説明

放射線画像撮影方法および装置

【課題】グリッドを用いてステレオ撮影を行う放射線画像撮影方法および装置において、グリッドによる放射線のケラレの影響を低減するとともに、散乱線によるボケの影響も低減する。
【解決手段】2つの撮影方向のうちの一方の撮影方向についてはグリッド30を用いて撮影を行い、他方の撮影方向についてはグリッド30を用いずに撮影を行うとともに、グリッド30を用いた撮影を行う際の放射線のエネルギーよりもグリッド30を用いない撮影を行う際の放射線のエネルギーの方が低くなるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体に対して互いに異なる複数の撮影方向から放射線をそれぞれ照射し、撮影方向毎の放射線画像を検出する放射線画像撮影方法および装置に関し、特に、被写体による散乱線を除去するためのグリッドを用いた撮影を行う放射線画像撮影方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の画像を組み合わせて表示することにより、視差を利用して立体視できることが知られている。このような立体視できる画像(以下、立体視画像またはステレオ画像という)は、同一の被写体を異なる方向から撮影して取得された互いに視差のある複数の画像に基づいて生成される。
【0003】
そして、このような立体視画像の生成は、デジタルカメラやテレビなどの分野だけでなく、放射線画像撮影の分野においても利用されている。すなわち、被検者に対して互いに異なる方向から放射線を照射し、その被検者を透過した放射線を放射線画像検出器によりそれぞれ検出して互いに視差のある複数の放射線画像を取得し、これらの放射線画像に基づいて立体視画像を生成することが行われている。そして、このように立体視画像を生成することによって奥行感のある放射線画像を観察することができ、より診断に適した放射線画像を観察することができる。
【0004】
ここで、一般的に放射線画像撮影装置においては、被写体において散乱した散乱線が放射線画像検出器内に入射するのを防止するため、放射線画像検出器の検出面側に、散乱線を除去するためのグリッドが配置される。
【0005】
このような散乱線の問題は、立体視画像を撮影する放射線画像撮影装置においても同様であり、たとえば、特許文献1においては、グリッドを使用してステレオ撮影を行う放射線画像撮影装置が提案されている。
【0006】
しかしながら、ステレオ撮影を行う放射線画像撮影装置においてグリッドを用いた場合、そのグリッドにおける放射線の透過方向に対して放射線の照射方向が傾いている場合には、グリッドによって放射線がケラレてしまうため、放射線画像検出器に照射される放射線の線量が少なくなり、S/Nの低下した放射線画像となってしまう。また、このようなS/Nの低下を防止するために放射線の線量を増加させたのでは被写体の被曝量が増加してしまう。特に、ステレオ撮影の場合には複数枚の放射線画像の撮影が必要なため、被写体の被曝量が多くなるので、上述したような被曝量の増加は好ましくない。
【0007】
そこで、特許文献1においては、グリッドを使用してステレオ撮影を行う際、たとえば、撮影角度が10°を超える場合には、グリッドにおける放射線のケラレによって放射線画像検出器に到達する放射線の線量が減少してしまうことを考慮してグリッドを用いずに撮影を行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−233858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1のように単純にグリッドなしでの撮影を行うようにしたのでは、やはり散乱線によるボケが放射線画像に発生してしまい好ましくない。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑み、上述したようなグリッドによる放射線のケラレの影響を低減することができるとともに、さらに散乱線によるボケの影響も低減させることができる放射線画像撮影方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の放射線画像撮影装置は、被写体に対して互いに異なる2つの撮影方向から放射線をそれぞれ照射する放射線照射部と、放射線照射部の放射線の照射による撮影方向毎の放射線画像をそれぞれ検出する放射線画像検出器とを備え、被写体と放射線画像検出器との間に被写体によって発生した散乱線を除去するグリッドが設けられた放射線画像撮影装置において、2つの撮影方向のうちの一方の撮影方向についてはグリッドを用いて撮影を行い、他方の撮影方向についてはグリッドを用いずに撮影を行うものであるとともに、放射線照射部が、グリッドを用いた撮影を行う際の放射線のエネルギーよりもグリッドを用いない撮影を行う際の放射線のエネルギーの方が低くなるようにするものであることを特徴とする。
