説明

放射線画像検出カセッテ

【課題】回路基板等の振動を抑制して適正な放射線画像を取得すること。
【解決手段】基台22とシグナルインターフェース基板23Aとの間、又は筐体31の内壁とシグナルインターフェース基板23Aとの間の少なくともどちらか一方において、緩衝材Xが設けられている。緩衝材Xを設けることによりシグナルインターフェース基板23Aの振動を抑制することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像検出カセッテに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、被写体に放射線を照射し、被写体を透過した放射線を検出して放射線画像を得る方法として、デジタル方式の放射線画像検出装置が用いられている。このような放射線画像検出装置としては、いわゆるFPD(Flat Panel Detector)がある。
【0003】
FPDの一例としては、基板上に複数の検出素子を二次元的に配列し、被写体を透過した放射線が蛍光体(シンチレータ)に照射され、照射された放射線量に応じて発光する可視光を電荷に変換して光電変換素子に蓄積し、光電変換素子に蓄積した電荷を読み出すことにより放射線画像を得るものがある。このようなFPDは撮影直後に放射線画像を得られるという即時性を有している。
【0004】
FPDを用いた放射線画像検出装置の例として特許文献1に記載された技術があり、特許文献1ではFPDカセッテが記載されている。特許文献1では、樹脂等で形成された基台の一方の面にシンチレータや光電変換素子が取り付けられ、他方の面に回路基板が取り付けられて構成された画像検出部が、いわゆる筒型の筐体の内部に収納されてFPDカセッテを構成している。
【0005】
もちろん、上記のような間接型では無く、アモルファスセレン等からなる直接型のパネルを基台の一方の面に設け、他方の面に回路基板等が取りつけられた画像検出部を筒型の筐体の内部に収納してFPDカセッテを構成しても良い。
【0006】
直接型や間接型の型式に係らず、筒型の筐体及び当該筺体の開口部と嵌合し開口部を補強する両端のキャップ部を採用することにより、捻じれ耐性等をはじめとする機械的強度が増大し、且つ軽量化、小型化を図ることが出来ている。また、特許文献1において、筒型の筐体の内部に収納される画像検出部は筐体内面に固着されておらず、筐体の一方の開口部から挿入され、適宜設けられた緩衝材により予圧された状態で筺体内部に保持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−257914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
FPDカセッテは、その可搬性により、一般的な放射線科内の撮影室のみならず、例えば患者のベットサイドで放射線画像を撮影する回診撮影等に用いられるが、回診撮影に於いては、FPDカセッテを直接患者に宛がうので、FPDカセッテに患者からの荷重が加わったり、撮影技師がFPDカセッテを患者に宛がったり、患者とベッドとの間に挿入したりする等により、FPDカセッテに振動や衝撃が加わる場合がある。
【0009】
前述した筒型の筐体及び開口部キャップの嵌合による全体構造は、筺体全体としての機械的強度が高く筐体に加わった振動や衝撃が筺体全体の変形等により吸収(減衰)されず、保持用のスペーサ(緩衝材)等を通じて画像検出部に伝わりやすい。例えば放射線の照射が完了した後に、撮影技師が直ちに次の撮影に備えてFPDカセッテのポジショニングを変更したりすると、FPDカセッテはいまだ放射線画像の読出動作の途中であるので、FPDカセッテに振動や衝撃が加わり、内蔵された基板や配線等にも振動や衝撃が加わる結果となり、最終的な読取り画像にノイズとして重畳してしまう恐れがある。
【0010】
また、FPDカセッテが特許第3950665号公報、米国特許第7211803号明細書、米国特許第6002742明細書等に記載のように、放射線の照射開始判断をX線発生装置系からの同期信号に基づき判断する同期(連携)方式では無く、照射開始時の微弱な放射線量をFPDカセッテ自身で検知して判断する非同期(非連携)方式の場合には、撮影に際するカセッテFPDの患者への位置決めの際に振動や衝撃を受けると、これによって生じたノイズ信号を照射開始信号と誤判断して蓄積モードへ移行してしまう恐れもある。
