説明

放射性治療に対して抵抗性を有する癌の治療法。

【課題】 1−(1−ヒドロキシメチル−2,3−ジヒドロキシプロピル)オキシメチル−2−ニトロイミダゾール存在下において放射線を照射することにより、低酸素状態以外の放射線抵抗性の癌における放射線療法において、再発、転移を抑制し、その効果を更に高める手段を提供する。
【解決手段】 放射線抵抗性を有する癌の放射線治療において、化学式1記載の放射線増感剤を用いて増感せしめ治療する。化学式1の化合物を動物又は人の体重1kg当たり10〜400mg投与した後、放射線照射を行う。前記放射線抵抗性の癌は肺の腺癌が好ましい。化学式1の化合物を動物又は人へ体重1kg当たり10〜400mg投与した後、1〜10Gyの放射線を照射することを5〜40回繰り返す、分割照射治療を行うことが好ましい。
【化1】


化学式1

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療に対して抵抗性を有する癌の治療法において、放射線の効果を増感する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
2−ニトロイミダゾール誘導体は、癌放射線療法において、放射線抵抗性を有する、低酸素性の癌細胞の、放射線感受性を高め、放射線療法の効果を高める有用な薬剤であることが既に知られている。この様な2−ニトロイミダゾール誘導体の内でも、1−(1−ヒドロキシメチル−2,3−ジヒドロキシプロピル)オキシメチル−2−ニトロイミダゾールは、親水性が高く、神経細胞への移行性が殆ど存しないため、中枢毒性のない放射線増感剤として現在臨床試験中である。(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3を参照)又、かかる物質においては、この様な低酸素性細胞に対する放射線増感効果以外にも、核酸水酸化物消去作用(例えば、特許文献4を参照)、アポトーシス・シグナル保持作用(例えば、特許文献5を参照)などが存し、癌治療においては有用な薬剤であると言える。
【0003】
かかる1−(1−ヒドロキシメチル−2,3−ジヒドロキシプロピル)オキシメチル−2−ニトロイミダゾールを低酸素性癌細胞に対する放射線増感剤として用いる前臨床試験での検討に於いては、前記放射線の線源としては、通常用いられるX線に加えて、コバルトの放射性同位体を線源とするγ線、電子線を直線型加速装置で加速した粒子線や、サイクロトロンなどより取り出されるα線などの重粒子線等が使用された。癌種としては、子宮頸癌や扁平上皮癌が前記検討では用いられているが、肺癌、特に、肺の腺癌については検討が為されていない。一般的に、放射線増感剤を用いない、癌の放射線治療に於いても、前記線源が用いられるが、癌治療効果としては重粒子線、粒子線、ガンマ線及びX線の順である。実際の臨床の状況を勘案すると、装置の規模もこの順で非常に大型化するため、治療用に汎用されているのはX線であり、大規模な病院でのみ直線加速型の粒子線が使用されている。この為、低酸素状態でなくとも放射線に対する感受性の低い腺癌、特に肺腺癌においては、良好な治療効果を得るには、照射回数を大幅に増やさなければならない状況が存しているし、加えて、転移の問題については対策が存しないと言える。この様な腺癌に対して、1−(1−ヒドロキシメチル−2,3−ジヒドロキシプロピル)オキシメチル−2−ニトロイミダゾール以外の2−ニトロイミダゾール系の薬剤、例えば、ミソニダゾールやエタニダゾールを投与し、治療する試みは行われてきている(例えば、非特許文献1、非特許文献2を参照)が、これらの臨床試験が何れも頓挫しているところから、これらの臨床応用においては、肺の腺癌に対して有効ではなかったと推定される。これは、これらの化合物が神経毒性を有しているがために、投与用量が制限され、動物試験で有効性を認める濃度までドーズアップができなかったためと推定される。即ち、肺の腺癌の放射線増感剤を使用する癌放射線治療に於いて、放射線増感剤が有効性を示すには、子宮頸癌や扁平上皮癌などに比して、非常に高いドーズを投与することが要求されるが、神経毒性発現のためにこの様な高ドーズ投与が不可能になるためと考えられる。
【0004】
