放射線治療システム
【課題】人体の呼吸により腫瘍等の治療対象部分の位置が周期的に変化するにもかかわらず、この周期的に往復移動を行う治療対象部分に対して治療用放射線ビームを精度良く照射させることができる放射線治療システムを提供する。
【解決手段】放射線治療システムは、人体内撮像装置13,17と治療用放射線ビーム照射装置7とを備えている。人体1内の腫瘍等の治療対象部分3の治療を行う際に、人体内撮像装置13,17によって人体1の内部の透視画像25を経時的に生成する。この経時的に生成される透視画像25の画像情報が、予め生成された特定の呼吸位相における基準透視画像の画像情報と略一致したときに、治療用放射線ビーム照射装置7によって人体1内の治療対象部分3に対して治療用放射線ビーム9を照射する。
【解決手段】放射線治療システムは、人体内撮像装置13,17と治療用放射線ビーム照射装置7とを備えている。人体1内の腫瘍等の治療対象部分3の治療を行う際に、人体内撮像装置13,17によって人体1の内部の透視画像25を経時的に生成する。この経時的に生成される透視画像25の画像情報が、予め生成された特定の呼吸位相における基準透視画像の画像情報と略一致したときに、治療用放射線ビーム照射装置7によって人体1内の治療対象部分3に対して治療用放射線ビーム9を照射する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体内の治療対象部分に対して放射線ビームを照射することにより当該治療対象部分の治療を行う放射線治療システムに関し、とりわけ、人体の呼吸により周期的に往復移動を行う治療対象部分に対して治療用放射線ビームを精度良く照射させることができる放射線治療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、人体内の治療対象部分、具体的には例えば腫瘍に対して放射線ビームを照射することにより当該腫瘍の治療を行う放射線治療システムについて、様々な種類のものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。このような腫瘍は、人体の呼吸に伴ってその位置が周期的に変動することが多い。例えば、肺腫瘍に関しては、人体の呼吸に伴う位置の変動幅が2〜3cmを超える場合がある。このため、腫瘍に対して放射線ビームを照射することにより治療を行う場合は、人体の呼吸に伴う腫瘍位置の変動を考慮する必要がある。
【0003】
【特許文献1】特開2006−51064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような人体の呼吸に伴う腫瘍の位置の周期的な変動に係る問題に対応するため、人体の呼吸を一時的に止めてその間に放射線ビームを腫瘍に照射したり、あるいは呼吸に伴う人体の皮膚表面の変動を検出してこの皮膚表面の変動に応じて放射線ビームの照射位置を変動させる呼吸同期照射法を行ったりすることが知られている。ここで、上述のような呼吸同期照射法に必要な呼吸位相検出手段として、従来は歪みゲージを人体の皮膚表面に貼着し、呼吸による人体の皮膚表面の変動を当該歪みゲージによって圧力変化として検出し、この圧力変化から呼吸位相を検出するものが採用されていた。
【0005】
しかしながら、人体の呼吸を一時的に止めてその間に放射線ビームを腫瘍に照射する方法では、患者の個人差により腫瘍位置が安定的に静止しないおそれがある。また、呼吸同期照射法において歪みゲージを用いる場合には、人体の皮膚表面への歪みゲージの貼着状態によってこの皮膚表面の位置変動に対応する圧力の検出特性が変化するため、安定的な呼吸位相の検出が困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、人体の呼吸により腫瘍等の治療対象部分の位置が周期的に変化するにもかかわらず、この周期的に往復移動を行う治療対象部分に対して治療用放射線ビームを精度良く照射させることができる放射線治療システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、人体内の腫瘍等の治療対象部分に対して放射線ビームを照射することにより当該治療対象部分の治療を行う放射線治療システムであって、人体に撮像用放射線ビームを照射することにより当該人体の内部の透視画像を生成する人体内撮像装置と、人体に治療用放射線ビームを照射する治療用放射線ビーム照射装置と、前記人体内撮像装置および前記治療用放射線ビーム照射装置を制御する制御装置であって、前記人体内撮像装置によって人体の内部の透視画像を経時的に生成させ、この経時的に生成される透視画像の画像情報が、予め生成された特定の呼吸位相における基準透視画像の画像情報と略一致したときに、治療用放射線ビーム照射装置によって人体内の治療対象部分に対して治療用放射線ビームを照射させるような制御を行う制御装置と、を備えたことを特徴とする放射線治療システムである。
【0008】
上述の放射線治療システムによれば、人体の呼吸により腫瘍等の治療対象部分の位置が周期的に変化するにもかかわらず、特定の呼吸位相においてのみ治療対象部分に治療用放射線ビームを照射しているので、治療用放射線ビームの照射時における治療対象部分の位置は略同一となり、周期的に往復移動を行う治療対象部分に対して治療用放射線ビームを精度良く照射させることができるようになる。
【0009】
このような放射線治療システムにおいては、前記制御装置における予め生成された基準透視画像の特定の呼吸位相は呼期または吸期のピーク時であることが好ましい。ここで、特定の呼吸位相を呼期または吸期のピーク時とした場合には、これらの呼期または吸期のピーク時では治療対象部分が一時的に停止するので、治療対象部分に対する治療用放射線ビームの照射をより精度良く行うことができるようになる。
【0010】
このような放射線治療システムにおいては、前記人体内撮像装置は、前記治療対象部分および当該治療対象部分よりも大きく人体の呼吸に連動する体内基準部分をそれぞれ含むような透視画像を生成するようになっており、前記制御装置は、経時的に生成される透視画像における体内基準部分が、基準透視画像における体内基準部分と略一致したときに、治療用放射線ビーム照射装置によって人体内の治療対象部分に対して治療用放射線ビームを照射させるような制御を行うようになっていることが好ましい。なお、前記体内基準部分は人体内の横隔膜であることが更に好ましい。このように、一般的に横隔膜等の体内基準部分は腫瘍等の治療対象部分よりも大きなものが用いられるので、透視画像において体内基準部分は治療対象部分よりも明瞭に描写されている。このため、透視画像において治療対象部分自体の位置を画像情報として用いるよりも体内基準部分の位置を画像情報として用いることにより、より正確に、経時的に生成される透視画像の画像情報と特定の呼吸位相における基準透視画像の画像情報との比較を行うことができるようになる。
【0011】
このような放射線治療システムにおいては、前記制御装置は、人体の治療前において特定の呼吸位相における人体の内部の第1CT画像が予め入力されており、前記人体内撮像装置によって人体に対する撮像用放射線ビームの照射方向を変えながら人体の内部の透視画像を複数生成し、これらの複数の透視画像に基づいて様々な呼吸位相における複数の第2CT画像を生成し、これらの複数の第2CT画像から前記第1CT画像に最も近似するような一の第2CT画像を選択し、当該一の第2CT画像に対応する呼吸位相に係る透視画像を基準透視画像に設定するようになっていることが好ましい。ここで、基準透視画像の前記設定を行う際に、投影再構成法によって同一の呼吸位相時における複数の透視画像から第2CT画像を生成するようになっていることが更に好ましい。また、人体を載置するための載置台が更に設けられており、この載置台は前記制御装置によりその位置が予め一定の箇所に設定されるようになっており、前記制御装置は、基準透視画像の前記設定を行う際に、複数の第2CT画像のうち前記第1CT画像に最も近似するような一の第2CT画像と前記第1CT画像との位置ずれ量に基づいて前記載置台の位置を予め設定するようになっていることが好ましい。
【0012】
本発明の第2の態様は、人体内の腫瘍等の治療対象部分に対して放射線ビームを照射することにより当該治療対象部分の治療を行う放射線治療システムであって、人体に撮像用放射線ビームを照射することにより当該人体の内部の透視画像を生成する人体内撮像装置と、人体に治療用放射線ビームを照射する治療用放射線ビーム照射装置であって、当該治療用放射線ビームの照射位置を変動させることができるような治療用放射線ビーム照射装置と、前記人体内撮像装置および前記治療用放射線ビーム照射装置を制御する制御装置であって、前記人体内撮像装置によって人体の内部の透視画像を経時的に生成させ、この経時的に生成される透視画像の画像情報と、予め生成された各呼吸位相における基準透視画像の画像情報とに基づいて、治療用放射線ビーム照射装置から照射される治療用放射線ビームの照射位置を人体内の治療対象部分に追従させるようこの照射位置を経時的に変動させるような制御を行う制御装置と、を備えたことを特徴とする放射線治療システムである。
【0013】
上述の放射線治療システムによれば、人体の呼吸により腫瘍等の治療対象部分の位置が周期的に変化するにもかかわらず、この治療対象部分の位置の変動に対応して治療用放射線ビームの照射位置を変動させることにより常に治療対象部分に治療用放射線ビームが当たるようにしているので、周期的に往復移動を行う治療対象部分に対して治療用放射線ビームを精度良く照射させることができるようになる。
【0014】
このような放射線治療システムにおいては、前記治療用放射線ビーム照射装置はコリメータを有し、当該コリメータが治療用放射線ビームの照射位置を変動させるようになっていることが好ましい。とりわけ、前記コリメータはマルチリーフコリメータであることが好ましい。
【0015】
このような放射線治療システムにおいては、前記制御装置は、人体の治療前において様々な呼吸位相における人体の内部の複数の第1CT画像が予め入力されており、前記人体内撮像装置によって人体に対する撮像用放射線ビームの照射方向を変えながら人体の内部の透視画像を複数生成し、これらの複数の透視画像に基づいて様々な呼吸位相における複数の第2CT画像を生成し、これらの複数の第2CT画像と前記複数の第1CT画像とを比較して各第1CT画像について最も近似する第2CT画像に係る透視画像を関連づけさせて基準透視画像とし、前記治療用放射線ビーム照射装置によって人体に治療用放射線ビームを照射する際に、前記人体内撮像装置により得られる人体の内部の透視画像に係る画像情報と、前記複数の第1CT画像にそれぞれ関連する各基準透視画像の画像情報とを比較して、最も近似する画像情報に係る第1CT画像に基づいて、治療用放射線ビーム照射装置から照射される治療用放射線ビームの照射位置を経時的に変動させるような制御を行うようになっていることが好ましい。また、人体を載置するための載置台が更に設けられており、この載置台は前記制御装置によりその位置が予め一定の箇所に設定されるようになっており、前記制御装置は、前記治療用放射線ビーム照射装置によって人体に治療用放射線ビームを照射する前に、前記人体内撮像装置によって得られる複数の第2CT画像のうち一の第2CT画像について最も近似するような第1CT画像と当該一の第2CT画像との位置ずれ量に基づいて前記載置台の位置を予め設定するようになっていることが更に好ましい。
【0016】
本発明の第3の態様は、人体内の腫瘍等の治療対象部分に対して放射線ビームを照射することにより当該治療対象部分の治療を行う放射線治療システムであって、人体を載置するための寝台等の載置台と、載置台に載置された人体に撮像用放射線ビームを照射することにより当該人体の内部の透視画像を生成する人体内撮像装置と、載置台に載置された人体に治療用放射線ビームを照射する治療用放射線ビーム照射装置と、前記載置台、前記人体内撮像装置および前記治療用放射線ビーム照射装置を制御する制御装置であって、前記人体内撮像装置によって人体の内部の透視画像を経時的に生成させ、この経時的に生成される透視画像の画像情報と、人体の治療前において予め生成された各呼吸位相における基準透視画像の画像情報とに基づいて、治療用放射線ビーム照射装置から照射される治療用放射線ビームが人体内の治療対象部分を常に照射するよう前記載置台を経時的に移動させるような制御を行う制御装置と、を備えたことを特徴とする放射線治療システムである。
【0017】
上述の放射線治療システムによれば、人体の呼吸により腫瘍等の治療対象部分の位置が周期的に変化するにもかかわらず、この治療対象部分の位置の変動に対応して寝台等の載置台を移動させることにより常に治療対象部分に治療用放射線ビームが当たるようにしているので、周期的に往復移動を行う治療対象部分に対して治療用放射線ビームを精度良く照射させることができるようになる。
【0018】
このような放射線治療システムにおいては、前記制御装置は、人体の治療前において様々な呼吸位相における人体の内部の複数の第1CT画像および各第1CT画像に対応する治療対象部分の座標が予め入力されており、前記人体内撮像装置によって人体に対する撮像用放射線ビームの照射方向を変えながら人体の内部の透視画像を複数生成し、これらの複数の透視画像に基づいて様々な呼吸位相における複数の第2CT画像を生成し、これらの複数の第2CT画像と前記複数の第1CT画像とを比較して各第1CT画像について最も近似する第2CT画像に係る透視画像を関連づけさせて基準透視画像とし、前記治療用放射線ビーム照射装置によって人体に治療用放射線ビームを照射する際に、前記人体内撮像装置により得られる人体の内部の透視画像に係る画像情報と、前記複数の第1CT画像にそれぞれ関連する各基準透視画像の画像情報とを比較して、最も近似する画像情報に係る第1CT画像に対応する治療対象部分の座標に基づいて、前記載置台を経時的に変動させるようになっていることが好ましい。また、前記制御装置は、前記治療用放射線ビーム照射装置によって人体に治療用放射線ビームを照射する前に、人体内撮像装置によって得られる複数の第2CT画像のうち一の第2CT画像について最も近似するような第1CT画像と当該一の第2CT画像との位置ずれ量に基づいて前記載置台の初期位置を設定するようになっていることが特に好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の放射線治療システムによれば、人体の呼吸により腫瘍等の治療対象部分の位置が周期的に変化するにもかかわらず、この周期的に往復移動を行う治療対象部分に対して治療用放射線ビームを精度良く照射させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の一の実施の形態について説明する。図1乃至図6は、本発明による放射線治療システムの一の実施の形態を示す図である。
このうち、図1は、本発明の一の実施の形態における放射線治療システムの構成を示す概略斜視図であり、図2は、図1に示す放射線治療システムの概略構成図であり、図3は、図1、図2に示す放射線治療システムの制御装置における制御内容を示すブロック図である。また、図4は、図1、図2に示す放射線治療システムの人体内撮像装置により得られる人体の内部の透視画像であり、図5は、図4に示す透視画像における横隔膜の位置変動を示す図であり、図6は、図5に示す横隔膜の位置変動から求められる呼吸位相を示す図である。
【0021】
本実施の形態による放射線治療システムは、人体1の内部の治療対象部分、具体的には例えば肺腫瘍等の腫瘍3に対して放射線ビームを照射することにより、この腫瘍3の治療を行うものである。図1および図2、とりわけ図2に示すように、放射線治療システムは、人体1に撮像用放射線ビーム15を照射する撮像用放射線ビーム照射器13と、撮像用放射線ビーム照射器13から照射され人体を透過した撮像用放射線ビーム15を受容し、この受容した撮像用放射線ビーム15から透視画像25(図4参照)を生成するような撮像用放射線ビーム検出器17と、人体1に治療用放射線ビーム9を照射する治療用放射線ビーム照射器7とを備えている。また、撮像用放射線ビーム照射器13や治療用放射線ビーム照射器7等の制御を行うための制御装置11が放射線治療システムに設置されている。ここで、撮像用放射線ビーム照射器13および撮像用放射線ビーム検出器17により、人体1内の撮像を行うための人体内撮像装置が構成されている。
