説明

放線菌類グリセロールアシル誘導体抗原を含む医薬組成物、それらの抽出プロセス、及び結核に対するそれらの使用

本発明は抗原としての放線菌類グリセロールモノミコール酸塩誘導体の治療的使用、それらの抽出プロセス、及び結核の治療又は予防におけるそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放線菌類グリセロールアシル誘導体抗原の治療的使用、それらの抽出プロセス及び結核の治療又は予防におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
毎年、結核は200万人の死亡原因として見積もられる。この疾患の原因となる病原体は細菌、ヒト結核菌(Mycobacterium tuberculosis)であり、世界で3人に1人が感染している。それは感染した人のくしゃみ又は咳により空気感染する。上記細菌は上記疾患をその後も発症しない感染した人により不活性化状態で保有されうる。しかしながら、年齢又は免疫系の減退の如きいくつかの条件下では、上記細菌は活性化し、そして活性結核の発病を引き起こしうる。
【0003】
マイコバクテリウムのエンベロープがマイコバクテリウム属の細菌の毒性の重要な部分の原因であるように見える。実際に、マイコバクテリウム乾燥重量の40%までが脂質により構成されている。これらの脂質はホストの免疫応答の調節に関連することが示されている。いくつかの脂質はCD1タンパク質との関係において非構成的αβT細胞を刺激する抗原である。マイコバクテリウム脂質抗原の大多数はCD1bイソ型により提示される。これはミコール酸、グルコースモノミコール酸塩、スルフォ糖脂質及びフォスファチジル−ミオ−イノシトールマンノシド(PIM)の如き構造的に非常に異なる分子の大きなパネルについての場合である。
【0004】
最も豊富なマイコバクテリウム脂質のいくつかに特異的なCD1拘束性T細胞の存在は、CD1タンパク質がヒト結核菌に対するホストの応答において重要であることを強く示唆している。
【0005】
現在、結核と闘う2の方法がある:抗生物質治療及びワクチン。
【0006】
結核予防のために使用されるワクチンはウシ結核菌種の生きた弱毒細菌から成る。それは20世紀初頭にそれを最初に考案した2人の科学者の名をとってBCG、Calmette及びGuerinのバチルス属(Bacillus of Calmette and Guerin)と名付けられている。現在ワクチンのために使用されているBCGの異なる株がBehr M. A. et al. Science(1999) 284:1520−1523中に顕著に示されている。
【0007】
免疫減退患者にその使用を不可能にする生ワクチンであるという欠点に加えて、結核に対するその予防は問題が多い。したがって、BCGは成人における最も一般的な疾患型である肺結核に対して予防できないうえに、成人におけるBCGの予防効率はさまざまな研究によると0%〜80%に及んでいる。
【0008】
さらに、ヒト結核菌の抗生物質抵抗性株が35カ国で発見されている。
【0009】
それゆえ、結核を治療する及び/又は予防するより有効な方法を提供することが本発明の主題である。
【0010】
したがって、さらなる新規免疫原性化合物を提供することが高く所望される。
【0011】
本発明は特にin vitroでCD1拘束性Tリンパ球を刺激することが示されている新規抗原を提供する。前記抗原はグリセロールモノミコール酸塩誘導体であり、そしてマイコバクテリウムの如き放線菌類から単離されている。
【0012】
ミコール酸誘導体の特徴づけは大いに報告されている(Laval et al., Anal Chem 2001, 73(18):4537−4544; Villeneuve M. et al., Biochim Biophys Acta 2005, 1715(2):71−80; Villeneuve M. et al., Biochim Biophys Acta 2007, 1768(7):1717−1726; Watanabe M. et al., Microbiology 2001, 147(Pt7):1825−1837)。
【0013】
これらの化合物は既知であるが、それらの治療的使用は開示されても示唆されてもおらず、これは本発明の1つの目的である。さらに、対応するアシル化型及びその還元型並びに上記化合物の特異的(R)エナンチオマーは本発明のさらなる目的にしたがって、新規である。
【発明の概要】
【0014】
より詳細には、本発明は以下の一般式(I)の化合物:
【0015】
【化1】

