説明

放射線測定器

【課題】より快適に検査可能な放射線測定器を提供する。
【解決手段】放射線測定器であるサーベイメータ10は、本体部12と、当該本体部12に対して着脱自在の検出ユニット14と、に大別される。検出ユニット14は、さらに、把持部16と、検出面22を備えた検出部18と、に大別される。検出面22は、略円柱部36によりL軸を中心に回動自在に保持され、また、旋回筒50によりK軸を中心として旋回自在に保持されている。略円柱部36および旋回筒50には、当該回動および旋回を制限するピンが挿入されるピン穴が複数形成されている。このピンとピン穴との係合状態は、外アーム30を把持部16に対して進退させることにより変更することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を測定する放射線測定器に関し、特に、本体部に対して検出ユニットが着脱可能に装着される放射線測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線測定器と総称されるものの中には、可搬型のものがある。可搬型の放射線測定器は、例えば、体表面の他、建物や車両などの各種構造物の表面などの放射線を測定する場合に用いられる(例えば、下記特許文献1−4など)。かかる放射線測定器は、一般に、表示器や演算回路、バッテリなどを備えた本体部と、それに、着脱可能に装着される検出ユニットと、を備えている。検出ユニットは、さらに、面状の放射線センサが設けられた検出部と、ユーザにより把持される把持部と、に大別される。通常、把持部は、本体部の取手部に対して着脱自在となっており、この把持部の一端に検出部が固着されている。換言すれば、従来、把持部に対する検出部の姿勢は、一定となっている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−77380号公報
【特許文献2】実用新案登録第3081493号公報
【特許文献3】特開2001−4756号公報
【特許文献4】特開2005−241595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
把持部に対する検出部の姿勢が不変のため、従来、検査対象物の位置や形状等に応じて、当該検出ユニットを保持する検査者が姿勢を変化させなければならなかった。このとき、検査対象物の種類によっては、検査者が無理な姿勢をとらざるを得ない場合がある。例えば、車両の表面汚染を検査する場合には、当該車両のフェンダー周辺にも検出部を近接させる必要がある。しかし、車両のフェンダー周辺には、他の構造物が多数存在する。したがって、当該フェンダー周辺に検出部を近接させるためには、他の構造物を避けるように、検査者が多様な姿勢、場合によっては、検査者にとって無理な姿勢をとる必要があり、検査者にとって負担であった。また、比較的単純な構造物、例えば、建築物の床面や壁面の表面汚染を検査する場合には、検査者が姿勢を大きく変える必要は無い。しかし、これは、換言すれば、検査者は、長時間、同じ姿勢を保つことが必要となり、これもまた、検査者にとって負担であった。
【0005】
従来技術には、このような検出部の姿勢が固定であるために生じる検査者の負担については考慮されていない。特許文献1には、検出部の姿勢が可変のサーベイメータ(放射線測定器)が開示されている。しかし、この特許文献1では、把持部を中心として検出部を回転自在としているに過ぎない。かかる把持部を中心とする検出部の回転というのは、当該把持部を本体部から離脱させた際には、殆ど意味を持たず、検出時における操作者の姿勢に関しては何ら影響を与えない。したがって、特許文献1の技術では、上記したような検査者の姿勢に関する負担は軽減されない。また、特許文献2には、把持部が装着される本体部の取手の姿勢を変更できるサーベイメータが開示されているが、これは、サーベイメータの収納性を考慮しているに過ぎず、検査者の姿勢に関する負担については考慮されていない。つまり、従来技術では、検査時における検査者の負担という問題については何ら考慮されていない。
【0006】
したがって、本発明では、より快適に検査可能な放射線測定器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の放射線測定器は、本体と、前記本体に装着される検出ユニットと、を備えた放射線測定器であって、前記検出ユニットは、放射線を検出する検出面を備えた検出部と、前記本体部に対して着脱自在であって、ユーザにより把持される把持部と、前記検出面と前記把持部との成す角度である仰角を調整する仰角用姿勢調整手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
