説明

放射線検査装置、放射線検査方法および放射線検査プログラム

【課題】半田の電気抵抗に即して良否判定を行う。
【解決手段】第1接合面と第2接合面とを積層方向に接合する半田を当該積層方向に透過した放射線の透過量を取得する透過量取得手段と、前記積層方向における前記第1接合面と前記第2接合面との距離に対応する基準厚みを取得する基準厚み取得手段と、前記透過量と前記基準厚みとに基づいて前記半田に存在する欠陥の深さに対応する欠陥深さを取得する欠陥深さ取得手段と、前記欠陥深さの前記基準厚みに対する相対比に基づいて前記半田の良否判定を行う判定手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検査装置、放射線検査方法および放射線検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半田を透過した放射線の透過量に基づいて、電子部品を電気的に接続する半田の良否判定を行う技術が提案されている(特許文献1、参照)。特許文献1では、半田を透過した放射線の透過量に基づいて欠陥の深さを特定し、当該厚みが所定の閾値よりも大きい場合に、半田が不良であると判定している。また、半田に存在する欠陥の面積率に基づいて半田の良否判定を行う技術も開示されている(特許文献2、参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−12932号公報
【特許文献2】特開2002−168804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1において、欠陥の深さが閾値よりも大きくても半田の電気抵抗に問題がない場合や、欠陥の深さが閾値よりも小さくても半田の電気抵抗に問題がある場合があった。以下、その理由について説明する。
半田内部の電気抵抗率よりも、半田と電子部品との接合面の電気抵抗率の方が遙かに大きく、半田内部における電流流路面積よりも接合面における電流流路面積の方が半田全体の電気抵抗に与える影響は大きい。半田と電子部品との接合面は異物質界面をなすからである。そのため、半田に内包される欠陥が存在する場合よりも、半田と電子部品との接合面上に欠陥が存在する場合の方が半田全体の電気抵抗が大きくなる。すなわち、欠陥の深さが一定の閾値よりも大きくても当該欠陥が半田に内包されていれば、電気抵抗が問題となる可能性は低い。反対に、欠陥の深さが閾値よりも小さくても当該欠陥が半田と電子部品との接合面上に存在していれば、電気抵抗が問題となる可能性が高い。従って、特許文献1のように欠陥の深さに基づいて良否判定を行っても、半田の電気抵抗に即した良否判定結果を得ることができない。特に、鉛フリー半田では溶融半田の表面張力が大きく、接合面上に欠陥が生じやすいため、特許文献1の手法では鉛フリー半田を適切に良否判定できないという問題があった。
また、引用文献2においても、欠陥が半田に内包されるものなのか接合面上に存在するものなのかを区別することなく欠陥の面積率を求めるため、半田の電気抵抗に即した良否判定をすることができない。
本発明は、前記課題にかんがみてなされたもので、半田の電気抵抗に即して良否判定を行う放射線検査装置、放射線検査方法および放射線検査プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明において、透過量取得手段は第1接合面と第2接合面とを積層方向に接合する半田を当該積層方向に透過した放射線の透過量を取得する。基準厚み取得手段は、積層方向における第1接合面と第2接合面との距離に対応する基準厚みを取得する。欠陥深さ取得手段は、透過量と基準厚みとに基づいて半田に存在する欠陥の深さを示す欠陥深さを取得する。さらに、判定手段は、欠陥深さの基準厚みに対する相対比に基づいて半田の良否判定を行う。
【0006】
ここで、相対比が大きいほど、第1接合面と第2接合面との間において欠陥が占める割合が大きくなる。また、第1接合面と第2接合面との間において欠陥が占める割合が大きいほど、欠陥が第1接合面と第2接合面との少なくとも一方の表面上に存在する確率が高くなる。また、欠陥は第1接合面や第2接合面に対する濡れ性が悪いことに起因して生じる場合が多いため、相対比が大きいほど、欠陥が第1接合面と第2接合面との少なくとも一方の表面上に存在する確率が高いと判断できる。
【0007】
