説明

放射線画像撮影装置、放射線画像撮影装置の制御プログラム、及び放射線画像撮影装置の制御方法

【課題】ダイナミックレンジを狭くすることなく、フィードスルーを抑制することができる、放射線画像撮影装置、放射線画像撮影装置の制御プログラム、及び放射線画像撮影装置の制御方法を提供する。
【解決手段】制御部106が、画素20n−1のTFTスイッチ4n−1をオフ状態にするタイミングと画素20nのTFTスイッチ4nをオン状態にするタイミングとを、同時タイミング、または、TFTスイッチ4がオン状態である期間とTFTスイッチ4n−1がオン状態である期間との一部とが重なるがほぼ同時とみなせるタイミングとするように制御するために、各TFTスイッチ4のゲートに走査配線101を介して制御信号Gを出力する。画素20nのTFTスイッチ4nをオン状態にすることにより発生したフィードスルー成分を、画素20n−1のTFTスイッチ4n−1をオフ状態にすることにより発生したキャンセル信号によりキャンセルすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影装置、放射線画像撮影装置の制御プログラム、及び放射線画像撮影装置の制御方法に係り、特に医療用の放射線画像を撮影する放射線画像撮影装置、放射線画像撮影装置の制御プログラム、及び放射線画像撮影装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、医療診断を目的とした放射線撮影を行う放射線画像撮影装置が知られている。当該放射線画像撮影装置は、放射線照射装置から照射され、被検体を透過した放射線を検出して放射線画像を撮影する。当該放射線画像撮影装置は、照射された放射線に応じて発生した電荷を収集して読み出すことにより放射線画像の撮影を行う。
【0003】
このような放射線画像撮影装置は、放射線を検出する放射線検出素子を備えている。当該検放射線出素子として、放射線または、放射線が変換された光が照射されることにより電荷を発生する光電変換素子と、光電変換素子で発生した電荷を読み出して当該電荷に応じた電気信号を出力するスイッチング素子と、当該スイッチング素子から出力された電気信号に応じた電荷を蓄積し、蓄積した電荷を増幅した電気信号を出力する積分回路により成る増幅回路と、が二次元に配置されたもの等がある。
【0004】
TFTアクティブマトリクス基板のように、TFT等のスイッチング素子をマトリクス状に多数個配置した場合、スイッチング素子をオン/オフさせるための複数本のゲート配線(走査配線)と、スイッチング素子がオンした画素からの信号電荷を伝送するための複数本の信号配線は交差配置した構成となり、寄生容量が生じる。スイッチング素子のオン時及びオフ時に、当該スイッチング素子に接続された走査配線と信号配線の交差位置に存在する寄生容量に加わる電圧の大きさが変化することで、寄生容量に誘導電荷が生じ、その電荷が信号配線を伝送される電荷(放射線画像用の信号電荷)にいわゆるフィードスルーと称されるノイズ成分として重畳される。放射線検出パネルは個々の画素に保持蓄積される電荷量が微小であり、信号配線に伝送される信号電荷のオーダーと、フィードスルー成分のオーダーとが等しいので、フィードスルー成分の影響を無視できない。特に、動画撮影の場合は、撮影毎の線量を静止画撮影よりも少なくするため、画素に保持蓄積される電荷量が更に微少となり、フィードスルー成分の影響が大きくなる場合がある。
【0005】
そのため、フィードスルーを除去(キャンセル)する技術として、例えば、特許文献1〜3に記載された技術がある。
【0006】
特許文献1には、別個に配置した専用の調整手段によりフィードスルーをキャンセルする技術が記載されている。また、特許文献2には、チャージアンプを相関2重サンプリングを行うための差動アンプとし、当該アンプにおける電荷信号の積分期間内において、スイッチング素子をオン状態にする制御信号の電圧の向きとは逆向きの電圧の信号を各ゲート配線に出力することにより、1積分期間内において、スイッチング素子のゲートをオンさせるための制御信号とゲートをオフさせるための制御信号とによりフィードスルー成分をキャンセルする技術が記載されている。また、特許文献3には、信号線に選択用スイッチを設け、この選択用スイッチとゲート配線のオン/オフ操作により、1積分期間内において、フィードスルー成分をキャンセルする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−56382号公報
【特許文献2】特開2006−101396号公報
【特許文献3】特開2007−108082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、専用の調整手段が必要であるため、以下のような問題が生じる。専用の調整手段のために専用回路等が必要であり、また、専用の調整手段への感度情報の重畳を避けるために、センサ容量を付加できず、容量が異なってしまう。またさらに、専用の調整手段はスイッチング素子(画素)の周辺部に配置する必要が有るため、大面積のセンサ基板では、容量が面内でばらついてしまう、という問題がある。
【0009】
一方、特許文献2に記載の技術では、電荷を蓄積する増幅回路には、信号電荷にフィードスルー成分が加わった電気信号が入力されることになり、当該電気信号が増幅回路の積分回路(アンプ)で増幅可能な範囲内に収まらなくなってしまうことにより、ダイナミックレンジが狭くなるという問題が生じる。
【0010】
また、特許文献3に記載の技術では、選択用スイッチをオンにしたときから積分回路への電荷の蓄積が開始するため、選択用スイッチによるスイッチングノイズ、スイッチング素子であるTFTのゲートオンによるスイッチングノイズにより、ダイナミックレンジが狭くなるという問題が生じる。
【0011】
