説明

放射線硬化性バインダーおよびその製造方法

【課題】 本発明は、(1)アロファネート基;(2)化学線への暴露時に重合を伴ってエチレン性不飽和化合物と反応する基(放射線硬化性の基);および(3)任意にNCO反応性の基;を含有するバインダーの製造方法ならびに該方法によって得られるバインダーを提供する。
【解決手段】 本発明の方法は、
(A)ウレトジオン基を含有する1またはそれ以上のNCO官能性化合物を、
(B)イソシアネート反応性の基および放射線硬化性の基を含有する1またはそれ以上の化合物と、次に、
(C)(B)以外の1またはそれ以上の飽和のヒドロキシル含有化合物(これら化合物の少なくとも1つは≧2のOH官能価を有する)と、
(D)1またはそれ以上の亜鉛化合物を含有する触媒の存在下に、
≦130℃の温度で反応させ、化合物(C)との反応を、アロファネート基の形成と少なくとも比例して行なうことによる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アロファネート基、化学線への暴露時に重合を伴ってエチレン性不飽和化合物と反応する基を含有し、さらに、任意にイソシアネート反応性の基をも含有するバインダーの製造方法、得られるバインダーおよび被覆組成物における該バインダーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線、赤外線または電子線のような化学線による、活性二重結合を有する被覆系の硬化は既知であり、工業において確立されている。それは、被覆技術における最も迅速な硬化法の1つである。従って、この原理に基づく被覆組成物は、放射線または化学線硬化または硬化性の系と称される。
【0003】
特に有利な特性は、放射線硬化を第2の架橋工程と組合せて、これをそれとは独立して制御しうるようにしたときに得ることができる。この種の被覆系は、二元硬化系と称される(例えば、非特許文献1)。
【0004】
最近の被覆系に課される環境的および経済的な要求条件(即ち、粘度調節のために、できるだけ少ない有機溶媒を使用すべきであるか、または全く使用すべきではないという要求条件)により、元から低粘度である被覆剤原料を使用することが必要とされている。特に特許文献1に記載されているように、アロファネート基を有するポリイソシアネートがこの目的に知られている。
【0005】
工業的に、このような物質は、一価または多価アルコールと、過剰の脂肪族および/または脂環式ジイソシアネートとを反応させることによって製造される(特許文献2〜4を参照)。次に、減圧蒸留によって、未反応のジイソシアネートが除去される。特許文献5によれば、この方法は、活性二重結合を有するOH官能性化合物(例えばヒドロキシアルキルアクリレート)を使用して行なうこともできるが、特に低モノマー生成物の製造に関して問題が生じる。残留イソシアネート含量を充分に低下させるために(<0.5重量%の残留モノマー)、蒸留工程を135℃までの温度で行なわなければならないので、精製工程中であっても、二重結合が、熱開始下に重合を伴って反応することができる(これは理想的な生成物がもはや得られないことを意味する)。
【0006】
特許文献6は、オキサジアジントリオンからアロファネート構造を合成する方法を記載しているが、活性二重結合を有する放射線硬化性誘導体は知られていない。マレエートおよび/またはフマレート含有ポリエステルの使用を記載しているにすぎず、放射線硬化の可能性は記載していない。
特許文献7は、活性二重結合を有するヒドロキシ官能性モノマーと、NCO基を含有するアロファネート修飾イソシアヌレートとの反応による、低粘度の放射線硬化性アロファネートの製造を記載している。
【0007】
アルコールでウレトジオンを開環することによるアロファネート化合物の生成は、粉末被覆剤における架橋メカニズムとして原理的に知られている(非特許文献2および特許文献8を参照)。しかし、この目的に必要とされる反応温度は、活性二重結合を有するアロファネートに基づく放射線硬化性モノマーの目的とする製造のためには高すぎる(≧130℃)。
【0008】
歴史的に、アロファネートを生成するウレトジオン環とアルコールとの直接反応は、溶媒含有のイソシアネート不含の2K(2成分)ポリウレタン被覆剤に対して最初に研究がなされた。触媒作用がなければ、この反応は、その低い反応速度により、技術的重要性がない(非特許文献3)。しかし、適切な触媒を使用すると、HDIに基づくウレトジオン硬化剤とポリオールとの架橋反応が60〜80℃で始まると言われている(非特許文献4)。これらの触媒の構造は、現在まで公表されていない。この反応を使用することによって製造された市販製品も現在まで開示されていない。
【0009】
まとめると、活性二重結合を有するアルコールとウレトジオンとの≦130℃の温度での開環反応による、イソシアネート反応性の基を有する低粘度の放射線硬化性アロファネートの製造は、先行文献に明確に記載されていないと言うことができる。
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0682012号明細書
【特許文献2】英国特許出願公開第994890号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0000194号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0712840号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第19860041号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第0825211号明細書
【特許文献7】米国特許第5777024号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2003/0153713号明細書
【非特許文献1】Macromol.Symp. 187、531-542、2002、p.534
【非特許文献2】Proceedings of the International Waterborne, High-Solids, and Powder Coatings Symposium 2001、第28回、405-419
【非特許文献3】F.Schmitt、Angew.Makromol.Chem. (1989)、171、p.21-38
【非特許文献4】K.B.Chandalia、R.A.Englebach、S.L.Goldstein、R.W.Good、S.H.Harris、M.J.Morgan、P.J.Whitman、R.T.Wojcik、Proceedings of the International Waterborne, High-Solids, and Powder Coatings Symposium (2001)、p.77-89
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここに驚くべきことに、ウレトジオンと、オレフィン性不飽和アルコール(好ましくは活性二重結合を含む)および少なくとも2個のイソシアネート反応性の基を有する飽和化合物との反応により、触媒として脂肪族カルボン酸のアンモニウム塩またはホスホニウム塩を使用して、≦130℃の温度で、低残留モノマー分画を有する低粘度の放射線硬化性アロファネートが得られることがわかった。このような架橋剤が、放射線硬化性機能だけでなくNCO基と反応する機能をも有している場合、これらは二元硬化性の架橋剤と称される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、(1)アロファネート基;(2)化学線への暴露時に重合を伴ってエチレン性不飽和化合物と反応する基(放射線硬化性の基);および(3)任意にNCO反応性の基;を含有するバインダーの製造方法であって、
(A)ウレトジオン基を含有する1またはそれ以上のNCO官能性化合物を、
(B)イソシアネート反応性の基ならびに化学線への暴露時に重合を伴ってエチレン性不飽和化合物と反応する基(放射線硬化性の基)を含有する1またはそれ以上の化合物と、次に、
(C)(B)以外の1またはそれ以上の飽和のヒドロキシル含有化合物(これら化合物の少なくとも1つは≧2のOH官能価を有する)と、
(D)1またはそれ以上の亜鉛化合物を含有する触媒の存在下に、
≦130℃の温度で反応させ、化合物(C)との反応を、アロファネート基の形成と少なくとも比例して行なうことによる方法に関する。
【0013】
また本発明は、本発明の方法によって得られるバインダーに関する。
【0014】
さらに本発明は、下記の成分を含んで成る被覆組成物に関する:
(a)本発明に従って得られた1またはそれ以上のバインダー;
(b)任意に、遊離またはブロック化イソシアネート基を含有する1またはそれ以上のポリイソシアネートであって、化学線への暴露時に重合を伴ってエチレン性不飽和化合物と反応する基を任意に含有するポリイソシアネート;
(c)任意に、(a)以外の化合物であって、化学線への暴露時に重合を伴ってエチレン性不飽和化合物と反応する基を含有し、NCO反応性の基を任意に含有する化合物;
(d)任意に、活性水素を含有する1またはそれ以上のイソシアネート反応性の化合物であって、化学線への暴露時に重合を伴ってエチレン性不飽和化合物と反応する基を含有しない化合物;および
(e)1またはそれ以上の開始剤。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の目的のために、「放射線硬化性の基」、「化学線硬化性の基」および「化学線への暴露時に重合を伴ってエチレン性不飽和化合物と反応する基」なる用語は、同義に使用する。
【0016】