【0012】
また、上記本発明の放射線画像撮影装置においては、上記2つの撮影方向のうち、その撮影方向と放射線画像検出器の検出面の垂線とのなす角がより大きい方の撮影方向についてグリッドを用いずに撮影を行うものとできる。
【0013】
また、上記一方の撮影方向と放射線画像検出器の検出面の垂線とのなす角を0°とし、上記他方の撮影方向と放射線画像検出器の検出面の垂線とのなす角を4°とできる。
【0014】
また、グリッドを移動させるための移動機構を設けることができる。
【0015】
また、グリッドを用いない撮影を行うか否かの選択指示を受け付ける選択指示受付部を設け、その選択指示受付部においてグリッドを用いない撮影を行う指示が受け付けられた場合に、上記他方の撮影方向についてはグリッドを用いない撮影を行うものとできる。
【0016】
本発明の放射線画像撮影方法は、被写体に対して互いに異なる2つの撮影方向から放射線をそれぞれ照射し、その放射線の照射によって撮影方向毎の放射線画像を放射線画像検出器によりそれぞれ検出する放射線画像撮影方法であって、被写体と放射線画像検出器との間に被写体による散乱線を除去するグリッドを設けて放射線画像の撮影を行う放射線画像撮影方法において、2つの撮影方向のうちの一方の撮影方向についてはグリッドを用いて撮影を行い、他方の撮影方向についてはグリッドを用いずに撮影を行うとともに、グリッドを用いた撮影を行う際の放射線のエネルギーよりもグリッドを用いない撮影を行う際の放射線のエネルギーの方が低くなるようにすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の放射線画像撮影方法および装置によれば、2つの撮影方向のうちの一方の撮影方向についてはグリッドを用いて撮影を行い、他方の撮影方向についてはグリッドを用いずに撮影を行うとともに、グリッドを用いた撮影を行う際の放射線のエネルギーよりもグリッドを用いない撮影を行う際の放射線のエネルギーの方が低くなるようにしたので、グリッドを用いない撮影において、グリッドによる放射線のケラレの影響を低減することができるとともに、低エネルギーな放射線の照射によりコンプトン散乱を低減することができるので、これにより散乱線によるボケの影響も低減することができる。
【0018】
また、本発明の放射線画像撮影方法および装置において、グリッドを用いない撮影を行うか否かの選択指示を受け付け、グリッドを用いない撮影を行う指示が受け付けられた場合に、上記他方の撮影方向についてはグリッドを用いない撮影を行うようにした場合には、グリッドを用いない撮影を行うか否かを使用者が任意に選択することができるので、撮影対象や用途や使用者の要望に応じた撮影を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の放射線画像撮影装置の一実施形態を用いた乳房画像撮影表示システムの概略構成図
【図2】図1に示す乳房画像撮影表示システムにおいて放射線源ユニットを移動させた状態を示す図
【図3】図1に示す乳房画像撮影表示システムのコンピュータ内部の概略構成を示すブロック図
【図4】本発明の放射線画像撮影装置の一実施形態を用いた乳房画像撮影表示システムの作用を説明するためのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の放射線画像撮影装置の一実施形態を用いた乳房画像撮影表示システムについて説明する。図1は、本実施形態の乳房画像撮影表示システム全体の概略構成を示す図である。
【0021】
本実施形態の乳房画像撮影表示システム1は、図1に示すように、乳房画像撮影装置10と、乳房画像撮影装置10に接続されたコンピュータ2と、コンピュータ2に接続されるモニタ3および入力部4とを備えている。
【0022】
乳房画像撮影装置10は、図1に示すように、基台11と、基台11に対し上下方向(Z方向)に移動可能であり、かつ回転可能な回転軸12と、回転軸12により基台11と連結されたアーム部13を備えている。図2には、図1の右方向から見たアーム部13を示している。
【0023】
アーム部13はアルファベットのCの形をしており、その一端には乳房が設置される撮影台14が、その他端には撮影台14と対向するように放射線源ユニット16が取り付けられている。アーム部13の上下方向の移動は、基台11に組み込まれたアームコントローラ31により制御される。