一方、低酸素状態における癌細胞において放射線に対する抵抗性は知られており、1−(1−ヒドロキシメチル−2,3−ジヒドロキシプロピル)オキシメチル−2−ニトロイミダゾールが、子宮頸癌や扁平上皮癌などの癌の中で、低酸素性の放射線抵抗性の癌に対し、放射線増感剤として効果を奏することは知られている。しかし、肺の腺癌等の非常に高い放射線抵抗性をもつ癌に対し、1−(1−ヒドロキシメチル−2,3−ジヒドロキシプロピル)オキシメチル−2−ニトロイミダゾールが増感効果を有することは全く知られていなかったし、そのような効果が存するという想像すらされていなかった。
【0005】
【特許文献1】特開平3−223258号公報
【特許文献2】WO1994/014778
【特許文献3】特開2003−321459号公報
【特許文献4】特開2005−27515号公報
【特許文献5】特開平9−77667号公報
【非特許文献1】Haveman J.,et.al., Br J Cancer., 1981;43(6):864-70
【非特許文献2】Elias A.D.,et.al., Biol. Blood Marrow Transplant., 2002;8(6):326-33
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、1−(1−ヒドロキシメチル−2,3−ジヒドロキシプロピル)オキシメチル−2−ニトロイミダゾールが、肺の腺癌等、非常に高い放射線抵抗性を有する癌への放射線療法において、再発、転移を抑制しその効果を更に高めるために、治療後の生存癌細胞をより少なくする手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、1−(1−ヒドロキシメチル−2,3−ジヒドロキシプロピル)オキシメチル−2−ニトロイミダゾールが放射線治療に対して低酸素状態以外の放射線抵抗性を有する癌に対する治療手段を求めて、鋭意研究し、努力を重ねた結果、1−(1−ヒドロキシメチル−2,3−ジヒドロキシプロピル)オキシメチル−2−ニトロイミダゾール存在下で放射線を照射することにより放射線抵抗性にも関わらず、放射線増感作用が存することを見出し、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示すとおりである。
【0008】
(1)放射線抵抗性を有する癌の放射線治療において、放射線の効果を増感用の、化学式1記載の放射線増感剤。
【化1】

化学式1
(2)放射線抵抗性を有する癌の放射線治療において、化学式1の化合物の存在下、放射線照射を行うことを特徴とする癌の治療方法。
(3)放射線抵抗性を有する癌の放射線治療法において、化学式1の化合物を動物又は人の体重1kg当たり10〜400mg投与した後、放射線照射を行うことを特徴とする(2)記載の治療方法。
(4)放射線抵抗性を有する癌が肺腺癌であることを特徴とする(1)記載の放射線増感剤。
(5)放射線抵抗性を有する癌が肺腺癌であることを特徴とする(2)又は(3)に記載の治療法。
(6)放射線抵抗性を有する癌の放射線治療法において、化学式1の化合物を動物又は人へ体重1kg当たり10〜400mg投与した後、1〜10Gyの放射線を照射することを5〜40回繰り返すことを特徴とする(2)、(3)又は(5)記載の治療方法。
(7)次に示す工程に従って為されることを特徴とする、(1)〜(6)何れか1項に記載の治療方法。
(工程1)癌の種類を特定する工程。
(工程2)癌の放射線抵抗性を特定する工程。
(工程3)工程1において肺腺癌と特定され、且つ、工程2において放射線抵抗性を有すると特定された場合に於いて、化学式1の化合物を動物又は人へ体重1kg当たり10〜400mg投与し、投与後1時間以内に1〜10Gyの放射線を照射する作業を1日1回、連日若しくはインターバルを設けて、5〜40回繰り返す工程。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、1−(1−ヒドロキシメチル−2,3−ジヒドロキシプロピル)オキシメチル−2−ニトロイミダゾール存在下において放射線を照射することにより、低酸素状態以外の放射線抵抗性の癌における放射線療法において、再発、転移を抑制し、その効果を更に高める手段を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(1)本発明の放射線抵抗性の癌における放射線療法
