説明

放射性標識されたTRPM8受容体リガンド

本発明は、TRP M8(一過性受容体電位M8チャネル)機能性を標識及び撮像するために有用な放射性標識されたリガンドを目的とする。本発明は、この放射性標識されたリガンドを含む医薬組成物及びこの放射性標識されたリガンドの製造方法を更に目的とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる2008年7月18日出願の米国仮出願第61/081,904号の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、TRP M8(一過性受容体電位M8チャネル)機能性を標識及び撮像するために有用な放射性標識されたリガンドを目的とする。本発明は、この放射性標識されたリガンドを含む医薬組成物及びこの放射性標識されたリガンドの製造方法を更に目的とする。
【背景技術】
【0003】
一過性受容体電位(Transient Receptor Potential(TRP))チャネルは、様々な刺激により活性化される非選択的カチオンチャネルである。膨大な数のイオンチャネルのファミリーが今日までに同定されており、例えば、TRP M8とも称される冷感−メントール受容体(cold-menthol receptor)(McKemy,D.D.,et.al.,Nature 2002,416(6876),52〜58)が挙げられる。TRPチャネル及び関連するTRP様受容体は、集団としては、熱的曝露の連続範囲全体への感覚応答性を示唆し、有害な暑さから有害な寒さまでの範囲に広がる閾値温度、及び同様にこれらの感覚に類似した知覚をもたらす化学物質に選択的に応答する。特に、TRP M8は、冷涼から寒冷までの温度並びにメントール及びイシリンのような化学物質により刺激されることが知られており、このことは、これらの物質の誘起する治療的な冷感の原因である可能性がある。
【0004】
TRP M8は一次侵害ニューロン(A−δ線維及びC線維)に局在し、炎症により媒介される二次メッセンジャーのシグナルによっても調節される(Abe,J.,et al.,Neurosci Lett 2006,397(1〜2),140〜144;Premkumar,L.S.,et al.,J.Neurosci,2005,25(49),11322〜11329)。A−δ線維及びC線維の両方へのTRP M8の局在化は、これらのニューロンが変質され、痛みをもたらし、しばしば熱傷的性質を持つ、病原性状態における異常な寒冷感受性の基礎を提供している可能性がある(Kobayashi,K.,et al.,J Comp Neurol,2005,493(4),596〜606;Roza,C.,et al.Pain,2006,120(1〜2),24〜35;及びXing,H.,et al.,J Neurophysiol,2006,95(2),1221〜30)。化学的又は熱的な冷却により誘起される、寒冷不耐症、及び逆説的な熱傷的感覚は、広範囲の臨床的障害に見られる症状と酷似しており、それゆえに、新規な抗感覚過敏症薬又は坑異痛症薬としてのTRP M8モジュレーター開発に、強固な理論的根拠を提供する。TRP M8は、脳、肺、膀胱、消化管、血管、前立腺及び免疫細胞にも発現されることが知られており、それにより広範囲の疾患の治療的調節の可能性が提供される。
【0005】
非侵襲的核撮像技術を使用して、実験動物、ヒト及び患者などの生体対象の生理学及び生化学についての基本的及び診断情報を得ることができる。これらの技術は、生体対象に投与された放射性トレーサから放射される放射線を検出できる撮像装置の使用に依拠する。得られた情報は再構成されて、時間の関数としての放射性トレーサの分布及び/又は濃度を明らかにする平面及び断層画像を提供することができる。
【0006】
ポジトロン放出断層法(PET)は、全ての核医学撮像法の中でも最高の空間及び時間分解能を提供する非侵襲的撮像技術であり、組織におけるトレーサ濃度の真の定量を可能にできるという更なる利点を有する。この技術は、ポジトロン放出放射性核種で標識された放射性トレーサの使用を伴う。放射性トレーサは、生体組織における種々のプロセスの生理学又は生化学に関するパラメータの測定を可能にするin vivo特性を有するように設計される。
【0007】
化合物は、ポジトロン又はガンマ放出放射性核種で標識することができる。最も一般的に使用されるポジトロン放出放射性核種は、15O、13N、11C及び18Fであり、これらは加速器で作製され、それぞれ2、10、20及び110分の半減期を有する。最も広く使用されるガンマ放出放射性核種は、99mTc、201Tl及び123Iである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
対象の、例えば、脳及び/又は脊髄といった、中枢及び/又は末梢神経系中のTRP M8受容体に結合する放射性標識されたリガンドに対する必要が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、式(A)
【0010】
【化1】

の放射性標識された化合物又はその溶媒和物若しくは製薬上許容し得る塩(ここで、式(A)の化合物におけるC原子及び/又はF原子の1つ以上は、対応する11C又は18Fと置換される)を目的とする。
【0011】
本発明は、式(B)
【0012】
【化2】

の放射性標識された化合物又はその溶媒和物若しくは製薬上許容し得る塩(ここで、式(B)の化合物におけるC原子及び/又はF原子の1つ以上は、対応する11C又は18Fと置換される)を更に目的とする。
【0013】
本発明は、式(I)
【0014】
【化3】

の放射性標識された化合物又はその溶媒和物若しくは製薬上許容し得る塩を更に目的とする。
【0015】
本発明は更に式(II)
【0016】
【化4】

(式中、R1はCH3であり、R218Fであり、
又は、R111CH3であり、R2はFである)
の放射性標識された化合物又はその溶媒和物若しくは製薬上許容し得る塩を更に目的とする。
【0017】
本発明は、式(A)の化合物及び式(B)の化合物を製造する方法を更に目的とする。本発明は、式(I)の化合物の製造する方法を更に目的とし、これは本明細書に、より詳細に記載される。本発明は、式(II)の化合物の製造する方法を更に目的とし、これは本明細書に、より詳細に記載される。本発明は、本明細書に記載のプロセスのいずれかに従って製造される生成物を更に目的とする。
【0018】
本発明は、本明細書に記載の放射性標識された化合物のいずれか及び製薬上許容し得る担体を含んでなる医薬組成物を更に目的とする。好ましくは、この医薬組成物は、液体医薬組成物である。
【0019】
本発明は、ポジトロン放出断層(PET)撮像における本明細書に記載の放射性標識された化合物のいずれかの使用を更に目的とする。本発明は、対象においてTRP M8受容体を標識する方法を更に目的とし、かかる標識の必要な対象に本明細書に記載の放射性標識された化合物のいずれかを有効量投与することを含んでなる。本発明は、対象においてTRP M8受容体を撮像する方法を更に目的とし、かかる撮像の必要な対象に本明細書に記載の放射性標識された化合物のいずれかを有効量投与することを含んでなる。本発明は、対象においてTRP M8受容体を有する組織を撮像する方法を更に目的とし、かかる撮像の必要な対象に本明細書に記載の放射性標識された化合物のいずれかを有効量投与することを含んでなる。本発明はまた、中枢及び/又は末梢神経系(脳及び/又は脊髄が挙げられるがこれらに限定されない)を撮像する方法も目的とし、かかる撮像の必要な対象に本明細書に記載の放射性標識された化合物のいずれかを有効量投与することを含んでなる。
【0020】
本発明は、哺乳類の組織においてTRP M8受容体を検出又は定量する方法を更に目的とし、かかる定量が所望される哺乳類に本明細書に記載の放射性標識された化合物のいずれかを有効量投与することを含んでなる。本発明は、対象におけるTRP M8機能性の変化を視覚化する方法を更に目的とし、対象に本明細書に記載の放射性標識された化合物のいずれかを有効量投与することを含んでなる。本発明は、TRP M8拮抗物質又は作用物質に対する新規治療薬適応を同定する手段として、TRP M8機能性の変化を視覚化する方法を更に目的とする。本発明は、動物、好ましくはヒトにおけるTRP M8拮抗物質又は作用物質の薬物動態及び/若しくは生体内分布を測定する方法を更に目的とする。
【0021】
当業者であれば、痛覚過敏症及びこれに類するものなどの、TRP M8受容体により調節される特定の疾患及び/又は状態が、TRP M8受容体の上方制御の反映であること、あるいは、TRP M8受容体の上方制御により引き起こされることを認識するであろう。本発明は、TRP M8受容体の調節をモニターする方法を更に目的とし、かかる必要のある患者に本明細書に記載の放射性標識された化合物のいずれかを有効量投与することを含んでなる。本発明は、TRP M8拮抗物質治療法を必要とする及び/又はTRP M8拮抗物質治療法に反応し得る患者を選別するため診断ツールとしてTRP M8受容体の調節をモニターする方法を更に目的とし、かかる必要のある患者に本明細書に記載の放射性標識された化合物のいずれかを有効量投与することを含んでなる。
【0022】
本発明は、例えば、痛覚過敏症及びこれに類するものといった、TRP M8受容体により調節される疾患又は状態に関連して疼痛を伴う症状を改善するために電離放射線の集中的局所配置がTRP M8受容体集中部位にて行われる放射線治療法を更に目的とする。したがって、本発明は、放射線治療法を目的とし、かかる必要のある対象に本明細書に記載の放射性標識された化合物のいずれかを有効量投与することを含んでなる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、式(A)
【0024】
【化5】

の放射性標識された化合物並びにその溶媒和物及び製薬上許容し得る塩を目的とし、式(B)
【0025】
【化6】

の放射性標識された化合物並びにその溶媒和物及び製薬上許容し得る塩(ここで、式(A)の化合物又は式(B)の化合物におけるC原子及び/又はF原子の1つ以上は、対応する11C又は18Fと置換される)を更に目的する。本発明の実施形態では、式(A)の化合物におけるベンゾチエニル基の3位にて結合しているメチル基の炭素原子が、11Cと置換される。本発明の別の実施形態では、式(A)の化合物におけるフェニル−スルホニル−基の4位にて結合しているカルボキシ基の炭素原子が、11Cと置換される。本発明の別の実施形態では、式(B)の化合物のエチルスルホニル部分における末端炭素原子が、11Cと置換される。
【0026】
本発明の実施形態では、式(A)の化合物又は式(B)の化合物の(3−トリフルオロメチル−4−フルオロ−ベンジル)−部分におけるトリフルオロメチル置換基のフッ素原子は、放射性標識されない。
【0027】
式(A)の化合物及び式(B)の化合物は、対象の中枢及び/又は末梢神経系におけるTRP M8受容体の占有度を撮像するのに有用である。
【0028】
本発明は、式(I)
【0029】
【化7】