【0022】
このような放射線治療システムの各構成要素について、図1乃至図6を用いて以下に詳述する。
【0023】
治療用放射線ビーム照射器7は、前述のように人体1内の腫瘍3に対して治療用放射線ビーム9を照射するものである。ここで、治療用放射線ビーム9としては、例えばエネルギーが4MV〜10MV(1MVは百万ボルトである。)の範囲内にあるX線ビームが使用される。とりわけ、治療用放射線ビーム照射器7は、内部に設けられた電子加速部により電子を加速し、この加速された高エネルギーの電子を金属ターゲットに衝突させることにより高エネルギーX線ビームを発生させ、この高エネルギーX線ビームを治療用放射線ビーム9として人体1に照射することが好ましい。
【0024】
撮像用放射線ビーム照射器13は、人体1に対して撮像用放射線ビーム15を照射するものである。具体的には、撮像用放射線ビーム照射器13は、照射範囲に人体1内の腫瘍3を含むとともに、腫瘍3よりも大きく人体の呼吸に連動するような体内基準部分、具体的には例えば横隔膜5をも含むよう撮像用放射線ビーム15の照射を行う。ここで、撮像用放射線ビーム照射器13は、内部に設けられたX線管により、100kV程度の電圧で電子を加速し、この加速された電子を金属ターゲットに衝突させることによりX線ビームを発生させ、このX線ビームを撮像用放射線ビーム15として人体1に照射することが好ましい。
【0025】
撮像用放射線ビーム検出器17は、撮像用放射線ビーム照射器13から照射され人体を透過した撮像用放射線ビーム15を受容するものであり、例えばアモルファスシリコンを有するフラットパネル型の半導体2次元アレイ検出器からなる。また、撮像用放射線ビーム検出器17は、受容した撮像用放射線ビーム15から図4に示すような透視画像25を生成するようになっている。この透視画像25には、人体1内の横隔膜5が明瞭に撮像されている。
【0026】
ここで、撮像用放射線ビーム照射器13および撮像用放射線ビーム検出器17により得られる透視画像25について更に詳しく説明する。図4に示すように、撮像用放射線ビーム検出器17により検出される透視画像25は、人体1の胸部を含む広範囲のものであり、このままでは後述する制御装置11において当該透視画像25に関する様々な演算を行うのに適していない。このため、透視画像25のうち横隔膜5を含む部分を枠27(図4の透視画像25において白抜き部分で表示)により切り取り、この枠27内の横隔膜の境界領域を制御装置11における演算に利用する。具体的には、透視画像25の枠27内の横隔膜5の画像について、図4に示すようなグレースケールを2値化処理によって図5に示すような白黒パターンの境界線29に書き換える。図5は、吸期から呼期までの様々な呼吸位相における横隔膜5の境界線29を示している。図5における複数の境界線29のうち、最も上側にある境界線29は呼期のピーク時のものであり、最も下側にある境界線29は吸期のピーク時のものである。
【0027】
図6は、図5における複数の境界線29について図5のグラフの横軸の値を固定したときの境界線29の縦軸の座標を経時的に(すなわち、時間が経過したときの各時刻における座標のプロットとして)示すものである。図6により、人体1における横隔膜5の周期的な往復移動状態を観察することができる。なお、図6において、参照符号31で示す部分は呼期のピーク時に対応している。
【0028】
図1に示すように、治療用放射線ビーム照射器7、撮像用放射線ビーム照射器13および撮像用放射線ビーム検出器17は、いわゆるドーナツ型の回転ガントリ機構35に接続されている。また、人体1は、治療を行う際に回転ガントリ機構35の中心軸に沿って位置されるようになっており、回転ガントリ機構35は、このような位置に配置された人体1を中心として図1の矢印方向に回転するようになっている。ここで、治療用放射線ビーム照射器7から照射される治療用放射線ビーム9と、撮像用放射線ビーム照射器13から照射される撮像用放射線ビーム15とがほぼ垂直となるよう、回転ガントリ機構35に対する治療用放射線ビーム照射器7および撮像用放射線ビーム照射器13の取り付け位置が設定されている(すなわち、回転ガントリ機構35の中心軸に対する治療用放射線ビーム照射器7および撮像用放射線ビーム照射器13の位相差は約90°となっている)。また、撮像用放射線ビーム検出器17は、回転ガントリ機構35の中心軸に対して撮像用放射線ビーム照射器13の反対側となるよう回転ガントリ機構35に対する取り付け位置が設定されている。
【0029】
ここで、図1に示すように、回転ガントリ機構35の近傍には人体1を載置するための移動可能な寝台39が設けられている。ここで、人体1の治療を行う際には、人体1を載置した寝台39を前もって移動させることによりこの人体1を回転ガントリ機構35の中心軸に沿って位置させるようになっている。また、回転ガントリ機構35の近傍には、各種治療パラメータを表示するための表示装置37が設けられている。この表示装置37は、制御装置11(後述)から送信された様々な治療パラメータを表示するようになっている。
【0030】
さらに、放射線治療システムには制御装置11が設けられている。この制御装置11は、ケーブル19、23、21を介して治療用放射線ビーム照射器7、撮像用放射線ビーム照射器13および撮像用放射線ビーム検出器17にそれぞれ通信接続されている。図3に、制御装置11による制御内容が示されている。制御装置11の制御内容について大まかに説明すると、当該制御装置11は、撮像用放射線ビーム検出器17により生成された人体の内部の透視画像25が経時的に送られるようになっており、この経時的に送られる透視画像25の画像情報が、予め生成された特定の呼吸位相(例えば吸期または呼期のピーク時)における基準透視画像の画像情報と略一致したときに、治療用放射線ビーム照射器7によって人体1内の腫瘍3に対して治療用放射線ビーム9を照射させ、撮像用放射線ビーム検出器17から得られる透視画像25の画像情報が基準透視画像の画像情報と略一致しないときには治療用放射線ビーム照射器7に対して治療用放射線ビーム9を照射させないようになっている。この制御装置11における制御内容の詳細については後述する。
【0031】
次に、このような構成からなる放射線治療システムの動作について以下に説明する。あわせて、制御装置11による撮像用放射線ビーム照射器13や治療用放射線ビーム照射器7等の制御内容についても説明する。
【0032】
まず、人体1の治療工程を行う前に、図3のStep1に示すように治療計画を作成する。具体的には、図1、2に示すような放射線治療システムとは別のCTシステムにより、人体1の内部のCT画像(以下、第1CT画像という。)を生成する。ここで、肺腫瘍のような、呼吸と連動して往復移動を行う腫瘍3に対して放射線治療を行う場合は、呼吸位相の変化により腫瘍3の位置が2,3cm異なることとなる。このため、治療計画を作成する際に、この呼吸位相により腫瘍3の位置が異なることを考慮に入れる必要がある。本実施の形態においては、胸腹部等の体表に設けられた変位センサを用いて、第1CT画像を生成する際に呼吸位相も検出するようになっている。ここで、呼期または吸期のピーク時、とりわけ呼期のピーク時においては、腫瘍3の往復移動が停止する。このため、このような呼期または吸期のピーク時においては、実際の治療における腫瘍3に対する治療用放射線ビーム9の照射のタイミングが多少ずれた場合であっても、腫瘍3の移動は無視することができ、安全な放射線ビームの照射を行うことができる。
【0033】
図3のStep1に示すような治療計画の作成にあたり、本実施の形態では、特定の呼吸位相、具体的には例えば呼期または吸期のピーク時(とりわけ呼期のピーク時)について第1CT画像を生成するとともに、特定の呼吸位相における治療用放射線ビーム9の、人体1の腫瘍3に対する照射方向および照射線量の計画を予め作成する。ここで、治療用放射線ビーム9の照射線量の計画の作成を行うにあたり、人体1の腫瘍3に対する治療用放射線ビーム9の照射方向によって照射線量が変化することに留意すべきである。具体的には、図12に示すように、治療用放射線ビーム9が人体1の腫瘍3に照射される際に、この治療用放射線ビーム9が腫瘍3に届くまでに当該治療用放射線ビーム9の一部分は人体1内の組織に吸収される(図12の斜線部分参照)。このため、腫瘍3に対する治療用放射線ビーム9の照射方向が異なると、具体的には例えば図12において治療用放射線ビーム照射器7´から腫瘍3に対して治療用放射線ビーム9を照射するようになると、人体1内の組織に吸収される治療用放射線ビーム9の量も異なることとなるので(図12の斜線部分の面積が異なることとなるので)、人体1の腫瘍3に対する治療用放射線ビーム9の照射方向によって照射線量を変化させなければならない。このように、Step1に示すような治療計画の作成工程においては、上記事項も考慮して特定の呼吸位相における治療用放射線ビーム9の、人体1の腫瘍3に対する照射方向および照射線量の計画を予め作成することとなる。
【0034】
なお、Step1において得られる第1CT画像は、CTシステムの構成上、例えば人体1の胸部だけの画像化を行うことが一般的であり、この第1CT画像には呼吸によっても位置が変化しないような臓器は含まれることとなるが、横隔膜5は画像化されない場合が多い。Step1において得られる第1CT画像において、腫瘍3は臓器に対する相対的な位置関係に基づいて、当該第1CT画像における位置が算出されるようになっている。
【0035】
また、放射線治療システムとは別のCTシステムで人体1の内部の第1CT画像を生成する代わりに、図1、図2に示すような放射線治療システムの撮像用放射線ビーム照射器13および撮像用放射線ビーム検出器17により第1CT画像を生成してもよい。
【0036】
次に、図3のStep2に示すように、人体1を寝台39に載置し、この寝台39を移動させることによって人体1を回転ガントリ機構35の中心軸に位置させ、回転ガントリ機構35を図1の矢印方向に回転させながら撮像用放射線ビーム照射器13および撮像用放射線ビーム検出器17により人体1の体内の透視画像25(図4参照)を複数生成する。ここで、Step2において得られる透視画像25は、様々な呼吸位相におけるものとなっている。撮像用放射線ビーム検出器17において得られた複数の透視画像25、具体的には呼吸位相が様々であり、かつ人体1に対する撮像用放射線ビーム15の照射方向が様々となっているような複数の透視画像25が、ケーブル21を介して制御装置11に送られるようになっている。
【0037】
次に、図3のStep3に示すように、制御装置11において、撮像用放射線ビーム検出器17から送られた複数の透視画像25に基づいて複数の第2CT画像が生成される。具体的には、呼吸位相が様々である複数の透視画像25のうち、呼吸位相が略同一であり人体1に対する撮像用放射線ビーム15の照射方向が様々となっている複数の透視画像25から、投影再構成法によって第2CT画像を生成する。このようにして生成される第2CT画像は、特定の呼吸位相のものである。そして、各呼吸位相において、具体的には呼吸位相を10分割したときの10個の各呼吸位相において、上述のような投影再構成法による画像化を繰り返すことにより、各呼吸位相における複数の第2CT画像が得られることとなる。
【0038】
次に、図3のStep4に示すように、制御装置11において、Step3で得られた各呼吸位相における複数の第2CT画像のうち、Step1で得られた第1CT画像に最も近似するような一の第2CT画像を選択する。この一の第2CT画像は、Step1の治療計画の作成時に設定される特定の呼吸位相、具体的には例えば呼期または吸期のピーク時におけるものとなる。このような特定の呼吸位相における一の第2CT画像を選択することにより、治療計画作成時に計画された放射線治療を実際の治療で再現することができるようになる。しかしながら、この時点では人体1の輪郭と腫瘍3の位置との相対位置の類似度が最も高い第2CT画像を選択したに過ぎないので、寝台39の位置を調整する必要がある。具体的には、治療計画の作成時において第1CT画像上に設定された照射時の回転中心(アイソセンタ)と、Step4で選択された一の第2CT画像の画像中心とを一致させる。次に、第1CT画像と、当該一の第2CT画像とが最も一致するように、一方のCT画像を3軸方向に平行移動させ、あるいは一方のCT画像を3軸の周りに回転させる。このことにより、第2CT画像の画像中心が治療計画時の回転中心に一致するように、寝台39の位置および角度を補正することができる。このようなStep4の工程のことを患者(人体1)の位置決めまたは位置合わせという。
【0039】
次に、Step5に示すように、Step4で選択された一の第2CT画像に対応する呼吸位相に係る透視画像25を、基準透視画像に設定する。ここで、このような基準透視画像は、人体1に対する撮像用放射線ビーム15の照射方向によって複数の様々なものとなるが、回転ガントリ機構35の各ガントリ角についてそれぞれ基準透視画像を生成しておく。なお、このような各ガントリ角に対応する複数の基準透視画像は、Step2において生成され制御装置1に記憶されたものをそのまま用いることができるため、容易に生成することができる。ここで、Step2において回転ガントリ機構35を人体1の周囲で複数回回転させ、複数回の回転分の透視画像25を生成しておくことにより、Step5において特定のガントリ角に対応する基準透視画像が不足してしまうといったトラブルを未然に防止することができる。
【0040】
あるいは、制御装置11において、第2CT画像から基準透視画像を生成することもできる。具体的には、レイトレーシング法によって、撮像用放射線ビーム照射器13のX線管から出射した発散角を有する撮像用放射線ビーム15の軌跡をなぞることによりなぞられた画素のCT値を加算すればよい。
【0041】
また、図3においてはStep4に係る位置合わせ工程の後にStep5に係る基準透視画像の生成工程を行っているが、Step4とStep5とを逆の順番で実行するようになっていてもよい。
【0042】
次に、図3のStep6に示すように、治療用放射線ビーム照射器7による人体1に対する治療用放射線ビーム9の照射を開始する。この際に、撮像用放射線ビーム照射器13から撮像用放射線ビーム15を人体1に当て続けることにより、人体1の内部の透視画像25を経時的に生成する。そして、この経時的に生成される透視画像25の画像情報が、Step5において生成された基準透視画像の画像情報と略一致したときのみに、治療用放射線ビーム照射器7から人体1に治療用放射線ビーム9を照射するようにする。ここで、透視画像の画像情報とは、図4に示すような透視画像25における枠27内の画像、または図5に示すような2値化処理された横隔膜5の境界線29、あるいは図6に示すような図5のグラフにおける横軸の値を一定とした特定の直線上の横隔膜5の境界線29の移動軌跡等のことをいう。また、画像情報の一致度を評価する指標としては、内積演算または相互相関演算を用いる方法が知られており、例えばStep6において経時的に生成される透視画像25の画像情報と、Step5において生成された基準透視画像の画像情報との相関値が0.95以上である場合に両者の画像情報が略一致するとみなすことができるようになっている。このようにして、例えば吸期または呼期のピーク時においてのみ、治療用放射線ビーム照射器7から人体1に治療用放射線ビーム9を照射させることができるようになる。なお、制御装置11においてこのような演算を行うにあたり、処理時間を短縮するためには、相関計算が行われる透視画像の領域を小さくしたり、画像の空間分解能を低下させたりすることが有効である。
【0043】
最後に、Step7に示すように、腫瘍3における治療用放射線ビーム9の吸収線量が、Step1の治療計画において予め定められた設定量に達したか否かが制御装置11によって判定される。腫瘍3における治療用放射線ビーム9の吸収線量が設定量に達していない場合は、Step6に示すような治療用放射線ビーム照射器7による人体1に対する治療用放射線ビーム9の照射が続けられる。一方、腫瘍3における治療用放射線ビーム9の吸収線量が設定量に達した場合は、一連の治療が終了したことが制御装置11によって検出される。
