説明

放射線減衰エラストマー材料、電離放射線に対する防護用多層グローブ、及びその利用方法

本発明は、金属酸化物の粉末の分散を含有するエラストマーを含むタイプの放射線減衰エラストマー材料に関し、金属酸化物の粉末は、70から90wt%の三酸化ビスマスと、5から15wt%の三酸化タングステンと、5から15wt%の三酸化ランタンとを含むことを特徴とする。また、本発明は、電離放射線に対する個人用の防護衣服を製造するための、該エラストマー材料の利用法に関する。さらに、本発明は、少なくとも一つの層が該エラストマー材料で作られた、電離放射線を防護するための多層グローブと、特にプルトニウムを含む核燃料粉末により放射される電離放射線に対する防護用の該グローブの利用法に関する。本発明は、原子力産業における核燃料粉末の取り扱い、医用画像、インターベンショナル・ラジオロジー、核医学、プラスティックの処理、製造部品の検査及び試験等において、使用することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電離放射線、特に、プルトニウム核燃料の製造に用いられる粉末により生じる電離放射線を減衰する特性を有する、放射線減衰エラストマー材料に関する。
【0002】
また、電離放射線に対する防護製品を製造するための、このエラストマー材料の利用法に関する。
【0003】
さらに、少なくとも一つの層が該エラストマー材料で形成される、電離放射線に対する多層防護グローブと、核燃料の製造に用いられる粉末により放射される電離放射線に対する防護のための、このグローブの利用法とに関する。
【背景技術】
【0004】
一定数の職業では、電離放射線に対して、グローブや他の防護製品を使用することが慣習となっている。
【0005】
これは、グローブボックスで、すなわち、オペレーターの手、前腕、及び腕の一部を保護するための特殊なグローブが備えられる密閉された筐体で、核燃料粉末等の、ある放射性材料が扱われる、とりわけ原子力産業において顕著である。
【0006】
しかし、これは、電離放射線が診断及び治療目的で用いられる医学の場合、ポリマーの化学的重合、グラフト化、交差結合、または分解効果を得るために照射が用いられる樹脂材料産業の場合、さらに、例えば、電離放射線の利用に基づく解析技術が用いられる、製造部品の検査及び測定研究室の場合、にも当てはまる。
【0007】
現在市場で入手可能な放射線防護グローブの大部分は、金属、酸化物または塩の形態の鉛の微細粒子が分散され、エラストマーのみで形成された2つの層の間に挟まれる、エラストマーで形成された層を含む、多層グローブである。
【0008】
鉛とその化合物の毒性を考慮すると、これらのグローブの製造は、この製造に従事する職員のいかなる汚染も防ぐために、大掛かりで高価な設備を必要とする。さらに、これらのグローブの製造から生じる廃棄物の処分及び使用済みグローブの処分は、それらの収集及び処理に対して特殊な手続きを必要とし、さもなければ、暗黙である環境への有害な影響を伴ったまま、単に埋め立て地に処分されることになる。
【0009】
放射線を通さない充填剤としての鉛の利用を、電離放射線を減衰することが可能であり、毒性のない、または、ともかく毒性の少ない、他の材料の利用へ置き換えることが、近年提案されている。
【0010】
例えば、特許文献1は、天然ゴム内またはエチレン−プロピレン−ジエンゴム内に分散されたタングステンの粒子の利用法を推奨しており、特許文献2は、天然ゴム内に分散された、酸化ビスマスの粒子の単独での利用法、または酸化タングステン、酸化スズ、または酸化スズ/酸化アンチモンの粒子と混ぜての利用法を推奨している。
【0011】
放射線減衰能力が鉛以下である、タングステン、ビスマス、スズ、及びそれらの酸化物等の、放射線を通さない充填剤では、鉛充填グローブのものと同程度の、電離放射線の減衰における有効性を有するとともに、十分な柔軟性と、従って装着者に快適な特徴とを備えたグローブを得ることは、非常に難しいことが、一般に認識されている。
【0012】
鉛よりも放射線減衰能力の弱い充填剤で、鉛充填エラストマーの層と同程度の放射線防護を保証することが可能なエラストマー層を得るためには、鉛充填エラストマーの場合に必要な量よりも大量の充填剤をこのエラストマーに入れる必要がある、という事実に関連するこの問題は、特許文献3で論じられている。
【0013】