の放射性標識された化合物並びにその溶媒和物及び製薬上許容し得る塩を更に目的とし、式(II)
【0030】
【化8】

(式中、R1及びR2は本明細書で定義されている通りである)の放射性標識された化合物並びにその溶媒和物及び製薬上許容し得る塩を更に目的とする。式(I)の化合物及び式(II)の化合物は、対象の中枢及び/又は末梢神経系におけるTRP M8受容体の占有度を撮像するのに有用である。
【0031】
一実施形態では、本発明の化合物は、中枢神経系における、より好ましくは脳及び/又は脊髄における、TRP M8受容体の占有度を撮像するのに有用である。別の実施形態では、本発明の化合物は、末梢神経系におけるTRP M8受容体の占有度を撮像するのに有用である。
【0032】
別の実施形態では、本発明の化合物は、動物、好ましくはヒトにおける式(I)の化合物及び/又は式(II)の化合物の、薬物動態及び/又は生体内分布を測定するのに有用である。別の実施形態では、本発明の化合物は、動物、好ましくはヒトの脳、腎臓、肝臓、心臓又は他の器官における式(I)の化合物又は式(II)の化合物の生体内分布を測定するのに有用である。
【0033】
本発明の実施形態では、対象は哺乳類である。本発明の別の実施形態では、対象はヒトである。本発明の更に別の実施形態では、対象は、TRP M8受容体により調節される疾患又は状態の少なくとも1つの症状を、呈したことがある又は経験したヒトである。
【0034】
一実施形態では、本発明は、式(II−A)
【0035】
【化9】