【0044】
以上のように図1乃至図6に示すような本実施の形態の放射線治療システムによれば、人体1内の腫瘍3の治療を行う際に、撮像用放射線ビーム照射器13および撮像用放射線ビーム検出器17によって人体1の内部の透視画像25を経時的に生成させ、この経時的に生成される透視画像25の画像情報が、予め生成された特定の呼吸位相における基準透視画像の画像情報と略一致したときにのみ、治療用放射線ビーム照射器7によって人体1内の腫瘍3に対して治療用放射線ビーム9を照射するようになっている。このことにより、人体1の呼吸により腫瘍3の位置が周期的に変化するにもかかわらず、特定の呼吸位相においてのみ腫瘍3に治療用放射線ビーム9を照射しているので、治療用放射線ビーム9の照射時における腫瘍3の位置は略同一となり、周期的に往復移動を行う腫瘍3に対して治療用放射線ビーム9を精度良く照射させることができるようになる。
【0045】
ここで、特定の呼吸位相を呼期または吸期のピーク時(とりわけ呼期のピーク時)とした場合には、図6等に示すようにこれらの呼期または吸期のピーク時(とりわけ呼期のピーク時31)では腫瘍3が一時的に停止するので、腫瘍3に対する治療用放射線ビーム9の照射をより精度良く行うことができるようになる。
【0046】
また、Step6における経時的な透視画像25の生成において、腫瘍3のみならず人体の呼吸に連動するような横隔膜5等の体内基準部分を含むような透視画像25を生成するようになっている。そして、制御装置11は、Step6において経時的に生成される透視画像25における横隔膜5が、Step5において生成された基準透視画像における横隔膜5と略一致したときに、腫瘍3に対して治療用放射線ビーム9を照射させるようになっている。ここで、一般的に横隔膜5は腫瘍3よりも十分に大きく、透視画像25において横隔膜5は明瞭に描写されている。このため、透視画像25において腫瘍3自体の位置を用いるよりも横隔膜5の位置を画像情報として用いることにより、より正確に、Step6において経時的に生成される透視画像25の画像情報とStep5において生成された特定の呼吸位相における基準透視画像の画像情報との比較を行うことができるようになる。
【0047】
なお、本実施の形態による放射線治療システムは、上記の態様に限定されるものではなく、様々の変更を加えることができる。図7乃至図9は、本発明における放射線治療システムの他の構成を示す概略構成図である。
【0048】
具体的には、図7乃至図9に示すような放射線治療システムは、特定の呼吸位相時においてのみ腫瘍に対して治療用放射線ビームを照射させる代わりに、腫瘍に対して治療用放射線ビームを連続的に照射させ、しかも周期的に移動する腫瘍に対して治療用放射線ビームの照射位置を追従させるようこの照射位置を経時的に変動させる点が異なるのみであり、他は実質的に図1乃至図3に示すような放射線治療システムと同様の構成を有している。
図7乃至図9に示すような放射線治療システムの変形例に係る説明において、図1乃至図3に示すような放射線治療システムと同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0049】
図7に示すような本変形例に係る放射線治療システムにおいては、治療用放射線ビーム照射器7から照射される治療用放射線ビーム9の照射位置を変動させるためのマルチリーフコリメータ33が追加的に設置されている。このマルチリーフコリメータ33は、ケーブル43を介して制御装置11に通信接続されている。当該マルチリーフコリメータ33は、制御装置11からの制御信号に基づいて、治療用放射線ビーム照射器7から照射される治療用放射線ビーム9の照射位置を経時的に変動させることができるようになっている。
【0050】
マルチリーフコリメータ33について図8を用いて具体的に説明する。図8に示すように、マルチリーフコリメータ33は多数のタングステン製の遮蔽板33sを有している。各遮蔽板(リーフともいう。)33sは、図8の上下方向における幅が5mm〜1cmの範囲内の大きさとなっており、図8の奥行き方向における厚さが約8cmとなっている。各遮蔽板33sは、各々モータ(図示せず)によって他の遮蔽板33sから独立して一次元方向、すなわち図8の左右方向に移動することができるようになっている。図8において、マルチリーフコリメータ33が上段のマルチリーフコリメータ33aのような態様となっている場合には、治療用放射線ビーム照射器7から照射される治療用放射線ビーム9を完全に遮断し、人体1に治療用放射線ビーム9が照射されることはない。ここで、左右一対の1組の遮蔽板33sが上段のマルチリーフコリメータ33aにおける矢印方向に(左右に)開いた場合には、中段のマルチリーフコリメータ33bに示すように開口部分(図8の黒塗り部分)が形成され、この開口部分を治療用放射線ビーム9が通過するようになる。さらに、人体1に対する治療用放射線ビーム9の照射位置を変動させる場合は、左右一対の遮蔽板33sが図8の中段のマルチリーフコリメータ33bにおける矢印方向に(共に左に)移動する。このようにして、図8の下段のマルチリーフコリメータ33cに示すように開口部分が移動する。このように、腫瘍3の動きに合わせてマルチリーフコリメータ33の態様が変化することにより、具体的には各遮蔽板33sが適宜移動することにより、人体1に対する治療用放射線ビーム9の照射位置を変動させることができる。ここで、このようなマルチリーフコリメータ33の制御は制御装置11からの制御信号に基づいている。
【0051】
本変形例の放射線治療システムにおける制御装置11の制御内容について大まかに説明すると、当該制御装置11は、撮像用放射線ビーム検出器17により生成された人体の内部の透視画像25が経時的に送られるようになっており、この経時的に送られる透視画像25の画像情報と、予め生成された様々な呼吸位相における基準透視画像とに基づいて、マルチリーフコリメータ33を制御することによって、人体1内の腫瘍3に対して治療用放射線ビーム照射器7から照射される治療用放射線ビーム9の照射位置を追従させるようこの照射位置を経時的に変動させるようになっている。
【0052】
次に、図7および図8に示すような放射線治療システムの動作について以下に説明する。あわせて、図9により、制御装置11による撮像用放射線ビーム照射器13や治療用放射線ビーム照射器7、マルチリーフコリメータ33等の制御内容についても説明する。なお、この制御内容の説明において、図3に示すような制御内容と同一部分については詳細な説明は省略する。
【0053】
まず、人体1の治療工程を行う前に、図9のStep1に示すように治療計画を作成する。具体的には、人体1の内部のCT画像(以下、第1CT画像という。)を生成する。ここで、図3のStep1による治療計画作成工程と異なり、図9のStep1においては様々な呼吸位相における複数の第1CT画像を生成するようになっている。そして、様々な呼吸位相の各々について、治療用放射線ビーム9の、人体1の腫瘍3に対する照射方向および照射線量の計画を予め作成する。ここで、治療用放射線ビーム9の照射線量の計画の作成を行うにあたり、呼吸位相が異なると、人体1の腫瘍3に対する治療用放射線ビーム9の照射方向と照射線量との関係が変化することに留意すべきである。具体的には、図13に示すように、治療用放射線ビーム9が人体1の腫瘍3に照射される際に、人体1の腫瘍3に対する治療用放射線ビーム9の照射方向が同じである場合であっても、呼吸位相によって変化するような腫瘍3の位置によって、この人体1内の組織に吸収される治療用放射線ビーム9の量も異なることとなる(図13の斜線部分参照)。なお、図13は、呼期のピーク時および吸期のピーク時における同方向からの治療用放射線ビーム9の照射を模式的に示す図である。このように、図9のStep1に示すような治療計画の作成工程においては、上記事項も考慮して様々な呼吸位相における治療用放射線ビーム9の、人体1の腫瘍3に対する照射方向および照射線量の計画を各呼吸位相ごとに予め作成することとなる。
【0054】
次に、図9のStep2に示すように、人体1を中心として回転ガントリ機構35を回転させながら撮像用放射線ビーム照射器13および撮像用放射線ビーム検出器17により人体1の体内の透視画像25(図4参照)を複数生成する。ここで、Step2において得られる透視画像25は、様々な呼吸位相におけるものとなっている。
【0055】
次に、図9のStep3に示すように、Step2で生成された複数の透視画像25に基づいて各呼吸位相における複数の第2CT画像が生成される。このような複数の第2CT画像の生成方法は、図3のStep3による方法(具体的には、投影再構成法)と略同一である。
【0056】
次に、図9のStep4に示すように、制御装置11において、Step3で得られた各呼吸位相における複数の第2CT画像のうち一の第2CT画像について、Step1で得られた複数の第1CT画像のうち最も近似するような一の第1CT画像を選択する。そして、このような互いに関連性のある第1CT画像および第2CT画像により、寝台39の位置を調整する。具体的には、治療計画の作成時において一の第1CT画像上に設定された照射時の回転中心(アイソセンタ)と、一の第2CT画像の画像中心とを一致させる。次に、一の第1CT画像と、一の第2CT画像とが最も一致するように、一方のCT画像を3軸方向に平行移動させ、あるいは一方のCT画像を3軸の周りに回転させる。このことにより、第2CT画像の画像中心が治療計画時の回転中心に一致するように、寝台39の位置または角度を補正することができる。このようにして患者(人体1)の位置決め(または位置合わせ)が行われる。
【0057】
次に、図9のStep5に示すように、Step1で生成された複数の第1CT画像と、Step3で生成された複数の第2CT画像について、各々の第1CT画像について最も近似するような第2CT画像を選択し、この第2CT画像に係る透視画像25を関連づけさせる。すなわち、呼期のピーク時から吸期のピーク時にいたる様々な呼吸位相において、第1CT画像と第2CT画像とを関連付けさせ、このことにより、各呼吸位相において第2CT画像を生成する際に用いた様々なガントリ角の透視画像25を、第1CT画像に関連付けさせる。ここで、第1CT画像に関連付けさせられる透視画像25を基準透視画像とする。
【0058】
次に、図9のStep6に示すように、治療用放射線ビーム照射器7による人体1に対する治療用放射線ビーム9の照射を開始する。ここでは、図3のStep6と異なり、人体1に対して治療用放射線ビーム9を途切れることなく連続的に照射させる。この際に、撮像用放射線ビーム照射器13から撮像用放射線ビーム15を人体1に当て続けることにより、人体1の内部の透視画像25を経時的に生成する。そして、この経時的に生成される透視画像25の画像情報と、様々な呼吸位相における複数の第1CT画像に関連する各基準透視画像の画像情報とを比較し、最も近似する基準画像情報に対応する第1CT画像に基づいて、治療用放射線ビーム9の照射位置をマルチリーフコリメータ33により経時的に変動させる。具体的には、様々な呼吸位相において対応する第1CT画像がStep1において設定されているが、Step6において撮像用放射線ビーム検出器17によって生成される透視画像25により、対応する第1CT画像を選択することができるので、この第1CT画像に関する呼吸位相を特定することができる。このことにより、この呼吸位相に対応する腫瘍3の位置を第1CT画像から特定することができるので、この腫瘍3に治療用放射線ビーム9の照射位置を追従させるよう、当該治療用放射線ビーム9の照射位置をマルチリーフコリメータ33により変動させることができる。なお、ここで、周期的に往復移動する腫瘍3に対して治療用放射線ビーム9の照射位置を追従させる場合には、前述のように呼吸位相が異なるとガントリ角が同一であっても治療用放射線ビーム9の照射線量が異なることとなるが、様々な呼吸位相に係る複数の第1CT画像について、Step1において各呼吸位相ごとに、治療用放射線ビーム9の、人体1の腫瘍3に対する照射方向および照射線量の計画を作成しているので、呼吸位相が変化した場合であっても治療用放射線ビーム9の照射方向および照射線量を適切なものとすることができる。
【0059】
最後に、Step7に示すように、腫瘍3における治療用放射線ビーム9の吸収線量が、Step1の治療計画において予め定められた設定量に達したか否かが制御装置11によって判定される。腫瘍3における治療用放射線ビーム9の吸収線量が設定量に達していない場合は、Step6に示すような治療用放射線ビーム照射器7による人体1に対する治療用放射線ビーム9の照射が続けられる。一方、腫瘍3における治療用放射線ビーム9の吸収線量が設定量に達した場合は、一連の治療が終了したことが制御装置11によって検出される。
【0060】
以上のように図7乃至図9に示すような放射線治療システムによれば、人体1内の腫瘍3の治療を行う際に、撮像用放射線ビーム照射器13および撮像用放射線ビーム検出器17によって人体1の内部の透視画像25を経時的に生成させ、この経時的に生成される透視画像25の画像情報と、予め生成された各呼吸位相における基準透視画像の画像情報とに基づいて、治療用放射線ビーム照射器7から照射される治療用放射線ビーム9の照射位置を人体1内の腫瘍3に追従させるようこの照射位置を経時的に変動させるようになっている。このことにより、人体1の呼吸により腫瘍3の位置が周期的に変化するにもかかわらず、この腫瘍3の位置の変動に対応して治療用放射線ビーム9の照射位置を変動させることにより常に腫瘍3に治療用放射線ビーム9が当たるようにしているので、周期的に往復移動を行う腫瘍3に対して治療用放射線ビーム9を精度良く照射させることができるようになる。
【0061】
なお、図9に示すような制御が行われる放射線治療システムにおいては、治療用放射線ビーム9の照射位置を変動させる機構はマルチリーフコリメータ33に限定されることはなく、他の種類のコリメータを用いてもよい。また、コリメータ以外のものであっても、治療用放射線ビーム9の照射位置を経時的に変動させることができるものであれば、様々な種類の照射位置変動機構を使用することができる。
【0062】
次に、本発明における放射線治療システムの更に他の構成について、図10および図11を用いて説明する。
【0063】
具体的には、図10および図11に示すような放射線治療システムは、図7乃至図9に示すような放射線治療システムと比較して、周期的に移動する腫瘍に対して治療用放射線ビームの照射位置を追従させるようこの照射位置を経時的に変動させる代わりに、腫瘍の周期的な移動に合わせて人体を載置した寝台を経時的に移動させる点が異なるのみであり、他は実質的に図7乃至図9に示すような放射線治療システムと同様の構成を有している。
図10および図11に示すような放射線治療システムの変形例に係る説明において、図1乃至図3に示すような放射線治療システム、あるいは図7乃至図9に示すような放射線治療システムと同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0064】
本変形例の放射線治療システムにおける制御装置11の制御内容について大まかに説明すると、当該制御装置11は、撮像用放射線ビーム検出器17により生成された人体の内部の透視画像25が経時的に送られるようになっており、この経時的に送られる透視画像25の画像情報と、予め生成された様々な呼吸位相における基準透視画像とに基づいて、治療用放射線ビーム照射器7から照射される治療用放射線ビーム9が人体1内の腫瘍3を常に照射するよう寝台39を経時的に移動させるようになっている。なお、この寝台39は図10に示すように制御装置11に通信接続されている。
【0065】
以下、図11により、制御装置11による撮像用放射線ビーム照射器13や治療用放射線ビーム照射器7、寝台39等の制御内容について説明する。なお、この制御内容の説明において、図9に示すような制御内容と同一部分については詳細な説明は省略する。
【0066】