また、この文献は、放射線を通さない充填剤、この場合、三酸化物の形態のビスマス、を、エラストマー層内に分散される液滴内に封入することにより、この問題を解決する提案をしている。三酸化ビスマスの粒子とエラストマーとの間の界面の消失と、分散液相の流動特性とが、三酸化ビスマスの硬化効果を抑える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ここで、研究の範囲内で、発明者達は、予期に反して、放射線を通さない充填剤として、三酸化ビスマス、三酸化タングステン、及び三酸化ランタンを適切に選択された割合で含む粉末を利用することにより、酸化鉛で充填されたエラストマー層を含むグローブのものと同等の放射線減衰特性を有するとともに、エラストマーのみから成るグローブと同程度の柔軟性を有するグローブを得ることができることに気づいた。
【0015】
本発明は、この所見に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
従って、本発明の目的は、まず、電離放射線に対する防護製品の製造に役立つエラストマー材料であり、該エラストマー材料は、金属酸化物の粉末が分散されたエラストマーを含み、金属酸化物の粉末が、70から90%の質量部の三酸化ビスマスと、5から15%の質量部の三酸化タングステンと、5から15%の質量部の三酸化ランタンとを含むことを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、材料におけるエラストマーと金属酸化物の粉末の各比率は、この材料が意図される利用法、特に、放射線減衰レベルと本利用法の範囲内で要求される機械的特性とに依存して、広い範囲で変化し得る。
【0018】
エラストマーが、15から35%質量部の材料量に相当し、金属酸化物の粉末自体が、65から85%質量部の材料量に相当することが通常好ましいと言われている。
【0019】
グローブ、及び、特に核燃料の粉末を扱うためのグローブの製造等の利用法に対しては、エラストマーが、25±2%質量部の材料量に相当し、金属酸化物の粉末が、75±2%質量部の材料量に相当することが好ましく、このような比率は、放射線減衰特性とこのタイプのグローブに要求される柔軟性特性との間で、良好な折衷案を実際に保証する。
【0020】
あらゆる場合において、金属酸化物の粉末が、80±2%質量部の三酸化ビスマスと、10±1%質量部の三酸化タングステンと、10±1%質量部の三酸化ランタンと、を含むことが好ましく、異なる酸化物間のこれらの比率は、最適な放射線減衰特性を備えた材料を提供することを実際に示している。
【0021】
また、金属酸化物の粉末は、エラストマー内でできるだけ均一な粉末の分散が得られるように、総数の少なくとも90%が1から100μmのサイズを有する粒子から成り、さらには、総数の少なくとも80%が1から50μmのサイズを有する粒子から成ることが好ましい。
【0022】
本発明によれば、エラストマーは、たいへん多くのエラストマーから選択されてもよく、特に、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、クロロスルホン化ポリエチレン、エラストマーポリウレタン、フッソ系エラストマー(フッソエラストマーとして周知されている)、イソプレン−イソブチレン共重合体(ブチルゴムとして周知されている)、エチレン−プロピレン−ジエン(またはEPDM)共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン(またはSIS)ブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(またはSEBS)ブロック共重合体、及びそれらの混合物から選択されてもよく、エラストマーの選択も、材料が意図される利用法に依存すると理解されたい。
【0023】
従って、例えば、グローブの製造に対して、エラストマーは、ポリクロロプレンから選択されることが好ましく、さらには、結晶化に抵抗し、その結果、特に良好な柔軟性を長期に亘り維持する、ポリクロロプレンから選択されることが好ましい。このようなポリクロロプレンは、例えば、デュポンパフォーマンスエラストマー社により、ネオプレン(登録商標)WRT及びネオプレン(登録商標)WDの名の下で販売されている。
【0024】
本発明によれば、材料は、意図される利用法と、その利用法の範囲内での適用方法とに依存して、一つまたは複数の、可塑剤、柔軟剤、帯電防止剤、潤滑剤、粘着促進剤、及び着色剤等の、高分子産業で通常使用されているタイプの、一つ以上の補助剤をさらに含んでもよく、この場合、これらの補助剤の全量は、材料量の10%以上に相当しないことが好ましい。
【0025】
