら、SPECTは、同時検出を行う代わりに、コリメーションとして知られる技術を利用する(ジャスザック(Jaszczak),R.J.、CRCプレス(CRC Press)(ボカ・ラートン);(1991): 93-118)。コリメータとは、多数の微小な穴を開けた鉛のブロックであり、対象と放射線検出器との間を遮蔽するものである。コリメータの穴の方向に関する知識があれば、検出された光子の本来の軌跡は直線的に外挿され、コンピューター断層診断法によって画像が再構築される。
【0102】
本発明の利用に際しては、PETもしくはSPECTまたはその他の画像様式によって得られたデータを処理し、分析することが必要であることは明らかである。以下のような数学的アルゴリズムにより、環式有機置換機を有する放射性標識FAの新規アナログの取込み速度を求めることができる。その他の数学的モデルを同様に使用および/または変形することにより、血流速度および代謝活性を求めることができる(ソコロフ(Sokoloff),L.ら、(1977)J.Neurochem. 28:879-916;エルマレー(Elmaleh),D.R.ら、(1994)J.Nucl.Med. 35:496-503;マーシャル(Marshall),R.C.ら、(1998)Am.J.Physiol.275:H668-679;ウィーラー(Wieler),H.ら、(1990)Nuc.Med.Commun.11:865-878)。目的組織において収集した初期および後期の画像を増幅し、異常を示唆する値を得ることができる。
【0103】
数学的モデルを使用し、本発明に従うFAアナログ類の取込み速度を評価することができる。天然のFAの真の抽出フラクションとFAアナログのそれとの間には再現性のある相関関係がある。天然のFAの取込みおよび代謝は定常状態であると仮定すると、代謝速度(モデルへあてはめるため、Rで表している)は、フィックの式から推定することができる:
R=En×F×Ca(mol/分/g)
ここで、En=真の抽出フラクション
F=血流(ml/分/g)であり、初期画像から求めることができる。
【0104】
Ca=動脈中のFA濃度(mol/ml)である。
【0105】
定常状態であると仮定すると、酸化によってFAが組織から出ていく速度は、血液から組織に入る速度と等しくなければならない。定常状態において、心臓によって代謝される物質の真の抽出量は、動脈もしくは動脈血化された血液、ならびに静脈血中のFA類の濃度から求めることができる。
【0106】
FAアナログの真の抽出量とFAのそれとの間の関連性、すなわちEn(FAアナログ)を用いることにより、FAの代謝速度(R)を計算することができる。この関係を次の式で表すことができる
L=En/En(FAアナログ)
ここで、Lはデオキシグルコースの代謝に関するソコロフのモデルにおける「集中定数」と同様の役割を果たす(ソコロフ(Sokoloff),L.ら、(1977)J.Neurochem. 28:879-916)。2つのモデルの差異は、Lが一定でないことである。「L」は血流、遊離脂肪酸の濃度、FFA組成、またはその他の生理学的パラメーターによって変化する可能性がある。Lの挙動は、別異の生理学的状態において、EnとEn[FAアナログ]との間の関係を判断することを目的とする一連の実験を行うことにより、十分に理解することができる。
【0107】
基本モデルでは次のように仮定している:1)脂肪酸の取込みおよび代謝は定常状態である。換言すれば、全てのFAプールおよび反応生成物の濃度は一定である。これは、FAが血液から除去される真の速度がFAの異化作用速度と等しいと仮定したものである。2)一般的に、標識したFAアナログは、痕跡量存在していることから、その存在によってFAの定常状態は影響を受けない。そうすることにより、FAアナログの多様な輸送速度および化学反応速度は、FAアナログの濃度に直線的に依存するものと考えることができる。このモデル方法は、毛細血管−組織間の交換、ならびに投与されたFAアナログの細胞内代謝を説明するものである。天然脂肪酸の細胞内代謝は、濃度勾配を成しており、細胞内空間へのFAアナログの出入りを制御していると考えられる。代謝的に誘導されたこれらの濃度勾配も血流および毛細血管の輸送特性に影響を及ぼす。本方法においては、血流および輸送メカニズムは毛細血管−組織間の交換に包含されあり、代謝過程は細胞内代謝パラメーターに包含される。
【0108】
一般的に、毛細血管と組織との間における任意の物質の輸送には、2つの因子が関与している:(i)自由に拡散する物質に関する固有の毛細血管輸送速度(または、透過性表面域生成物;輸送を媒介するキャリヤーに関しては、輸送過程を表すミカエリス−メンテン式の「見かけの」パラメーターの関数である)。「微視的」モデル法においては、タンパク質−基質コンプレックスはそれぞれのバリアーを特徴付けているが、本発明においては、それらは一緒になってひとつの「見かけの」速度パラメーター(k)となる。(ii)組織1mlあたりの局所血流。血流および輸送速度は、競合する2つの過程を表すものと考えられ、ひとつは毛細血管壁を通過させて分子を輸送する過程であり、他方は、末梢血管末端から血管の外へ分子を運び出す過程である。これらの2つの速度を合わせることによって抽出フラクションEが与えられ、これは、毛細血管床に入った分子のフラクションであり、少なくとも1回は毛細血管壁を通過している。本明細書において使用しているEは、一方通行(単一方向)抽出フラクションであり、真の抽出フラクションではない。
【0109】
FAアナログはβ−酸化を受けないと考えられ、故に、ミトコンドリア内に捕獲されるか、またはトリグリセリドプール内に取り込まれる。トリグリセリドの回転は非常に遅い。FAアナログに関しては、IV注射後のミトコンドリア組織内におけるFAアナログの濃度は、10〜15分後にプラトーに達する。この最も単純なモデルは、測定した組織曲線と一致し、生化学的データは、前駆体FFAプールおよび代謝的に捕獲されたプールという2つのコンパートメントによって組織を表したときの値であり、両コンパートメントは、血液プラズマ中のFAアナログの濃度に反応して変動する。
【0110】
FAアナログはβ−酸化を受けず、かつ、トリグリセリドプールの回転速度が遅いことから、組織曲線のプラトーは、両方の構成要素を反映している。FAアナログを用いて測定することにより、FAアナログが定められた段階を経てアシル−CoAに至る速度のみを測定することができる。従って、トリグリセリド+β−酸化への取込みに関する定常状態速度を測定することができる。この状況は、天然の脂肪酸(例えば、パルミチン酸など)を用いてフィック型の心房性/心室性測定を行った場合に得られる結果と類似している。
【0111】
これまでに概説した考えに基づき、血流に関してPET測定を表記することができる演算式を表した。Fは非間接的抽出フラクション、Eは真の抽出フラクション、En、およびKは「前駆体プール」からFAアナログが放出される速度である。速度定数Kは、2つの速度、すなわち、逆拡散速度K2およびFAアナログがCoA型に活性化される速度K3の和である。血中の追跡子を無視すると、演算式は以下のように表される:
C(t)=F*[(E=En)*exp(−K*t)+En)](*)Ca(t)
ここで、C(t)は、時間tにおける組織濃度であり、
Ca(t)は、時間tにおける血漿濃度であり、さらに、
(*)は、数学的たたみこみ操作を表す。
【0112】
本発明のモデルについては、En=E*K3/K2+K3である。この演算式は、簡便に説明される。すなわち、Eは、ひとつの毛細血管を通した輸送によってFAアナログが血液から脱落する確率であり、K3/K2+K3は、組織に入ったFAアナログ分子が代謝的に捕獲される確率である。Eの値が(0.1)の範囲にあるとき以外は、演算式の誘導に際してEの値を制限するような仮定は行わない。この演算式は、ソコロフのそれと形式上類似している。
【0113】
定常状態は、FAアナログの消費に関して確立されるという仮定の下では、血漿FA含量はFAアナログの濃度であり、アナログの代謝速度はF*En[FAアナログ]で表される。故に、F*Enは、定常状態におけるFAアナログのユニット量に対するアナログの利用速度と解釈することができる。
【0114】
本方法の演算式を分析することにより、t(またはプラトー濃度)は、血漿濃度曲線のF*En*∫によって与えられることが示された。従って、プラトー時の組織濃度は、アナログの代謝に直接比例している。
【0115】
本発明およびその多数の長所は、以下の実施例を介してよりよく理解されるはずであり、これらの実施例は、本発明をさらに説明し、具体例として挙げたものである。以下の実施例は、如何なる意味においても本発明の範囲を限定するためのものではない。本発明の開示については、請求の範囲の範ちゅうに多数の実施態様が含まれることは、当業者であれば自明である。
【実施例】
【0116】
実施例1:18F−標識3,4−シクロプロピルヘプタデカン酸([18F]−FCPHA)の合成
[18F]−FCPHAの合成は、以下の方法に従って行った。室温(25℃、RT)下、200mlの塩化メチレンに6−ベンジルオキシ−1−ヘキサノール(20g、96mmol)を溶解した溶液に、PCC(クロロクロム酸ピリジニウム;24.8g、115.2mmol)をゆっくりと少量ずつ加えた。黒色混合物を2時間撹拌し、50gのシリカゲルに通した。溶媒を除去し、粗油状物質は、ヘキサン:酢酸エチル=90:10を溶媒として使用したシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離した。この操作により、アルデヒド等価体6−ベンジルオキシ−1−ヘキサナール14g(収率70%)が得られた。
【0117】
窒素雰囲気下、穏やかな還流を維持できる速度で、マグネシウム片(2.8g、116mmol)を入れた10mlのエーテル中に、オクチルブロミド(12g、115mmol)の無水エーテル(60ml)溶液を添加した。添加後、反応混合物を1時間撹拌し、次に、室温下、6−ベンジルオキシヘキサナール(12g、58mmol)のエーテル(20ml)溶液を反応混合物に滴下した。混合物を4時間撹拌し、氷水に注いだ。10%の塩酸(HCl)を用いて溶液を酸性にし、エーテルで抽出した。合わせた抽出液をブラインで洗浄し、乾燥後、溶媒を除去した。粗油状物質は、ヘキサン:酢酸エチル=80:20を溶媒として使用したシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけ、アルコール化合物16.5g(収率89%)を得た。1H−NMRによって検出した化合物の化学シフトは次の通りである:1H−NMR(CDCl3)δ0.89(t,3H,CH3)、1.2-1.7(m,22H,CH2)、3.45(m,2H,CH2O)、3.55(m,1H,CH-O)、4.55(s,2H,CH2-O)、7.35(m,5H,ベンジル)。
【0118】
得られた化合物1−ベンジルオキシ−6−テトラデカノール(16g)は、100mlのメタノール中、活性炭素(デガッサ(Degussa)AG;ドイツ、フランクフルト)上で100mgの10%パラジウムを使用し、一晩かけて水素を付加することにより、1,6−テトラデカンジオール(11.1g、4.85mmol)を得た。このジオール化合物をメチレン:ピリジン=9:1溶液(100ml)に加え、トリチルクロリド(13.5g、4.85mmol)で処理した。混合物を4時間撹拌し、次に、10%の氷冷塩酸を用いて水層が酸性になるまで洗浄した。この操作の後、ブラインを用いて水層が中性になるまで洗浄した。溶媒を除去し、ヘキサン:酢酸エチル(80:20)を溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことにより、20.1g(収率87%)のトリチルアルコール化合物を得た。1H−NMRによって検出した化合物の化学シフトは次の通りである:1H−NMR(CDCl3)δ0.89(t,3H,CH3)、1.2-1.7(m,22H,CH2)、3.05(m,2H,CH2O)、3.55(m,1H,CH-O)、3.55(s,1H,CH-O)、7.2-7.5(m,15H,ベンジル)。
【0119】
得られた化合物1−トリチル−6−テトラデカノール(20g、42.3mmol)は、室温に設定した水浴中、60%の水素化ナトリウム(2g、50mmol)および臭化ベンジル(7.2g、42.3mmol)を加えた乾燥ジメチルホルムアミド(DMF;100ml)溶液とゆっくり混合した。混合物を室温で4時間撹拌した後、氷水に注ぎ、エーテルで抽出した。油状物質は、ヘキサン:酢酸エチル(90:10)を溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことにより、19g(34mmol:収率80%)のジエーテル化合物6−ベンジルオキシ−1−トリチル−テトラデカンジエーテルが得られた。室温下、メタノール(100ml)中でこのジエーテル化合物を100mgのp−トルエンスルホン酸と4時間混合した。重炭酸ナトリウム(100mg)を加え、回転式減圧蒸留装置を用いて溶媒を除去した。油状物質は、ヘキサン:酢酸エチル(80:20)を溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことによって分離し、7.5g(収率90%)のアルコール化合物を得た。得られた化合物6−ベンジルオキシ−1−テトラデカノールの化学シフトは次の通りである:1H−NMR(CDCl3)δ0.89(t,3H,CH3)、1.2-1.7(m,22H,CH2)、3.38(m,2H,CH2O)、3.55(m,1H,CH-O)、4.7(s,2H,CH2-O)、7.35(m,5H,ベンジル)。
【0120】
室温下、6−ベンジルオキシ−1−テトラデカノール(7.5g、30mmol)の塩化メチレン(100ml)溶液にPCC(9.7g、45mmol)を少量ずつ加えた。黒色混合物を2時間撹拌し、ヘキサン:酢酸エチル(90:10)を溶媒としてシリカゲル層に通した。対応するアルデヒド化合物6−ベンジルオキシ−テトラデカナールが6.1g(収率81%)の収量で生成した。室温下、100mlの塩化メチレン中で、このアルデヒド化合物をカルベトキシメチレントリフェニルホスホラン(10g、29mmol)と混合した。混合物を一晩撹拌し、その後溶媒を除去してヘキサンに置き換えた。ろ過により、固体沈殿物を除去した。次に、ヘキサン:酢酸エチル(90:10)を溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことにより、対応するエステル化合物を8.4g(収率90%)得た。エステル化合物8−ベンジルオキシヘキサデク−2−エノラートエチルエステルの化学シフトは次の通りである:1H−NMR(CDCl3)δ0.89(m,6H,CH3)、1.2-1.5(m,20H,CH2)、2.2(m,2H,CH2-C=)、3.35(m,2H,CH2O)、4.2(q,2H,MeCH2-O)、4.55(dd,2H,CH2-O)、5.8(d,1H,CH=C)、6.95(d,t,1H,CH=C)、7.35(m,5H,ベンジル)。
【0121】
−78℃において、8−ベンジルオキシヘキサデク−2−エノラートエチルエステル(8.4g、22mmol)の塩化メチレン(40ml)溶液にDIBAL(ジイソブチルアルミニウムヒドリド;8ml,44mmol)のヘキサン(40ml)溶液を滴下した。混合物を放置して温度を0℃にし、5mlの酢酸エチルを滴下した後、氷を加えた。得られたスラリーは、10%HClを用いて酸性にした後、エーテル抽出を行った。合わせたエーテル抽出物をブラインで洗浄し、乾燥後、溶媒を除去した。ヘキサン:酢酸エチル(80:20)を溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行い、粗油状物質を分離し、不飽和一級アルコール化合物6.7g(収率90%)を得た。
【0122】
シクロプロピル部位の付加は、基本的に、チャレット(Charette)および共同研究者らによって記載されている方法(チャレット(Charette)ら、J.Org.Chem. 1995(60) :1081)に従って行った。40mlの乾燥塩化メチレンを入れた100mlの丸底フラスコを−25℃に冷却し、窒素雰囲気下においた。このフラスコに、3.8mlのジエチル亜鉛、続いて3.9mlの1,2−ジメトキシエタン(DME)を入れた。この溶液にジヨードメタン(6ml)を滴下したが、このとき、反応温度を−25℃〜−10℃に保った。次に、この溶液は、両端針を用い、−40℃〜−30℃において窒素雰囲気下、8−ベンジルオキシヘキサデク−2−エノール(2g、5.8mmol)、ジオキサボロラン((+)−N,N,N’,N’−テトラメチル−L−酒石酸アミドとブチルボロン酸とから合成)および300mgの4Åモレキュラーシーブを含む塩化メチレン(40ml)溶液に加えた。反応混合物は−25℃で2時間撹拌し、その後、放置して0℃にした。該混合物に80mlの飽和塩化アンモニウム溶液を加え、室温で16時間撹拌した。固体をろ去し、層分離を行った。水層は塩化メチレンで抽出し、有機層を集め、水で洗浄し、乾燥させた。粗油状物質は、ヘキサン:酢酸エチル(90:10)を溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけて分離し、シクロプロピルアルコール化合物1.9g(収率90%)を得た。この操作を2回繰り返した。得られた8−ベンジルオキシ−2,3−シクロプロピルヘキサデカノールの化学シフトは次の通りである:1H−NMR(CDCl3)δ0.3(m,2H,環上のCH2)、0.5(m,1H,CH)、0.75(m,1H,CH)、0.89(t,3H,CH3)、1.2-1.6(m,22H,CH2)、3.35(m,1H,CHO)、3.45(m,2H,CH2-O)、4.55(s,2H,CH2-O)、7.35(m,5H,ベンジル)。本反応におけるジオキサボロランの付加においては、S,S異性体が主に生成する。ジオキサボロランを使用せずに反応を行った場合には、ラセミ(R,R;S,S)混合物が得られる。
【0123】
8−ベンジルオキシ−2,3−シクロプロピルヘキサデカノール(5.7g、15.8mmol)およびトリフェニルホスフィン(6.2g、23.7mmol)を含むジメチルホルムアミド(100ml)の溶液にヨウ素(6g、24mmol)を少量ずつ加えた。暗赤色混合物に100mlの10%チオ硫酸ナトリウムを加えてエーテルで抽出した。合わせた抽出物を水、ブラインで洗浄し、続いて溶媒を除去した。ヘキサン:酢酸エチル(95:5)を溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことにより、アルキルヨウ化物4.5g(収率60%)を得た。このアルキルヨウ化物8−ベンジルオキシ−1−ヨード−2,3−シクロプロピルヘキサデカン(4.5g、9.6mmol)およびシアン化ナトリウム(0.95g、19.2mmol)を含むジメチルホルムアミド(DMSO)(60ml)の溶液を80℃で2時間加熱した。混合物を100mlの水に注ぎ、エーテルで抽出した。合わせた抽出液を水で洗浄し、乾燥後溶媒を除去した。粗油状物質は、ヘキサン:酢酸エチル(80:20)を溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけて分離し、対応するニトリル化合物3.0g(収率87%)を得た。1H−NMRによる化学分析は次の通りである:1H−NMR(CDCl3)δ0.3(m,2H,環上のCH2)、2.4(m,2H,CH2-CN)、3.35(m,1H,CHO)、4.55(s,2H,CH2-O)、7.35(m,5H,ベンジル)。
【0124】
上述のニトロ化合物9−ベンジルオキシ−2,3−シクロプロピルヘキサデカンニトリル(3.0g、8.1mmol)、600mgの水酸化カリウム(KOH)および3滴の水を含むエチレングリコール(40ml)の溶液を170℃で6時間加熱した。一旦冷却し、80mlの10%HClを加えて混合物を希釈した後、エーテルで抽出した。合わせた抽出物を乾燥し、溶媒を除去した。粗カルボン酸をジアゾメタン(エーテル中でN−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジンと40%のKOHとから生成)で処理した。反応混合物を1時間撹拌した後、溶媒を除去した。粗油状物質は、ヘキサン:酢酸エチル(80:20)を溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけ、対応するエステル化合物9−ベンジルオキシ−3,4−シクロプロピルヘプタデカノエートメチルエステル1.9g(4.7mmol、収率60%)を得た。このエステルは、50mlのメタノール中、活性炭上で25mgの10%パラジウムを用いて一晩かけて水素付加を行った。水素付加により、ヒドロキシエステル化合物1.3g(収率81%)が得られた。得られた化学分析結果は次の通りである:1H−NMR(CDCl3)δ0.30(d,d,2H,環上のCH2)、0.53(m,1H,CH)、0.75(m,1H,CH)、0.89(t,3H,CH3)、1.2-1.6(m,22H,CH2)、2.23(m,2H,CH2-CO)、3.58(m,1H,CHO)、3.69(s,3H,CH3)。
【0125】
塩化メチレン:ピリジン(90:10)溶液(20ml)に、ヒドロキシエステル化合物9−ヒドロキシ−3,4−シクロプロピルヘプタデカノエートメチルエステル(0.5g、1.6mmol)、メタンスルホニルクロリド(0.2g、1.76mmol)および10mgのDMAP(4−ジメチルアミノピリジン)を加えて2時間撹拌した。混合物は、10%のHClを用いて水層が酸性になるまで洗浄し、さらに10%のNaHCO3で洗浄した。粗油状物質は、塩化メチレン:メタノール(95:5)を溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離し、メシラートエステル化合物9−ヒドロキシ−3,4−シクロプロピルヘプタデカノエートメチルエステル0.5g(収率83%)を得た。
【0126】
10mgのKryptofix-222(4,7,13,16,21,24−ヘキサオクサ−1,10−ジアザビシクロ[8,8,8]ヘキサコサン;メルク(Merck)社(ニュージャージー州ホワイトハウスステーション))および4mgのK2CO3を入れたバイアルに、放射性標識18F水溶液(60mCi、1ml)を加えた。115℃で窒素ガスを流して水を除去し、アセトニトリル(2ml)を3回添加した。メシラートエステル化合物9−ヒドロキシ−3,4−シクロプロピルヘプタデカノエートメチルエステル(10mg)のアセトニトリル(1ml)溶液は、放射性標識混合物と混合し、120℃で10分間加熱した。ヘキサン:酢酸エチル(85:15)を溶媒とするシリカSep-Pak(ウォーターズ(Waters Corporation)社(マサチューセッツ州ミルフォード))精製により、18F−標識エステルが80%の収率で得られた。標識エステルをバイアルに入れ、溶媒を除去した。1Mの水酸化リチウム(LiOH)0.1mlおよびメタノール0.3mlを加えた。反応バイアルを60℃で20分間加熱した。60℃で窒素ガスを流してメタノールを除去した。10mlの10%HClを加えて溶液を酸性にし、この混合物をエーテルで2回抽出した。合わせたエーテル抽出物をシリカSep-Pakクロマトグラフィーカートリッジに通し、溶媒を除去することにより、13mCiの最終生成物9−[18F]−フルオロ−3,4−シクロプロピルヘキサデカン酸が得られた。放射薄層クロマトグラフィー(TLC)により、放射化学的純度は94%であることが示され(シリカゲルプレート、酢酸エチル/ヘキサン=25:75、Rf=0.40)、残りの活性は非加水分解エステル(シリカゲルプレート、酢酸エチル/ヘキサン=15:85、Rf=0.80)に由来するものであった。上述した有機合成の経路は図1に示している。標識脂肪酸は、ラットでの実験用には、生理食塩水中に10%のエタノールを加えて調製し、サルでの実験用には、生理食塩水中に4%のBSAを加えて調製した(0.22μmのMilliporeフィルターを用いてろ過することによって滅菌した)。
【0127】
実施例2:18F−標識3,4−シクロプロピルヘプタデカン酸([18F]−FCPHA)の生体分布
心筋における[18F]−FCPHAの初期挙動は、正常FA類のそれと基本的には類似しており、その証拠として、このアナログは正常FA類と同じ代謝プールに集まり、ラットの心臓においては、ミトコンドリアを含む同様な細胞レベル下分布を示した。体重約300〜350gの雄のSprague-Dawleyラットに、麻酔なしで40μCiの[18F]−FCPHA(総容量200μl)を注射した。放射性標識したFAは、ラットの尾静脈から注入し、続いて、注射5分後および60分後に殺した。臓器を切り出し、ガンマカウンターで計測した。多様な臓器におけるFAの蓄積を%DPG(体重1gあたりの投与量)で表示したものを表1にまとめた。
【表1】
【0128】
フッ化FAの骨への蓄積は、化合物の脱フッ素化およびその後の蓄積と釣り合っていた。画像解析を行うことを目的として、注射5分後および60分後における以下の比率を求めた。
【表2】
【0129】
表3は、β−メチルアナログである[18F]−FBMHAをラットに静注してから5分後および60分後の生体分布を示す(各時間につき5匹を使用)。静注5分後の心臓への放射活性の蓄積は、体重1gあたり投与量の2.65%(2.65%DPG)であり、これは、腎臓における放射活性とほぼ等しかった。5分後の血中での活性は1.02%DPGであり、60分後にも比較的多く(0.58%DPG)残留していた。放射活性の大部分は肝臓に蓄積した。5分後における心臓の血液に対する比率は2.6であったが、この値は60後においてもあまり変わらなかった。5分後の骨への蓄積は0.52%DPGであったが、60分後には2.36%DPGに上昇していたことから、多量の脱フッ素化が示唆された。ラットにおける[18F]−FBMHAの生体分布については、4%のTween-80/生理食塩水溶液を用いて繰り返し実験を行い、同様の結果を得た。
【表3】
【0130】
表4は、放射標識した[18F]−FCPHAを投与してから60分後における心臓の血液に対する比を、他のβ−メチルアナログ類である[18F]−FBMHA、[11C]−BMHAおよび[125I]−BMIPPのそれらと比較したものである。
【表4】
【0131】
実施例3:11C−または14C−標識3−メチル−ヘプタデカン酸のR,RおよびS,Sジアステレオ異性体の生体分布とラセミ混合物のそれとの比較
以下のデータは、1−[11C]−3(S)−メチルヘプタデカン酸(S異性体)および1−[11C]−3(R)−メチルヘプタデカン酸(R異性体)の生体分布を比較したものである。また、14Cで標識したラセミ混合物である1−[14C]−3(R,S)−メチルヘプタデカン酸との比較も行った。5分後および30分後に測定した%DPE(体重1gあたりの投与量)から、S異性体は心臓への取込みが多く、心臓の血液に対する比も高いことが示され、心臓の画像化剤としては、R異性体またはラセミ混合物よりもS異性体の方が好ましいことが示唆された。生体分布実験は、各化合物および各時間につき6匹のラットを使用して行った。5分後の分布データは表5に示しており、30分後のデータは表6に示している。予期していなかったこれらの結果から、β−酸化中のエノイル−CoA加水分解酵素は立体選択的であり、S異性体のみを認識することが示唆された。さらに、MFAが心臓組織を標的にするためには、立体異性体純度が重要である。
【表5】
【表6】
【0132】
実施例4:[18F]−標識3,4−シクロプロピルヘプタデカン酸([18F]−FCPHA)を用いたサルの画像化実験