まず、人体1の治療工程を行う前に、図11のStep1に示すように治療計画を作成する。具体的には、人体1の内部のCT画像(以下、第1CT画像という。)を生成する。ここで、図9のStep1による治療計画作成工程と同様に、図11のStep1においては様々な呼吸位相における複数の第1CT画像を生成するようになっている。また、図11のStep1においては、図9のStep1による治療計画作成工程と同様に、様々な呼吸位相における治療用放射線ビーム9の、人体1の腫瘍3に対する照射方向および照射線量の計画を各呼吸位相ごとに予め作成するようになっている。さらに、図11のStep1においては、各呼吸位相におけるそれぞれの第1CT画像について、腫瘍3の参照点座標、具体的には腫瘍3の重心位置に係る座標を設定し、この設定された座標を制御装置11に保存させる。
【0067】
次に、図11のStep2に示すように、人体1を中心として回転ガントリ機構35を回転させながら撮像用放射線ビーム照射器13および撮像用放射線ビーム検出器17により人体1の体内の透視画像25(図4参照)を複数生成する。ここで、Step2において得られる透視画像25は、様々な呼吸位相におけるものとなっている。
【0068】
次に、図11のStep3に示すように、Step2で生成された複数の透視画像25に基づいて各呼吸位相における複数の第2CT画像が生成される。このような複数の第2CT画像の生成方法は、図3のStep3による方法と略同一(具体的には、投影再構成法)である。
【0069】
次に、図11のStep4に示すように、制御装置11において、Step3で得られた各呼吸位相における複数の第2CT画像のうち一の第2CT画像について、Step1で得られた複数の第1CT画像のうち最も近似するような一の第1CT画像を選択する。そして、このような互いに関連性のある第1CT画像および第2CT画像により、寝台39の初期位置を調整する。ここで、寝台39の初期位置の設定方法は、図9のStep3による方法と略同一である。
【0070】
次に、図11のStep5に示すように、Step1で生成された複数の第1CT画像と、Step3で生成された複数の第2CT画像について、各々の第1CT画像について最も近似するような第2CT画像を選択し、この第2CT画像に係る透視画像25を関連づけさせる。すなわち、呼期のピーク時から吸期のピーク時にいたる様々な呼吸位相において、第1CT画像と第2CT画像とを関連付けさせ、このことにより、各呼吸位相において第2CT画像を生成する際に用いた様々なガントリ角の透視画像25を、第1CT画像に関連付けさせる。ここで、第1CT画像に関連付けさせられる透視画像25を基準透視画像とする。
【0071】
次に、図11のStep6に示すように、治療用放射線ビーム照射器7による人体1に対する治療用放射線ビーム9の照射を開始する。ここでは、図9のStep6と同様に、人体1に対して治療用放射線ビーム9を途切れることなく連続的に照射させる。この際に、撮像用放射線ビーム照射器13から撮像用放射線ビーム15を人体1に当て続けることにより、人体1の内部の透視画像25を経時的に生成する。そして、この経時的に生成される透視画像25の画像情報と、様々な呼吸位相における複数の第1CT画像に関連する各基準透視画像の画像情報とを比較し、最も近似する基準画像情報に対応する第1CT画像に基づいて、当該第1CT画像に対応するよう設定された参照点座標を演算する。そして、治療用放射線ビーム照射器7から照射される治療用放射線ビーム9の照射箇所が、この第1CT画像に対応して設定される参照点座標に位置するよう、人体1を載置した寝台39を経時的に移動させるようになっている。具体的には、制御装置11は、寝台39を3軸方向に平行移動させるとともに当該寝台39を3軸の周りに回転させることにより、寝台39を適切な箇所、すなわち治療用放射線ビーム照射器7から照射される治療用放射線ビーム9が人体1の腫瘍3に常に当たるような箇所に絶えず位置させることとなる。なお、ここで、周期的に往復移動する腫瘍3に治療用放射線ビーム9の照射位置を追従させる場合には、前述のように呼吸位相が異なるとガントリ角が同一であっても治療用放射線ビーム9の照射線量が異なることとなるが、様々な呼吸位相に係る複数の第1CT画像について、Step1において各呼吸位相ごとに、治療用放射線ビーム9の、人体1の腫瘍3に対する照射方向および照射線量の計画を作成しているので、呼吸位相が変化した場合であっても治療用放射線ビーム9の照射方向および照射線量を適切なものとすることができる。
【0072】
最後に、Step7に示すように、腫瘍3における治療用放射線ビーム9の吸収線量が、Step1の治療計画において予め定められた設定量に達したか否かが制御装置11によって判定される。腫瘍3における治療用放射線ビーム9の吸収線量が設定量に達していない場合は、Step6に示すような治療用放射線ビーム照射器7による人体1に対する治療用放射線ビーム9の照射が続けられる。一方、腫瘍3における治療用放射線ビーム9の吸収線量が設定量に達した場合は、一連の治療が終了したことが制御装置11によって検出される。
【0073】
以上のように図10および図11に示すような放射線治療システムによれば、人体1内の腫瘍3の治療を行う際に、撮像用放射線ビーム照射器13および撮像用放射線ビーム検出器17によって人体1の内部の透視画像25を経時的に生成させ、この経時的に生成される透視画像25の画像情報と、予め生成された各呼吸位相における基準透視画像の画像情報とに基づいて、治療用放射線ビーム照射器7から照射される治療用放射線ビーム9が人体1内の腫瘍3を常に照射するよう寝台39を経時的に移動させるようになっている。このことにより、人体1の呼吸により腫瘍3の位置が周期的に変化するにもかかわらず、この腫瘍3の位置の変動に対応して寝台39を移動させることにより常に腫瘍3に治療用放射線ビーム9が当たるようにしているので、周期的に往復移動を行う腫瘍3に対して治療用放射線ビーム9を精度良く照射させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一の実施の形態における放射線治療システムの構成を示す概略斜視図である。
【図2】図1に示す放射線治療システムの概略構成図である。
【図3】図1、図2に示す放射線治療システムの制御装置における制御内容を示すブロック図である。
【図4】図1、図2に示す放射線治療システムの人体内撮像装置により得られる人体の内部の透視画像である。
【図5】図4に示す透視画像における横隔膜の位置変動を示す図である。
【図6】図5に示す横隔膜の位置変動から求められる呼吸位相を示す図である。
【図7】本発明における他の放射線治療システムの構成を示す概略斜視図である。
【図8】図7に示す放射線治療システムにおけるマルチリーフコリメータの概略構成図である。
【図9】図7、図8に示す放射線治療システムの制御装置における制御内容を示すブロック図である。
【図10】本発明における更に他の放射線治療システムの構成を示す概略斜視図である。
【図11】図10に示す放射線治療システムの制御装置における制御内容を示すブロック図である。
【図12】人体内の腫瘍に対する治療用放射線ビームの照射状態を模式的に示す図である。
【図13】人体内の腫瘍に対する治療用放射線ビームの照射状態を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0075】
1 人体
3 腫瘍
5 横隔膜
7、7´ 治療用放射線ビーム照射器
9 治療用放射線ビーム
11 制御装置
13 撮像用放射線ビーム照射器
15 撮像用放射線ビーム
17 撮像用放射線ビーム検出器
19、21、23 ケーブル
25 透視画像
27 枠
29 境界線
31 呼期のピーク時
33 マルチリーフコリメータ
33s 遮蔽板
35 回転ガントリ機構
37 表示装置
39 寝台
43 ケーブル
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体内の治療対象部分に対して放射線ビームを照射することにより当該治療対象部分の治療を行う放射線治療システムに関し、とりわけ、人体の呼吸により周期的に往復移動を行う治療対象部分に対して治療用放射線ビームを精度良く照射させることができる放射線治療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、人体内の治療対象部分、具体的には例えば腫瘍に対して放射線ビームを照射することにより当該腫瘍の治療を行う放射線治療システムについて、様々な種類のものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。このような腫瘍は、人体の呼吸に伴ってその位置が周期的に変動することが多い。例えば、肺腫瘍に関しては、人体の呼吸に伴う位置の変動幅が2〜3cmを超える場合がある。このため、腫瘍に対して放射線ビームを照射することにより治療を行う場合は、人体の呼吸に伴う腫瘍位置の変動を考慮する必要がある。
【0003】
【特許文献1】特開2006−51064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような人体の呼吸に伴う腫瘍の位置の周期的な変動に係る問題に対応するため、人体の呼吸を一時的に止めてその間に放射線ビームを腫瘍に照射したり、あるいは呼吸に伴う人体の皮膚表面の変動を検出してこの皮膚表面の変動に応じて放射線ビームの照射位置を変動させる呼吸同期照射法を行ったりすることが知られている。ここで、上述のような呼吸同期照射法に必要な呼吸位相検出手段として、従来は歪みゲージを人体の皮膚表面に貼着し、呼吸による人体の皮膚表面の変動を当該歪みゲージによって圧力変化として検出し、この圧力変化から呼吸位相を検出するものが採用されていた。
【0005】
しかしながら、人体の呼吸を一時的に止めてその間に放射線ビームを腫瘍に照射する方法では、患者の個人差により腫瘍位置が安定的に静止しないおそれがある。また、呼吸同期照射法において歪みゲージを用いる場合には、人体の皮膚表面への歪みゲージの貼着状態によってこの皮膚表面の位置変動に対応する圧力の検出特性が変化するため、安定的な呼吸位相の検出が困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、人体の呼吸により腫瘍等の治療対象部分の位置が周期的に変化するにもかかわらず、この周期的に往復移動を行う治療対象部分に対して治療用放射線ビームを精度良く照射させることができる放射線治療システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、人体内の腫瘍等の治療対象部分に対して放射線ビームを照射することにより当該治療対象部分の治療を行う放射線治療システムであって、人体に撮像用放射線ビームを照射することにより当該人体の内部の透視画像を生成する人体内撮像装置と、人体に治療用放射線ビームを照射する治療用放射線ビーム照射装置と、前記人体内撮像装置および前記治療用放射線ビーム照射装置を制御する制御装置であって、前記人体内撮像装置によって人体の内部の透視画像を経時的に生成させ、この経時的に生成される透視画像の画像情報が、予め生成された特定の呼吸位相における基準透視画像の画像情報と略一致したときに、治療用放射線ビーム照射装置によって人体内の治療対象部分に対して治療用放射線ビームを照射させるような制御を行う制御装置と、を備えたことを特徴とする放射線治療システムである。
【0008】
上述の放射線治療システムによれば、人体の呼吸により腫瘍等の治療対象部分の位置が周期的に変化するにもかかわらず、特定の呼吸位相においてのみ治療対象部分に治療用放射線ビームを照射しているので、治療用放射線ビームの照射時における治療対象部分の位置は略同一となり、周期的に往復移動を行う治療対象部分に対して治療用放射線ビームを精度良く照射させることができるようになる。
【0009】
このような放射線治療システムにおいては、前記制御装置における予め生成された基準透視画像の特定の呼吸位相は呼期または吸期のピーク時であることが好ましい。ここで、特定の呼吸位相を呼期または吸期のピーク時とした場合には、これらの呼期または吸期のピーク時では治療対象部分が一時的に停止するので、治療対象部分に対する治療用放射線ビームの照射をより精度良く行うことができるようになる。
【0010】
このような放射線治療システムにおいては、前記人体内撮像装置は、前記治療対象部分および当該治療対象部分よりも大きく人体の呼吸に連動する体内基準部分をそれぞれ含むような透視画像を生成するようになっており、前記制御装置は、経時的に生成される透視画像における体内基準部分が、基準透視画像における体内基準部分と略一致したときに、治療用放射線ビーム照射装置によって人体内の治療対象部分に対して治療用放射線ビームを照射させるような制御を行うようになっていることが好ましい。なお、前記体内基準部分は人体内の横隔膜であることが更に好ましい。このように、一般的に横隔膜等の体内基準部分は腫瘍等の治療対象部分よりも大きなものが用いられるので、透視画像において体内基準部分は治療対象部分よりも明瞭に描写されている。このため、透視画像において治療対象部分自体の位置を画像情報として用いるよりも体内基準部分の位置を画像情報として用いることにより、より正確に、経時的に生成される透視画像の画像情報と特定の呼吸位相における基準透視画像の画像情報との比較を行うことができるようになる。
【0011】
このような放射線治療システムにおいては、前記制御装置は、人体の治療前において特定の呼吸位相における人体の内部の第1CT画像が予め入力されており、前記人体内撮像装置によって人体に対する撮像用放射線ビームの照射方向を変えながら人体の内部の透視画像を複数生成し、これらの複数の透視画像に基づいて様々な呼吸位相における複数の第2CT画像を生成し、これらの複数の第2CT画像から前記第1CT画像に最も近似するような一の第2CT画像を選択し、当該一の第2CT画像に対応する呼吸位相に係る透視画像を基準透視画像に設定するようになっていることが好ましい。ここで、基準透視画像の前記設定を行う際に、投影再構成法によって同一の呼吸位相時における複数の透視画像から第2CT画像を生成するようになっていることが更に好ましい。また、人体を載置するための載置台が更に設けられており、この載置台は前記制御装置によりその位置が予め一定の箇所に設定されるようになっており、前記制御装置は、基準透視画像の前記設定を行う際に、複数の第2CT画像のうち前記第1CT画像に最も近似するような一の第2CT画像と前記第1CT画像との位置ずれ量に基づいて前記載置台の位置を予め設定するようになっていることが好ましい。
【0012】
本発明の第2の態様は、人体内の腫瘍等の治療対象部分に対して放射線ビームを照射することにより当該治療対象部分の治療を行う放射線治療システムであって、人体に撮像用放射線ビームを照射することにより当該人体の内部の透視画像を生成する人体内撮像装置と、人体に治療用放射線ビームを照射する治療用放射線ビーム照射装置であって、当該治療用放射線ビームの照射位置を変動させることができるような治療用放射線ビーム照射装置と、前記人体内撮像装置および前記治療用放射線ビーム照射装置を制御する制御装置であって、前記人体内撮像装置によって人体の内部の透視画像を経時的に生成させ、この経時的に生成される透視画像の画像情報と、予め生成された各呼吸位相における基準透視画像の画像情報とに基づいて、治療用放射線ビーム照射装置から照射される治療用放射線ビームの照射位置を人体内の治療対象部分に追従させるようこの照射位置を経時的に変動させるような制御を行う制御装置と、を備えたことを特徴とする放射線治療システムである。
【0013】
上述の放射線治療システムによれば、人体の呼吸により腫瘍等の治療対象部分の位置が周期的に変化するにもかかわらず、この治療対象部分の位置の変動に対応して治療用放射線ビームの照射位置を変動させることにより常に治療対象部分に治療用放射線ビームが当たるようにしているので、周期的に往復移動を行う治療対象部分に対して治療用放射線ビームを精度良く照射させることができるようになる。
【0014】
このような放射線治療システムにおいては、前記治療用放射線ビーム照射装置はコリメータを有し、当該コリメータが治療用放射線ビームの照射位置を変動させるようになっていることが好ましい。とりわけ、前記コリメータはマルチリーフコリメータであることが好ましい。
【0015】
