説明

放射線検出システム及びX線CT装置

【課題】 並設した複数の検出器モジュールの隙間から漏れる放射線から信号処理回路を保護することが可能な放射線検出システム及びX線CT装置を提供する。
【解決手段】 1つの信号処理基板130が、並設された2つの検出器モジュール100,100のチャンネル方向中央部に立設される構造の放射線検出システム6において、検出器モジュール100と信号処理基板130との間であって、検出器モジュール100を複数並設する際に生じる隙間を覆う位置に遮蔽体122を備える。遮蔽体122は、例えば2つの検出器モジュール100,100を連結する連結基板121に支持されるか、または連結基板121自体に埋設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出システム及びX線CT装置における、X線、γ線等の放射線からの信号処理回路の保護に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置は、被検体の周囲からX線を照射し、被検体を透過したX線の強度に関するデータをX線検出器にて収集し、収集したデータに基づいて被検体内部のX線吸収係数の分布情報を画像化する装置である。
上述のX線検出器としては、セラミックシンチレータ等の蛍光体素子(以下、シンチレータ素子という)とフォトダイオード素子とを組み合わせた間接変換型検出器が主流となっている。また、X線検出器は、複数のシンチレータ素子及びフォトダイオード素子(以下、X線検出素子という)を配線基板上にアレイ状に設けた検出器モジュールを複数、X線管焦点を中心とした円弧状に並べた構造が多く採用されている。
また近年では、CT断層像の面内に沿ったチャンネル方向と、これに直交し、被検体の体軸方向に沿ったスライス方向とに、上述のシンチレータ素子及びフォトダイオード素子を配列したマルチスライス検出器が開発されている。マルチスライス検出器のスライス方向の素子数は、16、32、64、・・・のように増加してきている。
【0003】
ところで、上述の検出器モジュールは、入射したX線の強度に応じてX線計測信号を発生する。このアナログ信号であるX線計測信号は、検出器モジュールの各X線検出素子からケーブル等の伝送手段を介してX線入射面の後方(裏面側)に取り付けられた信号処理回路に入力され、この信号処理回路にてA/D変換等の信号処理が施され、ディジタル信号として画像再構成装置に出力される。
しかし、検出器モジュールから出力される電気信号は微弱なアナログ信号であり、放射線から影響を受けやすい。また、信号処理回路はX線検出素子の後方、すなわち配線基板の裏側に設置されるために、X線検出素子で吸収しきれなかったX線が配線基板をも透過すると、信号処理基板上の信号処理回路が被曝する恐れがあった。信号処理回路が被曝すると、信号処理回路中のトランジスタの劣化が進行し、X線照射下でない場合と比較して誤動作が起きやすく寿命が短くなる傾向があるので、X線から保護する必要があった。
そこで特許文献1には、放射線防御層を埋設した半導体パッケージが記載されている。また、特許文献2には、X線検出素子を実装した配線基板の裏面にX線遮蔽手段を設置し、配線基板の後方に設けられた信号処理回路を保護するX線CT装置について記載されている。特許文献1及び特許文献2のような構造をとることにより、配線基板を直線で透過したX線から集積回路(信号処理回路)を保護することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−208364号公報
【特許文献2】特開2009−189384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1及び特許文献2に記載された構造では、配線基板の面積範囲内に信号処理回路が設置されているため、配線基板を直線で透過するX線からの保護は期待できるが、散乱X線による影響が考慮されていない。散乱X線とは、X線管から照射されたX線が物質を透過する際に反射・散乱を起こすことにより発生するX線である。この散乱X線が、隣り合う検出器モジュールの隙間等を通って後方に設置された集積回路を被曝させる恐れがある。
また近年では、価格低減や省スペース化のために、1枚の信号処理基板に対し2つ以上の検出器モジュールを並べて取り付ける構造のX線検出器が開発されている。このようなX線検出器では、並設された検出器モジュールの中央に信号処理基板を配置することが多いが、各検出器モジュールの間に隙間が生じてしまい、現状ではこの隙間から漏れるX線から信号処理基板を保護できないものとなっていた。
