説明

放射線測定装置および放射線測定方法

【課題】 任意形状の測定対象物について、簡便に精度よく放射能を測定する。
【解決手段】 測定チャンバ3は、測定対象物1に向かう開口部4と外気吸引口6とを有する。放射線測定装置は、測定チャンバ3と、外気吸引口6から測定チャンバ3に流入するイオンを除去する吸引口浄化手段7と、測定チャンバ3と測定対象物1の隙間から測定チャンバ3内にイオンが流入するのを防止する隙間遮断手段9と、測定チャンバ3から導かれたイオンを検出するイオン検出器10と、測定チャンバ3からの気体をイオン検出器10に導く輸送配管11と、輸送配管11を通して測定チャンバ3の気体をイオン検出器10に向けて吸引する吸引手段12と、イオン検出器10に収集されるイオンを測定する電流測定手段15と、測定された電流に基づいて放射能を算出するデータ処理手段16と、測定チャンバ3やイオン検出器10などを載置して移動可能な積載輸送手段18、8と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放射線による電離作用を利用して電流測定によって放射線を測定する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、放射線測定方法および放射線測定装置においては、測定対象物から放出される放射線によりその近傍の気体が電離されてイオン対が生成されるが、そのイオンは数秒〜数10秒の寿命をもち、その間は測定対象物の近傍に存在する。この生成されるイオンの数は、放射線の強度に比例するので、このイオンの数を測定すれば、放射線の強度を求めることができる。
【0003】
このような放射線測定装置としては、図11に示すように(特許文献1および非特許文献1参照)、測定対象物1を収納する測定チャンバ3、電極に電源14で電圧を印加したイオン検出器10、イオン検出器10で収集したイオンを電流として計測する電流測定手段、測定チャンバ10の内部の気体を輸送配管を通じてイオン検出器10に輸送する吸引手段12で主に構成される。このような装置構成において、測定対象物1の放射線源2から放出された放射線により気体が電離され、イオンが生成される。
【0004】
ここで、測定チャンバ3の内部の気体はイオン検出器10まで吸引手段12で吸引され、その後に測定チャンバ3に供給され循環しているので、生成したイオンはこの気体とともにイオン検出器10まで輸送され、電極に収集されて電流として測定される。
【特許文献1】特開2004−239762号公報
【特許文献2】特開2003−194946号公報 図3、図5、図7
【非特許文献1】日本原子力学会「2003年春の年会」予稿集、D17
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した非特許文献1の放射線測定装置においては、測定対象物の寸法が短い場合、たとえば1m以下であれば、測定対象物を測定チャンバ内に収納できるので問題ないが、長さ数mの測定対象物、また床のような広くかつ固定物の場合には測定チャンバ内に設置することができず、測定できないという課題があった。また長さ数mの測定対象物の場合には、原理的には測定対象物以上の寸法の測定チャンバを有する測定装置を製作すれば測定可能であるが、装置の大型化、輸送経路の増加に伴うイオン収集効率の低下、測定室空間の増大に伴う測定精度の低下が課題となる。
【0006】
また、たとえば床などの大きな測定対象物の放射線を測定する装置としては、特許文献2の図3、図5、図7のような放射線測定装置がある。まず、特許文献2の図3の放射線測定装置においては、車輪および手押用ハンドルを有し、測定対象物上を移動させることができる測定チャンバ(気体捕集器)を備えた装置となっている。しかし、この装置で、測定対象物から放出された放射線により測定チャンバ内の気体が電離され、生成したイオンを測定チャンバ内の気体とともに吸引ポンプでイオン検出器まで吸引すると、気体捕集器と測定対象物の隙間から、周辺気体も吸引する。ここで、周辺気体は、宇宙線および自然界に存在するラドンなどにより、気体が電離され多くのイオンが存在しているので、測定対象物が放射性物質であるかどうかを測定するような微弱放射線を測定する場合には、精度が低下する。
【0007】
次に、特許文献2の図5の放射線測定装置においては、多数個の測定チャンバ(気体捕集セル)は、装着した多数個の伸縮可能なフレキシブルチューブとこのチューブを測定対象物表面に接触した装置となっている。このフレキシブルチューブは、測定対象物の表面に凹凸があっても、多数個のフレキシブルチューブが測定対象物の表面に接触するとともに、そのフレキシブルチューブの側面には気体の吸引口を有しているので、各測定チャンバ(気体捕集セル)にほぼ同一の効率で気体を吸引し、精度よく測定することを目的としている。しかし、この装置においても、上記吸引口から周辺気体を吸引しているので、気体中に存在するイオンの影響を受けて、微弱放射線を測定する場合には、精度が低下する。
【0008】
次に、特許文献2の図7のような放射線測定装置においては、車輪を有し下方の気体を吸引する測定チャンバ(平面用気体吸引器)はフレキシブルチューブを介してイオン検出器(電離電流測定装置の一部)に接続された装置となっている。しかし、この装置においても、イオン検出器と測定対象物の隙間から周辺気体を吸引するので気体中に存在するイオンの影響を受けて、微弱放射線を測定する場合には、精度が低下する。