このような放射線治療システムにおいては、前記制御装置は、人体の治療前において様々な呼吸位相における人体の内部の複数の第1CT画像が予め入力されており、前記人体内撮像装置によって人体に対する撮像用放射線ビームの照射方向を変えながら人体の内部の透視画像を複数生成し、これらの複数の透視画像に基づいて様々な呼吸位相における複数の第2CT画像を生成し、これらの複数の第2CT画像と前記複数の第1CT画像とを比較して各第1CT画像について最も近似する第2CT画像に係る透視画像を関連づけさせて基準透視画像とし、前記治療用放射線ビーム照射装置によって人体に治療用放射線ビームを照射する際に、前記人体内撮像装置により得られる人体の内部の透視画像に係る画像情報と、前記複数の第1CT画像にそれぞれ関連する各基準透視画像の画像情報とを比較して、最も近似する画像情報に係る第1CT画像に基づいて、治療用放射線ビーム照射装置から照射される治療用放射線ビームの照射位置を経時的に変動させるような制御を行うようになっていることが好ましい。また、人体を載置するための載置台が更に設けられており、この載置台は前記制御装置によりその位置が予め一定の箇所に設定されるようになっており、前記制御装置は、前記治療用放射線ビーム照射装置によって人体に治療用放射線ビームを照射する前に、前記人体内撮像装置によって得られる複数の第2CT画像のうち一の第2CT画像について最も近似するような第1CT画像と当該一の第2CT画像との位置ずれ量に基づいて前記載置台の位置を予め設定するようになっていることが更に好ましい。
【0016】
本発明の第3の態様は、人体内の腫瘍等の治療対象部分に対して放射線ビームを照射することにより当該治療対象部分の治療を行う放射線治療システムであって、人体を載置するための寝台等の載置台と、載置台に載置された人体に撮像用放射線ビームを照射することにより当該人体の内部の透視画像を生成する人体内撮像装置と、載置台に載置された人体に治療用放射線ビームを照射する治療用放射線ビーム照射装置と、前記載置台、前記人体内撮像装置および前記治療用放射線ビーム照射装置を制御する制御装置であって、前記人体内撮像装置によって人体の内部の透視画像を経時的に生成させ、この経時的に生成される透視画像の画像情報と、人体の治療前において予め生成された各呼吸位相における基準透視画像の画像情報とに基づいて、治療用放射線ビーム照射装置から照射される治療用放射線ビームが人体内の治療対象部分を常に照射するよう前記載置台を経時的に移動させるような制御を行う制御装置と、を備えたことを特徴とする放射線治療システムである。
【0017】
上述の放射線治療システムによれば、人体の呼吸により腫瘍等の治療対象部分の位置が周期的に変化するにもかかわらず、この治療対象部分の位置の変動に対応して寝台等の載置台を移動させることにより常に治療対象部分に治療用放射線ビームが当たるようにしているので、周期的に往復移動を行う治療対象部分に対して治療用放射線ビームを精度良く照射させることができるようになる。
【0018】
このような放射線治療システムにおいては、前記制御装置は、人体の治療前において様々な呼吸位相における人体の内部の複数の第1CT画像および各第1CT画像に対応する治療対象部分の座標が予め入力されており、前記人体内撮像装置によって人体に対する撮像用放射線ビームの照射方向を変えながら人体の内部の透視画像を複数生成し、これらの複数の透視画像に基づいて様々な呼吸位相における複数の第2CT画像を生成し、これらの複数の第2CT画像と前記複数の第1CT画像とを比較して各第1CT画像について最も近似する第2CT画像に係る透視画像を関連づけさせて基準透視画像とし、前記治療用放射線ビーム照射装置によって人体に治療用放射線ビームを照射する際に、前記人体内撮像装置により得られる人体の内部の透視画像に係る画像情報と、前記複数の第1CT画像にそれぞれ関連する各基準透視画像の画像情報とを比較して、最も近似する画像情報に係る第1CT画像に対応する治療対象部分の座標に基づいて、前記載置台を経時的に変動させるようになっていることが好ましい。また、前記制御装置は、前記治療用放射線ビーム照射装置によって人体に治療用放射線ビームを照射する前に、人体内撮像装置によって得られる複数の第2CT画像のうち一の第2CT画像について最も近似するような第1CT画像と当該一の第2CT画像との位置ずれ量に基づいて前記載置台の初期位置を設定するようになっていることが特に好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の放射線治療システムによれば、人体の呼吸により腫瘍等の治療対象部分の位置が周期的に変化するにもかかわらず、この周期的に往復移動を行う治療対象部分に対して治療用放射線ビームを精度良く照射させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の一の実施の形態について説明する。図1乃至図6は、本発明による放射線治療システムの一の実施の形態を示す図である。
このうち、図1は、本発明の一の実施の形態における放射線治療システムの構成を示す概略斜視図であり、図2は、図1に示す放射線治療システムの概略構成図であり、図3は、図1、図2に示す放射線治療システムの制御装置における制御内容を示すブロック図である。また、図4は、図1、図2に示す放射線治療システムの人体内撮像装置により得られる人体の内部の透視画像であり、図5は、図4に示す透視画像における横隔膜の位置変動を示す図であり、図6は、図5に示す横隔膜の位置変動から求められる呼吸位相を示す図である。
【0021】
本実施の形態による放射線治療システムは、人体1の内部の治療対象部分、具体的には例えば肺腫瘍等の腫瘍3に対して放射線ビームを照射することにより、この腫瘍3の治療を行うものである。図1および図2、とりわけ図2に示すように、放射線治療システムは、人体1に撮像用放射線ビーム15を照射する撮像用放射線ビーム照射器13と、撮像用放射線ビーム照射器13から照射され人体を透過した撮像用放射線ビーム15を受容し、この受容した撮像用放射線ビーム15から透視画像25(図4参照)を生成するような撮像用放射線ビーム検出器17と、人体1に治療用放射線ビーム9を照射する治療用放射線ビーム照射器7とを備えている。また、撮像用放射線ビーム照射器13や治療用放射線ビーム照射器7等の制御を行うための制御装置11が放射線治療システムに設置されている。ここで、撮像用放射線ビーム照射器13および撮像用放射線ビーム検出器17により、人体1内の撮像を行うための人体内撮像装置が構成されている。
【0022】
このような放射線治療システムの各構成要素について、図1乃至図6を用いて以下に詳述する。
【0023】
治療用放射線ビーム照射器7は、前述のように人体1内の腫瘍3に対して治療用放射線ビーム9を照射するものである。ここで、治療用放射線ビーム9としては、例えばエネルギーが4MV〜10MV(1MVは百万ボルトである。)の範囲内にあるX線ビームが使用される。とりわけ、治療用放射線ビーム照射器7は、内部に設けられた電子加速部により電子を加速し、この加速された高エネルギーの電子を金属ターゲットに衝突させることにより高エネルギーX線ビームを発生させ、この高エネルギーX線ビームを治療用放射線ビーム9として人体1に照射することが好ましい。
【0024】
撮像用放射線ビーム照射器13は、人体1に対して撮像用放射線ビーム15を照射するものである。具体的には、撮像用放射線ビーム照射器13は、照射範囲に人体1内の腫瘍3を含むとともに、腫瘍3よりも大きく人体の呼吸に連動するような体内基準部分、具体的には例えば横隔膜5をも含むよう撮像用放射線ビーム15の照射を行う。ここで、撮像用放射線ビーム照射器13は、内部に設けられたX線管により、100kV程度の電圧で電子を加速し、この加速された電子を金属ターゲットに衝突させることによりX線ビームを発生させ、このX線ビームを撮像用放射線ビーム15として人体1に照射することが好ましい。
【0025】
撮像用放射線ビーム検出器17は、撮像用放射線ビーム照射器13から照射され人体を透過した撮像用放射線ビーム15を受容するものであり、例えばアモルファスシリコンを有するフラットパネル型の半導体2次元アレイ検出器からなる。また、撮像用放射線ビーム検出器17は、受容した撮像用放射線ビーム15から図4に示すような透視画像25を生成するようになっている。この透視画像25には、人体1内の横隔膜5が明瞭に撮像されている。
【0026】
ここで、撮像用放射線ビーム照射器13および撮像用放射線ビーム検出器17により得られる透視画像25について更に詳しく説明する。図4に示すように、撮像用放射線ビーム検出器17により検出される透視画像25は、人体1の胸部を含む広範囲のものであり、このままでは後述する制御装置11において当該透視画像25に関する様々な演算を行うのに適していない。このため、透視画像25のうち横隔膜5を含む部分を枠27(図4の透視画像25において白抜き部分で表示)により切り取り、この枠27内の横隔膜の境界領域を制御装置11における演算に利用する。具体的には、透視画像25の枠27内の横隔膜5の画像について、図4に示すようなグレースケールを2値化処理によって図5に示すような白黒パターンの境界線29に書き換える。図5は、吸期から呼期までの様々な呼吸位相における横隔膜5の境界線29を示している。図5における複数の境界線29のうち、最も上側にある境界線29は呼期のピーク時のものであり、最も下側にある境界線29は吸期のピーク時のものである。
【0027】
図6は、図5における複数の境界線29について図5のグラフの横軸の値を固定したときの境界線29の縦軸の座標を経時的に(すなわち、時間が経過したときの各時刻における座標のプロットとして)示すものである。図6により、人体1における横隔膜5の周期的な往復移動状態を観察することができる。なお、図6において、参照符号31で示す部分は呼期のピーク時に対応している。
【0028】
図1に示すように、治療用放射線ビーム照射器7、撮像用放射線ビーム照射器13および撮像用放射線ビーム検出器17は、いわゆるドーナツ型の回転ガントリ機構35に接続されている。また、人体1は、治療を行う際に回転ガントリ機構35の中心軸に沿って位置されるようになっており、回転ガントリ機構35は、このような位置に配置された人体1を中心として図1の矢印方向に回転するようになっている。ここで、治療用放射線ビーム照射器7から照射される治療用放射線ビーム9と、撮像用放射線ビーム照射器13から照射される撮像用放射線ビーム15とがほぼ垂直となるよう、回転ガントリ機構35に対する治療用放射線ビーム照射器7および撮像用放射線ビーム照射器13の取り付け位置が設定されている(すなわち、回転ガントリ機構35の中心軸に対する治療用放射線ビーム照射器7および撮像用放射線ビーム照射器13の位相差は約90°となっている)。また、撮像用放射線ビーム検出器17は、回転ガントリ機構35の中心軸に対して撮像用放射線ビーム照射器13の反対側となるよう回転ガントリ機構35に対する取り付け位置が設定されている。
【0029】
ここで、図1に示すように、回転ガントリ機構35の近傍には人体1を載置するための移動可能な寝台39が設けられている。ここで、人体1の治療を行う際には、人体1を載置した寝台39を前もって移動させることによりこの人体1を回転ガントリ機構35の中心軸に沿って位置させるようになっている。また、回転ガントリ機構35の近傍には、各種治療パラメータを表示するための表示装置37が設けられている。この表示装置37は、制御装置11(後述)から送信された様々な治療パラメータを表示するようになっている。
【0030】
さらに、放射線治療システムには制御装置11が設けられている。この制御装置11は、ケーブル19、23、21を介して治療用放射線ビーム照射器7、撮像用放射線ビーム照射器13および撮像用放射線ビーム検出器17にそれぞれ通信接続されている。図3に、制御装置11による制御内容が示されている。制御装置11の制御内容について大まかに説明すると、当該制御装置11は、撮像用放射線ビーム検出器17により生成された人体の内部の透視画像25が経時的に送られるようになっており、この経時的に送られる透視画像25の画像情報が、予め生成された特定の呼吸位相(例えば吸期または呼期のピーク時)における基準透視画像の画像情報と略一致したときに、治療用放射線ビーム照射器7によって人体1内の腫瘍3に対して治療用放射線ビーム9を照射させ、撮像用放射線ビーム検出器17から得られる透視画像25の画像情報が基準透視画像の画像情報と略一致しないときには治療用放射線ビーム照射器7に対して治療用放射線ビーム9を照射させないようになっている。この制御装置11における制御内容の詳細については後述する。
【0031】
次に、このような構成からなる放射線治療システムの動作について以下に説明する。あわせて、制御装置11による撮像用放射線ビーム照射器13や治療用放射線ビーム照射器7等の制御内容についても説明する。
【0032】
まず、人体1の治療工程を行う前に、図3のStep1に示すように治療計画を作成する。具体的には、図1、2に示すような放射線治療システムとは別のCTシステムにより、人体1の内部のCT画像(以下、第1CT画像という。)を生成する。ここで、肺腫瘍のような、呼吸と連動して往復移動を行う腫瘍3に対して放射線治療を行う場合は、呼吸位相の変化により腫瘍3の位置が2,3cm異なることとなる。このため、治療計画を作成する際に、この呼吸位相により腫瘍3の位置が異なることを考慮に入れる必要がある。本実施の形態においては、胸腹部等の体表に設けられた変位センサを用いて、第1CT画像を生成する際に呼吸位相も検出するようになっている。ここで、呼期または吸期のピーク時、とりわけ呼期のピーク時においては、腫瘍3の往復移動が停止する。このため、このような呼期または吸期のピーク時においては、実際の治療における腫瘍3に対する治療用放射線ビーム9の照射のタイミングが多少ずれた場合であっても、腫瘍3の移動は無視することができ、安全な放射線ビームの照射を行うことができる。
【0033】
図3のStep1に示すような治療計画の作成にあたり、本実施の形態では、特定の呼吸位相、具体的には例えば呼期または吸期のピーク時(とりわけ呼期のピーク時)について第1CT画像を生成するとともに、特定の呼吸位相における治療用放射線ビーム9の、人体1の腫瘍3に対する照射方向および照射線量の計画を予め作成する。ここで、治療用放射線ビーム9の照射線量の計画の作成を行うにあたり、人体1の腫瘍3に対する治療用放射線ビーム9の照射方向によって照射線量が変化することに留意すべきである。具体的には、図12に示すように、治療用放射線ビーム9が人体1の腫瘍3に照射される際に、この治療用放射線ビーム9が腫瘍3に届くまでに当該治療用放射線ビーム9の一部分は人体1内の組織に吸収される(図12の斜線部分参照)。このため、腫瘍3に対する治療用放射線ビーム9の照射方向が異なると、具体的には例えば図12において治療用放射線ビーム照射器7´から腫瘍3に対して治療用放射線ビーム9を照射するようになると、人体1内の組織に吸収される治療用放射線ビーム9の量も異なることとなるので(図12の斜線部分の面積が異なることとなるので)、人体1の腫瘍3に対する治療用放射線ビーム9の照射方向によって照射線量を変化させなければならない。このように、Step1に示すような治療計画の作成工程においては、上記事項も考慮して特定の呼吸位相における治療用放射線ビーム9の、人体1の腫瘍3に対する照射方向および照射線量の計画を予め作成することとなる。
【0034】
なお、Step1において得られる第1CT画像は、CTシステムの構成上、例えば人体1の胸部だけの画像化を行うことが一般的であり、この第1CT画像には呼吸によっても位置が変化しないような臓器は含まれることとなるが、横隔膜5は画像化されない場合が多い。Step1において得られる第1CT画像において、腫瘍3は臓器に対する相対的な位置関係に基づいて、当該第1CT画像における位置が算出されるようになっている。
【0035】
また、放射線治療システムとは別のCTシステムで人体1の内部の第1CT画像を生成する代わりに、図1、図2に示すような放射線治療システムの撮像用放射線ビーム照射器13および撮像用放射線ビーム検出器17により第1CT画像を生成してもよい。