好適な態様では、前記仰角用姿勢調整手段は、前記検出面を前記把持部に対して仰角可変の状態で保持する仰角用保持部材と、前記把持部に接続され、前記仰角用保持部材に係合することで前記検出面の仰角方向の動きを制限する仰角用係合部材であって、当該係合の解除方向に進退自在な仰角用係合部材と、を備える。この場合、前記仰角用保持部材および前記仰角用係合部材の一方には、仰角用ピンが突出形成されており、前記仰角用保持部材および前記仰角用係合部材の他方には、前記仰角用ピンが挿入されて係合される仰角用ピン穴が複数形成されていることが望ましい。また、前記仰角用姿勢調整手段は、さらに、前記係合部材を、係合方向に付勢する仰角用付勢手段を備えることも望ましい。さらに、前記仰角用姿勢調整手段は、さらに、ユーザからの操作に応じて、前記仰角用係合部材の係合解除方向への移動を規制する規制部材を備えることも望ましい。
【0009】
他の好適な態様では、前記検出ユニットは、さらに、前記検出面に直交する軸を中心とする当該検出面の旋回角度である旋回角について当該検出面の姿勢を調整する旋回角用姿勢調整手段を備える。この場合、前記旋回角用姿勢調整手段は、前記検出面を前記把持部に対して旋回自在の状態で保持する旋回角用保持部材と、前記把持部に接続され、前記旋回角用保持部材に係合することで前記検出面の前記把持部に対する旋回を制限する旋回用係合部材であって、当該係合の解除方向に進退自在な旋回角用係合部材と、を備えることが望ましい。また、前記旋回角用保持部材および前記旋回角用係合部材の一方には、旋回角用ピンが突出形成されており、前記旋回角用保持部材および前記旋回角用係合部材の他方には、前記旋回角用ピンが挿入されて係合される旋回角用ピン穴が複数形成されていることが望ましい。
【0010】
他の好適な態様では、前記旋回角用係合部材は、前記仰角用係合部材と前記仰角用保持部材との係合解除と連動して、前記旋回角用保持部材との係合を解除する。この場合、前記旋回角用調整手段は、さらに、前記旋回角用係合部材を係合を解除する方向に付勢する旋回角用付勢手段を備え、前記仰角用係合部材は、前記仰角用保持手段に係合した際に、前記旋回角用付勢手段の付勢力に抗して当該旋回角用付勢手段を係合方向に押圧することが望ましい。
【0011】
他の好適な態様では、さらに、前記把持部の後端に着脱自在であって、前記把持部に装着された際にユーザにより把持される延長把持部を備えることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、検出面と把持部との成す角度である仰角を調整することができる。そのため、検査者の姿勢に関する負担を軽減でき、表面汚染等の検査をより快適に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態であるサーベイメータ10の斜視図である。また、図2は、当該サーベイメータ10を他の方向から見た斜視図である。このサーベイメータ10は、放射線、例えばα線やβ線による各種構造物の表面汚染の検査に用いられるもので、バッテリを内蔵した可搬型の放射線測定器である。
【0014】
サーベイメータ10は、バッテリや表示器、演算回路などを備えた本体部12と、当該本体部12に対して着脱自在の検出ユニット14と、に大別される。本体部12の上端からは、略アーチ状の取手部20が形成されており、この取手部20の上端面には、検出ユニット14を着脱自在に装着する装着機構が形成されている。なお、この本体部12や装着機構等の具体的構成は、周知の公知技術を適用できるため、ここでの詳説は省略する。
【0015】
検出ユニット14は、ユーザにより把持される把持部16と、面状の放射線センサであるシンチレータ23を備えた検出部18と、に大別される。各種構造物の表面汚染を検査する際、検査者は、把持部16を手で把持して、検出ユニット14を本体部12から離脱させ、検出面22であるシンチレータ23の表面を検査対象物の近傍まで近づける。
【0016】
