説明

放射線源の収納容器と放射線源管理システム

【課題】 放射線源の所在を確実に管理することができる放射線源管理システムおよび放射線源の収納容器の提供。
【解決手段】 放射線源管理システムは、放射線管理区域2において放射線源100の所在を管理する。収納容器10は、収納された放射線源に対し、所定の放射線源情報を検出する放射線検出器13と、放射線検出器13によって検出された放射線源情報を定期的に読み取り、この放射線源情報を表示する送受信制御装置14と、放射線源に対して個別に付与したICタグ12とを備えている。また、放射線管理区域2と保管室1の出入口には、チェックゲート20、21が設けられ、識別情報および放射線源情報を読み取る構成である。さらに、区域内ネットワークを介して識別情報および放射線源情報を受信するホストコンピュータが設けられており、このホストコンピュータが判別手段によって放射線源100の所在を判別している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、容器に密閉保管された放射線源を使用する際に、持ち出される放射線源の所在を管理する管理システムおよび放射線源の収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線源は、α線、β線、γ線、中性子線、重荷電粒子線、X線など電磁波または粒子線が含まれる放射線の発生源として利用され、放射性同位元素(アイソトープ)を含む物質である。周知の通りこの放射線を多量に浴びることは人体に悪影響を及ぼす。したがって、原子力発電所や放射線源を取り扱う研究施設等においては、放射線源を保管室等に厳重保管しており、そこから放射線源を持ち出すには厳重なチェックを受ける体制が構築されている。
【0003】
特許文献1には、放射線源を管理するための放射線管理区域セキュリティーシステムが開示されている。特許文献1のセキュリティーシステムは、放射線源収納容器に識別番号を記憶させたICタグを貼着して、そのICタグの情報をゲートアンテナにより検知することで放射線源の所在を管理している。
【特許文献1】登録実用新案第3064026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、通常、放射線源は、放射線を遮断する収納容器に密封収納されている。収納容器は、放射線の強度や種類によって異なり、例えばγ線の場合は、鉛合金で形成された容器が多く用いられている。このような収納容器に収納された放射線源は、外部から目視確認することができない。特許文献1のセキュリティーシステムの場合も、ICタグを収納容器に貼着しているが、鉛で形成された収納容器の場合は内部を目視することができない。このため、放射線源が間違いなく収納容器内に入っているか、容器の外部から確認することができない。よって、持ち出された放射線源が収納容器に保管されず、当該収納容器だけが返却されるという事態も想定し得る。もちろん、持ち出し時には、持ち出す人間を厳重チェックしているので、外部で放射線源が紛失したり悪用されるおそれはないものの、上述したような事態は放射線源を管理する上で好ましいことではない。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、収納容器に放射線源を対応付けて確実に管理することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の収納容器は、放射線源を収納する収納容器であって、収納された放射線源から発せられる所定の放射線源情報を検出する放射線検出器と、放射線源に対して個別に付与した識別情報を記憶する識別情報記録手段と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
かかる構成によれば、放射線源から発せられる放射線源情報を放射線検出器により検出することで、収納容器内に放射線源が確実に収納されていることを確認することが可能となる。
【0008】
さらに、放射線検出器により検出された放射線源情報を表示する表示手段を外面に備えた構成とすれば、当該表示手段の表示を見るだけで、収納容器内に収納された放射線源を確認することができる。
【0009】
放射線検出器は、放射線源の放射線強度を含む放射線源情報を検出する構成とすることができる。さらに放射線検出器は、放射線源の線種または種類を含む放射線情報を検出する構成とすることもできる。
【0010】