【0006】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、並設した複数の検出器モジュールの隙間から漏れる放射線から信号処理回路を保護することが可能な放射線検出システム及びX線CT装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために第1の発明は、放射線を検出し、放射線強度に応じた電気信号を出力する検出素子を配列した検出器モジュールと、前記検出器モジュールの各検出素子から出力される電気信号をディジタル信号に変換する信号処理回路を備えた信号処理基板と、を備えた放射線検出システムであって、前記検出器モジュールと前記信号処理基板との間であって前記検出器モジュールを複数並設する際に生じる隙間を覆う位置に、放射線を遮蔽する遮蔽手段を備えることを特徴とする放射線検出システムである。
【0008】
第2の発明は、X線源と、前記X線源に対して対向配置されたX線検出器と、前記X線源及び前記X線検出器とを保持し被検体周囲に回転駆動される回転板と、前記X線検出器にて検出されたX線の強度に基づき、前記被検体の断層像を再構成する画像再構成手段と、を備えたX線CT装置において、前記X線検出器は、X線を検出し、X線強度に応じた電気信号を出力する検出素子を配列した検出器モジュールと、前記検出器モジュールの各検出素子から出力される電気信号をディジタル信号に変換する信号処理回路を備えた信号処理基板と、前記検出器モジュールと前記信号処理基板との間であって前記検出器モジュールを複数並設する際に生じる隙間を覆う位置に設けられる、放射線を遮蔽する遮蔽手段と、を備えることを特徴とするX線CT装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、並設した複数の検出器モジュールの隙間から漏れる放射線から信号処理回路を保護することが可能な放射線検出システム及びX線CT装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る放射線検出システムを搭載したX線CT装置1のハードウエアブロック図
【図2】本発明に係る放射線検出システム6の側面図(第1の実施の形態)
【図3】本発明に係る放射線検出システム7の側面図(第2の実施の形態)
【図4】本発明に係る放射線検出システム8の側面図(第3の実施の形態)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0012】
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明に係るX線CT装置1の構成について説明する。
図1に示すように、X線CT装置1は、スキャナ2、寝台3、及び操作卓4を備える。またX線CT装置1は、スキャナ2のX線検出器205として、第1〜第3の実施の形態の放射線検出システム6、7、8を複数個配列した構成とする。
【0013】
スキャナ2は、X線管201、X線制御装置202、コリメータ203、コリメータ制御装置204、X線検出器205、データ収集装置206、回転板207、回転板駆動装置208、駆動伝達系210、駆動制御装置209等を備える。
【0014】
X線制御装置202は、X線管201を制御し、回転板207の開口部内に搬送された被検体6に対してX線を照射させる。コリメータ203はX線管201から照射されるX線を、扇状のファンビームまたは角錐状のコーンビームに成形するものであり、コリメータ制御装置204により制御される。被検体6を透過したX線はX線検出器205に入射する。
【0015】
X線検出器205は、後述する放射線検出システム6、7、8(図2〜図4参照)のうちいずれかを複数個配列した構成である。
X線検出器205は、X線管201から放射されて被検体6を透過したX線をシンチレータ素子とフォトダイオード素子とを組み合わせてなるX線検出素子にて検出し、検出した信号(アナログ信号)を後述する信号処理回路132に伝送し、A/D変換等の信号処理を施してディジタル信号を生成し、データ収集装置206に出力する。データ収集装置206は、X線検出器205の個々のX線検出素子にて検出され、A/D変換されたX線計測データを収集し、操作卓4の画像再構成装置402に出力する。
X線検出器205の構造の詳細については後述する。
【0016】
回転板207には、X線管201、コリメータ203、X線検出器205、データ収集装置206等が搭載される。回転板207は、回転板駆動装置208から駆動伝達系210を通じて伝達される駆動力によって回転される。
【0017】
寝台3は、天板5、寝台制御装置301、上下動装置302、及び天板駆動装置303を備えて構成される。寝台制御装置301は、上下動装置302を駆動することにより、寝台3を高さ方向に上下動させるとともに、天板駆動装置303を駆動することにより天板5を体軸方向及び体幅方向に移動させる。これにより被検体6をX線照射範囲内の適切な位置に搬送する。
【0018】