成分(B)の化合物は、化学線への暴露時に重合を伴ってエチレン性不飽和化合物と反応する基、例えば、ビニル、ビニルエーテル、プロペニル、アリル、マレイル、フマリル、マレイミド、ジシクロペンタジエニル、アクリルアミド、アクリロイルおよびメタクリロイル基を含有する。好ましい活性基は、ビニルエーテル、アクリレートおよび/またはメタクリレート基であり、より好ましくはアクリレート基である。
【0017】
NCO反応性の基は、OH-、SH-およびNH-官能性の化合物を包含し、好ましくはヒドロキシル基、第一級または第二級アミノ基およびアスパルテート基、より好ましくはヒドロキシル基を包含する。
【0018】
成分(A)は、少なくとも1個のウレトジオン基および1個のNCO基を有するあらゆる有機化合物を包含する。(A)において使用される化合物は、好ましくは3〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%、最も好ましくは25〜40重量%のウレトジオン基含量(C=84g/モルとして計算)を有する。
【0019】
(A)において使用される化合物は、ウレトジオン基を有することに加えて、好ましくは3〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%、最も好ましくは15〜25重量%のNCO基(NCO=42g/モルとして計算)をも有する。
【0020】
これらの化合物は、既知の方法(J.Prakt.Chem. 1994、336、p.196-198を参照)を使用して、脂肪族、脂環式、芳香族および/または芳香脂肪族ジイソシアネートまたはポリイソシアネートの触媒二量化によって製造するのが好ましい。
【0021】
適するジイソシアネートは下記のものである:1,4-ジイソシアナトブタン、1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)、トリメチルへキサンジイソシアネート、1,3-および1,4-ビス-イソシアナトメチルシクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4'-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、1,3-および1,4-キシレンジイソシアネート(XDI)(Takeda、日本の市販製品)、ジフェニルメタン-4,4'-ジイソシアネートおよびジフェニルメタン-2,4'-ジイソシアネート(MDI)、2,4-および2,6-トルエンジイソシアネート(TDI)、またはこれらの混合物。本発明の目的のためには、1,6-ジイソシアナトヘキサン、イソホロンジイソシアネートまたはこれらの混合物を使用するのが好ましい。
【0022】
二量化反応に使用される触媒の例は、トリアルキルホスフィン、ジメチルアミノピリジン、およびトリス(ジメチルアミノ)ホスフィンである。二量化反応の結果は、既知のように、使用される触媒、操作条件、および使用されるジイソシアネートに依存する。特に、1分子あたりに平均して1個を超えるウレトジオン基を含有する生成物を得ることができる(ウレトジオン基の数は分布を受ける)。使用される触媒、操作条件、および使用されるジイソシアネートに依存して、ウレトジオンに加えて、他の構造単位(例えばイソシアヌレートおよび/またはイミノオキサジアジンジオン)をも含有する生成物の混合物も生成する。
【0023】
特に好ましい生成物は、HDIの触媒二量化によって得られ、遊離HDI含量0.5重量%未満、NCO含量17〜25重量%、好ましくは21〜24重量%、および23℃における粘度20〜500mPas、好ましくは50〜200mPasを有する。
【0024】
触媒二量化によって得られる通常はNCO官能性の化合物は、成分(A)の一部として直接使用するのが好ましいが、それを先ずさらなる反応に付し、次いで成分(A)として使用することもできる。さらなる反応は、遊離NCO基のブロック化、あるいは、イミノオキサジアジンジオン、イソシアヌレート、ウレタン、アロファネート、ビウレット尿素、オキサジアジントリオン、オキサゾリジノン、アシル尿素またはカルボジイミド基を形成させるための、NCO基と2またはそれ以上の官能価を有するNCO反応性の化合物とのさらなる反応を包含する。これによって、より高い分子量を有するウレトジオン基含有化合物が得られ、該化合物は、選択した比率に依存して、異なるNCO含量を有する。
【0025】
適するブロック化剤は、下記のものを包含する:アルコール、ラクタム、オキシム、マロネート、アルキルアセトアセテート、トリアゾール、フェノール、イミダゾール、ピラゾールおよびアミン、例えば、ブタノンオキシム、ジイソプロピルアミン、1,2,4-トリアゾール、ジメチル-1,2,4-トリアゾール、イミダゾール、ジエチルマロネート、エチルアセトアセテート、アセトンオキシム、3,5-ジメチルピラゾール、ε-カプロラクタム、N-tert-ブチルベンジルアミン、シクロペンタノンカルボキシエチルエステル、またはこれらブロック化剤の混合物。NCO基をブロックする方法はよく知られており、文献(Progress in Organic Coatings 1999、36、148-172)に記載されている。
【0026】
(A)に使用されるウレトジオンの誘導体化用の、2またはそれ以上の官能価を有するNCO反応性の化合物は、上記のジおよび/またはポリイソシアネート、ならびに、2またはそれ以上の官能価を有する単純アルコール、例えば、エチレングリコール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、異性体ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサン-1,6-ジオール、2-エチルヘキサンジオール、トリプロピレングリコールおよびこれらアルコールのアルコキシル化誘導体であってよい。好ましい二価アルコールは、ヘキサン-1,6-ジオール、ジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコールである。適する三価アルコールは、グリセロールまたはトリメチロールプロパンまたはこれらのアルコキシル化誘導体を包含する。四価アルコールは、ペンタエリトリトールまたはそのアルコキシル化誘導体を包含する。
【0027】
さらに、親水性作用を有し、かつ誘導体化のための少なくとも1つのイソシアネート反応性の基を含有する化合物を、個々にまたは混合物として使用することもできる。親水性作用を有する化合物は、本発明の生成物を、水中または水性混合物中に溶解または分散させる場合に使用するのが好ましい。
【0028】
親水性作用を有する適する化合物は、少なくとも1つのイソシアネート反応性の基を有するあらゆるイオン性、潜在的イオン性および非イオン性の親水性化合物を包含する。イソシアネート反応性の基として、これらの化合物は、ヒドロキシおよび/またはアミノ官能基を含有するのが好ましい。
【0029】
イオン性または潜在的イオン性の親水性化合物は、少なくとも1つのイソシアネート反応性の基ならびにさらに少なくとも1つの官能基、例えば、-COOY、-SOY、-PO(OY)(Y=H、NH、金属カチオン)、-NR、-NR、-PR(R=H、アルキル、アリール)を有する化合物である。潜在的イオン性の親水性化合物とは、水性媒体と相互作用したときに、任意にpH依存性の解離平衡状態になり、こうして陰性、陽性または中性の電荷を有する化合物である。
【0030】
適するイオン性化合物または潜在的イオン性基を含有する化合物の例は、モノおよびジヒドロキシカルボン酸、モノおよびジアミノカルボン酸、モノおよびジヒドロキシスルホン酸、モノおよびジアミノスルホン酸、モノおよびジヒドロキシホスホン酸またはモノおよびジアミノホスホン酸およびこれらの塩である。その例は、下記のものである:ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ヒドロキシピバル酸、N-(2-アミノエチル)-β-アラニン、2-(2-アミノエチルアミノ)エタンスルホン酸、エチレンジアミン-プロピルまたはブチルスルホン酸、1,2-または1,3-プロピレンジアミン-β-エチルスルホン酸、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、グリシン、アラニン、タウリン、リシン、3,5-ジアミノ安息香酸、IPDIとアクリル酸の付加物(欧州特許出願公開第0916647号明細書、実施例1)およびそのアルカリ金属および/またはアンモニウム塩、亜硫酸水素ナトリウムとブタ-2-エン-1,4-ジオールとの付加物、ポリエーテルスルホネート、2-ブテンジオールとNaHSOとのプロポキシル化付加物(例えば、独国特許出願公開第2446440号明細書、第5〜9頁、式I〜III)、および陽イオン性基に変化しうる構造単位、例えばN-メチルジエタノールアミン。
【0031】
好ましいイオン性または潜在的イオン性の化合物は、カルボキシル基またはカルボキシレート基、スルホネート基および/またはアンモニウム基を有する化合物である。特に好ましいイオン性化合物は、カルボキシル基および/またはスルホネート基を、イオン性基または潜在的イオン性基として含有する化合物、例えば、N-(2-アミノエチル)-β-アラニンの塩、2-(2-アミノエチルアミノ)エタンスルホン酸、IPDIとアクリル酸との付加物(欧州特許出願公開第0916647号明細書、実施例1)およびジメチロールプロピオン酸である。
【0032】
親水性の非イオン性化合物として、ポリエーテル構造を有する化合物、好ましくは、イソシアネート反応性の基として少なくとも1つのヒドロキシまたはアミノ基を含有するアルキレンオキシドに基づくポリエーテルを使用することができる。
【0033】