次に、本発明の放射線源管理システムは、上述した構成の収納容器を用いて、放射線管理区域において放射線源の所在を管理する放射線源管理システムであって、
放射線管理区域内には、収納容器を保管する保管室が設置され、
保管室および放射線管理区域の出入口には、当該出入口を通過する収納容器の識別情報記録手段に記録された識別情報を読み取る識別情報読取手段と、同じく収納容器の放射線検出器によって検出された放射線源情報を読み取る放射線源情報読取手段と、これら読み取った各情報を転送する転送手段とを含むチェックゲートが設けられ、
さらに、チェックゲートから転送されてきた識別情報および放射線源情報を受信するホストコンピュータが設けられており、
ホストコンピュータは、収納容器がチェックゲートを出る際に読み取られた識別情報および放射線源情報を記録し、当該収納容器がチェックゲートを入る際に読み取られた識別情報および放射線源情報を、記録してある識別情報および放射線源情報と比較して、一致している場合は正しく返却されたと判別し、不一致の場合は返却ミスがあると判別することを特徴とする。
【0011】
このような放射線源管理システムを構築することで、放射線源の所在を確実に把握することが可能となる。また、放射線源の持出時や返却時の管理作業も、チェックゲートにおいて放射線源の各情報を自動的に読み取り記録するため、人的な手間をかけずに管理することができる。
【0012】
さらに、チェックゲートは、保管室の出入口に設けられた第1のチェックゲートと、放射線管理区域の出入口に設けられた第2のチェックゲートとを含み、
ホストコンピュータは、収納容器が第1のチェックゲートを出る際に読み取られた識別情報および放射線源情報と、当該収納容器が第2のチェックゲートを出る際に読み取られた識別情報および放射線源情報とを比較して、一致している場合は第2のチェックゲートからの持ち出しを許可し、不一致の場合は持ち出しミスがあると判別して持ち出しを許可しない構成とすることができる。
【0013】
このような二重のチェック体制を構築することで、放射線源をいっそう厳重に管理することが可能となる。
【0014】
なお、上記識別情報記録手段は、収納容器の外面に貼り付けられたICタグであって、識別情報読取手段は、このICタグに記録された識別情報を非接触にて読み取る構成とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上、本発明によれば、収納容器に放射線源を対応付けて確実に管理することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1乃至図7は、本実施形態の放射線源管理システムを示す図である。図1は、本実施形態の放射線源管理システムが構築された放射線管理区域を模式的に示す斜視図であり、図2は、放射線源管理システムの概要を示すブロック図である。
図1および図2に示すように、放射線管理区域2内に放射線源100を保管する保管室1が設けられている。通常、放射線源は放射線管理区域2内での持ち出しが許可されており、その外部にある放射線管理外区域3への持ち出しは特別な場合に限られている。例えば、放射線管理区域2には、保管室1以外に、研究室や廃棄物保管室などが設置されている。この放射線管理区域2や保管室1は、入退場者も管理されている。例えば、保管室1や放射線管理区域2の出入口は常時施錠されており、鍵を所持する者や管理者から入退場が許可された者に限って、その出入口を通過することが可能となっている。
【0017】
保管室1に保管される放射線源100は、放射線強度の違い、α線、β線、γ線、X線などの線種の違い、放射線源の種類(例えばセシウム、イリジウム、ラジウム等)の違いなどから分類され、種々のものが揃えられている。
【0018】
ここで、一つの収納容器10には、一つのまとまりをもった放射線源100が対応付けて収納されている。収納容器10は、放射線の強度や線種などの条件に応じて、種々の材質が適用でき、大きさや厚さも適宜変更することができる。例えば、放射線の強度が低く、α線やβ線を放出する放射線源100に対しては、薄いアルミ材等によって収納容器10を形成することができる。また、γ線を放出する放射線源100に対しては、厚さのある鉛合金によって収納容器10を形成することが好ましい。
【0019】
図3は、本実施形態の放射線源管理システムに用いられる収納容器の一例を示す斜視図である。
