説明

放射線診断装置および画像再構成方法

【課題】放射線を用いて再構成される医用画像を、読影者の要望に応じて迅速に補正すること。
【解決手段】計数情報収集部15は、ガンマ線の検出器モジュール14における検出位置と、ガンマ線が検出器モジュール14に入射した時点におけるエネルギー値と、ガンマ線の検出器モジュール14における検出時間とを計数情報として収集し、収集した計数情報を計数情報記憶部24に格納する。同時計数情報生成部25は、検出時間の差が時間ウィンドウ幅以内であり、かつ、エネルギー値がともにエネルギーウィンドウ幅にある計数情報の組み合わせを検索して同時計数情報を生成する。画像再構成部26は、同時計数情報を投影データとして逆投影処理することでPET画像を再構成する。システム制御部28は、PET画像の再構成後、計数情報のすべて、または、一部を、計数情報記憶部24に保持するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放射線診断装置および画像再構成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、放射線を利用した放射線診断装置として、陽電子放出コンピュータ断層撮影(PET:Positron Emission computed Tomography)装置や、X線コンピュータ断層撮影(X線CT、CT:Computed Tomography)装置などが知られている。これら放射線診断装置は、それぞれの特性に基づく画像を提供することで、今日の医療において必要不可欠な画像診断を可能にしている。
【0003】
PET装置は、核医学診断装置の1つであり、人体内組織の詳細な機能情報を画像として提供するものである。具体的には、PET装置は、被検体に陽電子放出核種で標識された薬剤を投与し、投与された薬剤から放出された陽電子が電子と結合して消滅する際に、ほぼ反対方向に放出する511keVの一対のガンマ線を、被検体の周囲にリング状に配置されたフォトンカウンティング(photon counting)方式の検出器モジュールからなる検出器を用いて同時計数する。そして、PET装置は、同時計数したガンマ線のデータを演算処理することにより、投与された薬剤を取り込んだ人体組織の分布を示す画像(PET画像)の再構成を行なう。
【0004】
以下、PET装置における同時計数処理について説明する。まず、PET装置においては、入射したガンマ線を可視光に変換するNaIやBGOなどが2次元に配列されたシンチレータと、ライトガイドを介して稠密に配置された複数の光電子倍増管(PMT:Photomultiplier Tube)とから構成されるアンガー型の検出器モジュールがリング状に複数配置されている(例えば、非特許文献1参照)。なお、ライトガイドは、シンチレータから出力された可視光をPMTに伝達するために用いられ、光透過性に優れたプラスチック素材などからなる。また、PMTは、シンチレータから出力された可視光を増倍して電気信号に変換する装置である。
【0005】
そして、各検出器モジュールのPMTと接続される同時計数回路は、各検出器モジュールの出力結果から、陽電子から放出された一対のガンマ線の入射方向を決定するための同時計数情報を生成する。具体的には、同時計数回路は、シンチレータから散乱して出力された可視光を同じタイミングで電気信号に変換出力したPMTの位置および電気信号の強度に対応する入射ガンマ線のエネルギーから重心位置を演算することで、検出器モジュールにおけるガンマ線の入射位置(シンチレータの位置)を決定する。また、同時計数回路は、各PMTが出力した電気信号の強度を積分することで、検出器モジュールに対して入射したガンマ線のエネルギー値を演算する。
【0006】
そして、同時計数回路は、検出器モジュールにおける出力結果の中から、例えば、ガンマ線の入射タイミング(時間)が一定時間の時間ウィンドウ幅(例えば、2nsec)以内にあり、エネルギー値がともに一定のエネルギーウィンドウ幅(例えば、350keV〜550keV)にある組み合わせを検索(Coincidence Finding)する。そして、同時計数回路は、検索した組み合わせの出力結果を、2つの消滅フォトンを同時計数した情報であるとして同時計数情報(Coincidence List)を生成する。そして、PET装置は、生成された同時計数情報を投影データ(サイノグラムデータ)とし、投影データを逆投影処理することでPET画像を再構成する。なお、同時計数回路においては、確率的に一定の比率で含まれる偶発同時計数を除外するためのランダム補正を、計数率(count/ sec)を用いて行なうこともできる。
【0007】
一方、X線CT装置は、透過型CT装置の1つであり、人体内組織の詳細な形態的情報を提供するものである。具体的には、X線CT装置は、X線管球および電流モード計測方式の検出器を、例えば、被検体の体軸を軸に一対で回転させて、多方向からX線を被検体に照射し、体内を透過した際に吸収されて減弱したX線の強度を各方向において測定する。そして、検出器によって得られたX線強度分布から生成した投影データを逆投影処理することにより、被検体内における人体内組織の形態的情報を示すX線CT画像を再構成する。
【0008】
また、近年、X線CT装置においては、PET装置などで用いられているフォトンカウンティング方式の検出器を、従来の電流モード計測方式の検出器に代わって用いるフォトンカウンティングCTの開発が進められている。フォトンカウンティングCTでは、フォトンカウンティング方式の検出器により、被検体を透過したX線のエネルギー値を検出素子ごとにカウントすることで、X線が透過した被検体の人体内組織を構成する元素を推定することが可能となるスペクトラムを投影データとして収集することができ、元素レベルの違いが詳細に描出されたX線CT画像を生成することが可能となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】(社)日本画像医療システム工業会編集 「医用画像・放射線機器ハンドブック」名古美術印刷株式会社 平成13年、p.190〜191
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来のPET装置では、ハードウェアによって構成された同時計数回路により生成された同時計数情報しか保存することができないので、時間ウィンドウ幅やエネルギーウィンドウ幅などを変化させた同時計数情報を再作成することができない。すなわち、従来のPET装置では、同時計数でないとされた検出器モジュールからの出力結果は、破棄されてしまうので、時間ウィンドウ幅やエネルギーウィンドウ幅などを変化させたPET画像を再構成するなど、PET画像を読影する読影者の要望に応じてPET画像を画像補正するためにPET画像の再撮影を行なう必要があった。
