説明

放射線画像の品質評価方法、品質評価装置及びプログラム

【課題】QCファントム毎の物理的特徴の差異に拘らず、品質評価の効率化を図ること。
【解決手段】画質評価項目に対応した大きさ又は形状を有する評価部材が内在されたQCファントムが撮影された画像データを取得し、当該画像データを二値化して第1の二値化画像を生成し、第1の二値化画像から所定の信号値を有する連続した領域を第1の二値化領域として抽出し、第1の二値化領域の特徴量を算出し、第1の二値化領域の特徴量に基づいて予め定められた評価演算を当該第1の二値化領域に対して実行する放射線画像の品質評価方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像の品質評価方法、品質評価装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療分野において、患者の病状の診断のための画像を得るために放射線画像読取システムが用いられている。放射線画像読取システムでは、放射線撮影により被写体を透過した放射線エネルギーの一部を輝尽性蛍光体シートの内部に一旦蓄積し、放射線エネルギーが蓄積された輝尽性蛍光体シートを励起光で2次元的に走査して輝尽発光を生じさせ、この輝尽発光光を光電的に読み取って画像信号を得て、これをA/D変換してデジタルの画像データを取得する。
【0003】
このような放射線画像読取システムにおいて得られた画像の画質が悪いと、適正な診断を行うことができなくなる。そのため、オペレータやサービスマンによって、画像読取装置やカセッテのQA(Quality Assurance:品質保証)やQC(Quality Control:品質管理)を行なうための検査方法がある。
【0004】
この検査方法としては、放射線透過性の基板に放射線を遮蔽する部材や吸収する部材が配置されたQCファントムを撮影してQCファントムの放射線画像を得て、この放射線画像を検査対象となる画像読取装置で読み取り、読み取った放射線画像の画像データに品質評価結果を取得するための演算(以下、QC演算という)を施す検査が知られている。
【0005】
QCファントムの放射線画像から得られた画像データにQC演算を施す際、QCファントムに内在された各種部材の位置を特定する必要がある。
この各種部材の位置特定の技術として、例えば、QCファントムを撮影して得られた放射線画像(グレースケール画像)を処理し、画像コンポーネントを決定し、そして、画像コンポーネントと予め定めた画像コンポーネントとが合致した場合、標識物の位置が特定され、関心領域(ROI)を算出する、即ち、QCファントム内に各部材の位置を特定するための標識物を有し、予め定められたテンプレートとの比較により、各種部材の位置を決定する技術が開示されている(特許文献1参照)。
【0006】
また、各部在の位置を検出するためのマーカと、QCファントムの種類を識別する識別情報及び検査用部材に関連する各種情報(校正値情報、各部在の位置情報等)と、を記憶するICメモリと、を配置したQCファントム用いた放射線画像読取システムが開示されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−54514号公報
【特許文献2】特開2004−223138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、各種部材の位置情報や、基準位置情報をQCファントム内に保持させる必要があるため、QCファントムの生産コストの増加を招く。更に、QCファントム毎に識別情報やテンプレートの切替えが必要となるため、品質評価の検査工数が多くなる。
また、QCファントムが破損した場合、破損したことを把握しているユーザのみしか破損していることを考慮して評価結果を検証することができず、破損したことを知らないユーザが検査をしたときは、破損箇所を考慮して評価結果を検証することができないため、誤った評価結果の検証を行なってしまうという問題がある。
【0008】
本発明の課題は、上記問題に鑑みて、QCファントム毎の物理的特徴の差異に拘らず、品質評価の効率化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、画質評価項目に対応した大きさ又は形状を有する第1の評価部材が内在されたQCファントムが撮影された放射線画像を取得する画像取得工程と、前記画像取得工程により取得された放射線画像を二値化して第1の二値化画像を生成する第1の二値化工程と、前記第1の二値化工程により生成された第1の二値化画像から所定の信号値を有する連続した領域を第1の二値化領域として抽出する第1の抽出工程と、前記第1の抽出工程により抽出された第1の二値化領域の特徴量を算出する第1の特徴量算出工程と、前記第1の特徴量算出工程により算出された第1の二値化領域の特徴量に基づいて予め対応付けられた評価演算を当該第1の二値化領域に対して実行する第1演算工程と、を含む放射線画像の品質評価方法が提供される。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の放射線画像の品質評価方法において、前記特定工程による比較結果が、いずれかの第1の二値化領域の特徴量に対応する前記予め定められた第1の評価部材の特徴量が無い場合、異常発生情報を生成する異常情報生成工程と、を含む。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の放射線画像の品質評価方法において、前記特徴量は、前記領域毎の大きさ及び形状であり、前記形状は、前記領域毎の円形度、周囲長又はアスペクト比である。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1から3のいずれか一項に記載の放射線画像の品質評価方法において、前記QCファントムは、第2の評価部材を内在しており、前記特定工程により対応する第1の評価部材が特定されたいずれかの領域を基準として、所定の位置関係にある領域の画像を前記画像取得工程により取得された放射線画像から抽出する領域抽出工程と、前記領域抽出工程により抽出された画像を二値化して第2の二値化画像を生成する第2の二値化工程と、前記第2の二値化工程により生成された第2の二値化画像から第2の二値化領域を抽出する第2の抽出工程と、前記第2の抽出工程により抽出された第2の二値化領域の特徴量を算出する第2の特徴量算出工程と、前記第2の特徴量算出工程により算出された第2の二値化領域の特徴量と、予め定められた前記第2の評価部材の特徴量とを相互に比較し、当該比較結果に応じて第2の二値化領域に対応する第2の評価部材の有無を判定する判定工程と、前記判定工程により対応する第2の評価部材が特定された第2の二値化領域に対して、第2の評価部材に対応する評価演算を実行する第2演算工程と、を含む。
【0013】
請求項5に記載の発明によれば、画質評価項目に対応した大きさ又は形状を有する第1の評価部材が内在されたQCファントムが撮影された放射線画像を取得する画像取得手段と、前記画像取得手段により取得された放射線画像を二値化して第1の二値化画像を生成する第1の二値化手段と、前記第1の二値化手段により生成された第1の二値化画像から所定の信号値を有する連続した領域を第1の二値化領域として抽出する第1の抽出手段と、前記第1の抽出手段により抽出された第1の二値化領域の特徴量を算出する第1の特徴量算出手段と、前記第1の特徴量算出手段により算出された第1の二値化領域の特徴量に基づいて予め対応付けられた評価演算を当該第1の二値化領域に対して実行する第1演算手段と、を備える品質評価装置が提供される。