図2および図3に示すように、保管室1に保管される収納容器10は、蓋体11aを含む容器本体11と、識別情報記録手段としてのICタグ12と、放射線検出器13と、送受信制御装置14とを備えている。
【0020】
ICタグ12は、収納容器10の容器本体11の外周面に貼り付けられている(図では蓋体11aに貼り付けてある)。このICタグ12には、磁気データとして放射線源100の識別情報がそれぞれに付与されている。ICタグ12に付与された放射線源100の識別情報は、各出入口に設置された後述する第1および第2のチェックゲート20、21を通過する際に、自動的に読み取られることになる。
【0021】
本実施形態の放射線検出器13は、半導体検出器を適用しており、収納容器10に内蔵されている。半導体検出器は、放射線が入射した際に生成される陽イオンと電子に高圧電をかけることで放射線を検出する測定器である。この半導体検出器は、放射線のエネルギーをパルス波高の分布として測定し、そのエネルギーの分解を行うことでエネルギースペクトルを解析することができる。この半導体検出器の機能により、放射線源情報として、放射線の強度、線源の種類、線種が検出される。
【0022】
収納容器10には、放射線源100が保管される内部空間に対して、放射線検出器13の検出用端子13aが露出している。放射線検出器13はこの検出用端子13aが放射線源100の放射線源情報を検出し、送受信制御装置14に出力する構成である。
【0023】
送受信制御装置14は、放射線源100の放射線源情報(放射線の強度、線種、線源の種類)を外部に発信する機能を備えている。送受信制御装置14は、容器本体11の外周面に取り付けてあり、内部には、演算部、記憶部、送受信器、警報器(ともに図示せず)等が備えてある。送受信制御装置14の演算部は、放射線検出器13から放射線源100放射線源情報を定期的に読み取り、記憶部に保存する機能を有している。そして、送受信器が外部からの特定の無線信号を受信すると、記憶部に保存してある放射線源100の放射線源情報を呼び出し、送受信器から自動的に発信させるように作動する。
【0024】
また、送受信制御装置14には、表示部14a(表示手段)が設けてあり、収納容器10に収納された放射線源100の放射線源情報が表示される。さらに、送受信制御装置14には、外部電源16から電力を充電する充電部15が設けられており、放射線源の長期保管に対して、放射線検出器13および送受信制御装置14の作動用の電源が確保されている。
【0025】
このように構成された収納容器10は、放射線源100を内部に収納して、保管室1の外部電源16の電気的に接続された状態で保管される。このとき、収納容器10の放射線検出器13が収納された放射線源100の放射線源情報を測定している。そして、測定された放射線源の各情報は、定期的に送受信制御装置14に送出され、表示部14aに表示される。これにより、放射線源100を持ち出す際に、持出者が目視で放射線源100の情報を確認でき、放射線源100の選択に手間がかからなくなる。
【0026】
また、図1および図2に示すように、本実施形態の放射線源管理システムは、保管室1と放射線管理区域2との区域間、および放射線管理区域2と放射線源管理外区域3との区域間の出入口に、第1のチェックゲート20と、第2のチェックゲート21と、がそれぞれ設置されている。また、これら各チェックゲート20、21の付近には、端末機器22および警報アラート23が設けられている。
【0027】
第1および第2のチェックゲート20、21は、特定の周波数信号を電波として発信しており、収納容器10のICタグ12に付与された識別情報を受信する磁気情報受信機能(識別情報読取手段)を有している。また、各チェックゲート20、21は、前述の周波数信号と異なる信号を発信しており、送受信制御装置14から発信される放射線源100の放射線源情報を受信する電波情報受信機能(放射線源情報読取手段)も有している。これらの各受信機能は、放射線源100が各ゲート付近に接近したとき自動的に各情報を受信する構成となっている。
さらに、各チェックゲート20、21には、受け取った各種情報を放射線源管理システムのホストコンピュータ30へ転送する機能(転送手段)が組み込まれている。
【0028】