これらポリエーテル構造を有する化合物は、1分子あたりに平均して5〜70個、好ましくは7〜55個のエチレンオキシド単位を含有し、少なくとも30モル%のエチレンオキシドを含む一価ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコール、例えば、適する開始分子のアルコキシル化によって既知の方法で得られる化合物(例えば、Ullmanns Encyclopaedie der technischen Chemie、第4版、第19巻、Verlag Chemie、Weinheim、p.31-38)を包含する。
【0034】
適する開始分子の例は、下記の分子である:飽和モノアルコール、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、異性体ペンタノール、ヘキサノール、オクタノールおよびノナノール、n-デカノール、n-ドデカノール、n-テトラデカノール、n-ヘキサデカノール、n-オクタデカノール、シクロヘキサノール、異性体メチルシクロヘキサノール、ヒドロキシメチルシクロヘキサン、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、例えばジエチレングリコールモノブチルエーテル、不飽和アルコール(例えば、アリルアルコール、1,1-ジメチルアリルアルコールまたはオレイルアルコール)、芳香族アルコール(例えばフェノール)、異性体クレゾールまたはメトキシフェノール、芳香脂肪族アルコール(例えば、ベンジルアルコール、アニシルアルコールまたはシンナミルアルコール)、第二級モノアミン(例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ビス(2-エチルヘキシル)アミン、N-メチルおよびN-エチルシクロヘキシルアミンまたはジシクロヘキシルアミン)、および複素環式第二級アミン(例えば、モルホリン、ピロリジン、ピペリジンまたは1H-ピラゾール)。好ましい出発分子は飽和モノアルコールである。ジエチレングリコールモノブチルエーテルを出発分子として使用するのが特に好ましい。
【0035】
アルコキシル化反応に適するアルキレンオキシドは、特にエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドであり、これらを、アルコキシル化反応において、相互に独立して任意の順序でまたは混合物として使用して、ブロックポリエーテルまたはコポリエーテルを得ることができる。
【0036】
ポリエーテル構造を有する化合物は、好ましくは単独ポリエチレンオキシドポリエーテルまたは混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルであり、該ポリエーテルにおいて、少なくとも30モル%、好ましくは少なくとも40モル%のアルキレンオキシド単位はエチレンオキシド単位である。好ましい非イオン性化合物は、少なくとも40モル%のエチレンオキシド単位および60モル%以下のプロピレンオキシド単位を含有する一官能の混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルである。
【0037】
特に、イオン性基を含有する親水性物質を使用する場合、触媒(D)の活性に対するその影響を調べる必要がある。この理由から、親水性ポリイソシアネートを使用する場合、非イオン性の親水性物質が好ましい。
【0038】
適する化合物(B)の例は、下記の化合物である(これらを単独でまたは混合して使用することができる):2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート(例えば、PEA6/PEM6;Laporte Performance Chemicals Ltd.、英国)、ポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート(例えば、PPA6、PPM5S;Laporte Performance Chemicals Ltd.、英国)、ポリアルキレンオキシドモノ(メタ)アクリレート(例えば、PEM63P;Laporte Performance Chemicals Ltd.、英国)、ポリ(ε-カプロラクトン)モノ(メタ)アクリレート[例えば、Tone M100(商標);Dow、Schwalbach、独国]、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチルビニルエーテル、3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシ官能性モノ、ジまたは高官能性アクリレート、例えば、グリセリルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレートまたはジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレート[これらは、任意にアルコキシル化した多価アルコール、例えば、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリトリトールまたはジペンタエリトリトールと、(メタ)アクリル酸との反応によって得られる]。
【0039】
また、成分(B)として適するのは、二重結合を有する酸と二重結合を任意に有するエポキシド化合物との反応によって得られるアルコール、例えば、(メタ)アクリル酸とグリシジル(メタ)アクリレートまたはビスフェノールAジグリシジルエーテルとの反応生成物である。さらに、任意に不飽和の酸無水物と、任意にアクリレート基を含有するヒドロキシ化合物およびエポキシド化合物との反応によって得られる不飽和アルコールを使用することもできる。その例は、無水マレイン酸と2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよびグリシジル(メタ)アクリレートとの反応生成物を包含する。
【0040】
特に好ましい成分(B)の化合物は、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、Tone M100(商標)(Dow、Schwalbach、独国)、ポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート(例えば、PEA6/PEM6;Laporte Performance Chemicals Ltd.、英国)、ポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート(例えば、PPA6、PPM5S;Laporte Performance Chemicals Ltd.、英国)、およびアクリル酸とグリシジルメタクリレートとの反応生成物である。
【0041】
成分(C)は、(B)以外の1またはそれ以上の飽和のヒドロキシル含有化合物から選択されるが、これら化合物の少なくとも1つは≧2のOH官能価を有する。これら化合物は、モノマー性および/またはポリマー性であってよい。
【0042】
適する化合物は、低分子量のモノ、ジまたはポリオールであり、例えば短鎖の、即ち2〜20個の炭素原子を含む脂肪族、芳香脂肪族または脂環式モノアルコール、ジオールまたはポリオールである。モノアルコールの例は、メタノール、エタノール、異性体プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ならびに、ジアセトンアルコール、脂肪アルコールまたはフッ素化アルコール[例えば、DuPontからZonyl(商標)の名称で得られるアルコール]を包含する。
【0043】
ジオールの例は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-2-ブチルプロパンジオール、トリメチルペンタンジオール、位置異性のジエチルオクタンジオール、1,3-ブチレングリコール、シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-および1,4-シクロヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA[2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン]、および2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピオン酸2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピルを包含する。適するトリオールの例は、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンまたはグリセロールを包含し、適するポリオールの例は、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトールおよびソルビトールを包含する。好ましいアルコールは、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,6-ヘキサンジオールおよびトリメチロールプロパンである。
【0044】
より高分子量の適するポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ヒドロキシ官能性(メタ)アクリレート(コ)ポリマー、ヒドロキシ官能性ポリウレタンまたは対応するハイブリッドを包含する(Roempp Lexikon Chemie、p.465-466、第10版、1998、Georg-Thieme-Verlag、Stuttgartを参照)。
【0045】
ヒドロキシ官能性ポリエステルの製造のために、特に、使用しうる6群のモノマー成分が存在する。
