放射線画像処理装置、放射線画像撮影システム、及びプログラム
【課題】被写体撮影時に用いるフィルタの位置再現性が低くても、フィルタに起因して発生するムラが良好に補正された被写体画像データを得る。
【解決手段】フィルタに起因して発生する画像のムラを補正するための補正値が画素毎に定められた補正データを用いて、フィルタを介して放射線を照射して撮影された被写体の画像を表す被写体画像データに含まれる素抜け部の画像データを補正したときの当該素抜け部のプロファイルを生成し(ステップ200、202、204)、当該素抜け部のプロファイルのばらつきを示す統計値である標準偏差σに基づいて、素抜け部のムラが良好に補正されているか否かを判定し(ステップ208)、素抜け部のムラが良好に補正されていると判定されたときの被写体画像データに対する補正データの各画素毎の補正値による補正位置に補正データを適用してムラが補正された被写体画像データを出力する(ステップ212)。
【解決手段】フィルタに起因して発生する画像のムラを補正するための補正値が画素毎に定められた補正データを用いて、フィルタを介して放射線を照射して撮影された被写体の画像を表す被写体画像データに含まれる素抜け部の画像データを補正したときの当該素抜け部のプロファイルを生成し(ステップ200、202、204)、当該素抜け部のプロファイルのばらつきを示す統計値である標準偏差σに基づいて、素抜け部のムラが良好に補正されているか否かを判定し(ステップ208)、素抜け部のムラが良好に補正されていると判定されたときの被写体画像データに対する補正データの各画素毎の補正値による補正位置に補正データを適用してムラが補正された被写体画像データを出力する(ステップ212)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像処理装置、放射線画像撮影システム、及びプログラムに係り、特にフィルタに起因して発生する画像のムラが補正された被写体画像データを得ることができる放射線画像処理装置、放射線画像撮影システム、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療診断を目的とした放射線撮影を行なう放射線撮影装置が知られている。この種の放射線撮影装置として、例えば、乳がんの早期発見などを目的として被験者の乳房を撮像するマンモグラフィが挙げられる。
【0003】
ところで、放射線撮影装置による撮影では、放射線の特性を調整するためのフィルタが設けられ、当該フィルタを介して放射線源から被写体に放射線が照射される。しかしながらフィルタの特性や製造ばらつき等に起因して濃度ムラが生じるため、予めフィルタ毎にムラ補正用の補正データを取得しておき、当該補正データを放射線撮影して得られた被写体画像データに適用してムラを補正するようにしている。
【0004】
なお、放射線撮影装置に関するムラ補正技術としては様々なものが提案されている。例えば、特許文献1には、放射線発生むら及び放射線画像変換パネル毎の感度むらの少なくとも一方を示す画像むら情報を予め記憶しておき、放射線画像情報を予め記憶しておいた画像むら情報に基づいて補正する放射線画像読取り装置が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、X線画像から被写体を含まない領域の少なくとも一部を直線X線領域として抽出し、直線X線領域の各画素における照射むら成分を推定し、除去する照射ムラ補正装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4-186484号公報
【特許文献2】特開2009−297393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、放射線撮影装置では、経時変化またはフィルタの交換等によりフィルタの位置ずれが発生し、ムラ補正を行ってもムラが残ってしまう場合がある。
【0008】
補正対象画像を表す補正前の被写体画像データ(以下、補正前データ)が、フィルタが補正データを取得したときの位置に配置された状態で撮影されて得られたものであれば、補正前データに対する補正データの補正位置が合っているため、図12に示すように、補正対象画像の正前データから補正データを減算することで、良好にムラが除去される。
【0009】
しかしながら、フィルタが補正データを取得したときの位置からずれて配置された状態で撮影されて得られた補正前データについては、図13に示すように、補正前データに対する補正データの補正位置が合わずに、補正前データから補正データを減算しても、ムラが残ってしまう。
【0010】
そのため、良好にムラが補正された画像を得るには、フィルタの高い位置再現性が重要であるが、常に良好な位置再現性を維持するのは困難である。なお、フィルタの位置がずれても良好にムラが補正された被写体画像データを得るための技術は、上記特許文献1、及び2には何ら開示されてない。
【0011】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、被写体撮影時に用いるフィルタの位置再現性が低くても、フィルタに起因して発生するムラが良好に補正された被写体画像データを得ることができる放射線画像処理装置、放射線画像撮影システム、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の放射線画像処理装置は、フィルタが予め定められた位置に位置する際に当該フィルタに起因して発生する画像のムラを補正するための補正値が画素毎に定められた補正データを用いて、前記フィルタを介して放射線を照射して撮影された被写体の画像を表す被写体画像データに含まれる素抜け部の画像データを補正したときの前記素抜け部のプロファイルを生成する生成手段と、前記生成手段で生成された素抜け部のプロファイルの前記フィルタの位置の移動に起因するばらつきを示す統計値に基づいて、前記素抜け部のムラが良好に補正されているか否かを判定する判定手段と、前記判定手段で前記素抜け部のムラが良好に補正されていると判定されたときの前記被写体画像データに対する前記補正データの各画素毎の補正値による補正位置に前記補正データを適用してムラが補正された前記被写体画像データを出力する出力手段と、を備えている。
【0013】
被写体画像データを撮影したときのフィルタの位置に応じて、被写体画像データのムラを良好に補正するための、被写体画像データに対する補正データの各画素毎の補正値による補正位置が変わる。一方、放射線が照射された領域のうち被写体を透過しなかった領域である素抜け部の画像データは、被写体の影響がないため、フィルタに起因して発生するムラの補正精度を確認するには適している。
【0014】
そこで、本発明のように、補正データを用いてムラが補正された素抜け部プロファイルを生成して素抜け部のプロファイルの前記フィルタの位置の移動に起因するばらつきを示す統計値に基づいて当該素抜け部のムラが良好に補正されているか否かを判定し、素抜け部のムラが良好に補正されていると判定されたときの被写体画像データに対する補正データの各画素毎の補正値による補正位置に補正データを適用してムラが補正された被写体画像データを出力するようにすることで、被写体撮影時に用いるフィルタの位置再現性が低くても、フィルタに起因して発生するムラが良好に補正された被写体画像データを得ることができる。
【0015】
なお、前記判定手段は、前記統計値が予め定められた閾値以下となった場合に、前記素抜け部のムラが良好に補正されていると判定するようにしてもよい。
【0016】
また、前記判定手段により前記統計値が閾値以下になると判定されなかった場合に、前記被写体画像データに対する前記補正データの前記補正位置をずらして、新たに前記素抜け部のプロファイルが生成されるように前記生成手段を制御する制御手段を更に備えていてもよい。
【0017】
これにより良好にムラが補正されたと判定されるまで補正位置をずらして判定することができる。
【0018】
更にまた、前記補正位置をずらす範囲を予め定め、当該範囲内で各々異なる位置に前記補正位置をずらして前記素抜け部を補正したときの各統計値がいずれも閾値を超える場合に、警告を報知する報知手段を更に備えていてもよい。
【0019】
これにより、補正位置をずらす範囲内で補正位置をずらしても良好にムラが補正されたと判定されない場合には異常が発生している(フィルタの位置が予め定められた位置から大きくずれている、或いは撮影装置の異常等)可能性がある。そこで、この場合に、警告を報知することで、使用者に異常を知らせることができる。
【0020】
また、素抜け部のムラが良好に補正されたか否かを判定するに際し、上記のように統計値が予め定められた閾値以下となった場合に限らず、例えば、前記生成手段は、前記被写体画像データに対する前記補正データの前記補正位置を複数の異なる位置にずらして前記素抜け部のプロファイルを複数生成し、前記判定手段は、前記複数のプロファイルの各々の前記統計値のうち最小の統計値に対応する素抜け部について、ムラが良好に補正されていると判定するようにしてもよい。
【0021】
また、前記生成手段は、前記被写体画像データに対する前記補正データの前記補正位置を複数の異なる位置にずらして前記素抜け部のプロファイルを複数生成し、前記判定手段は、前記複数のプロファイルの各々の前記統計値のうち最小の統計値であって予め定められた閾値以下の統計値に対応する素抜け部について、ムラが良好に補正されていると判定するようにしてもよい。
【0022】
補正位置が異なる複数の素抜け部についての統計値の中では、最小の統計値に対応する素抜け部が最も良好にムラが補正されているといえるが、例えばムラが良好に補正されたと認識されるレベルである閾値を予め定め、当該最小の統計値が当該閾値より大きい場合には、ムラが良好に補正されていると判定しないようにすれば、更に精度が上がる。
【0023】
なお、前記最小の統計値が予め定められた閾値を超える場合に、警告を報知する報知手段を更に備えていてもよい。
【0024】
また、本発明の放射線画像撮影システムは、フィルタを介して被写体を介さずに放射線を照射して撮影することにより、当該撮影したときのフィルタの位置に当該フィルタが位置する際に当該フィルタに起因して発生する画像のムラを補正するための補正値が画素毎に定められた補正データを生成すると共に、前記フィルタを介して放射線を照射して被写体を撮影することにより、当該被写体の画像を表す被写体画像データを生成する撮影装置と、前記補正データを用いて前記被写体画像データの素抜け部の画像データを補正したときの前記素抜け部のプロファイルを生成する生成手段、前記生成手段で生成された素抜け部のプロファイルの前記フィルタの位置の移動に起因するばらつきを示す統計値に基づいて、前記素抜け部のムラが良好に補正されているか否かを判定する判定手段、及び前記判定手段で前記素抜け部のムラが良好に補正されていると判定されたときの前記被写体画像データに対する前記補正データの各画素毎の補正値による補正位置に前記補正データを適用してムラが補正された前記被写体画像データを出力する出力手段を備えた放射線画像処理装置と、を備えている。
【0025】
このような構成によっても、被写体撮影時に用いるフィルタの位置再現性が低くても、フィルタに起因して発生するムラが良好に補正された被写体画像データを得ることができる。
【0026】
本発明のプログラムは、コンピュータを、フィルタが予め定められた位置に位置する際に当該フィルタに起因して発生する画像のムラを補正するための補正値が画素毎に定められた補正データを用いて、前記フィルタを介して放射線を照射して撮影された被写体の画像を表す被写体画像データに含まれる素抜け部の画像データを補正したときの前記素抜け部のプロファイルを生成する生成手段、前記生成手段で生成された素抜け部のプロファイルの前記フィルタの位置の移動に起因するばらつきを示す統計値に基づいて、前記素抜け部のムラが良好に補正されているか否かを判定する判定手段、及び前記判定手段で前記素抜け部のムラが良好に補正されていると判定されたときの前記被写体画像データに対する前記補正データの各画素毎の補正値による補正位置に前記補正データを適用してムラが補正された前記被写体画像データを出力する出力手段として機能させるためのプログラムである。
【0027】
