説明

放射線画像変換パネル及びその製造方法

【課題】 高輝度、高鮮鋭度を示し、且つ、輝度、鮮鋭度(鮮鋭性ともいう)のバランスの良好な放射線画像変換パネルを提供する。
【解決手段】 支持体上に輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルにおいて、該輝尽性蛍光体層が、平均アスペクト比aが1以上4以下の輝尽性蛍光体Aと平均アスペクト比bが2以上10以下の輝尽性蛍光体Bを含有し、且つ、該平均アスペクト比aと該平均アスペクト比bの差が0.2以上9以下であることを特徴とする放射線画像変換パネル。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は輝尽性蛍光体を用いた放射線画像変換パネルに関するものであり、更に詳しくは、輝度、鮮鋭度のバランスが高い放射線画像変換パネルに関する。
【0002】
【従来の技術】X線画像のような放射線画像は病気診断用などに多く用いられている。このX線画像を得るために被写体を通過したX線を蛍光体層(蛍光スクリーン)に照射し、これにより可視光を生じさせてこの可視光を通常の写真をとるときと同じように銀塩を使用したフィルムに照射して現像した、いわゆる放射線写真が利用されている。しかし近年銀塩を塗布したフィルムを使用しないで蛍光体層から直接画像を取り出す方法が工夫されるようになった。
【0003】この方法としては被写体を透過した放射線を蛍光体に吸収させ、しかる後この蛍光体を例えば光または熱エネルギーで励起することによりこの蛍光体が上記吸収により蓄積している放射線エネルギーを蛍光として放射し、この蛍光を検出し画像化する方法がある。
【0004】具体的には、例えば米国特許第3,859,527号及び特開昭55−12144号などに記載されているような輝尽性蛍光体を用いる放射線画像変換方法が知られている。
【0005】上記記載の方法は輝尽性蛍光体を含有する放射線画像変換パネルを使用するもので、この放射線画像変換パネルの輝尽性蛍光体層に被写体を透過した放射線を当てて被写体各部の放射線透過密度に対応する放射線エネルギーを蓄積させて、その後に輝尽性蛍光体を可視光線、赤外線などの電磁波(励起光)で時系列的に励起することにより、該輝尽性蛍光体中に蓄積されている放射線エネルギーを輝尽発光として放出させ、この光の強弱による信号をたとえば光電変換し、電気信号を得て、この信号を感光フィルムなどの記録材料、CRTなどの表示装置上に可視像として再生するものである。
【0006】上記の放射線画像記録再生方法によれば、従来の放射線写真フィルムと増感紙との組合せを用いる放射線写真法による場合に比較して、はるかに少ない被曝線量で情報量の豊富な放射線画像を得ることができるという利点がある。
【0007】しかしながら、放射線画像変換パネルを使用した放射線像変換方式においては、輝尽性蛍光体の発光輝度およびパネルの発光均一性に画像性能が大きく左右され、これらの特性は輝尽性蛍光体の特性が大きく反映され、特に鮮鋭性に優れ、且つ、粒状性にも優れている放射線画像変換パネルとしては、まだ、満足すべきレベルとは言えない現状である。
【0008】これに対して、例えば、特公平4−75480号公報には粒子径の違う蛍光体を混合し、鮮鋭度と粒状性を向上させる手法が紹介されているが、只、粒子径が異なるだけで、鮮鋭度、粒状性のバランスのよい向上には不十分であった。
【0009】また、特公平4−44720号公報には、粒子径の違う蛍光体を重層し、鮮鋭度と輝度を向上させる手法が紹介されているが、ここでも、粒子径だけのコントロールであり、粒状性の向上は不十分であった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、輝度、鮮鋭度(鮮鋭性ともいう)のバランスが高い放射線画像変換パネルを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の上記目的は下記の項目1〜10によって達成された。
【0012】1.支持体上に輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルにおいて、該輝尽性蛍光体層が、平均アスペクト比aが1以上4以下の輝尽性蛍光体Aと平均アスペクト比bが2以上10以下の輝尽性蛍光体Bを含有し、且つ、該平均アスペクト比aと該平均アスペクト比bの差が前記式(1)で表されることを特徴とする放射線画像変換パネル。
【0013】2.輝尽性蛍光体Aと輝尽性蛍光体Bの各々の量が、全輝尽性蛍光体の10質量%以上であることを特徴とする前記1に記載の放射線画像変換パネル。
【0014】3.支持体上に少なくとも2層の輝尽性蛍光体層1、2を積層している放射線画像変換パネルにおいて、該輝尽性蛍光体層1が、平均アスペクト比aが1以上4以下の輝尽性蛍光体Aを含有し、且つ、該輝尽性蛍光体層2が、平均アスペクト比bが2以上10以下の輝尽性蛍光体Bを含有し、該平均アスペクト比bが該平均アスペクト比aよりも大きく、前記平均アスペクト比bと前記平均アスペクト比aとの差が前記式(2)を満たし、且つ、前記輝尽性蛍光体層2は前記輝尽性蛍光体層1よりも該支持体に近くなるように配置されることを特徴とする放射線画像変換パネル。
【0015】4.輝尽性蛍光体Aと輝尽性蛍光体Bの各々の量が、全輝尽性蛍光体の10質量%以上であることを特徴とする前記3に記載の放射線画像変換パネル。
【0016】5.輝尽性蛍光体がEu付活BaFIであることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネル。
【0017】6.支持体上に輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルの製造方法において、該輝尽性蛍光体層が、平均アスペクト比aが1以上4以下の輝尽性蛍光体Aと平均アスペクト比bが2以上10以下の輝尽性蛍光体Bを含有し、且つ、該平均アスペクト比aと該平均アスペクト比bの差が前記式(1)を満たすように調製された塗布液を用いて前記支持体上に塗設されることを特徴とする放射線画像変換パネルの製造方法。
