説明

放射線治療装置の照射計画立案方法および照射計画装置

【課題】
本発明の目的は、短期間で治療計画を立案することが出来る放射線治療装置の照射計画立案方法および照射計画装置を提供することである。
【解決手段】
本発明は、照射計画時に放射線治療装置と治療寝台および患者との物理的干渉を事前にチェックすることができ、治療実施時に物理的干渉による手戻りの発生を無くすことの出来る放射線治療装置の照射計画立案方法および照射計画装置を備える。
また、本発明は、放射線治療装置と治療寝台および患者との物理的干渉と、患者の危険臓器への照射とはならない照射方向を視覚的に表示することにより、従来よりも短期間で治療計画を立案することが出来る放射線治療装置の照射計画立案方法および照射計画装置を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療装置により放射線治療を行う際に立案する照射計画の照射計画立案方法および照射計画立案のための照射計画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療においては、患者の患部(癌病巣部)に照射する放射線の照射精度を上げ、また、患部以外の正常な細胞組織に放射線が照射されるのを防ぐことが従来から行われてきた。これにより、1回の照射治療で患部に照射される放射線量を増やし、逆に周囲にある正常な細胞組織に照射される照射量を極力減らすことができる。そして、患部に対する照射治療の回数を減らすことができる。その結果、患者の身体的負担を軽減できるほか、正常な細胞組織に対する放射線照射の影響を最小限に抑えることができる。
【0003】
しかし、実際に患部のみに対して精度良く放射線を照射するためには、放射線を患部に対してどのような角度から、またどの位の照射線量を照射するのか等、綿密な照射計画を立案する必要がある。
【0004】
例えば、照射計画において、患部に対する放射線の照射角度および照射線量が決められて、いざ照射を開始しようとしても、設定された角度において放射線治療装置の放射線放射部から見た患部が放射線放射部の死角に入っていて照射出来ない場合や、放射線治療装置と治療用寝台や患者自身が物理的に干渉してしまい、照射計画を初めから立案し直さなくてはならない場合がある。また、物理的な干渉は無いものの、内臓の危険臓器に対する照射線量が大きいために、当初設定された角度からの照射を断念せざるを得ない場合もある。このように照射計画を再立案する場合、治療にかかる時間が増加し、患者にかかる身体的および精神的負担が増える上、治療スタッフへの負荷も大きくなる。
【0005】
ここで、放射線治療装置と患者および治療用寝台の相対的な位置関係、そしてそれぞれの包括領域を明確化させるために、従来の放射線治療装置の概略構成および動作原理について説明する。
【0006】
従来の放射線治療装置の全体構成を図1に示す。従来の放射線治療装置1は、患者Pを寝かせる治療用寝台9と、治療用の放射線を放射する放射線発生装置2および患者Pの体内にある患部の位置を確認するための透視画像を取得するための複数の放射線源(イメージャ)13a、13bとを備えている。
【0007】
以下に、患者Pの患部に放射線を照射するため、患者Pの患部中心に放射線発生装置2の放射線軸Aを位置合わせする際の放射線治療装置1、患者Pおよび治療用寝台9の動作を説明する。
【0008】
放射線治療前にX線CTスキャナー(Computed Tomography Scanner)により患者Pの患部近傍のCT断層像が撮影される。複数の2次元CT画像を元に、指定された臓器および患部(癌病巣部)の3次元DRR(Digital Reconstructed Radiograph)画像が再構成される。このDRR画像に基づき、患部に照射される放射線の方向、照射領域および放射線量が決められて照射計画が作成される。照射計画が作成されると、コンピュータにより線量分布シミュレーションが実行され、患部と臓器部分における放射線吸収量が算出される。シミュレーションにより、患部における放射線量が十分かどうかの確認が行われ、問題が無ければ放射線治療の段階となる。
【0009】
