説明

放射線モニタリング・ステーションにおける放射能干渉を拒絶するための方法及び装置

放射線モニタリング・ステーションにおける放射能干渉を拒絶するための方法及び装置である。技法は、典型的に、実質的に異なる視野において、移動する放射性ソースからの第1及び第2の放射線測定値を取得するように位置決めされた2つの放射線検出器を含んでいる。遷移域が上記視野の間で確立している。上記の第1放射線レベル測定値及び上記の第2放射線レベル測定値によって、従属変数をもたらす関数が少なくとも部分的に定義される。上記従属変数が第1の閾値に達したときに、検出警報が発生する。幾つかの実施形態においては、検出警報を発生させるための条件として、上記モニタリング・ステーションが占有されているかどうかに関する判定がなされ、幾つかの実施形態においては、検出警報の発生に先立ち、上記検出された放射性ソースがありそうな無害なものであるかどうか又はありそうな攻撃性のものであるかどうかに関する判定がなされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、米国出願第11/616,600号の優先権を主張し、該出願に関係しており、この米国出願第11/616,600号は、2006年12月27日に出願され、「放射線モニタリング・ステーションにおける放射能干渉を拒絶するための方法及び装置」という発明の名称のものである。この米国出願は、ここに、参照によってその全体を援用する。
【0002】
本願発明は放射線検出の分野に関する。より詳細には、本願発明は、放射線モニタリング・ステーションを通って移動する放射性ソースの検出に関する。
【背景技術】
【0003】
乗物、船舶用コンテナ、小包、手荷物、人、動物、工業製品、加工材料、廃棄物、及び類似の物品の流れを検査するために、様々なタイプの放射線モニタリング・ステーションが使用され、何らかの放射性物質がその中に存在するかどうかが判定されている。そのようなシステムにおいて、検査すべき品物のフローは、上記モニタリング・ステーションの付近を通過するように、又は該モニタリング・ステーションを通って通過するように典型的に構成されている。例えば、歩行者の玄関モニタは、マイクロキュリーレベルの特別な核物質の検出のために設計することができる。従来の設計において、この玄関は1つ又は2つの大きなガンマ検出器、普通はプラスチック・シンチレータ又はNaI(Tl)検出器を該玄関の各側に備えている。これらの検出器は、一般的に、バックグラウンド計数率よりも統計的に大きな計数率に対して警報を発するように設計されており、このバックグラウンド計数率は、上記玄関の近くに放射線ソースが存在しないときに検出されるであろうものである。統計的に有意な(警報の閾)レベルは、累積確率分布から計算することができる。そのようなモニタリング・ステーションによくある複雑な影響は、該放射線モニタリング・ステーションの付近を通過する列に、又は該放射線モニタリング・ステーションを通って通過する列に存在する放射性ソースが、この放射線ソースを実際に運ぶ品物又は物質が該ステーションに達する前に、このステーションにおいて警報をトリガしてしまうことがあることである。結果として、上記実際の放射性ソースより先に該ステーションに達する物質は、該放射性ソースを含んでいるとして不当に識別されてしまうことがある。
【0004】
この問題を図示する一例は、放射性核種の投与を受けており、歩行者の放射線モニタリング玄関に接近した列にいる医療上の患者における放射能ソースの存在である。多くの医療的放射性核種の放射能レベルは、歩行者玄関システムが検出するよう典型的に設計されている放射能レベルの一千から一万倍を越えている。この玄関は、はるかに小さな放射能ソースを検出するよう典型的に設計されているので、すぐ近くの医療的放射性同位体ソースは、この強い放射能の医療的ソースが未だ該玄関から大きな距離(しばしば5から10メータ)にあるときに、上記警報の閾を越えた検出器計数率を一般的にもたらしてしまう。歩行者(乗物等)の連続的な列が上記玄関を通って移動した場合、上記警報は該玄関内の人(乗物等)が原因であるように見えることになるが、実際には、この警報は該列の更に後ろの放射線ソースによって引き起こされている。この列の全ての人/物は、上記強いソースが該玄関を通り越すか、又はもはや検出器計数率を増加させない該玄関から十分遠くに移動するまで、警報を発生させるように見えることになる。
【0005】
従って、この例においては、上記医療上の患者の前におり、上記警報を罪なく引き起こしてしまった人全てを拘留することをどのように回避するのかということが挑戦となり、なぜなら彼らは、列において彼らの後ろにいる該医療上の患者からの高ガンマ・レート放射により計数率が有意に上昇するときに、上記玄関を占有してしまうためである。罪なき人の結果的な阻止は、特別に訓練された執行職員及び放射性核種識別器の設備を伴う二次的な検査を要求する可能性がある。この手順は労働者及び設備の費用を伴うことになり、これら労働者及び設備の費用の両方は、望ましくなく、この例で記載した状況に対しては不必要である。明らかに、これは満足できる動作モードではない。
【0006】
放射線モニタリング・ステーションにおける、放射性物質の早まった検出の上記影響を克服するための試行において、様々な技法が開発されてきた。例えば、該放射線モニタリング・ステーションの放射線検出器の感度は、早まった検出を最小限にするために下げることができる。しかし、こうすることは、少量の攻撃用放射能物質が上記放射線モニタリング・ステーションを通って通過したときに、この少量の攻撃用放射能物質の検出を失敗する可能性があるという欠点を有している。試みられてきた別の技法は、上記放射線検出器を遮蔽して、該放射線検出器が、特定の定義された小さな視野角内に置かれた放射線ソースのみを「見る」ようにさせることである。しかし、このような遮蔽は視野の窓を比較的小さな角度に制限するため、該遮蔽は上記検出器の周りの非常に大きな角度を覆わなければならない。更にまた、上記検出器は非常に敏感であり、非常に小さな量(例えば、マイクロキュリー)の特別な核物質を検出するように典型的には設計されているため、特定の小さな視野角の外側にある大きな量の特別な核物質の望ましくない検出を防ぐように、上記遮蔽は非常にかさばったものでなければならない。