このようなプログラムによっても、被写体撮影時に用いるフィルタの位置再現性が低くても、フィルタに起因して発生するムラが良好に補正された被写体画像データを得ることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、被写体撮影時に用いるフィルタの位置再現性が低くても、フィルタに起因するムラが良好に補正された被写体画像データを得ることができる、異常が発生している或いは撮影装置の異常等の場合に警告を報知することで使用者に異常を知らせることができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施の形態に係る撮影装置の構成を示す平面図である。
【図2】実施の形態に係る撮影装置のCC撮影時における構成を示す斜視図である。
【図3】実施の形態に係る撮影装置のMLO撮影時における構成を示す斜視図である。
【図4】実施の形態に係る放射線源の構成を示す図である。
【図5】実施の形態に係る放射線画像撮影システムの構成を示すブロック図である。
【図6】撮影装置で実行される撮影処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】補正データが表す補正値の分布(ムラの分布)の一例を示す図である。
【図8】第1の実施の形態に係るムラ補正処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】フィルタの位置精度(位置ずれ範囲)の具体例を説明する説明図である。
【図10】第2の実施の形態に係るムラ補正処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】第1の実施の形態に係るムラ補正処理の変形例のフローチャートを示す図である。
【図12】補正データと補正前データとでムラの位置が一致している状態で補正前データを補正したときの補正結果を示す対数スケールで示した図である。
【図13】補正データと補正前データとでムラの位置がずれている状態で補正前データを補正したときの補正結果を示す対数スケールで示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0031】
[第1の実施の形態]
【0032】
図1〜図3に示すように、本実施の形態に係る放射線画像撮影装置10は、被験者Wが立った立位状態において、その被験者Wの乳房Nを放射線(例えば、X線)により撮影する装置であり、例えば、マンモグラフィと称される。なお、以下では、撮影の際に放射線画像撮影装置10に被験者Wが対面した場合の被験者Wに近い手前側を放射線画像撮影装置10の装置前方側とし、放射線画像撮影装置10に被験者Wが対面した場合の被験者Wから離れた奥側を放射線画像撮影装置10の装置後方側とし、放射線画像撮影装置10に被験者Wが対面した場合の被験者Wの左右方向を放射線画像撮影装置10の装置左右方向として説明する(図1〜3の各矢印参照)。
【0033】
また、放射線画像撮影装置10の撮影対象は、乳房Nに限られず、例えば、身体の他の部位、物体であっても良い。また、放射線画像撮影装置10としては、被験者Wがいす等に座った座位状態において、その被験者Wの乳房Nを撮影する装置であってもよい。
【0034】
放射線画像撮影装置10は、図1に示すように、装置前方側に設けられた側面視略C字状(コの字状)の測定部12と、測定部12を装置後方側から支える基台部14と、を備えている。
【0035】
測定部12は、立位状態にある被験者Wの乳房Nと当接する平面状の撮影面20が形成された撮影台22と、乳房Nを撮影台22の撮影面20との間で圧迫するための圧迫板26と、撮影台22と圧迫板26とを保持する支持部29と、を備えている。なお、圧迫板26には、放射線を透過する材質が用いられる。
【0036】
更にまた、支持部29は、管球などの放射線源30(図4参照。)が設けられその放射線源30から撮影面20に向けて検査用の放射線を照射する放射線照射部24を支持する。
【0037】
測定部12には、基台部14に回動可能に支えられている回動軸16が設けられている。回動軸16は、支持部29に対して固定されており、回動軸16と支持部29とは一体に回動するようになっている。
【0038】
なお、回動軸16の回動力の伝達・非伝達の切替えは、種々の機械要素を用いることができる。
【0039】
支持部29は、撮影面20と放射線照射部24とが所定間隔離れるように撮影台22と放射線照射部24とを保持すると共に、圧迫板26と撮影面20との間隔が可変であるように圧迫板26をスライド移動可能に保持している。
【0040】
乳房Nが当接する撮影面20は、放射線透過性や強度の観点から、例えば、カーボンで形成されている。撮影台22の内部には、乳房N及び撮影面20を通過した放射線が照射され、その放射線を検出する放射線検出器42が配置されている。放射線検出器42が検出した放射線が可視化されて放射線画像が生成される。
【0041】
本実施形態に係る放射線画像撮影装置10は、少なくとも、乳房NをCC撮影(頭尾方向の撮影)とMLO撮影(内外斜位方向の撮影)との両者を行うことができる装置とされている。図2は、CC撮影時における放射線画像撮影装置10の姿勢を示し、図3は、撮影装置のMLO撮影時における放射線画像撮影装置10の姿勢を示している。図3に示すように、MLO撮影は、放射線照射部24を支持すると共に撮影台22を支持する支持部29を傾けて撮影を行うものである。
【0042】
図2に示すように、CC撮影時においては、撮影面20が上方を向いた状態かつ放射線照射部24が撮影面20に対して上方に位置する状態に支持部29の姿勢が調整される。これにより、立位状態の被験者Wの頭側から足側に向かって、放射線照射部24から乳房Nへ放射線が照射されて、CC撮影(頭尾方向の撮影)がなされる。
【0043】
また、撮影台22の装置前方側の面には、CC撮影時において、被験者Wの乳房Nよりも下方の胸部分を当接させる胸壁面25が形成されている。胸壁面25は平面状とされている。
【0044】
また、MLO撮影時では、図3に示すように、一般的に、CC撮影時に比べて撮影台22を45°以上90°未満回転させた状態に支持部29の姿勢が調整され、撮影台22の装置前方側の側壁角部22Aに被験者Wの腋窩を当てるようにポジショニングされる。これにより、被験者Wの胴体の軸中心側から外側へ向かって、放射線照射部24から乳房Nへ放射線が照射されて、MLO撮影(内外斜位方向の撮影)がなされる。
【0045】
本実施の形態に係る放射線照射部24は、放射線源30及びフィルタ24Aを備えている。図4に、本実施の形態に係る放射線照射部24の構成を示す。
【0046】
放射線源30は、筐体30A内に、フィラメントを含んで構成された陰極30Bと、ターゲット(陽極)30Cとを備えており、陰極30Bから放出された熱電子が陰極・陽極間の電位差により加速・集束されてターゲット30Cに衝突し放射線が発生する。
【0047】
複数の放射線源30は、ターゲット30Cとして用いられる金属が、例えば、タングステン、モリブデン、ロジウム等とそれぞれ異なっている。
【0048】
放射線源30から放射線は、筐体30Aに設けられた窓30Dから外部へ照射される。
【0049】
放射線照射部24は、この窓30D部分にはモリブデンやロジウム、アルミニウム、銀の膜によりそれぞれ構成されたフィルタ24Aが設けられている。
【0050】
本実施の形態に係る放射線照射部24は、フィルタ24Aが機械的な機構により移動・交換可能とされている。フィルタ24Aが交換されると放射線照射部24から照射される放射線の特性が変化する。なお、本実施の形態では、前後方向または左右方向に沿って設けられたガイドレール(不図示)が設けられており、フィルタ24Aはガイドレールに対して抜き差しされ、フィルタ24Aの交換・移動時には、ガイドレールに沿ってフィルタ24Aがスライド移動されて交換・移動されるものとする。以下、ガイドレールの延在方向を、x−y座標系のx方向とする。
【0051】
図5には、本実施の形態に係る放射線画像撮影システム5の詳細な構成を示すブロック図が示されている。
【0052】
放射線画像撮影システム5は、上述した撮影装置10と、撮影した放射線画像データのムラ補正を行う画像処理装置50と、ムラ補正した放射線画像データが表す被写体画像の表示を行う表示装置80と、を備えている。
【0053】
撮影装置10は、放射線検出器42と、撮影条件、姿勢情報などの各種の操作情報や各種の操作指示が入力される操作パネル44と、装置全体の動作を制御する撮影装置制御部46と、操作メニューや各種情報等を表示するディスプレイ47と、LAN等のネットワーク56に接続され、当該ネットワーク56に接続された他の機器との間で各種情報を送受信する通信I/F部48と、をさらに備えている。
【0054】
撮影装置制御部46は、CPU46A、ROM46B、RAM46C、HDDやフラッシュメモリ等から成る不揮発性の記憶部46Dを備えており、放射線照射部24、放射線検出器42、操作パネル44、ディスプレイ47、及び通信I/F部48と接続されている。記憶部46Dには、CPU46Aが実行するプログラム等が記憶されている。記憶部46Dには、被験者Wの乳房Nを撮影して得られた被写体画像データやフィルタに起因する画像のムラを補正するための補正データ(詳細は後述する)が記憶される。
【0055】
操作パネル44で指定される撮影条件には、使用するフィルタ24A、管電圧、管電流、照射時間等の情報が含まれており、姿勢情報には、撮影姿勢がCC撮影かMLO撮影かを表す情報が含まれている。なお、この撮影条件、姿勢情報などの各種の操作情報や各種の操作指示は、他の制御装置から得るようにしてもよい。
【0056】
放射線検出器42は、放射線の照射を受けて画像データを記録し、記録した画像データを出力するものであり、例えば、放射線感応層を配置し、放射線をデジタルデータに変換して出力するFPD(Flat Panel Detector)として構成されている。放射線検出器42は、放射線が照射されると、放射線画像を示す画像データを撮影装置制御部46へ出力する。
【0057】
撮影装置制御部46は、通信I/F部48及びネットワーク56を介して画像処理装置50と通信が可能とされており、画像処理装置50との間で各種情報の送受信を行なう。
【0058】
このネットワーク56には、管理サーバ57が更に接続されている。管理サーバ57は、記憶部57Aを含んで構成されている。撮像装置制御部46は、通信I/F部48及びネットワーク56を介して管理サーバ57と通信が可能とされている。
【0059】
一方、画像処理装置50は、サーバ・コンピュータとして構成されており、操作メニューや各種情報等を表示するディスプレイ52と、複数のキーを含んで構成され、各種情報や操作指示が入力される操作入力部54と、を備えている。
【0060】
また、画像処理装置50は、装置全体の動作を司るCPU60と、制御プログラムを含む各種プログラム等が予め記憶されたROM62と、各種データを一時的に記憶するRAM64と、各種データを記憶して保持するHDD66と、ディスプレイ52への各種情報の表示を制御するディスプレイドライバ68と、操作入力部54に対する操作状態を検出する操作入力検出部70と、ネットワーク56を介して撮影装置10に接続され、撮影装置10との間で各種情報の送受信を行う通信I/F部72と、ディスプレイケーブル58を介して表示装置80に対して画像信号を出力する画像信号出力部74と、を備えている。
【0061】
CPU60、ROM62、RAM64、HDD66、ディスプレイドライバ68、操作入力検出部70、通信I/F部72、及び画像信号出力部74は、システムバスBUSを介して相互に接続されている。従って、CPU60は、ROM62、RAM64、HDD66へのアクセスを行うことができる。また、CPU60は、ディスプレイドライバ68を介したディスプレイ52への各種情報の表示の制御、通信I/F部72を介した撮影装置10との各種情報の送受信の制御、及び画像信号出力部74を介した表示装置80に表示される画像の制御、を行うことができる。さらに、CPU60は、操作入力検出部70を介して操作入力部54に対するユーザの操作状態を把握することができる。
【0062】
次に、本実施の形態に係る放射線画像撮影システム5の作用について説明する。
【0063】
図6には、撮影装置10で実行される撮影処理の流れを示すフローチャートが示されている。
【0064】
ステップ100では、フィルタ24Aが放射線照射部24にセットされた状態で被写体を介さずに(被験者Wの乳房Nを圧迫板26により挟まないで)放射線照射部24の放射線源30からフィルタ24Aを介して放射線検出器42に対して放射線を照射して、撮影領域の一様露光撮影を行うことにより、当該フィルタ24Aが当該一様露光撮影時にセットされた位置に位置する際に当該フィルタ24Aに起因して発生する画像のムラを補正するための補正値が各画素毎に定められた補正データを生成する。補正データは、フィルタ24Aを識別する識別情報に対応付けて記憶部46Dに記憶される。図7に、補正データが表す補正値の分布(ムラの分布)の一例を示す。なお、フィルタ24Aが複数種類ある場合には、各フィルタ24A毎に一様露光撮影を行い、各々の補正データを取得して記憶する。
