説明

放熱グリス塗布方法及びその装置

【課題】パワーモジュールの治具による把持や反転作業を削減してパワーモジュールの組み付け工程を効率化することができる放熱グリス塗布方法及びその装置を提供する。
【解決手段】放熱板3が装着されたパワーモジュール2をインバータケース12に組付ける際に、前記放熱板3に放熱グリス4を塗布する放熱グリス塗布方法であって、前記パワーモジュール2の放熱板3が下側となるインバータケース12への組付姿勢のままで、下方からマスク9を介して放熱グリス4を前記放熱板3の下面に塗布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーモジュールの放熱板に放熱グリスを塗布する放熱グリス塗布方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
HV(Hybrid Vihicle)車用パワーモジュールは、IGBT素子やダイオード素子等の半導体素子が駆動時に発生する熱を、インバータケースの冷却器部へ放熱するため、下面に放熱板を具備している。
パワーモジュールをインバータケースへ組付ける際には、放熱板−冷却器間にできる空間(隙間)による放熱性悪化を防ぐため、放熱板下面に熱伝導性の高い放熱用グリスを塗布し、冷却器との空間を埋めることにより熱伝導性を確保している。
【0003】
従来のHV車用パワーモジュールの組み付け工程では、パワーモジュールの放熱板に放熱グリスを塗布する際、放熱グリスは上方から放熱板に塗布するものであったため、放熱グリス塗布装置にセットする前に、パワーモジュールを治具で把持し、上下反転することにより、放熱板下面を上側に向けて、塗布作業を実施している。
【0004】
また、公知となっている放熱グリスを塗布する塗布方法及び装置としては、特許文献1に記載されているように、シリコングリスタンクに入れてあるシリコングリスを回転する転写ローラに付着させ、塗布液含浸ベルトに転写するものがある。この塗布液含浸ベルトは、起動ローラが回転起動することにより移送するものであり、塗布膜の調整は、転写ローラ上の過剰シリコングリスを除去する含浸アジャスタと、転写ローラと塗布液含浸ベルトの押し付け量を調整するアジャスタにより行われるというものである。
【特許文献1】特開平6−254458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述したように、特許文献1に記載されている塗布方法及び装置においては、転写ローラにより塗布液含浸ベルトにグリスを転写し、塗布液含浸ベルトを塗布面に押し付けることによりグリスを付着させている。そのため、塗布液含浸ベルトに転写したグリスのうち、どの程度が塗布面に付着しどの程度が塗布液含浸ベルト上に残留するかがわからず塗布面に付着するグリスの量をコントロールできない。
すなわち、塗布液含浸ベルト上のグリスについては転写ローラ上の含浸アジャスタにより調整できるが、塗布液含浸ベルトに転写されたグリスのうち、どの程度が塗布面に付着し、どの程度が塗布液含浸ベルト上に残留するかが成り行きになってしまい、必要塗布面積範囲内で均一な塗布厚さのグリス厚を形成することが非常に困難である。
【0006】
具体的には、前記塗布液含浸ベルトは、海綿状の塗布体を有しており、そこにグリスが含浸保持されるが、そのグリスのうちどの程度の割合が塗布面に塗布されるかが非常に制御しづらい。
そして、予想される課題としては、1)塗布体の使用の経過とともに、海綿状の塗布体に残留しているグリス量が変化し、その結果、塗布面に付着するグリスの量が経時的に変化する。2)グリスの粘度、環境の温度・湿度といった制御困難なパラメータにより、塗布体から製品の塗布面へ転写されるグリス量が変化する、等がある。
つまり、特許文献1に記載されている塗布方法及び装置は、スクリーン印刷方式のようなスキージ及びスクリーンを用いて塗布面にグリスを塗布する塗布方法及び装置に比べて塗布面に塗布したグリスについて均一な膜厚を得ることは実質的に困難である。