【0011】
この場合、複数回の信号を検出することにより、ノイズでなく本来の照射開始信号であることを確認して蓄積モードへと移行させるアルゴリズム上の対策もあるが、あまりに多くの回数を検知することは、照射開始の判断が実際の照射開始よりも遅延する不具合を併発することにもなる。
【0012】
しかしながら、様々な振動によって発生するノイズ全てに対応することは困難であり、物理的対策と組み合わせることがより好ましい。
【0013】
そこで、本発明の目的は、回路基板等の振動を抑制して適正な放射線画像を取得する放射線画像検出カセッテを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明に係る放射線画像検出カセッテは、
被写体に向けて照射された放射線を検出して放射線画像データを取得する可搬型の放射線画像検出カセッテであって、
入射した放射線を電気信号に変換する検出部を有する検出器ユニットと、
一方の面に前記検出器ユニットが配置された基台と、
前記基台の他方の面に配置された、前記検出器ユニットと接続される基板を少なくとも有する制御部と、
前記検出器ユニットと前記基板を接続するフレキシブル回路と、
前記検出器ユニット、前記基台、前記制御部、前記フレキシブル回路を内蔵する筺体と、を備え、
前記基台と前記基板との間、又は前記筐体の内壁と前記基板との間の少なくともどちらか一方において、緩衝材が設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る放射線画像検出カセッテによれば、回路基板等の振動を抑制して適正な放射線画像を取得することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】カセッテ型検出器の斜視図である。
【図2】筐体の斜視図である。
【図3】筐体と第1の蓋部材との構造を示す部分斜視図である。
【図4】第1の蓋部材の外側に装着される保護カバーの説明図である。
【図5】図1に示すカセッテ型検出器を図1の矢印方向から見た所定箇所の断面図である。
【図6】基台31を放射線入射面の反対側からみた平面図である。
【図7】検出部を構成する光電変換部の1画素分の等価回路構成図である。
【図8】図7に示す光電変換部を二次元に配列した等価回路構成図である。
【図9】シグナルインターフェース基板の周囲に設置された緩衝材の変形例を示す説明図である。
【図10】ゲートインターフェース基板の周囲に設置された緩衝材を示す説明図である。
【図11】第1の蓋部材における角部の拡大斜視図である。
【図12】図1に示すカセッテ型検出器を放射線入射面の方向から見た所定箇所の簡易断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[カセッテ型検出器の概要]
図1は、カセッテ型検出器1の斜視図である。
【0018】
放射線画像検出カセッテであるカセッテ型検出器1は、カセッテ型のフラットパネルディテクタ(Flat Panel Detector)である。カセッテ型検出器1の主要部は、照射された放射線を検出してデジタルの放射線画像データを取得する放射線検出部2(図5参照)と、放射線検出部2を内蔵するハウジング3から構成されている。ハウジング3は、放射線入射面Rを有し長辺側の両端部に開口部を有する筒型の筐体31と、筐体31の開口部を塞ぐ第1の蓋部材32と、第2の蓋部材33とにより構成されている。図1では示していないが、第1の蓋部材32と第2の蓋部材33は、筐体31にネジ止めされている。
【0019】
本実施形態において、ハウジング3は、放射線入射方向の厚さが15mmとなるように形成されている。なお、ハウジング3の放射線入射方向の厚さは16mm以下であり、従来のスクリーン/フィルム用のカセッテにおける規格(JIS Z 4905)に準拠するサイズ(15mm+1mmであり、かつ15mm−2mm)の範囲内である(JIS Z 4905に対応する国際規格は、IEC 60406である)。なお、この規格に合致しない形状としても良いことは勿論である。
【0020】
図2は、筐体31の斜視図である。
【0021】
