説明

放射線画像撮影方法および装置

【課題】造影剤が注入される生体に連続的に放射線を照射することによって複数フレームの放射線画像の撮影を行う場合において、一連の撮影全体を通して適切な放射線の線量に設定し、画質の良好な放射線画像を撮影する。
【解決手段】造影剤が注入される生体への放射線の連続的な照射による放射線撮影によって放射線画像検出器12により検出されたフレーム毎の放射線画像信号を取得し、その取得したフレーム毎の放射線画像信号または生体を透過した放射線を検出する放射線検出器から出力された検出信号に基づいて放射線の線量を制御する場合において、フレーム毎の放射線画像信号のうち、造影剤の像を表す画像信号が含まれているフレームを造影剤フレームとして特定し、その造影剤フレームが撮影されている間は、放射線の線量を一定に維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造影剤が注入される生体または人工物が含まれる生体に連続的に放射線を照射することによって複数フレームの放射線画像の撮影を行うとともに、生体を透過した放射線の検出信号に基づいて各フレームの撮影における放射線の線量を制御する放射線画像撮影方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、患者に対して放射線の照射範囲を固定した状態で連続的に放射線を照射して複数フレームの放射線画像を撮影し、その撮影した複数フレームの放射線画像を順次表示することによって患者の透視画像(動画)を表示する放射線画像撮影装置が提案されている。
【0003】
また、上記のように患者に対して放射線の照射範囲を固定して透視画像の撮影および表示を行うものだけでなく、患者に対して放射線の照射範囲を相対的に移動させながら連続的に放射線を照射し、その放射線の照射によって撮影された複数フレームの放射線画像を透視画像として表示する放射線画像撮影装置も提案されている。
【0004】
そして、上記のように連続的な放射線の照射によって複数フレームの放射線画像の撮影を行う装置においては、各フレームの放射線画像の濃度が一定となるように、たとえばフォトタイマなどを用いたAEC(Automatic Exposure control)が行われている(たとえば特許文献1など)。
【0005】
また、特許文献2においては、各フレームの放射線画像の濃度が一定となるように、前のフレームの画像信号に基づいて次のフレームの放射線撮影における放射線の線量を決定することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−81999号公報
【特許文献2】特開2010−273834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、上記のような透視画像の撮影を行う際、たとえば血管などに造影剤を注入し、その血管の造影剤画像を撮影する場合や、人工骨などの人工物が埋め込まれた患者の透視画像を撮影する場合が考えられるが、このような場合にも上述したようなフォトタイマによるAECや、前のフレームの画像信号に基づく放射線の線量制御を行ったのでは、フォトタイマや放射線画像検出器に放射線が到達する前に上述した造影剤や人工物によって放射線が吸収されることになるので、このような造影剤や人工物による放射線の吸収が反映された検出信号に基づいて放射線の線量を制御したのでは、造影剤や人工物の有無や量などで放射線画像の濃度にバラツキが発生する問題がある。
【0008】
また、また、たとえば、透視画像の撮影において造影剤が注入された場合、造影剤は一箇所に留まることなく患者の血管などを流れることになるので、透視画像の撮影による全てのフレームに造影剤の像が写り込むわけでなく、一部のフレームのみに造影剤が写り込むことになるので、その点も考慮して透視画像の撮影全体を通して適切な放射線の線量を設定する必要がある。
【0009】
同様に、人工物が埋め込まれた患者に対して放射線の照射範囲を移動させながら透視画像の撮影を行った場合にも、透視画像の撮影による全てのフレームに人工物の像が写り込むわけでなく、一部のフレームのみに人工物が写り込むことになるので、その点も考慮して透視画像の撮影全体を通して適切な放射線の線量を設定する必要がある。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑み、造影剤が注入される生体や人工物を含む生体を連続的に放射線撮影する場合においても、一連の撮影全体を通して適切な放射線の線量に設定することができ、濃度変化を抑え確認しやすい放射線画像を撮影することができる放射線画像撮影方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の放射線画像撮影装置は、造影剤が注入される生体に対して放射線を連続的に照射する放射線源と、連続的な放射線の照射による放射線撮影によって放射線画像検出器により検出されたフレーム毎の放射線画像信号を取得する放射線画像取得部と、放射線画像取得部によって取得されたフレーム毎の放射線画像信号または生体を透過した放射線を検出する放射線検出器から出力された検出信号に基づいて、放射線源によって照射される放射線の線量を制御する放射線源制御部とを備えた放射線画像撮影装置において、フレーム毎の放射線画像信号のうち、造影剤の像を表す画像信号が含まれているフレームを造影剤フレームとして特定する造影剤フレーム特定部を備え、放射線源制御部が、造影剤フレームが撮影されている間は、放射線源によって照射される放射線の線量を一定に維持するものであることを特徴とする。
【0012】
また、上記本発明の放射線画像撮影装置においては、放射線源制御部を、造影剤フレームが撮影されている間の放射線の線量を、造影剤フレームが撮影される前の所定のフレームが撮影された際の放射線の線量とするものとできる。
【0013】
また、放射線源制御部を、造影剤フレームが撮影されている間の放射線の線量を、造影剤フレームの直前のフレームが撮影された際の放射線の線量とするものとできる。
【0014】
また、造影剤フレーム特定部を、造影剤を生体に注入する造影剤注入装置からの造影剤の注入開始タイミングおよび注入終了タイミングに基づいて、造影剤フレームを特定するものとできる。
【0015】
また、造影剤フレーム特定部を、連続的な放射線撮影によって検出された複数のフレームの放射線画像信号のうちの所定のフレーム間の放射線画像信号に基づく差分情報に基づいて、造影剤フレームを特定するものとできる。
【0016】
また、造影剤フレーム特定部を、放射線源と被写体との間に設けられた放射線量検出部から出力された放射線の線量情報を取得し、その取得した線量情報と連続的な放射線撮影によって検出された複数のフレームの放射線画像信号とに基づいて、造影剤フレームを特定するものとできる。
【0017】
本発明の放射線画像撮影装置は、人工物が含まれる生体に対して放射線の照射範囲を相対的に移動させながら放射線を連続的に照射する放射線源と、連続的な放射線の照射による放射線撮影によって放射線画像検出器により検出されたフレーム毎の放射線画像信号を取得する放射線画像取得部と、放射線画像取得部によって取得されたフレーム毎の放射線画像信号または生体を透過した放射線を検出する放射線検出器から出力された検出信号に基づいて、放射線源によって照射される放射線の線量を制御する放射線源制御部とを備えた放射線画像撮影装置において、フレーム毎の放射線画像信号のうち、人工物の像を表す画像信号が含まれているフレームを人工物フレームとして特定する人工物フレーム特定部を備え、放射線源制御部が、人工物フレームが撮影されている間は、放射線源によって照射される放射線の線量を一定に維持するものであることを特徴とする。
【0018】
また、上記本発明の放射線画像撮影装置においては、放射線源制御部を、人工物フレームが撮影されている間の放射線の線量を、人工物フレームが撮影される前の所定のフレームが撮影された際の放射線の線量とするものとできる。
【0019】
また、放射線源制御部を、人工物フレームが撮影されている間の放射線の線量を、人工物フレームの直前のフレームが撮影された際の放射線の線量とするものとできる。
【0020】
また、人工物フレーム特定部を、生体と放射線画像検出器との間に設けられた放射線量検出部によって検出された放射線の線量情報に基づいて、人工物フレームを特定するものとできる。
【0021】
本発明の放射線画像撮影方法は、造影剤が注入される生体への放射線の連続的な照射による放射線撮影によって放射線画像検出器により検出されたフレーム毎の放射線画像信号を取得し、その取得したフレーム毎の放射線画像信号または生体を透過した放射線を検出する放射線検出器から出力された検出信号に基づいて、放射線の線量を制御する放射線画像撮影方法において、フレーム毎の放射線画像信号のうち、造影剤の像を表す画像信号が含まれているフレームを造影剤フレームとして特定し、その造影剤フレームが撮影されている間は、放射線の線量を一定に維持することを特徴とする。
