説明

放射線弁別測定装置

【課題】各光ファイバに取り付けられたシンチレータで波長別に発光する放射線の種類を色別に測定することができ、取付けや配置の自由度を向上させたもの。
【解決手段】放射線弁別測定装置は、伝送用の複数本の光ファイバ15と、この各光ファイバ15に取り付けられた波長別に発光するシンチレータ7a,8aと、このシンチレータ7a,8aの周りに目的とする放射線以外に対して設置された遮蔽材16,17とから構成され、前記各光ファイバ15が直列あるいは並列に結合して構成されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力産業、放射線医療および放射能取扱施設などの放射性物質を取り扱う産業および研究機関において適用されるものであり、α線、β線、X線、γ線あるいは中性子線のいずれかが混在している放射線から、各放射線を弁別かつ測定し、非破壊試験を行える放射線弁別測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
放射線が物質を透過する際には、その構成物質の種類もしくは形状によって吸収および散乱が異なってくる。これを映像として写真やビデオ、デジタルファイル等として記録すれば、物質の破損状態、変化および充填状況等を把握することができる。これは一般にレントゲン写真で人体の内部状態を診察するのと同様の原理である。測定したい物体あるいは試料を破壊せずに内部の状態を測定するこの方法は、ラジオグラフィまたは非破壊放射線撮影法と呼ばれている。
【0003】
従来からこのようなラジオグラフィとして、放射線のなかでもX線あるいはγ線を用いたものが良く知られている。X線あるいはγ線は、物をよく透過し軽い物ほど透過しやすいので、物体の内部のようすを調べるのに利用されている。しかし、X線あるいはγ線では軽い物ほど透過しやすいために、原子番号が小さい元素である軽元素を良く透過してしまうことから、金属材料中に隠された水素含有物質等を検査するのは困難であった。また、X線あるいはγ線では、硼(ほう)素と炭素のように原子番号が隣接した元素のように、微量の差を識別することは困難であった。
【0004】
一方、X線あるいはγ線のかわりに中性子を用いたラジオグラフィが利用されている。このラジオグラフィでは、中性子の吸収が原子番号には依存せず、また重たい物質中をも透過するため、X線あるいはγ線では識別できなかった、金属中の軽元素の識別を行うことができる。また、中性子に対する吸収もしくは散乱断面積の値は、各元素によって固有であり、例えば、硼素に対しては中性子の吸収量が多いが、炭素に対しては多くない。このため、中性子を利用して軽元素までを識別する非破壊検査が行われるようになった。
【0005】
現在では、このようなX線あるいはγ線を用いたラジオグラフィおよび中性子を用いたラジオグラフィの長所を生かして、両者を併用したラジオグラフィが用いられており、具体的には、加工品等の非破壊検査を行なっている。このX線、γ線あるいは中性子を併用したラジオグラフィによれば、同一試料についてそれぞれ異なったX線、γ線あるいは中性子による検査という2回の操作が必要となるため、測定時間および操作の面で煩雑であった。
【0006】
このような欠点を解消する方法として、例えば、特開昭58−113842号公報(例えば、特許文献1参照)等に掲載されているように、カリホルニウムCf.252を中性子源とγ線源として用い、γ線画像検出器と中性子画像検出器とを並設させ、これらの各検出器にフィルムをセットして同時に画像を記録するという同時ラジオグラフィ手法が提案されている。しかし、このような方法においても、記録される画像であるフィルムが2枚となってしまうため、正確な位置合わせおよび画像処理上の煩雑さを有していた。
【0007】
さらに、この同時ラジオグラフィ手法を改良して、例えば、特開昭61−184444号公報(例えば、特許文献2参照)等に掲載されているように、色別でγ線画像と中性子画像とを測定する方法が提案されている。
【特許文献1】特開昭58−113842号公報
【特許文献2】特開昭61−184444号公報
【特許文献2】特開平4−290985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記のような方法によれば、色別でγ線画像と中性子画像とを測定できる点において優れていたが、以下に示すような問題を有していた。
【0009】
上述した特開昭61−184444号公報における同時ラジオグラフィでは、1枚のフィルム上に赤色発光のγ線画像用のシンチレータと中性子用の青色あるいは緑色発光のシンチレータとを組合わせ、色別でγ線画像と中性子画像とを測定している。
【0010】