[18F]−FCPHAを注射後のブタおよびサルの心臓画像においては、血流に対して活性の初期スパイク波形が観察され、10分後にはプラトーに達した(図3)。図4は、ブタに[13N]−アンモニア(18mCi)を投与してから2〜8分後の心臓の画像であり、図5は、同じ個体に[18F]−FCPHA(19mCi)を静注してから2〜8分後の心臓の画像である。図6は、ブタにおける投与2〜8分後の[13N]−アンモニア画像(右)と[18F]−FCPHA画像(左)とを比較している。ブタの画像では、[13N]−アンモニアを用いて得られた画像よりも[18F]−FCPHAを用いていられた画像の方が心筋の輪郭がよりはっきりしていた。[18F]−FCPHAの投与60分後の画像は、心筋に活性が強く保持されていることを示していた。
[18F]−FCPHAの分布については、サルでも実験を行った。5mCiの[18F]−FCPHAを静注してから60分後に陽電子放射断層撮影法(PET)によって放射標識FAアナログを可視化したところ、左心室および右心室において該アナログが心筋に捕獲されていることが明瞭に示された(図7)。図8は、[18F]−FCPHA投与60分後におけるサルの心臓の横断面切片を示す。ブタおよびサルの両方において、血中の活性は迅速なクリアランスを示した。
【0133】
実施例5:末端を標識した[18F]−フルオロフェニル−3,4−シクロプロピルヘプタデカン酸の合成
実施例1に記載したプロトコールに基づき、別異の出発材料(10−フェニル−1−デカノールなど)を用いて上記分子の合成を行うことができる。出発材料である10−フェニル−1−デカノールは、トリフェニルホスフィンと反応させ、ベンゼンに溶解した。この混合物に四臭化炭素のベンゼン溶液をゆっくりと加え、反応混合物を90分間還流させた。次に、反応混合物を冷却、ろ過し、残渣を石油エーテルで3回洗浄した。残渣を乾燥するまで減圧蒸留した後、石油エーテルを加えて撹拌し、冷凍庫内に一晩放置した。取り出した溶液をろ過し、得られた残渣を石油エーテルで2回洗浄し、合わせた溶液は、乾燥するまで減圧蒸留した。それにより、出発材料のアルキルブロミド誘導体が得られたと考えられ、このとき、臭素原子は一級アルコール部位に置換している。
【0134】
ブロム化化合物は、次のようにグリニャール合成に用いた。マグネシウムを入れた乾留エーテル中に、エーテルに溶解したブロム化化合物を注入した。アルゴンまたは窒素雰囲気下、還流を90分間継続した。反応混合物を室温まで冷却した後、7CO2トラップに注入し、溶液を5分間振とうした。この溶液を分液ろうとに移し、エーテルで2回洗浄し、1NのHClを加えた。溶液を水で2回洗浄し、Na2SO4を用いて乾燥後、溶媒を減圧蒸留した。得られた化合物は17−フェニル−1−ヘプタデカノールと考えられる。2回目のPCC酸化の後、実施例1の記載に従い、次の段階を行う。この合成により、末端にフェニル基および3,4−炭素位にシクロプロピル基を有するアナログが得られた(図9を参照)。
【0135】
その他の方法、例えば、シーマン反応などにより、末端フェニル部位に18Fまたは123I放射性標識を付することができる。18F標識化においては、硝酸(HNO3)および硫酸(H2SO4)中でベンゼン部位をニトロ化し、続いて、SnおよびHClを用いて還元する。これにより、アミノ基でラベルされたフェニル部位(アニリン)が得られた。NaNO2およびHClと共にインキュベートすることにより、アミノ基がジアゾニウムイオンに転換する。次に、[18F]−HBF4を用いてこのジアゾニウムイオンをフッ素化した。この操作により、フッ素モノ置換フェニル基が得られた。123Iを用いた標識においては、HNO3およびH2SO4中でベンゼン環の置換を行い、アニリン基を得た。NaNO2およびHClで処理後、ヨウ化カリウム(KI)を用いてヨウ素化を行った。ヨウ素化アリール誘導体には、高温、酸性溶媒中で、放射性ヨウ素との交換反応を行うことによって放射性標識を導入した。対応するトリブチルスズ誘導体を調製し、続いて求電子芳香環放射ヨウ素化を行うなどのその他の方法も挙げられる。
【0136】
実施例6:エンド−[18F]フルオロ−および[123I]−ヨード−3,4−シクロプロピルヘプタデカン酸誘導体の合成
FCPHAのエンド−ビニル放射標識誘導体の合成は、基本的には実施例1の記載に従って行うが、変更点がある。25℃、塩化メチレン中において、6−ベンジルオキシ−1−ヘキサノールの溶液をPCCで処理した。黒色混合物を2時間撹拌し、シリカゲルを用いてろ過した。溶媒を除去し、ヘキサン:酢酸エチル(90:10)を溶媒とするシリカゲルによって粗油状物質を分離した。
【0137】
得られたアルデヒド化合物6−ベンジルオキシ−1−ヘキサナールは、25℃、塩化メチレン中で(カルベトキシメチレン)トリフェニルホスホランと混合した。混合物を一晩撹拌した後、溶媒を除去してヘキサンに置き換えた。固形物をろ去した。ヘキサン:酢酸エチル(90:10)を溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行って対応するエチルエステル化合物を得た。
【0138】
−78℃において、エチルエステル化合物の塩化メチレン溶液中にジイソブチルアルミニウムヒドリドのヘキサン溶液を滴下した。混合物をゆっくり0℃に戻し、酢酸エチルを滴下した後、氷を加えた。得られたスラリーは、10%のHClで酸性にし、エーテルで抽出した。合わせたエーテル抽出物をブラインで洗浄、乾燥し、溶媒を除去した。粗油状物質について、ヘキサン:酢酸エチル(80:20)を溶媒とするクロマトグラフィーを行うことにより、不飽和一級アルコールが得られた。
【0139】
実施例1と同様に、チャレット(Charette)および共同研究者らが記載しているように、不飽和一級アルコールをシクロプロパン化した。乾燥塩化メチレンを−25℃に冷却し、窒素雰囲気下においた。ジエチル亜鉛、続いて1,2−ジメトキシエタン(DME)を加えた。この溶液に示ヨードメタンを滴下したが、この間、反応温度を−25℃〜−10℃に維持した。次に、窒素雰囲気下、−40℃〜−30℃において、両端針を用い、この溶液を、不飽和一級アルコール、ジオキサボロラン((+)−N,N,N',N'-テトラメチル−L−酒石酸アミドとブチルボロン酸とから合成)および4Åのモレキュラーシーブを含む塩化メチレン溶液に加えた。反応混合物は−25℃で2時間撹拌した後、0℃に戻した。この混合物に飽和塩化アンモニウムを加え、室温で16時間撹拌した。固形物をろ去し、層分離を行った。塩化メチレンを用いて水層を抽出し、有機層を集めて水で洗浄し、乾燥させた。粗油状物質は、ヘキサン:酢酸エチル(90:10)を溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離し、シクロプロピルアルコール化合物を得た。この反応を2回繰り返した。
【0140】
ジメチルホルムアミド中にシクロプロピルアルコール化合物とトリフェニルホスフィンとを含む溶液にヨウ素を少量ずつ加えた。暗赤色混合物に10%のチオ硫酸ナトリウムを加え、エーテルで抽出した。合わせた抽出物は水、ブラインで洗浄し、続いて溶媒を除去した。ヘキサン:酢酸エチル(95:5)を溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーによってアルキルヨウ化物を得た。このアルキルヨウ化物は、シアン化ナトリウムのジメチルスルホキシド(DMSO)溶液と混合し、80℃で時間加熱した。混合物を水に注いだ後、エーテル抽出を行った。合わせた抽出物を水で洗浄し、乾燥し、溶媒を除去した。粗油状物質は、ヘキサン:酢酸エチル(80:20)を溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離し、対応するニトリル化合物を得た。
【0141】
得られたニトリル化合物は、エチレングリコール中でKOHおよび水と混合し、170℃で6時間加熱した。一旦冷却し、10%のHClで混合物を希釈し、エーテルで抽出した。合わせた抽出物を乾燥し、溶媒を除去した。粗カルボン酸化合物をジアゾメタン(エーテル中、N−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジンと40%のKOHとから生成)で処理した。反応混合物を1時間撹拌してから溶媒を除去した。粗油状物質は、ヘキサン:酢酸エチル(80:20)を溶媒とするクロマトグラフィーにかけることにより、対応するメチルエステル化合物が得られた。
【0142】
水素化アルミニウムリチウムを用いてメチルエステルに水素を付加することにより、再度一級アルコールが得られた。アルコール保護基であるテトラヒドロフラン(THF)を付加することによって一級アルコールを置換した。次に、メタノール中、活性炭(Degussa)上で10%のパラジウムを用いて一級アルコールに水素付加を行い、続いて、N−ブロモスクシンイミドを用いて処理することにより、アルキル臭化物誘導体が得られたが、このとき、ブロム基はTHP保護基とは反対側の末端に付加していた。ヘキサン中、アルキンの存在下において、アルキル臭化物誘導体をn−ブチルリチウムで処理したが、アルキン基はTHP部位とは反対側に付加していた。対応するシクロプロピルアルキンは、水素化トリブチルスズを用いて水素付加を行い、I2を用いてヨウ素化を行うことにより、エンド−ビニル誘導体が得られた。
【0143】
酸性条件下、TosHおよびCrO3を用いてエンド−ビニル誘導体分子を処理することにより、THP保護基を除去し、続いて酸化を行うことによってカルボン酸を得た。次に、水素化トリブチルスズを用いてカルボン酸化合物をヨウ化物で置換した。放射標識したヨウ化ナトリウム(Na123I)を用いてトリブチルスズ部位を123Iで置換することにより、エンド−[123I]−ヨード−3,4−シクロプロピルヘプタデカン酸が得られた。別の方法としては、トリブチルスズ置換カルボン酸を18F2で処理することにより、エンド[18F]−フルオロ−3,4−シクロプロピルヘプタデカン酸を得た。上述した合成経路の概要は図10に示している。
【0144】
実施例7:エクソ−[18F]フルオロ−および[123I]−ヨード−3,4−シクロプロピルヘプタデカン酸誘導体の合成
3,4−シクロプロピルヘプタデカン酸のエクソ−ビニル化合物の部分合成の概要は図12に示している。3,4−シクロプロピルヘプタデカン酸の放射標識エクソ−ビニル誘導体の合成は、9−ヒドロキシ−3,4−シクロプロピルヘプタデカノエートメチルエステルの合成までは、基本的には実施例1の記載に従って行うことができた。25℃において、塩化メチレン中、二クロム酸ピリジニウム(PDC)を用いてこのメチルエステル化合物を酸化し、対応するケトン化合物を得た。このケトン化合物について、使用する放射標識ハロゲンに適した2つの別異の経路で反応を行った。
【0145】
ビニルのヨウ素化:反応経路1
以下の反応は、ホーナー−ウィッティング(Horner-Witting)反応に基づき、ストーク(Stork)およびザオ(Zhao)の記載(Tetrahedron Lett.(1989)30:2173-2174)ならびにマッカーシー(McCarthy)らの記載(J.Am.Chem.Soc.(1991)113:7439-7440)に従って変形することによって行った(図12を参照)。ヘキサメチルジシラザンナトリウムのテトラヒドロフラン(THF)溶液(1M)に、トリフェニルホスフィンとヨウ化イリドからなるヨードメチル−トリフェニルホスホニウムヨウ化物をゆっくり加えた。1分間撹拌した後、溶液を−60℃に冷却し、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)を加えて−78℃に冷却した。上述したケトン化合物を加え、冷却槽から取り出して30分間撹拌した。この混合物にヘキサンを加え、カラムクロマトグラフィーおよびNMR分析を行った。これにより、カルボニル基がヨウ素化ビニル基で置換された。続いて、活性炭上、水素化トリブチルスズおよびパラジウムで処理することにより、ヨウ化ビニルがトリブチルスズで置換され、一級エステル基がカルボン酸に転換した。放射化ヨウ化ナトリウム(Na123I)を用いて処理することにより、エクソ−[123I]−ヨード−3,4−シクロプロピルヘプタデカン酸が得られた。
【0146】
ビニルのヨウ素化:反応経路2
同様に、放射性標識ヨウ素の付加を直接的に行うことにより、中間でのビニルトリブチルスズ前駆体分子の生成を避けることができる(図12)。カルボニル基をヨウ化ビニル基で置換した後、銅およびNa123Iと直接反応させることにより、エクソ−[123I]−ヨード−3,4−シクロプロピルヘプタデカン酸が得られた。
【0147】
ビニルのフッ素化:反応経路1
ビニルのヨウ素化の反応経路1に記載しているビニルトリブチルスズ脂肪酸誘導体を用い、ビニルトリブチルスズ部位を18F2で置換することにより、変形脂肪酸を直接フッ素化した(図12)。この反応により、エクソ−[18F]−フルオロ−3,4−シクロプロピルヘプタデカン酸が得られた。
【0148】
ビニルのフッ素化:反応経路2
3,4−シクロプロピルヘプタデカン酸のビニルフッ素化誘導体の別の合成方法は、上述のケトン化合物から行うことができる(図12)。この方法は、バートン(Burton)およびグリーンリム(Greenlimb)の記載(J.Org.Chem.(1975)40:2796-2801)ならびに、シュロッサー(Schlosser)およびツィマーマン(Zimmermann)の記載(Synthesis (1969)1:75-76)による機構を変形したものである。水冷還流冷却器を取り付けた丸底フラスコ内でヨウ化フルオロメチルトリフェニルホスホニウムを合成した。乾燥ベンゼンを入れたフラスコにトリフェニルホスフィンおよびフルオロヨードメタンを加えた。得られた溶液を穏やかに撹拌しながら64時間還流させた。反応終了後、ガラスろうとを用いて白色不溶性のホスホニウム塩を集め、熱ベンゼンで洗浄し、減圧乾燥機内で12時間乾燥させた。
【0149】
別のフラスコに、窒素ガス注入口を固定した定圧添加ろうと(constant-pressure addition funnel)、および、鉱油バブラーを連結したT字管を上部に取り付けた水冷還流冷却器を取り付けた。装置に窒素ガスを流し、火炎乾燥し、窒素ガスによる脱気を続けながら室温まで放置冷却した。フラスコにヨウ化フルオロメチルトリフェニルホスホニウム、乾燥THFおよびトルエンを入れた。装置内の窒素雰囲気は維持した。ドライアイス−イソプロパノールの泥状槽内で冷却しながらホスホニウム塩と溶媒のスラリーを穏やかに撹拌した。冷却中に添加ろうとにn−ブチルリチウムのヘキサン溶液を入れた。栓をはずしている時には添加ろうとに窒素を常に通し、また、乾燥窒素雰囲気下でピペットを用いて塩基を移すことにより、有機リチウム試薬の加水分解量を抑制した。塩基は23分間かけて滴下した。添加後、反応混合物は−78℃で25分間撹拌した。25分経過後、反応混合物を窒素雰囲気下から解除し、臭化エチレンを加えたところ、発熱した。−78℃でさらに25分間反応を進行させた。
【0150】
次に、メチルエステル化合物9−ヒドロキシ−3,4−シクロプロピルヘプタデカノエートをPDC酸化することによって得られた、対応するケトン化合物を加えた。イリドとケトン化合物との反応は、−78℃で2時間行い、放置して室温に戻し、さらに1.5時間インキュベートした。反応混合物を氷上で冷却した。カリウムtert−ブトキシドを加え、混合物を0℃で2時間撹拌した。反応混合物を遠心分離して上清を傾捨し、少量のTHFで沈殿を洗浄した。傾捨物を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液を用いて水層のpHが中性になるまで洗浄した。溶媒を除去し、乾燥し、ろ過した有機性材料を減圧下で短時間蒸留した後、クロマトグラフィーおよびNMR分析を行った。18F−置換エステル化合物を塩基加水分解することにより、対応するカルボン酸に転換した。この操作により、エクソ−[18F]−フルオロ−3,4−シクロプロピルヘプタデカン酸が得られた。
【0151】
実施例8:4または5員環置換基を有するヘプタデカン酸誘導体の合成
ヘプタデカン酸の誘導体類についても合成を行ったが、このとき、シクロプロピル置換基をシクロブチル部位またはシクロペンチル部位に置換した。実施例1、4、5および6に記載している変形脂肪酸の誘導体を含むこれらの化合物の合成について、以下に説明する。
【0152】
シクロプロピル部位を有するMFA類の合成については、上記の実施例中に記載している。しかしながら、上述したMFA類のうちの大多数に対する出発材料として使用した6−ベンジルオキシ−1−ヘキサノールの代わりに、環式一級アルコール(シクロブタノールまたはシクロペンタノール)をTHP(テトラヒドロフラン)などのような保護基で置換することができる。次に、I2の存在下、モノ保護環式アルコールにトリフェニルホスフィンを反応させることにより、一方の末端がTHFで保護されたアルキルヨウ化物誘導体が得られた。炭素鎖の長さが多様なベンジルオキシアルキンの付加反応は、n−ブチルリチウムを添加することによって行った。活性炭上、10%のパラジウムを用いて行った水素付加反応により、一方の末端がTHPで保護されたシクロブチル−もしくはシクロペンチル−1−ノナノール、またはヘプタノールが得られた。環式モノ保護一級アルコールの炭素鎖の長さは、使用したベンジルオキシアルキンの長さによって決まる。これらの環式モノ保護アルコール類を以下に記載しているような反応に用いる。図14は、これらの環式モノ保護アルコール類の部分合成の図を示している。
【0153】
[18F]−9−フルオロ−3,4−シクロブチル−または[18F]−9−フルオロ−3,4−シクロペンチル−ヘプタデカン酸
環式モノ保護ノナノールをPCC酸化することにより、対応するアルデヒド化合物を得た。窒素雰囲気下、マグネシウム片を入れたエーテル中に、穏やかな還流を維持する程度の速度で、臭化オクチルの乾燥エーテル溶液を加えた。添加完了後、反応混合物を1時間撹拌し、室温下、この反応混合物に環式モノ保護ノナノールのエーテル溶液を滴下した。混合物を4時間撹拌した後、氷水中に注ぎ、10%のHClで酸性にし、エーテルで抽出した。合わせた抽出液をブラインで洗浄し、乾燥して溶媒を除去した。ヘキサン:酢酸エチル(80:20)を溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、環式モノ保護ヘプタデカノールが得られた。
【0154】
次に、TosHおよびCrO3を用いて環式モノ保護ヘプタデカノールを処理することにより、脱保護化した。この操作により、対応する環式カルボン酸化合物が生成した。環式カルボン酸化合物は、塩化メチレン/ピリジン(90:10)中でメタンスルホニルクロリドおよび4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)と混合した。混合物を2時間撹拌し、次に、水層が酸性になるまで10%のHClで洗浄し、その後、10%のNaHCO3で洗浄した。粗油状物質は、塩化メチレン:メタノール(95:5)を溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけた。
【0155】
Kryptofix-222およびK2CO3を入れたバイアルに18Fの水溶液を加えた。115℃において窒素ガスを流しながら水を除去した後、アセトニトリルを加えた。このバイアルに、メシルカルボン酸化合物のアセトニトリル溶液を加えた。反応混合物を120℃で10分間加熱することによって、9位の炭素が[18F]で標識されたヘプタデカン酸のシクロブチルまたはシクロペンチル誘導体が得られ、これらをヘキサン:酢酸エチル(85:15)を溶媒としてシリカSep-Pakで精製した。
【0156】
末端を標識した[18F]−9−フルオロフェニル−3,4−シクロブチル−またはシクロペンチル−ヘプタデカン酸
実施例4に記載したプロトコールに基づき、別異の出発材料(10−フェニル−1−デカノールなど)を用いて上記分子の合成を行うことができた。出発材料10−フェニル−1−デカノールをトリフェニルホスフィンと反応させ、ベンゼンに溶解した。この溶液に四臭化炭素のベンゼン溶液をゆっくり加え、90分間還流させた。反応混合物を冷却、ろ過し、残渣は石油エーテルを用いて3回洗浄した。残渣は、乾燥するまで減圧蒸留した後、石油エーテルを加えて撹拌し、冷凍庫内に一晩放置した。次に、溶液をろ過し、得られた残渣を石油エーテルで2回洗浄し、合わせた溶液を乾燥するまで減圧蒸留した。この操作により、出発材料の臭化アルキル誘導体が得られ、このとき、臭素原子は一級アルコール部位に置換している。
【0157】
臭化化合物は、以下のようにグリニャール反応に供した。マグネシウム片を入れた還流エーテル中に臭化化合物のエーテル溶液を注入した。アルゴンまたは窒素雰囲気下で還流を90分間続けた。次に、反応混合物を室温まで冷却した後、シクロブチル−またはシクロペンチルモノ保護1−ヘプタノールを入れたトラップに注入し、溶液を5分間振とうした。この溶液を分液ろうとに移し、エーテルで2回洗浄し、1NのHClと合わせた。溶液を水で2回洗浄し、Na2SO4を用いて乾燥させ、溶媒を留去した。得られたヘプタデカノール化合物は、一方の末端に末端フェニル基を有しており、シクロブチルまたはシクロペンチル置換基を有し、さらにTHP保護基を有していた。
【0158】
環式モノ保護ヘプタデカノールは、TosHおよびCrO3で処理することにより、脱保護した。この操作により、対応する環式カルボン酸化合物が形成された。環式カルボン酸化合物は、塩化メチレン/ピリジン(90:10)中でメタンスルホニルクロリドおよび4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)と混合した。混合物を2時間撹拌した後、10%のHClを用いて水層が酸性になるまで洗浄し、さらに10%のNaHCO3で洗浄した。粗油状物質は、塩化メチレン:メタノール(95:5)を溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけた。
【0159】
18Fまたは123I放射性標識は、シーマン反応などのその他の方法によって末端フェニル部位に導入することができる。18F標識化においては、硝酸(HNO3)および硫酸(H2SO4)中でベンゼン部位をニトロ化し、続いてSnおよびHClで還元した。この操作により、アミノ基を有するフェニル部位(アニリン)が得られた。この化合物をNaNO2およびHClと共にインキュベートすることにより、アミノ基がジアゾニウムイオンに転換した。次に、[18F]−HBF4を用いてジアゾニウム塩をフッ素化した。この操作により、フッ素モノ置換フェニル基が得られた。123I標識化においては、HNO3およびH2SO4中でベンゼン部位をニトロ化し、アニリン基を得た。NaNO2およびHCl、続いてヨウ化カリウム(KI)を用いてヨウ素化を行った。ヨウ素化アリール誘導体は、高温、酸性溶媒中で放射性ヨウ素と交換反応を行うことにより放射性標識化した。その他の方法としては、対応するトリブチルスズ誘導体を調製し、求電子芳香環放射性ヨウ素化を行う方法などが挙げられる。
【0160】
シクロブチル−またはシクロペンチル−置換ヘプタデカン酸のエンド−ビニル誘導体の合成
実施例5に記載しているエンド−ビニル変形脂肪酸のシクロブチルおよびシクロペンチル誘導体は、基本的には上述に従って合成されるが、出発材料であるシクロブチル−またはシクロペンチル−THPモノ保護ヘプタノールは、N−ブロモスクシンイミドで処理した。この操作によってアルキル臭化物誘導体が得られたが、このとき、臭素基は、THP保護基とは反対側の末端に結合していた。このアルキル臭化物誘導体は、ヘキサン中、アルキンの存在下において、n−ブチルリチウムを用いて処理することにより、THP保護基とは反対側の末端にアルキン基が付加した。対応するシクロプロピルアルキン化合物は、水素化トリブチルスズで水素化し、I2を用いてヨウ素化することにより、エンド−ビニル誘導体を得た。
【0161】
エンド−ビニル誘導体は、酸性条件下、TosHおよびCrO3 を用いて処理することにより、THP保護基が脱離し、続いて酸化することによってカルボン酸化合物になった。対応するカルボン酸化合物は、水素化トリブチルスズを用いてヨウ素置換反応に供した。放射性標識ヨウ化ナトリウム(Na123I)は、トリブチルスズ部位の123Iとの置換を行い、エンド−[123I]−ヨード−3,4−シクロブチル−またはシクロペンチル−ヘプタデカン酸が得られた。別の方法としては、トリブチルスズ置換カルボン酸を18F2で処理し、エンド−[18F]−フルオロ−3,4−シクロブチルまたは−シクロペンチル−ヘプタデカン酸が得られた。
【0162】
シクロブチルまたはシクロペンチル−置換ヘプタデカン酸のエクソ−ビニル誘導体の合成
環式モノ保護ノナノールをPCC酸化することにより、対応するアルデヒド化合物を得た。窒素雰囲気下、マグネシウム片を入れたエーテルに、穏やかな還流を維持する程度の速度で、オクチルブロミドの乾燥エーテル溶液を加えた。添加完了後、反応混合物を1時間撹拌し、この混合物に、室温で環式モノ保護ノナノールのエーテル溶液を滴下した。混合物を4時間撹拌した後、氷水に注ぎ、10%のHClを加えて酸性にし、エーテルで抽出した。合わせた抽出物をブラインで洗浄し、乾燥し、溶媒を除去した。ヘキサン:酢酸エチル(80:20)を溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことにより、環式モノ保護ヘプタデカノールが得られた。
【0163】
次に、TosHおよびCrO3 を用いて環式モノ保護ヘプタデカノールを処理することにより、脱保護した。この操作により、対応する環式カルボン酸化合物を得た。実施例6の記載、また、バートン(Burton)およびグリーンリム(Greenlimb)の方法(J.Org.Chem.(1975)40:2796-2801)、ならびにシュロッサー(Schloesser)およびツィマーマン(Zimmermann)の方法(Synthesis(1969)1:75-76)の変法に従い、この環式カルボン酸化合物をビニルフッ素化またはビニルヨウ素化した。
【0164】
上述の発明について、内容を明確にし、理解を促すことを目的として例示を用いて詳説したが、当業者においては、ある程度の変更および変形が可能なことは自明である。故に、本発明の範ちゅうは請求の範囲によって定められ、上述の記載および実施例によって制限されることはない。
【参考文献】
【0165】
【図面の簡単な説明】
【0166】
発明の詳細に関する上述の記載は例示であり、特定の実施態様に対して発明を限定するためのものではなく、以下の図面を参照することによって理解できるであろう。
【図1】[18F]−9−フルオロ−3,4−シクロプロピル−ヘプタデカン酸合成経路の概略図。
【図2】脂肪酸骨格上で放射性標識置換が直接行われている飽和脂肪酸の一般式。脂肪酸の誘導体を示すこの図は、図1の化合物に類似した一般構造を含む。
【図3】サルの心臓内における[18F]−FCPHA活性を時間の関数として図示。
【図4】18mCiの[13N]−アンモニアをブタに静注してから2〜8分後の心臓の画像
【図5】19mCiの[18F]−FCPHAを図4と同一のブタに静注してから2〜8分後の心臓の画像。
【図6】追跡子をブタに静注してから2〜8分後に得られた[13N]−アンモニア画像(右)と[18F]−FCPHA画像(左)との比較。
【図7】陽電子放出断層撮影法によって得た、サルの心臓の左心室および右心室中における[18F]−FCPHAの生体分布を示す画像。
【図8】サルに[18F]−FCPHAを投与してから60分後の心臓の横切断薄片。
【図9】「A」で表される置換基、および置換された放射性標識を有するフェニル部位を含む、末端標識直鎖脂肪酸の一般式。
【図10】エンド−[18F]−フルオロ−または[123I]−ヨード−3,4−シクロプロピルヘプタデカン酸の合成経路の概略図。