【0022】
本発明の放射線画像撮影方法は、人工物が含まれる生体に対して放射線の照射範囲を相対的に移動させて人体を連続的に放射線撮影することによって放射線画像検出器により検出されたフレーム毎の放射線画像信号を取得し、その取得したフレーム毎の放射線画像信号または生体を透過した放射線を検出する放射線検出器から出力された検出信号に基づいて、放射線の線量を制御する放射線画像撮影方法において、フレーム毎の放射線画像信号のうち、人工物の像を表す画像信号が含まれているフレームを人工物フレームとして特定し、人工物フレームが撮影されている間は、放射線の線量を一定に維持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の放射線画像撮影方法および装置によれば、造影剤が注入される生体への放射線の連続的な照射による放射線撮影によって放射線画像検出器により検出されたフレーム毎の放射線画像信号を取得し、その取得したフレーム毎の放射線画像信号または生体を透過した放射線を検出する放射線検出器から出力された検出信号に基づいて放射線の線量を制御する場合において、フレーム毎の放射線画像信号のうち、造影剤の像を表す画像信号が含まれているフレームを造影剤フレームとして特定し、その造影剤フレームが撮影されている間は、放射線の線量を一定に維持するようにしたので、一連の撮影全体を通して適切な放射線の線量に設定することができ、濃度変化を抑えた確認しやすい放射線画像を撮影することができる。
【0024】
また、上記本発明の放射線画像撮影方法および装置において、造影剤フレームが撮影されている間の放射線の線量を、造影剤フレームが撮影される前の所定のフレームが撮影された際の放射線の線量とした場合には、造影剤による放射線の吸収によって放射線の線量が本来よりも大きな値に設定されるのを防止することができ、これにより患者の被曝量が増える懸念を解決することができる。
【0025】
また、造影剤フレームが撮影されている間の放射線の線量を、造影剤フレームの直前のフレームが撮影された際の放射線の線量とした場合には、上述したような患者の被曝量が増える懸念を解決することができるとともに、かつ放射線画像の濃度変動をより抑制することができ、より確認しやすい放射線画像を撮影することができる。
【0026】
また、造影剤を生体に注入する造影剤注入装置からの造影剤の注入開始タイミングおよび注入終了タイミングに基づいて、造影剤フレームを特定するようにした場合には、簡易なハードウェアの構成によってリアルタイムに造影剤フレームを特定することができ、放射線の線量もリアルタイムに制御することができる。
【0027】
また、連続的な放射線撮影によって検出された複数のフレームの放射線画像信号のうちの所定のフレーム間の放射線画像信号に基づく差分情報に基づいて、造影剤フレームを特定するようにしたり、放射線源と被写体との間に設けられた放射線量検出部から出力された放射線の線量情報を取得し、その取得した線量情報と連続的な放射線撮影によって検出された複数のフレームの放射線画像信号とに基づいて、造影剤フレームを特定するようにした場合には、簡易な演算および構成によって造影剤フレームを特定することができる。
【0028】
本発明の放射線画像撮影方法および装置によれば、人工物が含まれる生体に対して放射線の照射範囲を相対的に移動させて人体を連続的に放射線撮影することによって放射線画像検出器により検出されたフレーム毎の放射線画像信号を取得し、その取得したフレーム毎の放射線画像信号または生体を透過した放射線を検出する放射線検出器から出力された検出信号に基づいて放射線の線量を制御する場合において、フレーム毎の放射線画像信号のうち、人工物の像を表す画像信号が含まれているフレームを人工物フレームとして特定し、人工物フレームが撮影されている間は、放射線の線量を一定に維持するようにしたので、一連の撮影全体を通して適切な放射線の線量に設定することができ、濃度変化を抑えた確認しやすい放射線画像を撮影することができる。
【0029】
また、上記本発明の放射線画像撮影方法および装置において、人工物フレームが撮影されている間の放射線の線量を、人工物フレームが撮影される前の所定のフレームが撮影された際の放射線の線量とした場合には、人工物による放射線の吸収によって放射線の線量が本来よりも大きな値に設定されるのを防止することができ、これにより患者の被曝量が増える懸念を解決することができる。
【0030】
また、人工物フレームが撮影されている間の放射線の線量を、人工物フレームの直前のフレームが撮影された際の放射線の線量とした場合には、上述したような患者の被曝量が増える懸念を解決することができるとともに、かつ放射線画像の濃度変動をより抑制することができ、より確認しやすい放射線画像を撮影することができる。
【0031】
また、生体と放射線画像検出器との間に設けられた放射線量検出部によって検出された放射線の線量情報に基づいて、人工物フレームを特定するようにした場合には、簡易なハードウェアの構成によってリアルタイムに人工物フレームを特定することができ、放射線の線量もリアルタイムに制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の放射線被曝量取得装置の第1の実施形態を用いた放射線画像撮影システム全体の概略構成を示すブロック図
【図2】第1の実施形態の放射線画像撮影システムにおける放射線画像撮影装置の概略構成を示す図
【図3】造影剤注入装置の具体的な構成の一例を示す図
【図4】本発明の放射線被曝量取得装置の第1の実施形態を用いた放射線画像撮影システムにおける透視画像の撮影および表示の流れを説明するためのフローチャート
【図5】放射線の照射タイミングと放射線画像検出器における電荷蓄積タイミングと造影剤の検出信号との関係を示すタイミングチャートを示す図
【図6】第1の実施形態の放射線画像撮影装置における各フレームの放射線の照射線量の制御方法を説明するためのフローチャート
【図7】本発明の放射線被曝量取得装置の第1の実施形態を用いた放射線画像撮影システムの変形例の概略構成を示すブロック図
【図8】所定のフレーム間の濃度ヒストグラムの差分情報に基づいて造影剤フレームを特定する方法を説明するための図
【図9】造影剤注入開始フレームと造影剤注入終了フレームの一例を説明するための図
【図10】所定のフレーム間の対応する画素値の差分情報に基づいて造影剤フレームを特定する方法を説明するための図
【図11】放射線源と患者との間に設けられた放射線量検出部を説明するための図
【図12】放射線量検出部によって検出された放射線の線量の時間変動と、放射線画像検出器によって検出された放射線画像信号の時間変動とに基づいて造影剤フレームを特定する方法を説明するための図
【図13】本発明の放射線被曝量取得装置の第2の実施形態を用いた放射線画像撮影システム全体の概略構成を示すブロック図
【図14】第2の実施形態の放射線画像撮影システムにおける放射線画像撮影装置の概略構成を示す図
【図15】第1および第2の線量計測センサが設けられた放射線画像検出器の一例を示す図
【図16】本発明の放射線被曝量取得装置の第2の実施形態を用いた放射線画像撮影システムにおける透視画像の撮影および表示の流れを説明するためのフローチャート
【図17】第1および第2の線量計測センサによって検出された放射線量の時間変動の一例を示す図
【図18】第2の実施形態の放射線画像撮影装置における各フレームの放射線の照射線量の制御方法を説明するためのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して本発明の放射線画像撮影装置の第1の実施形態を用いた放射線画像撮影システムの一実施形態について説明する。図1は、本実施形態の放射線画像撮影システム全体の概略構成を示すブロック図である。
【0034】
本実施形態の放射線画像撮影システムは、図1に示すように、患者の透視画像(動画)を撮影する放射線画像撮影装置10と、放射線画像撮影装置10によって撮影された透視画像を表示する放射線画像表示装置20と、患者の血管やリンパ管などに対して造影剤を注入する造影剤注入装置30と、放射線画像撮影システム全体の制御を行うシステム制御装置40とを備えている。
【0035】
放射線画像撮影装置10は、図1に示すように、X線管球や絞りなどを備え、X線管球から射出されて絞りを透過した放射線を患者に照射する放射線源11と、患者を透過した放射線を検出して患者の放射線画像を表す放射線画像信号を出力する放射線画像検出器12と、放射線画像検出器12から出力された放射線画像信号を記憶する放射線画像記憶部13と、放射線画像撮影装置10全体を制御する制御部14と、放射線画像記憶部13に記憶された各フレームの放射線画像信号のうち、造影剤の像の画像信号が含まれるフレームを造影剤フレームとして特定する造影剤フレーム特定部15とを備えている。
【0036】