以上のように、判定手段は、欠陥が第1接合面と第2接合面との少なくとも一方の表面上に存在する確率に対応する相対比に基づいて半田の良否判定を行うため、電気抵抗に即した良否判定を行うことができる。すなわち、第1接合面と第2接合面に対する接合面積に応じて第1接合面と第2接合面との間における半田の電気抵抗が顕著に変化するため、電気抵抗に即した半田の良否判定を行うことができる。
【0008】
ここで、放射線は半田を透過すればよく、X線やγ線等であってもよい。半田は第1接合面と第2接合面とを積層方向に接合し、放射線を透過させるものであればよく、特に半田の材料や厚みは限定されない。第1接合面と第2接合面とは、全体として対面していればよく平面形状である必要はない。例えば、第1接合面や第2接合面の一部に凹凸が形成されていてもよい。第1接合面や第2接合面の一部に凹凸が形成されることにより、これらに挟まれた半田の基準厚みは不均一となるが、欠陥深さの基準厚みに対する相対比を閾値判定するため、基準厚みの不均一さは問題とならない。むろん、もともと平面であった第1接合面や第2接合面が傾斜した場合や、非線形に変形した場合であっても、基準厚みの不均一さは問題とならない。従って、剛性の低い電子部品を接合する半田や表面張力の大きい半田についても、正確に良否判定することができる。
【0009】
基準厚みは第1接合面と第2接合面との距離に対応するものであればよく、厳密に第1接合面と第2接合面との距離を示すものでなくてもよい。例えば、基準厚みは第1接合面と第2接合面との距離に比例する値であってもよい。また、基準厚み取得手段は、第1接合面と第2接合面との距離に対応する基準厚みを取得することができればよく、例えば特許文献1に開示された手法により、透過量に基づいて基準厚みを取得してもよい。また、欠陥深さは、半田に存在する欠陥の深さに対応するものであればよく、例えば欠陥の深さに比例する値等であってもよい。また、欠陥とは半田において半田以外の物質が空間を占めていることを指し、例えば空気等のガスや残留フラックスや他の異物等が欠陥をなしてもよい。
【0010】
判定手段が行う判定手法の好適な例として、第1接合面の面方向において相対比が所定の第1閾値よりも大きい位置が占める占有面積が所定の第2閾値よりも大きい場合に、半田を不良と判定するようにしてもよい。すなわち、欠陥が第1接合面と第2接合面との少なくとも一方の表面上に存在する確率が第1閾値に対応する一定確率よりも大きい位置が占める占有面積が大きいほど、第1接合面と第2接合面に対する接合面積が減少し、電気抵抗が増大する。従って、第1接合面の面方向において相対比が所定の第1閾値よりも大きい位置が占める占有面積が所定の第2閾値よりも大きい半田を不良とすることにより、第2閾値を基準とする電気抵抗よりも大きい電気抵抗を有する半田を不良とすることができる。
【0011】
判定手段は、実質的に、相対比について第1閾値の閾値判定をすればよい。すなわち、欠陥深さに対して閾値判定する場合でも、基準厚みごとに当該基準厚みに比例した閾値を設定する場合には、実質的に相対比を閾値判定していることとなる。判定手段は、第1接合面の面方向の複数の位置について判定を行うようにしてもよい。
【0012】
判定手段が判定を行う別の場合の手法として以下の手法が挙げられる。すなわち、判定手段は、第1接合面の面方向における複数の位置についての相対比の平均値が第3閾値よりも大きい場合、半田が不良であると判定するようにしてもよい。相対比が大きい位置が多数存在する場合には複数の位置についての相対比の平均値は大きくなるし、相対比が大きい位置が小数しか存在しない場合には複数の位置についての相対比の平均値は小さくなる。ここで、相対比が大きい位置が多数存在している場合には、第1接合面と第2接合面との少なくとも一方の表面上に欠陥が存在している面積が広いと考えることができる。第1接合面と第2接合面との少なくとも一方の表面上に欠陥が存在している面積が広い場合、第1接合面と第2接合面に対する半田の接合面積が減少するため、半田の電気抵抗が高くなる。すなわち、第1接合面の面方向における複数の位置についての相対比の平均値が第3閾値よりも大きい場合、第1接合面の面方向に広がる半田全体の電気抵抗に即した良否判定を実現することができる。
【0013】