【図11】エンド−ビニル基を有する脂肪酸の一般式。このエンド−ビニル基は、置換基XまたはYにおいて置換された放射性標識を有する場合がある。
【図12】エクソ−[18F]−フルオロ−または[123I]−ヨード−3,4−シクロプロピルヘプタデカン酸の合成経路の概略図。
【図13】エクソ−ビニル基を有する脂肪酸の一般式。このエクソ−ビニル基は、置換基XまたはYにおいて置換された放射性標識を有する場合がある。
【図14】4または5員環構造を取り得る置換基を含む変形脂肪酸の一部分の部分合成を示す図。
【図15】4または5員環構造を取り得る置換基を含む変形脂肪酸の一般式。この変形脂肪酸誘導体は、図2、図9、図11および図13に記載している特徴を併せ持つ。
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照/参考としての取込み
本出願は、2003年4月17日に受理された米国特許出願第60/463,574号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本明細書中に引用している各特許出願および特許、ならびに各特許出願および特許中に引用されている各出版物または参考文献 (発行された各特許について訴訟中のものを含む;出願引用文献) 、さらに、これらの特許出願および特許のうちの任意のものに対応する、および/または優先権を主張する米国および外国特許出願および特許、またさらに、各出願引用文献中に引用または参照されている各文献は参照として本明細書中に取り込んでおくことを特記する。より一般的には、出版物または参考文献は、参考文献一覧中または明細書の文章中のいずれかにおいて本明細書中に引用されており、これらの出版物または参考文献(「本明細書中に引用されている参考文献」)の各々、ならびに、本明細書中に引用されている参考文献中に引用されている各出版物または参考文献(メーカーの仕様書、使用説明書などを含む)も参照として本明細書に取り込んでおくことを特記する。本明細書中に参照として取り込んだ出版物は発明の実施において使用することができる。本出願は、1985年6月18日に交付された米国特許第4,524,059号を参照しており、該特許の内容を参照として本明細書中に取り入れておく。
【0003】
本発明は、環式有機置換基を有する新規脂肪酸アナログを放射性同位元素で標識した化合物に関する。ここで、脂肪酸骨格のひとつの位置に陽電子またはガンマ線放射性標識を付し、脂肪酸骨格の2,3位、3,4位、4,5位、5,6位およびその他の位置を有機置換基で置換した。これらの新規脂肪酸アナログ類は、天然の脂肪酸と同様に、長鎖脂肪酸キャリヤーメカニズムによって目的組織に入り込むことを意図したものであるが、骨格内の2,3位、3,4位、4,5位、5,6位およびその他の位置の機能性置換基が異化経路を阻止するため、これらのアナログ類は、大部分が変形されずに目的組織内に留まる。
【背景技術】
【0004】
心疾患の非侵襲性評価については、多数の画像様式が開発されている。心筋灌流および心代謝に到達することができる放射性追跡子は、虚血性心疾患および心筋症の臨床評価に有用である。有気状態においては、脂肪酸類(FA類)は、心筋内でのアデノシン三リン酸(ATP)の産生における基本的基質である。心筋のエネルギーは、約70%が基底状態の脂肪の代謝によって得られ、残りは、グルコース(15%)、乳酸塩およびピルビン酸塩(12%)ならびにアミノ酸(5%)から供給される。従って、心臓の造影にはFA類および変形脂肪酸類(MFA類)が使用されてきた。
【0005】
心筋による遊離FA類の取込みは、血中含有量の40〜60%であり、この値は、灌流と釣り合っている。FA類は、非エステル化FA類として、あるいは、超低密度リポタンパク質粒子もしくはカイロミクロン中の、または血清アルブミンに結合したトリグリセリドとして、間質組織の濃度勾配を通過して心臓に輸送される。このような条件下においては、FA類は酸化的代謝基質の70%を占めている。筋細胞による遊離FA類の抽出は、FA鎖の長さ、他の代謝基質の利用の可能性、ホルモンの循環レベル、心仕事量、ならびに虚血の有無を含むいくつかの変数によって制御されている。
【0006】
MFA類は、ミトコンドリアのβ−酸化段階までは天然型FA類と同様な挙動を示し、長時間かけて分離される(非特許文献1)。概説すると、FAの行く末は次のようである:FAは、毛細血管血から間質組織へと通過する。FAは血管へ「逆拡散」するか、または間質組織を通過し、このときに活性化されてアシルコエンザイムA(CoA)になる。次に、活性化されたFAは、エステル化されてトリグリセリドを形成し、リン脂質に取り込まれるか、または、ミトコンドリア内に輸送されて酸化される。FAからアシルCoAへの活性化にはエネルギーを要し、イン・ビボ(in vivo)においては基本的に不可逆であると考えられている。アシルCoAは細胞膜から逃避することはできないので、細胞内に蓄積する。しかしながら、トリグリセリド類の形成は不可逆的ではなく、構成するFAとグリセロールに分解されてFAプールに入る。
【0007】
上述したように、FAの代謝と心筋の集成性との間には密接な関係がある。FA類の利用度が高いことから、標識されたFA類を適切な検出技術と組み合わせることにより、イン・ビボ(in vivo)における局所的な心筋代謝の定量法を提供することができる。イン・ビボ(in vivo)における基質の使用量を定量する方法としては2つの様式がある。ひとつは、放射性標識した、陽電子放出性の生体基質を使用する方法である。この方法に従い、ウサギにおいて炭素11(11C)パルミチン酸(PA)を使用して心臓のグルコースおよびFA代謝の評価が行われている(非特許文献2)。虚血後しばらくして、心臓機能が回復し民も関わらず、PAの抽出が顕著に低下していたことが示されている(非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13;非特許文献14;非特許文献15;非特許文献16;非特許文献17;非特許文献18;非特許文献19;非特許文献20;非特許文献21;非特許文献22;非特許文献23)。さらに、流量が持続的に低下している部分においてもPA抽出の低下が認められた(非特許文献16)。
【0008】
11C−PAを使用する別の実験においては、心筋内のFAの局所分布を調査するための実験基準が提供されている。心筋の局所代謝率のイン・ビボ(in vivo)定量に対して生体的FA類を放射性標識して使用する場合には、いくつかの欠点がある。第一に、カルボキシル基を11Cで標識した11C−FA類を使用すると、1回目のβ−酸化中に標識の消失が生じる。冠動脈内に直接11CO2を投与し、心筋を直接モニターした実験においては、30秒以内に11CO2の放出が観察され、50%クリアランス時間は2〜8分であることが示された。第二に、β−酸化によって放射性標識が迅速に洗い流されてしまい、さらに、連続画像時間が短いことから、統計の計数に限界がある。第三に、心筋細胞内においては、FA類は別異のプール、すなわち、遊離FA類、トリグリセリド類、リン脂質類、ジグリセリド類およびモノグリセリド類に分布している。FAの酸化速度がトリグリセリドの加水分解速度に比例しているか否かは不明である。血中の放射活性の初期消失後に、肝臓から放射性標識代謝物が放出されることによって活性の上昇が見られる。このことから、上昇が起こる前に標識FAの検出を終了する必要がある。11C−PAを用いてイヌで行った別の実験においては、代謝物が複雑であったために、虚血期間中での定量には限界があったことが示された(非特許文献13)。代謝物が単純であることから、代替化合物として11Cアセタートの使用が提案されている。
【0009】
二番目の様式は、既知の代謝経路に入る「アナログ追跡子」の使用を含むものである。しかしながら、追跡子の化学構造が特異であることから、これらの代謝はある段階で停止し、細胞内に捕獲された放射性標識が既知の形で残る。この考え方は、1−[11C]−2−デオキシグルコース(2DG)および2−[18F]−フルオロデオキシグルコース(2FDG)などのグルコースアナログ類を用いたグルコースの代謝実験に応用されている。代謝捕獲の原理に従い、2FDG を用い、イン・ビボ(in vivo)でのヒトの局所的グルコース代謝速度の測定が行われている。心筋のグルコース代謝の測定に2FDGを使用する研究が行われている。同様に、心筋内の代謝活性の測定にはFA類も汎用されている。FA類を使用する場合の主要な欠点は、上述したように、洗い流し速度が速いことである。FAは、放射性核種の位置に応じ、β−酸化によって非常に迅速に洗い流されてしまう傾向がある。続いて、放射性標識されたFAまたは代謝物は、目的の領域(主に肝臓および肺)以外の組織内に蓄積する場合がある。放射性ハロゲン化脂肪族脂肪酸においては、そのような蓄積は頻繁に起こり、123Iを用いた場合には甲状腺に移動して貯蔵され、18Fを用いた場合には骨に貯蔵される。
【0010】
エヴァンス(Evans)および共同研究者らは、オレイン酸の二重結合を131Iで飽和させることによって直鎖FAを放射性標識し、イヌの心臓のフォトスキャンを得たが、最終生成物の比放射能が低かったことから臨床使用はできないことがわかった(非特許文献24;非特許文献25)。それ以後、心臓造影用に多数のMFA類が開発されている。ポー(Poe)および共同研究者らは、[123I]−ヘキサデカン酸(IHXA)および[123I]−ヘプタデカン酸(IHDA)が実験イヌモデルにおける心筋灌流の指示物質であること、ならびに、得られた消失速度が11C−PAのそれと類似していることを示した(非特許文献26;非特許文献27)。前心筋梗塞状態の全ての被験者において、追跡子の局所取込みが減少していることが示された。マチュラ(Muchulla)らは、ω−末端を標識したFA類は、α位を標識したアナログ類よりも効率的に抽出され、さらに、IHDAの取込みが最も多かったことを報告している(非特許文献28)。
【0011】
IHDAおよびIHXAは、心筋灌流物質としての能力を有するが、患者の心筋代謝への侵入能については疑問視されている(非特許文献29;非特許文献30)。放射性標識したヨウ化アルキルFA類の臨床使用に関しては、次のような点から限界がある:1)遊離の放射性ヨウ素がすぐに出現することから、心筋における活性と血液プールにおけるそれとの区別をするための特別な補正手段を要する;2)排出半減期が短いことから、単一光子画像用の物質としては不適である;3)データから、排出速度はβ−酸化を反映しているとは考えづらく、むしろ、膜を透過した追跡子の脱ヨウ素化および逆拡散を反映していることが示唆される。さらに、二次元画像用に開発されたプロトコールおよびアルゴリズムは、単一光子画像(SPECT)には適用不可能であり、このような代謝パラメーターの測定に関する画像様式候補にすぎないとして完全に除外される。IHDAおよびIHXAを用いた画像化には脱ヨウ素化に伴う難点があることから、最終的に、分岐FA類の開発に至った。
【0012】
FA類の分子構造を変形することにより、心筋代謝を減弱させる、心臓での保持時間を延長させる、また、洗い流しの影響を避けることができる。アルキルFA類の急速な脱ヨウ素化の防御およびヨウ素放射性標識の安定性の促進を目的として、代替化合物として15−(p−ヨードフェニル)ペンタデカン酸(IPPA)が開発された(非特許文献31)。末端フェニル環のオルト位またはパラ位に123I標識を導入することにより、脱ヨウ素化に対する安定性が得られた。灌流ラット心臓における[123I]−IPPAの動態は、生理学的基質である11C−PAのそれと類似していた(非特許文献32)。IPPAの取込みは灌流に連動しており、一般的に、IPPAはβ−酸化の正常代謝経路に入る(非特許文献33)。ヨウ化安息香酸およびその代謝物であるヨウ化馬尿酸塩は、IPPAの酸化による生成物であり、それらはヨウ素部位を付けたままの形で腎臓から迅速に排出されるが、これによって遊離の放射性ヨウ素の蓄積が回避される。
【0013】
心筋の生検試料を用いた実験により、正常な心筋から複指数関数的に迅速に排出されることが示されており、このとき、迅速コンポーネントはt1/2=3.5分(流速)、緩徐コンポーネントはt1/2=130分(代謝)、血中クリアランスはt1/2=5分(排出)であった(非特許文献34)。アルキル長鎖FA類と比較すると、IPPAには、心筋への迅速な取込み、ヨウ素安定性、および代謝物の迅速な体外放出という利点がある。IPPAは、優れた画質の提供、ならびに代謝速度の推定を伴うSPECT画像の収集および定量化に関して直鎖FA類より遥かに改良されてはいるが、IPPAの代謝およびクリアランスの速度はSPECT画像法にはまだ速すぎた。故に、酸化的代謝が抑制された放射性標識FAアナログ類の開発に努力が払われた。
【0014】
メチル分岐鎖を導入して心筋クリアランス速度を低下させ、定量的画像の精度を向上させた(非特許文献35;非特許文献36;非特許文献37;非特許文献38;非特許文献39;非特許文献40)。3位の炭素にメチル基を付加すると、5−L-ヒドロキシScoA中間体の脱水素化を介して進行する3−カルボキシ中間体(β−ケトアシル−ScoA)の形成が阻止されることにより、β酸化が阻止される。より長時間心筋に保持されるヨウ素標識MFA類としては、15−(p−ヨードフェニル)−3−(R,S)−メチル−ペンタデカン酸(BMIPP)および15−(p−ヨードフェニル)−3,3−ジメチル−ペンタデカン酸(DMIPP)の2種類がある。これらのメチル分岐鎖FA類の動態および細胞レベルでの分布については評価がなされており、DMIPPの心筋保持時間が最も長く、その間にほとんど代謝されなかった(非特許文献41;非特許文献42)。しかしながら、DMIPPの心筋クリアランスは非常に遅く(6〜7時間)、用途が限定される。さらに、DMIPPは、肝臓などの外組織内においても検出されている(非特許文献43)。BMIPPも肝臓に蓄積するが、その量はDMIPPよりも少ない。
【0015】
心臓画像法において現在最も汎用されているのはBMIPPである。BMIPPの心筋保持時間は長く(30〜45分)、初期のα−酸化および酸化的脱炭酸化によって中間体であるα−ヒドロキシ−BMIPPが生成した後に、筋細胞内でβ−酸化が進行する(非特許文献44)。プロピオン酸が除去された後、β−酸化の連続サイクルを通過してさらに分解が進み、最終生成物である(p−ヨードフェニル)−酢酸が生成する。さらに、BMIPPを注射した直後の数分間における初期分布は、灌流追跡子である201タリウムおよび99mテクネチウム化合物などのそれと同様である。 従って、心筋の生存率を高精度で評価するために必要なことは、BMIPPを単独使用して注射直後およびある時間を経過した後に得た画像であるということができる。同様に、多くの研究グループが血流用のマーカーとしてのFA類に関して研究を行っており、それらのデータから、ある種のFA類を単回投与することにより、201Tl、11C−PAまたはカリウムによって得られる画像と同様の画像が得られることがわかった(非特許文献45;非特許文献46;非特許文献47;非特許文献48)。従って、単回投与をすることによって、患者の放射線暴露量が抑えられ、かつ経済的でもある。BMIPPは、血流および代謝に関して汎用されているFAであるが、当該分野においては、明らかな代謝を受けることなく、また、所望しない他の部位に放射性標識が移動せずに、心筋にさらに長時間保持されるMFA類が希求されている。BMIPPおよびその代謝物は、肺組織中にかなり高レベルで検出されている(非特許文献43)。
【0016】
画像法に適したMFA類は多数存在するが、それらの大多数は、β−酸化を著しく受けて放射性標識代謝物を生成し、他の組織内に蓄積するか、または、心筋内に効率的に輸送されず、逆拡散したり再エステル化を受けてトリグリセリドプールに入る。従って、外的、生理学的手段によって目的組織に輸送されるが、分岐有機置換基の存在によってβ−酸化の進行が不能になるような放射性標識MFAアナログが必要とされている。このような要求が満たされることにより、MFAは、実質的に変形されることなく、従来技術による検出に必要な十分な時間にわたって、目的組織(すなわち、心臓組織)内に保持される。さらに、上述した特性を有し、臓器の所望しない部分への移動がほとんどなく、目的組織内に保持されるような放射性標識MFAが必要とされている。
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【非特許文献48】カワモト(Kawamoto), M.ら、(1994) J.Nucl.Cardiol. 1(16): 522-528
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0017】
FA取込みに関する代替化合物は、虚血および心筋損傷の感受性マーカーであると考えられる。初期には心筋血流を呈示し、結果的には代謝活性に基づいて適切な心筋への保持を示すような放射性標識FA類は、虚血性心疾患および心筋症時に起こる、心血流およびFA代謝の局所的不均衡に対する臨床評価に有効な候補物質である。
【0018】
故に、本発明は、環式有機置換基を有する新規な放射性標識FAアナログ類に関し、このとき、FA骨格内に陽電子またはガンマ線放出標識を付し、さらに、FA骨格の2,3位、3,4位、4,5位、5,6位およびその他の配列位置を有機置換基で置換した。これらの新規FAアナログ類は、天然のFA類と同様に、長鎖FAキャリヤーメカニズムによって目的組織内に侵入することを意図したものである。しかしながら、2,3位、3,4位、4,5位、5,6位およびその他の配列位置における機能的置換基が異化経路を阻止することにより、これらのアナログ類は目的組織内に捕獲される。
【0019】
従って、本発明をひとつの側面から見ると、放射性標識を付され、哺乳類の組織に取り込まれる脂肪酸のアナログに関し、該アナログは以下の構造式を有する:
R−(CH2)n−Z−(CH2)mCO2H
ここで、nは8〜22であり、mは0〜10であり、RはCH3、アリールもしくは複素環基であり、さらに、Zは環式もしくは複素環式有機置換基であり、これらの置換基によって該アナログが該組織内に代謝的に捕獲される。
【0020】
本明細書において使用している「アリール」とは、5、6または7員環を含むが、これらに限定されるわけではない。さらに、「環式」とは、シクロプロピル、シクロブチルおよびシクロペンチルなどの環式アルカン類をさすが、これらに限定されるわけではない。同様に、「複素環式」とは、窒素、硫黄または酸素原子などを含む3〜5個の元素からなる任意の環構造をさす。
【0021】
本発明を別の側面から見ると、放射性標識を付され、哺乳類の組織に取り込まれる脂肪酸のアナログに関し、該アナログは以下の構造式を有する:
【化1】
【0022】
ここで、DはCH2またはCH2CH2であり、EはCH2またはCH2CH2であり、mは0〜10であり、nは8〜14であり、さらに、RはCH3、アリールもしくは複素環基であり、有機環式置換基−CDCE−によって該アナログが該組織内に代謝的に捕獲される。
【0023】
本発明を別の側面から見ると、放射性標識を付され、哺乳類の組織に取り込まれる脂肪酸のアナログに関し、該アナログは以下の構造式を有する:
【化2】
【0024】
ここで、Aは(CH2)x、OまたはSであり;Xは1、2、3および4であり;シスおよびトランス異性体であるR,RおよびS,S、ならびにそれらのラセミ体であり;mは0〜10であり;nは14〜8であり;Rは18F−フェニルまたは123I−フェニルであり、環式または複素環式有機置換基−CH−A−CH−によって該アナログが該組織内に代謝的に捕獲される。
【0025】
本発明をまた別の側面から見ると、放射性標識を付され、哺乳類の組織に取り込まれる脂肪酸のアナログに関し、該アナログは以下の構造式を有する:
【化3】
【0026】
ここで、Aは(CH2)y、OまたはSであり;yは1、2、3および4であり;シスおよびトランス異性体であるR,RおよびS,S、ならびにそれらのラセミ体であり;mは0〜10であり;nは14〜8であり;RはCH3であり;さらにXは放射性標識である。
【0027】
さらに本発明は、放射性標識を付され、哺乳類の組織に取り込まれる脂肪酸のアナログを提供し、該アナログは以下の構造式を有する:
【化4】
【0028】
ここで、XはH、18F、123I、121I、34mCl、75Br、76Br、77Br、アルキルおよびそれらのヘテロアルキル類であり;Yは、H、18F、123I、121I、34mCl、75Br、76Br、77Br、それらのアルキルおよびヘテロアルキル類であり;Aは(CH2)z、OまたはSであり;zは1〜4であり;mは0〜10であり;nは8〜14であり;pは0〜6であり;RはCH3、アリールまたは複素環であり、環式または複素環式有機置換基−CH−A−CH−によって該アナログが該組織内に代謝的に捕獲される。
【0029】
さらに本発明を別の側面から見ると、放射性標識を付され、哺乳類の組織に取り込まれる脂肪酸のアナログに関し、該アナログは以下の構造式を有する:
【化5】
【0030】
ここで、Aは(CH2)y、OまたはSであり;yは1〜4であり;mは1〜10であり;nは8〜14であり;pは0〜6であり;RはCH3、アリールまたは複素環であり;Xは18F、123I、121I、34mCl、75Br、76Brまたは77Brであり;環式または複素環式有機置換基−CH−A−CH−によって該アナログが該組織内に代謝的に捕獲される。
【0031】
好ましくは、新規脂肪酸は18F、123I、121I、34mCl、75Br、76Brまたは77Brで標識された環式有機置換基を有する。
【0032】
別の実施態様においては、環式有機置換基を有する新規脂肪酸は飽和している。
【0033】
また別の実施態様においては、1またはそれ以上の二重結合を含む環式有機置換基を有する新規脂肪酸について記述している。
【0034】
ひとつの実施態様においては、有機置換基は3〜5員環構造である。
【0035】
本発明の別の側面においては、患者の血流の測定法が提供され、次のような工程を含む:
a)目的組織に、本発明に従うFA組成物の検出可能量を局在させ;
b)投与後約1〜5分以内に、目的組織内の該FA組成物から放出されるシグナルを検出し;
c)目的組織の画像化を行い;さらに、
d)目的組織内の血流を求める。
【0036】
別の側面においては、患者の代謝の測定法が提供され、次のような工程を含む:
a)目的組織に、本発明に従うFA組成物の検出可能量を局在させ;
b)投与後約30〜120分以内に、目的組織内の該FA組成物から放出されるシグナルを検出し;
c)目的組織の画像化を行い;さらに、
d)目的組織の代謝速度を求める。
【0037】
さらに本発明の別の側面においては、脂肪酸のアナログを含む組成物を目的組織内に保持する方法が提供され、次のような工程を含む:
a)目的組織に、検出可能量の組成物を局在させ;
b)組成物の輸送および逆拡散を減少させることにより、該組成物またはその代謝誘導体を組織内に保持させ;さらに、
c)組織内の該組成物または代謝誘導体を検出する。
【0038】
またさらに本発明は、本発明に従う脂肪酸組成物を目的組織内に保持する方法を提供し、次のような工程を含む:
a)検出可能量の組成物を組織内に局在させ;
b)組成物の脱水素化を低下させることにより、該組成物またはその代謝物を組織内に保持させ;さらに、
c)組織内の該組成物または代謝誘導体を検出する。
【0039】
また別の側面から見ると、本発明は、本発明に従う脂肪酸組成物を目的組織内に保持する方法を提供し、次のような工程を含む:
a)検出可能量の組成物を組織内に局在させ;
b)組成物のヒドロキシル化を低下させることにより、該組成物またはその代謝物を組織内に保持させ;さらに、
c)組織内の該組成物または代謝誘導体を検出する。
【0040】
さらに本発明は、本発明に従う脂肪酸組成物を目的組織内に保持する方法を提供し、次のような工程を含む:
a)検出可能量の組成物を組織内に局在させ;
b)組成物のケトアシル形成を低下させることにより、該組成物またはその代謝物を組織内に保持させ;さらに、
c)組織内の該組成物または代謝誘導体を検出する。
【0041】
またさらに別の側面においては、本発明は、本発明に従う脂肪酸組成物を目的組織内に保持する方法を提供し、次のような工程を含む:
a)検出可能量の組成物を組織内に局在させ;
b)組成物のケトアセチル脱離を低下させることにより、該組成物またはその代謝物を組織内に保持させ;さらに、
c)組織内の該組成物または代謝誘導体を検出する。
【0042】
ひとつの実施態様においては、目的組織は心臓組織である。
【0043】
別の実施態様においては、目的組織は肝臓組織である。
【0044】
好ましくは、本発明は、腫瘍組織を目的組織として記載する。
【0045】
ひとつの実施態様においては、組織は病変している。
【0046】
別の実施態様においては、組織は正常である。
【0047】
好ましくは、運動誘導性ストレスまたは薬剤誘導性ストレスに組織をさらすことができる。
【0048】
別の側面から見ると、本発明は、本発明に従う脂肪酸組成物の合成法を提供し、次のような工程を含む:
a)出発化合物からモノ保護一級アルコールを合成し;
b)モノ保護一級アルコールに環式または複素環式有機置換基を付加することにより、環式モノ保護一級アルコールを生成させ;さらに、
c)環式モノ保護一級アルコールを処理することによって脂肪酸アナログを生成させる。
本発明のひとつの実施態様においては、出発化合物は飽和炭素骨格を有する。
【0049】
別の実施態様においては、出発化合物は不飽和炭素骨格を有する。
【0050】
また別の実施態様においては、出発化合物は末端フェニル基を有する。
【0051】
さらに別の実施態様においては、出発化合物は環式一級アルコールである。
【0052】
本発明のひとつの実施態様においては、環式有機置換基として環式アルカンを使用している。
【0053】
別の実施態様においては、3〜5員環構造の複素環式構造を有する複素環式有機置換基を使用している。
【0054】
また別の実施態様においては、放射活性標識を付加することを追有し、そのような標識はアナログの炭素原子に結合している。
【0055】
本発明はさらに、放射性標識した脂肪酸のアナログを投与するためのキットを提供し、そのようなキットは、本発明の方法に従って合成された脂肪酸アナログ、放射活性同位元素、薬剤学的に許容されるキャリヤー、ならびに、必要に応じて、放射性標識されたアナログの調製法もしくはそれらの使用法に関する指示書を含む。
【0056】
好ましくは放射活性同位元素は、18F、123I、121I、34mCl、75Br、76Brまたは77Brを含む群から選択される。
【0057】
請求の範囲および本明細書において、「含む」という語または「含んでいる」などの類似語は、表記した整数または整数群を包含する意味であるが、その他の任意の整数または整数群を除外するものではない。
【0058】
これらおよびその他の実施態様は、以下の記載から自明であるかまたは記載に包含されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
本発明に従えば、環式有機置換基を有し、放射性標識を付した新規脂肪酸組成物を動物(ヒトを含む)に投与することにより、臓器への血流および該動物の体内臓器による代謝を測定することができる。本発明においては、「変形脂肪酸」という語は、合成によって変形された合成または天然に存在する脂肪酸を指す。さらに、本発明においては、「有機置換基」という語は、脂肪酸に結合している有機化学構造を指し、目的組織内における脂肪酸のβ−酸化のイン・ビボ(in vivo)速度低下に有効である。
【0060】