【0065】
なお、ステップ100は、被験者Wの乳房Nを撮影する前に予め行われる処理であり、例えば、放射線画像撮影システム5や撮影装置10の出荷時等に行われる。従って、本ステップを破線で図示し、ステップ100とステップ102の処理が必ずしも連続して行われるものではないことを示した。
【0066】
ステップ102では、撮影条件で指定されたフィルタ24Aが放射線照射部24にセットされた状態で、被験者Wを撮影する。具体的には、被験者Wは、撮影装置10の撮影面20に被写体としての乳房Nを当接させる。撮影装置10は、この状態で操作パネル44に対して圧迫開始の操作指示が行なわれると、圧迫板26が撮影面20に向けて移動する。圧迫板26が乳房Nに当接して更に押圧し、圧迫板26の押圧力が設定押圧力に到達すると、撮影装置制御部46の制御により圧迫板26の移動が停止する。
【0067】
本実施形態に係る撮影装置10は、この状態で操作パネル44に対して曝射開始の操作指示が行なわれると、放射線照射部24の放射線源30から放射線を照射する。これにより、放射線検出器42は被写体画像を表す被写体画像データを生成して、撮影装置制御部46へ出力する。
【0068】
ステップ104では、ステップ102で得られた被写体画像データと、ステップ102の撮影時に使用されたフィルタ24Aの識別情報に対応付けて記憶されている補正データとを画像処理装置50に転送する。
【0069】
図8には被写体画像データ及び補正データが画像処理装置50に転送された際に、画像処理装置50のCPU60により実行されるムラ補正処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートが示されている。なお、当該プログラムはROM62の所定の領域に予め記憶されている。
【0070】
ステップ200では、ムラ補正前の被写体画像データが表す各画素の画素値から当該各画素に対応する補正データの各画素の補正値を減算して被写体画像データのムラ補正を実施する。なお、後述するステップ208で否定判定された場合には、被写体画像データにおける補正データの各画素毎の補正値によって補正される補正位置(以下、単に補正データの補正位置という場合もある)をずらした後に再度ステップ200の処理が行われるが、ステップ200の初回においては、補正データの補正位置を予め定められた初期位置にしてムラ補正を行う。例えば、x−y座標系で、各画素位置をx、yで表し、補正データが表す各画素毎の補正値をf1(x、y)と表し、被写体画像データの各画素毎の画素値をf2(x、y)と表す場合に、f1(x、y)によりf2(x、y)が補正される補正位置を初期位置とすることができる。この初期位置に補正位置を設定した場合には、f2(x、y)からf1(x、y)を減算して、被写体画像データのムラ補正を行う。
【0071】
ステップ202では、被写体画像データが表す被写体画像から、素抜け部(被写体を透過せずに直接放射線検出器42に放射線が照射された領域)を判定する。例えば直接放射線検出器42に放射線が照射された場合の被写体画像データの数値範囲を予め設定しておき、被写体画像データがこの数値範囲に属するか否かを判定することにより、素抜け部を求めてもよい。
【0072】
ステップ204では、ムラ補正した被写体画像の被写体画像データから上記判定した素抜け部の画像データに基づいて、素抜け部のプロファイル(素抜け部の画素値分布、すなわち素抜け部の各画素の画素値)を抽出する。
【0073】
ステップ206では、素抜け部のプロファイルの標準偏差σを計算する。すなわち、素抜け部の各画素毎の画素値の平均値を求め、各画素毎の画素値と当該平均値との偏差を2乗した値の平均値の平方根をとって標準偏差σを求める。なお、ここでは、統計値として標準偏差を求めたが、素抜け部の各画素の画素値の(フィルタの位置の移動に起因する)ばらつきを示す統計値であればよいため、標準偏差の代わりに分散を計算しても良い。
【0074】
ステップ208では、標準偏差σが予め定められた閾値TH1以下であるか否かを判定する。ここで標準偏差σが予め定められた閾値TH1を越えていると判定した場合には、素抜け部のムラが良好に補正されていないと判定して、ステップ210に進む。なお、ここで用いる閾値TH1は、ムラが良好に補正されたと認識される程度のレベルとなるように、予め実験などにより求めておき、画像処理装置50のROM62等に記憶しておく。
【0075】
ステップ210では、補正データの補正位置をずらす。なお、前述したように、本実施の形態では、前後方向または左右方向に沿って設けられたガイドレールに沿って、フィルタ24Aがスライド移動される構成となっている。従って、補正データを取得したときのフィルタ24Aの位置と被写体を撮影したときのフィルタ24Aの位置とがずれたとしても、その位置ずれは、ガイドレールの延在方向(x方向)における位置ずれであるとみなすことができる。従って、本実施の形態では、x方向にのみ補正データの補正位置をずらすものとする。また、本実施の形態では、予め定められた画素数α単位でずらすものとする。
【0076】
ここで、前述した初期位置からx方向に予め定められた画素数αだけ補正データの補正位置をずらす場合の具体例について説明する。前述したように、補正データが表す各画素毎の画素値をf1(x、y)と表し、被写体画像データの各画素毎の画素値をf2(x、y)と表すとすると、上記補正データの補正位置が初期位置にある状態においては、f1(x、y)でf2(x、y)が補正される状態となっているが、これを、f1(x、y)でf2(x+α、y)が補正されるように、補正データの補正位置を(x+α、y)に設定する。また、この状態から再度ステップ210で否定判定されてステップ212の処理を行う場合には、f1(x、y)でf2(x+2α、y)が補正されるよう補正位置を(x+2α、y)に設定すればよい。なお、ステップ212の繰り返しにより、x方向の+側にずらした量の累積値が所定量となった場合に、今度は初期位置からx方向の−側にずらすようにしてもよい。
【0077】
ステップ210の処理後は、ステップ200に戻る。ステップ200では、ステップ210で補正データの補正位置をずらした状態で、ムラ補正前の被写体画像データが表す各画素の画素値から当該各画素に対応する補正データが表す各画素の補正値を減算してムラ補正を行い、上記と同様の処理を繰り返す。
【0078】
一方、ステップ208で、標準偏差σが予め定められた閾値TH1以下であると判定した場合には、素抜け部のムラが良好に補正されたと判定して、ステップ212に進む。
【0079】
ステップ212では、標準偏差σが予め定められた閾値TH1以下と判定されたときのムラ補正後の被写体画像データ(すなわち、被写体画像データに対して、素抜け部のムラの補正が良好と判定されたときの補正位置に補正データを適用してムラが補正された被写体画像データ)を画像信号出力部74を介して表示装置80に出力する。これにより、表示装置80の表示部80Aに良好にムラ補正された被写体画像が表示される。
【0080】
以上説明したように、被写体画像データのムラ補正を行い、素抜け部のプロファイルを求めて素抜け部のムラが良好に補正されたか否か判定し、良好に補正されていないと判定した場合には補正データの位置をずらして再度ムラ補正を行い、良好に補正されたと判定したときの被写体画像データを出力するようにしたため、フィルタ24Aが補正データを取得したときの位置からずれてセット(配置)された状態で撮影されて得られた被写体画像データについても良好にムラが補正された被写体画像データを得ることができる。すなわち、フィルタ24Aの位置再現性が低くても、フィルタ24Aに起因するムラが良好に補正された被写体画像データを得ることができる。
【0081】
なお、上記ステップ210において、上記ずらし量αは、1画素単位でなくてもかまわない。例えば、10画素単位でずらしていくようにしてもよい。この場合、10画素単位の平均値を求めて標準偏差σを計算する。これにより、例えば、フィルタ24Aの位置精度(想定される位置ずれ範囲)を、補正データを取得したときの位置を中心として放射線画像上で±1.5mm程度の範囲とすると、10μmの画素サイズで放射線画像を検出する放射線検出器42を用いた場合には、300画素の範囲内で多くても30回程度の計算ですむ(図9も参照。)。
【0082】
また、上記想定される位置ずれ範囲で補正位置をずらして標準偏差σを計算する処理を繰り返しても、閾値TH1以下になる標準偏差σが計算できなかった場合には、何らかの不具合が発生している可能性があるとして、表示装置80の表示部80Aにメッセージを表示して警告を報知するようにしてもよい。なお、表示装置80の表示部80Aにメッセージを表示して警告を行なう場合に限らず、例えば、スピーカから音声を出力したり、ランプを点灯させることにより警告を行なうようにしてもよい。
【0083】
また、位置ずれ範囲を定めずに、閾値TH1以下となる標準偏差σが計算されるまで補正データをずらして標準偏差σを計算する処理を繰り返すようにしてもよい。
【0084】
[第2の実施の形態]
【0085】
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0086】
第2の実施の形態に係る放射線画像撮影システム5の構成は、上記第1の実施の形態(図1〜図5参照)と同一であるので、ここでの説明は省略する。また、撮影装置10で実行される処理も、第1の実施の形態において図6を用いて説明した処理と同様であるため、説明を省略する。
【0087】
図10には本実施の形態に係るムラ補正処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートが示されている。なお、上記第1の実施の形態(図8参照)と同一部分には同一の符号を付してここでの詳細な説明は省略する。
【0088】
なお、本実施の形態では、ステップ200でムラ補正された最新の被写体画像データだけでなく、ステップ202〜214の繰り返し処理においてムラ補正された被写体画像データの各々を後述するステップ216の処理が終了するまで保持しておくものとする。
【0089】
ステップ206で、素抜け部のプロファイルの標準偏差σを計算した後、ステップ210で、第1の実施の形態と同様に補正データの補正位置をずらす。ステップ210の後、ステップ214で、想定される位置ずれ範囲内の各位置の標準偏差σの計算が済んだか否かを判定する。例えば、フィルタ24Aの位置精度及び放射線検出器42の解像度を第1の実施の形態で例示した条件とした場合に(図9も参照)、位置ずれが全く無いとしたときのフィルタ24Aの位置を基準位置として±150画素の範囲を位置ずれ範囲として定め、この位置ずれ範囲内で上記予め定められた画素数α間隔毎の各位置に補正データの補正位置を設定したときの標準偏差σが全て計算されたか否かを判定する。この場合、前述した初期位置を中心として±150画素の範囲内で補正位置をずらしながら標準偏差σを計算すればよい。
【0090】
ステップ216で否定判定した場合には、ステップ202に戻って、ステップ202〜ステップ212までの処理を繰り返す。
【0091】
一方、ステップ216で肯定判定した場合には、ステップ218に進む。ステップ218では、上記ステップ202から212までの繰り返し処理により計算された標準偏差σのうち、最小の標準偏差σが計算されたときのムラ補正後の被写体画像データをムラが良好に補正された被写体画像データとして選択する。
【0092】
ステップ218では、上記選択された被写体画像データを画像信号出力部74を介して表示装置80に出力する。これにより、表示装置80の表示部80Aに良好にムラ補正された被写体画像が表示される。
【0093】
以上説明したように、補正データの補正位置を複数の異なる位置にずらして被写体画像データのムラ補正を行い、各々について素抜け部のプロファイルを求めて素抜け部のムラが良好に補正されたか否か判定し、良好に補正されたと判定された被写体画像データを出力するようにしたため、第1の実施の形態と同様の効果が得られると共に、高いムラ補正精度が得られる。
【0094】