より具体的には、本実施形態の放射線画像撮影装置10は、図2に示すように構成されており、造影剤が注入される患者Hが撮影台16上に設置され、患者Hに対して放射線源11とその放射線源11に対向して設けられた放射線画像検出器12とが所定位置に固定でされた状態で、患者Hの体内の血管などに流れる造影剤を透視画像として撮影するものである。
【0037】
放射線画像検出器12は、放射線画像の記録と読出しを繰り返して行うことができるものであり、放射線の照射を直接受けて電荷を発生して蓄積することによって放射線画像の記録が行われる、いわゆる直接型の放射線画像検出器を用いてもよいし、放射線を一旦可視光に変換し、その可視光を電荷に変換して蓄積することによって放射線画像の記録が行われる、いわゆる間接型の放射線画像検出器を用いるようにしてもよい。また、上述したようにして電荷を蓄積することによって記録された放射線画像の読出方式としては、TFT(thin film transistor)スイッチがオン・オフされることによって放射線画像信号が読みだされる、いわゆるTFT読出方式のものや、読取光を照射することによって放射線画像信号が読み出される、いわゆる光読出方式のものを用いることができるが、これに限らずその他のものを用いるようにしてもよい。
【0038】
そして、本実施形態の放射線画像撮影装置10は、上述したように造影剤注入装置30によって造影剤が注入される患者の透視画像(動画)の撮影を行うものであり、制御部14は、この透視画像の撮影が行われるように放射線源11と放射線画像検出器12とを制御するものである。具体的には、制御部14は、所定のフレームレートで放射線源11から放射線を照射させるとともに、その放射線の照射によって放射線画像の記録と読出しが行われるように放射線画像検出器12を制御するものである。そして、放射線画像検出器12から出力されたフレーム毎の放射線画像信号を放射線画像記憶部13に順次記憶するものである。さらに、本実施形態の制御部14は、フレーム毎の放射線画像信号を放射線画像記憶部13に記憶する際、その各フレームの放射線画像信号が造影剤フレームの放射線画像信号であるか否かの情報を付加するものであるが、その作用については後で詳述する。
【0039】
また、制御部14は、放射線源11によって患者に向かって照射される放射線の照射線量を制御する放射線源制御部14aを備えている。放射線源制御部14aは、放射線画像記憶部13から読み出された各フレームの放射線画像信号に基づいて、各フレームの撮影の際の放射線の照射線量を制御するものである。そして、さらに放射線源制御部14aは、放射線画像記憶部13から読み出された放射線画像信号が、造影剤フレーム特定部15において造影剤フレームの放射線画像信号であると特定された場合には、すなわち、造影剤フレームの撮影中の間は、放射線源11によって照射される放射線の照射線量を一定に維持するものである。なお、放射線源制御部14aの作用については、後で詳述する。
【0040】
造影剤フレーム特定部15は、放射線画像記憶部13から読み出された放射線画像信号に対して造影剤フレームであることを示す情報が付加されているか否かを判定することによって造影剤フレームを特定し、その特定情報を放射線源制御部14aに出力するものである。
【0041】
なお、放射線画像撮影装置10の構成としては、図2に示すような患者を臥位状態で撮影する構成に限らず、患者を立位状態で撮影する構成でもよいし、また、患者を立位状態および臥位状態との両方で撮影可能な構成でもよい。
【0042】
放射線画像表示装置20は、放射線画像撮影装置10の放射線画像記憶部13から読み出されたフレーム毎の放射線画像信号に対して所定の処理を施して表示制御信号を生成し、その表示制御信号に基づいてモニタに患者の透視画像を表示させるものである。
【0043】
造影剤注入装置30は、使用者による指示入力に基づいて、もしくは予め設定された造影剤注入開始タイミングに基づいて造影剤を患者の血管内などに自動的に注入するものである。具体的には、たとえば注射器などから構成され、造影剤を患者の血管内などに注入する造影剤注入部31と、造影剤注入部31の造影剤注入動作を駆動する注入駆動部32と、注入駆動部32の動作などを制御する制御部33と、造影剤注入装置30から患者の血管内などへ造影剤が注入中であるか否かを検出する造影剤注入検出センサ部34とを備えている。
【0044】
造影剤注入部31としては、たとえば、図3に示すようなシリンジ31aと、シリンジ10内に設けられているピストン31bとを備えたものを用いることができる。
【0045】
注入駆動部32は、ピストン31bに接続されるプランジャ32aと、プランジャ32aに接続されるボールスクリュー32bと、ボールスクリュー32bを回転させるモータ32cと、プランジャ32aの位置を検出するためのポテンションメータ32dとを備えている。
【0046】
そして、後述する入力部60において造影剤注入指示が入力されるとシステム制御装置60から造影剤注入装置30の制御部33に制御信号が出力され、制御部33は、入力された制御信号に応じてモータ32cに対して駆動電圧を出力する。モータ32cの回転はボールスクリュー32bに伝達され、このボールスクリュー32bの回転によってプランジャ32aがシリンジ31aの長手方向に移動し、これによりピストン31bが移動するように構成されている。そして、ポテンションメータ32dから制御部33にプランジャ位置信号が出力され、制御部33は、このフィードバックされた信号に応じてモータ32cの回転を制御する。
【0047】
造影剤注入検出センサ部34は、造影剤注入部31から造影剤が吐出されたことを検出するものである。具体的には、たとえば、入力部60において造影剤注入開始指示の入力がスイッチのON/OFF情報として受け付けられる場合には、そのON情報を検出することによって造影剤が吐出されていることを検出するとともに、OFF情報を検出することによって造影剤が吐出されていないことを検出するものである。
【0048】
また、上述したスイッチをONしている間に造影剤を吐出し、スイッチをOFFしている間に造影剤を吐出しないように制御する場合には、スイッチがOFFからONに切り替わったタイミングを造影剤の吐出開始タイミングとして検出し、スイッチがONの間を造影剤の吐出中として検出し、スイッチがONからOFFに切り替わったタイミングを造影剤の吐出終了タイミングとして検出するようにしてもよい。
【0049】
また、造影剤注入検出センサ部34によってモータ32cへ入力される駆動電力を検出し、その駆動電力が一定値以上であることを検出することによって造影剤吐出中であることを検出するようにしてもよい。
【0050】
また、造影剤注入検出センサ部34によってポテンションメータ32dから出力されたプランジャ位置信号の時間変化を算出し、プランジャ32aの位置の時間変化量が一定値以上であることを検出することによって造影剤吐出中であることを検出するようにしてもよい。
【0051】
そして、造影剤注入検出センサ部34は、その造影剤検出信号を放射線画像撮影装置10の制御部14に出力するものである。
【0052】
システム制御装置40は、上述した放射線画像撮影装置10、放射線画像表示装置20、および造影剤注入装置30に制御信号を出力してこれらの動作を制御するとともに、これらの装置間の信号の入出力の制御を行うものである。
【0053】
また、システム制御装置40には入力部50が設けられており、この入力部50は、使用者による所定の指示入力や、撮影条件や患者のID情報などの入力を受け付けるものである。また、入力部50は撮影スイッチ51を備えている。この撮影スイッチ51は、使用者による放射線撮影の開始指示および撮影継続指示の入力を受け付けるものであり、この撮影スイッチ51が使用者によって押下(ON)されることによって撮影開始指示が入力され、撮影スイッチ51が押し続けられることによって撮影継続指示が入力される。そして、撮影スイッチ51が解放(OFF)されることによって撮影終了指示が入力されることになる。入力部50において受け付けられた入力情報は、システム制御装置40によって必要に応じて各装置に出力される。
【0054】
次に、本実施形態の放射線画像撮影システムの作用について、図4に示すフローチャートを参照しながら説明する。ここでは、まず本実施形態の放射線画像撮影システムにおける透視画像の撮影および表示の流れについて説明する。
【0055】
まず、放射線画像撮影装置10に設けられた撮影台などの上に被写体である患者が設置され、患者のポジショニングが行われる(S10)。
【0056】
次に、使用者によって入力部50を用いて撮影対象の患者のID情報と撮影条件とが入力され、制御部14に設定される(S12)。なお、本実施形態においては、撮影条件として、撮影部位または撮影手技の情報や、透視画像の撮影のフレームレートなどが入力されるものとする。そして、制御部14の放射線源制御部14aには、撮影部位または撮影手技の情報と、放射線照射条件とを対応付けたテーブルが予め設定されており、放射線源制御部14aは、入力された撮影部位または撮影手技の情報に基づいて放射線照射条件の初期値を取得して設定する。なお、ここでいう放射線照射条件とは、管電圧、管電流、照射の周波数、1フレームの撮影における放射線の照射期間と非照射期間のDutyなどのことをいう。