ここで、この表面汚染検査の際、把持部16に対する検出部18の姿勢が不変であると、検査対象物の形状や位置に応じて、検出部18が検査対象物の近傍に位置するように、検査者が姿勢を変えなければならない。その結果、検査対象物の位置や形状によっては、検査者にとって無理がかかる姿勢をとらざるを得ない場合や、長時間一定の姿勢を保ち続けなければならない場合などがあり、検査者にとって負担であった。そこで、本実施形態では、検出ユニット14の構成を特殊なものとし、把持部16に対する検出部18の姿勢を変更可能としている。具体的には、検出部18を検出面22に直交する軸(図1、図2におけるK軸)を中心として旋回自在、および、把持部16の長軸およびK軸に直交する軸(図1、図2におけるL軸)を中心として回動自在としている。以下、このサーベイメータ10の検出部18の構成について詳説する。
【0017】
図3は、検出ユニット14を一部破断して図示した上面図であり、図4は、図1のA−A断面図、図5は図3のB−B断面図である。また、図6は、検出ユニット14を一部破断して図示した正面図である。さらに、図7は、検出部18の姿勢を変更自在とした状態における検出ユニット14の上面図である。なお、以下の説明では、検出部18から把持部16に向かう方向を「退避方向」、把持部16から検出部18に向かう方向を「進出方向」と呼ぶ。
【0018】
既述したとおり、検出ユニット14は、把持部16と、検出部18と、に大別される。把持部16は、略丸棒状の部材で、その側面には本体部12の取手部20に装着される装着部24が設けられている。この把持部16の先端近傍には、進退リング26および接続環28が挿通されている。接続環28は、把持部16に対して進退自在の環状体である。この接続環28の内周面には、段差が形成されており、当該接続環28が一定距離、退避方向に移動した場合には、当該段差が把持部16の外周に形成された段差に当接するようになっている。そして、この当接関係により、接続環28の退避量が制限されている。接続環28の内周面と把持部16の外周面との間隙には、後述する外アーム30を進出方向に付勢するコイルスプリング32が配されている。また、接続環28のすぐ後側(退避方向側)には、進退リング26が設けられている。
【0019】
進退リング26は、内周面に雌ネジが形成された環状体で、把持部16の外周に形成された雄ネジに螺合接続されている。そして、この螺合関係により、進退リング26は、回動させることにより、把持部16に沿って進退するようになっている。この進退リング26は、接続環28の退避動作を規制するために設けられている。すなわち、進退リング26の先端は退避方向側に移動する接続環28の後端に当接するような内径および外径を備えている。したがって、進退リング26が、事前に、退避方向に移動していない場合、退避方向に移動しようとする接続環28は、当該進退リング26の先端に当接することになり、その退避動作が阻害される。換言すれば、接続環28ひいては、当該接続環28に固着された外アーム30を退避させたい場合、検査者は、事前に、進退リング26を回動動作により退避させておかなければならない。
【0020】
ここで、接続環28、ひいては、当該接続環28に固着された外アーム30の退避動作を規制する進退リング26を設けたのは、検査者が意図しない外アーム30の退避を防止するためである。すなわち、後に詳説するが、外アーム30が退避した場合には、把持部16に対する検出部18の姿勢が変更自在となる。意図しない検出部18の姿勢変更は、表面汚染の検査作業の邪魔になるだけでなく、場合によっては、他部材への衝突等による当該検出ユニット14の故障等も招く恐れがある。そこで、本実施形態では、進退リング26の回動という検査者の意識的操作が無い場合には、接続環28および外アーム30の退避動作を阻害し、検出部18の姿勢変更を阻害するべく、進退リング26を設けている。
【0021】
接続環28の先端面には、一対の外アーム30が固着されている。各外アーム30は、検出部18に向かって伸びており、接続環28とともに、把持部16に対して進退自在となっている。この外アーム30の先端面には、仰角用ピン34が突出形成されている。仰角用ピン34は、検出部18の一部と係合することで、検出面22と把持部16との成す角度である仰角について検出部18の姿勢変更を規制する仰角用係合部材である。具体的には、外アーム30が進出方向に移動した際には、仰角用ピン34は、後述する略円柱部36に形成された仰角用ピン穴38に挿入されて係合する。一方、外アーム30が退避方向に移動した際には、仰角用ピン34は、仰角用ピン穴38から離脱し、その係合関係が解除される。つまり、仰角用ピン34と仰角用ピン穴38との係合関係は、外アーム30の進退に応じて解除自在となっている。