の放射性標識された化合物又はその溶媒和物若しくは製薬上許容し得る塩を目的とする。別の実施形態では、本発明は、式(II−B)
【0036】
【化10】

の化合物又はその溶媒和物若しくは製薬上許容し得る塩を目的とする。
【0037】
式(A)、式(B)、式(I)及び式(II)の放射性標識された化合物、並びに、対応する放射性標識されていない化合物は、疼痛及びかかる疼痛を引き起こす疾患及び肺若しくは血管機能不全などの、疾患、症候群又は状態がTRPM8受容体の調節により影響される哺乳類及び/又はヒトなどの対象において、TRPM8調節疾患を処置又は改善するのに有用である。
【0038】
一実施形態では、式(I)及び式(II)の放射性標識された化合物、並びに、対応する式(I)及び式(II)の放射性標識されていない化合物は、疼痛及びかかる疼痛を引き起こす疾患及び肺若しくは血管機能不全などの、疾患、症候群又は状態がTRP M8受容体の調節により影響される哺乳類及び/又はヒトなどの対象において、TRP M8調節疾患を処置又は改善するのに有用である。特に、これらの化合物は、炎症性疼痛(炎症性痛覚過敏症及び炎症性過敏症が挙げられるがこれらに限定されない)、神経障害性疼痛、寒冷不耐症又は寒冷異痛症、末梢血管痛、掻痒、尿失禁、慢性閉塞性肺疾患、肺高血圧症及び不安神経症、並びに他のストレス関連障害が挙げられるがこれらに限定されないTRP M8受容体に調節される疾患を処置又は改善するのに有用である。
【0039】
炎症性疼痛の例には、炎症性腸疾患、内臓疼痛、偏頭痛、術後疼痛、変形性関節炎、間節リウマチ、背痛、腰痛、間節痛、腹痛、胸痛、陣痛、筋骨格疾患、皮膚疾患、歯痛、発熱、火傷、日焼け、蛇咬症、毒蛇咬症、クモの咬傷、虫刺され、過敏膀胱、間質性膀胱炎、尿路感染、鼻炎、接触皮膚炎/過敏症、掻痒、湿疹、咽頭炎、粘膜炎、腸炎、過敏性腸症候群、胆嚢炎、膵臓炎、乳房切除術後疼痛症候群、生理痛、子宮内膜症、副鼻腔炎による頭痛、緊張性頭痛、若しくは、くも膜炎を含む疾患、病的状態、症候群、障害、又は疼痛状態による疼痛が挙げられる。
【0040】
炎症性疼痛の一類型は、炎症性痛覚過敏症であり、これは更に炎症性身体痛覚過敏症又は炎症性内臓痛覚過敏症に区別される。炎症性身体痛覚過敏症は、熱的、機械的及び/又は化学的刺激への過敏症が認められる炎症性痛覚過敏状態の存在により特徴付けられる。炎症性内臓痛覚過敏症は、亢進した内臓興奮性が認められる炎症性痛覚過敏状態の存在により特徴付けられる。
【0041】
炎症性痛覚過敏症の例には、炎症、変形性関節炎、間節リウマチ、腰痛、関節痛、腹痛、筋骨格疾患、皮膚疾患、術後疼痛、頭痛、歯痛、火傷、日焼け、虫刺され、過敏膀胱、尿失禁、間質性膀胱炎、尿路感染、咳、喘息、慢性閉塞性肺疾患、鼻炎、接触皮膚炎/過敏症、掻痒、湿疹、咽頭炎、腸炎、過敏性腸症候群、クローン病若しくは潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患を含む疾患、症候群、病的状態、障害又は疼痛状態による疼痛が挙げられる。
【0042】
炎症性過敏症状態の例には、尿失禁、良性前立腺肥大、咳、喘息、鼻炎及び鼻過敏症、掻痒、接触性皮膚炎及び/又は皮膚アレルギー並びに慢性閉塞性肺疾患が挙げられる。
【0043】
神経障害性疼痛の例には、がん、神経障害、脊椎及び末梢神経手術、脳腫瘍、外傷性脳傷害(TBI)、脊髄外傷、慢性疼痛症候群、線維筋痛、慢性疲労症候群、神経痛(三叉神経痛、舌咽神経痛、ヘルペス神経痛及び灼熱痛)、狼瘡、サルコイドーシス、末梢神経障害、両側性末梢神経障害、糖尿病性神経障害、中心性疼痛、脊髄損傷に伴う神経障害、脳卒中、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、多発性硬化症、坐骨神経炎、舌咽神経痛、末梢神経炎、多発性神経炎、断端痛、幻肢痛、骨折、口腔神経障害痛、シャルコー疼痛、複合性局所疼痛症候群I及びII(CRPSI/II)、神経根障害、ギラン・バレー症候群、知覚異常性大腿神経痛、口腔内灼熱症候群、視神経炎、発熱後神経炎、移動性神経炎、分節性神経炎、ゴンボール神経炎、神経細胞傷害、頸腕神経痛、頭蓋神経痛、膝神経痛、舌咽神経痛、群発頭痛、特発性神経痛、肋間神経痛、乳房神経痛、モートン神経痛、鼻毛様体神経痛、後頭神経痛、紅神経痛、スルーダー神経痛、スプレノパラチン(splenopalatine)神経痛、眼窩上神経痛、外陰部痛、又はビディアン神経痛を含む疾患、症候群、病的状態、障害、又は疼痛状態による疼痛が挙げられる。
【0044】
神経障害性疼痛の1類型は、神経障害性寒冷異痛症であり、寒冷刺激に対する過敏症が認められる神経障害に伴う異痛症状態の存在により特徴付けられる。神経障害性寒冷異痛症の例には、神経障害性疼痛(神経痛)、脊髄及び末梢神経の手術又は外傷により生じる疼痛、外傷性脳傷害(TBI)、三叉神経痛、ヘルペス後神経痛、灼熱痛、末梢神経障害、糖尿病性神経障害、中心性疼痛、脳卒中、末梢神経炎、多発性神経炎、複合性局所疼痛症候群I及びII(CRPSI/II)及び神経根障害を含む疾患、症候群、病的状態、障害、又は疼痛状態による異痛症が挙げられる。
【0045】
不安神経症の例には、社会不安神経症、心的外傷後ストレス障害、恐怖症、対人恐怖症、特定恐怖症、パニック障害、強迫神経症、極度のストレス障害、分離不安障害及び全般性不安神経症が挙げられる。うつ病の例には、大うつ病、双極性障害、季節性情動障害、産後うつ病、躁うつ病及び双極性うつ病が挙げられる。
【0046】
放射性標識されたTRP M8リガンドは、適切な放射性核種で標識されると、診断用撮像(例えば、PET撮像)、基礎研究及び放射線治療用途に利用可能である。可能な撮像(治験用、診断用、治療用、予防用撮像が挙げられるがこれらに限定されない)及び放射線治療用途の具体例には、TRP M8受容体の位置、相対活性及び/又は存在量、種々の器官及び組織におけるTRPM8リガンドの生体内分布の測定、哺乳類又はその器官若しくは組織サンプルにおけるTRP M8の分布を測定するためのオートラジオグラフィーが挙げられる。
【0047】
特に、本放射性標識されたTRP M8受容体リガンドは、ポジトロン放出放射性核種18Fで標識されると、生きているヒト及び実験動物の中枢及び末梢神経系内のTRP M8受容体のポジトロン放出断層(PET)撮像に有用である。本発明の放射性標識されたTRP M8受容体リガンドは更に、標識されていないTRP M8拮抗物質とTRP M8受容体とのin vivoでの、標識された薬剤と放射性標識された化合物との間での受容体との結合をめぐる競合を介する相互作用を検査するための研究ツールとして使用され得る。このタイプの検査は、TRP M8受容体占有度と標識されていないTRP M8受容体拮抗物質の投与量との間の関係を判定するのに有用であり、並びに、標識されていないTRP M8受容体拮抗物質の様々な量での投与による受容体の封鎖の持続時間の検査に有用である。臨床ツールとして、放射性標識されたTRP M8受容体リガンドは、TRP M8受容体拮抗物質の臨床的有効投与量を確定するのを助けるのに使用され得る。動物実験では、放射性標識されたTRP M8受容体リガンドは、臨床的開発に向けた選別のために可能性のある薬剤候補間での選択に有用である情報を提供するのに使用することができる。放射性標識されたTRP M8受容体リガンドはまた、生きているヒトの脳及び生きている実験動物の脳において、並びに他の器官又は組織サンプルにおいて、TRP M8受容体の局所分布及び濃度を検査するのに使用され得る。
【0048】
放射性標識されたTRP M8受容体リガンドはまた、TRP M8受容体濃度における疾患又は薬理学的に関連する変化を検査するのに使用され得る。例えば、本発明の放射性標識されたTRP M8受容体リガンドなどのポジトロン放出断層(PET)トレーサは、以下の情報を得るために、現在利用可能なPET技術を用いて使用できる:TRP M8拮抗物質による受容体の占有度と患者における臨床有効性との間の関係、長期間臨床検査の開始に先立ってのTRP M8拮抗物質の臨床試験に向けての投与量選択、構造的に新規のTRP M8拮抗物質の潜在力の比較、TRP M8受容体拮抗物質と他の作用剤での治療ターゲットの処置の際のin vivo受容体親和性及び密度におけるTRP M8拮抗物質の影響の評価、TRP M8拮抗物質での有効な若しくは有効ではない処置中の炎症性若しくは神経障害性疼痛、寒冷不耐症若しくは寒冷異痛症、末梢血管痛、掻痒、尿失禁、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺高血圧症及び不安神経症、並びに他のストレス関連障害を引き起こすものが挙げられるがこれらに限定されない疾患、症候群及び障害におけるTRP M8の密度及び分布の変化、並びに、これらの障害におけるTRP M8受容体発現及び分布の変化。
【0049】
別の例では、本発明の放射性標識されたTRP M8受容体リガンドは、試験化合物(薬剤)の薬物動態及び/又は生体内分布を測定するために動物(好ましくは哺乳類、より好ましくはヒト)におけるPET撮像に使用され得る。一例では、本発明の放射性標識されたTRP M8受容体リガンドは、以下のように生体内分布及び/又は薬物動態を測定するためにPET撮像に使用され得る。
【0050】
ラットを麻酔にかけ(酸素中1.5%のイソフルラン)、PETカメラに配置し、注入を容易にするために尾静脈にカニューレを挿入する。動脈又は静脈カテーテルを採血のために配置する。約1mCiの放射性標識されたTRP M8受容体リガンド(好ましくは本発明の放射性標識されたTRP M8受容体リガンド)をその尾静脈を介して注入し、動脈又は静脈血液サンプルを定期的に回収して、フルタイム活性曲線を得る。中枢及び/又は末梢神経系、並びに、更には動物の全身体の画像の取得は、放射性トレーサが注入されると開始され、最大2時間にわたって継続される。脳及び他の器官を含む関心領域(ROI)について集計画像を作り、次に、これを使用して動的画像の計数率を分析する。血液サンプルを遠心分離器で回転させて、血漿を分離し、ウェル計数機で計数する。脳、肝臓、腎臓、心臓などといった器官における計数は、各組織における薬剤の感光を測定するために、更には各器官における薬物動態を測定するために使用され得る。
【0051】
探索剤又は造影剤として本化合物を使用するために、放射性標識された化合物は、哺乳類、好ましくはヒトに、単独又は好ましくは製薬上許容し得る担体若しくは希釈剤と組み合わせて、医薬組成物として投与することができ、所望により既知の補助剤、例えばミョウバンと共に、標準的医薬慣行に従って医薬組成物として投与され得る。このような組成物は、経口又は非経口で、例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、直腸及び投与の局所的経路などで投与することができる。好ましくは、投与は静脈内による。短寿命ポジトロン放出放射性核種で標識された放射性トレーサは、ほぼいつも、これらの合成の1時間未満の間に静脈内注射を介して投与される。これは、関連する放射性核種の短い半減期のために必要である(11C及び18Fについて、それぞれ20分及び110分)。
【0052】
本発明での使用に必要とされるTRP M8受容体リガンドの量は、選択される特定の化合物又は組成物についてだけではなく、投与経路、処置又は検査される状態の性質、並びに患者の年齢及び状態についても変動し、究極的にはその患者の主治医又は薬剤師の判断であることが理解されよう。本発明による放射性標識されたTRP M8受容体リガンドがヒト対象に投与される場合、撮像に必要とされる量は通常、処方医により決定され、投与量は通常、個々の患者の年齢、体重及び反応、並びに放射性核種からの放出量により変動する。
【0053】
一実施形態では、本発明の放射性標識されたTRP M8リガンドは生理食塩水での点滴、所望により約10%以下のエタノールを有する混合物での(例えば、約5%〜約10%のエタノールを有する混合物での)点滴で投与され得る。当業者であれば、このエタノールが、放射性標識されたTRP M8リガンドを溶解させるのを助けるために使用され得ることを理解するであろう。
【0054】
本発明の一実施形態では、放射性標識されたTRP M8リガンドは、ラットにおける投与のために、約2mL以下の容量で、約1mCiの総活性にて配合される。本発明の別の実施形態では、放射性標識されたTRP M8リガンドは、ヒトにおける投与のために、約1mL〜約10mLの容量で、又はその中の任意の範囲で、例えば約5mLで、約1mCi〜約20mCiの範囲、又はその中の任意の範囲の総活性、例えば、約10mCi〜約20mCiの範囲又はその中の任意の範囲の総活性を生じる注入投与量にて配合される。
【0055】
以下は、PET撮像における本発明の放射性標識された化合物の使用方法の例を説明する。
【0056】
例では、本発明の放射性標識された化合物は、以下の手順に従って、医療機関における患者(好ましくはヒト患者)のPET撮像検査に使用される。患者は、実験日に先立って、2週間にわたって標識されていないTRP M8受容体拮抗物質を予め投薬される(例えば、およそ30mg/kg/日の投与量)。放射性標識されたTRP M8リガンドの投与のために、20G、2インチの静脈カテーテルを尺骨静脈内に挿入し、採血のために同様のカテーテルを対側の橈骨動脈内に挿入する。放射性標識されたTRP M8受容体リガンド(<20mCi)をボーラスとして点滴カテーテルを介して投与し、動脈血液サンプルを回収する。血液サンプルを遠心分離器で回転して、血漿を分離し、ウェル計数機において計数し、一方、いくつかのサンプルを放射性標識された代謝産物のHPLCによる更なる分析のために取っておく。患者をPETカメラに配置し、中枢及び/又は末梢神経系の画像を放射性トレーサの投与直後に回収する。
【0057】
別の例では、本発明の放射性標識された化合物は、以下の手順に従って哺乳類、例えば、ラットにおけるMicroPET撮像に使用される。ラットを麻酔にかけ(酸素中1.5%のイソフラン)、PETカメラに配置し、注入を容易にするために尾静脈にカニューレを挿入する。追加的に動脈カテーテルが採血のために配置されてもよい。受容体占有度を測定するために、放射性標識されたTRP M8リガンドの注入の60〜120分前に、標識されていないTRP M8受容体拮抗物質をラットに予め注入する。約1mCiの放射性標識されたTRP M8受容体リガンドをその尾静脈を介して注入し、動脈血液サンプルを定期的に回収して、フルタイム活性曲線を得る。中枢及び/又は末梢神経系の画像の取得は、放射性トレーサが注入されると開始され、最大2時間にわたって継続される。脳を含む関心領域(ROI)について集計画像を作り、次に、これを使用して動的画像の計数率を分析する。血液サンプルを遠心分離器で回転して、血漿を分離し、ウェル計数機において計数し、いくつかのサンプルを放射性標識された代謝産物の、HPLCを用いる更なる分析のために取っておく。
【0058】
更に別の例では、本発明の放射性標識された化合物は、以下の手順に従って哺乳類、例えば、イヌにおけるPET撮像に使用される。実験日に先立って、2週間にわたって、標識されていないTRP M8受容体拮抗物質を7.7〜14.6kgの体重のメスのビーグル犬に予め投薬する(例えば、30mg/kg/日の投与量で)。20G、2インチの静脈カテーテルを右前脚尺骨静脈内に挿入し、これを通して25〜30mg/kgにて3〜4mLのペントバルビタールナトリウムにより麻酔を導入し、3mg/kg/時間の平均投与量での追加のペントバルビタールで維持する。放射性標識されたTRP M8リガンドの投与のために別のカテーテルを対側の尺骨静脈内に挿入する。動脈カテーテルが採血のために配置されてもよい。動物の舌に配置される脈波型酸素飽和度計(Nellcor Inc.(Hayward,CA))により、循環血液の酸素飽和を測定する。等張生理食塩水の静脈内注射により、循環容積を維持する。持続的圧力モニタリングのために、前脛骨動脈又は遠位大腿動脈の中に22Gのカニューレを挿入する。心電図、心拍数及び体内温度を持続的にモニターする。特に、心電図を20STセグメント変化及び不整脈について観察する。動物をPETカメラに配置し、ある投与量の放射性標識されたTRP M8受容体リガンド(<20mCi)を点滴カテーテルを介して投与する。放射性標識されたTRP M8リガンドの投与に続き、画像を最大2時間にわたって取得する。放射性標識されたTRP M8リガンドの注入の10分以内に、及び撮像セッションの終了時に、1mLの血液サンプルを試験化合物の血漿濃度を測定するために得る。検査の最後に、動物を正常状態に戻し、それらが放射性活性でなくなるまで特殊動物ハウジングに返す。
【0059】
PET撮像に続き、得られた画像は、以下のように分析することができる。放射性トレーサの分布を測定するために、中枢(例えば、脳、脊髄など)及び/又は末梢神経系における関心領域(ROI)について、再構築された画像を作る。これらの領域を使用して、時間活性曲線を作り、これを、コンパートメント式トレーサ動態モデルを使用して、代謝産物補正動脈血漿計数データと組み合わせる。結果の測定値は、分布容量及び結合電位などの、結合している放射性標識されたTRP M8リガンドに関する定量的パラメータを含む。冷感TRP M8受容体拮抗物質の存在下、これらのパラメータは、投与量の関数として計算することができ、冷感拮抗物質による受容体の占有度の尺度を提供する。これらの結果は、ED50、すなわち、利用可能なTRP M8受容体の50%を遮断するのに必要な有効量を更に提供することができる。
【0060】
本明細書、特にこれ以降に続く「スキーム」及び「実施例」で使用される略語は、以下の通りである。
【0061】
【表1】