【0057】
次に、使用者によって撮影スイッチ51が押下(ON)されて患者の透視画像の撮影の開始指示が入力され、この入力に応じてシステム制御装置40から放射線画像撮影装置10に対して透視画像の撮影を行うよう制御信号が出力され、放射線画像撮影装置10は、入力された制御信号に応じて透視画像の撮影を開始する(S14)。
【0058】
具体的には、入力された撮影条件に基づいて放射線源11のX線管球が制御され、所定の線量の放射線が所定のフレームレートで間欠的に患者に向けて照射される。
【0059】
そして、患者を透過した放射線は放射線画像検出器12に照射され、放射線画像検出器12において光電変換されて電荷信号として蓄積される。
【0060】
そして、各フレームの放射線の照射が終了する毎に、放射線画像検出器12に蓄積された電荷信号は制御部14によって読み出され、A/D変換器(図示省略)によってデジタル信号に変換された後、放射線画像記憶部13に記憶される。
【0061】
図5は、放射線源11のX線管球からの放射線の照射タイミングと放射線画像検出器12における電荷蓄積タイミングとを示すタイミングチャートである。なお、放射線画像検出器12の電荷の蓄積が行われていない期間(蓄積OFFの期間)は、放射線画像検出器12からの電荷信号の読出期間である。
【0062】
上記のようにしてX線管球による放射線の照射と放射線画像検出器12における放射線画像の記録および読出しとが所定のフレームレートで繰り返して行われることによって、放射線画像記憶部13にフレーム毎の放射線画像信号が順次記憶される。
【0063】
なお、上述した各フレームの放射線画像の撮影において放射線源11により照射される放射線の線量制御については、後で詳述する。
【0064】
そして、放射線画像記憶部13に記憶されたフレーム毎の放射線画像信号は順次読み出されて放射線画像表示装置20に出力される。放射線画像表示装置20は、入力されたフレーム毎の放射線画像信号に基づいて表示制御信号を順次生成し、その表示制御信号をモニタに順次出力して患者の透視画像を動画としてモニタに表示させる(S16)。
【0065】
ここで、上述したように透視画像の撮影および表示を行っている間において、使用者が血管などの造影剤画像を観察したいと考えた場合には、入力部50を用いて造影剤注入指示が入力される(S18)。
【0066】
入力部50において造影剤注入指示が入力されると、システム制御装置40から造影剤注入装置30に制御信号が出力される。造影剤注入装置30は、入力された制御信号に基づいて造影剤の注入を開始する。具体的には、注入駆動部32によって造影剤注入部31が駆動されて造影剤注入部31から所定量の造影剤が吐出される。
【0067】
そして、このとき造影剤注入装置30に設けられた造影剤注入検出センサ部34によって造影剤が吐出されたことが検出され、その検出信号は放射線画像撮影装置10の制御部14に出力される(S20)。放射線画像撮影装置10の制御部14は、上記造影剤検出信号が入力されると、その造影剤検出信号が入力されている間に撮影されたフレームの放射線画像信号に対して、造影剤の像を表す画像信号を含むものであることを示す情報(以下、造影剤フレーム情報という)をヘッダー情報として付加し、その放射線画像信号を造影剤フレーム情報とともに放射線画像記憶部13に記憶する(S22)。より具体的には、たとえば、図5に示すようなタイミングで造影剤検出信号が放射線画像撮影装置10に入力された場合には、造影剤注入中に撮影されたフレームF1とフレームF2の放射線画像信号に対して造影剤フレーム情報が付加されて放射線画像記憶部13に記憶される。
【0068】
そして、造影剤注入中に撮影された放射線画像信号についても放射線画像記憶部13から読み出されて放射線画像表示装置20に順次出力され、放射線画像表示装置20は、入力された放射線画像信号に基づいて表示制御信号を順次生成し、その表示制御信号に基づいてモニタに造影剤画像を含む放射線画像を表示する。
【0069】
次いで、造影剤注入装置30から所定量の造影剤の吐出が終了し、造影剤注入検出センサ部34において造影剤検出信号が検出されなくなった後は、撮影された放射線画像信号に対して造影剤フレーム情報が付加されることなく放射線画像記憶部13に記憶され、上記と同様にして放射線画像記憶部13からフレーム毎の放射線画像信号が読み出され、放射線画像表示装置20において透視画像が表示される。
【0070】
そして、使用者によって撮影スイッチ51が解放(OFF)されて透視画像の撮影終了指示が入力されると、システム制御装置40は、透視画像の撮影を終了するように放射線画像撮影装置10に制御信号を出力し、放射線画像撮影装置10は、入力された制御信号に応じて透視画像の撮影を終了する(S26)。
【0071】
以上が、本実施形態の放射線画像撮影システムにおける透視画像の撮影および表示の流れである。
【0072】
次に、上述したような各フレームの放射線撮影における放射線の照射線量の制御について、図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、ここでいう放射線の照射線量とは単位時間あたりの照射線量のことをいうものとする。また、各フレームの放射線撮影における放射線の照射線量は、放射線源制御部14aによって上述した放射線照射条件を変更することによって行われるものとする。
【0073】
まず、最初のフレームの放射線撮影の際における放射線の照射線量は、上述したS12において入力された初期値に設定される(S30)。
【0074】
そして、最初のフレームの撮影の際には、放射線源制御部14aに制御によって上記初期値の放射線の線量が放射線源11から射出されて患者に照射される(S32)。患者を透過した放射線は放射線画像検出器12に照射され、放射線画像検出器12において光電変換されて電荷信号として蓄積される(S34)。
【0075】
上述したように1フレームの放射線の照射が終了すると(S36)、放射線画像検出器12に蓄積された電荷信号は制御部14によって読み出され放射線画像信号として放射線画像記憶部13に記憶される(S38)。
【0076】
次いで、上述した1フレームの放射線画像の記録と読出しが終了した時点において、制御部14によって撮影スイッチ51が押下(ON)された状態であるか否かが確認される(S40)。
【0077】
そして、撮影スイッチ51が押下された状態である場合には、上述したようにして放射線画像記憶部13に記憶された1フレームの放射線画像信号が、造影剤フレームの放射線画像信号であるか否かが放射線源制御部14aによって確認される(S42)。
【0078】
具体的には、放射線画像記憶部13に記憶された1フレームの放射線画像信号は、造影剤フレーム特定部15に出力され、造影剤フレーム特定部15は、入力された放射線画像信号に対して上述した造影剤フレーム情報が付加されているか否かを確認する。そして、造影剤フレーム特定部15は、放射線画像信号に対して造影剤フレーム情報が付加されている場合には、その放射線画像信号は造影剤フレームの放射線画像信号であるとして、その旨を放射線源制御部14aに出力する。一方、造影剤フレーム特定部15は、放射線画像信号に対して造影剤フレーム情報が付加されていない場合には、その放射線画像信号は造影剤フレーム以外の放射線画像信号であるとして、その旨を放射線源制御部14aに出力する。
【0079】
そして、放射線源制御部14aは、現在撮影された1フレームの放射線画像信号が造影剤フレーム以外の放射線画像信号である旨が入力された場合には、その現在撮影された1フレームの放射線画像信号に基づいて、次のフレームの放射線画像の撮影の際に用いられる放射線の照射線量を決定する(S44)。なお、前フレームの放射線画像信号に基づいて次フレームの放射線の照射線量を決定する方法としては、最も簡単な方法としては放射線画像信号の大きさが大きいほど放射線の照射線量を下げる方法があるが、より具体的な方法は既に種々の方法が公知であるので、詳細な説明は省略する。
【0080】
そして、次のフレームの放射線画像の撮影の際には、放射線源制御部14aは、前のフレームの放射線画像信号に基づいて決定した放射線の照射線量が照射されるように放射線源11を制御する。そして、再びS32〜S42までが繰り返して行われる。
【0081】
一方、放射線源制御部14aは、現在撮影された1フレームの放射線画像信号が造影剤フレームの放射線画像信号である旨が入力された場合には、現在設定されている放射線の照射線量を変更することなくそのまま維持する。そして、再びS32〜S42までが繰り返して行われる。
【0082】
上記ようにして放射線の照射線量を制御することによって、透視画像の撮影開始から造影剤フレームが撮影されるまでの間は、前フレームの放射線画像信号に基づいて決定された放射線の照射線量が、次フレームの放射線画像の撮影における放射線の照射線量として設定され、造影剤フレームが撮影されている間は、その造影剤フレームが撮影され始める直前のフレームの放射線画像信号に基づいて決定された放射線の照射線量が設定されて、一定の放射線の照射線量が維持されることになる。