【0007】
また、前述した従来のHV車用パワーモジュールの組み付け工程では、放熱グリスを上方から放熱板に塗布する必要があるため、パワーモジュールのハンドリング治具の着脱、グリス塗布前後でのパワーモジュールの反転といった作業が発生していた。
【0008】
本発明においては、パワーモジュールの治具による把持や反転作業を削減してパワーモジュールの組み付け工程を効率化することができる放熱グリス塗布方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
即ち、請求項1においては、
放熱板が装着されたパワーモジュールをケースに組付ける際に、前記放熱板に放熱グリスを塗布する放熱グリス塗布方法であって、
前記パワーモジュールの前記放熱板が下側となる前記ケースへの組付姿勢のままで、下方からマスクを介して前記放熱グリスを前記放熱板の下面に塗布するものである。
【0011】
請求項2においては、
放熱板が装着されたパワーモジュールをケースに組付ける際に、前記放熱板に放熱グリスを塗布する放熱グリス塗布方法であって、
前記パワーモジュールを、該パワーモジュールの前記放熱板が下側となるように所定位置に載置し、開口部が形成されたマスクを前記放熱板の下面に配設する工程と、
前記マスクの開口部を介してローラにより前記放熱グリスを前記放熱板に塗布する工程と、
前記マスクの下面にスキージを当接させて余分な放熱グリスを掻き取る工程と、を含むものである。
【0012】
請求項3においては、
放熱板が装着されたパワーモジュールをケースに組付ける際に、前記放熱板に放熱グリスを塗布する放熱グリス塗布装置であって、
前記放熱グリスを貯留するグリス容器と、
前記グリス容器に回転自在に軸支され、その下部が前記放熱グリスに浸漬されるローラと、
前記グリス容器の一端もしくは両端に配置されるスキージと、
により構成される塗布機構部と、
前記塗布機構部を所定方向に移動させる駆動手段と、
前記放熱板の下面の所定範囲を覆うマスクと、を備え、
前記塗布機構部の前記ローラおよび前記スキージを、前記マスクの下面に当接させた状態で、前記塗布機構部を所定方向に移動させることにより、前記放熱グリスを前記放熱板の下方から前記マスクを介して前記放熱板の下面に塗布するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
請求項1においては、放熱グリス塗布後の後工程であるインバータケースへの組付時の組付姿勢(放熱板が下側)のまま、グリス塗布を実施するので、パワーモジュールの治具の着脱や反転といった無駄な作業を廃止できるため、パワーモジュールの組み付け工程を効率化することができる。
【0015】
請求項2においては、放熱グリス塗布後の後工程であるインバータケースへの組付時の組付姿勢(放熱板が下側)のまま、グリス塗布を実施するので、パワーモジュールの治具の着脱や反転といった無駄な作業を廃止できるため、パワーモジュールの組み付け工程を効率化することができる。
【0016】
請求項3においては、放熱グリス塗布後の後工程であるインバータケースへの組付時の組付姿勢(放熱板が下側)のまま、グリス塗布を実施するので、パワーモジュールの治具の着脱や反転といった無駄な作業を廃止できるため、パワーモジュールの組み付け工程を効率化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明に係る放熱グリス塗布装置の全体構成を示す模式図、図2はインバータケース内にパワーモジュールを載置した状態を示す模式図、図3は塗布機構部が放熱グリスを塗布する動作を示す模式図、図4は塗布機構部の別実施例を示す模式図であり、(a)は進行方向が順方向である場合を示す図、(b)は進行方向が逆方向である場合を示す図である。