本明細書に記載している新規FA類は、放射性標識を付されており、さらに、2,3位、3,4位、4,5位、5,6位および他の位置において有機置換基によって変形されている。「2,3位」とは、カルボキシル炭素原子から数えてC2およびC3位に存在する炭素原子間の炭素結合を指す。そのようにすると、「3,4位」とは、C3およびC4位に存在する炭素原子を指す。同様に、「2,3位」は、当業者においては、炭素原子について、対応する語である「ベータ−ガンマ」または「βγ」と言い換えることができる。従って、「3,4」位は、炭素原子について、対応する語である「ガンマ−デルタ」または「γδ」と言い換えることができる。分子のカルボキシル末端は、これ以後、分子の「右」末端と称し、反対側の末端を分子の「左」末端と称する。化合物の一般式については、図2にも示している。
【化6】
【0061】
以下の全ての実施形態において、有機置換基は、飽和または不飽和である。有機置換基は、少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくはN、OまたはS、最も好ましくはOまたはSを有する場合がある。窒素原子も用いることができ、当業者であれば、窒素原子の適切な置換を判断し、かつ、得られたアナログの適切な生体分布を測定することは容易である。脂肪酸の炭素骨格は、本明細書において定義している少なくとも1個のヘテロ原子を用いて置換することができる。
【0062】
さらに、AはC1〜C6のアルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、このとき、1個またはそれ以上のC原子、好ましくは1、2または3個のC原子がヘテロ原子、好ましくはN、OまたはS、最も好ましくはOまたはSで置換されている。得られたアナログの適切な生体分布を測定することに加えて、窒素原子の適切な置換を定めることは、当業者の技量の範ちゅうである。
【0063】
さらに、本明細書において使用している「アリール」とは、5員、6員または7員環を含むが、これらに限定されるわけではない。また、本明細書において使用している「ヘテロ原子」は、1個、2個または3個のヘテロ原子を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0064】
FAの鎖の長さもそれらが主に取り込まれる組織に影響を及ぼす。一般的に、炭素数が12〜20である鎖は心筋組織による選択的取込みに最適であり、一方、肝臓は、炭素数が5〜11である鎖を選択的に取り込む。アナログの炭素鎖は飽和または不飽和である。本発明の好ましい実施態様においては、FA骨格は飽和しており、環式有機置換基を有する。
【0065】
本発明の別の実施態様においては、FA骨格は、1個またはそれ以上のビニル基を有し、それによって炭素−炭素結合の1個またはそれ以上が不飽和になっている。好ましくは、ビニル基は、カルボキシル基と反対側に存在しているか、または、上記の一般式中「A」で表されている置換基の左側に存在している。別の好ましい実施態様においては、ビニル基は、それらがFA鎖から分岐しているような状態でFA骨格に結合している。より好ましくは、1〜6個の炭素原子が「A」で表される置換基からビニル基を隔離している。これらの好ましい実施態様についての一般的な図は図11および図13に示す。
【0066】
FAの活性化は、それらの目的組織内への輸送および隔離に必要なエネルギーに依存性の過程である。本発明の好ましい実施態様は、FA代謝経路(本明細書においては「β−酸化」とも称する)の操作に関連する。この過程は、アシルコエンザイムA(CoA)シンターゼによって開始し、該酵素は、アデノシン三リン酸(ATP)の存在下、ミトコンドリアの膜外で末端COOHの脱炭酸化を行うことにより、サイトゾル性の遊離FAを活性化する。この過程によってアシル−アデニレート混合アンヒドリドが生成し、これらがCoAと反応して脂肪アシルCoAとAMP(アデノシン一リン酸)とを生成する。当業者であれば、アシル−CoAシンターゼの別異のイソ型は、多様な鎖長を有するFAに対して特異的であることは既知である。本明細書においては、「CoA」という語は「ScoA」と同義で使用している。
【0067】
FA類からアシルCoAへの活性化が首尾良く進行しない場合には、血管空隙への「逆拡散」が生じていることが多く、逆拡散したこれらのFAは代謝されない。しかしながら、一旦活性化されると、FAはミトコンドリア内膜を通過し、段階的β−酸化過程に入る。本明細書においては、ミトコンドリア内膜を通過する輸送は、FA類の「代謝的捕獲」または「代謝的保持」とも表記する。活性化された脂肪アシル−CoAは、ミトコンドリア内膜を通過して直接輸送されることはできず、アシル鎖は、アシル−カルニチン/カルニチン輸送担体によってカルニチンに転移されねばならない。ミトコンドリア内膜を通過するこの促進拡散は、FA類の酸化の律速段階である。心臓に重い負荷がかかっている場合、または心筋虚血の場合、エステル化FA類は、サイトゾル性トリグリセリド類および膜リン脂質として貯蔵プール内に転送される。本明細書に記載されいている新規なアナログ類の活性化および目的の代謝組織内への輸送は正常に進行するが、アナログの分解に関する次の段階は阻止されていると考えられる。
【0068】
ミトコンドリアマトリックス内においては、FA類は4段階を経て代謝される。1)アシルCoAデヒドロゲナーゼによって脂肪アシル−CoA前駆体からトランス2,3−二重結合が形成され、トランス−Δ2−エノイル−CoAが形成される。2)次に、エノイル−CoAヒドラターゼによってトランス二重結合が水和されて3−L−ヒドロキシアシル−CoAが形成され、続いて、3)3−L−ヒドロキシアシル−CoAデヒドロゲナーゼによって脱水素化が生じてβ−ケトアシル−CoAが生成する。4)β−ケトアシル−CoAチオラーゼによって2,3−炭素−炭素結合を解裂させることにより、アセチル−CoAおよび出発分子よりも炭素鎖が2個短い新しいアシル−CoAが形成される。この過程が繰り返され、それぞれ、炭素数が2個のフラグメントが残る。
【0069】
本発明は、ひとつまたは幾通りかの方法で代謝配列を阻害する、または阻止することにより、β−酸化経路を減弱させるような環式有機置換基を有するFA類に関する。例えば、中間体は、β−酸化経路中に必要な酵素群のうちのひとつに対する基質ではなく、あるいは、中間体は、代謝的水素付加段階、脱水素段階もしくはヒドロキシル化段階に入り得ない。血流および初期取込みに関連する初期捕獲段階は、血流に関連する画像の収集に役立つと考えられる。ひとつまたはいくつかの代謝段階を経た後に生じる代謝的捕獲または保持は、標的組織の代謝的集積状態を表している。本発明に従うFA類の代謝誘導体類の形成を「低下させる」とは、代謝反応を全体的または部分的に阻害または排除することを意味し、そのような代謝反応としては、輸送、逆拡散、水素付加、脱水素化、ヒドロキシル化、ケトアシル形成およびアセチル脱離などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。そのような観点からすると、本発明のひとつの側面においては、β−ケトアシル−CoAの形成(段階3)を低下させる。別の側面においては、トランス−Δ2−エノイル−CoA誘導体の形成(段階1)を低下させる。さらに本発明の別の側面においては、FA骨格上の有機置換基の位置に依存して、連続的β−酸化段階での生成物の生成を低下させる。FA骨格上の有機置換機の位置により、該分子がβ−酸化および代謝を受ける度合いが決まる。
【0070】
不飽和シス−二重結合の存在などのようなFA類の変形によってもFA代謝を減弱させることができる。シス−3,4−二重結合は、エノイル−CoAの基質ではなく、エノイル−CoAイソメラーゼを必要とするが、該酵素は、シス−二重結合をより安定なエステル縮合型のトランス型に転換する反応を触媒する。一旦この異性化が生じると、代謝は、β−酸化の5サイクル目まで正常に進行するが、偶数番号の炭素原子に別の二重結合が存在すると、2,4−ジエノイル−CoAが生成する。この分子はエノイル−CoAヒドラターゼの基質としては不適であり、NADPH−依存性2,4−ジエノイル−CoA還元酵素という別の酵素を必要とする。生成したトランス−2−エノイル−CoAは、3,2−エノイル−CoAイソメラーゼによってさらに異性化されてトランス−3−エノイル−CoAが得られる。同様に、分岐メチルまたはフェニル基などのその他の有機置換基を付加することによりβ−酸化経路の減弱に役立ち、目的の代謝組織において分子がより長時間保持される。
【0071】
本発明の実施態様においては、FA鎖骨格上を有機置換基または置換基群で置換する。この有機置換基は、2,3位、3,4位、4,5位、5,6位およびその他の配列位置において置換することができ、FA骨格から分岐した位置に置換基を付加することができる。FA骨格上の有機置換基の位置により、該分子がβ−酸化および代謝を受ける度合いが決まる。好ましい実施態様においては、3,4−位に有機置換基が結合していることにより、FAアナログのカルボキシル炭素原子に対してCoA置換が起こり、アナログが目的組織内に代謝的に捕獲される。得られた脂肪アシル−CoA分子に対する次の2段階の代謝、すなわち、トランス−Δ2−エノイル−CoAおよび3−L−ヒドロキシアシル−CoAの誘導体類の形成は、通常、3,4−置換によって起こる。しかしながら、得られた3−L−ヒドロキシアシル−CoA誘導体は、有機置換基が存在することから、3−L−ヒドロキシアシル−CoAデヒドロゲナーゼの基質ではなく、従って、β−ケトアシルCoAの形成が阻害される。別の好ましい実施態様においては、2,3−位に有機置換基が結合していることにより、FAアナログのカルボキシル炭素原子に対してCoA置換が起こり、アナログが目的組織内に代謝的に捕獲される。しかしながら、アナログを脱水素化して明らかにトランス−Δ2−エノイル−CoA誘導体が生成する反応を含む代謝の第一段階が起こらず、従って、アナログのさらなる代謝が阻害される。これらの特別な実施態様は、血流の測定に有効利用できると考えられる。
【0072】
同様に、有機置換基がFA骨格上の4,5位、およびその他の連続位(すなわち、5,6位、6,7位など)に存在する場合には、β−酸化の中のひとつまたはそれ以上の段階が停止し、続いて阻止される。本発明のさらに別の好ましい実施態様においては、FA骨格上のカルボキシル末端からさらに離れた位置(例えば、4,5位、5,6位、6,7位などが挙げられるが、これらに限定されない)に有機置換基を付加することを含む。当業者であれば、FA骨格上の有機置換基の位置がβ−酸化の進行度合いを決定することは既知である。本実施態様においては、本発明の代謝活性は、β−酸化経路を介する代謝の進行によって首尾良く測定することができる。
【0073】
アナログ上の任意の有機置換基は、脂肪酸のβ−酸化過程に含まれている第一の化学中間体の形成が可能である程度の大きさでなければならない。あまり大きすぎると、置換基がアナログの取込みおよび挙動を所望以上に大きく変化させる。任意の置換基に関する化学的性質ならびに大きさがアナログの特性に影響を及ぼす。一般的に、アナログの極性を極度に変化させないような置換基(例えば、非置換アルキル類など)を有するアナログは最初に心臓に取り込まれるが、極性化基(例えば、アルコールまたはエーテルなど)を有するアナログは最初に肝臓に取り込まれる。
【0074】
本発明のさらに別の側面においては、上述の一般式中、「A」で表される官能基は、分岐アルキル基、ジメチル基、環式アルカン類(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、または、3〜5個の元素からなる任意の複素環式構造など)を含む場合がある。複素環は窒素、硫黄または酸素原子を含む。本発明の好ましい実施態様は、シクロプロピル環置換基である。本発明の別の好ましい実施態様は、図10の一般的図式に示しているようなシクロブチルおよびシクロペンチル環置換基である。
【0075】
本発明のさらに別の目的は、FA骨格上に有機置換基をシス型にもトランス型にも付加できるようにすることである。シクロプロパン環形成法(シモンズ−スミス(Simmons-Smith)反応)については、本明細書に実施例の項に記載しており、改良法は、チャレット(Charette)ら(J.Org.Chem.(1995)60:1081)による。反応の構成要素は、シクロプロピル部位の付加に使用したFA前駆体に従い、シスまたはトランス異性体として存在する。CH2Cl2中で事前に形成させたZn(CH2I)2・DMEのコンプレックス(このコンプレックスの詳細については実施例1を参照)を3等量使用し、−10℃以下で3時間インキュベートすることにより、シスジアステレオ異性体が優位に合成され、一方、シスオレフィンおよび事前に形成させたコンプレックスを用い、混合物を−10℃で2時間インキュベートすることにより、シスジアステレオ異性体が形成される。当業者であれば、FA骨格上のシクロプロピル基は2個のキラル中心を有し、従って、分子にはR,RまたはS,Sという2つの鏡像異性体が存在することは既知である。本発明の実施態様は、ジアステレオ異性体およびそれらに対応する鏡像異性体、ならびに任意のラセミ混合物もしくはそれらのメソ化合物をも包含する。
【0076】
本発明に従う新規脂肪酸は、当該分野において既知の陽電子またはガンマ線放出標識を用いて放射性標識することができる。本発明の好ましい実施態様においては、18F、123I、121I、34mCl、75Br、76Brまたは77Brを含む。当業者であれば、別異の放射性核種は、生体組織からの排出、クリアランス、ならびに/または、生体組織への蓄積および半減期(t1/2)などに関して別異の薬物動態学的特性を示すことは既知である。一般的に、放射性核種はサイクロトロンによって合成されるが、該装置は、イオン源から発生させた原子スケール以下の粒子を円周軌道に沿って加速する。チャンバー内での粒子の加速は2つの交流電磁場によって制御されている。加速されたこれらの粒子はエネルギーを獲得し、光速に近づいたときに標的に衝突する。粒子が標的に衝突した結果、不安定で放射活性な同位体元素が得られ、次に、それらを本発明に例示しているような生体関連分子に結合させる。別の方法としては、市販の放射性核種が広く利用されており、当業者に既知である化学合成技術によって生体関連分子に付加することができる。一般的に、画像用の放射性追跡子の半減期は比較的短く、従って、放射性追跡子の検出装置(例えば、PETおよびSPECTスキャナー、またはガンマカメラなど)の重要な特徴は多数のサイクロトロンを配備していることである。当業者であれば、放射性同位元素の崩壊の原理については既知であり、本概念に関しては本明細書中ではこれ以上ふれない。
【0077】
本発明の好ましい実施態様においては、FAの代謝および他組織への移動中に放射性標識が著しく消失することがないような位置に、陽電子またはガンマ線放出放射性標識を付する。十分な技術を有する当業者であれば、末端のカルボキシル基に放射性標識を付することはふさわしくないと判断するであろうが、これは、目的組織内でのFA代謝の初期段階において、特異的酵素によってこのカルボキシル基が除去されるからである。本発明のひとつの側面においては、放射性標識は、FA骨格のC9位に付する。本発明の別の側面においては、FA骨格上でカルボン酸基とは反対側に位置する末端フェニル基に放射性標識を付する。さらに別の側面においては、FA骨格のひとつまたはそれ以上の炭素−炭素結合は不飽和であり、ビニル基を形成していることから、ビニル基に放射性標識を直接付加する。さらにまた別の側面においては、放射性標識したビニル基をFA骨格上に付加し、FA骨格から分岐させる。
【0078】
環式有機置換基を有する放射性標識FA類は、当該分野において既知である伝統的な有機化学合成によって合成することができる。同様に、本発明は多様な方法によって生成および分析することができ、そのような方法としては例えば、カラム精製、薄層クロマトグラフィー(TLC)、逆相クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、赤外線吸収スペクトル(IR)、核磁気共鳴(NMR)(相関スペクトル(COSY)、核オーバーハウザー効果スペクトル(NOESY)、および回転フレーム核オーバーハウザー効果スペクトル(ROESY)、ならびにフーリエ変換などの変形様式を含む)、質量分析(MS)などのその他の分析技術(エレクトロスプレー、化学イオン化、マトリックス支持レーザー脱離イオン化、飛行時間型、高速原子衝突・液体二次イオン化およびその他の多数の技術を含む)などが挙げられる。
【0079】
本発明に従い、環式有機置換基を有する新規な放射性標識FA類を含む薬剤学的組成物は、従来から知られている多様なデポー製剤にすることができる。これらには例えば、固体、半固体および液体投与剤型があり、錠剤、丸剤、粉末、液状溶液もしくは懸濁液、リポソーム、カプセル、坐剤、注射可能もしくは輸液可能な溶液などが挙げられる。そのような投与剤型には、薬剤学的に許容されるキャリヤーおよびアジュバントを使用することができ、それらは当業者においては既知である。これらのキャリヤーおよびアジュバントとしては、例えば、RIBI、ISCOM、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レチシン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミンなど)、緩衝物質(例えば、リン酸塩類、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウムなど)、植物性飽和脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩類もしくは電解質類(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩類、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウムなど)、ポリビニルピロリドン、セルロースに基づく物質、ならびにポリエチレングリコールなどが挙げられる。局所用製剤またはゲル化製剤用のアジュバントは、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック重合体類、ポリエチレングリコールおよび木ロウアルコール類を含む群から選択される。本発明における好ましい剤型は、注射剤である。従って、この剤型は、許容性向上のための準備中に他の処置に用いることができる。
【0080】
上述したように、目的の動物、好ましくはヒトに対して、環式有機置換基を有する放射性標識FA類を投与することができる。非経口、静脈内、筋肉内、病巣内または皮下注射を含む薬剤学的に許容される任意の投与経路により、本発明に従う新規FA組成物を投与することができる。例えば、薬剤学的に許容される任意の投与剤型で、組成物を患者に投与することができ、そのような剤型としては、ボーラス静注によって患者に投与できるもの、ある一定の時間、日数、週数または月数にわたって行う連続輸液、筋肉内(脊椎傍、関節周囲を含む)、皮下、皮内、関節内、滑膜内、クモ膜下、病巣内、骨膜への投与、または経口もしくは局所投与によって患者に投与できるものなどが挙げられる。好ましくは、本発明の組成物は、単位投与量を含有する剤型であり、通常、ボーラス静注によって投与する。
【0081】
精製FAは、静脈内輸送に適した濃度の生理食塩水などの溶液中に入れることができる。これらのFA類は、血流中の非エステル化FA類に結合する血清タンパク質であるアルブミンとコンプレックスを形成することができる。一般的には、アルブミンは2〜10%添加し、好ましくは、4〜6%添加する。別の方法としては、非イオン性界面活性剤中でこれらのFA類を乳化し、さらに、注射前にアルブミン含有または不含の溶液に再懸濁することができる。そのような界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート誘導体類(Tween)、Nonidet P-40、β−D−オクチルグルコシド、ウルソデオキシコール酸(UDCA)、またはTriton X-100などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。環式置換基を有する放射性標識FAの投与量は、投与前に各患者に対して決定せねばならず、一般的な投与量範囲は、0.1〜25mCiであり、より好ましくは1〜5mCiである。
【0082】
さらに別の側面においては、本発明に従うFA類を含む薬剤学的組成物を任意の動物に投与することができ、そのような動物としては、ウマ、ウシ、サル、鳥類、愛玩動物(例えば、イヌ、ネコ、トリ、フェレット、ハムスター、齧歯類、リスおよびウサギなど)などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。本発明の好ましい実施態様は、血流、FA代謝に関連のある疾病もしくは疾病状態をモニターすること、または、ヒトの体内の目的臓器を画像化することである。
【0083】
さらに本発明は、目的組織内において、疾病状態、運動、薬物に影響を受けて生じる血流および代謝の変化を測定、ならびに/または認識する方法、あるいは、診断用画像化法に関する。
【0084】
本発明のひとつの好ましい実施態様は、患者の体内の血流を測定する方法であって、次の工程を含む:
a)目的組織内に、検出可能量の本発明に従うFA組成物を局在させ;
b)投与後約1〜5分以内に、目的組織内の該放射性標識FA組成物から放出されるシグナルを検出し;
c)目的組織の画像化を行い;さらに、
d)目的組織内の血流速度を求める。
【0085】
さらに本発明は、患者の体内の代謝を測定する方法を提供し、該方法は次の工程を含む:
a)目的組織内に、検出可能量の本発明に従うFA組成物を局在させ;
b)投与後約30〜120分以内に、目的組織内の該放射性標識FA組成物から放出されるシグナルを検出し;
c)目的組織の画像化を行い;さらに、
d)目的組織内の代謝速度を求める。
【0086】
本発明の別の実施態様においては、目的組織内に脂肪酸組成物を保持するための方法を提供し、該方法は次のような工程を含む:
a)検出可能量の組成物を目的組織内に局在させ;
b)該組成物の輸送および逆拡散を低下させることによって組織内に該組成物またはそれらの代謝誘導体を保持させ;さらに、
c)組織内の該組成物またはそれらの代謝誘導体を検出する。
【0087】
本発明のまた別の実施態様においては、目的組織内に脂肪酸組成物を保持するための方法を提供し、該方法は次のような工程を含む:
a)検出可能量の組成物を目的組織内に局在させ;
b)該組成物の脱水素化を低下させることによって組織内に該組成物またはそれらの代謝誘導体を保持させ;さらに、
c)組織内の該組成物またはそれらの代謝誘導体を検出する。
【0088】
さらに本発明は、目的組織内に脂肪酸組成物を保持するための方法を提供し、該方法は次のような工程を含む:
a)検出可能量の組成物を目的組織内に局在させ;
b)該組成物のヒドロキシル化を低下させることによって組織内に該組成物またはそれらの代謝誘導体を保持させ;さらに、
c)組織内の該組成物またはそれらの代謝誘導体を検出する。
【0089】
本発明のさらに別の実施態様においては、目的組織内に脂肪酸組成物を保持するための方法を提供し、該方法は次のような工程を含む:
a)検出可能量の組成物を目的組織内に局在させ;
b)該組成物のケトアシル形成を低下させることによって組織内に該組成物またはそれらの代謝誘導体を保持させ;さらに、
c)組織内の該組成物またはそれらの代謝誘導体を検出する。
【0090】
本発明のまたさらに別の実施態様においては、目的組織内に脂肪酸組成物を保持するための方法を提供し、該方法は次のような工程を含む:
a)検出可能量の組成物を目的組織内に局在させ;
b)該組成物のケトアセチル脱離を低下させることによって組織内に該組成物またはそれらの代謝誘導体を保持させ;さらに、
c)組織内の該組成物またはそれらの代謝誘導体を検出する。
【0091】
画像化、血流およびFA代謝の測定に関して、本発明を利用する多様な方法は、単独で、または他の画像化様式と組み合わせて使用できる。例えば、一般的には、心臓画像様式においては、血流(灌流)および心筋生存力(代謝)の2つのパラメーターを測定する。これらの測定は、多くの心臓疾患に対して有効である。血流測定の動物モデルにはマイクロスフェアーを使用することが多いが(ミラー(Miller),D.D.ら、(1988) Circ.Res. 63:681-692)、マイクロスフェアーは循環を阻止することから、ヒトでの使用は除外される。心筋の灌流および代謝の観察に従来から使用されている方法では、2つの別異の追跡子をそれぞれ別異に使用して血流または代謝を測定する。血流測定用に汎用されているマーカーとしては、例えば、201タリウム(201Tl)、99mテクネチウム(99mTc)、13N−アンモニアおよび82ルビジウムなどが挙げられる。しかしながら、用途が灌流測定に限定される201Tl、99mTc、13N−アンモニアおよび82ルビジウムとは異なり、ある種のFA追跡子は、血流および代謝の両方を測定することができる(ポー(Poe),N.D.ら、(1977) Radiology 124:419-424;ヴァン・デル・ウォール(van der Wall), E.E.ら、(1980) Eur.J.Nucl.Med 5:401-405;カイレント(Kairento), A.L. ら、(1988) Nucl.Med.Biol. 15:333-338;カワモト(Kawamoto), M.ら、(1994) J.Nucl.Cardiol. 1:522-528;コバヤシ(Kobayashi), H.ら、(1997) J.Nucl.Med. 39:1117-1122;ミラー(Miller),D.D.ら、(1988) Circ.Res. 63:681-692)。
【0092】
同様に、本発明を多様な方法に利用して、診断に伴う特定の疑問点に答えることができる。例えば、方法には、安静状態下、および/または、運動、疾病状態もしくは薬物によって誘起されたストレス状態下において本発明の投与を行うことを含む。同様に、使用する放射性同位元素によっては、環式有機置換基を有する放射性標識FA類 を連続画像化に使用することもできる。動物体内の臓器への血流は、環式置換基を有する放射性標識FAを動物に投与後、1秒〜約10分以内に測定することができ、好ましくは、約1分〜約5分以内に測定する。目的臓器による代謝は、動物の血流中に放射性標識FAを投与後、約10分〜約24時間内、好ましくは約30分〜約120分以内に測定することができる。
【0093】
核を用い、本発明に従う心臓画像化を利用することにより、多様な心臓障害を検出することができる。当業者であれば、環式置換基を有する放射性標識FAは、血流および心臓代謝用のマーカーとして単独使用できること、あるいは、別の追跡子と組み合わせて使用できることは自明である。そのような追跡子としては、13N−アンモニア、57Co−シアノコバラミン、59Fe−クエン酸第一鉄、18F−フルオロデオキシグルコース、67Ga−クエン酸ガリウム、111In−オキシキノリンインジウム、111In−インジウムペンテテート、111In−ペンテトレオチド、111In−インジウムサチュモマブペンデチド(Indium Satumomab Pendetide)、放射性ヨウ素化ヨーベンガン(Radioiodinated Iobenguane)、123I−ヨウ化馬尿酸ナトリウム、131I−ヨウ化馬尿酸ナトリウム、123I−ヨーフェタミン、125I−ヨータラム酸ナトリウム、81クリプトン、11C−メチオニン、放射性ヨウ素化アルブミン、82ルビジウム、51クロム酸ナトリウム、18フッ化ナトリウム、123ヨウ化ナトリウム、131ヨウ化ナトリウム、99m過テクネチウム酸ナトリウム、99mTc−アルブミン、99mTc−アルブミン(凝集型)、99mTc−アルブミン(コロイド状)、99mTc−アーシツモマブ(Arcitumomab)、99mTc−ビシセート(Bicisate)、99mTc−ジソフェニン(Disofenin)、99mTc−エグザメタジム(Exametazime)、99mTc−グルセプテート、99mTc−リドフェニン(Lidofenin)、99mTc−メブロフェニン(Mebrofenin)、99mTc−メドロナート(Medronate)、99mTc−マーチアチド(Martiatide)、99mTc−ノフェツモマブマーペンタン(Nofetumomab Merpentan)、99mTc−オキシドロナート(Oxidronate)、99mTc−ペンテテート(Pentetate)、99mTc−ピロホスフェート、99mTc−(ピロおよびトリメタ)ホスフェート類、99mTc−セスタミビ(Sestamibi)、99mTc−スクシマー(Succimer)、99mTc−硫黄(コロイド状)、99mTc−テボロキシム(Teboroxime)、99mTc−テトロフォスミン(Tetrofosmin)、塩化201タリウム、127キセノン、133キセノンなどが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。上述した全ての追跡子が心臓画像化に適しているわけではなく、また、本発明の用途は、心血管性疾患に関連する疾患に限定する必要性がないことは自明である。