【0083】
そして、S40において、制御部14によって撮影スイッチ51が解放(OFF)されたことが確認された場合には、放射線源制御部14aによって放射線源11からの放射線の照射が停止され、放射線画像の撮影が終了する(S46)。
【0084】
上記第1の実施形態の放射線画像撮影システムによれば、複数のフレームの中から造影剤フレームを特定し、その造影剤フレームが撮影されている間は、放射線の線量を一定に維持するようにしたので、一連の撮影全体を通して適切な放射線の線量に設定することができ、画質の良好な放射線画像を撮影することができる。
【0085】
なお、上記実施形態の放射線画像撮影システムにおいては、造影剤注入検出センサ部34によって造影剤検出信号が検出されている間に撮影されたフレームの放射線画像信号に対して造影剤フレーム情報を付加することによって造影剤フレームを特定するようにしたが、造影剤フレームを特定する方法としてはこれに限らない。たとえば、図7に示すように、造影剤注入検出センサ部34の代わりに造影剤注入時刻取得部35を設け、この造影剤注入時刻取得部35によって造影剤の注入が開始された時刻と造影剤の注入が終了した時刻とを取得するようにする。
【0086】
なお、造影剤注入開始時刻と造影剤注入終了時刻としては、たとえば、注入駆動部32によって造影剤注入部31の駆動を開始した時刻と駆動を終了した時刻を取得するようにしてもよいし、使用者によって入力部50を用いて造影剤注入開始指示と造影剤注入終了指示とが入力されたタイミングを取得するようにしてもよい。
【0087】
そして、造影剤注入時刻取得部35によって取得された造影剤注入開始時刻および造影剤注入終了時刻と、放射線画像撮影装置10において各フレームが撮影された撮影時刻(放射線画像検出器12に放射線画像が記録された時刻)とを造影剤フレーム特定部41が取得し、造影剤注入開始時刻と造影剤注入終了時刻との間に撮影されたフレームを造影剤フレームとして特定するようにしてもよい。
【0088】
また、上記説明では、造影剤注入装置30における造影剤注入開始タイミング以降に撮影されたフレームの放射線画像信号に対して造影剤フレーム情報を付加し、その造影剤フレーム情報に基づいて造影剤フレームを特定するようにしたが、これに限らず、たとえば、造影剤が人体内で移動する時間を考慮し、造影剤フレーム情報が付加された最初のフレームから所定数のフレーム経過後のフレームから造影剤フレームとして特定するようにしてもよい。もしくは、造影剤注入開始タイミングから所定数のフレーム経過後のフレーム以降の放射線画像信号に対して造影剤フレーム情報を付加するようにしてもよい。
【0089】
また、上記説明では、造影剤注入装置30から出力された信号に基づいて造影剤フレームを特定するようにしたが、これに限らず、たとえば、造影剤フレーム特定部15において、第nフレームの放射線画像信号と第(n−1)フレームの放射線画像信号との間の差分情報を取得し、その差分情報に基づいて造影剤フレームを特定するようにしてもよい。
【0090】
具体的には、たとえば、透視画像の撮影開始から、図8に示すように、第n(nは2以上の整数)フレームの放射線画像信号の濃度ヒストグラムと第(n−1)フレームの放射線画像信号の濃度ヒストグラムを順次算出し、第nフレームの濃度ヒストグラムから第(n−1)フレームの濃度ヒストグラムを順次減算して減算ヒストグラムを算出する。そして、図8に示すように、減算ヒストグラムの各濃度値の頻度うち、予め設定された閾値を超える頻度の濃度値が現れた場合には、その第nフレームを造影剤注入開始フレームであると特定する。なお、図8に示す濃度ヒストグラムは、造影剤の像の画像信号が周囲よりも黒よりである(信号値が周囲よりも小さい)ことを前提としているが、逆に造影剤の像の画像信号が周囲よりも白よりである(信号値が周囲よりも大きい)ことを前提としてもよく、その場合には、図8に示す減算ヒストグラムは上下反転したものとなる。
【0091】
そして、この造影剤注入開始フレーム以降、後述する造影剤注入終了フレームが現れるまでのフレームは造影剤フレームと特定される。なお、造影剤注入中のフレームについては、第nフレームと第(n+1)フレームとはほぼ同じような濃度ヒストグラムとなるので、第nフレームと第(n−1)フレームとの減算ヒストグラムにおいて、予め設定された閾値を超える頻度の濃度値が現れることはない。
【0092】
そして、造影剤注入開始フレームが判定された後、再び、第nフレームと第(n−1)フレームとの減算ヒストグラムにおいて、予め設定された閾値を超える頻度の濃度値が現れた場合には、その第nフレームを造影剤注入終了フレームとし、その造影剤注入終了フレーム以降のフレームは造影剤フレームではないものとする。
【0093】
すなわち、造影剤フレーム特定部15は、最終的に、造影剤注入開始フレーム以降のフレームから造影剤注入終了フレームの一つ前のフレームまでを造影剤フレームとして特定することになる。
【0094】
図9は、フレームf1〜f10まで撮影した場合に、上述したような特定方法によって特定された造影剤注入開始フレームf3と造影剤注入終了フレームf9とを示すものである。図9に示す例では、フレームf3〜フレームf8が造影剤フレームとして特定される。
【0095】
なお、上記説明においては、第nフレームの濃度ヒストグラムからその一つ前の第(n−1)フレームの濃度ヒストグラムを減算して減算ヒストグラムを取得するようにしたが、減算する濃度ヒストグラムは必ずしも第(n−1)フレームの濃度ヒストグラムでなくてもよく、たとえば、既に造影剤フレームではないと判定済みのフレームのうちの任意の1フレームの濃度ヒストグラムを用いるようにしてもよい。もしくは、既に造影剤フレームではないと判定済みの複数フレームのうちの任意の複数フレームの平均値の濃度ヒストグラムを用いるようにしてもよい。
【0096】
また、上記のように放射線画像信号の濃度ヒストグラムを用いて造影剤フレームを特定する場合、たとえば、一連の放射線画像の撮影において放射線源11によって照射される放射線の照射線量が変動した場合、濃度ヒストグラムが濃度軸方向へオフセットをもったり、拡大または縮小されたりすることになる。そのため、濃度ヒストグラムを濃度軸方向に正規化することが望ましい。なお、その正規化の方法としては、放射線画像のサブトラクションにおける複数画像間の濃度合わせの技術とほぼ同一であり、公知な手法であるため詳細な説明は省略する。
【0097】
また、上記説明においては、各フレームの放射線画像信号の濃度ヒストグラムを用いて造影剤注入開始フレームと造影剤注入終了フレームとを特定するようにしたが、これらを特定する方法としてはこれに限らず、その他の方法を利用してもよい。以下、造影剤注入開始フレームと造影剤注入終了フレームとを特定するその他の方法について説明する。
【0098】
まず、図10に示すように、第nフレームの放射線画像信号の放射線画像検出器12上での画素位置(x,y)の画素値をQL(x,y,n)とし、第(n−1)の放射線画像信号の放射線画像検出器12上での画素位置(x,y)の画素値をQL(x,y,n−1)とした場合、下式を演算することによって全ての画素についてD(x,y,n)を取得する。
【0099】
D(x,y,n)=QL(x,y,(n−1))−QL(x,y,n)
そして、フレーム毎にD(x,y,n)を順次算出していき、そのD(x,y,n)が第1の閾値a(a>0)よりも大きくなる画素の総数が第2の閾値cよりも大きくなった場合には、そのときの第nフレームを造影剤注入開始フレームとして判定する。
【0100】
そして、造影剤注入開始フレームを判定した後、D(x,y,n)が第3の閾値b(b<0)よりも小さくなる画素の総数が第4の閾値dよりも大きくなった場合には、そのときの第nフレームを造影剤注入終了フレームとして判定する。
【0101】
上記のような方法によっても、造影剤注入開始フレームと造影剤注入終了フレームとを特定することができる。なお、上記の判定方法においては、造影剤の像の画像信号が周囲よりも黒よりである(信号値が周囲よりも小さい)ことを前提としているが、逆に造影剤の像の画像信号が周囲よりも白よりである(信号値が周囲よりも大きい)ことを前提としてもよく、その場合には、造影剤注入開始フレームの判定方法と造影剤注入終了フレームの判定方法とが逆になることになる。
【0102】
また、図11に示すように、放射線源11と患者Hとの間に放射線量検出部17を設け、造影剤フレーム特定部15において、放射線量検出部17から出力された放射線の線量情報と放射線画像記憶部13から読み出されたフレーム毎の放射線画像信号とに基づいて造影剤フレームを特定するようにしてもよい。
【0103】
具体的には、上述したような放射線画像の撮影および表示と平行して、放射線源11から射出された放射線の線量を放射線量検出部17によって順次検出し、その検出した放射線の線量を造影剤フレーム特定部15が順次取得する。
