説明

放射線画像撮影装置及び画像処理装置

【課題】直接線領域においてノイズ等があってもその影響を除去してマンモ画像を見やすく表示することができる放射線画像撮影装置を提供する。
【解決手段】放射線源からの放射線を被検体に照射し、被検体を透過した放射線を放射線検出器で検出してデジタル画像データを取得する乳房撮影部と、デジタル画像データを処理して直接線領域とマンモ領域との境界情報を求める境界情報検出部と、境界情報に基づいて、マンモ領域と反対側に延びる領域を黒化処理領域として設定する黒化処理領域設定部と、デジタル画像データのうち、黒化処理領域の画素を黒化処理して出力する黒化処理部と、黒化処理部からの出力画像を表示する表示部と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線(X線)を用いて被検体の撮影を行うもので、特に乳房画像の撮影に適した放射線画像撮影装置及び画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野において乳房画像を撮影する放射線画像撮影装置としてマンモグラフィ装置が知られている。マンモグラフィ装置は、被検者の健康を害しない程度の放射線(例えばX線)を放射線源から被写体(乳房)に向かって照射し、被検体を透過した放射線をデジタル放射線検出器で検出し、画像データを取得するものである。
【0003】
ところで、マンモグラフィ装置で撮影した画像(マンモ画像)をポジ表示すると、直接線の部分が真っ白に表示され、読影者の目が疲れる等の悪影響を及ぼすため、直接線の部分を常に黒く表示するように黒化処理を行っている。
【0004】
黒化処理を行うには、マンモ画像から直接線の画像領域を検出する必要がある。検出方法の一つとして、ヒストグラムから直接線の山を探し、その山の最小画素値を基準値とし、基準値以上の画素を直接線として検出する方法がある。
【0005】
特許文献1には、マンモグラフィ画像の照射野外領域を黒化処理するとともに、高輝度の白抜け領域を黒化処理する画像処理装置について記載されている。
【0006】
しかしながら、上記した直接線の検出方法では、ノイズ等の影響により被写体領域以外で基準点より低い画素があると、その画素は黒化処理の対象とならずに白く残ってしまうという欠点がある。また、黒化処理後のスキンラインが不自然になってしまうという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−283281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の放射線画像撮影装置では、マンモ画像の直接線の部分を黒化処理して表示した場合に、ノイズ等の影響により被写体領域以外で基準点より低い画素があると、黒化処理されずに白く残ったり、黒化処理後のスキンラインが不自然になるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みて成されたもので、直接線領域においてノイズ等があってもその影響を除去してマンモ画像を見やすく表示することができる放射線画像撮影装置及び画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の本発明の放射線画像撮影装置は、放射線源からの放射線を被検体に照射し、前記被検体を透過した放射線を放射線検出器で検出してデジタル画像データを取得する乳房撮影部と、前記デジタル画像データを処理して、直接線領域とマンモ領域との境界情報を求める境界情報検出部と、前記境界情報に基づいて、前記マンモ領域と反対側に延びる領域を黒化処理領域として設定する黒化処理領域設定部と、前記デジタル画像データのうち、前記黒化処理領域の画素を黒化処理して出力する黒化処理部と、前記黒化処理部からの出力画像を表示する表示部と、を具備したことを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の本発明の放射線画像撮影装置は、放射線源からの放射線を被検体に照射し、前記被検体を透過した放射線を放射線検出器で検出してデジタル画像データを取得する乳房撮影部と、前記デジタル画像データを処理して、直接線領域とマンモ領域との境界部の情報を求める境界情報検出部と、前記境界部の情報に基づいて、前記マンモ領域と反対側に延びる領域を黒化処理領域として設定する黒化処理領域設定部と、前記境界部の胸壁−ニプル方向の座標の画素に対しスムージング処理を施し、前記スムージングした領域以外の前記黒化処理領域の画素を黒化処理して出力する黒化処理部と、前記黒化処理部からの出力画像を表示する表示部と、を具備したことを特徴とする。
【0012】
請求項7記載の本発明の放射線画像撮影装置は、放射線源からの放射線を被検体に照射し、前記被検体を透過した放射線を放射線検出器で検出してデジタル画像データを取得する乳房撮影部と、前記デジタル画像データを処理して、直接線領域とマンモ領域との境界情報を求める境界情報検出部と、前記境界情報に基づいて、前記マンモ領域と反対側に延びる領域を黒化処理領域として設定する黒化領域設定部と、前記デジタル画像データのうち、前記黒化処理領域の画素を前記マンモ領域から遠去かるに従って段階的に黒レベルに近づくようにグラデーション処理する黒化処理部と、前記黒化処理部からの出力画像を表示する表示部と、を具備したことを特徴とする。
【0013】
また、請求項11記載の本発明は、乳房撮影部で取得したデジタル画像データを処理する画像処理装置であって、前記デジタル画像データを処理して、直接線領域とマンモ領域との境界情報を求める境界情報検出部と、前記境界情報に基づいて、前記マンモ領域と反対側に延びる領域を黒化処理領域として設定する直接線領域設定部と、前記デジタル画像データのうち、前記黒化処理領域の画素を黒化処理して出力する黒化処理部と、を具備したことを特徴とする。
【0014】
請求項12記載の本発明は、乳房撮影部で取得したデジタル画像データを処理する画像処理装置であって、前記デジタル画像データを処理して、直接線領域とマンモ領域との境界部の情報を求める境界情報検出部と、前記境界部の情報に基づいて、前記マンモ領域と反対側に延びる領域を黒化処理領域として設定する黒化処理領域設定部と、前記境界部の胸壁−ニプル方向の座標の画素に対しスムージング処理を施し、前記スムージングした領域以外の前記黒化処理領域の画素を黒化処理して出力する黒化処理部と、を具備したことを特徴とする。
【0015】
請求項13記載の本発明は、乳房撮影部で取得したデジタル画像データを処理する画像処理装置であって、前記デジタル画像データを処理して、直接線領域とマンモ領域との境界情報を求める境界情報検出部と、前記境界情報に基づいて、前記マンモ領域と反対側に延びる領域を黒化処理領域として設定する黒化処理領域設定部と、前記デジタル画像データのうち、前記黒化処理領域の画素を前記マンモ領域から遠去かるに従って段階的に黒レベルに近づくようにグラデーション処理する黒化処理部と、を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、直接線領域に基準値より低い画素があっても黒化処理した際に白く残ることはない。またマンモ領域と直接線領域との境界部を広くしたり、スムージング処理、或いはグラデーション処理によりマンモ画像を見やすく表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の放射線画像撮影装置の一実施形態を示す構成図。
【図2】本発明の放射線画像撮影装置のハードウェア構成を示すブロック図。
【図3】一実施形態におけるデータ処理部の詳細な構成を示すブロック図。
【図4】データ処理部の直接線検出部の動作を説明するヒストグラム。
【図5】データ処理部の黒化処理の基本動作を説明する説明図。
【図6】データ処理部の第1の直接線領域設定部及び第1の黒化処理領域設定部の動作説明図。
【図7】データ処理部の第2の直接線領域設定部の動作説明図。
【図8】データ処理部の第2の黒化処理領域設定部の動作説明図。
【図9】データ処理部の第3の黒化処理領域設定部の動作説明図。
【図10】データ処理部の第1、第2の黒化処理部の動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の一実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0019】
図1は、本発明の放射線画像撮影装置の一実施形態を示す構成図である。図1において、10は放射線画像撮影装置であり、乳房撮影部11を有している。乳房撮影部11は、アーム12の一端(上端)に装着されたX線管球(放射線源)13と、アーム12の他端(下端)に取り付けられた天板14を備え、天板14内にX線検出器15を設けている。またX線管球13と天板14の間には、被検体P(乳房)を圧迫するための圧迫板16が上下方向に可動的に取り付けられている。
【0020】
X線検出器(放射線検出器)15は、平面型の検出器(FPD:Flat Panel Detector)であり、二次元的に配置された複数の画素をマトリクス状に配置してなり、各画素によって被検体Pを透過したX線(放射線)をそれぞれ検出し、検出したX線を電気信号に変換する。またX線検出器15は、電気信号を増幅する増幅器と、増幅された電気信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換するA/D変換器を備えている。天板14は、X線管球13と対向しており、天板14の上に被検体を載置し、天板14と圧迫板16との間に被検体Pを挟み圧迫して撮影を行う。
【0021】
図2は、本発明の放射線画像撮影装置10のハードウェア構成を説明するブロック図である。
【0022】
図2において、乳房撮影部11は、X線管球13とX線検出器15を含み、X線管球13は高圧発生部17から供給される高電圧によってX線を発生する。被検体Pを透過したX線は、X線検出器15で検出され、電気信号に変換される。電気信号はデータ収集部18を介して読み出され、コンピュータシステム20にデジタル投影データ(デジタル画像データ)を伝送する。
【0023】
コンピュータシステム20はバスライン21を有し、このバスライン21には、システム制御部22、データ記憶部23、データ処理部24、操作部25、表示部26が接続されている。
【0024】
システム制御部22は、コンピュータシステム20の全体の動作を制御する。データ記憶部23は、データ収集部18から送られてきたデジタル画像データを記憶する。データ処理部24は、データ記憶部23に記憶された画像データを処理してマンモ画像データを生成する。
【0025】
操作部25はオペレータが操作し、操作部25の操作によりX線の曝射指示、撮影開始等の各種の操作情報を与える。表示部26は、データ処理部24で生成された画像等を表示する。操作部25、表示部26は、システム制御部22とともにユーザインターフェースを構成する。
【0026】
また乳房撮影部11には、X線管球13によるX線の照射範囲を規制する照射領域制限装置19を設けており、この照射領域制限装置19を照射制御部28によってコントロールする。照射制御部28は、照射領域制限装置19を制御して、X線の照射範囲を被検体Pに応じて制限する。
【0027】
図3は、画像処理装置を構成するデータ処理部24を示すブロック図である。データ処理部24は、直接線検出部31、直接線領域設定部32、黒化処理領域設定部33、及び黒化処理部34を有する。
【0028】
直接線検出部31は、データ記憶部23に記憶された画像データを取り込み、マンモ領域と直接線領域を区分するために直接線の検出を行う。直接線領域設定部32は、直接線検出部31で検出した直接線の画素をもとに直接線の領域を設定するものであり、第1の直接線領域設定部321(A)と、第2の直接線領域設定部322(B)を含む。直接線領域設定部32は、直接線領域とマンモ領域との境界情報を求める境界情報検出部を構成する。
【0029】
黒化処理領域設定部33は、直接線領域の画素を黒化処理する領域を設定するものであり、第1の黒化処理領域設定部331(A)と、第2の黒化処理領域設定部332(B)と、第3の黒化処理領域設定部333(C)を含む。黒化処理部34は、画像データのうち、黒化処理領域設定部33で設定した黒化処理領域の画素を黒化処理するものであり、第1の黒化処理部341と、第2の黒化処理部342を含む。
【0030】
直接線領域設定部32、黒化処理領域設定部33、黒化処理部34は、操作部25の操作に応答してシステム制御部22の制御のもとに、A、B、Cのいずれかの回路ブロックが選択される。黒化処理部34によって黒化処理されたマンモ画像は、表示部26に表示される。
【0031】
以下、図3のデータ処理部24の動作を説明する。図4は、直接線検出部31の動作を示す図であり、X線管13に高電圧を与えて乳房を撮影したときのマンモ領域αと直接線βのヒストグラムを示している。横軸は画素値であり、縦軸は頻度を表している。尚、直接線βは被検体P(乳房)を透過することなくX線管13からX線検出器15に直接照射されたX線画像である。
【0032】
通常、ヒストグラムにおける直接線βは、画素値が高い部分に孤立した一つの山として現れる。したがって、この山をヒストグラムから検出し、その山の画素値が小さい側で、頻度が最も小さくなる点の画素値(直接線の最低画素値(図4の黒点で示す)として推定される値)を基準値としてしきい値処理を行い、基準値以上の画素を直接線として検出する。
【0033】
図5は黒化処理の基本動作を説明する図であり、(a)はマンモ画像をポジ表示したときの画像を示している。ポジ表示すると、マンモ領域αの周囲に直接線βの部分が真っ白に表示され、読影者の目が疲れる等の悪影響を及ぼす。したがって、通常は図5(b)で示すように直接線βの部分を常に黒く表示するように黒化処理を行っている。
【0034】
黒化処理を行う場合、マンモ画像から直接線の画像領域を検出する必要があるため、図4で説明したように、ヒストグラムから直接線の山を探し、山の最小画素値を基準値とし、基準値以上の画素値を直接線として検出する。しかしながら、山の最小画素値を基準値とし、基準値以上の画素を直接線として検出する方法では、ノイズ等の影響により、被写体以外(直接線領域)で基準点より低い画素があると、その画素は黒化処理の対象とならずに白く残ったり、また黒化処理後のスキンラインが不自然になってしまう。
【0035】
本発明では、直接線領域設定部32により直接線の領域を設定し、設定された直接線領域の情報をもとに、黒化処理領域設定部33は黒化処理領域を設定し、設定した黒化処理領域を黒化処理部34で黒化処理する点に特徴がある。
【0036】
図6は、第1の直接線領域設定部321(A)と、第1の黒化処理領域設定部331(A)と、第1の黒化処理部341(A)が選択されたときの動作を説明する図である。
【0037】
図6の例では、図3の矢印a、c、gの順路でデータ処理が行われる。即ち、データ記憶部23から取り込んだ画像データを図6(a)の現画像とすると、直接線領域検出部31は、現画像(a)をもとに直接線を検出する。現画像(a)の一部を拡大すると図6(b)のようになり、ヒストグラムから算出した直接線の最低画素値をもとに直接線を検出する。
【0038】
マンモ画像は、通常、図6(a)のようにマンモ領域αと直接線領域βを含むが、胸壁が一側面(例えば右側)にあり、ニプル(Nipple:乳首)側へ向かうと直接線領域βが現れる。よって直接線領域検出部31は、図6(b)のように胸壁側からニプル側(X軸の矢印x0方向)に画素値をチェックしていき、直接線の最低画素値よりも大きい画素値が現れた画素(斜線x1の画素)を検出し、画素x1の位置情報を取得する。
【0039】
第1の直接線領域設定部321は、画素x1を直接線領域のスタートとし、スタート領域からニプル側に向かう以降の領域は全て直接線領域として設定する。そして直接線領域のスタート位置のX座標を記憶しておく。画像データの全てのラインに対して同様の処理を適用することで、直接線のスタート領域の座標を全て知ることができ、求めたX座標からニプル側(マンモ領域と反対側)に延びる領域を全て直接線の領域として設定する。
【0040】
第1の黒化処理領域設定部331は、第1の直接線領域設定部321で求めた位置情報を基に黒化処理を行う範囲を決定する。即ち、直接線のスタート領域の座標からニプル側(マンモ領域と反対側)に延びる領域を全て黒化処理の対象とする。
【0041】
第1の黒化処理部341は、第1の黒化処理領域設定部331で設定した黒化処理の対象領域を全て黒化処理する。この結果、表示部26には図6(c)で示すように、マンモ領域の周辺部が全て黒化処理されたマンモ画像が表示される。したがって直接線領域に基準値より低い画素があっても、その画素は黒化処理の対象となるため、白く残ることはない。
【0042】
図7は、第2の直接線領域設定部322(B)と、第1の黒化処理領域設定部331(A)と、第1の黒化処理部341(A)が選択されたときの動作を説明する図である。図7の例では、図3の矢印b、f、gの順路でデータ処理が行われる。
【0043】
即ち、第2の直接線領域設定部322は、直接線領域の検出を行う際にボケ画像を使用する。ボケ画像を作成する方法としては、データ記憶部23から取り込んだ現画像データにローパス・フィルタをかけたり、ROI(Region of Interest)の平均をとる方法や、画像データを縮小・拡大する方法等がある。
【0044】
図7(a)は現画像データを示し、(a’)はボケ画像を示し、(b)はボケ画像の一部を拡大して示す。ボケ画像は(a’),(b)に示すように、直接線と被写体の境界付近でにじみが生じ、直接線領域の画素値がさがる(画素x2で示す)。よって、直接線領域のスタート位置(斜線の画素x1)が直接線と被写体の境界よりもニプル側にシフトする。
第1の黒化処理領域設定部331は、第2の直接線領域設定部322で求めた位置情報を基に黒化処理を行う範囲を決定する。即ち、シフトした直接線のスタート領域の座標からニプル側(胸壁と反対側)の領域を全て黒化処理の対象とする。
【0045】
第1の黒化処理部341は、現画像データ(a)に対して、第1の黒化処理領域設定部331で設定した黒化処理の対象領域を全て黒化処理する。この結果、表示部26には図7(c)で示すように、マンモ領域の境界から余裕をもって黒化処理をかけることができる。したがって、マンモ領域と直接線領域との間を広くとることができ、マンモ領域の画像が見やすくなる。
【0046】
図8は、第1の直接線領域設定部321(A)と、第2の黒化処理領域設定部332(B)と、第1の黒化処理部341(A)が選択されたときの動作を説明する図である。図8の例では、図3の矢印a、d、gの順路でデータ処理が行われる。
【0047】
即ち、第1の直接線領域設定部321は、図6と同様に、図8(a)で示すように、直接線の最低画素値よりも大きい画素値が現れた画素(斜線x1の画素)を直接線領域のスタートとし、スタート領域からニプル側に向かう以降の領域を全て直接線領域として設定する。
【0048】
一方、第2の黒化処理領域設定部332は、第1の直接線領域設定部321で求めた直接線領域のスタート位置(画素x1)のX座標を、図8(b)のようにニプル側(マンモ領域と反対側)へ数画素分シフトし、シフトした位置を黒化処理領域のスタート位置とする。即ち、シフトしたスタート位置の座標からニプル側(マンモ領域と反対側)の領域を全て黒化処理の対象とする。
【0049】
第1の黒化処理部341は、第2の黒化処理領域設定部332で設定した黒化処理の対象領域を全て黒化処理する。この結果、表示部26には図8(c)で示すように、マンモ領域の境界から余裕をもって黒化処理をかけることができる。したがって、図7と同様にマンモ領域と直接線領域との間を広くとることができ、マンモ領域の画像が見やすくなる。
【0050】
尚、黒化処理の領域を設定する方法としては、第3の黒化処理領域設定部333(C)を用いてもよい。図9は、第1の直接線領域設定部321(A)と、第3の黒化処理領域設定部333(C)と、第1の黒化処理部341(A)が選択されたときの動作を説明する図であり、主に第3の黒化処理領域設定部333の動作を示したものである。図9の例では、図3の矢印a、e、gの順路でデータ処理が行われる。
【0051】
第1の直接線領域設定部321の動作は図6、図8と同じであるため省略する。第3の黒化処理領域設定部333は、図9(a)で示すように黒化処理したときにマンモ領域の画像がギザつくような場合にスムージング処理を行う。即ち、黒化処理を行う境界を滑らかにするため、マンモ領域との境界部の座標にある画素にスムージング処理をかける。スムージングの方法としては、直接線の画素x1のX座標の数値をY座標順に並べ、移動平均を求める方法等がある。
【0052】
図9(b)は移動平均処理の一例を説明する図であり、第1の直接線領域設定部321で求めた画素x1が第1のラインからnラインにある場合、Y軸方向に第1、第2、第3の3ラインの画素x1の画素値の平均を算出し、次に第2、第3、第4の3ラインの画素x1の画素値の平均を算出するという処理を順次に行い、各平均値をY座標順に並べる。そしてスムージング処理した領域以外の直接線領域を全て黒化処理の対象とする。
【0053】
第1の黒化処理部341は、第3の黒化処理領域設定部333で設定した黒化処理の対象領域を全て黒化処理する。したがって表示部26には図9(c)で示すように、スムージングされギザつきを低減したマンモ画像を表示することができる。
【0054】
図10は、黒化処理部34の動作を説明する図である。第1の黒化処理部341は、黒化処理領域設定部33で設定された黒化処理領域を一定の画素値で置換するものであり、図10(a)に示すように、例えば黒化処理領域を黒レベルにする。但し、黒レベルに置換した場合は、黒化処理の境界がくっきりし過ぎてしまい、読影しにくくなる。
【0055】
第2の黒化処理部342は、図10(b)に示すように、被写体(マンモ領域)から遠去かるに従って直接線の領域が段階的に黒レベルに近づくようにグラデーション処理を行う。グラデーションの処理方法を以下に述べる。尚、通常の黒化処理を行う場合は、図3の矢印gの順路でデータ処理が行われ、グラデーションによる黒化処理を行う場合は、図3の矢印hの順路でデータ処理が行われる。
【0056】
先ず、グラデーションのスタート画素値、つまり黒化処理の境界部付近における画素値は、境界部付近のマンモ領域の平均画素値をそのまま使う。或いは境界部付近のマンモ領域の平均画素値より少し黒レベルの画素値を使うなど、予め決めておいたレベルに設定する。
【0057】
グラデーションの幅は、ある画素幅ずつまとめて段階的に黒レベルに近づけるようにしても良いし、グラデーションの段数を予め設定しておき、全体の幅を段数で割り算した画素幅ずつ徐々に黒レベルに近づけるようにしても良い。またグラデーションのスタート画素値から黒化処理の最終画素値まで、所定の画素数ずつ連続的にレベルを変化(黒く)させてもよい。
グラデーションの画素値は、グラデーションのスタート画素値から黒化処理の最終画素値まで段階的に画素値を変化させる方法や、一定の割合で変化させる方法等がある。
このように、被写体(マンモ領域)から離れるに従って直接線の領域を徐々に黒くなるようにグラデーション表示することにより、目の疲れを低減し読影しやすくすることができる。
【0058】
尚、直接線領域設定部32、黒化処理領域設定部33、黒化処理部34に含まれる回路ブロック(A、B、C)のうち、いずれの回路ブロックを選択するかは、操作部25の操作によって指示することができ、オペレータが希望する処理ルート(図3の矢印a〜h)を選ぶことで表示画像を任意に変えることができる。例えば、図6〜図10で示した処理のほかに、図8図で説明したシフト処理と、図9で説明したスムージング処理を組み合わせることもできる。
【0059】
このように本発明によれば、直接線領域に基準値より低い画素があってもその画素は黒化処理の対象となるため、白く残ることはない。またマンモ領域と直接線領域との境界部を広くしたり、スムージング処理、或いはグラデーション処理することでマンモ画像を見やすく表示することができる。
【0060】
尚、本発明の実施形態は、以上述べた実施例に限定されるものではない。例えば、黒化処理部34は、黒化処理を被写体領域に対して行わないように、図6(b)で求めた直接線領域のスタート位置のX座標よりも胸壁側は黒化処理領域としない等の制限を加えてもよい。
【0061】
また特許請求の範囲を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0062】
10…放射線画像撮影装置
11…乳房撮影部
12…アーム
13…放射線源(X線管球)
14…天板
15…放射線検出器(X線検出器)
16…圧迫板
17…高圧発生部
18…データ収集部
19…照射範囲制限装置
20…コンピュータシステム
21…バスライン
22…システム制御部
23…データ記憶部
24…データ処理部
25…操作部
26…表示部
27…照射制御部
31…直接線検出部
32…直接線領域設定部
33…黒化処理領域設定部
34…黒化処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源からの放射線を被検体に照射し、前記被検体を透過した放射線を放射線検出器で検出してデジタル画像データを取得する乳房撮影部と、
前記デジタル画像データを処理して、直接線領域とマンモ領域との境界情報を求める境界情報検出部と、
前記境界情報に基づいて、前記マンモ領域と反対側に延びる領域を黒化処理領域として設定する黒化処理領域設定部と、
前記デジタル画像データのうち、前記黒化処理領域の画素を黒化処理して出力する黒化処理部と、
前記黒化処理部からの出力画像を表示する表示部と、を具備したことを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記境界情報検出部は、前記デジタル画像データのヒストグラムから前記直接線の最小画素値を求め、前記最小画素値を基準値としてしきい値処理を行い、そのしきい値処理の結果に基づいて前記境界情報を求めることを特徴とする請求項1記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記境界情報検出部は、前記マンモ領域との境界部にある直接線の画素を基準にして、前記デジタル画像データを処理したボケ画像から前記マンモ領域との境界部を検出し、
前記黒化処理領域設定部は、前記マンモ領域との境界部から反対側に延びる領域を前記黒化処理領域として設定することを特徴とする請求項1記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記黒化処理部は、前記黒化処理領域設定部で設定した前記黒化処理領域を前記マンモ領域と反対側に所定の画素分だけシフトし、前記シフトした黒化処理領域を黒化処理することを特徴とする請求項1記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