操作卓4は、システム制御装置401、画像再構成装置402、記憶装置404、表示装置407、及び操作装置408から構成される。操作卓4はデータ伝送路を介してスキャナ2に接続される。
【0019】
表示装置407は、液晶パネル、CRTモニタ等のディスプレイ装置と、ディスプレイ装置と連携して表示処理を実行するための論理回路で構成され、システム制御装置401に接続される。表示装置407は画像再構成装置402から出力される画像、並びにシステム制御装置401が取り扱う種々の情報を表示する。操作装置408は、例えば、キーボード、マウス、テンキー等の入力装置、及び各種スイッチボタン等により構成され、操作者によって入力される各種の指示や情報をシステム制御装置401に出力する。操作者は、表示装置407及び操作装置408を使用して対話的にX線CT装置1を操作する。
【0020】
システム制御装置401は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により構成される。システム制御装置401は、スキャナ2内のX線制御装置202、コリメータ制御装置204、駆動制御装置209に対して所定の制御信号を送信することにより、X線管201、コリメータ203、及び回転板207を制御する。
【0021】
画像再構成装置402は、スキャナ2から送信されたX線計測データに基づいて、被検体6の断層像を生成する。
記憶装置404は、ハードディスク等により構成されるものであり、システム制御装置401に接続される。記憶装置404は、画像再構成装置402が生成する断層像やX線CT装置1の機能を実現するためのプログラム、データ等を記憶する。
【0022】
以上のように構成されるX線CT装置1において、システム制御装置401は、X線制御装置202を制御して、被検体6の周囲の複数角度方向からX線を照射し、被検体6を透過したX線の強度に関するデータをX線検出器205にて検出し、ディジタル信号に変換し、データ収集装置206によって収集してX線計測データとして操作卓4の画像再構成装置402へ送出する。画像再構成装置402は、収集したX線計測データに基づいて被検体内部のX線吸収係数の分布情報を画像化する。
【0023】
次に、X線検出器205の構造について説明する。
本発明のX線検出器205は、例えば、図2の放射線検出システム6、図3の放射線検出システム7、及び図4の放射線検出システム8のように、検出器モジュール100を複数配列して構成される。なお、本実施の形態では、検出器モジュール100がチャンネル方向に配列される例を示すが、スライス方向に配列されるようにしてもよい。また、チャンネル方向とスライス方向の双方に配列されるようにしてもよい。
まず、第1の実施の形態として、図2の放射線検出システム6を複数個配列してX線検出器205を構成する例を説明する。
【0024】
図2は、図1のX線検出器205のチャンネル方向を正面とした図である。
図2に示すように、放射線検出システム6は、検出器モジュール100、信号処理基板130、フレキシブルケーブル110、連結基板121、及び遮蔽体104、122を備える。
フレキシブルケーブル110は、検出器モジュール100の各検出素子と信号処理基板130の信号処理回路132とを電気的に接続する。
連結基板121は、2つの検出器モジュール100,100を連結・支持するとともに、これらの連結された検出器モジュール100に対して信号処理基板130を連結・支持する基板である。
【0025】
放射線検出システム6は、チャンネル方向に並設した2つの検出器モジュール100,100に対して1つの信号処理基板130を立設した構造となっている。信号処理基板130は2つの検出器モジュール100,100の裏面であって、チャンネル方向中央部に設けられる。
この放射線検出システム6は、検出器モジュール100のシンチレータアレイ102側がX線管201に対向するように配置される。
【0026】
各検出器モジュール100は、図2に示すように、シンチレータをチャンネル方向及びスライス方向に2次元配列したシンチレータアレイ102と、シンチレータから導かれた蛍光を受けてその光の強度に応じた電流を発生させるフォトダイオードをチャンネル方向及びスライス方向に2次元配列したフォトダイオードアレイ101とを、接着剤等により接合させたX線検出素子を備える。X線検出素子は、はんだバンプやはんだボール等により配線基板103に電気的に接続され、固定される。
以下の説明では、シンチレータアレイ102側を検出器モジュール100の表面または上面と呼び、その反対面となる配線基板103の裏側の面を、検出器モジュール100の裏面または下面と呼ぶ。
【0027】
配線基板103の裏面からは各X線検出素子から出力される信号を伝送するフレキシブルケーブル110が引き出される。フレキシブルケーブル110は、信号処理基板130の表裏に設けられたICソケットやコネクタ(不図示)にそれぞれ接続される。フレキシブルケーブル110の先端部にも、コネクタに対応したピン数のコネクタ(不図示)が設けられる。