1.(シクロ)アルカンジオール、例えば(シクロ)脂肪族結合したヒドロキシル基を有する二価アルコール。その例は、上記した低分子量ジオール、さらに、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリブチレングリコール(その数平均分子量は、200〜4000,好ましくは300〜2000、より好ましくは450〜1200である)を包含する。これらのジオールとε-カプロラクトンまたは他のラクトンとの反応生成物も、適するジオールである。
2.3またはそれ以上の官能価を有するアルコール(その分子量は92〜254である)、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトールおよびソルビトール;これらアルコールから出発して製造したポリエーテル、例えば、トリメチロールプロパン1モルとエチレンオキシド4モルとの反応生成物;またはこれらアルコールとε-カプロラクトンまたは他のラクトンとの反応によって得られるアルコール。
3.モノアルコール、例えば、エタノール、1-および2-プロパノール、1-および2-ブタノール、1-ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノールおよびベンジルアルコール。
【0046】
4.ジカルボン酸(その数平均分子量は104〜600である)および/またはその無水物、例えば、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、無水コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、および水素化ダイマー脂肪酸。
5.高級多官能カルボン酸および/またはその無水物、例えば、トリメリト酸および無水トリメリト酸。
6.モノカルボン酸、例えば、安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸、2-エチルヘキサン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、および天然および合成の脂肪酸。
【0047】
適するヒドロキシル含有ポリエステルは、群1または2からの少なくとも1つの成分と群4または5からの少なくとも1つの成分との反応生成物を包含する。上記したアルコールとラクトンとの反応生成物を使用することもできる。これらのヒドロキシル含有ポリエステルは、数平均分子量500〜10,000g/モル、好ましくは800〜3000g/モル、ならびに、ヒドロキシル基含量1〜20重量%、好ましくは3〜15重量%を有する。これらポリエステルは、100%固体で、または溶媒もしくは反応性希釈剤(本発明の方法に適するものであり、下記で説明する)中の溶液として使用することができる。
【0048】
上記したポリエステルポリオールに加えて、デンドリマーまたは超分岐化合物も適している。これらは、例えば、エトキシル化ペンタエリトリトールおよびジメチロールプロピオン酸から得られる化合物である。
【0049】
適するポリカーボネートポリオールは、ポリエステルポリオールの製造のために上記したアルコールを、有機カーボネート(例えば、ジフェニル、ジメチルまたはジエチルカーボネート)と、既知の方法に従って反応させることによって得られる。これらは、好ましくは、数平均分子量が500〜5000g/モル、より好ましくは750〜2500g/モルであり、ヒドロキシル官能価が1.5〜3である。
【0050】
適するポリエーテルの例は、上記した低分子量のモノ、ジまたはポリオールから製造されるアルキレンオキシドポリエーテルを包含する。また適するのは、テトラヒドロフランの重合によって得られるポリエーテルである。これらのポリエーテルは、数平均分子量が400〜13,000g/モル、好ましくは400〜2500g/モル、より好ましくは500〜1200g/モルであり、ヒドロキシル基含量が1〜25重量%、好ましくは3〜15重量%である。
【0051】
(メタ)アクリレート(コ)ポリマーは、適する製造方法と共に、国際特許出願公開WO03/000812の第8〜16頁に詳細に記載されている。本発明に従って適する(メタ)アクリレート(コ)ポリマーは、少なくとも1個のヒドロキシル基を有するポリマーである。(メタ)アクリレート(コ)ポリマーは、好ましくは、数平均分子量が500〜10,000g/モル、より好ましくは1000〜5000g/モルであり、ヒドロキシル基含量が1〜20重量%、好ましくは3〜15重量%である。
【0052】
特に好ましいのは、モノマーのジオールまたはトリオール、さらに、これらから誘導される数平均分子量が1000g/モル以下のポリエーテルおよび/またはポリラクトンである。
【0053】
適する触媒化合物(D)は、本発明に従って使用される亜鉛化合物に加えて、イソシアネート基とイシソアネート反応性の基との反応を触媒することが知られている化合物(個々の化合物または相互の混合物)を包含する。
【0054】
その例は、下記の触媒である:第三級アミン、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、メチルピリジン、ベンジルジメチルアミン、N,N-エンドエチレンピペラジン、N-メチルピペリジン、ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N-ジメチルアミノシクロヘキサン、N,N'-ジメチルピペラジンまたは1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、または金属塩、例えば、塩化鉄(III)、オクタン酸スズ(II)、エチルカプロン酸スズ(II)、パルミチン酸スズ(II)、ジブチルスズ(IV)ジラウレート、ジブチルスズ(IV)ジアセテートおよびグリコール酸モリブデン、またはこのような触媒の混合物。
【0055】
適する亜鉛化合物は、あらゆる有機または無機の亜鉛化合物を包含する。これらは、例えば、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、フッ化亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、リン酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、チタン酸亜鉛、ヘキサフルオロケイ酸亜鉛、亜硫酸亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、テトラフルオロホウ酸亜鉛、酢酸亜鉛、オクタン酸亜鉛、シクロヘキサン酪酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、アセチルアセトン酸亜鉛、2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン酸亜鉛、トリフルオロ酢酸亜鉛、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛およびこれら化合物の混合物である。
【0056】
好ましい触媒(D)は、オクタン酸亜鉛および/またはアセチルアセトン酸亜鉛である。好ましくは、触媒(D)として亜鉛化合物のみを使用する。
触媒(D)を、当業者に既知の方法で支持物質に適用し、それを不均一系触媒として使用することもできる。
【0057】
触媒成分(D)の化合物を、本方法において使用される成分の1つまたはその一部に好都合に溶解させることができる。特に、本発明に従って使用される亜鉛化合物は、極性ヒドロキシアルキルアクリレートに極めてよく溶解するので、少量の(B)中の溶液状態の(D)を、液体形態の濃厚溶液として供給することができる。
【0058】
本発明の方法において、触媒成分(D)は、生成物の固体含量に基づいて、好ましくは0.001〜5.0重量%、より好ましくは0.01〜2.0重量%、最も好ましくは0.05〜1.0重量%の量で使用する。
【0059】
成分(E)として、溶媒または反応性希釈剤を使用することができる。適する溶媒は、その添加時点から方法の最後まで、生成物中に存在する官能基に対して不活性である。適する溶媒は、被覆剤工業において使用される溶媒、例えば、炭化水素、ケトンおよびエステル、例えば、トルエン、キシレン、イソオクタン、アセトン、ブタノン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミドおよびジメチルホルムアミドを包含する。溶媒を全く添加しないのが好ましい。
【0060】
反応性希釈剤として、紫外線硬化中に(共)重合し、それによってポリマー網状構造中に導入される化合物を使用することができる。これらの反応性希釈剤を、NCO含有化合物(A)と接触させるときに、これらはNCO基に対して不活性でなければならない。これらを(A)と(B)との反応後にのみ添加するときには、この制限は当てはまらない。このような反応性希釈剤は、例えば、P.K.T.Oldring編、Chemistry & Technology of UV & EB Formulations For Coatings、Inks & Paints、Vol.2、1991、SITA Technology、London、p.237-285に記載されている。これらは、アクリル酸またはメタクリル酸(好ましくはアクリル酸)と一官能または多官能価アルコールとのエステルであってよい。適するアルコールの例は、下記のアルコールである:異性体ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノールおよびデカノール;脂環式アルコール、例えば、イソボルノール、シクロヘキサノールおよびアルキル化シクロヘキサノール;ジシクロペンタノール;アリール脂肪族アルコール、例えば、フェノキシエタノールおよびノニルフェニルエタノール;およびテトラヒドロフルフリルアルコール。さらに、これらアルコールのアルコキシル化誘導体を使用することもできる。
