放射装置
本発明は基体と、第1および第2の電極と、第1および第2の電極の間に設けられた放射層とを有する放射装置に関する。放射層はマトリクス材料と、0.5〜5重量%の放射材料と、5〜30重量%の燐光発光性トラップ材料とを含んでいる。トラップ材料の重量割合は放射材料のものよりも大きく、トラップ材料の最大放射スペクトル波長は放射材料のものよりも短波長側にある。さらに、該放射装置は放射層の電流効率はトラップ材料を含まない放射層の電流効率よりも少なくとも10%大きいことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マトリクス材料と、放射材料と、燐光発光性トラップ材料とを含む放射層を有する放射装置に関する。
【0002】
本願は、ドイツ国特許出願DE10 2008 063 589.8およびDE10 2008 050 331.2の優先権を主張するものであり、これらの開示内容は本明細書中に参照により含まれる。
【0003】
高効率の燐光発光性放射材料は、高効率の有機発光ダイオード(OLED)の開発ならびに表示装置および照明装置に必要とされている。これに重要とされるのは、一方では放射材料分子単体の量子効率であり、他方では放射材料全体の量子効率、システムの電流効率ならびに出力効率(すなわち電力当たりの光出力)である。
【0004】
本発明の課題は、向上された効率を有する放射装置を提供することである。
【0005】
この課題は独立請求項にかかる装置によって解決される。他の実施形態は従属請求項の対象である。
【0006】
本発明にかかる放射装置は、基体と、第1の電極および第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に設けられた放射層から構成されている。この放射層は、マトリクス材料と、0.5〜5重量%の放射材料と、5〜30重量%のトラップ材料特に燐光発光性トラップ材料とを含んでいる。ここでトラップ材料の重量割合は放射材料の重量割合よりも大きい。さらに、燐光発光性トラップ材料の最大放射スペクトル波長は、放射材料の最大放射スペクトル波長よりも短波長側にある。放射装置の放射層の電流効率は、トラップ材料を含まない放射層の電流効率に比して高く、特に少なくとも10%高い。
【0007】
マトリクス材料および放射材料に加えて燐光発光性トラップ材料を含む本発明にかかる放射層によれば、放射層の電流効率をトラップ材料を含まない放射層に比して高めることができる。ドーパントの出力特性によって、特により良好なキャリアバランスならびにより低い動作電圧がもたらされる。量子効率の向上に加え、出力効率の向上がもたらされる。より良好なキャリアバランスは、マトリクス材料による多数キャリアの輸送、および、トラップ材料による少数キャリアの輸送(たとえば、ホールが輸送されたマトリクス材料におけるトラップ材料のLUMOを超える電子の輸送)に寄与する。トラップ材料の添加によって、低濃度における最高のフォトルミネセンス効率を有ししたがってたとえば良好な長期安定性を有し、高効率のOLEDについても用いることのできる放射材料が使用可能となる。このドーパントは、トラップ材料と混合されていない場合には、あまり良好に機能しない。というのも、マトリクス材料中の含有量が低い放射材料分子が放射中心として機能するからであり、すなわちキャリア移動性が低下するからである(なぜならキャリアは放射中心に「トラップ」されるので)。これにより駆動電圧が高くなってしまう。
【0008】
低濃度の放射材料を用いることによって、特に、高濃度で立体障害のない放射材料における分子の積み重なり(放射スペクトルの赤方変位を生じさせうる)を防ぐことができる。高濃度のトラップ材料を用いることにより、上記の影響の他に、このトラップ材料がキャリアに対する放射中心として機能せず、むしろキャリアのより良好な輸送を生じさせるという影響が得られる。
【0009】
したがって、本発明にかかる放射装置に含まれている放射層は、(本発明にかかるトラップ材料を含まない放射層に比べて)高められた電流効率を有しており、通常少なくとも10%高められている(特に10〜1100cd/m2の輝度において)。電流効率は、本発明にかかるトラップ材料を含まない対応する放射層の電流効率をしばしば事実上20%上回り、多くの場合事実上25%上回る(特に10〜1100cd/m2の輝度において)。これは、特に高輝度すなわち典型的には1000cd/m2より高い輝度における電流効率にあてはまる。
【0010】
以下、本発明にかかる放射装置の一構成について詳細に説明する。
【0011】
本発明にかかる「基体」には、たとえば、放射装置のために従来技術において一般に用いられているような基体が用いられる。たとえば、基体は、ガラス、石英、プラスチックフィルム、金属、金属フィルム、シリコンウェハまたは他の適した基体材料から構成されている。放射装置は、たとえば、いわゆる「下面放射装置」として実現され、基体は好ましくは透明な、たとえばガラス基体として実現される。
【0012】
本発明にかかる放射装置において、第1の電極は基体上にたとえばデポジションされる。
【0013】
「第1の電極」は、本明細書中で用いられているようにたとえば陽極を指す。陽極はたとえばホール注入材料から構成される。ホール注入材料として、従来技術で知られている任意のホール注入材料が用いられる。放射装置はたとえば「下面放射装置」として構成され、陽極は通常、透明材料から構成される。たとえば、陽極は透明導電性酸化物またはその層から構成される。この透明導電性酸化物(TCO)は金属酸化物、たとえば、亜鉛酸化物、錫酸化物、カドミウム酸化物、チタン酸化物、インジウム酸化物またはインジウム錫酸化物(ITO)、Zn2SnO4、CdSnO3、ZnSnO3、MgIn2O4、GaInO3、Zn2In2O5またはIn4Sn3O12あるいは他の透明導電性酸化物の混合物から構成されるが、これらのものに限られない。TCOには厳しい化学量論組成は適用されず、TCOはpドープまたはnドープされていてもよい。
【0014】
第1の電極が陽極である場合、第2の電極は陰極である。
【0015】
「陰極」はたとえば電子注入材料から構成される。陽極の材料として、従来技術における通常の陽極材料、特にアルミニウム、バリウム、インジウム、銀、金、マグネシウム、カルシウムまたはリチウムならびにこれらの物質の化合物または合金、および上記材料の混合物、化合物および/または合金が用いられる。その代わりにまたはそれに加えて、陽極材料として知られている1つまたは複数のTCOが含まれていてもよく、たとえば、陰極は全体がこの材料から構成されていてもよい。これにより陰極は透明なものとすることができる。
【0016】
放射装置において、たとえば、一方の電極は透明に、他方の電極は反射性にしてもよい。したがって放射装置は、「下面放射装置」または「上面放射装置」のいずれかとして実現可能である。あるいは、両方の電極を透明としてもよい。
【0017】
本発明にかかる放射装置の放射層は、1つまたは複数の放射材料と1つまたは複数の燐光発光性トラップ材料とを含むマトリクス材料から構成される機能層を指し、あるいは、マトリクス材料と、少なくとも1つの放射材料と、少なくとも1つのトラップ材料とから構成される機能層を指す。
【0018】
放射材料およびトラップ材料は、本例において、マトリクス材料中に含まれており、mCP (1,3−ビス(カルバゾール−9−イル)ベンゾール)、TCP (1,3,5−トリス(カルバゾール)−9−イル)ベンゾール)、TCTA (4,4’,4’’−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン)、TPBi (1,3,5−トリス(1−フェニル−1−H−ベンズイミダゾール−2−イル)ベンゾール)、CBP (4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル)、CDBP (4,4’−ビス(9−カルバゾリル)−2、2’−ジメチルビフェニル)、DMFL−CBP (4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)−9,9−ジメチルフルオレン)、FL−4CBP (4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)−9,9−ビス(9−フェニル−9H−カルバゾール)フルオレン)、DPFL−CBP (4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)−9,9−ジトリルフルオレン)、FL−2CBP (9,9−ビス(9−フェニル−9H−カルバゾール)フルオレン)、スピロ−CBP (2,2’,7,7’−テトラキス(カルバゾール−9−イル)−9,9’−スピロ−ビフルオレン)、ADN (9,10−ジ(ナフト−2−イル)アントラセン、TBADN (3−Tert−ブチル−9,10−ジ(ナフト−2−イル)アントラセン、DPVBi (4,4’−ビス(2,2−ジフェニル−エテン−1−イル)−4,4’−ジメチルフェニル),p−DMDPVBi (4,4’−ビス(2,2−ジフェニル−エテン−1−イル)−4,4’−ジメチルフェニル)、TDAF(Tert(9,9−ジアリルフルオレン))、BSBF (2−(9,9’−スピロビフルオレン−2−イル)−9,9’−スピロビフルオレン)、TSBF (2,7−ビス(9,9’−スピロビフルオレン−2−イル)−9,9’−スピロビフルオレン)、BDAF ビス(9,9−ジアリルフルオレン)、p−TDPVBi (4,4’−ビス(2,2−ジフェニルエテン−1−イル)−4,4’−ジ(tert−ブチル)フェニル)、TPB3 (1,3,5−トリ(ピレン−1−イル)ベンゾール)およびこれらの混合物からなる群から選択可能である。マトリクス材料として、TCTA、TPBi、CBP、CDBPおよびCPFが好ましい。マトリクス材料として混合系が可能であり、好ましくはTCTA、mCP、CBP、CDBPまたはCPFの1つまたは複数からなる混合物あるいはTPBiとの混合物が用いられる。
【0019】
放射材料は、たとえば青色、緑色または赤色スペクトル領域に最大放射スペクトル波長を有するものである。このような放射材料は複数の最大放射スペクトル波長を有しており、本発明における実際の最大放射スペクトル波長としては、最大の強度を有する最大放射スペクトル波長が適用される。
【0020】
異なる電流強度において異なる波長における2つ以上の最大強度の最大放射スペクトル波長が存在するので、本発明における実際のこの最大放射スペクトル波長のうちで、より低い波長において最大のものが最大放射スペクトル波長として適用される(特に放射材料の最大放射スペクトル波長とトラップ材料の最大放射スペクトル波長との差を決定するため)。
【0021】
青色の燐光を発する放射材料は、FIrpic (ビス(3,5−ジフルオロ−2−(2−ピリジル)フェニル−(2−カルボキシピリジル)−イリジウム(III))、FIr6 (ビス(2,4−ジフルオロフェニルピリジナート)−テトラキス(1−ピラゾリル)ボラート−イリジウム(III))およびこれらの混合物から構成される群から選択可能である。上記の放射材料の材料は青色のスペクトル領域に最大放射スペクトル波長を有する。
【0022】
緑色の燐光を発する放射材料は、Ir(ppy)3 (トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III))、Ir(ppy)2(acac) (ビス(2−フェニルピリジン)(アセチルアセトナート)イリジウム(II))、イリジウム(III)−トリス(2−(4−トリル)ピリジナート−N,C2)、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)、トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(III)、トリス(2−メチル,8−ヒロドキシキノラト)アルミニウム(III)、トリス(8−ヒドロキシキノラト)ガリウム(III)、トリス(3−メチル−1−フェニル−4−トリメチル−アセチル−5−ピラゾリン)テルビウム(III)およびこれらの混合物から構成される群から選択可能である。上記の放射材料の材料は緑色のスペクトル領域に最大放射スペクトル波長を有する。
【0023】