実際には、γ線画像用のシンチレータとして、赤色光を発する蛍光材を重金属板上に塗布または蒸着したものを用いる。一方、中性子用のシンチレータとして、リチウム(Li−6)あるいはボロン(B−10)を含む物質に、青色または緑色で発光する蛍光材を混合または塗布あるいは蒸着したものを用い、中性子はリチウムまたはボロンと(n,α)反応を起こし、これにより生じたアルファ(α)線によって青色発光蛍光材が青色に発色される。なお、この青色発光蛍光材として、蛍光体に銀で活性化した硫化亜鉛ZnS:Agを用いている。
【0011】
このように、1枚のフィルム上に中性子ラジオグラフィを青色で記録し、X線あるいはγ線ラジオグラフィを赤色で記録して色弁別する方法では、X線およびγ線によるかぶりを補正することが可能であった。またこの方法では、上記した銀で活性化した硫化亜鉛ZnS:Agと組み合わせた蛍光材を用いることにより、X線あるいはγ線に対してかぶる量が少ないという長所を有していたが、感度を十分に満足するものではなかった。
【0012】
また、使用するシンチレータは、γ線と中性子との互いの波長に対して透過する材料から構成されていないため、γ線画像用のシンチレータと中性子用のシンチレータとの間にフィルムを挟む構成とし、シンチレータを配置しなければならなかった。このため3つのシンチレータを配置して、3色以上の組合わせの発光を行わせるのは実質上難しかった。
【0013】
さらに、フィルムをはさんで配置する場合には、−般のカラーフィルムではハレーション防止層があり、裏面からの光は正確に記録されない。このため特殊なカラーフィルムを使用しなければならず、コスト的に高くなるという問題を有していた。
【0014】
また、一方において、近年、中性子における感度を向上させる方法が開発されており、例えば、特開平4−290985号公報等に掲載されているように、従来のリチウム(Li−6)またはボロン(B−10)を用いたタイプに比べて、中性子に対する感度を高くした中性子用のイメージングプレートが開発されている。これは、電子線および放射線などの照射後、熱および光などの刺激で発光する現象である、蛍光体の輝尽発光を利用して開発されたものであり、このイメージングプレートは、輝尽蛍光体を塗布したものから構成される。具体的にこのイメージングプレートは、中性子との反応にガドリニウム(Gd)を用い、付活剤にプラセオジム(Pr)、テルビウム(Tb)あるいはユウロピウム(Eu)を含有した焼結体からなるものである。
【0015】
上記したイメージングプレートは、さらに改良が進み、Χ線用のイメージングプレートおよび中性子と反応するリチウム(Li−6)と、ボロン(B−10)またはガドリニウム(Gd)とからなる中性子用のイメージングプレートを組み合わせたものも開発されている。
【0016】
このような中性子用のイメージングプレートは、輝尽性蛍光体を用い電離放射線による信号をカラーセンターとして捕獲記憶し、読取り器のレーザー光で蛍光を発光させて画像化するものであるため、中性子に対する感度が高く、明るいところで作業できる点で優れているが、中性子照射後に読取り作業を別に行わなくてはならない点でリアルタイム性において問題がある。またこの技術は、元々X線用に開発されたものであるため、X線およびγ線に対する感度が高く、中性子画像にX線およびγ線の画像がかぶり区別できないという問題を有していた。この場合においても、中性子を遮断して、X線やγ線の画像を別に撮って画像処理しなければならないが、このような方法は、未だに開発されていないのが現状であった。
【0017】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたものであり、工業用測定対象物の内部を調査するために非破壊試験を行う際、測定対象物に放射して得られる放射線に含まれるα線、β線、γ線、中性子線およびX線などのいずれかから構成される放射線から、各個別の放射線として弁別するとともに、弁別した各放射線をタイムラグなしに、直接撮像して画像化できる放射線弁別測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る放射線弁別測定装置は、上述した課題を解決するために、伝送用の複数の光ファイバと、この各光ファイバに取り付けられた波長別に発光するシンチレータと、このシンチレータの周りに目的とする放射線以外に対して設置された遮蔽材とから構成され、前記各光ファイバが直列あるいは並列に結合して構成されることを特徴とする。
【0019】
本発明においては、シンチレータを一つにまとめて一個所から発光させて測定するという構成ではなく、波長別に発光するシンチレータを個別に光ファイバに取り付けた構成としている。個々のシンチレータの周りには目的とする放射線以外に対して遮蔽材を設け、更に伝送用の光ファイバを直列または並列に結合させて、放射線の種類を色別で測定する構成としてある。このため、本発明によれば、光ファイバを束ねる構成としたり、別々に配置する構成とすることができ、配置する応用範囲が広くなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る放射線弁別測定装置は、波長別に発光するシンチレータを各光ファイバに取り付け、目的とする放射線以外を遮蔽材で遮蔽したので、光ファイバで放射線の種類を色別に伝送させて測定することができ、各シンチレータの取付けや配置の自由度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本実施形態は原子力産業で使用される放射性物質の測定例についてのものであり、例えば放射線の種類Aを中性子、BをX線、およびCをγ線とし、その弁別測定を行うための中性子ラジオグラフィについて説明する。