【0011】
また、上記のフォトンカウンティングCTでも、投影データのみを保存し、フォトンカウンティング方式の検出器の計数結果を保存することが行なわれていないので、X線CT画像を読影する読影者の要望に応じて、検出器の計数結果を用いて散乱線補正などの画像補正を行なうことができない。
【0012】
すなわち、上記した従来の技術は、放射線を用いて再構成される医用画像を、読影者の要望に応じて迅速に補正することができないという課題があった。
【0013】
そこで、この発明は、上述した従来技術の課題を解決するためになされたものであり、放射線を用いて再構成される医用画像を、読影者の要望に応じて迅速に補正することが可能となる放射線診断装置および画像再構成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1記載の放射線診断装置は、入射した放射線に由来する光を計数するフォトンカウンティング方式の検出器と、前記検出器の計数結果に基づく計数情報を記憶する計数情報記憶部と、前記計数情報記憶部が記憶する前記計数情報を用いて生成された投影データを逆投影処理することで医用画像を再構成する画像再構成部と、前記医用画像の再構成後、前記計数情報のすべて、または、一部を、前記計数情報記憶部に保持するように制御する制御部と、を備える。
【0015】
また、請求項11記載の画像再構成方法は、フォトンカウンティング方式の検出器が、入射した放射線に由来する光を計数し、計数情報記憶部が、前記検出器の計数結果に基づく計数情報を記憶し、画像再構成部が、前記計数情報記憶部が記憶する前記計数情報を用いて生成された投影データを逆投影処理することで医用画像を再構成し、制御部が、前記医用画像の再構成後、前記計数情報のすべて、または、一部を、前記計数情報記憶部に保持するように制御する、ことを含む。
【発明の効果】
【0016】
請求項1および11の発明によれば、放射線を用いて再構成される医用画像を、読影者の要望に応じて迅速に補正することが可能となる
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、実施例1におけるPET装置の構成を説明するための図である。
【図2A】図2Aは、実施例1における検出器モジュールおよび計数情報収集部を説明するための図(1)である。
【図2B】図2Bは、実施例1における検出器モジュールおよび計数情報収集部を説明するための図(2)である。
【図3】図3は、実施例1における計数情報記憶部を説明するための図である。
【図4A】図4Aは、同時計数情報生成部を説明するための図(1)である。
【図4B】図4Bは、同時計数情報生成部を説明するための図(2)である。
【図5A】図5Aは、実施例1におけるPET装置の処理を説明するためのフローチャート(1)である。
【図5B】図5Bは、実施例1におけるPET装置の処理を説明するためのフローチャート(2)である。
【図6】図6は、実施例2におけるX線CT装置の構成を説明するための図である。
【図7】図7は、実施例2における計数情報記憶部を説明するための図である。
【図8】図8は、実施例2における計数情報の特徴を説明するための図である。
【図9】図9は、実施例2におけるX線CT装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る放射線診断装置の好適な実施例を詳細に説明する。なお、放射線診断装置とは、放射線を利用して医用画像を再構成する医用画像診断装置のことである。また、以下では、実施例1において、本発明をPET(Positron Emission computed Tomography)装置に対して適用した場合について説明し、実施例2において、本発明をX線CT(Computed Tomography)装置に対して適用した場合について説明する。
【実施例1】
【0019】
PET装置は、被検体に投与された陽電子放出核種を取り込んだ人体組織から放出される一対のガンマ線を同時計数することで、陽電子放出核種を取り込んだ人体組織の分布を示すPET画像の再構成を行なう装置である。そして、実施例1におけるPET装置は、PET画像を読影者の要望に応じて迅速に補正することが可能となるように構成されている。
【0020】
以下、実施例1におけるPET装置の構成を、図1などを用いて説明する。図1は、実施例1におけるPET装置の構成を説明するための図である。図1に示すように、実施例1におけるPET装置は、架台装置10と、コンソール装置20とを有する。
【0021】
架台装置10は、被検体Pに投与され、被検体Pの生体組織に選択的に取り込まれた陽電子放出核種から放出される一対のガンマ線を所定のモニタリング期間において計数する装置であり、天板11と、寝台12と、寝台駆動部13と、検出器モジュール14と、計数情報収集部15とを有する。なお、架台装置10は、図1に示すように、撮影口となる空洞を有する。
【0022】
天板11は、被検体Pが横臥するベッドであり、寝台12の上に配置される。寝台駆動部13は、後述する寝台制御部23の制御のもと、寝台12を移動することにより、被検体Pを架台装置10の撮影口内に移動させる。
【0023】
検出器モジュール14は、被検体Pから放出されるガンマ線を検出するフォトンカウンティング(photon counting)方式の検出器であり、架台装置10においては、複数の検出器モジュール14が、被検体Pの周囲をリング状に取り囲むように配置される。
【0024】
具体的には、検出器モジュール14は、図2Aに示すように、シンチレータ141と、光電子増倍管142(PMT:Photomultiplier Tube)と、ライトガイド143とを有するアンガー型の検出器である。なお、図2Aおよび図2Bは、実施例1における検出器モジュールおよび計数情報収集部を説明するための図である。
【0025】
シンチレータ141は、被検体Pから放出されて入射したガンマ線を可視光に変換するNaIやBGOなどが、図2Aに示すように、2次元に配列されている。また、光電子増倍管142は、シンチレータ141から出力された可視光を増倍して電気信号に変換する装置であり、図2Aに示すように、ライトガイド143を介して稠密に複数個配置されている。ライトガイド143は、シンチレータ141から出力された可視光を光電子増倍管142に伝達するために用いられ、光透過性に優れたプラスチック素材などからなる。
【0026】