赤色の燐光を発する放射材料の材料は、Ir(mdq)2(acac) (ビス(2−メチルジベンゾ[f,h]−キノキサリン)(アセチルアセトナート)イリジウム(III))、Eu(dbm)3(phen) (トリス(ジベンゾイルメタン)フェナントロリンユーロピウム(III))、Ir(btp)2(acac) (ビス(2−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル−ピリジン)(アセチルアセトナート)イリジウム(III))、Ir(piq)2(acac) (ビス(1−フェニルイソキノリン)(アセチルアセトナート)イリジウム(III))、Ir(fliq)2(acac)−1 (ビス[1−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)−イソキノリン](アセチルアセトナート)イリジウム(III))、Ir(flq)2(acac)−2 (ビス[3−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)−イソキノリン](アセチルアセトナート)イリジウム(III))、Ru(dtbbpy)3*2(PF6) (トリス[4,4’−ジ−tert−ブチル(2,2’)−ビピリジン]ルテニウム(III)錯体)、Ir(2−phq)3 (トリス(2−フェニルキノリン)イリジウム(III))、Ir(2−phq)2(acac) (ビス(2−フェニルキノリン)(アセチルアセトナート)イリジウム(III))、Ir(piq)3 (トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム(III))、イリジウム(III)−ビス(2−(2’−ベンゾチエニル)ピリジナート−N,C3’)(アセチルアセトナート)、トリス(ジベンゾイルアセトナート)−モノ(フェナントロリン)ユーロピウム(III)、トリス(ジベンゾイルメタン)−モノ(フェナントロリン)ユーロピウム(III)、トリス(ジベンゾイルメタン)−モノ(5−アミノフェナントロリン)ユーロピウム(III)、トリス(ジナフトイルメタン)−モノ(フェナントロリン)ユーロピウム(III)、トリス(4−ブロモベンゾイルメタン)−モノ(フェナントロリン)ユーロピウム(III)、トリス(ジビフェノイルメタン)−モノ(フェナントロリン)ユーロピウム(III)、トリス(ジベンゾイルメタン)−モノ(4,7−ジメチルフェナントロリン)ユーロピウム(III)、トリス(ジベンゾイルメタン)−モノ(4,7−ジメチルフェナントロリン−ジスルホン酸)ユーロピウム(III)二ナトリウム、トリス[ジ(4−(2−(2−トキシエトキシ)エトキシ)ベンゾイルメタン)]−モノ(フェナントロリン)ユーロピウム(III)、トリス[ジ(4−(2−(2−トキシエトキシ)エトキシ)ベンゾイルメタン)]−モノ(5−アミノフェナントロリン)ユーロピウム(III)およびこれらの混合物から構成される群から選択可能である。上記の放射材料の材料は赤色のスペクトル領域に最大放射スペクトル波長を有する。
【0024】
さらに、放射材料として、蛍光発光性放射材料も含入することができる。
【0025】
青色の蛍光を発する放射材料として、BCzVBi (4,4’−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−1,1’−ビフェニル)、ペリレン、TBPe (2,5,8,11−テトラ−tert−ブチルペリレン)、BCzVB (9H−カルバゾール−3,3’−(1,4−フェニレン−ジ−2,1−エテンジイル)ビス[9−エチル(9C)])、DPAVBi 4,4’−ビス[4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]ビフェニル、DPAVB (4−(ジ−p−トリルアミノ)−4’−[(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]スチルベン)、BDAVBi (4,4’−ビス[4−(ジフェニルアミノ)スチリル]ビフェニル)、BNP3FL (N,N’−ビス(ナフタレン−2−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−トリス(9,9−ジメチルフルオレニレン)、9,10−ビス[(9−エチル−3−カルバゾイル)−ビニレニル]−アントラセン、4,4’−ビス(ジフェニルビニレニル)−ビフェニル、1,4−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−2−メトキシ−5−(2−チルヘキシルオキシ)ベンゾール、4,4’−ビス(ジフェニルビニレニル)−アントラセン、1,4−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−9,9−ジヘキシル−フルオレンおよびこれらの混合物から構成される群から選択可能な、1種の化合物が含入される。上記の放射材料は青色のスペクトル領域に最大放射スペクトル波長を有する。さらに、赤色または緑色の蛍光を発する放射材料も含入可能である。
【0026】
本発明にかかる放射装置の放射層は、放射材料に加えて、燐光発光性トラップ材料も含んでいる。
【0027】
燐光発光性トラップ材料については、マトリクス材料からのより効率的なエネルギー移動が可能な化合物であるかが重要である。動作時、まずマトリクス材料からトラップ材料にエネルギーが移動されて励起子が形成され、あるいは、トラップ材料において直接励起子が形成される。放射材料への効率的で迅速なエネルギー移動を確実にする、すなわち、効率的かつ迅速に放射材料に励起子を形成するという機能がトラップ材料に存在する。
【0028】
燐光発光性トラップ材料はさらにマトリクス材料中の少数キャリアの良好な輸送を可能とし、マトリクス材料中では反対の電荷を有する多数キャリアが輸送される(ホールを輸送するホスト材料においてトラップ材料もまた良好な電子輸送が可能となる)。
【0029】
トラップ材料が燐光発光性化合物であっても、トラップ材料が放射線を発することとはならない。むしろトラップ材料が励起子およびキャリアの良好な輸送を確実にすることが重要である。トラップ材料として使用される材料は放射材料として導入される材料と常に異なっている。
【0030】
燐光発光性トラップ材料の最大放射スペクトル波長が放射材料の最大放射スペクトル波長よりも短波長側にある場合には、トラップ材料として、上述の燐光発光性放射材料のためのものとほぼ同じ化合物が適している。
【0031】
一実施形態では、トラップ材料の割合は10〜20重量%である(本発明においては、重量%で示す全てのデータは放射層に含まれるマトリクス材料における重量%を示している)。少なくとも10重量%以上の重量割合では、マトリクス材料中に多くのトラップ材料が含まれているので、非常に効率的なキャリア輸送が可能となり、電流効率の明らかな向上が観察される。20重量%より上の重量割合では、2つの励起子の相互作用により効率低下が発生する状態となりうる。
【0032】
別の実施形態では、放射材料の重量割合は1〜4重量%である。5重量%以上の重量割合では、濃度消光が発生し、したがって効率の明らかな低下が推定される。
【0033】
他の実施形態では、トラップ材料の重量割合は、放射材料の重量割合の少なくとも4倍大きく、しばしば事実上8倍大きい。
【0034】
別の実施形態では、マトリクス材料が電子輸送性の良好な材料である場合には、トラップ材料のHOMOはホールの注入(すなわち、放射層に隣接する層の陰極側からトラップ材料へのホールの輸送)を容易化するものであり、あるいは、マトリクス材料がホール輸送性の良好な材料である場合には、トラップ材料のLUMOは電子の注入(放射層に隣接する層の陽極側からトラップ材料への)を容易化するものである。特に、トラップ材料のLUMOは、ホール輸送性の良好なマトリクス材料において放射層に隣接する層の陽極側のLUMOの最大±0.3電子ボルトにある。好ましくは、LUMOはこのエネルギーレベルの0〜0.3電子ボルト下にある。電子輸送性の良好なマトリクス材料において、トラップ材料のHOMOは好ましくは、放射層に隣接する層の陰極側のHOMOの最大±0.3電子ボルトにある。特に好ましくは、HOMOは、この層のHOMOの0〜0.3電子ボルト下にある。本明細書において、HOMOとは「最高被占軌道」を意味し、LUMOとは「最低空軌道」を示している。
【0035】
陽極側にはたとえば電子輸送層が放射層に隣接して設けられている。陰極側にはたとえばホール輸送層が放射層に隣接して設けられている。
【0036】
別の実施形態において、放射材料の最大放射スペクトル波長と、トラップ材料の最大放射スペクトル波長との差は、少なくとも15nm、通常は事実上少なくとも30nmである。通常、黄色、橙色または赤色のスペクトル領域で放射する放射材料については、青色または緑色のスペクトル領域に最大放射スペクトル波長を示すトラップ材料が用いられる。緑色を放射する放射材料については、青色のスペクトル領域に最大放射スペクトル波長を示すトラップ材料が用いられ、青色を放射する放射材料については、紫色または紫外のスペクトル領域に最大放射スペクトルを示すトラップ材料が用いられる。特に、青色を放射する放射材料において最大放射スペクトル波長の差は最大100nmである。赤色、橙色、黄色、緑色、青色および紫色のスペクトル領域は、本発明においては一般に以下のスペクトル領域を指す:赤色スペクトル領域 約640〜780nm:橙色スペクトル領域 約600〜640nm;黄色のスペクトル領域 約570〜600nm;緑色のスペクトル領域 約500〜570nm;青色のスペクトル領域 約430〜500nm、紫色のスペクトル領域 約380〜430nm。
【0037】
別の実施形態では、本発明にかかる放射装置の放射層からの最大放射スペクトルは、実質的に放射材料が示すものである。非常に良好なトラップ材料のキャリア輸送性および励起子輸送性によって、マトリクス材料またはトラップ材料に形成される励起子のエネルギーは実質的に放射材料に移動される。このため、放射層が発する光の最大放射スペクトルは、トラップ材料を含まない放射層から放射される光が形成するような、実質的にそれ自身の色彩効果を生じる。実質的に同一の色彩効果の下で、特にここでは、トラップ材料を含まない放射層の放射光のCIE色座標(xoE,yoE)は、トラップ材料を含む放射層の色座標(xmE,ymE)と基本的に異ならないことが理解される。一般的に、差Δx=xoE−xmEおよび差Δy=yoE−ymEがそれぞれ適用され、ここで、Δx<0.05および/またはΔy<0.05である。しばしば、事実上Δx<0.03および/またはΔy<0.03、また多くの場合Δx<0.01および/またはΔy<0.01である。これらの差の絶対値の和ΣΔ=|Δx|+|Δy|は、一般的にΣΔ<0.08、しばしばΣΔ<0.05、多くの場合ΣΔ<0.01である。
【0038】
多くの場合、正規化された放射スペクトルによって、トラップ材料からの励起子のエネルギーが実質的に放射材料に移動されることが明らかとなる。通常、トラップ材料および放射材料を含む放射層について測定されたスペクトルにおける、トラップ材料の正規化された最大放射スペクトルの強度は、放射材料の最大放射スペクトルの強度の最大10%である。たいてい、トラップ材料の最大放射スペクトルの放射強度は、放射材料の最大放射スペクトルの放射強度の事実上最大5%、しばしば事実上最大1%である。測定された強度比は、通常、電流密度、特に0.5〜10mA/cm2の電流密度には依存しない。
【0039】
通常、さらに、トラップ材料および放射材料を含む放射層におけるトラップ材料の最大放射スペクトルの強度は、トラップ材料のみを(前述のいわゆる「混合」系と等しい電流濃度で)含みかつ放射材料を含まない放射層の最大放射スペクトルの強度に対して顕著に低減される。通常、放射材料およびトラップ材料を含む放射層におけるトラップ材料の最大放射スペクトルの正規化された放射強度(たとえば5mA/cm2の電流密度において測定されたもの)は、マトリクス材料およびトラップ材料のみから構成される層におけるトラップ材料の放射強度の正規化された放射強度の最大10%、たいていは最大5%、しばしば事実上最大1%である。上述したように、このことは実質的にトラップ材料の良好な励起子エネルギー輸送性に帰せられる。
【0040】
良好な励起子エネルギー輸送性は時間に応じた波長依存性の放射スペクトルに基づいて測定することができる。ここで、トラップ材料および放射材料を含む放射層を、トラップ材料のみおよび放射材料のみをそれぞれ同一濃度で含む同じ層と比較すれば、放射材料の最大放射スペクトルの放射強度の半減期が実質的に同一に維持される一方で、「混合系」におけるトラップ材料の最大放射スペクトルの放射強度の半減期が少なくとも半分まで低減されることが観察される。しばしば、半減期が少なくとも半分に低減されることが観察される。よりしばしば、半減期は、トラップ材料のみが含まれているマトリクス材料に対して測定された半減期の、事実上40%、多くの場合半減期の33%である。この効果はとりわけ、放射材料における励起子の寿命が基本的にトラップ材料における励起子の寿命よりも長いことを意味している。この寿命をトラップ材料または放射材料のみをそれぞれ同じ濃度で含んでいるマトリクス材料における寿命と比較すれば、非「混合系」では逆の状態が存在しうること、そして、トラップ材料の励起子の寿命の方が放射材料における平衡系での励起子の寿命よりも長い場合があることが観察される。
【0041】