【0024】
撮影台14の内部には、フラットパネルディテクタ等の放射線画像検出器15と、放射線が乳房に照射されることによって発生した散乱線を除去するためのグリッド30と、放射線画像検出器15からの電荷信号の読み出しなどを制御する検出器コントローラ33が備えられている。
【0025】
また、撮影台14の内部には、放射線画像検出器15から読み出された電荷信号を電圧信号に変換するチャージアンプや、チャージアンプから出力された電圧信号をサンプリングする相関2重サンプリング回路や、電圧信号をデジタル信号に変換するAD変換部などが設けられた回路基板なども設置されている。
【0026】
放射線画像検出器15は、放射線画像の記録と読出しを繰り返して行うことができるものであり、放射線の照射を直接受けて電荷を発生する、いわゆる直接型の放射線画像検出器を用いてもよいし、放射線を一旦可視光に変換し、その可視光を電荷信号に変換する、いわゆる間接型の放射線画像検出器を用いるようにしてもよい。また、放射線画像信号の読出方式としては、TFT(thin film transistor)スイッチをオン・オフされることによって放射線画像信号が読みだされる、いわゆるTFT読出方式のものや、読取光を照射することによって放射線画像信号が読み出される、いわゆる光読出方式のものを用いることができるが、これに限らずその他のものを用いるようにしてもよい。
【0027】
グリッド30は、上述したように散乱線を除去するためのものであり、放射線を吸収する部材と、放射線を透過する部材とが縞状または格子状となるように交互に配置されて形成されたものである。
【0028】
また、撮影台14内には、グリッド30を図1に示す矢印A方向に移動させるグリッド移動機構35(図1においては図示省略、図3参照)が設けられている。グリッド移動機構35は、グリッド30を用いた撮影を行う際には、図1において実線で示す位置にグリッド30を移動し、グリッド30を用いない撮影を行う際には、図1において点線で示す位置にグリッド30を移動させるものである。なお、アーム部13には、図1において点線で示す位置にグリッド30が待避可能なように所定のスペースが設けられているものとする。グリッド移動機構35としては、既知のアクチュエータを用いることができる。グリッド移動機構35の制御方法については、後で詳述する。
【0029】
放射線源ユニット16の中には放射線源17と放射線源コントローラ32とが収納されている。放射線源コントローラ32は、放射線源17から放射線を照射するタイミングと、放射線源17における放射線発生条件(管電流、時間、管電圧等)を制御するものである。
【0030】
そして、本実施形態の放射線源コントローラ32は、グリッド30を用いて撮影を行う場合とグリッド30を用いない撮影を行う場合とで放射線源17から射出される放射線のエネルギーを変更するものである。具体的には、放射線源コントローラ32は、放射線源17における管電圧を変更することによって、グリッド30を用いて撮影を行う場合よりもグリッド30を用いない撮影を行う場合の方が放射線のエネルギーが低くなるようにするものである。なお、この放射線源コントローラ32による放射線のエネルギーの制御については、後で詳述する。
【0031】
また、アーム部13の中央部には、撮影台14の上方に配置され、乳房を押さえつけて圧迫する圧迫板18と、その圧迫板18を支持する支持部20と、支持部20を上下方向に移動させる移動機構19が設けられている。圧迫板18の位置、圧迫圧は、圧迫板コントローラ34により制御される。
【0032】
コンピュータ2は、中央処理装置(CPU)および半導体メモリやハードディスクやSSD等のストレージデバイスなどを備えており、これらのハードウェアによって、図3に示すような制御部40、放射線画像記憶部41および表示制御部42が構成されている。
【0033】
制御部40は、各種のコントローラ31〜34に対して所定の制御信号を出力し、システム全体の制御を行うものである。具体的な制御方法については後で詳述する。
【0034】
放射線画像記憶部41は、互いに異なる2つの撮影方向からの撮影によって放射線画像検出器15によって検出された2枚の放射線画像信号を記憶するものである。
【0035】
表示制御部42は、放射線画像記憶部41から読み出された放射線画像信号に対して所定の信号処理を施した後、モニタ3に乳房のステレオ画像を表示させるものである。
【0036】
なお、図3に示すグリッド移動機構35は、上述したように図1に示す撮影台14内に設けられるものであり、コンピュータ2の制御部40から出力された制御信号に基づいてグリッド30を移動させるものである。