本発明によるエラストマー材料は、
−エラストマーと、三酸化ビスマス、三酸化タングステン、三酸化ランタン、及び、随意の補助剤との、例えば内部ミキサーでの乾燥混合、
−それにより得られる混合物の材料への変換、
を含む方法により準備可能である。
【0026】
混合物は、例えば、カレンダ加工、引き伸ばし加工、及び造粒加工により、顆粒に見える材料へ変換されることが好ましく、この材料は、電離放射線に対する防護製品の製造に使用可能である。
【0027】
従って、本発明の目的は、前述したように、電離放射線に対する防護製品の製造のためのエラストマー材料の利用法でもある。
【0028】
本発明の材料のエラストマーの特性を考慮すると、防護製品は、エプロン、カズラ、ジャケット、スカート、グローブ、スリーブ、甲状腺保護、生殖腺保護、眼球保護バンド、胸部保護ブラ、さらには外科用ドレープまたはシート等の、個人的な防護製品であることが好ましい。
【0029】
しかしながら、また、特に貯蔵施設に対する柔軟性を望ましくは有する、例えばカーテン等の、共同の防護製品であってもよい。
【0030】
あらゆる場合において、本発明によるエラストマー材料から成り、例えば織物材料等の他の材料の一つまたは複数の層に関連し、または関連しない、一つ以上の層を含み得る、この防護製品は、本発明によるエラストマー材料を、従来のモールド、押し出し技術等によって、フィルム、シート、またはプレートに変換し、続いて、これらのフィルム、シート、またはプレートにおいて適切な形状の部位を切り出して、縫合、溶接、または接着により、これらの部位を一体に及び/または他の部位と組み上げることにより、製造されてもよい。
【0031】
しかしながら、ある場合、特に、防護製品がグローブである場合は、
−一方で、この防護製品が多層製品であり、すなわち、他の材料の少なくとも二つの層の間に挟まれた、本発明のエラストマー材料の少なくとも一つの層を有し、
−他方で、継ぎ目、接合部、接着剤等の存在により電離放射線の減衰が低減される可能性のある領域を示さないように、単一の部位として作られている、
ことが好ましい。
【0032】
この場合、防護製品は、適切な形状のモールドを、物体の組成に使用されるエラストマー材料を揮発性溶媒へ溶解することで得られる一連の槽に浸けることにより、物体を形成することから成る、従来の浸漬技術により製造されることが有利である。
【0033】
本発明によれば、電離放射線に対する防護製品は、グローブであり、特に、核燃料の製造に用いられる粉末を扱うためのグローブであることが好ましい。
【0034】
また、本発明の目的は、電離放射線に対する防護用の多層グローブでもあり、前述したエラストマー材料の少なくとも一つの層C2を含み、該層は、他のエラストマー材料の少なくとも二つの層C1及びC3それぞれの間に挿入され、これらの層双方は、それ自体を作り上げるエラストマー材料とその厚みに関して、互いに同一であり、または同一でなくてもよい。
【0035】
本発明によれば、層C1及びC3は、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、クロロスルホン化ポリエチレン、エラストマーポリウレタン、フッソ系エラストマー、イソプレン−イソブチレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、及びそれらの混合物から選択されてもよい。
【0036】
しかしながら、これらの層は、エラストマーポリウレタンであることが好ましく、これは、このタイプのエラストマーが示す、特に興味深い機械的強度特性による。
【0037】
また、層C1、C2、及びC3それぞれが、50から1,500μmの厚みを有してもよい。
【0038】
層C2は、50から200μmの厚みを有し、層C1及びC3は、150から300μmの厚みを有することが有利である。
【0039】
核燃料の粉末の取扱は、原則としてグローブボックス内で行われるため、本発明によるグローブは、グローブボックス内で使用可能であるように、通常は円錐コーン形状の、グローブと同じ組成で、25から100cmの測定長の、さらには50から80cm長さの、スリーブを含むことが好ましい。
【0040】
本発明によるグローブは、少なくとも、
−層を形成するために選択されたエラストマー材料の溶液における、手と前腕の全部または一部と腕の形状を再現するモールドの、一つまたは複数の連続する浸漬工程による、層C1の形成、
−本発明によるエラストマー材料の溶液における、モールドの、一つまたは複数の連続する浸漬工程による、層C2の形成、