本発明の治療法は、非常に高い放射線抵抗性を有する放射線抵抗性の癌における放射線療法において、放射線の効果が低下した癌に対して放射線の効果を増感させることを特徴とする。一般的に放射線に対する抵抗性は、低酸素性の細胞の存在によって説明されるが、例えば、肺の非小細胞癌、特に腺癌においては、この様な低酸素性細胞のみでは説明のできない放射線抵抗性が観察される。本発明では、この様な放射線抵抗性の著しい癌を治療する手だてを提供することを目的とする。この為に、本発明の治療法では、後記に示す放射線増感剤を放射線照射とともに用いることを特徴とする。放射線照射は、該放射線増感剤の投与後、30〜60分に行うことが好ましい。用いる放射線としては、通常治療に用いられているものであれば特段の限定無く使用することができ、例えば、重粒子線、粒子線、ガンマ線及又はX線が好ましく例示できる。治療効果はこの順で高いが、ガンマ線やX線などの治療効果が決して高いとは言えない線源であっても、本発明では有効に使用することができる。放射線の照射量は、照射方法にもよるが、1回あたり、1〜15Gyが好ましい。1回照射方法による場合は、安全性を確保されている最大の線量を照射することが好ましく、10〜15Gyの照射が好ましい。又、分割照射を行うこともでき、5〜40回に分割して照射することが例示でき、より好ましくは、5〜30回であり、特に10回の分割照射が好ましく例示できる。分割照射には、均等分割法と不均等分割法が存し、これの何れもが適用可能である。均等分割法により、分割照射する場合には、1回当たりの照射線量は1〜10Gy照射することが例示でき、より好ましくは一回当たりの照射線量は3〜8Gyが好ましく例示でき、さらに好ましくは一回当たりの照射線量は8Gyが例示できる。又、症状や治療効果に従って照射線量を変える不均等分割照射法に於いては、初期の照射線量を6〜10Gyと高く設定し、照射回数が10回を越えて、皮膚炎などの照射の正常組織への影響が観察され始めた時点で、1〜5Gyにドーズダウンして行うことが好ましい。分割照射に於いては、連日投与、照射を繰り返すこともできるし、所望によりインターバルを設け、正常組織の回復を待って、治療を再開することもできる。治療効果に鑑みたQOLの観点では、分割照射放射線治療が好ましく例示できる。この様な本発明の放射線増感剤は、製剤化のための任意成分とともに、常法に従って、散剤、顆粒剤、錠剤、座剤、注射剤に加工して用いることが出来る。前記任意成分としては、乳化剤、可溶化剤、分散剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、被覆剤、糖衣剤、矯味矯臭剤、安定剤などが好ましく例示できる。好ましい治療の手順は次に示す工程を経て行うことである。
(工程1)癌の種類を特定する工程。
(工程2)癌の放射線抵抗性を特定する工程。
(工程3)工程1において肺腺癌と特定され、且つ、工程2において放射線抵抗性を有すると特定された場合に於いて、化学式1の化合物を動物又は人へ体重1kg当たり、10〜400mg、より好ましくは50〜200mg投与し、投与後1時間以内に1〜10Gy、より好ましくは3〜8Gyの放射線を照射する作業を1日1回、連日若しくはインターバルを設けて、5〜40回、より好ましくは5〜30回繰り返す工程。
【0011】
(2)本発明の放射線増感剤の増強剤が増強すべき放射線増感剤
前記化学式1の構造の化合物は不斉炭素を2個有しており、その立体異性体はSS体、RS体、SR体、RR体の4種が存在するがこれらの何れの作用も、本発明の増強剤は増強することが出来る。勿論、光学活性体の効果を増強することも出来るし、ラセミ体のような等量混合物の効果を増強することも出来る。特に好ましいものは、SR体とRS体であり、これは、臨床試験において、実際に有効性が確かめられているためである。かかる化合物は、特許文献1或いは特許文献2に記載された方法に従って製造することが出来、例えば、2−ニトロ−1−トリメチルシリルイミダゾールと2−アセトキシメトキシ−1,3,4−トリアセトキシブタンとをルイス酸の存在下縮合させ、しかる後に、ナトリウムメトキシドなどを反応させて脱アセチル化することにより、製造することが出来る。この時、2−アセトキシメトキシ−1,3,4−トリアセトキシブタンの立体特性が、最終生成物の1−(1−ヒドロキシメチル−2,3−ジヒドロキシプロピル)オキシメチル−2−ニトロイミダゾールにも反映される。