【0016】
及びそのエナンチオマー、ジアステレオアイソマー、それらの混合物、並びにそれらの治療的使用に関し、ここで:
Rは20〜90炭素原子を含むα−アルキル化、β−ヒドロキシル化カルボン酸の残基である;
R’は水素原子又はアシル基(−C(=O)−アルキル)を示し、ここでアルキルは1〜10の炭素原子を含む;そして
*は不斉炭素原子を示す。
【0017】
グリセロール骨格の不斉炭素(*)は好ましくは(R)配置を示す。
【0018】
好ましくは、Rは式:
【0019】
【化2】

【0020】
であり、ここで(I)は
【0021】
【化3】

【0022】
をとおしてRに結合されている;そして
Tはメチル基又は1又は複数の二重結合(単数又は複数)、−(C=O)−基、シクロプロピル及び/又はエポキシをさらに含み、そして/又はOH、Oメチルから選択される1以上の基でさらに置換される有枝鎖又は直鎖C10−C60炭化水素鎖又はその誘導体を示す;
**は不斉炭素を示す;
同一である又は異なるn1、n2は独立に整数を示す。
【0023】
好ましくは、n1は5〜40;より好ましくは5〜30の整数である;
好ましくは、n2は5〜30;より好ましくは10〜20の整数である;
好ましくは、両方の**C不斉炭素は(R)配置を示す。
【0024】
好ましくは、Tはメチル基又は1〜5個の二重結合(単数又は複数)を任意に含み、そして/又は式:
【0025】
【化4】

【0026】
の基を示す有枝鎖又は直鎖C10−C60、好ましくはC15−C50炭化水素鎖から選択され、ここで
Xは:
【0027】
【化5】

【0028】
から選択され
Yは:
【0029】
【化6】

【0030】
から選択され、そして同一である又は異なるn3、n4は5〜30の整数を独立に示す;好ましくはn3は12〜16の整数を示し、そしてn4は11、13、15、17、18及び19から選択される、
ここで、Yが
【0031】
【化7】

【0032】
であるとき、Tは
【0033】
【化8】

【0034】
である。
【0035】
ミコール酸誘導体はLaval et al., Anal Chem 2001, 73(18):4537−4544; Villeneuve M. et al., Biochim Biophys Acta 2005, 1715(2):71−80; Villeneuve M. et al., Biochim Biophys Acta 2007, 1768(7):1717−1726; Watanabe M. et al., Microbiology 2001,147(Pt7):1825−1837により特徴づけられている。
【0036】
好ましい態様にしたがって、本発明は上記に定義される式(I)の化合物それ自体に関し、ここでR’は
−C(=O)−アルキル基を示す。
【0037】
上記化合物は一般的に使用されるいずれかの既知のアシル化方法の適用又は適合により、詳細には無水酢酸を反応させることにより、上記に示されている対応する式(I)の化合物から得られうる。
【0038】
他の好ましい態様にしたがって、本発明は上記に定義される式(I)の化合物それ自体に関し、ここでTは:
【0039】
【化9】