【0009】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、床などの大きな測定対象物や複雑な形状の測定対象物についても、簡便で高精度な放射能測定が可能な放射線測定装置および放射線測定方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の放射線測定装置の一つの態様では、測定対象物に向かう開口部と、前記測定対象物の近傍を通らない外気を取り入れる外気吸引口とを有し、前記測定対象物から放出される放射線が気体を電離する空間を形成する測定チャンバと、前記外気吸引口から前記測定チャンバに流入する気体中のイオンを除去する吸引口浄化手段と、前記測定チャンバと前記測定対象物の隙間から前記測定チャンバ内にイオンが流入するのを防止する隙間遮断手段と、前記測定チャンバ外に配置され、前記測定チャンバから導かれた気体のイオンを検出するイオン検出器と、前記測定チャンバからの気体を前記イオン検出器に向けて吸引する吸引手段と、前記イオン検出器に収集されるイオンを電流として測定する電流測定手段と、前記電流測定手段で測定された電流に基づいて放射能を算出するデータ処理手段と、少なくとも前記測定チャンバ、吸引口浄化手段、隙間遮断手段、イオン検出器および吸引手段を載置して移動可能な積載輸送手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の放射線測定方法の一つの態様では、測定対象物に向けられた開口部の開閉部を開いて、しかも前記測定対象物とともに密閉された測定チャンバを形成し、前記測定対象物から放出される放射線によって前記測定チャンバ内で気体を電離させる照射工程と、前記照射工程の後に、前記開閉部を閉じて前記測定対象物と前記測定チャンバとを遮断し、イオンを除去した外気を前記測定対象物の近傍を通さずに前記測定チャンバ内に吸引するとともに前記測定チャンバ内の気体を前記測定チャンバ外のイオン検出器に導き、このイオン検出器に発生するグロス電流を測定するグロス電流測定工程と、前記グロス電流測定工程で測定されたグロス電流に基づいて放射能を算出する放射能算出工程と、を有する。
【0012】
本発明の放射線測定方法のもう一つの態様では、測定対象物に向けられた開口部の開閉部を開いて、しかも前記測定対象物とともに密閉された測定チャンバを形成し、前記測定対象物から放出される放射線によって前記測定チャンバ内で気体を電離させる照射工程と、前記照射工程の後に、前記開閉部を開放したままで、イオンを除去した外気を前記測定チャンバ内に吸引するとともに前記測定チャンバ内の気体を前記測定チャンバ外のイオン検出器に導き、このイオン検出器に発生するグロス電流を測定する近傍気体吸引時グロス電流測定工程と、前記近傍気体吸引時グロス電流測定工程で測定されたグロス電流に基づいて放射能を算出する放射能算出工程と、を有する。
【0013】
本発明の放射線測定方法のさらにもう一つの態様では、電離空間を形成する測定チャンバの開閉部を開いて、前記測定チャンバ内に測定対象物を搬入する搬入工程と、前記搬入工程の後に、前記開閉部を閉じて、前記測定チャンバを密封状態にして測定対象物の放射によって前記電離空間を所定時間照射する照射工程と、前記照射工程の後に前記開閉部を開いて、前記測定対象物を前記測定チャンバから搬出する搬出工程と、前記搬出工程の後に前記開閉部を閉じて、イオンを除去した外気を前記測定対象物の近傍を通さずに前記測定チャンバ内に吸引するとともに、前記測定チャンバ内の気体を、残留するイオンとともに吸引して、前記測定チャンバ外に配置されたイオン検出器により、所定の時間の電流を測定する電流測定工程と、前記電流測定工程で測定された電流値に基づいて放射能を算出する放射能算出工程と、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、床などの大きな測定対象物や複雑な形状の測定対象物についても、簡便に精度よく放射能を測定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る放射線測定装置および放射線測定方法の実施形態について、図1〜図10を参照して説明する。ここで、同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0016】
まず、図1を用いて、本発明に係る放射線測定装置の第1の実施形態を説明する。測定対象物1である床の上に放射線源2があり、この放射線源2の上を覆うように測定チャンバ3が形成されている。測定チャンバ3の下方には開口部4があって、放射線源2から放出される放射線が測定チャンバ3内で気体を電離する空間を形成している。
【0017】
測定対象物1に対して測定チャンバ3を移動できるように、たとえば車輪などの移動手段8が設けられている。また、測定チャンバ3の上方にハンドル5が配置され、これによって測定チャンバ3を手で押して移動することができる。
【0018】
測定チャンバ3と測定対象物1の隙間から測定チャンバ3の内部に流入する気体を透過するイオンを除去し隙間を遮断するために、たとえばエバーライトスコットフィルタなどの隙間遮断手段9が配置されている。また、測定チャンバ3の側面には外気吸引口6が設けられ、この外気吸引口6には吸引口浄化手段7が配置されている。吸引口浄化手段7は外部から測定チャンバ3内に流入する気体中のイオンを除去するもので、たとえばエバーライトスコットフィルタ、HEPAフィルタなどからなる。