【0022】
外アーム30の内側には、内アーム40が設けられている。内アーム40は、把持部16の先端面に固着された上面視略コ状の部材で、互いに対向する一対の内アーム片42と、当該一対の内アーム片42を接続する接続片44と、を備えている。内アーム40は、把持部16に固着されているため、把持部16に対する姿勢は不変となっている。内アーム40を構成する一対の内アーム片42は、その対向間隔が先端(進出方向側)に近づくにつれ徐々に広がるべく、僅かな傾斜をもって設けられている。別の見方をすれば、各内アーム片42は、その外側に配された外アーム30に対して傾斜している。この内アーム片42の先端近傍には、旋回用係合部材として機能する旋回用ピン46が挿通されている。旋回用ピン46は、後述する旋回筒50に形成された旋回用ピン穴52に係合自在のピンである。内アーム片42は、この旋回用係合部材として機能する旋回用ピン46を外側方向に付勢する旋回用付勢手段として機能する。すなわち、内アーム片42を含む内アーム40は、肉薄の金属材料から構成される。そして、接続片44により片持ち状態となっている内アーム片42は、適度な弾性を備えた板バネとして機能する。この板バネとして機能する内アーム片42の付勢力により、旋回用ピン46は、外側方向に、換言すれば、旋回用ピン穴52から離脱する方向に移動させられる。ただし、この付勢力の旋回用ピン46への作用状況は、当該内アーム片42の外側に配された外アーム30の進退状況に応じて異なってくる。これについて図8を用いて説明する。図8は、内アーム片42の弾性変形の様子を模式的に示した図で、(a)は外アーム30が進出した状態を、(b)は外アーム30が退避した状態を、それぞれ示している。
【0023】
図8(a)に図示するように、外アーム30が進出した状態、換言すれば、仰角用ピン34が仰角用ピン穴38に係合した状態では、外アーム30の先端は、内アーム片42の側面に当接し、当該内アーム片42の先端が、過度に外側に広がるのを防止している。換言すれば、内アーム片42は、外アーム30により内側方向に押圧される。その結果、内アーム片42に挿通された旋回用ピン46は、内側方向に位置することになり、旋回用ピン46が旋回用ピン穴52に挿入された係合状態となる。換言すれば、仰角用ピン34と仰角用ピン穴38とが係合状態の場合、旋回用ピン46と旋回用ピン穴52も係合状態となっている。
【0024】
一方、図8(b)に図示するように、外アーム30が退避した状態、換言すれば、仰角用ピン34が仰角用ピン穴38から離脱した状態では、外アーム30は、図8(a)に図示した状態よりも退避方向側の位置において内アーム片42に当接する。換言すれば、外アーム30が退避することにより、当該外アーム30と内アーム片42との当接位置が退避方向に移動する。この場合、内アーム片42は、弾性復元力により、外側方向に広がるべく変形する。その結果、内アーム片42の先端は旋回用ピン46とともに外側方向に移動することになり、旋回用ピン46と旋回用ピン穴52との係合関係が解除される。換言すれば、仰角用ピン34と仰角用ピン穴38との係合が解除されると、旋回用ピン46と旋回用ピン穴52との係合も解除される。つまり、本実施形態では、仰角用ピン34と仰角用ピン穴38、および、旋回用ピン46と旋回用ピン46の係合状態は、常に連動している。その結果、検査者は、外アーム30の退避という一つの動作で、仰角用ピン34および旋回用ピン46という二つのピンを同時に係合解除することができ、簡易な操作で検出部18の姿勢変更が可能となる。
【0025】
なお、当然ながら、両ピン34,46の係合状態は、必ずしも、連動している必要はなく、それぞれ、別の操作で係合解除されるようにしてもよい。例えば、本実施形態では、内アーム片42の弾性力を利用することにより、仰角用ピン34および旋回用ピン46の連動した係合解除を実現している。しかし、かかる連動した係合解除を実現するためには、内アーム片42の弾性力の調整が微妙で困難な場合もある。その場合には、旋回用ピン46の係合、係合解除は、検査者の手で行うようにしてもよい。すなわち、旋回用ピン46の係合を解除したい場合には、検査者の手で内アーム片42を外側方向に押圧し、旋回用ピン46を係合状態にしたい場合には、旋回用ピン46の頭部を検査者の手で内側方向に押圧するようにしてもよい。