以上は、本発明が装置として実現される場合について説明したが、かかる装置を実現する方法やプログラム、当該プログラムを記録した媒体としても発明は実現可能である。また、以上のような放射線検査処理装置は単独で実現される場合もあるし、ある方法に適用され、あるいは同方法が他の機器に組み込まれた状態で利用されることもあるなど、発明の思想としてはこれに限らず、各種の態様を含むものである。従って、ソフトウェアであったりハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。また、ソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であっても良いし光磁気記録媒体であっても良いし、今後開発されるいかなる記録媒体においても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】X線半田検査装置の概略ブロック図である。
【図2】電子部品を示す模式図である。
【図3】X線半田検査処理のフローチャートである。
【図4】(4A)は半田厚みを示すグラフであり、(4B)は基準厚みを示すグラフであり、(4C)は欠陥深さを示すグラフであり、(4D)は相対比を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)X線半田検査装置の構成:
(2)X線半田検査処理:
【0016】
(1)X線半田検査装置の構成:
図1は本発明の放射線検査装置の一実施形態にかかるX線半田検査装置の概略ブロック図である。同図において、このX線半田検査装置は、X線撮像機構部10と制御部20とを備えている。X線撮像機構部10は、X線発生器11とX線検出器12とを備えている。X線撮像機構部10は、電子部品WとX線発生器11とを位置決めし、X線発生器11によって電子部品Wに放射線としてのX線を照射させる。X線検出器12は、X線の中央光軸に対して直交した検出面12aを備えており、電子部品Wを透過したX線の透過量を検出面12aの面方向の各位置にて検出する。X線検出器12は、検出面12aの各位置におけるX線の透過量の画像を示す透過量画像データ26bを生成する。
【0017】
図2は、X線が電子部品Wに照射される様子を示す模式図である。同図に示すように、電子部品Wは、それぞれ略板状の基板BとICチップTと半田S(ハッチング)とを有している。図示を省略するが電子部品Wには、リードやヒートシンク等が備えられている。基板Bは面状の導電パッドをなす第1接合面P1を備え、ICチップTも面状の導電パッドをなす第2接合面P2を備える。また、基板BとICチップTとは、それぞれ厚みが一定である。電子部品Wにおいて、基板Bの第1接合面P1とICチップTの第2接合面P2とが対面しており、半田Sが基板Bの第1接合面P1とICチップTの第2接合面P2との間に介在することにより、第1接合面P1と第2接合面P2とが電気的に接続している。なお、第2接合面の方が第1接合面P1よりも面積が小さい。
【0018】
本実施形態の半田Sは、第1接合面P1と第2接合面P2との間に半田シートを挟んだ状態で電子部品Wをリフロー処理することにより形成される。ICチップTは、基板Bと比較して剛性が小さく、リフロー処理における溶融半田の表面張力等によって非線形に変形している。また、半田Sには空隙である欠陥Dが含まれる。なお、本実施形態の電子部品Wは、いわゆるパワーデバイスであり、半田Sには大電流が供給される。以上説明した電子部品Wに対してX線(破線矢印で図示。)が照射され、当該電子部品WをX線が透過する。電子部品Wに対するX線の透過方向は、第1接合面P1と半田Sと第2接合面P2との積層方向であり、第1接合面P1の面方向の各位置においてX線が透過する。なお、第1接合面P1の面方向の位置は、X軸方向の位置xと、当該X軸方向に直交するY軸方向の位置yとによって規定される。また、X線検出器12の検出面12aは、第1接合面P1に対して平行である。以下、特に示さない限り、位置と表記した場合には、検出面12aと第1接合面P1に平行な面方向における位置を示すこととする。
【0019】
次に制御部20について説明する。制御部20は、X線制御部21と透過量画像取得部22とCPU23と入力部24と出力部25とメモリ26とを備えている。メモリ26はデータを記憶可能な記憶媒体であり、プログラムデータ26aと透過量画像データ26bとが記憶可能である。CPU23は、プログラムデータ26aを読み出して実行することにより、後述する各種処理のための演算を実行する。なお、メモリ26はデータを記憶することができればよく、RAMやEEPROM,HDD等種々の記憶媒体を採用可能である。