この遮蔽用の体積は、かなりの望ましくない重量及び費用を上記モニタリング・ステーションに追加することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そのため、必要とされているのは、すぐ近くの放射線ソースからの、放射線モニタリング・ステーションにおける放射能干渉を拒絶するための方法及びシステムである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態において、本願発明は、放射線モニタリング・ステーションにおいて放射能の放射を検出するための方法を提供する。当該方法は、上記放射線モニタリング・ステーションにおける第1の視野にわたり、移動する放射性ソースからの第1の放射線測定値を取得するステップを含んでいる。当該方法は、上記放射線モニタリング・ステーションにおける第2の視野にわたり、該移動する放射性ソースからの第2の放射線測定値を取得するステップを続ける。この第2の視野の少なくとも一部は上記第1の視野と実質的に異なり、該第1の視野の少なくとも一部と該第2の視野との間に遷移域が確立される。当該方法は、上記の第1の放射線レベル測定値及び上記の第2の放射線レベル測定値によって少なくとも部分的に定義される関数の従属変数を計算するステップを進める。当該方法は、上記移動する放射性ソースが上記遷移域を通って移動するときに、上記従属変数が第1の閾値に達するときを求めるステップを進め、それから該従属変数が該第1の閾値に達したときに検出警報をトリガするステップを進める。
【0009】
放射線モニタリング・ステーションにおいて放射能の放射を検出するための代替方法の実施形態において、当該方法は、上記の玄関モニタリング・ステーションにおける入口放射線レベル及び出口放射線レベルを測定するステップと、それからこの入口放射線レベルとこの出口放射線レベルとを合計して、総計放射線レベルを得るステップとを含んでいる。当該方法は、上記入口放射線レベルと上記出口放射線レベルとの間の百分率の差を計算するステップと、上記総計放射線レベルが第1の警報閾レベルを超えているかを判定するステップとを続ける。更に、当該方法は、(a)上記総計放射線レベルが上記第1の警報閾レベルを超えており、且つ、(b)上記差が第2の警報閾値より小さい場合に検出警報をトリガするステップを含んでいる。
【0010】
また、放射線モニタリング・ステーションにおいて放射能の放射を検出するために、装置の実施形態を提供する。当該装置は、第1の視野にわたり、移動する放射性ソースからの第1の放射線測定値を取得するように構成された第1の放射線検出装置と、第2の視野にわたり、該移動する放射性ソースからの第2の放射線測定値を取得するように構成された第2の放射線検出装置とを備えている。上記第2の視野の少なくとも一部は上記第1の視野と実質的に異なり、この第1の視野の少なくとも一部とこの第2の視野との間に遷移域が確立されている。算出システムを提供し、この算出システムは、上記放射性ソースが上記遷移域にあるときに第1の閾値に達する従属変数を計算し、この従属変数がこの閾値に達した場合に警報指示を発するように構成されている。
【0011】
図とともに詳細な説明を参照することによって、様々な利点が明らかとなる。詳細をよりはっきりと示すため、要素はスケールされておらず、幾つかの図を通して、同様の参照番号は同様の要素を指し示している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】職員の放射線モニタリング・ステーションの透視正面図である。
【図2A】図1の平面A−Aを通る、職員の放射線モニタリング・ステーションの水平横断面概略図である。
【図2B】図1の平面A−Aを通る、職員の放射線モニタリ・ステーションの代替構成の水平横断面概略図である。
【図2C】図2Aの概略横断面図に対し、ある放射線検出視野角の情報を追加したものである。
【図3】図1、2A、及び2Cの、職員の放射線モニタリング・ステーションの透視正面概略図である。
【図4】放射線モニタリング・ステーションを通って仮想的な放射性ソースが移動したときの、入口検出器計数と、出口検出器計数と、合わせた総計検出器計数とを描写したグラフである。
【図5】放射線モニタリング・ステーションを通って短いレンジにわたり仮想的な放射性ソースが移動したときの、入口検出器計数と、出口検出器計数と、相対的な差の計算とを描写したグラフである。
【図6】放射線モニタリング・ステーションの一方の側に仮想的な「強い」放射性ソースが接近したときの、入口検出器計数と、出口検出器計数と、相対的な差の計算とを描写したグラフである。
【図7】放射線モニタリング・ステーションを通って長いレンジにわたり仮想的な放射性ソースが移動したときの、入口検出器計数と、出口検出器計数と、相対的な差の計算とを描写したグラフである。
【図8】放射線モニタリング・ステーションにおける放射能干渉を拒絶するための方法を描写したフロー図である。
【図9】放射線モニタリング・ステーションを通って放射性ソースが移動するときの、従属変数をもたらす基準の時間従属関数を描写したグラフである。
【図10】放射線モニタリング・ステーションを通って放射性ソースが移動したときの、仮想的に測定された入口検出器計数と仮想的な出口検出器計数とで計算された図7の時間従属関数を描写したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
好適実施形態の以下の詳細な説明において、この一部分を形成する添付の図面に対する参照がなされており、この添付の図面の中では、本願発明を実施可能な特定の実施形態が図示の目的で示されている。ここに記載するものは、放射線モニタリング・ステーションにおける放射能干渉を拒絶するための方法及び装置の様々な実施形態である。他の実施形態を利用することができ、他の実施形態において、構成上の変更をなすことができプロセスを変形することができることは理解されたい。例えば、ここに提供する複数の実施形態は、職員の放射線モニタリング玄関に関して記載している。しかし、本願の方法及び構成は、乗物、船舶用コンテナ、小包、手荷物、人、動物、工業製品、加工材料、廃棄物、及び類似の物品の流れを検査するための放射線モニタリング・ステーションにも適用される。