放射線治療においては、図1に示されているように患者Pが治療用寝台9に寝かされて固定される。治療用寝台9が患者Pの患部中心をアイソセンタ10に位置させるように移動調整される。患者Pの患部がおおよそアイソセンタ10に設定されると、放射線源(イメージャ)13a、13bから透視画像取得のための放射線がそれぞれ放射線軸E,Fに沿って放射され、患者Pの患部領域の画像がイメージャ用検出器14aおよび14bにより取得される。取得されたイメージャ13a、13bの画像は解析装置7に入力される。解析装置7には、既に治療計画時に作成されて患部の位置情報を備えた3次元DRR画像が入力されている。3次元DRR画像における患部の位置と取得された現在のイメージャー画像との相対位置関係から、現在の患部がアイソセンタ10に対してどの位ズレているのかが算出される。算出された患部とアイソセンタ10とのズレ量のデータは解析装置7から制御装置8へ入力される。制御装置8は、入力されたズレ量のデータに基づいて、治療用寝台9の位置、ガイド3の旋回角Rおよび回転部材15のガイド3に対する走行角Sを適宜最適な組み合わせで移動調整することにより、患部中心をアイソセンタ10に移動させる。
【0010】
しかし既述したように、このような動作をさせようとしても、設定された照射角度において放射線治療装置の放射線放射部のから見た患部が放射線治療装置の死角に入っていて照射出来ない場合や、放射線治療装置と治療用寝台や患者自身が物理的に干渉してしまい、照射計画を初めから立案し直さなくてはならない場合が出てきてしまう。また、物理的な干渉は無いものの、内臓の危険臓器に対する照射量が大きいために、当初設定された照射角度からの照射を断念せざるを得ない場合が出てきてしまい、危険臓器への吸収線量が確認されながら試行錯誤が繰り返されて照射角度が再設定される。
【0011】
このような技術に関連して、以下に示すような提案がなされている。
【0012】
特開平5−337208号公報に開示されている「定位的放射線治療装置の治療計画作成方法及び治療計画装置」では、治療用ガントリと治療台の回転運動を組み合わせて、多方向から定位的に一点に集中させて放射線を照射して治療する定位的放射線治療装置の線量計画、治療条件決定等を行う治療計画作成方法において、治療台図及び治療用ガントリ図及び患者の病巣部図および患者の全体図を、病巣部をアイソセンタとして実配置に成るようにして、表示画面に表示すると共に、この表示画面から治療条件の設定および点検を行うようにした定位的放射線治療装置の放射計画作成方法が提案されている。
【0013】
【特許文献1】特開平5−337208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、短期間で照射計画を立案することが出来る放射線治療装置の照射計画立案方法および照射計画装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
以下に、[発明を実施するための最良の形態]で使用する番号・符号を括弧付きで用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、[特許請求の範囲]の記載と[発明を実施するための最良の形態]の記載との対応関係を明らかにするために付加されたものであるが、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0016】
本発明の放射線治療装置(10)は、患者(P)を載せるための治療用寝台(90)と、治療用寝台(90)に載せられた患者(P)の患部に向けて治療用放射線を照射するためのガントリーと、アイソセンタ(100)に位置された患者(P)の患部に対して放射線を照射するための照射計画を立案するための照射計画装置(600)とを具備し、照射計画装置(600)へ患者(P)の載せられた治療用寝台(90)の位置情報、患者(P)の体輪郭の情報、ガントリーの形状データおよび治療用寝台(90)の形状データが入力され、照射計画装置(600)は、ガントリーの形状データ、治療用寝台(90)の形状データ、治療用寝台(90)の位置情報および患者(P)の体輪郭の情報からガントリーと治療用寝台(90)および患者(P)とが物理的に干渉しないガントリーから照射される放射線の放射軸角度を算出する。
【0017】
また、本発明の照射計画装置(600)は、アイソセンタ(100)に位置された患者(P)の患部に対して放射線を照射するための照射計画を立案するための照射計画装置(600)であって、入力部(500)と、ガントリーの形状データおよび治療用寝台(90)の形状データを有した照射領域演算部(300)と、表示部(400)とを備え、入力部(500)から照射領域演算部(300)へ患者(P)の載せられた治療用寝台(90)の位置情報および患者(P)の体輪郭の情報が入力され、照射領域演算部(300)は、ガントリーの形状データ、治療用寝台(90)の形状データ、治療用寝台(90)の位置情報および患者(P)の体輪郭の情報に基づいてガントリーと治療用寝台(90)および患者(P)とが物理的に干渉しないガントリーから照射される放射線の放射軸角度を算出し、照射軸角度の情報は表示部(400)に入力され、表示部(400)は照射軸角度が示す領域を表示する。
