放射線撮影装置
【課題】複数の画像を連続して取得する放射線撮影装置において、撮影の手間が軽減されて操作性に優れた放射線撮影装置を提供する。
【解決手段】撮影時点の異なる複数の画像P0を並べて表示する配列表示部25を備えている。この配列表示部25の表示は、画像P0が生成される度に行われ、今回生成された画像P0と以前生成された画像P0とを並べて表示するようになっている。この様な構成とすることにより、術者は素早く次の操作に移行したり、撮影の不具合に迅速に気がついて、早い段階で撮影をやり直したりすることができるので、撮影の手間が軽減されて操作性の優れたX線撮影装置を提供することができる。
【解決手段】撮影時点の異なる複数の画像P0を並べて表示する配列表示部25を備えている。この配列表示部25の表示は、画像P0が生成される度に行われ、今回生成された画像P0と以前生成された画像P0とを並べて表示するようになっている。この様な構成とすることにより、術者は素早く次の操作に移行したり、撮影の不具合に迅速に気がついて、早い段階で撮影をやり直したりすることができるので、撮影の手間が軽減されて操作性の優れたX線撮影装置を提供することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を照射して被検体のイメージングを行う放射線撮影装置に係り、特に複数の放射線照射を連続的に行うことにより複数の画像を連続して取得する放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関には放射線を照射して被検体のイメージングを行う放射線撮影装置が配備されている。この様な放射線撮影装置は、被検体の消化器の撮影などに用いられる。このような撮影には造影剤(バリウム)が用いられる。
【0003】
造影剤を用いた被検体の消化器系の撮影においては、造影剤が通過中に食道の撮影が複数回に亘って行われる。そして、食道は複数回に亘って撮影される。このとき撮影された画像は、その都度モニタに表示される。食道の撮影が完了すると、撮影された複数の画像が図14に示すようにモニタに分割されて表示される。図14の例によれば、食道の撮影は4回行われ、モニタに表示される画像はそれぞれの撮影において得られたものとなっている。このように撮影された画像の全てを一度にモニタに表示することにより、撮影時点の異なる画像の比較を容易に行うことができる(例えば、特許文献1参照)。術者は、食道の撮影の後に胃の撮影を行う。
【0004】
食道の各撮影は、同様な条件で行われたものである。しかし、各撮影で得られた画像同士は、被検体の食道が同じように写り込んでいるとは限らない。すなわち、明暗やコントラストが画像間で同じとなってない場合がある。このような画像同士の写り込みの違いは、例えば放射線撮影装置が自動で行う画像調整や、撮影時における造影剤の写り込み具合が異なることで発生する。
【0005】
画像間の明暗やコントラストの違いは、画像を比較する上で妨げとなる。したがって、従来の放射線撮影装置によれば、モニタに分割表示された各画像の各々を手動で調整できるようにしている。すなわち、放射線撮影装置は、術者の指示を入力させる入力装置を備え、術者の指定に基づいてモニタ上の各画像の明暗やコントラストを個別に調整できるようになっている。したがって術者は、食道の撮影の完了後、モニタに分割表示された各画像を比較して他と写り方が異なる画像に明暗やコントラストの調節を施した後、胃の撮影の準備に取りかかることになる。
【0006】
このように従来の構成によれば、一連の撮影が完了しないと複数の画像の比較を行うことができないようになっている。撮影完了前のモニタには、最近撮影された一枚の画像のみが表示されており、それ以前の画像は表示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−232976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の放射線撮影装置においては、次のような問題点がある。
すなわち、従来の放射線撮影装置は、一連の撮影において取得された画像の比較を一連の撮影が完了するまでできず、これが迅速な撮影操作の妨げとなっている。
【0009】
被検体の消化器の撮影において、4回の食道の撮影を行った後、複数の画像の調整をするようにすると、画像調整に長い時間を要する。すると、食道の撮影を完了した後、胃の撮影を行おうとしても、画像調整に手間取って、次の撮影を直ちに始められない。つまり、画像調整に手間取っている間に造影剤は胃に到達してしまい、術者は撮影の機会を逃してしまい場合によっては検査のやり直しをする場合もある。このように従来の放射線撮影装置は撮影時間が長期化してしまうという問題点がある。
【0010】
また、一連の撮影において取得された画像の比較が撮影完了後でないとできないことにより、別の撮影様式においても撮影時間の長期化を招来している。すなわち、従来の放射線撮影装置には複数の短冊画像をつなぎ合わせて1枚の長尺画像を取得する長尺撮影を行うものがある。このような放射線撮影装置は、撮影位置をずらしながら複数の短冊画像を撮影し、撮影が完了した後に、短冊画像がつなぎ合わされた1枚の長尺画像が生成される。
【0011】
放射線撮影装置において一連の短冊画像の撮影が開始されたものとする。このときのモニタには、最近撮影された一枚の短冊画像のみが表示されており、それ以前の短冊画像は表示されていない。従って、術者は、撮影中に短冊画像の撮影が正しく行われているかを正確に知ることができない。
【0012】
一連の短冊画像の撮影中において、術者は、単一の短冊画像についてモニタを通じて視認することができる。しかし、単一の短冊画像としては問題がなくても、短冊画像をつなぎ合わせてみると視認性の優れた長尺画像が得られない場合もある。このような短冊画像をつなぎ合わせてみて初めて認識できる不具合としては、被検体の体動による画像のズレなどがある。短冊画像の間で生じる被検体像のズレは術者が短冊画像を1枚ずつ見ていったとしても発見されずらい。つまり従来構成によると術者は、全ての短冊画像をつなぎ合わせて長尺画像を取得することにより長尺画像の視認性の悪さに初めて気がつくことになる。すると、短冊画像の撮影を始めからやり直しをしなければならず、撮影時間が長期化する。
【0013】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、複数の放射線照射を連続的に行うことにより複数の画像を連続して取得する放射線撮影装置において、撮影の手間が軽減されて操作性に優れた放射線撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上述の課題を解決するために次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る放射線撮影装置は、放射線を照射する放射線源と、放射線を検出する検出手段と、放射線源が放射線を連射することにより検出手段が次々と出力する検出信号を基に撮影時点の異なる複数の画像を生成する画像生成手段と、画像が生成される度に、今回生成された画像と以前に生成された画像とを並べて表示する配列表示手段と、(A)配列表示手段に表示された画像の調整に関する術者の指示を入力させる入力手段と、(B)入力手段の入力を基に、配列表示手段に表示された画像の1つについて画像の調整処理を行い、調整処理後の画像を配列表示手段に送出する画像調整手段とを備えることを特徴とするものである。
【0015】
[作用・効果]上述の構成は、撮影時点の異なる複数の画像を並べて表示する配列表示手段を備えている。この配列表示手段の表示は、画像が生成される度に行われ、今回生成された画像と以前生成された画像とを並べて表示するようになっている。この様な構成とすることにより、撮影の手間が軽減されて操作性の優れた放射線撮影装置を提供することができる。
【0016】
すなわち、術者は、配列表示手段に並べて表示された画像を比較することで、画像撮影の合間に画像の調整処理を個別に行うことができる。従来の構成によれば、画像の調整処理は、一連の撮影が完了した時点で行われている。したがって、従来構成によれば、術者は一連の撮影が完了してから複数の画像に対して調整処理を一度に行わなければならず、次の操作に迅速に取りかかれない。しかし、本発明の構成によれば、一連の撮影が完了した時点で、画像調整処理はほとんど終了している。調整処理は撮影の合間に可能だからである。すなわち、術者は最後に撮影された画像の調整処理を行うだけで次の操作に取りかかることができるので、本発明の放射線撮影装置は撮影の手間が軽減されて操作性に優れている。
【0017】
また、上述の放射線撮影装置において、単一の画像を表示し、画像が撮影される度に画像を更新する表示手段が配列表示手段とは別に設けられていればより望ましい。
【0018】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の放射線撮影装置の具体的構成を示すものとなっている。単一の画像を表示し、画像が撮影される度に画像を更新する表示手段を設けるようにすれば画像の各々詳細を確認しながら撮影できる放射線撮影装置が提供できる。
【0019】
また、本発明に係る放射線撮影装置は、放射線を照射する放射線源と、放射線を検出する検出手段と、放射線源が放射線を連射することにより検出手段が次々と出力する検出信号を基に撮影時点の異なる複数の画像を生成する画像生成手段と、画像が生成される度に、今回生成された画像と以前に生成された画像とを並べて表示する配列表示手段と、(C)放射線源を被検体に対して移動させる放射線源移動手段と、(D)放射線源移動手段を制御する放射線源移動制御手段と、(E)放射線源が被検体に対して移動されながら撮影された放射線源の移動方向の直交方向に細長の画像の各々を移動方向につなぎ合わせることにより合成画像を生成し、配列表示手段に合成画像を表示させることにより画像生成手段が生成した複数の画像を配列表示手段に並べて表示させる画像合成手段とを備えることを特徴とするものである。
【0020】
[作用・効果]上述の構成は、撮影時点の異なる複数の画像を並べて表示する配列表示手段を備えている。この配列表示手段の表示は、画像が生成される度に行われ、今回生成された画像と以前生成された画像とを並べて表示するようになっている。この様な構成とすることにより、撮影の手間が軽減されて操作性の優れた放射線撮影装置を提供することができる。
【0021】
すなわち、術者は、複数の画像を撮影してこれらをつなぎ合わせる長尺画像の撮影時において、並べて表示された画像を比較することで、画像撮影の合間に撮影が順調かどうかを知ることができる。従来構成によれば、画像のつなぎ合わせ処理は、一連の撮影が完了した時点で行われている。従来構成では、術者は画像の撮影の合間には先程撮影された画像を単独で確認することしかできない。したがって、画像の撮影中に被検体が移動してしまった場合でも、術者はこの移動に気がつかず、撮影完了後に配列表示手段に表示される長尺画像を見てはじめて画像の不整合に気がついて、撮影を始めからやり直すことになる。本発明によれば、一連の画像撮影の合間に画像がつなぎ合わせられた合成画像が配列表示手段に表示される。したがって、術者は、被検体の移動に素早く気がついて、撮影を直ちに中断することができる。このように、本発明の放射線撮影装置は撮影の手間が軽減されて操作性に優れている。
【0022】
また、上述の放射線撮影装置において、検出手段を被検体に対して移動させる検出器移動手段と、検出器移動手段を制御する検出器移動制御手段とを備え、放射線源と検出手段とは、互いの相対位置を保った状態で被検体に対して移動されればより望ましい。