かかる放射線増感剤は、放射線増感効果を有しながら、中枢への配向が制限されており、神経毒性を極めて誘起しにくい放射線増感剤であり、これは非環状糖部分の水溶性による。しかしながら、この様な構造のために代謝により、速やかに腫瘍部位から排出されてしまうことを意味し、その投与は放射線照射少なくとも60分前、より好ましくは、30分前〜直前に行う(終了している)ことが好ましい。その用量も成人1人あたり、体重1kg換算で10mg〜400mgを照射前に投与することが好ましく、体重1kg当たり50mg〜200mg投与することがより好ましく例示でき、さらに好ましくは体重1kg当たり200mg投与することが例示できる。投与方法は、経口投与でも構わないし、静脈注射や動脈注射であっても構わない。好ましい投与方法は静脈内投与であり、500〜2000mlの水性担体に溶かして、10〜30分かけて点滴投与することが好ましい。対象として好ましい癌腫は、放射線治療に対して抵抗性を有する癌であり、特に肺腺癌が好ましく例示できる。これらの癌において、放射線に対する効果を発揮させることができる。
また、この様な癌腫においては放射線抵抗性或いは転移による再発と、再発可能性が著しいが、本発明の治療法を実施し、放射線治療を行うことにより、この様な転移による再発を防ぐこともできる。化学式1の構造の化合物の存在下において、放射線を照射することにより、かかる放射線抵抗性を低下させることができ、再発可能性を低下せしめることが出来る。
【0012】
以下に、実施例を挙げて本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみに限定されるものではない。
【実施例1】
【0013】
以下に示す方法を用いて、放射線抵抗性を有する腺癌に対する1−(1−ヒドロキシメチル−2,3−ジヒドロキシプロピル)オキシメチル−2−ニトロイミダゾール(以下、「PR−350」という。)の放射線増感効果をin vivo腫瘍増殖抑制法で確かめた。即ち、BALB/cヌードマウス(雌性、5週齢)1群10匹を6群用い、右後ろ足大腿部にヒト肺腺癌(PC−14)由来細胞を1.5 x106個移植し、約2週間予飼育した。移植した部分に生じた腫瘍の大きさを計測した後、治療を開始した。治療は対照を生理食塩液投与として、1群が生理食塩液投与のみ実施、2群はPR−350を200mg/kg投与のみ実施、3群は、生理食塩液を投与し約20分後に15Gy照射を実施、4群はPR−350を50mg/kgを投与し約20分後に15Gy照射を実施、5群はPR‐350を100mg/kgを投与し約20分後に15Gy照射を実施、6群はPR‐350を200mg/kgを投与し約20分後に15Gy照射を実施した。投与は静脈内投与で、放射線はX線を用いた。その後、週に3回、腫瘍の大きさを測定した。腫瘍体積は治療開始時を1として腫瘍体積比を算出し、各群で腫瘍体積が初期値の2倍を越えた日をイベントとしてその日数をカプランマイヤープロットした(図1)。
その結果、放射線治療にPR‐350を併用することにより放射線単独治療と比較して有意に腫瘍増殖抑制効果が認められた。またその効果はPR‐350の濃度に依存して増強された。つまり、放射線治療にPR‐350を併用することで放射線治療効果の増強が認められた。尚、200mg/kgは臨床試験に於いて、反復投与可能なことが確認されている用量である。
【実施例2】
【0014】
以下に示す方法を用いて、放射線抵抗性を有する腺癌に対するPR‐350の放射線増感効果をin vivo局所腫瘍制御法で確かめた。即ち、BALB/cヌードマウス(雌性、5週齢)1群15匹を10群用い、右後ろ足大腿部にヒト肺腺癌(PC‐14)由来細胞を1.5x106個移植し、約2週間予飼育した。移植した部分に生じた腫瘍の大きさを計測した後、治療を開始した。治療は対照を生理食塩液投与として、1群が生理食塩液を静脈内投与、4Gy照射を1日1回10日実施、2群は生理食塩液投与、6Gy照射を1日1回10日実施、3群は、生理食塩液投与、7Gy照射を1日1回10日実施、4群は生理食塩液投与、8Gy照射を1日1回10日実施、5群は生理食塩液投与、10Gy照射を1日1回10日実施した。