【0014】
請求項6に記載の発明によれば、請求項5に記載の品質評価装置において、前記特定手段による比較結果が、いずれかの第1の二値化領域の特徴量に対応する前記予め定められた第1の評価部材の特徴量が無い場合、異常発生情報を生成する異常情報生成手段と、を備える。
【0015】
請求項7に記載の発明によれば、請求項5又は6に記載の品質評価装置において、前記特徴量は、前記領域毎の大きさ及び形状であり、前記形状は、前記領域毎の円形度、周囲長又はアスペクト比である。
【0016】
請求項8に記載の発明によれば、請求項5から7のいずれか一項に記載の品質評価装置において、前記QCファントムは、第2の評価部材を内在しており、前記特定手段により対応する第1の評価部材が特定されたいずれかの領域を基準として、所定の位置関係にある領域の画像を前記画像取得手段により取得された放射線画像から抽出する領域抽出手段と、前記領域抽出手段により抽出された画像を二値化して第2の二値化画像を生成する第2の二値化手段と、前記第2の二値化手段により生成された第2の二値化画像から第2の二値化領域を抽出する第2の抽出手段と、前記第2の抽出手段により抽出された第2の二値化領域の特徴量を算出する第2の特徴量算出手段と、前記第2の特徴量算出手段により算出された第2の二値化領域の特徴量と、予め定められた前記第2の評価部材の特徴量とを相互に比較し、当該比較結果に応じて第2の二値化領域に対応する第2の評価部材の有無を判定する判定手段と、前記判定手段により対応する第2の評価部材が特定された第2の二値化領域に対して、第2の評価部材に対応する評価演算を実行する第2演算手段と、を備える。
【0017】
請求項9に記載の発明によれば、コンピュータを、画質評価項目に対応した大きさ又は形状を有する第1の評価部材が内在されたQCファントムが撮影された放射線画像を取得する画像取得手段、前記画像取得手段により取得された放射線画像を二値化して第1の二値化画像を生成する第1の二値化手段、前記第1の二値化手段により生成された第1の二値化画像から所定の信号値を有する連続した領域を第1の二値化領域として抽出する第1の抽出手段、前記第1の抽出手段により抽出された第1の二値化領域の特徴量を算出する第1の特徴量算出手段、前記第1の特徴量算出手段により算出された第1の二値化領域の特徴量とに基づいて予め対応付けられた評価演算を当該第1の二値化領域に対して実行する第1演算手段、として機能させるためのプログラム。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、評価部材の画像の特徴量に応じて評価演算を行なうようにしたので、評価部材の位置を識別するための基準位置情報をQCファントム内に保持させる必要が無くなり、また、QCファントム内の評価部材の位置が変更されたとしても、再度、新たに基準位置情報を設定する必要が無く、評価を行なうことができ、また、QCファントム毎に各評価部材の位置にバラツキがあったとしても、各QCファントムの評価を精度高く行なうことができるため、QCファントム毎の物理的特徴の差異に拘らず、品質評価の効率化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
まず、構成を説明する。
図1に、放射線画像読取システムAの全体構成図を示す。
図1に示すように、放射線画像読取システムAは、撮影装置10と、読取装置20と、コンソール30と、イメージャ40と、サービスセンタ50と、を備えて構成される。読取装置20、コンソール30及びイメージャ40は、通信ネットワークN1を介して互いにデータ送受信可能に接続され、また、コンソール30とサービスセンタ50とは、通信ネットワークN2を介して互いにデータ送受信可能に接続されている。なお、各装置の台数は、特に限定されない。
【0020】
通信ネットワークN1、N2は、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)、インターネット等の様々な回線形態を適用可能である。なお、病院等の医療機関内で許可されるのであれば、無線通信や赤外線通信であってもよいが、重要な患者情報を含むため、送受信される情報は暗号化することが好ましい。また、病院内の通信方式としては、一般的に、DICOM(Digital Image and Communications in Medicine)規格が用いられており、上述した通信ネットワークN1、N2上の各装置間の通信では、DICOM MWM(Modality Worklist Management)やDICOM MPPS(Modality Performed Procedure Step)が用いられる。
【0021】
以下、放射線画像読取システムAの各構成装置について説明する。
撮影装置10は、放射線照射スイッチ(図示せず)や、X線源などの放射線源11等を有し、被写体Mに放射線を照射して撮影を行う。撮影装置10において撮影を行う際には、被写体Mの放射線源11と反対方向に、輝尽性蛍光体シートを収容したカセッテ12が配置される。
【0022】
カセッテ12は、放射線エネルギーを蓄積する輝尽性蛍光体シートを備える放射線画像変換シートが収容された持ち運び可能な放射線変換媒体であり、撮影装置10の放射線源11からの照射放射線量に対する被写体Mの放射線透過率分布に従った放射線量を内設された輝尽性蛍光体シートの輝尽性蛍光体層に蓄積し、この輝尽性蛍光体層に被写体Mの放射線画像情報を記録する。また、カセッテ12表面には、カセッテ12を個々に識別するためのカセッテID(カセッテ識別情報)が貼付されている。
【0023】
読取装置20は、輝尽性蛍光体シートを収容したカセッテ12が装填されると、装填されたカセッテ12に記録された放射線画像を読み取る装置であり、プログラムに従って装置全体を制御するとともに各種処理を実行するCPU(Central Processing Unit)、各種プログラムやデータを記憶するROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等からなる制御部、操作部、装填されたカセッテ12に収容された或いは内蔵された輝尽性蛍光体シートに記録された被写体Mの放射線画像を読み取って画像データを得る読取部、読取部による読取後に輝尽性蛍光体上の残像を消去する消去部、装填されたカセッテ12に貼付されたバーコードを読み取るバーコードリーダ、通信ネットワークN1上の各装置とのデータ送受信を制御する通信部等を備えて構成される。輝尽性蛍光体シートは、放射線画像を記録する記録媒体である。
【0024】
読取部は、撮影により被写体Mを透過した放射線エネルギーが蓄積された輝尽性蛍光体シートを励起光で2次元的に走査して輝尽発光を生じさせ、この輝尽発光光を光電的に読み取って画像信号を得、これをA/D変換してデジタルの画像データを取得するものである。例えば、レーザービームを励起光として用い、レーザービームを主走査方向に偏向して輝尽性蛍光体シートに入射するとともに、輝尽性蛍光体シートを副走査方向に走査搬送することにより励起光で輝尽性蛍光体シートを二次元的に走査し、生じた輝尽性発光光を光伝播器で伝播して、CCD(Charge Coupled Device)やフォトマルチプライヤ等の光検出器で検出することにより、輝尽性蛍光体に記録された放射線画像を読み取る。