なお、光電子増倍管142は、シンチレーション光を受光し光電子を発生させる光電陰極、発生した光電子を加速する電場を与える多段のダイノード、および電子の流れ出し口である陽極から成っている。光電効果により光電陰極から放出された電子は、ダイノードに向って加速されてダイノードの表面に衝突し、複数の電子を叩き出す。この現象が多段のダイノードに渡って繰り返されることにより、なだれ的に電子数が増倍され、陽極での電子数は、約100万にまで達する。かかる例では、光電子増倍管142の利得率は、100万倍となる。また、なだれ現象を利用した増幅のためにダイノードと陽極との間には、通常1000ボルト以上の電圧が印加される。
【0027】
すなわち、検出器モジュール14は、ガンマ線をシンチレータ141により可視光に変換し、変換した可視光を光電子増倍管142により電気信号に変換することで、被検体Pから放出されたガンマ線の数を計数する。
【0028】
図1に戻って、計数情報収集部15は、複数の検出器モジュール14それぞれの計数結果に基づく情報を、計数情報として収集する。具体的には、計数情報収集部15は、ガンマ線の検出器モジュール14における検出位置と、ガンマ線が検出器モジュール14に入射した時点におけるエネルギー値と、ガンマ線の検出器モジュール14における検出時間とを、検出器モジュール14の計数結果に基づく計数情報として検出器モジュール14ごとに収集し、収集した計数情報を、後述するコンソール装置20に送信する。
【0029】
まず、計数情報収集部15は、検出器モジュール14の計数結果から検出位置を収集するために、アンガー型位置計算処理を行なう。あるいは、計数情報収集部15は、光電子増倍管142が位置検出型光電子増倍管である場合、検出位置の収集を位置検出型光電子増倍管で行なう。具体的には、計数情報収集部15は、図2Bに示すように、シンチレータ141のシンチレーション光を同じタイミングで電気信号に変換出力した各光電子増倍管142の位置および電気信号の強度に対応するガンマ線のエネルギー値から重心の位置を演算することで、ガンマ線が入射したシンチレータの位置を示すシンチレータ番号(P)を決定する。また、計数情報収集部15は、各光電子増倍管142が出力した電気信号の強度を積分することで、検出器モジュールに入射したカンマ線のエネルギー値(E)を決定する。また、計数情報収集部15は、検出器モジュール14がガンマ線を検出した検出時間(T)も収集する。
【0030】
ここで、検出時間(T)は、絶対時間(時刻)である場合であってもよいし、PET画像の撮影開始時点からの相対時間であってもよいが、計数情報収集部15は、検出時間(T)を、例えば、10−12秒(psec)単位の精度にて収集する。かかる処理により、計数情報収集部15は、図2Bに示すように、検出器モジュール14を一意に特定するための「モジュールID」に対応付けた『「P:シンチレータ番号」、「E:エネルギー値」および「T:検出時間」』を計数情報として収集する。
【0031】
図1に戻って、コンソール装置20は、操作者によるPET装置の操作を受け付けるとともに、架台装置10によって収集された計数情報からPET画像を再構成する装置である。
【0032】
具体的には、コンソール装置20は、図1に示すように、入力部21と、表示部22と、寝台制御部23と、計数情報記憶部24と、同時計数情報生成部25と、画像再構成部26と、データ記憶部27と、システム制御部28とを有し、コンソール装置20が有する各部は、内部バスを介して接続される。
【0033】
入力部21は、PET装置の操作者が各種指示や各種設定の入力に用いるマウスやキーボードなどを有し、操作者から受け付けた指示や設定の情報を、システム制御部28に転送する。例えば、入力部21は、操作者からPET画像を再構成する際の再構成条件や、画像補正を行なうための補正条件などを受け付ける。
【0034】
表示部22は、操作者によって参照されるモニタであり、システム制御部28による制御のもと、PET画像を操作者に表示したり、入力部21を介して操作者から各種指示や各種設定などを受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。
【0035】
寝台制御部23は、寝台駆動部13を制御することで、被検体Pを架台装置10の撮影口内に移動させる。
【0036】
計数情報記憶部24は、計数情報収集部15が収集した検出器モジュール14ごとの計数情報を記憶する。例えば、計数情報記憶部24は、図3に示すように、「モジュールID:D1」の検出器モジュール14による計数結果から収集された計数情報として、「P:P11、E:E11、T:T11」や「P:P12、E:E12、T:T12」などを記憶する。なお、図3は、実施例1における計数情報記憶部を説明するための図であり、図中の「P」、「E」および「T」は、それぞれ「シンチレータ番号」、「エネルギー値」および「検出時間」を示す。
【0037】
また、計数情報記憶部24は、図3に示すように、「モジュールID:D2」や「モジュールID:D3」の検出器モジュール14による計数結果から収集された計数情報についても同様に記憶する。
【0038】
図1に戻って、同時計数情報生成部25は、計数情報記憶部24が記憶する計数情報における少なくとも検出時間に基づいて、陽電子放出核種から放出された一対のガンマ線が同時に計数された計数情報の組み合わせを検索する。そして、同時計数情報生成部25は、検索した計数情報の組み合わせを、陽電子から放出された一対のガンマ線の入射方向を決定するための同時計数情報として生成する。同時計数情報生成部25により生成された同時計数情報は、投影データとして後述する画像再構成部26の処理に用いられる。
【0039】
具体的には、同時計数情報生成部25は、操作者が入力部21を介して入力した再構成条件に含まれる同時計数情報生成条件に基づいて、同時計数情報を生成する。ここで、同時計数情報生成条件には、一例を挙げれば、時間ウィンドウ幅とエネルギーウィンドウ幅とが指定されている。例えば、同時計数情報生成部25は、図4Aに示すように、同時計数情報生成条件として操作者が指定した「時間ウィンドウ幅:600psec、エネルギーウィンドウ幅:350keV〜550keV」を用いて同時計数情報を生成する。なお、図4Aおよび図4Bは、同時計数情報生成部を説明するための図である。
【0040】
すなわち、同時計数情報生成部25は、図3に示す「モジュールID」ごとの「検出時間(T)」および「エネルギー値(E)」を参照して、検出時間の差が「時間ウィンドウ幅:600psec」以内であり、かつ、エネルギー値がともに「エネルギーウィンドウ幅:350keV〜550keV」にある計数情報の組み合わせを、モジュール間で検索する。
【0041】
これにより、同時計数情報生成部25は、例えば、図4Bに示すように、「P:P11、E:E11、T:T11」と「P22、E:E22、T:T22」との組み合わせを、2つの消滅フォトンが同時計数された情報である同時計数情報として生成する。