【0037】
入力部4は、たとえば、キーボードやマウスなどのポインティングデバイスから構成されるものであり、所定の撮影条件などの使用者による入力を受け付けるものである。
【0038】
モニタ3は、コンピュータ2から出力された2つの放射線画像信号を用いてステレオ画像を表示可能なように構成されたものである。ステレオ画像を表示する構成としては、たとえば、2つの画面を用いて2つの放射線画像信号に基づく放射線画像をそれぞれ表示させて、これらをハーフミラーや偏光グラスなどを用いることで一方の放射線画像は観察者の右目に入射させ、他方の放射線画像は観察者の左目に入射させることによってステレオ画像を表示する構成を採用することができる。または、たとえば、2つの放射線画像を所定の視差量だけずらして重ね合わせて表示し、これを偏光グラスで観察することでステレオ画像を生成する構成としてもよいし、もしくはパララックスバリア方式およびレンチキュラー方式のように、2つの放射線画像を立体視可能な3D液晶に表示することによってステレオ画像を生成する構成としてもよい。
【0039】
次に、本実施形態の乳房画像撮影表示システムの作用について、図4に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0040】
まず、撮影台14の上に被検者Mの乳房が設置され、圧迫板18により乳房が所定の圧力によって圧迫される(S10)。次に、このときグリッド30の位置が、図1に示す点線の位置すなわちアーム部13内に待避している状態である場合には、グリッド30は、グリッド移動機構35によって図1に示す実線位置、すなわち乳房と放射線画像検出器15の間に移動して設置される(S12)。
【0041】
そして、使用者によって撮影開始指示が入力されると、ステレオ画像を構成する2枚の放射線画像のうちの1枚目の放射線画像の撮影が行われる(S14)。
【0042】
具体的には、まず、制御部40が、予め設定されたステレオ画像の撮影のための撮影角度θを読み出し、その読み出した撮影角度θの情報をアームコントローラ31に出力する。なお、本実施形態においては、撮影角度θの情報としてθ=0°とθ=4°が予め記憶されているものとするが、これに限らず、使用者によって入力部4において任意の撮影角度を設定可能である。特に、θ=4°については、4°以上のその他の撮影角度を設定するようにしてもよい。
【0043】
そして、アームコントローラ31において、制御部40から出力された撮影角度θ=0°とθ=4°の情報が受け付けられ、制御部40から出力された制御信号に応じてアームコントローラ31は、まず、θ=0°の情報に基づいて、図2に示すようにアーム部13が撮影台14に対して垂直な方向となるように制御信号を出力する。
【0044】
そして、このアームコントローラ31から出力された制御信号に応じてアーム部13が、撮影台14に対して垂直な方向となった状態において、制御部40は、放射線源コントローラ32および検出器コントローラ33に対して放射線の照射と放射線画像信号の読出しを行うよう制御信号を出力する。この制御信号に応じて、放射線源17から放射線が射出され、その放射線は乳房およびグリッドを透過する。
【0045】
ここで、本実施形態においては、この0°方向からの乳房への放射線の照射の際、放射線源コントローラ32によって放射線源17の管電圧が制御されることによって放射線源17から射出される放射線のエネルギーが第1の放射線エネルギーに設定される。なお、この第1の放射線エネルギーは、後述する4°方向からの放射線画像の撮影に際に設定される第2の放射線エネルギーよりも高い値である。
【0046】
そして、このような第1の放射線エネルギーで射出された放射線を乳房に照射することによって、乳房を0°方向から撮影した放射線画像が放射線画像検出器15によって検出され、検出器コントローラ33によって放射線画像信号が読み出され、その放射線画像信号に対して所定の信号処理が施された後、コンピュータ2の放射線画像記憶部41に記憶される(S16)。
【0047】
続いて、制御部40は撮影角度θ=4°の放射線画像の撮影を行うが、このとき制御部40は、グリッド移動機構35に制御信号を出力し、図1に示す点線位置までグリッド30を移動させて待避させる(S18)。
【0048】
そして、さらに制御部40は、放射線源コントローラ32に制御信号を出力し、放射線源コントローラ32によって放射線源17の管電圧が変更されることにより、放射線源17から射出される放射線のエネルギーが第1の放射線エネルギーから第2の放射線エネルギーに変更される(S20)。なお、上述したように、この第2の放射線エネルギーは上述した0°方向からの放射線画像の撮影に際に設定される第1の放射線エネルギーよりも低い値である。