【0019】
測定チャンバ3とは別に、電極と絶縁材と外筒で構成されるイオン検出器10が配置され、積載輸送手段18に積載されている。測定チャンバ3の内部の気体をイオン検出器10に導くためのフレキシブルチューブ11が接続されている。
【0020】
積載輸送手段18にはさらに、測定チャンバ3の気体をイオン検出器10に輸送するための吸引手段12と、イオン検出器10を通過後の気体を浄化する浄化手段13と、イオン検出器10の電極に電圧を印加する電源14と、イオン検出器10に収集されるイオンを電流として測定する電流測定手段15とが、積載されている。さらに、測定した複数個の電流値の平均値を求め、算出した電流平均値と前もって求めた電流値から放射能への換算定数を使用して放射能を算出するデータ処理手段16と、その表示手段17が、積載輸送手段18に積載されている。
【0021】
なお、フレキシブルチューブ11は、金属製でたとえばスパイラルチューブ、ワンピッチチューブ、アニュラーチューブで、その一部がフレキシブルでない配管とその一部がフレキシブルチューブで構成されたものでもよい。この場合に、前述のハンドル5を前記一部のフレキシブルでない配管と兼用してもよい。
【0022】
このように構成された本実施形態において、測定対象物1に開口部4を向けて測定チャンバ3を設置すると、放射線源2から放出される放射線により気体は電離されイオンが生成する。これらのイオンは、測定チャンバ3の内部の気体とともに吸引手段12でフレキシブルチューブ11を介してイオン検出器10に送られる。イオン検出器10では、電源14で電圧を印加した電極にイオンを収集し、電流測定手段15でイオンを電流として測定する。測定した電流値は、測定対象物1がない場合に測定したいわゆるバックグランド電流値を減算し正味電流値を求め、正味電流値と前もって求めた電流値から放射能への換算定数を使用してデータ処理手段16により放射能を求め表示手段17で表示する。
【0023】
ここで、測定チャンバ3の内部の気体はフレキシブルチューブ11を介して吸引されるが、測定チャンバ3の外気吸引口6から吸引口浄化手段7により、気体中のイオンを除去した周囲の気体が測定チャンバ3の内部に供給されるとともに、測定チャンバ3と測定対象物1の間隙には、隙間なく隙間遮断手段9が配置されているので、これを透過した気体中のイオンは除去されている。このように、測定チャンバ3の内部に供給される周辺の気体は、その中に存在するイオンが除去される。
【0024】
本実施形態によれば、外気吸引口6およびイオン検出器10と測定対象物1の間から測定チャンバ3の内部に流入する気体は、それぞれ吸引口浄化手段7および隙間遮断手段9により気体中に存在するイオンが除去されるので、たとえば床などの大きな測定対象物についても、大気中のイオンの影響を受けず、簡便で精度よく微弱放射線を測定することができる。
【0025】
また、上記と類似の構成で、測定チャンバ3にイオン検出器10を連結して積載し、積載輸送手段18に積載した吸引手段12とイオン検出器10をフレキシブルチューブ11で連結することも可能である(図示せず)。この場合は測定チャンバ3の積載重量が増加し操作性が低下するが、イオン検出器10が測定チャンバ3に近づくのでイオンの減衰が減少してイオン収集効率が増加し、測定精度が向上する。このような構成の実施形態においても、測定チャンバ3の内部に流入する気体は、それぞれ吸引口浄化手段7および隙間遮断手段9により大気中に存在するイオンが除去されるので、たとえば床などの大きな測定対象物についても、大気中のイオンの影響を受けず、簡便で精度よく微弱放射線を測定することができる。
【0026】
さらに、上記実施形態の変形例として、図2に示すように、開口部4と外気吸引口6と吸引口浄化手段7と隙間遮断手段9を備えた測定チャンバ3と、イオン検出器10を直接的に、もしくは変形しない気体輸送管19を介して接続してもよい。この実施形態においても、吸引する大気中のイオンを除去するのでその影響を受けず、簡便で精度よく微弱放射線を測定することができる。
【0027】
次に、図3を用いて本発明に係る放射線測定装置の第2の実施形態を説明する。本実施形態では、測定チャンバ3の開口部4を開閉する扉20と、扉20の開閉を行なう扉駆動手段21が設けられていて、扉20を閉じることにより放射線を遮蔽することができる。測定制御手段22は、扉20を所定の時間開放し、その後は扉20を閉鎖するととともに吸引手段12により測定チャンバ3の気体を吸引し、所定の時間に複数個の電流を測定するような制御を行なうことができる。
【0028】
このように構成された本実施形態において、扉20を開放にして測定対象物1に開口部4を向けて測定チャンバ3を設置すると、放射線源2から放出される放射線により測定チャンバ3の内部の気体は電離されイオンが生成する。所定の照射時間で開放した扉20を閉鎖すると、測定チャンバ内には放射線により生成したイオンが寿命数秒〜数10秒で存在している。そこで、測定制御手段22により、扉20を閉鎖後、これらのイオンを測定チャンバ3の内部の気体とともにフレキシブルチューブ11およびイオン検出器10を介して吸引手段12で吸引すると、測定チャンバ3の内部の気体は外気吸引口6から吸引浄化手段7により気体中のイオンを除去した周囲の気体が測定チャンバ3の内部に供給される。