【0014】
図1に図示した放射線モニタリング・ステーションの一実施形態において、職員の放射線モニタリング玄関10を、放射線モニタリング玄関10を通って通過する人12と共に描写している。放射線モニタリング玄関10は、第1の側(入口の方向から見たときの「右側」)のパネル14と、第2(「左側」)のパネル16とを備えている。上部部材18は、第1(右)の側のパネル14と第2(左)の側のパネル16とを接続している。動作状態指示器20及び警報指示器22を上部部材18に据え付けることができる。放射線モニタリング玄関10は、しばしば台座24に搭載することができ、台座14の台座上部表面26は、周囲の床表面と同じ高さに据え付けることができる。幾つかの実施形態において、放射線モニタリング玄関10等の放射線モニタリング・ステーションは、可搬モバイル・ユニットとして設計されている。そのような実施形態において、台座24は使用しなくて良いか、又は、台座24を使用する場合、周囲の床表面の上に、台座上部表面26と共に一時的に据え付けることができる。
【0015】
図2Aは、図1の平面A−Aを通る、放射線モニタリング玄関10の概略水平横断面図を図示している。この玄関を通る通過の方向は、矢印40で図示している。これは、図1の方向とは反対の方向からの図を示しており、そのために図2Aにおいて、第1(右)の側のパネル14は右にあり、第2(左)の側のパネル16は左にある。左側パネル16は、左側外部放射線遮蔽50を備えており、この左側外部放射線遮蔽50は、第1入口ガンマ線検出器52と、第1出口ガンマ線検出器54とを部分的に取り囲んでいる。ここに記載したこれらガンマ線検出器は、例えば、プラスチック・シンチレータ、NaI(Tl)シンチレータ、CsI(Na)シンチレータ、高解像度(例えば、HPGe)検出器、比例計数管、ガイガーミュラー検出器等であることができる。第1入口ガンマ線検出器52及び第1出口ガンマ線検出器54は、第1の放射線分離遮蔽56によって分離している。左側パネル16の要素は、左パネル・カバー58で取り囲まれている。
【0016】
図2Aに更に図示されているように、右側パネル14は、この実施形態において、実質的に左側パネル16の鏡像である。右側パネル14は外部放射線遮蔽68を備えており、この外部放射線遮蔽68は、第2入口ガンマ線検出器70と第2出口ガンマ線検出器72とを部分的に包囲している。第2入口ガンマ線検出器70及び第2出口ガンマ線検出器72は、第1入口ガンマ線検出器52及び第1出口ガンマ線検出器54と典型的には同じタイプの検出器である。第2入口ガンマ線検出器70及び第2出口ガンマ線検出器72は、第2の放射線分離遮蔽74によって分離している。右側パネル14の要素は、右側パネル・カバー76で取り囲まれている。
【0017】
その上、放射線モニタリング玄関10は、矢印40の方向に移動する放射線ソースを監視するように構成されており、この方向は、図1の人12が歩いている方向であることに注意されたい。典型的に、放射線モニタリング・ステーションは、このようにある方向に移動する放射線ソースを監視するように構成されている。しかし、幾つかの実施形態において、検出器の組の直交する複製を使用することにより、互いに直行する2つの方向の何れかに移動する放射線ソースか、又は3つの直交する方向の何れかに移動する放射線ソースを監視するように放射線モニタリング・ステーションは構成することができる。
【0018】
図2Bは、代替実施形態の放射線モニタリング玄関10Aの、図1の平面A−Aを通る概略水平横断面図を図示している。該玄関を通る通過の方向は、矢印40によって図示している。これは、図1の方向とは反対の方向からの図を示しており、そのため図2Bにおいて、第1(右)の側のパネル14Aは右にあり、第2(左)の側のパネル16Aは左にある。右側パネル14Aは外部放射線遮蔽68Aを備えており、この外部放射線遮蔽68Aは、一次前面ガンマ線検出器70Aと第2の一次後面ガンマ線検出器72Aとを包囲している。一次前面ガンマ線検出器70A及び一次後面ガンマ線検出器72Aは、第1入口ガンマ線検出器52A及び第1出口ガンマ線検出器54Aと典型的には同じタイプの検出器である。一次前面入口ガンマ線検出器70A及び一次後面ガンマ検出器72Aは第1の放射線分離遮蔽74によって分離しており、この第1の放射線分離遮蔽74は、図2Aに描写した第1の放射線分離遮蔽56とは相違する構成である。右側パネル14Aの要素は、右側パネル・カバー76Aで取り囲まれている。
【0019】
図2Bに更に図示されているように、左側パネル16Aは、この実施形態において、実質的に左側パネル14Aの鏡像である。左側パネル16Aは左側外部放射線遮蔽50Aを備えており、この左側外部放射線遮蔽50Aは、二次前面ガンマ線検出器52Aと二次後面ガンマ線検出器54Aとを部分的に取り囲んでいる。二次前面ガンマ線検出器52A及び二次後面ガンマ線検出器54Aは、第2の放射線分離遮蔽56Aによって分離している。左側パネル16Aの要素は、左パネル・カバー58Aで取り囲まれている。
【0020】
図2Cは、この実施形態における第1入口ガンマ線検出器52及び第1出口ガンマ線検出器54によって見られる、ある「視野角」を図示している。視野角は少なくとも2つの線で定義される空間的な領域であり、その範囲内で、検出器は放射性ソースを検出可能である。例えば、第1入口ガンマ線検出器に対する第1入口ガンマ線検出視野角100は、線102と104とによって定義されている。線102は、第1入口ガンマ線検出器52の端と、左側外部放射線遮蔽50のかど108とによって定義されている。線104は、第1入口ガンマ線検出器52の端と、第1放射線分離遮蔽の第1のかど110とによって定義されている。
【0021】
第1出口ガンマ線検出器54に対する第1出口ガンマ線検出視野角112は、線114と116とによって定義されている。線114は、第1出口ガンマ線検出器54の端と、第1放射線分離遮蔽56の第2のかど120とによって定義されている。線116は、第1出口放射線検出器54の端と、左側パネルの外部放射線遮蔽50のかど122とによって定義されている。
【0022】