【0018】7.塗布液中の輝尽性蛍光体Aと輝尽性蛍光体Bの各々の量が、全輝尽性蛍光体の10質量%以上であることを特徴とする前記6に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【0019】8.支持体上に少なくとも2層の輝尽性蛍光体層1、2を積層している放射線画像変換パネルの製造方法において、該輝尽性蛍光体層1が、平均アスペクト比aが1以上4以下の輝尽性蛍光体Aを含有する塗布液A、該輝尽性蛍光体層2が、平均アスペクト比bが2以上10以下の輝尽性蛍光体Bを含有する塗布液Bを用いて各々、塗設され、前記平均アスペクト比bと前記平均アスペクト比aとの差が前記式(2)を満たし、且つ、前記輝尽性蛍光体層2は前記輝尽性蛍光体層1よりも該支持体に近くなるように配置されることを特徴とする放射線画像変換パネルの製造方法。
【0020】9.塗布液A中の輝尽性蛍光体Aと塗布液B中の輝尽性蛍光体Bの各々の量が、全輝尽性蛍光体の10質量%以上であることを特徴とする前記8に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【0021】10.輝尽性蛍光体がEu付活BaFIであることを特徴とする前記6〜9のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【0022】以下に本発明を詳細に説明する。本発明に係る輝尽性蛍光体層、輝尽性蛍光体について説明する。
【0023】本発明者等は種々の検討の結果、請求項1に記載のような、輝尽性蛍光体層が、平均アスペクト比aが1以上4以下の輝尽性蛍光体Aと平均アスペクト比bが2以上10以下の輝尽性蛍光体Bを含有し、且つ、該平均アスペクト比と該平均アスペクト比の差が前記式(1)で表されることを特徴とする放射線画像変換パネルにより、または、請求項3に記載のような、積層の輝尽蛍光体層1、2を有し、且つ、輝尽性蛍光体層1が、平均アスペクト比が1以上4以下の輝尽性蛍光体Aを含有し、該輝尽性蛍光体層2が、平均アスペクト比が2以上10以下の輝尽性蛍光体Bを含有し、該平均アスペクト比bが該平均アスペクト比aよりも大きく、前記平均アスペクト比bと前記平均アスペクト比aとの差が前記式(2)を満たし、且つ、前記輝尽性蛍光体層2は前記輝尽性蛍光体層1よりも該支持体に近くなるように配置されることを特徴とする放射線画像変換パネルを作製することにより、高輝度、高鮮鋭度を示し、且つ、輝度と鮮鋭度(鮮鋭性ともいう)のバランスも良好な放射線画像変換パネルが得られることを見いだした。
【0024】本発明に記載の効果を好ましく奏する観点から、本発明に係る輝尽性蛍光体Aの平均アスペクト比aは、2以上4以下が好ましく、本発明に係る輝尽性蛍光体Bの平均アスペクト比bは、3以上6以下が好ましい。
【0025】また、前記式(1)で表される平均アスペクト比aと平均アスペクト比bとの差は0.2以上5以下が好ましく、更に好ましくは0.2以上3以下である。
【0026】本発明において、輝尽性蛍光体の平均アスペクト比は下記のように測定した。
《蛍光体粒子のアスペクト比の測定及び平均アスペクト比の算出》支持体上に内部標準となる粒径既知のラテックスボールと主平面が平行に配向するように蛍光体粒子を塗布した試料を作製し、予め設定した角度からカーボン蒸着法によりシャドーイングを施した後、通常の方法によってレプリカ試料を作製する。得られたレプリカ試料の電子顕微鏡写真を撮影し、画像処理装置を用いて個々の粒子の影(シャドー)の長さからアスペクト比を算出した。
【0027】上記のようなアスペクト比の測定を任意に選択した800個以上の蛍光体粒子について行い、平均アスペクトを算出した。
【0028】本発明の放射線画像変換パネルに用いられる輝尽性蛍光体としては下記のものが一例として挙げられる。
【0029】(1)特開昭55−12145号に記載されている(Ba1-X,M(II)+X)FX:yA、(式中、M(II)はMg、Ca、Sr、ZnおよびCdのうちの少なくとも一つ、XはCl、Br、およびIのうち少なくとも一つ、AはEu、Tb、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、およびErのうちの少なくとも一つ、そしては、0≦x≦0.6、yは、0≦y≦0.2である)の組成式で表される希土類元素付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物蛍光体;また、この蛍光体には以下のような添加物が含まれていてもよい。
【0030】(a)特開昭56−74175号に記載されている、X′、BeX″、M(III)X′′′3、式中、X′、X″、およびX′′′はそれぞれCl、BrおよびIの少なくとも一種であり、M(III)は三価金属である;
(b)特開昭55−160078号に記載されているBeO、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、Al23、Y23、La23、In23、SiO2、TiO2、ZrO2、GeO2、SnO2、Nb25、Ta25およびThO2などの金属酸化物;
(c)特開昭56−116777号に記載されているZr、Sc;
(d)特開昭57−23673号に記載されているB;
(e)特開昭57−23675号に記載されているAs、Si;
(f)特開昭58−206678号に記載されているM・L、式中、MはLi、Na、K、Rb、およびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり、LはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga、In、およびTlからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属である;