【0025】
コンソール30は、撮影メニュー(品質評価処理用の撮影を行うQCメニューと、患者を撮影する一般撮影メニューとがある)の選択、撮影に使用するカセッテ12等の登録、一般撮影における撮影対象となる患者の患者情報や撮影部位等の撮影オーダ情報の登録、読取装置20で読み取られた画像データと撮影オーダ情報との対応付け及び保存、画像データに対する画像処理、画像データのイメージャ40への送信及び出力制御等を行い、更に、本実施の形態においては、品質評価処理を行なった際に生成される各種レポートをサービスセンタ50に送受信するための装置である。
【0026】
図2に、コンソール30の機能構成例を示す。図2に示すように、コンソール30は、CPU31、操作部32、表示部33、第1通信部34、第2通信部35、バーコードリーダ36、RAM37、記憶部38、HDD(Hard Disk Drive)39等を備えて構成され、各部はバスN3により接続されている。
【0027】
CPU31は、記憶部38に記憶されている各種プログラムを読み出してRAM37内に形成されたワークエリアに展開し、該プログラムに従った処理を実行することにより各部の動作を集中制御する。
【0028】
操作部32は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された指示信号をCPU31に出力する。また、操作部32は、表示部33の表示画面にタッチパネルを備えても良く、この場合、タッチパネルを介して入力された指示信号をCPU31に出力する。
【0029】
表示部33は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT等のモニタにより構成され、CPU31から入力される表示信号の指示に従って、操作部32からの入力指示やデータ等を表示する。また、本実施の形態において、表示部33は、CPU31から入力される表示信号の指示に従って、後述する品質評価処理において生成された各種レポートを画面上に出力する。
【0030】
第1通信部34は、LANアダプタやルータやTA(Terminal Adapter)等を備え、通信ネットワークN1に接続された各装置との間の通信を制御する。即ち、第1通信部34は、通信ネットワークN1を介して読取装置20で得られた画像データが入力され、さらに読取装置20の装置IDが通信ネットワークN1を介して入力される。
【0031】
第2通信部35は、LANアダプタやルータやTA(Terminal Adapter)等を備え、通信ネットワークN2に接続されたサービスセンタ50との間の通信を制御する。即ち、第2通信部35は、生成した各種レポートがサービスセンタ50に出力され、また、サービスセンタ50に蓄積され各種レポートが通信ネットワークN2を介して入力される。
【0032】
バーコードリーダ36は、カセッテ12上に貼付されたバーコードの表すカセッテIDを読み取ってCPU31に出力する。
【0033】
RAM37は、CPU31により実行制御される各種処理において、記憶部38から読み出されたCPU31で実行可能な各種プログラム、入力若しくは出力データ、及びパラメータ等の一時的に記憶するワークエリアを形成する。
【0034】
記憶部38は、不揮発性の半導体メモリ等により構成され、CPU31で実行される各種プログラムやプログラムにより処理の実行に必要なパラメータ、或いは処理結果等のデータを記憶する。これらの各種プログラムは、読取可能なプログラムコードの形態で格納され、CPU31は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
【0035】
HDD(Hard Disc Drive)39は、読取装置20から送信された一般撮影の画像データを撮影オーダ情報と対応付けて記憶し保存する。また、HDD39は、読取装置20から送信されたQCファントムを撮影して得られた放射線画像の画像データに、読み取りを行った装置の装置ID、撮影に使用したカセッテID、QC画像データであることを示すQC識別情報、読取時刻(日付を含む)情報等を対応付けて記憶し保存する。
【0036】
また、HDD39は、QC撮影管理情報ファイル391、一般撮影管理情報ファイル392、画像ファイル記憶領域393を有している。
QC撮影管理情報ファイル391は、QCファントムの画像データ毎の、管理NO、装置ID、カセッテID、QC識別情報、読取時刻情報、処理済みフラグ(デフォルトはOFF)、画像IDを対応付けて1レコードとして記憶するファイルである。
一般撮影管理情報ファイル392は、登録された撮影オーダ情報と当該撮影オーダ情報に従って撮影された画像データの画像ID等を対応付けて記憶するファイルである。
画像ファイル記憶領域393は、読取装置20から受信した画像データを記憶、保存するために設けられた領域である。
【0037】
なお、読取装置20から送信される画像データは、DICOM形式の画像ファイルであり、画像IDを含む付帯情報が付帯されている。本実施の形態において、画像データは、この画像IDにより、QC撮影管理情報ファイル391に保存されている当該画像データに関する情報や、一般撮影管理情報ファイル392に記憶されている当該画像データに関する撮影オーダ情報と対応付けられている。
【0038】
HDD39の記憶容量は、有る程度余裕を持って準備する必要がある。
通常、撮影が行われ、読取装置20等から画像データが受信された後、遅くとも1週間以内には医師による読影が開始され、又は、後述の品質評価処理が実行される。従って、画像データが受信されてから少なくとも1週間は保存が可能な記憶容量としなければならない。
【0039】
例えば、コンソール30が取り扱う画像データが一画像につき2000画素×2500画素で、1日100画像程度が生成されるとすると、容量40GBのHDD(画像保存用の記憶容量は20GBとする)であれば2000画像を約20日保存することができる。
【0040】
放射線画像読取システムAにおいては、少なくとも一台のコンソール30に、QCツール301が搭載されている。QCツール301は、品質評価用の演算プログラムであり、QCツール301が搭載されたコンソール30のCPU31は、QCツール301との協働によるソフトウエア処理により、品質評価処理を実現する。また、QCツール301を搭載したコンソール30は、品質評価処理により生成される各種レポートを記憶するQC評価結果ファイル394を有している。以下、QCツール301が搭載されたコンソール30をコンソール30aとして説明する。
【0041】
QCツール301により品質評価処理を実行するコンソール30aは、複数の評価部材が内在されたQCファントム(試験用模擬被写体模型)が撮影された放射線画像(画像データ)を取得する画像取得手段、当該画像データを二値化して第1の二値化画像を生成する第1の二値化手段、第1の二値化画像から所定の信号値を有する連続した領域を第1の二値化領域として抽出する第1の抽出手段、各第1の二値化領域の特徴量を算出する第1の特徴量算出手段、各第1の二値化領域の特徴量と、予め定められた各第1の評価部材の特徴量とを相互に比較し、当該比較結果に応じて各第1の二値化領域に対応する第1の評価部材を特定し、第1の評価部材が特定された各第1の二値化領域に対して、第1の評価部材に対応する評価演算を実行する第1演算手段、特定手段による比較結果が、いずれかの第1の二値化領域の特徴量に対応する予め定められた各第1の評価部材の特徴量が無い場合、異常発生情報(エラーレポート)を生成する異常情報生成手段、として機能する品質評価装置である。