なお、本実施の形態において、上記ステップ202から212までの繰り返し処理により計算された標準偏差σのうち、最小の標準偏差σが第1の実施の形態で用いた閾値TH1(或いは閾値TH1とは異なる閾値TH2であってもよい)以下の場合に、良好に補正されたと判定し、閾値TH1を超える場合には、いずれも良好に補正されていないと判定するようにしてもよい。更に、最小の標準偏差σが閾値TH1或いはTH2を超える場合に、何らかの不具合が発生している可能性があるとして、表示装置80の表示部80Aにメッセージを表示したりスピーカから警告音を発生させたりすることにより警告を報知するようにしてもよい。
【0095】
また、上記各実施の形態では、被写体画像データ全体にムラ補正を実施して、ムラ補正後の被写体画像データから素抜け部を判定し、当該素抜け部のプロファイルの標準偏差σを計算する例について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ムラ補正前の被写体画像データから素抜け部を判定するようにしてもよい。この場合には、第1の実施の形態において、図8のステップ202の素抜け部の判定処理をステップ200の前に行い、ステップ208で肯定判定されるまで、ステップ200、204、206、208、210の処理を繰り返すようにする。第2の実施の形態においても同様に、図10のステップ202の素抜け部の判定処理をステップ200の前に行い、ステップ214で肯定判定されるまで、ステップ200、204、206、210、214の処理を繰り返し行うようにする。
【0096】
また、第1の実施の形態の変形例として、図11に示すように、素抜け部だけムラ補正して素抜け部のムラ補正後のプロファイルを生成し、被写体画像データに対する補正データの補正位置を特定し、特定された補正位置に補正データの補正位置を合わせて被写体画像データ全体のムラ補正を行うようにしてもよい。
【0097】
図11において、ステップ300では、ムラ補正前の被写体画像データが表す被写体画像から、素抜け部を判定する。
【0098】
ステップ302では、被写体画像データのうち素抜け部の各画素の画素値から当該各画素に対応する補正データの各画素の画素値を減算して素抜け部のムラ補正を行うことにより、ムラ補正後の素抜け部のプロファイルを生成する。
【0099】
ステップ304では、ステップ204と同様に、素抜け部のプロファイルの標準偏差σを計算する。なお、ここでも、統計値として標準偏差を求めたが、分散でもよい。
【0100】
ステップ306では、標準偏差σが予め定められた閾値TH1以下であるか否かを判定する。ここで標準偏差σが予め定められた閾値TH1を越えていると判定した場合には、ステップ308に進む。
【0101】
ステップ308では、前述したステップ210と同様に、補正データの補正位置をずらす。
【0102】
ステップ308の処理後は、ステップ302に戻る。ステップ302では、ステップ308で補正データの補正位置をずらした状態で、素抜け部の各画素の画素値から当該各画素に対応する補正データの各画素の画素値を減算してムラ補正を行う。そして、以降の処理を繰り返す。
【0103】
一方、ステップ306で、標準偏差σが予め定められた閾値TH1以下であると判定した場合には、素抜け部が良好に補正されたと判定してステップ310に進む。
【0104】
ステップ310では、被写体画像データに対して標準偏差σが予め定められた閾値TH1以下となった補正位置に補正データの補正位置を合わせて、被写体画像データ全体を対象としてムラ補正を実施する。
【0105】
ステップ312では、ステップ310でムラ補正した被写体画像データを表示装置80に出力する。これにより、表示装置80の表示部80Aに良好にムラ補正された被写体画像が表示される。
【0106】
なお、ここでは図示を省略するが、第2の実施の形態についても図11と同様に、素抜け部だけムラ補正して素抜け部のムラ補正後のプロファイルを生成し、被写体画像データに対する補正データの補正位置を特定し、補正データの補正位置を特定された補正位置に合わせて被写体画像データ全体のムラ補正を行うようにしてもよい。
【0107】
また、上記各実施の形態では、良好にムラが補正されたと判定された被写体画像データを表示装置80に出力して表示させる例について説明したが、これに限定されるものではなく、当該被写体画像データを画像処理装置50のHDD66等の記憶手段に出力して記憶しておくようにしてもよいし、ネットワーク56を介して接続された他の装置(例えば、管理サーバ57)に出力(送信)して、記憶部57Aに記憶させるようにしてもよい。
【0108】
なお、上記各実施の形態では、撮影装置10において被写体を撮影した後、当該撮影して得られた被写体画像データと当該撮影に使用されたフィルタ24Aに対応する補正データとを撮影装置10から画像処理装置50に転送する例について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、補正データについては、フィルタ24Aの識別情報とともに事前に画像処理装置50に転送して、画像処理装置50のHDD66に識別情報と補正データとを対応づけて予め記憶させておき、撮影装置10において被写体を撮影した後、当該撮影して得られた被写体画像データを当該撮影に使用されたフィルタ24Aを識別する識別情報とともに転送するようにしてもよい。このような構成によっても、画像処理装置50側で識別情報に対応づけて記憶されている補正データを読み出して用いることができる。
【0109】
また、一般的には放射線源と放射線検出器の受像面との垂直方向に対する距離(「SID」(Source Image Distance)ともいう。)の変化に応じて拡大率が変化しムラも変化するため、x方向の位置だけでなく拡大率を変えながら、標準偏差σを求めて判定するようにしてもよい。また、フィルタ24Aが一次元でなく2次元的に(x-y平面上で)移動可能ならば、2次元的に位置をずらしながら、標準偏差σを求めて判定するようにしてもよい。
【0110】
また、上記各実施の形態では、フィルタ24AがX方向にスライド移動する例について説明したが、装置によっては、円盤状にフィルタ24Aが配置されており、回転することによりフィルタ24Aを移動したりフィルタ24Aの種類を切替えたりするものもある。従って、回転角をθ、回転軸からの距離をrとしたときのr−θ座標系で回転角θを変えながら補正位置をずらし、各位置での標準偏差σを求めるようにしてもよい。
【0111】
なお、上記各実施の形態では、マンモグラフィにより撮影された放射線画像に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の放射線画像撮影装置に適用してもよい。
【0112】
また、上記各実施の形態では、撮影装置10と画像処理装置50を設け、表示装置80を画像処理装置50に接続した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、撮影装置10と画像処理装置50を1つの装置で構成し、当該装置に表示装置80を接続してもよい。
【0113】
また、上記各実施の形態では、放射線検出器42によって放射線画像を示すデジタルの画像情報を直接得る場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、イメージングプレートやX線フィルム等を内蔵したカセットなどに放射線を照射し、カセットに内蔵されたイメージングプレートやX線フィルムを読み取ることにより、デジタルの画像情報を得るようにしてもよい。
【0114】
その他、上記実施の形態で説明した放射線画像撮影システム5、撮影装置10、放射線源30、画像処理装置50、及び表示装置80の構成(図1〜図5参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更可能であることは言うまでもない。
【0115】
また、上記実施の形態で説明したムラ補正処理プログラムの処理の流れ(図8、図10、図11参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0116】
5 放射線画像撮影システム
10 撮影装置
24A フィルタ
24 放射線照射部
30 放射線源
42 放射線検出器
46 撮影装置制御部
50 画像処理装置
80 表示装置
W 被験者
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像処理装置、放射線画像撮影システム、及びプログラムに係り、特にフィルタに起因して発生する画像のムラが補正された被写体画像データを得ることができる放射線画像処理装置、放射線画像撮影システム、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療診断を目的とした放射線撮影を行なう放射線撮影装置が知られている。この種の放射線撮影装置として、例えば、乳がんの早期発見などを目的として被験者の乳房を撮像するマンモグラフィが挙げられる。
【0003】
ところで、放射線撮影装置による撮影では、放射線の特性を調整するためのフィルタが設けられ、当該フィルタを介して放射線源から被写体に放射線が照射される。しかしながらフィルタの特性や製造ばらつき等に起因して濃度ムラが生じるため、予めフィルタ毎にムラ補正用の補正データを取得しておき、当該補正データを放射線撮影して得られた被写体画像データに適用してムラを補正するようにしている。
【0004】
なお、放射線撮影装置に関するムラ補正技術としては様々なものが提案されている。例えば、特許文献1には、放射線発生むら及び放射線画像変換パネル毎の感度むらの少なくとも一方を示す画像むら情報を予め記憶しておき、放射線画像情報を予め記憶しておいた画像むら情報に基づいて補正する放射線画像読取り装置が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、X線画像から被写体を含まない領域の少なくとも一部を直線X線領域として抽出し、直線X線領域の各画素における照射むら成分を推定し、除去する照射ムラ補正装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4-186484号公報
【特許文献2】特開2009−297393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、放射線撮影装置では、経時変化またはフィルタの交換等によりフィルタの位置ずれが発生し、ムラ補正を行ってもムラが残ってしまう場合がある。
【0008】
補正対象画像を表す補正前の被写体画像データ(以下、補正前データ)が、フィルタが補正データを取得したときの位置に配置された状態で撮影されて得られたものであれば、補正前データに対する補正データの補正位置が合っているため、図12に示すように、補正対象画像の正前データから補正データを減算することで、良好にムラが除去される。
【0009】
しかしながら、フィルタが補正データを取得したときの位置からずれて配置された状態で撮影されて得られた補正前データについては、図13に示すように、補正前データに対する補正データの補正位置が合わずに、補正前データから補正データを減算しても、ムラが残ってしまう。
【0010】
そのため、良好にムラが補正された画像を得るには、フィルタの高い位置再現性が重要であるが、常に良好な位置再現性を維持するのは困難である。なお、フィルタの位置がずれても良好にムラが補正された被写体画像データを得るための技術は、上記特許文献1、及び2には何ら開示されてない。
【0011】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、被写体撮影時に用いるフィルタの位置再現性が低くても、フィルタに起因して発生するムラが良好に補正された被写体画像データを得ることができる放射線画像処理装置、放射線画像撮影システム、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の放射線画像処理装置は、フィルタが予め定められた位置に位置する際に当該フィルタに起因して発生する画像のムラを補正するための補正値が画素毎に定められた補正データを用いて、前記フィルタを介して放射線を照射して撮影された被写体の画像を表す被写体画像データに含まれる素抜け部の画像データを補正したときの前記素抜け部のプロファイルを生成する生成手段と、前記生成手段で生成された素抜け部のプロファイルの前記フィルタの位置の移動に起因するばらつきを示す統計値に基づいて、前記素抜け部のムラが良好に補正されているか否かを判定する判定手段と、前記判定手段で前記素抜け部のムラが良好に補正されていると判定されたときの前記被写体画像データに対する前記補正データの各画素毎の補正値による補正位置に前記補正データを適用してムラが補正された前記被写体画像データを出力する出力手段と、を備えている。