【0062】
この書かれた説明でより拡張的に提供されているように、「反応する」及び「反応した」などの用語は、本明細書では、(a)かかる化学物質の実際に引用されている形態、及び(b)化合物が命名時に想定されている媒質中のかかる化学物質の形態のうちのいずれか、のうちのいずれか1つである化学的物質を参照して使用される。
【0063】
当業者は、特に指示がない限り、反応工程は、適切な条件下で、公知の方法に従って行われて、所望の生成物を提供することを認識するであろう。当業者は、更に、本明細書に提示された明細書及び特許請求の範囲において、試薬又は試薬のクラス/種類(例えば、塩基、溶媒等)が方法の1を超える工程に引用されている場合、個々の試薬は、各反応工程に関して独立して選択され、同一であってもよく、又は互いに異なっていてもよいことを認識するであろう。例えば、方法の2つの工程が、試薬として有機又は無機塩基を挙げている場合、第1工程に関して選択される有機又は無機塩基は、第2工程の有機又は無機塩基と同一でも異なっていてもよい。更に、当業者であれば、本発明の反応工程を、様々な溶媒又は溶媒系中で行うことができ、かかる反応工程はまた、好適な溶媒又は溶媒系の混合物中でも行うことができることを認識するであろう。
【0064】
説明をより簡潔にする目的で、本明細書に示す量的表現のいくつかは、用語「約」により制限されない。用語「約」が明確に用いられていようといまいと、本明細書に記載する全ての量はその実際値を指すことを意味し、またこのような値の実験及び/又は測定条件による近似値を含む、当該技術分野における通常の技量に基づいて合理的に推測されるようなこのような値の近似値を指すことも意味する。
【0065】
より簡潔な説明を提供するために、本明細書の量的表現のいくつかは、約量X〜約量Yの範囲として列挙される。範囲が列挙されていようといまいと、範囲は、列挙された上限及び下限に限定されるものではなく、約量X〜約量Yの全範囲、又はその中の任意の範囲を含むと理解される。
【0066】
好適な溶媒、塩基、反応温度、並びに他の反応パラメータ及び成分の例は、本明細書で以下に詳細に説明される。当業者は、上記例の列挙が、以後の特許請求の範囲に記載される発明を決して限定する意図はなく、そのように解釈すべきではないことを認識する。
【0067】
本明細書で使用するとき、特に指摘がない限り、用語「脱離基」は、置換又は変位反応中に離脱する帯電又は非帯電の原子又は基を意味するものとする。好適な例には、Br、Cl、I、メシラート、トシレートなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
本明細書で使用するとき、特に指摘がない限り、用語「クラウンエーテル」は、複数のエーテル基を含有する環、例えばエチレンオキシドの繰り返し単位(対応する四量体、五量体及び六量体が挙げられるがこれらに限定されない)を含む環、からなる複素環式化合物を意味するものとする。特に指摘がない限り、クラウンエーテルの名前における第一の数はサイクルにおける原子数を指し、第二の数は酸素である原子の数を指す。クラウンエーテルの好適な例には、12−クラウン−4、15−クラウン−5、18−クラウン−6、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジアザ−18−クラウン−6及びこれに類するものが挙げられ、好ましくは18−クラウン−6である。
【0069】
本明細書で使用するとき、特に指摘がない限り、用語「クリプタンド」は、3つの配位窒素原子が三次元構造の頂点を提供する任意の巨大多環式ポリアゾ−ポリエーテルを意味するものとする。好適な例には、N[CH2CH2OCH2CH2OCH2CH23N(1,10−ジアザ−4,7,13,16,21,24−ヘキサオキサビシクロ[8.8.8]ヘキサコサンとしても知られる)、KRYPTOFIX(登録商標)2.2.2(VWR Scientific、Aldrich及びFlukaから入手可能)及びこれらに類するものが挙げられるがこれらに限定されない。
【0070】
当業者は、本発明の反応工程を、様々な溶媒又は溶媒系中で行うことができ、この反応工程はまた、適切な溶媒又は溶媒系の混合物中でも行うことができることを認識するであろう。
【0071】
本発明による化合物を製造する方法により立体異性体の混合物が生じる場合、これらの異性体は、分取クロマトグラフィーのような従来の技術により分離することができる。化合物はラセミ体で製造されてもよく、又は個々のエナンチオマーがエナンチオ選択的合成若しくは分解のいずれかにより製造されてもよい。化合物は、例えば標準的な技術、例えば(−)−ジ−p−トルオイル−D−酒石酸及び/又は(+)−ジ−p−トルオイル−L−酒石酸などの光学的に活性な酸と共に塩を形成することによりジアステレオマー対を形成した後、分別結晶化及び遊離塩基の再生を行ってそれらの成分であるエナンチオマーに分解することができる。化合物は、ジアステレオマーエステル又はアミドの形成、その後のクロマトグラフ分離及びキラル補助基の除去により分解することもできる。代替的に、化合物は、キラルHPLCカラムを使用して分解されてもよい。
【0072】
更に、標準に対して、キラルHPLCは、エナンチオマー過剰パーセント(%ee)を決定するのに使用される。エナンチオマー過剰は、以下のように計算され得る。
[(Rモル−Sモル)/(Rモル+Sモル)]×100%
式中、Rモル及びSモルは、混合物の中のR及びSのモル分率であり、Rモル+Sモル=1となっている。別の方法としては、エナンチオマー過剰は、所望のエナンチオマー及び製造された混合物の比旋光度から、以下のように計算してもよい。
ee=([α−obs]/[α−max])×100。
【0073】
本発明の化合物の任意の製造する方法の間、関与する任意の分子の感応性基又は反応性基を保護することが必要かつ/又は望ましい場合がある。これは、「Protective Groups in Organic Chemistry」(ed.J.F.W.McOmie,Plenum Press,1973)及びT.W.Greene & P.G.M.Wuts「Protective Groups in Organic Synthesis」(John Wiley & Sons,1991)に記載されているものなどの従来の保護基により得てもよい。保護基は、当該技術分野において既知の方法を用いて、都合のよいその後の段階で除去してよい。
【0074】
式(A)及び式(B)の放射性標識された化合物は、非放射性活性ではないC原子及び/又はF原子を、対応する11C及び18F原子と置換することにより製造されてもよい。
【0075】
放射性核種を組み込む本発明のTRP M8受容体リガンドは、本明細書の以降に説明される「スキーム」で説明されるように製造され得る。式(I)の化合物は、スキーム1に概要が示される方法に従って製造され得る。
【0076】
【化11】

【0077】
これによると、式(X)(式中、A1はC1〜4アルキル、好ましくはメチルであり、既知の化合物又は既知の方法により製造される化合物である)の好適に置換された化合物は、式(XI)の好適に置換された、放射性標識された化合物(式中、Q1は、脱離基から好適に選択される)と反応して、式(XII)の対応する化合物を生じる。
【0078】
例えば、式中、Q1は、Br、Cl、I及びこれらに類するものなどの脱離基であり、好ましくはBrであり、式(X)の化合物がモル過剰で存在する中、NaH、Cs2CO3、K2CO3及びこれらに類するものなどの無機塩基、好ましくはNaHの存在下、DMF、THF、1,4−ジオキサン、DMSO及びこれらに類するものなどの有機溶媒中で、好ましくは約25℃〜約100℃の範囲の温度にて、式(X)の化合物は式(XI)の化合物と反応し、式(XI)の化合物は式(X)の化合物と反応して、式(XII)の対応する化合物を生じる。
【0079】
あるいは、式(XI)の化合物の式中、Q1はOHなどの脱離基であり、光延反応条件(トリフェニルホスフィン及びこれに類するものの存在下、DEAD及びこれに類するものなどのカップリング剤の存在下、THF及びこれに類するものなどの有機溶媒中)下で、式(X)の化合物は式(XI)の化合物と反応して、式(XII)の対応する化合物を生じる。
【0080】
式(XII)の化合物は、メタノール、エタノール、メタノール/水及びこれらに類するものなどの有機溶媒又は有機溶媒と水との混合物の中で、NaOH、LiOH及びこれらに類するものなどの好適に選択された塩基、好ましくはNaOHと反応して、式(I)の対応する化合物を生じる。
【0081】
式(I)の化合物は、以下のスキーム2に概要が示される方法に従って代替的に製造されてもよい。
【0082】
【化12】

【0083】
これによると、式(X)(式中、A1はC1〜4アルキル、好ましくはメチルであり、既知の化合物又は既知の方法により製造される化合物である)の好適に置換された化合物は、式(X)の化合物がモル過剰で存在する中、NaH、Cs2CO3、K2CO3及びこれらに類するものなどの無機塩基、好ましくはNaHの存在下、DMF、THF、1,4−ジオキサン、DMSO及びこれらに類するものなどの有機溶媒中で、好ましくは約25℃〜約100℃の範囲の温度にて、式(XXI)の好適に置換された、放射性標識された化合物(式中、Q2は、Br、Cl、I及びこれらに類するものなどの脱離基であり、好ましくはBrである)と反応して、式(XIII)の対応する化合物を生じる。
【0084】
式(XIII)の化合物は、18−クラウン−6及びこれに類するものなどのクラウンエーテル又はKRYPTOFIX(登録商標)2.2.2及びこれに類するものなどのクリプタンドの存在下、式(XIII)の化合物が好ましくは約100倍超のモル過剰で存在する中、DMSO、DMF、CH3CN及びこれらに類するものなどの有機溶媒、好ましくはDMSOの中で、放射性標識された18-(既知の化合物又は既知の方法により製造される化合物である)と反応して、式(XIV)の対応する放射性標識された化合物を生じる。
【0085】
式(XIV)の化合物は、メタノール、エタノール、メタノール/水及びこれらに類するものなどの有機溶媒又は有機溶媒と水との混合物の中で、NaOH、LiOH及びこれらに類するものなどの好適に選択された塩基、好ましくはNaOH、と反応して、式(I)の対応する化合物を生じる。
【0086】
式(II−A)の化合物は、スキーム3に概要が示される方法に従って製造されてもよい。
【0087】
【化13】