【0042】
更に、コンソール30aは、品質評価処理を実行するにあたって、第1の評価部材が特定されたいずれかの領域を基準として、所定の位置関係にある領域の画像を取得された画像データから抽出する領域抽出手段、当該抽出された画像を二値化して第2の二値化画像を生成する第2の二値化手段、第2の二値化画像から第2の二値化領域を抽出する第2の抽出手段、第2の二値化領域の特徴量を算出する第2の特徴量算出手段、第2の二値化領域の特徴量と、予め定められた第2の評価部材の特徴量とを相互に比較し、当該比較結果に応じて各第2の二値化領域に対応する第2の評価部材の有無を判定する判定手段、対応する第2の評価部材が特定された各第2の二値化領域に対して、第2の評価部材に対応する評価演算を実行する第2演算手段、として機能する。
【0043】
図3に、QCファントムPの一例を示す。
QCファントムPは、2枚のアクリル板などの放射線透過性の基板の間に、互いに異なる大きさ又は形状を有し放射線を遮蔽する材料や吸収する材料によって読取装置の線形性、表示寸法性精度、鮮鋭性、読取レーザ走査性、低コントラスト分解能等の各画質評価項目用の評価部材が封入された品質評価用の被写体である。
【0044】
評価部材としては、表示寸法精度評価用の金属円板1a〜1c、鮮鋭性評価用のエッジパターン2、線形性評価用のステップウエッジ3a〜3d、読取レーザ走査性評価用のジッタ4a、4b、低コントラスト分解能評価用のバーガーファントム5a〜5jとする。本実施の形態においては、金属円板1a〜1c、エッジパターン2、ステップウエッジ3a〜3d、ジッタ4a、4bを第1の評価部材とし、第1の評価部材よりも低コントラストであるバーガーファントム5a〜5jを第2の評価部材とする。
【0045】
金属円板1a〜1cは、円状の銅板で構成されており、図3に示すように、QCファントムPの三隅に配置されている。金属円板1a〜1cの画像データは、読取装置の表示寸法精度を定量評価するために用いられる。
【0046】
エッジパターン2は、辺縁が鮮鋭なエッジ部が形成されたタングステン板で形成され、エッジ部を読取装置20による読み取りの主走査方向及び副走査方向に対して、若干、傾けた状態で配置されている。エッジパターン2の画像データは、読み取り装置の鮮鋭度(MTF;Modulation Transfer Function)を定量評価するために用いられる。
【0047】
ステップウエッジ3a〜3dは、段階的に互いに厚さの異なる4つの矩形の銅板で校正されている。図3に示すステップウエッジ3a〜3dは、ステップウエッジ3aからステップウエッジ3dに向かって、順次、厚さが薄くなるものであり、放射線透過量のステップウエッジとなっている。ステップウエッジ3a〜3dの画像データは、読取装置の線形性やダイナミックレンジを定量評価するために用いられる。
【0048】
ジッタ4a、4bは、直線状のエッジ部が形成された長方形状の銅板で形成されており、ジッタ4a、4bのいずれか一方の長辺は、読取装置20による読み取りの主走査方向に平行になるように配置され、他方の長辺は、副走査方向に平行になるように配置されて構成されている。ジッタ4a、4bの画像データは、各走査方向についての読取レーザの走査性能(スキャニング精度)を評価するために用いられる。
【0049】
バーガーファントム5a〜5jは、所定の直径を有する互いに高さ(厚さ)が異なるアクリル製の円柱で構成されており、図3に示すように、例えば、時計周り方向に、順次、高さ(厚さ)が段階的に低く(薄く)なり、直径が小さくなるように並べて配置されている。バーガーファントム5a〜5jの画像は、読取装置の低コントラスト分解能を目視評価又は定量評価するために用いられる。
【0050】
なお、本実施の形態において利用可能なQCファントムは、図3に示すQCファントムPに限定されず、異なる大きさ及び形状を有する複数種の評価部材を保持するものであればよい。
【0051】
イメージャ40は、コンソール30から受信された画像データに基づきフィルム等の記録媒体上に画像を記録し、可視像として再生したハードコピーを出力する装置である。イメージャ40としては、例えば、画像データに基づいて、透過型記録媒体(フィルム)にレーザ露光することによって潜像を記録し、熱現象処理により潜像を可視化する光熱銀塩方式のイメージャや、インクジェット方式或いはレーザ方式で反射型記録媒体(紙媒体、シール等)に記録するイメージャ等を用いることができる。
【0052】
サービスセンタ50は、コンソール30から通信ネットワークN2を介して入力される各種レポートを蓄積する装置であり、プログラムに従って装置全体を制御するとともに各種処理を実行するCPU(Central Processing Unit)、各種プログラムやデータを記憶するROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等からなる制御部、入力された各種レポートを記憶するHDD51、操作部、操作部からの指示に基づいて不揮発メモリに記憶されている各種レポートを表示する表示部、通信ネットワークN2上のコンソール30とのデータ送受信を制御する通信部等を備えて構成される。
【0053】
次に、上記放射線画像読取システムAにおける品質評価処理の動作について説明する。
まず、カセッテ12及び読取装置20の組み合わせを品質評価対象とした場合に品質評価処理に用いる画像データを取得する画像取得処理を説明する。
【0054】
ここで、放射線画像読取システムAにおいて得られる画像データの品質は、放射線画像を記録する輝尽性蛍光体シートやFPD等の記録媒体及び記録媒体から画像データを読み取る読取装置に依存する。即ち、撮影済みのカセッテ12を読取装置20に装填して読み取りを行う場合、得られる画像データの品質は使用するカセッテ12及び読取装置20の組み合わせによって決まるものである。
【0055】
画像取得処理は、読取装置20とコンソール30とにより実行される。読取装置20側処理は、読取装置20のCPUとROMに記憶されているプログラムとの協働によるソフトウエア処理により実現され、コンソール30側処理は、CPU31と、記憶部38に記憶されているプログラムとの協働によるソフトウエア処理により実現される処理である。
【0056】
コンソール30において、オペレータ(撮影技師等)による操作部32からの操作に応じて表示部33に撮影メニュー画面が表示され、当該撮影メニュー画面からQCメニューが選択される。そして、品質評価対象となるカセッテ12のバーコードがバーコードリーダ36から読み取られてカセッテIDが入力される。入力されたカセッテIDと品質評価処理用の撮影であることを示す情報が登録され、自己のコンソールID等が対応付けられ、通信ネットワークN1に接続された全ての読取装置20に通知(送信)される。
【0057】
読取装置20において、通信部を介してコンソール30からカセッテID等が通知されると、通知されたコンソールID、カセッテID等が対応付けられてRAMに記憶される。オペレータにより、コンソール30で登録された品質評価対象のカセッテ12に冶具を付けてたり、予め定められた位置に配置したりして、QCファントムを予め定められた位置に固定し、放射線撮影が行われる。
【0058】