【0104】
そして、造影剤フレーム特定部15において、入力された放射線の線量の時間変動を取得するとともに、放射線画像記憶部13から順次読み出されたフレーム毎の放射線画像信号の時間変動を取得し、これらの2つの時間変動に基づいて造影剤フレームを特定する。
【0105】
より具体的には、造影剤フレーム特定部15は、入力された放射線の線量に基づいて、図12に示すような放射線の線量の時間変動G(t)を取得するとともに、入力されたフレーム毎の放射線画像信号に基づいてE.I.(Exposure Index)を算出し、図12に示すようなE.I.の時間変動E.I.(t)を取得する。
【0106】
ここで、上述したE.I.とは、患者を透過して放射線画像検出器12が受けた放射線の線量の指標となるものである。
【0107】
E.I.の算出方法については、まず、各フレームの放射線画像内に、所定の計算領域を設定する。この計算領域としては、たとえば放射線画像の全領域や、使用者が任意に設定した領域や、撮影部位の情報に基づいて規定された領域や、放射線画像の中心から画像サイズの10%の範囲の領域などを採用することができる。または、たとえば放射線画像のヒストグラムに基づいて求められる、いわゆる素抜け領域を除く領域や、放射線画像の中心濃度から全濃度幅の90%の領域などを採用することができる。もしくは、上述した条件を組み合わせて特定の計算領域を設定するようにしてもよい。
【0108】
次に、上記で設定した計算領域の代表値Vを算出する。代表値Vとしては、放射線画像の濃度値そのものや、濃度値そのものに対して、全濃度値の平均値、中央値、最頻値またはトリム平均値を加味した統計的特徴値などを採用することができる。そして、代表値Vに基づいて、下式によりフレーム毎のE.I.を算出する。
【0109】
E.I.= C × g(V)
g(V):逆校正関数
:100・Gy(定数)
なお、g(V)は、RQA5の線質にて得られる放射線画像に基づいて規定される関数である。代表値Vは、放射線画像検出器におけるシンチレータの違いなどに起因する感度の違いや、上述した計算領域の設定方法または代表値Vの算出方法の違いによってその大きさが異なるものとなるが、g(V)はその違いを正規化する関数である。つまり、いかなる放射線画像検出器の種類であっても、RQA5の線質で同一の線量を受けた場合、E.I.はほぼ同一の値となることになる。
【0110】
そして、造影剤フレーム特定部15は、図12に示すように、上述したようにして取得したG(t)とE.I.(t)の除算値G(t)/E.I.(t)の時間変動を算出する。なお、造影剤フレーム特定部15は、放射線量検出部17における放射線の線量の検出タイミングと、放射線画像検出器12におけるフレーム毎の放射線画像信号の検出タイミングも取得しているものとし、G(t)とE.I.(t)の時間軸は一致しているものとする。
【0111】
そして、造影剤フレーム特定部15は、G(t)/E.I.(t)の値と予め設定された閾値とを比較し、G(t)/E.I.(t)の値が閾値以上である場合には、その値に対応する時間tに取得されたフレームを造影剤フレームとして特定する。
【0112】
次に、本発明の放射線画像撮影装置の第2の実施形態を用いた放射線画像撮影システムの一実施形態について説明する。図13は、本実施形態の放射線画像撮影システム全体の概略構成を示すブロック図である。
【0113】
第2の実施形態の放射線画像撮影システムは、図13に示すように、患者に対して放射線の照射範囲と放射線画像検出器とを相対的に移動させながら患者の透視画像(動画)を撮影する放射線画像撮影装置60と、放射線画像撮影装置10によって撮影された透視画像を表示する放射線画像表示装置20と、放射線画像撮影システム全体の制御を行うシステム制御装置40とを備えている。
【0114】
放射線画像撮影装置60は、図13に示すように、放射線源11と、放射線画像検出器12と、放射線画像記憶部13と、制御部14と、患者と放射線画像検出器12との間に設けられ、患者を透過した放射線の線量を検出する放射線量検出部18と、放射線画像記憶部13から読み出されたフレーム毎の放射線画像信号のうち、人工物の像の画像信号を含むフレームの放射線画像信号を人工物フレームとして特定する人工物フレーム特定部19とを備えている。
【0115】
そして、本実施形態の放射線画像撮影装置60は、図14に示すように構成されており、人工物I(たとえば人工骨)が体内に埋め込まれた患者Hが撮影台16上に設置され、その患者に対して放射線源11と放射線画像検出器12とを図14の矢印方向に移動させながら透視画像の撮影を行うものである。
【0116】
なお、放射線源11、放射線画像検出器12および放射線画像記憶部13については、上記第1の実施形態と同様である。
【0117】
そして、本実施形態の放射線画像撮影装置60は、上述したように人工物が埋め込まれた患者の透視画像(動画)の撮影を行うものであり、制御部14は、この透視画像の撮影が行われるように放射線源11と放射線画像検出器12とを制御するものである。具体的には、制御部14は、所定のフレームレートで放射線源11から放射線を照射させるとともに、その放射線の照射によって放射線画像の記録と読出しが行われるように放射線画像検出器12を制御するものである。そして、放射線画像検出器12から出力されたフレーム毎の放射線画像信号を放射線画像記憶部13に順次記憶するものである。
【0118】
また、放射線量検出部18は、上述したように患者と放射線画像検出器12との間に設けられるものであり、本実施形態においては、図14および図15に示すように、放射線画像検出器12の放射線照射面に設けられた第1の線量計測センサ18aと第2の線量計測センサ18bとから構成されるものである。なお、図15は、図14の放射線画像検出器12を上方から見た図である。
【0119】
図15に示すように第1の線量計測センサ18aと第2の線量計測センサ18bとは、放射線画像検出器12の移動方向について対向する辺に沿って設けられている。なお、本実施形態においては、上述したように移動方向について対応する辺のみに沿って線量計測センサを設けるようにしたが、放射線画像検出器12の4辺に沿って設けることがより好ましい。
【0120】
第1および第2の線量計測センサ18a,18bとしては、薄型で放射線吸収がほとんどないものを用いることが望ましく、たとえば有機光電変換材料(OPC)からなるものを用いることが望ましい。
【0121】
なお、本実施形態においては、第1および第2の線量計測センサ18a,18bを放射線画像検出器12上に設けるようにしたが、これに限らず、患者と放射線画像検出器12との間であれば、その他の所定位置に設置するようにしてもよい。
【0122】
そして、放射線量検出部18は、検出した放射線の線量情報を、透視画像の撮影と平行して人工物フレーム特定部19に順次出力するものである。
【0123】
人工物フレーム特定部19は、放射線量検出部18を構成する第1の線量計測センサ18aと第2の線量計測センサ18bとから出力された放射線の線量情報に基づいて、透視画像の撮影によって取得された複数のフレームの中から人工物フレームを特定するものである。
【0124】
さらに、本実施形態の人工物フレーム特定部19は、人工物フレームと判定されたフレームの放射線画像信号に対して人工物フレームであることを示す情報(以下、人工物フレーム情報という)を付加して記憶するものである。なお、人工物フレーム特定部19の作用については、後で詳述する。
【0125】
なお、放射線画像表示装置20、システム制御装置40および入力部50については、上記第1の実施形態と同様である。
【0126】
次に、本実施形態の放射線画像撮影システムの作用について、図16に示すフローチャートを参照しながら説明する。ここでは、まず本実施形態の放射線画像撮影システムにおける透視画像の撮影および表示の流れについて説明する。
【0127】
まず、放射線画像撮影装置10に設けられた撮影台16の上に患者が設置され、患者のポジショニングが行われる(S50)。
【0128】
次に、使用者によって入力部50を用いて撮影対象の患者のID情報と所定の撮影条件とが入力され、撮影条件については放射線画像撮影装置10の制御部14に設定される(S52)。なお、撮影条件については、上記第1の実施形態と同様である。
【0129】
次に、使用者によって撮影スイッチ51が押下(ON)されて患者の透視画像の撮影の開始指示が入力され、この入力に応じてシステム制御装置40から放射線画像撮影装置10に対して透視画像の撮影を行うよう制御信号が出力され、放射線画像撮影装置10は、入力された制御信号に応じて透視画像の撮影を開始する(S54)。
【0130】
具体的には、入力された制御信号に応じて放射線源11と放射線画像検出器12とが患者に対して移動するとともに、入力された撮影条件に基づいて放射線源11のX線管球が制御され、所定の線量の放射線が所定のフレームレートで間欠的に患者に向けて照射される。
【0131】