【0028】
検出器モジュール100の裏側には、2つの検出器モジュール100を連結して取り付けるための連結基板121が設置される。更に、連結基板121に対し、信号処理基板130がネジやロック付コネクタ等により固定されている。回転板207の高速回転時に発生する遠心力による抜けや変形を防止するため、連結基板121と信号処理基板130とは、強固に固定されることが望ましい。
【0029】
信号処理基板130の表面及び裏面にはそれぞれ1または複数の信号処理回路132が設けられる。例えば、図2の紙面鉛直方向(スライス方向)に信号処理回路132が並べられる。各信号処理回路132は、複数のX線検出素子分の積分器、電流電圧変換器、及びA/D変換器等を搭載した集積回路等により構成される。また、図示しないが、信号処理基板130の表面及び裏面には、各検出器モジュール100から伸びるフレキシブルケーブル110を信号処理回路132に接続するためのコネクタや、信号処理回路132に制御信号や電源を供給する回路がそれぞれ設けられている。
【0030】
X線管201から照射されたX線は、そのほとんどがX線検出素子のシンチレータで光に変換されるが、一部は配線基板103を直線で透過し、また構造物との干渉により散乱する。このような散乱により、並設された検出器モジュール100,100の隙間から配線基板103の裏側に設置された信号処理基板130にX線が到達することがある。また、図2に示すように2つの検出器モジュール100,100を並べて1つの信号処理基板130に接続する構造では、各検出器モジュール100から出力される信号の伝送損失等を最小化するために2つの検出器モジュール100の中央に信号処理基板130を設けることが望ましい。しかし、このような構造とすると検出器モジュール100,100の間に生じた僅かな隙間(数十μm程度)の直下に信号処理基板130が設けられることとなり、隙間を透過するX線からの影響を受けやすい。
このため、X線から信号処理基板130の信号処理回路を保護する必要がある。
【0031】
本実施の形態の放射線検出システム6では、検出器モジュール100と信号処理基板130との間であって、並設された2つの検出器モジュール100,100の隙間を覆う位置に放射線を遮蔽する遮蔽体122が設けられる。遮蔽体122は、例えば連結基板121に支持されるか、または連結基板121自体に埋設される。
遮蔽体122の寸法は、チャンネル方向幅が、少なくとも信号処理基板130の表裏に設けられた2つの信号処理回路132の厚み幅程度であり、また、スライス方向幅は、少なくとも、検出器モジュール100に入射するX線ビームのスライス方向幅程度とする。また最大でも、チャンネル方向幅は連結した2つの検出器モジュールの幅以内とし、スライス方向幅は信号処理回路132の設置範囲以内とする。信号処理回路132は複数個並べて信号処理基板130に設置されることがあるが、設置範囲は最大でも信号処理基板130の幅(スライス方向)以内である。遮蔽体122の材質は、例えば鉛、モリブデン、タングステン等の金属やそれらの合金が好適である。
【0032】
さらに、配線基板103の裏側の面に、放射線を遮蔽する遮蔽体104が取り付けられる。遮蔽体104の寸法は、少なくとも検出器モジュール100,100に到達するX線ビームを覆う寸法とし、チャンネル方向幅は、各検出器モジュール100の全チャンネル分の幅、スライス方向幅は、少なくともX線ビームのスライス幅である。遮蔽体104の材質としては、遮蔽体122と同様に、例えば鉛、モリブデン、タングステン等の金属やそれらの合金が好適である。
【0033】
遮蔽体122を設置することにより、並設された2つの検出器モジュール100,100の隙間からX線が漏れた場合でも、直下に設置された信号処理基板130上の信号処理回路132を保護することが可能となる。また、遮蔽体122と、配線基板103の裏側の面に設けられる遮蔽体104とを組み合わせて設置することにより、X線を遮蔽する範囲が拡大し、配線基板103や連結基板121を垂直に透過するX線からも信号処理回路132を保護することが可能となる。また、配線基板103の下に収納されるフレキシブルケーブル110を、配線基板103や連結基板121を直線で透過するX線及び隙間から散乱するX線の両方から保護できる。
また、図2に示す放射線検出システム6は、1つの信号処理基板130で2つの検出器モジュール100,100からの信号を処理するので、信号処理基板130の設置数を減らすことが可能となる。このため、X線検出器205を収納する容器内のスペースを確保でき、また主要な熱源である信号処理回路132が集中することによる冷却の集中及び効率化を図ることが可能となる。