【0023】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の放射線撮影装置の具体的構成を示すものとなっている。放射線源と検出手段とが互いの相対位置を保った状態で被検体に対して移動されながら画像の撮影を行うようにすれば、より広範囲の長尺撮影が可能となる。
【0024】
また、上述の放射線撮影装置において、画像合成手段は、最初に生成された画像から今回生成された画像までを生成された順番に並べてつなぎ合わせて合成画像を生成すればより望ましい。
【0025】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の放射線撮影装置の具体的構成を示すものとなっている。画像合成手段が最初に生成された画像から今回生成された画像までを生成された順番に並べてつなぎ合わせて合成画像を生成すれば、術者は術者の全体像を認識しながら撮影の進捗を確認することができる。
【0026】
また、上述の放射線撮影装置において、画像合成手段は、生成された画像が配列表示手段に表示できる画像の枚数を示す所定数を超えると、最初に生成された細長の画像を除外して合成画像を生成し、以降画像が生成される度に最近生成された方から所定数の画像を選択して、これらをつなぎ合わせて合成画像を生成すればより望ましい。
【0027】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の放射線撮影装置の具体的構成を示すものとなっている。画像合成手段が生成された画像が配列表示手段に表示できる画像の枚数を示す所定数を超えると最近生成された方から所定数の画像を選択して、これらをつなぎ合わせて合成画像を生成するようにすれば、最近撮影された画像が配列表示手段に収まりきれずに表示されないという事態を回避することができる。
【0028】
また、上述の放射線撮影装置において、放射線源に対し照射条件の指示を与える放射線源制御手段を備え、放射線源は複数の画像を生成する際に、同じ照射条件で放射線を連射すればより望ましい。
【0029】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の放射線撮影装置の具体的構成を示すものとなっている。本発明は特に複数の撮影を同じ照射条件で行う場合に適している。すなわち、同じ撮影を行ったにもかかわらず、画像上の被検体の写り込み具合が異なってしまう撮影様式において、本発明のように撮影の合間に画像の比較ができるように放射線撮影装置を構成すれば、放射線撮影装置は撮影の手間が軽減されて操作性に優れたものとなる。
【発明の効果】
【0030】
上述の構成は、撮影時点の異なる複数の画像を並べて表示する配列表示手段を備えている。この配列表示手段の表示は、画像が生成される度に行われ、今回生成された画像と以前生成された画像とを並べて表示するようになっている。この様な構成とすることにより、撮影の手間が軽減されて操作性の優れた放射線撮影装置を提供することができる。すなわち、放射線撮影装置をこの様に構成すれば、術者は素早く次の操作に移行することができる。また、撮影の不具合に迅速に気がついて、早い段階で撮影をやり直すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1に係るX線撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】実施例1に係る表示部の表示を説明する模式図である。
【図3】実施例1に係る表示部の表示を説明する模式図である。
【図4】実施例1に係る表示部の表示を説明する模式図である。
【図5】実施例1に係るX線撮影装置の動作を説明するフローチャートである。
【図6】実施例2に係るX線撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図7】実施例2に係るコリメータを説明する斜視図である。
【図8】実施例2に係る長尺撮影の利点を説明する模式図である。
【図9】実施例2に係る短冊画像の撮影について説明する模式図である。
【図10】実施例2に係る表示部の表示を説明する模式図である。
【図11】実施例2に係るX線撮影装置の動作を説明するフローチャートである。
【図12】本発明の1変形例に係る表示部の表示を説明する模式図である。
【図13】本発明の1変形例に係る表示部の表示を説明する模式図である。
【図14】従来の構成に係る画像の表示について説明する模式図である。
【実施例1】
【0032】
以降、本発明の実施例を説明する。実施例におけるX線は、本発明の放射線に相当する。また、FPDは、フラット・パネル・ディテクタの略である。
【0033】
<X線撮影装置の全体構成>
まず、実施例1に係るX線撮影装置1の構成について説明する。X線撮影装置1は、図1に示すように仰臥位の被検体Mを載置する天板2と、天板2の上側に設けられたX線を照射するX線管3と、天板2の下側に設けられたX線を検出するFPD4とを備えている。FPD4は、被検体Mの体軸方向Aまたは体側方向Sのいずれかに沿った4つの辺を有する矩形となっている。また、X線管3は、放射状に広がる四角錐状のX線ビームをFPD4に向けて照射する。FPD4は、X線ビームを全面で受光することになる。FPD4のX線を検出する検出面4aには、X線検出素子が体軸方向Aおよび体側方向Sに2次元的に配列されている。支柱5は、X線管3およびFPD4を支持している。X線管3は、本発明の放射線源に相当し、FPD4は、本発明の検出手段に相当する。
【0034】
X線管制御部6は、所定の管電流、管電圧、パルス幅でX線管3を制御する目的で設けられている。FPD4は、X線管3から発せられ、被検体Mを透過したX線を検出して検出信号を生成する。この検出信号は、画像生成部11に送出され、そこで被検体Mの投影像が写り込んだ画像P0が生成される。生成された画像P0は、表示部25aおよび配列表示部25に送出され、表示部25aおよび配列表示部25は、それぞれ別の表示方法で画像P0を表示する。X線管制御部6は、本発明の放射線源制御手段に相当し、画像生成部11は、本発明の画像生成手段に相当する。表示部25aは、本発明の表示手段に相当し、配列表示部25は、本発明の配列表示手段に相当する。
【0035】
画像調整部12は、画像生成部11で生成された画像P0に対して画像の調整処理を行い、処理後の画像を配列表示部25に送出する。画像調整部12は、配列表示部25に表示される撮影時点の異なる複数の画像P0のうちの1つについて調整処理を行うようになっている。画像調整部12が行う調整処理は、例えばコントラスト調整および輝度調整である。画像調整部12は、本発明の画像調整手段に相当する。
【0036】
表示部25aと配列表示部25とにおける画像の表示方法について説明する。図2は、一回目の画像P0aの撮影がされた後の表示の様子を示している。画像P0aの撮影が行われ画像生成部11により画像P0aの生成がされると、表示部25aは今回生成された画像P0aを表示する。この表示はしばらくの間続く。
【0037】
図2における配列表示部25の表示について説明する。配列表示部25には、今回生成された画像P0aが配列表示部25の一部に小さく表示される。配列表示部25にはこれから撮影される画像P0bを表示する余白が設けられている。
【0038】
図3は、二回目の画像P0bの撮影がされた後の表示の様子を示している。画像P0bの撮影が行われ画像生成部11により画像P0bの生成がされると、表示部25aは今回生成された画像P0bを画像P0aに代えて表示する。この表示はしばらくの間続く。
【0039】
図3における配列表示部25の表示について説明する。配列表示部25には、今回生成された画像P0bを配列表示部25の一部に小さく表示される。配列表示部25にはこれから撮影される画像P0を表示する余白が設けられている。そして図3を見れば分かるように配列表示部25には、今回生成された画像P0bと以前生成された画像P0aとが並んで表示されている。この時点で術者は画像P0の撮影を完了することもできるし、画像P0の撮影を続行することもできる。図2,図3の説明において画像P0は2枚しか生成されないが、配列表示部25は、画像P0が生成される度に今回生成された画像と以前に生成された画像とを並べて表示する動作を続行する。
【0040】
実施例1における画像調整の方法について説明する。図4左側は、三枚の撮影時点の異なる画像P0が配列表示部25に表示されている様子を示している。図4左側の配列表示部25において網掛けで表示している画像P0は、他の画像P0と比べて被検体が暗めに写り込んでいるものである。このように配列表示部25に表示される複数の画像P0のあいだで被検体の写り込む様子が異なると、術者が各画像P0を比較しにくくなる。そこで、術者は、X線撮影装置の操作卓26に付属のマウスを通じて画像調整部12に配列表示部25に表示された画像の調整に関する指示(画像処理の指示)を画像調整部12に与えることができる。操作卓26は、本発明の入力手段に相当する。
【0041】
術者が図4左側における画像P0の1つについて輝度調整を行いたい場合、術者は、配列表示部25に表示されているマウスのポインタKを目的の画像P0に重なる位置まで移動させて、マウスの左ボタンを押下する。すると、図4左側の太枠で示すように、画像調整部12は、配列表示部25に表示された画像P0の一つを選択する。
【0042】
図4右側は、選択された画像P0を拡大して示している。画像の選択状態で術者がポインタKを上方向に移動させると(図4右側における実線の矢印参照),画像調整部12は、選択された画像P0の輝度を明るくするように画像処理を行う。
【0043】
ちなみに、画像の選択状態で術者がポインタKを下方向に移動させると、画像調整部12は、選択された画像P0の輝度を暗くするように画像処理を行う。同様に、画像の選択状態で術者がポインタKを右方向に移動させると、画像調整部12は、選択された画像P0のコントラストを強調するように画像処理を行い、術者がポインタKを左方向に移動させると、画像調整部12は、選択された画像P0のコントラストを失わせるように画像処理を行う(図4右側における破線の矢印参照)。このように画像調整部12は配列表示部25に表示された画像P0のうちの1つについて画像の調整処理を行うのである。なお、術者がマウスの左ボタンの押下を解除すると、画像調整部12は、画像P0の選択を解除する。
【0044】
操作卓26は、術者によるX線照射開始などの指示を入力させる目的で設けられている。また、主制御部27は、各制御部を統括的に制御する目的で設けられている。この主制御部27は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することにより各制御部6および各部11,11a,12を実現している。また、上述の各部は、それらを担当する演算装置に分割されて実行されてもよい。記憶部28は、画像処理に用いられるパラメータ等のX線撮影装置1の制御に関するパラメータの一切を記憶する。
【0045】
<X線撮影装置の動作>
次に、図5を参照してX線撮影装置の動作について説明する。この動作説明においては、4枚の画像P0を撮影するものとしている。この撮影枚数は、術者が撮影の前に操作卓26を通じてX線撮影装置に指定を行うことができる。配列表示部25は、指定された撮影枚数に応じて配列表示部25に表示される画像P0の大きさと配置を変更する。なお、以降の動作は、被検体の食道を撮影することを目的としている。
【0046】