−層を形成するために選択されたエラストマー材料の溶液における、モールドの、一つまたは複数の連続する浸漬工程による、層C3の形成、
各浸漬工程に続いて、モールドに存在する溶媒の気化が、直ちに行われ、
−これにより得られたグローブの乾燥と、このグローブをモールドから取り外した後の、随意の加硫、
を含む方法により製造可能である。
【0041】
本発明によるグローブは、多くの利点を有している。
【0042】
実際、このグローブは、優れた電離放射線の減衰特性−鉛換算で0.03から0.50mmに及ぶ放射線のタイプを減衰する能力を有するため−と、例えば100μmの厚み(0.03mmの鉛換算防護を保証)の層C2を含むグローブが、同等の厚みで放射線を通さない充填剤を含まないグローブとほぼ同等の柔軟性を有していることが判明しているため、優れた柔軟性とを兼ね備えている。
【0043】
さらに、このグローブは、たいへん申し分のない機械的強度特性を有している。
【0044】
このグローブは、放射線を通さない充填剤として、人の健康及び環境に対して今日までに知られる毒性を持たない金属酸化物を含む粉末を含み、その製造から生じる廃棄物の廃棄は、収集及び処理に特殊な手続きを必要としない。同様に、使用後のグローブの廃棄は、放射性物質によりこれらのグローブに起こり得る汚染によって課せられること以外に、特殊な手続きを必要としない。
【0045】
最終的に、グローブは製造が簡単であり、殺菌等の付加的な処置に適する。
【0046】
その特性により、本発明によるグローブは、核燃料、特にプルトニウム核燃料の粉末により放射される電離放射線に対する防護の保証に対して、特に興味深いものである。
【0047】
また一方、このグローブを、電離放射線に対する防護が要求される、医用画像(放射線医学、スキャノグラフィー、…)、インターベンショナル・ラジオロジー、核医学(シンチグラフィー、放射線治療、…)、プラスティックの処理、製造部品の検査及び管理等の、他の全ての分野で使用することもできる。
【0048】
本発明の他の特性及び利点は、本発明によるエラストマー材料及びグローブの製作例と、本発明によるグローブの放射線減衰特性及び機械的特性の実験例に関する、以下の付加的な説明を読むことでより明らかになる。
【0049】
当然のことながら、これらの例は、本発明の目的の説明として与えられただけであり、この目的を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0050】
[例1:本発明によるエラストマー材料の製造]
本発明によるエラストマー材料は、
*100質量部のポリクロロプレン(ネオプレン(登録商標)WRT−デュポンパフォーマンスエラストマー社)
*267質量部の、20μm以下のサイズの粒子から成る、三酸化ビスマス粉末
*33質量部の、約25μmの粒子から成る、光学的品質の三酸化ランタン粉末、及び
*33質量部の、250μm以下のサイズの粒子から成る、三酸化タングステン粉末
を、ラバーの形成に適合された内部ミキサーで混合し、続いて、得られた混合物をカレンダ加工し(これにより、この混合物の均一化を完了することができる)、帯として伸ばし、続いて、0.5cmのオーダーの測定サイズの立方体の顆粒が実質的に得られるように造粒することにより、作られる。
【0051】
使用を待つ間の凝集を避けるために、微量のタルクが顆粒に入れられる。
[例2:本発明によるグローブの作成]
【0052】
浸漬法により作られるグローブは、本発明によるエラストマー材料で形成された層C2を含み、この層は、エラストマーポリウレタンで形成される2つの層C1及びC2それぞれの間に挿入される。
【0053】
これを行うために、まず、2つの槽が準備され、一方は層C1及びC3の製造を可能とし、他方は中間の層C2の製造を可能とする。
【0054】
第一の槽は、例えば従来技術で知られるように、100質量部の事前に交差結合された芳香族熱可塑性ポリウレタン樹脂を、500質量部のケトン溶媒に溶かし、続いて、得られる溶液を濾過し、24時間静置することにより脱気することによって、準備される。
【0055】
第二の槽は、1,500rpmの速度で回転するプロペラミキサーにおいて、約2時間、前述の例1で得られるような顆粒100質量部を、92.225質量部のトルエンに溶かすことによって、準備される。得られる溶液は、160μmメッシュのふるいを通過させることにより、濾過される。次に、その粘度(フランス規格協会(AFNOR)のNFT30-014規格)と、その乾燥抽出物含有量(メトラー・トレド社のハロゲンデシケーターによる)とが計測され、必要であれば、これらのパラメータ双方の調整が、最初のパラメータが180Pa.s前後にあり、二番目のパラメータが50%のオーダーであるように、進められる。そして、溶液は、24時間静置されることにより、脱気される。
