説明

放射硬化型コーティングの製造方法とコーティングされた物品

残存する官能(反応)基を有するプラズマ重合体が、基材上に形成され、放射硬化型コーティング組成物が、プラズマ重合体をコーティングした基材に施され、放射硬化型組成物が放射硬化される。放射硬化型組成物は、プラズマ重合体の反応基とポリマーを形成する成分を含有し、その硬化した組成物を、基材に固定されたプラズマ重合体に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国仮出願第60/529382(2003年12月16日出願)に基づく優先権を有する。
本発明は、基材上に紫外線(UV)又は電子ビーム(EB)インクコーティングを形成するのに特に有用性を有する、基材上に放射硬化型コーティングを形成する方法、及び得られたコーティング物品に関する。
【背景技術】
【0002】
インクなどの放射硬化型コーティングは、様々な用途に開発されている。広く考えると、コーティング組成物は、放射硬化型モノマー又はプレポリマーとともに、必要により所望の特性を得るように、粘度調節剤、酸化防止剤、重合防止剤、重合触媒、界面活性剤等を含んでなる。こうした系において直面している1つの問題は、コーティングされる基材に対する接着であり、接着を改良するための種々の系が開発されている。より良好な接着を達成する一方で、それらの系は、新たな問題を生じることがあり得る。接着の問題に対する新たなアプローチが望まれている。
【0003】
また、基材は、いろいろな別の理由でコーティングされており、例えば、腐食から基材を保護するため、酸化に対するバリアを提供するため、他の材料との接着を改良するため、表面活性を高めるため、及び基材の生物医学的適合性の理由のためである。種々の系が開発されており、この目的に利用することができる。
【0004】
基材の表面を改質又はコーティングするためのいくつかの方法において、表面がプラズマ放電に供される。プラズマ堆積技術は、表面の範囲上にポリマーコーティングを堆積させるために極めて広く使用されている。これは、従来の湿式の化学的方法と比較して、廃棄物を殆ど発生しないクリーンでドライな技術である。この方法において、プラズマは、とりわけ、低圧力条件下でイオン化性電場に曝される小さな有機分子から発生する。これが基材の存在中で行われると、プラズマ中の化合物のイオン、ラジカル、励起分子は、気相で重合し、基材上において増大しているポリマーフィルムと反応する。通常のポリマー合成は、モノマー種に対する強い類似性を有する繰返し単位を含む構造が生じる傾向にあるが、これに対し、プラズマを用いて生じるポリマー網状構造は、非常に複雑であり得る。
【0005】
この技術の例として、US5876753は、固体表面に材料を付着させる方法を開示しており、この方法は、低出力で可変のデューティサイクルパルス式のプラズマ堆積により、表面に炭素質化合物を添付することを含み、EP0896035は、有機化合物又はモノマー含有ガスのプラズマ重合によってコーティングが基材に施されるコーティング方法を開示している。DE19924108は、基材上に液体フィルムコーティングを施した後、プラズマ重合体保護コーティングを形成することによる、基材上に染料と腐食防止剤をコーティングする方法を開示している。また、プラズマ活性と、基材上に重合性エポキシモノマーをグラフトする溶液相との組み合わせも知られている(Mori, M. et al., J.Polym. Sci., Part A: Polym. Chem., 1994,32,1683; Yamada, K. et al., J. Appl. Polym. Sci., 1996,60,1847)。これらのアプローチは、最終的な所望のコーティングの形態で又は接着剤等として、基材上にコーティングを実現することを意図している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、得られる改質されたコーティング表面が、放射硬化型コーティング組成物、とりわけUV又はEB硬化型インクを有効に固定する仕方で、従来は基材上にコーティングを形成する目的で使用されてきた公知の方法を改良できることが見出されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、残存する官能(反応)基を有するプラズマ重合体が、基材上に形成され、放射硬化型コーティング組成物が、プラズマ重合体をコーティングした基材に施され、放射硬化型組成物が放射硬化される。放射硬化型組成物は、プラズマ重合体の反応基とポリマーを形成する成分を含有し、その硬化した組成物を、基材に固定されたプラズマ重合体に固定する。