【0013】
被写体画像データを撮影したときのフィルタの位置に応じて、被写体画像データのムラを良好に補正するための、被写体画像データに対する補正データの各画素毎の補正値による補正位置が変わる。一方、放射線が照射された領域のうち被写体を透過しなかった領域である素抜け部の画像データは、被写体の影響がないため、フィルタに起因して発生するムラの補正精度を確認するには適している。
【0014】
そこで、本発明のように、補正データを用いてムラが補正された素抜け部プロファイルを生成して素抜け部のプロファイルの前記フィルタの位置の移動に起因するばらつきを示す統計値に基づいて当該素抜け部のムラが良好に補正されているか否かを判定し、素抜け部のムラが良好に補正されていると判定されたときの被写体画像データに対する補正データの各画素毎の補正値による補正位置に補正データを適用してムラが補正された被写体画像データを出力するようにすることで、被写体撮影時に用いるフィルタの位置再現性が低くても、フィルタに起因して発生するムラが良好に補正された被写体画像データを得ることができる。
【0015】
なお、前記判定手段は、前記統計値が予め定められた閾値以下となった場合に、前記素抜け部のムラが良好に補正されていると判定するようにしてもよい。
【0016】
また、前記判定手段により前記統計値が閾値以下になると判定されなかった場合に、前記被写体画像データに対する前記補正データの前記補正位置をずらして、新たに前記素抜け部のプロファイルが生成されるように前記生成手段を制御する制御手段を更に備えていてもよい。
【0017】
これにより良好にムラが補正されたと判定されるまで補正位置をずらして判定することができる。
【0018】
更にまた、前記補正位置をずらす範囲を予め定め、当該範囲内で各々異なる位置に前記補正位置をずらして前記素抜け部を補正したときの各統計値がいずれも閾値を超える場合に、警告を報知する報知手段を更に備えていてもよい。
【0019】
これにより、補正位置をずらす範囲内で補正位置をずらしても良好にムラが補正されたと判定されない場合には異常が発生している(フィルタの位置が予め定められた位置から大きくずれている、或いは撮影装置の異常等)可能性がある。そこで、この場合に、警告を報知することで、使用者に異常を知らせることができる。
【0020】
また、素抜け部のムラが良好に補正されたか否かを判定するに際し、上記のように統計値が予め定められた閾値以下となった場合に限らず、例えば、前記生成手段は、前記被写体画像データに対する前記補正データの前記補正位置を複数の異なる位置にずらして前記素抜け部のプロファイルを複数生成し、前記判定手段は、前記複数のプロファイルの各々の前記統計値のうち最小の統計値に対応する素抜け部について、ムラが良好に補正されていると判定するようにしてもよい。
【0021】
また、前記生成手段は、前記被写体画像データに対する前記補正データの前記補正位置を複数の異なる位置にずらして前記素抜け部のプロファイルを複数生成し、前記判定手段は、前記複数のプロファイルの各々の前記統計値のうち最小の統計値であって予め定められた閾値以下の統計値に対応する素抜け部について、ムラが良好に補正されていると判定するようにしてもよい。
【0022】
補正位置が異なる複数の素抜け部についての統計値の中では、最小の統計値に対応する素抜け部が最も良好にムラが補正されているといえるが、例えばムラが良好に補正されたと認識されるレベルである閾値を予め定め、当該最小の統計値が当該閾値より大きい場合には、ムラが良好に補正されていると判定しないようにすれば、更に精度が上がる。
【0023】
なお、前記最小の統計値が予め定められた閾値を超える場合に、警告を報知する報知手段を更に備えていてもよい。
【0024】
また、本発明の放射線画像撮影システムは、フィルタを介して被写体を介さずに放射線を照射して撮影することにより、当該撮影したときのフィルタの位置に当該フィルタが位置する際に当該フィルタに起因して発生する画像のムラを補正するための補正値が画素毎に定められた補正データを生成すると共に、前記フィルタを介して放射線を照射して被写体を撮影することにより、当該被写体の画像を表す被写体画像データを生成する撮影装置と、前記補正データを用いて前記被写体画像データの素抜け部の画像データを補正したときの前記素抜け部のプロファイルを生成する生成手段、前記生成手段で生成された素抜け部のプロファイルの前記フィルタの位置の移動に起因するばらつきを示す統計値に基づいて、前記素抜け部のムラが良好に補正されているか否かを判定する判定手段、及び前記判定手段で前記素抜け部のムラが良好に補正されていると判定されたときの前記被写体画像データに対する前記補正データの各画素毎の補正値による補正位置に前記補正データを適用してムラが補正された前記被写体画像データを出力する出力手段を備えた放射線画像処理装置と、を備えている。
【0025】
このような構成によっても、被写体撮影時に用いるフィルタの位置再現性が低くても、フィルタに起因して発生するムラが良好に補正された被写体画像データを得ることができる。
【0026】
本発明のプログラムは、コンピュータを、フィルタが予め定められた位置に位置する際に当該フィルタに起因して発生する画像のムラを補正するための補正値が画素毎に定められた補正データを用いて、前記フィルタを介して放射線を照射して撮影された被写体の画像を表す被写体画像データに含まれる素抜け部の画像データを補正したときの前記素抜け部のプロファイルを生成する生成手段、前記生成手段で生成された素抜け部のプロファイルの前記フィルタの位置の移動に起因するばらつきを示す統計値に基づいて、前記素抜け部のムラが良好に補正されているか否かを判定する判定手段、及び前記判定手段で前記素抜け部のムラが良好に補正されていると判定されたときの前記被写体画像データに対する前記補正データの各画素毎の補正値による補正位置に前記補正データを適用してムラが補正された前記被写体画像データを出力する出力手段として機能させるためのプログラムである。
【0027】
このようなプログラムによっても、被写体撮影時に用いるフィルタの位置再現性が低くても、フィルタに起因して発生するムラが良好に補正された被写体画像データを得ることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、被写体撮影時に用いるフィルタの位置再現性が低くても、フィルタに起因するムラが良好に補正された被写体画像データを得ることができる、異常が発生している或いは撮影装置の異常等の場合に警告を報知することで使用者に異常を知らせることができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施の形態に係る撮影装置の構成を示す平面図である。
【図2】実施の形態に係る撮影装置のCC撮影時における構成を示す斜視図である。
【図3】実施の形態に係る撮影装置のMLO撮影時における構成を示す斜視図である。
【図4】実施の形態に係る放射線源の構成を示す図である。
【図5】実施の形態に係る放射線画像撮影システムの構成を示すブロック図である。
【図6】撮影装置で実行される撮影処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】補正データが表す補正値の分布(ムラの分布)の一例を示す図である。
【図8】第1の実施の形態に係るムラ補正処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】フィルタの位置精度(位置ずれ範囲)の具体例を説明する説明図である。
【図10】第2の実施の形態に係るムラ補正処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】第1の実施の形態に係るムラ補正処理の変形例のフローチャートを示す図である。
【図12】補正データと補正前データとでムラの位置が一致している状態で補正前データを補正したときの補正結果を示す対数スケールで示した図である。
【図13】補正データと補正前データとでムラの位置がずれている状態で補正前データを補正したときの補正結果を示す対数スケールで示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0031】
[第1の実施の形態]
【0032】
図1〜図3に示すように、本実施の形態に係る放射線画像撮影装置10は、被験者Wが立った立位状態において、その被験者Wの乳房Nを放射線(例えば、X線)により撮影する装置であり、例えば、マンモグラフィと称される。なお、以下では、撮影の際に放射線画像撮影装置10に被験者Wが対面した場合の被験者Wに近い手前側を放射線画像撮影装置10の装置前方側とし、放射線画像撮影装置10に被験者Wが対面した場合の被験者Wから離れた奥側を放射線画像撮影装置10の装置後方側とし、放射線画像撮影装置10に被験者Wが対面した場合の被験者Wの左右方向を放射線画像撮影装置10の装置左右方向として説明する(図1〜3の各矢印参照)。
【0033】
また、放射線画像撮影装置10の撮影対象は、乳房Nに限られず、例えば、身体の他の部位、物体であっても良い。また、放射線画像撮影装置10としては、被験者Wがいす等に座った座位状態において、その被験者Wの乳房Nを撮影する装置であってもよい。
【0034】
放射線画像撮影装置10は、図1に示すように、装置前方側に設けられた側面視略C字状(コの字状)の測定部12と、測定部12を装置後方側から支える基台部14と、を備えている。
【0035】
測定部12は、立位状態にある被験者Wの乳房Nと当接する平面状の撮影面20が形成された撮影台22と、乳房Nを撮影台22の撮影面20との間で圧迫するための圧迫板26と、撮影台22と圧迫板26とを保持する支持部29と、を備えている。なお、圧迫板26には、放射線を透過する材質が用いられる。
【0036】
更にまた、支持部29は、管球などの放射線源30(図4参照。)が設けられその放射線源30から撮影面20に向けて検査用の放射線を照射する放射線照射部24を支持する。
【0037】
測定部12には、基台部14に回動可能に支えられている回動軸16が設けられている。回動軸16は、支持部29に対して固定されており、回動軸16と支持部29とは一体に回動するようになっている。
【0038】
なお、回動軸16の回動力の伝達・非伝達の切替えは、種々の機械要素を用いることができる。
【0039】
支持部29は、撮影面20と放射線照射部24とが所定間隔離れるように撮影台22と放射線照射部24とを保持すると共に、圧迫板26と撮影面20との間隔が可変であるように圧迫板26をスライド移動可能に保持している。
【0040】
乳房Nが当接する撮影面20は、放射線透過性や強度の観点から、例えば、カーボンで形成されている。撮影台22の内部には、乳房N及び撮影面20を通過した放射線が照射され、その放射線を検出する放射線検出器42が配置されている。放射線検出器42が検出した放射線が可視化されて放射線画像が生成される。
【0041】
本実施形態に係る放射線画像撮影装置10は、少なくとも、乳房NをCC撮影(頭尾方向の撮影)とMLO撮影(内外斜位方向の撮影)との両者を行うことができる装置とされている。図2は、CC撮影時における放射線画像撮影装置10の姿勢を示し、図3は、撮影装置のMLO撮影時における放射線画像撮影装置10の姿勢を示している。図3に示すように、MLO撮影は、放射線照射部24を支持すると共に撮影台22を支持する支持部29を傾けて撮影を行うものである。
【0042】
図2に示すように、CC撮影時においては、撮影面20が上方を向いた状態かつ放射線照射部24が撮影面20に対して上方に位置する状態に支持部29の姿勢が調整される。これにより、立位状態の被験者Wの頭側から足側に向かって、放射線照射部24から乳房Nへ放射線が照射されて、CC撮影(頭尾方向の撮影)がなされる。
【0043】
また、撮影台22の装置前方側の面には、CC撮影時において、被験者Wの乳房Nよりも下方の胸部分を当接させる胸壁面25が形成されている。胸壁面25は平面状とされている。
【0044】
また、MLO撮影時では、図3に示すように、一般的に、CC撮影時に比べて撮影台22を45°以上90°未満回転させた状態に支持部29の姿勢が調整され、撮影台22の装置前方側の側壁角部22Aに被験者Wの腋窩を当てるようにポジショニングされる。これにより、被験者Wの胴体の軸中心側から外側へ向かって、放射線照射部24から乳房Nへ放射線が照射されて、MLO撮影(内外斜位方向の撮影)がなされる。