【0094】
目的組織は、FA類をエネルギー源として利用する任意の組織である。そのような組織としては、心臓組織、脳、肝臓、骨、脾臓、肺、血液、腎臓、胃腸管、筋肉、ならびに副腎組織などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。本発明の好ましい実施態様は、心臓組織である。別の好ましい実施態様においては、肝臓組織も含まれる。
【0095】
環式有機置換機を有する放射性標識FA類を使用することによってモニターできる心疾患または疾病状態としては、急性心筋梗塞、不安定性狭心症、慢性虚血性心疾患、冠状動脈疾患、心筋炎、拡張型、肥大型および拘束型心筋症、先天性心疾患、高血圧性心疾患、移植後心疾患、同種移植片血管障害、心臓弁膜症、ならびにドキソルビシンの心毒性などのような薬物誘導性症状などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。本明細書に示されているような放射性標識FAを使用した方法は、検査する特定の疾患に応じて変形可能であることは自明である。
【0096】
本発明は、本明細書に記載しているように、心疾患以外の多数の疾病に使用することもでき、例えば、膿瘍および感染;胆管閉塞;血液量の研究;血管疾患;脳血管疾患;骨疾患;骨髄疾患;脳の疾患および腫瘍;癌および新生物;直腸結腸疾患;糖尿病;鉄の代謝および吸収不全;心疾患;梗塞および虚血などのような心筋損傷;脳内の脳脊髄液流障害;腎疾患;肝疾患;肺疾患;副甲状腺疾患および/もしくは副甲状腺癌;悪性貧血および/もしくは腸からのビタミンB12の吸収不全;赤血球細胞疾患;唾液腺疾患;脾臓疾患;胃の不調および腸出血;涙管閉塞;甲状腺疾患および/もしくは甲状腺癌;膀胱疾患などが挙げられる。本発明の好ましい実施態様においては、血流およびFA代謝を測定することによる、心筋疾患の検出に利用する。上掲の疾患の診断には、上述したようなその他の追跡子の使用を必要とする場合があることは当然である。本発明の利用は、疾病状態の検出のみならず、健康な被験者の診断用画像にも利用できることは明らかである。
【0097】
当業者であれば、本発明において例示した心臓画像化剤を検出するための多数の方法については既知であり、かつ、別異の放射性核には別異の検出技術を要することは自明である。陽電子放射断層撮影法(PET)および単一光子放出型コンピューター断層診断法(SPECT)は、画像技術の例であり、これらの方法においては、例えば、本発明において示している放射性標識FAなどのように、生体内で有効と考えられる分子に合成的に放射性核を導入する。続いて、一定時間にわたって放射性追跡子の取込みを測定し、目的の生理的過程に関する情報を得る。PETおよびSPECTは類似した原理に基づいて画像を作成するが、装置、放射化学および実験用途に関する重要な差異は、光子放出の物理的過程における本質的な差異によって規定される。
【0098】
過量の陽子を有する不安定な核は、2つの方法のうちのいずれかを採って核の正電荷を減少させる。ひとつは放射活性崩壊様式であり、陽子を中性子に転換し、陽電子と呼ばれる粒子を放出する(ホフマン(Hoffman),E.J.およびフェルプス(Phelps),M.E.、ラーヴェンプレス(Raven Press)(ニューヨーク)、1986: 237-286;ソレンソン(Sorenson),J.A.およびフェルプス(Phelps),M.E.、W.B.サウンダース(Saunders)(フィラデルフィア)、1987: 37-50)。質量は同一だが、電荷が反対である陽電子は、電子に対応する反物質である。陽電子が核から放出されて電子と衝突すると、両方の粒子が消滅し、エネルギーを放出する。2つのγ光子が生成するが、両者のエネルギーは等しく、軌道は反対方向(一般的には180℃離れている)である。
【0099】
互いに逆方向に進む光子の軌道によって得られる特異な空間的サインは、消滅事象が生じる位置に配備したPETスキャナーにおいて利用され、そのような方法は、同時検出として知られている(ホフマン(Hoffman),E.J.およびフェルプス(Phelps),M.E.、ラーヴェンプレス(Raven Press)(ニューヨーク)、1986: 237-286;リンクス(Links),J.M.、ラーヴェンプレス(Raven Press)(ニューヨーク)、1990: 37-50)。PET(およびSPECT)スキャナーは、高密度結晶性材料(例えば、酸化ゲルマニウムビスマス、ヨウ化ナトリウムまたはフッ化セシウムなど)でつくられたシンチレーション検出器を有しており、 該検出器は、高エネルギー光子を捕獲し、それらを可視光に変換する。隣接して配備している光電子増倍管(PMT)により、この瞬時の閃光を電気波に転換する。放射線検出器は、結晶およびPMTから構成されている。PETカメラは、対向する検出器が電子的に連結されるように構成されている。従って、対になっている検出器において別異のシンチレーション事象が同時に発生した場合、消滅事象は、2つの検出器の間の仮想ラインのどこかで生じていると考えられる。この情報を利用し、コンピューター断層診断法の原理に基づき、画像を再構築する。逆に、単一事象は無視する。空間的に離れた消滅事象に由来する2個の無関係な光子が反対側の検出器に同時に到達することが考えられるが、このような偶然の一致は頻度が非常に低い。にもかかわらず、PET画像においては、バックグラウンドノイズの原因は偶然の一致によるものである(ホフマン(Hoffman),E.J.ら、J.Comput.Assist.Tomogr. (1981) 5:391-400;ホフマン(Hoffman),E.J.およびフェルプス(Phelps),M.E.、ラーヴェンプレス(Raven Press)(ニューヨーク)、1986: 237-286;リンクス(Links),J.M.、ラーヴェンプレス(Raven Press)(ニューヨーク)、1990: 37-50)。
【0100】
当業者であれば、陽電子崩壊の性質および同時検出の原理から導かれるPETの本質的な限界を認識できるであろう。特に、PETは陽電子消滅事象を認識するが、このとき、放射活性崩壊事象が同時に発生する必要はない。消滅は、陽電子発生源からある程度離れた場所で生じることが多い。破壊と消滅というこれらの2つの事象間の距離は、核から放出された時の陽電子の平均運動エネルギーによって定まり、使用した特定の放射性同位元素によっても異なる(フェルプス(Phelps),M.E.ら、J.Nucl.Med. (1975)16:649-652)。さらに、消滅時に陽電子が完全に静止していない場合には、光子は180°よりわずかにずれた角度で放出される。これらを勘案すると、離れた場所での陽電子消滅、および光子の非共線性により、PETが達成できる空間的解像度の理論的限界が明らかになる(リンクス(Links),J.M.、ラーヴェンプレス(Raven Press)(ニューヨーク)、1990: 37-50)。
【0101】
本発明の別の実施態様においては、SPECTにより、電子捕獲および/もしくはγ線放出によって崩壊する放射性同位元素を直接検出することができる。123Iおよび99mTcなどのような陽子に富んだ放射性核種は、軌道を回っている電子を捕獲する代わりに、陽子を中性子に再度変換する(ソレンソン(Sorenson),J.A.およびフェルプス(Phelps),M.E.、W.B.サウンダース(Saunders)(フィラデルフィア)、(1987))。得られた娘核種は、わずかに励起されていることが多い。続いて、この準安定配置は散逸し、それによって基底状態に達し、その過程で1個のγ光子を産生する。γ光子は崩壊部位から直接放出されるので、SPECTの空間解析においては、理論的限界はない。しかしながら、SPECTは、同時検出を行う代わりに、コリメーションとして知られる技術を利用する(ジャスザック(Jaszczak),R.J.、CRCプレス(CRC Press)(ボカ・ラートン);(1991): 93-118)。コリメータとは、多数の微小な穴を開けた鉛のブロックであり、対象と放射線検出器との間を遮蔽するものである。コリメータの穴の方向に関する知識があれば、検出された光子の本来の軌跡は直線的に外挿され、コンピューター断層診断法によって画像が再構築される。
【0102】
本発明の利用に際しては、PETもしくはSPECTまたはその他の画像様式によって得られたデータを処理し、分析することが必要であることは明らかである。以下のような数学的アルゴリズムにより、環式有機置換機を有する放射性標識FAの新規アナログの取込み速度を求めることができる。その他の数学的モデルを同様に使用および/または変形することにより、血流速度および代謝活性を求めることができる(ソコロフ(Sokoloff),L.ら、(1977)J.Neurochem. 28:879-916;エルマレー(Elmaleh),D.R.ら、(1994)J.Nucl.Med. 35:496-503;マーシャル(Marshall),R.C.ら、(1998)Am.J.Physiol.275:H668-679;ウィーラー(Wieler),H.ら、(1990)Nuc.Med.Commun.11:865-878)。目的組織において収集した初期および後期の画像を増幅し、異常を示唆する値を得ることができる。
【0103】
数学的モデルを使用し、本発明に従うFAアナログ類の取込み速度を評価することができる。天然のFAの真の抽出フラクションとFAアナログのそれとの間には再現性のある相関関係がある。天然のFAの取込みおよび代謝は定常状態であると仮定すると、代謝速度(モデルへあてはめるため、Rで表している)は、フィックの式から推定することができる:
R=En×F×Ca(mol/分/g)
ここで、En=真の抽出フラクション
F=血流(ml/分/g)であり、初期画像から求めることができる。
【0104】
Ca=動脈中のFA濃度(mol/ml)である。
【0105】
定常状態であると仮定すると、酸化によってFAが組織から出ていく速度は、血液から組織に入る速度と等しくなければならない。定常状態において、心臓によって代謝される物質の真の抽出量は、動脈もしくは動脈血化された血液、ならびに静脈血中のFA類の濃度から求めることができる。
【0106】
FAアナログの真の抽出量とFAのそれとの間の関連性、すなわちEn(FAアナログ)を用いることにより、FAの代謝速度(R)を計算することができる。この関係を次の式で表すことができる
L=En/En(FAアナログ)
ここで、Lはデオキシグルコースの代謝に関するソコロフのモデルにおける「集中定数」と同様の役割を果たす(ソコロフ(Sokoloff),L.ら、(1977)J.Neurochem. 28:879-916)。2つのモデルの差異は、Lが一定でないことである。「L」は血流、遊離脂肪酸の濃度、FFA組成、またはその他の生理学的パラメーターによって変化する可能性がある。Lの挙動は、別異の生理学的状態において、EnとEn[FAアナログ]との間の関係を判断することを目的とする一連の実験を行うことにより、十分に理解することができる。
【0107】
基本モデルでは次のように仮定している:1)脂肪酸の取込みおよび代謝は定常状態である。換言すれば、全てのFAプールおよび反応生成物の濃度は一定である。これは、FAが血液から除去される真の速度がFAの異化作用速度と等しいと仮定したものである。2)一般的に、標識したFAアナログは、痕跡量存在していることから、その存在によってFAの定常状態は影響を受けない。そうすることにより、FAアナログの多様な輸送速度および化学反応速度は、FAアナログの濃度に直線的に依存するものと考えることができる。このモデル方法は、毛細血管−組織間の交換、ならびに投与されたFAアナログの細胞内代謝を説明するものである。天然脂肪酸の細胞内代謝は、濃度勾配を成しており、細胞内空間へのFAアナログの出入りを制御していると考えられる。代謝的に誘導されたこれらの濃度勾配も血流および毛細血管の輸送特性に影響を及ぼす。本方法においては、血流および輸送メカニズムは毛細血管−組織間の交換に包含されあり、代謝過程は細胞内代謝パラメーターに包含される。
【0108】
一般的に、毛細血管と組織との間における任意の物質の輸送には、2つの因子が関与している:(i)自由に拡散する物質に関する固有の毛細血管輸送速度(または、透過性表面域生成物;輸送を媒介するキャリヤーに関しては、輸送過程を表すミカエリス−メンテン式の「見かけの」パラメーターの関数である)。「微視的」モデル法においては、タンパク質−基質コンプレックスはそれぞれのバリアーを特徴付けているが、本発明においては、それらは一緒になってひとつの「見かけの」速度パラメーター(k)となる。(ii)組織1mlあたりの局所血流。血流および輸送速度は、競合する2つの過程を表すものと考えられ、ひとつは毛細血管壁を通過させて分子を輸送する過程であり、他方は、末梢血管末端から血管の外へ分子を運び出す過程である。これらの2つの速度を合わせることによって抽出フラクションEが与えられ、これは、毛細血管床に入った分子のフラクションであり、少なくとも1回は毛細血管壁を通過している。本明細書において使用しているEは、一方通行(単一方向)抽出フラクションであり、真の抽出フラクションではない。
【0109】
FAアナログはβ−酸化を受けないと考えられ、故に、ミトコンドリア内に捕獲されるか、またはトリグリセリドプール内に取り込まれる。トリグリセリドの回転は非常に遅い。FAアナログに関しては、IV注射後のミトコンドリア組織内におけるFAアナログの濃度は、10〜15分後にプラトーに達する。この最も単純なモデルは、測定した組織曲線と一致し、生化学的データは、前駆体FFAプールおよび代謝的に捕獲されたプールという2つのコンパートメントによって組織を表したときの値であり、両コンパートメントは、血液プラズマ中のFAアナログの濃度に反応して変動する。
【0110】
FAアナログはβ−酸化を受けず、かつ、トリグリセリドプールの回転速度が遅いことから、組織曲線のプラトーは、両方の構成要素を反映している。FAアナログを用いて測定することにより、FAアナログが定められた段階を経てアシル−CoAに至る速度のみを測定することができる。従って、トリグリセリド+β−酸化への取込みに関する定常状態速度を測定することができる。この状況は、天然の脂肪酸(例えば、パルミチン酸など)を用いてフィック型の心房性/心室性測定を行った場合に得られる結果と類似している。
【0111】
これまでに概説した考えに基づき、血流に関してPET測定を表記することができる演算式を表した。Fは非間接的抽出フラクション、Eは真の抽出フラクション、En、およびKは「前駆体プール」からFAアナログが放出される速度である。速度定数Kは、2つの速度、すなわち、逆拡散速度K2およびFAアナログがCoA型に活性化される速度K3の和である。血中の追跡子を無視すると、演算式は以下のように表される:
C(t)=F*[(E=En)*exp(−K*t)+En)](*)Ca(t)
ここで、C(t)は、時間tにおける組織濃度であり、
Ca(t)は、時間tにおける血漿濃度であり、さらに、
(*)は、数学的たたみこみ操作を表す。
【0112】
本発明のモデルについては、En=E*K3/K2+K3である。この演算式は、簡便に説明される。すなわち、Eは、ひとつの毛細血管を通した輸送によってFAアナログが血液から脱落する確率であり、K3/K2+K3は、組織に入ったFAアナログ分子が代謝的に捕獲される確率である。Eの値が(0.1)の範囲にあるとき以外は、演算式の誘導に際してEの値を制限するような仮定は行わない。この演算式は、ソコロフのそれと形式上類似している。
【0113】
定常状態は、FAアナログの消費に関して確立されるという仮定の下では、血漿FA含量はFAアナログの濃度であり、アナログの代謝速度はF*En[FAアナログ]で表される。故に、F*Enは、定常状態におけるFAアナログのユニット量に対するアナログの利用速度と解釈することができる。
【0114】
本方法の演算式を分析することにより、t(またはプラトー濃度)は、血漿濃度曲線のF*En*∫によって与えられることが示された。従って、プラトー時の組織濃度は、アナログの代謝に直接比例している。
【0115】
本発明およびその多数の長所は、以下の実施例を介してよりよく理解されるはずであり、これらの実施例は、本発明をさらに説明し、具体例として挙げたものである。以下の実施例は、如何なる意味においても本発明の範囲を限定するためのものではない。本発明の開示については、請求の範囲の範ちゅうに多数の実施態様が含まれることは、当業者であれば自明である。
【実施例】
【0116】
実施例1:18F−標識3,4−シクロプロピルヘプタデカン酸([18F]−FCPHA)の合成
[18F]−FCPHAの合成は、以下の方法に従って行った。室温(25℃、RT)下、200mlの塩化メチレンに6−ベンジルオキシ−1−ヘキサノール(20g、96mmol)を溶解した溶液に、PCC(クロロクロム酸ピリジニウム;24.8g、115.2mmol)をゆっくりと少量ずつ加えた。黒色混合物を2時間撹拌し、50gのシリカゲルに通した。溶媒を除去し、粗油状物質は、ヘキサン:酢酸エチル=90:10を溶媒として使用したシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離した。この操作により、アルデヒド等価体6−ベンジルオキシ−1−ヘキサナール14g(収率70%)が得られた。
【0117】
窒素雰囲気下、穏やかな還流を維持できる速度で、マグネシウム片(2.8g、116mmol)を入れた10mlのエーテル中に、オクチルブロミド(12g、115mmol)の無水エーテル(60ml)溶液を添加した。添加後、反応混合物を1時間撹拌し、次に、室温下、6−ベンジルオキシヘキサナール(12g、58mmol)のエーテル(20ml)溶液を反応混合物に滴下した。混合物を4時間撹拌し、氷水に注いだ。10%の塩酸(HCl)を用いて溶液を酸性にし、エーテルで抽出した。合わせた抽出液をブラインで洗浄し、乾燥後、溶媒を除去した。粗油状物質は、ヘキサン:酢酸エチル=80:20を溶媒として使用したシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけ、アルコール化合物16.5g(収率89%)を得た。1H−NMRによって検出した化合物の化学シフトは次の通りである:1H−NMR(CDCl3)δ0.89(t,3H,CH3)、1.2-1.7(m,22H,CH2)、3.45(m,2H,CH2O)、3.55(m,1H,CH-O)、4.55(s,2H,CH2-O)、7.35(m,5H,ベンジル)。
【0118】
得られた化合物1−ベンジルオキシ−6−テトラデカノール(16g)は、100mlのメタノール中、活性炭素(デガッサ(Degussa)AG;ドイツ、フランクフルト)上で100mgの10%パラジウムを使用し、一晩かけて水素を付加することにより、1,6−テトラデカンジオール(11.1g、4.85mmol)を得た。このジオール化合物をメチレン:ピリジン=9:1溶液(100ml)に加え、トリチルクロリド(13.5g、4.85mmol)で処理した。混合物を4時間撹拌し、次に、10%の氷冷塩酸を用いて水層が酸性になるまで洗浄した。この操作の後、ブラインを用いて水層が中性になるまで洗浄した。溶媒を除去し、ヘキサン:酢酸エチル(80:20)を溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことにより、20.1g(収率87%)のトリチルアルコール化合物を得た。1H−NMRによって検出した化合物の化学シフトは次の通りである:1H−NMR(CDCl3)δ0.89(t,3H,CH3)、1.2-1.7(m,22H,CH2)、3.05(m,2H,CH2O)、3.55(m,1H,CH-O)、3.55(s,1H,CH-O)、7.2-7.5(m,15H,ベンジル)。
【0119】
得られた化合物1−トリチル−6−テトラデカノール(20g、42.3mmol)は、室温に設定した水浴中、60%の水素化ナトリウム(2g、50mmol)および臭化ベンジル(7.2g、42.3mmol)を加えた乾燥ジメチルホルムアミド(DMF;100ml)溶液とゆっくり混合した。混合物を室温で4時間撹拌した後、氷水に注ぎ、エーテルで抽出した。油状物質は、ヘキサン:酢酸エチル(90:10)を溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことにより、19g(34mmol:収率80%)のジエーテル化合物6−ベンジルオキシ−1−トリチル−テトラデカンジエーテルが得られた。室温下、メタノール(100ml)中でこのジエーテル化合物を100mgのp−トルエンスルホン酸と4時間混合した。重炭酸ナトリウム(100mg)を加え、回転式減圧蒸留装置を用いて溶媒を除去した。油状物質は、ヘキサン:酢酸エチル(80:20)を溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことによって分離し、7.5g(収率90%)のアルコール化合物を得た。得られた化合物6−ベンジルオキシ−1−テトラデカノールの化学シフトは次の通りである:1H−NMR(CDCl3)δ0.89(t,3H,CH3)、1.2-1.7(m,22H,CH2)、3.38(m,2H,CH2O)、3.55(m,1H,CH-O)、4.7(s,2H,CH2-O)、7.35(m,5H,ベンジル)。
【0120】
室温下、6−ベンジルオキシ−1−テトラデカノール(7.5g、30mmol)の塩化メチレン(100ml)溶液にPCC(9.7g、45mmol)を少量ずつ加えた。黒色混合物を2時間撹拌し、ヘキサン:酢酸エチル(90:10)を溶媒としてシリカゲル層に通した。対応するアルデヒド化合物6−ベンジルオキシ−テトラデカナールが6.1g(収率81%)の収量で生成した。室温下、100mlの塩化メチレン中で、このアルデヒド化合物をカルベトキシメチレントリフェニルホスホラン(10g、29mmol)と混合した。混合物を一晩撹拌し、その後溶媒を除去してヘキサンに置き換えた。ろ過により、固体沈殿物を除去した。次に、ヘキサン:酢酸エチル(90:10)を溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことにより、対応するエステル化合物を8.4g(収率90%)得た。エステル化合物8−ベンジルオキシヘキサデク−2−エノラートエチルエステルの化学シフトは次の通りである:1H−NMR(CDCl3)δ0.89(m,6H,CH3)、1.2-1.5(m,20H,CH2)、2.2(m,2H,CH2-C=)、3.35(m,2H,CH2O)、4.2(q,2H,MeCH2-O)、4.55(dd,2H,CH2-O)、5.8(d,1H,CH=C)、6.95(d,t,1H,CH=C)、7.35(m,5H,ベンジル)。
【0121】
−78℃において、8−ベンジルオキシヘキサデク−2−エノラートエチルエステル(8.4g、22mmol)の塩化メチレン(40ml)溶液にDIBAL(ジイソブチルアルミニウムヒドリド;8ml,44mmol)のヘキサン(40ml)溶液を滴下した。混合物を放置して温度を0℃にし、5mlの酢酸エチルを滴下した後、氷を加えた。得られたスラリーは、10%HClを用いて酸性にした後、エーテル抽出を行った。合わせたエーテル抽出物をブラインで洗浄し、乾燥後、溶媒を除去した。ヘキサン:酢酸エチル(80:20)を溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行い、粗油状物質を分離し、不飽和一級アルコール化合物6.7g(収率90%)を得た。
【0122】
シクロプロピル部位の付加は、基本的に、チャレット(Charette)および共同研究者らによって記載されている方法(チャレット(Charette)ら、J.Org.Chem. 1995(60) :1081)に従って行った。40mlの乾燥塩化メチレンを入れた100mlの丸底フラスコを−25℃に冷却し、窒素雰囲気下においた。このフラスコに、3.8mlのジエチル亜鉛、続いて3.9mlの1,2−ジメトキシエタン(DME)を入れた。この溶液にジヨードメタン(6ml)を滴下したが、このとき、反応温度を−25℃〜−10℃に保った。次に、この溶液は、両端針を用い、−40℃〜−30℃において窒素雰囲気下、8−ベンジルオキシヘキサデク−2−エノール(2g、5.8mmol)、ジオキサボロラン((+)−N,N,N’,N’−テトラメチル−L−酒石酸アミドとブチルボロン酸とから合成)および300mgの4Åモレキュラーシーブを含む塩化メチレン(40ml)溶液に加えた。反応混合物は−25℃で2時間撹拌し、その後、放置して0℃にした。該混合物に80mlの飽和塩化アンモニウム溶液を加え、室温で16時間撹拌した。固体をろ去し、層分離を行った。水層は塩化メチレンで抽出し、有機層を集め、水で洗浄し、乾燥させた。粗油状物質は、ヘキサン:酢酸エチル(90:10)を溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけて分離し、シクロプロピルアルコール化合物1.9g(収率90%)を得た。この操作を2回繰り返した。得られた8−ベンジルオキシ−2,3−シクロプロピルヘキサデカノールの化学シフトは次の通りである:1H−NMR(CDCl3)δ0.3(m,2H,環上のCH2)、0.5(m,1H,CH)、0.75(m,1H,CH)、0.89(t,3H,CH3)、1.2-1.6(m,22H,CH2)、3.35(m,1H,CHO)、3.45(m,2H,CH2-O)、4.55(s,2H,CH2-O)、7.35(m,5H,ベンジル)。本反応におけるジオキサボロランの付加においては、S,S異性体が主に生成する。ジオキサボロランを使用せずに反応を行った場合には、ラセミ(R,R;S,S)混合物が得られる。
【0123】
8−ベンジルオキシ−2,3−シクロプロピルヘキサデカノール(5.7g、15.8mmol)およびトリフェニルホスフィン(6.2g、23.7mmol)を含むジメチルホルムアミド(100ml)の溶液にヨウ素(6g、24mmol)を少量ずつ加えた。暗赤色混合物に100mlの10%チオ硫酸ナトリウムを加えてエーテルで抽出した。合わせた抽出物を水、ブラインで洗浄し、続いて溶媒を除去した。ヘキサン:酢酸エチル(95:5)を溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことにより、アルキルヨウ化物4.5g(収率60%)を得た。このアルキルヨウ化物8−ベンジルオキシ−1−ヨード−2,3−シクロプロピルヘキサデカン(4.5g、9.6mmol)およびシアン化ナトリウム(0.95g、19.2mmol)を含むジメチルホルムアミド(DMSO)(60ml)の溶液を80℃で2時間加熱した。混合物を100mlの水に注ぎ、エーテルで抽出した。合わせた抽出液を水で洗浄し、乾燥後溶媒を除去した。粗油状物質は、ヘキサン:酢酸エチル(80:20)を溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけて分離し、対応するニトリル化合物3.0g(収率87%)を得た。1H−NMRによる化学分析は次の通りである:1H−NMR(CDCl3)δ0.3(m,2H,環上のCH2)、2.4(m,2H,CH2-CN)、3.35(m,1H,CHO)、4.55(s,2H,CH2-O)、7.35(m,5H,ベンジル)。
【0124】
上述のニトロ化合物9−ベンジルオキシ−2,3−シクロプロピルヘキサデカンニトリル(3.0g、8.1mmol)、600mgの水酸化カリウム(KOH)および3滴の水を含むエチレングリコール(40ml)の溶液を170℃で6時間加熱した。一旦冷却し、80mlの10%HClを加えて混合物を希釈した後、エーテルで抽出した。合わせた抽出物を乾燥し、溶媒を除去した。粗カルボン酸をジアゾメタン(エーテル中でN−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジンと40%のKOHとから生成)で処理した。反応混合物を1時間撹拌した後、溶媒を除去した。粗油状物質は、ヘキサン:酢酸エチル(80:20)を溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけ、対応するエステル化合物9−ベンジルオキシ−3,4−シクロプロピルヘプタデカノエートメチルエステル1.9g(4.7mmol、収率60%)を得た。このエステルは、50mlのメタノール中、活性炭上で25mgの10%パラジウムを用いて一晩かけて水素付加を行った。水素付加により、ヒドロキシエステル化合物1.3g(収率81%)が得られた。得られた化学分析結果は次の通りである:1H−NMR(CDCl3)δ0.30(d,d,2H,環上のCH2)、0.53(m,1H,CH)、0.75(m,1H,CH)、0.89(t,3H,CH3)、1.2-1.6(m,22H,CH2)、2.23(m,2H,CH2-CO)、3.58(m,1H,CHO)、3.69(s,3H,CH3)。
【0125】
塩化メチレン:ピリジン(90:10)溶液(20ml)に、ヒドロキシエステル化合物9−ヒドロキシ−3,4−シクロプロピルヘプタデカノエートメチルエステル(0.5g、1.6mmol)、メタンスルホニルクロリド(0.2g、1.76mmol)および10mgのDMAP(4−ジメチルアミノピリジン)を加えて2時間撹拌した。混合物は、10%のHClを用いて水層が酸性になるまで洗浄し、さらに10%のNaHCO3で洗浄した。粗油状物質は、塩化メチレン:メタノール(95:5)を溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離し、メシラートエステル化合物9−ヒドロキシ−3,4−シクロプロピルヘプタデカノエートメチルエステル0.5g(収率83%)を得た。
【0126】
10mgのKryptofix-222(4,7,13,16,21,24−ヘキサオクサ−1,10−ジアザビシクロ[8,8,8]ヘキサコサン;メルク(Merck)社(ニュージャージー州ホワイトハウスステーション))および4mgのK2CO3を入れたバイアルに、放射性標識18F水溶液(60mCi、1ml)を加えた。115℃で窒素ガスを流して水を除去し、アセトニトリル(2ml)を3回添加した。メシラートエステル化合物9−ヒドロキシ−3,4−シクロプロピルヘプタデカノエートメチルエステル(10mg)のアセトニトリル(1ml)溶液は、放射性標識混合物と混合し、120℃で10分間加熱した。ヘキサン:酢酸エチル(85:15)を溶媒とするシリカSep-Pak(ウォーターズ(Waters Corporation)社(マサチューセッツ州ミルフォード))精製により、18F−標識エステルが80%の収率で得られた。標識エステルをバイアルに入れ、溶媒を除去した。1Mの水酸化リチウム(LiOH)0.1mlおよびメタノール0.3mlを加えた。反応バイアルを60℃で20分間加熱した。60℃で窒素ガスを流してメタノールを除去した。10mlの10%HClを加えて溶液を酸性にし、この混合物をエーテルで2回抽出した。合わせたエーテル抽出物をシリカSep-Pakクロマトグラフィーカートリッジに通し、溶媒を除去することにより、13mCiの最終生成物9−[18F]−フルオロ−3,4−シクロプロピルヘキサデカン酸が得られた。放射薄層クロマトグラフィー(TLC)により、放射化学的純度は94%であることが示され(シリカゲルプレート、酢酸エチル/ヘキサン=25:75、Rf=0.40)、残りの活性は非加水分解エステル(シリカゲルプレート、酢酸エチル/ヘキサン=15:85、Rf=0.80)に由来するものであった。上述した有機合成の経路は図1に示している。標識脂肪酸は、ラットでの実験用には、生理食塩水中に10%のエタノールを加えて調製し、サルでの実験用には、生理食塩水中に4%のBSAを加えて調製した(0.22μmのMilliporeフィルターを用いてろ過することによって滅菌した)。
【0127】
実施例2:18F−標識3,4−シクロプロピルヘプタデカン酸([18F]−FCPHA)の生体分布
心筋における[18F]−FCPHAの初期挙動は、正常FA類のそれと基本的には類似しており、その証拠として、このアナログは正常FA類と同じ代謝プールに集まり、ラットの心臓においては、ミトコンドリアを含む同様な細胞レベル下分布を示した。体重約300〜350gの雄のSprague-Dawleyラットに、麻酔なしで40μCiの[18F]−FCPHA(総容量200μl)を注射した。放射性標識したFAは、ラットの尾静脈から注入し、続いて、注射5分後および60分後に殺した。臓器を切り出し、ガンマカウンターで計測した。多様な臓器におけるFAの蓄積を%DPG(体重1gあたりの投与量)で表示したものを表1にまとめた。
【表1】
【0128】
フッ化FAの骨への蓄積は、化合物の脱フッ素化およびその後の蓄積と釣り合っていた。画像解析を行うことを目的として、注射5分後および60分後における以下の比率を求めた。
【表2】
【0129】
表3は、β−メチルアナログである[18F]−FBMHAをラットに静注してから5分後および60分後の生体分布を示す(各時間につき5匹を使用)。静注5分後の心臓への放射活性の蓄積は、体重1gあたり投与量の2.65%(2.65%DPG)であり、これは、腎臓における放射活性とほぼ等しかった。5分後の血中での活性は1.02%DPGであり、60分後にも比較的多く(0.58%DPG)残留していた。放射活性の大部分は肝臓に蓄積した。5分後における心臓の血液に対する比率は2.6であったが、この値は60後においてもあまり変わらなかった。5分後の骨への蓄積は0.52%DPGであったが、60分後には2.36%DPGに上昇していたことから、多量の脱フッ素化が示唆された。ラットにおける[18F]−FBMHAの生体分布については、4%のTween-80/生理食塩水溶液を用いて繰り返し実験を行い、同様の結果を得た。
【表3】
【0130】
表4は、放射標識した[18F]−FCPHAを投与してから60分後における心臓の血液に対する比を、他のβ−メチルアナログ類である[18F]−FBMHA、[11C]−BMHAおよび[125I]−BMIPPのそれらと比較したものである。
【表4】
【0131】
実施例3:11C−または14C−標識3−メチル−ヘプタデカン酸のR,RおよびS,Sジアステレオ異性体の生体分布とラセミ混合物のそれとの比較
以下のデータは、1−[11C]−3(S)−メチルヘプタデカン酸(S異性体)および1−[11C]−3(R)−メチルヘプタデカン酸(R異性体)の生体分布を比較したものである。また、14Cで標識したラセミ混合物である1−[14C]−3(R,S)−メチルヘプタデカン酸との比較も行った。5分後および30分後に測定した%DPE(体重1gあたりの投与量)から、S異性体は心臓への取込みが多く、心臓の血液に対する比も高いことが示され、心臓の画像化剤としては、R異性体またはラセミ混合物よりもS異性体の方が好ましいことが示唆された。生体分布実験は、各化合物および各時間につき6匹のラットを使用して行った。5分後の分布データは表5に示しており、30分後のデータは表6に示している。予期していなかったこれらの結果から、β−酸化中のエノイル−CoA加水分解酵素は立体選択的であり、S異性体のみを認識することが示唆された。さらに、MFAが心臓組織を標的にするためには、立体異性体純度が重要である。
【表5】
【表6】
【0132】
実施例4:[18F]−標識3,4−シクロプロピルヘプタデカン酸([18F]−FCPHA)を用いたサルの画像化実験
[18F]−FCPHAを注射後のブタおよびサルの心臓画像においては、血流に対して活性の初期スパイク波形が観察され、10分後にはプラトーに達した(図3)。図4は、ブタに[13N]−アンモニア(18mCi)を投与してから2〜8分後の心臓の画像であり、図5は、同じ個体に[18F]−FCPHA(19mCi)を静注してから2〜8分後の心臓の画像である。図6は、ブタにおける投与2〜8分後の[13N]−アンモニア画像(右)と[18F]−FCPHA画像(左)とを比較している。ブタの画像では、[13N]−アンモニアを用いて得られた画像よりも[18F]−FCPHAを用いていられた画像の方が心筋の輪郭がよりはっきりしていた。[18F]−FCPHAの投与60分後の画像は、心筋に活性が強く保持されていることを示していた。
[18F]−FCPHAの分布については、サルでも実験を行った。5mCiの[18F]−FCPHAを静注してから60分後に陽電子放射断層撮影法(PET)によって放射標識FAアナログを可視化したところ、左心室および右心室において該アナログが心筋に捕獲されていることが明瞭に示された(図7)。図8は、[18F]−FCPHA投与60分後におけるサルの心臓の横断面切片を示す。ブタおよびサルの両方において、血中の活性は迅速なクリアランスを示した。
【0133】
実施例5:末端を標識した[18F]−フルオロフェニル−3,4−シクロプロピルヘプタデカン酸の合成
実施例1に記載したプロトコールに基づき、別異の出発材料(10−フェニル−1−デカノールなど)を用いて上記分子の合成を行うことができる。出発材料である10−フェニル−1−デカノールは、トリフェニルホスフィンと反応させ、ベンゼンに溶解した。この混合物に四臭化炭素のベンゼン溶液をゆっくりと加え、反応混合物を90分間還流させた。次に、反応混合物を冷却、ろ過し、残渣を石油エーテルで3回洗浄した。残渣を乾燥するまで減圧蒸留した後、石油エーテルを加えて撹拌し、冷凍庫内に一晩放置した。取り出した溶液をろ過し、得られた残渣を石油エーテルで2回洗浄し、合わせた溶液は、乾燥するまで減圧蒸留した。それにより、出発材料のアルキルブロミド誘導体が得られたと考えられ、このとき、臭素原子は一級アルコール部位に置換している。
【0134】
ブロム化化合物は、次のようにグリニャール合成に用いた。マグネシウムを入れた乾留エーテル中に、エーテルに溶解したブロム化化合物を注入した。アルゴンまたは窒素雰囲気下、還流を90分間継続した。反応混合物を室温まで冷却した後、7CO2トラップに注入し、溶液を5分間振とうした。この溶液を分液ろうとに移し、エーテルで2回洗浄し、1NのHClを加えた。溶液を水で2回洗浄し、Na2SO4を用いて乾燥後、溶媒を減圧蒸留した。得られた化合物は17−フェニル−1−ヘプタデカノールと考えられる。2回目のPCC酸化の後、実施例1の記載に従い、次の段階を行う。この合成により、末端にフェニル基および3,4−炭素位にシクロプロピル基を有するアナログが得られた(図9を参照)。
【0135】
その他の方法、例えば、シーマン反応などにより、末端フェニル部位に18Fまたは123I放射性標識を付することができる。18F標識化においては、硝酸(HNO3)および硫酸(H2SO4)中でベンゼン部位をニトロ化し、続いて、SnおよびHClを用いて還元する。これにより、アミノ基でラベルされたフェニル部位(アニリン)が得られた。NaNO2およびHClと共にインキュベートすることにより、アミノ基がジアゾニウムイオンに転換する。次に、[18F]−HBF4を用いてこのジアゾニウムイオンをフッ素化した。この操作により、フッ素モノ置換フェニル基が得られた。123Iを用いた標識においては、HNO3およびH2SO4中でベンゼン環の置換を行い、アニリン基を得た。NaNO2およびHClで処理後、ヨウ化カリウム(KI)を用いてヨウ素化を行った。ヨウ素化アリール誘導体には、高温、酸性溶媒中で、放射性ヨウ素との交換反応を行うことによって放射性標識を導入した。対応するトリブチルスズ誘導体を調製し、続いて求電子芳香環放射ヨウ素化を行うなどのその他の方法も挙げられる。
【0136】
実施例6:エンド−[18F]フルオロ−および[123I]−ヨード−3,4−シクロプロピルヘプタデカン酸誘導体の合成
FCPHAのエンド−ビニル放射標識誘導体の合成は、基本的には実施例1の記載に従って行うが、変更点がある。25℃、塩化メチレン中において、6−ベンジルオキシ−1−ヘキサノールの溶液をPCCで処理した。黒色混合物を2時間撹拌し、シリカゲルを用いてろ過した。溶媒を除去し、ヘキサン:酢酸エチル(90:10)を溶媒とするシリカゲルによって粗油状物質を分離した。
【0137】
得られたアルデヒド化合物6−ベンジルオキシ−1−ヘキサナールは、25℃、塩化メチレン中で(カルベトキシメチレン)トリフェニルホスホランと混合した。混合物を一晩撹拌した後、溶媒を除去してヘキサンに置き換えた。固形物をろ去した。ヘキサン:酢酸エチル(90:10)を溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行って対応するエチルエステル化合物を得た。
【0138】
−78℃において、エチルエステル化合物の塩化メチレン溶液中にジイソブチルアルミニウムヒドリドのヘキサン溶液を滴下した。混合物をゆっくり0℃に戻し、酢酸エチルを滴下した後、氷を加えた。得られたスラリーは、10%のHClで酸性にし、エーテルで抽出した。合わせたエーテル抽出物をブラインで洗浄、乾燥し、溶媒を除去した。粗油状物質について、ヘキサン:酢酸エチル(80:20)を溶媒とするクロマトグラフィーを行うことにより、不飽和一級アルコールが得られた。
【0139】
実施例1と同様に、チャレット(Charette)および共同研究者らが記載しているように、不飽和一級アルコールをシクロプロパン化した。乾燥塩化メチレンを−25℃に冷却し、窒素雰囲気下においた。ジエチル亜鉛、続いて1,2−ジメトキシエタン(DME)を加えた。この溶液に示ヨードメタンを滴下したが、この間、反応温度を−25℃〜−10℃に維持した。次に、窒素雰囲気下、−40℃〜−30℃において、両端針を用い、この溶液を、不飽和一級アルコール、ジオキサボロラン((+)−N,N,N',N'-テトラメチル−L−酒石酸アミドとブチルボロン酸とから合成)および4Åのモレキュラーシーブを含む塩化メチレン溶液に加えた。反応混合物は−25℃で2時間撹拌した後、0℃に戻した。この混合物に飽和塩化アンモニウムを加え、室温で16時間撹拌した。固形物をろ去し、層分離を行った。塩化メチレンを用いて水層を抽出し、有機層を集めて水で洗浄し、乾燥させた。粗油状物質は、ヘキサン:酢酸エチル(90:10)を溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離し、シクロプロピルアルコール化合物を得た。この反応を2回繰り返した。
【0140】
ジメチルホルムアミド中にシクロプロピルアルコール化合物とトリフェニルホスフィンとを含む溶液にヨウ素を少量ずつ加えた。暗赤色混合物に10%のチオ硫酸ナトリウムを加え、エーテルで抽出した。合わせた抽出物は水、ブラインで洗浄し、続いて溶媒を除去した。ヘキサン:酢酸エチル(95:5)を溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーによってアルキルヨウ化物を得た。このアルキルヨウ化物は、シアン化ナトリウムのジメチルスルホキシド(DMSO)溶液と混合し、80℃で時間加熱した。混合物を水に注いだ後、エーテル抽出を行った。合わせた抽出物を水で洗浄し、乾燥し、溶媒を除去した。粗油状物質は、ヘキサン:酢酸エチル(80:20)を溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離し、対応するニトリル化合物を得た。
【0141】
得られたニトリル化合物は、エチレングリコール中でKOHおよび水と混合し、170℃で6時間加熱した。一旦冷却し、10%のHClで混合物を希釈し、エーテルで抽出した。合わせた抽出物を乾燥し、溶媒を除去した。粗カルボン酸化合物をジアゾメタン(エーテル中、N−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジンと40%のKOHとから生成)で処理した。反応混合物を1時間撹拌してから溶媒を除去した。粗油状物質は、ヘキサン:酢酸エチル(80:20)を溶媒とするクロマトグラフィーにかけることにより、対応するメチルエステル化合物が得られた。
【0142】
水素化アルミニウムリチウムを用いてメチルエステルに水素を付加することにより、再度一級アルコールが得られた。アルコール保護基であるテトラヒドロフラン(THF)を付加することによって一級アルコールを置換した。次に、メタノール中、活性炭(Degussa)上で10%のパラジウムを用いて一級アルコールに水素付加を行い、続いて、N−ブロモスクシンイミドを用いて処理することにより、アルキル臭化物誘導体が得られたが、このとき、ブロム基はTHP保護基とは反対側の末端に付加していた。ヘキサン中、アルキンの存在下において、アルキル臭化物誘導体をn−ブチルリチウムで処理したが、アルキン基はTHP部位とは反対側に付加していた。対応するシクロプロピルアルキンは、水素化トリブチルスズを用いて水素付加を行い、I2を用いてヨウ素化を行うことにより、エンド−ビニル誘導体が得られた。
【0143】
酸性条件下、TosHおよびCrO3を用いてエンド−ビニル誘導体分子を処理することにより、THP保護基を除去し、続いて酸化を行うことによってカルボン酸を得た。次に、水素化トリブチルスズを用いてカルボン酸化合物をヨウ化物で置換した。放射標識したヨウ化ナトリウム(Na123I)を用いてトリブチルスズ部位を123Iで置換することにより、エンド−[123I]−ヨード−3,4−シクロプロピルヘプタデカン酸が得られた。別の方法としては、トリブチルスズ置換カルボン酸を18F2で処理することにより、エンド[18F]−フルオロ−3,4−シクロプロピルヘプタデカン酸を得た。上述した合成経路の概要は図10に示している。
【0144】
実施例7:エクソ−[18F]フルオロ−および[123I]−ヨード−3,4−シクロプロピルヘプタデカン酸誘導体の合成
3,4−シクロプロピルヘプタデカン酸のエクソ−ビニル化合物の部分合成の概要は図12に示している。3,4−シクロプロピルヘプタデカン酸の放射標識エクソ−ビニル誘導体の合成は、9−ヒドロキシ−3,4−シクロプロピルヘプタデカノエートメチルエステルの合成までは、基本的には実施例1の記載に従って行うことができた。25℃において、塩化メチレン中、二クロム酸ピリジニウム(PDC)を用いてこのメチルエステル化合物を酸化し、対応するケトン化合物を得た。このケトン化合物について、使用する放射標識ハロゲンに適した2つの別異の経路で反応を行った。
【0145】
ビニルのヨウ素化:反応経路1
以下の反応は、ホーナー−ウィッティング(Horner-Witting)反応に基づき、ストーク(Stork)およびザオ(Zhao)の記載(Tetrahedron Lett.(1989)30:2173-2174)ならびにマッカーシー(McCarthy)らの記載(J.Am.Chem.Soc.(1991)113:7439-7440)に従って変形することによって行った(図12を参照)。ヘキサメチルジシラザンナトリウムのテトラヒドロフラン(THF)溶液(1M)に、トリフェニルホスフィンとヨウ化イリドからなるヨードメチル−トリフェニルホスホニウムヨウ化物をゆっくり加えた。1分間撹拌した後、溶液を−60℃に冷却し、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)を加えて−78℃に冷却した。上述したケトン化合物を加え、冷却槽から取り出して30分間撹拌した。この混合物にヘキサンを加え、カラムクロマトグラフィーおよびNMR分析を行った。これにより、カルボニル基がヨウ素化ビニル基で置換された。続いて、活性炭上、水素化トリブチルスズおよびパラジウムで処理することにより、ヨウ化ビニルがトリブチルスズで置換され、一級エステル基がカルボン酸に転換した。放射化ヨウ化ナトリウム(Na123I)を用いて処理することにより、エクソ−[123I]−ヨード−3,4−シクロプロピルヘプタデカン酸が得られた。
【0146】
ビニルのヨウ素化:反応経路2
同様に、放射性標識ヨウ素の付加を直接的に行うことにより、中間でのビニルトリブチルスズ前駆体分子の生成を避けることができる(図12)。カルボニル基をヨウ化ビニル基で置換した後、銅およびNa123Iと直接反応させることにより、エクソ−[123I]−ヨード−3,4−シクロプロピルヘプタデカン酸が得られた。
【0147】
ビニルのフッ素化:反応経路1
ビニルのヨウ素化の反応経路1に記載しているビニルトリブチルスズ脂肪酸誘導体を用い、ビニルトリブチルスズ部位を18F2で置換することにより、変形脂肪酸を直接フッ素化した(図12)。この反応により、エクソ−[18F]−フルオロ−3,4−シクロプロピルヘプタデカン酸が得られた。
【0148】
ビニルのフッ素化:反応経路2
3,4−シクロプロピルヘプタデカン酸のビニルフッ素化誘導体の別の合成方法は、上述のケトン化合物から行うことができる(図12)。この方法は、バートン(Burton)およびグリーンリム(Greenlimb)の記載(J.Org.Chem.(1975)40:2796-2801)ならびに、シュロッサー(Schlosser)およびツィマーマン(Zimmermann)の記載(Synthesis (1969)1:75-76)による機構を変形したものである。水冷還流冷却器を取り付けた丸底フラスコ内でヨウ化フルオロメチルトリフェニルホスホニウムを合成した。乾燥ベンゼンを入れたフラスコにトリフェニルホスフィンおよびフルオロヨードメタンを加えた。得られた溶液を穏やかに撹拌しながら64時間還流させた。反応終了後、ガラスろうとを用いて白色不溶性のホスホニウム塩を集め、熱ベンゼンで洗浄し、減圧乾燥機内で12時間乾燥させた。
【0149】
別のフラスコに、窒素ガス注入口を固定した定圧添加ろうと(constant-pressure addition funnel)、および、鉱油バブラーを連結したT字管を上部に取り付けた水冷還流冷却器を取り付けた。装置に窒素ガスを流し、火炎乾燥し、窒素ガスによる脱気を続けながら室温まで放置冷却した。フラスコにヨウ化フルオロメチルトリフェニルホスホニウム、乾燥THFおよびトルエンを入れた。装置内の窒素雰囲気は維持した。ドライアイス−イソプロパノールの泥状槽内で冷却しながらホスホニウム塩と溶媒のスラリーを穏やかに撹拌した。冷却中に添加ろうとにn−ブチルリチウムのヘキサン溶液を入れた。栓をはずしている時には添加ろうとに窒素を常に通し、また、乾燥窒素雰囲気下でピペットを用いて塩基を移すことにより、有機リチウム試薬の加水分解量を抑制した。塩基は23分間かけて滴下した。添加後、反応混合物は−78℃で25分間撹拌した。25分経過後、反応混合物を窒素雰囲気下から解除し、臭化エチレンを加えたところ、発熱した。−78℃でさらに25分間反応を進行させた。
【0150】
次に、メチルエステル化合物9−ヒドロキシ−3,4−シクロプロピルヘプタデカノエートをPDC酸化することによって得られた、対応するケトン化合物を加えた。イリドとケトン化合物との反応は、−78℃で2時間行い、放置して室温に戻し、さらに1.5時間インキュベートした。反応混合物を氷上で冷却した。カリウムtert−ブトキシドを加え、混合物を0℃で2時間撹拌した。反応混合物を遠心分離して上清を傾捨し、少量のTHFで沈殿を洗浄した。傾捨物を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液を用いて水層のpHが中性になるまで洗浄した。溶媒を除去し、乾燥し、ろ過した有機性材料を減圧下で短時間蒸留した後、クロマトグラフィーおよびNMR分析を行った。18F−置換エステル化合物を塩基加水分解することにより、対応するカルボン酸に転換した。この操作により、エクソ−[18F]−フルオロ−3,4−シクロプロピルヘプタデカン酸が得られた。
【0151】
実施例8:4または5員環置換基を有するヘプタデカン酸誘導体の合成
ヘプタデカン酸の誘導体類についても合成を行ったが、このとき、シクロプロピル置換基をシクロブチル部位またはシクロペンチル部位に置換した。実施例1、4、5および6に記載している変形脂肪酸の誘導体を含むこれらの化合物の合成について、以下に説明する。
【0152】
シクロプロピル部位を有するMFA類の合成については、上記の実施例中に記載している。しかしながら、上述したMFA類のうちの大多数に対する出発材料として使用した6−ベンジルオキシ−1−ヘキサノールの代わりに、環式一級アルコール(シクロブタノールまたはシクロペンタノール)をTHP(テトラヒドロフラン)などのような保護基で置換することができる。次に、I2の存在下、モノ保護環式アルコールにトリフェニルホスフィンを反応させることにより、一方の末端がTHFで保護されたアルキルヨウ化物誘導体が得られた。炭素鎖の長さが多様なベンジルオキシアルキンの付加反応は、n−ブチルリチウムを添加することによって行った。活性炭上、10%のパラジウムを用いて行った水素付加反応により、一方の末端がTHPで保護されたシクロブチル−もしくはシクロペンチル−1−ノナノール、またはヘプタノールが得られた。環式モノ保護一級アルコールの炭素鎖の長さは、使用したベンジルオキシアルキンの長さによって決まる。これらの環式モノ保護アルコール類を以下に記載しているような反応に用いる。図14は、これらの環式モノ保護アルコール類の部分合成の図を示している。
【0153】
[18F]−9−フルオロ−3,4−シクロブチル−または[18F]−9−フルオロ−3,4−シクロペンチル−ヘプタデカン酸
環式モノ保護ノナノールをPCC酸化することにより、対応するアルデヒド化合物を得た。窒素雰囲気下、マグネシウム片を入れたエーテル中に、穏やかな還流を維持する程度の速度で、臭化オクチルの乾燥エーテル溶液を加えた。添加完了後、反応混合物を1時間撹拌し、室温下、この反応混合物に環式モノ保護ノナノールのエーテル溶液を滴下した。混合物を4時間撹拌した後、氷水中に注ぎ、10%のHClで酸性にし、エーテルで抽出した。合わせた抽出液をブラインで洗浄し、乾燥して溶媒を除去した。ヘキサン:酢酸エチル(80:20)を溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、環式モノ保護ヘプタデカノールが得られた。
【0154】
次に、TosHおよびCrO3を用いて環式モノ保護ヘプタデカノールを処理することにより、脱保護化した。この操作により、対応する環式カルボン酸化合物が生成した。環式カルボン酸化合物は、塩化メチレン/ピリジン(90:10)中でメタンスルホニルクロリドおよび4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)と混合した。混合物を2時間撹拌し、次に、水層が酸性になるまで10%のHClで洗浄し、その後、10%のNaHCO3で洗浄した。粗油状物質は、塩化メチレン:メタノール(95:5)を溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけた。
【0155】
Kryptofix-222およびK2CO3を入れたバイアルに18Fの水溶液を加えた。115℃において窒素ガスを流しながら水を除去した後、アセトニトリルを加えた。このバイアルに、メシルカルボン酸化合物のアセトニトリル溶液を加えた。反応混合物を120℃で10分間加熱することによって、9位の炭素が[18F]で標識されたヘプタデカン酸のシクロブチルまたはシクロペンチル誘導体が得られ、これらをヘキサン:酢酸エチル(85:15)を溶媒としてシリカSep-Pakで精製した。
【0156】
末端を標識した[18F]−9−フルオロフェニル−3,4−シクロブチル−またはシクロペンチル−ヘプタデカン酸
実施例4に記載したプロトコールに基づき、別異の出発材料(10−フェニル−1−デカノールなど)を用いて上記分子の合成を行うことができた。出発材料10−フェニル−1−デカノールをトリフェニルホスフィンと反応させ、ベンゼンに溶解した。この溶液に四臭化炭素のベンゼン溶液をゆっくり加え、90分間還流させた。反応混合物を冷却、ろ過し、残渣は石油エーテルを用いて3回洗浄した。残渣は、乾燥するまで減圧蒸留した後、石油エーテルを加えて撹拌し、冷凍庫内に一晩放置した。次に、溶液をろ過し、得られた残渣を石油エーテルで2回洗浄し、合わせた溶液を乾燥するまで減圧蒸留した。この操作により、出発材料の臭化アルキル誘導体が得られ、このとき、臭素原子は一級アルコール部位に置換している。
【0157】
臭化化合物は、以下のようにグリニャール反応に供した。マグネシウム片を入れた還流エーテル中に臭化化合物のエーテル溶液を注入した。アルゴンまたは窒素雰囲気下で還流を90分間続けた。次に、反応混合物を室温まで冷却した後、シクロブチル−またはシクロペンチルモノ保護1−ヘプタノールを入れたトラップに注入し、溶液を5分間振とうした。この溶液を分液ろうとに移し、エーテルで2回洗浄し、1NのHClと合わせた。溶液を水で2回洗浄し、Na2SO4を用いて乾燥させ、溶媒を留去した。得られたヘプタデカノール化合物は、一方の末端に末端フェニル基を有しており、シクロブチルまたはシクロペンチル置換基を有し、さらにTHP保護基を有していた。
【0158】
環式モノ保護ヘプタデカノールは、TosHおよびCrO3で処理することにより、脱保護した。この操作により、対応する環式カルボン酸化合物が形成された。環式カルボン酸化合物は、塩化メチレン/ピリジン(90:10)中でメタンスルホニルクロリドおよび4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)と混合した。混合物を2時間撹拌した後、10%のHClを用いて水層が酸性になるまで洗浄し、さらに10%のNaHCO3で洗浄した。粗油状物質は、塩化メチレン:メタノール(95:5)を溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけた。
【0159】
18Fまたは123I放射性標識は、シーマン反応などのその他の方法によって末端フェニル部位に導入することができる。18F標識化においては、硝酸(HNO3)および硫酸(H2SO4)中でベンゼン部位をニトロ化し、続いてSnおよびHClで還元した。この操作により、アミノ基を有するフェニル部位(アニリン)が得られた。この化合物をNaNO2およびHClと共にインキュベートすることにより、アミノ基がジアゾニウムイオンに転換した。次に、[18F]−HBF4を用いてジアゾニウム塩をフッ素化した。この操作により、フッ素モノ置換フェニル基が得られた。123I標識化においては、HNO3およびH2SO4中でベンゼン部位をニトロ化し、アニリン基を得た。NaNO2およびHCl、続いてヨウ化カリウム(KI)を用いてヨウ素化を行った。ヨウ素化アリール誘導体は、高温、酸性溶媒中で放射性ヨウ素と交換反応を行うことにより放射性標識化した。その他の方法としては、対応するトリブチルスズ誘導体を調製し、求電子芳香環放射性ヨウ素化を行う方法などが挙げられる。
【0160】
シクロブチル−またはシクロペンチル−置換ヘプタデカン酸のエンド−ビニル誘導体の合成
実施例5に記載しているエンド−ビニル変形脂肪酸のシクロブチルおよびシクロペンチル誘導体は、基本的には上述に従って合成されるが、出発材料であるシクロブチル−またはシクロペンチル−THPモノ保護ヘプタノールは、N−ブロモスクシンイミドで処理した。この操作によってアルキル臭化物誘導体が得られたが、このとき、臭素基は、THP保護基とは反対側の末端に結合していた。このアルキル臭化物誘導体は、ヘキサン中、アルキンの存在下において、n−ブチルリチウムを用いて処理することにより、THP保護基とは反対側の末端にアルキン基が付加した。対応するシクロプロピルアルキン化合物は、水素化トリブチルスズで水素化し、I2を用いてヨウ素化することにより、エンド−ビニル誘導体を得た。
【0161】
エンド−ビニル誘導体は、酸性条件下、TosHおよびCrO3 を用いて処理することにより、THP保護基が脱離し、続いて酸化することによってカルボン酸化合物になった。対応するカルボン酸化合物は、水素化トリブチルスズを用いてヨウ素置換反応に供した。放射性標識ヨウ化ナトリウム(Na123I)は、トリブチルスズ部位の123Iとの置換を行い、エンド−[123I]−ヨード−3,4−シクロブチル−またはシクロペンチル−ヘプタデカン酸が得られた。別の方法としては、トリブチルスズ置換カルボン酸を18F2で処理し、エンド−[18F]−フルオロ−3,4−シクロブチルまたは−シクロペンチル−ヘプタデカン酸が得られた。
【0162】
シクロブチルまたはシクロペンチル−置換ヘプタデカン酸のエクソ−ビニル誘導体の合成
環式モノ保護ノナノールをPCC酸化することにより、対応するアルデヒド化合物を得た。窒素雰囲気下、マグネシウム片を入れたエーテルに、穏やかな還流を維持する程度の速度で、オクチルブロミドの乾燥エーテル溶液を加えた。添加完了後、反応混合物を1時間撹拌し、この混合物に、室温で環式モノ保護ノナノールのエーテル溶液を滴下した。混合物を4時間撹拌した後、氷水に注ぎ、10%のHClを加えて酸性にし、エーテルで抽出した。合わせた抽出物をブラインで洗浄し、乾燥し、溶媒を除去した。ヘキサン:酢酸エチル(80:20)を溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことにより、環式モノ保護ヘプタデカノールが得られた。
【0163】
次に、TosHおよびCrO3 を用いて環式モノ保護ヘプタデカノールを処理することにより、脱保護した。この操作により、対応する環式カルボン酸化合物を得た。実施例6の記載、また、バートン(Burton)およびグリーンリム(Greenlimb)の方法(J.Org.Chem.(1975)40:2796-2801)、ならびにシュロッサー(Schloesser)およびツィマーマン(Zimmermann)の方法(Synthesis(1969)1:75-76)の変法に従い、この環式カルボン酸化合物をビニルフッ素化またはビニルヨウ素化した。
【0164】
上述の発明について、内容を明確にし、理解を促すことを目的として例示を用いて詳説したが、当業者においては、ある程度の変更および変形が可能なことは自明である。故に、本発明の範ちゅうは請求の範囲によって定められ、上述の記載および実施例によって制限されることはない。
【参考文献】
【0165】
【図面の簡単な説明】
【0166】
発明の詳細に関する上述の記載は例示であり、特定の実施態様に対して発明を限定するためのものではなく、以下の図面を参照することによって理解できるであろう。
【図1】[18F]−9−フルオロ−3,4−シクロプロピル−ヘプタデカン酸合成経路の概略図。
【図2】脂肪酸骨格上で放射性標識置換が直接行われている飽和脂肪酸の一般式。脂肪酸の誘導体を示すこの図は、図1の化合物に類似した一般構造を含む。
【図3】サルの心臓内における[18F]−FCPHA活性を時間の関数として図示。
【図4】18mCiの[13N]−アンモニアをブタに静注してから2〜8分後の心臓の画像
【図5】19mCiの[18F]−FCPHAを図4と同一のブタに静注してから2〜8分後の心臓の画像。
【図6】追跡子をブタに静注してから2〜8分後に得られた[13N]−アンモニア画像(右)と[18F]−FCPHA画像(左)との比較。
【図7】陽電子放出断層撮影法によって得た、サルの心臓の左心室および右心室中における[18F]−FCPHAの生体分布を示す画像。
【図8】サルに[18F]−FCPHAを投与してから60分後の心臓の横切断薄片。
【図9】「A」で表される置換基、および置換された放射性標識を有するフェニル部位を含む、末端標識直鎖脂肪酸の一般式。
【図10】エンド−[18F]−フルオロ−または[123I]−ヨード−3,4−シクロプロピルヘプタデカン酸の合成経路の概略図。
【図11】エンド−ビニル基を有する脂肪酸の一般式。このエンド−ビニル基は、置換基XまたはYにおいて置換された放射性標識を有する場合がある。
【図12】エクソ−[18F]−フルオロ−または[123I]−ヨード−3,4−シクロプロピルヘプタデカン酸の合成経路の概略図。
【図13】エクソ−ビニル基を有する脂肪酸の一般式。このエクソ−ビニル基は、置換基XまたはYにおいて置換された放射性標識を有する場合がある。
【図14】4または5員環構造を取り得る置換基を含む変形脂肪酸の一部分の部分合成を示す図。
【図15】4または5員環構造を取り得る置換基を含む変形脂肪酸の一般式。この変形脂肪酸誘導体は、図2、図9、図11および図13に記載している特徴を併せ持つ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類の組織に取り込まれる放射性標識脂肪酸アナログであって、以下の化学式で表され、
R−(CH2)n−Z−(CH2)mCO2H
このとき、nは8〜22であり、mは0〜10であり、RはCH3、アリールまたは複素環式基であり、Zは環式または複素環式有機置換基であって、該組織内に該アナログを代謝的に捕獲させる作用を有していることを特徴とする放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項2】
前記環式有機置換基が環式アルカンであることを特徴とする請求項1記載の放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項3】
前記環式アルカンは、シクロプロピル、シクロブチルまたはシクロペンチルを含む群から選択されることを特徴とする請求項2記載の放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項4】
前記複素環式有機置換基が3〜5個の原子から構成される複素環式構造を有することを特徴とする請求項1記載の放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項5】
哺乳類の組織に取り込まれる放射性標識脂肪酸アナログであって、以下の化学式で表され、
【化1】
このとき、DはCH2またはCH2CH2であり、EはCH2またはCH2CH2であり、mは0〜10であり、nは8〜14であり、RはCH3、アリールまたは複素環式基であって、環式有機置換基−CDCE−が該組織内に該アナログを代謝的に捕獲させる作用を有していることを特徴とする放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項6】
哺乳類の組織に取り込まれる放射性標識脂肪酸アナログであって、以下の化学式で表され、
【化2】
このとき、A=(CH2)x、O、S
x=1,2,3,4
シスおよびトランス;R,RおよびS,S
m=0〜10
n=14〜8
R=18F−フェニルまたは123I−フェニル、であり、
環式または複素環式有機置換基−CH−A−CH−が該組織内に該アナログを代謝的に捕獲させる作用を有することを特徴とする放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項7】
哺乳類の組織に取り込まれる放射性標識脂肪酸アナログであって、以下の化学式で表され、
【化3】
このとき、A=(CH2)y、O、S
y=1,2,3,4
シスおよびトランス;R,RおよびS,S
m=0〜10
n=14〜8
p=0〜6
R=CH3
X=放射性標識、であり、
環式または複素環式有機置換基−CH−A−CH−が該組織内に該アナログを代謝的に捕獲させる作用を有することを特徴とする放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項8】
哺乳類の組織に取り込まれる放射性標識脂肪酸アナログであって、以下の化学式で表され、
【化4】
このとき、X=H、18F、123I、131I、34mCl、75Br、76Br、77Br、ならびにそれらのアルキルおよびへテロアルキル類、
Y=H、18F、123I、131I、34mCl、75Br、76Br、77Br、ならびにそれらのアルキルおよびへテロアルキル類、
A=(CH2)z、OまたはS
z=1〜4
m=0〜10
n=8〜14
p=0〜6
R=CH3 、アリールまたは複素環式有機置換基、であり、
環式または複素環式有機置換基−CH−A−CH−が該組織内に該アナログを代謝的に捕獲させる作用を有することを特徴とする放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項9】
哺乳類の組織に取り込まれる放射性標識脂肪酸アナログであって、以下の化学式で表され、
【化5】
このとき、A=(CH2)y、O、S
y=1〜4
m=0〜10
n=8〜14
p=0〜6
R=CH3 、アリールまたは複素環式有機置換基、
X=18F、123I、131I、34mCl、75Br、76Brまたは77Br、であり、
環式または複素環式有機置換基−CH−A−CH−が該組織内に該アナログを代謝的に捕獲させる作用を有していることを特徴とする放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項10】
前記有機性置換基が、脂肪酸アナログのC2,C3位、C4,C5位;またはC5,C6位に結合していることを特徴とする請求項1、5、6、7、8または9記載の放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項11】
前記アナログにおいて、前記置換基が結合している炭素原子の右側に存在する2個の炭素原子の脱離を防いでいる状況で、カルボキシル炭素原子のβ位に結合している前記置換基の結合炭素原子に対して初回β−酸化段階を進行させることにより、前記有機置換基が該組織内に該アナログを代謝的に捕獲させる作用を有することを特徴とする請求項1、5、6、7、8または9記載の放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項12】
前記組織が心臓組織であることを特徴とする請求項1、5、6、7、8または9記載の放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項13】
前記組織が肝臓組織であることを特徴とする請求項1、5、6、7、8または9記載の放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項14】
前記組織が腫瘍組織であることを特徴とする請求項1、5、6、7、8または9記載の放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項15】
前記アナログが、前記組織に取り込まれた後に検出可能な陽電子を放出することを特徴とする請求項1、5、6、7、8または9記載の放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項16】
前記アナログが、前記組織に取り込まれた後に検出可能な光子を放出することを特徴とする請求項1、5、6、7、8または9記載の放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項17】
前記脂肪酸の炭素鎖が飽和していることを特徴とする請求項1、5、6、7、8または9記載の放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項18】
前記脂肪酸の炭素鎖が不飽和であることを特徴とする請求項1、5、6、7、8または9記載の放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項19】
アリール基が5〜7員環構造であることを特徴とする請求項1、5、8または9記載の放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項20】
複素環式基が3〜5員環構造であることを特徴とする請求項1、5、8または9記載の放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項21】
前記放射性同位元素が18F、123I、131I、34mCl、75Br、76Brまたは77Brであることを特徴とする請求項1、5、6または7記載の放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項22】
前記ハロゲン放射性同位元素が前記アナログの直鎖上の炭素原子に結合していることを特徴とする請求項1、5または6記載の放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項23】
前記有機置換基が前記アナログの代謝的脱水素化を抑制することを特徴とする請求項11記載の放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項24】
患者の体内の血流を測定する方法であって、
a)目的組織内に、請求項1、18、32、44、55または66のいずれか1項記載のFA組成物の検出可能量を局在させ;
b)約1秒〜約10分以内に目的組織内の該組成物から放出されるシグナルを検出し、
c)目的組織の画像化を行い;さらに、
d)目的組織内の血流速度を求める;工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項25】
前記組成物の検出は、投与1〜約5分以内に行うことを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項26】
患者の体内における代謝を測定する方法であって、
a)目的組織内に、請求項1、18、32、44、55または66のいずれか1項記載のFA組成物の検出可能量を局在させ;
b)約10分〜約24時間以内に、目的組織内の該組成物から放出されるシグナルを検出し、
c)目的組織の画像化を行い;さらに、
d)目的組織内の代謝速度を求める
工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
組成物の量は、0.1mCi〜約25mCiであることを特徴とする請求項24または26記載の方法。
【請求項28】
組成物の量は、1mCi〜約5mCiであることを特徴とする請求項24または26記載の方法。
【請求項29】
前記組成物の検出は、30分〜約120分以内に行うことを特徴とする請求項26記載の方法。
【請求項30】
前記組成物を第二の放射活性追跡子と共に投与することを特徴とする請求項24または26記載の方法。
【請求項31】
第二の放射活性追跡子は、13N−アンモニウム、57Co−シアノコバラミン、59Fe−クエン酸第一鉄、18F−フルオロデオキシグルコース、67Ga−クエン酸ガリウム、111In−オキシキノリンインジウム、111In−インジウムペンテテート、111In−インジウムペンテトレオチド、111In−インジウムサチュモマブペンデチド、放射性ヨウ素化ヨーベンガン、123I−ヨウ化馬尿酸ナトリウム、131I−ヨウ化馬尿酸ナトリウム、123I−ヨーフェタミン、125I−ヨータラム酸ナトリウム、81クリプトン、11C−メチオニン、放射性ヨウ素化アルブミン、82ルビジウム、51クロム酸ナトリウム、18フッ化ナトリウム、123ヨウ化ナトリウム、131ヨウ化ナトリウム、99mTc−過テクネチウム酸ナトリウム、99mTc−アルブミン、99mTc−アルブミン(凝集型)、99mTc−アルブミン(コロイド型)、99mTc−アーシツモマブ、99mTc−ビシセート、99mTc−ジソフェニン、99mTc−エグザメタジム、99mTc−グルセプテート、99mTc−リドフェニン、99mTc−メブロフェニン、99mTc−メドロナート、99mTc−マーチアチド、99mTc−ノフェツモマブマーペンタン、99mTc−オキシドロナート、99mTc−ペンテテート、99mTc−ピロホスフェート、99mTc−(ピロ−およびトリメタ−)ホスフェート類、99mTc−セスタミビ、99mTc−スクシマー、99mTc−硫黄(コロイド型)、99mTc−テボロキシム、99mTc−テトロフォスミン、塩化201タリウム、127キセノンおよび133キセノンを含む群から選択されることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項32】
目的組織が心臓組織であることを特徴とする請求項24または26記載の方法。
【請求項33】
心臓組織がに病変があることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項34】
疾患は、急性心筋梗塞、不安定狭心症、慢性虚血性心疾患、冠動脈疾患、心筋炎、心筋症、先天性心疾患、高血圧性心疾患、移植後心疾患、同種移植片血管障害、および心臓弁膜症を含む群から選択されることを特徴とする請求項33記載の方法。
【請求項35】
心臓組織が正常であることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項36】
心臓組織がストレスを受けていることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項37】
ストレスは、運動によって誘導されたものであることを特徴とする請求項36記載の方法。
【請求項38】
ストレスは、薬剤によって誘導されたものであることを特徴とする請求項36記載の方法。
【請求項39】
目的組織は心臓組織ではないことを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項40】
目的組織は、脳、肝臓、骨、脾臓、肺、血液、腎臓、胃腸管、筋肉および副腎組織を含む群から選択されることを特徴とする請求項39記載の方法。
【請求項41】
組織に病変があることを特徴とする請求項39記載の方法。
【請求項42】
組織が正常であることを特徴とする請求項39記載の方法。
【請求項43】
疾患は、膿瘍および感染;胆管閉塞;血液量研究;血管疾患;脳血管疾患;骨疾患;骨髄疾患;脳の疾患および腫瘍;癌および悪性新生物;直腸結腸疾患;糖尿病;鉄の代謝および吸収不全;脳内の脳脊髄液流障害;腎疾患;脂質性疾患;肝疾患;肺疾患;副甲状腺疾患および/もしくは副甲状腺癌;悪性貧血および/もしくは腸管からのビタミンB12の吸収不全;赤血球細胞疾患;唾液腺疾患;脾臓疾患;胃の不調および腸管出血;涙管閉塞;甲状腺疾患および/もしくは甲状腺癌;ならびに膀胱疾患を含む群から選択されることを特徴とする請求項41記載の方法。
【請求項44】
陽電子放出によって組成物を検出することを特徴とする請求項24または26記載の方法。
【請求項45】
光子放出によって組成物を検出することを特徴とする請求項24または26記載の方法。
【請求項46】
目的組織内に脂肪酸組成物を保持する方法であって、
a)請求項1、18、32、44、55および66のいずれか1項に従い、検出可能量の組成物を組織に局在させ;
b)組成物の輸送および逆拡散を減少させることにより、組織内に組成物またはそれらの代謝的誘導体を保持させ;さらに、
c)組織内の組成物またはそれらの代謝的誘導体を検出する
工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項47】
目的組織内に脂肪酸組成物を保持する方法であって、
a)請求項1、18、32、44、55および66のいずれか1項に従い、検出可能量の組成物を組織に局在させ;
b)組成物の脱水素化を低下させることにより、組織内に組成物またはそれらの代謝的誘導体を保持させ;さらに、
c)組織内の組成物またはそれらの代謝的誘導体を検出する
工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項48】
目的組織内に脂肪酸組成物を保持する方法であって、
a)請求項1、18、32、44、55および66のいずれか1項に従い、検出可能量の組成物を組織に局在させ;
b)組成物のヒドロキシル化を低下させることにより、組織内に組成物またはそれらの代謝的誘導体を保持させ;さらに、
c)組織内の組成物またはそれらの代謝的誘導体を検出する
工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項49】
目的組織内に脂肪酸組成物を保持する方法であって、
a)請求項1、18、32、44、55および66のいずれか1項に従い、検出可能量の組成物を組織に局在させ;
b)組成物のケトアシル形成を低下させることにより、組織内に組成物またはそれらの代謝的誘導体を保持させ;さらに、
c)組織内の組成物またはそれらの代謝的誘導体を検出する
工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項50】
目的組織内に脂肪酸組成物を保持する方法であって、
a)請求項1、18、32、44、55および66のいずれか1項に従い、検出可能量の組成物を組織に局在させ;
b)組成物のケトアセチル脱離を低下させることにより、組織内に組成物またはそれらの代謝的誘導体を保持させ;さらに、
c)組織内の組成物またはそれらの代謝的誘導体を検出する
工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項51】
目的組織が心臓組織であることを特徴とする請求項46、47,48,49または50記載の方法。
【請求項52】
心臓組織に病変があることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項53】
疾病は、急性心不全、不安定狭心症、慢性虚血性心疾患、冠動脈疾患、心筋炎、心筋症、先天性心疾患、高血圧性心疾患、移植後心疾患、同種移植片血管症、および心臓弁膜症を含む群から選択されることを特徴とする請求項52記載の方法。
【請求項54】
心臓組織が正常であることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項55】
心臓組織がストレスを受けていることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項56】
ストレスが運動によって誘導されたものであることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項57】
ストレスが薬物によって誘導されたものであることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項58】
目的組織が心臓組織以外の組織であることを特徴とする請求項46、47、48、49または50記載の方法。
【請求項59】
目的組織は、脳、肝臓、骨、脾臓、肺、血液、腎臓、胃腸管、筋肉、および副腎の組織を含む群から選択されることを特徴とする請求項58記載の方法。
【請求項60】
組織に病変があることを特徴とする請求項58記載の方法。
【請求項61】
組織が正常であることを特徴とする請求項58記載の方法。
【請求項62】