本発明は、上記問題点を解決するために成されたものであり、ダイナミックレンジを狭くすることなく、フィードスルーを抑制することができる、放射線画像撮影装置、放射線画像撮影装置の制御プログラム、及び放射線画像撮影装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に記載の放射線画像撮影装置は、照射された放射線に応じた電荷を発生する光電変換素子、及び前記光電変換素子から前記電荷を読み出して前記電荷に応じた電気信号を信号線に出力するスイッチング素子を各々備え、かつ行列状に配置された画素と、前記スイッチング素子から出力された電気信号に応じた電荷を蓄積し、蓄積した電荷を増幅した電気信号を出力する増幅手段と、第1画素の前記スイッチング素子を駆動して前記電気信号を前記信号線に出力する第1期間と、前記第1画素の前記スイッチング素子の次に駆動する第2画素の前記スイッチング素子が前記電気信号を前記信号線に出力する第2期間の一部とが重なるように前記スイッチング素子から前記電気信号を出力する期間を制御する制御信号を制御配線に出力する、または、前記第1期間の終了と前記第2期間の開始とが重なるように前記制御信号を前記制御配線に出力する制御手段と、を備える。
【0013】
本発明によれば、制御手段が第1画素のスイッチング素子を駆動して電気信号を信号線に出力する第1期間と、第1画素の前記スイッチング素子の次に駆動する第2画素のスイッチング素子が電気信号を信号線に出力する第2期間の一部とが重なるようにスイッチング素子から電気信号を出力する期間を制御する制御信号を制御配線に出力する、または、第1期間の終了と第2期間の開始とが重なるように制御信号を前記制御配線に出力する。
【0014】
本発明では、上述のように制御手段が制御信号を出力することにより、第1画素のスイッチング素子を駆動して電気信号を信号線に出力する第1期間が終了する際に上述のフィードスルー成分と同レベルかつ、逆向きの信号を発生させることができるため、当該信号を用いてフィードスルー成分をキャンセルさせることができる。
【0015】
従って、専用の調整手段等を設けることなく、ダイナミックレンジを狭くすることなく、フィードスルーを抑制することができる。
【0016】
また、本発明に記載の放射線画像撮影装置のように、前記制御手段は、前記増幅手段が蓄積した電荷をリセットするリセット手段を備え、前記増幅手段が蓄積した前記第1画素の前記スイッチング素子から前記信号線に出力された前記電気信号に応じた電荷を前記リセット手段がリセットした後に、前記第1画素の前記第1期間が終了し、かつ前記第2画素の前記第2期間が開始することが好ましい。
【0017】
また、本発明に記載の放射線画像撮影装置のように、前記第1画素と前記第2画素とは、隣接する画素であることが好ましい。
【0018】
このようにすることにより、フィードスルー成分をキャンセルしたい対象の画素の近隣で補正が可能であるため、面内のばらつきによる影響を受けずに、適切にフィードスルー成分の抑制を行うことが出来る。
【0019】
また、本発明に記載の放射線画像撮影装置のように、前記スイッチング素子のオン抵抗をRon、前記スイッチング素子を備えた前記画素の画素容量をCpd、前記制御配線の配線抵抗をRg、配線容量をCgとした場合に、Cg×Rg<Cpd×Ronの関係を満たすことが好ましい。
【0020】
このようにすることにより、制御配線の遅延時間がスイッチング素子の遅延時間よりも充分に小さくなるため、電気信号の出力期間に比して、短期間でフィードスルー成分のキャンセル動作を完了させることができる。
【0021】
また、本発明に記載の放射線画像撮影装置のように、前記スイッチング素子のオン抵抗をRon、前記スイッチング素子を備えた前記画素の画素容量をCpd、前記制御配線の配線抵抗をRg、配線容量をCgとした場合に、前記制御手段は、前記第1期間と前記第2期間の一部とが重なる期間TがCg×Rg<T<Cpd×Ronの関係を満たすように前記スイッチング素子から前記電気信号を出力する期間を制御する制御信号を制御配線に出力することが好ましい。
また、本発明に記載の放射線画像撮影装置は、照射された放射線に応じた電荷を発生する光電変換素子、及び前記光電変換素子から前記電荷を読み出して前記電荷に応じた電気信号を信号線に出力するスイッチング素子を各々備え、かつ行列状に配置された画素と、前記スイッチング素子から出力された電気信号に応じた電荷を蓄積し、蓄積した電荷を増幅した電気信号を出力する増幅手段と、第1画素の前記スイッチング素子をオフにすることに起因して発生するフィードスルーノイズの電荷量に基づいて予め定められた第1発生期間と、前記第1画素の前記スイッチング素子の次に駆動する第2画素の前記スイッチング素子をオンにすることに起因して発生するフィードスルーノイズの電荷量に基づいて予め定められた第2発生期間と、が重なるように、前記スイッチング素子から前記電気信号を出力する期間を制御する制御信号を制御配線に出力する制御手段と、を備える。
また、本発明に記載の放射線画像撮影装置のように、前記制御手段は、前記第1発生期間に前記第2発生期間が含まれるように、前記制御信号を前記制御配線に出力することが好ましい。
【0022】
本発明の放射線画像撮影装置の制御プログラムは、照射された放射線に応じた電荷を発生する光電変換素子、及び前記光電変換素子から前記電荷を読み出して前記電荷に応じた電気信号を信号線に出力するスイッチング素子を各々備え、かつ行列状に配置された画素と、前記スイッチング素子から出力された電気信号に応じた電荷を蓄積し、蓄積した電荷を増幅した電気信号を出力する増幅手段と、を備えた放射線画像撮影装置による放射線画像の撮影を行う処理をコンピュータに実行させるための放射線画像撮影装置の制御プログラムであって、第1画素の前記スイッチング素子を駆動し前記電気信号を前記信号線に出力する第1期間と、前記第1画素の前記スイッチング素子の次に駆動する第2画素の前記スイッチング素子が前記電気信号を前記信号線に出力する第2期間の一部とが重なるように前記スイッチング素子から前記電気信号を出力する期間を制御する制御信号を制御配線に出力するステップ、または、前記第1期間の終了と前記第2期間の開始とが重なるように前記制御信号を前記制御配線に出力するステップ、を備えた処理をコンピュータに実行させるためのものである。
【0023】