なお、本実施形態においてはパワーモジュールの組み付け工程として、組み上がった状態のパワーモジュールを、放熱グリス塗布装置により放熱板に放熱グリスを塗布後、インバータケース内に載置するところまでの組み付け工程について説明する。
【0018】
次に、本発明に係る放熱グリス塗布装置について図1乃至図4を用いて説明する。
放熱グリス塗布装置1は、被塗布物であるパワーモジュール2に装着されている放熱板3に放熱グリス4を塗布する装置であり、グリス転写ローラ6、スキージ7及びグリス容器8からなる塗布機構部5と、マスク9と、から主に構成されている。
【0019】
パワーモジュール2は、図1に示すように、前記放熱グリス塗布装置1により放熱グリス4が塗布される被塗布物であり、IGBT素子等の半導体素子が実装された制御基板2aと、該制御基板2aを上部に具備するパワーモジュール部2bとから構成されている。さらに、パワーモジュール部2bの底部には、パワーモジュール2が駆動した際に発生する熱を放熱する複数の放熱板3(本実施形態においては3枚)が装着されている。つまり、本実施形態においてはパワーモジュール部2bの下部に装着された放熱板3の所定範囲に前記放熱グリス塗布装置1により放熱グリス4が塗布される。
このように放熱板3に放熱グリス4が塗布される際には、パワーモジュール2側部の所定位置に突出している突出部2cを放熱グリス塗布装置1の上部にある、パワーモジュール2の支持治具であるパワーモジュール受け部11によって受け止めて、パワーモジュール部2bを所定位置に固定支持して前記放熱グリス塗布装置1上に載置する。
【0020】
また、パワーモジュール2は、図2に示すように、放熱グリス4を介してインバータケース12内に組付けられるものであり、放熱グリス4によりパワーモジュール2の放熱板3とインバータケース12とを隙間ができないように密着させて、パワーモジュール2の半導体素子からの発熱をインバータケース12下部に配置されている図示しない冷却器へ効率良く伝達するようにしている。
【0021】
図2に示すように、パワーモジュール2を、放熱グリス4を介してインバータケース12に組付ける場合、まず放熱板3に放熱グリス4を膜厚が均一となるべく塗布した上でインバータケース12にパワーモジュール2を組付けるが、この組付けの際にパワーモジュール2と放熱グリス4との間に隙間が生じてしまうと放熱性が悪くなってしまうため、隙間が生じないようにしてパワーモジュール2とインバータケース12とを放熱グリス4を介して密着する必要がある。
【0022】
塗布機構部5は、図1又は図3に示すように、グリス転写ローラ6、スキージ7及びグリス容器8とから一体的に構成されている。
【0023】
グリス転写ローラ6は、円筒形状であり、その長手方向の長さは後述するマスク9のマスク開口部9aの長手方向の長さ部分よりも長くなるべく形成されている。また、グリス転写ローラ6の回転軸6aの両端が、後述するグリス容器8の両側部に回転自在に軸支されている。また、グリス転写ローラ6の表面の材質は、ゴムあるいは親油性の樹脂が用いられる。また、グリス転写ローラ6の下部は、後述するグリス容器8に貯留されている放熱グリス4に浸漬した状態となっている。
こうして、所定の粘度・比重を有した放熱グリス4をグリス転写ローラ6表面に付着させ、グリス転写ローラ6を上部に位置するマスク9面に当接して回転させることで、グリス転写ローラ6表面に付着した放熱グリス4をマスク9面及びマスク開口部9a内に転写(塗布)する。
なお、グリス転写ローラ6の回転軸6aは、グリス容器8の両側部に回動自在に軸支されているが特に限定するものではなく、モータ等の駆動源により回転軸6aを回転させる構成としてもかまわない。
【0024】
スキージ7は、図3に示すように薄い板状部材であり、グリス転写ローラ6の回転軸6aと平行になるようにグリス容器8の一端に取り付けられている。また、スキージ7は、マスク9面に対して所定角度を有するように傾斜させて取り付けられており、スキージ7下端部はグリス容器8内に配置されている。スキージ7は、該スキージ7の上端部をマスク9面に当接して所定方向に移動させることで余分に付着した放熱グリス4を掻き取るとともにマスク開口部9aに放熱グリス4を押し込むことが可能である。