放射線源管理システムの端末機器22は、各チェックゲート20、21の内側の出入口付近にそれぞれ設置されている。この端末機器22は、モニタ、キーボード、メモリ、演算装置等で構成された一般的な汎用コンピュータを適用できる。また、端末機器22はともに社内LAN等の区域内ネットワークを介して、別の場所(例えば管理センター)にあるホストコンピュータ30に接続されている。端末機器22には、放射線源100に関する必要な情報が手動で入力される。そして、端末機器22は、この必要な情報をホストコンピュータ30に送信し、またホストコンピュータか30ら送られてくる情報をモニタに表示することができる。
【0029】
警報アラート23は、放射線源100の持出時に異常事態を知らせる機器である。この警報アラート23は、内部にランプが備えられており、各チェックゲート20、21の室内側と外側の双方に取り付けられている。また、警報アラート23はホストコンピュータ30に接続されており、ホストコンピュータ30の指示によって点滅の開始や停止が操作される。
【0030】
図4は、本実施形態の放射線源管理システムのホストコンピュータを示すブロック図である。
同図に示すように、ホストコンピュータ30は、内部にCPU(演算装置)31と、メモリ32とを備えた構成である。また、ホストコンピュータ30には、各チェックゲート20、21に接続する入出力インターフェース33と、端末機器22に接続するネットワーク用インターフェース34と、警報アラート23に接続する出力インターフェース35と、を備えている。
【0031】
ホストコンピュータ30のメモリ32には、放射線源管理システムの管理プログラム(判別手段)36と、放射線源100のデータベースとが保存されている。これらメモリ32に保存された管理プログラム36やデータベースは、CPU31からの命令で必要に応じて呼び出され、また上書き保存される。
【0032】
メモリ32に保存されるデータベースの情報としては、識別情報40、線源名称41、放射線の強度42、線源の種類44、線種43、管理区域外許可情報45、放射線源管理責任者および管理責任者連絡先アドレス46、過去の使用履歴47などがある。また、放射線源100の情報は、実際に放射線源100が保管状態であれば「保管中」と表示され、使用状態であれば「持出中」と切り替わり、管理責任者が容易に確認できるようになっている。
【0033】
一方、端末機器22に入力され、ホストコンピュータに送信される情報としては、識別情報50、線源名称51、持出日時52、持出担当者53、持出担当者連絡先アドレス54、返却予定日時55、管理区域外への持ち出し許可の申請56、返却担当者57、返却日時58などがある。また、第1のチェックゲート20に入力される放射線源100の情報としては、識別情報60、容器持ち出しゲート通過日時61、容器返却ゲート通過日時62、放射線の強度63、線源の種類65、線種64などがあり、第2のチェックゲート21から入力される情報としては、識別情報70、管理区域外容器持ち出しゲート通過日時71、放射線の強度72、線源の種類74、線種73がなどがある。
【0034】
放射線源管理システムの管理プログラム36は、端末機器22や各チェックゲート20、21から送信されてきた放射線源100の各情報と、メモリ32に予め保存されている放射線源100の情報とをそれぞれ関連づけて比較し、処理するプログラムが組まれている。また、端末機器22には、放射線源の入力情報を入力しやすいように案内する入力用画面がプログラミングされており、ホストコンピュータ30の管理プログラム36と双方向のデータ送受信が実現されている。
【0035】
図5は、本実施形態の放射線源管理システムの管理プログラムによる処理動作を示すフローチャートである。
次に、放射線源管理システムの処理フローのうち、放射線源100を収納した収納容器10を保管室1から持ち出す場合と、収納容器10を保管室1に返却する場合について、図5を参照して説明する。
【0036】
ステップS1では、放射線源100の持出者による起動指示で、端末機器22の入力画面が起動する。この入力画面の起動時に、ホストコンピュータ30の管理プログラム36と自動的にネットワーク接続される。
【0037】
その後、持出者が、放射線源100の各情報を端末機器22から手動で入力する(ステップS2)。このとき入力される情報としては、識別情報50、線源名称51、持ち出し日時52、持ち出し担当者53、持ち出し担当者連絡先アドレス54、返却予定日時55、管理区域外への持ち出し許可の申請56などがある(図4参照)。なお、各情報の入力方法は、端末機器22に付属するキーボードで入力してもよいが、例えば、持ち出し担当者53、持ち出し担当者連絡先アドレス54は、社員IDを入力する、或いは社員IDを専用機器で読み取るだけで自動的に呼び出されるようにプログラムされていてもよい。