本発明に記載の放射線画像撮影装置の制御方法は、照射された放射線に応じた電荷を発生する光電変換素子、及び前記光電変換素子から前記電荷を読み出して前記電荷に応じた電気信号を信号線に出力するスイッチング素子を各々備え、かつ行列状に配置された画素と、前記スイッチング素子から出力された電気信号に応じた電荷を蓄積し、蓄積した電荷を増幅した電気信号を出力する増幅手段と、を備えた放射線画像撮影装置において、第1画素の前記スイッチング素子を駆動し前記電気信号を前記信号線に出力する第1期間と、前記第1画素の前記スイッチング素子の次に駆動する第2画素の前記スイッチング素子が前記電気信号を前記信号線に出力する第2期間の一部とが重なるように前記スイッチング素子から前記電気信号を出力する期間を制御する制御信号を制御配線に出力する工程、または、前記第1期間の終了と前記第2期間の開始とが重なるように前記制御信号を前記制御配線に出力する工程、を備える。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、ダイナミックレンジを狭くすることなく、フィードスルーを抑制することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施の形態に係る放射線画像撮影システムの一例の概略構成を示す概略構成図である。
【図2】第1の実施の形態に係る放射線画像撮影装置の全体構成の一例を示す構成図である。
【図3】第1の本実施の形態に係る放射線検出素子の構成の一例を示す平面図である。
【図4】第1の本実施の形態に係る放射線検出素子の一例の線断面図である。
【図5】第1の本実施の形態に係る放射線画像撮影装置の信号検出回路の概略構成の一例を示す概略構成図である。
【図6】第1の本実施の形態に係る放射線画像撮影装置における放射線画像を撮影する際の動作の流れの一例を示したタイムチャートである。
【図7】第1の本実施の形態に係る放射線画像撮影装置における放射線画像を撮影する際の動作の流れの一例を示したタイムチャートである。
【図8】第2の本実施の形態に係る放射線画像撮影装置における放射線画像を撮影する際の動作の流れの一例を示したタイムチャートである。
【図9】従来の技術として例示した放射線画像撮影装置における動作の流れの一例を示したタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、各図面を参照して本実施の形態の一例について説明する。
〔第1の実施の形態〕
【0027】
まず、本実施の形態の放射線画像撮影装置を用いた放射線画像撮影システムの概略構成について説明する。図1は、本実施の形態の放射線画像撮影システムの一例の概略構成図である。
【0028】
放射線画像撮影システム200は、放射線(例えばエックス線(X線)等)を被検体206に照射する放射線照射装置204と、放射線照射装置204から照射され、被検体206を透過した放射線を検出する放射線検出素子10を備えた放射線画像撮影装置100と、放射線画像の撮影を指示すると共に、放射線画像撮影装置100から放射画像を取得する制御装置202と、を備えて構成されている。制御装置202の制御に基づいたタイミングで、放射線照射装置204から照射され撮影位置に位置している被検体206を透過することで画像情報を担持した放射線は放射線画像撮影装置100に照射される。
【0029】
次に、本実施の形態の放射線画像撮影装置100の概略構成について説明する。本実施の形態では、X線等の放射線を一旦光に変換し、変換した光を電荷に変換する間接変換方式の放射線検出素子10に本発明を適用した場合について説明する。本実施の形態では、放射線画像撮影装置100は、間接変換方式の放射線検出素子10を備えて構成されている。なお、図2では、放射線を光に変換するシンチレータは省略している。
【0030】
放射線検出素子10には、光を受けて電荷を発生し、発生した電荷を蓄積するセンサ部103と、センサ部103に蓄積された電荷を読み出すためのスイッチング素子であるTFTスイッチ4と、を含んで構成される画素20が複数、マトリックス状に配置されている。本実施の形態では、シンチレータによって変換された光が照射されることにより、センサ部103が、電荷が発生する。
【0031】
画素20は、一方向(図2の走査配線101方向、以下「行方向」ともいう)及び当該行方向に対する交差方向(図2の信号配線3方向、以下「列方向」ともいう)にマトリクス状に複数配置されている。図2では、画素20の配列を簡略化して示しているが、例えば、画素20は行方向及び列方向に1024×1024個配置されている。
【0032】
また、放射線検出素子10には、基板1(図3参照)上に、TFTスイッチ4をオン/オフするための複数の制御配線である走査配線101と、上記センサ部103に蓄積された電荷を読み出すための複数の信号配線3と、が互いに交差して設けられている。本実施の形態では、一方向の各画素列に信号配線3が1本ずつ設けられ、交差方向の各画素列に走査配線101が1本ずつ設けられており、例えば、画素20が行向及び列方向に1024×1024個配置されている場合、信号配線3及び走査配線101は1024本ずつ設けられている。
【0033】
さらに、放射線検出素子10には、各信号配線3と並列に共通電極配線25が設けられている。共通電極配線25は、一端及び他端が並列に接続されており、一端が所定のバイアス電圧を供給する電源110に接続されている。センサ部103は共通電極配線25に接続されており、共通電極配線25を介してバイアス電圧が印加されている。
【0034】
走査配線101には、各TFTスイッチ4をスイッチングするための制御信号が流れる。このように制御信号が各走査配線101に流れることによって、各TFTスイッチ4がスイッチング(オン/オフ)される。
【0035】
信号配線3には、各画素20のTFTスイッチ4がオン状態の場合に、各画素20に蓄積された電荷に応じた電気信号が流れる。より具体的には、各信号配線3には、当該信号配線3に接続された画素20の何れかのTFTスイッチ4がオンされることにより蓄積された電荷量に応じた電気信号が流れる。
【0036】
各信号配線3には、各信号配線3に流れ出した電気信号を検出する信号検出回路105が接続されている。また、各走査配線101には、各走査配線101にTFTスイッチ4をオン/オフするための制御信号を出力するスキャン信号制御回路104が接続されている。図2では、信号検出回路105及びスキャン信号制御回路104を1つに簡略化して示しているが、例えば、信号検出回路105及びスキャン信号制御回路104を複数設けて所定本(例えば、256本)毎に信号配線3又は走査配線101を接続する。例えば、信号配線3及び走査配線101が1024本ずつ設けられている場合、スキャン信号制御回路104を4個設けて256本ずつ走査配線101を接続し、信号検出回路105も4個設けて256本ずつ信号配線3を接続する。