【0088】
これによると、式(XV)の好適に置換された化合物(既知の化合物又は既知の方法により製造される化合物である)は、式(XI)の好適に置換された、放射性標識された化合物(式中、Q1は、脱離基から好適に選択される)と反応して、式(XVI)の対応する化合物を生じる。
【0089】
例えば、式中、Q1は、Br、Cl、I及びこれらに類するものなどの脱離基であり、好ましくはBrであり、式(XV)の化合物がモル過剰で存在する中、NaH、Cs2CO3、K2CO3及びこれらに類するものなどの無機塩基、好ましくはNaHの存在下、DMF、THF、1,4−ジオキサン、DMSO及びこれらに類するものなどの有機溶媒中で、好ましくは約25℃〜約100℃の範囲の温度にて、式(XV)の化合物は式(XI)の化合物と反応し、式(XI)の化合物は式(XV)の化合物と反応して、式(XVI)の対応する化合物を生じる。
【0090】
あるいは、式(XI)の化合物の式中、Q1はOHなどの脱離基であり、光延反応条件(トリフェニルホスフィン及びこれに類するものの存在下、DEAD及びこれに類するものなどのカップリング剤の存在下、THF及びこれに類するものなどの有機溶媒中)下で、式(XV)の化合物は式(XI)の化合物と反応して、式(XVI)の対応する化合物を生じる。
【0091】
式(XVI)の化合物は、有機金属試薬が好ましくは少なくとも約1モル当量の量で存在する中、THF、1,4−ジオキサン及びこれに類するものなどの有機溶媒中で、好ましくは約−20℃〜約25℃の範囲の温度にて、メチルマグネシウムブロミド、メチルリチウム及びこれに類するものなどの好適に選択された有機金属試薬、好ましくはCH3MgBrと反応して、式(II−A)の対応する化合物を生じる。
【0092】
式(II−B)の化合物は、スキーム4に概要が示される方法に従って製造されてもよい。
【0093】
【化14】

【0094】
これによると、式(XV)の好適に置換された化合物(既知の化合物又は既知の方法により製造される化合物である)は、式(XVII)の好適に置換された化合物(式中、Q1は、脱離基から好適に選択される)と反応して、式(XVIII)の対応する化合物を生じる。
【0095】
例えば、式中、Q1は、Br、Cl、I及びこれらに類するものなどの脱離基であり、好ましくはBrであり、式(XVII)の化合物が好ましくは(式(XV)の化合物のモルに対して)1モル当量で存在する中、NaH、Cs2CO3、K2CO3及びこれらに類するものなどの無機塩基、好ましくはNaHの存在下、DMF、THF、1,4−ジオキサン、DMSO及びこれらに類するものなどの有機溶媒中で、好ましくは約25℃〜約100℃の範囲の温度にて、式(XV)の化合物は式(XVII)の化合物と反応して、式(XVIII)の対応する化合物を生じる。
【0096】
あるいは、式(XI)の化合物の式中、Q1はOHなどの脱離基であり、光延反応条件(トリフェニルホスフィン及びこれに類するものの存在下、DEAD及びこれに類するものなどのカップリング剤の存在下、THF及びこれに類するものなどの有機溶媒中)下で、式(XV)の化合物は式(XVII)の化合物と反応して、式(XVIII)の対応する化合物を生じる。
【0097】
モル過剰の式(XVIII)の化合物は、THF、1,4−ジオキサン及びこれに類するものなどの有機溶媒、好ましくはTHF中で、好ましくは約−20℃〜約25℃の範囲の温度にて、[11C]で放射性標識されたメチルリチウム(既知の化合物又は既知の方法により製造される化合物である)と反応して、式(II−B)の対応する化合物を生じる。
【0098】
式(XI)の放射性標識された化合物は、スキーム5に概要が示されるように製造されてもよい。
【0099】
【化15】

【0100】
これによると、式(V)(式中、Xは、N+(CH33、NO2、Br及びClよりなる群から選択され、既知の化合物又は既知の方法により製造される化合物である)の化合物は、18−クラウン−6及びこれに類するものなどのクラウンエーテル又はKRYPTOFIX(登録商標)2.2.2及びこれに類するものなどのクリプタンドの存在下、式(V)の化合物が好ましくは約100倍超のモル過剰で存在する中、DMSO、DMF、CH3CN及びこれらに類するものなどの有機溶媒、好ましくはDMSO中で、放射性標識された18-(既知の化合物又は既知の方法により製造される化合物である)と反応して、式(VI)の対応する放射性標識された化合物を生じる。
【0101】
式(VI)の化合物は、水などの溶媒中で水素化ホウ素ナトリウム及びこれに類するものなどの好適に選択された還元剤と反応することにより還元されて、式(XIb)の対応する化合物(式中、Q1がヒドロキシである式(XI)の化合物である)を生じる。
【0102】
次に、式(XIb)の化合物は、DCM、DCE、クロロホルム及びこれらに類するものなどの有機溶媒、好ましくはDCM、の中で、PCl3、PBr3、PI3、Ph3PBr2、Ph3PI2、P24及びこれらに類するものなどの好適に選択されたハロゲン化試薬、好ましくはPh3PBr2と反応して、式(XIa)の対応する化合物(式中、Q1がCl、Br、I及びこれらに類するものなどの対応するハロゲンである式(XI)の化合物である)を生じる。好ましくは、式(XIb)の化合物は、好適に選択された臭素化剤と反応して、式(XIa)の対応する化合物(式中、Q1がBrである)を生じる。
【0103】
式(A)の化合物におけるベンゾチエニル基の3位にて結合しているメチル基の炭素原子が、11Cと置換されている式(A)の化合物は、式(P1)
【0104】
【化16】

の化合物(式中、LG1は、Br、I及びこれらに類するものなどの好適に選択される脱離基である)を、Pd(アリルクロリド)2、PdCl2(CH3CN)2、又はAsPh3と一緒のPd2(dba)3及びこれらに類するものなどのPd(0)又はPd(II)種の存在下、DMF及びこれらに類するものなどの有機溶媒中で、好ましくは約2〜約10分にわたって、好ましくは約100℃にて、5−[11C]メチル−1−アザ−5−スタンナ−ビシクロ[3.3.3]ウンデカン(T.Forngren,L.Samuelsson,B.Langstrom J.Labelled Compd.Radiopharm.2004,47,71〜78)及びこれに類するものなどの放射性標識された11CH3−スズ試薬と反応させることにより製造され得る。
【0105】
式(A)の化合物におけるフェニル−スルホニル−基の4位にて結合しているカルボキシ基の炭素原子が11Cと置換されている式(A)の化合物は、式(P2)
【0106】
【化17】

の化合物(式中、LG2は、Br、I及びこれらに類するものなどの好適に選択される脱離基である)を、n−ブチルリチウム及びこれに類するものなどの好適に選択される有機金属試薬と反応させることにより製造され、次に、不活性雰囲気下、THFなどの有機溶媒中で、放射性標識された11CO2により捕捉され得る。
【0107】
式(B)の化合物のエチルスルホニル部分における末端炭素原子が、11Cと置換されている式(B)の化合物は、式(P3)
【0108】
【化18】