(g)特開昭59−27980号に記載されているテトラフルオロホウ酸化合物の焼成物;特開昭59−27289号に記載されているヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロチタン酸およびヘキサフルオロジルコニウム酸の一価もしくは二価金属の塩の焼成物;
特開昭59−56479号に記載されているNaX′、式中、X′はCl、BrおよびIのうちの少なくとも一種である;
(h)特開昭59−56480号に記載されているV、Cr、Mn、Fe、CoおよびNiなどの遷移金属;特開昭59−75200号に記載されているM(I)X′、M′(II)X″2、M(III)X′′′3、A、式中、M(I)はLi、Na、K、Rb、およびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり、M′(II)はBeおよびMgからなる群より選ばれる少なくとも一種の二価金属を表し、M(III)はAl、Ga、In、およびTlからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属であり、Aは金属酸化物であり、X′、X″、およびX′′′はそれぞれF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである;
(i)特開昭60−101173号に記載されているM(I)X′、式中、M(I)はRbおよびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり、X′はF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである;
(j)特開昭61−23679号に記載されているM(II)′X′2・M(II)′X″2、式中、M(II)′はBa、SrおよびCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;X′およびX″はそれぞれCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであって、かつX′≠X″である;更に、特開昭61−264084号明細書に記載されているLnX″3、式中、LnはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素であり;X″はF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである。
【0031】(2)特開昭60−84381号に記載されているM(II)X2・aM(II)X′2:xEu2+、(式中、M(II)はBa、SrおよびCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XおよびX′はCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであって、かつX≠X′であり;そしてaは0.1≦a≦10.0、xは0<x≦0.2である)の組成式で表される二価ユーロピウム付活アルカリ土類金属ハロゲン化物蛍光体;また、この蛍光体には以下のような添加物が含まれていてもよい;
(a)特開昭60−166379号に記載されているM(I)X′、式中、M(I)はRbおよびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;X′はF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである;
(b)特開昭60−221483号に記載されているKX″、MgX′′′2、M(III)X″″3、式中、M(III)はSc、Y、La、GdおよびLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属であり;X″、X′′′およびX″″はいずれもF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである;
(c)特開昭60−228592号に記載されているB、特開昭60−228593号に記載されているSiO2、P25等の酸化物、特開昭61−120882号に記載されているLiX″、NaX″、式中、X″はF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである;
(d)特開昭61−120883号に記載されているSiO;特開昭61−120885号に記載されているSnX″2、式中、X″はF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである;
(e)特開昭61−235486号に記載されているCsX″、SnX′′′2、式中、X″およびX′′′はそれぞれF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである;更に、特開昭61−235487号に記載されているCsX″、Ln3+、式中、X″はF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;LnはSc、Y、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素である;
(3)特開昭55−12144号に記載されているLnOX:xA、(式中、LnはLa、Y、Gd、およびLuのうち少なくとも一つ;XはCl、Br、およびIのうち少なくとも一つ;AはCeおよびTbのうち少なくとも一つ;xは、0<x<0.1である)の組成式で表される希土類元素付活希土類オキシハライド蛍光体;
(4)特開昭58−69281号に記載されているM(II)OX:xCe、(式中、M(II)はPr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびBiからなる群より選ばれる少なくとも一種の酸化金属であり;XはCl、Br、およびIのうち少なくとも一つであり;xは0<x<0.1である)の組成式で表されるセリウム付活三価金属オキシハライド蛍光体;