【0037】
信号検出回路105は、各信号配線3毎に、入力される電気信号を増幅する増幅回路(増幅回路50、図5参照)を内蔵している。信号検出回路105では、各信号配線3より入力される電気信号を増幅回路により増幅し、ADC(アナログ・デジタル変換器)によりデジタル信号へ変換する(詳細後述)。
【0038】
この信号検出回路105及びスキャン信号制御回路104には、信号検出回路105において変換されたデジタル信号に対してノイズ除去などの所定の処理を施すとともに、信号検出回路105に対して信号検出のタイミングを示す制御信号を出力し、スキャン信号制御回路104に対してスキャン信号の出力のタイミングを示す制御信号を出力する制御部106が接続されている。
【0039】
本実施の形態の制御部106は、マイクロコンピュータによって構成されており、CPU(中央処理装置)、ROMおよびRAM、フラッシュメモリ等からなる不揮発性の記憶部を備えている。制御部106は、信号検出回路105から入力された、各放射線検出用の画素20の電荷情報を示す電気信号に基づいて、照射された放射線が示す画像を生成する。
【0040】
図3には、本実施形態に係る間接変換方式の放射線検出素子10の構造を示す平面図が示されており、図4には、図3の放射線画像撮影用の画素20AのA−A線断面図が示されている。
【0041】
図4に示すように、放射線検出素子10の画素20Aは、無アルカリガラス等からなる絶縁性の基板1上に、走査配線101(図3参照)、ゲート電極2が形成されており、走査配線101とゲート電極2は接続されている(図3参照)。この走査配線101、ゲート電極2が形成された配線層(以下、この配線層を「第1信号配線層」ともいう)は、Al若しくはCu、又はAl若しくはCuを主体とした積層膜を用いて形成されているが、これらに限定されるものではない。
【0042】
この第1信号配線層上には、一面に絶縁膜15が形成されており、ゲート電極2上に位置する部位がTFTスイッチ4におけるゲート絶縁膜として作用する。この絶縁膜15は、例えば、SiN 等からなっており、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)成膜により形成される。
【0043】
絶縁膜15上のゲート電極2上には、半導体活性層8が島状に形成されている。この半導体活性層8は、TFTスイッチ4のチャネル部であり、例えば、アモルファスシリコン膜からなる。
【0044】
これらの上層には、ソース電極9、及びドレイン電極13が形成されている。このソース電極9及びドレイン電極13が形成された配線層には、ソース電極9、ドレイン電極13とともに、信号配線3が形成されている。ソース電極9は信号配線3に接続されている(図3参照。)。ソース電極9、ドレイン電極13、及び信号配線3が形成された配線層(以下、この配線層を「第2信号配線層」ともいう)は、Al若しくはCu、又はAl若しくはCuを主体とした積層膜が用いて形成されるが、これらに限定されるものではない。当該ソース電極9及びドレイン電極13と半導体活性層8との間には不純物添加アモルファスシリコン等による不純物添加半導体層(図示省略)が形成されている。これらによりスイッチング用のTFTスイッチ4が構成される。なお、TFTスイッチ4は後述する下部電極11により収集、蓄積される電荷の極性によってソース電極9とドレイン電極13が逆となる。
【0045】
これら第2信号配線層を覆い、基板1上の画素20が設けられた領域のほぼ全面(ほぼ全領域)には、TFTスイッチ4や信号配線3を保護するために、TFT保護膜層30が形成されている。このTFT保護膜層30は、例えば、SiN 等からなっており、例えば、CVD成膜により形成される。
【0046】
このTFT保護膜層30上には、塗布型の層間絶縁膜12が形成されている。この層間絶縁膜12は、低誘電率(比誘電率εr=2〜4)の感光性の有機材料(例えば、ポジ型感光性アクリル系樹脂:メタクリル酸とグリシジルメタクリレートとの共重合体からなるベースポリマーに、ナフトキノンジアジド系ポジ型感光剤を混合した材料など)により1〜4μmの膜厚で形成されている。
【0047】
本実施の形態に係る放射線検出素子10では、この層間絶縁膜12によって層間絶縁膜12上層と下層に配置される金属間の容量を低く抑えている。また、一般的にこのような材料は平坦化膜としての機能も有しており、下層の段差が平坦化される効果も有する。本実施の形態に係る放射線検出素子10では、この層間絶縁膜12及びTFT保護膜層30のドレイン電極13と対向する位置にコンタクトホール17が形成されている。
【0048】
層間絶縁膜12上には、コンタクトホール17を埋めつつ、画素領域を覆うようにセンサ部103の下部電極11が形成されており、この下部電極11は、TFTスイッチ4のドレイン電極13と接続されている。この下部電極11は、後述する半導体層21が1μm前後と厚い場合には導電性があれば材料に制限がほとんどない。このため、Al系材料、ITOなど導電性の金属を用いて形成すれば問題ない。
【0049】
一方、半導体層21の膜厚が薄い場合(0.2〜0.5μm前後)、半導体層21で光が吸収が十分でないため、TFTスイッチ4への光照射によるリーク電流の増加を防ぐため、遮光性メタルを主体とする合金、若しくは積層膜とすることが好ましい。
【0050】
下部電極11上には、フォトダイオードとして機能する半導体層21が形成されている。本実施の形態では、半導体層21として、n+層、i層、p+層(n+アモルファスシリコン、アモルファスシリコン、p+アモルファスシリコン)を積層したPIN構造のフォトダイオードを採用しており、下層からn+層21A、i層21B、p+層21Cを順に積層して形成する。i層21Bは、光が照射されることにより電荷(一対の自由電子と自由正孔)が発生する。n+層21A及びp+層21Cは、コンタクト層として機能し、下部電極11及び後述する上部電極22とi層21Bをと電気的に接続する。
【0051】
各半導体層21上には、それぞれ個別に上部電極22が形成されている。この上部電極22には、例えば、ITOやIZO(酸化亜鉛インジウム)などの光透過性の高い材料を用いている。本実施の形態に係る放射線検出素子10では、上部電極22や半導体層21、下部電極11を含んでセンサ部103が構成されている。
【0052】