【0018】
また、本発明の照射計画装置(600)は、入力部(500)からさらに患者(P)の危険臓器の位置情報が入力され、照射領域演算部(300)は、ガントリーの形状データ、治療用寝台(90)の形状データ、治療用寝台(90)の位置情報、患者(P)の体輪郭の情報および患者の危険臓器の位置情報に基づいてガントリーと治療用寝台(90)および患者(P)とが物理的に干渉せず、且つ患者(P)の危険臓器への照射とはならないガントリーから照射される放射線の放射軸角度を算出し、照射軸角度の情報は表示部(400)に入力され、表示部は照射軸角度の示す領域を表示する。
【0019】
また、本発明の照射計画装置(600)に係わるガントリーから照射される放射線の放射軸角度は垂直軸まわりに回動自在である旋回角(R)と水平軸まわりに回動自在である走行角(S)である。
【0020】
また、本発明の放射線治療装置の照射計画立案方法は、患者(P)の患部に対して放射線を照射するための放射線治療装置(10)の照射計画立案方法であって、放射線治療装置(10)に備えられて放射線を照射するガントリーの形状データと、放射線治療装置(10)に備えられて患者を載せる治療用寝台(90)の形状データと、患者(P)の患部がアイソセンタ(100)に位置合わせされた時の治療用寝台(90)の位置情報および患者(P)の体輪郭情報に基づいてガントリーと治療用寝台(90)および患者(P)とが物理的に干渉しないガントリーの照射角度を算出するステップと、ガントリーと治療用寝台(90)および患者(P)とが物理的に干渉しないガントリーから照射される放射線の放射軸角度が示す領域を表示するステップとを備える。
【0021】
また、本発明の放射線治療装置の照射計画立案方法は、さらに患者(P)の危険臓器の位置情報に基づいて、ガントリーと治療用寝台(90)および患者(P)との物理的干渉が起こらず、且つ患者(P)の危険臓器への照射とはならないガントリーの照射角度を算出するステップと、ガントリーから照射される放射線の放射軸角度が示す領域を表示するステップとを備える。
【0022】
また、本発明の放射線治療装置の照射計画立案方法に係わるガントリーから照射される放射線の放射軸角度は垂直軸まわりに回動自在である旋回角(R)と水平軸まわりに回動自在である走行角(S)である。
【0023】
また、本発明の放射線治療装置の照射計画立案プログラムは、患者(P)の患部に対して放射線を照射するための放射線治療装置(10)の照射計画立案方法で使用され、かつコンピュータで読み取り可能な照射計画立案プログラムであって、放射線治療装置(10)に備えられて放射線を照射するガントリーの形状データと、放射線治療装置(10)に備えられて患者を載せる治療用寝台(90)の形状データと、患者(P)の患部がアイソセンタ(100)に位置合わせされた時の治療用寝台(90)の位置情報および患者(P)の体輪郭情報に基づいてガントリーと治療用寝台(90)および患者(P)とが物理的に干渉しないガントリーの照射角度を算出する機能と、ガントリーと治療用寝台(90)および患者(P)とが物理的に干渉しないガントリーから照射される放射線の放射軸角度が示す領域を表示する機能とを備える。
【0024】
また、本発明の放射線治療装置の照射計画立案プログラムは、さらに患者(P)の危険臓器の位置情報に基づいて、ガントリーと治療用寝台(90)および患者(P)との物理的干渉が起こらず、且つ患者(P)の危険臓器への照射とはならないガントリーの照射角度を算出する機能と、ガントリーから照射される放射線の放射軸角度が示す領域を表示する機能とを備える。
【0025】
また、本発明の放射線治療装置の照射計画立案プログラムに係わるガントリーから照射される放射線の放射軸角度は垂直軸まわりに回動自在である旋回角(R)と水平軸まわりに回動自在である走行角(S)である。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、照射計画時に、放射線治療装置と治療寝台および患者との物理的干渉を事前にチェックすることが可能となり、照射時に物理的干渉による手戻りの発生を無くすことの出来る放射線治療装置の照射計画立案方法および照射計画装置を提供することができる。また、放射線治療装置と治療寝台および患者との物理的干渉と、患者の危険臓器への照射とはならない照射角度を示す領域を視覚的に表示することにより、短期間で治療計画を立案することが出来る放射線治療装置の照射計画立案方法および照射計画装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