【0022】
[第1実施形態(図1,図2)]
図1は、本実施形態による中性子ラジオグラフィの基本構成を示し、図2はその中の撮像手段の要部を示している。
【0023】
図1に示すように、本実施形態では放射線源を中性子源1とし、この中性子源1を減速材としてのモデレータ2内に収納している。この中性子源1から照射される中性子ビームにΧ線またはγ線が含まれている場合がある。モデレータ2内には、中性子ビームの照射部位にコリメータ3を設置し、このコリメータ3によって収束された中性子ビームを、工業用測定対象物4に照射するようにし、その測定対象物4の後方に、撮像手段としての撮像カセッテ5を配置している。これにより、測定対象物4を透過した放射線(中性子、X線またはγ線)が、撮像カセッテ5で放射線の信号として検出され映像化されるようにしてある。測定対象物4は工業用を想定しており、人体を含むものではない。
【0024】
そして本実施形態では、撮像カセッテ5を、図2に拡大して示すように、記録媒体として着脱可能なカラーフィルム6を用いた構成としてあり、このカラーフィルム6に、第1シンチレータ7、第2シンチレータ8および第3シンチレータ9が順次に配置されるようにしてある。これらの各シンチレータ7,8,9は、薄い構成とすることにより各発光が相互に透過できるようになっている。
【0025】
第1シンチレータ7は、中性子放射線に対して感度が高い赤色発光体、例えばユウロピウム(Eu)で活性化した酸硫化ガドリニウム(GdS)によって構成し、厚さは、例えば40μmとしてある。
【0026】
第2シンチレータ8は、X線に対して感度が高い緑色発光体、例えばテルビウム(Tb)で活性化した酸硫化ガドリニウム(GdS)によって構成し、厚さは数十μmとしてある。
【0027】
第3シンチレータ9は、γ線に対して感度が高い青色発光体、例えば銀(Ag)で活性化した硫化亜鉛(ZnS)によって構成し、厚さは数十μmとしてある。
【0028】
なお、これら第1、第2、第3シンチレータ7,8,9としては、前述した他の各種発光体を適用することが可能であり、その場合も本実施形態と同様の機能を得ることができる。また、発行色は、赤色、青色、緑色の組合わせを前述のように、種々変更することができる。
【0029】
本実施形態では、第2、第3シンチレータ8,9で発生した緑色および青色光が、第1、第2シンチレータ7,8を透過してフィルム状に照射される際に、各シンチレータの情報が減算された状態で感光される。
【0030】
なお、図2では、カラーフィルム6を各シンチレータ7,8,9に対して、矢印で示した放射線の入射側である左側にセットしたものとして示したが、カラーフィルム6は各シンチレータ7,8,9に対して、放射線透過後の方向、つまり図の右側にセットしても良い。
【0031】
本実施形態においては、カラーフィルム6をは現像して観察し、あるいはスキャナー等でデジタル的に処理して波長別に放射線の画像として見ることが河能になる。したがって、異なる放射線により発光する第1、第2、第3シンチレータ7,8,9の組合せ構成によって、従来できなかった1枚のカラー写真に短時間で記録するで、瞬時にカラー画像として放射線別の画像観察を行え、これにより測定対象物4への放射線の照射量を減少して検査できるようになり、被爆量の低減や測定時間の短縮等が図れる。
【0032】
[第2実施形態(図3〜図5)]
本実施形態は、第1実施形態で示したカラーフィルムに代えてカメラおよび光学レンズを用い、画像を直接観測する構成としたものである。図3は装置の全体構成を示し、図4は、要部を拡大して示している。
【0033】
これらの図3および図4に示すように、本実施形態では、3板式CCDカメラ14を用い、異なる放射線により発光する第1、第2、第3シンチレータ7,8,9の情報を画像信号として得るとともに、この画像信号を3板式CCDカメラ14に接続された遠隔操作装置21でモニタできるようになっている。この遠隔操作手段21は、3種の着色光の情報から減算処理等を行う演算手段22、演算結果を表示できるモニタテレビ23および操作用の入力手段24等によって構成されている。
【0034】