層間絶縁膜12、半導体層21及び上部電極22上には、上部電極22に対応する一部で開口27Aを持ち、各半導体層21を覆うように、塗布型の層間絶縁膜23が形成されている。
【0053】
この層間絶縁膜23上には、共通電極配線25がAl若しくはCu、又はAl若しくはCuを主体とした合金あるいは積層膜で形成されている。共通電極配線25は、開口27A付近にコンタクトパッド27が形成され、層間絶縁膜23の開口27Aを介して上部電極22と電気的に接続される。
【0054】
このように形成された放射線検出素子10には、必要に応じてさらに光吸収性の低い絶縁性の材料により保護膜が形成されて、その表面に光吸収性の低い接着樹脂を用いてGOS等からなるシンチレータが貼り付けられる。
【0055】
次に、本実施の形態の信号検出回路105の概略構成について説明する。図5は、本実施の形態の信号検出回路105の一例の概略構成図である。本実施の形態の信号検出回路105は、増幅回路50、及びADC(アナログ・デジタル変換器)54を備えて構成されている。なお、図5では、図示を省略したが増幅回路50は、信号配線3毎に設けられている。すなわち、信号検出回路105は、放射線検出素子10の信号配線3の数と同じ数の、複数の増幅回路50を備えて構成されている。
【0056】
増幅回路50は、チャージアンプ回路で構成されており、基準電位に基づいて電荷を増幅するオペアンプ等のアンプ52と、アンプ52に並列に接続されたコンデンサCと、アンプ52に並列に接続された電荷リセット用のスイッチSW1と、を備えて構成されている。
【0057】
増幅回路50では、電荷リセット用のスイッチSW1がオフの状態で画素20のTFTスイッチ4により電荷(電気信号)が読み出され、コンデンサCにTFTスイッチ4により読み出された電荷が蓄積され、蓄積される電荷量に応じてアンプ52から出力される電圧値が増加(昇圧)するようになっている。
【0058】
また、制御部106は、電荷リセット用スイッチSW1に電荷リセット信号を印加して電荷リセット用のスイッチSW1のオン/オフを制御するようになっている。なお、電荷リセット用のスイッチSW1がオン状態とされると、アンプ52の入力側と出力側とが短絡され、コンデンサCの電荷が放電される。これにより、アンプ52内の電荷がリセット(本実施の形態ではグランドレベルにリセット)される。
【0059】
ADC54は、S/H(サンプルホールド)スイッチSW2がオン状態において、増幅回路50から入力されたアナログ信号である電気信号をデジタル信号に変換する機能を有するものである。ADC54は、デジタル信号に変換した電気信号を制御部106に順次出力する。
【0060】
なお、本実施の形態のADC54には、信号検出回路105に備えられた全ての増幅回路50から出力された電気信号が入力される。すなわち、本実施の形態の信号検出回路105は、増幅回路50(信号配線3)の数にかかわらず、1つのADC54を備えている。
【0061】
本実施の形態の制御部106は、放射線画像のための電荷情報を信号検出回路105(ADC54)から読み取って、撮影された放射線画像の画像データを生成する際に、TFTスイッチ4のオン/オフタイミングを制御することにより、ダイナミックレンジを狭くすることなく、フィードスルーを抑制する機能を有している。
【0062】
次に、図6、図7、及び図9を参照して、上記構成の放射線画像撮影装置100の制御部106が、撮影された放射線画像の画像データを生成する際の、TFTスイッチ4のオン/オフタイミングの制御動作について説明する。図6、7には、放射線画像を撮影する際の動作の流れの一例を示したタイムチャートを示す。なお、本実施の形態の放射線画像撮影装置100では、放射線画像の撮影の際の各動作は、画素20の行毎(走査配線101毎)に行われる。また、図9には、比較例として、上述の従来の技術として例示した放射線画像撮影装置における動作の流れの一例を示したタイムチャートを示す。
【0063】
放射線照射装置204から放射線が照射されると、照射された放射線は、シンチレータに吸収され、可視光に変換される。なお、放射線は、放射線検出素子10の表側、裏側の何れから照射されてもかまわない。シンチレータで可視光に変換された光は、各画素20のセンサ部103に照射される。
【0064】
センサ部103では、光が照射されると内部に電荷が発生する。この発生した電荷は下部電極11により収集されることにより、センサ部103の電荷(信号電荷)が増加する。
【0065】
画素20(画素20n−1)から電荷を読み取るために、TFTスイッチ4のゲート信号Gn−1がVghになり、ゲート信号Gn−1が入力される走査配線101に接続された1行分の画素20n−1では、TFTスイッチ4(TFTスイッチ4n−1)がオン状態になり、センサ部103に蓄積された電荷が読み出されて、増幅回路50のコンデンサCに蓄積される。
【0066】
本実施の形態では、センサ部103から電荷を読み出すのに充分な予め定められた期間が経過した後、所定期間、増幅回路50の電荷リセット用スイッチSW1をオンに(図6、アンプリセット参照)して、増幅回路50のコンデンサCに蓄積された電荷を放電(リセット)する。
【0067】
次に、画素20nから電荷を読み取るが、この際、上述したように、本実施の形態の放射線画像撮影装置100では、TFTスイッチ4をオン/オフさせるための複数本の走査配線101と、スイッチング素子4がオンした画素20からの信号電荷を伝送するための複数本の信号配線3を交差配置した構成となっているため、スイッチング素子4のオン時及びオフ時に、当該スイッチング素子4に接続された走査配線101と信号配線3の交差位置に存在する寄生容量に加わる電圧の大きさが変化することで、信号配線3を伝送される信号電荷に、フィードスルー(図6、7参照)が重畳される。
【0068】
そのため、本実施の形態の放射線画像撮影装置100では、増幅回路50(アンプ52)のリセット後、画素20n−1のTFTスイッチ4n−1がオン状態である期間が終了(オフ状態に)すると共に、画素20nのTFTスイッチ4nがオン状態に(オン状態である期間を開始)する。TFTスイッチ4n−1をオフ状態にするタイミングと、TFTスイッチ4nをオン状態にするタイミングとは、図7に示したように、同じタイミングであることが好ましい。または図6に示したように、TFTスイッチ4n−1をオフ状態にするタイミングと、TFTスイッチ4nをオン状態にするタイミングがほぼ同時とみなせる期間であれば、TFTスイッチ4がオン状態である期間と、TFTスイッチ4n−1がオン状態である期間とが重なる、すなわち両期間の一部が重なっていてもよい。