上述の効果は基本的に放射層の外部量子効率を顕著に向上させる。トラップ材料および放射材料を含む放射層の外部量子効率を、放射材料のみを(同じ濃度で)含みかつトラップ材料を含まない放射層の外部量子効率と比較すれば、量子効率はたいてい少なくとも20%まで高められることが観察される。しばしば事実上30%の向上が観察される。本発明にかかる放射層によれば、外部量子効率ηextは12%より大きく、しばしば事実上14%より大きい。量子効率は事実上18%より大きく、たとえば、20%に達しうる。
【0042】
別の実施形態では、放射層に含まれる放射材料は、特に低い放射材料濃度において高いフォトルミネセンス量子収率を有する。基本的に、このフォトルミネセンス量子収率ηPLはトラップ材料のフォトルミネセンス量子収率よりも低い。さらにまた、放射材料における励起子は比較的短い寿命で存在する。基本的に、寿命は最大20μsである。
【0043】
別の実施形態では、放射材料は、トラップ材料のLUMOよりも高いLUMOを有する。これにより、励起子エネルギーは実質的にトラップ材料によりトラップされまたはトラップ材料に励起子が形成され、そして、トラップ材料または放射材料は実質的に意図された機能を果たすことができる。マトリクス材料に形成された励起子エネルギーのトラップ材料への移動が実質的に発生し、放射材料への移動は実質的に発生しない。一方でこのことは放射線を発するのに特に効率的に機能する。本発明は、しかし、これに限定されるものではなく、多くの場合、放射材料のLUMOはトラップ材料のLUMOよりも低い。さらに、トラップ材料のLUMOおよび場合により放射材料のLUMOは、マトリクス材料のLUMOよりも低い。これにより、励起子のトラップ材料における形成が強められ、それゆえマトリクス材料に形成された励起子のトラップ材料へのエネルギー移動は生じない。
【0044】
別の実施形態では、放射装置の放射層は10〜40nmの厚さを有する。より厚さの薄い放射層はプロセスが困難である;さらに、層の厚さが10nm以上では放射中心の数が最適化され、これにより励起子の寿命が向上される。個々のケースで、5〜10nmの層厚さも技術的に有用である。複数の放射層を含む、白色光を発する放射装置の製造のためには、単一の放射層の厚さは好ましくはそれぞれ10〜15nmである。
【0045】
通常、放射材料およびトラップ材料はマトリクス材料の中で統計的に分散されている。しかし、放射層中に濃度勾配を設けてもよく、たとえば、トラップ材料がより高い濃度で存在する領域と、放射材料が比例したより高い濃度で存在する領域とが入れ替わるようにしてもよい。放射層にトラップ材料のみが含まれている領域と、燐光発光性放射材料のみが含まれている領域とが事実上存在するようにしてもよい。これにより、励起子が形成される領域、または、放射が生じる領域を調整することができる。
【0046】
別の実施形態では、たとえば、放射装置は少なくとも1つの別の放射層、しばしば全体として少なくとも2つまたは3つの放射層を有している。ここで、1つまたは複数の別の放射層(第1の放射層のような)は放射材料の他にトラップ材料を含んでよい。この別の放射層については第1の放射層に関してなされた上記実施形態が対応して適用される。本発明の別の実施形態では、2つの放射層の間にブロック層が設けられている。放射装置は2つ以上の放射層を含んでおり、放射層の一部の間だけでなく全ての放射層の間に1つのブロック層を設けてもよい。このようなブロック層は励起子をブロックする機能を有し、このため、励起子が実質的に他の層に達しないように、たとえばその厚さは隣接する各層中に形成された励起子の平均自由行程よりも大きくされる。さらに、ブロック層は、その代わりにまたはそれと同時に、層の少なくとも一部においてもキャリア(電子またはホール)をブロックするよう機能する。層または層の一部によるキャリアのブロックによって、キャリア密度を所望のように設定することができる。励起子および/またはキャリアをブロックするためのブロック層は、たとえば、1つまたは複数のマトリクス材料を含んでいるかまたは当該材料から構成される。適したマトリクス材料は上述のマトリクス材料から選択可能である。また、電子ブロック層は、たとえば、ホール輸送層のための1つまたは複数の上述の材料を含んでいるか、または、当該材料および1つまたは複数のマトリクス材料を含んでいる。さらに、ホールブロック層は、たとえば、電子輸送層のための1つまたは複数の上記材料を含んでいるか、または、当該材料および1つまたは複数のマトリクス材料を含んでいる。
【0047】
別の実施形態では、本発明にかかる放射装置は白色光を発する。この白色光は、第1の放射層および少なくとも1つの別の放射層により放射される放射線の重畳により形成可能である。通常、このためには、少なくとも(たとえば赤色、緑色および青色のスペクトル領域でそれぞれ放射される)3つの放射層が用いられる。しかし、2つの放射層(たとえば青色および橙色を放射する層)のみを含む系も可能である。
【0048】
まとめると、本発明により、より高濃度の燐光発光性トラップ材料と、より低濃度の放射材料との組み合わせにより、互いに独立な2つの効果が実現されることが明らかである。第1に、この混合系により動作時最初にマトリクス材料の励起子のエネルギーがトラップ材料に移動されるか、または、トラップ材料において励起子が形成される。効率的かつ迅速なエネルギー移動により、放射材料において励起子が生じ、励起子は効率的に発光して消失する。第2に、トラップ材料は少数キャリアの格別な導電性を有する。両方の効果は全体として向上されたキャリアバランスおよびより低い動作電圧をもたらし、このことは量子効率の向上に加え、出力効率のさらなる向上に寄与する。本発明にかかる系によれば、特別に最適化されたマトリクス材料/放射材料系を採用する必要はなく、使用可能なマトリクス材料のバンド幅を拡げる別のパラメタを用いることができる。
【0049】
放射装置は他の機能の層を有していてもよい。このような層はたとえば、電子輸送層、電子注入層、ホール輸送層および/またはホール注入層である。このような層はたとえば放射装置の効率をさらに高める機能を有し、放射装置の1つまたは複数の適切な配置に設けられる。このような層はたとえば適切な電子輸送材料および/またはホール輸送材料および/またはホール注入性の改善に適した他の材料を含んでいる。
【0050】
電子輸送材料としては、たとえば、Liq (8−ヒドロキシキノリノラト−リチウム)、TPBi (2,2’,2’’−(1,3,5−ベンジントリイル)−トリス(1−フェニル−1−H−ベンズイミダゾール))、PBD (2−(4−ビフェニルイル)−5−(4−tert−ブチルフェニル))、BCP (2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン)、BPhen (4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン)、BAlq(ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−(フェニルフェノラト)アルミニウム)およびTAZ (3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5−tert−ブチルフェニル−1,2,4−トリアゾール)および上記材料の混合物が挙げられる。電子輸送層(同時に励起子ブロック層として機能しうる)について好適な材料は、TPBi、BCP、Bphen、CzSiおよびTAZならびにこれらの材料の混合物から構成される群から選択される。
【0051】
ホール輸送材料としては、たとえば、NPB (N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン、β−NPB (N,N’−ビス(ナフタレン−2−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン)、TPD (N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン)、スピロ−TPD (N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン)、スピロNPB (N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−スピロ)、DMFL−TPD (N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9−ジメチルフルオレン、DMFL−NPB (N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9−ジメチルフルオレン)、DPFL−TPD (N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9−ジフェニルフルオレン)、DPFL−NPB (N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9−ジフェニルフルオレン)、Sp−TAD (2,2’,7,7’−テトラキス(n,n−ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン)およびTAPC (ジ[4−(N,N−ジトリル−アミノ)−フェニル]シクロヘキサン)または上記材料の混合物が挙げられる。ホール輸送層(同じく同時に励起子ブロック層として機能しうる)について好適な材料は、NPB、TCTA、TPD、Sp−TADおよびTAPCならびにこれらの材料の混合物から選択される。
【0052】
ホール注入性の改善に適した材料としては、たとえば、CuPC (フタロシアニン、銅錯体)、TiOPC (チタン酸化物フタロシアニン)、m−MTDATA (4,4’,4’’−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン)、2T−NATA (4,4’,4’’−トリス(N−(2−ナフチル)−N−フェニル−アミノ)トリフェニルアミン)、1T−NATA (4,4’,4’’−トリス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン)、NATA (4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン)および上記材料の混合物が挙げられる。挙げられた材料は場合によりドーピング可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明にかかる放射装置の概略構成を示す。
【図2】本発明にかかるOLED構造の実施形態におけるエネルギーレベルを概略的に示す。
【図3】本発明にかかる放射層の輝度に応じた、向上された電流効率を示す。
【図4】電流密度5mA/cm2における、放射材料を含むトラップ材料と放射材料を含まないトラップ材料を含む放射層と、これらのトラップ材料を含まない放射層に関するエレクトロルミネセンススペクトルを示す。
【図5a】種々の電流密度における、放射材料を含むトラップ材料と放射材料を含まないトラップ材料を含む放射層と、これらのトラップ材料を含まない放射層に関するエレクトロルミネセンススペクトルを示す。
【図5b】種々の電流密度における、放射材料を含むトラップ材料と放射材料を含まないトラップ材料を含む放射層と、これらのトラップ材料を含まない放射層に関するエレクトロルミネセンススペクトルを示す。
【図5c】種々の電流密度における、放射材料を含むトラップ材料と放射材料を含まないトラップ材料を含む放射層と、これらのトラップ材料を含まない放射層に関するエレクトロルミネセンススペクトルを示す。
【図6】向上した電流−電圧特性を示す。
【図7a】時間および波長に応じた放射スペクトル量変化を示す。
【図7b】時間および波長に応じた放射スペクトル量変化を示す。
【図7c】時間および波長に応じた放射スペクトル量変化を示す。
【図7d】時間および波長に応じた放射スペクトル量変化を示す。
【0054】
以下、本発明について実施例および図面を参照して説明する。
【0055】
図1は、有機自己放射素子の概略的な層構造を示している。下方から上方に向かって、以下に説明する層が設けられる。最下層には基体1が設けられており、基体1はたとえば透明であり、たとえばガラスから構成されている。その上には下部電極層2が設けられており、下部電極層2はたとえば、インジウム錫酸化物(ITO)などの透明な導電性酸化物から構成されている。下部電極層2は陰極または陽極として機能することができる。下部電極層2の上にはホール注入層3が設けられており、さらにその上にはホール輸送層4が設けられている。ホール輸送層4の上には有機活性層である放射層5が設けられている。放射装置は1つ以上の放射層5を含んでよく、たとえば第1の放射層上に別の放射層が続いて設けられ、これらは場合により励起子ブロック層によって分離されている。1つまたは複数の放射層の上にはホールブロック層6が設けられており、その上には、電子輸送層7およびさらに電子注入層8が設けられており、さらに上部電極9が設けられている。上部電極9はたとえば金属電極またはたとえば上述した透明導電性酸化物から構成される別の透明電極から構成されている。
【0056】