本発明において、残存する官能(反応)基を有するプラズマ重合体が、基材上に形成され、次に、そのプラズマ重合体がコーティングされた基材に、放射硬化型コーティング組成物を施し、その放射硬化型組成物を放射硬化する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
基材は、任意の固体基材であることができ、例えば、布帛、金属、ガラス、セラミック、紙、木材、織物又は不織繊維、天然繊維、合成繊維、セルロース材料、シロキサン、及びポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、又はポリスチレンのようなポリマーが挙げられる。基材のサイズは、使用されるプラズマ処理装置の寸法によってのみ制限される。
【0009】
残存する反応基を有するポリマーを実現するように変更されるならば、基材の表面上にプラズマ重合体を形成する任意の公知の方法が使用可能である。例えば、WO00/78469又はWO02/28548(これらの開示事項は本願で参照して取り入れる)に記載の手順は、そのように変更されるならば使用可能であるが、例えば、US6551950、米国特許公報20030104140、同20020114954、及びその他の公報に開示のような別なプラズマ重合体もまた使用可能である。
【0010】
簡潔に言うと、WO00/78469に記載の手順は、式RC(O)YR−R又はRのエポキシドの存在下で、基材をプラズマ放電に供することを含み、ここで、Rは、随意に置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、又はアラルキル基であり、Rは、随意に置換されたアルキレン鎖であり、Rは、エポキシド基である。グリシジル(メタ)アクリレートをエポキシドとして使用することができる。プラズマ堆積条件は、モノマーの性質、基材などの因子によって異なり、通常の方法を用いて決めることができる。一般に、重合は、エポキシドガスを0.01〜10ミリバールの圧力とし、次いで、例えば、13.56MHzの高周波電圧を印加することによってグロー放電を開始させる。印加される電場は、パルス又は連続であり、適切には、50W以下の平均出力で30秒間〜20分間であり、パルスの場合、例えば、0.05W/cm未満のように低い。適切なプラズマには、高周波(Rf)、マイクロ波、又は直流(DC)によって発生させたような非平衡プラズマが挙げられる。それらは、当該分野で公知のように、大気圧で又は大気圧以下の圧力で作動することができる。プラズマは、モノマー化合物単独であることができ、又は、例えば、不活性ガスとの混合物であることもできる。プラズマチャンバー内の温度は、気体相の十分なモノマーがプラズマチャンバーに入ることを可能にするように適切に高温である。
【0011】
WO02/28548に記載の手順は、大気圧のプラズマ放電と、微細化した液体及び/又は固体のコーティング形成材料との組み合わせの使用を含む。微細化した液体及び/又は固体のコーティング形成材料は、大気圧のプラズマ放電及び/又はそれから生じたイオン化されたガス流の中に導入され、基材が、微細化したコーティング形成材料に曝される。大気圧のプラズマジェット、大気圧のマイクロ波グロー放電、及び大気圧のグロー放電のような、大気圧のプラズマグロー放電を発生させるための任意の通常の手段が使用されてよい。典型的に、こうした手段は、ペニング電離機構によって大気圧下で均一なグロー放電を発生させるように、ヘリウム希釈剤と高周波電源(例、>1kHz)を使用する。コーティング形成材料は、例えば、超音波ノズルのような任意の通常の手段を用いて微細化させることができる。アトマイザーは、好ましくは、10〜100μmのコーティング形成材料の液滴サイズを生成する。