X線撮影の動作としては、まず被検体Mを天板2に載置し(載置ステップS1)、4枚の画像P0が撮影される(第1画像撮影ステップS2,第2画像撮影ステップS3,第3画像撮影ステップS4,第4画像撮影ステップS5)。以降これらの各ステップについて順を追って説明する。
【0047】
<載置ステップS1,第1画像撮影ステップS2>
まず、造影剤(バリウム)が経口投与された被検体Mが天板2に載置される。術者が操作卓26を通じて撮影開始の指示を与えると、操作卓26はその指示をX線管制御部6に送出する。X線管制御部6は、記憶部28に記憶されている画像撮影用の撮影条件を読み出す。そして、X線管制御部6は、画像撮影用の撮影条件でX線管3にX線照射させる。このX線照射は、単発のパルス照射となっている。表示部25aおよび配列表示部25は、画像生成部11が今回生成した画像P0aを表示する(図2参照)。
【0048】
<第2画像撮影ステップS3>
術者が操作卓26を通じて2回目の画像P0bの撮影を指示すると、操作卓26はその指示をX線管制御部6に送出する。そして、X線管制御部6は、画像撮影用の撮影条件でX線管3にX線照射させる。このX線照射は、1回目の撮影と同じ照射条件で行われる単発のパルス照射となっている。表示部25aおよび配列表示部25は、画像生成部11が今回生成した画像P0bを前回生成した画像P0aに並べて表示する(図3参照)。
【0049】
<第3画像撮影ステップS4,第4画像撮影ステップS5>
以降、同様に3回目の画像、4回目の画像が生成される。この度に配列表示部25には、新しく撮影された画像P0が前回撮影された画像P0に並べて表示され、表示部25aは、専ら単一の画像P0を表示し、画像P0が撮影される度に画像P0の表示を新しいものに更新し続けることになる。
【0050】
第2画像撮影ステップS3,第3画像撮影ステップS4,第4画像撮影ステップS5の終了後、術者は配列表示部25を通じて今回撮影された画像P0と前回撮影された画像P0とを比較することができる(図4参照)。術者は、各撮影の終了後、操作卓26を通じて画像の調整処理をすることができる。
【0051】
従来の撮影においては、4枚の画像を撮影し終わった後でないと画像の調整処理をすることができない。したがって、術者は複数枚の画像P0の調整を画像P0の撮影後にまとめて行わなければならない。本発明においては、撮影時間の異なる複数の画像P0を取得する際に、各画像P0の撮影の合間に画像P0を比較するので、画像の調整処理は各画像P0合間に分散させて行われることになる。
【0052】
以上のように、上述の構成は、撮影時点の異なる複数の画像を並べて表示する配列表示部25を備えている。この配列表示部25の表示は、画像P0が生成される度に行われ、今回生成された画像P0と以前生成された画像P0とを並べて表示するようになっている。この様な構成とすることにより、撮影の手間が軽減されて操作性の優れたX線撮影装置を提供することができる。
【0053】
すなわち、術者は、配列表示部25に並べて表示された画像P0を比較することで、画像撮影の合間に操作卓26を通じて画像P0の調整処理を個別に行うことができる。従来の構成によれば、画像の調整処理は、一連の撮影が完了した時点で行われている。したがって、従来構成によれば術者は一連の撮影が完了してから複数の画像に対して調整処理を一度に行わなければならず、次の操作に迅速に取りかかれない。しかし、本発明の構成によれば、一連の撮影が完了した時点で、画像調整処理はほとんど終了している。調整処理は撮影の合間に可能だからである。すなわち、術者は最後に撮影された画像P0の調整処理を行うだけで次の操作に取りかかることができるので、本発明のX線撮影装置は撮影の手間が軽減されて操作性に優れている。
【0054】
また、単一の画像を表示し、画像が撮影される度に画像を更新する表示部25aを設けるようにすれば画像の各々詳細を確認しながら撮影できる。
【実施例2】
【0055】
続いて、実施例2に係るX線撮影装置について説明する。実施例2は、X線管3とFPD4とが互いの相対位置を保った状態で被検体に対して移動する構成であり、X線管3およびFPD4の被検体に対する移動方向と直交する方向に細長状の短冊画像P1を移動方向につなぎ合わせて長尺画像を生成する構成である。
【0056】
<X線撮影装置10の全体構成>
実施例2に係るX線撮影装置10の全体構成は、図6に示されている。図6に示す各部のうち、天板2,X線管3,FPD4,X線管制御部6,画像生成部11,操作卓26,主制御部27,および記憶部28については、実施例1で説明済みである。なお、実施例2においては、図1における画像調整部12,および表示部25aは必ずしも必要とはされない。
【0057】
X線管3には、X線の照射方向を制限するコリメータ3aが設けられている。コリメータ3aは、開度の調節が可能となっている。コリメータ3aは、図7に示すように、中心軸Cを基準として鏡像対称に移動する1対のリーフ3bを有し、同じく中心軸Cを基準として鏡像対称に移動するもう1対のリーフ3bを備えている。このコリメータ3aは、リーフ3bを移動させることで、FPD4が有する検出面の全面にコーン状のX線ビームBを照射させることもできれば、たとえば、FPD4の中心部分だけにファン状のX線ビームBを照射させることもできる。なお、中心軸Cは、X線ビームBの中心を示す軸ともなっている。なお、リーフ3bの対の一方は、4角錐形状となっているX線ビームの体軸方向Aの広がりを調整するものであり、もう一方のリーフ3bの対は、X線ビームの体側方向Sの広がりを調整するものである。X線管3を移動させるとコリメータ3aもX線管3に伴って移動する。
【0058】
X線管移動機構7は、X線管3を被検体の体軸方向Aに移動させる目的で設けられている(図1参照)。X線管移動制御部8は、X線管移動機構7を制御するものである。FPD移動機構9は、FPD4を被検体の体軸方向Aに移動させる目的で設けられている。FPD移動制御部10は、FPD移動機構9を制御するものである。X線管3およびFPD4は、X線管移動機構7およびFPD移動機構9により互いの相対位置を保った状態で被検体に対して体軸方向Aに進退移動することができる。X線管移動機構7は、本発明の放射線源移動手段に相当する。X線管移動制御部8は、本発明の放射線源移動制御手段に相当し、FPD移動機構9は、本発明の検出器移動手段に相当する。FPD移動制御部10は、本発明の検出器移動制御手段に相当する。
【0059】
画像合成部13は、画像生成部11が生成する体側方向Sに細長の短冊画像P1を撮影された順に被検体の体軸方向Aに並べてつなぎ合わせて合成画像P2および長尺画像P3を生成する。合成画像P2は、複数の短冊画像P1を撮影している最中に逐次生成される確認用の画像であり、長尺画像P3は、全ての短冊画像P1を撮影し終えた後に生成される一枚の診断用の画像である。画像合成部13は、本発明の画像合成手段に相当する。
【0060】
短冊画像P1をつなぎ合わせて生成された長尺画像P3は、つなぎ合わせをしないで撮影された画像よりも診断に適したものとなっている。この理由について説明する。短冊画像P1は、図6の破線で示すようにコリメータ3aにより被検体の体軸方向Aに広がりが制限されたX線ビームを被検体に透過させることにより生成される。このとき生成される短冊画像P1に写り込む被検体像の歪みについて考える。図8の左側は、一般的に行われる透視画像の撮影を表している。X線管3から照射されたX線ビームは、大きく広がって被検体を透過し、FPD4の全面に入射する。X線ビームは、X線管3における焦点から放射状に広がってFPD4に向かうので、被検体Mの像は幅が拡大されてFPD4に到達することになる。すなわち、図8左側における実線の矢印の範囲における被検体の像は、FPD4に到達する時には、破線の矢印の範囲にまで拡大されてしまう。このように、放射状に大きく広がるX線ビームで画像の撮影を行うと、像が大きく拡大されて歪むのである。
【0061】
図8の右側は、実施例2に係る短冊画像P1の撮影を表している。X線管3から照射されるX線ビームは、コリメータ3aによって広がりが制限されて被検体を透過し、FPD4の一部に入射する。X線ビームの広がりが抑制された分、被検体Mの像は幅がさほど拡大されずにFPD4に到達する。このようにX線ビームの広がりを抑制して短冊画像P1の撮影を行うと、像の拡大が抑制されて、像の歪みが抑えられる。
【0062】
このように短冊画像P1は像の歪みが少なく、被検体の透視像において長さや面積を求めたりするのに適している。しかし、短冊画像P1は、X線ビームの広がりが抑制された画像であるので、撮影視野が狭く被検体のごく一部分しか撮影されていない。そこで実施例2の構成によれば、X線管3およびFPD4を被検体に対して移動させながら短冊画像P1の撮影を複数回に亘って行うようにしている。つまり、撮影位置の異なる複数枚の短冊画像P1をつなぎ合わせることで、被検体の全体像が写り込んだ長尺画像P3を取得するようにしている。
【0063】
また、短冊画像P1をつなぎ合わせて長尺画像P3を生成するようにすれば、各撮影で被検体の内部で発生する散乱X線の量を抑制することができるので、散乱X線により画像が乱されずに鮮明な画像を取得することができる。
【0064】
短冊画像P1の撮影について説明する。図9左側は、短冊画像P1が撮影される様子を示している。図9に示すようにX線管3とFPD4とは互いの相対位置を保った状態で被検体に対し体軸方向Aに移動しながら短冊画像P1が連写される。このときにX線管3から照射されるX線ビームは、コリメータ3aによってコリメートされることで体軸方向Aの広がりが制限されてFPD4に到達する。すなわち、X線は、FPD4において図9右側の太枠で示す領域に到達する。画像生成部11は、FPD4において太枠で示す部分について画像を生成し、この太枠と同じ形状の短冊画像P1を生成して、画像合成部13に送出する。
【0065】
画像合成部13は、短冊画像P1が生成される度に、現在まで取得された短冊画像P1を生成順に体軸方向Aに並べてつなぎ合わせて合成画像P2を生成する。生成された合成画像P2は、配列表示部25に送出される。配列表示部25はこの合成画像P2を表示する。
【0066】
図10は、配列表示部25が合成画像P2を表示する様子を示している。配列表示部25には、現在まで取得された短冊画像P1a〜P1dがつなぎ合わされた合成画像P2が表示されている。合成画像P2は、短冊画像P1が取得される度に更新される。したがって、短冊画像P1を順次撮影するに当たって、一回目の短冊画像P1aを取得した段階では、配列表示部25には、短冊画像P1aが表示される。そして、二回目の短冊画像P1bを取得した段階では、配列表示部25には、短冊画像P1a,P1bとがつなぎ合わせられた合成画像P2が表示される。以降、同様に、短冊画像P1aが生成されると、画像合成部13は、最初に生成された短冊画像P1aから今回生成された短冊画像P1までを生成(撮影)された順番に並べてつなぎ合わせて合成画像P2を生成し、これが配列表示部25に表示される。つまり配列表示部25には新たな短冊画像P1が生成される度に今回生成された画像と以前に生成された画像が並べて表示されることになる。
【0067】
なお、図10においては、短冊画像P1cと短冊画像P1dとの間で被検体像に位置的なズレが生じている。このズレは、両画像P1c,P1dを撮影する間に被検体が動いてしまったことに起因している。術者は、撮影中における被検体のズレを認識した時点で操作卓26を通じて短冊画像P1の撮影を中断する指示をすることができる。
【0068】
<X線撮影装置の動作>