筐体31は、国際公開第09/054242号等に開示されているように、カーボン(例えば炭素繊維強化プラスチック:CFRP)で構成され、軽量で、捻じれ耐性をはじめとする機械的強度が優れたものである。またX線透過率も良好なものである。図2で示すように、筐体31は中空の筒型となっており、カセッテ型検出器1の強度を保つように形成されている。筐体31の両側には開口部31A、31Bがあり、この開口部近傍の機械的強度は低下することになるが、開口部31Aを第1の蓋部材32の嵌合により塞ぎ、開口部31Bを第2の蓋部材33の嵌合により塞ぐことで機械的強度を補強し、カセッテ型検出器1全体としての捻じれ耐性等の必要な機械的強度を維持している(図1参照)。
【0022】
第1の蓋部材32、第2の蓋部材33は金属であるアルミニウムで形成されており、カセッテ型検出器1が落下等により破損しないよう、カセッテ型検出器1の強度を維持している。また第1の蓋部材32、第2の蓋部材33はアルミニウム合金で形成することも出来る。カセッテ型検出器1は可搬型であるため、持ち運び性やブッキーなどの撮影台へのセット性を考慮すると更に軽量であるマグネシウム合金で第1の蓋部材32、第2の蓋部材33を形成することも有効である。アルミニウム合金の比重は2.7であり、マグネシウム合金の比重は1.8であるので、マグネシウム合金は、アルミニウム合金に比較して第1の蓋部材32と第2の蓋部材33で3分の2程度軽く出来る。更にマグネシウム合金は、比強度、比剛性、振動吸収性(減衰率)でもアルミニウム合金を上回る。
【0023】
図3は、図1、図2とは異なる角度から見た筐体31と第1の蓋部材32との構造を示す部分斜視図である。
【0024】
第1の蓋部材32における挿入部32Aの大半は、筐体31の開口部31A(図2参照)が第1の蓋部材32により塞がれると、筐体31の内部に入り込む構造になっている。一方、第1の蓋部材32の外壁32Bは、筐体31の開口部31Aが第1の蓋部材32により塞がれても筐体31の内部に入り込まない。
【0025】
なお、第1の蓋部材32と第2の蓋部材33はほぼ同じ形状となっており、図3で説明した構造により各々の開口部31A、31Bが第1の蓋部材32、第2の蓋部材33により塞がれる。第1の蓋部材32の両端と第2の蓋部材33の両端は、筐体31の内部に入り込まない構造となっており、筐体31の四隅のカーボン繊維体を保護することが出来るので、カセッテ型検出器1の落下などによる衝撃から、筐体31の四隅のカーボンの破損を防止することが出来る。
【0026】
図4は、第1の蓋部材の外側に装着される保護カバーの説明図である。
【0027】
カセッテ型検出器1の最終形態としては、保護カバー34が第1の蓋部材32の外側に装着される。後述するように、第1の蓋部材32の角部には外壁穴32Cや側壁穴32Dが設けられており、ユーザーがカセッテ型検出器1を持つ際にユーザーが外壁穴32Cや側壁穴32Dを触らないようにするために、保護カバー34により第1の蓋部材32を覆っている。また、保護カバー34は樹脂で形成されており、カセッテ型検出器1全体として軽量化が図られている。
【0028】
図4では第1の蓋部材32と保護カバー34との関係のみ示しているが、第1の蓋部材32に対向する第2の蓋部材33の外側にも同様に保護カバーが装着される。
【0029】
[カセッテ型検出器の内部構造]
次にカセッテ型検出器1の内部構造について説明する。図5は、図1に示すカセッテ型検出器1を図1の矢印方向から見た所定箇所の断面図である。
【0030】
図5に示すように、放射線検出部2は、検出器ユニット21、基台22、電気部品(シグナルインターフェース基板(読み出しインターフェース基板)23A、制御基板23B、充電池24等)により構成されている。本実施形態において、基台22の上方の面には遮蔽部材25を介して検出器ユニット21が取り付けられており、基台22の下方の面にはシグナルインターフェース基板23A、制御基板23B、充電池24等の電気部品が取り付けられている。
【0031】
基台22は可撓性であり、薄い樹脂により構成されている。厚さは約1mmであり、材質は例えば、ポリカーボネイトとABSを混合した樹脂である。
【0032】