【0069】
ここで、TFTスイッチ4n−1をオフ状態にするタイミングと、TFTスイッチ4nをオン状態である期間とが重なる期間をTとすると、TFTスイッチ4nによる電荷Qの読み出しが進む前に、フィードスルー成分のキャンセル動作を終了させるためには、期間Tは、TFTスイッチ4nに接続された走査配線101nの遅延時間τgよりも大きく、TFTスイッチ4nのスイッチング遅延時間τtftよりも小さくなる範囲であればよい。
【0070】
TFTスイッチ4nに接続された走査配線101nの遅延時間τgは、走査配線101nの配線容量をCg、走査配線101nの配線抵抗をRgとすると、次の(1)式となる。
【0071】
τg=Cg×Rg ・・・(1)
【0072】
また、TFTスイッチ4nのスイッチング遅延時間τtftは、検出画素20nの容量(フォトダイオード容量Cpd+TFTスイッチ4の容量Ctft≒Cpd)をCpd、TFTスイッチ4nのオン抵抗をRonとすると、次の(2)式となる。
【0073】
τtft=Cpd×Ron ・・・(2)
【0074】
従って、期間Tの範囲は、次の(3)式の関係式を満たすような範囲であればよい。
【0075】
τg<T<τtft ・・・(3)
【0076】
また、次の(4)式の関係が成り立つようにTFTスイッチ4nのサイズを規定してやればよい。
【0077】
Cg×Rg<Cpd×Ron ・・・(4)
【0078】
一般的に、配線容量Cgは数百pF、配線抵抗Rgは数kΩ、容量Cpdは数pF、オン抵抗Ronは数MΩであるので、0.数μs<T<数μsであればよい。例えば、配線容量Cg=100pF、配線抵抗Rg=10kΩ、容量Cpd=2pF、オン抵抗Ron=5MΩとすると、上記(1)式により遅延時間τg=1μsとなり、上記(2)式によりスイッチング遅延時間τtft=10μsとなる。従って、上記(3)式により期間Tを1〜10μsに設定する。
【0079】
さらに好ましくは、画素20nからの電荷Qが充分に信号配線3に流れ出す前(スイッチング遅延時間τtftの50%程度よりも前)に前段と後段のフィードスルーのキャンセルが完了しておいた方がよい。すなわち、次の(5)式の関係式を満たすような範囲が好ましい。
【0080】
τg<T<τtft×0.5 ・・・(5)
【0081】
当該(5)式に、上記の例を当てはめると、期間T=1〜5μsとなる。
【0082】
また、上記の例では、遅延時間τgがスイッチング遅延時間τtftよりも充分に小さくなるため、電荷Qの読み出しが進む前に、フィードスルー成分のキャンセル動作が完了する。従って、アンプ52のダイナミックレンジを拡大することができる。
【0083】
TFTスイッチ4をオンにした際にフィードスルーが発生するが、TFTスイッチ4n−1のオフによって、当該フィードスルーとレベルが等しく逆向きの信号(キャンセル信号)が発生するため、TFTスイッチ4がオン状態である期間と、TFTスイッチ4n−1がオン状態である期間とをほぼ同時期とすることにより、フィードスルー成分をすぐにキャンセルすることができる。
【0084】
そのため、画素20nから読み出された信号電荷Qnには、フィードスルーが重畳するのを抑制できる。従って、増幅回路50(アンプ52)のゲインは、信号電荷を考慮して設定してやればよく(図6、7、G1参照)、増幅回路50(アンプ52)のダイナミックレンジが制限されず、有効活用することができる。
【0085】
一方、図9に示した従来の放射線画像撮影装置では、ゲート信号Gn−1がオフ(Vgl)になった後、アンプがリセットされ、リセットが終わった後に、ゲート信号Gnがオン(Vgh)になる。そのため、ゲート信号Gnのオン後に発生したフィードスルー成分がキャンセルされず、ゲート信号Gnがオンになったことにより読み出される信号電荷Qnにフィードスルー成分が重畳されてしまう。従って、トータルの電荷量が多くなってしまうため、ゲインの設定を図6、7に示した本実施の形態におけるG1からG2に上げなくてはならす、アンプのダイナミックレンジが狭くなる。すなわち、重畳されたフィードスルー成分に応じた電荷量の分、ダイナミックレンジが狭くなる。
【0086】
以上説明したように、本実施の形態の放射線画像撮影装置100では、制御部106が、画素20n−1のTFTスイッチ4n−1をオフ状態にするタイミングと、画素20nのTFTスイッチ4nをオン状態にするタイミングとを、同時タイミング、または、TFTスイッチ4がオン状態である期間と、TFTスイッチ4n−1がオン状態である期間との一部とが重なるがほぼ同時とみなせるタイミングとするように制御するために、各TFTスイッチ4のゲートに走査配線101を介して制御信号Gを出力する。
【0087】
これにより、画素20nのTFTスイッチ4nをオン状態にすることにより発生したフィードスルー成分を、画素20n−1のTFTスイッチ4n−1をオフ状態にすることにより発生したキャンセル信号によりキャンセルすることができるため、すぐさま、フィードスルー成分がキャンセルされる。従って、信号電荷Qnにフィードスルー成分が重畳することがなく、さらにダイナミックレンジが狭くなるのを抑制することができる。
〔第2の実施の形態〕
本実施の形態は、第1の実施の形態の放射線画像撮影装置100と略同様の構成及び動作を有しているため、略同様の構成及び動作についてはその旨を記し、詳細な説明を省略する。
本実施の形態の放射線画像撮影装置100において発生するフィードスルーノイズについて図8を参照して説明する。図8には、本実施の形態の放射線画像撮影装置100により放射線画像を撮影する際の動作の流れの一例を示したタイムチャートを示す。
画素20n−1のTFTスイッチ4n−1がオン状態である期間が終了する(ゲート信号が立ち下がる)際、当該動作に起因して、寄生容量に加わる電圧の大きさが変化する。当該変化に伴い、寄生容量に誘導電化(フィードスルーノイズ)が発生する。当該フィードスルーノイズは、図8に示すように、負極性を示す。一方、画素20nのTFTスイッチ4nがオン状態である期間が開始する(ゲート信号が立ち上がる)際、当該動作に起因して、寄生容量に加わる電圧の大きさが変化する。当該変化に伴い、寄生容量に誘導電化(フィードスルーノイズ)が発生する。当該フィードスルーノイズは、図8に示すように正極性を示す。両フィードスルーノイズは、電荷量の絶対値が同量(図8においてフィードスルーノイズを示した斜線部の面積が同一)である。