品質評価対象とする何れかの読取装置20にカセッテ12が装填されると、読取装置20のバーコードリーダにより装填されたカセッテ12のカセッテIDが読み取られ、RAMにおいて読み取られたカセッテIDに対応付けて記憶されているコンソールID等が検索される。
そして、検索により得られた情報に従って、装填されたカセッテ12に記録されたQC用の画像の読み取りが行われ、得られた画像データに、画像を識別するための画像ID、自己の装置ID、読み取ったカセッテ12のカセッテID、読取時刻情報等が付帯情報として付帯され、通信部を介してカセッテ12を登録したコンソール30(検索により得られたコンソールIDのコンソール30)に送信される。
【0059】
コンソール30において、第1通信部34を介して読取装置20から画像データ及びその付帯情報が受信されると、受信された画像データにその付帯情報が対応付けて保存され、本処理は終了する。
【0060】
なお、上述した画像取得処理において、カセッテ12として校正用として定められたカセッテを用いることとすれば、読取装置20を品質評価対象とし、読取装置20の品質変動等を評価するための画像データを取得することができる。また、カセッテ12を読み取る装置として校正用として定められた読取装置20を用いることとすれば、カセッテ12を品質評価対象とし、カセッテ12の品質変動等を評価するための画像データを取得することができる。
【0061】
図4を参照して、QCツール301が搭載されたコンソール30aにおいて実行される品質評価処理について説明する。図4に、品質評価処理のフローチャートを示す。当該品質評価処理は、操作部32の所定の操作により品質評価処理の実行が指示された際に、CPU31とQCツール301等との協働によるソフトウエア処理により実現される処理である。
【0062】
まず、第1通信部34を介して読取装置20から撮影されたQCファントムの画像データが取得される(ステップS1)。
即ち、ステップS1は、各画質評価項目に対応した複数の評価部材が内在されたQCファントムが撮影された放射線画像としての画像データを取得する画像取得工程に相当する。
【0063】
ステップS1において取得された画像データから、品質評価対象となるQCファントムが写された領域の画像データ(以下、QC画像データ)が抽出される(ステップS2)。なお、ステップS2において抽出される領域は、QCファントムが撮影時に所定位置に固定して撮影されることから、予め設定することができるものである。
【0064】
抽出されたQC画像データの信号値の変換が行われ、画像データからQC画像データが抽出できたか否かが判別され(ステップS3)、QC画像データが抽出できない場合(ステップS3;No)、QC画像データが抽出できなかった旨を示すエラーレポート(異常発生情報)が生成され、当該エラーレポートがQC評価結果ファイル394に記憶され(ステップS4)、本処理は終了される。
【0065】
QC画像データが抽出できた場合(ステップS3;Yes)、信号値の変換が行なわれたQC画像データからヒストグラムが作成される(ステップS5)。作成されたヒストグラムに基づいて閾値が決定され(ステップS6)、決定された閾値を基準としてQC画像データが二値化され、第1の二値化画像が生成される(ステップS7)。
【0066】
即ち、各画素のピクセル値が閾値のピクセル値を超えているか否かに基づいて、各画素に2つのバイナリ・レベルのうち一方が割り当てられる。
例えば、閾値のピクセル値が145である場合、ピクセル値が200(閾値よりも暗いピクセル値)の画素に対しては1が設定され、一方、ピクセル値が100(閾値よりも明るいピクセル値)の画素に対しては0が設定される。これにより、QC画像データ内の画素を、評価部材が存在しない領域(1に設定された画素の領域)と、評価部材が存在する領域(0に設定された画素の領域)と、の2つの領域に分類することができる。
【0067】
従って、ステップS2〜S7は、放射線画像としての画像データに基づいて第1の二値化画像を生成する第1の二値化工程に相当する。
【0068】
第1の二値化画像の0に設定された画素がカウントされ、0に設定された画素の総数、即ち、評価部材が存在する領域に分類された画素の総面積が算出される。この算出された総面積と、予め定められた金属円板1a〜1c、エッジパターン2、ステップウエッジ3a〜3d、ジッタ4a、4bの平面状の総面積(基準面積)とが比較され、算出された総面積が基準面積の予め定められた範囲内であるか否かが判別される(ステップS8)。
【0069】
ステップS8において、基準面積にバーガーファントム5a〜5jの平面状の総面積が加えられていないのは、バーガーファントム5a〜5jは、第1の評価部材よりもコントラストが非常に低いため、バーガーファントム5a〜5jに対応する画素は、ステップS7おいてQC画像データを二値化した際に1に設定、即ち、評価部材が存在しないと判定されるからである。
【0070】
算出された総面積は基準面積の所定範囲内でない場合(ステップS8;No)、QC画像データが適切でない等を示すエラーレポートが生成され、当該エラーレポートがQC評価結果ファイル394に記憶され(ステップS4)、本処理は終了される。
【0071】
ステップS8において算出された総面積と基準面積とを比較することにより、二値化処理が成功したか否か、即ち、検出されるべき評価部材(金属円板1a〜1c、エッジパターン2、ステップウエッジ3a〜3d、ジッタ4a、4b)の領域が検出されたか否かが判別できる。例えば、算出された総面積が基準面積の所定範囲内よりも小さい場合、検出されるべき評価部材のいずれかが検出されていないと判別され、QCファントムの撮影時の設置不良やQCファントムの破損が発生していると判断される。また、算出された総面積が基準面積の所定範囲内よりも大きい場合、QC画像データに異物が写りこんでいたりQCファントムの破損が発生していたりすることが判断される。このように、算出された総面積が基準面積の所定範囲外である場合には、QC画像データは正常な品質評価を行うことができるデータではないため、以後の処理は実行されず、当該判断結果がエラーレポートとして生成される。
【0072】
算出された総面積は基準面積の所定範囲内である場合(ステップS8;Yes)、第1の二値化画像に点在する0に設定された画素が隣接する画素と連結した複数の領域を第1の二値化領域として抽出してラベリングを行なうラベリング処理が実行される(ステップS9)。
【0073】
図5に、ラベリング処理のフローチャートを示す。当該ラベリング処理は、CPU31とQCツール301等との協働によるソフトウエア処理により実現される処理である。
ラベリング処理は、まず、第1の二値化画像が走査され、ラベル(例えば、各第1の二値化領域を識別する番号)が付されていない0に設定された画素を検出し(ステップS31;Yes)、当該画素に対してラベルを付す(ステップS32)。そして、当該ラベルを付した画素に隣接する画素のうち0に設定されている画素があるか否かが判別され(ステップS33)、0に設定されている隣接する画素がある場合(ステップS33;Yes)、当該隣接する画素に対して同一のラベルを付す(ステップS34)。更に、このラベルを付した画素に着目して、同様に隣接する画素のうち0に設定された画素の有無が判別されラベル付けが実行される。このように同一のラベルを付すべき画素が無くなるまで(ステップS35;Yes)繰り返し実行されることにより、同一のラベルが付された画素の集まり、即ち、一つの第1の二値化領域が形成される。