【0038】
そして、入力した放射線源100の各情報をホストコンピュータ30に送信する(ステップS3)。ホストコンピュータ30ではメモリ32に保存してある放射線源100のデータベースから、送信されてきた情報に基づく放射線源100の各情報を呼び出す。
【0039】
次に、収納容器10を第1のチェックゲート20に近づけることで、放射線源100の各情報を第1のチェックゲート20が自動的に読み取ってホストコンピュータ30に送信する(ステップS4)。送信ゲート20に読み取られる情報としては、ICタグ12に付与された識別情報60、送受信制御装置14から発信される放射線の強度63、線種64、線源の種類65、読み取った時間を測定した容器持ち出しゲート通過日時61がある(図4参照)。
【0040】
ホストコンピュータ30では、第1のチェックゲート20から送られてきた放射線源100の情報と、放射線源100のデータベースから呼び出した放射線源100の各情報と、を比較して互いの情報が一致しているか否かを判別する(ステップS5)。そして、情報が一致していれば、収納容器10の持出者をそのまま第1のチェックゲート20から通過させ、入力された放射線源の各情報をメモリ32に保存する。また同時に、持ち出される放射線源100の保管情報を「保管中」から「持出中」に変更する。一方、情報が異なっていた場合、持ち出すべき放射線源100ではないと判別して、ステップS6〜S8に進む。
なお、放射線源100の核種は、長期間の保管によって徐々に壊変していくが、この壊変速度は半減期の計算によって算出することが可能であり、管理プログラム36に組み込んでおくことで、保存されてある放射線源100の情報を自動的に変更することができる。
【0041】
持ち出すべき放射線源100ではないと判別すると、管理責任者連絡先アドレス46を呼び出し、放射線源の持ち出しに異常があったことを通知する自動配信メールを送信する(ステップS6)。また、警報アラート23にも信号を送信して、第1のチェックゲート20の上部で警報アラートを点滅させる(ステップS7)。さらに、第1のチェックゲート20を介して、収納容器10の送受信制御装置14に対して特定の信号を発信し、送受信制御装置14の警報器を発動させる(ステップS8)。
【0042】
これらステップS7、S8の各処理によって、持出者に対し、持ち出す放射線源100の異常状態を知らせる。この異常状態は、一定の時間経過や正しい放射線源100の情報を入力することで解消される。このようなステップを踏むことで、放射線源管理システムは、保管室1から収納容器10を持出時において、どの放射線源100が持ち出されたのか確実に管理することが可能となる。
【0043】
持ち出した収納容器10を返却する場合、返却者が第1のチェックゲート20を通過すると、放射線源100の各情報を第1のチェックゲート20が自動的に読み取り、ホストコンピュータ30に送信する(ステップS9)。返却時に、第1の送信ゲート20に読み取られる情報としては、ICタグ12に付与された識別情報60と、送受信制御装置14から発信される放射線の強度63、線種64、線源の種類65と、読み取った時間を測定した容器返却ゲート通過日時62とがある。
【0044】
次に、第1のチェックゲート20から送られてきた放射線源100の各情報と、持出前に入力された放射線源100の情報とを比較して、各情報がそれぞれ一致しているかを判別する(ステップS10)。この判別は、返却時と持出時の識別情報60の一致を確認した後に、返却時と持出時の放射線源100の放射線源情報である強度63、線種64、線源の種類65をそれぞれ比較している。このとき、放射線源100の放射線源情報が互いに一致していれば、収納容器10内に正しい放射線源100が入っていると判別する。そして、収納容器10の返却者に対し、そのまま第1のチェックゲート20を通過させ、ステップS14へと進む。
なお、返却時と持出時の放射線源100の比較は、上記の判別方法に限定されるわけではなく、例えば、放射線源の強度63だけで判別してもよい。
【0045】
一方、放射線源100の各情報が一致していなければ、収納容器10内には間違った放射線源100が入れられている、あるいは放射線源が存在しないことになる。このため、管理プログラム36は、返却すべき収納容器10ではないと判別して、ステップS11〜S13に進む。
【0046】