【0042】
そして、同時計数情報生成部25は、生成した同時計数情報を被検体Pの投影データ(サイノグラムデータ)として、データ記憶部27に格納する。
【0043】
なお、操作者は、時間ウィンドウ幅およびエネルギーウィンドウ幅以外にも、偶発同時計数を除外するためのランダム補正や、散乱したガンマ線の計数情報が同時計数情報として生成されることを除外するための散乱補正や、各検出器モジュール14間の感度の違いを補正するための感度補正や、被検体Pの内部で減弱されるガンマ線のエネルギー値を補正するための減弱補正などを行なうためのパラメータも同時計数情報生成条件に組み込むことができる。
【0044】
図1に戻って、画像再構成部26は、同時計数情報生成部25が生成した同時計数情報を投影データとしてデータ記憶部27から読み出して、読み出した投影データを逆投影処理することでPET画像を再構成する。また、画像再構成部26は、再構成したPET画像をデータ記憶部27に格納する。
【0045】
システム制御部28は、架台装置10およびコンソール装置20の動作を制御することによって、PET装置の全体制御を行う。具体的には、システム制御部28は、寝台12の移動や、計数情報収集部15における計数情報の収集処理を制御する。また、システム制御部28は、入力部21を介して入力された操作者からの設定情報に基づいて、同時計数情報生成部25における同時計数情報の生成処理や画像再構成部26におけるPET画像の再構成処理を制御する。また、システム制御部28は、データ記憶部27が記憶するPET画像を、表示部22に表示するように制御する。
【0046】
そして、システム制御部28は、PET画像の再構成後、計数情報のすべて、または、一部を、計数情報記憶部24に保持するように制御する。例えば、システム制御部28は、同時計数情報として採用されなかった計数情報も含めたすべての計数情報が、計数情報記憶部24にて保持されるように制御する。あるいは、システム制御部28は、例えば、操作者が入力部21を介して廃棄指示を行なった計数情報以外の計数情報が、計数情報記憶部24にて保持されるように制御する。
【0047】
さらに、システム制御部28は、PET画像の再構成後、同時計数情報を生成するための同時計数情報生成条件の変更要求を受け付けた場合、以下の制御処理を行なう。すなわち、システム制御部28は、変更後の同時計数情報生成条件に基づいて、計数情報記憶部24が記憶する計数情報から同時計数情報を再度生成するように同時計数情報生成部25を制御する。そして、システム制御部28は、同時計数情報生成部25により再度生成された同時計数情報を用いてPET画像を再度再構成するように画像再構成部26を制御する。
【0048】
例えば、システム制御部28は、操作者からの指示に基づいて、同時計数情報生成条件の入力用GUIを表示部22に表示させる。そして、操作者は、入力用GUIを参照して、例えば、図4Aに示す同時計数情報生成条件を変更する。一例を挙げると、操作者は、時間ウィンドウ幅を「600psec」から「400psec」に変更する。変更された同時計数情報生成条件は、システム制御部28を介して同時計数情報生成部25に通知される。これにより、同時計数情報生成部25は、図3に示す計数情報から、変更後の同時計数情報生成条件に合致する計数情報の組み合わせを再度検索して同時計数情報を生成する。そして、画像再構成部26は、システム制御部28の制御により、同時計数情報生成部25が再度生成した同時計数情報を投影データとしてPET画像を再度再構成する。そして、画像再構成部26により再度再構成されたPET画像は、システム制御部28の制御により、表示部22にて表示される。
【0049】
なお、システム制御部28は、計数情報記憶部24が記憶する計数情報を記憶媒体へ転送するための転送要求を受け付けた場合、当該記憶媒体に計数情報記憶部24が記憶する計数情報を格納するように制御する。例えば、実施例1におけるPET装置のメインテナンス時などに、操作者は、例えば、FD(Flexible Disk Drive)、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、MO(Magneto Optical Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)など、外部に持ち出し可能な記憶媒体へ計数情報記憶部24が記憶する計数情報を転送するための転送要求を、入力部21を介して入力する。転送要求を受け付けたシステム制御部28は、記憶媒体に計数情報記憶部24が記憶する計数情報を格納するように制御する。
【0050】
次に、図5Aおよび図5Bを用いて、実施例1におけるPET装置の処理の流れについて説明する。図5Aおよび図5Bは、実施例1におけるPET装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【0051】
図5Aに示すように、実施例1におけるPET装置は、被検体Pを架台装置10の撮影口内に移動させたのちに、操作者から入力部21を介してPET画像の撮影要求を受け付けると(ステップS101肯定)、計数情報収集部15は、各検出器モジュール14の所定のモニタリング期間における計数結果に基づく計数情報を収集する(ステップS102)。すなわち、計数情報収集部15は、ガンマ線の検出器モジュール14における検出位置と、ガンマ線が検出器モジュール14に入射した時点におけるエネルギー値と、ガンマ線の検出器モジュール14における検出時間とを、検出器モジュール14の計数結果に基づく計数情報として複数の検出器モジュール14ごとに収集する。
【0052】
そして、計数情報収集部15は、収集した計数情報をコンソール装置20の計数情報記憶部24に格納し(ステップS103)、同時計数情報生成部25は、計数情報における「検出時間」および「エネルギー値」を参照して、検出時間の差が時間ウィンドウ幅以内であり、かつ、エネルギー値がともにエネルギーウィンドウ幅にある計数情報の組み合わせを検索することで、同時計数情報を生成する(ステップS104)。
【0053】
そののち、画像再構成部26は、同時計数情報生成部25が生成した同時計数情報を投影データとして逆投影処理することでPET画像を再構成し(ステップS105)、処理を終了する。なお、システム制御部28は、PET画像の再構成後、例えば、計数情報のすべてを、計数情報記憶部24に保持するように制御する。
【0054】
そして、図5Bに示すように、実施例1におけるPET装置は、操作者から同時計数情報生成条件の変更要求を受け付けると(ステップS201肯定)、システム制御部28の制御により、同時計数情報生成部25は、変更後の同時計数情報生成条件を用いて、再度、同時計数情報を生成する(ステップS202)。