【0049】
そして、制御部40は、上述したようにグリッド30を配置するとともに、放射線エネルギーの設定値を第1の放射線エネルギーから第2の放射線エネルギーに変更した後、撮影角度θ=4°の放射線画像の撮影を行う(S22)。
【0050】
具体的には、まず、制御部40から出力された制御信号に応じてアームコントローラ31が、図2に示すように、アーム部13を撮影台14に垂直な方向に対して+θ°回転するよう制御信号を出力する。すなわち、本実施形態においては、アーム部13を撮影台14に垂直な方向に対して4°回転するよう制御信号を出力する。
【0051】
そして、アームコントローラ31から出力された制御信号に応じてアーム部13が4°回転した状態において、制御部40は、放射線源コントローラ32および検出器コントローラ33に対して放射線の照射と放射線画像信号の読出しを行うよう制御信号を出力する。
【0052】
そして、この制御信号に応じて、放射線源17から放射線が射出され、乳房を4°方向から撮影した放射線画像が放射線画像検出器15によって検出され、検出器コントローラ33によって放射線画像信号が読み出され、所定の信号処理が施された後、コンピュータ2の放射線画像記憶部41に記憶される(S24)。
【0053】
そして、放射線画像記憶部41に記憶された2枚の放射線画像信号は、表示制御部42によって読み出され、表示制御部42においてこれらの放射線画像信号に対して所定の処理が施された後、モニタ3に出力される。そして、モニタ3において、右目用放射線画像と左目用放射線画像とがそれぞれ表示されて乳房のステレオ画像が表示される(S26)。
【0054】
上記実施形態の乳房画像撮影表示システムによれば、θ=0°の撮影についてはグリッド30を用いて撮影を行い、θ=4°の撮影についてはグリッド30を用いずに撮影を行うとともに、グリッド30を用いた撮影を行う際の放射線のエネルギーよりもグリッド30を用いない撮影を行う際の放射線のエネルギーの方が低くなるようにしたので、グリッド30を用いない撮影において、グリッド30による放射線のケラレの影響を低減することができるとともに、低エネルギーな放射線の照射によりコンプトン散乱を低減することができるので、これにより散乱線によるボケの影響も低減することができる。
【0055】
なお、上記実施形態の乳房画像撮影表示システムにおいては、放射線源17の管電圧を変更することによって放射線エネルギーを変更するようにしたが、放射線エネルギーを変更する方法としてはこれに限らず、たとえば、放射線源17に複数種類の付加フィルタを設け、この複数種類の付加フィルタを切り替えて配置することによって放射線エネルギーを変更するようにしてもよい。具体的には、たとえば、相対的に高い放射線エネルギーの放射線を出射させる場合にはロジウムフィルタを使用し、相対的に低い放射線エネルギーの放射線を出射させる場合にはモリブデンフィルタを使用するようにフィルタの配置を切り替えるようにすればよい。また、放射線源17に複数種類のターゲットを設け、この複数種類のターゲットを切り替えて用いるようにしてもよい。具体的には、たとえば、2重陽極を有する管球などを使用し、相対的に高い放射線エネルギーの放射線を出射させる場合にはロジウムターゲットを使用し、相対的に低い放射線エネルギーの放射線を出射させる場合にはモリブデンターゲットを使用するようにターゲットを切り替えるようにすればよい。
【0056】
また、上記実施形態においては撮影角度θ=4°の撮影の際にグリッド30を用いないようにしたが、さらに、グリッドを用いない撮影を行うか否かの選択指示を入力部4において受け付けるようにし、入力部4においてグリッド30を用いない撮影を行う指示が受け付けられた場合に、撮影角度θ=4°についてグリッド30を用いない撮影を行うようにしてもよい。そして、入力部4においてグリッド30を用いない撮影を行なわない指示が受け付けられた場合には、撮影角度θ=4°についても撮影角度θ=0°の撮影と同様に、グリッド30を用いた撮影を行うようにしてもよい。このようにグリッド無しの撮影を行うか否かを選択可能にすることによって、撮影対象の種類や使用者の要望に応じて、より適切な撮影方法を選択することができる。
【0057】