の化合物を、不活性雰囲気下、THF及びこれに類するものなどの有機溶媒中で、約2当量超の、リチウムジイソプロピルアミド及びこれに類するものなどの好適に選択される有機金属試薬又はリチウムアミド塩基と反応させることにより製造され得る。次に、得られたリチオ種は、既知の方法に従って[11C]メチルヨードで処理されて、[11C]で標識された化合物(B)を生じる。
【0109】
薬剤で使用するために、本発明の化合物の塩は非毒性の「製薬上許容し得る塩」を指す。しかしながら、他の塩も本発明の化合物又はそれらの製薬上許容し得る塩の製造に有用となり得る。本発明の化合物の好適な製薬上許容し得る塩には、例えば、化合物の溶液を塩酸、硫酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、クエン酸、酒石酸、炭酸又はリン酸などの製薬上許容し得る酸の溶液と混合することにより形成できる酸付加塩が挙げられる。更に、本発明の化合物が酸性部分を有する場合、好適な製薬上許容し得る塩には、ナトリウム又はカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム又はマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、及び四級アンモニウム塩などの好適な有機リガンドで形成される塩を挙げてもよい。したがって、代表的な製薬上許容し得る塩には、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、酸性酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物塩、カルシウム・エデト酸塩、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物塩、クラブラン酸塩、クエン酸塩、2塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストレート、エシラート、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニレート、ヘキシルレゾルシネート、ハイドロバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエート、ヨウ化物塩、イソチオネート、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、メチル臭化物塩、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、ムチン酸塩、ナプシラート、硝酸塩、N−メチルグルカミン・アンモニウム塩、オレイン酸塩、パモン酸塩(エンボナート)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/2リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオジド及び吉草酸塩が挙げられる。
【0110】
製薬上許容し得る塩の製造に使用され得る代表的な酸及び塩基には、酢酸、2,2−ジクロロ酢酸(2,2-dichloroactic acid)、アシル化アミノ酸、アジピン酸、アルギン酸、ascorbate、L−アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4−アセトアミド安息香酸、(+)−しょうのう酸、カンファースルホン酸、(+)−(1S)−カンファー−10−スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、D−グルコン酸、D−グルコロン酸(D−glucoronic acid)、L−グルタミン酸、α−オキソ−グルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、(+)−L乳酸、(±)−DL−乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、(−)−L−リンゴ酸、マロン酸、(±)−DL−マンデル酸、メタンスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、L−ピログルタミン酸、サリチル酸、4−アミノ−サリチル酸、セバシン酸(sebaic acid)、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、タンニン酸、(+)−L−酒石酸、チオシアン酸、p−トルエンスルホン酸及びウンデシレン酸などの酸、並びに、アンモニア、L−アルギニン、ベネタミン、ベンザチン、水酸化カルシウム、コリン、デアノール、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、2−(ジエチルアミノ)−エタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−メチル−グルカミン、ヒドラバミン、1H−イミダゾール、L−リシン、水酸化マグネシウム、4−(2−ヒドロキシエチル)−モルホリン、ピペラジン、水酸化カリウム、1−(2−ヒドロキシエチル)−ピロリジン、二級アミン、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、トロメタミン及び水酸化亜鉛などの塩基が挙げられる。
【0111】
本発明のいくつかの化合物は、水との「溶媒和物」(すなわち、水和物)又は通常の有機溶媒との「溶媒和物」を形成することができ、そのような溶媒和物も、本発明の範囲内に包含されることが意図される。当業者であれば、本明細書で用いる用語「化合物」が、本発明の化合物の溶媒和物を含むことを意味することを理解するであろう。
【0112】
本発明の実施形態は、本発明の化合物のプロドラッグを含む。一般に、かかる「プロドラッグ」は、in vivoで必要な化合物に容易に変換され得る化合物の機能的誘導体である。したがって、本発明の治療又は予防の実施形態方法においては、用語「投与する」は、具体的に開示された化合物又は具体的には開示されていないが、患者に投与後にin vivoにおいて特定の化合物に変換される化合物と共に記載される様々な疾患、病的状態、症候群、及び障害の治療又は予防を包含する。好適なプロドラッグ誘導体の選択及び製造のための従来手順は、例えば、「Design of Prodrugs」(ed.H.Bundgaard,Elsevier,1985)に述べられている。
【0113】
本明細書で使用するとき、特に指摘がない限り、用語「単離された形態」は、化合物が、別の化合物との任意の固体混合物、溶媒系又は生物学的環境から分離された形態で存在することを意味するものとする。一実施形態では、式(A)の化合物は、単離された形態で存在する。別の実施形態では、式(B)の化合物は、単離された形態で存在する。一実施形態では、式(I)の化合物は、単離された形態で存在する。別の実施形態では、式(II)の化合物は、単離された形態で存在する。
【0114】
本明細書で使用するとき、特に断りがない限り、用語「実質的に純粋な化合物」は、単離した化合物中の不純物のモルパーセントが、約5モルパーセント未満、好ましくは約2モルパーセント未満、より好ましくは約0.5モルパーセント未満、最も好ましくは約0.1モルパーセント未満であることを意味するものとする。一実施形態では、式(A)の化合物は、実質的に純粋な形態で存在する。別の実施形態では、式(B)の化合物は、実質的に純粋な形態で存在する。一実施形態では、式(I)の化合物は、実質的に純粋な形態で存在する。別の実施形態では、式(II)の化合物は、実質的に純粋な形態で存在する。
【0115】
本明細書で使用するとき、特に断りのない限り、用語「対応する塩形態を実質的に含まない」は、単離した化合物の対応する塩形態のモルパーセントが、約5モルパーセント未満、好ましくは約2モルパーセント未満、より好ましくは約0.5モルパーセント未満、最も好ましくは約0.1モルパーセント未満であることを意味するものとする。一実施形態では、式(A)の化合物は、対応する形態を実質的に含まずに存在する。別の実施形態では、式(B)の化合物は、対応する形態を実質的に含まないものとして存在する。一実施形態では、式(I)の化合物は、対応する形態を実質的に含まずに存在する。別の実施形態では、式(II)の化合物は、対応する形態を実質的に含まないものとして存在する。
【0116】
本明細書で使用するとき、用語「対象/患者」は、処置、観察又は実験に付されている動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを指す。好ましくは、対象/患者は、処置及び/又は予防するべき疾病又は疾患の少なくとも1つの症状を経験及び/又は示している。
【0117】
本明細書で使用するとき、用語「治療上の有効量」は、研究者、獣医、医師、又は他の臨床医により求められている、処置されている疾病又は疾患の症状の緩和を含む、組織系、動物、又はヒト内で生体学的反応又は医薬反応を引き出す活性化合物又は薬学的薬剤の量を意味する。
【0118】
本明細書で使用するとき、用語「組成物」は、特定の成分を特定の量で含む製品、並びに特定の量の特定の成分の組み合わせから直接的又は間接的に得られる任意の製品を包含することを意図する。
【0119】
本発明の化合物は、中枢及び/又は末梢神経系のPET撮像に有用である。本明細書で使用するとき、用語「中枢神経系」には、脳及び脊髄が含まれるが、これらに限定されない。更に、本明細書で使用するとき、用語「末梢神経系」には、関連する感覚受容体を含む脳神経及び脊髄神経が含まれるがこれらに限定されない。
【0120】
本発明は、製薬上許容し得る担体と共に本明細書に記載されている化合物のいずれかを含有する医薬組成物を更に目的とする。活性成分として本明細書に記載した本発明の化合物の1つ以上を含有する製薬学的組成物は、従来の製薬学的品配合技術に従って、化合物を製薬学的担体とよく混合することによって調製できる。担体は、所望の投与経路(例えば、経口、非経口)に応じて様々な形態をとってよい。それゆえに、懸濁液、エリキシル剤及び溶液などの液体経口調剤に好適な担体及び添加剤には、水、グリコール、油、アルコール、着香剤、防腐剤、安定剤、着色剤及びこれらに類するものが挙げられ、非経口的投与には、担体は通常、滅菌水からなり、溶解度又は保存性を増すために他の成分を加えてもよく、注入可能な懸濁液又は溶液の場合には、担体は適切な添加剤と共に水性キャリアを含んでもよい。
【0121】
本発明の医薬組成物を製造するために、活性成分としての1つ以上の本発明の化合物を、従来の医薬品配合技術に従って、医薬担体と共にしっかりと混合するが、この担体は、例えば経口又は筋肉内のような非経口投与に望ましい製剤の形態に応じて様々な形態をとることができる。経口剤形における組成物の製造には、任意の通常の医薬媒体を用いることができる。それゆえに、例えば、懸濁液、エリキシル剤及び溶液などの液体経口調剤の場合、好適な担体及び添加剤は、水、グリコール、油、アルコール、着香剤、防腐剤、着色剤及びこれらに類するものを含む。非経口の場合、担体は、通常、滅菌水を含むが、例えば、溶解性を助けるなどの目的のため又は保存のために、他の成分を含んでよい。注入用の懸濁液も製造することができ、その場合、適切な液体担体、懸濁化剤などを使用することができる。
【0122】
本明細書の医薬組成物には、投与量単位、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、注射液、茶さじ一杯などにつき、上述した有効投薬量を送達するのに必要な活性成分の量が含まれる。本明細書の医薬組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、注射液、坐薬、茶さじ一杯及びこれらに類するものといった投薬量単位毎に、約0.1μg〜約1000mg又はその中の任意の範囲からなり、約0.1μg〜約100mg/kg/日、又はその中の任意の範囲、好ましくは約1.0μg〜約50mg/kg/日、又はその中の任意の範囲の投薬量で与えてもよい。しかしながら、投薬量は患者の要求量、治療される状態の重症度及び採用される化合物に応じて変化してもよい。連日投与又は周期後投与のいずれを用いてもよい。有利なことに、本発明の化合物は、1回に1日量を投与してもよく、又は全1日量を1日2回、3回又は4回に分割して投与してもよい。
【0123】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、無菌非経口溶液若しくは懸濁液、計量されたエアゾール若しくは液体スプレー、ドロップ、アンプル又は自動注入装置又は座薬などからの投薬量単位である。あるいは、本組成物は、1週間に1回又は1カ月に1回の投与に好適な形態で提供され得る。
【0124】
経口投与又は注入投与用に本発明の新規組成物を組み込み得る液体形態としては、水性液剤、好適に香味付けされたシロップ剤、水性又は油性懸濁剤、及び綿実油、ゴマ油、ヤシ油又はピーナッツ油のような食用油を含む香味付けされたエマルション、並びにエリキシル剤及び同様の医薬賦形剤が挙げられる。水性懸濁剤のための好適な分散剤又は懸濁化剤としては、合成及び天然ゴム、例えばトラガカント、アカシア、アルギン酸塩、デキストラン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニル−ピロリドン又はゼラチンが挙げられる。
【0125】
本発明に記載される方法は、また、本明細書に定義される任意の化合物及び製薬上許容し得る担体を含む医薬組成物を用いて実施してもよい。医薬組成物は、約0.1μg〜約1000mgの化合物又はその中の任意の範囲、好ましくは約1.0μg〜約100mgの化合物を含有してもよく、選択される投与モードに好適な任意の形態に構成することができる。担体は、結合剤、懸濁化剤、滑沢剤、着香剤、甘味剤、保存剤、染料及びコーティングが挙げられるがこれらに限定されない必要かつ不活性な医薬賦形剤を含む。経口投与に好適な組成物には、溶液、シロップ剤、エリキシル剤、エマルション及び懸濁液を挙げてもよい。非経口投与用に有用な形態には、滅菌溶液、エマルション及び懸濁液を挙げてもよい。
【0126】
液体は、合成及び天然ゴム、例えば、トラガカント、アカシア、メチル−セルロースなどのような好適に香味付けされた懸濁化剤又は分散剤の形態をとる。非経口投与のためには、滅菌懸濁液及び溶液が望ましい。静脈内投与が望ましいとき、好適な保存剤を一般に含有する等張製剤を用いる。
【0127】
本発明の医薬組成物を製造するには、活性成分として本明細書に記載の化合物のいずれかを、従来の医薬配合技術に従って、医薬担体と共にしっかりと混合するが、その担体は、投与(例えば、経口又は非経口)に所望される製剤の形態に応じて、非常に様々な形態をとることができる。製薬学的に許容され得る好適な担体は、当技術分野にて周知である。これらの製薬学的に許容され得る担体のいくつかの説明は、American Pharmaceutical Association及びPharmaceutical Society of Great Britain出版の「Handbook of Pharmaceutical Excipients」に見出すことができる。医薬組成物を配合する方法は、例えば、Marcel Dekker,Inc出版の、Liebermanら編、「Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets」、第2版、改訂及びExpanded、第1〜3巻、Avisら編、「Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications」、第1〜2巻及びLiebermanら編、「Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems」、第1〜2巻のような多数の刊行物に記載されている。
【0128】
以下の実施例は、本発明の理解を補助するために記載され、以下の特許請求の範囲に記載される本発明を如何様にも限定することを意図するものではなく、また解釈されるべきではない。更に、当業者であれば、実施例1及び2が放射性標識されていない化合物の合成を説明することを理解するであろう。
【0129】
以下の実施例において、いくつかの合成生成物は、残留物として単離されたものとして列挙されている。当業者は、用語「残留物」が、生成物が単離された物理的状態を限定するものではなく、例えば、固体、油、発泡体、ゴム、シロップなどを含み得ることを理解するであろう。
【実施例】
【0130】
(実施例1)
N−[4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)−ベンジル]−N−(3−メチルベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−4−カルボキシ−ベンゼンスルホンアミドのナトリウム塩
【0131】
【化19】