添付図面を参照して、本発明による放射線治療装置の照射計画立案方法および照射計画装置を実施するための最良の形態を以下に説明する。
【0028】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係わる放射線治療装置の照射計画立案方法および照射計画装置は、照射計画時に放射線治療装置と治療寝台および患者との物理的干渉を事前にチェックすることができ、照射時に物理的干渉とはならない照射角度の領域を視覚的に表示し、短期間で照射計画を立案するものである。
【0029】
本発明の実施の形態1に係わる照射計画装置600と、照射計画装置600が接続している放射線治療装置10の全体構成を図2に示す。
【0030】
ここでは、本発明の実施の形態1に係わる照射計画装置600の構成および動作原理について説明するため、最初に、照射計画装置600が接続されている放射線治療装置10の構成および動作原理について説明する。
【0031】
放射線治療装置10は、患者Pを寝かせる治療用寝台90、治療用の放射線を放射する放射線発生装置20、患者Pの体内にある患部の位置を確認するための透視画像取得用の複数の放射線源(イメージャ)130a、130b、放射線源(イメージャ)130a、130bにより取得された透視画像の患部の位置とアイソセンタ100との相対位置を演算する解析装置80、解析装置80により演算された患部の現在位置とアイソセンタ100との相対位置に基づき患部および放射線発生装置20の放射線軸Aとの位置合わせをする制御装置80を備えている。
【0032】
放射線治療装置10のシステム全体は、後に述べるアイソセンタ100を原点として座標系が設定されている。そして、放射線発生装置20から放射される放射線の放射線軸Aは、このアイソセンタ100を通るように設定されている。また、患者Pの患部も治療用の放射線照射時にアイソセンタ100にその中心が来るように位置合わせされる。
【0033】
治療用の放射線を放射する放射線発生装置20と、患者Pの体内にある患部の位置を確認するための複数の放射線源(イメージャ)13a、13bとは、ガイド30の円枠内に内接されて回動軸G(y軸方向)を中心とした走行角Sまわりに360度回動自在な回転部材150に配設されている。また、ガイド30はz軸方向を中心とした旋回角Rまわりに回動自在である。回動軸Gとz軸とは図2に見られるように直交関係にある。ガイド30の円筒面が垂直向きのときに、放射線発生装置20は図2に見られるように、ガイド30の円枠の中心を通る垂線上に可動部材50を介して配設され、放射線発生装置20の放射線放射軸Aはガイド30の円枠の中心に向けられる。また、複数の放射線源(イメージャ)130a、130bは、放射線発生装置20に対して対象となる位置に配設され、それぞれの放射線放射軸E,Fは、放射線発生装置20の放射線放射軸Aと同様にガイド30の円枠の中心に向けられる。
【0034】
放射線発生装置20は、既述したように可動部材50を介して回転部材150に搭載されており、可動部材50は直交する回動軸CおよびDの2軸方向に対して回動自在である。このため、放射線発生装置20の放射線放射軸AはVおよびU方向に対して微動され、放射線の放射軸Aの指向方向が可動となっている。
【0035】
上記したアイソセンタ100は、ガイド30の円枠中心の中心軸G上に設定されており、放射線発生装置20の放射線放射軸A、放射線源(イメージャ)130aおよび130bからの放射線放射軸E,Fは全てこのアイソセンター100において1点に交わる。
【0036】
放射線発生装置20の放射線放射軸Aの軸合わせの為に検出器60が使用される。軸合わせの際には、この検出器60はアイソセンター100に対して放射線発生装置20の点対称な位置に配置されて放射線発生装置20の放射線放射軸Aの微調整がなされるが、図2においては治療用寝台90の横に避難されている。放射線源(イメージャ)130a、130bからの透視画像取得および放射線放射軸E,Fの軸合わせの為にイメージャ用検出器140aおよび140bが使用される。放射線源(イメージャ)130aおよび130bの放射線軸EおよびFの軸合わせのため、イメージャ用検出器140aおよび140bは、アイソセンタ100に対して放射線源(イメージャ)130aおよび130bの点対称な位置に配設され、放射線源(イメージャ)130aおよび130bの放射線軸EおよびFがアイソセンタ100を通るように微調整される。また、回転部材150を回転軸Gまわりの走行角S方向に回転させて複数の角度から透視画像が取得されることにより、患部のCT画像を構成することができる。さらに、複数のCT画像から3次元DRR(Digital Reconstructed Radiograph)画像が再構成される。