【0029】
測定対象物の放射線で生成したイオンを、気体とともに、フレキシブルチューブ11を介し、イオン検出器10まで輸送し、測定制御手段22により所定の測定時間内に電流測定手段15で複数個のグロス電流を測定する。ここで、バックグラウンド電流として、開口部4を扉20で閉鎖して、前記所定の照射時間が経過後も扉20を閉鎖した状態で気体を吸引して所定の時間内に測定した複数個のバックグラウンド電流値を使用して、データ処理手段16により平均値を算出する。また、前記複数個のグロス電流を使用して平均値を算出する。
【0030】
グロス電流平均値からバックグラウンド平均値を減算して正味電流値を算出し、正味電流値と前もって求めた電流値から放射能への換算定数を使用して放射能を求め、表示手段17により放射能強度を表示する。なお、平均の算出に代えて、積算でもよく、また測定するデータは複数でなく1個でもよい。
【0031】
ここで、測定チャンバ3の内部の気体はフレキシブルチューブ11を介して吸引されるが、測定チャンバ3の外気吸引口6から吸引口浄化手段7により、気体中のイオンを除去した周囲の気体が測定チャンバ3の内部に供給されるので、これを透過した気体中のイオンは除去されている。また、扉20を閉鎖して気体を吸引するので、測定対象物1の近傍の流速はほとんどゼロに近い。そのため、イオン検出器の動作を不安定にするダストなどの微粒子が測定対象物1に付着する場合でも、安定して電流を測定することができる。
【0032】
本実施形態によれば、測定チャンバ3の内部に流入する気体は、それぞれ吸引口浄化手段7により大気中に存在するイオンが除去されるとともに、開口部4を扉20で閉鎖した状態で外気を吸引するので、たとえば床などの大きな測定対象物についても、大気中のイオンの影響を受けず、さらに測定対象物に付着するダストなどの影響を受けず、簡便で精度よく微弱放射線を測定することができる。
【0033】
次に、本発明に係る放射線測定方法の実施形態を説明する。この実施形態は、たとえば、上記第2の実施形態(図3)の放射線測定装置を用いる。
【0034】
図4に示すように、初めに、測定対象物1に測定チャンバ3の開口部4を向けて放射線測定装置をセットする(ステップS25)。まず、グロス電流を測定するものとして、扉20を開くことによって開口部4を開放する(ステップS26a)。そして、たとえば30秒間のように所定の時間、測定チャンバ内の気体を測定対象物から放出される放射線で照射する(ステップS27)。その後、たとえば30秒照射後は、扉20を閉めて測定チャンバを閉鎖する(ステップS28)。ここで測定対象物から放出される放射線がα線の場合には厚さが0.1mmで十分遮蔽されるので、この厚さ以上の扉を使用し、β線、γ線の場合にはこれらの遮蔽能力に応じて材質と厚さを決定する。
【0035】
扉20の閉鎖後の所定の時間後に測定チャンバ3の内部の気体を吸引し、内部の残留イオンともにイオン検出器10まで輸送する。ここで、測定チャンバ3内部にはイオンが除去された大気を供給しつつイオンを輸送する(ステップS29)。イオン検出器10で、吸引開始後、たとえば0秒という所定の時間から、たとえば0.4秒の等時間間隔で20秒間、電流の時間変化を継続的に測定し、複数個の電流値を測定し、これをグロス電流とする(ステップS30)。ここで、測定した電流値が目標とする電流値より小さい場合には、前記のチャンバの気体照射(ステップS27)から複数個の電流測定(ステップS30)までの操作を目標に達するまで繰返し行なってもよい(図示せず)。
【0036】
次に、以上のグロス電流測定の後にステップS31からステップS26bに移行する。すなわち、バックグランド測定の場合に移行し、扉20を閉めることによって測定チャンバ3の開口部4を閉鎖する(ステップS26b)。その後、上記と同様の操作でチャンバの気体照射(ステップS27)から複数個の電流測定(ステップS30)までを行なって、バックグラウンド電流値を求める。この場合も、気体照射(ステップS27)から複数個の電流測定(ステップS30)までを所定の回数繰返し行なってもよい(図示せず)。
【0037】
このようにして求めたグロスおよびバックグラウンドの複数の電流値より、それぞれの所定の範囲の電流平均値を算出し、求めたグロス電流平均値からバックグラウンド電流平均値を減算し、正味電流値を求め、前もって求めた電流から放射能への換算定数を使用して放射能強度を算出する(ステップS32)。
【0038】
ここで、一例として、α放射線源を測定対象物として、前述の方法でグロス電流(正方形「□」で示す)とバックグランウンド電流(丸「○」で示す)の時間変化を測定した結果を図5に示す。横軸は、扉20を閉鎖後からの経過時間を、縦軸は電流の相対値を示している。測定チャンバ3とイオン検出器10は1m以上離れており、グロス電流は気体吸引後約10秒後から18秒の間に増大しており、この間に測定チャンバ3に残留するイオンがイオン検出器10まで輸送され測定された。そこで、吸引後、たとえば10秒から18秒のグロス電流の平均値あるいは積算値とバックグラウンド電流の平均値あるいは積算値を求め、グロス電流値からバックグランド電流値を減算して正味電流値を求める、換算定数を使用して放射能強度を算出することができる。
【0039】
本実施形態によれば、気体中のイオンが除去された状態で気体を測定チャンバ3に供給し、さらに測定対象物近傍の気体を吸引しないので、気体中イオンの影響や測定対象物に付着するダストの影響を受けず、精度良くイオンを計測し、放射能を測定することができる。