【0040】
を示し、ここでYは
【0041】
【化10】

【0042】
である。
【0043】
上記対応する化合物は本明細書中で「還元化合物」と呼ばれる。
【0044】
上記化合物は一般的に使用されるいずれかの既知の還元方法の適用又は適合により上記に示されている対応する式(I)の化合物から得られうる。好ましくは、この反応はNABH4処理の手段により行われうる。
【0045】
他の好ましい態様にしたがって、本発明は上記に定義される式(I)の化合物それ自体に関し、ここでC*は(R)配置を示す。
【0046】
GroMMは本明細書中でグリセロールモノミコール酸塩をいう。
【0047】
さらなる態様にしたがって、本発明は上記に定義されるような式(I)の化合物を含む医薬組成物に関する。
【0048】
本発明はそれが式(I)の化合物から選択される化合物の混合物を含む点で特徴づけられる医薬組成物にさらに関する。
【0049】
本発明は上記に定義される少なくとも1つの化合物を含む医薬組成物又は医薬として許容される賦形剤を伴う上記に定義される組成物にもまた関する。
【0050】
前記医薬組成物は例えば、ワクチンである。
【0051】
さらに、本発明は1又は複数の式(I)の化合物(単数又は複数)とマイコバクテリウムリン脂質、マイコバクテリウムリポグリカン、マイコバクテリウム糖脂質及びリン脂質から成る群から選択される化合物(単数又は複数)の如き、1又は複数のマイコバクテリウム脂質の組み合わせ、及び同様のものを含む医薬組成物にもまた関する。
【0052】
上記脂質は本分野において既知であり、そしてNigou et al.(2003) Biochimie, 85, 153−166中に開示されている。
【0053】
上記組み合わせは以下の結果から明らかなように相乗的活性を示すことが予想外に発見されている。
【0054】
医薬として許容される担体は詳細にはリポソームを含む。
【0055】
前記医薬組成物は結核又は皮膚病の如き、放線菌類、詳細にはマイコバクテリウムによる疾患を治療する及び/又は予防するために有用である。
【0056】
上記組成物はワクチン補助剤をもまた含みうる。ヒト個体又は動物における使用のためのワクチン補助剤は当業者に周知であり、上記塩のリストは例えば「A compendium of vaccine adjuvants and excipients」 2nd edition, Vogel et al.中に見られうる。特定のワクチン補助剤は特に例えば、アルミニウム塩又はM59を含む。
【0057】
本発明は詳細には、それが経口又は注射経路による投与のために意図される形態で存在する点で特徴づけられる、上記に定義される医薬組成物に関する。
【0058】
本発明はより詳細には、それがBCG又はマイコバクテリウムタンパク質又は放線菌類脂質の如き、結核の治療又は予防に有用な1又は複数の他の製品を含む点で特徴づけられる、上記に定義される医薬組成物に関する。
【0059】
表現「放線菌類グリセロールアシル誘導体」はコミバクテリウム、マイコバクテリウム、及びノカルジア(CMN)属の細菌中に、及び好ましくはウシ結核菌BCG、ヒト結核菌、スメグマ菌、マイコバクテリウムガストリ(Mycobacterium gastri)、マイコバクテリウムマリナム(Mycobacterium marinum)、マイコバクテリウムフォルツイタム(Mycobacterium fortuitum)、マイコバクテリウムゼノピ(Mycobacterium xenopi)、マイコバクテリウムカンサシイ(Mycobacterium kansasii)、コミバクテリウムグルタミカム(Comybacterium glutamicum)及びノカルジアアステロイズ(Nocardia asteroids)中に見られる脂質をいう。好ましい態様にしたがって、前記脂質はウシ結核菌BCGの抗原である。
【0060】
結核の治療又は予防に有用な他の製品は特にサイトカインの如き免疫調節剤、ヒト結核菌抗原をコードするDNA断片、毒性遺伝子が欠損されている変異体の如き生きたヒト結核菌の欠損変異体又はヒト結核菌の抗原を発現するBCGの如き生きた組換えBCGを含む。
【0061】
本明細書中で使用されるとき、結核は細菌ヒト結核菌によりヒトにおいて引き起こされる疾患を、及び動物における対応する疾患をもまたいう。