次に、図11を参照してX線撮影装置の動作について説明する。長尺撮影の動作としては、まず被検体Mを天板2に載置し(載置ステップT1),術者が操作卓26を通じて短冊画像P1の撮影を開始させる(撮影開始ステップT2)。そして、短冊画像P1の撮影が完了しないうちから合成画像P2が生成され、これが配列表示部25に表示され(合成画像表示開始ステップT3),短冊画像P1の撮影完了後、全ての短冊画像P1をつなぎ合わせて長尺画像P3が生成され、これが配列表示部25に表示される(長尺画像表示ステップT4)。以降これらの各ステップについて順を追って説明する。
【0069】
<載置ステップT1,撮影開始ステップT2>
まず、被検体Mが天板2に載置される。術者が操作卓26を通じて短冊画像P1撮影開始の指示を与えると、操作卓26はその指示をX線管制御部6に送出する。X線管制御部6は、記憶部28に記憶されている撮影条件を読み出し、この撮影条件に基づいてX線管3にX線照射を開始させる。操作卓26は、術者の指示をX線管移動制御部8およびFPD移動制御部10にも送出する。これに伴ってX線管3およびFPD4は、互いの相対値を保ちながら被検体の体軸方向Aに移動を開始する。
【0070】
<合成画像表示開始ステップT3>
X線管3からX線ビームが時間的間隔をおいて被検体に向けて照射される。このX線照射は、1回目の撮影と同じ照射条件で行われる単発のパルス照射となっている。画像生成部11は、X線ビームを照射する度に短冊画像P1を生成する。短冊画像P1は生成される度に画像合成部13に送出される。短冊画像P1は、X線管3およびFPD4が被検体の体軸方向Aに移動しながら複数回に亘って撮影されるので、短冊画像P1のそれぞれが写し込む被検体の部位は互いに異なっている。画像合成部13は、短冊画像P1が送出される度に、今回生成された短冊画像P1と以前に生成された短冊画像P1とを生成(撮影)された順に体軸方向Aに並べてつなぎ合わせて合成画像P2を生成する。生成された合成画像P2は、配列表示部25に送出される。配列表示部25は、合成画像P2を表示する(図10参照)。配列表示部25に表示される合成画像P2は、短冊画像P1が生成される度に更新される。
【0071】
このとき術者は合成画像P2を視認して被検体が順調に撮影されているかを知ることができる。図10のように被検体の像が途中でズレてしまった場合、術者は撮影を直ちに中断できる。しかし以降の動作説明では撮影に問題がなかったものとする。
【0072】
<長尺画像表示ステップT4>
一連の短冊画像P1の撮影が完了すると、画像合成部13は、最初に生成された短冊画像P1から最後に生成された短冊画像P1までを生成(撮影)された順番に並べてつなぎ合わせて長尺画像P3を生成して配列表示部25に送出する。配列表示部25は、長尺画像P3を表示する。術者は表示された長尺画像P3を視認して被検体の診断をすることができる。
【0073】
以上のように、上述の構成は、撮影時点の異なる複数の短冊画像P1を並べて表示する配列表示部25を備えている。この配列表示部25の表示は、短冊画像P1が生成される度に行われ、今回生成された短冊画像P1と以前生成された短冊画像P1とを並べて表示するようになっている。この様な構成とすることにより、撮影の手間が軽減されて操作性の優れたX線撮影装置を提供することができる。
【0074】
すなわち、術者は、複数の短冊画像P1を撮影してこれらをつなぎ合わせる長尺画像P3の撮影時において、並べて表示された短冊画像P1を比較することで、画像撮影の合間に撮影が順調かどうかを知ることができる。従来構成によれば、短冊画像のつなぎ合わせ処理は、一連の撮影が完了した時点で行われている。従来構成では、術者は短冊画像の撮影の合間には先程撮影された短冊画像を単独で確認することしかできない。したがって、短冊画像の撮影中に被検体が移動してしまった場合でも、術者はこの移動に気がつかず、撮影完了後に配列表示部25に表示される長尺画像P3を見てはじめて画像の不整合に気がついて、撮影をやり直すことになる。本発明によれば、一連の画像撮影の合間に画像がつなぎ合わせられた合成画像P2が配列表示部25に表示される。したがって、術者は、被検体の移動に素早く気がついて、撮影を直ちに中断することができる。このように、本発明のX線撮影装置は撮影の手間が軽減されて操作性に優れている。
【0075】
また、従来の構成において長尺画像P3は撮影の後に得られるのであるから、撮影の最中には、どのような長尺画像P3が取得されるか正確に知ることができない。そこで従来の構成によれば、長尺画像P3の撮影範囲を診断に必要とされる範囲よりも予め広く設定して撮影を開始するようにしている。すると、被検体におけるX線の照射範囲が撮影を行わなくてもよい範囲にまで広がってしまうことになる。このような構成は、被検体のX線照射量を軽減するという意味で望ましくない。
【0076】
本発明によれば、被検体が撮影により透視される様子が長尺画像P3の生成前に視認できるようになっているので、長尺画像P3の撮影範囲の過不足を撮影完了前に知ることができる。術者は、撮影中に長尺画像P3の撮影範囲の過不足を認識すると操作卓26を通じて、短冊画像P1の撮影の中止や続行の指示をすることができる。
【0077】
本発明は、上述の構成に限られず、下記のように変形実施することができる。
【0078】
(1)上述の各実施例においては、画像の撮影が行われると、今回撮影され画像と最初に撮影された画像とを並べて配列表示部25に表示するようにしていたが、本発明はこの様な構成に限られない。すなわち、配列表示部25は、表示されている画像を撮影が古いものから順に排除して表示するようにしてもよい。図12は、配列表示部25が実施例2で説明した動作に従って短冊画像P1を表示している様子を示している。図12を見れば分かるように、今後短冊画像P1が生成されても配列表示部25にはこれ以上新たな短冊画像P1を表示する余白がない。つまり、配列表示部25は、表示できる短冊画像P1の枚数は4であることになる。
【0079】
そこで本変形例によれば、これまでに取得された短冊画像P1の枚数が4を超えると、画像合成部13は、最初に生成された短冊画像P1aを除外して合成画像P2を生成し、以降短冊画像P1aが生成される度に4枚の短冊画像P1aを最近生成された方から選択して、これらから合成画像P2を生成するようにしている。図13においては、画像合成部13は、短冊画像P1aを除外するとともに今回生成された短冊画像P1eを含めて合成画像P2を生成している。この合成画像P2は、図13のように配列表示部25に表示される。これによって、術者は短冊画像P1の撮影が順調であるかを確実に知ることができる。
【0080】
本変形例の構成は、画像合成部13が生成された画像が配列表示部25に表示できる画像の枚数を示す所定数を超えると最近生成された方から所定数の画像を選択して、これらをつなぎ合わせて合成画像P2を生成する。このようにすれば、最近撮影された画像が配列表示部25に収まりきれずに表示されないという事態を回避することができる。また、この様な画像の更新の方法は、実施例1に係るX線撮影装置1にも適用できる。
【0081】
(2)上述の実施例2によれば、撮影中にX線管3とFPD4とが互いの相対位置を保った状態で移動していたが、本発明はこの構成に限られない。すなわち、X線管3のみを移動させながら短冊画像P1の撮影を行っても良いし、X線管3とFPD4の移動速度を変えて短冊画像P1の撮影を行うようにしても良い。
【0082】
(3)上述の実施例1によれば、被検体の食道の撮影を行うようにしていたが、本発明は上述の構成限られず、被検体の他の部位について撮影を行うようにしても良い。
【0083】
(4)上述した実施例は、医用の装置であったが、本発明は、工業用や、原子力用の装置に適用することもできる。
【0084】
(5)上述した実施例のいうX線は、本発明における放射線の一例である。したがって、本発明は、X線以外の放射線にも適用できる。
【符号の説明】
【0085】
P2 合成画像
3 X線管(放射線源)
4 FPD(検出手段)
6 X線管制御部(放射線源制御手段)
7 X線管移動機構(放射線源移動手段)
8 X線管移動制御部(放射線源移動制御手段)
9 FPD移動機構(検出器移動手段)
10 FPD移動制御部(検出器移動制御手段)
11 画像生成部(画像生成手段)
12 画像調整部(画像調整手段)
13 画像合成部(画像合成手段)
25 配列表示部(配列表示手段)
25a 表示部(表示手段)
26 操作卓(入力手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を照射して被検体のイメージングを行う放射線撮影装置に係り、特に複数の放射線照射を連続的に行うことにより複数の画像を連続して取得する放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関には放射線を照射して被検体のイメージングを行う放射線撮影装置が配備されている。この様な放射線撮影装置は、被検体の消化器の撮影などに用いられる。このような撮影には造影剤(バリウム)が用いられる。
【0003】
造影剤を用いた被検体の消化器系の撮影においては、造影剤が通過中に食道の撮影が複数回に亘って行われる。そして、食道は複数回に亘って撮影される。このとき撮影された画像は、その都度モニタに表示される。食道の撮影が完了すると、撮影された複数の画像が図14に示すようにモニタに分割されて表示される。図14の例によれば、食道の撮影は4回行われ、モニタに表示される画像はそれぞれの撮影において得られたものとなっている。このように撮影された画像の全てを一度にモニタに表示することにより、撮影時点の異なる画像の比較を容易に行うことができる(例えば、特許文献1参照)。術者は、食道の撮影の後に胃の撮影を行う。
【0004】
食道の各撮影は、同様な条件で行われたものである。しかし、各撮影で得られた画像同士は、被検体の食道が同じように写り込んでいるとは限らない。すなわち、明暗やコントラストが画像間で同じとなってない場合がある。このような画像同士の写り込みの違いは、例えば放射線撮影装置が自動で行う画像調整や、撮影時における造影剤の写り込み具合が異なることで発生する。
【0005】
画像間の明暗やコントラストの違いは、画像を比較する上で妨げとなる。したがって、従来の放射線撮影装置によれば、モニタに分割表示された各画像の各々を手動で調整できるようにしている。すなわち、放射線撮影装置は、術者の指示を入力させる入力装置を備え、術者の指定に基づいてモニタ上の各画像の明暗やコントラストを個別に調整できるようになっている。したがって術者は、食道の撮影の完了後、モニタに分割表示された各画像を比較して他と写り方が異なる画像に明暗やコントラストの調節を施した後、胃の撮影の準備に取りかかることになる。
【0006】
このように従来の構成によれば、一連の撮影が完了しないと複数の画像の比較を行うことができないようになっている。撮影完了前のモニタには、最近撮影された一枚の画像のみが表示されており、それ以前の画像は表示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−232976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の放射線撮影装置においては、次のような問題点がある。
すなわち、従来の放射線撮影装置は、一連の撮影において取得された画像の比較を一連の撮影が完了するまでできず、これが迅速な撮影操作の妨げとなっている。
【0009】