以後、同様の処理を繰り返すことにより、二値化処理により抽出された0に設定された画素の集まり毎に異なるラベルが付された複数の第1の二値化領域が抽出される。
【0074】
従って、ステップS8及び9は、生成された第1の二値化画像から所定の信号値を有する連続した領域を第1の二値化領域として抽出する第1の抽出工程に相当する。
【0075】
ステップS9後、ラベル毎に各ラベルに対応する第1の二値化領域の特徴量が算出され、当該特徴量から重心座標が算出される(ステップS10)。特徴量としては、各ラベルに対応する第1の二値化領域の大きさ及び形状であり、形状としては、周囲長、円形度又はアスペクト比等である。
【0076】
まず、第1の二値化領域の大きさとして面積が算出される。面積は、同一のラベルが付された画素の総数が計数されることにより求められる。次に、周囲長が算出される。周囲長は、第1の二値化領域の最も外側に位置する画素の数を計数することにより求められる。そして、算出された面積及び周囲長に基づいて円形の度合いを示す円形度(0〜1に正規化された値)が算出される。円形度eは、面積をS、周囲長をLとして、
e=4πS/L
の算出式により求められる。円形度は、例えば、円では1.0の値、正方形では0.79、長方形では0.79未満の値を示し、円に近いほど大きくなり1に近づく。
また、アスペクト比が算出される。更に、算出された特徴量に基づいて、第1の二値化領域の重心座標が算出される。
【0077】
従って、ステップS10は、抽出された各第1の二値化領域の特徴量を算出する第1の特徴量算出工程に相当する。
【0078】
ラベル毎の特徴量と重心座標が算出された後(ステップS10後)、ラベル毎の特徴量と、第1の評価部材(金属円板1a〜1c、エッジパターン2、ステップウエッジ3a〜3d、ジッタ4a、4b)毎に予め設定されている特徴量とが相互に比較される(ステップS11)。
【0079】
例えば、特徴量と評価部材との関係は、表1のようになる。ステップS11において、全ての特徴量が比較されるものに限らず、評価部材によって特定の特徴量が比較されるようにすることが好ましい。
【表1】

【0080】
評価部材毎に予め設定されている特徴量の所定範囲内の特徴量を有するラベルの有無が判別され、全ての各評価部材に対応するラベルが有るか否かが判別される(ステップS12)。なお、ステップS12における判別にあたっては、ラベルの特徴量は二値化した際の閾値の影響を受けるため、適切な所定範囲を設定することが好ましい。
【0081】
いずれかの評価部材に対応するラベルが無い場合、即ち、全ての各評価部材に対応するラベルが判別されなかった場合(ステップS12;No)、QC画像データが適切でない等を示すエラーレポートが生成され、当該エラーレポートがQC評価結果ファイル394に記憶され(ステップS4)、本処理は終了される。
【0082】
従って、ステップS12;No、ステップS4は、いずれかの第1の二値化領域の特徴量に対応する予め定められた各第1の評価部材の特徴量が無い場合に異常発生情報としてエラーレポートを生成する異常情報生成工程に相当する。
【0083】
全ての各評価部材に対応するラベルが判別された場合、即ち、ラベル毎に対応する評価部材が特定された場合(ステップS12;Yes)、ステップS10において算出された重心座標が各評価部材の中心座標として設定される。このことにより、各評価部材の位置が特定されたこととなる。そして、各評価部材の中心座標に基づいて各評価部材の評価を行なう際の基準となる解析中心座標が算出される(ステップS13)。
【0084】
従って、ステップS11、S12は、算出された各第1の二値化領域の特徴量と、予め定められた各第1の評価部材(金属円板1a〜1c、エッジパターン2、ステップウエッジ3a〜3d、ジッタ4a、4b)の特徴量とを相互に比較し、当該比較結果に応じて各第1の二値化領域に対応する第1の評価部材を特定する工程である。
【0085】
図6(a)にエッジパターン2の中心座標と解析中心座標と解析領域の位置関係の例、図6(b)にステップウエッジ3a〜3dの中心座標と解析中心座標と解析領域の位置関係の例、図6(c)にジッタ4a、4bの中心座標と解析中心座標と解析領域の位置関係の例を示す。なお、中心座標を黒丸、解析中心座標を黒星、解析領域を破線で囲む領域として示す。
【0086】
図6(a)〜(c)に示すように、各評価部材の中心座標と解析中心座標とは異なる座標となっており、解析中心座標を基準として予め定められた範囲が解析領域となっている。中心座標と解析中心座標との位置関係は、評価部材の大きさや配置方法(傾き)が予め定められているため、中心座標が決定されることにより、当該中心座標に基づいて解析中心座標を算出することができる。
【0087】
次に、低コントラスト分解能の評価部材であるバーガーファントム5a〜5jの位置認識についての処理が実行される。
バーガーファントム5a〜5jは、その材質や画質評価項目の性質上、周辺領域とのコントラストが低く、金属性の第1の評価部材と同時に位置認識を行なうことは困難である。そこで、第1の評価部材とは分けてバーガーファントム5a〜5jの位置認識を行なうものとする。
【0088】
まず、ステップS13において中心座標が設定された第1の評価部材うち、いずれかの評価部材の中心座標から予め定められた位置且つ予め定められた領域(小領域)の画像データが、ステップS2において抽出したQC画像データから抽出される(ステップS14)。
【0089】
ステップS14において、例えば、金属円板1aとバーガーファントム5aとの位置関係は、QCファントム上において大きく位置がずれることが少ない。そこで、金属円板1aからバーガーファントム5aが存在すべき位置を中心とし、バーガーファントム5aの平面的な面積を含む予め設定された領域の画像データがステップS2において抽出したQC画像データから抽出される。
【0090】
このように、小領域の画像データが抽出されることにより、この小領域にはバーガーファントムに対応する画像と当該バーガーファントム周辺の画像データのみが抽出される、即ち、第1の評価部材に対応する画像データが含まれない画像データが抽出される。従って、二値化する際、バーガーファントムを抽出可能な閾値の設定を行なうことができる。
【0091】
従って、ステップS14は、第1の評価部材が特定されたいずれかの領域を基準として、所定の位置関係にある領域の画像を取得された放射線画像としてのQC画像データから抽出する領域抽出工程に相当する。
【0092】
ステップS14において抽出された小領域の画像データからヒストグラムが作成される(ステップS15)。作成されたヒストグラムに基づいて閾値が決定され(ステップS16)、決定された閾値を基準として小領域の画像データが二値化され、第2の二値化画像が生成される(ステップS17)。
【0093】
従って、ステップS15〜17は、抽出された小領域の画像データを二値化して第2の二値化画像を生成する第2の二値化工程に相当する。
【0094】
そして、第2の二値化画像に存在する0に設定された画素が連結した領域を第2の二値化領域として抽出してラベリングを行なうラベリング処理が実行される(ステップS18)。従って、ステップS18は、生成された第2の二値化画像から第2の二値化領域を抽出する第2の抽出工程に相当する。
【0095】