上部電極と下部電極との間に電圧が印加されると、素子を通じて電流が流れ、有機活性層中で光子が発生する。光子は光の形態で素子の透明電極を介して放射される。
【0057】
本発明によれば、放射層5においては、1つまたは複数のトラップ材料と1つまたは複数の放射材料とがマトリクス材料中に(放射材料はより低い濃度で)含まれている。
【0058】
このような放射素子の製造は、たとえば以下のように行うことができる。まず、HFスパッタリングにより陰極としてのITO層をガラスプレート上にデポジションさせる。別の機能層をデポジションさせるためこの基体は真空チャンバ内に送られる。真空チャンバに多くの原料が導入される。チャンバ内では、たとえば、放射装置の単一の機能層を形成するため、(特にトラップ材料として用いるため、および、放射材料として使用するため)有機材料が蒸着される。さらに、1つまたは複数の原料が1つまたは複数の異なるマトリクス材料を導入するために用いられる。ホール注入層の形成のため、陽極が既に形成されているガラスプレート上に、マトリクス材料を含む1つの原料または1つのPドーパントを含む1つの原料がデポジションされる。同様に、ホール輸送層についてドーパントおよびマトリクス材料のデポジションが行われる。最後に、マトリクス材料のデポジションが行われ、本発明にかかる放射層が得られる。したがって、マトリクス材料、トラップ材料および少なくとも1つの放射材料は集約的にデポジションされる。他に含まれる層たとえばブロック層、電子輸送層および電子注入層のデポジションも同様に行われる。最終的に、反射電極としてのアルミニウム層が形成される。または、(電極層を除いて)種々の機能層をウェットプロセス(たとえばスピンコーティング)により形成することができる。これは形成される層がポリマーを含む場合に特に有用である。さらに、最初に形成される層はウェットプロセスにより形成可能であり、また、上記のように設けられた全ての層はドライプロセスにより形成可能である。
【0059】
以下では、赤色光を放射する、製造されたOLEDの一実施形態が示される。図2にはこの赤色放射OLEDの概略構造が示されている。
【0060】
この赤色放射OLEDは、NPBから構成されるホール輸送層と、TPBiから構成される電子輸送層とを有しており、各層はそれぞれ30nmの厚さで設けられている。ホール輸送層の上には、放射層からのより低効率のホール輸送層への励起子エネルギーの移動を防ぐための、TCTAから構成される励起子ブロック層が設けられている。陽極上に設けられたTPBiもまた励起子ブロック層として機能する。放射層自体はマトリクス材料mCPを含んで構成されている。mCP中には、赤色の燐光を発する放射材料でありADS076としても知られているIr(MDQ)2(acac)(図2にエネルギーレベルを点線で示す)と、明青色の燐光を発するトラップ材料FIrpic(図2にエネルギーレベルを破線で示す)とが含まれている。分子の三重項レベルに基づいて、マトリクス材料における励起子の形成後、励起子のエネルギーはトラップ材料および適切な濃度においてADS076に移動される。トラップ材料はたとえば20重量%の濃度で存在し、このことは、ドーパントへの良好な直接の励起子形成の他に、マトリクス材料への、励起子形成のための非常に良好なエネルギー移動をもたらす。さらに、励起子エネルギーは高濃度のためトラップ材料分子を介して良好に放射材料に拡散され、移動される。電子輸送層のLUMOに対するトラップ材料FIrpicのLUMOの状態によって、非常に良好な電子注入が生じ、トラップ材料の良好な導電性に起因して、むしろさらに非常に良好な電子輸送が生じる。これは電流効率の顕著な向上をもたらす。材料のHOMOは光電子分光法により求められる。バンドギャップすなわちHOMOとLUMOの間のエネルギー差は分光法によって算出され、その際には、放射光の波長が測定され、その後、生じる励起子およびバンドギャップが計算される。LUMOのエネルギーレベルは求められたHOMOおよびバンドギャップから計算される。
【0061】
図3は、マトリクス材料としてmCPと2重量%ADS076とのみを含む放射層の電流効率(中央の曲線(白四角))、または、マトリクス材料としてmCPと20重量%FIrpicとのみを含む放射層の電流効率(下方の曲線(黒四角))に対する、マトリクス材料としてmCPと20重量%FIrpicと2重量%ADS076とを含む放射層の向上された電流効率(上方の曲線(三角))を示す。
【0062】
下記の表では、本発明の装置の性能データが、赤色放射材料ADS706またはトラップ材料FIrpicのいずれか一方のみを含んでいる放射層と比較して示されている。
【0063】
【表1】
【0064】
図4に示される5mA/m2で測定されたエレクトロルミネセンススペクトルから、20重量%のトラップ材料FIrpicと2%の赤色放射材料ADS076との混合は、トラップ材料から赤色放射材料への非常に良好なエネルギー移動を生じさせていることがわかる。そのスペクトル(白四角)は、小さいが顕著なFIrpicのピークを除いて、2%ADS076を含むmCPのピュアな層のスペクトル(三角)のピークとほぼ同一である。FIrpic(20重量%)のみを含むmCP層は、これに対して青色のスペクトル領域で顕著な放射を示している(黒四角)。この観察結果は測定される電流密度に実質的に依存しない。図5a〜cは、0.5mA/cm2〜8.75mA/cm2の電流密度における放射スペクトル、すなわち、mCP中20重量%FIrpic(図5a)、mCP中2重量%Ir(MDQ)2(acac)(図5b)、mCP中20重量%FIrpic+2重量%Ir(MDQ)2(acac)(図5c)のそれぞれの放射スペクトルを示している。この測定値ならびに上記および下記の測定値は、Photo Research Inc.製PR650の分光計を使用して求めた。
【0065】
赤色光放射材料Ir(MDQ)2(acac)を含むmCPと、赤色光放射材料Ir(MDQ)2(acac)およびトラップ材料FIrpicを含むmCPとに関する放射光のCIE色度座標は、実質的に変化しない。
【0066】
【表2】
【0067】
図6から、FIrpic分子による注入性の向上と輸送性の向上とが生じていることがわかり、したがって、顕著かつ急峻な電流電圧曲線が生じており、より低い動作電圧ですむことがわかる(白四角)。これらは20重量%FIrpicを含むがADS076を含まないもの(黒四角)と非常に類似しており、このことは、混合層における電子輸送がトラップ材料の導入によって向上されることを示している。図3に示されている電流効率の向上の原因が見いだされ、すなわち、より高濃度のFIrpicにより多くの励起子がトラップ材料において形成され、その後、放射材料分子にエネルギーが移動されることが見いだされる。ADS076はより低濃度に存在し、FIrpicからADS076へのエネルギー移動は非常に効率的かつ迅速に進行するので、より低い濃度消光効果によって励起子エネルギーの所望の放射材料へのより良好な輸送が実現されることがわかる。このため、電流効率が増大する。
【0068】
図7a〜7dは、マトリクス材料としてのPMMA中におけるIr(ppy)およびADS076の減衰時間を示す。図7aは5重量%Ir(ppy)3の崩壊時間を示している。最大放射スペクトル波長は510nmで測定された。半減期は1.0msであることがわかる。図7bは、PMMA中1重量%ADS076を含むサンプルについての、595nmにおける最大放射スペクトルに関する半減期を示している。半減期は1.4μsである。図7cおよび7dは、PMMA中1重量%ADS076および5重量%Ir(ppy)3を含む放射層を示している。図7cは、トラップ材料の510nmにおける最大放射スペクトルに関する半減期を示している。半減期は0.4μsであることがわかり、これはマトリクス材料およびトラップ材料のみを含むサンプルについての半減期のわずか33%である。図7dは、ADS076の595nmにおける最大放射スペクトルについて示している。半減期は1.3μsであることがわかり、これは、PMMAおよびADS076のみを含むサンプルの半減期とほとんど変わらない。半減期の測定は、V.O’Connor, D.Phillips, "Time-Correlated single photon counting"(Academic Press, London 1987)に従った。
【0069】
本発明は、実施形態の記載によって限定されるものではない。本発明には、新たな特徴および特徴の組み合わせ特に特許請求の範囲に含まれる特徴の組み合わせが、これらの特徴またはこれらの組み合わせそれ自体が特許請求の範囲または実施形態に明確に記載されていなくとも、含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1 基体、 2 下部電極層、 3 ホール注入層、 4 ホール輸送層、 5 放射層、 6 ホールブロック層、 7 電子輸送層、 8 電子注入層、 9 上部電極層
【技術分野】
【0001】
本発明は、マトリクス材料と、放射材料と、燐光発光性トラップ材料とを含む放射層を有する放射装置に関する。
【0002】
本願は、ドイツ国特許出願DE10 2008 063 589.8およびDE10 2008 050 331.2の優先権を主張するものであり、これらの開示内容は本明細書中に参照により含まれる。
【0003】
高効率の燐光発光性放射材料は、高効率の有機発光ダイオード(OLED)の開発ならびに表示装置および照明装置に必要とされている。これに重要とされるのは、一方では放射材料分子単体の量子効率であり、他方では放射材料全体の量子効率、システムの電流効率ならびに出力効率(すなわち電力当たりの光出力)である。
【0004】
本発明の課題は、向上された効率を有する放射装置を提供することである。
【0005】
この課題は独立請求項にかかる装置によって解決される。他の実施形態は従属請求項の対象である。
【0006】
本発明にかかる放射装置は、基体と、第1の電極および第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に設けられた放射層から構成されている。この放射層は、マトリクス材料と、0.5〜5重量%の放射材料と、5〜30重量%のトラップ材料特に燐光発光性トラップ材料とを含んでいる。ここでトラップ材料の重量割合は放射材料の重量割合よりも大きい。さらに、燐光発光性トラップ材料の最大放射スペクトル波長は、放射材料の最大放射スペクトル波長よりも短波長側にある。放射装置の放射層の電流効率は、トラップ材料を含まない放射層の電流効率に比して高く、特に少なくとも10%高い。
【0007】
マトリクス材料および放射材料に加えて燐光発光性トラップ材料を含む本発明にかかる放射層によれば、放射層の電流効率をトラップ材料を含まない放射層に比して高めることができる。ドーパントの出力特性によって、特により良好なキャリアバランスならびにより低い動作電圧がもたらされる。量子効率の向上に加え、出力効率の向上がもたらされる。より良好なキャリアバランスは、マトリクス材料による多数キャリアの輸送、および、トラップ材料による少数キャリアの輸送(たとえば、ホールが輸送されたマトリクス材料におけるトラップ材料のLUMOを超える電子の輸送)に寄与する。トラップ材料の添加によって、低濃度における最高のフォトルミネセンス効率を有ししたがってたとえば良好な長期安定性を有し、高効率のOLEDについても用いることのできる放射材料が使用可能となる。このドーパントは、トラップ材料と混合されていない場合には、あまり良好に機能しない。というのも、マトリクス材料中の含有量が低い放射材料分子が放射中心として機能するからであり、すなわちキャリア移動性が低下するからである(なぜならキャリアは放射中心に「トラップ」されるので)。これにより駆動電圧が高くなってしまう。
【0008】
低濃度の放射材料を用いることによって、特に、高濃度で立体障害のない放射材料における分子の積み重なり(放射スペクトルの赤方変位を生じさせうる)を防ぐことができる。高濃度のトラップ材料を用いることにより、上記の影響の他に、このトラップ材料がキャリアに対する放射中心として機能せず、むしろキャリアのより良好な輸送を生じさせるという影響が得られる。
【0009】
したがって、本発明にかかる放射装置に含まれている放射層は、(本発明にかかるトラップ材料を含まない放射層に比べて)高められた電流効率を有しており、通常少なくとも10%高められている(特に10〜1100cd/m2の輝度において)。電流効率は、本発明にかかるトラップ材料を含まない対応する放射層の電流効率をしばしば事実上20%上回り、多くの場合事実上25%上回る(特に10〜1100cd/m2の輝度において)。これは、特に高輝度すなわち典型的には1000cd/m2より高い輝度における電流効率にあてはまる。
【0010】
以下、本発明にかかる放射装置の一構成について詳細に説明する。
【0011】