返却すべき収納容器10ではないと判別すると、管理責任者連絡先アドレス46に対して、放射線源の返却に異常があったことを知らせる自動配信メールを送信する(ステップS11)。また、警報アラート23にも信号を送信して、第1のチェックゲート20の上部で警報アラートを点滅させる(ステップS12)。さらに、第1のチェックゲート20を介して、収納容器10の送受信制御装置14に対して特定の信号を発信し、送受信制御装置14の警報器を発動させる(ステップS13)。
【0047】
これらステップS12、S13の各処理によって、返出者に対し、返却する放射線源100の異常状態を知らせる。そして、一定の時間経過した後で、ステップS12、S13の各動作は停止する。これら各ステップを踏むことで、放射線源管理システムは、収納容器10の保管室1への返却時において、返却すべき放射線源100を確実に管理することができる。
【0048】
また、放射線源100の返却後には、返却者が返却した放射線源100の必要な情報を手動で入力する(ステップS14)。このとき、手動で入力される情報としては、識別情報50、線源名称51、返却担当者57、返却日時58などがある。
【0049】
そして、入力した放射線源100の入力情報をホストコンピュータ30に送信することで、放射線源100の返却が完了する(ステップS15)。ホストコンピュータでは、放射線源の情報を「持出中」から「保管中」に変更し、また放射線源100の過去の使用履歴47など各種情報を更新してデータベースとしてメモリ32に保存する。
以上のような処理フローを踏むことで、収納容器10および放射線源100の保管室1への返却を確実に管理することができる。
【0050】
図6は、本実施形態の放射線源管理システムの管理プログラムによる収納容器を管理外区域に持ち出す処理動を示すフローチャートであり、図7は、同じく管理プログラムによる収納容器の返却時間が近づいた場合の処理動作を示すフローチャートである。
図6に示すように、収納容器10を放射線管理外区域に持ち出す場合、第2のチェックゲート21に収納容器10が近づくと、放射線源100の各情報を第2のチェックゲート21が自動的に読み取る(ステップS21)。このとき読み取られる放射線源100の情報としては、ICタグ12に付与された識別情報70と、送受信制御装置14から発信される放射線の強度72、線種73、線源の種類74と、読み取った時間を測定した管理区域外容器持ち出しゲート通過日時71とがある。
【0051】
その後、読み取った放射線源100の各情報をホストコンピュータ30に送信する(ステップS22)。そして、保存されている持出中の放射線源100のデータから識別情報70に基づく放射線源100の情報を呼び出す。
【0052】
次に、呼び出した持出中の放射線源100のデータから、管理区域外許可情報45を参照し、放射線源100の持ち出しが許可されているのかを判別する(ステップS23)。このとき、放射線源100の持ち出しが許可されていれば、ステップS24へ進む。一方、放射線源100の持ち出しが許可されていなければ、ステップS26〜S28へ進む。
【0053】
ステップS24では、呼び出した持出中の放射線源100のデータから、保管室1から持ち出した際に入力した管理区域外3の持ち出し許可の申請56が参照され、放射線源100の持ち出し許可を申請してあるのかを判別する。このとき、放射線源100の持ち出し許可の申請がしてあれば、ステップS25へ進む。一方、放射線源100の持ち出し許可の申請がしてなければ、ステップS26〜S28へ進む。
【0054】
ステップS25では、呼び出した第1のチェックゲート通過時の放射線源100のデータから、放射線源の強度63、線種64、線源の種類65の情報をそれぞれ参照し、第2のチェックゲート21から送信してきた放射線源の強度72、線種73、線源の種類74の情報と一致しているかを判別する。このとき、放射線源100の強度、線種、線源の種類の情報がそれぞれ一致していれば、放射線管理区域外3に持ち出すことが可能な放射線源と判別し、第2のチェックゲート21を通過させる。一方、放射線源100の各情報が異なっていれば、収納容器10に入れられている放射線源100が持ち出されるべきではないと判別し、ステップS26〜S28へ進む。
【0055】