このように、両フィードスルーノイズは、互いに極性が異なり、かつ、電荷量(エネルギー総量)が等しい。そこで本実施の形態の放射線画像撮影装置100では、TFTスイッチ4nがオン状態になることに起因して発生したフィードスルーノイズを、TFTスイッチ4n−1がオフ状態になることに起因して発生したフィードスルーノイズによりキャンセルすることができるように、制御信号Gを出力する。
すなわち本実施の形態の放射線画像撮影装置100は、TFTスイッチ4n−1がオフ状態に切り替わるのに伴って発生したフィードスルーノイズの発生期間tn−1内に、TFTスイッチ4nがオン状態に切り替わるのに伴って発生したフィードスルーノイズの発生期間tnが含まれるようにTFTスイッチ4をオン/オフさせるタイミングを制御している。
なお、フィードスルーノイズの発生期間(発生期間tn及び発生期間tn−1)は、フィードスルーノイズが発生した全期間(発生開始から発生終了まで)でなくてもよい。予め定められた量のフィードスルーノイズ(電荷)が発生している期間としてもよい。フィードスルーノイズの発生期間については、予め実験等により得ておけばよい。
図8に示すように発生期間tn−1は、TFTスイッチ4n−1がオフ状態に切り替わったタイミングよりも後になる。一方、図8に示すように発生期間tnは、TFTスイッチ4nがオン状態に切り替わったタイミングよりも後になる。発生期間tn−1内に、発生期間tnが含まれるように、制御するため、本実施の形態の放射線画像撮影装置100では、TFTスイッチ4n−1がオフ状態になったタイミングから所定時間経過後にTFTスイッチ4nがオン状態になる。
なお、図8に示すように、発生期間tn−1内に、発生期間tnが完全に含まることが好ましいが、完全に含まれていなくとも、一部が含まれる場合であってもよい。発生期間tn−1と発生期間tnとが一部の期間でも重なり合えば、フィードスルー成分を信号線上でキャンセルすることができる。なお、一部の期間が重なり合う場合は、重なり合わない期間に発生したフィードスルーノイズが信号に重畳することになるため、発生するフィードスルーノイズの大きさや、ダイナミックレンジを考慮して、重なり合わせる期間を定めるようにすることが好ましい。
以上、各実施の形態で説明したように、放射線画像撮影装置100では、画素20nのTFTスイッチ4nをオン状態にすることにより発生したフィードスルー成分(ノイズ)を、画素20n−1のTFTスイッチ4n−1をオフ状態にすることにより発生したキャンセル信号またはフィードスルーノイズによりキャンセルすることができる。そのため、すぐさま、フィードスルー成分(ノイズ)がキャンセルされる。従って、信号電荷Qnにフィードスルー成分(ノイズ)が重畳することがなく、さらにダイナミックレンジが狭くなるのを抑制することができる。
また、専用の調整手段を用いる必要がないため、専用の回路等を設ける必要がない。そのため、フィードスルー成分をキャンセルしたい対象の部位(画素20)の近隣で補正が可能である。従って、TFT4の面内のばらつきによる影響を受けずに、適切にフィードスルー成分の抑制を行うことが出来る。
【0088】
なお、上記各実施の形態では、隣接する画素20を用いた場合について詳細に説明したが、同一の信号線3に接続された画素20同士であって、TFTスイッチ4を駆動するタイミングが上述のように制御されるものであれば限定されず、隣接しない画素20を用いてもよい。画素20の構成要素、例えばセンサ部103やTFT4の特性は、近傍画素、特に隣接画素間においては特性差は無視できるレベルであるが、場所が離れるにつれて画素間の特性差は無視できなくなることがある。そのため、よりフィードスルー成分をキャンセルする目的においては上述のように近傍、特に隣接する画素20を用いフィードスルー成分をキャンセルすることが好ましい。すなわち、近接する走査配線101同士に接続されるTFTスイッチ4のオン/オフを制御することにより、フィードスルー成分の抑制(キャンセル)を行うことが好ましい。
なお、ダミーの走査配線101を設けておくことが好ましい。ダミーの走査配線101に対してTFTスイッチ4を駆動するのと同様に制御信号Gを出力することにより、最初に電荷が読み出される行の画素20のTFTスイッチ4をオン状態にすることにより発生したフィードスルー成分をキャンセルさせることができる。また同様に、最後に電荷が読み出される行の画素20のTFTスイッチ4をオフ状態にすることにより発生したフィードスルー成分をキャンセルさせることができる
なお、上記各実施の形態では、間接変換方式の場合について説明したがこれに限らず、放射線を直接、半導体層で電荷に変換して蓄積する直接変換方式の場合に適用してもよい。この場合、直接変換方式における放射線検知素子は、放射線が照射されることにより電荷を発生する。
また、その他上記各実施の形態で説明した放射線画像撮影装置100、放射線検出素子10等の構成、動作等は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更可能であることは言うまでもない。
【0089】
また、上記各実施の形態において放射線は、特に限定されるものではなく、X線やγ線等を適用することができる。
また、画素20の形状は、上記各実施の形態に限定されない。例えば、上記各実施の形態では、矩形画素20を示したが画素20の形状は、矩形状に限らずその他の形状でもよい。また、走査配線101と信号配線3とが交差するように配置された形態であれば、画素20の配置も上記各実施の形態に限定されない。例えば、画素20が行列状に配置される形態として、図2に示したように、矩形状に規則性を有して配置された場合を示したが、画素20が2次元状に規則性を有して配置される形態であれば限定されない。
【符号の説明】
【0090】
3 信号配線
4 TFTスイッチ
10 放射線検出素子
20 画素
50 増幅回路
52 アンプ
100 放射線画像撮影装置
101 走査配線
103 センサ部
105 信号検出回路