【0045】
本実施の形態に係る放射線照射部24は、放射線源30及びフィルタ24Aを備えている。図4に、本実施の形態に係る放射線照射部24の構成を示す。
【0046】
放射線源30は、筐体30A内に、フィラメントを含んで構成された陰極30Bと、ターゲット(陽極)30Cとを備えており、陰極30Bから放出された熱電子が陰極・陽極間の電位差により加速・集束されてターゲット30Cに衝突し放射線が発生する。
【0047】
複数の放射線源30は、ターゲット30Cとして用いられる金属が、例えば、タングステン、モリブデン、ロジウム等とそれぞれ異なっている。
【0048】
放射線源30から放射線は、筐体30Aに設けられた窓30Dから外部へ照射される。
【0049】
放射線照射部24は、この窓30D部分にはモリブデンやロジウム、アルミニウム、銀の膜によりそれぞれ構成されたフィルタ24Aが設けられている。
【0050】
本実施の形態に係る放射線照射部24は、フィルタ24Aが機械的な機構により移動・交換可能とされている。フィルタ24Aが交換されると放射線照射部24から照射される放射線の特性が変化する。なお、本実施の形態では、前後方向または左右方向に沿って設けられたガイドレール(不図示)が設けられており、フィルタ24Aはガイドレールに対して抜き差しされ、フィルタ24Aの交換・移動時には、ガイドレールに沿ってフィルタ24Aがスライド移動されて交換・移動されるものとする。以下、ガイドレールの延在方向を、x−y座標系のx方向とする。
【0051】
図5には、本実施の形態に係る放射線画像撮影システム5の詳細な構成を示すブロック図が示されている。
【0052】
放射線画像撮影システム5は、上述した撮影装置10と、撮影した放射線画像データのムラ補正を行う画像処理装置50と、ムラ補正した放射線画像データが表す被写体画像の表示を行う表示装置80と、を備えている。
【0053】
撮影装置10は、放射線検出器42と、撮影条件、姿勢情報などの各種の操作情報や各種の操作指示が入力される操作パネル44と、装置全体の動作を制御する撮影装置制御部46と、操作メニューや各種情報等を表示するディスプレイ47と、LAN等のネットワーク56に接続され、当該ネットワーク56に接続された他の機器との間で各種情報を送受信する通信I/F部48と、をさらに備えている。
【0054】
撮影装置制御部46は、CPU46A、ROM46B、RAM46C、HDDやフラッシュメモリ等から成る不揮発性の記憶部46Dを備えており、放射線照射部24、放射線検出器42、操作パネル44、ディスプレイ47、及び通信I/F部48と接続されている。記憶部46Dには、CPU46Aが実行するプログラム等が記憶されている。記憶部46Dには、被験者Wの乳房Nを撮影して得られた被写体画像データやフィルタに起因する画像のムラを補正するための補正データ(詳細は後述する)が記憶される。
【0055】
操作パネル44で指定される撮影条件には、使用するフィルタ24A、管電圧、管電流、照射時間等の情報が含まれており、姿勢情報には、撮影姿勢がCC撮影かMLO撮影かを表す情報が含まれている。なお、この撮影条件、姿勢情報などの各種の操作情報や各種の操作指示は、他の制御装置から得るようにしてもよい。
【0056】
放射線検出器42は、放射線の照射を受けて画像データを記録し、記録した画像データを出力するものであり、例えば、放射線感応層を配置し、放射線をデジタルデータに変換して出力するFPD(Flat Panel Detector)として構成されている。放射線検出器42は、放射線が照射されると、放射線画像を示す画像データを撮影装置制御部46へ出力する。
【0057】
撮影装置制御部46は、通信I/F部48及びネットワーク56を介して画像処理装置50と通信が可能とされており、画像処理装置50との間で各種情報の送受信を行なう。
【0058】
このネットワーク56には、管理サーバ57が更に接続されている。管理サーバ57は、記憶部57Aを含んで構成されている。撮像装置制御部46は、通信I/F部48及びネットワーク56を介して管理サーバ57と通信が可能とされている。
【0059】
一方、画像処理装置50は、サーバ・コンピュータとして構成されており、操作メニューや各種情報等を表示するディスプレイ52と、複数のキーを含んで構成され、各種情報や操作指示が入力される操作入力部54と、を備えている。
【0060】
また、画像処理装置50は、装置全体の動作を司るCPU60と、制御プログラムを含む各種プログラム等が予め記憶されたROM62と、各種データを一時的に記憶するRAM64と、各種データを記憶して保持するHDD66と、ディスプレイ52への各種情報の表示を制御するディスプレイドライバ68と、操作入力部54に対する操作状態を検出する操作入力検出部70と、ネットワーク56を介して撮影装置10に接続され、撮影装置10との間で各種情報の送受信を行う通信I/F部72と、ディスプレイケーブル58を介して表示装置80に対して画像信号を出力する画像信号出力部74と、を備えている。
【0061】
CPU60、ROM62、RAM64、HDD66、ディスプレイドライバ68、操作入力検出部70、通信I/F部72、及び画像信号出力部74は、システムバスBUSを介して相互に接続されている。従って、CPU60は、ROM62、RAM64、HDD66へのアクセスを行うことができる。また、CPU60は、ディスプレイドライバ68を介したディスプレイ52への各種情報の表示の制御、通信I/F部72を介した撮影装置10との各種情報の送受信の制御、及び画像信号出力部74を介した表示装置80に表示される画像の制御、を行うことができる。さらに、CPU60は、操作入力検出部70を介して操作入力部54に対するユーザの操作状態を把握することができる。
【0062】
次に、本実施の形態に係る放射線画像撮影システム5の作用について説明する。
【0063】
図6には、撮影装置10で実行される撮影処理の流れを示すフローチャートが示されている。
【0064】
ステップ100では、フィルタ24Aが放射線照射部24にセットされた状態で被写体を介さずに(被験者Wの乳房Nを圧迫板26により挟まないで)放射線照射部24の放射線源30からフィルタ24Aを介して放射線検出器42に対して放射線を照射して、撮影領域の一様露光撮影を行うことにより、当該フィルタ24Aが当該一様露光撮影時にセットされた位置に位置する際に当該フィルタ24Aに起因して発生する画像のムラを補正するための補正値が各画素毎に定められた補正データを生成する。補正データは、フィルタ24Aを識別する識別情報に対応付けて記憶部46Dに記憶される。図7に、補正データが表す補正値の分布(ムラの分布)の一例を示す。なお、フィルタ24Aが複数種類ある場合には、各フィルタ24A毎に一様露光撮影を行い、各々の補正データを取得して記憶する。
【0065】
なお、ステップ100は、被験者Wの乳房Nを撮影する前に予め行われる処理であり、例えば、放射線画像撮影システム5や撮影装置10の出荷時等に行われる。従って、本ステップを破線で図示し、ステップ100とステップ102の処理が必ずしも連続して行われるものではないことを示した。
【0066】
ステップ102では、撮影条件で指定されたフィルタ24Aが放射線照射部24にセットされた状態で、被験者Wを撮影する。具体的には、被験者Wは、撮影装置10の撮影面20に被写体としての乳房Nを当接させる。撮影装置10は、この状態で操作パネル44に対して圧迫開始の操作指示が行なわれると、圧迫板26が撮影面20に向けて移動する。圧迫板26が乳房Nに当接して更に押圧し、圧迫板26の押圧力が設定押圧力に到達すると、撮影装置制御部46の制御により圧迫板26の移動が停止する。
【0067】
本実施形態に係る撮影装置10は、この状態で操作パネル44に対して曝射開始の操作指示が行なわれると、放射線照射部24の放射線源30から放射線を照射する。これにより、放射線検出器42は被写体画像を表す被写体画像データを生成して、撮影装置制御部46へ出力する。
【0068】
ステップ104では、ステップ102で得られた被写体画像データと、ステップ102の撮影時に使用されたフィルタ24Aの識別情報に対応付けて記憶されている補正データとを画像処理装置50に転送する。
【0069】
図8には被写体画像データ及び補正データが画像処理装置50に転送された際に、画像処理装置50のCPU60により実行されるムラ補正処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートが示されている。なお、当該プログラムはROM62の所定の領域に予め記憶されている。
【0070】
ステップ200では、ムラ補正前の被写体画像データが表す各画素の画素値から当該各画素に対応する補正データの各画素の補正値を減算して被写体画像データのムラ補正を実施する。なお、後述するステップ208で否定判定された場合には、被写体画像データにおける補正データの各画素毎の補正値によって補正される補正位置(以下、単に補正データの補正位置という場合もある)をずらした後に再度ステップ200の処理が行われるが、ステップ200の初回においては、補正データの補正位置を予め定められた初期位置にしてムラ補正を行う。例えば、x−y座標系で、各画素位置をx、yで表し、補正データが表す各画素毎の補正値をf1(x、y)と表し、被写体画像データの各画素毎の画素値をf2(x、y)と表す場合に、f1(x、y)によりf2(x、y)が補正される補正位置を初期位置とすることができる。この初期位置に補正位置を設定した場合には、f2(x、y)からf1(x、y)を減算して、被写体画像データのムラ補正を行う。
【0071】
ステップ202では、被写体画像データが表す被写体画像から、素抜け部(被写体を透過せずに直接放射線検出器42に放射線が照射された領域)を判定する。例えば直接放射線検出器42に放射線が照射された場合の被写体画像データの数値範囲を予め設定しておき、被写体画像データがこの数値範囲に属するか否かを判定することにより、素抜け部を求めてもよい。
【0072】
ステップ204では、ムラ補正した被写体画像の被写体画像データから上記判定した素抜け部の画像データに基づいて、素抜け部のプロファイル(素抜け部の画素値分布、すなわち素抜け部の各画素の画素値)を抽出する。
【0073】
ステップ206では、素抜け部のプロファイルの標準偏差σを計算する。すなわち、素抜け部の各画素毎の画素値の平均値を求め、各画素毎の画素値と当該平均値との偏差を2乗した値の平均値の平方根をとって標準偏差σを求める。なお、ここでは、統計値として標準偏差を求めたが、素抜け部の各画素の画素値の(フィルタの位置の移動に起因する)ばらつきを示す統計値であればよいため、標準偏差の代わりに分散を計算しても良い。
【0074】
ステップ208では、標準偏差σが予め定められた閾値TH1以下であるか否かを判定する。ここで標準偏差σが予め定められた閾値TH1を越えていると判定した場合には、素抜け部のムラが良好に補正されていないと判定して、ステップ210に進む。なお、ここで用いる閾値TH1は、ムラが良好に補正されたと認識される程度のレベルとなるように、予め実験などにより求めておき、画像処理装置50のROM62等に記憶しておく。
【0075】
ステップ210では、補正データの補正位置をずらす。なお、前述したように、本実施の形態では、前後方向または左右方向に沿って設けられたガイドレールに沿って、フィルタ24Aがスライド移動される構成となっている。従って、補正データを取得したときのフィルタ24Aの位置と被写体を撮影したときのフィルタ24Aの位置とがずれたとしても、その位置ずれは、ガイドレールの延在方向(x方向)における位置ずれであるとみなすことができる。従って、本実施の形態では、x方向にのみ補正データの補正位置をずらすものとする。また、本実施の形態では、予め定められた画素数α単位でずらすものとする。
【0076】
ここで、前述した初期位置からx方向に予め定められた画素数αだけ補正データの補正位置をずらす場合の具体例について説明する。前述したように、補正データが表す各画素毎の画素値をf1(x、y)と表し、被写体画像データの各画素毎の画素値をf2(x、y)と表すとすると、上記補正データの補正位置が初期位置にある状態においては、f1(x、y)でf2(x、y)が補正される状態となっているが、これを、f1(x、y)でf2(x+α、y)が補正されるように、補正データの補正位置を(x+α、y)に設定する。また、この状態から再度ステップ210で否定判定されてステップ212の処理を行う場合には、f1(x、y)でf2(x+2α、y)が補正されるよう補正位置を(x+2α、y)に設定すればよい。なお、ステップ212の繰り返しにより、x方向の+側にずらした量の累積値が所定量となった場合に、今度は初期位置からx方向の−側にずらすようにしてもよい。