適切なコーティング形成材料には、カルボキシレート類、メタクリレート類、アクリレート類、スチレン類、メタクリロニトリル類、アルケン類、及びジエン類が挙げられ、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、その他のアルキルメタクリレート、及び対応するアクリレート類の有機機能性メタクリレート類とアクリレート類などのグリシジルメタクリレート、トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、アリルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジアルキルアミノアルキルメタクリレート類、及びフルオロアルキル(メタ)アクリレート類、メタクリル酸、アクリル酸、フマル酸とエステル類、イタコン酸(及びエステル類)、無水マレイン酸、スチレン、α−メチルスチレン、ハロゲン化アルケン、例えば、ビニルハライドの塩化ビニルとフッ化ビニル、フッ化アルケンの例えばペルフルオロアルケン類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチレン、プロピレン、アリルアミン、ビニリデンハライド類、ブタジエン類、アクリルアミドの例えばN−イソプロピルアクリルアミド、メタクリルアミド、エポキシ化合物の例えばグリシドキシプロピル−トリメトキシシラン、グリシドール、スチレンオキシド、ブタジエンモノオキシド、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(及びそのオリゴマー)、ビニルシクロヘキセンオキシド、導電性ポリマーの例えばピロール、チオフェン、及びそれらの誘導体、及びリン含有化合物の例えばジメチルアリルホスホネートが挙げられる。また、金属アルコキシド類などの有機金属化合物もまた適切なコーティング形成材料であることができ、チタネート類、錫アルコキシド類、ジルコネート類、及びゲルマニウムやエルビウムのアルコキシド類が挙げられる。
【0012】
従来技術の方法におけるプラズマコーティング条件は、得られるプラズマ重合体が残存反応基を含有するように変更される。これは、重合可能な基が、重合プロセスの間に完全に消費されないように、時間、温度、濃度、圧力などの反応条件を調節することによって達成されることができる。いくつかの従来技術の方法において、未反応基の存在は、克服すべき欠点と見なされていたが、本発明においては、それらの基の存在は意図的である。未反応基の量は、その後に適用された放射硬化型組成物を固定するのに十分である限り、それほど重要ではない。本発明において、プラズマ重合体は、好ましくは、(メタ)アクリレート、即ち、アクリレート又はメタクリレートであり、例えば、TMPTA(トリメチロールプロパントリアクリレート)などである。
【0013】
優先的ではないが、反応基の存在は、プラズマ重合体を誘導体化することによって達成することもできる。例えば、エポキシ基は、トリフルオロ酢酸のようなカルボン酸、ジエチルアミン又はアミノ酸のようなアミンと反応することができる。
【0014】
放射硬化型コーティング組成物は、プラズマ重合体をコーティングした表面又は選択された部分の表面に施された後、放射硬化される。成分がプラズマ重合体の反応基との反応生成物を含有するポリマーを形成し、それにより、放射硬化された材料を基材表面に結合させるならば、任意の放射硬化型コーティング組成物が使用可能である。このようにして、任意の公知の放射硬化型コーティング組成物が使用可能である。
【0015】
放射硬化型組成物は、好ましくは、着色組成物と、揮発性溶媒が実質的に存在しない放射硬化型液体媒体とを含んでなる放射硬化型インクである。インクに関して用いられる本願における用語「揮発性溶媒が実質的に存在しない」とは、印刷後に蒸発する、基材表面に吸収される、又はその双方が生じる液体成分(例、水、低級アルコール類、アルカン類、芳香族類、脂肪族類、ケトン類、アセタール類等)が存在しないことを意味し、硬化したインクの基本的成分として残存しないが、インク調合以前のインク成分の製造から生じる微量又は残存溶媒を排除するものではない。
【0016】
放射硬化型液体媒体は、他のインク成分と統合したとき、100%のインク重量となる十分な量で使用される。放射硬化型液体媒体は、典型的に、1つ以上の低分子量の単官能又は多官能モノマーを含有する。高めの粘度を必要とするオフセットインクとその他のインクについては、樹脂、反応性オリゴマー又はポリマーもまた存在することができる。これらの成分は、硬化時にモノマーと反応することができる。エネルギー硬化型液体媒体は、電子ビーム源からの高エネルギー電子に暴露されるといった、放射エネルギー源からのエネルギーに暴露されることによって固体に硬化できることを特徴とする。あるいは、液体媒体の硬化は、重合開始系のエネルギー活性化(例、UV照射)によって開始させることもできる。この関係において、重合開始系は、エネルギー硬化型液体媒体の随意の成分を考慮することができる。液体媒体は、開環重合性組成物、フリーラジカル付加重合性組成物、又は開環重合とフリーラジカル重合の組み合わせであることができる。これらの組成物において、液体媒体の少なくとも反応性モノマーを重合及び/又は架橋させることによって、液体媒体は、硬化又は固まることができる。環境汚染を低減し、処方の整合性を維持するため、液体媒体は、典型的に、周囲の印刷条件下で低揮発度を有する成分を用いて処方される。