【0040】
なお、上記説明では、初めに測定チャンバの開放(ステップS26a)を行なってグロス電流測定を行ない、次に測定チャンバの閉鎖(ステップS26b)を行なってバックグラウンド電流測定を行なうとしたが、変形例として、これらの順序を逆にしてもよいことはいうまでもない。
【0041】
次に、本発明に係る放射線測定方法の他の実施形態を、図6を参照して説明する。この実施形態でも、たとえば、上記第2の実施形態(図3)の放射線測定装置を用いる。
【0042】
図6に示すように、初めに、測定対象物1に測定チャンバ3の開口部4を向けて放射線測定装置をセットする(ステップS25)。本実施形態では、測定対象物1へダストの付着の有無による測定法の選択(ステップS33)を行なう。測定対象物1にダストが付着している場合は、測定対象物近傍の気体を吸引しない方が好ましく、その場合には、前記実施形態(図4)のステップS26a〜S31およびS26b〜S32が行なわれる。
【0043】
測定対象物1にダストが付着していない場合は、測定対象物の近傍の気体を吸引することができる。その場合には、ステップS33で測定対象物近傍の気体吸引「有」が選択され、次に、たとえば、まずグロス電流を測定するものとして、扉20を開くことにより測定チャンバ3の開口部4を開放する(ステップS34a)。次に、測定チャンバ3内で測定対象物1の放射線により生成したイオンを、イオンが除去された外気ともに輸送する(ステップS35)。そして、電極に電場をかけたイオン検出器10で所定時間複数個の電流を測定する(ステップS36)。
【0044】
次に、バックグランド測定の場合には、扉20を閉じることによって測定チャンバ3の開口部4を閉鎖する(ステップS34b)。次に、上記と同様の操作でイオンの輸送(ステップS35)から複数個の電流年流測定(ステップS36)までの操作を行なう。このようにして求めたグロスおよびバックグラウンドの複数の電流値より、それぞれ所定の範囲の電流平均値を算出し、求めたグロス電流平均値からバックグラウンド電流平均値を減算し、正味電流値を求め、前もって求めた電流から放射能への換算定数を使用して放射能強度を算出する(ステップS38)。
【0045】
本実施形態によれば、気体中のイオンの除去された状態で気体を測定チャンバ3に供給し、さらに、測定対象物1にダストが付着している場合に測定対象物近傍の気体を吸引しないようにできるので、気体中のイオンの影響や測定対象物に付着するダストの影響を受けず、精度良くイオンを計測し、放射能を測定することができる。
【0046】
次に、本発明に係る放射線測定方法のさらに他の実施形態を、図7を参照して説明する。この実施形態でも、たとえば、上記第2の実施形態(図3)の放射線測定装置を用いる。この実施形態は、図6に示した実施形態の変形例である。
【0047】
図7に示すように、初めに、測定対象物1に測定チャンバ3の開口部4を向けて放射線測定装置をセットする(ステップS25)。本実施形態では、測定対象物1の近傍の気体を吸引する場合には、まずグロス電流を測定するものとして、測定チャンバ3の開口部4を開放する(ステップS34a)。そして、所定の時間、測定チャンバ3内で測定対象物1の放射線により照射し、生成し残留するイオンを、イオンが除去された外気ともに輸送する(ステップS39)。イオン検出器で所定時間、少なくとも4個以上の電流値を測定する(ステップS40)。次に、バックグラウンド電流測定の場合も同様に、測定チャンバ3の開口部4を閉鎖し(ステップS34b)、所定時間経過後、イオンの輸送を行ない(ステップS39)、少なくとも4個以上の電流値の測定を行なう(ステップS40)。
【0048】
以上のように測定された電流値において、まず、グロス電流については、所定の時間照射後のイオン寿命の影響がある前もって定めた第1の時間範囲のグロス電流値の平均値を算出し、これを第1のグロス電流値平均値とし(ステップS41)、またイオン寿命の影響がない前もって定めた第2の時間範囲のグロス電流値の平均値を算出し、これを第2のグロス電流値平均値とする(ステップS42)。同様にバックグランド電流の場合にも、イオン寿命の影響がある第1のバックグランド電流値平均値(ステップS41)と、第2のバックグラウンド電流値平均値を求める(ステップS42)。
【0049】
ここで、時間範囲は測定チャンバの寸法、フレキシブルチューブの寸法、気体の吸引速度などに依存するが、図5を参照すると、図5の条件では、第1の時間範囲はたとえば10秒から17秒の範囲に設定し、第2の時間範囲はたとえば18秒から25秒に設定する。
【0050】
イオン寿命の影響のある第1の時間範囲については、第1のグロス電流平均値から第1のバックグランド電流平均値を減算して第1の正味電流値を求める。またイオン寿命の影響のない第2の時間範囲については、同様に、第2のグロス電流平均値から第2のバックグランド電流平均値を減算して第2の正味電流値を求める。イオン寿命は、主に測定環境の湿度などの影響を受けるので、上記のようにして求めた第1の正味電流値を第2の正味電流値で除算した値をイオン寿命係数とし、前もって求めたイオン寿命係数と放射能の補正係数の関係より放射能補正係数を求める。一方、第1の正味電流と前もって求めた電流から放射能への換算定数より求めた放射能を前記放射能補正係数で補正する(ステップS43)と、測定環境の湿度を補正し、放射能を測定することができる。