そして、患者を透過した放射線は放射線画像検出器12に照射され、放射線画像検出器12において光電変換されて電荷信号として蓄積される。
【0132】
そして、各フレームの放射線の照射が終了する毎に、放射線画像検出器12に蓄積された電荷信号は制御部14によって読み出され、A/D変換器(図示省略)によってデジタル信号に変換された後、放射線画像記憶部13に記憶される。
【0133】
なお、放射線源11のX線管球からの放射線の照射タイミングと放射線画像検出器12における電荷蓄積タイミングとについては、図5に示した第1の実施形態のタイミングチャートと同様である。
【0134】
そして、上記のようにして放射線源11による放射線の照射と放射線画像検出器12における放射線画像の記録および読出しとが所定のフレームレートで繰り返して行われることによって、放射線画像記憶部13にフレーム毎の放射線画像信号が順次記憶される。
【0135】
そして、放射線画像記憶部13に記憶されたフレーム毎の放射線画像信号は順次読み出されて放射線画像表示装置20に出力される。放射線画像表示装置20は、入力されたフレーム毎の放射線画像信号に基づいて表示制御信号を順次生成し、その表示制御信号をモニタに順次出力して患者の透視画像を動画としてモニタに表示させる(S56)。
【0136】
一方、上述したような透視画像の撮影および表示が行われるのと平行して、放射線画像検出器12上に設けられた第1および第2の線量計測センサ18a,18bによって患者を透過した放射線の線量が順次検出され、その検出された放射線の線量は人工物フレーム特定部19に順次入力される(S58)。
【0137】
そして、人工物フレーム特定部19は、入力された放射線の線量の時間変動を取得し、その時間変動に基づいて、人工物の像が写りこんでいる人工物フレームを特定する。(S60)。
【0138】
具体的には、人工物フレーム特定部19は、第1の線量計測センサ18aによって検出された放射線の線量と第2の線量計測センサ18bによって検出された放射線の線量とに基づいて、図17に示すような各センサによって検出された放射線の線量の時間変動を取得する。
【0139】
ここで、第1および第2の線量計測センサ18a,18bの上方を患者に埋め込まれた人工物が通過する際には、各センサに放射線が到達する前にその人工物によって放射線が吸収されてしまうため、図17に示すように、各センサによって検出される放射線の線量は小さくなる。
【0140】
このような変化を利用して、人工物フレーム特定部19は、下流側に配置された第1の線量計測センサ18aによって検出される放射線の線量が減少し始めた第1の時点t1から、上流側に配置された第2の線量計測センサ18bによって検出される放射線の線量が一旦減少して再び略一定値に戻った時点t2までの間に撮影されたフレームを人工物フレームとして特定する。なお、人工物フレーム特定部19には、放射線源11および放射線画像検出器12の移動速度と、透視画像の放射線撮影のフレームレートとが予め設定されており、これらの情報と上記第1の時点t1から第2の時点t2までの時間とに基づいて人工物フレームを特定するものとする。
【0141】
そして、人工物フレーム特定部19には、放射線画像記憶部13から読み出された各フレームの放射線画像信号も入力され、上述したようにして人工物フレームと特定したフレームの放射線画像信号に対して人工物フレーム情報をヘッダー情報として付加し、その放射線画像信号を人工物フレーム情報とともに記憶する(S62)。
【0142】
そして、使用者によって撮影スイッチ51が解放(OFF)されて透視画像の撮影終了指示が入力されると、システム制御装置40は、透視画像の撮影を終了するように放射線画像撮影装置10に制御信号を出力し、放射線画像撮影装置10は、入力された制御信号に応じて透視画像の撮影を終了する(S64)。
【0143】
以上が、本実施形態の放射線画像撮影システムにおける透視画像の撮影および表示の流れである。
【0144】
次に、上述したような各フレームの放射線撮影における放射線の照射線量の制御について、図18に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、ここでいう放射線の照射線量とは単位時間あたりの照射線量のことをいうものとする。また、各フレームの放射線撮影における放射線の照射線量は、放射線源制御部14aによって上述した放射線照射条件を変更することによって行われるものとする。
【0145】
まず、最初のフレームの放射線撮影の際における放射線の線量は、上述したS52において入力された初期値に設定される(S70)。
【0146】
そして、最初のフレームの撮影の際には、放射線源制御部14aに制御によって上記初期値の放射線の線量が放射線源11から射出されて患者に照射される(S72)。患者を透過した放射線は放射線画像検出器12に照射され、放射線画像検出器12において光電変換されて電荷信号として蓄積される(S74)。
【0147】
上述したように1フレームの放射線の照射が終了すると(S76)、放射線画像検出器12に蓄積された電荷信号は制御部14によって読み出され放射線画像信号として放射線画像記憶部13に記憶される(S78)。また、このとき人工物フレーム特定部19において、上述したように放射線画像検出器12から読み出された放射線画像信号が人工物フレームの放射線画像信号であるか否かが特定され、人工物フレームの放射線画像信号である場合には、人工物フレーム情報が付加されて記憶され、人工物フレームの放射線画像信号でない場合には、人工物フレーム情報は付加されることなく記憶される。
【0148】
次いで、上述した1フレームの放射線画像の記録と読出しが終了した時点において、制御部14によって撮影スイッチ51が押下(ON)された状態であるか否かが確認される(S80)。
【0149】
そして、撮影スイッチ51が押下された状態である場合には、上述したように人工物フレーム特定部19に記憶された1フレームの放射線画像信号が、人工物フレームの放射線画像信号であるか否かが放射線源制御部14aによって確認される(S82)。
【0150】
具体的には、人工物フレーム特定部19に記憶された1フレームの放射線画像信号が放射線源制御部14aに入力され、放射線源制御部14aは、入力された放射線画像信号に対して上述した人工物フレーム情報が付加されているか否かを確認する。そして、放射線源制御部14aは、放射線画像信号に対して人工物フレーム情報が付加されている場合には、その放射線画像信号は人工物フレームの放射線画像信号であると判定する。一方、放射線源制御部14aは、放射線画像信号に対して人工物フレーム情報が付加されていない場合には、その放射線画像信号は人工物フレーム以外の放射線画像信号であると判定する。
【0151】
そして、放射線源制御部14aは、現在撮影された1フレームの放射線画像信号が人工物フレーム以外の放射線画像信号であると判定した場合には、その現在撮影された1フレームの放射線画像信号に基づいて、次のフレームの放射線画像の撮影の際に用いられる放射線の照射線量を決定する(S84)。なお、前フレームの放射線画像信号に基づいて次フレームの放射線の照射線量を決定する方法としては、最も簡単な方法としては放射線画像信号の大きさが大きいほど放射線の照射線量を下げる方法があるが、より具体的な方法は既に種々の方法が公知であるので、詳細な説明は省略する。
【0152】
そして、次のフレームの放射線画像の撮影の際には、放射線源制御部14aは、前のフレームの放射線画像信号に基づいて決定した放射線の照射線量が照射されるように放射線源11を制御する。そして、再びS72〜S82までが繰り返して行われる。
【0153】
一方、放射線源制御部14aは、現在撮影された1フレームの放射線画像信号が人工物フレームの放射線画像信号であると判定した場合には、現在設定されている放射線の照射線量を変更することなくそのまま維持する。そして、再びS72〜S82までが繰り返して行われる。
【0154】
上記ようにして放射線の照射線量を制御することによって、透視画像の撮影開始から人工物フレームが撮影されるまでの間は、前フレームの放射線画像信号に基づいて決定された放射線の照射線量が、次フレームの放射線画像の撮影における放射線の照射線量として設定され、人工物フレームが撮影されている間は、その人工物フレームが撮影され始める直前のフレームの放射線画像信号に基づいて決定された放射線の照射線量が設定されて、一定の放射線の照射線量が維持されることになる。
【0155】
そして、S80において、制御部14によって撮影スイッチ51が解放(OFF)されたことが確認された場合には、放射線源制御部14aによって放射線源11からの放射線の照射が停止され、放射線画像の撮影が終了する(S86)。
【0156】
上記第2の実施形態の放射線画像撮影システムによれば、複数のフレームの中から人工物フレームを特定し、その人工物フレームが撮影されている間は、放射線の線量を一定に維持するようにしたので、一連の撮影全体を通して適切な放射線の線量に設定することができ、画質の良好な放射線画像を撮影することができる。