【0026】
再び、図3−図7を参照して検出ユニット14の構成を説明する。検出部18は、面状の放射線センサである平板型のシンチレータ23を備えている。シンチレータ23は、略四角錘状のセンサケース54の底面に収容されており、当該センサケース54の底面が検出面22となる。センサケース54の上端からは、略円筒形状の円筒部56が伸びている。この円筒部56の内部には、シンチレータ23での検出結果を電気信号に変換するPMT58や、PMT58等の駆動を制御する電子回路等の電子部品が収容されている。また、円筒部56は、複数の筒体、すなわち、旋回筒50、保持筒60、固定筒62、小径筒64から構成される。
【0027】
旋回筒50は、その基端がセンサケース54に固着された筒体である。旋回筒50は、センサケース54とともに、固定筒62、小径筒64、保持筒60および略円柱部36に対して旋回自在となっており、検出部18を旋回自在に保持する旋回用保持部材として機能する。具体的には、旋回筒50の上端には、外側および内側に向かって突出する摺動ピン50a,50bが形成されており、この摺動ピン50a,50bは固定筒62の内周面および保持筒60の内周面に一周にわたって形成された摺動溝に挿入されている。また、旋回筒50の外周面には、後述する略円柱部36から突出する摺動ピン36aが挿入される摺動溝が一周に渡って形成されている。そして、各摺動ピン50a,50b,36aが摺動溝に沿って摺動することで、旋回筒50は、保持筒60や固定筒62、略円柱部36に対して旋回する。旋回筒50が旋回した場合には、当然、当該旋回筒50に固着されたセンサケース54や検出面22も、旋回することになり、当該検出面22の旋回角についての姿勢が変更自在となる。
【0028】
旋回筒50の外周面には、旋回用ピン46が挿入される複数の旋回用ピン穴52が所定ピッチ(例えば30度間隔)で形成されている。旋回用ピン46は、既述したとおり、内アーム40片の先端近傍に挿入されたピンで、旋回筒50に対して進退自在のピンである。旋回用ピン46が、複数の旋回用ピン穴52の一つに挿入されて係合された場合には、旋回筒50、ひいては、検出面22やセンサケース54の旋回が阻害される。
【0029】
保持筒60は、旋回筒50の内側に配される筒体で、PMT58等の電子部品を保持する。この保持筒60は、既述したとおり、旋回筒50が旋回する際も、旋回することはない。換言すれば、保持筒60が存在することにより、電子部品の旋回が防止されている。電子部品の旋回を防止するのは、当該電子部品から引き出される信号線59の絡まりや捩れ等を防止するためである。すなわち、電子部品が検出面22等とともに旋回した場合には、当然、当該電子部品から引き出される信号線59も旋回することになる。しかし、この信号線59の他端は、非旋回の本体部12に接続されている。非旋回の本体部12に接続された信号線59の一端が旋回した場合には、当該信号線59の捩れや絡まりが生じてしまう。そして、この捩れや絡まりにより生じる引っ張り力により信号線59の断線などが生じる恐れがある。そこで、本実施形態では、検出面22が旋回した場合も旋回しない保持筒60で、電子部品を保持し、電子部品から引き出された信号線59の捩れや絡まりを防止している。
【0030】
固定筒62は、旋回筒50の上側に、小径筒64は固定筒62の上側に順に配された筒体である。小径筒64は、固定筒62より僅かに小径の筒体で、その側面から信号線59が外側に引き出されている。この固定筒62および小径筒64も、保持筒60と同様に、検出面22等が旋回した場合にも、旋回しない。そのため、小径筒64から外側に引き出された信号線59の絡まりや捩れ等が確実に防止される。
【0031】
円筒部56の外側には、略円柱部36が設けられている。略円柱部36は、把持部16の長軸および円筒部56の中心軸(旋回軸)に対して直交した軸(仰角軸)を中心とする略半円柱形の中央部分を、円筒部56を収容するべく、大きく切り欠いた形状となっている。別の見方をすれば、略円柱部36は、円筒部56の側面に対向して配される一対の円板体と当該一対の円板体を接続する接続体と、を備えている。略円柱部36は、既述したとおり、摺動ピン36aを介して旋回筒50に接続されている。
【0032】