検出器ユニット21はシンチレータ211、検出部212、センサアレイ基板213、対向基板214、中間緩衝材215等から構成されている。検出器ユニット21の基本構造を説明すると、検出部212がセンサアレイ基板213の上に支持されており、その上方にシンチレータ211が設置されている。シンチレータ211の上方には対向基板214が設置されており、シンチレータ211は対向基板214とセンサアレイ基板213に挟まれている。
【0033】
シンチレータ211は入射した放射線を光に変換する機能を有する。シンチレータ211は、例えば、蛍光体を主たる成分とし、入射した放射線に基づいて、波長が300nmから800nmの電磁波、すなわち、可視光線を中心に紫外光から赤外光にわたる電磁波(光)を出力するようになっている。
【0034】
シンチレータ211の下方には検出部212が形成されおり、検出部212はシンチレータ211から出力された電磁波(光)を電気エネルギー(電気信号)に変換して蓄積し、蓄積された電気エネルギーに基づく電気信号の出力を行う。
【0035】
センサアレイ基板213と対向基板214は、ともに厚みが0.6mm程度のガラス基板である。
【0036】
センサアレイ基板213の下方には中間緩衝材215が設置されており、対向基板214に対するセンサアレイ基板213の突出部を補強するとともに、センサアレイ基板213に加わる荷重を吸収する。また、対向基板214の上方には対向基板214を保護する上面緩衝材216が設置されており、基台22の側面には基台22の側面を保護する側面緩衝材217が設置されている。側面緩衝材217は振動や衝撃を吸収するよう、ポリウレタンゲル状エラストマーにより構成されているが、ウレタンフォーム等の材料でも良い。
【0037】
センサアレイ基板213の端部には検出部212で発生した電気信号を取り出すための電気信号取出部218が設けられており、電気信号取出部218とシグナルインターフェース基板23AとはフレキシブルハーネスFHにより接続されている。
【0038】
基台22の下方の面には基台支持部Lが取り付けられている。放射線検出部2を筐体31の内部に収納する場合は、基台支持部L、上面緩衝材216、側面緩衝材217が筐体31の内壁に接触して放射線検出部2が案内され、筐体31に放射線検出部2が保持される。強度が保たれた筒型の筐体31の内部に放射線検出部2が保持されているため、外部からの衝撃による放射線検出部2の損傷が抑制される。
【0039】
また、基台22の下方にはシグナルインターフェース基板23A、制御基板23B、充電池24等の電気部品が取り付けられている。なお、本発明において、シグナルインターフェース基板23A、制御基板23B、ゲートインターフェース基板23C、電源基板23Dが一体となって制御部として機能している。
【0040】
図6は、基台22を放射線入射面Rの反対側からみた平面図である。
【0041】
本実施形態において、カセッテ型検出器1の短辺側の両端には後述する読み出しIC(読み出し回路部)26が複数並んで配置されている。また、カセッテ型検出器1の長辺側の一端には後述するゲートドライバ27(走査駆動回路部)が複数並んで配置されている。読み出しIC26は、シグナルインターフェース基板23Aから読み出し機能を集約した素子として前述したフレキシブルハーネスFHに実装されフレキシブル基板(フレキシブル回路)として構成されている。これにより電気回路の集積度を上げシグナルインターフェース基板23Aの小型化を図っている。ゲートインターフェース基板23Cとゲートドライバ27も同様である。
【0042】
各読み出しIC26は、シグナルインターフェース基板23Aを介して制御基板23Bに接続されており、シグナルインターフェース基板23Aは、デジタル値に変換された画像信号を読み出しIC26から制御基板23Bへ伝達する。また、各ゲートドライバ27は、ゲートインターフェース基板(走査インターフェース基板)23Cを介して制御基板23Bと接続されており、制御基板23Bから発せられる走査信号をゲートドライバ27へ伝達する。
【0043】
制御基板23Bは、CPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピュータや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等により構成されている。専用の制御回路で構成されていてもよい。