ステップ25で、放射線管理外区域3に持ち出すべきではないと判別すると、放射線源100の管理責任者連絡先アドレス46に対して、放射線源100の持ち出しに異常があったことを知らせる自動配信メールを送信する(ステップS26)。また、警報アラート23にも信号を送信して、第2のチェックゲート21の上部で警報アラートを点滅させる(ステップS27)。さらに、第2のチェックゲート21を介して、収納容器10の送受信制御装置14に対して特定の信号を発信し、送受信制御装置14の警報器を発動させる(ステップS28)。
【0056】
以上ようなステップを踏むことで、放射線源管理システムは、放射線管理区域2から放射線管理外区域3への収納容器10の持ち出しを確実に管理することができる。
【0057】
また管理プログラム36は、図7に示すように、持出中の収納容器10について、持出時に入力された返却予定日時55と現状時刻とを定常的に比較しており、返却時刻の一時間前か否かを判別している(ステップS31)。
【0058】
そして、収納容器10の返却時刻が一時間前となった場合、返却時刻が近づいたことを告知する(ステップS32)。この告知方法としては、施設内の各所に設けられた発信装置から、特定の信号を発信して収納容器10の送受信制御装置14にある警報器を鳴らす方法や、持出時に入力された持出担当者連絡先アドレス54に、自動配信メールを送信する方法などがある。
【0059】
また、ホストコンピュータ30では、放射線源100の返却予定日時55の延長が申請されているかを定常的に判別している(ステップS33)。この放射線源100の返却予定日時55の延長は、例えば、区域内ネットワークに接続されたコンピュータ22からホストコンピュータ30の管理プログラム36にアクセスして、日時の変更させる方法などがあげられる。このとき、返却予定日時55の延長が申請されれば、申請された返却予定日時で新たに現状時刻との比較を開始する。一方、返却予定日時55の延長が申請されていなければ、ステップS34へ進む。
【0060】
さらに、ステップS34では、持出中の収納容器10について、持出時に入力された返却予定日時55と現状時刻とを定常的に比較しており、収納容器10の返却時刻になったか否かを判別している。
【0061】
そして、収納容器10の返却時刻となった場合、持ち出された収納容器10が保管室1に返却されたか否かを判別する(ステップS35)。このとき、収納容器10が第1のチェックゲート20を通過していれば、保管室1に返却したと判別してプログラムは終了する。一方、収納容器10が第1のチェックゲート20を通過していなければ、保管室1に返却していないと判別しステップS36〜S38へ進む。
【0062】
収納容器10を返却していないと判別すると、ホストコンピュータ30から放射線源100の管理責任者連絡先アドレス46に対して、放射線源100の返却に異常があったことを知らせる自動配信メールを送信する(ステップS36)。また、施設内の各所に設けられた発信装置から、特定の信号を送信を発信して収納容器10の送受信制御装置14にある警報器を発動させる(ステップS37)。
【0063】
以上のように、放射線源管理システムは、収納容器10の各チェックゲート20、21の通過を管理することで、放射線源100の所在を確実に管理することができる。また、収納容器10の内部が目視できなくても、収納される放射線源100の状態がわかるとともに、収納容器10に間違って放射線源100を入れたとしても容易にその間違いを判別することが可能である。
なお、放射線源管理システムは、上述した実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の応用実施または変形実施が可能であることは勿論である。
例えば、放射線源管理システムは、収納容器10に設置した送受信制御装置14に識別情報記録手段としての機能を付加し、同装置14が識別情報を記録し発信する構成としてもよい。このような構成とすることで、収納容器10にICタグ12を貼り付ける必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本実施形態の放射線源管理システムが構築された放射線管理区域の概略を示す斜視図である。
【図2】本実施形態の放射線源管理システムの概要を示すブロック図である。
【図3】本実施形態の放射線源管理システムに適用した収納容器の一例を示す斜視図である。
【図4】本実施形態の放射線源管理システムのホストコンピュータを示すブロック図である。
【図5】本実施形態の放射線源管理システムの管理プログラムによる処理動作を示すフローチャートである。
【図6】本実施形態の放射線源管理システムの管理プログラムによる別の処理動作(収納容器を管理外区域に持ち出す場合)を示すフローチャートである。