【0061】
適する二価アルコールは、例えば下記のアルコールである:エチレングリコール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、異性体ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサン-1,6-ジオール、2-エチルヘキサンジオール、トリプロピレングリコールまたはこれらアルコールのアルコキシル化誘導体。好ましい二価アルコールは、ヘキサン-1,6-ジオール、ジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコールである。適する三価アルコールは、グリセロールまたはトリメチロールプロパンまたはこれらのアルコキシル化誘導体を包含する。四価アルコールは、ペンタエリトリトールまたはそのアルコキシル化誘導体を包含する。
【0062】
本発明のバインダーは、尚早な重合に対して安定化すべきである。従って、成分(E)の構成成分として、反応前および/または反応中に、重合を抑制するフェノール系安定剤を添加するのが好ましい。これに関して、パラ-メトキシフェニル、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノンまたは2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールのようなフェノールが使用される。また、N-オキシル化合物、例えば2,2,6,6-テトラメチルピペリジンN-オキシド(TEMPO)またはその誘導体も安定化に適している。安定剤を化学的にバインダー中に導入することもでき、この点で適するのは、上記した種類の化合物であって、特に、それらがさらなる遊離の脂肪族アルコール基または第一級もしくは第二級アミン基を有し、従ってウレタン基または尿素基を介して成分(A)の化合物に化学的に結合しうる場合の化合物である。この目的に特に適する化合物は、2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジンN-オキシドである。フェノール系安定剤、特にパラ-メトキシフェノールおよび/または2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールが好ましい。
【0063】
対照的に、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)のような他の安定剤は、(E)において使用する好ましさが低い。その理由は、これらは上記のような効果的な安定化を与えないことが知られており、その代わりに、不飽和基の「クリーピング」フリーラジカル重合を導きうるためである。
【0064】
尚早な重合に対して、反応混合物、特に不飽和基を安定化するために、酸素含有ガス、好ましくは空気を、反応混合物中および/または反応混合物上に通すことができる。イソシアネート存在下の望ましくない反応を防止するために、ガスは、極めて低い水分含量を有するのが好ましい。
【0065】
一般に、安定剤は、本発明のバインダーの製造中に添加され、そして最後に、長期安定性を得るために、フェノール系安定剤による安定化を繰り返し、任意に反応生成物を空気で飽和させる。
【0066】
本発明の方法において、安定剤成分は、生成物の固体含量に基づいて、通常は0.001〜5.0重量%、好ましくは0.01〜2.0重量%、より好ましくは0.05〜1.0重量%の量で使用される。
【0067】
本発明の方法は、初めに(A)を(B)と反応させ、全てのNCO基が反応するまで行う。得られた中間体を、任意に貯蔵および/または輸送することができる。これに続いて、ウレトジオン基と成分(C)との反応を行う。
【0068】
(A)中のNCO基と(B)中のNCO反応性の基との比率は、1:1〜1:1.5、好ましくは1:1〜1:1.2、より好ましくは1:1である。(A)中のウレトジオン基と(C)中のヒドロキシル基との比率は、1:0.4〜1:6、好ましくは1:0.9〜1:4、より好ましくは1:0.9〜1:2である。さらに、(A)中のNCO基とウレトジオン基の合計は、(B)中のNCO反応性の基とウレトジオン反応性の基の合計を超えていることが必須である。
【0069】
選択した比率に依存して、生成物は、ヒドロキシル基を含まずに、またはヒドロキシル基をなお含んで得られる。これらの生成物は、好ましくは、放射線硬化性の基だけでなくNCO反応性の基をも含有する。本発明の方法は、好ましくは20〜130℃、より好ましくは40〜90℃の温度で行なう。
【0070】
本発明に従って得られるバインダーの粘度は、特に、成分(C)の官能価、分子量および化学的性質に、また、使用される化学量論比率に依存する。好ましいモノマージオールまたはトリオール、ならびに、これらから誘導される数平均分子量が1000g/モル以下のポリエーテルおよび/またはポリアセトンを使用する場合、これにより、好ましくは23℃で100,000mPas以下、より好ましくは23℃で75,000mPas以下の粘度を有するバインダーが得られる。数平均分子量は、好ましくは500〜5000g/モル、より好ましくは800〜2000g/モルである。
【0071】
本発明の方法を、例えば、静的ミキサーにおいて連続的に行なうか、または、例えば撹拌反応器においてバッチ式で行なうことができる。
好ましくは、本発明の方法を撹拌反応器において行なう。この場合、第1の工程における成分(A)および(B)の添加順序、ならびに、第2の工程における中間体(AB)および成分(C)の添加順序は任意である。(E)中に存在する安定剤を、好ましくは、成分(B)を熱負荷に暴露する前に添加する。成分(E)の他の部分は、いずれかの望ましい時点で添加することができる。(D)の亜鉛化合物は、好ましくは、中間体(AB)の製造後までは添加しない。
【0072】
反応の進行を、反応容器に取り付けた適当な測定装置によって、そして/または採取した試料の分析に基づいて、モニターすることができる。適する方法は既知である。そのような方法は、例えば、粘度測定、屈折率またはOH含量の測定、ガスクロマトグラフィー(GC)、核磁気共鳴スペクトル法(NMR)、赤外スペクトル法(IR)および近赤外スペクトル法(NIR)を包含する。好ましくは、IRを使用して、存在するあらゆる遊離NCO基(脂肪族NCO基については、約ν=2272cm-1におけるバンド)、および特に、ウレトジオン基(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートに基づくウレトジオンについては、ν=1761cm-1におけるバンド)をチェックし、GC分析を使用して、(B)および(C)からの未反応化合物をチェックする。
【0073】
ウレトジオン基とヒドロキシル基との反応を完全に行なわず、その代わりに、ある変換率に到達したときに反応を停止させることができる。次に、さらなる(クリーピング)反応を、イソシアネート基を安定化するための既知の酸性物質を添加することによって抑制することができる。好ましい酸または酸誘導体は、塩化ベンゾイル、塩化フタロイル、亜ホスフィン酸、亜ホスホン酸および/または亜リン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸および/またはリン酸、先の6種類の酸の酸性エステル、硫酸およびその酸性エステルおよび/またはスルホン酸を包含する。
【0074】
本発明のバインダーは、被覆剤および塗料ならびに接着剤、印刷インキ、注型用樹脂、歯科用コンパウンド、サイズ剤、フォトレジスト、ステレオリトグラフィー系、複合材料用樹脂およびシーラントの製造に使用することができる。接着結合または封止において、紫外線硬化の場合には、相互に結合または封止される2つの支持体の少なくとも1つは、紫外線透過性である必要がある、即ち、それは透明であるべきである。電子線の場合には、電子の充分な透過性を確実にすべきである。バインダーを、塗料および被覆剤において使用するのが好ましい。
【0075】
本発明の被覆組成物は、下記の成分を含有する:
(a)本発明に従って得られた1またはそれ以上のバインダー;
(b)任意に、遊離またはブロック化イソシアネート基を含有する1またはそれ以上のポリイソシアネートであって、化学線への暴露時に重合を伴ってエチレン性不飽和化合物と反応する基を任意に含有するポリイソシアネート;
(c)任意に、(a)以外の化合物であって、化学線への暴露時に重合を伴ってエチレン性不飽和化合物と反応する基を含有し、NCO反応性の基を任意に含有する化合物;
(d)任意に、活性水素を含有する1またはそれ以上のイソシアネート反応性の化合物であって、化学線への暴露時に重合を伴ってエチレン性不飽和化合物と反応する基を含有しない化合物;
(e)1またはそれ以上の開始剤;および
(f)任意に添加剤。
【0076】
適するポリイソシアネート(b)は、芳香族、芳香脂肪族、脂肪族または脂環式のジまたはポリイソシアネートである。これらジイソシアネートまたはポリイソシアネートの混合物を使用することもできる。適するジイソシアネートまたはポリイソシアネートの例は、下記のものを包含する:ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,2,4-および/または2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、異性体ビス(4,4'-イソシアナトシクロヘキシル)メタンまたはその任意の所望の異性体含量の混合物、イソシアナトメチル-1,8-オクタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、異性体シクロヘキサンジメチレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-および/または2,6-トリレンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、2,4'-または4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタン-4,4',4"-トリイソシアネート、あるいは、これらのジおよびポリイソシアネートから製造されるポリイソシアネート付加体であって、ウレタン、尿素、カルボジイミド、アシル尿素、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、オキサジアジントリオン、ウレトジオン、イミノオキサジアジンジオン基を含有する付加体、ならびに、これらの混合物。
【0077】
好ましいのは、適する方法により過剰のジイソシアネートを含有しないようにしたオリゴマー化および/または誘導体化したジイソシアネートに基づくポリイソシアネート付加体、特に、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよび異性体ビス(4,4'-イソシアナトシクロヘキシル)メタンから製造した付加体ならびにこれらの混合物である。特に好ましいのは、HDIから製造されイソシアヌレートおよび/またはイミノオキサジアジンジオン基を含有するポリイソシアネート付加体ならびにIPDIから製造されイソシアヌレート基を含有するポリイソシアネート付加体である。
【0078】
既知のブロック化剤でブロックされた上記イソシアネートを使用することもできる。ブロック化剤の例は、下記のものを包含する:アルコール、ラクタム、オキシム、マロネート、アルキルアセトアセテート、トリアゾール、フェノール、イミダゾール、ピラゾールおよびアミン、例えば、ブタノンオキシム、ジイソプロピルアミン、1,2,4-トリアゾール、ジメチル-1,2,4-トリアゾール、イミダゾール、ジエチルマロネート、エチルアセトアセテート、アセトンオキシム、3,5-ジメチルピラゾール、ε-カプロラクタム、N-tert-ブチルベンジルアミン、シクロペンタノンカルボキシエチルエステル、およびこれらの混合物。
【0079】
ポリイソシアネート(b)は、任意に、化学線への暴露時に重合を伴ってエチレン性不飽和化合物と反応する1またはそれ以上の官能基を含有することができる。これらの群は、(B)として特定した不飽和かつイソシアネート反応性の化合物(好ましい範囲を含む)を、飽和ポリイソシアネートと、既知の方法によって反応させることによって製造することができる。この種のNCO含有ウレタンアクリレートは、Bayer AG (Leverkusen、独国)から、Roskydal(商標) UA VP LS 2337、Roskydal(商標) UA VP LS 2396またはRoskydal(商標) UA XP 2510として市販されている。
【0080】
成分(c)として使用するのに適する化合物は、化学線への暴露時に重合を伴ってエチレン性不飽和化合物と反応する基を含有するポリマーである(例えば、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリシロキサン、ポリエステル、ポリカーボネートおよびポリエーテル)。これらの群は、下記のものを包含する:α,β-不飽和カルボン酸誘導体、例えばアクリレート、メタクリレート、マレエート、フマレート、マレイミドおよびアクリルアミド;ビニルエーテル;プロペニルエーテル;アリルエーテル;およびジシクロペンタジエニル単位を含有する化合物。好ましいのはアクリレートおよびメタクリレートである。その例は、放射線硬化技術において既知であり、(E)として使用するのに適すると記載した反応性希釈剤(Roempp Lexikon Chemie、p.491、第10版、1998、Georg-Thieme-Verlag、Stuttgart)、あるいは、放射線硬化技術から既知であるバインダー、例えばポリエーテルアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート、シリコーンアクリレート、ポリカーボネートアクリレートおよびアクリル化ポリアクリレート(これらは、任意にイソシアネート反応性の基、好ましくはヒドロキシル基を含有する)を包含する。
【0081】
適する化合物(d)は、(C)として記載したヒドロキシ官能性のモノマーまたはポリマー化合物、およびさらに水(これは、任意に大気中水分の形態で、被覆後にのみ残存成分と接触させる)を包含する。さらに、NH官能性の化合物、例えばアミン末端のポリエーテル、ポリアミンおよびアスパルテートを使用することができる。
【0082】
成分(e)として使用しうるラジカル重合用の適する開始剤は、熱および/または放射線によって活性化しうる開始剤である。ここで、紫外線または可視光線によって活性化される光開始剤が好ましい。光開始剤は既知の化合物である。一分子(I型)および二分子(II型)開始剤の間で区別がなされる。適する(I型)系は、芳香族ケトン化合物、例えば、第三級アミンと組合せたベンゾフェノン、アルキルベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、アントロンおよびハロゲン化ベンゾフェノンまたはこれらの混合物を包含する。適する(II型)開始剤は、ベンゾインおよびその誘導体、ベンジルケタール、アシルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、フェニルグリオキシル酸エステル、カンファーキノン、α-アミノアルキルフェノン、α,α-ジアルコキシアセトフェノンおよびα-ヒドロキシアルキルフェノンを包含する。
【0083】
開始剤は、皮膜形成バインダーの重量に基づいて、0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%の量で使用される。開始剤は、個々に、または有利な相乗作用を得るために相互に組合せて使用することができる。
【0084】
紫外線の代わりに電子線を使用する場合には、光開始剤は必要ではない。電子線は、熱放射によって発生し、電位差によって加速される。次に、高エネルギー電子が、チタン箔を通って、硬化されるバインダーに誘導される。電子線硬化の一般原理は、「Chemistry & Technology of UV & EB Formulations for Coatings, Inks & Paints」、第1巻、P.K.T.Oldring編、SITA Technology、ロンドン、英国、p.101-157、1991に詳しく記載されている。
【0085】
活性二重結合の熱硬化は、熱分解性フリーラジカル開始剤の添加によって行なうことができる。適する開始剤は下記の化合物である:ペルオキシ化合物、例えば、ジアルコキシジカーボネート、例えばビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート;ジアルキルペルオキシド、例えばジラウリルペルオキシド;芳香族または脂肪族酸の過エステル、例えば過安息香酸tert-ブチルまたはペルオキシ2-エチルヘキサン酸tert-アミル;無機過酸化物、例えばペルオキソ二硫酸アンモニウムまたはペルオキソ二硫酸カリウム;有機過酸化物、例えば、2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、ジクミルペルオキシドまたはtert-ブチルヒドロペルオキシド;およびアゾ化合物、例えば、2,2'-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、1-[(シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2'-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2'-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2'-アゾビス{2-メチル-N-[2-(1-ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2'-アゾビス{2-メチル-N-[2-(1-ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}または2,2'-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}。高度に置換された1,2-ジフェニルエタン(ベンズピナコール)、例えば、3,4-ジメチル-3,4-ジフェニルへキサン、1,1,2,2-テトラフェニルエタン-1,2-ジオールまたはこれらのシリル化誘導体も適している。
【0086】
紫外線および熱によって活性化される開始剤の組合せを使用することもできる。
【0087】
添加剤(f)は、(E)として先に記載した種類の溶媒を包含する。さらに、(f)は、硬化した被覆皮膜の気候安定性を増加させるために、紫外線吸収剤および/またはHALS安定剤を含有することもできる。これら安定剤の組合せが好ましい。紫外線吸収剤は、390nm以下の吸収域を有すべきである。これらは例えば下記のものである:トリフェニルトリアジン型[例えば、Tinuvin(商標)400 (Ciba Spezialitaetenchemie GmbH、Lampertheim、独国)]、ベンゾトリアゾール、例えばTinuvin(商標)622 (Ciba Spezialitaetenchemie GmbH、Lampertheim、独国)、またはシュウ酸ジアニリド[例えば、Sanduvor(商標)3206 (Clariant、Muttenz、スイス国)]。これらは、樹脂固体含量に基づいて0.5〜3.5重量%で添加される。また、適するHALS安定剤も市販されており、Tinuvin(商標)292またはTinuvin(商標)123 (Ciba Spezialitaetenchemie GmbH、Lampertheim、独国)、またはSanduvor(商標)3258 (Clariant、Muttenz、スイス国)を包含する。これらは、樹脂固体含量に基づいて0.5〜2.5重量%の量で添加するのが好ましい。