(5)特開昭62−25189号明細書に記載されているM(I)X:xBi、(式中、M(I)はRbおよびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;XはCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてxは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表されるビスマス付活アルカリ金属ハロゲン化物蛍光体;
(6)特開昭60−141783号に記載されているM(II)5(PO43X:xEu2+、(式中、M(II)はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XはF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム付活アルカリ土類金属ハロリン酸塩蛍光体;
(7)特開昭60−157099号に記載されているM(II)2BO3X:xEu2+、(式中、M(II)はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XはCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム付活アルカリ土類金属ハロホウ酸塩蛍光体;
(8)特開昭60−157100号に記載されているM(II)2(PO43X:xEu2+、(式中、M(II)はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XはCl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム付活アルカリ土類金属ハロリン酸塩蛍光体;
(9)特開昭60−217354号に記載されているM(II)HX:xEu2+、(式中、M(II)はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XはCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム付活アルカリ土類金属水素化ハロゲン化物蛍光体;
(10)特開昭61−21173号に記載されているLnX3・aLn′X′3:xCe3+、(式中、LnおよびLn′はそれぞれY、La、GdおよびLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素であり;XおよびX′はそれぞれF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであって、かつX≠X′であり;そしてaは0.1<a≦10.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表されるセリウム付活希土類複合ハロゲン化物蛍光体;
(11)特開昭61−21182号に記載されているLnX3・aM(I)X′3:xCe3+、(式中、LnはY、La、GdおよびLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素であり;M(I)はLi、Na、K、CsおよびRbからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;XおよびX′はそれぞれCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてaは0<a≦10.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表されるセリウム付活希土類複合ハロゲン化物系蛍光体;
(12)特開昭61−40390号に記載されているLnPO4・aLnX3:xCe3+、(式中、LnはY、La、GdおよびLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素であり;XはF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてaは0.1≦a≦10.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表されるセリウム付活希土類ハロ燐酸塩蛍光体;
(13)特開昭61−236888号明細書に記載されているCsX:aRbX′:xEu2+、(式中、XおよびX′はそれぞれCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてaは0<a≦10.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム付活ハロゲン化セシウム・ルビジウム蛍光体;
(14)特開昭61−236890号に記載されているM(II)X2・aM(I)X′:xEu2+、(式中、M(II)はBa、SrおよびCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;M(I)はLi、RbおよびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;XおよびX′はそれぞれCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてaは0.1≦a≦20.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム付活複合ハロゲン化物蛍光体;これらの輝尽性蛍光体を使用した放射線画像変換パネルは、放射線画像情報を蓄積した後、励起光の走査によって蓄積エネルギーを放出するので、走査後に再度放射線画像の蓄積を行うことができ繰り返し使用が可能である。つまり従来の放射線写真法では一回の撮影ごとに放射線写真フィルムを消費するのに対して、この放射線画像変換方法では放射線画像変換パネルを繰り返し使用するので、資源保護、経済効率の面からも有利である。