【0132】
工程A:tert−ブチル−3−メチルベンゾ[b]チオフェン−2−イルカルバメート
オーバーヘッド機械的撹拌機、N2導入/排出アダプター、還流コンデンサー、加熱用マントル及び熱電対を取り付けた5−L四口フラスコに、t−ブチルアルコール(2.11L)、3−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(225.0g、1.17モル)及びジイソプロピルエチルアミン(225mL、1.29モル)を充填した。ジフェニルホスホリルアジド(304mL、1.4モル)をトルエン(300mL)と予備混合し、次に10分にわたって滴下により加えた。得られた混合物を21時間にわたって撹拌しながら還流させ、22℃に冷却し、次に減圧下で濃縮した。得られた残留物をCH2Cl2(1L)に溶解させ、1N−NaOH(500mL)、飽和食塩水(500mL)で洗浄し、有機層を分離し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、及び真空中で濃縮して、暗橙色油状物質(557g)を生じさせた。この油状物質を、ヘプタン−EtOAcを用いて溶出させるフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO2)により精製して、淡黄色固体としてtert−ブチル−3−メチルベンゾ[b]チオフェン−2−イルカルバメートを生じさせた。1H−NMR(CDCl3)δ7.71(d,1H),7.54(d,1H),7.36〜7.31(m,1H),7.30〜7.20(m,1H),6.75(br s,1H),2.23(s,3H),1.55(s,9H)。
【0133】
工程B:3−メチルベンゾ[b]チオフェン−2−アミン塩酸塩
オーバーヘッド機械的撹拌機、N2導入/排出アダプター及び熱電対を取り付けた5−L三口フラスコに4MのHClの1,4−ジオキサン(3.1L)溶液、tert−ブチル−3−メチルベンゾ[b]チオフェン−2−イルカルバメート(265g、1.0モル)を充填し、22℃で18時間にわたって撹拌した。得られた白色の沈殿を濾過により回収し、ジエチルエーテル(3×500mL)で洗浄し、ハウス真空下40℃にて48時間にわたって乾燥させて、白色固体として3−メチルベンゾ[b]チオフェン−2−アミン塩酸塩を得た。1H−NMR(DMSO−d6)δ8.7(br s,3H),7.71(d,1H),7.44(d,1H),7.29(t,1H),7.14(t,1H),2.184(s,3H)。
【0134】
工程C:N−(3−メチルベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−4−カルボキシ−ベンゼンスルホンアミド
オーバーヘッド機械的撹拌機、N2導入/排出アダプター及び熱電対を取り付けた12−L四口フラスコに、THF(3.26L)及び3−メチルベンゾ[b]チオフェン−2−アミン塩酸塩(326g,1.6モル)、次いでピリジン(265mL、3.3モル)を充填した。得られた反応混合物を氷浴を用いて5℃に冷却し、そこに4−(クロロスルホニル)安息香酸(396g、1.8モル)をTHF(2.44L)に溶解させた溶液を滴下により加えた。得られた混合物を周囲温度で72時間にわたって撹拌させておき、次に、EtOAc(4L)で希釈し、1NのHCl(1L)、飽和食塩水(1L)で洗浄し、有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、減圧下にて濃縮して、残留物を得た。残留物をEtOAc/ヘプタン(1:1/1L)による粉末化で精製した。得られたスラリーを濾過し、ヘプタン(2×250mL)で洗浄し、真空炉中で40℃にて18時間にわたって乾燥させて、白色固体としてN−(3−メチルベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−4−カルボキシ−ベンゼンスルホンアミドを生じさせた。1H−NMR(DMSO− d6).δ13.51(br s,1H),10.65(br s,1H),8.12(d,2H),7.86(d,2H),7.83〜7.79(m,1H),7.66〜7.63(m,1H),7.37〜7.33(m,1H),2.03(s,3H)。
【0135】
工程D:N−(3−メチルベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−4−カルボメトキシ−ベンゼンスルホンアミド
オーバーヘッド機械的撹拌機、N2導入/排出アダプター及び熱電対を取り付けた12−L四口フラスコに、MeOH(7.5L)及びN−(3−メチルベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−4−カルボキシ−ベンゼンスルホンアミド(470g、1.35モル)を充填した。硫酸(24mL、0.45モル)を加え、得られた混合物を次に18時間にわたって還流させる。得られた反応物を冷却し、EtOAc(4L)で希釈し、1NのNaOH(2L)、H2O(6L)で洗浄した。水層をEtOAc(4×4L)で抽出し、合わせた有機抽出物を飽和食塩水(1L)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮して、赤色の粘性油状物質を生じさせた。1H−NMR(DMSO−d6)δ7.89(d,2H),7.81(d,2H),7.41(d,1H),7.16(d,1H),7.09〜7.04(m,1H),6.91〜6.85(m,1H),3.82(s,3H),1.99(s,3H)。
【0136】
オーバーヘッド機械的撹拌機、N2導入/排出アダプター及び熱電対を取り付けた5L三口フラスコに、上記で製造した赤色の粘性油状物質のH2O(4L)溶液を充填した。得られた溶液を1NのHCl(200mL)でpHが1になるまで酸性化し、得られた反応混合物を周囲温度で30分にわたって撹拌した。得られた固体を濾過し、H2Oで洗浄し(2×250mL)、真空炉中で50℃にて72時間にわたって乾燥させて、白色固体としてN−(3−メチルベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−4−カルボメトキシ−ベンゼンスルホンアミドを得た。1H−NMR(DMSO−d6).δ10.67(br s,1H),8.13(d,2H),8.00(d,2H),7.90〜7.77(m,1H),7.64〜7.61(m,1H),7.36〜7.32(m,2H),3.89(s,3H),2.02(s,3H)。
【0137】
工程E:N−[4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)−ベンジル]−N−(3−メチルベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−4−カルボメトキシ−ベンゼンスルホンアミド
オーバーヘッド機械的撹拌機、N2導入/排出アダプター及び熱電対を取り付けた12L四口フラスコに、DMF(4.9L)、N−(3−メチルベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−4−カルボメトキシ−ベンゼンスルホンアミド(245g、0.68モル)及びK2CO3(112g、0.81モル)を充填した。次に、4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)ベンジルブロミド(210mL、0.81モル)を15分かけて滴下により加え、得られた混合物を室温にて18時間にわたって撹拌した。得られた反応混合物を冷H2O(10L)に注ぎ、30分にわたって撹拌し、次いで、そこにEtOAc(4L)を加えた。層を分離し、水相をEtOAc(2×1L)で抽出した。合わせたEtOAc層を、飽和食塩水(1L)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮して、残留物を生じさせた。残留物を、ヘプタン−EtOAcを用いて溶出させるフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO2)により精製して、白色固体としてN−[4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)−ベンジル]−N−(3−メチルベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−4−カルボメトキシ−ベンゼンスルホンアミドを得た。1H−NMR(DMSO−d6)δ8.21(d,2H),8.03(d,2H),7.86〜7.83(m,1H),7.71〜7.63(m,3H),7.45〜7.37(m,3H),4.89(br s,2H),3.93(s,3H),1.94(s,3H)。
【0138】
工程F:N−[4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)−ベンジル]−N−(3−メチルベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−4−カルボキシ−ベンゼンスルホンアミド
オーバーヘッド機械的撹拌機、N2導入/排出アダプター、コンデンサー及び熱電対を取り付けた3−L四口フラスコに、MeOH(1.9L)及びN−[4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)−ベンジル]−N−(3−メチルベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−4−カルボメトキシ−ベンゼンスルホンアミド(190g、0.35モル)、次いで3MのNaOH(412mL、1.2モル)を充填し、得られた混合物を2時間にわたって還流させた。得られた混合物を次に室温に冷却し、EtOAc(2L)及び1NのHCl(2L)で希釈し、層を分離し、水相をEtOAc(2L)で抽出した。有機抽出物を合わせ、飽和食塩水(1.5L)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、黄色固体を生じさせた。黄色固体を真空炉中に50℃にて18時間にわたって定置して、黄色固体としてN−[4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)−ベンジル]−N−(3−メチルベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−4−カルボキシ−ベンゼンスルホンアミドを得た。1H−NMR(DMSO−d6)δ13.63(s,1H),8.19(d,2H),8.01(d,2H),7.86〜7.83(m,1H),7.71〜7.63(m,3H),7.49〜7.37(M,3H),4.89(br s,1H),1.95(s,3H)。
【0139】
(実施例2(II))
N−(4−フルオロ−3−トリフルオロメチル−ベンジル)−N−[3−(1−ヒドロキシ−エチル)−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル]−エタンスルホンアミド
【0140】
【化20】