【0044】
制御基板23Bは、カセッテ型検出器1の各部材の動作等を制御するようになっている。また、撮像素子のリセット処理や各撮像素子からの電荷の読み出し処理、オフセット補正値を算出するために放射線を照射しない状態でカセッテ型検出器1を放置した後に読み出し処理と同様に各撮像素子に蓄積された暗電荷を読み出すダーク読取処理等の各処理を行うようになっている。
【0045】
制御基板23Bには、DRAM(Dynamic RAM)等で構成される記憶部28(図8参照)や、カセッテ型検出器1の各機能部に電力を供給する充電池24が接続されている。
【0046】
充電池24は、充電可能なものであり、例えばニッカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、小型シール鉛電池、鉛蓄電池等の充電自在な二次電池や、リチウムイオンキャパシタ(LIC)、電気二重層コンデンサ等の蓄電素子等を適用することができる。
【0047】
このうち、特に、リチウムイオンキャパシタは、蓄電効率に優れるとともに、大電流(例えば5〜10アンペア)による高速充電が可能であり、充電時間を大幅に短縮することができるため、好ましい。すなわち、充電時間は、充電電流の大きさにほぼ反比例するため、充電電流を大きくすれば、その分充電時間を短くすることができる。
【0048】
本実施形態では、図6に示すように2つの充電池24が設けられている。充電池24は電源基板23Dと接続されており、充電時に充電池24に対して送られる電流の電流値や各機能部に供給される電力等が調整されるようになっている。
【0049】
[検出ユニットの回路構成]
次に、検出器ユニット21の回路構成について説明する。図7は、検出部212を構成する1画素分の光電変換部の等価回路図である。
【0050】
図7に示すように、1画素分の光電変換部の構成は、フォトダイオード212Aと、フォトダイオード212Aで蓄積された電気エネルギーをスイッチングにより電気信号として取り出す薄膜トランジスタ(以下「TFT」と称する。)212Bとから構成されている。フォトダイオード212Aは、電荷を生成し蓄積する撮像素子である。フォトダイオード212Aから取り出された電気信号は、増幅器212Cにより読み出しIC26が検出可能なレベルにまで電気信号を増幅するようになっている。
【0051】
具体的には、光の照射を受けるとフォトダイオード212Aで電荷が発生し、TFT212BのゲートGに信号読出し用の電圧が印加されると、TFT212BのソースSに接続されたフォトダイオード212Aから電荷がTFT212BのドレインD側に流れ、増幅器212Cに並列に接続されたコンデンサ212Caに蓄積される。そして、増幅器212Cから、コンデンサ212Caに蓄積された電荷に比例して増幅された電気信号が出力されるようになっている。
【0052】
また、増幅器212Cから増幅された電気信号が出力されて電気信号が取り出されると、増幅器212Cやコンデンサ212Caに並列に接続されたスイッチ212Cbがオンされてコンデンサ212Caに蓄積された電荷が放出されて、増幅器212Cがリセットされるようになっている。なお、フォトダイオード212Aは、単に規制キャパシタンスを有した光ダイオードでもよいし、フォトダイオード212Aと光電変換部のダイナミックレンジを改良するように追加コンデンサを並列に含んでいるものでもよい。
【0053】
図8は、このような光電変換部を二次元に配列した等価回路図であり、画素間には、走査線Llと信号線Lrが直交するように配設されている。TFT212BのソースSには前述のフォトダイオード212Aの一端側が接続されており、TFT212BのドレインDは信号線Lrに接続されている。一方、フォトダイオード212Aの他端側は、各行に配された隣接するフォトダイオード212Aの他端側と接続されて共通のバイアス線Lbを通じて充電池24に接続されている。
【0054】
充電池24は制御基板23Bに接続され、制御基板23Bからの指示によりバイアス線Lbを通じてフォトダイオード212Aに電圧が印加されるようになっている。また各行に配されたTFT212BのゲートGは、共通の走査線Llに接続されており、走査線Llはゲートドライバ27を介して制御基板23Bに接続されている。同様に、各列に配されたTFT212BのドレインDは、共通の信号線Lrに接続されて制御基板23Bに制御される読み出しIC26に接続されている。
【0055】
読み出しIC26には、前述した信号線Lrごとの増幅器212Cが設けられている。信号読出し時には、選択された走査線Llに信号読出し用の電圧が印加され、それによりその走査線Llに接続されている各TFT212BのゲートGに電圧が印加され、各TFT212Bを介して各フォトダイオード212Aから各信号線Lrにそのフォトダイオード212Aで発生した電荷が流れる。そして、各増幅器212Cでフォトダイオード212Aごとに電荷が増幅され、1行分のフォトダイオード212Aの情報が取り出される。そして、この操作を走査線Llをそれぞれ切り替えて全ての走査線Llについて行うことで、全フォトダイオード212Aから情報を取り出すようになっている。
【0056】
各増幅器212Cにはそれぞれサンプルホールド回路212Dが接続されている。各サンプルホールド回路212Dは読み出しIC26に設けられたアナログマルチプレクサ212Eに接続されており、読み出しIC26により読み出された信号は、アナログマルチプレクサ212EからA/D変換器212Fを介して前述した制御基板23Bに出力されるようになっている。
【0057】
なお、TFT212Bは、液晶ディスプレイ等に使用されている無機半導体系のもの、有機半導体を用いたものの何れであってもよい。
【0058】
また、本実施形態では、撮像素子として光電変換素子としてのフォトダイオード212Aを用いた場合を例示したが、光電変換素子はフォトダイオード以外の固体撮像素子を用いてもよい。
【0059】
以上、図1〜図8に示すようなカセッテ型検出器1を使用することにより、被写体の放射線画像を検出することが可能となっている。
【0060】
[基板における振動防止]
次に、基台22の下方の面に取り付けられたシグナルインターフェース基板23A、ゲートインターフェース基板23Cにおける振動防止の構造について説明する。
【0061】
前述したように、基台22の下方の面にはシグナルインターフェース基板23Aが取り付けられている。シグナルインターフェース基板23Aの一方の端には読み取りIC26が実装されたフレキシブル基板が複数接続されているため(図6参照)、シグナルインターフェース基板23Aは図5で示すように他方の端において支柱Pを介して基台22にネジ止めされている。
【0062】
図5で示すように基台22とシグナルインターフェース基板23Aとの間、及び筐体31の内壁とシグナルインターフェース基板23Aとの間には緩衝材Xが設置されている。緩衝材Xは例えば発泡度68倍のポリエチレンフォームであり、厚さ2mmのものが1.5mmまで圧縮されている。
【0063】
なお、基板を固体のリブ等で押さえる手段もあるが、外部からの衝撃や振動を直接的に伝達させてしまうため、緩衝材としては衝撃や振動に対する減衰効果を持つ弾性体(バネやゴム、あるいは発泡材等)が好ましい。
【0064】
カセッテ型検出器1は、例えば病室を回診して放射線画像を撮影する際に用いられるが、カセッテ型検出器1に患者からの荷重が加わったり、撮影技師がカセッテ型検出器1を患者とベッドとの間に挿入したりする等により、カセッテ型検出器1に振動や衝撃が加わる場合がある。
【0065】
筐体に加わった振動や衝撃が筺体全体の変形等により吸収(減衰)されず、保持用のスペーサ(緩衝材)等を通じて画像検出部に伝わりやすい。このとき基台22および基台22に設けられている検出器ユニット21は一体として貼り合わされており比較的重く、外部からの振動や衝撃を受けても振動しにくい。
【0066】
これに対してシグナルインターフェース基板23Aは比較的軽く、外部からの振動や衝撃により振動しやすく、場合によっては共振を生じることも想定される。さらに前記のように基台22に対し一端のみネジ止めされている場合は特にそこを支点にして、特に対向する端部が振動しやすい。また読み出しIC26が実装されたフレキシブルハーネスFHと接続しており、シグナルインターフェース基板23Aが振動することにより読み出しIC26が影響を受ける恐れがある。特に、アナログ信号からデジタル信号への変換処理中に、当該回路系に外部から振動や衝撃が加わると、本来の放射線画像情報に対し、ノイズが重畳し易くなることを本件発明者等は発見した。
【0067】
しかし、シグナルインターフェース基板23Aの周囲に緩衝材Xが設置されているため、シグナルインターフェース基板23Aが振動することはない。また読み出しIC26とフレキシブルハーネスFHは、単独ではU字状形状であり形状剛性が高くなっていることおよび材質(ポリイミドフィルム)により質量に比較して剛性が高いことから振動しない。その結果、アナログ信号からデジタル信号に変換する際にノイズが発生せず、適正な放射線画像を取得することが出来る。
【0068】
なお、本実施形態では基台22とシグナルインターフェース基板23Aとの間、及び筐体31の内壁とシグナルインターフェース基板23Aとの間に緩衝材Xが設置されているが、図9(a)に示す変形例のように、基台22とシグナルインターフェース基板23Aとの間のみに緩衝材Xを設置してシグナルインターフェース基板23Aの振動を抑制してもよい。このようにシグナルインターフェース基板23Aの裏側のみに緩衝材Xを設置すれば、製造工数が削減されるとともに軽量化となる。またシグナルインターフェース基板23Aの表側の電気素子に緩衝材Xが影響を及ぼすことがない。また、図9(b)に示す変形例のように、筐体31の内壁とシグナルインターフェース基板23Aとの間のみに緩衝材Xを設置してシグナルインターフェース基板23Aの振動を抑制してもよい。
【0069】
筐体31の内壁とシグナルインターフェース基板23Aとの間に緩衝材Xを配置する場合、組立時に筺体31の開口部から内容物を挿入する際に、緩衝材Xが開口部に引っかかったり、緩衝材Xと筺体31の内壁との摩擦が発生して挿入できなかったり、組立が困難となる恐れがある。このため、緩衝材Xと筺体31の内壁との間に、筺体31の内壁に対する摩擦係数が小さい滑りシート(例えばPET製フィルム)を挟んで挿入し、その後前記滑りシートを抜き取ってもよい。
【0070】
さらに前記滑りシートを緩衝材Xに貼りつけ、組立後もカセッテ型検出器1の内部に残留させてもよい。この場合、シートを抜き取る際の摩擦帯電や緩衝材Xの部分的な変形を防止することができる。
【0071】
図5ではゲートインターフェース基板23Cを図示していないが、本実施形態では、図10に示すように、基台22とゲートインターフェース基板23Cとの間、及び筐体31の内壁とゲートインターフェース基板23Cとの間にも緩衝材Xが設置されており、ゲートインターフェース基板23Cの振動も抑制している。緩衝材Xによりゲートインターフェース基板23Cの振動を抑制することにより、制御基板23Bからゲートドライバ27に適正に信号が伝達されて放射線画像の読み出しタイミングのずれが抑制され、適正な放射線画像を取得することが出来る。
【0072】
[第1の蓋部材・第2の蓋部材における外壁穴]
次に、突発的な衝撃によるカセッテ型検出器1の故障を抑制する構造について説明する。
【0073】
図11は、第1の蓋部材32における角部の拡大斜視図である。
【0074】
図11に示すように、第1の蓋部材32の角部Aには溝形状の外壁穴32Cが設けられており、第1の蓋部材32の側壁Bにも溝形状の側壁穴32Dが設けられている。図1では全てを示していないが、カセッテ型検出器1の四隅である角部a、b、c、dにおいて図11で示す同様の形状の外壁穴32Cと側壁穴32Dが設けられている。
【0075】
カセッテ型検出器1は、所定の場所に運ばれて放射線画像の撮影に使用されるわけであるが、カセッテ型検出器1を所定の場所に運ばれる最中に誤ってカセッテ型検出器1を落下させてしまったり、他の物体に衝突させてしまったりして、第1の蓋部材32の角部Aに突発的な衝撃が加わる場合がある。しかし、第1の蓋部材32の角部Aには外壁穴32Cが設けられているため、第1の蓋部材の角部Aに突発的な衝撃が加わっても、角部Aが変形する形で角部Aにおいて衝撃が吸収される(側壁穴32Dがあることにより更に角部Aが変形しやすいため、角部Aにおいて衝撃が吸収される)。
【0076】
その結果、カセッテ型検出器1の内部にある放射線検出部2(図5参照)等に突発的な衝撃が加わることを抑制でき、カセッテ型検出器1が故障することなく、常時適正な放射線画像の検出が出来る。