【0034】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態の放射線検出システムについて説明する。本実施の形態では、図1のX線CT装置1のX線検出器205として、図3に示す構造の放射線検出システム7を複数個配列して構成する。
なお、以下の説明において、第1の実施の形態と同一の各部については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0035】
図3は、図1のX線検出器205のチャンネル方向を正面とした図である。
図3に示すように、放射線検出システム7は、検出器モジュール100、信号処理基板130、フレキシブルケーブル110、連結基板121、及び遮蔽体104、122を備える。
また、放射線検出システム7は、チャンネル方向に並設した2つの検出器モジュール100,100に対して1つの信号処理基板130を略平行に設置した構造となっている。信号処理基板130はチャンネル方向に対称となる位置に設けられる。
この放射線検出システム7は、検出器モジュール100のシンチレータアレイ102側がX線管201に対向するように配置される。
【0036】
検出器モジュール100は、図2に示す第1の実施の形態の検出器モジュール100と同様の構造であるため説明を省略する。また、図2に示す第1の実施の形態と同様に、検出器モジュール100の裏側には、2つの検出器モジュール100,100を連結して取り付けるための連結基板121が設置される。更に、連結基板121に対し、信号処理基板130がネジやロック付コネクタ等により固定されている。
信号処理基板130は、検出器モジュール100に対して略平行に設けられ、裏面に、1または複数の信号処理回路132、コネクタ、制御信号や電源を供給する回路等を備えている。
フレキシブルケーブル110は、図2の放射線検出システム6と同様のものである。すなわち、検出器モジュール100の下面から引き出され、信号処理基板130に設けられたコネクタにそれぞれ接続される。
【0037】
図3の放射線検出システム7も、図2の放射線検出システム6と同様に、並設した2つの検出器モジュール100,100の間に隙間が生じることがある。
そこで、本実施の形態の放射線検出システム7においても、検出器モジュール100と信号処理基板130との間であって、並設された2つの検出器モジュール100,100の隙間を覆う位置に遮蔽体122が設けられる。遮蔽体122は、第1の実施の形態と同様に、例えば連結基板121に支持されるか、または連結基板121自体に埋設される。また遮蔽体122の材質は、第1の実施の形態と同様である。
【0038】
また図3の遮蔽体122の寸法は、チャンネル方向幅が、少なくとも信号処理基板130に設けられた1または複数の信号処理回路132の設置範囲程度であり、また、スライス方向幅は、少なくとも、検出器モジュール100に入射するX線ビームのスライス方向幅程度とする。また最大でも、チャンネル方向幅は連結した2つの検出器モジュール100,100の幅以内とし、スライス方向幅は1または複数の信号処理回路132の設置範囲以内とする。信号処理回路132の設置範囲は、最大でも信号処理基板130の幅(スライス方向)以内である。
【0039】
また、図2と同様に、本実施の形態の放射線検出システム7においても、配線基板103の裏側の面に遮蔽体104が取り付けられている。遮蔽体104の寸法や材質は図2の遮蔽体104と同様である。
【0040】
放射線検出システム7において、遮蔽体122を設置することにより、並設された2つの検出器モジュール100,100の隙間からX線が漏れた場合でも、直下に設置された信号処理基板130上の信号処理回路132を保護することが可能となる。また、遮蔽体122と、配線基板103の裏側の面に設けられる遮蔽体104とを組み合わせて設置することにより、X線を遮蔽する範囲が拡大し、配線基板103や連結基板121を垂直に透過するX線からも信号処理回路132を保護することが可能となる。また、配線基板103の直下に収納されるフレキシブルケーブル110を、配線基板103や連結基板121を透過するX線及び隙間から散乱するX線の両方から保護できる。
【0041】
また、図3に示すように、第2の実施の形態の放射線検出システム7では、信号処理基板130を検出器モジュール100と略平行に設置するので、スライス数やチャンネル数が増大し、信号処理基板130を大型化する必要がある場合であっても、検出器モジュール100の垂直方向の収納スペースを気にすることなく取り付けることができる。
また、第2の実施の形態では、検出器モジュール100から信号処理基板130を取り外すことを前提とせず、固定的に取り付けたことにより、構造が簡単で部品点数が少なくなり、製造及び保守に要するコストを低減できる。特に、フレキシブルケーブル110を信号処理基板130から取り外すことを前提としないため、信号処理基板130上に設けるコネクタ(不図示)として許容着脱回数がごくわずかなものを採用することが可能となり、信号処理基板を小型化できる。