また、略円柱部36は、円板体部分に挿通された旋回用ピン46および内アーム40を介して把持部16に接続されており、当該旋回用ピン46を中心軸として把持部16に対して回動自在となっている。略円柱部36が、旋回用ピン46を中心として回動した場合、当然ながら、当該略円柱部36に接続された円筒部56や検出面22も、旋回用ピン46を中心として回動することになる。そして、この回動により検出面22と把持部16との成す角度である仰角が変更される。つまり、この略円柱部36は、仰角についての姿勢が変更自在な状態で検出面22を保持する仰角用保持部材として機能する。
【0033】
略円柱部36の上面は、円弧面となるが、この円弧面には、仰角用ピン34が挿入される複数の仰角用ピン穴38が所定ピッチ(例えば15度間隔)で形成されている。仰角用ピン34が仰角用ピン穴38から離脱した場合には、略円柱部36は、旋回用ピン46を中心に回動自在となり、仰角についての検出面22の姿勢が調整自在となる。一方、仰角用ピン34が、仰角用ピン穴38に挿入されて係合された場合には、当該略円柱部36、ひいては、当該略円柱部36に接続された円筒部56やセンサケース54の把持部16に対する回動動作が阻害され、その仰角についての姿勢が固定されるようになっている。
【0034】
次に、この検出ユニット14における検出部18の姿勢調整の様子を説明する。通常、仰角用ピン34および旋回用ピン46は、それぞれ、対応するピン穴38,52に挿入されており、検出部18の把持部16に対する姿勢は固定されている。
【0035】
この検出部18の把持部16に対する姿勢を変更したい場合、検査者は、把持部16に装着された進退リング26を回動させて、当該進退リング26を退避方向に移動させる。進退リング26を退避させると、当該進退リング26の前に装着された接続環28、および、当該接続環28に固着された外アーム30の退避動作が許容される。ただし、進退リング26を退避させただけの状態では、外アーム30は、コイルスプリング32により進出方向に付勢されているため、仰角用ピン34と仰角用ピン穴38との係合関係は維持されている。したがって、検査者は、進退リング26を退避させた後は、外アーム30または接続環28に対して退避方向の力を与え、外アーム30および接続環28をコイルスプリング32の付勢力に抗して退避方向に移動させる。
【0036】
この外アーム30の退避の伴い、当該外アーム30の先端面に形成された仰角用ピン34が、略円柱部36の上面に形成された仰角用ピン穴38から離脱する。その結果、略円柱部36を含む検出部18全体は、当該略円柱部36に挿通された旋回用ピン46を中心軸として回動自在となる。そして、この回動により、検出面22と把持部16との成す角度である仰角が自由に変更できることになる。
【0037】
また、外アーム30の退避に伴い、当該外アーム30により内側に押圧されていた内アーム片42の先端がフリーとなり、当該内アーム片42の先端が弾性復元力により外側方向に移動する。この内アーム片42の外側方向への移動により、当該内アーム片42に挿通されている旋回用ピン46も、外側方向に移動し、旋回筒50に形成された旋回用ピン穴52から離脱する。その結果、旋回筒50やセンサケース54、シンチレータ23が、固定筒62や略円柱部36、把持部16に対して、旋回自在となる。そして、この旋回により、旋回角について検出面22の姿勢が変更自在となる。つまり、本実施形態では、接続環28および外アーム30を退避させることにより、旋回角および仰角の両方について、検出面22の姿勢が変更自在となる。
【0038】
検査者は、この状態で検出面22を動かし、所望の姿勢にする。検出面22が所望の姿勢になれば、退避させていた接続環28および外アーム30を進出方向に移動させる。外アーム30が進出すると、仰角用ピン34が、複数の仰角用ピン穴38の一つに挿入される。そして、仰角用ピン34が仰角用ピン穴38に挿入されることにより、略円柱部36を含む検出部18の把持部16に対する回動が阻害され、その時点での姿勢で固定される。
【0039】
また、外アーム30が進出方向に移動すると、当該外アーム30の先端で、内アーム片42が内側方向に押圧される。そして、内アーム片42の先端に挿通された旋回用ピン46も内側方向に移動することになる。内側方向に移動した旋回用ピン46は、複数の旋回用ピン穴52の一つに挿入される。そして、これにより、旋回筒50の旋回が阻害され、旋回角についての検出面22の姿勢が固定される。
【0040】