疾患は、膿瘍および感染;胆管閉塞;血液量研究;血管疾患;脳血管疾患;骨疾患;骨髄疾患;脳の疾患および腫瘍;癌および悪性新生物;結腸疾患;糖尿病;鉄の代謝および吸収不全;脳内の脳脊髄液流障害;腎疾患;脂質性疾患;肝疾患;肺疾患;副甲状腺疾患および/もしくは副甲状腺癌;悪性貧血および/もしくは腸管からのビタミンB12の吸収不全;赤血球細胞疾患;唾液腺疾患;脾臓疾患;胃の不調および消化管出血;涙管閉塞;甲状腺疾患および/もしくは甲状腺癌;ならびに膀胱疾患を含む群から選択されることを特徴とする請求項60記載の方法。
【請求項63】
陽電子放出によって組成物を検出することを特徴とする請求項46、47,48、49または50記載の方法。
【請求項64】
光子放出によって組成物を検出することを特徴とする請求項46、47、48、49または50記載の方法。
【請求項65】
請求項1、18、32、44、55または66のいずれか1項に従って脂肪酸組成物を合成する方法であって、
a)出発化合物からモノ保護一級アルコールを合成し;
b)モノ保護一級アルコールに環式または複素環式有機置換機を付加することにより、環式モノ保護一級アルコールを生成させ;さらに、
c)環式モノ保護一級アルコールを処理することによって脂肪酸アナログを形成する
工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項66】
出発材料が飽和炭素骨格を有することを特徴とする請求項65記載の方法。
【請求項67】
出発材料が不飽和炭素骨格を有することを特徴とする請求項65記載の方法。
【請求項68】
出発材料が末端フェニル基を有することを特徴とする請求項65記載の方法。
【請求項69】
出発材料が環式一級アルコールであることを特徴とする請求項65記載の方法。
【請求項70】
環式有機置換基が環式アルカンであることを特徴とする請求項65記載。
【請求項71】
環式アルカンが、シクロプロピル、シクロブチルまたはシクロペンチルを含む群から選択されることを特徴とする請求項70記載の方法。
【請求項72】
前記複素環式有機置換基が3〜5員環構造の複素環式構造を有することを特徴とする請求項65記載の方法。
【請求項73】
アナログの炭素原子が放射活性標識を追有することを特徴とする請求項65記載の方法。
【請求項74】
放射性標識が、18F、123I、131I、34mCl、75Br、76Brまたは77Brを含む群から選択されることを特徴とする請求項73記載の方法。
【請求項75】
放射性標識脂肪酸アナログを投与するためのキットであって、請求項65に従って合成された脂肪酸アナログ、放射性同位元素、薬剤学的に許容されるキャリヤーを含み、、ならびに、放射性標識アナログの調製法、もしくは使用法に関する指示書を随意に含むことを特徴とするキット。
【請求項76】
放射性標識が、18F、123I、131I、34mCl、75Br、76Brまたは77Brを含む群から選択されることを特徴とする請求項75記載の方法。
【請求項77】
組成物の輸送または逆拡散を抑制することにより、組織内に組成物またはそれらの代謝物を保持させる工程を追有することを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項78】
組成物の脱水素化を抑制することにより、組織内に組成物またはそれらの代謝物を保持させる工程を追有することを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項79】
組成物のヒドロキシル化を抑制することにより、組織内に組成物またはそれらの代謝物を保持させる工程を追有することを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項80】
組成物のケトアシル形成を抑制することにより、組織内に組成物またはそれらの代謝物を保持させる工程を追有することを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項81】
組成物のケトアセチル脱離を抑制することにより、組織内に組成物またはそれらの代謝物を保持させる工程を追有することを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項1】
哺乳類の組織に取り込まれる放射性標識脂肪酸アナログであって、以下の化学式で表され、
R−(CH2)n−Z−(CH2)mCO2H
このとき、nは8〜22であり、mは0〜10であり、RはCH3、アリールまたは複素環式基であり、Zは環式または複素環式有機置換基であって、該組織内に該アナログを代謝的に捕獲させる作用を有していることを特徴とする放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項2】
前記環式有機置換基が環式アルカンであることを特徴とする請求項1記載の放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項3】
前記環式アルカンは、シクロプロピル、シクロブチルまたはシクロペンチルを含む群から選択されることを特徴とする請求項2記載の放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項4】
前記複素環式有機置換基が3〜5個の原子から構成される複素環式構造を有することを特徴とする請求項1記載の放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項5】
哺乳類の組織に取り込まれる放射性標識脂肪酸アナログであって、以下の化学式で表され、
【化1】
このとき、DはCH2またはCH2CH2であり、EはCH2またはCH2CH2であり、mは0〜10であり、nは8〜14であり、RはCH3、アリールまたは複素環式基であって、環式有機置換基−CDCE−が該組織内に該アナログを代謝的に捕獲させる作用を有していることを特徴とする放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項6】
哺乳類の組織に取り込まれる放射性標識脂肪酸アナログであって、以下の化学式で表され、
【化2】
このとき、A=(CH2)x、O、S
x=1,2,3,4
シスおよびトランス;R,RおよびS,S
m=0〜10
n=14〜8
R=18F−フェニルまたは123I−フェニル、であり、
環式または複素環式有機置換基−CH−A−CH−が該組織内に該アナログを代謝的に捕獲させる作用を有することを特徴とする放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項7】
哺乳類の組織に取り込まれる放射性標識脂肪酸アナログであって、以下の化学式で表され、
【化3】
このとき、A=(CH2)y、O、S
y=1,2,3,4
シスおよびトランス;R,RおよびS,S
m=0〜10
n=14〜8
p=0〜6
R=CH3
X=放射性標識、であり、
環式または複素環式有機置換基−CH−A−CH−が該組織内に該アナログを代謝的に捕獲させる作用を有することを特徴とする放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項8】
哺乳類の組織に取り込まれる放射性標識脂肪酸アナログであって、以下の化学式で表され、
【化4】
このとき、X=H、18F、123I、131I、34mCl、75Br、76Br、77Br、ならびにそれらのアルキルおよびへテロアルキル類、
Y=H、18F、123I、131I、34mCl、75Br、76Br、77Br、ならびにそれらのアルキルおよびへテロアルキル類、
A=(CH2)z、OまたはS
z=1〜4
m=0〜10
n=8〜14
p=0〜6
R=CH3 、アリールまたは複素環式有機置換基、であり、
環式または複素環式有機置換基−CH−A−CH−が該組織内に該アナログを代謝的に捕獲させる作用を有することを特徴とする放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項9】
哺乳類の組織に取り込まれる放射性標識脂肪酸アナログであって、以下の化学式で表され、
【化5】
このとき、A=(CH2)y、O、S
y=1〜4
m=0〜10
n=8〜14
p=0〜6
R=CH3 、アリールまたは複素環式有機置換基、
X=18F、123I、131I、34mCl、75Br、76Brまたは77Br、であり、
環式または複素環式有機置換基−CH−A−CH−が該組織内に該アナログを代謝的に捕獲させる作用を有していることを特徴とする放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項10】
前記有機性置換基が、脂肪酸アナログのC2,C3位、C4,C5位;またはC5,C6位に結合していることを特徴とする請求項1、5、6、7、8または9記載の放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項11】
前記アナログにおいて、前記置換基が結合している炭素原子の右側に存在する2個の炭素原子の脱離を防いでいる状況で、カルボキシル炭素原子のβ位に結合している前記置換基の結合炭素原子に対して初回β−酸化段階を進行させることにより、前記有機置換基が該組織内に該アナログを代謝的に捕獲させる作用を有することを特徴とする請求項1、5、6、7、8または9記載の放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項12】
前記組織が心臓組織であることを特徴とする請求項1、5、6、7、8または9記載の放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項13】
前記組織が肝臓組織であることを特徴とする請求項1、5、6、7、8または9記載の放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項14】
前記組織が腫瘍組織であることを特徴とする請求項1、5、6、7、8または9記載の放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項15】
前記アナログが、前記組織に取り込まれた後に検出可能な陽電子を放出することを特徴とする請求項1、5、6、7、8または9記載の放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項16】
前記アナログが、前記組織に取り込まれた後に検出可能な光子を放出することを特徴とする請求項1、5、6、7、8または9記載の放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項17】
前記脂肪酸の炭素鎖が飽和していることを特徴とする請求項1、5、6、7、8または9記載の放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項18】
前記脂肪酸の炭素鎖が不飽和であることを特徴とする請求項1、5、6、7、8または9記載の放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項19】
アリール基が5〜7員環構造であることを特徴とする請求項1、5、8または9記載の放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項20】
複素環式基が3〜5員環構造であることを特徴とする請求項1、5、8または9記載の放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項21】
前記放射性同位元素が18F、123I、131I、34mCl、75Br、76Brまたは77Brであることを特徴とする請求項1、5、6または7記載の放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項22】
前記ハロゲン放射性同位元素が前記アナログの直鎖上の炭素原子に結合していることを特徴とする請求項1、5または6記載の放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項23】
前記有機置換基が前記アナログの代謝的脱水素化を抑制することを特徴とする請求項11記載の放射性標識脂肪酸アナログ。
【請求項24】
患者の体内の血流を測定する方法であって、
a)目的組織内に、請求項1、18、32、44、55または66のいずれか1項記載のFA組成物の検出可能量を局在させ;
b)約1秒〜約10分以内に目的組織内の該組成物から放出されるシグナルを検出し、
c)目的組織の画像化を行い;さらに、
d)目的組織内の血流速度を求める;工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項25】
前記組成物の検出は、投与1〜約5分以内に行うことを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項26】
患者の体内における代謝を測定する方法であって、
a)目的組織内に、請求項1、18、32、44、55または66のいずれか1項記載のFA組成物の検出可能量を局在させ;
b)約10分〜約24時間以内に、目的組織内の該組成物から放出されるシグナルを検出し、
c)目的組織の画像化を行い;さらに、
d)目的組織内の代謝速度を求める
工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
組成物の量は、0.1mCi〜約25mCiであることを特徴とする請求項24または26記載の方法。
【請求項28】
組成物の量は、1mCi〜約5mCiであることを特徴とする請求項24または26記載の方法。
【請求項29】
前記組成物の検出は、30分〜約120分以内に行うことを特徴とする請求項26記載の方法。
【請求項30】
前記組成物を第二の放射活性追跡子と共に投与することを特徴とする請求項24または26記載の方法。
【請求項31】
第二の放射活性追跡子は、13N−アンモニウム、57Co−シアノコバラミン、59Fe−クエン酸第一鉄、18F−フルオロデオキシグルコース、67Ga−クエン酸ガリウム、111In−オキシキノリンインジウム、111In−インジウムペンテテート、111In−インジウムペンテトレオチド、111In−インジウムサチュモマブペンデチド、放射性ヨウ素化ヨーベンガン、123I−ヨウ化馬尿酸ナトリウム、131I−ヨウ化馬尿酸ナトリウム、123I−ヨーフェタミン、125I−ヨータラム酸ナトリウム、81クリプトン、11C−メチオニン、放射性ヨウ素化アルブミン、82ルビジウム、51クロム酸ナトリウム、18フッ化ナトリウム、123ヨウ化ナトリウム、131ヨウ化ナトリウム、99mTc−過テクネチウム酸ナトリウム、99mTc−アルブミン、99mTc−アルブミン(凝集型)、99mTc−アルブミン(コロイド型)、99mTc−アーシツモマブ、99mTc−ビシセート、99mTc−ジソフェニン、99mTc−エグザメタジム、99mTc−グルセプテート、99mTc−リドフェニン、99mTc−メブロフェニン、99mTc−メドロナート、99mTc−マーチアチド、99mTc−ノフェツモマブマーペンタン、99mTc−オキシドロナート、99mTc−ペンテテート、99mTc−ピロホスフェート、99mTc−(ピロ−およびトリメタ−)ホスフェート類、99mTc−セスタミビ、99mTc−スクシマー、99mTc−硫黄(コロイド型)、99mTc−テボロキシム、99mTc−テトロフォスミン、塩化201タリウム、127キセノンおよび133キセノンを含む群から選択されることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項32】
目的組織が心臓組織であることを特徴とする請求項24または26記載の方法。
【請求項33】
心臓組織がに病変があることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項34】
疾患は、急性心筋梗塞、不安定狭心症、慢性虚血性心疾患、冠動脈疾患、心筋炎、心筋症、先天性心疾患、高血圧性心疾患、移植後心疾患、同種移植片血管障害、および心臓弁膜症を含む群から選択されることを特徴とする請求項33記載の方法。
【請求項35】
心臓組織が正常であることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項36】
心臓組織がストレスを受けていることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項37】
ストレスは、運動によって誘導されたものであることを特徴とする請求項36記載の方法。
【請求項38】
ストレスは、薬剤によって誘導されたものであることを特徴とする請求項36記載の方法。
【請求項39】
目的組織は心臓組織ではないことを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項40】
目的組織は、脳、肝臓、骨、脾臓、肺、血液、腎臓、胃腸管、筋肉および副腎組織を含む群から選択されることを特徴とする請求項39記載の方法。
【請求項41】
組織に病変があることを特徴とする請求項39記載の方法。
【請求項42】
組織が正常であることを特徴とする請求項39記載の方法。
【請求項43】
疾患は、膿瘍および感染;胆管閉塞;血液量研究;血管疾患;脳血管疾患;骨疾患;骨髄疾患;脳の疾患および腫瘍;癌および悪性新生物;直腸結腸疾患;糖尿病;鉄の代謝および吸収不全;脳内の脳脊髄液流障害;腎疾患;脂質性疾患;肝疾患;肺疾患;副甲状腺疾患および/もしくは副甲状腺癌;悪性貧血および/もしくは腸管からのビタミンB12の吸収不全;赤血球細胞疾患;唾液腺疾患;脾臓疾患;胃の不調および腸管出血;涙管閉塞;甲状腺疾患および/もしくは甲状腺癌;ならびに膀胱疾患を含む群から選択されることを特徴とする請求項41記載の方法。
【請求項44】
陽電子放出によって組成物を検出することを特徴とする請求項24または26記載の方法。
【請求項45】
光子放出によって組成物を検出することを特徴とする請求項24または26記載の方法。
【請求項46】
目的組織内に脂肪酸組成物を保持する方法であって、
a)請求項1、18、32、44、55および66のいずれか1項に従い、検出可能量の組成物を組織に局在させ;
b)組成物の輸送および逆拡散を減少させることにより、組織内に組成物またはそれらの代謝的誘導体を保持させ;さらに、
c)組織内の組成物またはそれらの代謝的誘導体を検出する
工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項47】
目的組織内に脂肪酸組成物を保持する方法であって、
a)請求項1、18、32、44、55および66のいずれか1項に従い、検出可能量の組成物を組織に局在させ;
b)組成物の脱水素化を低下させることにより、組織内に組成物またはそれらの代謝的誘導体を保持させ;さらに、
c)組織内の組成物またはそれらの代謝的誘導体を検出する
工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項48】
目的組織内に脂肪酸組成物を保持する方法であって、
a)請求項1、18、32、44、55および66のいずれか1項に従い、検出可能量の組成物を組織に局在させ;
b)組成物のヒドロキシル化を低下させることにより、組織内に組成物またはそれらの代謝的誘導体を保持させ;さらに、
c)組織内の組成物またはそれらの代謝的誘導体を検出する
工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項49】
目的組織内に脂肪酸組成物を保持する方法であって、
a)請求項1、18、32、44、55および66のいずれか1項に従い、検出可能量の組成物を組織に局在させ;
b)組成物のケトアシル形成を低下させることにより、組織内に組成物またはそれらの代謝的誘導体を保持させ;さらに、
c)組織内の組成物またはそれらの代謝的誘導体を検出する
工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項50】
目的組織内に脂肪酸組成物を保持する方法であって、
a)請求項1、18、32、44、55および66のいずれか1項に従い、検出可能量の組成物を組織に局在させ;
b)組成物のケトアセチル脱離を低下させることにより、組織内に組成物またはそれらの代謝的誘導体を保持させ;さらに、
c)組織内の組成物またはそれらの代謝的誘導体を検出する
工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項51】
目的組織が心臓組織であることを特徴とする請求項46、47,48,49または50記載の方法。
【請求項52】
心臓組織に病変があることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項53】
疾病は、急性心不全、不安定狭心症、慢性虚血性心疾患、冠動脈疾患、心筋炎、心筋症、先天性心疾患、高血圧性心疾患、移植後心疾患、同種移植片血管症、および心臓弁膜症を含む群から選択されることを特徴とする請求項52記載の方法。
【請求項54】
心臓組織が正常であることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項55】
心臓組織がストレスを受けていることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項56】
ストレスが運動によって誘導されたものであることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項57】
ストレスが薬物によって誘導されたものであることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項58】
目的組織が心臓組織以外の組織であることを特徴とする請求項46、47、48、49または50記載の方法。
【請求項59】
目的組織は、脳、肝臓、骨、脾臓、肺、血液、腎臓、胃腸管、筋肉、および副腎の組織を含む群から選択されることを特徴とする請求項58記載の方法。
【請求項60】
組織に病変があることを特徴とする請求項58記載の方法。
【請求項61】
組織が正常であることを特徴とする請求項58記載の方法。
【請求項62】
疾患は、膿瘍および感染;胆管閉塞;血液量研究;血管疾患;脳血管疾患;骨疾患;骨髄疾患;脳の疾患および腫瘍;癌および悪性新生物;結腸疾患;糖尿病;鉄の代謝および吸収不全;脳内の脳脊髄液流障害;腎疾患;脂質性疾患;肝疾患;肺疾患;副甲状腺疾患および/もしくは副甲状腺癌;悪性貧血および/もしくは腸管からのビタミンB12の吸収不全;赤血球細胞疾患;唾液腺疾患;脾臓疾患;胃の不調および消化管出血;涙管閉塞;甲状腺疾患および/もしくは甲状腺癌;ならびに膀胱疾患を含む群から選択されることを特徴とする請求項60記載の方法。
【請求項63】
陽電子放出によって組成物を検出することを特徴とする請求項46、47,48、49または50記載の方法。
【請求項64】
光子放出によって組成物を検出することを特徴とする請求項46、47、48、49または50記載の方法。
【請求項65】
請求項1、18、32、44、55または66のいずれか1項に従って脂肪酸組成物を合成する方法であって、
a)出発化合物からモノ保護一級アルコールを合成し;
b)モノ保護一級アルコールに環式または複素環式有機置換機を付加することにより、環式モノ保護一級アルコールを生成させ;さらに、
c)環式モノ保護一級アルコールを処理することによって脂肪酸アナログを形成する
工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項66】
出発材料が飽和炭素骨格を有することを特徴とする請求項65記載の方法。
【請求項67】
出発材料が不飽和炭素骨格を有することを特徴とする請求項65記載の方法。
【請求項68】
出発材料が末端フェニル基を有することを特徴とする請求項65記載の方法。
【請求項69】
出発材料が環式一級アルコールであることを特徴とする請求項65記載の方法。
【請求項70】
環式有機置換基が環式アルカンであることを特徴とする請求項65記載。
【請求項71】
環式アルカンが、シクロプロピル、シクロブチルまたはシクロペンチルを含む群から選択されることを特徴とする請求項70記載の方法。
【請求項72】
前記複素環式有機置換基が3〜5員環構造の複素環式構造を有することを特徴とする請求項65記載の方法。
【請求項73】
アナログの炭素原子が放射活性標識を追有することを特徴とする請求項65記載の方法。
【請求項74】
放射性標識が、18F、123I、131I、34mCl、75Br、76Brまたは77Brを含む群から選択されることを特徴とする請求項73記載の方法。
【請求項75】
放射性標識脂肪酸アナログを投与するためのキットであって、請求項65に従って合成された脂肪酸アナログ、放射性同位元素、薬剤学的に許容されるキャリヤーを含み、、ならびに、放射性標識アナログの調製法、もしくは使用法に関する指示書を随意に含むことを特徴とするキット。
【請求項76】
放射性標識が、18F、123I、131I、34mCl、75Br、76Brまたは77Brを含む群から選択されることを特徴とする請求項75記載の方法。
【請求項77】
組成物の輸送または逆拡散を抑制することにより、組織内に組成物またはそれらの代謝物を保持させる工程を追有することを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項78】
組成物の脱水素化を抑制することにより、組織内に組成物またはそれらの代謝物を保持させる工程を追有することを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項79】
組成物のヒドロキシル化を抑制することにより、組織内に組成物またはそれらの代謝物を保持させる工程を追有することを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項80】
組成物のケトアシル形成を抑制することにより、組織内に組成物またはそれらの代謝物を保持させる工程を追有することを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項81】
組成物のケトアセチル脱離を抑制することにより、組織内に組成物またはそれらの代謝物を保持させる工程を追有することを特徴とする請求項24記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2006−524250(P2006−524250A)
【公表日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−513138(P2006−513138)
【出願日】平成16年4月19日(2004.4.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/012084
【国際公開番号】WO2004/093650
【国際公開日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(300052453)ザ・ジェネラル・ホスピタル・コーポレイション (24)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年4月19日(2004.4.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/012084
【国際公開番号】WO2004/093650
【国際公開日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(300052453)ザ・ジェネラル・ホスピタル・コーポレイション (24)
【Fターム(参考)】
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