本発明にかかる「基体」には、たとえば、放射装置のために従来技術において一般に用いられているような基体が用いられる。たとえば、基体は、ガラス、石英、プラスチックフィルム、金属、金属フィルム、シリコンウェハまたは他の適した基体材料から構成されている。放射装置は、たとえば、いわゆる「下面放射装置」として実現され、基体は好ましくは透明な、たとえばガラス基体として実現される。
【0012】
本発明にかかる放射装置において、第1の電極は基体上にたとえばデポジションされる。
【0013】
「第1の電極」は、本明細書中で用いられているようにたとえば陽極を指す。陽極はたとえばホール注入材料から構成される。ホール注入材料として、従来技術で知られている任意のホール注入材料が用いられる。放射装置はたとえば「下面放射装置」として構成され、陽極は通常、透明材料から構成される。たとえば、陽極は透明導電性酸化物またはその層から構成される。この透明導電性酸化物(TCO)は金属酸化物、たとえば、亜鉛酸化物、錫酸化物、カドミウム酸化物、チタン酸化物、インジウム酸化物またはインジウム錫酸化物(ITO)、Zn2SnO4、CdSnO3、ZnSnO3、MgIn2O4、GaInO3、Zn2In2O5またはIn4Sn3O12あるいは他の透明導電性酸化物の混合物から構成されるが、これらのものに限られない。TCOには厳しい化学量論組成は適用されず、TCOはpドープまたはnドープされていてもよい。
【0014】
第1の電極が陽極である場合、第2の電極は陰極である。
【0015】
「陰極」はたとえば電子注入材料から構成される。陽極の材料として、従来技術における通常の陽極材料、特にアルミニウム、バリウム、インジウム、銀、金、マグネシウム、カルシウムまたはリチウムならびにこれらの物質の化合物または合金、および上記材料の混合物、化合物および/または合金が用いられる。その代わりにまたはそれに加えて、陽極材料として知られている1つまたは複数のTCOが含まれていてもよく、たとえば、陰極は全体がこの材料から構成されていてもよい。これにより陰極は透明なものとすることができる。
【0016】
放射装置において、たとえば、一方の電極は透明に、他方の電極は反射性にしてもよい。したがって放射装置は、「下面放射装置」または「上面放射装置」のいずれかとして実現可能である。あるいは、両方の電極を透明としてもよい。
【0017】
本発明にかかる放射装置の放射層は、1つまたは複数の放射材料と1つまたは複数の燐光発光性トラップ材料とを含むマトリクス材料から構成される機能層を指し、あるいは、マトリクス材料と、少なくとも1つの放射材料と、少なくとも1つのトラップ材料とから構成される機能層を指す。
【0018】
放射材料およびトラップ材料は、本例において、マトリクス材料中に含まれており、mCP (1,3−ビス(カルバゾール−9−イル)ベンゾール)、TCP (1,3,5−トリス(カルバゾール)−9−イル)ベンゾール)、TCTA (4,4’,4’’−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン)、TPBi (1,3,5−トリス(1−フェニル−1−H−ベンズイミダゾール−2−イル)ベンゾール)、CBP (4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル)、CDBP (4,4’−ビス(9−カルバゾリル)−2、2’−ジメチルビフェニル)、DMFL−CBP (4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)−9,9−ジメチルフルオレン)、FL−4CBP (4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)−9,9−ビス(9−フェニル−9H−カルバゾール)フルオレン)、DPFL−CBP (4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)−9,9−ジトリルフルオレン)、FL−2CBP (9,9−ビス(9−フェニル−9H−カルバゾール)フルオレン)、スピロ−CBP (2,2’,7,7’−テトラキス(カルバゾール−9−イル)−9,9’−スピロ−ビフルオレン)、ADN (9,10−ジ(ナフト−2−イル)アントラセン、TBADN (3−Tert−ブチル−9,10−ジ(ナフト−2−イル)アントラセン、DPVBi (4,4’−ビス(2,2−ジフェニル−エテン−1−イル)−4,4’−ジメチルフェニル),p−DMDPVBi (4,4’−ビス(2,2−ジフェニル−エテン−1−イル)−4,4’−ジメチルフェニル)、TDAF(Tert(9,9−ジアリルフルオレン))、BSBF (2−(9,9’−スピロビフルオレン−2−イル)−9,9’−スピロビフルオレン)、TSBF (2,7−ビス(9,9’−スピロビフルオレン−2−イル)−9,9’−スピロビフルオレン)、BDAF ビス(9,9−ジアリルフルオレン)、p−TDPVBi (4,4’−ビス(2,2−ジフェニルエテン−1−イル)−4,4’−ジ(tert−ブチル)フェニル)、TPB3 (1,3,5−トリ(ピレン−1−イル)ベンゾール)およびこれらの混合物からなる群から選択可能である。マトリクス材料として、TCTA、TPBi、CBP、CDBPおよびCPFが好ましい。マトリクス材料として混合系が可能であり、好ましくはTCTA、mCP、CBP、CDBPまたはCPFの1つまたは複数からなる混合物あるいはTPBiとの混合物が用いられる。
【0019】
放射材料は、たとえば青色、緑色または赤色スペクトル領域に最大放射スペクトル波長を有するものである。このような放射材料は複数の最大放射スペクトル波長を有しており、本発明における実際の最大放射スペクトル波長としては、最大の強度を有する最大放射スペクトル波長が適用される。
【0020】
異なる電流強度において異なる波長における2つ以上の最大強度の最大放射スペクトル波長が存在するので、本発明における実際のこの最大放射スペクトル波長のうちで、より低い波長において最大のものが最大放射スペクトル波長として適用される(特に放射材料の最大放射スペクトル波長とトラップ材料の最大放射スペクトル波長との差を決定するため)。
【0021】
青色の燐光を発する放射材料は、FIrpic (ビス(3,5−ジフルオロ−2−(2−ピリジル)フェニル−(2−カルボキシピリジル)−イリジウム(III))、FIr6 (ビス(2,4−ジフルオロフェニルピリジナート)−テトラキス(1−ピラゾリル)ボラート−イリジウム(III))およびこれらの混合物から構成される群から選択可能である。上記の放射材料の材料は青色のスペクトル領域に最大放射スペクトル波長を有する。
【0022】
緑色の燐光を発する放射材料は、Ir(ppy)3 (トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III))、Ir(ppy)2(acac) (ビス(2−フェニルピリジン)(アセチルアセトナート)イリジウム(II))、イリジウム(III)−トリス(2−(4−トリル)ピリジナート−N,C2)、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)、トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(III)、トリス(2−メチル,8−ヒロドキシキノラト)アルミニウム(III)、トリス(8−ヒドロキシキノラト)ガリウム(III)、トリス(3−メチル−1−フェニル−4−トリメチル−アセチル−5−ピラゾリン)テルビウム(III)およびこれらの混合物から構成される群から選択可能である。上記の放射材料の材料は緑色のスペクトル領域に最大放射スペクトル波長を有する。
【0023】
赤色の燐光を発する放射材料の材料は、Ir(mdq)2(acac) (ビス(2−メチルジベンゾ[f,h]−キノキサリン)(アセチルアセトナート)イリジウム(III))、Eu(dbm)3(phen) (トリス(ジベンゾイルメタン)フェナントロリンユーロピウム(III))、Ir(btp)2(acac) (ビス(2−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル−ピリジン)(アセチルアセトナート)イリジウム(III))、Ir(piq)2(acac) (ビス(1−フェニルイソキノリン)(アセチルアセトナート)イリジウム(III))、Ir(fliq)2(acac)−1 (ビス[1−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)−イソキノリン](アセチルアセトナート)イリジウム(III))、Ir(flq)2(acac)−2 (ビス[3−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)−イソキノリン](アセチルアセトナート)イリジウム(III))、Ru(dtbbpy)3*2(PF6) (トリス[4,4’−ジ−tert−ブチル(2,2’)−ビピリジン]ルテニウム(III)錯体)、Ir(2−phq)3 (トリス(2−フェニルキノリン)イリジウム(III))、Ir(2−phq)2(acac) (ビス(2−フェニルキノリン)(アセチルアセトナート)イリジウム(III))、Ir(piq)3 (トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム(III))、イリジウム(III)−ビス(2−(2’−ベンゾチエニル)ピリジナート−N,C3’)(アセチルアセトナート)、トリス(ジベンゾイルアセトナート)−モノ(フェナントロリン)ユーロピウム(III)、トリス(ジベンゾイルメタン)−モノ(フェナントロリン)ユーロピウム(III)、トリス(ジベンゾイルメタン)−モノ(5−アミノフェナントロリン)ユーロピウム(III)、トリス(ジナフトイルメタン)−モノ(フェナントロリン)ユーロピウム(III)、トリス(4−ブロモベンゾイルメタン)−モノ(フェナントロリン)ユーロピウム(III)、トリス(ジビフェノイルメタン)−モノ(フェナントロリン)ユーロピウム(III)、トリス(ジベンゾイルメタン)−モノ(4,7−ジメチルフェナントロリン)ユーロピウム(III)、トリス(ジベンゾイルメタン)−モノ(4,7−ジメチルフェナントロリン−ジスルホン酸)ユーロピウム(III)二ナトリウム、トリス[ジ(4−(2−(2−トキシエトキシ)エトキシ)ベンゾイルメタン)]−モノ(フェナントロリン)ユーロピウム(III)、トリス[ジ(4−(2−(2−トキシエトキシ)エトキシ)ベンゾイルメタン)]−モノ(5−アミノフェナントロリン)ユーロピウム(III)およびこれらの混合物から構成される群から選択可能である。上記の放射材料の材料は赤色のスペクトル領域に最大放射スペクトル波長を有する。
【0024】
さらに、放射材料として、蛍光発光性放射材料も含入することができる。
【0025】
青色の蛍光を発する放射材料として、BCzVBi (4,4’−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−1,1’−ビフェニル)、ペリレン、TBPe (2,5,8,11−テトラ−tert−ブチルペリレン)、BCzVB (9H−カルバゾール−3,3’−(1,4−フェニレン−ジ−2,1−エテンジイル)ビス[9−エチル(9C)])、DPAVBi 4,4’−ビス[4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]ビフェニル、DPAVB (4−(ジ−p−トリルアミノ)−4’−[(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]スチルベン)、BDAVBi (4,4’−ビス[4−(ジフェニルアミノ)スチリル]ビフェニル)、BNP3FL (N,N’−ビス(ナフタレン−2−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−トリス(9,9−ジメチルフルオレニレン)、9,10−ビス[(9−エチル−3−カルバゾイル)−ビニレニル]−アントラセン、4,4’−ビス(ジフェニルビニレニル)−ビフェニル、1,4−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−2−メトキシ−5−(2−チルヘキシルオキシ)ベンゾール、4,4’−ビス(ジフェニルビニレニル)−アントラセン、1,4−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−9,9−ジヘキシル−フルオレンおよびこれらの混合物から構成される群から選択可能な、1種の化合物が含入される。上記の放射材料は青色のスペクトル領域に最大放射スペクトル波長を有する。さらに、赤色または緑色の蛍光を発する放射材料も含入可能である。
【0026】
本発明にかかる放射装置の放射層は、放射材料に加えて、燐光発光性トラップ材料も含んでいる。
【0027】