図9は、検出面22の姿勢を変更した様子を示す図である。図9から明らかなとおり、本実施形態によれば、把持部16に対する検出面22の姿勢を多様に変化させることができる。その結果、様々な場所において表面汚染の検査を容易に行うことができる。例えば、図9(a)に図示するように仰角を小さくし、把持部16と検出面22とをほぼ平行にした状態であれば、例えば、壁に形成された横穴のような狭い隙間であっても、検出ユニット14の挿し込みが容易に行うことができる。また、図9(b)に図示するように仰角を大きくした状態であれば、例えば、床面に形成された深穴の底面のような奥まった面にも容易に検出面22を近接させることができる。
【0041】
ところで、把持部16に対する検出面22の姿勢を調整可能としても、検査者の手が届かないほど、高い場所や、検査者の立ち位置から遠く離れた場所について検査するのは困難な場合が多い。そこで、検査者の手が届かないような場所の検査も容易に行うために、本実施形態では、把持部16を延長可能としている。具体的には、把持部16の後端に、当該把持部16よりも長尺な把持部である延長把持部70が装着できるようにしている。図10は、把持部16の後端に延長把持部70を装着した状態の検出ユニット14の斜視図である。
【0042】
延長把持部70は、把持部16と同様に、略丸棒の部材で、その基端部には、検査者の手の滑りを低減するためのグリップ72が形成されている。また、延長把持部70の先端には、当該延長把持部70を把持部16の後端に着脱自在に装着するための連結機構73が設けられている。連結機構73の具体的構成としては、公知の周知技術を適宜、適用できるが、本実施形態では、把持部16の後端が挿入される挿入筒74と、当該挿入筒74の側面において回動自在の固定レバー76と、で連結機構73を構成している(図3、図10参照)。固定レバー76には、把持部16の後端に形成された断面半円状の係合溝80に係合する係合部76aが形成されている。挿入筒74に把持部16後端を挿入した状態で、固定レバー76を回動させ、この係合部76aを把持部16の係合溝80に係合させることで、把持部16と延長把持部70との連結が図られる。この延長把持部70を連結した場合には、検査者の立ち位置から離れた場所にも、検出部18を容易に近接させることができ、より多様な場所の検査が可能となる。また、固定レバー76を反対側に回動させて、係合部76aと係合溝80との係合を解除すれば、把持部16と延長把持部70との分離が可能となる。したがって、検査者は、検査対象の場所に応じて、把持部の長さを自由に調節することができる。
【0043】
なお、ここで、説明した連結機構73の構成は一例であり、当然、他の構成の連結機構を用いてもよい。また、本実施形態では、延長把持部70の長さを一定としているが、例えば、延長把持部70として伸縮パイプを用いて、その長さを変更可能にしてもよい。
【0044】
以上の説明から明らかなとおり、本実施形態では、把持部16に対する検出面22の姿勢、具体的には、仰角および旋回角についての姿勢を調整可能としている。その結果、様々な場所の汚染検査を容易に行うことができる。また、把持部16を延長可能としているため、検査者の立ち位置から離れた場所についても容易に検査できる。なお、本実施形態では、仰角および旋回角の両方について姿勢調整可能としているが、仰角についてのみ姿勢調整可能としてもよい。また、ピンとピン穴との関係は逆であってもよい。例えば、外アーム30の先端面に複数の仰角用ピン穴を、略円柱部36に一つの仰角用ピンを形成してもよい。さらに、進退リング26やコイルスプリング32等は、必要に応じて、省略してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態であるサーベイメータの斜視図である。
【図2】サーベイメータを他の方向から見た斜視図である。
【図3】検出ユニットを一部破断した上面図である。
【図4】図3におけるA−A断面図である。
【図5】図3におけるB−B断面図である。
【図6】検出ユニットを一部破断した正面図である。
【図7】姿勢変更が可能な状態における検出ユニットの上面図である。
【図8】内アーム片の弾性変形の様子を示す模式図である。
【図9】検出面の姿勢を変更した様子を示す図である。
【図10】延長把持部を装着した様子を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