【0042】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態の放射線検出システムについて説明する。本実施の形態では、図1のX線CT装置1のX線検出器205として、図4に示す構造の放射線検出システム8を複数個配列して構成する。
なお、以下の説明において、第1の実施の形態と同一の各部については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0043】
図4は、図1のX線検出器205のチャンネル方向を正面とした図である。
図4に示すように、放射線検出システム8は、検出器モジュール100、信号処理基板130、フレキシブルケーブル111、連結基板121、及び遮蔽体104、122を備える。
放射線検出システム8は、第2の実施の形態と同様に、チャンネル方向に並設した2つの検出器モジュール100,100に対して1つの信号処理基板130を略平行に設置した構造となっている。
【0044】
本実施の形態の放射線検出システム8において、フレキシブルケーブル111は、第1及び第2の実施の形態とは異なり、検出器モジュール100の下面から引き出され、連結基板121に設けられたコネクタ129を介して連結基板121に接続される。更に連結基板121には、信号処理基板130側に設けられるコネクタ135と対をなすコネクタ125が設けられており、これらのコネクタ125,135を介して連結基板121から信号処理回路132へ電気信号が伝送される。
【0045】
更に、放射線検出システム8は、コネクタ125,135を着脱することにより、検出器モジュール100側と信号処理基板130とを着脱できるようになっている。すなわち、コネクタ125及び135を嵌め合わせた場合に、検出器モジュール100に固定された連結基板121に対して信号処理基板130が連結保持され、また電気的にも接続されることとなる。コネクタ125,135は、着脱することを前提とするため、より多くの着脱回数に耐える材質、形状、構造のものを用いることが好ましい。このようなコネクタは一般に大型化してしまうが、着脱回数を優先的に考慮する。
【0046】
なお、連結基板121と検出器モジュール100とは取り外しを前提とせず、また設置面積縮小の観点から、コネクタ129は、コネクタ125,135と比較して、より小型のものを採用することが望ましい。これは、一般に小型のコネクタは構造が精密で許容着脱回数が制限されるためであり、設置面積による制約を優先的に考慮するためである。
【0047】
検出器モジュール100は、図2に示す第1の実施の形態の検出器モジュール100と同様の構造であるため説明を省略する。
信号処理基板130は第2の実施の形態の放射線検出システム7と同様に、検出器モジュール100に対して略平行に設けられ、裏面に、1または複数の信号処理回路132、制御信号や電源を供給する回路等を備えている。
【0048】
連結基板121には、上面側に遮蔽体122が設けられ、下面側にコネクタ125が設けられる。
遮蔽体122は、第1及び第2の実施の形態の放射線検出システム6,7と同様に、検出器モジュール100と信号処理基板130との間であって、並設された2つの検出器モジュール100,100の隙間を覆う位置に設けられる。また、遮蔽体122は、例えば連結基板121に支持されるか、または連結基板121自体に埋設される。また遮蔽体122の寸法、材質は、図3(第2の実施の形態)の放射線検出システム7の遮蔽体122と同様である。
【0049】
また、本実施の形態の放射線検出システム8においても、配線基板103の裏側の面に遮蔽体104が取り付けられている。遮蔽体104の寸法や材質は図2(第1の実施の形態)の遮蔽体104と同様である。
【0050】
第3の実施の形態の放射線検出システム8では、連結基板121に設けられるコネクタ125と信号処理基板130に設けられるコネクタ135とを嵌め合わせることにより、検出器モジュール100側と信号処理基板130との電気的接続が実現されるとともに、連結・保持される。
このような構造の放射線検出システム8において、遮蔽体122を設置することにより、並設された2つの検出器モジュール100,100の隙間からX線が漏れた場合でも、直下に設置された信号処理基板130上の信号処理回路132を保護することが可能となる。また、遮蔽体122と、配線基板103の裏側の面に設けられる遮蔽体104とを組み合わせて設置することにより、X線を遮蔽する範囲が拡大し、配線基板103や連結基板121を垂直に透過するX線からも信号処理回路132を保護することが可能となる。また、配線基板103の直下に収納されるフレキシブルケーブル111を、配線基板103や連結基板121を透過するX線及び隙間から散乱するX線の両方から保護できる。