燐光発光性トラップ材料については、マトリクス材料からのより効率的なエネルギー移動が可能な化合物であるかが重要である。動作時、まずマトリクス材料からトラップ材料にエネルギーが移動されて励起子が形成され、あるいは、トラップ材料において直接励起子が形成される。放射材料への効率的で迅速なエネルギー移動を確実にする、すなわち、効率的かつ迅速に放射材料に励起子を形成するという機能がトラップ材料に存在する。
【0028】
燐光発光性トラップ材料はさらにマトリクス材料中の少数キャリアの良好な輸送を可能とし、マトリクス材料中では反対の電荷を有する多数キャリアが輸送される(ホールを輸送するホスト材料においてトラップ材料もまた良好な電子輸送が可能となる)。
【0029】
トラップ材料が燐光発光性化合物であっても、トラップ材料が放射線を発することとはならない。むしろトラップ材料が励起子およびキャリアの良好な輸送を確実にすることが重要である。トラップ材料として使用される材料は放射材料として導入される材料と常に異なっている。
【0030】
燐光発光性トラップ材料の最大放射スペクトル波長が放射材料の最大放射スペクトル波長よりも短波長側にある場合には、トラップ材料として、上述の燐光発光性放射材料のためのものとほぼ同じ化合物が適している。
【0031】
一実施形態では、トラップ材料の割合は10〜20重量%である(本発明においては、重量%で示す全てのデータは放射層に含まれるマトリクス材料における重量%を示している)。少なくとも10重量%以上の重量割合では、マトリクス材料中に多くのトラップ材料が含まれているので、非常に効率的なキャリア輸送が可能となり、電流効率の明らかな向上が観察される。20重量%より上の重量割合では、2つの励起子の相互作用により効率低下が発生する状態となりうる。
【0032】
別の実施形態では、放射材料の重量割合は1〜4重量%である。5重量%以上の重量割合では、濃度消光が発生し、したがって効率の明らかな低下が推定される。
【0033】
他の実施形態では、トラップ材料の重量割合は、放射材料の重量割合の少なくとも4倍大きく、しばしば事実上8倍大きい。
【0034】
別の実施形態では、マトリクス材料が電子輸送性の良好な材料である場合には、トラップ材料のHOMOはホールの注入(すなわち、放射層に隣接する層の陰極側からトラップ材料へのホールの輸送)を容易化するものであり、あるいは、マトリクス材料がホール輸送性の良好な材料である場合には、トラップ材料のLUMOは電子の注入(放射層に隣接する層の陽極側からトラップ材料への)を容易化するものである。特に、トラップ材料のLUMOは、ホール輸送性の良好なマトリクス材料において放射層に隣接する層の陽極側のLUMOの最大±0.3電子ボルトにある。好ましくは、LUMOはこのエネルギーレベルの0〜0.3電子ボルト下にある。電子輸送性の良好なマトリクス材料において、トラップ材料のHOMOは好ましくは、放射層に隣接する層の陰極側のHOMOの最大±0.3電子ボルトにある。特に好ましくは、HOMOは、この層のHOMOの0〜0.3電子ボルト下にある。本明細書において、HOMOとは「最高被占軌道」を意味し、LUMOとは「最低空軌道」を示している。
【0035】
陽極側にはたとえば電子輸送層が放射層に隣接して設けられている。陰極側にはたとえばホール輸送層が放射層に隣接して設けられている。
【0036】
別の実施形態において、放射材料の最大放射スペクトル波長と、トラップ材料の最大放射スペクトル波長との差は、少なくとも15nm、通常は事実上少なくとも30nmである。通常、黄色、橙色または赤色のスペクトル領域で放射する放射材料については、青色または緑色のスペクトル領域に最大放射スペクトル波長を示すトラップ材料が用いられる。緑色を放射する放射材料については、青色のスペクトル領域に最大放射スペクトル波長を示すトラップ材料が用いられ、青色を放射する放射材料については、紫色または紫外のスペクトル領域に最大放射スペクトルを示すトラップ材料が用いられる。特に、青色を放射する放射材料において最大放射スペクトル波長の差は最大100nmである。赤色、橙色、黄色、緑色、青色および紫色のスペクトル領域は、本発明においては一般に以下のスペクトル領域を指す:赤色スペクトル領域 約640〜780nm:橙色スペクトル領域 約600〜640nm;黄色のスペクトル領域 約570〜600nm;緑色のスペクトル領域 約500〜570nm;青色のスペクトル領域 約430〜500nm、紫色のスペクトル領域 約380〜430nm。
【0037】
別の実施形態では、本発明にかかる放射装置の放射層からの最大放射スペクトルは、実質的に放射材料が示すものである。非常に良好なトラップ材料のキャリア輸送性および励起子輸送性によって、マトリクス材料またはトラップ材料に形成される励起子のエネルギーは実質的に放射材料に移動される。このため、放射層が発する光の最大放射スペクトルは、トラップ材料を含まない放射層から放射される光が形成するような、実質的にそれ自身の色彩効果を生じる。実質的に同一の色彩効果の下で、特にここでは、トラップ材料を含まない放射層の放射光のCIE色座標(xoE,yoE)は、トラップ材料を含む放射層の色座標(xmE,ymE)と基本的に異ならないことが理解される。一般的に、差Δx=xoE−xmEおよび差Δy=yoE−ymEがそれぞれ適用され、ここで、Δx<0.05および/またはΔy<0.05である。しばしば、事実上Δx<0.03および/またはΔy<0.03、また多くの場合Δx<0.01および/またはΔy<0.01である。これらの差の絶対値の和ΣΔ=|Δx|+|Δy|は、一般的にΣΔ<0.08、しばしばΣΔ<0.05、多くの場合ΣΔ<0.01である。
【0038】
多くの場合、正規化された放射スペクトルによって、トラップ材料からの励起子のエネルギーが実質的に放射材料に移動されることが明らかとなる。通常、トラップ材料および放射材料を含む放射層について測定されたスペクトルにおける、トラップ材料の正規化された最大放射スペクトルの強度は、放射材料の最大放射スペクトルの強度の最大10%である。たいてい、トラップ材料の最大放射スペクトルの放射強度は、放射材料の最大放射スペクトルの放射強度の事実上最大5%、しばしば事実上最大1%である。測定された強度比は、通常、電流密度、特に0.5〜10mA/cm2の電流密度には依存しない。
【0039】
通常、さらに、トラップ材料および放射材料を含む放射層におけるトラップ材料の最大放射スペクトルの強度は、トラップ材料のみを(前述のいわゆる「混合」系と等しい電流濃度で)含みかつ放射材料を含まない放射層の最大放射スペクトルの強度に対して顕著に低減される。通常、放射材料およびトラップ材料を含む放射層におけるトラップ材料の最大放射スペクトルの正規化された放射強度(たとえば5mA/cm2の電流密度において測定されたもの)は、マトリクス材料およびトラップ材料のみから構成される層におけるトラップ材料の放射強度の正規化された放射強度の最大10%、たいていは最大5%、しばしば事実上最大1%である。上述したように、このことは実質的にトラップ材料の良好な励起子エネルギー輸送性に帰せられる。
【0040】
良好な励起子エネルギー輸送性は時間に応じた波長依存性の放射スペクトルに基づいて測定することができる。ここで、トラップ材料および放射材料を含む放射層を、トラップ材料のみおよび放射材料のみをそれぞれ同一濃度で含む同じ層と比較すれば、放射材料の最大放射スペクトルの放射強度の半減期が実質的に同一に維持される一方で、「混合系」におけるトラップ材料の最大放射スペクトルの放射強度の半減期が少なくとも半分まで低減されることが観察される。しばしば、半減期が少なくとも半分に低減されることが観察される。よりしばしば、半減期は、トラップ材料のみが含まれているマトリクス材料に対して測定された半減期の、事実上40%、多くの場合半減期の33%である。この効果はとりわけ、放射材料における励起子の寿命が基本的にトラップ材料における励起子の寿命よりも長いことを意味している。この寿命をトラップ材料または放射材料のみをそれぞれ同じ濃度で含んでいるマトリクス材料における寿命と比較すれば、非「混合系」では逆の状態が存在しうること、そして、トラップ材料の励起子の寿命の方が放射材料における平衡系での励起子の寿命よりも長い場合があることが観察される。
【0041】
上述の効果は基本的に放射層の外部量子効率を顕著に向上させる。トラップ材料および放射材料を含む放射層の外部量子効率を、放射材料のみを(同じ濃度で)含みかつトラップ材料を含まない放射層の外部量子効率と比較すれば、量子効率はたいてい少なくとも20%まで高められることが観察される。しばしば事実上30%の向上が観察される。本発明にかかる放射層によれば、外部量子効率ηextは12%より大きく、しばしば事実上14%より大きい。量子効率は事実上18%より大きく、たとえば、20%に達しうる。
【0042】
別の実施形態では、放射層に含まれる放射材料は、特に低い放射材料濃度において高いフォトルミネセンス量子収率を有する。基本的に、このフォトルミネセンス量子収率ηPLはトラップ材料のフォトルミネセンス量子収率よりも低い。さらにまた、放射材料における励起子は比較的短い寿命で存在する。基本的に、寿命は最大20μsである。
【0043】
別の実施形態では、放射材料は、トラップ材料のLUMOよりも高いLUMOを有する。これにより、励起子エネルギーは実質的にトラップ材料によりトラップされまたはトラップ材料に励起子が形成され、そして、トラップ材料または放射材料は実質的に意図された機能を果たすことができる。マトリクス材料に形成された励起子エネルギーのトラップ材料への移動が実質的に発生し、放射材料への移動は実質的に発生しない。一方でこのことは放射線を発するのに特に効率的に機能する。本発明は、しかし、これに限定されるものではなく、多くの場合、放射材料のLUMOはトラップ材料のLUMOよりも低い。さらに、トラップ材料のLUMOおよび場合により放射材料のLUMOは、マトリクス材料のLUMOよりも低い。これにより、励起子のトラップ材料における形成が強められ、それゆえマトリクス材料に形成された励起子のトラップ材料へのエネルギー移動は生じない。
【0044】
別の実施形態では、放射装置の放射層は10〜40nmの厚さを有する。より厚さの薄い放射層はプロセスが困難である;さらに、層の厚さが10nm以上では放射中心の数が最適化され、これにより励起子の寿命が向上される。個々のケースで、5〜10nmの層厚さも技術的に有用である。複数の放射層を含む、白色光を発する放射装置の製造のためには、単一の放射層の厚さは好ましくはそれぞれ10〜15nmである。
【0045】
通常、放射材料およびトラップ材料はマトリクス材料の中で統計的に分散されている。しかし、放射層中に濃度勾配を設けてもよく、たとえば、トラップ材料がより高い濃度で存在する領域と、放射材料が比例したより高い濃度で存在する領域とが入れ替わるようにしてもよい。放射層にトラップ材料のみが含まれている領域と、燐光発光性放射材料のみが含まれている領域とが事実上存在するようにしてもよい。これにより、励起子が形成される領域、または、放射が生じる領域を調整することができる。
【0046】
別の実施形態では、たとえば、放射装置は少なくとも1つの別の放射層、しばしば全体として少なくとも2つまたは3つの放射層を有している。ここで、1つまたは複数の別の放射層(第1の放射層のような)は放射材料の他にトラップ材料を含んでよい。この別の放射層については第1の放射層に関してなされた上記実施形態が対応して適用される。本発明の別の実施形態では、2つの放射層の間にブロック層が設けられている。放射装置は2つ以上の放射層を含んでおり、放射層の一部の間だけでなく全ての放射層の間に1つのブロック層を設けてもよい。このようなブロック層は励起子をブロックする機能を有し、このため、励起子が実質的に他の層に達しないように、たとえばその厚さは隣接する各層中に形成された励起子の平均自由行程よりも大きくされる。さらに、ブロック層は、その代わりにまたはそれと同時に、層の少なくとも一部においてもキャリア(電子またはホール)をブロックするよう機能する。層または層の一部によるキャリアのブロックによって、キャリア密度を所望のように設定することができる。励起子および/またはキャリアをブロックするためのブロック層は、たとえば、1つまたは複数のマトリクス材料を含んでいるかまたは当該材料から構成される。適したマトリクス材料は上述のマトリクス材料から選択可能である。また、電子ブロック層は、たとえば、ホール輸送層のための1つまたは複数の上述の材料を含んでいるか、または、当該材料および1つまたは複数のマトリクス材料を含んでいる。さらに、ホールブロック層は、たとえば、電子輸送層のための1つまたは複数の上記材料を含んでいるか、または、当該材料および1つまたは複数のマトリクス材料を含んでいる。
【0047】
別の実施形態では、本発明にかかる放射装置は白色光を発する。この白色光は、第1の放射層および少なくとも1つの別の放射層により放射される放射線の重畳により形成可能である。通常、このためには、少なくとも(たとえば赤色、緑色および青色のスペクトル領域でそれぞれ放射される)3つの放射層が用いられる。しかし、2つの放射層(たとえば青色および橙色を放射する層)のみを含む系も可能である。
【0048】
まとめると、本発明により、より高濃度の燐光発光性トラップ材料と、より低濃度の放射材料との組み合わせにより、互いに独立な2つの効果が実現されることが明らかである。第1に、この混合系により動作時最初にマトリクス材料の励起子のエネルギーがトラップ材料に移動されるか、または、トラップ材料において励起子が形成される。効率的かつ迅速なエネルギー移動により、放射材料において励起子が生じ、励起子は効率的に発光して消失する。第2に、トラップ材料は少数キャリアの格別な導電性を有する。両方の効果は全体として向上されたキャリアバランスおよびより低い動作電圧をもたらし、このことは量子効率の向上に加え、出力効率のさらなる向上に寄与する。本発明にかかる系によれば、特別に最適化されたマトリクス材料/放射材料系を採用する必要はなく、使用可能なマトリクス材料のバンド幅を拡げる別のパラメタを用いることができる。
【0049】
放射装置は他の機能の層を有していてもよい。このような層はたとえば、電子輸送層、電子注入層、ホール輸送層および/またはホール注入層である。このような層はたとえば放射装置の効率をさらに高める機能を有し、放射装置の1つまたは複数の適切な配置に設けられる。このような層はたとえば適切な電子輸送材料および/またはホール輸送材料および/またはホール注入性の改善に適した他の材料を含んでいる。
【0050】
電子輸送材料としては、たとえば、Liq (8−ヒドロキシキノリノラト−リチウム)、TPBi (2,2’,2’’−(1,3,5−ベンジントリイル)−トリス(1−フェニル−1−H−ベンズイミダゾール))、PBD (2−(4−ビフェニルイル)−5−(4−tert−ブチルフェニル))、BCP (2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン)、BPhen (4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン)、BAlq(ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−(フェニルフェノラト)アルミニウム)およびTAZ (3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5−tert−ブチルフェニル−1,2,4−トリアゾール)および上記材料の混合物が挙げられる。電子輸送層(同時に励起子ブロック層として機能しうる)について好適な材料は、TPBi、BCP、Bphen、CzSiおよびTAZならびにこれらの材料の混合物から構成される群から選択される。
【0051】
ホール輸送材料としては、たとえば、NPB (N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン、β−NPB (N,N’−ビス(ナフタレン−2−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン)、TPD (N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン)、スピロ−TPD (N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン)、スピロNPB (N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−スピロ)、DMFL−TPD (N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9−ジメチルフルオレン、DMFL−NPB (N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9−ジメチルフルオレン)、DPFL−TPD (N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9−ジフェニルフルオレン)、DPFL−NPB (N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9−ジフェニルフルオレン)、Sp−TAD (2,2’,7,7’−テトラキス(n,n−ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン)およびTAPC (ジ[4−(N,N−ジトリル−アミノ)−フェニル]シクロヘキサン)または上記材料の混合物が挙げられる。ホール輸送層(同じく同時に励起子ブロック層として機能しうる)について好適な材料は、NPB、TCTA、TPD、Sp−TADおよびTAPCならびにこれらの材料の混合物から選択される。
【0052】
ホール注入性の改善に適した材料としては、たとえば、CuPC (フタロシアニン、銅錯体)、TiOPC (チタン酸化物フタロシアニン)、m−MTDATA (4,4’,4’’−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン)、2T−NATA (4,4’,4’’−トリス(N−(2−ナフチル)−N−フェニル−アミノ)トリフェニルアミン)、1T−NATA (4,4’,4’’−トリス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン)、NATA (4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン)および上記材料の混合物が挙げられる。挙げられた材料は場合によりドーピング可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明にかかる放射装置の概略構成を示す。
【図2】本発明にかかるOLED構造の実施形態におけるエネルギーレベルを概略的に示す。
【図3】本発明にかかる放射層の輝度に応じた、向上された電流効率を示す。
【図4】電流密度5mA/cm2における、放射材料を含むトラップ材料と放射材料を含まないトラップ材料を含む放射層と、これらのトラップ材料を含まない放射層に関するエレクトロルミネセンススペクトルを示す。
【図5a】種々の電流密度における、放射材料を含むトラップ材料と放射材料を含まないトラップ材料を含む放射層と、これらのトラップ材料を含まない放射層に関するエレクトロルミネセンススペクトルを示す。
【図5b】種々の電流密度における、放射材料を含むトラップ材料と放射材料を含まないトラップ材料を含む放射層と、これらのトラップ材料を含まない放射層に関するエレクトロルミネセンススペクトルを示す。
【図5c】種々の電流密度における、放射材料を含むトラップ材料と放射材料を含まないトラップ材料を含む放射層と、これらのトラップ材料を含まない放射層に関するエレクトロルミネセンススペクトルを示す。
【図6】向上した電流−電圧特性を示す。
【図7a】時間および波長に応じた放射スペクトル量変化を示す。
【図7b】時間および波長に応じた放射スペクトル量変化を示す。
【図7c】時間および波長に応じた放射スペクトル量変化を示す。
【図7d】時間および波長に応じた放射スペクトル量変化を示す。
【0054】
以下、本発明について実施例および図面を参照して説明する。
【0055】
図1は、有機自己放射素子の概略的な層構造を示している。下方から上方に向かって、以下に説明する層が設けられる。最下層には基体1が設けられており、基体1はたとえば透明であり、たとえばガラスから構成されている。その上には下部電極層2が設けられており、下部電極層2はたとえば、インジウム錫酸化物(ITO)などの透明な導電性酸化物から構成されている。下部電極層2は陰極または陽極として機能することができる。下部電極層2の上にはホール注入層3が設けられており、さらにその上にはホール輸送層4が設けられている。ホール輸送層4の上には有機活性層である放射層5が設けられている。放射装置は1つ以上の放射層5を含んでよく、たとえば第1の放射層上に別の放射層が続いて設けられ、これらは場合により励起子ブロック層によって分離されている。1つまたは複数の放射層の上にはホールブロック層6が設けられており、その上には、電子輸送層7およびさらに電子注入層8が設けられており、さらに上部電極9が設けられている。上部電極9はたとえば金属電極またはたとえば上述した透明導電性酸化物から構成される別の透明電極から構成されている。
【0056】
上部電極と下部電極との間に電圧が印加されると、素子を通じて電流が流れ、有機活性層中で光子が発生する。光子は光の形態で素子の透明電極を介して放射される。
【0057】
本発明によれば、放射層5においては、1つまたは複数のトラップ材料と1つまたは複数の放射材料とがマトリクス材料中に(放射材料はより低い濃度で)含まれている。
【0058】
このような放射素子の製造は、たとえば以下のように行うことができる。まず、HFスパッタリングにより陰極としてのITO層をガラスプレート上にデポジションさせる。別の機能層をデポジションさせるためこの基体は真空チャンバ内に送られる。真空チャンバに多くの原料が導入される。チャンバ内では、たとえば、放射装置の単一の機能層を形成するため、(特にトラップ材料として用いるため、および、放射材料として使用するため)有機材料が蒸着される。さらに、1つまたは複数の原料が1つまたは複数の異なるマトリクス材料を導入するために用いられる。ホール注入層の形成のため、陽極が既に形成されているガラスプレート上に、マトリクス材料を含む1つの原料または1つのPドーパントを含む1つの原料がデポジションされる。同様に、ホール輸送層についてドーパントおよびマトリクス材料のデポジションが行われる。最後に、マトリクス材料のデポジションが行われ、本発明にかかる放射層が得られる。したがって、マトリクス材料、トラップ材料および少なくとも1つの放射材料は集約的にデポジションされる。他に含まれる層たとえばブロック層、電子輸送層および電子注入層のデポジションも同様に行われる。最終的に、反射電極としてのアルミニウム層が形成される。または、(電極層を除いて)種々の機能層をウェットプロセス(たとえばスピンコーティング)により形成することができる。これは形成される層がポリマーを含む場合に特に有用である。さらに、最初に形成される層はウェットプロセスにより形成可能であり、また、上記のように設けられた全ての層はドライプロセスにより形成可能である。
【0059】
以下では、赤色光を放射する、製造されたOLEDの一実施形態が示される。図2にはこの赤色放射OLEDの概略構造が示されている。
【0060】
この赤色放射OLEDは、NPBから構成されるホール輸送層と、TPBiから構成される電子輸送層とを有しており、各層はそれぞれ30nmの厚さで設けられている。ホール輸送層の上には、放射層からのより低効率のホール輸送層への励起子エネルギーの移動を防ぐための、TCTAから構成される励起子ブロック層が設けられている。陽極上に設けられたTPBiもまた励起子ブロック層として機能する。放射層自体はマトリクス材料mCPを含んで構成されている。mCP中には、赤色の燐光を発する放射材料でありADS076としても知られているIr(MDQ)2(acac)(図2にエネルギーレベルを点線で示す)と、明青色の燐光を発するトラップ材料FIrpic(図2にエネルギーレベルを破線で示す)とが含まれている。分子の三重項レベルに基づいて、マトリクス材料における励起子の形成後、励起子のエネルギーはトラップ材料および適切な濃度においてADS076に移動される。トラップ材料はたとえば20重量%の濃度で存在し、このことは、ドーパントへの良好な直接の励起子形成の他に、マトリクス材料への、励起子形成のための非常に良好なエネルギー移動をもたらす。さらに、励起子エネルギーは高濃度のためトラップ材料分子を介して良好に放射材料に拡散され、移動される。電子輸送層のLUMOに対するトラップ材料FIrpicのLUMOの状態によって、非常に良好な電子注入が生じ、トラップ材料の良好な導電性に起因して、むしろさらに非常に良好な電子輸送が生じる。これは電流効率の顕著な向上をもたらす。材料のHOMOは光電子分光法により求められる。バンドギャップすなわちHOMOとLUMOの間のエネルギー差は分光法によって算出され、その際には、放射光の波長が測定され、その後、生じる励起子およびバンドギャップが計算される。LUMOのエネルギーレベルは求められたHOMOおよびバンドギャップから計算される。
【0061】
図3は、マトリクス材料としてmCPと2重量%ADS076とのみを含む放射層の電流効率(中央の曲線(白四角))、または、マトリクス材料としてmCPと20重量%FIrpicとのみを含む放射層の電流効率(下方の曲線(黒四角))に対する、マトリクス材料としてmCPと20重量%FIrpicと2重量%ADS076とを含む放射層の向上された電流効率(上方の曲線(三角))を示す。
【0062】
下記の表では、本発明の装置の性能データが、赤色放射材料ADS706またはトラップ材料FIrpicのいずれか一方のみを含んでいる放射層と比較して示されている。
【0063】
【表1】
【0064】