【0077】
ステップ210の処理後は、ステップ200に戻る。ステップ200では、ステップ210で補正データの補正位置をずらした状態で、ムラ補正前の被写体画像データが表す各画素の画素値から当該各画素に対応する補正データが表す各画素の補正値を減算してムラ補正を行い、上記と同様の処理を繰り返す。
【0078】
一方、ステップ208で、標準偏差σが予め定められた閾値TH1以下であると判定した場合には、素抜け部のムラが良好に補正されたと判定して、ステップ212に進む。
【0079】
ステップ212では、標準偏差σが予め定められた閾値TH1以下と判定されたときのムラ補正後の被写体画像データ(すなわち、被写体画像データに対して、素抜け部のムラの補正が良好と判定されたときの補正位置に補正データを適用してムラが補正された被写体画像データ)を画像信号出力部74を介して表示装置80に出力する。これにより、表示装置80の表示部80Aに良好にムラ補正された被写体画像が表示される。
【0080】
以上説明したように、被写体画像データのムラ補正を行い、素抜け部のプロファイルを求めて素抜け部のムラが良好に補正されたか否か判定し、良好に補正されていないと判定した場合には補正データの位置をずらして再度ムラ補正を行い、良好に補正されたと判定したときの被写体画像データを出力するようにしたため、フィルタ24Aが補正データを取得したときの位置からずれてセット(配置)された状態で撮影されて得られた被写体画像データについても良好にムラが補正された被写体画像データを得ることができる。すなわち、フィルタ24Aの位置再現性が低くても、フィルタ24Aに起因するムラが良好に補正された被写体画像データを得ることができる。
【0081】
なお、上記ステップ210において、上記ずらし量αは、1画素単位でなくてもかまわない。例えば、10画素単位でずらしていくようにしてもよい。この場合、10画素単位の平均値を求めて標準偏差σを計算する。これにより、例えば、フィルタ24Aの位置精度(想定される位置ずれ範囲)を、補正データを取得したときの位置を中心として放射線画像上で±1.5mm程度の範囲とすると、10μmの画素サイズで放射線画像を検出する放射線検出器42を用いた場合には、300画素の範囲内で多くても30回程度の計算ですむ(図9も参照。)。
【0082】
また、上記想定される位置ずれ範囲で補正位置をずらして標準偏差σを計算する処理を繰り返しても、閾値TH1以下になる標準偏差σが計算できなかった場合には、何らかの不具合が発生している可能性があるとして、表示装置80の表示部80Aにメッセージを表示して警告を報知するようにしてもよい。なお、表示装置80の表示部80Aにメッセージを表示して警告を行なう場合に限らず、例えば、スピーカから音声を出力したり、ランプを点灯させることにより警告を行なうようにしてもよい。
【0083】
また、位置ずれ範囲を定めずに、閾値TH1以下となる標準偏差σが計算されるまで補正データをずらして標準偏差σを計算する処理を繰り返すようにしてもよい。
【0084】
[第2の実施の形態]
【0085】
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0086】
第2の実施の形態に係る放射線画像撮影システム5の構成は、上記第1の実施の形態(図1〜図5参照)と同一であるので、ここでの説明は省略する。また、撮影装置10で実行される処理も、第1の実施の形態において図6を用いて説明した処理と同様であるため、説明を省略する。
【0087】
図10には本実施の形態に係るムラ補正処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートが示されている。なお、上記第1の実施の形態(図8参照)と同一部分には同一の符号を付してここでの詳細な説明は省略する。
【0088】
なお、本実施の形態では、ステップ200でムラ補正された最新の被写体画像データだけでなく、ステップ202〜214の繰り返し処理においてムラ補正された被写体画像データの各々を後述するステップ216の処理が終了するまで保持しておくものとする。
【0089】
ステップ206で、素抜け部のプロファイルの標準偏差σを計算した後、ステップ210で、第1の実施の形態と同様に補正データの補正位置をずらす。ステップ210の後、ステップ214で、想定される位置ずれ範囲内の各位置の標準偏差σの計算が済んだか否かを判定する。例えば、フィルタ24Aの位置精度及び放射線検出器42の解像度を第1の実施の形態で例示した条件とした場合に(図9も参照)、位置ずれが全く無いとしたときのフィルタ24Aの位置を基準位置として±150画素の範囲を位置ずれ範囲として定め、この位置ずれ範囲内で上記予め定められた画素数α間隔毎の各位置に補正データの補正位置を設定したときの標準偏差σが全て計算されたか否かを判定する。この場合、前述した初期位置を中心として±150画素の範囲内で補正位置をずらしながら標準偏差σを計算すればよい。
【0090】
ステップ216で否定判定した場合には、ステップ202に戻って、ステップ202〜ステップ212までの処理を繰り返す。
【0091】
一方、ステップ216で肯定判定した場合には、ステップ218に進む。ステップ218では、上記ステップ202から212までの繰り返し処理により計算された標準偏差σのうち、最小の標準偏差σが計算されたときのムラ補正後の被写体画像データをムラが良好に補正された被写体画像データとして選択する。
【0092】
ステップ218では、上記選択された被写体画像データを画像信号出力部74を介して表示装置80に出力する。これにより、表示装置80の表示部80Aに良好にムラ補正された被写体画像が表示される。
【0093】
以上説明したように、補正データの補正位置を複数の異なる位置にずらして被写体画像データのムラ補正を行い、各々について素抜け部のプロファイルを求めて素抜け部のムラが良好に補正されたか否か判定し、良好に補正されたと判定された被写体画像データを出力するようにしたため、第1の実施の形態と同様の効果が得られると共に、高いムラ補正精度が得られる。
【0094】
なお、本実施の形態において、上記ステップ202から212までの繰り返し処理により計算された標準偏差σのうち、最小の標準偏差σが第1の実施の形態で用いた閾値TH1(或いは閾値TH1とは異なる閾値TH2であってもよい)以下の場合に、良好に補正されたと判定し、閾値TH1を超える場合には、いずれも良好に補正されていないと判定するようにしてもよい。更に、最小の標準偏差σが閾値TH1或いはTH2を超える場合に、何らかの不具合が発生している可能性があるとして、表示装置80の表示部80Aにメッセージを表示したりスピーカから警告音を発生させたりすることにより警告を報知するようにしてもよい。
【0095】
また、上記各実施の形態では、被写体画像データ全体にムラ補正を実施して、ムラ補正後の被写体画像データから素抜け部を判定し、当該素抜け部のプロファイルの標準偏差σを計算する例について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ムラ補正前の被写体画像データから素抜け部を判定するようにしてもよい。この場合には、第1の実施の形態において、図8のステップ202の素抜け部の判定処理をステップ200の前に行い、ステップ208で肯定判定されるまで、ステップ200、204、206、208、210の処理を繰り返すようにする。第2の実施の形態においても同様に、図10のステップ202の素抜け部の判定処理をステップ200の前に行い、ステップ214で肯定判定されるまで、ステップ200、204、206、210、214の処理を繰り返し行うようにする。
【0096】
また、第1の実施の形態の変形例として、図11に示すように、素抜け部だけムラ補正して素抜け部のムラ補正後のプロファイルを生成し、被写体画像データに対する補正データの補正位置を特定し、特定された補正位置に補正データの補正位置を合わせて被写体画像データ全体のムラ補正を行うようにしてもよい。
【0097】
図11において、ステップ300では、ムラ補正前の被写体画像データが表す被写体画像から、素抜け部を判定する。
【0098】
ステップ302では、被写体画像データのうち素抜け部の各画素の画素値から当該各画素に対応する補正データの各画素の画素値を減算して素抜け部のムラ補正を行うことにより、ムラ補正後の素抜け部のプロファイルを生成する。
【0099】
ステップ304では、ステップ204と同様に、素抜け部のプロファイルの標準偏差σを計算する。なお、ここでも、統計値として標準偏差を求めたが、分散でもよい。
【0100】
ステップ306では、標準偏差σが予め定められた閾値TH1以下であるか否かを判定する。ここで標準偏差σが予め定められた閾値TH1を越えていると判定した場合には、ステップ308に進む。
【0101】
ステップ308では、前述したステップ210と同様に、補正データの補正位置をずらす。
【0102】
ステップ308の処理後は、ステップ302に戻る。ステップ302では、ステップ308で補正データの補正位置をずらした状態で、素抜け部の各画素の画素値から当該各画素に対応する補正データの各画素の画素値を減算してムラ補正を行う。そして、以降の処理を繰り返す。
【0103】
一方、ステップ306で、標準偏差σが予め定められた閾値TH1以下であると判定した場合には、素抜け部が良好に補正されたと判定してステップ310に進む。
【0104】
ステップ310では、被写体画像データに対して標準偏差σが予め定められた閾値TH1以下となった補正位置に補正データの補正位置を合わせて、被写体画像データ全体を対象としてムラ補正を実施する。
【0105】
ステップ312では、ステップ310でムラ補正した被写体画像データを表示装置80に出力する。これにより、表示装置80の表示部80Aに良好にムラ補正された被写体画像が表示される。
【0106】
なお、ここでは図示を省略するが、第2の実施の形態についても図11と同様に、素抜け部だけムラ補正して素抜け部のムラ補正後のプロファイルを生成し、被写体画像データに対する補正データの補正位置を特定し、補正データの補正位置を特定された補正位置に合わせて被写体画像データ全体のムラ補正を行うようにしてもよい。
【0107】
また、上記各実施の形態では、良好にムラが補正されたと判定された被写体画像データを表示装置80に出力して表示させる例について説明したが、これに限定されるものではなく、当該被写体画像データを画像処理装置50のHDD66等の記憶手段に出力して記憶しておくようにしてもよいし、ネットワーク56を介して接続された他の装置(例えば、管理サーバ57)に出力(送信)して、記憶部57Aに記憶させるようにしてもよい。
【0108】
なお、上記各実施の形態では、撮影装置10において被写体を撮影した後、当該撮影して得られた被写体画像データと当該撮影に使用されたフィルタ24Aに対応する補正データとを撮影装置10から画像処理装置50に転送する例について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、補正データについては、フィルタ24Aの識別情報とともに事前に画像処理装置50に転送して、画像処理装置50のHDD66に識別情報と補正データとを対応づけて予め記憶させておき、撮影装置10において被写体を撮影した後、当該撮影して得られた被写体画像データを当該撮影に使用されたフィルタ24Aを識別する識別情報とともに転送するようにしてもよい。このような構成によっても、画像処理装置50側で識別情報に対応づけて記憶されている補正データを読み出して用いることができる。
【0109】
また、一般的には放射線源と放射線検出器の受像面との垂直方向に対する距離(「SID」(Source Image Distance)ともいう。)の変化に応じて拡大率が変化しムラも変化するため、x方向の位置だけでなく拡大率を変えながら、標準偏差σを求めて判定するようにしてもよい。また、フィルタ24Aが一次元でなく2次元的に(x-y平面上で)移動可能ならば、2次元的に位置をずらしながら、標準偏差σを求めて判定するようにしてもよい。
【0110】