【0088】
また、成分(f)は、顔料、染料、充填剤、均染添加剤および脱蔵添加剤を含有することもできる。
【0089】
さらに、必要であれば、NCO/OH反応を促進するために、ポリウレタン化学から既知の触媒が(f)中に存在することもできる。これらは、スズ塩、亜鉛塩、有機スズ化合物、スズ石鹸および/または亜鉛石鹸、例えば、オクタン酸スズ、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキシド、または第三級アミン、例えばジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、ビスマス化合物、ジルコニウム化合物またはモリブデン化合物を包含する。
【0090】
本発明の被覆組成物の、被覆すべき材料への適用は、被覆技術において既知の方法を使用して、例えば、吹付け、ナイフ塗布、ロール塗布、流し込み、浸漬、スピンコーティング、はけ塗または噴射によって、または印刷法(例えば、スクリーン、グラビア、フレキソまたはオフセット印刷)および転写法を使用して行なう。
【0091】
適する支持体は、下記のものを包含する:木材、金属(特に、ワイヤエナメリング、コイル被覆、缶塗装またはコンテナ塗装の適用に使用される金属を含む)、およびプラスチック(皮膜の形態のプラスチックを含む)、特に、ABS、AMMA、ASA、CA、CAB、EP、UF、CF、MF、MPF、PF、PAN、PA、PE、HDPE、LDPE、LLDPE、UHMWPE、PET、PMMA、PP、PS、SB、PUR、PVC、RF、SAN、PBT、PPE、POM、PUR-RIM、SMC、BMC、PP-EPDMおよびUP(DIN 7728T1に従う略語)、紙、革、織物、フェルト、ガラス、材木、木製材料、コルク、無機的に結合した支持体、例えば木板および繊維セメントスラブ、電子アセンブリまたは鉱物質支持体。種々の上記材料を含有する支持体を被覆することもでき、また、既に被覆された支持体、例えば、自動車、飛行機または船およびこれらの部品、特に車体または外部取付用部品を被覆することもできる。被覆組成物を支持体に一時的に適用し、次に、それを部分的または完全に硬化させ、それを任意に剥離して皮膜を形成させることもできる。
【0092】
硬化のために、存在する溶媒を、蒸発分離によって完全または部分的に除去することもできる。次にまたは同時に、任意の熱硬化操作および光化学硬化操作を、連続的にまたは同時に行なうことができる。必要であれば、熱硬化を、室温または高温、好ましくは40〜160℃、好ましくは60℃〜130℃、より好ましくは80〜110℃で行なうことができる。
【0093】
光開始剤を(e)に使用する場合には、高エネルギー放射線、即ち紫外線または日光、例えば200〜700nmの波長を有する光への暴露によって、放射線硬化を行なうのが好ましい。光または紫外線の放射源は、高圧または中圧の水銀灯を包含する。水銀蒸気は、ガリウムまたは鉄のような他の元素でドーピングすることによって修飾することができる。レーザー、パルス灯(UV閃光灯の名称で既知)、ハロゲンランプまたはエキシマーエミッターを使用することもできる。これらのデザインの固有部分として、または特殊フィルターおよび/またはレフレクターを使用して、紫外線スペクトルの一部が放射されないようにエミッターを装備させることもできる。例えば、職場衛生の理由から、UV-CまたはUV-CおよびUV-Bに割当てられる放射線を、フィルターによって除去してよい。エミッターを固定的に取り付けて、照射される物質が機械的装置によって放射源を通過するようにしてもよく、またはエミッターを可動性にし、照射される物質を硬化中に固定したままにしてもよい。紫外線硬化の場合、架橋のために通常は充分な照射線量は80〜5000mJ/cm2である。
【0094】
照射は、酸素の不存在下、例えば不活性ガス雰囲気下、または酸素減少雰囲気下で行なうこともできる。適する不活性ガスは、好ましくは、窒素、二酸化炭素、貴ガスまたは燃焼ガスである。照射を、被覆物を放射線透過性の媒体で覆うことによって行なってもよい。その例は、ポリマー皮膜、ガラスまたは水のような液体である。
【0095】
照射線量および硬化条件に依存して、既知の方法において使用される任意の開始剤の種類および濃度を変化させることができる。
【0096】
固定的に設置した高圧水銀灯を使用して硬化を行なうのが特に好ましい。そのとき、光開始剤を、被覆組成物の固体含量に基づいて、0.1〜10重量%、より好ましくは0.2〜3.0重量%の濃度で使用する。これらの被覆剤を硬化させるために、200〜600nmの波長帯で測定して200〜3000mJ/cm2の照射線量を使用するのが好ましい。
【0097】
熱活性化可能な開始剤を(d)において使用する場合、温度を上昇させることによって硬化を行なう。熱エネルギーは、被覆剤技術において既知のオーブン、近赤外線ランプおよび/また赤外線ランプを使用して、照射、熱伝導および/または対流によって、被覆剤に導入することができる。
【0098】
適用される皮膜厚み(硬化前)は、通常は0.5〜5000μm、好ましくは5〜1000μm、より好ましくは15〜200μmである。溶媒を使用したときには、これを、適用後および硬化前に、既知の方法によって除去する。
【実施例】
【0099】
全ての割合(%)は、特に示すことがなければ重量%である。
NCO含量(%)は、DIN EN ISO 11909に従って、ブチルアミンとの反応後に、0.1モル/Lの塩酸での逆滴定によって測定した。
粘度測定は、ISO/DIS 3219:1990に従って、Paar Physica、Ostfildern、独国からのコーンプレート粘度計(SM-KP)、Viskolab LC3/ISOを使用して行なった。
赤外スペクトル法は、Perkin Elmer、Ueberlingen、独国からのモデル157装置において、塩化ナトリウム板の間に適用した液膜上で行なった。
【0100】
残留モノマーの量および揮発性合成成分の量は、GCによって分析した(テトラデカンを内部標準として使用する方法;オーブン温度110℃;インジェクター温度150℃;キャリヤーガス:ヘリウム;装置:6890N、Agilent、Waldbronn、独国;カラム:Restek RT 50、30m、0.32mm内径;フィルム厚み:0.25μm)。
固体含量は、DIN 53216/1ドラフト4/89、ISO 3251に従って測定した。
実験を行なった時期の周囲温度23℃を室温とする。
【0101】
Desmodur(商標)N3400:ウレトジオン基を多く含有するHDIポリイソシアネート;粘度185mPas/23℃;NCO含量21.4%;Bayer MaterialScience AG、Leverkusen、独国の市販製品。
Desmorapid(商標)Z:ジブチルスズジラウレート(DBTL);Bayer MaterialScience AG、Leverkusen、独国の市販製品。
Darocur(商標)1173:光開始剤;Ciba Spezialitaetenchemie GmbH、Lampertheim、独国の市販製品。
【0102】
実施例1は、ウレタン化による、ウレトジオン基を含有するウレタンアクリレートの製造を記載するものであり、このアクリレートは実施例2〜4において使用される。
【0103】
実施例1:ウレトジオン基を含有するウレタンアクリレート
初めに、還流冷却器、撹拌機、滴下漏斗および空気導入(0.5L/時)を備えた三口フラスコに、室温で、Desmodur(商標)N3400(194.90g)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(0.31g)およびDesmorapid(商標)Z(0.005g)を導入し、この最初の混合物を60℃に加熱した。2-ヒドロキシエチルアクリレート(116.00g)をゆっくり滴下し、その間に、最高温度70℃に達した。次に、NCO含量が<0.1%になるまで、反応混合物を70℃に維持した。冷却中に、生成物はワックス状固体に固化した。
【0104】
実施例2:本発明のアロファネート含有バインダー
実施例1において使用した装置と同様の装置において、実施例1で得たウレタンアクリレート(175.35g)を80℃で溶融し、酢酸ブチル(50.0g)、トリメチロールプロパンから出発して製造した平均して4重エトキシル化したポリエーテル(ヒドロキシル価550、23℃での動力学粘度505mPas)(24.1g)およびアセチルアセトン酸亜鉛(II)(0.64g)を添加した。この反応混合物を、14.0時間後にν=1768cm-1におけるIRスペクトルにおいてウレトジオン基の極めて弱いシグナルしか検出されなくなるまで、80℃で撹拌した。得られた透明な生成物は、粘度3100mPas/23℃、固体含量81.1%およびNCO含量0%を有していた。
【0105】
実施例3:本発明のアロファネート含有バインダー