スキージ7は、該スキージ7を上下方向に昇降させる図示しないスキージ駆動部を有しており、該スキージ駆動部によりスキージ7を上下動させてスキージ7の上端部がマスク9面に当接自在となるように構成されている。
【0025】
また、スキージ7は、図4に示すように、グリス容器8の両端に2枚配置することも可能である。スキージ7をグリス容器8の両端に2枚配置した場合、スキージ7を一枚配置した場合と同様に、マスク9面に当接しながら進行方向に移動して余分な放熱グリス4を掻き取り、かつ、マスク開口部9a内に放熱グリス4を充填するように押し込む働きをするが、スキージ7を2枚使用する場合、塗布機構部5は、所定範囲を往復することにより、グリス塗布を実施する。
具体的には、塗布機構部5が往復することによりグリス塗布を行う場合、図4に示すようにスキージ7はグリス転写ローラ6の両側(図4において左右)に設置されているため、進行方向に応じて機能するスキージ7を切り替える。
例えば、図4に示すように、進行方向が順方向(図4(a))の場合は、左側のスキージ7を上昇させて、右側のスキージ7を下降させた状態で放熱グリス4の塗布を行う。一方、進行方向が逆方向(図4(b))の場合は、右側のスキージ7を上昇させて、左側のスキージ7を下降させた状態で放熱グリス4の塗布を行う。
このようにグリス転写ローラ6(塗布機構部5)を往復して放熱グリス4の転写を行い、左右のスキージ7で放熱グリス4を掻き取るようにして塗布を行うことによりマスク開口部9a内の塗り残しがなくなる。つまり、スキージ7を2枚配置して塗布を行う場合は、スキージ7を1枚使用して塗布を行うよりもさらにスキージ7を効果的に機能させることが可能となる。
【0026】
グリス容器8は、放熱グリス4を貯留する容器である。グリス容器8内には、常に一定量の放熱グリス4が溜められており、グリス液面高さを図示しないセンサ(例えばレーザ式変位センサ等)により監視している。放熱グリス4が塗布されることによりグリス容器8内の貯留グリス量が減り、グリス液面が予め決めた高さより低下すると、グリス供給機(図示せず)によりグリス液面が一定値になるまで放熱グリス4がグリス容器8内へ自動供給される構成となっている。
また、グリス容器8には所定の進行方向に移動させることができる駆動手段が設けられており、グリス容器8本体を移動させることで前記塗布機構部5を動かして、マスク9に当接しているグリス転写ローラ6を回転させて、かつ、マスク9下面にスキージ7を当接させることにより余分な放熱グリス4を掻き取りとることが可能となる。
なお、前記センサとしては、例えばレーザ式変位センサ等挙げられるが、グリス液面を検出可能であるセンサであればよく、特に限定するものではない。
【0027】
マスク9は、ステンレス製のメタルマスク(メタルマスク厚50〜1000μm)であり、放熱板3の放熱グリス4の塗布したい範囲に対応して、長方形状の複数のマスク開口部9aが形成されている(図1に示すマスク9は短手方向部分を示している。マスク9の長手方向部分は図示せず)。
また、マスク開口部9a内は所定の大きさに開口しているメッシュ(図示せず)が張られており、スキージ7とマスク開口部9a内に形成されたメッシュとで塗布物である放熱グリス4を擦り付けて転写を行う所謂スクリーン印刷を行う構成となっている。
なお、マスク開口部9aにより形成される放熱グリス4塗布領域は、組付けられるパワーモジュール2の放熱板3の形状等に応じて設定される。
【0028】
次に、放熱グリス塗布方法について図1及び図3を用いて説明する。