【0055】
そののち、システム制御部28の制御により、画像再構成部26は、再度生成された同時計数情報を用いて、PET画像を再構成し(ステップS203)、処理を終了する。
【0056】
なお、システム制御部28は、操作者からの転送要求を受け付けた場合、操作者が指定した記憶媒体へ、計数情報記憶部24が記憶する計数情報を格納するように制御する。
【0057】
上述してきたように、実施例1によれば、計数情報収集部15は、フォトンカウンティング方式の各検出器モジュール14の所定のモニタリング期間における計数結果に基づく計数情報として、ガンマ線の検出器モジュール14における検出位置と、ガンマ線が検出器モジュール14に入射した時点におけるエネルギー値と、ガンマ線の検出器モジュール14における検出時間とを収集して、収集した計数情報をコンソール装置20の計数情報記憶部24に格納する。同時計数情報生成部25は、例えば、計数情報における「検出時間」および「エネルギー値」を参照して、検出時間の差が時間ウィンドウ幅以内であり、かつ、エネルギー値がともにエネルギーウィンドウ幅にある計数情報の組み合わせを検索することで、同時計数情報を生成する。画像再構成部26は、同時計数情報生成部25が生成した同時計数情報を投影データとして逆投影処理することでPET画像を再構成する。そして、システム制御部28は、PET画像の再構成後、計数情報のすべて、または、一部を、計数情報記憶部24に保持するように制御する。
【0058】
したがって、従来のPET装置では架台装置10の内部でハードウェア構成の同時計数回路にて生成された同時計数情報しか保存することができなかったのに対し、実施例1のPET装置では、各検出器モジュール14における計数情報をすべてコンソール装置20内部に保存し、同時計数情報をコンソール装置20内部で、例えば、ソフトウェアにより生成することができる。また、実施例1のPET装置では、PET画像の再構成後においても、PET画像の撮影中に収集された計数情報を保持することができる。
【0059】
したがって、実施例1によれば、操作者が異なる同時計数情報生成条件にて再構成されたPET画像を参照したい場合、同時計数情報生成部25は、新たな同時計数情報生成条件に基づいてただちに同時計数情報を生成することができ、PET画像を読影者の要望に応じて迅速に補正することが可能となる。
【0060】
また、近年、一対の消滅ガンマ線の検出時間差を利用して、ガンマ線が放出された位置を正確に特定するTOF(time of flight)−PET装置の開発が進められている。しかし、TOF−PETにて要求される時間ウィンドウ幅は、数百psecのオーダであり、従来のPET装置では、検出器モジュール14から同時計数回路への信号伝達が光速を超えられないためTOF−PETによるPET画像を再構成することが困難であった。
【0061】
しかし、実施例1のPET装置は、計数情報として検出時間をpsec単位の精度にて収集することができ、同時計数情報をコンソール装置20内部で生成することができるので、検出時間差を用いたPET画像を再構成することが可能となる。
【0062】
また、実施例1によれば、システム制御部28は、PET画像の再構成後、同時計数情報を生成するための同時計数情報生成条件の変更要求を受け付けた場合、変更後の同時計数情報生成条件に基づいて、計数情報記憶部24が記憶する計数情報から同時計数情報を再度生成するように同時計数情報生成部25を制御する。そして、システム制御部28は、同時計数情報生成部25により再度生成された同時計数情報を用いてPET画像を再度再構成するように画像再構成部26を制御する。すなわち、実施例1におけるPET装置は、同時計数情報生成条件の変更要求を受け付けた場合に、自動的に同時計数情報の生成およびPET画像の再構成が再度実行されるように構成されている。したがって、実施例1によれば、PET画像を読影者の要望に応じてさらに迅速に補正することが可能となる。
【0063】
また、実施例1によれば、システム制御部28は、計数情報記憶部24が記憶する計数情報を記憶媒体へ転送するための転送要求を受け付けた場合、当該記憶媒体に計数情報記憶部24が記憶する計数情報を格納するように制御する。したがって、実施例1によれば、例えば、高計数率により計数情報記憶部24の空き容量が不足して、計数情報が破棄されることを回避することが可能となる。
【実施例2】
【0064】
実施例2では、実施例1で説明したようなフォトンカウンティング方式の検出器を有するX線CT装置において計数情報を保存する場合について説明する。
【0065】
X線CT装置は、X線管球から被検体にX線を照射し、被検体を透過したX線を検出器により検出することで、被検体内における人体内組織の形態的情報を示すX線CT画像の再構成を行なう装置である。
【0066】
ただし、実施例2におけるX線CT装置は、従来の電流モード計測方式の検出器ではなく、フォトンカウンティング方式の検出器を用いて被検体を透過したX線を計数することでX線CT画像を再構成する。そして、実施例2におけるX線CT装置は、X線CT画像を読影者の要望に応じて迅速に補正することが可能となるように構成されている。
【0067】
以下、実施例2におけるX線CT装置の構成を、図6などを用いて説明する。図6は、実施例2におけるX線CT装置の構成を説明するための図である。図6に示すように、実施例2におけるX線CT装置は、架台装置100と、寝台装置200と、コンソール装置30とを有する。
【0068】
架台装置100は、被検体PにX線を照射し、被検体Pを透過したX線を計数する装置であり、高電圧発生部110と、X線管球120と、検出器130と、計数情報収集部140と、回転フレーム150と、架台駆動部160とを有する。
【0069】
回転フレーム150は、X線管球120と検出器130とを被検体Pを挟んで対向するように支持し、後述する架台駆動部160によって被検体Pを中心した円軌道にて高速に回転する円環状のフレームである。
【0070】
X線管球120は、後述する高電圧発生部110により供給される高電圧により被検体PにX線ビームを照射する真空管であり、回転フレーム150の回転にともなって、X線ビームを被検体Pに対して照射する。
【0071】
高電圧発生部110は、X線管球120に高電圧を供給する装置であり、架台駆動部16は、回転フレーム150を回転駆動させることによって、被検体Pを中心とした円軌道上でX線管球120と検出器130とを旋回させる。
【0072】
検出器130は、被検体Pを透過したX線に由来する光を計数することで、透過X線のエネルギー値を弁別するフォトンカウンティング方式の検出器である。例えば、検出器130は、実施例1において図2Aを用いて説明したような検出器モジュール14と同様の構成のものが用いられる。