また、上記各実施の形態では、フィルタ24AがX方向にスライド移動する例について説明したが、装置によっては、円盤状にフィルタ24Aが配置されており、回転することによりフィルタ24Aを移動したりフィルタ24Aの種類を切替えたりするものもある。従って、回転角をθ、回転軸からの距離をrとしたときのr−θ座標系で回転角θを変えながら補正位置をずらし、各位置での標準偏差σを求めるようにしてもよい。
【0111】
なお、上記各実施の形態では、マンモグラフィにより撮影された放射線画像に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の放射線画像撮影装置に適用してもよい。
【0112】
また、上記各実施の形態では、撮影装置10と画像処理装置50を設け、表示装置80を画像処理装置50に接続した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、撮影装置10と画像処理装置50を1つの装置で構成し、当該装置に表示装置80を接続してもよい。
【0113】
また、上記各実施の形態では、放射線検出器42によって放射線画像を示すデジタルの画像情報を直接得る場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、イメージングプレートやX線フィルム等を内蔵したカセットなどに放射線を照射し、カセットに内蔵されたイメージングプレートやX線フィルムを読み取ることにより、デジタルの画像情報を得るようにしてもよい。
【0114】
その他、上記実施の形態で説明した放射線画像撮影システム5、撮影装置10、放射線源30、画像処理装置50、及び表示装置80の構成(図1〜図5参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更可能であることは言うまでもない。
【0115】
また、上記実施の形態で説明したムラ補正処理プログラムの処理の流れ(図8、図10、図11参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0116】
5 放射線画像撮影システム
10 撮影装置
24A フィルタ
24 放射線照射部
30 放射線源
42 放射線検出器
46 撮影装置制御部
50 画像処理装置
80 表示装置
W 被験者
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタが予め定められた位置に位置する際に当該フィルタに起因して発生する画像のムラを補正するための補正値が画素毎に定められた補正データを用いて、前記フィルタを介して放射線を照射して撮影された被写体の画像を表す被写体画像データに含まれる素抜け部の画像データを補正したときの前記素抜け部のプロファイルを生成する生成手段と、
前記生成手段で生成された素抜け部のプロファイルの前記フィルタの位置の移動に起因するばらつきを示す統計値に基づいて、前記素抜け部のムラが良好に補正されているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段で前記素抜け部のムラが良好に補正されていると判定されたときの前記被写体画像データに対する前記補正データの各画素毎の補正値による補正位置に前記補正データを適用してムラが補正された前記被写体画像データを出力する出力手段と、
を備えた放射線画像処理装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記統計値が予め定められた閾値以下となった場合に、前記素抜け部のムラが良好に補正されていると判定する
請求項1に記載の放射線画像処理装置。
【請求項3】
前記判定手段により前記統計値が閾値以下になると判定されなかった場合に、前記被写体画像データに対する前記補正データの前記補正位置をずらして、新たに前記素抜け部のプロファイルが生成されるように前記生成手段を制御する制御手段を更に備えた
請求項2に記載の放射線画像処理装置。
【請求項4】
前記補正位置をずらす範囲を予め定め、当該範囲内で各々異なる位置に前記補正位置をずらして前記素抜け部を補正したときの各統計値がいずれも閾値を超える場合に、警告を報知する報知手段を更に備えた
請求項3に記載の放射線画像処理装置。
【請求項5】
前記生成手段は、前記被写体画像データに対する前記補正データの前記補正位置を複数の異なる位置にずらして前記素抜け部のプロファイルを複数生成し、
前記判定手段は、前記複数のプロファイルの各々の前記統計値のうち最小の統計値に対応する素抜け部について、ムラが良好に補正されていると判定する
請求項1に記載の放射線画像処理装置。
【請求項6】
前記生成手段は、前記被写体画像データに対する前記補正データの前記補正位置を複数の異なる位置にずらして前記素抜け部のプロファイルを複数生成し、
前記判定手段は、前記複数のプロファイルの各々の前記統計値のうち最小の統計値であって予め定められた閾値以下の統計値に対応する素抜け部について、ムラが良好に補正されていると判定する
請求項1に記載の放射線画像処理装置。
【請求項7】
前記最小の統計値が予め定められた閾値を超える場合に、警告を報知する報知手段を更に備えた
請求項6に記載の放射線画像処理装置。
【請求項8】
フィルタを介して被写体を介さずに放射線を照射して撮影することにより、当該撮影したときのフィルタの位置に当該フィルタが位置する際に当該フィルタに起因して発生する画像のムラを補正するための補正値が画素毎に定められた補正データを生成すると共に、前記フィルタを介して放射線を照射して被写体を撮影することにより、当該被写体の画像を表す被写体画像データを生成する撮影装置と、
前記補正データを用いて前記被写体画像データの素抜け部の画像データを補正したときの前記素抜け部のプロファイルを生成する生成手段、前記生成手段で生成された素抜け部のプロファイルの前記フィルタの位置の移動に起因するばらつきを示す統計値に基づいて、前記素抜け部のムラが良好に補正されているか否かを判定する判定手段、及び前記判定手段で前記素抜け部のムラが良好に補正されていると判定されたときの前記被写体画像データに対する前記補正データの各画素毎の補正値による補正位置に前記補正データを適用してムラが補正された前記被写体画像データを出力する出力手段を備えた放射線画像処理装置と、
を備えた放射線画像撮影システム。
【請求項9】
コンピュータを、
フィルタが予め定められた位置に位置する際に当該フィルタに起因して発生する画像のムラを補正するための補正値が画素毎に定められた補正データを用いて、前記フィルタを介して放射線を照射して撮影された被写体の画像を表す被写体画像データに含まれる素抜け部の画像データを補正したときの前記素抜け部のプロファイルを生成する生成手段、
前記生成手段で生成された素抜け部のプロファイルの前記フィルタの位置の移動に起因するばらつきを示す統計値に基づいて、前記素抜け部のムラが良好に補正されているか否かを判定する判定手段、及び
前記判定手段で前記素抜け部のムラが良好に補正されていると判定されたときの前記被写体画像データに対する前記補正データの各画素毎の補正値による補正位置に前記補正データを適用してムラが補正された前記被写体画像データを出力する出力手段
として機能させるためのプログラム。
【請求項1】
フィルタが予め定められた位置に位置する際に当該フィルタに起因して発生する画像のムラを補正するための補正値が画素毎に定められた補正データを用いて、前記フィルタを介して放射線を照射して撮影された被写体の画像を表す被写体画像データに含まれる素抜け部の画像データを補正したときの前記素抜け部のプロファイルを生成する生成手段と、
前記生成手段で生成された素抜け部のプロファイルの前記フィルタの位置の移動に起因するばらつきを示す統計値に基づいて、前記素抜け部のムラが良好に補正されているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段で前記素抜け部のムラが良好に補正されていると判定されたときの前記被写体画像データに対する前記補正データの各画素毎の補正値による補正位置に前記補正データを適用してムラが補正された前記被写体画像データを出力する出力手段と、
を備えた放射線画像処理装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記統計値が予め定められた閾値以下となった場合に、前記素抜け部のムラが良好に補正されていると判定する
請求項1に記載の放射線画像処理装置。
【請求項3】
前記判定手段により前記統計値が閾値以下になると判定されなかった場合に、前記被写体画像データに対する前記補正データの前記補正位置をずらして、新たに前記素抜け部のプロファイルが生成されるように前記生成手段を制御する制御手段を更に備えた
請求項2に記載の放射線画像処理装置。
【請求項4】
前記補正位置をずらす範囲を予め定め、当該範囲内で各々異なる位置に前記補正位置をずらして前記素抜け部を補正したときの各統計値がいずれも閾値を超える場合に、警告を報知する報知手段を更に備えた
請求項3に記載の放射線画像処理装置。
【請求項5】
前記生成手段は、前記被写体画像データに対する前記補正データの前記補正位置を複数の異なる位置にずらして前記素抜け部のプロファイルを複数生成し、
前記判定手段は、前記複数のプロファイルの各々の前記統計値のうち最小の統計値に対応する素抜け部について、ムラが良好に補正されていると判定する
請求項1に記載の放射線画像処理装置。
【請求項6】
前記生成手段は、前記被写体画像データに対する前記補正データの前記補正位置を複数の異なる位置にずらして前記素抜け部のプロファイルを複数生成し、
前記判定手段は、前記複数のプロファイルの各々の前記統計値のうち最小の統計値であって予め定められた閾値以下の統計値に対応する素抜け部について、ムラが良好に補正されていると判定する
請求項1に記載の放射線画像処理装置。
【請求項7】
前記最小の統計値が予め定められた閾値を超える場合に、警告を報知する報知手段を更に備えた
請求項6に記載の放射線画像処理装置。
【請求項8】
フィルタを介して被写体を介さずに放射線を照射して撮影することにより、当該撮影したときのフィルタの位置に当該フィルタが位置する際に当該フィルタに起因して発生する画像のムラを補正するための補正値が画素毎に定められた補正データを生成すると共に、前記フィルタを介して放射線を照射して被写体を撮影することにより、当該被写体の画像を表す被写体画像データを生成する撮影装置と、
前記補正データを用いて前記被写体画像データの素抜け部の画像データを補正したときの前記素抜け部のプロファイルを生成する生成手段、前記生成手段で生成された素抜け部のプロファイルの前記フィルタの位置の移動に起因するばらつきを示す統計値に基づいて、前記素抜け部のムラが良好に補正されているか否かを判定する判定手段、及び前記判定手段で前記素抜け部のムラが良好に補正されていると判定されたときの前記被写体画像データに対する前記補正データの各画素毎の補正値による補正位置に前記補正データを適用してムラが補正された前記被写体画像データを出力する出力手段を備えた放射線画像処理装置と、
を備えた放射線画像撮影システム。
【請求項9】
コンピュータを、
フィルタが予め定められた位置に位置する際に当該フィルタに起因して発生する画像のムラを補正するための補正値が画素毎に定められた補正データを用いて、前記フィルタを介して放射線を照射して撮影された被写体の画像を表す被写体画像データに含まれる素抜け部の画像データを補正したときの前記素抜け部のプロファイルを生成する生成手段、
前記生成手段で生成された素抜け部のプロファイルの前記フィルタの位置の移動に起因するばらつきを示す統計値に基づいて、前記素抜け部のムラが良好に補正されているか否かを判定する判定手段、及び
前記判定手段で前記素抜け部のムラが良好に補正されていると判定されたときの前記被写体画像データに対する前記補正データの各画素毎の補正値による補正位置に前記補正データを適用してムラが補正された前記被写体画像データを出力する出力手段
として機能させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図7】
【公開番号】特開2012−5715(P2012−5715A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145630(P2010−145630)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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