【0056】
二つの槽が準備されると、層C1を形成するために、第一の槽において、手の形状の磁気モールドの浸漬が5回連続して進められ(グローブの内面を形成する)、続いて、層C2を形成するために、第二の槽において、モールドの浸漬が進められ、続いて、層C3を形成するために、第一の槽において、モールドの浸漬が4回連続して進められ(グローブの外面を形成する)、各浸漬工程に続いて、モールドに存在する溶媒の気化から成り、抽出器下で、室温で実施される工程が、直ちに行われるものと理解されたい。
【0057】
最後の溶媒の気化後、グローブは、数時間乾燥されるためにトンネル型のオーブンに放置され、その温度は100℃を超えず、続いて、モールドから外される。
【0058】
これにより、層C2が約100μmの測定厚を有し、層C1及びC3それぞれが約200μmの測定厚を有する、グローブが得られる。
[例3:本発明によるグローブの放射線減衰特性及び機械的特性]
[3.1.放射線減衰特性]
【0059】
前述した例2で得られるグローブが、核燃料の製造に用いられる粉末により放射される放射線減衰能力γの評価を目的とするテストを受けた。
【0060】
これを行うために、グローブは、核燃料の製造に用いられる粉末の取り扱いに利用されるグローブボックスで、重要な線量測定の代表的な作業で使用された。
【0061】
このようにして、1.5から4の範囲の放射線減衰係数γ、すなわち、これらのグローブボックスで通例使用される、100μmの厚みで、ポリクロロプレンに分散された酸化鉛(一酸化鉛)粒子で形成され、二つのエラストマーポリウレタン層の間の、層を含む、鉛充填グローブで得られるものと同等の係数が得られた。
[3.2.機械的特性]
【0062】
600から700μmの範囲の厚みを有し、上述した例2で作られたグローブの層C2と組成及び厚みが等しく、エラストマーポリウレタンの層C1とC3との間に挿入される、層C2を含む、本発明によるグローブ(以下、G1からG5)が、フランス規格協会(AFNOR)のNFT46-002規格による伸張テストを受けた。
【0063】
以下の表1は、テストされた各グローブに対して、これらのテストで得られた、破断抵抗、最大破断荷重、破断伸張、及び20%及び100%伸張時の弾性率についての結果と、同じ条件下で、同程度の厚みでエラストマーポリウレタンのみで形成されたグローブ(以下、R1からR5)で得られた結果とを示す。
【表1】

【0064】
この表1は、20%及び100%伸張時の弾性率、従って、本発明によるグローブの柔軟性が、同程度の厚みで、金属または金属の酸化物が混ざった層のない、エラストマーポリウレタンのグローブのものと、同等であることを示している。
【0065】
また、表は、本発明によるグローブの機械的強度特性も、たいへん申し分のないものであることも示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0066】
【特許文献1】特許US 5,548,125
【特許文献2】特許出願US 2004/0262546
【特許文献3】特許出願FR 2 911 991

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物の粉末が分散されるエラストマーを含むタイプのエラストマー材料であって、前記金属酸化物の粉末が70から90%質量部の三酸化ビスマスと、5から15%質量部の三酸化タングステンと、5から15%質量部の三酸化ランタンとを含むこと、を特徴とするエラストマー材料。
【請求項2】
前記エラストマーが、15から35%質量部の材料量に相当し、前記金属酸化物の粉末が、65から85%質量部の材料量に相当すること、
を特徴とする請求項1に記載の材料。
【請求項3】
前記エラストマーが、25±2%質量部の材料量に相当し、前記金属酸化物の粉末が、75±2%質量部の材料量に相当すること、
を特徴とする請求項1または2に記載の材料。
【請求項4】
前記金属酸化物の粉末が、80±2%質量部の三酸化ビスマスと、10±1%質量部の三酸化タングステンと、10±1%質量部の三酸化ランタンと、を含むこと、
を特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の材料。
【請求項5】