【0017】
モノマーは、典型的に、少なくとも1つのα、β−エチレン性不飽和の照射重合性基を含む。適切なモノマーには、限定されるものではないが、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエステルメタクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリウレタンメタクリレート、メラミンアクリレート、又はメラミンメタクリレートが挙げられる。典型的に、アクリレートは、芳香族もしくは脂肪族アクリレート又はメタクリレートであり、好ましくは、化合物は、アルカノールグリシジルエーテルのジアクリレートエステル、例えば、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、エトキシル化芳香族エポキシド、及びエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシル化脂肪族又は芳香族エポキシアクリレート、エトキシル化脂肪族又は芳香族エポキシメタクリレート、ポリオキシエチレングリコールジアクリレート、及びポリオキシエチレングリコールジメタクリレートである。
【0018】
放射硬化型組成物は、0〜約50重量%の染料又は顔料のような着色剤を含有することができる。好ましくは、こうした染料又は顔料は、硬化型組成物の中に可溶性又は分散性であると同時に、硬化した組成物の中で恒久的で非移動性の成分を形成する。放射硬化型インクとして使用する場合、コーティング溶液は、典型的に、その中に分散した1つ以上の固体顔料を含有する。顔料は、任意の通常の有機又は無機顔料であることができ、例えば、硫化亜鉛、ピグメントホワイト6、ピグメントイエロー1、ピグメントイエロー3、ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー63、ピグメントイエロー65、ピグメントイエロー73、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー75、ピグメントイエロー83、ピグメントイエロー97、ピグメントイエロー98、ピグメントイエロー106、ピグメントイエロー114、ピグメントイエロー121、ピグメントイエロー126、ピグメントイエロー127、ピグメントイエロー136、ピグメントイエロー174、ピグメントイエロー176、ピグメントイエロー188、ピグメントオレンジ5、ピグメントオレンジ13、ピグメントオレンジ16、ピグメントオレンジ34、ピグメントレッド2、ピグメントレッド9、ピグメントレッド14、ピグメントレッド17、ピグメントレッド22、ピグメントレッド23、ピグメントレッド37、ピグメントレッド38、ピグメントレッド41、ピグメントレッド42、ピグメントレッド57、ピグメントレッド112、ピグメントレッド122、ピグメントレッド170、ピグメントレッド210、ピグメントレッド238、ピグメントブルー15、ピグメントブルー15:1、ピグメントブルー15:2、ピグメントブルー15:3、ピグメントブルー15:4、ピグメントグリーン7、ピグメントグリーン36、ピグメントバイオレット19、ピグメントバイオレット23、ピグメントブラック7等が挙げられる。また、着色剤は、米連邦食品医薬品化粧品法によって使用が認可された染料又は顔料から選択することもでき、FD&Cレッド3番、D&Cレッド6番、D&Cレッド7番、D&Cレッド9番、D&Cレッド19番、D&Cレッド21番、D&Cレッド22番、D&Cレッド27番、D&Cレッド28番、D&Cレッド30番、D&Cレッド33番、D&Cレッド34番、D&Cレッド36番、FD&Cレッド40番、D&Cオレンジ5番、FD&Cイエロー5番、D&Cイエロー6番、D&Cイエロー10番、FD&Cブルー1番、酸化鉄イエロー、酸化鉄ブラウン、酸化鉄レッド、酸化鉄ブラック、フェロシアン化アンモニウム鉄、マンガンバイオレット、群青、酸化クロム緑、水和酸化クロム緑、及び二酸化チタンが挙げられる。本発明のエネルギー硬化型インクにおいても有用な顔料組成物は、米国特許第4946508号、同4946509号、同5024894号、及び同5062894号に記載されており、これらはいずれも、本願に参照して取り入れる。こうした顔料組成物は、ポリ(アルキレンオキシド)グラフト顔料とともに顔料の配合物である。着色剤を含有する水系硬化型組成物は、フレキソ印刷、グラビア凸版印刷乾式オフセット、及びリソグラフィ印刷のような通常の印刷に使用される放射硬化型印刷インクを処方するのに特に有用である。これらの印刷操作のそれぞれは、固有の粘度範囲のような特定の特性を有する印刷インクを必要とするが、こうした特性は、顔料などの固形物の比を調節することによって実現することができる。