【0073】
計数情報収集部140は、検出器130の計数結果から、X線の検出器130における検出位置と、X線が検出器130に入射した時点におけるエネルギー値とを計数情報としてX線管球120の位相(管球位相)ごとに収集し、収集した計数情報を、後述するコンソール装置30に送信する。例えば、計数情報収集部140は、検出位置およびエネルギー値を、実施例1の計数情報収集部15と同様の処理により決定する。
【0074】
寝台装置200は、被検体Pを載せる装置であり、天板220と、寝台駆動装置210とを有する。天板220は、被検体Pが載置される板であり、寝台駆動装置210は、天板220をZ軸方向へ移動して、被検体Pを回転フレーム150内に移動させる。
【0075】
コンソール装置30は、操作者によるX線CT装置の操作を受け付けるとともに、架台装置100によって収集された計数情報を用いてX線CT画像を再構成する装置であり、入力装置31と、表示装置32と、スキャン制御部33と、計数情報記憶部34と、前処理部35と、画像再構成部36と、画像記憶部37と、システム制御部38とを有する。
【0076】
入力装置31は、X線CT装置の操作者が各種指示や各種設定の入力に用いるマウスやキーボードなどを有し、操作者から受け付けた指示や設定の情報を、システム制御部38に転送する。例えば、入力装置31は、操作者からX線CT画像を再構成する際の再構成条件や、画像補正を行なうための補正条件などを受け付ける。
【0077】
表示装置32は、操作者によって参照されるモニタであり、システム制御部38による制御のもと、X線CT画像を操作者に表示したり、入力装置31を介して操作者から各種指示や各種設定などを受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。
【0078】
スキャン制御部33は、システム制御部38のもと、高電圧発生部110、架台駆動部160、計数情報収集部140および寝台駆動装置210の動作を制御することで、架台装置100における計数情報の収集処理を制御する。
【0079】
計数情報記憶部34は、計数情報収集部140が収集した管球位相ごとの計数情報を記憶する。例えば、計数情報記憶部34は、図7に示すように、「管球位相:X1」における検出器130の計数結果から収集された計数情報として、「P:P11、E:E11」や「P:P12、E:E12」などを記憶する。なお、図7は、実施例2における計数情報記憶部を説明するための図であり、図中の「P」および「E」は、それぞれ「シンチレータ番号」および「エネルギー値」を示す。
【0080】
また、計数情報記憶部34は、図7に示すように、「管球位相:X2」や「管球位相:X3」における検出器130の計数結果から収集された計数情報についても同様に記憶する。
【0081】
ここで、計数情報記憶部34が記憶する計数情報において、シンチレータ位置ごとのエネルギー値には、異なるエネルギー値ごとのカウント数の情報が含まれている。すなわち、図8に示すように、エネルギー値ごとのカウント数をヒストグラムとして表すことで、X線が透過した被検体の人体内組織を構成する元素を推定することが可能となるエネルギーのスペクトラムを再現することができる。なお、図8は、実施例2における計数情報の特徴を説明するための図である。
【0082】
図6に戻って、前処理部35は、計数情報記憶部34が記憶する計数情報に対して、対数変換処理、オフセット補正、感度補正、ビームハードニング補正などの補正処理とを行なうことで、投影データを生成する。なお、補正処理を行なうための補正条件は、操作者により任意に変更することができる。
【0083】
画像再構成部36は、前処理部35によって計数情報から生成された投影データを逆投影処理することでX線CT画像を再構成し、再構成したX線CT画像を画像記憶部37に格納する。すなわち、画像再構成部36は、元素のスペクトラムが再現される計数情報から生成された投影データを用いることで、元素レベルの違いが詳細に描出されたX線CT画像を再構成する。
【0084】
システム制御部38は、架台装置100、寝台装置200およびコンソール装置30の動作を制御することによって、X線CT装置の全体制御を行う。具体的には、システム制御部38は、スキャン制御部33を制御することで、架台装置100から計数情報を収集する。また、システム制御部38は、前処理部35、画像再構成部36を制御することで、コンソール装置30における画像再構成処理を制御する。また、システム制御部38は、画像記憶部37が記憶するX線CT画像を、表示装置32に表示するように制御する。
【0085】
そして、システム制御部38は、X線CT画像の再構成後、計数情報のすべて、または、一部を、計数情報記憶部34に保持するように制御する。
【0086】
さらに、システム制御部38は、X線CT画像の再構成後、画像再構成条件の変更要求を受け付けた場合、以下の制御処理を行なう。ここで、画像再構成条件とは、例えば、前処理部35が行なう補正処理の補正条件である。すなわち、システム制御部38は、X線CT画像の再構成後、補正条件の変更要求を受け付けた場合、変更後の補正条件に基づいて、計数情報記憶部34が記憶する計数情報から投影データを再度生成するように前処理部35を制御する。そして、システム制御部28は、前処理部35により再度生成された投影データを用いてX線CT画像を再度再構成するように画像再構成部36を制御する。そして、画像再構成部36により再度再構成されたX線CT画像は、システム制御部38の制御により、表示装置32にて表示される。
【0087】
なお、システム制御部38は、計数情報記憶部34が記憶する計数情報を記憶媒体へ転送するための転送要求を受け付けた場合、当該記憶媒体に計数情報記憶部34が記憶する計数情報を格納するように制御する。
【0088】
次に、図9を用いて、実施例2におけるX線CT装置の処理の流れについて説明する。図9は、実施例2におけるX線CT装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【0089】
図9に示すように、実施例2におけるX線CT装置は、被検体Pを架台装置100の回転フレーム150内に移動させたのちに、操作者から入力装置31を介してX線CT画像の撮影要求を受け付けると(ステップS301肯定)、計数情報収集部140は、検出器130の計数結果に基づく計数情報を収集する(ステップS302)。すなわち、計数情報収集部140は、透過X線の検出器130における検出位置と、透過X線が検出器130に入射した時点におけるエネルギー値とを計数情報としてX線管球120の管球位相ごとに収集する。