【図7】本実施形態の放射線源管理システムの管理プログラムによる別の処理動作(収納容器の返却時間が近づいた場合)を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0065】
1:保管室、2:放射線管理区域、3:放射線管理外区域、
10:収納容器、11:容器本体、12:ICタグ、13:放射線検出器、14:送受信制御装置、15:充電部、16:外部電源、
20:第1のチェックゲート、21:第2のチェックゲート、22:端末機器、23:警報アラート、
30:ホストコンピュータ、31:演算装置、32:メモリ、33:入力インターフェース、34:入出力インターフェース、35:出力インターフェース、36:管理プログラム、
40:識別情報、41:線源名称、42:放射線の強度、43:線種、44:線源の種類、45:管理区域外許可情報、46:放射線源管理責任者および管理責任者連絡先アドレス、47:過去の使用履歴、
50:識別情報、51:線源名称、52:持ち出し日時、53:持ち出し担当者、54:持ち出し担当者連絡先アドレス、55:返却予定日時、56:管理区域外への持ち出し許可の申請、57:容器持ち出しゲート通過日時、58:容器返却ゲート通過日時、59:放射線の強度、60:線種、61:線源の種類、62:返却担当者、63:返却日時、64:管理区域外容器持ち出しゲート通過日時

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源を収納する収納容器であって、
前記収納された放射線源から発せられる所定の放射線源情報を検出する放射線検出器と、
前記放射線源に対して個別に付与した識別情報を記憶する識別情報記録手段と、を備えていることを特徴とする収納容器。
【請求項2】
前記放射線検出器により検出された放射線源情報を表示する表示手段を外面に備えたことを特徴とする請求項1の収納容器。
【請求項3】
前記放射線検出器は、前記放射線源の放射線強度を含む放射線源情報を検出することを特徴とする請求項1又は2の収納容器。
【請求項4】
前記放射線検出器は、さらに前記放射線源の線種または種類を含む放射線情報を検出することを特徴とする請求項3の収納容器。
【請求項5】
前記請求項1乃至4の収納容器を用いて、放射線管理区域において前記放射線源の所在を管理する放射線源管理システムであって、
前記放射線管理区域内には、前記収納容器を保管する保管室が設置され、
前記保管室および前記放射線管理区域の出入口には、当該出入口を通過する前記収納容器の識別情報記録手段に記録された識別情報を読み取る識別情報読取手段と、同じく前記収納容器の放射線検出器によって検出された放射線源情報を読み取る放射線源情報読取手段と、これら読み取った各情報を転送する転送手段とを含むチェックゲートが設けられ、
さらに、前記チェックゲートから転送されてきた前記識別情報および放射線源情報を受信するホストコンピュータが設けられており、
前記ホストコンピュータは、前記収納容器が前記チェックゲートを出る際に読み取られた識別情報および放射線源情報を記録し、当該収納容器が前記チェックゲートを入る際に読み取られた識別情報および放射線源情報を、前記記録してある識別情報および放射線源情報と比較して、一致している場合は正しく返却されたと判別し、不一致の場合は返却ミスがあると判別することを特徴とする放射線源管理システム。
【請求項6】
前記チェックゲートは、前記保管室の出入口に設けられた第1のチェックゲートと、前記放射線管理区域の出入口に設けられた第2のチェックゲートとを含み、
前記ホストコンピュータは、前記収納容器が前記第1のチェックゲートを出る際に読み取られた識別情報および放射線源情報と、当該収納容器が前記第2のチェックゲートを出る際に読み取られた識別情報および放射線源情報とを比較して、一致している場合は前記第2のチェックゲートからの持ち出しを許可し、不一致の場合は持ち出しミスがあると判別して持ち出しを許可しないことを特徴とする請求項5の放射線源管理システム。
【請求項7】
前記識別情報記録手段は、前記収納容器の外面に貼り付けられたICタグであって、前記識別情報読取手段は、このICタグに記録された識別情報を非接触にて読み取る構成であることを特徴とする請求項5又は6の放射線管理システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate