説明

放射線集束素子

反射型又は透過型放射線集束素子の表面又はその少なくとも1つの表面には、実質的に二次関数に応じて変形された少なくとも1つの位相又は振幅回折格子が設けられる。また、その表面又は裏面には、アパーチャを設けることができる。この素子は、3次元イメージングシステム及び波面検出システムに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線集束素子に関する。
【0002】
国際特許出願番号WO/46768(国防大臣)には、実質的に種々の集束条件の下で形成されることになる画像を生成するために二次関数に従って変形される回折格子を含むイメージングシステムが説明されている。本出願人の同時係属中の英国特許出願番号0205240.5は、放射線波面の局部的形状(又は局部的位相分布)に関するデータを求めるためのシステムに関連し、この装置の特定の実施形態は、このような変形された回折格子を備えている。
【0003】
これらのシステムは、光学的放射との関連で特に説明されているが他の形態の放射線に利用することもできる。
【0004】
前述の各出願には、変形された格子がレンズに隣接して配置されている装置が示されている。
【0005】
本発明の第1の態様において、実質的に二次関数に従って変形される少なくとも1つの回折格子が設けられている、少なくとも1つの表面に放射線集束素子を設ける。集束素子は、例えばガラス製レンズ又はガラス材、又は例えば高分子材料とすることができる、放射線に対して透過型のレンズ(屈折光学素子)であるか又はそれを含むこと、もしくは、集束素子は、集束反射体(反射光学素子)であるか又はそれを含むことが好ましい。
【0006】
本発明の好適な実施形態において、単一格子は、集束素子の片面にのみ配置される。しかしながら、必要に応じて、異なる格子を集束素子の同じ面の異なる領域に配置すること、及び/又は(集束素子が透過型レンズの場合)同一の又は異なる1つ又は複数の格子を反対側のレンズ外面に配置することができる。
【0007】
1つの実施形態において、格子は位相格子である。例えば、成形素子のエンボス加工又は選択的エッチング処理によって、又は製造時の素子の適切な成型(moulding)又はそうでなければ成形(shaping)によって、(反射型又は透過型)バルク素子自体の表面に形成することができる。
【0008】
もしくは、格子は少なくとも素子の一部を覆う層に形成することができ、例えば、層は、格子がエンボス加工又は選択的エッチング処理された高分子材料又はガラス配合材で作ることができる。
【0009】
本出願人の同時係属中の英国特許出願番号0123744.5には、所望の形状の表面を備える光学基材を提供する方法が説明されクレームされており、この方法は、表面を光学ガラス薄層で被覆する段階と、その後に層の外面の形状を修正する段階とを含む。本明細書で説明するように、ガラス層の成形は、エッチング処理又はエンボス加工によって施すことができる。ガラス層は、例えば、TeリッチのGe、As、Se、及びTeから成るガラスであるカルコゲナイド・ガラス、又はアモルファス三硫化ヒ素とすることができる。これはRFスパッタリング、フラッシュ蒸発、溶媒蒸発、又は回転塗布によって付着させることができる。
【0010】
更に、別のプロセスを利用して格子を形成することができる。例えば、フォトレジストを用いて集束素子の表面を被覆し、次に、干渉ビームに露光させ、レジストパターンを成長させ、残余レジストを除去する前に選択的エッチング処理を施す。成長したレジストパターン自体が、エッチング処理を要することなく格子をもたらす場合もある。
【0011】
集束素子が透明レンズの場合、格子が形成された層は透過型とする必要がある。集束素が反射型の場合、層はやはり透過型とすること、もしくは、格子は、層が集束及び格子の両機能を与えるように、適切に成形された基材上の反射層に形成することができる。
【0012】
本発明の発展において、例えば、ビームサイズが重要な場合、振幅マスクは、集束素子の少なくとも一方の表面に配置され、アパーチャをもたらすようになっている。つまり、本出願人の同時係属中の前述の英国特許出願番号0205240.5において、集束及び回折素子は、アパーチャに非常に隣接して配置されている。
【0013】
このようなマスクは、例えば、選択的付着又は選択的除去のいずれかによって、前記表面に放射線(光)遮蔽材料の追加層に形成することができる。従って、マスクは、格子が位相格子であるか又は振幅格子であるかに関わらず、集束素子の表面上の適切に成形された層によって与えることができる。
【0014】
本発明の別の実施形態において、本発明に関連して前述した各々の又は少なくとも1つの位相格子は、振幅格子に置換される。この場合も、マスクは。例えば、選択的付着又は選択的除去のいずれかによって、前記表面に放射線(光)遮蔽材料の追加層に形成することができる。アパーチャマスクが同様に存在する場合、格子及びマスクは、連続的に又は同時に付着させることができ、これらは集束素子の同じ面又は反対側の面に設けることができる。
【0015】
本発明は、本発明の第1の態様に基づく光学素子を備える3次元イメージングシステム又は波面センサにまで及ぶ。
【0016】