【0051】
また、図4に示すように第3の実施の形態の放射線検出システム8では、信号処理基板130を検出器モジュール100と略平行に設置するので、スライス数やチャンネル数が増大し、信号処理基板130を大型化する必要がある場合であっても、検出器モジュール100の垂直方向の収納スペースを気にすることなく取り付けることができる。
また、第3の実施の形態では、検出器モジュール100側と信号処理基板130側とをコネクタ125、135により着脱可能な構造としているため、これらのコネクタ125、135を嵌合して、検出器モジュール100側に信号処理基板130側を取り付けた場合には電気的にも接続できる。また、コネクタ125とコネクタ135とを外して、信号処理基板130或いは検出器モジュール100のいずれか一方を交換したり、修理して再度取り付けたりすることが可能となるため、経済的である。
また、フレキシブルケーブル111が、信号処理基板130ではなく検出器モジュール100により近い連結基板121に接続されるため、第1及び第2の実施の形態に示すフレキシブルケーブル110よりもケーブル長を短縮できる。これにより電気信号の伝送損失を抑えることが可能となる。
【0052】
以上説明したように、本発明の放射線検出システム6,7,8は、検出器モジュール100と信号処理基板130との間に、検出器モジュール100を複数並設する際に生じる隙間を覆う遮蔽手段(遮蔽体122)を備える。
したがって、検出器モジュール100の隙間から散乱するX線を遮蔽体122によって遮蔽できるため、検出器モジュール100の後ろ(裏)に取り付けられる信号処理基板130等をX線から保護できる。このため、信号処理基板130に設けられる信号処理回路132内のトランジスタ等の劣化を防ぎ、誤動作の発生を防止できる。
【0053】
特に、1つの信号処理基板130が、図2に示すように並設された検出器モジュール100の裏面中央部(2つの検出器モジュールの中央)に立設されたり、図3及び図4に示すように略平行に設置されたりする場合には、信号処理基板130が上述の隙間の直下に位置するため、検出器モジュール100の隙間から散乱するX線を遮蔽体122によって遮蔽でき、信号処理基板130(信号処理回路132)を保護できる。
更に、1つの信号処理基板130で複数の検出器モジュール100からの信号を処理する場合には、信号処理基板130の枚数を減らすことが可能となる。このため、X線検出器205を収納する容器内のスペースを確保でき、また主要な熱源である信号処理回路132が集中することによる冷却の集中及び効率化を図ることが可能となる。
また、1つの信号処理基板130に対して複数の検出器モジュール100が略平行に設置される場合には、信号処理基板130が大型化した際にも垂直方向に伸ばすことなく取り付けることができ、X線検出器の小型化に寄与できる。
更に、各検出器モジュール100の裏面にも遮蔽体104を設けることにより遮蔽範囲を拡大させれば、検出器モジュール100の配線基板103を直線で透過するX線から、信号処理回路132やフレキシブルケーブル110,111を保護できる。
【0054】
また、図2、図3のように、連結基板121等により連結された検出器モジュール100に対して、信号処理基板130をネジ等により固定的に取り付ける場合には、回転板207の高速回転時に発生する遠心力による抜けや変形を防止でき、また、構造も簡単で部品点数が少なく、製造及び保守に要するコストを低減できる。
【0055】
一方、図4に示すように、連結基板121等により連結された検出器モジュール100側と信号処理基板130とにそれぞれ電気的接続を実現するコネクタ125,135を設け、検出器モジュール100側と信号処理基板130側とを着脱可能とする場合には、検出器モジュール100側と信号処理基板130側とを容易に切り離し、交換・修理を行えるため経済的である。
【0056】
以上、第1〜第3の実施の形態として、本発明に係るX線CT装置、及び放射線検出システムの例を説明したが、ここで、並設された放射線検出システムの隙間から散乱するX線からの信号処理基板130の保護について追記する。
【0057】
X線CT装置1のX線検出器205には、第1〜第3の実施の形態に示す放射線検出システム6,7,8のいずれかがチャンネル方向に複数並設されるが、これらの放射線検出システムの間にも隙間が生じ、この隙間からもX線が散乱することがある。しかし、例えば図2に示す放射線検出システム6のように、保護対象とする信号処理回路132が放射線検出システム6のチャンネル方向中央に設置されている場合には、隙間の直下に信号処理基板130が取り付けられている場合と比較して、角度が大きく、また距離も長くなるため、信号処理回路132へ影響を与えにくい。また、検出器モジュール100の各チャンネルの間にはそれぞれコリメータ板が設けられているため、各チャンネルへのX線の入射角はそもそも狭い。そのため、放射線検出システム6の端からの散乱X線により、中央部に位置する信号処理基板130が大きな影響を受けることは考えにくい。ただし、より厳密に放射線からの保護を望む場合もあるため、複数の並設された放射線検出システムの検出器モジュール100間に生じる隙間を覆う位置に、更に遮蔽体122を設けてもよい。