【0020】
X線制御部21は、X線発生器11を制御し、X線発生器11から電子部品Wに対してX線を照射させる。透過量画像取得部22は、X線検出器12が検出したX線の強度、すなわち透過量の画像を示す透過量画像データ26bを取得する。透過量画像データ26bは各位置に対応する複数の画素によって構成される画像データであり、各画素はX線検出器12が検出したX線の透過量を示す。また、透過量画像データ26bの各画素は、各位置に対応するということができる。透過量画像取得部22は、X線検出器12から透過量画像データ26bを取得し、メモリ26に記憶する。出力部25は電子部品Wの検査結果等を表示するディスプレイであり、入力部24は利用者の入力を受け付ける操作入力機器である。
【0021】
CPU23は、電子部品Wの良否判定を行うために、プログラムデータ26aに基づいて透過量取得部23aと基準厚み取得部23bと欠陥深さ取得部23cと判定部23dの各機能を実行させる。
透過量取得部23aは、透過量画像データ26bに基づいて電子部品Wを透過したX線の透過量を取得する機能をCPU23に実行させるモジュールである。すなわち、透過量取得部23aの機能によりCPU23は、メモリ26から透過量画像データ26bを読み出し、透過量画像データ26bの各画素が示す透過量を取得する
【0022】
基準厚み取得部23bは、透過量に基づいて積層方向における第1接合面と第2接合面との距離に対応する基準厚みを取得する機能をCPU23に実行させるモジュールである。すなわち、基準厚み取得部23bの機能によりCPU23は、各位置についての透過量をそれぞれ所定の変換式により変換することにより、半田Sの厚みである半田厚みに変換する。そして、基準厚み取得部23bの機能によりCPU23は、各位置についての半田厚みを平滑化することにより、各位置についての基準厚みを取得する。すなわち、欠陥Dは局所的に存在するため、各位置の半田厚みを面方向に関して平滑化することにより、半田Sに欠陥Dがない場合の基準厚みを取得することができる。基準厚みは、欠陥Dがないと仮定した場合の半田Sの理想的な厚みを意味し、積層方向における第1接合面P1と第2接合面P2との距離に対応する。
【0023】
欠陥深さ取得部23cは、透過量と基準厚みとに基づいて半田Sに存在する欠陥Dの厚みを示す欠陥深さを取得する機能をCPU23に実行させるモジュールである。すなわち、欠陥深さ取得部23cの機能によりCPU23は、欠陥Dがないとした場合の半田Sの厚みである基準厚みから、現実の半田Sの厚みである半田厚みを減算することにより、各位置について欠陥Dの厚みを示す欠陥深さを取得する。
【0024】
判定部23dは、欠陥深さの基準厚みに対する相対比に基づいて半田Sの良否判定を行う機能をCPU23に実行させるモジュールである。すなわち、判定部23dの機能によりCPU23は、各位置について、欠陥Dの厚みを基準厚みで除算した相対比を取得する。そして、判定部23dの機能によりCPU23は、相対比が第1閾値(本実施形態では、30%とする。)よりも大きい画素の個数を、半田S全体の像に対応する画素の個数で除算することにより、占有面積比を算出する。そして、当該占有面積比が所定の第2閾値(本実施形態では、30%とする。)より大きい場合には、電子部品Wの半田Sが不良であると判定する。
【0025】
なお、本実施形態において、第1閾値を30%と設定する理由は、相対比が30%よりも大きい場合には、第1接合面P1と第2接合面P2のいずれかに対する不濡れが発生することが定性的に確認され、結果的に第1接合面P1と第2接合面P2との少なくとも一方の表面上に欠陥Dが生じる確率が高くなるといった実験結果に基づくものである。
また、第2閾値を30%と設定する理由は、抵抗値の増大による熱的ストレス増加から生じる信頼性の低下に対し安全率を配慮したことによる。
【0026】
以上の構成において、相対比が第1閾値よりも大きい場合、第1接合面P1と第2接合面P2との少なくとも一方の表面上に欠陥Dが存在する確率が所定確率よりも大きいと判断できる。従って、欠陥Dによって第1接合面P1と第2接合面P2に対する接合面積が減少することにより電気抵抗が大きくなった半田Sを不良であると判定することができる。第1接合面P1と第2接合面P2に対する接合面積が減少すると第1接合面P1と第2接合面P2との間における半田Sの電気抵抗が顕著に増大するため、電気抵抗が大きい半田Sを不良として判定することができる。すなわち、電気抵抗に即した半田Sの良否判定を行うことができる。