【0032】このように輝尽性蛍光体は、放射線を照射した後、励起光を照射すると輝尽発光を示す蛍光体であるが、実用上では、波長が400〜900nmの範囲にある励起光によって300〜500nmの波長範囲の輝尽発光を示す蛍光体が一般的に利用される。
【0033】上記の輝尽性蛍光体の中で、ヨウ素を含有する二価ユーロピウム付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体、ヨウ素を含有する二価ユーロピウム付活アルカリ土類金属ハロゲン化物系蛍光体、ヨウ素を含有する希土類元素付活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体、およびヨウ素を含有するビスマス付活アルカリ金属ハロゲン化物系蛍光体が好ましく用いられるが、中でも、高輝度の輝尽発光を示す観点から、請求項4に係るヨウ素を含有する二価ユウロピウム付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体(Eu付活BaFI)が特に好ましく用いられる。
【0034】又、本発明に係る輝尽性蛍光体は輝尽性蛍光体層中に樹脂中分散含有している事が望ましい。本発明に使用できる結合剤としては、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル系樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が挙げられる。なかでもポリウレタン、ポリエステル、塩化ビニル系共重合体、ポリビニールブチラール、ニトロセルロースを使用することが好ましい。
【0035】即ち、まず適当な有機溶媒中に、結合剤と輝尽性蛍光体粒子を添加し、ディスパーザーやボールミルを使用し攪拌混合して結合剤中に輝尽性蛍光体が均一に分散した輝尽性蛍光体塗料を調製する。
【0036】輝尽性蛍光体塗料調製用の溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノールなどの低級アルコール、メチレンクロライド、エチレンクロライドなどの塩素原子含有炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、キシレンなどの芳香族化合物、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエステル、エチレングリコールモノメチルエステルなどのエーテル及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0037】尚、輝尽性蛍光体塗料には塗料中における輝尽性蛍光体の分散性を向上させるための分散剤、または形成後の輝尽性蛍光体層中の結合剤と輝尽性蛍光体との間の結合力を向上させるための可塑剤など種々の添加剤が混合されてもよい。
【0038】分散剤の例としては、フタル酸、ステアリン酸、カプロン酸、親油性界面活性剤などを挙げることができる。
【0039】可塑剤の例としては、燐酸トリフェニル、燐酸トリクレジル、燐酸ジフェニルなどの燐酸エステル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメトキシエチルなどのフタル酸エステル、グリコール酸エチルフタリルエチル、グリコール酸ブチルフタルブチルなどのグリコール酸エステル、トリエチレングリコールとアジピン酸とのポリエステル、ジエチレングリコールと琥珀酸とのポリエステルなどのポリエチレングリコールと脂肪族二塩基酸とのポリエステルなどを挙げることができる。
【0040】上記のようにして調製された輝尽性蛍光体と結合剤とを含有する蛍光体塗料を、支持体若しくはシート形成用の仮支持体の表面に均一に塗布することにより塗料の塗膜を形成する。
【0041】この塗布手段としては、例えばドクターブレード、ロールコータ、ナイフコータ、押し出しコータなどを用いることにより行うことができる。
【0042】本発明に係る支持体(上記記載のシート形成用仮支持体も含む)について説明する。
【0043】本発明に係る支持体としては、例えばガラス、ウール、コットン、紙、金属などの種々の素材から作られたものが使用され得るが、情報記録材料としての取り扱い上可撓性のあるシート或いはロールに加工できるものが好ましい。この点から、例えばセルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスティックフィルム、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔などの金属シート、一般紙及び例えば写真用原紙、コート紙、若しくはアート紙のような印刷用原紙、バライタ紙、レジンコート紙、ベルギー特許784,615号明細書に記載されているようなポリサッカライド等でサイジングされた紙、二酸化チタンなどの顔料を含むピグメント紙、ポリビニールアルコールでサイジングした紙等の加工紙が特に好ましい。
【0044】また、これら支持体の層厚は用いる支持体の材質等によって異なるが、一般的には80μm〜1000μmであり、取り扱い上の点から、さらに好ましくは80μm〜500μmである。
【0045】これらの支持体の表面は滑面であってもよいし、輝尽性蛍光体層との接着性を向上させる目的でマット面としてもよい。
【0046】さらに、これら支持体は、輝尽性蛍光体層との接着性を向上させる目的で輝尽性蛍光体層が設けられる面に下引層を設けてもよい。
【0047】放射線画像変換パネルの製造法は、以下の主に2種が考えられる。第1の製造法として、結合剤と蛍光体または輝尽性蛍光体とからなる蛍光体塗布液(以下輝尽性蛍光体塗料)を支持体上に塗布し、輝尽性蛍光体層を形成する。
【0048】また、第2の製造法として、結合剤と輝尽性蛍光体とからなる輝尽性蛍光体塗料を仮支持体上に塗布し、輝尽性蛍光体シートを形成する。前記輝尽性蛍光体シートを支持体上に載せ、前記結合剤の軟化温度若しくは融点以上の温度で、支持体に接着する工程で製造する。