被検体の消化器の撮影において、4回の食道の撮影を行った後、複数の画像の調整をするようにすると、画像調整に長い時間を要する。すると、食道の撮影を完了した後、胃の撮影を行おうとしても、画像調整に手間取って、次の撮影を直ちに始められない。つまり、画像調整に手間取っている間に造影剤は胃に到達してしまい、術者は撮影の機会を逃してしまい場合によっては検査のやり直しをする場合もある。このように従来の放射線撮影装置は撮影時間が長期化してしまうという問題点がある。
【0010】
また、一連の撮影において取得された画像の比較が撮影完了後でないとできないことにより、別の撮影様式においても撮影時間の長期化を招来している。すなわち、従来の放射線撮影装置には複数の短冊画像をつなぎ合わせて1枚の長尺画像を取得する長尺撮影を行うものがある。このような放射線撮影装置は、撮影位置をずらしながら複数の短冊画像を撮影し、撮影が完了した後に、短冊画像がつなぎ合わされた1枚の長尺画像が生成される。
【0011】
放射線撮影装置において一連の短冊画像の撮影が開始されたものとする。このときのモニタには、最近撮影された一枚の短冊画像のみが表示されており、それ以前の短冊画像は表示されていない。従って、術者は、撮影中に短冊画像の撮影が正しく行われているかを正確に知ることができない。
【0012】
一連の短冊画像の撮影中において、術者は、単一の短冊画像についてモニタを通じて視認することができる。しかし、単一の短冊画像としては問題がなくても、短冊画像をつなぎ合わせてみると視認性の優れた長尺画像が得られない場合もある。このような短冊画像をつなぎ合わせてみて初めて認識できる不具合としては、被検体の体動による画像のズレなどがある。短冊画像の間で生じる被検体像のズレは術者が短冊画像を1枚ずつ見ていったとしても発見されずらい。つまり従来構成によると術者は、全ての短冊画像をつなぎ合わせて長尺画像を取得することにより長尺画像の視認性の悪さに初めて気がつくことになる。すると、短冊画像の撮影を始めからやり直しをしなければならず、撮影時間が長期化する。
【0013】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、複数の放射線照射を連続的に行うことにより複数の画像を連続して取得する放射線撮影装置において、撮影の手間が軽減されて操作性に優れた放射線撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上述の課題を解決するために次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る放射線撮影装置は、放射線を照射する放射線源と、放射線を検出する検出手段と、放射線源が放射線を連射することにより検出手段が次々と出力する検出信号を基に撮影時点の異なる複数の画像を生成する画像生成手段と、画像が生成される度に、今回生成された画像と以前に生成された画像とを並べて表示する配列表示手段と、(A)配列表示手段に表示された画像の調整に関する術者の指示を入力させる入力手段と、(B)入力手段の入力を基に、配列表示手段に表示された画像の1つについて画像の調整処理を行い、調整処理後の画像を配列表示手段に送出する画像調整手段とを備えることを特徴とするものである。
【0015】
[作用・効果]上述の構成は、撮影時点の異なる複数の画像を並べて表示する配列表示手段を備えている。この配列表示手段の表示は、画像が生成される度に行われ、今回生成された画像と以前生成された画像とを並べて表示するようになっている。この様な構成とすることにより、撮影の手間が軽減されて操作性の優れた放射線撮影装置を提供することができる。
【0016】
すなわち、術者は、配列表示手段に並べて表示された画像を比較することで、画像撮影の合間に画像の調整処理を個別に行うことができる。従来の構成によれば、画像の調整処理は、一連の撮影が完了した時点で行われている。したがって、従来構成によれば、術者は一連の撮影が完了してから複数の画像に対して調整処理を一度に行わなければならず、次の操作に迅速に取りかかれない。しかし、本発明の構成によれば、一連の撮影が完了した時点で、画像調整処理はほとんど終了している。調整処理は撮影の合間に可能だからである。すなわち、術者は最後に撮影された画像の調整処理を行うだけで次の操作に取りかかることができるので、本発明の放射線撮影装置は撮影の手間が軽減されて操作性に優れている。
【0017】
また、上述の放射線撮影装置において、単一の画像を表示し、画像が撮影される度に画像を更新する表示手段が配列表示手段とは別に設けられていればより望ましい。
【0018】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の放射線撮影装置の具体的構成を示すものとなっている。単一の画像を表示し、画像が撮影される度に画像を更新する表示手段を設けるようにすれば画像の各々詳細を確認しながら撮影できる放射線撮影装置が提供できる。
【0019】
また、本発明に係る放射線撮影装置は、放射線を照射する放射線源と、放射線を検出する検出手段と、放射線源が放射線を連射することにより検出手段が次々と出力する検出信号を基に撮影時点の異なる複数の画像を生成する画像生成手段と、画像が生成される度に、今回生成された画像と以前に生成された画像とを並べて表示する配列表示手段と、(C)放射線源を被検体に対して移動させる放射線源移動手段と、(D)放射線源移動手段を制御する放射線源移動制御手段と、(E)放射線源が被検体に対して移動されながら撮影された放射線源の移動方向の直交方向に細長の画像の各々を移動方向につなぎ合わせることにより合成画像を生成し、配列表示手段に合成画像を表示させることにより画像生成手段が生成した複数の画像を配列表示手段に並べて表示させる画像合成手段とを備えることを特徴とするものである。
【0020】
[作用・効果]上述の構成は、撮影時点の異なる複数の画像を並べて表示する配列表示手段を備えている。この配列表示手段の表示は、画像が生成される度に行われ、今回生成された画像と以前生成された画像とを並べて表示するようになっている。この様な構成とすることにより、撮影の手間が軽減されて操作性の優れた放射線撮影装置を提供することができる。
【0021】
すなわち、術者は、複数の画像を撮影してこれらをつなぎ合わせる長尺画像の撮影時において、並べて表示された画像を比較することで、画像撮影の合間に撮影が順調かどうかを知ることができる。従来構成によれば、画像のつなぎ合わせ処理は、一連の撮影が完了した時点で行われている。従来構成では、術者は画像の撮影の合間には先程撮影された画像を単独で確認することしかできない。したがって、画像の撮影中に被検体が移動してしまった場合でも、術者はこの移動に気がつかず、撮影完了後に配列表示手段に表示される長尺画像を見てはじめて画像の不整合に気がついて、撮影を始めからやり直すことになる。本発明によれば、一連の画像撮影の合間に画像がつなぎ合わせられた合成画像が配列表示手段に表示される。したがって、術者は、被検体の移動に素早く気がついて、撮影を直ちに中断することができる。このように、本発明の放射線撮影装置は撮影の手間が軽減されて操作性に優れている。
【0022】
また、上述の放射線撮影装置において、検出手段を被検体に対して移動させる検出器移動手段と、検出器移動手段を制御する検出器移動制御手段とを備え、放射線源と検出手段とは、互いの相対位置を保った状態で被検体に対して移動されればより望ましい。
【0023】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の放射線撮影装置の具体的構成を示すものとなっている。放射線源と検出手段とが互いの相対位置を保った状態で被検体に対して移動されながら画像の撮影を行うようにすれば、より広範囲の長尺撮影が可能となる。
【0024】
また、上述の放射線撮影装置において、画像合成手段は、最初に生成された画像から今回生成された画像までを生成された順番に並べてつなぎ合わせて合成画像を生成すればより望ましい。
【0025】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の放射線撮影装置の具体的構成を示すものとなっている。画像合成手段が最初に生成された画像から今回生成された画像までを生成された順番に並べてつなぎ合わせて合成画像を生成すれば、術者は術者の全体像を認識しながら撮影の進捗を確認することができる。
【0026】
また、上述の放射線撮影装置において、画像合成手段は、生成された画像が配列表示手段に表示できる画像の枚数を示す所定数を超えると、最初に生成された細長の画像を除外して合成画像を生成し、以降画像が生成される度に最近生成された方から所定数の画像を選択して、これらをつなぎ合わせて合成画像を生成すればより望ましい。
【0027】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の放射線撮影装置の具体的構成を示すものとなっている。画像合成手段が生成された画像が配列表示手段に表示できる画像の枚数を示す所定数を超えると最近生成された方から所定数の画像を選択して、これらをつなぎ合わせて合成画像を生成するようにすれば、最近撮影された画像が配列表示手段に収まりきれずに表示されないという事態を回避することができる。
【0028】
また、上述の放射線撮影装置において、放射線源に対し照射条件の指示を与える放射線源制御手段を備え、放射線源は複数の画像を生成する際に、同じ照射条件で放射線を連射すればより望ましい。
【0029】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の放射線撮影装置の具体的構成を示すものとなっている。本発明は特に複数の撮影を同じ照射条件で行う場合に適している。すなわち、同じ撮影を行ったにもかかわらず、画像上の被検体の写り込み具合が異なってしまう撮影様式において、本発明のように撮影の合間に画像の比較ができるように放射線撮影装置を構成すれば、放射線撮影装置は撮影の手間が軽減されて操作性に優れたものとなる。
【発明の効果】
【0030】
上述の構成は、撮影時点の異なる複数の画像を並べて表示する配列表示手段を備えている。この配列表示手段の表示は、画像が生成される度に行われ、今回生成された画像と以前生成された画像とを並べて表示するようになっている。この様な構成とすることにより、撮影の手間が軽減されて操作性の優れた放射線撮影装置を提供することができる。すなわち、放射線撮影装置をこの様に構成すれば、術者は素早く次の操作に移行することができる。また、撮影の不具合に迅速に気がついて、早い段階で撮影をやり直すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1に係るX線撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】実施例1に係る表示部の表示を説明する模式図である。
【図3】実施例1に係る表示部の表示を説明する模式図である。
【図4】実施例1に係る表示部の表示を説明する模式図である。
【図5】実施例1に係るX線撮影装置の動作を説明するフローチャートである。
【図6】実施例2に係るX線撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図7】実施例2に係るコリメータを説明する斜視図である。
【図8】実施例2に係る長尺撮影の利点を説明する模式図である。
【図9】実施例2に係る短冊画像の撮影について説明する模式図である。
【図10】実施例2に係る表示部の表示を説明する模式図である。
【図11】実施例2に係るX線撮影装置の動作を説明するフローチャートである。
【図12】本発明の1変形例に係る表示部の表示を説明する模式図である。