【0062】
他の態様にしたがって、本発明は結核の治療又は予防における同時の、別々の又は連続した使用のための混合調製物としての:
−上記に定義される少なくとも1つの化合物、及び
−BCG又はマイコバクテリウムタンパク質の如き、結核の治療又は予防に有用な少なくとも1つの他の製品
を含む製品に関する。
【0063】
本発明は結核の治療又は予防のために所望される医薬、特にワクチンの調製のための、上記に定義される少なくとも1つの化合物の又は上記に挙げられる組成物の使用にもまた関する。
【0064】
本発明は結核の治療又は予防のための医薬としての上記に定義される化合物にもまた関する。
【0065】
任意に、上記ワクチンは上記に示されるようなワクチン補助剤を含みうる。
【0066】
本発明は免疫反応アクチベーター、及びより詳細には炎症反応アクチベーターとしての、上記に定義される少なくとも1つの化合物の又は上記に定義されるような組成物の使用に関する。
【0067】
「免疫反応アクチベーター」はin vitroで又はin vivoで免疫反応の成分又はプロセス、詳細にはTリンパ球、Bリンパ球、樹状細胞又はマクロファージの如き抗原提示細胞(APCs)、単球又は顆粒球の如き免疫系の細胞を活性化する能力を有する化合物を意味する。
【0068】
「炎症反応アクチベーター」はin vitro又はin vivoで例えば、漏出、毛細管浸透性、マクロファージ活性化又は発熱開始の如き炎症反応の成分又はプロセスを活性化する能力を有する化合物を意味する。
【0069】
本発明はTリンパ球、特にCD1拘束性Tリンパ球の活性化を誘発するための、上記に定義される少なくとも1つの化合物の又は上記に定義される組成物の使用にもまた関する。上記活性化はin vitro又はin vivoで進行しうる。
【0070】
Tリンパ球の活性化は細胞増殖又は例えば、IFN−γ(インターフェロン−γ)、IL−2(インターロイキン−2)、IL−4(インターロイキン−4)又はTNF−α(腫瘍壊死因子α)又はGM−CSFの如きサイトカイン生成の計測の如き、いくつかの方法により評価されうる。
【0071】
CD1拘束性Tリンパ球はCD1分子により提示される抗原により活性化されるTリンパ球である。
【0072】
本発明はIFN−γ、TNF−α、IL−2、IL−4又はGM−CSFの如きサイトカインの生成を誘発するための、上記に定義される少なくとも1つの化合物の又は上記に定義される組成物の使用にもまた関する。
【0073】
この生成誘発はin vitro又はin vivoでなされうる。IFN−γ、TNF−α、IL−2、IL−4又はGM−CSFの如きサイトカインの生成は例えば、ELISA(酵素結合免疫吸着分析)又はEIA(酵素免疫分析)の如き免疫分析により計測されうる。
【0074】
他の態様にしたがって、本発明はそれが以下の段階:
1)抗原提示細胞(APCs)、特に樹状細胞をヒト結核菌脂質調製物を除く放線菌類脂質調製物又は式(I)の化合物とインキュベートすること
2)増殖T細胞を得るために末梢血単核細胞をエンベロープ抗原ロードAPCsと接触させること
3)限界希釈し、そして式(I)の化合物に接触されるときIFN−γ、TNF−α、GM−CSF、IL−2又はIL−4の如きサイトカインを含む群から選択される分子を放出するクローンを選択することにより増殖T細胞をクローニングすること
を含む点で特徴づけられる、式(I)の化合物に特異的なT細胞クローンの作出のためのプロセスに関する。
【0075】
好ましくは、段階1)において、上記放線菌類脂質調製物はウシ結核菌BCG脂質調製物である。
【0076】
本発明は上記に挙げられるプロセスにより得られるようなT細胞クローンにさらに関する。上記T細胞クローンはZ5B71として実施例中に示されている。
【0077】
他の態様にしたがって、本発明はそれが以下の段階:
−スクリーニングするべき生成物、特にウシ結核菌BCGから抽出された放線菌類グリセロールアシル誘導体を負荷された樹状細胞を上記に定義されるT細胞クローンと接触させること
−上記T細胞クローンにより放出されるIFN−γ、TNF−α、GM−CSF、IL−2又はIL−4の如き、サイトカインを含む群から選択される分子を検出すること