【0019】
硬化型組成物は、付加的な補助剤を含有することができるが、但し、その付加的な補助剤が組成物の基本的性質に著しい影響を及ぼさず、その補助剤もしくはその重合後の残留物が非移動性であり、硬化フィルムから実質的に浸出しないことを条件とする。このように、本発明の放射硬化型組成物とインクは、流動性、表面張力、及び硬化したコーティング又は印刷したインクの光沢を調節するための典型的な補助剤を含有することができる。インク又はコーティングに含有されるこうした補助剤は、典型的に、表面活性剤、ワックス、フィラー、マット剤、又はこれらの組み合わせである。これらの補助剤は、レベリング剤、湿潤剤、分散剤、脱泡剤、又は脱気剤として機能することができ、あるいは、追加の補助剤を添加して、特定の機能を与えることもできる。好ましい補助剤には、FC−430(3M社の製品)のようなフルオロカーボン界面活性剤、DC57(ダウケミカル社の製品)のようなシリコーン、ポリエチレンワックス、ポリアミドワックス、パラフィンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス等が挙げられる。
【0020】
また、コーティング組成物は、約0〜約50重量%、好ましくは、約1〜約50重量%のフィラーを含有することができる。適切なフィラーの例は、四塩化ケイ素を加水分解することによって得られるシリケート(デグッサ社よりアエロジルとして市販)、ケイ酸土、タルク、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウムナトリウム、ケイ酸マグネシウム等である。また、コーティング組成物は、0〜20重量%の保護コロイド及び/又は乳化剤を含有することができる。適切な乳化剤は、水系乳化重合の中で分散剤として一般に使用され、当業者に公知のものであり、例えば、「Houben−Weyl, Methoden der Organischen Chemie, Volume XIV/1, Makromoleculare Stoffe, Georg−Thieme−verlag, Stuttgart, 1961, pp.411−420」に記載のものである。適切な保護材料には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース、セルロース誘導体、スターチ、スターチ誘導体、ゼラチン、ゼラチン誘導体等が挙げられる。
【0021】
硬化型組成物は、任意の通常のコーティング技術を用い、基材表面に施されることができる。即ち、組成物は、スピンコーティング、バーコーティング、ローラーコーティング、カーテンコーティングされることができ、又は、ブラッシング、噴霧等によって適用することもできる。あるいは、水系組成物は、任意の通常の印刷技術を用い、例えば、印刷インクとして、基材表面に像様に施すこともできる。
【0022】
適用された組成物は、高エネルギーの電子又は紫外線のいずれかの照射を用いて硬化される。典型的に、高エネルギー電子は、50〜200kV電子、好ましくは、85〜180kV電子のエネルギーを有し、典型的に、高エネルギー電子装置によって発生される。高エネルギー電子の吸収量は、約2〜約4メガラド(Mrad)、好ましくは、2.7〜3.5メガラドである。紫外線照射は、約200〜約420ナノメートルのスペクトル領域内で発光する任意の通常の非接触暴露装置を用いて行うことができる。
【0023】
以下の実施例は、本発明の局面をさらに例証するために示すものであるが、本発明を限定するものではない。この開示事項の全体を通して、別に明示がなければ、部と%はいずれも重量を基準とするものであり、温度はいずれも摂氏℃である。
【実施例】
【0024】
実施例1−プラズマ重合体のコーティング