上記構成において、パワーモジュール2を、該パワーモジュール2の放熱板3が下側になった状態で放熱グリス塗布装置1上のパワーモジュール受け部11に載置し、パワーモジュール2の放熱板3の下面に塗布用のマスク9を密着させる。マスク9の下部には、グリス転写ローラ6、スキージ7、及びグリス容器8が一体となった塗布機構部5が配置されており、グリス容器8に連結された駆動手段を駆動させることにより塗布機構部5のグリス転写ローラ6およびスキージ7を、マスク9の下面に当接させた状態で、塗布機構部5を所定の進行方向へと移動させる。
グリス容器8の両側に回転自在に軸支されているグリス転写ローラ6は、マスク9下面に当接しながら塗布機構部5の移動に従って回転し、グリス容器8に溜まった放熱グリス4をグリス転写ローラ6によってマスク開口部9aを介して放熱板3に転写(付着)させながら、移動する。
その際に、グリス転写ローラ6により、マスク9に転写した放熱グリス4は、マスク開口部9a内だけでなく、マスク9全体に塗布必要量以上に付着される。この余分な放熱グリス4を、マスク9下面に当接したスキージ7が掻き取り、かつ、スキージ7によりマスク開口部9aに放熱グリス4が充填されるように押し込むことによりメタルマスク厚に略相当する厚さの放熱グリス4が放熱板3下面に塗布され、必要塗布範囲に均一な膜厚のグリス塗布膜を形成することができる。
【0029】
さらに、上記の如く余分な放熱グリス4をスキージ7により掻き取った場合、この掻き取られた放熱グリス4が、所定角度を有するように傾斜させたスキージ7によりスキージ7上面を流れ落ちるとともに、スキージ7の下端部がグリス容器8内に配置されていることにより貯留されている放熱グリス4内へと戻され、放熱グリス4がリサイクルされる。これにより放熱グリス4を無駄なく使用することが可能となる。
【0030】
上記のように、放熱板3に均一な膜厚のグリス塗布膜が形成された後、パワーモジュール2は放熱グリス塗布装置1から取り外される。そうして、パワーモジュール2は、図2に示すように、放熱板3が下側となる組付姿勢で、インバータケース12内に組み付けられる。
【0031】
このように、放熱板3が装着されたパワーモジュール2をインバータケース12に組付ける際に、前記放熱板3に放熱グリス4を塗布する放熱グリス塗布方法であって、前記パワーモジュール2の放熱板3が下側となるインバータケース12への組付姿勢のままで、下方からマスク9を介して放熱グリス4を前記放熱板3の下面に塗布する放熱グリス塗布方法を適用することにより、放熱グリス4塗布後の後工程であるインバータケース12への組付時の組付姿勢(放熱板3が下側)のまま、グリス塗布を実施するので、パワーモジュール2の治具の着脱や反転といった無駄な作業を廃止できるため、パワーモジュール2の組み付け工程を効率化することができる。
【0032】
また、放熱板3が装着されたパワーモジュール2をインバータケース12に組付ける際に、前記放熱板3に放熱グリス4を塗布する放熱グリス塗布方法であって、前記パワーモジュール2を、該パワーモジュール2の放熱板3が下側となるように所定位置に載置し、マスク開口部9aが形成されたマスク9を前記放熱板3の下面に配設する工程と、前記マスク開口部9aを介してグリス転写ローラ6により放熱グリス4を放熱板3に塗布する工程と、前記マスク9の下面にスキージ7を当接させて余分な放熱グリス4を掻き取る工程と、を含む放熱グリス塗布方法を適用することにより、放熱グリス4塗布後の後工程であるインバータケース12への組付時の組付姿勢(放熱板3が下側)のまま、グリス塗布を実施するので、パワーモジュール2の治具の着脱や反転といった無駄な作業を廃止できるため、パワーモジュール2の組み付け工程を効率化することができる。
【0033】