第2入口ガンマ線検出器70及び第2出口ガンマ線検出器72によって見られる視野角は、第1入口ガンマ線検出器53によって見られる第1入口ガンマ線検出視野角100、及び第1出口ガンマ線検出器54によって見られる第1出口ガンマ線検出視野角112にそれぞれ類似している。
【0023】
第1入口ガンマ線検出器52は、第1の放射線検出装置の例であり、この第1の放射線検出装置は、放射線モニタリング・ステーションにおける第1の視野にわたり、移動する放射性ソースからの第1の放射線測定値を取得するように位置決めされたものである。第1出口ガンマ線検出器54は、第2の放射線検出装置の例であり、この第2の放射線検出装置は、この放射線モニタリング・ステーションにおける第2の視野にわたり、移動する放射線ソースからの第2の放射線測定値を取得するように位置決めされたものである。代替実施形態において、第1の放射線検出装置及び第2の放射線検出装置として、中性子検出器等の他の放射線検出器を使用することができる。
【0024】
図2Cの実施形態において、第1入口ガンマ線検出視野角100は、第1出口ガンマ線検出視野角112と重なり角124だけ重なっている。重なり角124は、(a)第1の視野(例えば、第1入口ガンマ線検出視野角100)と(b)第2の視野(例えば、第1出口ガンマ線検出視野角112)との間の重なり遷移域であると考えられる。幾つかの実施形態において、これら第1と第2のガンマ線検出角の間に重なりは存在しない。即ち、上記第1の視野と上記第2の視野との間には間隙が存在する。この第1の視野とこの第2の視野との間に重なりが存在しない実施形態において、該第1の視野と該第2の視野との間の空間は、間隙遷移域であると考えられる。「重なり遷移域」及び「間隙遷移域」の各々は、「遷移域」の例を表している。
【0025】
幾つかの実施形態において、図2Cの上記重なり角(例えば重なり角124)は、(a)上記第1の視野の角度(例えば、第1入口ガンマ線検出視野角100)又は(b)上記第2の視野の角度(例えば、第1出口ガンマ線検出視野角112)のうちの小さい方の約二分の一、三分の一、又は四分の一より小さい。(a)上記第1の視野の角度及び(b)上記第2の視野のうちの小さい方の約90パーセントより小さな重なり角の実施形態において、該第2の視野の少なくとも一部は、該第1の視野と「実質的に異なる」と考えられる。好ましくは、上記重なり角は、(a)上記第1の視野の角度及び(b)上記第2の視野の角度のうちの小さい方の約十分の一であり、最も好ましくは、該重なり角は実質的にゼロである。
【0026】
図2Cに図示された実施形態において、適切な検出器感度を仮定すると、位置126の放射性ソースは第1入口ガンマ線検出器52によって検出されることになり、なぜなら、位置126の放射性ソースが、第1入口ガンマ線検出角100の範囲内にあるからである。第1の放射線分離遮蔽56の適切な遮蔽能力を仮定すると、位置126の放射性ソースは第1出口ガンマ線検出器54によって検出されることはなく、なぜなら、位置126の放射性ソースが、第1出口ガンマ線検出角112の範囲内にないからである。
【0027】
再び、適切な検出器感度を仮定すると、位置128(即ち、重なり遷移域)の放射性ソースは第1入口ガンマ線検出器52によって検出されることになり、なぜなら、位置128の放射性ソースが、第1入口ガンマ線検出角100の範囲内にあるからであり、且つ、位置128の放射性ソースは第1出口ガンマ線検出器54によって検出されることになり、なぜなら、位置128の放射性ソースが、第1出口ガンマ線検出角112の範囲内にあるからである。
【0028】
位置128の放射性ソースが第1の視野と第2の視野との間の間隙遷移域にある代替実施形態において、この放射性ソースは上記第1の放射線検出装置又は上記第2の放射線検出装置の何れによっても検出されることはない。
【0029】
位置130の放射性ソースは第1入口ガンマ線検出器52によって検出されることはなく、なぜなら、位置130の放射性ソースが、第1入口ガンマ線検出角100の外側にあるからであり、且つ、位置130の放射性ソースは、第1出口ガンマ線検出器54によって検出されることになり、なぜなら、位置130の放射性ソースが、第1出口ガンマ線検出角112の範囲内にあるからである。
【0030】
位置132の放射性ソースは第1入口ガンマ線検出器52によって検出されることはなく、なぜなら、位置132の放射性ソースが、第1入口ガンマ線検出角100の外側にあるからであり、且つ、位置132の放射性ソースは第1出口ガンマ線検出器54によって検出されることはなく、なぜなら、位置132の放射性ソースが、第1出口ガンマ線検出角112の外側にあるからである。
【0031】
放射線検出器は放射線の強度を典型的に測定し、放射線の強度は、放射性ソースと検出器との間の距離の二乗の関数として、実質的に小さくなることが更に理解されよう。
【0032】
図3は、左側パネル・カバー58及び右側パネル・カバー76(図2Aにおいて各々識別されている)を備えた放射性モニタリング玄関10の透視概略正面図を図示しており、これら左側パネル・カバー58及び右側パネル・カバー76の両方は除去されている。右側パネル14及び左側パネル16はパネル高さ150を有している。更にまた、この実施形態において、第2入口ガンマ線検出器70のみが可視であるが、第1入口ガンマ線検出器52及び第1出口ガンマ線検出器54、並びに第2入口ガンマ線検出器70及び第2出口ガンマ線検出器72の全ての高さは検出器高さ152を有し、検出器高さ152は、パネル高さ150と実質的に等しい。また、第2の放射線分離遮蔽74のみが可視であるが、第1の放射線分離遮蔽56及び第2の放射線分離遮蔽74は分離遮蔽高さ154を有し、分離遮蔽高さ154はパネル高さ150と実質的に等しい。幾つかの実施形態において、検出器高さ152はパネル高さ150のごくわずかである場合がある。検出器高さ152がパネル高さ150のごくわずかである実施形態において、検出器は、一般的にパネル高さ150の大体中央に設置されている。多くの実施形態において、分離遮蔽高さ154は検出器高さ152と実質的に等しく、上記分離遮蔽は、上記入口検出器及び上記出口検出器と同じ高さに置かれている。
【0033】
表1は、放射線モニタリング玄関におけるシミュレートされたPVT中性子検出器からの例示の計数率を示している。
【0034】
【表1】