10 サーベイメータ、12 本体部、14 検出ユニット、16 把持部、18 検出部、22 検出面、23 シンチレータ、26 進退リング、28 接続環、30 外アーム、32 コイルスプリング、34 仰角用ピン、36 略円柱部、38 仰角用ピン穴、42 内アーム片、46 旋回用ピン、50 旋回筒、52 旋回用ピン穴、54 センサケース、59 信号線、70 延長把持部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、前記本体に装着される検出ユニットと、を備えた放射線測定器であって、
前記検出ユニットは、
放射線を検出する検出面を備えた検出部と、
前記本体部に対して着脱自在であって、ユーザにより把持される把持部と、
前記検出面と前記把持部との成す角度である仰角を調整する仰角用姿勢調整手段と、
を備えることを特徴とする放射線測定器。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線測定器であって、
前記仰角用姿勢調整手段は、
前記検出面を前記把持部に対して仰角可変の状態で保持する仰角用保持部材と、
前記把持部に接続され、前記仰角用保持部材に係合することで前記検出面の仰角方向の動きを制限する仰角用係合部材であって、当該係合の解除方向に進退自在な仰角用係合部材と、
を備えることを特徴とする放射線測定器。
【請求項3】
請求項2に記載の放射線測定器であって、
前記仰角用保持部材および前記仰角用係合部材の一方には、仰角用ピンが突出形成されており、
前記仰角用保持部材および前記仰角用係合部材の他方には、前記仰角用ピンが挿入されて係合される仰角用ピン穴が複数形成されていることを特徴とする放射線測定器。
【請求項4】
請求項2または3に記載の放射線測定器であって、
前記仰角用姿勢調整手段は、さらに、前記係合部材を、係合方向に付勢する仰角用付勢手段を備えることを特徴とする放射線測定器。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載の放射線測定器であって、
前記仰角用姿勢調整手段は、さらに、ユーザからの操作に応じて、前記仰角用係合部材の係合解除方向への移動を規制する規制部材を備えることを特徴とする放射線測定器。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の放射線測定器であって、
前記検出ユニットは、さらに、
前記検出面に直交する軸を中心とする当該検出面の旋回角度である旋回角について当該検出面の姿勢を調整する旋回角用姿勢調整手段を備えることを特徴とする放射線測定器。
【請求項7】
請求項6に記載の放射線測定器であって、
前記旋回角用姿勢調整手段は、
前記検出面を前記把持部に対して旋回自在の状態で保持する旋回角用保持部材と、
前記把持部に接続され、前記旋回角用保持部材に係合することで前記検出面の前記把持部に対する旋回を制限する旋回用係合部材であって、当該係合の解除方向に進退自在な旋回角用係合部材と、
を備えることを特徴とする放射線測定器。
【請求項8】
請求項7に記載の放射線測定器であって、
前記旋回角用保持部材および前記旋回角用係合部材の一方には、旋回角用ピンが突出形成されており、
前記旋回角用保持部材および前記旋回角用係合部材の他方には、前記旋回角用ピンが挿入されて係合される旋回角用ピン穴が複数形成されていることを特徴とする放射線測定器。
【請求項9】
請求項7または8に記載の放射線測定器であって、
前記旋回角用係合部材は、前記仰角用係合部材と前記仰角用保持部材との係合解除と連動して、前記旋回角用保持部材との係合を解除することを特徴とする放射線測定器。
【請求項10】
請求項8に記載の放射線測定器であって、
前記旋回角用調整手段は、さらに、前記旋回角用係合部材を係合を解除する方向に付勢する旋回角用付勢手段を備え、
前記仰角用係合部材は、前記仰角用保持手段に係合した際に、前記旋回角用付勢手段の付勢力に抗して当該旋回角用付勢手段を係合方向に押圧することを特徴とする放射線測定器。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の放射線測定器であって、さらに、
前記把持部の後端に着脱自在であって、前記把持部に装着された際にユーザにより把持される延長把持部を備えることを特徴とする放射線測定器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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