【0036】
次に、図3のStep2に示すように、人体1を寝台39に載置し、この寝台39を移動させることによって人体1を回転ガントリ機構35の中心軸に位置させ、回転ガントリ機構35を図1の矢印方向に回転させながら撮像用放射線ビーム照射器13および撮像用放射線ビーム検出器17により人体1の体内の透視画像25(図4参照)を複数生成する。ここで、Step2において得られる透視画像25は、様々な呼吸位相におけるものとなっている。撮像用放射線ビーム検出器17において得られた複数の透視画像25、具体的には呼吸位相が様々であり、かつ人体1に対する撮像用放射線ビーム15の照射方向が様々となっているような複数の透視画像25が、ケーブル21を介して制御装置11に送られるようになっている。
【0037】
次に、図3のStep3に示すように、制御装置11において、撮像用放射線ビーム検出器17から送られた複数の透視画像25に基づいて複数の第2CT画像が生成される。具体的には、呼吸位相が様々である複数の透視画像25のうち、呼吸位相が略同一であり人体1に対する撮像用放射線ビーム15の照射方向が様々となっている複数の透視画像25から、投影再構成法によって第2CT画像を生成する。このようにして生成される第2CT画像は、特定の呼吸位相のものである。そして、各呼吸位相において、具体的には呼吸位相を10分割したときの10個の各呼吸位相において、上述のような投影再構成法による画像化を繰り返すことにより、各呼吸位相における複数の第2CT画像が得られることとなる。
【0038】
次に、図3のStep4に示すように、制御装置11において、Step3で得られた各呼吸位相における複数の第2CT画像のうち、Step1で得られた第1CT画像に最も近似するような一の第2CT画像を選択する。この一の第2CT画像は、Step1の治療計画の作成時に設定される特定の呼吸位相、具体的には例えば呼期または吸期のピーク時におけるものとなる。このような特定の呼吸位相における一の第2CT画像を選択することにより、治療計画作成時に計画された放射線治療を実際の治療で再現することができるようになる。しかしながら、この時点では人体1の輪郭と腫瘍3の位置との相対位置の類似度が最も高い第2CT画像を選択したに過ぎないので、寝台39の位置を調整する必要がある。具体的には、治療計画の作成時において第1CT画像上に設定された照射時の回転中心(アイソセンタ)と、Step4で選択された一の第2CT画像の画像中心とを一致させる。次に、第1CT画像と、当該一の第2CT画像とが最も一致するように、一方のCT画像を3軸方向に平行移動させ、あるいは一方のCT画像を3軸の周りに回転させる。このことにより、第2CT画像の画像中心が治療計画時の回転中心に一致するように、寝台39の位置および角度を補正することができる。このようなStep4の工程のことを患者(人体1)の位置決めまたは位置合わせという。
【0039】
次に、Step5に示すように、Step4で選択された一の第2CT画像に対応する呼吸位相に係る透視画像25を、基準透視画像に設定する。ここで、このような基準透視画像は、人体1に対する撮像用放射線ビーム15の照射方向によって複数の様々なものとなるが、回転ガントリ機構35の各ガントリ角についてそれぞれ基準透視画像を生成しておく。なお、このような各ガントリ角に対応する複数の基準透視画像は、Step2において生成され制御装置1に記憶されたものをそのまま用いることができるため、容易に生成することができる。ここで、Step2において回転ガントリ機構35を人体1の周囲で複数回回転させ、複数回の回転分の透視画像25を生成しておくことにより、Step5において特定のガントリ角に対応する基準透視画像が不足してしまうといったトラブルを未然に防止することができる。
【0040】
あるいは、制御装置11において、第2CT画像から基準透視画像を生成することもできる。具体的には、レイトレーシング法によって、撮像用放射線ビーム照射器13のX線管から出射した発散角を有する撮像用放射線ビーム15の軌跡をなぞることによりなぞられた画素のCT値を加算すればよい。
【0041】
また、図3においてはStep4に係る位置合わせ工程の後にStep5に係る基準透視画像の生成工程を行っているが、Step4とStep5とを逆の順番で実行するようになっていてもよい。
【0042】
次に、図3のStep6に示すように、治療用放射線ビーム照射器7による人体1に対する治療用放射線ビーム9の照射を開始する。この際に、撮像用放射線ビーム照射器13から撮像用放射線ビーム15を人体1に当て続けることにより、人体1の内部の透視画像25を経時的に生成する。そして、この経時的に生成される透視画像25の画像情報が、Step5において生成された基準透視画像の画像情報と略一致したときのみに、治療用放射線ビーム照射器7から人体1に治療用放射線ビーム9を照射するようにする。ここで、透視画像の画像情報とは、図4に示すような透視画像25における枠27内の画像、または図5に示すような2値化処理された横隔膜5の境界線29、あるいは図6に示すような図5のグラフにおける横軸の値を一定とした特定の直線上の横隔膜5の境界線29の移動軌跡等のことをいう。また、画像情報の一致度を評価する指標としては、内積演算または相互相関演算を用いる方法が知られており、例えばStep6において経時的に生成される透視画像25の画像情報と、Step5において生成された基準透視画像の画像情報との相関値が0.95以上である場合に両者の画像情報が略一致するとみなすことができるようになっている。このようにして、例えば吸期または呼期のピーク時においてのみ、治療用放射線ビーム照射器7から人体1に治療用放射線ビーム9を照射させることができるようになる。なお、制御装置11においてこのような演算を行うにあたり、処理時間を短縮するためには、相関計算が行われる透視画像の領域を小さくしたり、画像の空間分解能を低下させたりすることが有効である。
【0043】
最後に、Step7に示すように、腫瘍3における治療用放射線ビーム9の吸収線量が、Step1の治療計画において予め定められた設定量に達したか否かが制御装置11によって判定される。腫瘍3における治療用放射線ビーム9の吸収線量が設定量に達していない場合は、Step6に示すような治療用放射線ビーム照射器7による人体1に対する治療用放射線ビーム9の照射が続けられる。一方、腫瘍3における治療用放射線ビーム9の吸収線量が設定量に達した場合は、一連の治療が終了したことが制御装置11によって検出される。
【0044】
以上のように図1乃至図6に示すような本実施の形態の放射線治療システムによれば、人体1内の腫瘍3の治療を行う際に、撮像用放射線ビーム照射器13および撮像用放射線ビーム検出器17によって人体1の内部の透視画像25を経時的に生成させ、この経時的に生成される透視画像25の画像情報が、予め生成された特定の呼吸位相における基準透視画像の画像情報と略一致したときにのみ、治療用放射線ビーム照射器7によって人体1内の腫瘍3に対して治療用放射線ビーム9を照射するようになっている。このことにより、人体1の呼吸により腫瘍3の位置が周期的に変化するにもかかわらず、特定の呼吸位相においてのみ腫瘍3に治療用放射線ビーム9を照射しているので、治療用放射線ビーム9の照射時における腫瘍3の位置は略同一となり、周期的に往復移動を行う腫瘍3に対して治療用放射線ビーム9を精度良く照射させることができるようになる。
【0045】
ここで、特定の呼吸位相を呼期または吸期のピーク時(とりわけ呼期のピーク時)とした場合には、図6等に示すようにこれらの呼期または吸期のピーク時(とりわけ呼期のピーク時31)では腫瘍3が一時的に停止するので、腫瘍3に対する治療用放射線ビーム9の照射をより精度良く行うことができるようになる。
【0046】
また、Step6における経時的な透視画像25の生成において、腫瘍3のみならず人体の呼吸に連動するような横隔膜5等の体内基準部分を含むような透視画像25を生成するようになっている。そして、制御装置11は、Step6において経時的に生成される透視画像25における横隔膜5が、Step5において生成された基準透視画像における横隔膜5と略一致したときに、腫瘍3に対して治療用放射線ビーム9を照射させるようになっている。ここで、一般的に横隔膜5は腫瘍3よりも十分に大きく、透視画像25において横隔膜5は明瞭に描写されている。このため、透視画像25において腫瘍3自体の位置を用いるよりも横隔膜5の位置を画像情報として用いることにより、より正確に、Step6において経時的に生成される透視画像25の画像情報とStep5において生成された特定の呼吸位相における基準透視画像の画像情報との比較を行うことができるようになる。
【0047】
なお、本実施の形態による放射線治療システムは、上記の態様に限定されるものではなく、様々の変更を加えることができる。図7乃至図9は、本発明における放射線治療システムの他の構成を示す概略構成図である。
【0048】
具体的には、図7乃至図9に示すような放射線治療システムは、特定の呼吸位相時においてのみ腫瘍に対して治療用放射線ビームを照射させる代わりに、腫瘍に対して治療用放射線ビームを連続的に照射させ、しかも周期的に移動する腫瘍に対して治療用放射線ビームの照射位置を追従させるようこの照射位置を経時的に変動させる点が異なるのみであり、他は実質的に図1乃至図3に示すような放射線治療システムと同様の構成を有している。
図7乃至図9に示すような放射線治療システムの変形例に係る説明において、図1乃至図3に示すような放射線治療システムと同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0049】
図7に示すような本変形例に係る放射線治療システムにおいては、治療用放射線ビーム照射器7から照射される治療用放射線ビーム9の照射位置を変動させるためのマルチリーフコリメータ33が追加的に設置されている。このマルチリーフコリメータ33は、ケーブル43を介して制御装置11に通信接続されている。当該マルチリーフコリメータ33は、制御装置11からの制御信号に基づいて、治療用放射線ビーム照射器7から照射される治療用放射線ビーム9の照射位置を経時的に変動させることができるようになっている。
【0050】
マルチリーフコリメータ33について図8を用いて具体的に説明する。図8に示すように、マルチリーフコリメータ33は多数のタングステン製の遮蔽板33sを有している。各遮蔽板(リーフともいう。)33sは、図8の上下方向における幅が5mm〜1cmの範囲内の大きさとなっており、図8の奥行き方向における厚さが約8cmとなっている。各遮蔽板33sは、各々モータ(図示せず)によって他の遮蔽板33sから独立して一次元方向、すなわち図8の左右方向に移動することができるようになっている。図8において、マルチリーフコリメータ33が上段のマルチリーフコリメータ33aのような態様となっている場合には、治療用放射線ビーム照射器7から照射される治療用放射線ビーム9を完全に遮断し、人体1に治療用放射線ビーム9が照射されることはない。ここで、左右一対の1組の遮蔽板33sが上段のマルチリーフコリメータ33aにおける矢印方向に(左右に)開いた場合には、中段のマルチリーフコリメータ33bに示すように開口部分(図8の黒塗り部分)が形成され、この開口部分を治療用放射線ビーム9が通過するようになる。さらに、人体1に対する治療用放射線ビーム9の照射位置を変動させる場合は、左右一対の遮蔽板33sが図8の中段のマルチリーフコリメータ33bにおける矢印方向に(共に左に)移動する。このようにして、図8の下段のマルチリーフコリメータ33cに示すように開口部分が移動する。このように、腫瘍3の動きに合わせてマルチリーフコリメータ33の態様が変化することにより、具体的には各遮蔽板33sが適宜移動することにより、人体1に対する治療用放射線ビーム9の照射位置を変動させることができる。ここで、このようなマルチリーフコリメータ33の制御は制御装置11からの制御信号に基づいている。
【0051】
本変形例の放射線治療システムにおける制御装置11の制御内容について大まかに説明すると、当該制御装置11は、撮像用放射線ビーム検出器17により生成された人体の内部の透視画像25が経時的に送られるようになっており、この経時的に送られる透視画像25の画像情報と、予め生成された様々な呼吸位相における基準透視画像とに基づいて、マルチリーフコリメータ33を制御することによって、人体1内の腫瘍3に対して治療用放射線ビーム照射器7から照射される治療用放射線ビーム9の照射位置を追従させるようこの照射位置を経時的に変動させるようになっている。
【0052】
次に、図7および図8に示すような放射線治療システムの動作について以下に説明する。あわせて、図9により、制御装置11による撮像用放射線ビーム照射器13や治療用放射線ビーム照射器7、マルチリーフコリメータ33等の制御内容についても説明する。なお、この制御内容の説明において、図3に示すような制御内容と同一部分については詳細な説明は省略する。
【0053】
まず、人体1の治療工程を行う前に、図9のStep1に示すように治療計画を作成する。具体的には、人体1の内部のCT画像(以下、第1CT画像という。)を生成する。ここで、図3のStep1による治療計画作成工程と異なり、図9のStep1においては様々な呼吸位相における複数の第1CT画像を生成するようになっている。そして、様々な呼吸位相の各々について、治療用放射線ビーム9の、人体1の腫瘍3に対する照射方向および照射線量の計画を予め作成する。ここで、治療用放射線ビーム9の照射線量の計画の作成を行うにあたり、呼吸位相が異なると、人体1の腫瘍3に対する治療用放射線ビーム9の照射方向と照射線量との関係が変化することに留意すべきである。具体的には、図13に示すように、治療用放射線ビーム9が人体1の腫瘍3に照射される際に、人体1の腫瘍3に対する治療用放射線ビーム9の照射方向が同じである場合であっても、呼吸位相によって変化するような腫瘍3の位置によって、この人体1内の組織に吸収される治療用放射線ビーム9の量も異なることとなる(図13の斜線部分参照)。なお、図13は、呼期のピーク時および吸期のピーク時における同方向からの治療用放射線ビーム9の照射を模式的に示す図である。このように、図9のStep1に示すような治療計画の作成工程においては、上記事項も考慮して様々な呼吸位相における治療用放射線ビーム9の、人体1の腫瘍3に対する照射方向および照射線量の計画を各呼吸位相ごとに予め作成することとなる。
【0054】
次に、図9のStep2に示すように、人体1を中心として回転ガントリ機構35を回転させながら撮像用放射線ビーム照射器13および撮像用放射線ビーム検出器17により人体1の体内の透視画像25(図4参照)を複数生成する。ここで、Step2において得られる透視画像25は、様々な呼吸位相におけるものとなっている。
【0055】
次に、図9のStep3に示すように、Step2で生成された複数の透視画像25に基づいて各呼吸位相における複数の第2CT画像が生成される。このような複数の第2CT画像の生成方法は、図3のStep3による方法(具体的には、投影再構成法)と略同一である。
【0056】
次に、図9のStep4に示すように、制御装置11において、Step3で得られた各呼吸位相における複数の第2CT画像のうち一の第2CT画像について、Step1で得られた複数の第1CT画像のうち最も近似するような一の第1CT画像を選択する。そして、このような互いに関連性のある第1CT画像および第2CT画像により、寝台39の位置を調整する。具体的には、治療計画の作成時において一の第1CT画像上に設定された照射時の回転中心(アイソセンタ)と、一の第2CT画像の画像中心とを一致させる。次に、一の第1CT画像と、一の第2CT画像とが最も一致するように、一方のCT画像を3軸方向に平行移動させ、あるいは一方のCT画像を3軸の周りに回転させる。このことにより、第2CT画像の画像中心が治療計画時の回転中心に一致するように、寝台39の位置または角度を補正することができる。このようにして患者(人体1)の位置決め(または位置合わせ)が行われる。
【0057】