【0090】
そして、計数情報収集部140は、収集した計数情報をコンソール装置30の計数情報記憶部34に格納し(ステップS303)、画像再構成部26は、前処理部35が計数情報から生成した投影データ逆投影処理することでX線CT画像を再構成し(ステップS304)、処理を終了する。
【0091】
上述してきたように、実施例2によれば、計数情報収集部140は、フォトンカウンティング方式の検出器130の計数結果に基づく計数情報として、透過X線の検出器130における検出位置と、透過X線が検出器130に入射した時点におけるエネルギー値とをX線管球120の管球位相ごとに収集して、収集した計数情報をコンソール装置30の計数情報記憶部34に格納する。前処理部35は、計数情報記憶部34が記憶する計数情報に対して種々の補正処理を行なって投影データを生成し、画像再構成部36は、前処理部35が生成した投影データを逆投影処理することでX線CT画像を再構成する。そして、システム制御部38は、X線CT画像の再構成後、計数情報のすべて、または、一部を、計数情報記憶部34に保持するように制御する。
【0092】
したがって、実施例2によれば、計数情報がコンソール装置30の内部に保存されており、X線CT画像の再構成後においても、X線CT画像の撮影中に収集された計数情報を保持することができる。したがって、実施例2によれば、操作者が異なる補正条件にて再構成されたX線CT画像を参照したい場合には、新たな補正条件に基づいてただちに前処理部35にて投影データを再生成することができ、X線CT画像を読影者の要望に応じて迅速に補正することが可能となる。
【0093】
また、実施例2によれば、システム制御部38は、X線CT画像の再構成後、画像再構成条件(補正条件)の変更要求を受け付けた場合、変更後の補正条件に基づいて、計数情報記憶部34が記憶する計数情報から投影データを再度生成するように前処理部35を制御する。そして、システム制御部28は、前処理部35により再度生成された投影データを用いてX線CT画像を再度再構成するように画像再構成部36を制御する。すなわち、実施例2におけるX線CT装置のシステムは、画像再構成条件である補正条件の変更要求を受け付けた場合に、自動的に投影データの生成およびX線CT画像の再構成が再度実行されるようにシステム構成されている。したがって、実施例2によれば、X線CT画像を読影者の要望に応じてさらに迅速に補正することが可能となる。
【0094】
また、実施例2によれば、システム制御部38は、計数情報記憶部34が記憶する計数情報を記憶媒体へ転送するための転送要求を受け付けた場合、当該記憶媒体に計数情報記憶部34が記憶する計数情報を格納するように制御する。したがって、実施例2によれば、計数情報記憶部24の空き容量が不足して、計数情報が破棄されることを回避することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
以上のように、本発明に係る放射線診断装置および画像再構成方法は、放射線を利用して医用画像を再構成する場合に有用であり、特に、医用画像を読影者の要望に応じて迅速に補正することに適する。
【符号の説明】
【0096】
10 架台装置
11 天板
12 寝台
13 寝台駆動部
14 検出器モジュール
141 シンチレータ
142 光電子増倍管
143 ライトガイド
15 計数情報収集部
20 コンソール装置
21 入力部
22 表示部
23 寝台制御部
24 計数情報記憶部
25 同時計数情報生成部
26 画像再構成部
27 データ記憶部
28 システム制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した放射線に由来する光を計数するフォトンカウンティング方式の検出器と、
前記検出器の計数結果に基づく計数情報を記憶する計数情報記憶部と、
前記計数情報記憶部が記憶する前記計数情報を用いて生成された投影データを逆投影処理することで医用画像を再構成する画像再構成部と、
前記医用画像の再構成後、前記計数情報のすべて、または、一部を、前記計数情報記憶部に保持するように制御する制御部と、
を備える、放射線診断装置。
【請求項2】
前記計数情報記憶部が記憶する前記計数情報を記憶媒体へ転送するための転送要求を受け付けた場合、前記制御部は、当該記憶媒体に前記計数情報記憶部が記憶する前記計数情報を格納するように制御する、請求項1に記載の放射線診断装置。
【請求項3】
前記検出器は、前記被検体に投与された陽電子放出核種から放出される放射線に由来する光を計数し、
前記計数情報記憶部は、前記放射線の前記検出器における検出位置、前記放射線が前記検出器に入射した時点におけるエネルギー値および前記放射線の検出時間を前記計数情報として記憶し、
前記計数情報記憶部が記憶する前記計数情報における少なくとも検出時間に基づいて、前記陽電子放出核種から放出された一対の放射線が同時に計数された計数情報の組み合わせを検索し、当該検索した計数情報の組み合わせである同時計数情報を、前記画像再構成部が用いる前記投影データとして生成する同時計数情報生成部をさらに備える、請求項1に記載の放射線診断装置。
【請求項4】
前記検出器は、前記被検体に投与された陽電子放出核種から放出される放射線に由来する光を計数し、
前記計数情報記憶部は、前記放射線の前記検出器における検出位置、前記放射線が前記検出器に入射した時点におけるエネルギー値および前記放射線の検出時間を前記計数情報として記憶し、
前記計数情報記憶部が記憶する前記計数情報における少なくとも検出時間に基づいて、前記陽電子放出核種から放出された一対の放射線が同時に計数された計数情報の組み合わせを検索し、当該検索した計数情報の組み合わせである同時計数情報を、前記画像再構成部が用いる前記投影データとして生成する同時計数情報生成部をさらに備える、請求項2に記載の放射線診断装置。
【請求項5】
前記医用画像の再構成後、同時計数情報を生成するための同時計数情報生成条件の変更要求を受け付けた場合、前記制御部は、変更後の同時計数情報生成条件に基づいて、前記計数情報記憶部が記憶する前記計数情報から同時計数情報を再度生成するように前記同時計数情報生成部を制御し、前記同時計数情報生成部により再度生成された同時計数情報を用いて医用画像を再度再構成するように前記画像再構成部を制御する、請求項3に記載の放射線診断装置。
【請求項6】
前記医用画像の再構成後、同時計数情報を生成するための同時計数情報生成条件の変更要求を受け付けた場合、前記制御部は、変更後の同時計数情報生成条件に基づいて、前記計数情報記憶部が記憶する前記計数情報から同時計数情報を再度生成するように前記同時計数情報生成部を制御し、前記同時計数情報生成部により再度生成された同時計数情報を用いて医用画像を再度再構成するように前記画像再構成部を制御する、請求項4に記載の放射線診断装置。