前述の国際特許出願番号WO/46768及び英国特許出願番号0205240.5に説明されているシステムは、格子の分散特性に起因して色収差を起こす傾向があり、このことは、広帯域光又は白色光を用いる技術を適用しようとする場合の限定要因であった。従って、レンズ集束素子の好適な実施形態において、格子の分散特性は低減され、より好適には、複合レンズの場合、これはレンズ自体又はその1つ又はそれ以上の屈折素子によって実質的に補償される。これにより、例えば本出願人の前述の出願に説明されクレームされている方式のシステムにおいて、白色光波面センサ又イメージングシステムに複合素子を用いることが可能になる。
【0017】
集束素子の表面に格子を形成することによって、格子及び集束の両機能を果たす複合光学素子が形成されるが、これは、衝撃又は他の環境要因に起因する集束素子と格子との間の位置合わせ不良の問題を引き起こす傾向がない。この利点は、アパーチャを同様に必要とし、アパーチャが集束素子自体の上に同様に形成される場合にはいっそう倍加する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの表面に実質的に二次関数に応じて変形された少なくとも1つの回折格子が設けられていることを特徴とする集束素子。
【請求項2】
前記集束素子が、前記表面に放射線反射体を備えることを特徴とする請求項1に記載の集束素子。
【請求項3】
前記集束素子が、前記表面に透過型レンズを備えることを特徴とする請求項1に記載の集束素子。
【請求項4】
前記レンズの片面にのみ前記格子が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の集束素子。
【請求項5】
前記格子の分散特性が、レンズ自体によって、又はその1つ又はそれ以上の屈折素子によって低減されることを特徴とする請求項3又は4に記載の集束素子。
【請求項6】
前記格子が位相格子であることを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の集束素子。
【請求項7】
前記格子が振幅格子であることを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の集束素子。
【請求項8】
前記格子が、前記表面の少なくとも一部を覆う層に設けられることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の集束素子。
【請求項9】
前記層が、ガラス配合材で作られることを特徴とする請求項8に記載の集束素子。
【請求項10】
前記層が、放射線遮蔽材で作られることを特徴とする請求項7及び8に記載の集束素子。
【請求項11】
前記層が成形されることを特徴とする請求項8から10のいずれか1項に記載の集束素子。
【請求項12】
前記反射体が、基材上に反射層を備え、前記反射層が、成形されて前記格子をもたらすようになっていることを特徴とする請求項2に記載の集束素子。
【請求項13】
前記格子が、バルク素子自体の表面に設けられることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の集束素子。
【請求項14】
前記素子の少なくとも片面上にアパーチャをもたらすマスクを更に備えることを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の集束素子。
【請求項15】
前記マスクが、前記集束素子の表面上の層に設けられることを特徴とする請求項14に記載の集束素子。
【請求項16】
前記マスク及び前記格子が、前記集束素子の同じ面に設けられることを特徴とする請求項14又は15に記載の集束素子。
【請求項17】
前記マスク及び前記格子が、前記集束素子の反対側の面に設けられることを特徴とする請求項14又は15に記載の透過型集束素子。
【請求項18】
前記請求項のいずれか前記項に記載の光学的放射に用いる放射線集束素子。
【請求項19】
前記格子がエンボス加工によって作られることを特徴とする請求項11から13に記載の素子を作る方法。
【請求項20】
前記格子が選択的エッチング処理によって作られることを特徴とする請求項11又は12に記載の光学素子を作る方法。
【請求項21】
前記集束素子が透過型レンズであり、前記格子が前記レンズの製造時に成型によって形成されることを特徴とする請求項6に記載の光学素子を作る方法。
【請求項22】
請求項1から16のいずれか1項に記載の素子を備える3次元イメージングシステム。
【請求項23】
請求項1から16のいずれか1項に記載の光学素子を備える波面センサ。

【公表番号】特表2006−510049(P2006−510049A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−559900(P2004−559900)
【出願日】平成15年12月12日(2003.12.12)
【国際出願番号】PCT/GB2003/005463
【国際公開番号】WO2004/055557
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(503239660)キネティック リミテッド (1)
【Fターム(参考)】