前記金属酸化物の粉末が、総数の少なくとも90%が1から100μmのサイズを有する粒子から成ること、
を特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の材料。
【請求項6】
前記金属酸化物の粉末が、総数の少なくとも80%が1から50μmのサイズを有する粒子から成ること、
を特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のエラストマー材料。
【請求項7】
前記エラストマーが、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、クロロスルホン化ポリエチレン、エラストマーポリウレタン、フッソ系エラストマー、イソプレン−イソブチレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、及びそれらの混合物から選択されること、
を特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の材料。
【請求項8】
前記エラストマーが、ポリクロロプレンであること、
を特徴とする請求項7に記載の材料。
【請求項9】
可塑剤、柔軟剤、帯電防止剤、潤滑剤、粘着促進剤、及び着色剤から選択される一つ以上の補助剤をさらに含むこと、
を特徴とする1から8のいずれか1項に記載の材料。
【請求項10】
電離放射線に対する防護製品を作るための、請求項1から9のいずれか1項に記載のエラストマー材料の利用法。
【請求項11】
前記防護製品が、エプロン、カズラ、ジャケット、スカート、グローブ、スリーブ、甲状腺保護、生殖腺保護、眼球保護バンド、乳房保護ブラ、外科用ドレープ、またはカーテンであること、
を特徴とする請求項10に記載の利用法。
【請求項12】
前記防護製品が、グローブであり、特に、核燃料粉末を扱うためのグローブであること、
を特徴とする請求項10または11に記載の利用法。
【請求項13】
電離放射線に対する多層防護グローブであって、請求項1から9のいずれか1項に記載のエラストマー材料の少なくとも一つの層C2を含み、該層は、それぞれ他のエラストマー材料の少なくとも二つの層C1及びC3それぞれの間に挿入され、前記層C1及びC3は、互いに同一であり、または同一でないこと、
を特徴とするグローブ。
【請求項14】
前記層C1及びC3が、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、クロロスルホン化ポリエチレン、エラストマーポリウレタン、フッソ系エラストマー、イソプレン−イソブチレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、及びそれらの混合物から選択されること、
を特徴とする請求項13に記載のグローブ。
【請求項15】
前記層C1及びC3が、エラストマーポリウレタンであること、
を特徴とする請求項14に記載のグローブ。
【請求項16】
前記グローブの前記層それぞれが、50から1,500μmの厚みを有すること、
を特徴とする請求項13から15のいずれか1項に記載のグローブ。
【請求項17】
前記層C2が、50から200μmの厚みを有し、前記層C1及びC3が、150から300μmの厚みを有すること、
を特徴とする請求項16に記載のグローブ。
【請求項18】
25から100cmの長さの、グローブと同一の組成のスリーブを含むこと、
を特徴とする請求項13から17のいずれか1項に記載のグローブ。
【請求項19】
核燃料、特にプルトニウム核燃料の粉末により放射される電離放射線に対する防護のための、請求項13から18のいずれか1項に記載のグローブの利用法。


【公表番号】特表2013−501084(P2013−501084A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522174(P2012−522174)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061052
【国際公開番号】WO2011/012681
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(508313895)アレヴァ・エヌセー (32)
【氏名又は名称原語表記】AREVA NC
【住所又は居所原語表記】33, rue La Fayette, 75009 Paris, France
【出願人】(512024510)
【Fターム(参考)】