【0058】
更に、本発明は、チャンネル方向のみならず、スライス方向に検出器モジュール100(または放射線検出システム6,7,8)が複数並設された場合にも適用できる。
すなわち、スライス方向に検出器モジュール100(または放射線検出システム6,7,8)が複数並設された場合には、スライス方向にも検出器モジュール100間の隙間が生じることがある。したがって、スライス方向についても同様に、複数併設した検出器モジュール100の隙間から漏れるX線から信号処理基板130を保護するように、遮蔽体122が設けられることが望ましい。
その他、当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0059】
1・・・・・・X線CT装置
2・・・・・・スキャナ
3・・・・・・寝台
4・・・・・・操作卓
6・・・・・・放射線検出システム(第1の実施の形態)
7・・・・・・放射線検出システム(第2の実施の形態)
8・・・・・・放射線検出システム(第3の実施の形態)
205・・・・X線検出器
100・・・・検出器モジュール
101・・・・フォトダイオードアレイ
102・・・・シンチレータアレイ
103・・・・配線基板
104・・・・遮蔽体
110・・・・フレキシブルケーブル(第1、第2の実施の形態)
111・・・・フレキシブルケーブル(第3の実施の形態)
121・・・・連結基板
122・・・・遮蔽体
130・・・・信号処理基板
132・・・・信号処理回路
125・・・・コネクタ
135・・・・コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を検出し、放射線強度に応じた電気信号を出力する検出素子を配列した検出器モジュールと、
前記検出器モジュールの各検出素子から出力される電気信号をディジタル信号に変換する信号処理回路を備えた信号処理基板と、を備えた放射線検出システムであって、
前記検出器モジュールと前記信号処理基板との間であって前記検出器モジュールを複数並設する際に生じる隙間を覆う位置に、放射線を遮蔽する遮蔽手段を備えることを特徴とする放射線検出システム。
【請求項2】
前記信号処理基板は、並設された検出器モジュールの前記検出素子の配設された面の裏面中央部に立設されることを特徴とする請求項1に記載の放射線検出システム。
【請求項3】
前記信号処理基板は、並設された検出器モジュールの前記検出素子の配設された面の裏面に略平行に保持されることを特徴とする請求項1に記載の放射線検出システム。
【請求項4】
前記検出器モジュールの前記検出素子の配設された面の裏面側に、更に、第2遮蔽手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の放射線検出システム。
【請求項5】
前記検出器モジュールと前記信号処理基板とは、固定的に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の放射線検出システム。
【請求項6】
前記検出器モジュール側と前記信号処理基板側とにそれぞれ対をなして設けられ、嵌合させた際に電気的に接続するコネクタを更に備えることを特徴とする請求項3に記載の放射線検出システム。
【請求項7】
X線源と、前記X線源に対して対向配置されたX線検出器と、前記X線源及び前記X線検出器とを保持し被検体周囲に回転駆動される回転板と、前記X線検出器にて検出されたX線の強度に基づき、前記被検体の断層像を再構成する画像再構成手段と、を備えたX線CT装置において、
前記X線検出器は、
X線を検出し、X線強度に応じた電気信号を出力する検出素子を配列した検出器モジュールと、
前記検出器モジュールの各検出素子から出力される電気信号をディジタル信号に変換する信号処理回路を備えた信号処理基板と、
前記検出器モジュールと前記信号処理基板との間であって前記検出器モジュールを複数並設する際に生じる隙間を覆う位置に設けられる、放射線を遮蔽する遮蔽手段と、
を備えることを特徴とするX線CT装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−57954(P2012−57954A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198540(P2010−198540)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】