【請求項7】
前記検出器は、前記被検体を透過した放射線に由来する光を計数し、
前記計数情報記憶部は、前記放射線の前記検出器における検出位置および前記放射線が前記検出器に入射した時点におけるエネルギー値を前記計数情報として記憶し、
前記画像再構成部は、前記計数情報記憶部が記憶する前記計数情報を前記投影データとして前記医用画像を再構成する、請求項1に記載の放射線診断装置。
【請求項8】
前記検出器は、前記被検体を透過した放射線に由来する光を計数し、
前記計数情報記憶部は、前記放射線の前記検出器における検出位置および前記放射線が前記検出器に入射した時点におけるエネルギー値を前記計数情報として記憶し、
前記画像再構成部は、前記計数情報記憶部が記憶する前記計数情報を前記投影データとして前記医用画像を再構成する、請求項2に記載の放射線診断装置。
【請求項9】
前記医用画像の再構成後、画像再構成条件の変更要求を受け付けた場合、前記制御部は、変更後の画像再構成条件に基づいて、前記計数情報記憶部が記憶する前記計数情報から医用画像を再度再構成するように前記画像再構成部を制御する、請求項7に記載の放射線診断装置。
【請求項10】
前記医用画像の再構成後、画像再構成条件の変更要求を受け付けた場合、前記制御部は、変更後の画像再構成条件に基づいて、前記計数情報記憶部が記憶する前記計数情報から医用画像を再度再構成するように前記画像再構成部を制御する、請求項8に記載の放射線診断装置。
【請求項11】
フォトンカウンティング方式の検出器が、入射した放射線に由来する光を計数し、
計数情報記憶部が、前記検出器の計数結果に基づく計数情報を記憶し、
画像再構成部が、前記計数情報記憶部が記憶する前記計数情報を用いて生成された投影データを逆投影処理することで医用画像を再構成し、
制御部が、前記医用画像の再構成後、前記計数情報のすべて、または、一部を、前記計数情報記憶部に保持するように制御する、
ことを含む、画像再構成方法。
【請求項12】
前記計数情報記憶部が記憶する前記計数情報を記憶媒体へ転送するための転送要求を受け付けた場合、前記制御部は、当該記憶媒体に前記計数情報記憶部が記憶する前記計数情報を格納するように制御する、ことを含む、請求項11に記載の画像再構成方法。
【請求項13】
前記検出器は、前記被検体に投与された陽電子放出核種から放出される放射線に由来する光を計数し、
前記計数情報記憶部は、前記放射線の前記検出器における検出位置、前記放射線が前記検出器に入射した時点におけるエネルギー値および前記放射線の検出時間を前記計数情報として記憶し、
同時計数情報生成部が、前記計数情報記憶部が記憶する前記計数情報における少なくとも検出時間に基づいて、前記陽電子放出核種から放出された一対の放射線が同時に計数された計数情報の組み合わせを検索し、当該検索した計数情報の組み合わせである同時計数情報を、前記画像再構成部が用いる前記投影データとして生成する、ことをさらに含む、請求項11に記載の画像再構成方法。
【請求項14】
前記検出器は、前記被検体に投与された陽電子放出核種から放出される放射線に由来する光を計数し、
前記計数情報記憶部は、前記放射線の前記検出器における検出位置、前記放射線が前記検出器に入射した時点におけるエネルギー値および前記放射線の検出時間を前記計数情報として記憶し、
同時計数情報生成部が、前記計数情報記憶部が記憶する前記計数情報における少なくとも検出時間に基づいて、前記陽電子放出核種から放出された一対の放射線が同時に計数された計数情報の組み合わせを検索し、当該検索した計数情報の組み合わせである同時計数情報を、前記画像再構成部が用いる前記投影データとして生成する、ことをさらに含む、請求項12に記載の画像再構成方法。
【請求項15】
前記医用画像の再構成後、同時計数情報を生成するための同時計数情報生成条件の変更要求を受け付けた場合、前記制御部は、変更後の同時計数情報生成条件に基づいて、前記計数情報記憶部が記憶する前記計数情報から同時計数情報を再度生成するように前記同時計数情報生成部を制御し、前記同時計数情報生成部により再度生成された同時計数情報を用いて医用画像を再度再構成するように前記画像再構成部を制御する、請求項13に記載の画像再構成方法。
【請求項16】
前記医用画像の再構成後、同時計数情報を生成するための同時計数情報生成条件の変更要求を受け付けた場合、前記制御部は、変更後の同時計数情報生成条件に基づいて、前記計数情報記憶部が記憶する前記計数情報から同時計数情報を再度生成するように前記同時計数情報生成部を制御し、前記同時計数情報生成部により再度生成された同時計数情報を用いて医用画像を再度再構成するように前記画像再構成部を制御する、請求項14に記載の画像再構成方法。
【請求項17】
前記検出器は、前記被検体を透過した放射線に由来する光を計数し、
前記計数情報記憶部は、前記放射線の前記検出器における検出位置および前記放射線が前記検出器に入射した時点におけるエネルギー値を前記計数情報として記憶し、
前記画像再構成部は、前記計数情報記憶部が記憶する前記計数情報を前記投影データとして前記医用画像を再構成する、請求項11に記載の画像再構成方法。
【請求項18】
前記検出器は、前記被検体を透過した放射線に由来する光を計数し、
前記計数情報記憶部は、前記放射線の前記検出器における検出位置および前記放射線が前記検出器に入射した時点におけるエネルギー値を前記計数情報として記憶し、
前記画像再構成部は、前記計数情報記憶部が記憶する前記計数情報を前記投影データとして前記医用画像を再構成する、請求項12に記載の画像再構成方法。
【請求項19】
前記医用画像の再構成後、画像再構成条件の変更要求を受け付けた場合、前記制御部は、変更後の画像再構成条件に基づいて、前記計数情報記憶部が記憶する前記計数情報から医用画像を再度再構成するように前記画像再構成部を制御する、請求項17に記載の画像再構成方法。
【請求項20】
前記医用画像の再構成後、画像再構成条件の変更要求を受け付けた場合、前記制御部は、変更後の画像再構成条件に基づいて、前記計数情報記憶部が記憶する前記計数情報から医用画像を再度再構成するように前記画像再構成部を制御する、請求項18に記載の画像再構成方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−80979(P2011−80979A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186578(P2010−186578)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】