【0157】
また、上記第2の実施形態の放射線画像撮影システムにおいては、第1および第2の線量計測センサ18a,18によって検出された放射線の線量の時間変動に基づいて人工物フレームを特定するようにしたが、これに限らず、たとえば、患者の体内に埋め込まれる人工物に対し、人工物であることを示すマークなどの指標を設けるようにし、人工物フレーム特定部19が、各フレームの放射線画像信号に上記指標を表す画像信号が含まれるか否かを画像認識することによって人工物フレームを特定するようにしてもよい。なお、マークの画像認識については既に公知な技術であるのでここでは説明を省略する。
【0158】
また、上記第1および第2の実施形態の放射線画像撮影システムにおいては、造影剤フレームまたは人工物フレームが撮影されていない間においては、放射線画像検出器12によって検出された放射線画像信号に基づいて放射線の照射線量を決定するようにしたが、これに限らず、たとえば、一般的なAEC(Automatic Exposure Control)に用いられるフォトタイマを用いて放射線の照射線量を決定するようにしてもよい。この場合においても、造影剤フレームが撮影されている間の放射線の照射線量については、たとえば、造影剤フレームが撮影し始める直前にフォトタイマによって制御された放射線の照射線量に設定するようにすればよい。
【0159】
なお、上記第1および2の実施形態の放射線画像撮影システムにおいては、造影剤フレームまたは人工物フレームが撮影されている間の放射線の照射線量として、造影剤フレームまたは人工物フレームが撮影され始める直前のフレームの放射線画像信号に基づいて決定された放射線の照射線量を設定するようにしたが、これに限らず、たとえば、初期値の放射線の照射線量に設定して維持するようにしてもよいし、もしくは直前のフレーム以前の過去の複数のフレームの撮影の際に用いられた放射線の照射線量の平均値や、最頻値や、中央値などを用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0160】
10 放射線画像撮影装置
11 放射線源
12 放射線画像検出器
14 制御部
14a 放射線源制御部
15 造影剤フレーム特定部
17 放射線量検出部
18 放射線量検出部
18a 第1の線量計測センサ
18b 第2の線量計測センサ
19 人工物フレーム特定部
20 放射線画像表示装置
30 造影剤注入装置
31 造影剤注入部
32 注入駆動部
33 制御部
34 造影剤注入検出センサ部
35 造影剤注入時刻取得部
40 システム制御装置
41 造影剤フレーム特定部
50 入力部
51 撮影スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
造影剤が注入される生体に対して放射線を連続的に照射する放射線源と、前記連続的な放射線の照射による放射線撮影によって放射線画像検出器により検出されたフレーム毎の放射線画像信号を取得する放射線画像取得部と、該放射線画像取得部によって取得されたフレーム毎の放射線画像信号または前記生体を透過した前記放射線を検出する放射線検出器から出力された検出信号に基づいて、前記放射線源によって照射される前記放射線の線量を制御する放射線源制御部とを備えた放射線画像撮影装置において、
前記フレーム毎の放射線画像信号のうち、前記造影剤の像を表す画像信号が含まれているフレームを造影剤フレームとして特定する造影剤フレーム特定部を備え、
前記放射線源制御部が、前記造影剤フレームが撮影されている間は、前記放射線源によって照射される前記放射線の線量を一定に維持するものであることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記放射線源制御部が、前記造影剤フレームが撮影されている間の前記放射線の線量を、前記造影剤フレームが撮影される前の所定のフレームが撮影された際の放射線の線量とするものであることを特徴とする請求項1記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記放射線源制御部が、前記造影剤フレームが撮影されている間の前記放射線の線量を、前記造影剤フレームの直前のフレームが撮影された際の放射線の線量とするものであることを特徴とする請求項2記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記造影剤フレーム特定部が、前記造影剤を前記生体に注入する造影剤注入装置からの前記造影剤の注入開始タイミングおよび注入終了タイミングに基づいて、前記造影剤フレームを特定するものであることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記造影剤フレーム特定部が、前記連続的な放射線撮影によって検出された複数のフレームの放射線画像信号のうちの所定のフレーム間の放射線画像信号に基づく差分情報に基づいて、前記造影剤フレームを特定するものであることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項6】
前記造影剤フレーム特定部が、前記放射線源と前記被写体との間に設けられた放射線量検出部から出力された放射線の線量情報を取得し、該取得した線量情報と前記連続的な放射線撮影によって検出された複数のフレームの放射線画像信号とに基づいて、前記造影剤フレームを特定するものであることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項7】
人工物が含まれる生体に対して放射線の照射範囲を相対的に移動させながら前記放射線を連続的に照射する放射線源と、前記連続的な放射線の照射による放射線撮影によって放射線画像検出器により検出されたフレーム毎の放射線画像信号を取得する放射線画像取得部と、該放射線画像取得部によって取得されたフレーム毎の放射線画像信号または前記生体を透過した前記放射線を検出する放射線検出器から出力された検出信号に基づいて、前記放射線源によって照射される前記放射線の線量を制御する放射線源制御部とを備えた放射線画像撮影装置において、
前記フレーム毎の放射線画像信号のうち、前記人工物の像を表す画像信号が含まれているフレームを人工物フレームとして特定する人工物フレーム特定部を備え、
前記放射線源制御部が、前記人工物フレームが撮影されている間は、前記放射線源によって照射される前記放射線の線量を一定に維持するものであることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項8】
前記放射線源制御部が、前記人工物フレームが撮影されている間の前記放射線の線量を、前記人工物フレームが撮影される前の所定のフレームが撮影された際の放射線の線量とするものであることを特徴とする請求項1記載の放射線画像撮影装置。
【請求項9】
前記放射線源制御部が、前記人工物フレームが撮影されている間の前記放射線の線量を、前記人工物フレームの直前のフレームが撮影された際の放射線の線量とするものであることを特徴とする請求項8記載の放射線画像撮影装置。
【請求項10】
前記人工物フレーム特定部が、前記生体と前記放射線画像検出器との間に設けられた放射線量検出部によって検出された前記放射線の線量情報に基づいて、前記人工物フレームを特定するものであることを特徴とする請求項7から9いずれか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項11】
造影剤が注入される生体への放射線の連続的な照射による放射線撮影によって放射線画像検出器により検出されたフレーム毎の放射線画像信号を取得し、該取得したフレーム毎の放射線画像信号または前記生体を透過した前記放射線を検出する放射線検出器から出力された検出信号に基づいて、前記放射線の線量を制御する放射線画像撮影方法において、
前記フレーム毎の放射線画像信号のうち、前記造影剤の像を表す画像信号が含まれているフレームを造影剤フレームとして特定し、
該造影剤フレームが撮影されている間は、前記放射線の線量を一定に維持することを特徴とする放射線画像撮影方法。
【請求項12】
人工物が含まれる生体に対して放射線の照射範囲を相対的に移動させて前記人体を連続的に放射線撮影することによって放射線画像検出器により検出されたフレーム毎の放射線画像信号を取得し、該取得したフレーム毎の放射線画像信号または前記生体を透過した前記放射線を検出する放射線検出器から出力された検出信号に基づいて、前記放射線の線量を制御する放射線画像撮影方法において、
前記フレーム毎の放射線画像信号のうち、前記人工物の像を表す画像信号が含まれているフレームを人工物フレームとして特定し、
前記人工物フレームが撮影されている間は、前記放射線の線量を一定に維持することを特徴とする放射線画像撮影方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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