【図13】本発明の1変形例に係る表示部の表示を説明する模式図である。
【図14】従来の構成に係る画像の表示について説明する模式図である。
【実施例1】
【0032】
以降、本発明の実施例を説明する。実施例におけるX線は、本発明の放射線に相当する。また、FPDは、フラット・パネル・ディテクタの略である。
【0033】
<X線撮影装置の全体構成>
まず、実施例1に係るX線撮影装置1の構成について説明する。X線撮影装置1は、図1に示すように仰臥位の被検体Mを載置する天板2と、天板2の上側に設けられたX線を照射するX線管3と、天板2の下側に設けられたX線を検出するFPD4とを備えている。FPD4は、被検体Mの体軸方向Aまたは体側方向Sのいずれかに沿った4つの辺を有する矩形となっている。また、X線管3は、放射状に広がる四角錐状のX線ビームをFPD4に向けて照射する。FPD4は、X線ビームを全面で受光することになる。FPD4のX線を検出する検出面4aには、X線検出素子が体軸方向Aおよび体側方向Sに2次元的に配列されている。支柱5は、X線管3およびFPD4を支持している。X線管3は、本発明の放射線源に相当し、FPD4は、本発明の検出手段に相当する。
【0034】
X線管制御部6は、所定の管電流、管電圧、パルス幅でX線管3を制御する目的で設けられている。FPD4は、X線管3から発せられ、被検体Mを透過したX線を検出して検出信号を生成する。この検出信号は、画像生成部11に送出され、そこで被検体Mの投影像が写り込んだ画像P0が生成される。生成された画像P0は、表示部25aおよび配列表示部25に送出され、表示部25aおよび配列表示部25は、それぞれ別の表示方法で画像P0を表示する。X線管制御部6は、本発明の放射線源制御手段に相当し、画像生成部11は、本発明の画像生成手段に相当する。表示部25aは、本発明の表示手段に相当し、配列表示部25は、本発明の配列表示手段に相当する。
【0035】
画像調整部12は、画像生成部11で生成された画像P0に対して画像の調整処理を行い、処理後の画像を配列表示部25に送出する。画像調整部12は、配列表示部25に表示される撮影時点の異なる複数の画像P0のうちの1つについて調整処理を行うようになっている。画像調整部12が行う調整処理は、例えばコントラスト調整および輝度調整である。画像調整部12は、本発明の画像調整手段に相当する。
【0036】
表示部25aと配列表示部25とにおける画像の表示方法について説明する。図2は、一回目の画像P0aの撮影がされた後の表示の様子を示している。画像P0aの撮影が行われ画像生成部11により画像P0aの生成がされると、表示部25aは今回生成された画像P0aを表示する。この表示はしばらくの間続く。
【0037】
図2における配列表示部25の表示について説明する。配列表示部25には、今回生成された画像P0aが配列表示部25の一部に小さく表示される。配列表示部25にはこれから撮影される画像P0bを表示する余白が設けられている。
【0038】
図3は、二回目の画像P0bの撮影がされた後の表示の様子を示している。画像P0bの撮影が行われ画像生成部11により画像P0bの生成がされると、表示部25aは今回生成された画像P0bを画像P0aに代えて表示する。この表示はしばらくの間続く。
【0039】
図3における配列表示部25の表示について説明する。配列表示部25には、今回生成された画像P0bを配列表示部25の一部に小さく表示される。配列表示部25にはこれから撮影される画像P0を表示する余白が設けられている。そして図3を見れば分かるように配列表示部25には、今回生成された画像P0bと以前生成された画像P0aとが並んで表示されている。この時点で術者は画像P0の撮影を完了することもできるし、画像P0の撮影を続行することもできる。図2,図3の説明において画像P0は2枚しか生成されないが、配列表示部25は、画像P0が生成される度に今回生成された画像と以前に生成された画像とを並べて表示する動作を続行する。
【0040】
実施例1における画像調整の方法について説明する。図4左側は、三枚の撮影時点の異なる画像P0が配列表示部25に表示されている様子を示している。図4左側の配列表示部25において網掛けで表示している画像P0は、他の画像P0と比べて被検体が暗めに写り込んでいるものである。このように配列表示部25に表示される複数の画像P0のあいだで被検体の写り込む様子が異なると、術者が各画像P0を比較しにくくなる。そこで、術者は、X線撮影装置の操作卓26に付属のマウスを通じて画像調整部12に配列表示部25に表示された画像の調整に関する指示(画像処理の指示)を画像調整部12に与えることができる。操作卓26は、本発明の入力手段に相当する。
【0041】
術者が図4左側における画像P0の1つについて輝度調整を行いたい場合、術者は、配列表示部25に表示されているマウスのポインタKを目的の画像P0に重なる位置まで移動させて、マウスの左ボタンを押下する。すると、図4左側の太枠で示すように、画像調整部12は、配列表示部25に表示された画像P0の一つを選択する。
【0042】
図4右側は、選択された画像P0を拡大して示している。画像の選択状態で術者がポインタKを上方向に移動させると(図4右側における実線の矢印参照),画像調整部12は、選択された画像P0の輝度を明るくするように画像処理を行う。
【0043】
ちなみに、画像の選択状態で術者がポインタKを下方向に移動させると、画像調整部12は、選択された画像P0の輝度を暗くするように画像処理を行う。同様に、画像の選択状態で術者がポインタKを右方向に移動させると、画像調整部12は、選択された画像P0のコントラストを強調するように画像処理を行い、術者がポインタKを左方向に移動させると、画像調整部12は、選択された画像P0のコントラストを失わせるように画像処理を行う(図4右側における破線の矢印参照)。このように画像調整部12は配列表示部25に表示された画像P0のうちの1つについて画像の調整処理を行うのである。なお、術者がマウスの左ボタンの押下を解除すると、画像調整部12は、画像P0の選択を解除する。
【0044】
操作卓26は、術者によるX線照射開始などの指示を入力させる目的で設けられている。また、主制御部27は、各制御部を統括的に制御する目的で設けられている。この主制御部27は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することにより各制御部6および各部11,11a,12を実現している。また、上述の各部は、それらを担当する演算装置に分割されて実行されてもよい。記憶部28は、画像処理に用いられるパラメータ等のX線撮影装置1の制御に関するパラメータの一切を記憶する。
【0045】
<X線撮影装置の動作>
次に、図5を参照してX線撮影装置の動作について説明する。この動作説明においては、4枚の画像P0を撮影するものとしている。この撮影枚数は、術者が撮影の前に操作卓26を通じてX線撮影装置に指定を行うことができる。配列表示部25は、指定された撮影枚数に応じて配列表示部25に表示される画像P0の大きさと配置を変更する。なお、以降の動作は、被検体の食道を撮影することを目的としている。
【0046】
X線撮影の動作としては、まず被検体Mを天板2に載置し(載置ステップS1)、4枚の画像P0が撮影される(第1画像撮影ステップS2,第2画像撮影ステップS3,第3画像撮影ステップS4,第4画像撮影ステップS5)。以降これらの各ステップについて順を追って説明する。
【0047】
<載置ステップS1,第1画像撮影ステップS2>
まず、造影剤(バリウム)が経口投与された被検体Mが天板2に載置される。術者が操作卓26を通じて撮影開始の指示を与えると、操作卓26はその指示をX線管制御部6に送出する。X線管制御部6は、記憶部28に記憶されている画像撮影用の撮影条件を読み出す。そして、X線管制御部6は、画像撮影用の撮影条件でX線管3にX線照射させる。このX線照射は、単発のパルス照射となっている。表示部25aおよび配列表示部25は、画像生成部11が今回生成した画像P0aを表示する(図2参照)。
【0048】
<第2画像撮影ステップS3>
術者が操作卓26を通じて2回目の画像P0bの撮影を指示すると、操作卓26はその指示をX線管制御部6に送出する。そして、X線管制御部6は、画像撮影用の撮影条件でX線管3にX線照射させる。このX線照射は、1回目の撮影と同じ照射条件で行われる単発のパルス照射となっている。表示部25aおよび配列表示部25は、画像生成部11が今回生成した画像P0bを前回生成した画像P0aに並べて表示する(図3参照)。
【0049】
<第3画像撮影ステップS4,第4画像撮影ステップS5>
以降、同様に3回目の画像、4回目の画像が生成される。この度に配列表示部25には、新しく撮影された画像P0が前回撮影された画像P0に並べて表示され、表示部25aは、専ら単一の画像P0を表示し、画像P0が撮影される度に画像P0の表示を新しいものに更新し続けることになる。
【0050】
第2画像撮影ステップS3,第3画像撮影ステップS4,第4画像撮影ステップS5の終了後、術者は配列表示部25を通じて今回撮影された画像P0と前回撮影された画像P0とを比較することができる(図4参照)。術者は、各撮影の終了後、操作卓26を通じて画像の調整処理をすることができる。
【0051】
従来の撮影においては、4枚の画像を撮影し終わった後でないと画像の調整処理をすることができない。したがって、術者は複数枚の画像P0の調整を画像P0の撮影後にまとめて行わなければならない。本発明においては、撮影時間の異なる複数の画像P0を取得する際に、各画像P0の撮影の合間に画像P0を比較するので、画像の調整処理は各画像P0合間に分散させて行われることになる。
【0052】
以上のように、上述の構成は、撮影時点の異なる複数の画像を並べて表示する配列表示部25を備えている。この配列表示部25の表示は、画像P0が生成される度に行われ、今回生成された画像P0と以前生成された画像P0とを並べて表示するようになっている。この様な構成とすることにより、撮影の手間が軽減されて操作性の優れたX線撮影装置を提供することができる。
【0053】
すなわち、術者は、配列表示部25に並べて表示された画像P0を比較することで、画像撮影の合間に操作卓26を通じて画像P0の調整処理を個別に行うことができる。従来の構成によれば、画像の調整処理は、一連の撮影が完了した時点で行われている。したがって、従来構成によれば術者は一連の撮影が完了してから複数の画像に対して調整処理を一度に行わなければならず、次の操作に迅速に取りかかれない。しかし、本発明の構成によれば、一連の撮影が完了した時点で、画像調整処理はほとんど終了している。調整処理は撮影の合間に可能だからである。すなわち、術者は最後に撮影された画像P0の調整処理を行うだけで次の操作に取りかかることができるので、本発明のX線撮影装置は撮影の手間が軽減されて操作性に優れている。
【0054】
また、単一の画像を表示し、画像が撮影される度に画像を更新する表示部25aを設けるようにすれば画像の各々詳細を確認しながら撮影できる。
【実施例2】
【0055】
続いて、実施例2に係るX線撮影装置について説明する。実施例2は、X線管3とFPD4とが互いの相対位置を保った状態で被検体に対して移動する構成であり、X線管3およびFPD4の被検体に対する移動方向と直交する方向に細長状の短冊画像P1を移動方向につなぎ合わせて長尺画像を生成する構成である。
【0056】
<X線撮影装置10の全体構成>