106 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射された放射線に応じた電荷を発生する光電変換素子、及び前記光電変換素子から前記電荷を読み出して前記電荷に応じた電気信号を信号線に出力するスイッチング素子を各々備え、かつ行列状に配置された画素と、
前記スイッチング素子から出力された電気信号に応じた電荷を蓄積し、蓄積した電荷を増幅した電気信号を出力する増幅手段と、
第1画素の前記スイッチング素子を駆動して前記電気信号を前記信号線に出力する第1期間と前記第1画素の前記スイッチング素子の次に駆動する第2画素の前記スイッチング素子が前記電気信号を前記信号線に出力する第2期間の一部とが重なるように前記スイッチング素子から前記電気信号を出力する期間を制御する制御信号を制御配線に出力する、または、前記第1期間の終了と前記第2期間の開始とが重なるように前記制御信号を前記制御配線に出力する制御手段と、
を備えた放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記増幅手段が蓄積した電荷をリセットするリセット手段を備え、
前記制御手段は、前記増幅手段が蓄積した前記第1画素の前記スイッチング素子から前記信号線に出力された前記電気信号に応じた電荷を前記リセット手段がリセットした後に、前記第1画素の前記第1期間が終了し、かつ前記第2画素の前記第2期間が開始する、請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記第1画素と前記第2画素とは、隣接する画素である、請求項1または請求項2に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記スイッチング素子のオン抵抗をRon、前記スイッチング素子を備えた前記画素の画素容量をCpd、前記制御配線の配線抵抗をRg、配線容量をCgとした場合に、Cg×Rg<Cpd×Ronの関係を満たす、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記スイッチング素子のオン抵抗をRon、前記スイッチング素子を備えた前記画素の画素容量をCpd、前記制御配線の配線抵抗をRg、配線容量をCgとした場合に、前記制御手段は、前記第1期間と前記第2期間の一部とが重なる期間TがCg×Rg<T<Cpd×Ronの関係を満たすように前記スイッチング素子から前記電気信号を出力する期間を制御する制御信号を制御配線に出力する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項6】
照射された放射線に応じた電荷を発生する光電変換素子、及び前記光電変換素子から前記電荷を読み出して前記電荷に応じた電気信号を信号線に出力するスイッチング素子を各々備え、かつ行列状に配置された画素と、
前記スイッチング素子から出力された電気信号に応じた電荷を蓄積し、蓄積した電荷を増幅した電気信号を出力する増幅手段と、
第1画素の前記スイッチング素子をオフにすることに起因して発生するフィードスルーノイズの電荷量に基づいて予め定められた第1発生期間と、前記第1画素の前記スイッチング素子の次に駆動する第2画素の前記スイッチング素子をオンにすることに起因して発生するフィードスルーノイズの電荷量に基づいて予め定められた第2発生期間と、が重なるように、前記スイッチング素子から前記電気信号を出力する期間を制御する制御信号を制御配線に出力する制御手段と、
を備えた放射線画像撮影装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記第1発生期間に前記第2発生期間が含まれるように、前記制御信号を前記制御配線に出力する、請求項6に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項8】
照射された放射線に応じた電荷を発生する光電変換素子、及び前記光電変換素子から前記電荷を読み出して前記電荷に応じた電気信号を信号線に出力するスイッチング素子を各々備え、かつ行列状に配置された画素と、前記スイッチング素子から出力された電気信号に応じた電荷を蓄積し、蓄積した電荷を増幅した電気信号を出力する増幅手段と、を備えた放射線画像撮影装置による放射線画像の撮影を行う処理をコンピュータに実行させるための放射線画像撮影装置の制御プログラムであって、
第1画素の前記スイッチング素子を駆動し前記電気信号を前記信号線に出力する第1期間と、前記第1画素の前記スイッチング素子の次に駆動する第2画素の前記スイッチング素子が前記電気信号を前記信号線に出力する第2期間の一部とが重なるように前記スイッチング素子から前記電気信号を出力する期間を制御する制御信号を制御配線に出力するステップ、または、前記第1期間の終了と前記第2期間の開始とが重なるように前記制御信号を前記制御配線に出力するステップ、
を備えた処理をコンピュータに実行させるための放射線画像撮影装置の制御プログラム。
【請求項9】
照射された放射線に応じた電荷を発生する光電変換素子、及び前記光電変換素子から前記電荷を読み出して前記電荷に応じた電気信号を信号線に出力するスイッチング素子を各々備え、かつ行列状に配置された画素と、前記スイッチング素子から出力された電気信号に応じた電荷を蓄積し、蓄積した電荷を増幅した電気信号を出力する増幅手段と、を備えた放射線画像撮影装置において、
第1画素の前記スイッチング素子を駆動し前記電気信号を前記信号線に出力する第1期間と、前記第1画素の前記スイッチング素子の次に駆動する第2画素の前記スイッチング素子が前記電気信号を前記信号線に出力する第2期間の一部とが重なるように前記スイッチング素子から前記電気信号を出力する期間を制御する制御信号を制御配線に出力する工程、または、前記第1期間の終了と前記第2期間の開始とが重なるように前記制御信号を前記制御配線に出力する工程、
を備えた放射線画像撮影装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−178825(P2012−178825A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−19943(P2012−19943)
【出願日】平成24年2月1日(2012.2.1)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】