【0037】
以下に、本実施の形態1に係わる放射線治療装置の照射計画立案方法、およびこの照射計画立案方法に基づく患部への放射線の照射手順について説明する。また、図3Aに照射計画立案のフローを示す。
【0038】
放射線治療前に、X線CTスキャナー(Computed Tomography Scanner)により患者Pの患部近傍のCT断層像が撮影される。撮影された複数の2次元CT画像を元に指定された患部(癌病巣部)の3次元DRR(Digital Reconstructed Radiograph)画像が作成される。このDRR画像により、患者Pの患部の位置や状況が診断され、患部に照射される放射線の角度、照射領域および放射線量が決められ、照射計画の作成が開始される。
【0039】
本実施の形態1においては、この照射計画作成のために、図4に示される照射計画装置600が使用される。照射計画装置600は、入力部500、照射領域演算部300および表示部400を備えている。照射領域演算部300には、バスライン300cを介してCPU300a、INT300d、INT300e、INT300f、RAM300b、メモリ300gが接続されている。そして、INT300fは入力部500と、INT300dは解析装置70と、INT300eは制御装置80と、メモリ300gは表示部400と接続されている。
【0040】
まず、入力部500に、患者Pの患部がアイソセンタ100に位置合わせされた時の治療用寝台90の中心座標(x、z)が入力される(S1)。入力されたx、zの情報は照射領域演算部300のインターフェース(INT)300fを介してRAM300bに保存される。また、CT断層像や3次元DRR画像から得られた患者Pの体部高さ(h)の情報が解析装置70から照射領域演算部300のインターフェース(INT)300dを介してRAM300bに保存される。但し、CT断層像や3次元DRR画像から得られた患者Pの体部高さ(h)の情報については、他のCTスキャナで撮影されたものを入力部500から入力しても良い(S2)。治療用寝台90の中心座標(x、z)およびCT断層像や3次元DRR画像から得られた患者Pの体部高さ(h)は、それぞれ図5の模式図に示されている通りである。上記x、z、hの情報がRAM300bに保存されると、RAM300bに保存されていた照射領域演算プログラムがCPU300aにより読み込まれてプログラムが実行される。照射領域演算プログラムは、RAM300bに保存された上記x、z、hの情報および事前にRAM300bに保存されていた治療用寝台形状データおよび放射線治療装置形状データに基づいて、放射線治療装置10と治療寝台90および患者Pとが物理的に干渉しない照射角度が算出され(S3)、メモリ300gを介して算出結果が表示部400に表示される(S4)。図6には、放射線治療装置10と治療寝台90および患者Pとが物理的に干渉しない角度を示す領域が、放射線治療装置10の走行角Sおよび旋回角Rをパラメータとしてハッチ部で表示されている。本実施の形態1では、この放射線治療装置10と治療用寝台90および患者Pとが物理的に干渉しない角度を示す領域内で放射線治療計画が立案されることにより、実際に照射の段階になってから物理的な干渉が確認されて照射計画を再設定せねばならないということが防止される。
【0041】
このように、本実施の形態1において照射計画が作成されると、この照射計画に基づいて放射線治療が行われる。
【0042】
放射線治療においては、図2に示されているように患者Pが治療用寝台90に寝かされて固定される。治療用寝台90が患者Pの患部をアイソセンタ100に位置させるように移動調整される。患者Pの患部がおおよそアイソセンタ100に設定されると、放射線源(イメージャ)130a、130bから透視画像取得のための放射線がそれぞれ放射線軸E,Fに沿って放射され、患者Pの患部領域の画像がイメージャ用検出器140aおよび140bにより取得される。取得されたイメージャ130a、130b画像の画像情報は、解析装置70に入力される。解析装置70において、治療計画時の3次元DRR画像における患部の位置と、今回取得された透視画像における患部対応部位とが照合される。そして、今回取得された透視画像の患部位置が判別されて、現在の患部がアイソセンタ100に対してどの位ズレているのかが算出される。算出された患部とアイソセンタ100とのズレ量のデータは解析装置70から制御装置80へ入力される。制御装置80は、入力されたズレ量のデータに基づいて、治療用寝台90の位置、ガイド30のz軸まわりの旋回角Rおよび回転部材150のガイド3に対する回動軸Gまわりの走行角Sを適宜最適な組み合わせで移動調整することにより、患部中心がアイソセンタ100に移動される。