1片のポリエチレンフィルム基材を、イソプロピルアルコールとシクロヘキサンの1:1混合物の中で超音波洗浄し、チャンバー内のガラス板の上に置く。残存ガスを排気した後、1900sccmの流量と1.02×10Nm−2の圧力でプラズマ放電ガスを導入する。ヘリウムと、99%ヘリウム/1%酸素の混合物の2つの放電ガスを使用する。10分間のパージの後、シリンジポンプのスイッチを入れ、コーティング形成材料を3×10−5mls−1の流量で流す。オクタメチルシクロテトラシロキサンとテトラメチル−シクロテトラシロキサンの2つのコーティング形成材料を使用する。コーティング形成材料が超音波ノズルに到達した時、超音波発生器のスイッチを入れ(2.5W)、コーティング形成材料の噴霧化を開始し、電極に1.5kVを印加することによって、大気圧のプラズマ放電を引き起こす。
【0025】
コーティング形成材料の堆積を10分間にわたって進行させ、続いて基材を取り出し、真空下に20分間置いて、全ての不安定な物質を除去する。
【0026】
実施例2−赤の放射硬化型印刷インクの使用
赤着色剤の水系ディスパージョン(Sunsperse RHD6012、Sun Chemical Pigments Divisionより)40部、脂肪族エポキシアクリレート(Laromer LR8765、BASFより)50部、水5部、光開始剤(Irgacure 2959、Cibaより)5部を一緒に混合する。それを、フレキソハンドプルーファを用いて、プラズマ重合体をコーティングした基材に施し、UV照射によって硬化させる。
【0027】
実施例3−ブルーの放射硬化型印刷インクの使用
ピグメントブルー15:3(フタロシアニンブルー、Sun Chemicalより)30部と高度にエトキシル化されたトリメチロールプロパントリアクリレート(15モルEO、SR9035、Sartomerより)70部を三本ロールミルで粉砕し、2/0の粒度(grind)を有する濃厚基剤を作成する。この基剤20部に、ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート(SR344、Sartomerより)40部、光開始剤(Irgacure 2959、Cibaより)10部、高度にエトキシル化されたトリメチロールプロパントリアクリレート(15モルEO、SR9035、Sartomerより)10部、及び水40部を混合し、ブルーインクを作成する。そのインクを、フレキソハンドプルーファを用いて、実施例1のプラズマ重合体をコーティングした基材に施し、UV照射によって硬化させる。
【0028】
実施例4−エネルギー硬化型カチオン性インクの使用
銅フタロシアニンスルホニルクロリド210重量部を含有するプレスケーキ(任意の常套法によって調製)を、約2000の数平均分子量を有する第一級アミンを末端とするポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)(5/95)コポリマー(Huntsman CorporationよりXTJ507として入手)692重量部、と炭酸ナトリウム66重量部の混合物に添加し、混合することによってレオロジー的添加剤を調製する。次いで、最終的な反応混合物を、真空下で80〜90℃に加熱して水を除去し、銅フタロシアニン添加剤を作成する。
【0029】
銅フタロシアニンから得られたレオロジー的添加剤12重量%を通常のピグメントブルー15.4 79重量%と混合することにより、一般的顔料の磨砕プロセスの工程の間に、改質ピグメントブルー15.4組成物を調製する。
【0030】
エネルギー硬化型のカチオン性インクを以下の成分から配合した。
【表1】

Irgacure 26は、(n−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1,2,3,4,5,6−N)(1−メチルエチル)ベンゼン]−鉄−ヘキサフルオロホスフェートであり、DVEは、トリエチレングリコールジビニルエーテルである。Cyracure 6110と改質ピグメントブルー15.4を、Cowlesブレードを用いて高速(約2000rpm)で混合し、次いで1mmのサイズのメディアを入れたメディアミルによって処理する。処理の後、残りの成分を添加する。
【0031】
印刷の連続運転を、Pamarco社のグラビアハンドプルーファを用い、実施例1のプラズマ重合体をコーティングした基材上に行う。グラビアハンドプルーファの主な構成要素は、300ライン/インチ(118ライン/cm)のアニロックスローラー、及びアニロックスローラーに供給するインクを制御するためのドクターブレードアセンブリーである。印刷したサンプルは、UVスペクトル領域に400ワット/インチの出力のあるランプと円筒状反射体を有するR.P.G.インダストリーのUV硬化装置を通過させる。印刷速度は約1m/秒(200フィート/分)である。改質ピグメントブルー15.4インク組成物を用い、ハンドプルーファによって基材に均一なインクフィルムを施し、この硬化装置を用いて硬化させる。