また、放熱板3が装着されたパワーモジュール2をインバータケース12に組付ける際に、前記放熱板3に放熱グリス4を塗布する放熱グリス塗布装置1であって、前記放熱グリス4を貯留するグリス容器8と、前記グリス容器8に回転自在に軸支され、その下部が前記放熱グリス4に浸漬された状態で前記前記放熱板3に放熱グリス4を塗布するグリス転写ローラ6と、前記グリス容器8の一端もしくは両端に配置されるスキージ7と、により構成される塗布機構部5と、前記塗布機構部5を所定方向に移動させる駆動手段と、前記放熱板3の下面の所定範囲を覆うマスク9と、を備え、前記塗布機構部5のグリス転写ローラ6およびスキージ7を、前記マスク9の下面に当接させた状態で、前記塗布機構部5を所定方向に移動させることにより、前記放熱グリス4を放熱板3の下方から前記マスク9を介して前記放熱板3の下面に塗布するように放熱グリス塗布装置1を構成したことにより、放熱グリス4塗布後の後工程であるインバータケース12への組付時の組付姿勢(放熱板3が下側)のまま、グリス塗布を実施するので、パワーモジュール2の治具の着脱や反転といった無駄な作業を廃止できるため、パワーモジュール2の組み付け工程を効率化することができる。
【0034】
つまり、本発明における放熱グリス塗布方法及びその装置によりHV車用パワーモジュール2の組立工程において、放熱グリス4塗布量(塗布膜厚)の安定化及び組立工程を簡略化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る放熱グリス塗布装置の全体構成を示す模式図。
【図2】インバータケース内にパワーモジュールを載置した状態を示す模式図。
【図3】塗布機構部が放熱グリスを塗布する動作を示す模式図。
【図4】塗布機構部の別実施例を示す模式図であり、(a)は進行方向が順方向である場合を示す図、(b)は進行方向が逆方向である場合を示す図。
【符号の説明】
【0036】
1 放熱グリス塗布装置
2 パワーモジュール
3 放熱板
4 放熱グリス
5 塗布機構部
6 グリス転写ローラ
7 スキージ
8 グリス容器
9 マスク
9a マスク開口部
12 インバータケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱板が装着されたパワーモジュールをケースに組付ける際に、前記放熱板に放熱グリスを塗布する放熱グリス塗布方法であって、
前記パワーモジュールの前記放熱板が下側となる前記ケースへの組付姿勢のままで、下方からマスクを介して前記放熱グリスを前記放熱板の下面に塗布することを特徴とする放熱グリス塗布方法。
【請求項2】
放熱板が装着されたパワーモジュールをケースに組付ける際に、前記放熱板に放熱グリスを塗布する放熱グリス塗布方法であって、
前記パワーモジュールを、該パワーモジュールの前記放熱板が下側となるように所定位置に載置し、開口部が形成されたマスクを前記放熱板の下面に配設する工程と、
前記マスクの開口部を介してローラにより前記放熱グリスを前記放熱板に塗布する工程と、
前記マスクの下面にスキージを当接させて余分な放熱グリスを掻き取る工程と、を含むことを特徴とする放熱グリス塗布方法。
【請求項3】
放熱板が装着されたパワーモジュールをケースに組付ける際に、前記放熱板に放熱グリスを塗布する放熱グリス塗布装置であって、
前記放熱グリスを貯留するグリス容器と、
前記グリス容器に回転自在に軸支され、その下部が前記放熱グリスに浸漬されるローラと、
前記グリス容器の一端もしくは両端に配置されるスキージと、
により構成される塗布機構部と、
前記塗布機構部を所定方向に移動させる駆動手段と、
前記放熱板の下面の所定範囲を覆うマスクと、を備え、
前記塗布機構部の前記ローラおよび前記スキージを、前記マスクの下面に当接させた状態で、前記塗布機構部を所定方向に移動させることにより、前記放熱グリスを前記放熱板の下方から前記マスクを介して前記放熱板の下面に塗布することを特徴とする放熱グリス塗布装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−178633(P2009−178633A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18090(P2008−18090)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】