【0043】
本実施の形態1においては、間違って放射線治療装置と治療用寝台および患者との物理的干渉が発生する領域での照射角度が設定されると、照射計画装置600のCPU300aからINT300eを介して制御装置80に対して放射線治療装置10の起動を停止させる信号が送信される。
【0044】
本実施の形態1の放射線治療装置の照射計画立案方法および照射計画装置においては、以上述べたように、照射計画時に放射線治療装置と治療用寝台および患者との物理的干渉を事前にチェックすることができ、照射実施時に物理的干渉による手戻りの発生を無くすことができる。
【0045】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係わる放射線治療装置の照射計画立案方法および照射計画装置は、照射計画時に放射線治療装置と治療寝台および患者との物理的干渉を事前にチェックすることができ、照射実施時に物理的干渉とはならない照射角度を示す領域を視覚的に表示し、さらに患者の危険臓器への照射とはならない照射角度を示す領域を合わせて視覚的に表示することにより、短期間で照射計画を立案するものである。
【0046】
本発明の実施の形態2に係わる照射計画装置の構成は、図2および図4に示されているように実施の形態1と同様である。また、照射計画装置の基本的な動作原理についても実施の形態1と同様である。
【0047】
以下に、本実施の形態2に係わる放射線治療装置600の照射計画立案方法、およびこの照射計画立案方法に基づく患部への放射線の照射手順について説明する。また、図3Bに照射計画立案のフローを示す。
【0048】
本実施の形態2においては、実施の形態1と同様、放射線治療前に、X線CTスキャナー(Computed Tomography Scanner)により患者Pの患部近傍のCT断層像が撮影される。撮影された複数の2次元CT画像を元に指定された患部(癌病巣部)の3次元DRR(Digital Reconstructed Radiograph)画像が作成される。このDRR画像により、患者Pの患部の位置や状況が診断され、患部に照射される放射線の照射角度、照射領域および照射線量が決められ、照射計画の作成が開始される。
【0049】
本実施の形態においては、この照射計画作成のために、実施の形態1と同様、図4に示される照射計画装置600が使用される。照射計画装置600は、入力部500、照射領域演算部300および表示部400を備えている。照射領域演算部300には、バスライン300cを介してCPU300a、INT300d、INT300e、INT300f、RAM300b、メモリ300gが接続されている。そして、INT300fは入力部500と、INT300dは解析装置70と、INT300eは制御装置80と、そしてメモリ300gは表示部400と接続されている。
【0050】
まず、入力部500に、患者Pの患部がアイソセンタ100に位置合わせされた時の治療用寝台90の中心座標(x、z)が入力される(S10)。入力されたx、zの情報は照射領域演算部300のインターフェース(INT)300fを介してRAM300bに保存される。また、CT断層像や3次元DRR画像から得られた患者Pの体部高さ(h)の情報および危険臓器の位置座標情報が解析装置70から照射領域演算部300のインターフェース(INT)300dを介してRAM300bに保存される。但し、CT断層像や3次元DRR画像から得られた患者Pの体部高さ(h)の情報および危険臓器の位置座標情報については、他のCTスキャナで撮影されたものを入力部500から入力しても良い(S20)。治療用寝台90の中心座標(x、z)およびCT断層像や3次元DRR画像から得られた患者Pの体部高さ(h)は、それぞれ図5の模式図に示されている通りである。上記x、z、hの情報および危険臓器の位置座標情報がRAM300bに入力されると、RAM300bに保存されていた照射領域演算プログラムがCPU300aにより読み込まれてプログラムが実行される。照射領域演算プログラムは、RAM300bに保存された上記x、z、hの情報、危険臓器の位置座標情報および事前にRAM300bに保存されていた治療用寝台形状データおよび放射線治療装置形状データに基づいて、放射線治療装置10と治療寝台90および患者Pとが物理的に干渉しない照射角度、および患者の危険臓器への照射とはならない照射角度が算出され(S30)、メモリ300gを介して算出結果が表示部400に入力されて表示部400において表示される(S40)。図7には、放射線治療装置10と治療寝台90および患者Pとが物理的に干渉しない角度を示す領域が放射線治療装置10の走行角Sおよび旋回角Rをパラメータとしてハッチ部で表示されている。また、患者の危険臓器への照射となってしまう角度を示す領域が斜線部で表示されている。