次に、図9のStep5に示すように、Step1で生成された複数の第1CT画像と、Step3で生成された複数の第2CT画像について、各々の第1CT画像について最も近似するような第2CT画像を選択し、この第2CT画像に係る透視画像25を関連づけさせる。すなわち、呼期のピーク時から吸期のピーク時にいたる様々な呼吸位相において、第1CT画像と第2CT画像とを関連付けさせ、このことにより、各呼吸位相において第2CT画像を生成する際に用いた様々なガントリ角の透視画像25を、第1CT画像に関連付けさせる。ここで、第1CT画像に関連付けさせられる透視画像25を基準透視画像とする。
【0058】
次に、図9のStep6に示すように、治療用放射線ビーム照射器7による人体1に対する治療用放射線ビーム9の照射を開始する。ここでは、図3のStep6と異なり、人体1に対して治療用放射線ビーム9を途切れることなく連続的に照射させる。この際に、撮像用放射線ビーム照射器13から撮像用放射線ビーム15を人体1に当て続けることにより、人体1の内部の透視画像25を経時的に生成する。そして、この経時的に生成される透視画像25の画像情報と、様々な呼吸位相における複数の第1CT画像に関連する各基準透視画像の画像情報とを比較し、最も近似する基準画像情報に対応する第1CT画像に基づいて、治療用放射線ビーム9の照射位置をマルチリーフコリメータ33により経時的に変動させる。具体的には、様々な呼吸位相において対応する第1CT画像がStep1において設定されているが、Step6において撮像用放射線ビーム検出器17によって生成される透視画像25により、対応する第1CT画像を選択することができるので、この第1CT画像に関する呼吸位相を特定することができる。このことにより、この呼吸位相に対応する腫瘍3の位置を第1CT画像から特定することができるので、この腫瘍3に治療用放射線ビーム9の照射位置を追従させるよう、当該治療用放射線ビーム9の照射位置をマルチリーフコリメータ33により変動させることができる。なお、ここで、周期的に往復移動する腫瘍3に対して治療用放射線ビーム9の照射位置を追従させる場合には、前述のように呼吸位相が異なるとガントリ角が同一であっても治療用放射線ビーム9の照射線量が異なることとなるが、様々な呼吸位相に係る複数の第1CT画像について、Step1において各呼吸位相ごとに、治療用放射線ビーム9の、人体1の腫瘍3に対する照射方向および照射線量の計画を作成しているので、呼吸位相が変化した場合であっても治療用放射線ビーム9の照射方向および照射線量を適切なものとすることができる。
【0059】
最後に、Step7に示すように、腫瘍3における治療用放射線ビーム9の吸収線量が、Step1の治療計画において予め定められた設定量に達したか否かが制御装置11によって判定される。腫瘍3における治療用放射線ビーム9の吸収線量が設定量に達していない場合は、Step6に示すような治療用放射線ビーム照射器7による人体1に対する治療用放射線ビーム9の照射が続けられる。一方、腫瘍3における治療用放射線ビーム9の吸収線量が設定量に達した場合は、一連の治療が終了したことが制御装置11によって検出される。
【0060】
以上のように図7乃至図9に示すような放射線治療システムによれば、人体1内の腫瘍3の治療を行う際に、撮像用放射線ビーム照射器13および撮像用放射線ビーム検出器17によって人体1の内部の透視画像25を経時的に生成させ、この経時的に生成される透視画像25の画像情報と、予め生成された各呼吸位相における基準透視画像の画像情報とに基づいて、治療用放射線ビーム照射器7から照射される治療用放射線ビーム9の照射位置を人体1内の腫瘍3に追従させるようこの照射位置を経時的に変動させるようになっている。このことにより、人体1の呼吸により腫瘍3の位置が周期的に変化するにもかかわらず、この腫瘍3の位置の変動に対応して治療用放射線ビーム9の照射位置を変動させることにより常に腫瘍3に治療用放射線ビーム9が当たるようにしているので、周期的に往復移動を行う腫瘍3に対して治療用放射線ビーム9を精度良く照射させることができるようになる。
【0061】
なお、図9に示すような制御が行われる放射線治療システムにおいては、治療用放射線ビーム9の照射位置を変動させる機構はマルチリーフコリメータ33に限定されることはなく、他の種類のコリメータを用いてもよい。また、コリメータ以外のものであっても、治療用放射線ビーム9の照射位置を経時的に変動させることができるものであれば、様々な種類の照射位置変動機構を使用することができる。
【0062】
次に、本発明における放射線治療システムの更に他の構成について、図10および図11を用いて説明する。
【0063】
具体的には、図10および図11に示すような放射線治療システムは、図7乃至図9に示すような放射線治療システムと比較して、周期的に移動する腫瘍に対して治療用放射線ビームの照射位置を追従させるようこの照射位置を経時的に変動させる代わりに、腫瘍の周期的な移動に合わせて人体を載置した寝台を経時的に移動させる点が異なるのみであり、他は実質的に図7乃至図9に示すような放射線治療システムと同様の構成を有している。
図10および図11に示すような放射線治療システムの変形例に係る説明において、図1乃至図3に示すような放射線治療システム、あるいは図7乃至図9に示すような放射線治療システムと同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0064】
本変形例の放射線治療システムにおける制御装置11の制御内容について大まかに説明すると、当該制御装置11は、撮像用放射線ビーム検出器17により生成された人体の内部の透視画像25が経時的に送られるようになっており、この経時的に送られる透視画像25の画像情報と、予め生成された様々な呼吸位相における基準透視画像とに基づいて、治療用放射線ビーム照射器7から照射される治療用放射線ビーム9が人体1内の腫瘍3を常に照射するよう寝台39を経時的に移動させるようになっている。なお、この寝台39は図10に示すように制御装置11に通信接続されている。
【0065】
以下、図11により、制御装置11による撮像用放射線ビーム照射器13や治療用放射線ビーム照射器7、寝台39等の制御内容について説明する。なお、この制御内容の説明において、図9に示すような制御内容と同一部分については詳細な説明は省略する。
【0066】
まず、人体1の治療工程を行う前に、図11のStep1に示すように治療計画を作成する。具体的には、人体1の内部のCT画像(以下、第1CT画像という。)を生成する。ここで、図9のStep1による治療計画作成工程と同様に、図11のStep1においては様々な呼吸位相における複数の第1CT画像を生成するようになっている。また、図11のStep1においては、図9のStep1による治療計画作成工程と同様に、様々な呼吸位相における治療用放射線ビーム9の、人体1の腫瘍3に対する照射方向および照射線量の計画を各呼吸位相ごとに予め作成するようになっている。さらに、図11のStep1においては、各呼吸位相におけるそれぞれの第1CT画像について、腫瘍3の参照点座標、具体的には腫瘍3の重心位置に係る座標を設定し、この設定された座標を制御装置11に保存させる。
【0067】
次に、図11のStep2に示すように、人体1を中心として回転ガントリ機構35を回転させながら撮像用放射線ビーム照射器13および撮像用放射線ビーム検出器17により人体1の体内の透視画像25(図4参照)を複数生成する。ここで、Step2において得られる透視画像25は、様々な呼吸位相におけるものとなっている。
【0068】
次に、図11のStep3に示すように、Step2で生成された複数の透視画像25に基づいて各呼吸位相における複数の第2CT画像が生成される。このような複数の第2CT画像の生成方法は、図3のStep3による方法と略同一(具体的には、投影再構成法)である。
【0069】
次に、図11のStep4に示すように、制御装置11において、Step3で得られた各呼吸位相における複数の第2CT画像のうち一の第2CT画像について、Step1で得られた複数の第1CT画像のうち最も近似するような一の第1CT画像を選択する。そして、このような互いに関連性のある第1CT画像および第2CT画像により、寝台39の初期位置を調整する。ここで、寝台39の初期位置の設定方法は、図9のStep3による方法と略同一である。
【0070】
次に、図11のStep5に示すように、Step1で生成された複数の第1CT画像と、Step3で生成された複数の第2CT画像について、各々の第1CT画像について最も近似するような第2CT画像を選択し、この第2CT画像に係る透視画像25を関連づけさせる。すなわち、呼期のピーク時から吸期のピーク時にいたる様々な呼吸位相において、第1CT画像と第2CT画像とを関連付けさせ、このことにより、各呼吸位相において第2CT画像を生成する際に用いた様々なガントリ角の透視画像25を、第1CT画像に関連付けさせる。ここで、第1CT画像に関連付けさせられる透視画像25を基準透視画像とする。
【0071】
次に、図11のStep6に示すように、治療用放射線ビーム照射器7による人体1に対する治療用放射線ビーム9の照射を開始する。ここでは、図9のStep6と同様に、人体1に対して治療用放射線ビーム9を途切れることなく連続的に照射させる。この際に、撮像用放射線ビーム照射器13から撮像用放射線ビーム15を人体1に当て続けることにより、人体1の内部の透視画像25を経時的に生成する。そして、この経時的に生成される透視画像25の画像情報と、様々な呼吸位相における複数の第1CT画像に関連する各基準透視画像の画像情報とを比較し、最も近似する基準画像情報に対応する第1CT画像に基づいて、当該第1CT画像に対応するよう設定された参照点座標を演算する。そして、治療用放射線ビーム照射器7から照射される治療用放射線ビーム9の照射箇所が、この第1CT画像に対応して設定される参照点座標に位置するよう、人体1を載置した寝台39を経時的に移動させるようになっている。具体的には、制御装置11は、寝台39を3軸方向に平行移動させるとともに当該寝台39を3軸の周りに回転させることにより、寝台39を適切な箇所、すなわち治療用放射線ビーム照射器7から照射される治療用放射線ビーム9が人体1の腫瘍3に常に当たるような箇所に絶えず位置させることとなる。なお、ここで、周期的に往復移動する腫瘍3に治療用放射線ビーム9の照射位置を追従させる場合には、前述のように呼吸位相が異なるとガントリ角が同一であっても治療用放射線ビーム9の照射線量が異なることとなるが、様々な呼吸位相に係る複数の第1CT画像について、Step1において各呼吸位相ごとに、治療用放射線ビーム9の、人体1の腫瘍3に対する照射方向および照射線量の計画を作成しているので、呼吸位相が変化した場合であっても治療用放射線ビーム9の照射方向および照射線量を適切なものとすることができる。
【0072】
最後に、Step7に示すように、腫瘍3における治療用放射線ビーム9の吸収線量が、Step1の治療計画において予め定められた設定量に達したか否かが制御装置11によって判定される。腫瘍3における治療用放射線ビーム9の吸収線量が設定量に達していない場合は、Step6に示すような治療用放射線ビーム照射器7による人体1に対する治療用放射線ビーム9の照射が続けられる。一方、腫瘍3における治療用放射線ビーム9の吸収線量が設定量に達した場合は、一連の治療が終了したことが制御装置11によって検出される。
【0073】
以上のように図10および図11に示すような放射線治療システムによれば、人体1内の腫瘍3の治療を行う際に、撮像用放射線ビーム照射器13および撮像用放射線ビーム検出器17によって人体1の内部の透視画像25を経時的に生成させ、この経時的に生成される透視画像25の画像情報と、予め生成された各呼吸位相における基準透視画像の画像情報とに基づいて、治療用放射線ビーム照射器7から照射される治療用放射線ビーム9が人体1内の腫瘍3を常に照射するよう寝台39を経時的に移動させるようになっている。このことにより、人体1の呼吸により腫瘍3の位置が周期的に変化するにもかかわらず、この腫瘍3の位置の変動に対応して寝台39を移動させることにより常に腫瘍3に治療用放射線ビーム9が当たるようにしているので、周期的に往復移動を行う腫瘍3に対して治療用放射線ビーム9を精度良く照射させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一の実施の形態における放射線治療システムの構成を示す概略斜視図である。
【図2】図1に示す放射線治療システムの概略構成図である。
【図3】図1、図2に示す放射線治療システムの制御装置における制御内容を示すブロック図である。
【図4】図1、図2に示す放射線治療システムの人体内撮像装置により得られる人体の内部の透視画像である。
【図5】図4に示す透視画像における横隔膜の位置変動を示す図である。
【図6】図5に示す横隔膜の位置変動から求められる呼吸位相を示す図である。
【図7】本発明における他の放射線治療システムの構成を示す概略斜視図である。
【図8】図7に示す放射線治療システムにおけるマルチリーフコリメータの概略構成図である。
【図9】図7、図8に示す放射線治療システムの制御装置における制御内容を示すブロック図である。
【図10】本発明における更に他の放射線治療システムの構成を示す概略斜視図である。
【図11】図10に示す放射線治療システムの制御装置における制御内容を示すブロック図である。
【図12】人体内の腫瘍に対する治療用放射線ビームの照射状態を模式的に示す図である。
【図13】人体内の腫瘍に対する治療用放射線ビームの照射状態を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0075】
1 人体
3 腫瘍
5 横隔膜
7、7´ 治療用放射線ビーム照射器
9 治療用放射線ビーム
11 制御装置
13 撮像用放射線ビーム照射器
15 撮像用放射線ビーム
17 撮像用放射線ビーム検出器
19、21、23 ケーブル
25 透視画像
27 枠
29 境界線
31 呼期のピーク時
33 マルチリーフコリメータ
33s 遮蔽板
35 回転ガントリ機構
37 表示装置
39 寝台
43 ケーブル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体内の治療対象部分に対して放射線ビームを照射することにより当該治療対象部分の治療を行う放射線治療システムであって、
人体に撮像用放射線ビームを照射することにより当該人体の内部の透視画像を生成する人体内撮像装置と、
人体に治療用放射線ビームを照射する治療用放射線ビーム照射装置と、
前記人体内撮像装置および前記治療用放射線ビーム照射装置を制御する制御装置であって、前記人体内撮像装置によって人体の内部の透視画像を経時的に生成させ、この経時的に生成される透視画像の画像情報が、予め生成された特定の呼吸位相における基準透視画像の画像情報と略一致したときに、治療用放射線ビーム照射装置によって人体内の治療対象部分に対して治療用放射線ビームを照射させるような制御を行う制御装置と、
を備えたことを特徴とする放射線治療システム。
【請求項2】
前記制御装置における予め生成された基準透視画像の特定の呼吸位相は呼期または吸期のピーク時であることを特徴とする請求項1記載の放射線治療システム。
【請求項3】
前記人体内撮像装置は、前記治療対象部分および当該治療対象部分よりも大きく人体の呼吸に連動する体内基準部分をそれぞれ含むような透視画像を生成するようになっており、
前記制御装置は、経時的に生成される透視画像における体内基準部分が、基準透視画像における体内基準部分と略一致したときに、治療用放射線ビーム照射装置によって人体内の治療対象部分に対して治療用放射線ビームを照射させるような制御を行うようになっていることを特徴とする請求項1または2記載の放射線治療システム。
【請求項4】
前記体内基準部分は人体内の横隔膜であることを特徴とする請求項3記載の放射線治療システム。
【請求項5】
前記制御装置は、人体の治療前において特定の呼吸位相における人体の内部の第1CT画像が予め入力されており、前記人体内撮像装置によって人体に対する撮像用放射線ビームの照射方向を変えながら人体の内部の透視画像を複数生成し、これらの複数の透視画像に基づいて様々な呼吸位相における複数の第2CT画像を生成し、これらの複数の第2CT画像から前記第1CT画像に最も近似するような一の第2CT画像を選択し、当該一の第2CT画像に対応する呼吸位相に係る透視画像を基準透視画像に設定するようになっていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の放射線治療システム。