【0141】
工程A:エタンスルホン酸ベンゾ[b]チオフェン−2−イルアミド
上記実施例1の工程Cに記載されているような手順に従って、ベンゾ[b]チオフェン−2−イルアミンと4−エタンスルホニルクロリドとを反応させることにより、エタンスルホン酸ベンゾ[b]チオフェン−2−イルアミドを製造した。
【0142】
工程B:N−(3−アセチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−エタンスルホンアミド
塩化スズ(IV)(173μL、1.48ミリモル)を塩化アセチル(124μL、1.75ミリモル)のジクロロメタン(10mL)溶液に0℃にて加え、得られた溶液を5分にわたって撹拌した。得られた混合物に、次に、エタンスルホン酸ベンゾ[b]チオフェン−2−イルアミド(325mg、1.35ミリモル)のジクロロメタン(2mL)溶液を0℃にて加えた。得られた溶液を室温に暖め、次いで一晩撹拌した。得られた溶液を水(10mL)で処理し、有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で蒸発させて、無色固体としてN−(3−アセチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−エタンスルホンアミドを得た。1H−NMR(DMSO−d6):δ1.25(t,3H),2.71(s,3H),3.39(q,2H),7.34〜7.48(m,2H),7.94(d,1H),8.10(d,1H),MS:m/z 284.1(MH+)。
【0143】
工程C:N−(3−アセチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−N−(4−フルオロ−3−トリフルオロメチル−ベンジル)−エタンスルホンアミド
水素化ナトリウム(油中60%、46mg、1.15ミリモル)をN−(3−アセチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−エタンスルホンアミド(310mg、1.09ミリモル)のDMF(4mL)溶液に0℃にて加えた。得られた混合物を0℃にて15分にわたって撹拌し、これに4−フルオロ−3−トリフルオロメチルベンジルブロミド(253μL、1.33ミリモル)を加え、得られた混合物を周囲温度にて2時間にわたって撹拌した。次に、15−クラウン−5エーテル(220μL、1.33ミリモル)と更に等量の4−フルオロ−3−トリフルオロメチルベンジルブロミドとを加えた。得られた溶液を周囲温度にて一晩撹拌し、次に水を加え、所望の生成物を酢酸エチルの中に抽出した。有機相を水(3x)、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で蒸発させて、残留物を得た。残留物を、酢酸エチル−ヘプタン勾配を用いて溶出させるフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO2)により精製して、灰白色固体としてN−(3−アセチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−N−(4−フルオロ−3−トリフルオロメチル−ベンジル)−エタンスルホンアミドを得た。1H−NMR(DMSO−d6):δ1.32(t,3H),2.29(s,3H),3.49(q,2H),5.08(s,2H),7.41〜7.52 9m,3H),7.70〜7.77(m,2H),7.93〜8.03(m,2H),MS:m/z 460.2(MH+)。
【0144】
工程D:N−(4−フルオロ−3−トリフルオロメチル−ベンジル)−N−[3−(1−ヒドロキシ−エチル)−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル]−エタンスルホンアミド
水素化ホウ素ナトリウム(0.14g、3.7ミリモル)を、N−(3−アセチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−N−(4−フルオロ−3−トリフルオロメチル−ベンジル)−エタンスルホンアミド(0.268 g、0.582ミリモル)のエタノール(10mL)溶液に加え、得られた混合物を室温にて3時間にわたって撹拌した。溶媒を濃縮し、残留物をジクロロメタンと水の間で分配し、有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で溶媒を濃縮して、残留物を得た。残留物を、酢酸エチル−ヘプタン勾配(10〜40%)を用いて溶出させるフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO2)により精製して、無色固体としてN−(4−フルオロ−3−トリフルオロメチル−ベンジル)−N−[3−(1−ヒドロキシ−エチル)−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル]−エタンスルホンアミドを得た。
【0145】
1H−NMR(CDCl3):δ1.08(br s,3H),1.50(t,3H),3.27(q,2H),4.42(d,1H),4.94(q,1H),5.29(d,1H),7.13(t,1H),7.35〜7.40(m,2H),7.49〜7.54(m,2H),7.58(d,1H),7.74〜7.77(m,1H),8.12(br d,1H);MS:m/z 444.1(M−OH)+,484.2(MNa+
【0146】
(実施例3)
液体製剤−予告的実施例
医薬組成物の具体的実施形態として、式(I)の化合物又は式(II)の化合物を、約20mCiを生じるのに十分な量で、既知の方法に従って無菌生理食塩水と約5%のエタノールとの混合物と共に配合する。
【0147】
上記の明細書は説明を目的として与えられる実施例と共に本発明の原理を教示するものであるが、本発明の実施には、以下の特許請求の範囲及びその同等物に含まれる全ての通常の変形、改作及び/又は修正が包含される点が理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(A)
【化1】

の化合物又はその溶媒和物若しくは製薬上許容し得る塩(ここで、前記式(A)の化合物におけるC原子及び/又はF原子の1つ以上は、対応する11C又は18Fと置換される);及び
並びに式(B)
【化2】

の化合物又はその溶媒和物若しくは製薬上許容し得る塩(ここで、前記式(B)の化合物におけるC原子及び/又はF原子の1つ以上は、対応する11C又は18Fと置換される)よりなる群から選択される、放射性標識された化合物。
【請求項2】
(a)式(I)
【化3】

の化合物又はその溶媒和物若しくは製薬上許容し得る塩;
(b)式(II−A)
【化4】

の化合物又はその溶媒和物若しくは製薬上許容し得る塩;及び
(c)式(II−B)
【化5】

の化合物又はその溶媒和物若しくは製薬上許容し得る塩よりなる群から選択される化合物。
【請求項3】
式(I)
【化6】

の化合物又はその溶媒和物若しくは製薬上許容し得る塩。
【請求項4】
式(II−A)
【化7】

の化合物又はその溶媒和物若しくは製薬上許容し得る塩。
【請求項5】
式(II−B)
【化8】

の化合物又はその溶媒和物若しくは製薬上許容し得る塩。
【請求項6】
請求項2に記載の化合物及び製薬上許容し得る担体又は賦形剤を含んでなる放射性医薬組成物。
【請求項7】
哺乳類においてTRP M8受容体を撮像する方法であって、前記撮像の必要な哺乳類に請求項2に記載の化合物を有効量投与し、ポジトロン放出断層法を使用してTRP M8受容体の画像を得ることを含んでなる方法。
【請求項8】
前記哺乳類がヒトである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
哺乳類において中枢又は末梢神経系を撮像する方法であって、前記撮像の必要な哺乳類に請求項1に記載の化合物を有効量投与し、ポジトロン放出断層法を使用して前記中枢又は末梢神経系の画像を得ることを含んでなる方法。
【請求項10】
前記哺乳類がヒトである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記撮像される中枢又は末梢神経系が、脳又は脊髄である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
哺乳類においてTRP M8受容体を有する組織を撮像する方法であって、前記撮像の必要な哺乳類に請求項2に記載の化合物を有効量投与し、ポジトロン放出断層法を使用して前記組織の画像を得ることを含んでなる方法。
【請求項13】
前記哺乳類がヒトである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
哺乳類の組織においてTRP M8を検出又は定量する方法であって、前記検出又は定量が所望される哺乳類組織に請求項1に記載の化合物を有効量接触させ、ポジトロン放出断層法を使用して前記TRP M8受容体を検出又は定量することを含んでなる方法。
【請求項15】
前記哺乳類の組織がヒトの組織である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
式(I)
【化9】

の化合物又はその溶媒和物若しくは製薬上許容し得る塩を製造する方法であって
【化10】

式(X)(式中、A1はC1〜4アルキルである)の化合物を式(XI)の放射性標識された化合物(式中、Q1は脱離基である)と反応させて、式(XII)の対応する化合物を生じさせ;
【化11】

前記式(XII)の化合物を有機溶媒又は有機溶媒と水との混合物の中で塩基と反応させて、前記式(I)の対応する化合物を生じさせることを含んでなる方法。
【請求項17】
式(I)
【化12】

の化合物又はその溶媒和物若しくは製薬上許容し得る塩を製造するであって、
【化13】

式(X)(式中、A1はC1〜4アルキルである)の化合物を無機塩基の存在下、有機溶媒中で式(XXI)の放射性標識された化合物(式中、Q2は脱離基である)と反応させて、式(XIII)の対応する化合物を生じさせ;
【化14】

前記式(XIII)の化合物をクラウンエーテル又はクリプタンドの存在下、有機溶媒中で、放射性標識された18-と反応させて、式(XIV)の対応する放射性標識された化合物を生じさせ;
【化15】

前記式(XIV)の化合物を有機溶媒又は有機溶媒と水との混合物の中で塩基と反応させて、前記式(I)の対応する化合物を生じさせることを含んでなる方法。
【請求項18】
式(II−A)
【化16】

の化合物又はその溶媒和物若しくは製薬上許容し得る塩を製造する方法であって、
【化17】

式(XV)の化合物を式(XI)の放射性標識された化合物(式中、Q1は脱離基である)と反応させて、式(XVI)の対応する化合物を生じさせ;
【化18】

前記式(XVI)の化合物を有機溶媒中で有機金属試薬と反応させて、前記式(II−A)の対応する化合物を生じさせることを含んでなる方法。
【請求項19】
式(II−B)
【化19】

の化合物又はその溶媒和物又は製薬上許容し得る塩を製造する方法であって、
【化20】

式(XV)(式中、Q1は脱離基である)の化合物を反応させて、式(XVIII)の対応する化合物を生じさせ;
【化21】

モル過剰の前記式(XVIII)の化合物を有機溶媒中で、放射性標識された[11C]メチルリチウムと反応させて、前記式(II−B)の対応する化合物を生じさせることを含んでなる方法。
【請求項20】
式(XIa)
【化22】

(式中、Q1は、ヒドロキシ、クロロ、ブロモ及びヨウドよりなる群から選択される)の化合物を製造する方法であって、
【化23】

式(V)(式中、Xは、N+(CH33、NO2、Br及びClよりなる群から選択される)の化合物をクラウンエーテル又はクリプタンドの存在下、有機溶媒中で、放射性標識された18-と反応させて、式(VI)の対応する放射性標識された化合物を生じさせ;
【化24】

前記式(VI)の化合物を水中で還元剤と反応させて、式(XIb)の対応する化合物(式中、Q1がヒドロキシである式(XI)の化合物である)を生じさせ;
【化25】

所望により、前記式(XIb)の化合物を塩素化、臭素化又はヨウ素化試薬と反応させて、前記式(XIa)の対応する化合物(式中、Q1がそれぞれ対応するクロロ、ブロモ、又はヨウドである式(XI)の化合物である)を生じさせることを含んでなる方法。
【請求項21】
式(A−1)
【化26】

の化合物又はその溶媒和物又は製薬上許容し得る塩を製造する方法であって、
【化27】

式(P1)(式中、LG1は脱離基である)の化合物を、Pd(0)又はPd(II)種の存在下、有機溶媒中で、放射性標識された11CH3−スズ試薬と反応させて、前記式(A−1)の対応する化合物を生じさせることを含んでなる方法。
【請求項22】
式(A−2)
【化28】

の化合物又はその溶媒和物若しくは製薬上許容し得る塩を製造する方法であって、
【化29】

式(P2)(式中、LG2は脱離基である)の化合物を有機金属試薬と反応させ、次に、有機溶媒中で、放射性標識された11CO2により捕捉して、前記式(A−2)の対応する化合物を生じさせることを含んでなる方法。
【請求項23】
式(B−1)
【化30】

の化合物又はその溶媒和物若しくは製薬上許容し得る塩を製造する方法であって、
【化31】

式(P3)の化合物を不活性雰囲気下、有機溶媒中で少なくとも2当量の有機金属試薬又はリチウムアミド塩基と反応させ、次に、[11C]メチルヨードと反応させて、前記式(B−1)の対応する化合物を生じさせることを含んでなる方法。

【公表番号】特表2011−528660(P2011−528660A)
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−518878(P2011−518878)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/050675
【国際公開番号】WO2010/009220
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(390033008)ジヤンセン・フアーマシユーチカ・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (616)
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN PHARMACEUTICA NAAMLOZE VENNOOTSCHAP
【Fターム(参考)】