説明

放射性廃液貯蔵タンク

【課題】ライニング材を有する放射性廃液タンクにおいて、ライニングの劣化状況の把握は、貯蔵タンクが高線量であるため、まずタンク内の内容物を移送して空にして実施するなど、多大な時間とコストがかかるとの課題があった。
【解決手段】上記課題を解決する本発明の特徴は、放射性廃液貯蔵タンク内部に設置した第1のタンク外壁面に電極を設置し、その絶縁抵抗を測定することにより、ライニング材の健全性が評価する。
【効果】本発明により、放射性廃液貯蔵タンクのライニング材の健全性が簡便かつ迅速に測定でき、放射性廃液貯蔵タンクを安全に長期間使用することができる。また、ライニング材の張替え時期を適切に評価できるため、張替えに伴う時間やコストを低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所などで発生した放射性廃棄物を貯蔵する放射性廃棄物貯蔵タンクに係わり、特にタンク内面にライニング材を有する放射性廃棄物貯蔵タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所では、様々な放射性廃液を貯蔵するタンクを備えている。例えば、原子炉冷却材浄化系では炉水を浄化するために使用した使用済イオン交換樹脂スラリーや、フィルタースラッジスラリーなどの放射性廃液が発生し、それらは専用の放射性廃液貯蔵タンクに保管されている。
【0003】
これらの貯蔵タンクは、周囲をコンクリート壁等により隔離された室内に設置されており、厳重に遮蔽された環境で使用されている。このような貯蔵タンクの一部には、タンク内面にライニング材が施工されているケースがある。貯蔵タンク内は極めて高線量の環境となるため、これらのライニング材は長期的には劣化する可能性があり、このような場合にはライニング材の張替えが必要となる。ライニング材の張替えにはまず、古いライニング材を除去する必要があり、このような高線量環境でのライニング剥離作業方法が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−66133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
但し、このようなライニングの劣化状況の把握は、貯蔵タンクが高線量であるため、まずタンク内の内容物を移送して空にして実施する必要があるため、多大な時間とコストがかかるとの問題があった。
【0006】
本発明の目的は、ライニング材の健全性を簡便かつ迅速に評価可能な放射性廃液貯蔵タンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明では鋭意検討した結果、放射性廃液貯蔵タンク内部とタンク外壁面に電極を設置し、その絶縁抵抗を測定することにより、ライニング材の健全性が評価できることを見出した。
【0008】
また、ライニング材の内部に電極を埋め込むことにより、絶縁抵抗を測定する際の誤差が低減し、精度良くライニング材の劣化を診断できることを見出した。
【0009】
さらに、測定時の精度を向上させるためには、電圧を交流で印加し、インピーダンスの変化でライニング材の劣化を診断することが有効であることがわかった。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、放射性廃液貯蔵タンクのライニング材の健全性が簡便かつ迅速に測定でき、放射性廃液貯蔵タンクを安全に長期間使用することができる。また、ライニング材の張替え時期を適切に評価できるため、張替えに伴う時間やコストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の好適な一実施例である放射性廃液貯蔵タンクの構成を示す図である。
【図2】本発明の他の実施例である放射性廃液貯蔵タンクの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
本発明の実施例を図1により説明する。図1は放射性廃液貯蔵タンクの概略図である。
【0013】
放射性廃液貯蔵タンク(貯蔵タンク)1の内壁にはライニング材2が施工されている。この放射性廃液貯蔵タンク1の内部には、放射性廃液が貯蔵されている。放射性廃液貯蔵タンク1の内壁には電極4が設置されており、放射性廃液貯蔵タンク1外壁面の電極5と接続されている。電極4及び電極5は、電圧印加装置6と電流計7に接続されており、任意の電圧を印加した際の電流値を計測することができる。
【0014】
ライニング材2は絶縁性能の性質を持つため、ライニング材2が健全であれば、電極間に電圧を印加した場合においても電流はほとんど流れず、極めて大きな抵抗値が観察される。但し、ライニング材2が劣化した場合、抵抗は低下するため、電極に任意の電圧を印加すると電流が流れる。
【0015】
本実施例では、電極間の抵抗値の変化を一定期間毎に計測し、時間的な変化をモニタリングすることによりライニング材2の劣化を診断する。これにより、ライニング材2の健全性を簡便かつ迅速に評価可能となり、ライニング材2の張替え時期を適切に評価でき、張替えに伴う時間やコストを低減できる効果が得られる。
【0016】
(実施形態2)
本発明の他の実施例を図2により説明する。図2は放射性廃液貯蔵タンクの概略図である。
【0017】
放射性廃液貯蔵タンク1の内壁にはライニング材2が施工されている。この放射性廃液貯蔵タンク1の内部には、放射性廃液が貯蔵されている。放射性廃液貯蔵タンク1の内面のコーティング材内面には電極4が埋め込まれて設置されており、放射性廃液貯蔵タンク1外壁面の電極5と接続されている。
【0018】
これらの電極には、交流回路8に接続されており、交流時の抵抗値に相当するインピーダンスを計測することができる。
【0019】
ライニング材2は絶縁性能の性質を持つため、ライニング材2が健全であれば、電極間に電圧を印加した場合においても電流はほとんど流れず、極めて大きな抵抗値が観察される。但し、ライニング材2が劣化した場合には、抵抗は低下し、電極に任意の電圧を印加すると電流が流れる。
【0020】
また、本実施例の場合、電極4がライニング材2中に埋め込まれているため、電極自身の劣化による影響を受けず、周囲の液性の変動の影響も受けない。このため、さらに精度の高い評価ができる。
【0021】
また、本実施例では交流回路を用いることにより、電極面での分極の影響を最小限に抑えることができ、測定精度を向上する効果が得られる。
【符号の説明】
【0022】
1 放射性廃液貯蔵タンク
2 ライニング材
3 放射性廃液
4,5 電極
6 電圧印加装置
7 電流計
8 交流回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク内面にライニング材を有する放射性廃液貯蔵タンクにおいて、
前記ライニング材の表面に設置した電極と、
前記電極と前記タンク外側の外壁である金属母材との間の電気抵抗を測定する抵抗測定器を備えることを特徴とする放射性廃液貯蔵タンク。
【請求項2】
タンク内面にライニング材を有する放射性廃液貯蔵タンクにおいて、
前記ライニング材内に埋め込まれた電極と、
前記電極と前記タンク外側の外壁である金属母材との間の電気抵抗を測定する抵抗測定器を備えることを特徴とする放射性廃液貯蔵タンク。
【請求項3】
請求項1記載の放射性廃液貯蔵タンクにおいて、
前記ライニング材表面に設置した電極と前記タンク外側の外壁である金属母材との間に交流電圧を与え、インピーダンスを測定することを特徴とする放射性廃液貯蔵タンク。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−73046(P2012−73046A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216322(P2010−216322)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】