【0035】
図4は、表1の放射線計数を使用したプロットを図示している。図4に示されているのは、第1入口ガンマ線検出器52によって検出された、放射性ソースからの入口放射線計数率170のプロットである。第1入口ガンマ線検出器52は、第1の放射線検出装置の一例であり、この第1の放射線検出装置は、放射線モニタリング・ステーションにおける第1の視野にわたり、移動する放射性ソースからの第1の放射線測定値を取得するように位置決めされたものである。更に、図4は、第1出口ガンマ線検出器54によって検出された出口放射線計数率172のプロットを図示している。第1出口ガンマ線検出器54は、第2の放射線検出装置の一例であり、この第2の放射線検出装置は、放射線モニタリング・ステーションにおける第2の視野にわたり、移動する放射性ソースからの第2の放射線測定値を取得するためのものである。
【0036】
図4のX軸174に沿った距離は、位置「0」即ち「玄関の中線」(例えば、図2Bに図示された位置128)からの放射性ソースの変位を表している。Y軸176に関して定量化された入口放射線計数率170は、該放射性ソースが位置0に近づくにつれて上昇し、そして該放射性ソースが図2Bに描写された重なり角124で表される上記遷移域を通って移動するにつれて急速に低下している。出口放射線計数率172は、該放射性ソースが重なり角124で表される上記遷移域に達するにつれ急速に上昇し、そして位置0からの該放射性ソースの距離が増加するにつれて低下している。また、入口放射線計数率170と出口放射線計数率172との合計178のプロットを図4に示している。
【0037】
表2は、表1の計数値から計算した、計算された差/総計の値を示している。
【0038】
【表2】