ウレタンアクリレート(167.13g)およびポリエーテル(32.04g)を使用したことが相違して、実施例2を繰り返した。反応混合物を、2時間後にν=1768cm-1におけるIRスペクトルにおいてウレトジオン基の極めて弱いシグナルしか検出されなくなるまで、80℃で撹拌した。次に、イソフタルジクロリド(0.20g)を撹拌しながら添加し、反応混合物を室温まで冷却した。得られた透明な生成物は、粘度1870mPas/23℃、固体含量80.2%、ヒドロキシル価32(理論値:35)およびNCO含量0%を有していた。
【0106】
実施例4:本発明のアロファネート含有バインダー
ウレタンアクリレート(66.8g)、ポリエーテル(12.8g)、酢酸ブチル(20.0g)およびエチルヘキサン酸亜鉛(II)(0.34g)を使用したことが相違して、実施例2を繰り返した。反応混合物を、8.5時間後にν=1768cm-1におけるIRスペクトルにおいてウレトジオン基の極めて弱いシグナルしか検出されなくなるまで、80℃で撹拌した。次に、イソフタルジクロリド(0.08g)を撹拌しながら添加し、反応混合物を室温まで冷却した。得られた透明な生成物は、粘度1730mPas/23℃、固体含量80.8%、ヒドロキシル価37(理論値:35)およびNCO含量0%を有していた。
【0107】
比較例5および6:アロファネート含有バインダーを製造する試み
ウレトジオン基含有硬化剤および高分子ヒドロキシル化合物(活性二重結合を含まない)を含有する粉末被覆組成物の架橋のための、米国特許出願公開第2003/0153713号明細書に記載されている触媒を、適合性について試験した。
比較例5:実施例1からの触媒を、等モル量の水酸化テトラブチルアンモニウムと交換したことが相違して、実施例3を繰り返した。
比較例6:実施例1からの触媒を、等モル量のフッ化テトラブチルアンモニウムと交換したことが相違して、実施例3を繰り返した。
【0108】
【表1】


この比較は、比較例5および6の生成物は、比較的高い粘度を有し、発生する大きな曇りのゆえに、被覆組成物として実質的に適さないことを示す。
【0109】
実施例7:塗料配合物および塗料
実施例3の生成物の一部を、3.0%の光開始剤Darocur(商標)1173と充分に混合した。90μmの間隙を有するボーンドクターブレード(bone doctor blade)を使用して、混合物をガラス板上に薄膜として適用した。紫外線照射(中圧水銀灯、IST Metz GmbH、Nuertingen、独国、750mJ/cm2)によって、ペンデル(Pendel)硬度が97sである透明な硬い耐溶剤性の被覆を得た。この被覆は、酢酸ブチルに浸した綿パッドでの100往復拭い後に可視的な変化を示さなかった。
【0110】
本発明を例示の目的で上に詳しく説明したが、この説明は、該目的のためだけのものであり、特許請求の範囲によって限定される以外は、本発明の思想および範囲から逸脱することなく、当業者によってそれに変更を加えうることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)アロファネート基;(2)化学線への暴露時に重合を伴ってエチレン性不飽和化合物と反応する基(放射線硬化性の基);および(3)任意にNCO反応性の基;を含有するバインダーの製造方法であって、
(A)ウレトジオン基を含有する1またはそれ以上のNCO官能性化合物を、
(B)イソシアネート反応性の基を含有し、かつ、化学線への暴露時に重合を伴ってエチレン性不飽和化合物と反応する基(放射線硬化性の基)を含有する1またはそれ以上の化合物と、次に、
(C)(B)以外の1またはそれ以上の飽和のヒドロキシル含有化合物(これら化合物の少なくとも1つは≧2のOH官能価を有する)と、
(D)1またはそれ以上の脂肪族または脂環式カルボン酸のアンモニウム塩またはホスホニウム塩を含有する触媒の存在下に、
≦130℃の温度で反応させ、化合物(C)との反応を、アロファネート基の形成と少なくとも比例して行なうことを含んで成る方法。
【請求項2】
ウレトジオン基を含有する化合物を、ヘキサメチレンジイソシアネートから製造する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
成分(B)が、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、ポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレートおよびアクリル酸とグリシジルメタクリレートとの反応生成物から成る群から選択される化合物を含んで成る請求項1に記載の方法。
【請求項4】
成分(B)が、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、ポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレートおよびアクリル酸とグリシジルメタクリレートとの反応生成物から成る群から選択される化合物を含んで成る請求項2に記載の方法。
【請求項5】
成分(C)が、モノマージオール、モノマートリオール、これらから誘導される1000g/モル以下の数平均分子量を有するポリエーテルおよびポリアセトンから成る群から選択される化合物を含んで成る請求項1に記載の方法。
【請求項6】
成分(D)が、実質的に亜鉛化合物から成る請求項1に記載の方法。
【請求項7】
成分(D)が、アセチルアセトン酸亜鉛および/またはエチルヘキサン酸亜鉛を含んで成る請求項1に記載の方法。
【請求項8】
成分(D)が、アセチルアセトン酸亜鉛および/またはエチルヘキサン酸亜鉛を含んで成る請求項2に記載の方法。
【請求項9】
成分(D)が、アセチルアセトン酸亜鉛および/またはエチルヘキサン酸亜鉛を含んで成る請求項3に記載の方法。
【請求項10】
成分(D)が、アセチルアセトン酸亜鉛および/またはエチルヘキサン酸亜鉛を含んで成る請求項4に記載の方法。
【請求項11】
反応を20〜100℃の温度で行なう請求項1に記載の方法。
【請求項12】
(1)アロファネート基;(2)化学線への暴露時に重合を伴ってエチレン性不飽和化合物と反応する基(放射線硬化性の基);および(3)任意にNCO反応性の基;を含有するバインダーであって、
(A)ウレトジオン基を含有する1またはそれ以上のNCO官能性化合物を、
(B)イソシアネート反応性の基を含有し、かつ、化学線への暴露時に重合を伴ってエチレン性不飽和化合物と反応する基(放射線硬化性の基)を含有する1またはそれ以上の化合物と、次に、
(C)(B)以外の1またはそれ以上の飽和のヒドロキシル含有化合物(これら化合物の少なくとも1つは≧2のOH官能価を有する)と、
(D)1またはそれ以上の亜鉛化合物を含有する触媒の存在下に、
≦130℃の温度で反応させ、化合物(C)との反応を、アロファネート基の形成と少なくとも比例して行なうことを含んで成る方法によって製造されるバインダー。
【請求項13】
ウレトジオン基を含有する化合物を、ヘキサメチレンジイソシアネートから製造する請求項12に記載のバインダー。
【請求項14】
成分(B)が、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、ポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレートおよびアクリル酸とグリシジルメタクリレートとの反応生成物から成る群から選択される化合物を含んで成る請求項12に記載のバインダー。
【請求項15】
成分(B)が、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、ポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレートおよびアクリル酸とグリシジルメタクリレートとの反応生成物から成る群から選択される化合物を含んで成る請求項13に記載のバインダー。
【請求項16】
成分(C)が、モノマージオール、モノマートリオール、これらから誘導される1000g/モル以下の数平均分子量を有するポリエーテルおよびポリアセトンから成る群から選択される化合物を含んで成る請求項12に記載のバインダー。
【請求項17】
成分(C)が、モノマージオール、モノマートリオール、これらから誘導される1000g/モル以下の数平均分子量を有するポリエーテルおよびポリアセトンから成る群から選択される化合物を含んで成る請求項13に記載のバインダー。
【請求項18】
成分(C)が、モノマージオール、モノマートリオール、これらから誘導される1000g/モル以下の数平均分子量を有するポリエーテルおよびポリアセトンから成る群から選択される化合物を含んで成る請求項15に記載のバインダー。
【請求項19】
下記の成分を含んで成る被覆組成物:
(a)請求項8に記載の1またはそれ以上のバインダー;
(b)任意に、遊離またはブロック化イソシアネート基を含有する1またはそれ以上のポリイソシアネートであって、化学線への暴露時に重合を伴ってエチレン性不飽和化合物と反応する基を任意に含有するポリイソシアネート;
(c)任意に、(a)以外の化合物であって、化学線への暴露時に重合を伴ってエチレン性不飽和化合物と反応する基を含有し、NCO反応性の基を任意に含有する化合物;
(d)任意に、1またはそれ以上のイソシアネート反応性の化合物であって、化学線への暴露時に重合を伴ってエチレン性不飽和化合物と反応する基を含有しない化合物;および
(e)1またはそれ以上の開始剤。
【請求項20】
請求項12に記載のアロファネート基を含有する放射線硬化性バインダーから得られる被覆剤で被覆された支持体。

【公開番号】特開2006−97021(P2006−97021A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−262353(P2005−262353)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】