本実施形態においては、遠隔操作で測定することができるので、被爆なく測定できるとともに、時間の短縮等が図れる。また、観測された信号がRGB信号として取り込まれるため、瞬時に画像処理してΧ線やγ線等のかぶりや照射エリアの照射むらを補正することができる。さらに、モニタテレビ23上で各色毎にそれぞれ分けて観察できるので、波長の異なる画像の位置合せが不要となる利点が得られる。
【0035】
図5は本実施形態の変形例を示したものである。
【0036】
この例では、単色の高感度CCDカメラ12を3台使用し、シンチレータ7,8,9で発光した異なる波長の光を、特定の波長のみを厳密に分ける第1、第2のダイクロイックミラー10,11で分光して観察できるようにしてある。
【0037】
すなわち、第1のダイクロイックミラー10では第1シンチレータ7の光が反射されるとともに、第2、第3シンチレータ8,9の光が透過する。また、第2のダイクロイックミラー11では、第2シンチレータ8の光が反射するとともに、第3シンチレータ9の光が透過する。これら異なる光による映像を第3のCCDカメラ12で別々に得ることができるようになっている。
【0038】
このような構成によれば、各CCDカメラ12で得られた映像を、それぞれ独立して観測することができ、また瞬時に画像処理してΧ線やγ線等のかぶりや照射エリアの照射むらを補正することも可能である。しかも、特定の波長のみを厳密に分けるダイクロイックミラーを使用する構成によって、信号に対するノイズの比率(SIN)を良好とすることができる。
【0039】
[第3実施形態(図6)]
上述した第2実施形態では、CCDカメラおよび光学レンズを用いた構成であったが、本実施形態は、光学レンズに代えて光ファイバを用いた構成としたものである。図6は、その要部構成を示している。
【0040】
この図6に示すように、本実施形態では、多数本の光ファイバ、例えば光入口側が光出口側よりも断面積が大きいテーパーファイバ13がバンドルされており、このテーパーファイバ13のバンドルによって、第3シンチレータ9と3板式CCDカメラ14の受光面とが、直接接続されている。
【0041】
このような構成によっても前記第2実施形態とほぼ同様の効果が奏される。
【0042】
[第4実施形態(図7,図8)]
本実施形態は、波長別に発光する複数のシンチレータを1本または複数本の光ファイバに取付け、その光ファイバ上の各シンチレータ部位から直接的に放射線を入力し、波長別の光情報を分光器によって分光することで放射線別の情報を得るようにしたものである。
【0043】
図7は、第1の構成例を示している。
【0044】
この第1の構成例では図7に示すように、1本の光ファイバ15に複数、感応する放射線および発光波長が互いに異なる第1,第2の二つのシンチレータ7a,8aが隣接位置に組込んである。
【0045】
第1シンチレータ7aは例えばγ線に感応するものであり、外周側に熱中性子をカットする所定厚さのCd遮蔽体16が被覆してある。また、第2シンチレータ8aは、逆に中性子に感応するものであり、外周側にγ線をカットする所定厚さのPb遮蔽体17が被覆してある。そして、光ファイバ15の両端は、図示しない分光器に接続されている。
【0046】
そして、第1のシンチレータ7aで得られた光は、Cd遮蔽体16によって熱中性子がカットされ、主にγ線による光信号となり、光ファイバ15の一端側(例えば図の左端側)を介して図示しない分光器に送られる。また、第2のシンチレータ8aで得られた光は、Pb遮蔽体17でγ線がカットされ、主に熱中性子による光信号となり、光ファイバ15の他端側(例えば右端側)を介して図示しない分光器にされる。
【0047】
このような構成によると、光ファイバ15を例えばループ状に構成しておき、シンチレータ7a,8a部分を放射線領域に配置しておく等の手段によって、その放射線領域から離間した位置で遠隔的に放射線観察を行うことができる。この場合、図示しないが、第3のシンチレータを前記第1第2シンチレータ7a,8aとともに組込んでおけば、さらに別の放射線情報を得ることができる。このとき、1本の光ファイバ15内で複数の光情報が伝送されることになるが、前記各実施形態と同様の補正を行うことによって、弁別することができる。なお、シンチレータは、1本の光ファイバの一個所に限らず、複数か所に離間して配置することも可能であり、その場合には複数の領域についての放射線観察を行うことができる。
【0048】
図8は、本実施形態の他の構成例を示している。
【0049】
この構成例では、図8に示すように、複数本、例えば3本の光ファイバ15の各先端に、それぞれ感応する放射線および発光波長が互いに異なる第1,第2,第3のシンチレータ7b,8b,9bが組込んである。各光ファイバ15の他端は、図示しない光検出器に接続してある。
【0050】
第1,第2シンチレータ7b,8bは、図7に示したものとほぼ同様の構成で、それぞれCd遮蔽体16およびPb遮蔽体17で被覆されているが、第3シンチレータ9bは、内部に水素を含む樹脂を充填したCdカバー18で被覆してある。これにより、Cdカバー18で熱中性子をカットするとともに、水素を含む樹脂で速中性子を熱中性子化するようになっている。