【0049】輝尽性蛍光体層の支持体への形成方法としては、主に上記2種が考えられるが、支持体上に均一に輝尽性蛍光体層を形成する方法であればどのような方法でもよく、吹き付けによる形成等でもよい。
【0050】第1の製造法の輝尽性蛍光体層は、結合剤溶液中に輝尽性蛍光体を均一に分散せしめた輝尽性蛍光体塗料を支持体上に塗布、乾燥することにより製造できる。
【0051】また、第2の製造法の輝尽性蛍光体層となるシートは、輝尽性蛍光体塗料を輝尽性蛍光体シート形成用仮支持体上または仮支持体上に設けられた保護膜上に塗布し、乾燥した後、仮支持体から剥離することで製造できる。保護層自体を仮支持体として、そのまま最終製品に使用することもできる。
【0052】第2の製造法では、仮支持体上または仮支持体上に設けられた保護膜上に輝尽性蛍光体塗料を塗布し乾燥した後、仮支持体から剥離して輝尽性蛍光体層となるシートとする。従って仮支持体の表面は、予め剥離剤を塗布しておき、形成された輝尽性蛍光体シートが仮支持体から剥離し易い状態にしておくのが好ましい。
【0053】支持体と輝尽性蛍光体層の結合を強化するため支持体表面にポリエステルまたはゼラチンなどの高分子物質を塗布して接着性を付与する下塗り層を設けたり、感度、画質(鮮鋭性、粒状性)を向上せしめるために二酸化チタンなどの光反射性物質からなる光反射層、若しくはカーボンブラックなどの光吸収物質からなる光吸収層などが設けられてよい。それらの構成は目的、用途などに応じて任意に選択することができる。
【0054】また、本発明の輝尽性蛍光体層は圧縮してもよい。輝尽性蛍光体層を圧縮することによって輝尽性蛍光体の充填密度を更に向上させ、更に鮮鋭性、粒状性を向上させることができる。圧縮の方法としてはプレス機やカレンダーロール等が挙げられる。
【0055】第1の製造法の場合、輝尽性蛍光体層及び支持体をそのまま圧縮する。第2の製造法の場合、輝尽性蛍光体シートを支持体上に載せ、結合剤の軟化温度または融点以上の温度で圧縮しながら該シートを支持体上に接着する。
【0056】このようにして、輝尽性蛍光体シートを支持体上に予め固定することなく圧着する方法を利用することによりシートを薄く押し広げることができる。
【0057】通常、放射線画像変換パネルには、前述した支持体に接する側と反対側の輝尽性蛍光体層の表面を物理的、化学的に保護するための保護膜が設けられる。このような保護膜は、本発明についても設置することが好ましい。
【0058】本発明に用いられる保護層には、ASTMD−1003に記載の方法により測定したヘイズ率が5以上60%未満である、励起光吸収層を備えたポリエステルフイルム、ポリメタクリレートフィルム、ニトロセルロースフイルム、セルロースアセテートフイルム等が使用できるが、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンナフタレートフィルム等の延伸加工されたフィルムが、透明性、強さの面で保護層として好ましく、とくにこれらのポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンテレフタレートフィルムや上に金属酸化物、窒化珪素などの薄膜を蒸着した蒸着フィルムが防湿性の面からより好ましい。
【0059】本発明に使用する前記保護フィルムは必要とされる防湿性にあわせて、樹脂フィルムや樹脂フィルムに金属酸化物などを蒸着した蒸着フイルムを複数枚積層することで最適な防湿性とすることができが、輝尽性蛍光体の吸湿劣化を考慮して少なくとも50g/m2・day以下であることが好ましい。樹脂フイルムの積層方法としては、一般に知られているどのような方法でもかまわない。またこの場合は積層された樹脂フイルム間に励起光吸収層を設けることによって、励起光吸収層が物理的な衝撃や化学的な変質から保護され安定したプレート性能が長期間維持できる。励起光吸収層は複数箇所に設けてもよいし、積層する為の接着剤層に色剤を含有し励起光吸収層としても良い。
【0060】保護フィルムは蛍光体層に接着層にて密着していても良いが、蛍光体面を被覆するように設けられた構造(以下封止または封止構造)であることがより好ましい。蛍光体プレートを封止するにあたっては既知どのような方法でもかまわないが、防湿性保護フィルムの蛍光体シートに接する側の最外層の樹脂層を熱融着性を有する樹脂フィルムとすることで防湿性保護フィルムが融着可能となり蛍光体シートの封止作業が効率化される。
【0061】好ましくは、蛍光体シートの上下に防湿性保護フィルムを配置し、その周縁が前記蛍光体シートの周縁より外側にある領域で該上下の防湿性保護フィルムが融着している封止構造とすることで蛍光体シートの外周部からの水分進入も阻止できる。さらに支持体面側の防湿性保護フィルムが1層以上のアルミフィルムをラミネートしてなる積層防湿フィルムとすることで(図1参照)より確実に水分の進入を低減できる。またこの封止方法は作業的にも容易である。
【0062】またこの場合、防湿性保護フィルムの蛍光体面に接する側の最外層の熱融着性を有する樹脂層と蛍光体面は接着していても接着していなくてもかまわない。
【0063】接着していない状態とは、微視的には蛍光体面と防湿性保護フィルムは点接触してはいたとしても、光学的、力学的には殆ど蛍光体面と防湿性保護フィルムは不連続体として扱える状態のことである。
【0064】またここで言う熱融着性フィルムとは、一般に使用されるインパルスシーラーで融着可能な樹脂フィルムのことで、たとえばエチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)やポリプロペレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム等があげられるがこれに限られたものではない。
【0065】保護フイルムのヘイズ率は、使用する樹脂フイルムのヘイズ率を選択することで容易に調整できる。任意のヘイズ率の樹脂フイルムは工業的に容易に入手可能である。