【0051】
本実施形態によれば、測定環境の湿度を補正して放射能を求めるので精度よく放射能を測定することができる。
【0052】
図1または図3に示す放射線計測装置において使用されるフレキシブルチューブ11としては、一般的に、たとえばプラスチック製フレキシブルチューブと、金属製フレキシブルチューブがある。プラスチック製フレキシブルチューブは材料自体が変形できるので、チューブの内面に凹凸がないフレキシブルチューブが提供でき、スムーズに気体を流すことができる。ところが、プラスチック製のフレキシブルチューブの場合、イオンを含んだ気体が内部を通過すると、帯電したプラスチックにイオンが吸着されてイオンが減少し、測定精度が低下し、適用できない。
【0053】
一方、金属製フレキシブルチューブの場合は、円筒形状では自在性がないので、たとえばスパイラルチューブ、ワンピッチチューブなどの形状に加工したものが一般に使用されている。この場合、チューブの内面には凹凸ができ、内部を気体が流れると、乱流が発生しその結果輸送されるイオンが減少し、測定精度が低下する。内面が滑らかで、帯電しないフレキシビリティのあるチューブが望まれる。
【0054】
まず、図8は、本発明に係る放射線測定装置のフレキシブルチューブの例を示すものであって、気密性がありチューブを自在に曲げられるフレキシブル外筒44と、金属製テープ材を螺旋状に巻いたライナチューブ45で構成され、前者の内部に後者を挿入したフレキシブルチューブを有する放射線測定装置で構成されている。
【0055】
このように構成されたフレキシブルチューブでは、気密性はフレキシブル外筒44で保たれ、内面は凹凸の少ない金属製テープ材を螺旋状に巻いたライナチューブ45を使用しているので、帯電によるイオンの減少、および乱流によるイオンの減少が避けられる。このような構造により、帯電および乱流によるイオンの減少を低減でき、効率よくイオンを収集し、精度良く放射能を測定することができる。
【0056】
ところで、上記の各実施形態で、測定対象物1にダストが付着している場合に、測定対象物1近傍の気体を吸引すると、ダストがイオン検出器10まで吸引される。このダストが、たとえば電極の絶縁材に付着することによってイオン検出器10の動作が不安定となり、測定精度が低下する。また、測定対象物1に付着していた放射線源が解放されて、たとえばイオン検出器10内に付着した場合には、その放射線源によりバックグラウンド電流が増加し、測定精度が低下する。また、放射線源が気体の輸送経路内に拡散し、放射線管理の作業が増大する。
【0057】
ここで、ダストの吸着には、たとえばHEPAフィルタなどの繊維状フィルタなどの使用が一般的であるが、これらのフィルタを使用すると、収集対象とするイオンまで吸着し、測定精度が大幅に低下する。したがって、イオンの減衰が少なくかつダストを吸着するダスト吸着手段が必要である。
【0058】
図9は、図1または図2の放射線測定装置において、測定チャンバ3と吸引手段12の間にダスト吸着手段を設けた構成例を表している。この構成例では、測定チャンバ3とそのイオンを吸引して収集するイオン検出器10との間に、サイクロン式ダスト収集手段46が配置されている。サイクロン式ダスト収集手段46は、入口チューブ47と、旋回容器48と、出口チューブ49と、螺旋状案内手段50と、ダスト収集チャンバ51と、扉52と、取入れ口53で構成される。
【0059】
この構成において、測定チャンバ3の内部で測定対象物1の放射線源2で電離された気体は生成したイオンとともに吸引手段12で吸引されるが、この時に測定対象物1に付着したダストも吸引される。このダストは気体とともにサイクロン式ダスト収集手段46の入口チューブ47から旋回容器48に輸送され、旋回容器48内部を螺旋状気体案内手段50に沿って、螺旋状に回転しながら出口チューブ49方向に向かう。
【0060】
ここで、出口チューブ49は旋回容器48の中央部の気体を吸引するように、入口チューブの半径は旋回容器48の半径より小さく、また入口チューブ49の先端部分が旋回容器48の内部に入り込んでいる。旋回容器48の内部で気体とともに旋回するダストは、気体より重いでの遠心力により外周付近を旋回する。そこで、このダストを旋回容器48の外周面に取付けた取入れ口53から取り入れてダスト収集チャンバ51で捕集する。
【0061】
この構成例によれば、測定対象物1に付着するダストを測定チャンバ3に吸引した直後にサイクロン式ダスト収集手段46で捕集するので、イオンの減少が小さく、効率よくダストを収集し、安定した性能でしかも精度良く放射能を測定することができる。
【0062】
次に、図10を用いて本発明に係る放射線測定装置の第3の実施形態を説明する。本実施形態では、測定対象物1が床面のような非可搬性のものではなく、複雑な形状であるが搬送可能なものである。測定対象物1は、測定対象物駆動手段54によって移動し、測定チャンバ3の開口部4を通して出し入れすることができる。また、この開口部4は放射線を遮蔽する扉20によって開閉可能であり、扉20の開閉は扉駆動手段21によって行なわれる。
【0063】