ステップS18後、ラベルに対応する第2の二値化領域の特徴量が算出され、当該特徴量から重心座標が算出される(ステップS19)。従って、ステップS19は、第2の二値化領域の特徴量を算出する第2の特徴量算出工程に相当する。
【0096】
ラベルの特徴量と重心座標が算出された後(ステップS19後)、当該ラベルの特徴量と、予め設定されているバーガーファントムの特徴量とが相互に比較される(ステップS20)。
【0097】
ラベルの特徴量は、予め設定されている第2の評価部材としてのバーガーファントムの特徴量の所定範囲内か否かが判別される(ステップS21)。なお、ステップS21における判別にあたっては、ラベルの特徴量は二値化した際の閾値の影響を受けるため、適切な所定範囲を設定することが好ましい。
【0098】
従って、ステップS20、21は、第2の二値化領域の特徴量と、予め定められた第2の評価部材の特徴量とを相互に比較し、当該比較結果に応じて各第2の二値化領域に対応する第2の評価部材の有無を判定する判定工程に相当する。
【0099】
ラベルの特徴量は、予め設定されているバーガーファントムの特徴量の所定範囲内でない場合(ステップS21;No)、QC画像データが適切でない等を示すエラーレポートが生成され、当該エラーレポートがQC評価結果ファイル394に記憶され(ステップS4)、本処理は終了される。
【0100】
ラベルの特徴量は、バーガーファントムの特徴量の所定範囲内である場合、即ち、ラベルが付された第2の二値化領域がバーガーファントムが存在する領域として特定された場合(ステップS21;Yes)、ステップS19において算出された重心座標がバーガーファントムの中心座標として設定される。このことにより、バーガーファントムの位置が特定されたこととなる。そして、バーガーファントムの中心座標に基づいてバーガーファントムの評価を行なう際の基準となる解析中心座標が算出される(ステップS22)。
【0101】
そして、ステップS13及びステップS22において算出された各評価部材の解析中心座標に基づいて、各評価に用いる解析領域が抽出される(ステップS23)。抽出された各解析領域に対して各画質評価項目の演算(QC演算)が実行される(ステップS24)。
ステップS24において実行される各画質評価項目としては、表示寸法精度評価、鮮鋭性評価、線形性評価、読取レーザ走査性評価、低コントラスト分解能評価である。
【0102】
表示寸法精度評価は、金属円板1a〜1cを用いて、読取装置20の主走査方向及び副走査方向の表示寸法精度、即ち、予め定められている金属円板1a〜1cの相互間の距離との誤差(評価結果値)を算出する。
例えば、算出された金属円板1a〜1cの夫々の中心座標に基づいて、まず、QC画像データ上の金属円板1a〜1b間の距離が演算され、得られた値と実際にQCファントムを測定して得られた金属円板1a〜1b間の距離(予め記憶されている)の実測値とに基づき、予め定められた演算式により評価結果値(%)が算出される。また、QC画像データ上の金属円板1b〜1c間の距離が演算され、得られた値と実際にQCファントムPを測定して得られた金属円板1b〜1c間の距離の実測値とに基づき、予め定められた演算式により評価結果値が算出される。なお、QC画像データ上の2点間の距離は、画像データの2点間の画素数×読取画素サイズで表される。
【0103】
鮮鋭性評価は、エッジパターン2を用いて、読取装置の主走査方向及び副走査方向の鮮鋭度の指標となるMTFが算出される。
このMFTは、エッジパターン2の解析中心位置を基に抽出された主走査方向のエッジ部の解析領域の画像と副走査方向のエッジ部の解析領域の画像が微分されて得られるラインスプレッドファンクションがフーリエ変換されることにより算出される。
【0104】
線形性評価は、ステップウエッジ3a〜3dを用いて、読取装置の線形性が算出され評価する。
例えば、QC画像データ上のステップウエッジ3a〜3dのそれぞれに相当する領域の画像データの各画素の信号値の平均値が算出され、当該平均値から換算される透過線量と、ステップウエッジ3a〜3dの理論透過線量との関係が評価されることにより、線形性が算出される。
【0105】
読取レーザ走査性評価は、ジッタ4a、4bを用いて、読取装置の主走査方向及び副走査方向の画素ズレ量が評価される。
この画素ズレ量は、例えば、QC画像データ上のジッタ4aのエッジ部分から最小二乗誤差直線が算出され、ジッタ4bの最小二乗誤差直線の理論値との画素ズレ量が算出され、また、QC画像データ上のジッタ4bのエッジ部分から最小二乗誤差直線が算出され、ジッタ4bの最小二乗誤差直線の理論値との画素ズレ量が算出される。
【0106】
低コントラスト分解能評価は、バーガーファントム5a〜5jを用いて、読取装置の低コントラスト分解能が評価される。
例えば、バーガーファントム内の平均信号値と周辺領域の平均信号値とのコントラスト及びノイズ量に基づいて、コントラスト対のノイズ比が算出され、算出されたコントラスト対ノイズ比に基づいて低コントラスト分解能が評価される。
【0107】
従って、ステップS23、24は、第1の二値化領域の特徴量に基づいて第1の評価部材(金属円板1a〜1c、エッジパターン2、ステップウエッジ3a〜3d、ジッタ4a、4b)が特定された各第1の二値化領域に対して、第1の評価部材に対応する評価演算を実行する第1演算工程、及び、第2の評価部材(バーガーファントム5a〜5j)が特定された各第2の二値化領域に対して、第2の評価部材に対応する評価演算を実行する第2演算工程に相当する。
【0108】
ステップS24の各画質評価項目のQC演算終了後、画質評価項目毎に算出された評価結果値と予め画質評価項目毎に定められた評価基準値との比較が行なわれ、予め画質評価項目毎に設定されている許容範囲と照合し、許容範囲内であれば合格、許容範囲外であれば不合格の各画質評価項目に対する合否の判定が行なわれる(ステップS25)。
【0109】
本処理が実行されたQC画像データに対するステップS25において判定された結果を示す評価レポートが生成され、当該評価レポートがQC評価結果ファイル394に記憶され(ステップS26)、本処理は終了される。
【0110】
なお、QC評価結果ファイル394に記憶されたエラーレポート又は評価レポートは、操作部32からの操作信号に応じて表示部33に表示されたり、適宜、第2通信部35を介してサービスセンタ50に送信されたりする。
【0111】
各評価部材の位置を識別するための基準位置情報をQCファントムP内に保持させる必要が無くなり、また、QCファントムP内の評価部材の位置が変更されたとしても、再度、新たに基準位置情報を設定する必要が無く、評価を行なうことができ、また、QCファントムP毎に各評価部材の位置にバラツキがあったとしても、各QCファントムPの評価を行なうことができるため、QCファントムP毎の物理的特徴の差異に拘らず、品質評価の効率化を図ることができる。
【0112】
更に、評価部材を特定する画像の領域を限定して、当該領域内の画像から評価部材を特定することができるため、第1の評価部材よりも低コントラストの評価部材としての第2の評価部材(バーガーファントム)を特定することができ、第2の評価部材に適合する評価を行なうことができる。
【0113】
また、エラーレポートを生成することができると共に、破損したりして評価部材が特定できないQCファントムPには評価演算が行なわれないため、誤った評価結果が生成されることが無くなる。
【0114】