【0051】
本実施の形態の放射線治療装置の照射計画立案方法および照射計画装置においては、以上述べたように治療計画時に放射線治療装置と治療寝台および患者との物理的干渉、および患者の危険臓器への照射となってしまう照射角度を示す領域を事前にチェックすることができ、照射実施時に物理的干渉や患者の危険臓器への照射となってしまう角度領域が発見されることによる手戻りの発生を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】従来の放射線治療装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係わる、放射線治療装置および放射線治療装置に接続された照射計画装置を示す斜視図である。
【図3A】実施の形態1に係わる照射計画立案のフローを示す図である。
【図3B】実施の形態2に係わる照射計画立案のフローを示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係わる、照射計画装置の詳細を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係わる放射線治療装置における旋回角および走行角を示す模式図である。
【図6】本発明の実施の形態に係わる放射線治療装置において、放射線治療装置と治療寝台および患者との物理的干渉が無い旋回角および走行角の領域を示す模式図である。
【図7】本発明の実施の形態に係わる放射線治療装置において、放射線治療装置と治療寝台および患者との物理的干渉が無く、さらに患者の危険臓器への照射とはならない旋回角および走行角の領域を示す模式図である。
【符号の説明】
【0053】
1、10…放射線治療装置
2、20…放射線発生装置
3、30…ガイド
5、50…可動部材
6、60…検出器
7、70…解析装置
8、80…制御装置
9、90…治療用寝台
10、100…アイソセンタ
13a、13b、130a、130b…放射線源(イメージャ)
14a、14b、140a、140b…イメージャ用検出器
15、150…回転部材
300…照射領域演算部
300a…CPU
300b…RAM
300c…バスライン
300d…インターフェース(INT)
300e…インターフェース(INT)
300f…インターフェース(INT)
300g…メモリ
400…表示部
500…入力部
600…照射計画装置
A、E,F…照射軸
C,D、G…回動軸
U,V…首振り方向
R…旋回角
S…走行角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者を載せるための治療用寝台と、
前記治療用寝台に載せられた前記患者の患部に向けて治療用放射線を照射するためのガントリーと、
アイソセンタに位置された前記患者の患部に対して放射線を照射するための照射計画を立案するための照射計画装置と
を具備し、
前記照射計画装置へ前記患者の載せられた前記治療用寝台の位置情報、前記患者の体輪郭の情報、前記ガントリーの形状データおよび前記治療用寝台の形状データが入力され、
前記照射計画装置は、前記ガントリーの形状データ、前記治療用寝台の形状データ、前記治療用寝台の位置情報および前記患者の前記体輪郭の情報から前記ガントリーと前記治療用寝台および前記患者とが物理的に干渉しない前記ガントリーから照射される放射線の放射軸角度を算出する
放射線治療装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線治療装置に備えられ、
前記アイソセンタに位置された患者の患部に対して放射線を照射するための照射計画を立案するための照射計画装置であって、
入力部と、
前記ガントリーの形状データおよび前記治療用寝台の形状データを有した照射領域演算部と、
表示部と
を具備し、
前記入力部から前記照射領域演算部へ前記患者の載せられた前記治療用寝台の位置情報および前記患者の体輪郭の情報が入力され、
前記照射領域演算部は、前記ガントリーの形状データ、前記治療用寝台の形状データ、前記治療用寝台の位置情報および前記患者の前記体輪郭の情報から前記ガントリーと前記治療用寝台および前記患者とが物理的に干渉しない前記ガントリーから照射される放射線の放射軸角度を算出し、
前記照射軸角度の情報は前記表示部に入力され、
前記表示部は前記照射軸角度が示す領域を表示する