【0066】本発明の放射線画像変換パネルの保護フイルムとしては光学的に透明度の非常に高いものが想定されている。そのような透明度の高い保護フイルム材料としては、ヘイズ値が2〜3%の範囲にあるようなプラスチックフイルムが各種市販されている。
【0067】特開昭59−42500や特公平1−57759には保護層のヘイズ率を高くして画像ムラや線状ノイズを解消する手段が示されているが鮮鋭性が低下してしまっていた。本発明に従えば、画像ムラや線状ノイズを解消し、さらに鮮鋭性を向上することができる。
【0068】本発明の効果を得るためのヘイズ率としては5%以上、60%未満が好ましく、さらに好ましくは、10%以上、50%未満である。
【0069】ヘイズ率としては5%未満では画像ムラや線状ノイズを解消する効果が小さく、60%以上であると本発明の鮮鋭性向上効果が小さくなる。
【0070】次いで、形成された塗膜を徐々に加熱することにより乾燥して、下塗層上への輝尽性蛍光体層の形成を完了する。輝尽性蛍光体層の層厚は、目的とする放射線画像変換パネルの特性、輝尽性蛍光体の種類、結合剤と蛍光体との混合比などによって異なるが、通常は20μm乃至1mmとする。ただし、この層厚は50乃至300μmとするのが好ましい。
【0071】本発明の放射線画像変換パネルの輝尽性蛍光体層の膜厚は目的とする放射線画像変換パネルの特性、輝尽性蛍光体の種類、結合剤と輝尽性蛍光体との混合比等によって異なるが、10μm〜1000μmの範囲から選ばれるのが好ましく、10μm〜250μmの範囲から選ばれるのがより好ましい。
【0072】支持体上に蛍光体層が塗設された蛍光体シートを所定の大きさに断裁する。断裁にあたっては一般のどのような方法でも可能であるが、作業性、精度の面から化粧断裁機、打ち抜き機等が望ましい。
【0073】所定の大きさに断裁された蛍光体シートを防湿性保護フィルムで封止するには既知のいかなる方法も使用できるが、例をあげると蛍光体シートを上下の防湿性保護フィルムの間に挟み周縁部をインパルスシーラーで加熱融着する方法、や2本の加熱したローラー間で加圧加熱するラミネート方式等が挙げられる。
【0074】上記インパルスシーラーで加熱融着する方法においては、減圧環境下で加熱融着することが、蛍光体シートの防湿性保護フィルム内での位置ずれ防止や大気中の湿気を排除する意味でより好ましい。
【0075】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0076】実施例1《蛍光体Aの合成》ユーロピウム付活弗化ヨウ化バリウムの輝尽性蛍光体前駆体を合成するために、BaI2水溶液(3.6mol/L)2780mlとEuI3水溶液(0.15mol/L)27mlを反応器に入れた。この反応器中の反応母液を撹拌しながら83℃で保温した。
【0077】弗化アンモニウム水溶液(8mol/L)322mlを反応母液中にローラーポンプを用いて注入し、沈澱物を生成させた。注入終了後も保温と撹拌を2時間続けて沈澱物の熟成を行なった。次に沈澱物をろ別後、エタノールにより洗浄した後、真空乾燥させてユーロピウム付活弗化ヨウ化バリウムの結晶を得た。
【0078】焼成時の焼結により粒子形状の変化、粒子間融着による粒子サイズ分布の変化を防止するために、アルミナの超微粒子粉体を0.2質量%添加し、ミキサで充分撹拌して、結晶表面にアルミナの超微粒子粉体を均一に付着させた。これを石英ボートに充填して、チューブ炉を用いて水素ガス雰囲気中、870℃で2時間焼成してユーロピウム付活弗化ヨウ化バリウム蛍光体粒子を得た。次に上記蛍光体粒子を分級することにより平均粒径4μmの粒子を得た。
【0079】蛍光体Aの平均アスペクト比は3.2であった。
《蛍光体Bの合成》蛍光体Aの合成において、EuI3水溶液濃度を0.2mol/Lとした以外は同条件で作製し、蛍光体Bを得た。平均粒子径は4μmであった。
【0080】蛍光体Bの平均アスペクト比は5.0であった。
《蛍光体Cの合成》上記で得られた蛍光体Aを再度石英ボートに充填して、チューブ炉を用いて水素ガス雰囲気中、870℃で2時間焼成してユーロピウム付活弗化ヨウ化バリウム蛍光体粒子を得た。次に上記蛍光体粒子を分級することにより平均粒径7μmの粒子を得た。
【0081】蛍光体Cの平均アスペクト比は2.1であった。
《輝尽性蛍光体シートの作製》蛍光体層形成材料として、上記で得たユーロピウム付活弗化ヨウ化バリウム蛍光体を表1に示すような混合比で混合して、427g分に調製し、ポリウレタン樹脂(住友バイエルウレタン社製、デスモラック4125)15.8g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂2.0gをメチルエチルケトン−トルエン(1:1)混合溶媒に添加し、プロペラミキサによって分散し、粘度25〜30Pa・sの塗布液を調製した。
【0082】上記塗布液をドクターブレードを用いて厚さ250μmの酸化チタン含有白色ポリエチレンテレフタレート支持体上に、乾燥膜厚250μmになるように蛍光体層を形成し、表1に記載の輝尽性蛍光体シート試料No.1〜8を得た。
【0083】得られた各々の輝尽性蛍光体シートについて下記に記載の評価を行った。
《輝度の評価》各放射線画像変換パネルに管電圧80kVpのX線を照射した後、パネルを200mWの半導体レーザー(780nm)で走査して励起し、蛍光体層から放射される輝尽発光を光電子増倍管(浜松ホトニクス社製光電子増倍管R1305)を用いて受光し、その強度については、試料1を100とした相対値で表した。
【0084】《鮮鋭性評価》鮮鋭性(鮮鋭度ともいう)については、放射線画像変換パネルに鉛製のMTFチャートを通して管電圧80kVpのX線を照射した後パネルHe−Neレーザー光で操作して励起し、蛍光体層から放射される輝尽発光を受光器(分光感度S−5の光電子像倍管)で受光して電気信号に変換し、これをアナログ/デジタル変換してハードディスクに記録し、記録をコンピューターで分析してハードディスクに記録されているX線像の変調伝達関数(MTF)を調べた。空間周波数1Hz/mmにおけるMTF値(%)を示した。この場合MTF値が高いほど鮮鋭性がよい。