また、本発明は、上記実施の形態の内容に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】放射線画像読取システムの全体構成図である。
【図2】コンソールの機能構成例を示す図である。
【図3】QCファントムPの一例を示す図である。
【図4】品質評価処理のフローチャートである。
【図5】ラベリング処理のフローチャートである。
【図6】図6(a)は、エッジパターンの中心座標と解析中心座標と解析領域の位置関係の例、図6(b)は、ステップウエッジの中心座標と解析中心座標と解析領域の位置関係の例、図6(c)は、ジッタの中心座標と解析中心座標と解析領域の位置関係の例を示す図である。
【符号の説明】
【0116】
1a、1b 金属円板
2 エッジパターン
3a〜3d ステップウエッジ
4a、4b ジッタ
5a〜5j バーガーファントム
10 撮影装置
11 放射線源
12 カセッテ
20 読取装置
30、30a コンソール
31 CPU
32 操作部
33 表示部
34 第1通信部
35 第2通信部
36 バーコードリーダ
37 RAM
38 記憶部
39 HDD
301 QCツール
391 QC撮影管理情報ファイル
392 一般撮影管理情報ファイル
393 画像ファイル記憶領域
394 QC評価結果ファイル
40 イメージャ
50 サービスセンタ
51 HDD
A 放射線画像読取システム
M 被写体
N1、N2 通信ネットワーク
N3 バス
P QCファントム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画質評価項目に対応した大きさ又は形状を有する第1の評価部材が内在されたQCファントムが撮影された放射線画像を取得する画像取得工程と、
前記画像取得工程により取得された放射線画像を二値化して第1の二値化画像を生成する第1の二値化工程と、
前記第1の二値化工程により生成された第1の二値化画像から所定の信号値を有する連続した領域を第1の二値化領域として抽出する第1の抽出工程と、
前記第1の抽出工程により抽出された第1の二値化領域の特徴量を算出する第1の特徴量算出工程と、
前記第1の特徴量算出工程により算出された第1の二値化領域の特徴量に基づいて予め対応付けられた評価演算を当該第1の二値化領域に対して実行する第1演算工程と、
を含む放射線画像の品質評価方法。
【請求項2】
前記特定工程による比較結果が、いずれかの第1の二値化領域の特徴量に対応する前記予め定められた第1の評価部材の特徴量が無い場合、異常発生情報を生成する異常情報生成工程と、
を含む請求項1に記載の放射線画像の品質評価方法。
【請求項3】
前記特徴量は、前記領域毎の大きさ及び形状であり、
前記形状は、前記領域毎の円形度、周囲長又はアスペクト比である、
請求項1又は2に記載の放射線画像の品質評価方法。
【請求項4】
前記QCファントムは、第2の評価部材を内在しており、
前記特定工程により対応する第1の評価部材が特定されたいずれかの領域を基準として、所定の位置関係にある領域の画像を前記画像取得工程により取得された放射線画像から抽出する領域抽出工程と、
前記領域抽出工程により抽出された画像を二値化して第2の二値化画像を生成する第2の二値化工程と、
前記第2の二値化工程により生成された第2の二値化画像から第2の二値化領域を抽出する第2の抽出工程と、
前記第2の抽出工程により抽出された第2の二値化領域の特徴量を算出する第2の特徴量算出工程と、
前記第2の特徴量算出工程により算出された第2の二値化領域の特徴量と、予め定められた前記第2の評価部材の特徴量とを相互に比較し、当該比較結果に応じて第2の二値化領域に対応する第2の評価部材の有無を判定する判定工程と、
前記判定工程により対応する第2の評価部材が特定された第2の二値化領域に対して、第2の評価部材に対応する評価演算を実行する第2演算工程と、
を含む請求項1から3のいずれか一項に記載の放射線画像の品質評価方法。
【請求項5】
画質評価項目に対応した大きさ又は形状を有する第1の評価部材が内在されたQCファントムが撮影された放射線画像を取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段により取得された放射線画像を二値化して第1の二値化画像を生成する第1の二値化手段と、
前記第1の二値化手段により生成された第1の二値化画像から所定の信号値を有する連続した領域を第1の二値化領域として抽出する第1の抽出手段と、
前記第1の抽出手段により抽出された第1の二値化領域の特徴量を算出する第1の特徴量算出手段と、
前記第1の特徴量算出手段により算出された第1の二値化領域の特徴量に基づいて予め対応付けられた評価演算を当該第1の二値化領域に対して実行する第1演算手段と、
を備える品質評価装置。
【請求項6】
前記特定手段による比較結果が、いずれかの第1の二値化領域の特徴量に対応する前記予め定められた第1の評価部材の特徴量が無い場合、異常発生情報を生成する異常情報生成手段と、
を備える請求項5に記載の品質評価装置。
【請求項7】
前記特徴量は、前記領域毎の大きさ及び形状であり、
前記形状は、前記領域毎の円形度、周囲長又はアスペクト比である、
請求項5又は6に記載の品質評価装置。
【請求項8】
前記QCファントムは、第2の評価部材を内在しており、
前記特定手段により対応する第1の評価部材が特定されたいずれかの領域を基準として、所定の位置関係にある領域の画像を前記画像取得手段により取得された放射線画像から抽出する領域抽出手段と、
前記領域抽出手段により抽出された画像を二値化して第2の二値化画像を生成する第2の二値化手段と、
前記第2の二値化手段により生成された第2の二値化画像から第2の二値化領域を抽出する第2の抽出手段と、
前記第2の抽出手段により抽出された第2の二値化領域の特徴量を算出する第2の特徴量算出手段と、
前記第2の特徴量算出手段により算出された第2の二値化領域の特徴量と、予め定められた前記第2の評価部材の特徴量とを相互に比較し、当該比較結果に応じて第2の二値化領域に対応する第2の評価部材の有無を判定する判定手段と、
前記判定手段により対応する第2の評価部材が特定された第2の二値化領域に対して、第2の評価部材に対応する評価演算を実行する第2演算手段と、
を備える請求項5から7のいずれか一項に記載の品質評価装置。
【請求項9】
コンピュータを、
画質評価項目に対応した大きさ又は形状を有する第1の評価部材が内在されたQCファントムが撮影された放射線画像を取得する画像取得手段、
前記画像取得手段により取得された放射線画像を二値化して第1の二値化画像を生成する第1の二値化手段、
前記第1の二値化手段により生成された第1の二値化画像から所定の信号値を有する連続した領域を第1の二値化領域として抽出する第1の抽出手段、
前記第1の抽出手段により抽出された第1の二値化領域の特徴量を算出する第1の特徴量算出手段、
前記第1の特徴量算出手段により算出された第1の二値化領域の特徴量に基づいて予め対応付けられた評価演算を当該第1の二値化領域に対して実行する第1演算手段、
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−39411(P2009−39411A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209355(P2007−209355)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】