放射線源からの放射線を被検体に照射し、前記被検体を透過した放射線を放射線検出器で検出してデジタル画像データを取得する乳房撮影部と、
前記デジタル画像データを処理して、直接線領域とマンモ領域との境界部の情報を求める境界情報検出部と、
前記境界部の情報に基づいて、前記マンモ領域と反対側に延びる領域を黒化処理領域として設定する黒化処理領域設定部と、
前記境界部の胸壁−ニプル方向の座標の画素に対しスムージング処理を施し、前記スムージングした領域以外の前記黒化処理領域の画素を黒化処理して出力する黒化処理部と、
前記黒化処理部からの出力画像を表示する表示部と、を具備したことを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項6】
前記黒化処理部は、前記スムージングのために、前記前記境界部の胸壁−ニプル方向のX座標の数値をY座標順に並べ、移動平均処理を行うことを特徴とする請求項5記載の放射線画像撮影装置。
【請求項7】
放射線源からの放射線を被検体に照射し、前記被検体を透過した放射線を放射線検出器で検出してデジタル画像データを取得する乳房撮影部と、
前記デジタル画像データを処理して、直接線領域とマンモ領域との境界情報を求める境界情報検出部と、
前記境界情報に基づいて、前記マンモ領域と反対側に延びる領域を黒化処理領域として設定する黒化領域設定部と、
前記デジタル画像データのうち、前記黒化処理領域の画素を前記マンモ領域から遠去かるに従って段階的に黒レベルに近づくようにグラデーション処理する黒化処理部と、
前記黒化処理部からの出力画像を表示する表示部と、を具備したことを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項8】
前記黒化処理部は、前記黒化処理領域の画素を予め設定した画素幅ずつ段階的にレベルを変化させることを特徴とする請求項7記載の放射線画像撮影装置。
【請求項9】
前記黒化処理部は、前記黒化処理領域の画素を前記マンモ領域との境界部から所定の画素数ずつ段階的にレベルを変化させることを特徴とする請求項7記載の放射線画像撮影装置。
【請求項10】
前記黒化処理部は、前記境界部付近のマンモ領域の平均画素値を基準レベルとし、前記グラデーション処理のスタートレベルを前記基準レベル又は前記基準レベルよりも黒レベルに設定したことを特徴とする請求項7記載の放射線画像撮影装置。
【請求項11】
乳房撮影部で取得したデジタル画像データを処理する画像処理装置であって、
前記デジタル画像データを処理して、直接線領域とマンモ領域との境界情報を求める境界情報検出部と、
前記境界情報に基づいて、前記マンモ領域と反対側に延びる領域を黒化処理領域として設定する直接線領域設定部と、
前記デジタル画像データのうち、前記黒化処理領域の画素を黒化処理して出力する黒化処理部と、を具備したことを特徴とする画像処理装置。
【請求項12】
乳房撮影部で取得したデジタル画像データを処理する画像処理装置であって、
前記デジタル画像データを処理して、直接線領域とマンモ領域との境界部の情報を求める境界情報検出部と、
前記境界部の情報に基づいて、前記マンモ領域と反対側に延びる領域を黒化処理領域として設定する黒化処理領域設定部と、
前記境界部の胸壁−ニプル方向の座標の画素に対しスムージング処理を施し、前記スムージングした領域以外の前記黒化処理領域の画素を黒化処理して出力する黒化処理部と、を具備したことを特徴とする画像処理装置。
【請求項13】
乳房撮影部で取得したデジタル画像データを処理する画像処理装置であって、
前記デジタル画像データを処理して、直接線領域とマンモ領域との境界情報を求める境界情報検出部と、
前記境界情報に基づいて、前記マンモ領域と反対側に延びる領域を黒化処理領域として設定する黒化処理領域設定部と、
前記デジタル画像データのうち、前記黒化処理領域の画素を前記マンモ領域から遠去かるに従って段階的に黒レベルに近づくようにグラデーション処理する黒化処理部と、を具備したことを特徴とする画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−172560(P2010−172560A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19883(P2009−19883)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】