【0039】
図5は、図4に示された入口放射線計数率170及び出口放射線計数率172のプロットを、拡大した左のY軸190に関して繰り返している。また、図5にプロットされているのは、右のY軸194に関して定量化された、(表2からの)相対的な差の計算192である。この相対的な差の計算は、式1によって定義される。
【0040】
【数1】

【0041】
バックグラウンドの率は、上記玄関が空であり、且つすぐ近くにソースが存在しないときの上記の「入口」パネル計数率と「出口」パネル計数率との合計であり、式2によって表される。
【0042】
【数2】

【0043】
幾つかの実施形態において、相対的な差の計算は、このバックグラウンドの率を含んでいない(即ち、該バックグラウンドの率は、ゼロと仮定されている)。例えば、このバックグラウンドの率は、図5の相対的な差の計算192においてはゼロと仮定されている。式5は、上記の入口放射線レベルと上記の出口放射線レベルとの間の百分率の差を計算する例である。
【0044】
式2において定義されるように計算された上記バックグラウンドの率を伴う式1は、従属変数をもたらす関数の例(即ち、「相対的な差」の計算192)であり、ここで、この関数は、第1の放射線レベル測定値(即ち、入口パネル計数率170)及び第2の放射線レベル測定値(即ち、出口パネル計数率172)によって少なくとも部分的に定義されており、上記移動する放射性ソースが上記遷移域(この場合、上記玄関の中線、即ち図5のX軸上の0)を通って移動したときに、上記従属変数は第1の閾値(この場合、ゼロ)に達する。幾つかの実施形態において、この第1の閾値は、「限界値」の観点から定義することができ、(ここに使用されるように)ゼロ又は1の値を意味している。また、式2は、従属変数をもたらす関数の一例であり、この従属変数をもたらすための第1の放射線測定値及び第2の放射線測定値に関わるレシオの計算を含んでいる。
【0045】
図5を続けると、上記玄関の中線(X軸上の0)より約±100cmからの、相対的な差における傾斜の変化に注意せよ。このことは、放射線モニタリング玄関を通って放射性ソースが通過するときに、該玄関において測定される最大の相対的な差の約10%よりも小さな相対的な差を上記2つの検出器が有しているときにトリガ検出警報が設定された場合、検出した放射線ソースは上記玄関の中線の10cm以内に存在することが予期されることを図示している。上記最大の相対的な差の百分率の計算は、上記入口放射線レベル及び上記出口放射線レベルの間の百分率の差の計算の更なる例である。該入口放射線レベル及び該出口放射線レベルの間の百分率の差を計算することは、該入口放射線レベル及び該出口放射線レベルの一方又は双方を含む第1の関数を、該入口放射線レベル及び該出口放射線レベルの一方又は双方を含む第2の関数で割り算することを伴っている。
【0046】
この方法及び特定の装置の変形は、上記玄関の近くに「強い」ガンマ・ソースが存在するときに使用することができ、この「強い」ガンマ・ソースは、この「相対的な差」のシステムの有効性を減ずる可能性のあるものである。この状況は、99mTc又は13lIの医療的処置を最近受けた人物が上記玄関の一方の側に接近したときに生ずることになる。経験によれば、5−20人の列の後方のそのような人物は、上記玄関の応答に有意に変化させる可能性がある。この状況は、3つの別々の現象を引き起こす。第1に、上記「強い」ソースからの放射線が上記玄関に進入する何らかの人、物等によって散乱し、検出された計数率の増加を引き起こし、ソースが存在しないときに、上記玄関を通って通過している実際の放射線ソースが存在するという見かけを与えることになる。このことは、「後方散乱放射線」と呼ばれている。第2に、上記「強い」ソースによって生じるより高い放射線レベルのせいで、「入口」、「出口」、又はそれら両方の検出器における計数率レベルが増加してしまう。このソースは、上記の「入口」及び「出口」の検出器における計数率を増加させるが、上記玄関の入口に上記ソースがより接近したときに、上記「出口」検出器に対する上記「入口」検出器におけるより大きな増加を引き起こすか、又は、上記玄関の出口に上記ソースがより接近したときに、上記「入口」検出器に対する上記「出口」検出器における増加を引き起こすことになる。この影響は、上記玄関が占有されていようとなかろうと起こることである。この計数率の増加は、一般的に、ある人が上記玄関を通り抜けるのに必要な時間と比較して、より長い期間持続する。第3に、人、物等が1以上の上記検出器を上記「強い」ソースによって放射される放射線から一瞬遮蔽する可能性がある。この影響は、現実の状況において、完全にランダムである。乗物を調べるために使用される玄関において、周囲の自然バックグラウンド放射線から上記検出器を遮蔽することによって大きなトラックが検出器の計数率を低下させる場合に、「ベースライン降下」と呼ばれる類似の現象が観測されている。
【0047】
表3は、「強い」ソース、例えば99mTc又は13lIの医療的処置を最近受けた人が上記玄関の一方の側に接近した場合の、放射線モニタリング玄関からのシミュレートされたデータを示している。
【0048】
【表3】