【請求項6】
前記制御装置は、基準透視画像の前記設定を行う際に、投影再構成法によって同一の呼吸位相時における複数の透視画像から第2CT画像を生成するようになっていることを特徴とする請求項5記載の放射線治療システム。
【請求項7】
人体を載置するための載置台が更に設けられており、この載置台は前記制御装置によりその位置が予め一定の箇所に設定されるようになっており、
前記制御装置は、基準透視画像の前記設定を行う際に、複数の第2CT画像のうち前記第1CT画像に最も近似するような一の第2CT画像と前記第1CT画像との位置ずれ量に基づいて前記載置台の位置を予め設定するようになっていることを特徴とする請求項5または6記載の放射線治療システム。
【請求項8】
人体内の治療対象部分に対して放射線ビームを照射することにより当該治療対象部分の治療を行う放射線治療システムであって、
人体に撮像用放射線ビームを照射することにより当該人体の内部の透視画像を生成する人体内撮像装置と、
人体に治療用放射線ビームを照射する治療用放射線ビーム照射装置であって、当該治療用放射線ビームの照射位置を変動させることができるような治療用放射線ビーム照射装置と、
前記人体内撮像装置および前記治療用放射線ビーム照射装置を制御する制御装置であって、前記人体内撮像装置によって人体の内部の透視画像を経時的に生成させ、この経時的に生成される透視画像の画像情報と、予め生成された各呼吸位相における基準透視画像の画像情報とに基づいて、治療用放射線ビーム照射装置から照射される治療用放射線ビームの照射位置を人体内の治療対象部分に追従させるようこの照射位置を経時的に変動させるような制御を行う制御装置と、
を備えたことを特徴とする放射線治療システム。
【請求項9】
前記治療用放射線ビーム照射装置はコリメータを有し、当該コリメータが治療用放射線ビームの照射位置を変動させるようになっていることを特徴とする請求項8記載の放射線治療システム。
【請求項10】
前記コリメータはマルチリーフコリメータであることを特徴とする請求項9記載の放射線治療システム。
【請求項11】
前記制御装置は、人体の治療前において様々な呼吸位相における人体の内部の複数の第1CT画像が予め入力されており、前記人体内撮像装置によって人体に対する撮像用放射線ビームの照射方向を変えながら人体の内部の透視画像を複数生成し、これらの複数の透視画像に基づいて様々な呼吸位相における複数の第2CT画像を生成し、これらの複数の第2CT画像と前記複数の第1CT画像とを比較して各第1CT画像について最も近似する第2CT画像に係る透視画像を関連づけさせて基準透視画像とし、前記治療用放射線ビーム照射装置によって人体に治療用放射線ビームを照射する際に、前記人体内撮像装置により得られる人体の内部の透視画像に係る画像情報と、前記複数の第1CT画像にそれぞれ関連する各基準透視画像の画像情報とを比較して、最も近似する画像情報に係る第1CT画像に基づいて、治療用放射線ビーム照射装置から照射される治療用放射線ビームの照射位置を経時的に変動させるような制御を行うようになっていることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の放射線治療システム。
【請求項12】
人体を載置するための載置台が更に設けられており、この載置台は前記制御装置によりその位置が予め一定の箇所に設定されるようになっており、
前記制御装置は、前記治療用放射線ビーム照射装置によって人体に治療用放射線ビームを照射する前に、前記人体内撮像装置によって得られる複数の第2CT画像のうち一の第2CT画像について最も近似するような第1CT画像と当該一の第2CT画像との位置ずれ量に基づいて前記載置台の位置を予め設定するようになっていることを特徴とする請求項11記載の放射線治療システム。
【請求項13】
人体内の治療対象部分に対して放射線ビームを照射することにより当該治療対象部分の治療を行う放射線治療システムであって、
人体を載置するための載置台と、
載置台に載置された人体に撮像用放射線ビームを照射することにより当該人体の内部の透視画像を生成する人体内撮像装置と、
載置台に載置された人体に治療用放射線ビームを照射する治療用放射線ビーム照射装置と、
前記載置台、前記人体内撮像装置および前記治療用放射線ビーム照射装置を制御する制御装置であって、前記人体内撮像装置によって人体の内部の透視画像を経時的に生成させ、この経時的に生成される透視画像の画像情報と、人体の治療前において予め生成された各呼吸位相における基準透視画像の画像情報とに基づいて、治療用放射線ビーム照射装置から照射される治療用放射線ビームが人体内の治療対象部分を常に照射するよう前記載置台を経時的に移動させるような制御を行う制御装置と、
を備えたことを特徴とする放射線治療システム。
【請求項14】
前記制御装置は、人体の治療前において様々な呼吸位相における人体の内部の複数の第1CT画像および各第1CT画像に対応する治療対象部分の座標が予め入力されており、前記人体内撮像装置によって人体に対する撮像用放射線ビームの照射方向を変えながら人体の内部の透視画像を複数生成し、これらの複数の透視画像に基づいて様々な呼吸位相における複数の第2CT画像を生成し、これらの複数の第2CT画像と前記複数の第1CT画像とを比較して各第1CT画像について最も近似する第2CT画像に係る透視画像を関連づけさせて基準透視画像とし、前記治療用放射線ビーム照射装置によって人体に治療用放射線ビームを照射する際に、前記人体内撮像装置により得られる人体の内部の透視画像に係る画像情報と、前記複数の第1CT画像にそれぞれ関連する各基準透視画像の画像情報とを比較して、最も近似する画像情報に係る第1CT画像に対応する治療対象部分の座標に基づいて、前記載置台を経時的に変動させるようになっていることを特徴とする請求項13に記載の放射線治療システム。
【請求項15】
前記制御装置は、前記治療用放射線ビーム照射装置によって人体に治療用放射線ビームを照射する前に、人体内撮像装置によって得られる複数の第2CT画像のうち一の第2CT画像について最も近似するような第1CT画像と当該一の第2CT画像との位置ずれ量に基づいて前記載置台の初期位置を設定するようになっていることを特徴とする請求項13または14記載の放射線治療システム。
【請求項1】
人体内の治療対象部分に対して放射線ビームを照射することにより当該治療対象部分の治療を行う放射線治療システムであって、
人体に撮像用放射線ビームを照射することにより当該人体の内部の透視画像を生成する人体内撮像装置と、
人体に治療用放射線ビームを照射する治療用放射線ビーム照射装置と、
前記人体内撮像装置および前記治療用放射線ビーム照射装置を制御する制御装置であって、前記人体内撮像装置によって人体の内部の透視画像を経時的に生成させ、この経時的に生成される透視画像の画像情報が、予め生成された特定の呼吸位相における基準透視画像の画像情報と略一致したときに、治療用放射線ビーム照射装置によって人体内の治療対象部分に対して治療用放射線ビームを照射させるような制御を行う制御装置と、
を備えたことを特徴とする放射線治療システム。
【請求項2】
前記制御装置における予め生成された基準透視画像の特定の呼吸位相は呼期または吸期のピーク時であることを特徴とする請求項1記載の放射線治療システム。
【請求項3】
前記人体内撮像装置は、前記治療対象部分および当該治療対象部分よりも大きく人体の呼吸に連動する体内基準部分をそれぞれ含むような透視画像を生成するようになっており、
前記制御装置は、経時的に生成される透視画像における体内基準部分が、基準透視画像における体内基準部分と略一致したときに、治療用放射線ビーム照射装置によって人体内の治療対象部分に対して治療用放射線ビームを照射させるような制御を行うようになっていることを特徴とする請求項1または2記載の放射線治療システム。
【請求項4】
前記体内基準部分は人体内の横隔膜であることを特徴とする請求項3記載の放射線治療システム。
【請求項5】
前記制御装置は、人体の治療前において特定の呼吸位相における人体の内部の第1CT画像が予め入力されており、前記人体内撮像装置によって人体に対する撮像用放射線ビームの照射方向を変えながら人体の内部の透視画像を複数生成し、これらの複数の透視画像に基づいて様々な呼吸位相における複数の第2CT画像を生成し、これらの複数の第2CT画像から前記第1CT画像に最も近似するような一の第2CT画像を選択し、当該一の第2CT画像に対応する呼吸位相に係る透視画像を基準透視画像に設定するようになっていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の放射線治療システム。
【請求項6】
前記制御装置は、基準透視画像の前記設定を行う際に、投影再構成法によって同一の呼吸位相時における複数の透視画像から第2CT画像を生成するようになっていることを特徴とする請求項5記載の放射線治療システム。
【請求項7】
人体を載置するための載置台が更に設けられており、この載置台は前記制御装置によりその位置が予め一定の箇所に設定されるようになっており、
前記制御装置は、基準透視画像の前記設定を行う際に、複数の第2CT画像のうち前記第1CT画像に最も近似するような一の第2CT画像と前記第1CT画像との位置ずれ量に基づいて前記載置台の位置を予め設定するようになっていることを特徴とする請求項5または6記載の放射線治療システム。
【請求項8】
人体内の治療対象部分に対して放射線ビームを照射することにより当該治療対象部分の治療を行う放射線治療システムであって、
人体に撮像用放射線ビームを照射することにより当該人体の内部の透視画像を生成する人体内撮像装置と、
人体に治療用放射線ビームを照射する治療用放射線ビーム照射装置であって、当該治療用放射線ビームの照射位置を変動させることができるような治療用放射線ビーム照射装置と、
前記人体内撮像装置および前記治療用放射線ビーム照射装置を制御する制御装置であって、前記人体内撮像装置によって人体の内部の透視画像を経時的に生成させ、この経時的に生成される透視画像の画像情報と、予め生成された各呼吸位相における基準透視画像の画像情報とに基づいて、治療用放射線ビーム照射装置から照射される治療用放射線ビームの照射位置を人体内の治療対象部分に追従させるようこの照射位置を経時的に変動させるような制御を行う制御装置と、
を備えたことを特徴とする放射線治療システム。
【請求項9】
前記治療用放射線ビーム照射装置はコリメータを有し、当該コリメータが治療用放射線ビームの照射位置を変動させるようになっていることを特徴とする請求項8記載の放射線治療システム。
【請求項10】
前記コリメータはマルチリーフコリメータであることを特徴とする請求項9記載の放射線治療システム。
【請求項11】
前記制御装置は、人体の治療前において様々な呼吸位相における人体の内部の複数の第1CT画像が予め入力されており、前記人体内撮像装置によって人体に対する撮像用放射線ビームの照射方向を変えながら人体の内部の透視画像を複数生成し、これらの複数の透視画像に基づいて様々な呼吸位相における複数の第2CT画像を生成し、これらの複数の第2CT画像と前記複数の第1CT画像とを比較して各第1CT画像について最も近似する第2CT画像に係る透視画像を関連づけさせて基準透視画像とし、前記治療用放射線ビーム照射装置によって人体に治療用放射線ビームを照射する際に、前記人体内撮像装置により得られる人体の内部の透視画像に係る画像情報と、前記複数の第1CT画像にそれぞれ関連する各基準透視画像の画像情報とを比較して、最も近似する画像情報に係る第1CT画像に基づいて、治療用放射線ビーム照射装置から照射される治療用放射線ビームの照射位置を経時的に変動させるような制御を行うようになっていることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の放射線治療システム。
【請求項12】
人体を載置するための載置台が更に設けられており、この載置台は前記制御装置によりその位置が予め一定の箇所に設定されるようになっており、
前記制御装置は、前記治療用放射線ビーム照射装置によって人体に治療用放射線ビームを照射する前に、前記人体内撮像装置によって得られる複数の第2CT画像のうち一の第2CT画像について最も近似するような第1CT画像と当該一の第2CT画像との位置ずれ量に基づいて前記載置台の位置を予め設定するようになっていることを特徴とする請求項11記載の放射線治療システム。
【請求項13】
人体内の治療対象部分に対して放射線ビームを照射することにより当該治療対象部分の治療を行う放射線治療システムであって、
人体を載置するための載置台と、
載置台に載置された人体に撮像用放射線ビームを照射することにより当該人体の内部の透視画像を生成する人体内撮像装置と、
載置台に載置された人体に治療用放射線ビームを照射する治療用放射線ビーム照射装置と、
前記載置台、前記人体内撮像装置および前記治療用放射線ビーム照射装置を制御する制御装置であって、前記人体内撮像装置によって人体の内部の透視画像を経時的に生成させ、この経時的に生成される透視画像の画像情報と、人体の治療前において予め生成された各呼吸位相における基準透視画像の画像情報とに基づいて、治療用放射線ビーム照射装置から照射される治療用放射線ビームが人体内の治療対象部分を常に照射するよう前記載置台を経時的に移動させるような制御を行う制御装置と、
を備えたことを特徴とする放射線治療システム。
【請求項14】
前記制御装置は、人体の治療前において様々な呼吸位相における人体の内部の複数の第1CT画像および各第1CT画像に対応する治療対象部分の座標が予め入力されており、前記人体内撮像装置によって人体に対する撮像用放射線ビームの照射方向を変えながら人体の内部の透視画像を複数生成し、これらの複数の透視画像に基づいて様々な呼吸位相における複数の第2CT画像を生成し、これらの複数の第2CT画像と前記複数の第1CT画像とを比較して各第1CT画像について最も近似する第2CT画像に係る透視画像を関連づけさせて基準透視画像とし、前記治療用放射線ビーム照射装置によって人体に治療用放射線ビームを照射する際に、前記人体内撮像装置により得られる人体の内部の透視画像に係る画像情報と、前記複数の第1CT画像にそれぞれ関連する各基準透視画像の画像情報とを比較して、最も近似する画像情報に係る第1CT画像に対応する治療対象部分の座標に基づいて、前記載置台を経時的に変動させるようになっていることを特徴とする請求項13に記載の放射線治療システム。
【請求項15】
前記制御装置は、前記治療用放射線ビーム照射装置によって人体に治療用放射線ビームを照射する前に、人体内撮像装置によって得られる複数の第2CT画像のうち一の第2CT画像について最も近似するような第1CT画像と当該一の第2CT画像との位置ずれ量に基づいて前記載置台の初期位置を設定するようになっていることを特徴とする請求項13または14記載の放射線治療システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図4】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図4】
【公開番号】特開2008−154861(P2008−154861A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−348184(P2006−348184)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(500321704)エレクタ、アクチボラグ (18)
【氏名又は名称原語表記】ELEKTA AB
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(500321704)エレクタ、アクチボラグ (18)
【氏名又は名称原語表記】ELEKTA AB
【Fターム(参考)】
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