一方、治療群として、6群がPR‐350を200mg/kgを静脈内投与、3Gy照射を1日1回10日実施、7群がPR‐350を200mg/kgを静脈内投与、4Gy照射を1日1回10日実施、8群がPR‐350を200mg/kgを静脈内投与、5Gy照射を1日1回10日実施、9群がPR‐350を200mg/kgを静脈内投与、6Gy照射を1日1回10日実施、10群がPR‐350を200mg/kgを静脈内投与、8Gy照射を1日1回10日実施した。但し、上記1日1回10日間の投与・照射は、1日1回の投与・照射を5日間連続(土曜日、日曜日を除き平日のみ実施)で2週間実施したものである。放射線はX線を用いた。その後、照射初日後1〜3週間に一度、腫瘍の状態を視覚的及び手で触って観察した。観察は、投与・照射初日を0日として17、39、56、70、90日目に実施した。また、最終観察時点で腫瘍がある個体や、照射後40日より後において明らかな腫瘍増大により処分した個体は非治癒個体として解析し、最終時点で腫瘍がない個体を治癒個体として判断し、照射開始後90日目におけるPC‐14腫瘍の局所制御率を各群ごとに算出し(表1;局所抑制率)、その値を照射総線量に対してプロット後、腫瘍局所制御率―照射総線量曲線を作成した(図2)。
その結果、PR‐350(200mg/kg)を併用することにより放射線単独と比較して有意に腫瘍局所制御率―照射線量曲線を低線量側へシフトさせた。つまり、PR‐350を投与することにより放射線治療の効果が増強されたことを示している。その効果は対照群と比較し1.28倍有意に増強されており、PC‐14腫瘍におけるPR‐350の有意な放射線増感効果が確認された。
【0015】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、放射線抵抗性を有する癌の放射線治療の向上に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】単回放射線照射時において、PR‐350による腫瘍増殖抑制効果を示す図である。
【図2】10回分割照射時において、PR‐350によるPC‐14腫瘍の局所制御率を示す図である。但し、本図は、照射開始日を0として90日目における局所制御率を示す。各ポイントは11〜15匹における制御率を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線抵抗性を有する癌の放射線治療において、放射線の効果を増感用の、化学式1記載の放射線増感剤。
【化1】

化学式1
【請求項2】
放射線抵抗性を有する癌の放射線治療において、化学式1の化合物の存在下、放射線照射を行うことを特徴とする癌の治療方法。
【請求項3】
放射線抵抗性を有する癌の放射線治療法において、化学式1の化合物を動物又は人の体重1kg当たり10〜400mg投与した後、放射線照射を行うことを特徴とする請求項2記載の治療方法。
【請求項4】
放射線抵抗性を有する癌が肺腺癌であることを特徴とする請求項1記載の放射線増感剤。
【請求項5】
放射線抵抗性を有する癌が肺腺癌であることを特徴とする請求項2又は3に記載の治療法。
【請求項6】
放射線抵抗性を有する癌の放射線治療法において、化学式1の化合物を動物又は人へ体重1kg当たり10〜400mg投与した後、1〜10Gyの放射線を照射することを5〜40回繰り返すことを特徴とする請求項2、3又は5記載の治療方法。
【請求項7】
次に示す工程に従って為されることを特徴とする、請求項1〜6何れか1項に記載の治療方法。
(工程1)癌の種類を特定する工程。
(工程2)癌の放射線抵抗性を特定する工程。
(工程3)工程1において肺腺癌と特定され、且つ、工程2において放射線抵抗性を有すると特定された場合に於いて、化学式1の化合物を動物又は人へ体重1kg当たり10〜400mg投与し、投与後1時間以内に1〜10Gyの放射線を照射する作業を1日1回、連日若しくはインターバルを設けて、5〜40回繰り返す工程。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−326814(P2007−326814A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−159253(P2006−159253)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】