【0049】
図6は、上記の人が上記玄関の入口近くにいるときに、彼/彼女が計数率の増加を引き起こすことを図示している。この場合、上記玄関は、閾レベルより上の総計の率を感知することになる。「警報」指示器、典型的には上記玄関上の指示器が設定され、データにおけるフラグがリモート・サイトに出力される。
【0050】
これらの影響に取り組むために、代替の方法が使用できる。この代替の方法において、上記玄関における測定値は、連続する時間インターバル(典型的には0.2−1.0秒)の間に測定された計数率のシリーズから成っている。ベースライン計数率レベルは、「長い」時定数フィルタからのデータを使用して確立され、この「長い」時定数フィルタは、上記玄関を通って移動している「ソース」が感知された間のデータに適用され、この「ソース」は、同じデータに「短い」時定数フィルタを適用することによって感知される。普通、上記玄関の近くには「強い」ソースが1つだけ存在するので、上記「長い」時定数フィルタを使用してフィルタされた上記「入口」計数率と、上記「短い」時定数フィルタを使用してフィルタされた上記「出口」計数率とにおける差は、すぐ近くのソースと上記玄関通って実際に通過しているソースとの間で弁別するために使用可能である。
【0051】
この代替方法で使用するための好適な装置は、図2Bの放射線モニタリング玄関10Aである。以下の計算に対して、一次前面ガンマ線検出器70Aは「P1」として参照され、第2の一次後面ガンマ線検出器72Aは「P2」として参照されている。更に、二次前面ガンマ線検出器52Aは「S1」として参照され、二次後面ガンマ線検出器54Aは「S2」として参照されている。ここに使用するように、「前面」及び「入口」に対する参照は同義であり、「出口」及び「後面」に対する参照は同義である。
【0052】
個別の検出器:S1、S2、P1、P2からの計数率は、Tpインターバルで測定され、Tl時間インターバルにわたり計数される。下付き文字は、i番目に測定した計数率の値を参照している。前面及び高面の検出器の計数率の合計は、
【0053】
【数3a】

【0054】
【数3b】

【0055】
によって与えられ、ここで、「B」は両側を参照している。
【0056】
データの前面−後面のペアの最大で5つの入力が定義できる。
【0057】
P2(後面)及びP1(前面) (入力ペア1)
S2(後面)及びS1(前面) (入力ペア2)
S1(前面)及びP2(後面) (入力ペア3)
P1(前面)及びS2(後面) (入力ペア4)
B2(後面)及びB1(前面) (入力ペア5)
警報アルゴリズムは、典型的にはデータの5つのペアの各々に適用される――警報発生のための5つのテスト。しかし、幾つかの実施形態においては、前面及び後面のデータの1つ又は2つのみのペアがテストされ、幾つかの実施形態においては、「両側」(入力ペア5)の値のみが使用される。前面−後面の計数率:前面及び後面のうちの1つのペアに対して、上記アルゴリズムを以下に記載しているが、かさねて、このアルゴリズムは、5つ(又はそれよりも小さな)別々の警報判定においてデータのペアの各々に適用することができる。
【0058】
前面と後面との間に統計的に有意な差があるかどうか、即ち、以下に計算されたDが統計的に有意であるかどうかを判定する:
【0059】
【数4】

【0060】
少なくとも1つの入力ペアに対してDが統計的に有意でない場合、警報テストに対して相対的な差のアルゴリズムを使用する。
【0061】
警報のための閾値を計算する。
a. 前面と後面との間の計数率の再帰的にフィルタされた差を算出する:
【0062】
【数5】

【0063】
(開始時に、D=(前面−後面
パラメータaを設定して通常の歩行者のスピードでフィルタを作動させる;初期値としてa=0.01の使用が一般的に受け入れ可能である。
b. 警報閾値
【0064】
【数6】

【0065】
パラメータbは、前面と後面との間の平均化された差(すぐ近くの強い医療上のソースによる差)より上の、「n・δ」統計的ノイズを表している。開始に対してb=6を使用することが一般的に受け入れ可能である。
【0066】
前面の率の差を計算する:
【0067】
【数7】

【0068】
【数8】

【0069】
【数9】

【0070】
の場合、警報を発する。
【0071】
式8は、再帰的フィルタの例である。再帰的フィルタは、時間平均化フィルタの例である。この再帰的フィルタは実装が容易で、「ルック・アヘッド」の値を平均化に対して必要としない。Cの計数率のシリーズに適用されるこのフィルタは、
【0072】
【数10】

【0073】
である。
【0074】
式8は、従属変数(真又は偽)をもたらす関数の更なる例であり、この従属変数(真又は偽)は、第1の放射線レベル測定値及び第2の放射線レベル測定値によって、少なくとも部分的に定義されている。
【0075】
好適実施形態を使用すると、相対的な差の漸近的な振る舞いがコンピュータ・モデルを使用して計算され、このコンピュータ・モデルは、上記玄関の中心より0から100mを移動するソース物質を評価している。〜10mCiの13lIの医療的放射性同位体ソースは、計数率の小さな増加を100mで引き起こす。そのような大きな距離で、上記相対的な差(式1)は0.25よりも大きく残っており、上記百分率の差(式3)は〜20%より大きく残っていることが求められた。この相対的な差の値を、表4に示す。
【0076】
【表4】

【0077】
図6において、X軸206に関してプロットされた上記玄関を通った距離の関数として、入口ガンマ線検出器の計数率200と出口ガンマ線検出器の計数率202との計数率を、Y軸204に関してプロットしている。上記相対的な差の計算は、プロット208として示している。
【0078】
図8は、放射線モニタリング・ステーションにおける放射能干渉を拒絶するための方法の実施形態に対するフロー図220を図示している。この方法は、先に記載した幾つかの要素及び幾つかの追加の要素を組み込んでいる。フロー図220に描写された本方法のステップ222において、上記の入口及び出口のパネル計数率を測定し、総計計数率を得るために加え合わせている。判定ポイント224において、この総計計数率が閾値警報レベルを超えているかどうかに関して判定をしている。判定ポイント224での該総計計数率が閾値警報レベルを超えていない場合、分析はステップ222に戻る。判定ポイント224での該総計計数率が閾値警報レベルを超えている場合、分析は判定ポイント226に進む。
【0079】
判定ポイント226で、上記玄関が占有されているかどうかを判定する。上記玄関が占有されていない場合、検出警報をトリガするには早すぎるか又は遅すぎるかの何れかである。上記玄関が占有されていない場合、分析は判定ポイント228に進み、ここで、上記入口パネル計数率及び上記出口パネル計数率が±10%以内であるかどうかに関して判定をしている。上記入口パネル計数率及び上記出口パネル計数率が±10%以内である場合、「高バックグラウンド」測定値を設定する。「高バックグラウンド」の設定は、先にここに記載したような検出の代替方法を始動するために使用することができる。
【0080】
図8の判定ポイント226に戻ると、判定ポイント224で上記総計計数率が閾値警報レベルを超えており、且つ、(判定ポイント226によると)上記玄関が占有されている場合、分析は判定ポイント230に進む。判定ポイント230で、上記入口パネル計数率及び上記出口パネル計数率が±10%以内であるかどうかに関して判定をしている。上記入口パネル計数率及び上記出口パネル計数率が±10%以内でない場合、分析はステップ222に戻る。上記入口パネル計数率及び上記出口パネル計数率が±10%以内である場合、放射性核種識別手順232が起動する。典型的に、手順232は、医療上の同位体の存在の見込みが閾値より小さいかどうかに関する推定を含む。
【0081】
次に判定ポイント234で、手順232において、非医療上の同位体ではなさそうであると判定され、且つ、攻撃性放射性核種が識別された場合、警報(検出警報)を発生させ、手順232において識別された該攻撃性放射性核種の識別を提供する。判定ポイント234で、ありそうな放射性ソースとして医療上の同位体が識別された場合、該医療上の同位体の検出を注記し記録する。判定ポイント236で、手順232において医療上の同位体が識別されず、且つ、攻撃性放射性核種も識別されなかった場合、分析は非特定警報(検出警報)を発生させ、なぜなら、上記放射線モニタリング・ステーションによって手順232において可能性ある攻撃性放射性ソースが識別されたものの、上記放射性核種の性質が判定されなかったためである。
【0082】
幾つかの実施形態において、人又は物品が放射線モニタリング・ステーションを通って、例えばコンベヤーのおおむね一定の既知のスピードで移動しているときに、相対的な差を使用する代替又は追加の検出方法を適用できる。そのような方法は、測定された放射線計数曲線の形状が予測された放射線計数曲線と相関するかどうかを判定する相関技法を利用する。例示のシミュレートされたデータを表5に示す。
【0083】
【表5】