【0085】
【表1】


【0086】表1から、比較に比べて本発明の試料は高輝度、高鮮鋭度(高鮮鋭性)を示し、且つ、輝度、鮮鋭度のバランスが高いことが明らかである。
【0087】実施例2《積層の輝尽性蛍光体層を有する蛍光体シートの作製》実施例1に記載の輝尽性蛍光体シートの作製に用いた塗布液の調製時に、表2の下層作製に用いる輝尽性蛍光体に代えた以外は、同様にして下層作製用塗布液を調製し、輝尽性蛍光体層下層を乾燥膜厚100μmになるように黒PET上に塗設し、輝尽性蛍光体層下層を作製した。
【0088】得られた輝尽性蛍光体層下層の上に、上記下層の塗布液の調製時に、表2に記載の上層作製に用いる輝尽性蛍光体に代えた以外は、同様にして上層作製用塗布液を調製し、乾燥膜厚150μmになるように輝尽性蛍光体層上層を塗設し、合計の乾燥膜厚が250μmの輝尽性蛍光体層を有する蛍光体シート試料No.9〜14を作製した。
【0089】得られた輝尽性蛍光体シートについては、実施例1に記載と同様の方法を用いて評価した。得られた結果を表2に示す。
【0090】
【表2】


【0091】表2から、比較に比べて本発明の試料は高輝度、高鮮鋭度(高鮮鋭性)を示し、且つ、輝度、鮮鋭度のバランスが高いことが明らかである。
【0092】
【発明の効果】本発明により、輝度、鮮鋭度(鮮鋭性ともいう)のバランスが高い放射線画像変換パネルを提供することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の放射線画像変換パネルの断面図である。
【符号の説明】
11 蛍光体
12 支持体
13 積層保護フィルム
14 アルミラミネートフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】 支持体上に輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルにおいて、該輝尽性蛍光体層が、平均アスペクト比aが1以上4以下の輝尽性蛍光体Aと平均アスペクト比bが2以上10以下の輝尽性蛍光体Bを含有し、且つ、該平均アスペクト比aと該平均アスペクト比bの差が下記式(1)で表されることを特徴とする放射線画像変換パネル。
式(1)
0.2≦|平均アスペクト比a−平均アスペクト比b|≦9
【請求項2】 輝尽性蛍光体Aと輝尽性蛍光体Bの各々の量が、全輝尽性蛍光体の10質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像変換パネル。
【請求項3】 支持体上に少なくとも2層の輝尽性蛍光体層1、2を積層している放射線画像変換パネルにおいて、該輝尽性蛍光体層1が、平均アスペクト比aが1以上4以下の輝尽性蛍光体Aを含有し、且つ、該輝尽性蛍光体層2が、平均アスペクト比bが2以上10以下の輝尽性蛍光体Bを含有し、該平均アスペクト比bが該平均アスペクト比aよりも大きく、前記平均アスペクト比bと前記平均アスペクト比aとの差が下記式(2)を満たし、且つ、前記輝尽性蛍光体層2は前記輝尽性蛍光体層1よりも該支持体に近くなるように配置されることを特徴とする放射線画像変換パネル。
式(2)
0.2≦平均アスペクト比b−平均アスペクト比a≦9
【請求項4】 輝尽性蛍光体Aと輝尽性蛍光体Bの各々の量が、全輝尽性蛍光体の10質量%以上であることを特徴とする請求項3に記載の放射線画像変換パネル。
【請求項5】 輝尽性蛍光体がEu付活BaFIであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネル。
【請求項6】 支持体上に輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルの製造方法において、該輝尽性蛍光体層が、平均アスペクト比aが1以上4以下の輝尽性蛍光体Aと平均アスペクト比bが2以上10以下の輝尽性蛍光体Bを含有し、且つ、該平均アスペクト比aと該平均アスペクト比bの差が前記式(1)を満たすように調製された塗布液を用いて前記支持体上に塗設されることを特徴とする放射線画像変換パネルの製造方法。
【請求項7】 塗布液中の輝尽性蛍光体Aと輝尽性蛍光体Bの各々の量が、全輝尽性蛍光体の10質量%以上であることを特徴とする請求項6に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【請求項8】 支持体上に少なくとも2層の輝尽性蛍光体層1、2を積層している放射線画像変換パネルの製造方法において、該輝尽性蛍光体層1が、平均アスペクト比aが1以上4以下の輝尽性蛍光体Aを含有する塗布液A、該輝尽性蛍光体層2が、平均アスペクト比bが2以上10以下の輝尽性蛍光体Bを含有する塗布液Bを用いて各々、塗設され、前記平均アスペクト比bと前記平均アスペクト比aとの差が前記式(2)を満たし、且つ、前記輝尽性蛍光体層2は前記輝尽性蛍光体層1よりも該支持体に近くなるように配置されることを特徴とする放射線画像変換パネルの製造方法。
【請求項9】 塗布液A中の輝尽性蛍光体Aと塗布液B中の輝尽性蛍光体Bの各々の量が、全輝尽性蛍光体の10質量%以上であることを特徴とする請求項8に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【請求項10】 輝尽性蛍光体がEu付活BaFIであることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2002−250798(P2002−250798A)
【公開日】平成14年9月6日(2002.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−50107(P2001−50107)
【出願日】平成13年2月26日(2001.2.26)
【出願人】(000001270)コニカ株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】