このように構成された本実施形態において、扉20を開放にして、測定対象物1を開口部4より測定チャンバ3の内部に、測定対象物駆動手段54により移動する。その後、扉20を閉鎖すると、放射線源2から放出される放射線により測定チャンバ3の内部の気体は電離されイオンが生成する。所定の照射時間が経過した後に扉20を開放し、測定対象物駆動手段54により測定対象物1を測定チャンバ3の外部に移動し、開放した扉20を閉鎖すると、測定チャンバ内には放射線により生成したイオンが寿命数秒〜数10秒で存在している。
【0064】
そこで、測定制御手段22により、これらのイオンを、測定チャンバ3の内部の気体とともにフレキシブルチューブ11およびイオン検出器10を介して吸引手段12で吸引する。すると、外気吸引口6から、吸引浄化手段7を通った周囲の気体が測定チャンバ3の内部に供給される。このとき吸引浄化手段7により気体中のイオンが除去される。この気体が、測定対象物1の放射線で生成したイオンを気体とともに、フレキシブルチューブ11を介し、イオン検出器10まで輸送される。ここで、測定制御手段22により所定の測定時間内に電流測定手段15で複数個のグロス電流が測定される。
【0065】
またここで、バックグラウンド電流として、開口部4を扉20で閉鎖して前記所定の照射時間が経過後も扉20を閉鎖した状態で気体を吸引して所定の時間内に測定する。この複数個のバックグラウンド電流値を使用して、データ処理手段16により平均値を算出し、前記複数個のグロス電流を使用して平均値を算出し、グロス電流平均値からバックグラウンド平均値を減算し正味電流値を算出する。この正味電流値と、前もって求めた電流値から放射能への換算定数を使用して放射能を求め、表示手段17により放射能強度を表示する。なお、平均の算出に代えて、積算でもよく、また測定するデータは複数でなく1個でもよい。
【0066】
ここで、測定チャンバ3の内部の気体はフレキシブルチューブ11を介して吸引されるが、測定チャンバ3の外気吸引口6から吸引口浄化手段7により、気体中のイオンを除去した周囲の気体が測定チャンバ3の内部に供給されるので、これを透過した気体中のイオンは除去されている。また、測定対象物1を測定チャンバ3の外部に輸送した状態で測定チャンバ3の内部の気体を吸引するので、イオン検出器10の動作を不安定にするダストなどの微粒子が測定対象物1に付着する場合でも、安定して電流を測定することができる。
【0067】
本実施形態によれば、測定チャンバ3の内部に流入する気体は、それぞれ吸引口浄化手段7により大気中に存在するイオンが除去されるとともに、測定対象物1を測定チャンバ3の外部に移動した状態で電離した測定チャンバ3の内部の気体を吸引するので、大気中のイオンの影響を受けず、さらに測定対象物に付着するダストなどの影響を受けず、簡便で精度よく微弱放射線を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る放射線測定装置の第1の実施形態の模式的立断面図。
【図2】本発明に係る放射線測定装置の第1の実施形態の変形例の模式的立断面図。
【図3】本発明に係る放射線測定装置の第2の実施形態の模式的立断面図。
【図4】本発明に係る放射線測定方法の一実施形態の手順を示す流れ図。
【図5】図4の放射線測定方法におけるグロス電流とバックグランウンド電流の時間変化の測定データの一例を示すグラフ。
【図6】本発明に係る放射線測定方法の他の実施形態の手順を示す流れ図。
【図7】本発明に係る放射線測定方法のさらに他の実施形態の手順を示す流れ図。
【図8】図1または図3の放射線測定装置のフレキシブルチューブの構成例を示す一部切欠き斜視図。
【図9】図1または図3の放射線計測装置において測定チャンバと吸引手段の間にダスト吸着手段を設けた構成例を示す部分立面図。
【図10】本発明に係る放射線測定装置の第3の実施形態の模式的立断面図。
【図11】従来の放射線測定装置のブロック図。
【符号の説明】
【0069】
1…測定対象物、2…放射線源、3…測定チャンバ、6…外気吸引口、7…吸引口浄化手段、8…移動手段(積載輸送手段)、9…隙間遮断手段、10…イオン検出器、11…フレキシブルチューブ(輸送配管)、12…吸引手段、13…浄化手段、14…電源、15…電流測定手段、16…データ処理手段、18…積載輸送手段、20…扉、21…扉駆動手段、22…測定制御手段、44…フレキシブル外筒、45…ライナチューブ、46…サイクロン式ダスト収集手段、48…旋回容器、50…螺旋状気体案内手段、51…ダスト収集チャンバ、54…測定対象物駆動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に向かう開口部と、前記測定対象物の近傍を通らない外気を取り入れる外気吸引口とを有し、前記測定対象物から放出される放射線が気体を電離する空間を形成する測定チャンバと、
前記外気吸引口から前記測定チャンバに流入する気体中のイオンを除去する吸引口浄化手段と、
前記測定チャンバと前記測定対象物の隙間から前記測定チャンバ内にイオンが流入するのを防止する隙間遮断手段と、
前記測定チャンバ外に配置され、前記測定チャンバから導かれた気体のイオンを検出するイオン検出器と、
前記測定チャンバからの気体を前記イオン検出器に向けて吸引する吸引手段と、
前記イオン検出器に収集されるイオンを電流として測定する電流測定手段と、
前記電流測定手段で測定された電流に基づいて放射能を算出するデータ処理手段と、
少なくとも前記測定チャンバ、吸引口浄化手段、隙間遮断手段、イオン検出器および吸引手段を載置して移動可能な積載輸送手段と、
を有することを特徴とする放射線測定装置。