実施例2に係るX線撮影装置10の全体構成は、図6に示されている。図6に示す各部のうち、天板2,X線管3,FPD4,X線管制御部6,画像生成部11,操作卓26,主制御部27,および記憶部28については、実施例1で説明済みである。なお、実施例2においては、図1における画像調整部12,および表示部25aは必ずしも必要とはされない。
【0057】
X線管3には、X線の照射方向を制限するコリメータ3aが設けられている。コリメータ3aは、開度の調節が可能となっている。コリメータ3aは、図7に示すように、中心軸Cを基準として鏡像対称に移動する1対のリーフ3bを有し、同じく中心軸Cを基準として鏡像対称に移動するもう1対のリーフ3bを備えている。このコリメータ3aは、リーフ3bを移動させることで、FPD4が有する検出面の全面にコーン状のX線ビームBを照射させることもできれば、たとえば、FPD4の中心部分だけにファン状のX線ビームBを照射させることもできる。なお、中心軸Cは、X線ビームBの中心を示す軸ともなっている。なお、リーフ3bの対の一方は、4角錐形状となっているX線ビームの体軸方向Aの広がりを調整するものであり、もう一方のリーフ3bの対は、X線ビームの体側方向Sの広がりを調整するものである。X線管3を移動させるとコリメータ3aもX線管3に伴って移動する。
【0058】
X線管移動機構7は、X線管3を被検体の体軸方向Aに移動させる目的で設けられている(図1参照)。X線管移動制御部8は、X線管移動機構7を制御するものである。FPD移動機構9は、FPD4を被検体の体軸方向Aに移動させる目的で設けられている。FPD移動制御部10は、FPD移動機構9を制御するものである。X線管3およびFPD4は、X線管移動機構7およびFPD移動機構9により互いの相対位置を保った状態で被検体に対して体軸方向Aに進退移動することができる。X線管移動機構7は、本発明の放射線源移動手段に相当する。X線管移動制御部8は、本発明の放射線源移動制御手段に相当し、FPD移動機構9は、本発明の検出器移動手段に相当する。FPD移動制御部10は、本発明の検出器移動制御手段に相当する。
【0059】
画像合成部13は、画像生成部11が生成する体側方向Sに細長の短冊画像P1を撮影された順に被検体の体軸方向Aに並べてつなぎ合わせて合成画像P2および長尺画像P3を生成する。合成画像P2は、複数の短冊画像P1を撮影している最中に逐次生成される確認用の画像であり、長尺画像P3は、全ての短冊画像P1を撮影し終えた後に生成される一枚の診断用の画像である。画像合成部13は、本発明の画像合成手段に相当する。
【0060】
短冊画像P1をつなぎ合わせて生成された長尺画像P3は、つなぎ合わせをしないで撮影された画像よりも診断に適したものとなっている。この理由について説明する。短冊画像P1は、図6の破線で示すようにコリメータ3aにより被検体の体軸方向Aに広がりが制限されたX線ビームを被検体に透過させることにより生成される。このとき生成される短冊画像P1に写り込む被検体像の歪みについて考える。図8の左側は、一般的に行われる透視画像の撮影を表している。X線管3から照射されたX線ビームは、大きく広がって被検体を透過し、FPD4の全面に入射する。X線ビームは、X線管3における焦点から放射状に広がってFPD4に向かうので、被検体Mの像は幅が拡大されてFPD4に到達することになる。すなわち、図8左側における実線の矢印の範囲における被検体の像は、FPD4に到達する時には、破線の矢印の範囲にまで拡大されてしまう。このように、放射状に大きく広がるX線ビームで画像の撮影を行うと、像が大きく拡大されて歪むのである。
【0061】
図8の右側は、実施例2に係る短冊画像P1の撮影を表している。X線管3から照射されるX線ビームは、コリメータ3aによって広がりが制限されて被検体を透過し、FPD4の一部に入射する。X線ビームの広がりが抑制された分、被検体Mの像は幅がさほど拡大されずにFPD4に到達する。このようにX線ビームの広がりを抑制して短冊画像P1の撮影を行うと、像の拡大が抑制されて、像の歪みが抑えられる。
【0062】
このように短冊画像P1は像の歪みが少なく、被検体の透視像において長さや面積を求めたりするのに適している。しかし、短冊画像P1は、X線ビームの広がりが抑制された画像であるので、撮影視野が狭く被検体のごく一部分しか撮影されていない。そこで実施例2の構成によれば、X線管3およびFPD4を被検体に対して移動させながら短冊画像P1の撮影を複数回に亘って行うようにしている。つまり、撮影位置の異なる複数枚の短冊画像P1をつなぎ合わせることで、被検体の全体像が写り込んだ長尺画像P3を取得するようにしている。
【0063】
また、短冊画像P1をつなぎ合わせて長尺画像P3を生成するようにすれば、各撮影で被検体の内部で発生する散乱X線の量を抑制することができるので、散乱X線により画像が乱されずに鮮明な画像を取得することができる。
【0064】
短冊画像P1の撮影について説明する。図9左側は、短冊画像P1が撮影される様子を示している。図9に示すようにX線管3とFPD4とは互いの相対位置を保った状態で被検体に対し体軸方向Aに移動しながら短冊画像P1が連写される。このときにX線管3から照射されるX線ビームは、コリメータ3aによってコリメートされることで体軸方向Aの広がりが制限されてFPD4に到達する。すなわち、X線は、FPD4において図9右側の太枠で示す領域に到達する。画像生成部11は、FPD4において太枠で示す部分について画像を生成し、この太枠と同じ形状の短冊画像P1を生成して、画像合成部13に送出する。
【0065】
画像合成部13は、短冊画像P1が生成される度に、現在まで取得された短冊画像P1を生成順に体軸方向Aに並べてつなぎ合わせて合成画像P2を生成する。生成された合成画像P2は、配列表示部25に送出される。配列表示部25はこの合成画像P2を表示する。
【0066】
図10は、配列表示部25が合成画像P2を表示する様子を示している。配列表示部25には、現在まで取得された短冊画像P1a〜P1dがつなぎ合わされた合成画像P2が表示されている。合成画像P2は、短冊画像P1が取得される度に更新される。したがって、短冊画像P1を順次撮影するに当たって、一回目の短冊画像P1aを取得した段階では、配列表示部25には、短冊画像P1aが表示される。そして、二回目の短冊画像P1bを取得した段階では、配列表示部25には、短冊画像P1a,P1bとがつなぎ合わせられた合成画像P2が表示される。以降、同様に、短冊画像P1aが生成されると、画像合成部13は、最初に生成された短冊画像P1aから今回生成された短冊画像P1までを生成(撮影)された順番に並べてつなぎ合わせて合成画像P2を生成し、これが配列表示部25に表示される。つまり配列表示部25には新たな短冊画像P1が生成される度に今回生成された画像と以前に生成された画像が並べて表示されることになる。
【0067】
なお、図10においては、短冊画像P1cと短冊画像P1dとの間で被検体像に位置的なズレが生じている。このズレは、両画像P1c,P1dを撮影する間に被検体が動いてしまったことに起因している。術者は、撮影中における被検体のズレを認識した時点で操作卓26を通じて短冊画像P1の撮影を中断する指示をすることができる。
【0068】
<X線撮影装置の動作>
次に、図11を参照してX線撮影装置の動作について説明する。長尺撮影の動作としては、まず被検体Mを天板2に載置し(載置ステップT1),術者が操作卓26を通じて短冊画像P1の撮影を開始させる(撮影開始ステップT2)。そして、短冊画像P1の撮影が完了しないうちから合成画像P2が生成され、これが配列表示部25に表示され(合成画像表示開始ステップT3),短冊画像P1の撮影完了後、全ての短冊画像P1をつなぎ合わせて長尺画像P3が生成され、これが配列表示部25に表示される(長尺画像表示ステップT4)。以降これらの各ステップについて順を追って説明する。
【0069】
<載置ステップT1,撮影開始ステップT2>
まず、被検体Mが天板2に載置される。術者が操作卓26を通じて短冊画像P1撮影開始の指示を与えると、操作卓26はその指示をX線管制御部6に送出する。X線管制御部6は、記憶部28に記憶されている撮影条件を読み出し、この撮影条件に基づいてX線管3にX線照射を開始させる。操作卓26は、術者の指示をX線管移動制御部8およびFPD移動制御部10にも送出する。これに伴ってX線管3およびFPD4は、互いの相対値を保ちながら被検体の体軸方向Aに移動を開始する。
【0070】
<合成画像表示開始ステップT3>
X線管3からX線ビームが時間的間隔をおいて被検体に向けて照射される。このX線照射は、1回目の撮影と同じ照射条件で行われる単発のパルス照射となっている。画像生成部11は、X線ビームを照射する度に短冊画像P1を生成する。短冊画像P1は生成される度に画像合成部13に送出される。短冊画像P1は、X線管3およびFPD4が被検体の体軸方向Aに移動しながら複数回に亘って撮影されるので、短冊画像P1のそれぞれが写し込む被検体の部位は互いに異なっている。画像合成部13は、短冊画像P1が送出される度に、今回生成された短冊画像P1と以前に生成された短冊画像P1とを生成(撮影)された順に体軸方向Aに並べてつなぎ合わせて合成画像P2を生成する。生成された合成画像P2は、配列表示部25に送出される。配列表示部25は、合成画像P2を表示する(図10参照)。配列表示部25に表示される合成画像P2は、短冊画像P1が生成される度に更新される。
【0071】
このとき術者は合成画像P2を視認して被検体が順調に撮影されているかを知ることができる。図10のように被検体の像が途中でズレてしまった場合、術者は撮影を直ちに中断できる。しかし以降の動作説明では撮影に問題がなかったものとする。
【0072】
<長尺画像表示ステップT4>
一連の短冊画像P1の撮影が完了すると、画像合成部13は、最初に生成された短冊画像P1から最後に生成された短冊画像P1までを生成(撮影)された順番に並べてつなぎ合わせて長尺画像P3を生成して配列表示部25に送出する。配列表示部25は、長尺画像P3を表示する。術者は表示された長尺画像P3を視認して被検体の診断をすることができる。
【0073】
以上のように、上述の構成は、撮影時点の異なる複数の短冊画像P1を並べて表示する配列表示部25を備えている。この配列表示部25の表示は、短冊画像P1が生成される度に行われ、今回生成された短冊画像P1と以前生成された短冊画像P1とを並べて表示するようになっている。この様な構成とすることにより、撮影の手間が軽減されて操作性の優れたX線撮影装置を提供することができる。
【0074】
すなわち、術者は、複数の短冊画像P1を撮影してこれらをつなぎ合わせる長尺画像P3の撮影時において、並べて表示された短冊画像P1を比較することで、画像撮影の合間に撮影が順調かどうかを知ることができる。従来構成によれば、短冊画像のつなぎ合わせ処理は、一連の撮影が完了した時点で行われている。従来構成では、術者は短冊画像の撮影の合間には先程撮影された短冊画像を単独で確認することしかできない。したがって、短冊画像の撮影中に被検体が移動してしまった場合でも、術者はこの移動に気がつかず、撮影完了後に配列表示部25に表示される長尺画像P3を見てはじめて画像の不整合に気がついて、撮影をやり直すことになる。本発明によれば、一連の画像撮影の合間に画像がつなぎ合わせられた合成画像P2が配列表示部25に表示される。したがって、術者は、被検体の移動に素早く気がついて、撮影を直ちに中断することができる。このように、本発明のX線撮影装置は撮影の手間が軽減されて操作性に優れている。
【0075】