【0084】
図9において、X軸目盛り254に関してプロットされた時間にわたり、既知の相対的な差の曲線250がY軸目盛り252に関してプロットされている。図9は、表4のデータをプロットしており、ここでは、X軸272に関してプロットした記録された時間インターバルにわたり、図8の曲線と同じY軸目盛り252に関してプロットした測定された相対的な差の曲線270を図示している。なお、X軸目盛り272は、計算的に拡大又は圧縮して図9の既知のX軸目盛り254に合致させることができる。統計的相関関数は、図9の既知の放射線計数曲線250と図10の測定された相対的な差の曲線270との間の相関係数を計算するために使用される。この計算された相関係数が最小閾値を越えている場合、検出警報が発生する。
【0085】
なお、既知の相対的な差の曲線と測定された相対的な差の曲線(例えば、図8及び9に図示された曲線250及び270)との間の相関が使用される実施形態において、上記相関係数は、(a)時刻tから時刻t10までの既知の相対的な差の曲線250の一部と、(b)時刻tと時刻tとの間の測定された相対的な差の曲線270の一部との間で計算することができ、それは、上記放射性ソースが上記放射線モニタリング・ステーションの中線にあるときに、検出警報をよりふさわしく発生させるためである。これらの相関計算は、従属変数(即ち、上記相関の係数)をもたらす関数の例であり、ここで、この関数は第1放射線レベル測定値及び第2放射線レベル測定値によって少なくとも部分的に定義され、この従属変数は、上記移動する放射性ソースが遷移域を通って移動するときに第1の閾値(即ち、最小相関係数)に達することになる。相関技法は、有利なことに、上記計数率が不安定でノイジーであるときに放射性ソースを検出するために使用することができ、また、相関技法は、検出器の感度をより小さな放射性ソースに対して拡張することができる。
【0086】
多くの実施形態において、評価関数は上記総計放射線計数が最小閾値を越えているという条件を含み、この条件は、検出された放射性ソースが上記玄関の上記中線の近くにあると指示されているときに、同時に生ずるものである。幾つかの実施形態においては、入口ガンマ線検出器からの予期された放射線計数及び実際の放射線計数のみを使用することができ、幾つかの実施形態においては、出口ガンマ線検出器からの予期された放射線計数及び実際の放射線計数のみを使用することができる。
【0087】
幾つかの実施形態において、検出警報の信頼性及び精度の更なる改善をするために、様々な動作上の戦略を用いることができる。例えば、安定な室内環境(一定の建物の換気、標準的なスイング・ドアに対して回転する入口及び出口のドアの使用、等)を維持している間に頻繁なバックグラウンド測定をすることによって、改善は達成できる。長期の平均の率(警報のない期間の間に測定されたもの)は、真のバックグラウンドの率の近似として使用することができる。このことは、バックグラウンド計数率のデータを取得するために定期的にトラフィックを停止させる必要性を除去することができる。代替として、幾つかのアプリケーションにおいて、玄関は、定期的に(例えば、断続的な列車の到着の間)塞がれそのあと空である可能性があり、「閑散」期の間に通常のバックグラウンド測定をすることは、精度を改善し測定遅延を避けることができる。偽の警報の削減における更なる改善は、1以上の放射線エネルギー領域における相対的な差を測定することによって達成することができ、この1以上の放射線エネルギー領域は、ありそうな無害の放射性ソースとありそうな攻撃性放射性ソースとの間でより良く区別するために選択したものである。例えば、自然発生的な放射能物質の検出を最小限にするか、又は、医療上の同位体の検出を最小限にするように選択した放射線エネルギー領域において、放射線測定をすることができる。
【0088】
この発明の実施形態の先の説明は、図示及び解説の目的のために示してきたものである。それらは、網羅的であること、又は開示した正確な形態に本願発明を制限することを意図していない。上記の教示を考慮すると、明らかな修正又は変形が可能である。実施形態は、本願発明及びその実際的アプリケーションの原理の最良の図示を提供しようとして選び記載したものであり、それによって、様々な実施形態において予想される特定の使用に適するような様々な修正を伴って、普通の当業者が本願発明を利用可能であるようにしようとして選び記載したものである。全てのそのような修正及び変形は本願発明の範囲内にあり、本願発明の範囲は、公平に、合法的に、公正に、権利付与される広さに従って解釈されたときの、添付の特許請求の範囲によって決定されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線モニタリング・ステーションにおいて放射能の放射を検出するための方法であって、
前記放射線モニタリング・ステーションにおける第1の視野にわたり、移動する放射性ソースからの第1の放射線測定値を取得するステップと、
前記放射線モニタリング・ステーションにおける第2の視野にわたり、前記移動する放射性ソースからの第2の放射線測定値を取得するステップであって、前記第2の視野の少なくとも一部は前記第1の視野と実質的に異なり、前記第1の視野の少なくとも一部と前記第2の視野との間に遷移域が確立される、ステップと、
前記の第1放射線レベル測定値及び前記の第2放射線レベル測定値によって少なくとも部分的に定義される関数の従属変数を計算するステップと、
前記移動する放射性ソースが前記遷移域を通って移動するときに、前記従属変数が第1の閾値に達するときを求めるステップと、
前記従属変数が前記第1の閾値に達したときに検出警報をトリガするステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記モニタリング・ステーションが占有されているかを判定するステップを更に含み、検出警報をトリガする前記ステップは、(a)前記従属変数が前記第1の閾値に達し、且つ、(b)前記モニタリング・ステーションが占有されている場合に検出警報をトリガするステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
医療上の同位体の存在の見込みを求めるステップを更に含み、検出警報をトリガする前記ステップは、(a)前記従属変数が前記第1の閾値に達し、且つ、(b)医療上の同位体の存在の前記見込みが第2の閾値より小さい場合に検出警報をトリガするステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の放射線測定値及び前記第2の放射線測定値は、自然発生的な放射能物質の検出を最小限にするように選択された放射線エネルギー領域において、少なくとも部分的に取得される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
従属変数を計算する前記ステップは、前記第1の放射線測定値と前記第2の放射線測定値とを含むレシオであって、前記従属変数をもたらす前記レシオを計算するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記のレシオの計算は、百分率の差を計算するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記モニタリング・ステーションが占有されているかを判定するステップを更に含み、検出警報をトリガする前記ステップは、(a)前記従属変数が前記第1の閾値に達し、且つ、(b)前記モニタリング・ステーションが占有されている場合に検出警報をトリガするステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
医療上の同位体の存在の見込みを求めるステップを更に含み、検出警報をトリガする前記ステップは、(a)前記従属変数が前記第1の閾値に達し、且つ、(b)医療上の同位体の存在の前記見込みが第2の閾値より小さい場合に検出警報をトリガするステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の放射線測定値及び前記第2の放射線測定値は。自然発生的な放射能物質の検出を最小限にするように選択された放射線エネルギー領域において、少なくとも部分的に取得される、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
従属変数を計算する前記ステップは、(a)前記第1の放射線測定値及び前記第2の放射線測定値の関数と、(b)前記遷移域における前記放射性ソースの存在を示す基準関数との間の相関係数を計算するステップを更に含み、前記第1の閾値は、最小相関係数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記モニタリング・ステーションが占有されているかを判定するステップを更に含み、検出警報をトリガする前記ステップは、(a)前記従属変数が前記第1の閾値に達し、且つ、(b)前記モニタリング・ステーションが占有されている場合に検出警報をトリガするステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
医療上の同位体の存在の見込みを求めるステップを更に含み、検出警報をトリガする前記ステップは、(a)前記従属変数が前記第1の閾値に達し、且つ、(b)医療上の同位体の存在の前記見込みが第2の閾値より小さい場合に検出警報をトリガするステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の放射線測定値及び前記第2の放射線測定値は、自然発生的な放射能物質の検出を最小限にするように選択された放射線エネルギー領域において、少なくとも部分的に取得される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
放射線モニタリング・ステーションにおいて放射能の放射を検出するための方法であって、
前記の玄関モニタリング・ステーションにおける入口放射線レベル及び出口放射線レベルを測定するステップと、
前記入口放射線レベルと前記出口放射線レベルとを合計して、総計放射線レベルを得るステップと、
前記入口放射線レベルと前記出口放射線レベルとの間の百分率の差を計算するステップと、
前記総計放射線レベルが第1の警報閾レベルを超えているかを判定するステップと、
(a)前記総計放射線レベルが前記第1の警報閾レベルを超えており、且つ、(b)前記百分率の差が第2の警報閾値より小さい場合に検出警報をトリガするステップと
を含む、方法。
【請求項15】
前記入口放射線レベルと前記出口放射線レベルとの間の統計的な差の指標を計算するステップと、
前記統計的な差の指標が統計的な差の閾値を超えている場合に、(a)前記入口放射線レベルと前記出口放射線レベルとの間の時間平均化された差を計算し、(b)前記時間平均化された差に部分的に基づく第3の警報閾値を計算し、(c)前面の率の差を計算し、(d)前記前面の率の差が前記第3の警報閾値を越えている場合に検出警報をトリガする、ステップと
を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記の玄関が占有されているかを判定するステップを更に含み、検出警報をトリガする前記ステップは、(a)前記総計放射線レベルが前記第1の警報閾レベルを越えており、且つ、(b)前記百分率の差が第2の警報閾値より小さく、且つ、(c)前記の玄関が占有されている場合に検出警報をトリガするステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
放射線モニタリング・ステーションにおける放射能の放射を検出するための装置であって、
第1の視野にわたり、移動する放射性ソースからの第1の放射線測定値を取得するように構成された第1の放射線検出装置と、
第2の視野にわたり、前記移動する放射性ソースからの第2の放射線測定値を取得するように構成された第2の放射線検出装置であって、前記第2の視野の少なくとも一部は前記第1の視野と実質的に異なり、前記第1の視野の少なくとも一部と前記第2の視野との間に遷移域が確立される、前記第2の放射線検出装置と、
前記放射性ソースが前記遷移域にあるときに第1の閾値に達する従属変数を計算し、前記従属変数が前記閾値に達した場合に警報指示を発するように構成された算出システムと
を備えた、放射線モニタリング・ステーションにおける放射能の放射を検出するための装置。
【請求項18】
前記算出システムは、前記第1の放射線測定値及び前記第2の放射線測定値を含むレシオであって、前記従属変数をもたらす前記レシオを計算するように構成された、請求項17に記載の放射線モニタリング・ステーションにおける放射能の放射を検出するための装置。
【請求項19】
前記閾値は制限値である、請求項18に記載の放射線モニタリング・ステーションにおける放射能の放射を検出するための装置。
【請求項20】
前記算出システムは、(a)前記第1の放射線測定値及び前記第2の放射線測定値の関数と、(b)前記遷移域における前記放射性ソースの存在を示す基準関数との間の相関係数を導く相関関数を計算するように構成され、前記第1の閾値は、最小相関係数を含む、請求項17に記載の放射線モニタリング・ステーションにおける放射能の放射を検出するための装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−515060(P2010−515060A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544164(P2009−544164)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/087384
【国際公開番号】WO2008/105975
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(509000415)ヌクセーフ・インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】