【請求項2】
前記開口部を所定の時期に開閉できる開閉手段をさらに有すること、を特徴とする請求項1記載の放射線測定装置。
【請求項3】
前記積載輸送手段は、少なくとも前記測定チャンバ、吸引口浄化手段および隙間遮断手段を積載して移動可能な第1の積載輸送手段と、少なくとも前記イオン検出器および吸引手段を積載して前記第1の積載輸送手段と分離して移動可能な第2の積載輸送手段とを有し、
前記測定チャンバとイオン検出器の間が輸送配管で接続され、この輸送配管の少なくとも一部がフレキシブルチューブで形成されていること、
を特徴とする請求項1または2項記載の放射線測定装置。
【請求項4】
前記積載輸送手段は、少なくとも前記測定チャンバ、吸引口浄化手段、隙間遮断手段およびイオン検出器を積載して移動可能な第1の積載輸送手段と、少なくとも前記吸引手段を積載して前記第1の積載輸送手段と分離して移動可能な第2の積載輸送手段とを有し、
前記イオン検出器と吸引手段の間が輸送配管で接続され、この輸送配管の少なくとも一部がフレキシブルチューブで形成されていること、
を特徴とする請求項1または2項記載の放射線測定装置。
【請求項5】
前記積載輸送手段は、前記測定チャンバ、吸引口浄化手段、隙間遮断手段、イオン検出器および吸引手段をすべて一体的に積載して移動可能であること、
を特徴とする請求項1または2項記載の放射線測定装置。
【請求項6】
前記輸送配管の少なくとも一部が、フレキシブル外筒と、金属製テープ材を螺旋状に巻いて構成されて前記外筒の内側に挿入された内筒とからなる二重管であることを特徴とする請求項3または4記載の放射線測定装置。
【請求項7】
前記気体が前記測定チャンバから前記イオン検出器に向かう途中に、気体の流れを螺旋状に旋回させる螺旋状案内部と、この螺旋状案内部の外周で気体中のダストを収集するダスト収集部とが配置されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか記載の放射線測定装置。
【請求項8】
測定対象物に向けられた開口部の開閉部を開いて、しかも前記測定対象物とともに密閉された測定チャンバを形成し、前記測定対象物から放出される放射線によって前記測定チャンバ内で気体を電離させる照射工程と、
前記照射工程の後に、前記開閉部を閉じて前記測定対象物と前記測定チャンバとを遮断し、イオンを除去した外気を前記測定対象物の近傍を通さずに前記測定チャンバ内に吸引するとともに前記測定チャンバ内の気体を前記測定チャンバ外のイオン検出器に導き、このイオン検出器に発生するグロス電流を測定するグロス電流測定工程と、
前記グロス電流測定工程で測定されたグロス電流に基づいて放射能を算出する放射能算出工程と、
を有する放射線測定方法。
【請求項9】
測定対象物に向けられた開口部の開閉部を開いて、しかも前記測定対象物とともに密閉された測定チャンバを形成し、前記測定対象物から放出される放射線によって前記測定チャンバ内で気体を電離させる照射工程と、
前記照射工程の後に、前記開閉部を開放したままで、イオンを除去した外気を前記測定チャンバ内に吸引するとともに前記測定チャンバ内の気体を前記測定チャンバ外のイオン検出器に導き、このイオン検出器に発生するグロス電流を測定する近傍気体吸引時グロス電流測定工程と、
前記近傍気体吸引時グロス電流測定工程で測定されたグロス電流に基づいて放射能を算出する放射能算出工程と、
を有する放射線測定方法。
【請求項10】
前記測定対象物から放出される放射線の影響がない状態で前記イオン検出器に発生するバックグラウンド電流を測定するバックグラウンド電流測定工程をさらに有し、
前記放射能算出工程では、前記グロス電流から前記バックグラウンド電流を差し引いて得られる正味電流を求め、この正味電流に基づいて放射能を算出すること、
を特徴とする請求項8または9記載の放射線測定方法。
【請求項11】
前記バックグラウンド電流測定工程は複数回に分けて行ない、それぞれの工程で別個に前記バックグラウンド電流を求め、
前記グロス電流測定工程または近傍気体吸引時グロス電流測定工程は複数回に分けて行ない、それぞれの工程で別個に前記グロス電流を求め、
前記放射能算出工程では、前記複数のバックグラウンド電流および複数のグロス電流に基づいて正味電流を求め、
この正味電流に基づいて放射能を算出すること、
を特徴とする請求項10記載の放射線測定方法。
【請求項12】
電離空間を形成する測定チャンバの開閉部を開いて、前記測定チャンバ内に測定対象物を搬入する搬入工程と、
前記搬入工程の後に、前記開閉部を閉じて、前記測定チャンバを密封状態にして測定対象物の放射線によって前記電離空間を所定時間照射する照射工程と、
前記照射工程の後に前記開閉部を開いて、前記測定対象物を前記測定チャンバから搬出する搬出工程と、
前記搬出工程の後に前記開閉部を閉じて、イオンを除去した外気を前記測定対象物の近傍を通さずに前記測定チャンバ内に吸引するとともに、前記測定チャンバ内の気体を、残留するイオンとともに吸引して、前記測定チャンバ外に配置されたイオン検出器により、所定の時間の電流を測定する電流測定工程と、
前記電流測定工程で測定された電流値に基づいて放射能を算出する放射能算出工程と、
を有する放射線測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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