【0032】
本発明の方法と生成物に、その技術的思想と範囲から逸脱することなく、種々の変化や変更を加えることができる。本願で説明したいろいろな実施態様は、本発明をさらに例証するためであって、本発明を限定するものではない。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
残存する未重合で重合可能な官能基を含有するプラズマ重合体のコーティングを基材上に提供し、
放射硬化型組成物を、前記プラズマ重合体をコーティングした基材に施し、ここで、前記放射硬化型組成物は、照射が行われたとき、前記残存する未重合で重合可能な官能基と反応生成物を形成する少なくとも1つの成分を含有し、そして
前記放射硬化型組成物を放射硬化する、
ことを含む、コーティングされた基材の製造方法。
【請求項2】
前記放射硬化型組成物が、放射硬化型グラビアインクである請求項1に記載のコーティングされた基材の製造方法。
【請求項3】
前記放射硬化型組成物が、放射硬化型フレキソグラフィインクである請求項1に記載のコーティングされた基材の製造方法。
【請求項4】
前記放射硬化型組成物が、放射硬化型リソグラフィインクである請求項1に記載のコーティングされた基材の製造方法。
【請求項5】
前記放射硬化型組成物が、着色剤組成物と放射硬化型液体媒体を含有する放射硬化型インクである請求項1に記載のコーティングされた基材の製造方法。
【請求項6】
前記放射硬化型媒体が、α、β−エチレン性不飽和化合物を含有する請求項1に記載のコーティングされた基材の製造方法。
【請求項7】
前記α、β−エチレン性不飽和化合物が、(メタ)アクリレートを含有する請求項6に記載のコーティングされた基材の製造方法。
【請求項8】
前記プラズマ重合体のコーティングが、重合したエポキシド又は(メタ)アクリレートを含有する請求項1に記載のコーティングされた基材の製造方法。
【請求項9】
前記プラズマ重合体のコーティングを形成することをさらに含む請求項1に記載のコーティングされた基材の製造方法。
【請求項10】
前記硬化が電子ビーム硬化である請求項1に記載のコーティングされた基材の製造方法。
【請求項11】
前記硬化が紫外線硬化である請求項1に記載のコーティングされた基材の製造方法。
【請求項12】
プラズマ重合体のコーティングをその上に有する基材、及び前記プラズマ重合体をコーティングした基材上の放射硬化した組成物を備え、前記プラズマ重合体の一部と前記放射硬化した組成物の一部が反応生成物を形成した、コーティングされた基材。
【請求項13】
前記放射硬化した組成物が、放射硬化したグラビアインクである請求項12に記載のコーティングされた基材。
【請求項14】
前記放射硬化した組成物が、放射硬化したフレキソグラフィインクである請求項12に記載のコーティングされた基材。
【請求項15】
前記放射硬化した組成物が、放射硬化したリソグラフィインクである請求項12に記載のコーティングされた基材。
【請求項16】
前記放射硬化した組成物が、着色剤と放射硬化した液体媒体を含有する放射硬化したインクである請求項12に記載のコーティングされた基材。
【請求項17】
前記媒体が、重合した(メタ)アクリレートを含有する請求項16に記載のコーティングされた基材。
【請求項18】
前記プラズマ重合体のコーティングが、重合したエポキシド又は(メタ)アクリレートを含有する請求項1に記載のコーティングされた基材。
【請求項19】
前記放射硬化した組成物が、着色剤と放射硬化した液体媒体を含有する放射硬化したインクである請求項18に記載のコーティングされた基材。
【請求項20】
前記媒体が、重合した(メタ)アクリレートを含有する請求項19に記載のコーティングされた基材。


【公表番号】特表2007−528783(P2007−528783A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545377(P2006−545377)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2004/042114
【国際公開番号】WO2005/059040
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(596024024)サン・ケミカル・コーポレーション (39)
【Fターム(参考)】