【0077】
なお、第1の蓋部材32の角部Xに設けられている外壁穴32Cの形状は、衝撃が加わって角部Aが変形しやすいような形状であればどのような形状であってもよい。
【0078】
図12は、図1に示すカセッテ型検出器1を放射線入射面Rの方向から見た所定箇所の簡易断面図である。図12における放射線検出部2は簡略化した形状で示している。
【0079】
図12に示すように、放射線検出部2と筐体31との間、放射線検出部2と第1の蓋部材32との間、及び放射線検出部2と第2の蓋部材33との間には、カセッテ型検出器1に加わる衝撃や振動が放射線検出部2に伝達しないよう、緩衝材Yが設置されている。
【0080】
また、カセッテ型検出器1の四隅である角部a、b、c、dにおいても放射線検出部2と第1の蓋部材32、第2の蓋部材33との間に緩衝材Zが設置されている。このように角部a、b、c、dにおいて緩衝材Zが設置されていることにより、第1の蓋部材32、第2の蓋部材33に加わる衝撃を緩衝材Zが吸収して第1の蓋部材32、第2の蓋部材33の変形を抑制し、第1の蓋部材32、第2の蓋部材33が放射線検出部2に接触せず放射線検出部2が保護される。
【0081】
外部からの振動や衝撃を緩和抑制する手段として、緩衝材YおよびZの硬度を相対的に変化させてもよい。この場合、放射線検出部2の辺中央部近傍に配置される緩衝材Yは角部に配置される緩衝材Zおよびその近傍のものに比較して硬度を高くする。これにより外部の衝撃や振動は硬度の高い辺中央部へ伝わり易くなるが、放射線検出部2の辺中央部については角部に比較して強度を向上させることができ、総合的により大きな振動や衝撃に対する耐久性を得られる。
【0082】
以上、図1〜図12に基づいて本発明を説明したが、本発明は当該実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0083】
1 カセッテ型検出器
2 放射線検出部
3 ハウジング
21 検出器ユニット
22 基台
23A シグナルインターフェース基板
23B 制御基板
23C ゲートインターフェース基板
23D 電源基板
24 充電池
26 読み出しIC
27 ゲートドライバ
211 シンチレータ211
212 検出部
X、Y、Z 緩衝材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に向けて照射された放射線を検出して放射線画像データを取得する可搬型の放射線画像検出カセッテであって、
入射した放射線を電気信号に変換する検出部を有する検出器ユニットと、
一方の面に前記検出器ユニットが配置された基台と、
前記基台の他方の面に配置された、前記検出器ユニットと接続される基板を少なくとも有する制御部と、
前記検出器ユニットと前記基板を接続するフレキシブル回路と、
前記検出器ユニット、前記基台、前記制御部、前記フレキシブル回路を内蔵する筺体と、を備え、
前記基台と前記基板との間、又は前記筐体の内壁と前記基板との間の少なくともどちらか一方において、緩衝材が設けられていることを特徴とする放射線画像検出カセッテ。
【請求項2】
前記検出部における走査線に印加する電圧を切り替える走査駆動回路部と、
前記基台に取り付けられ、走査信号を前記走査駆動回路部へ伝達する走査インターフェース基板と、を備え、
前記基台と前記走査インターフェース基板との間、又は前記筐体の内壁と前記走査インターフェース基板との間の少なくともどちらか一方において、緩衝材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像検出カセッテ。
【請求項3】
前記筐体は筒型の形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線画像検出カセッテ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−150320(P2012−150320A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9515(P2011−9515)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】