【0027】
また、欠陥D厚みの基準厚みに対する相対比を閾値判定するため、第1接合面P1と第2接合面P2との距離に対応する基準厚みの不均一さは問題とならない。すなわち、図2に示すように第2接合面P2が非線形に変形した場合であっても、基準厚みの不均一さに影響されることなく相対比に基づいて良否判定を行うことができる。従って、ICチップTのように剛性の低い電子部品を接合する半田Sや表面張力の大きい半田Sについても、正確に良否判定することができる。
【0028】
(2)X線半田検査処理:
図3は、X線半田検査処理を示すフローチャートである。ステップS100において、X線撮像機構部10は、電子部品WとX線発生器11とを位置決めする。ここでは、半田Sの全域(第2接合面P2の全域)を透過したX線がX線検出器12の検出面12aにて検出できるように電子部品WとX線発生器11とを位置決めする。ステップS110において、X線制御部21は、X線発生器11を制御し、X線発生器11から電子部品Wに対してX線を照射させる。さらに、透過量画像取得部22は、X線検出器12が検出した透過量の画像を示す透過量画像データ26bを取得する。
【0029】
ステップS120において、基準厚み取得部23bの機能によりCPU23は、各位置についての透過量を半田厚みに変換する。ここではまず、基準厚み取得部23bの機能によりCPU23は、基板BとICチップTの影響を除去し、半田Sを透過したX線の透過量を取得する。半田Sを透過したX線の透過量が取得できると、基準厚み取得部23bの機能によりCPU23は、透過量を半田Sの厚みを示す半田厚みに変換する。すなわち、透過量画像データ26bが、各画素が半田厚みを示す画像データに変換される。X線は透過した物体の厚みが大きいほど透過量が小さくなるため、透過量に基づいて一意に半田厚みを特定することができる。
【0030】
図4Aは、図2に示した電子部品Wについての半田厚みを示している。同図において、任意の位置における半田厚みが実線で示されている。半田厚みは、基本的にICチップTが変形した形状に追従した分布を示すが、欠陥Dが存在する位置においては局所的に半田厚みが小さくなっている。すなわち、欠陥Dに起因した半田厚みの減少は、ICチップT全体の湾曲形状に対して高周波成分となる。
【0031】
ステップS130において、基準厚み取得部23bの機能によりCPU23は、各位置についての半田厚みを平滑化することにより、各位置についての基準厚みを取得する。すなわち、透過量画像データ26bが、各画素が基準厚みを示す画像データに変換される。図4Aの破線は平滑化された半田厚みを示し、図4Bは基準厚みの分布を示している。例えば、膨張・収縮処理やローパスフィルタ処理を行ってもよいし、半田厚みに対する平均二乗誤差が最も小さくなる近似曲面が示す各位置の厚みを基準厚みとしてもよい。
【0032】
ステップS140において、欠陥深さ取得部23cの機能によりCPU23は、欠陥Dがないとした場合の半田Sの厚みである基準厚みから、現実の半田Sの厚みである半田厚みを減算することにより、各位置について欠陥Dの深さを示す欠陥深さを取得する。すなわち、透過量画像データ26bが、各画素が欠陥深さを示す画像データに変換される。図4Cは、各位置における欠陥深さの分布を示している。
【0033】
次に、ステップS150において、判定部23dの機能によりCPU23は、各位置について、欠陥の深さを基準厚みで除算した相対比を取得する。すなわち、透過量画像データ26bが、各画素が相対比を示す画像データに変換される。図4Dは、各位置における相対比の分布を示している。ここで、図4Cにおいて中央の欠陥Dの方が右側の欠陥Dよりも欠陥深さが大きいが、図4Dにおいて中央の欠陥Dの方が右側の欠陥Dよりも相対比が小さくなっている。中央の欠陥Dが存在する位置の方が右側の欠陥Dが存在する位置よりも基準厚みが大きいからである。また、中央の欠陥Dは半田Sに内包され半田Sの電気抵抗に大きく影響を与えないが、右側の欠陥Dは第1接合面P1と第2接合面とに対する半田Sの接合面積を減少させており半田Sの電気抵抗を大きくさせている。このように、相対比は、欠陥深さが小さくても、半田Sの電気抵抗を大きくさせる欠陥Dに対して大きい値をとる。
【0034】