【0051】
このような構成によると、3種の光を各光ファイバの一端側で取得し、それぞれ他端側の光検出器で検出することで、複数の放射線情報を得ることができる。この場合、第1,第2,第3シンチレータ7b,8b,9bで得られる情報にかぶりがある場合、前記第1実施形態と同様の補正を行うことによって、正確な情報とすることができる。
【0052】
この構成例の場合には、シンチレータ7b,8b,9bをそれぞれ設けた各光ファイバ15の先端を任意の放射線領域に配置することで、遠隔観察を行うことができ、その際に複数光の補正を行うことによって正確な情報を得ることができるという効果が奏される。
【0053】
なお、図8では3本の光ファイバを用いた例を示したが、場合によっては2本でもよく、また4本以上として実施することもできる。
【0054】
[他の実施形態]
なお、以上の各実施形態では、シンチレータと受光素子との間にイメージインテンシファイヤを入れて感度を上げて使用することが可能である。
【0055】
また、各実施形態の構成を相互に組合せる構成等も可能である。例えば、図8に示した樹脂層を、図2,図4,図5,図6等に示した第2シンチレータ8と第3シンチレータ9との間に挿入する等の構成である。このような構成としても前記同様の機能が得られる。
【0056】
さらに、以上の各実施形態の他、本発明は前述した各シンチレータ材料等を適宜に利用して対象あるいは環境等に応じて種々実施することができるものである。
【0057】
本発明による放射線弁別測定装置によれば、異なる放射線により発光する第1、第2および第3のシンチレータとして、同じ主成分を持つシンチレータを組合わせることにより、1枚のカラー写真に短時間で記録したり、またCCDカメラで観測して瞬時にカラー画像で放射線別に画像化して見ることを可能にした。これにより測定対象物への放射線の照射量を減らした検査ができ、被爆量の低減および測定時間の短縮が可能となる。また、一回の測定でX線およびγ線による画像と中性子による画像とを同時に、または別々にも観測できるため、従来のX線撮影では適用できなかった、プラスチック製の爆弾等についても導火線とプラスチックの本体とを中性子ラジオグラフィで観測できるため、検査の質および精度向上の効果を得られる。さらに、放射線測定器として考えた場合、従来の放射線弁別方法に加えて新たに波長による弁別方法が加わるため弁別の組合せ方が多くなり、多くの検出器を一つにまとめて測定できるシステムを構築することにより、信頼性の向上とシステム簡素化の効果を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】放射線弁別装置の第1実施形態を示すもので、中性子ラジオグラフィの基本構成を示すシステム構成図。
【図2】図1の撮像カセッテ内の構成の一例を示す拡大図。
【図3】放射線弁別装置の第2実施形態を示すもので、中性子ラジオグラフィの基本構成を示すシステム構成図。
【図4】図3の撮像カセッテ内の構成の一例を示す拡大図。
【図5】図4の変形例を示す図。
【図6】本発明の第3実施形態を示す図。
【図7】本発明の第4実施形態による第1構成例を示す図。
【図8】本発明の第4実施形態による第2構成例を示す図。
【符号の説明】
【0059】
1 中性子源
2 モデレータ
3 コリメータ
4 測定対象物
5 撮像カセッテ
6 カラーフィルム
7,7a,7b 第1シンチレータ
8,8a,8b 第1シンチレータ
9,9a,9b 第1シンチレータ
10,11 ダイクロイックミラー
12 高感度CCDカメラ
13 テーパーファイバ
14 3板式CCDカメラ
15 光ファイバ
16 Cd遮蔽体
17 Pb遮蔽体
18 Cdカバー
21 遠隔操作装置
22 演算手段
23 モニタテレビ
24 入力手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送用の複数本の光ファイバと、
この各光ファイバに取り付けられた波長別に発光するシンチレータと、
このシンチレータの周りに目的とする放射線以外に対して設置された遮蔽材とから構成され、
前記各光ファイバが直列あるいは並列に結合して構成されることを特徴とする放射線弁別測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−327967(P2007−327967A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−197383(P2007−197383)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【分割の表示】特願平10−98410の分割
【原出願日】平成10年3月25日(1998.3.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】