また、従来の構成において長尺画像P3は撮影の後に得られるのであるから、撮影の最中には、どのような長尺画像P3が取得されるか正確に知ることができない。そこで従来の構成によれば、長尺画像P3の撮影範囲を診断に必要とされる範囲よりも予め広く設定して撮影を開始するようにしている。すると、被検体におけるX線の照射範囲が撮影を行わなくてもよい範囲にまで広がってしまうことになる。このような構成は、被検体のX線照射量を軽減するという意味で望ましくない。
【0076】
本発明によれば、被検体が撮影により透視される様子が長尺画像P3の生成前に視認できるようになっているので、長尺画像P3の撮影範囲の過不足を撮影完了前に知ることができる。術者は、撮影中に長尺画像P3の撮影範囲の過不足を認識すると操作卓26を通じて、短冊画像P1の撮影の中止や続行の指示をすることができる。
【0077】
本発明は、上述の構成に限られず、下記のように変形実施することができる。
【0078】
(1)上述の各実施例においては、画像の撮影が行われると、今回撮影され画像と最初に撮影された画像とを並べて配列表示部25に表示するようにしていたが、本発明はこの様な構成に限られない。すなわち、配列表示部25は、表示されている画像を撮影が古いものから順に排除して表示するようにしてもよい。図12は、配列表示部25が実施例2で説明した動作に従って短冊画像P1を表示している様子を示している。図12を見れば分かるように、今後短冊画像P1が生成されても配列表示部25にはこれ以上新たな短冊画像P1を表示する余白がない。つまり、配列表示部25は、表示できる短冊画像P1の枚数は4であることになる。
【0079】
そこで本変形例によれば、これまでに取得された短冊画像P1の枚数が4を超えると、画像合成部13は、最初に生成された短冊画像P1aを除外して合成画像P2を生成し、以降短冊画像P1aが生成される度に4枚の短冊画像P1aを最近生成された方から選択して、これらから合成画像P2を生成するようにしている。図13においては、画像合成部13は、短冊画像P1aを除外するとともに今回生成された短冊画像P1eを含めて合成画像P2を生成している。この合成画像P2は、図13のように配列表示部25に表示される。これによって、術者は短冊画像P1の撮影が順調であるかを確実に知ることができる。
【0080】
本変形例の構成は、画像合成部13が生成された画像が配列表示部25に表示できる画像の枚数を示す所定数を超えると最近生成された方から所定数の画像を選択して、これらをつなぎ合わせて合成画像P2を生成する。このようにすれば、最近撮影された画像が配列表示部25に収まりきれずに表示されないという事態を回避することができる。また、この様な画像の更新の方法は、実施例1に係るX線撮影装置1にも適用できる。
【0081】
(2)上述の実施例2によれば、撮影中にX線管3とFPD4とが互いの相対位置を保った状態で移動していたが、本発明はこの構成に限られない。すなわち、X線管3のみを移動させながら短冊画像P1の撮影を行っても良いし、X線管3とFPD4の移動速度を変えて短冊画像P1の撮影を行うようにしても良い。
【0082】
(3)上述の実施例1によれば、被検体の食道の撮影を行うようにしていたが、本発明は上述の構成限られず、被検体の他の部位について撮影を行うようにしても良い。
【0083】
(4)上述した実施例は、医用の装置であったが、本発明は、工業用や、原子力用の装置に適用することもできる。
【0084】
(5)上述した実施例のいうX線は、本発明における放射線の一例である。したがって、本発明は、X線以外の放射線にも適用できる。
【符号の説明】
【0085】
P2 合成画像
3 X線管(放射線源)
4 FPD(検出手段)
6 X線管制御部(放射線源制御手段)
7 X線管移動機構(放射線源移動手段)
8 X線管移動制御部(放射線源移動制御手段)
9 FPD移動機構(検出器移動手段)
10 FPD移動制御部(検出器移動制御手段)
11 画像生成部(画像生成手段)
12 画像調整部(画像調整手段)
13 画像合成部(画像合成手段)
25 配列表示部(配列表示手段)
25a 表示部(表示手段)
26 操作卓(入力手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を照射する放射線源と、
放射線を検出する検出手段と、
前記放射線源が放射線を連射することにより前記検出手段が次々と出力する検出信号を基に撮影時点の異なる複数の画像を生成する画像生成手段と、
画像が生成される度に、今回生成された画像と以前に生成された画像とを並べて表示する配列表示手段と、
(A)前記配列表示手段に表示された画像の調整に関する術者の指示を入力させる入力手段と、
(B)前記入力手段の入力を基に、前記配列表示手段に表示された画像の1つについて画像の調整処理を行い、調整処理後の画像を前記配列表示手段に送出する画像調整手段とを備えることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線撮影装置において、
単一の画像を表示し、画像が撮影される度に画像を更新する表示手段が前記配列表示手段とは別に設けられていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項3】
放射線を照射する放射線源と、
放射線を検出する検出手段と、
前記放射線源が放射線を連射することにより前記検出手段が次々と出力する検出信号を基に撮影時点の異なる複数の画像を生成する画像生成手段と、
画像が生成される度に、今回生成された画像と以前に生成された画像とを並べて表示する配列表示手段と、
(C)前記放射線源を被検体に対して移動させる放射線源移動手段と、
(D)前記放射線源移動手段を制御する放射線源移動制御手段と、
(E)前記放射線源が被検体に対して移動されながら撮影された前記放射線源の移動方向の直交方向に細長の画像の各々を前記移動方向につなぎ合わせることにより合成画像を生成し、前記配列表示手段に前記合成画像を表示させることにより前記画像生成手段が生成した複数の画像を前記配列表示手段に並べて表示させる画像合成手段とを備えることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項4】
請求項3に記載の放射線撮影装置において、
前記検出手段を被検体に対して移動させる検出器移動手段と、
前記検出器移動手段を制御する検出器移動制御手段とを備え、
前記放射線源と前記検出手段とは、互いの相対位置を保った状態で被検体に対して移動されることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の放射線撮影装置において、
前記画像合成手段は、最初に生成された画像から今回生成された画像までを生成された順番に並べてつなぎ合わせて前記合成画像を生成することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項6】
請求項3または請求項4に記載の放射線撮影装置において、
前記画像合成手段は、生成された画像が前記配列表示手段に表示できる画像の枚数を示す所定数を超えると、最初に生成された細長の画像を除外して前記合成画像を生成し、以降画像が生成される度に最近生成された方から所定数の画像を選択して、これらをつなぎ合わせて前記合成画像を生成することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の放射線撮影装置において、
前記放射線源に対し照射条件の指示を与える放射線源制御手段を備え、
前記放射線源は複数の画像を生成する際に、同じ照射条件で放射線を連射することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項1】
放射線を照射する放射線源と、
放射線を検出する検出手段と、
前記放射線源が放射線を連射することにより前記検出手段が次々と出力する検出信号を基に撮影時点の異なる複数の画像を生成する画像生成手段と、
画像が生成される度に、今回生成された画像と以前に生成された画像とを並べて表示する配列表示手段と、
(A)前記配列表示手段に表示された画像の調整に関する術者の指示を入力させる入力手段と、
(B)前記入力手段の入力を基に、前記配列表示手段に表示された画像の1つについて画像の調整処理を行い、調整処理後の画像を前記配列表示手段に送出する画像調整手段とを備えることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線撮影装置において、
単一の画像を表示し、画像が撮影される度に画像を更新する表示手段が前記配列表示手段とは別に設けられていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項3】
放射線を照射する放射線源と、
放射線を検出する検出手段と、
前記放射線源が放射線を連射することにより前記検出手段が次々と出力する検出信号を基に撮影時点の異なる複数の画像を生成する画像生成手段と、
画像が生成される度に、今回生成された画像と以前に生成された画像とを並べて表示する配列表示手段と、
(C)前記放射線源を被検体に対して移動させる放射線源移動手段と、
(D)前記放射線源移動手段を制御する放射線源移動制御手段と、
(E)前記放射線源が被検体に対して移動されながら撮影された前記放射線源の移動方向の直交方向に細長の画像の各々を前記移動方向につなぎ合わせることにより合成画像を生成し、前記配列表示手段に前記合成画像を表示させることにより前記画像生成手段が生成した複数の画像を前記配列表示手段に並べて表示させる画像合成手段とを備えることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項4】
請求項3に記載の放射線撮影装置において、
前記検出手段を被検体に対して移動させる検出器移動手段と、
前記検出器移動手段を制御する検出器移動制御手段とを備え、
前記放射線源と前記検出手段とは、互いの相対位置を保った状態で被検体に対して移動されることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の放射線撮影装置において、
前記画像合成手段は、最初に生成された画像から今回生成された画像までを生成された順番に並べてつなぎ合わせて前記合成画像を生成することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項6】
請求項3または請求項4に記載の放射線撮影装置において、
前記画像合成手段は、生成された画像が前記配列表示手段に表示できる画像の枚数を示す所定数を超えると、最初に生成された細長の画像を除外して前記合成画像を生成し、以降画像が生成される度に最近生成された方から所定数の画像を選択して、これらをつなぎ合わせて前記合成画像を生成することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の放射線撮影装置において、
前記放射線源に対し照射条件の指示を与える放射線源制御手段を備え、
前記放射線源は複数の画像を生成する際に、同じ照射条件で放射線を連射することを特徴とする放射線撮影装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−111366(P2013−111366A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262099(P2011−262099)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
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