照射計画装置。
【請求項3】
請求項2に記載の照射計画装置において、
前記入力部からさらに前記患者の危険臓器の位置情報が入力され、
前記照射領域演算部は、前記ガントリーの形状データ、前記治療用寝台の形状データ、前記治療用寝台の位置情報、前記患者の前記体輪郭の情報および前記患者の前記危険臓器の位置情報に基づいて前記ガントリーと前記治療用寝台および前記患者とが物理的に干渉せず,且つ前記患者の前記危険臓器への照射とはならない前記ガントリーから照射される放射線の放射軸角度を算出し、
前記照射軸角度の情報は前記表示部に入力され、
前記表示部は前記照射軸角度の示す領域を表示する
照射計画装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の照射計画装置において、
前記ガントリーから照射される放射線の放射軸角度は垂直軸まわりに回動自在である旋回角と水平軸まわりに回動自在である走行角である
照射計画装置。
【請求項5】
患者の患部に対して放射線を照射するための放射線治療装置において照射計画を立案するための、放射線治療装置の照射計画立案方法であって、
前記放射線治療装置に備えられて放射線を照射するガントリーの形状データと、前記放射線治療装置に備えられて前記患者を載せる治療用寝台の形状データと、前記患者の患部がアイソセンタに位置合わせされた時の前記治療用寝台の位置情報および前記患者の体輪郭情報とに基づいて前記ガントリーと前記治療用寝台および前記患者とが物理的に干渉しない前記ガントリーから照射される放射線の放射軸角度を算出するステップと、
前記ガントリーから照射される放射線の放射軸角度が示す領域を表示するステップと
を具備する
放射線治療装置の照射計画立案方法。
【請求項6】
請求項5に記載の放射線治療装置の照射計画立案方法において、
さらに前記患者の危険臓器の位置情報に基づいて前記ガントリーと前記治療用寝台および前記患者との物理的干渉が起こらず、且つ前記患者の前記危険臓器への照射とはならない前記ガントリーから照射される放射線の放射軸角度を算出するステップと、
前記ガントリーから照射される放射線の放射軸角度が示す領域を表示するステップと
を具備する
放射線治療装置の照射計画立案方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の放射線治療装置の照射計画立案方法において、
前記ガントリーから照射される放射線の放射軸角度は垂直軸まわりに回動自在である旋回角と水平軸まわりに回動自在である走行角である
放射線治療装置の照射計画立案方法。
【請求項8】
患者の患部に対して放射線を照射するための放射線治療装置において照射計画を立案するための放射線治療装置の照射計画立案方法で使用され、かつコンピュータで読み取り可能な照射計画立案プログラムであって、
前記放射線治療装置に備えられて放射線を照射するガントリーの形状データと、
前記放射線治療装置に備えられて前記患者を載せる治療用寝台の形状データと、
前記患者の患部がアイソセンタに位置合わせされた時の前記治療用寝台の位置情報および前記患者の体輪郭情報とに基づいて前記ガントリーと前記治療用寝台および前記患者とが物理的に干渉しない前記ガントリーから照射される放射線の放射軸角度を算出する機能と、
前記ガントリーから照射される放射線の放射軸角度が示す領域を表示する機能と
を具備する
放射線治療装置の照射計画立案プログラム。
【請求項9】
請求項8に記載の放射線治療装置の照射計画立案プログラムにおいて、
さらに前記患者の危険臓器の位置情報に基づいて前記ガントリーと前記治療用寝台および前記患者との物理的干渉が起こらず、且つ前記患者の前記危険臓器への照射とはならない前記ガントリーから照射される放射線の放射軸角度を算出する機能と、
前記ガントリーから照射される放射線の放射軸角度が示す領域を表示する機能と
を具備する
放射線治療装置の照射計画立案プログラム。
【請求項10】
請求項8または9に記載の放射線治療装置の照射計画立案プログラムにおいて、
前記ガントリーから照射される放射線の放射軸角度は垂直軸まわりに回動自在である旋回角と水平軸まわりに回動自在である走行角である
放射線治療装置の照射計画立案プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−174885(P2006−174885A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−368511(P2004−368511)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】