図4に示される5mA/m2で測定されたエレクトロルミネセンススペクトルから、20重量%のトラップ材料FIrpicと2%の赤色放射材料ADS076との混合は、トラップ材料から赤色放射材料への非常に良好なエネルギー移動を生じさせていることがわかる。そのスペクトル(白四角)は、小さいが顕著なFIrpicのピークを除いて、2%ADS076を含むmCPのピュアな層のスペクトル(三角)のピークとほぼ同一である。FIrpic(20重量%)のみを含むmCP層は、これに対して青色のスペクトル領域で顕著な放射を示している(黒四角)。この観察結果は測定される電流密度に実質的に依存しない。図5a〜cは、0.5mA/cm2〜8.75mA/cm2の電流密度における放射スペクトル、すなわち、mCP中20重量%FIrpic(図5a)、mCP中2重量%Ir(MDQ)2(acac)(図5b)、mCP中20重量%FIrpic+2重量%Ir(MDQ)2(acac)(図5c)のそれぞれの放射スペクトルを示している。この測定値ならびに上記および下記の測定値は、Photo Research Inc.製PR650の分光計を使用して求めた。
【0065】
赤色光放射材料Ir(MDQ)2(acac)を含むmCPと、赤色光放射材料Ir(MDQ)2(acac)およびトラップ材料FIrpicを含むmCPとに関する放射光のCIE色度座標は、実質的に変化しない。
【0066】
【表2】
【0067】
図6から、FIrpic分子による注入性の向上と輸送性の向上とが生じていることがわかり、したがって、顕著かつ急峻な電流電圧曲線が生じており、より低い動作電圧ですむことがわかる(白四角)。これらは20重量%FIrpicを含むがADS076を含まないもの(黒四角)と非常に類似しており、このことは、混合層における電子輸送がトラップ材料の導入によって向上されることを示している。図3に示されている電流効率の向上の原因が見いだされ、すなわち、より高濃度のFIrpicにより多くの励起子がトラップ材料において形成され、その後、放射材料分子にエネルギーが移動されることが見いだされる。ADS076はより低濃度に存在し、FIrpicからADS076へのエネルギー移動は非常に効率的かつ迅速に進行するので、より低い濃度消光効果によって励起子エネルギーの所望の放射材料へのより良好な輸送が実現されることがわかる。このため、電流効率が増大する。
【0068】
図7a〜7dは、マトリクス材料としてのPMMA中におけるIr(ppy)およびADS076の減衰時間を示す。図7aは5重量%Ir(ppy)3の崩壊時間を示している。最大放射スペクトル波長は510nmで測定された。半減期は1.0msであることがわかる。図7bは、PMMA中1重量%ADS076を含むサンプルについての、595nmにおける最大放射スペクトルに関する半減期を示している。半減期は1.4μsである。図7cおよび7dは、PMMA中1重量%ADS076および5重量%Ir(ppy)3を含む放射層を示している。図7cは、トラップ材料の510nmにおける最大放射スペクトルに関する半減期を示している。半減期は0.4μsであることがわかり、これはマトリクス材料およびトラップ材料のみを含むサンプルについての半減期のわずか33%である。図7dは、ADS076の595nmにおける最大放射スペクトルについて示している。半減期は1.3μsであることがわかり、これは、PMMAおよびADS076のみを含むサンプルの半減期とほとんど変わらない。半減期の測定は、V.O’Connor, D.Phillips, "Time-Correlated single photon counting"(Academic Press, London 1987)に従った。
【0069】
本発明は、実施形態の記載によって限定されるものではない。本発明には、新たな特徴および特徴の組み合わせ特に特許請求の範囲に含まれる特徴の組み合わせが、これらの特徴またはこれらの組み合わせそれ自体が特許請求の範囲または実施形態に明確に記載されていなくとも、含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1 基体、 2 下部電極層、 3 ホール注入層、 4 ホール輸送層、 5 放射層、 6 ホールブロック層、 7 電子輸送層、 8 電子注入層、 9 上部電極層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体(1)と、
第1の電極(2)および第2の電極(9)と、
前記第1の電極(2)と前記第2の電極(9)との間に設けられた少なくとも1つの放射層(5)と、
から構成されている放射装置であって、
前記放射層(5)は、マトリクス材料と、放射材料0.5〜5重量%と、燐光発光性トラップ材料5〜30重量%とを含んでおり、
前記トラップ材料の重量割合は前記放射材料の重量割合よりも大きいものであり、
前記放射層(5)の電流効率は、トラップ材料を含まない放射層の電流効率に対して少なくとも10%高いものであり、
前記トラップ材料は前記放射材料よりも短い波長の最大放射スペクトル波長を有している、
ことを特徴とする放射装置。
【請求項2】
前記放射材料は燐光発光性放射材料である、
請求項1記載の放射装置。
【請求項3】
前記電極(2、9)と前記放射層(5)との間には電子輸送層(7)が設けられており、
前記トラップ材料のLUMOは前記電子輸送層(7)のLUMOよりも低い、
請求項1または2記載の放射装置。
【請求項4】
最大放射スペクトル波長の差は少なくとも15nmである、
請求項1乃至3のいずれか1項記載の放射装置。
【請求項5】
前記放射層(5)により放射される放射線は、実質的に前記放射材料によって生成される、
請求項1乃至4のいずれか1項記載の放射装置。
【請求項6】
前記放射層(5)における前記トラップ材料の最大放射スペクトルの正規化された放射強度は、前記放射材料の最大放射スペクトルの放射強度の最大10%である、
請求項1乃至5のいずれか1項記載の放射装置。
【請求項7】
前記放射層(5)における前記トラップ材料の最大放射スペクトルの正規化された放射強度は、前記マトリクス材料と前記トラップ材料とから成る層における前記トラップ材料の最大放射スペクトルの正規化された放射強度の最大10%である、
請求項1乃至6のいずれか1項記載の放射装置。
【請求項8】
前記放射層(5)中の、前記放射材料における励起子の寿命は、前記トラップ材料における励起子の寿命よりも長い、
請求項1乃至7のいずれか1項記載の放射装置。
【請求項9】
前記放射層(5)の外部量子効率ηextは、トラップ材料を含まない放射層の外部量子効率に対して少なくとも20%高い、
請求項1乃至8のいずれか1項記載の放射装置。
【請求項10】
前記放射材料の燐光発光性量子収率は、トラップ材料の燐光発光性量子収率よりも大きい、
請求項1乃至9のいずれか1項記載の放射装置。
【請求項11】
前記放射材料のLUMOは、前記マトリクス材料のLUMOおよび/または前記トラップ材料のLUMOよりも高い、
請求項1乃至10のいずれか1項記載の放射装置。
【請求項12】
前記放射層(5)の層の厚さは、10〜40nmである、
請求項1乃至11のいずれか1項記載の放射装置。
【請求項13】
少なくとも1つの他の放射層を備えている、
請求項1乃至12のいずれか1項記載の放射装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つの他の放射層は、放射材料およびトラップ材料を含んでいる、
請求項1乃至13のいずれか1項記載の放射装置。
【請求項15】
前記第1の放射層(5)および少なくとも1つの他の放射層によって放射される放射線の重畳により、白色光が放射される、
請求項1乃至14のいずれか1項記載の放射装置。
【請求項1】
基体(1)と、
第1の電極(2)および第2の電極(9)と、
前記第1の電極(2)と前記第2の電極(9)との間に設けられた少なくとも1つの放射層(5)と、
から構成されている放射装置であって、
前記放射層(5)は、マトリクス材料と、放射材料0.5〜5重量%と、燐光発光性トラップ材料5〜30重量%とを含んでおり、
前記トラップ材料の重量割合は前記放射材料の重量割合よりも大きいものであり、
前記放射層(5)の電流効率は、トラップ材料を含まない放射層の電流効率に対して少なくとも10%高いものであり、
前記トラップ材料は前記放射材料よりも短い波長の最大放射スペクトル波長を有している、
ことを特徴とする放射装置。
【請求項2】
前記放射材料は燐光発光性放射材料である、
請求項1記載の放射装置。
【請求項3】
前記電極(2、9)と前記放射層(5)との間には電子輸送層(7)が設けられており、
前記トラップ材料のLUMOは前記電子輸送層(7)のLUMOよりも低い、
請求項1または2記載の放射装置。
【請求項4】
最大放射スペクトル波長の差は少なくとも15nmである、
請求項1乃至3のいずれか1項記載の放射装置。
【請求項5】
前記放射層(5)により放射される放射線は、実質的に前記放射材料によって生成される、
請求項1乃至4のいずれか1項記載の放射装置。
【請求項6】
前記放射層(5)における前記トラップ材料の最大放射スペクトルの正規化された放射強度は、前記放射材料の最大放射スペクトルの放射強度の最大10%である、
請求項1乃至5のいずれか1項記載の放射装置。
【請求項7】
前記放射層(5)における前記トラップ材料の最大放射スペクトルの正規化された放射強度は、前記マトリクス材料と前記トラップ材料とから成る層における前記トラップ材料の最大放射スペクトルの正規化された放射強度の最大10%である、
請求項1乃至6のいずれか1項記載の放射装置。
【請求項8】
前記放射層(5)中の、前記放射材料における励起子の寿命は、前記トラップ材料における励起子の寿命よりも長い、
請求項1乃至7のいずれか1項記載の放射装置。
【請求項9】
前記放射層(5)の外部量子効率ηextは、トラップ材料を含まない放射層の外部量子効率に対して少なくとも20%高い、
請求項1乃至8のいずれか1項記載の放射装置。
【請求項10】
前記放射材料の燐光発光性量子収率は、トラップ材料の燐光発光性量子収率よりも大きい、
請求項1乃至9のいずれか1項記載の放射装置。
【請求項11】
前記放射材料のLUMOは、前記マトリクス材料のLUMOおよび/または前記トラップ材料のLUMOよりも高い、
請求項1乃至10のいずれか1項記載の放射装置。
【請求項12】
前記放射層(5)の層の厚さは、10〜40nmである、
請求項1乃至11のいずれか1項記載の放射装置。
【請求項13】
少なくとも1つの他の放射層を備えている、
請求項1乃至12のいずれか1項記載の放射装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つの他の放射層は、放射材料およびトラップ材料を含んでいる、
請求項1乃至13のいずれか1項記載の放射装置。
【請求項15】
前記第1の放射層(5)および少なくとも1つの他の放射層によって放射される放射線の重畳により、白色光が放射される、
請求項1乃至14のいずれか1項記載の放射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図7d】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図7d】
【公表番号】特表2012−505539(P2012−505539A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530593(P2011−530593)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【国際出願番号】PCT/IB2009/008047
【国際公開番号】WO2010/046788
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(599133716)オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (586)
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D−93055 Regensburg, Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【国際出願番号】PCT/IB2009/008047
【国際公開番号】WO2010/046788
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(599133716)オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (586)
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D−93055 Regensburg, Germany
【Fターム(参考)】
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