ステップS160において、判定部23dの機能によりCPU23は、相対比が第1閾値(30%)よりも大きい画素の占有面積比が第2閾値(30%)よりも大きいか否かを判定する。そして、相対比が第1閾値(30%)よりも大きい画素の占有面積比が第2閾値(30%)よりも大きい場合には、ステップS170において、判定部23dの機能によりCPU23は、電子部品Wの半田Sが不良であると判定する。一方、相対比が第1閾値(30%)よりも大きい画素の占有面積比が第2閾値(30%)以下の場合、ステップS180において、判定部23dの機能によりCPU23は、電子部品Wの半田Sが良品であると判定する。
【0035】
前記実施形態では、相対比をそのまま第1閾値と閾値判定することとしたが、相対比を非線形変換した値を閾値判定してもよい。例えば、第1接合面P1と第2接合面P2との少なくとも一方の表面上に欠陥Dが存在する確率と、相対比との相関関係に基づいて、相対比を第1接合面P1と第2接合面P2との少なくとも一方の表面上に欠陥Dが存在する確率に変換する非線形関数を作成してもよい。当該非線形関数によって変換した相対比によれば第1接合面P1と第2接合面P2との少なくとも一方の表面上に欠陥Dが存在する確率を正確に得ることができる。さらに、当該非線形関数によって変換した相対比に基づいて欠陥率を算出することにより、半田S全体の抵抗値に即した良否判定をより正確に行うことができる。
【符号の説明】
【0036】
10…X線撮像機構部、11…X線発生器、12…X線検出器、12a…検出面、20…制御部、21…X線制御部、22…透過量画像取得部、23…CPU、23a…透過量取得部、23b…基準厚み取得部、23c…欠陥深さ取得部、23d…判定部、24…入力部、25…出力部、26…メモリ、26a…プログラムデータ、26b…透過量画像データ、B…基板、D…欠陥、P1…第1接合面、P2…第2接合面、S…半田、T…ICチップ、W…電子部品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1接合面と第2接合面とを積層方向に接合する半田を当該積層方向に透過した放射線の透過量を取得する透過量取得手段と、
前記積層方向における前記第1接合面と前記第2接合面との距離に対応する基準厚みを取得する基準厚み取得手段と、
前記透過量と前記基準厚みとに基づいて前記半田に存在する欠陥の深さに対応する欠陥深さを取得する欠陥深さ取得手段と、
前記欠陥深さの前記基準厚みに対する相対比に基づいて前記半田の良否判定を行う判定手段と、
を備える放射線検査装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記第1接合面の面方向において前記相対比が所定の第1閾値よりも大きい位置が占める占有面積が所定の第2閾値よりも大きい場合に、前記半田を不良と判定する、
請求項1に記載の放射線検査装置。
【請求項3】
第1接合面と第2接合面とを積層方向に接合する半田を当該積層方向に透過した放射線の透過量を取得する透過量取得工程と、
前記積層方向における前記第1接合面と前記第2接合面との距離に対応する基準厚みを取得する基準厚み取得工程と、
前記透過量と前記基準厚みとに基づいて前記半田に存在する欠陥の深さに対応する欠陥深さを取得する欠陥深さ取得工程と、
前記欠陥深さの前記基準厚みに対する相対比に基づいて前記半田の良否判定を行う判定工程と、
を含む放射線検査方法。
【請求項4】
第1接合面と第2接合面とを積層方向に接合する半田を当該積層方向に透過した放射線の透過量を取得する透過量取得機能と、
前記積層方向における前記第1接合面と前記第2接合面との距離に対応する基準厚みを取得する基準厚み取得機能と、
前記透過量と前記基準厚みとに基づいて前記半田に存在する欠陥の深さに対応する欠陥深さを取得する欠陥深さ取得機能と、
前記欠陥深さの前記基準厚みに対する相対比に基づいて前記半田の良否判定を行う判定機能と、
をコンピュータに実行させる放射線検査プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−214995(P2011−214995A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83285(P2010−83285)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000243881)名古屋電機工業株式会社 (107)
【Fターム(参考)】