また、上記実施形態においては、撮影角度θ=0°と撮影角度θ=4°とについて撮影を行うようにし、撮影角度θ=4°についてグリッド30を用いない撮影を行うようにしたが、たとえば2つの撮影角度として別の撮影角度を採用した場合には、2つの撮影角度のうち、放射線画像検出器15の検出面の垂線とのなす角がより大きい方の撮影角度についてグリッド30を用いない撮影を行うようにすることが望ましい。なお、2つの撮影角度として、たとえば±2°といったように同じ大きさの撮影角度を採用するようにしてもよく、この場合には、グリッド30を用いない撮影はどちらの撮影角度で行うようにしてもよい。ただし、放射線源17から射出される放射線エネルギーについては、グリッド30を用いない撮影の方が低くなるように制御する。
【0058】
また、上記実施形態においては、本発明の放射線画像撮影装置を乳房画像撮影表示システムに適用するようにしたが、被写体は乳房に限定されるものではなく、乳房以外の胸部撮影用などのいわゆる一般撮影用の放射線画像撮影装置に適用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 乳房画像撮影表示システム
2 コンピュータ
3 モニタ
4 入力部
10 乳房画像撮影装置
11 基台
12 回転軸
13 アーム部
14 撮影台
15 放射線画像検出器
16 放射線源ユニット
17 放射線源
18 圧迫板
30 グリッド
35 グリッド移動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に対して互いに異なる2つの撮影方向から放射線をそれぞれ照射する放射線照射部と、該放射線照射部の前記放射線の照射による前記撮影方向毎の放射線画像をそれぞれ検出する放射線画像検出器とを備え、前記被写体と前記放射線画像検出器との間に前記被写体によって発生した散乱線を除去するグリッドが設けられた放射線画像撮影装置において、
前記2つの撮影方向のうちの一方の撮影方向については前記グリッドを用いて撮影を行い、他方の撮影方向については前記グリッドを用いずに撮影を行うものであるとともに、
前記放射線照射部が、前記グリッドを用いた撮影を行う際の前記放射線のエネルギーよりも前記グリッドを用いない撮影を行う際の前記放射線のエネルギーの方が低くなるようにするものであることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記2つの撮影方向のうち、該撮影方向と前記放射線画像検出器の検出面の垂線とのなす角がより大きい方の撮影方向について前記グリッドを用いずに撮影を行うものであることを特徴とする請求項1記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記一方の撮影方向と前記放射線画像検出器の検出面の垂線とのなす角が0°であり、前記他方の撮影方向と前記放射線画像検出器の検出面の垂線とのなす角が4°であることを特徴とする請求項1または2記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記グリッドを移動させるための移動機構を備えたものであることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記グリッドを用いない撮影を行うか否かの選択指示を受け付ける選択指示受付部を備え、
前記選択指示受付部において前記グリッドを用いない撮影を行う指示が受け付けられた場合に、前記他方の撮影方向については前記グリッドを用いない撮影を行うものであることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項6】
被写体に対して互いに異なる2つの撮影方向から放射線をそれぞれ照射し、該放射線の照射によって前記撮影方向毎の放射線画像を放射線画像検出器によりそれぞれ検出する放射線画像撮影方法であって、前記被写体と前記放射線画像検出器との間に前記被写体による散乱線を除去するグリッドを設けて前記放射線画像の撮影を行う放射線画像撮影方法において、
前記2つの撮影方向のうちの一方の撮影方向については前記グリッドを用いて撮影を行い、他方の撮影方向については前記グリッドを用いずに撮影を行うとともに、
前記グリッドを用いた撮影を行う際の前記放射線のエネルギーよりも前記グリッドを用いない撮影を行う際の前記放射線のエネルギーの方が低くなるようにすることを特徴とする放射線画像撮影方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−491(P2013−491A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137153(P2011−137153)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】