を含む点で特徴づけられる、マイコバクテリウム、コリネバクテリウム及びノカルジアの如き、放線菌類から抽出される放線菌類グリセロールアシル誘導体の如き、生成物をスクリーニングするためのプロセスに関する。
【0078】
本発明はそれが以下の段階:
a.クロロフォルム/メタノール抽出物を得るためのメタノール及びクロロフォルムの混合物での上記細菌の処理
b.クロロフォルム/メタノール抽出物の濃縮、続いてクロロフォルム相(本明細書中で脂質画分と呼ばれる)及び水相の間でのその分割
c.上記脂質画分を取り去ること
を含む点で特徴づけられるマイコバクテリウム、コリネバクテリウム及びノカルジアの如き、放線菌類からの、上記に定義される化合物の又は上記に定義される組成物の抽出のためのプロセスにもまた関する。
【0079】
好ましい局面にしたがって、前記プロセスは以下の追加の段階:
d.ほとんどのクロロフォルムの蒸発、続いてそれへのアセトンの添加により沈殿物及び水溶性アセトン相を得ること
e.上記アセトン不溶相を取り去ること、続いてその濃縮、続いてメタノールの添加により沈殿物及びメタノール不溶相を得ること
f.上記メタノール不溶相を取り去ること、続いてその濃縮及び上記濃縮メタノール不溶相の珪酸カラムへの適用
g.クロロフォルム、メタノール及びそれらの混合物による上記に挙げられる珪酸カラムからの画分の溶離(前記画分は上記に定義される組成物に対応する)
h.必要な場合、それぞれ上記に定義される化合物の1つのみを実質的に含む異なる調製物を得るための、上記珪酸カラムから溶離された画分の精製
をさらに含む。
【0080】
本発明は上記プロセスにより得られる組成物及び同様のものを含む医薬組成物、並びに結核の予防又は治療用の医薬の調製のための前記組成物の使用、免疫反応アクチベーターとしての前記組成物の使用、Tリンパ球の活性化を誘発するための前記組成物の使用、上記に定義されるIFN−γ、TNF−α、IL−2、IL−4又はGM−CSFの如きサイトカインの生成を誘発するための前記組成物の使用にもまた関する。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1はCMN群のさまざまな細菌種からの脂質画分の抗原性強度を示す。IFN−γ ELISAにより計測される脂質画分によるZ5B71 T細胞クローンの刺激。棒はSDを示す。コリネバクテリウムグルタミカム(黒四角)、ノカルジア(●)、ウシ結核菌BCG(黒三角)、ヒト結核菌H37Rv(◆)、スメグマ菌(□)、マイコバクテリウムフォルツイタム(○)、ヒト結核菌H37Ra(△)
【図2】図2はウシ結核菌BCG「メタノール不溶性」脂質プールの画分化及びZ5B71 T細胞クローンで得られる異なる画分の反応性を示す。「メタノール不溶性」画分のシリカクロマトグラフィー精製により得られる8の代表的な画分(画分1、3、5、10、18、19、28及び34)のTLC分析を(A)中に示す。囲まれている化合物は活性化合物に対応する。同じ画分をIFN−γ放出を計測することによりZ5B71 T細胞クローンの刺激について試験した(B)。棒はSDを示す。
【図3】図3はウシ結核菌BCG GroMM(A)の及びウシ結核菌BCG GroMMの鹸化後に得られたミコール酸(B)のポジティブモードにおけるMALDI−Tof−MS分析を示す。アステリスクは汚染物質に対応する。(C)中に示されている表は異なる予想されるミコール酸型の及び対応するGroMMのナトリウム付加物の計算されたマスを詳述している。
【図4−1】図4は1H NMR分析(δ1H:−0.7−5.4)によるウシ結核菌BCG GroMMの構造決定を示す(A)。特異的なGroMMプロトンシグナルにa〜kまで注釈をつけ、そして(B)中に示されているウシ結核菌BCG GroMMの主要な、すなわち、ケトミコール酸によりエステル化された型の構造について割り当てている。n1=19、21又は23;n2 et n4=15、17又は19;n3=12〜17。
【図4−2】図4−1の続き。
【図5】図5は合成GroMM(A)の及び上記合成に使用されるヒト結核菌H37Rvミコール酸(B)のポジティブモードにおけるMALDI−Tof−MS分析を示す。(C)中に示されている表は異なる予想されるミコール酸型の及び対応するGroMMのナトリウム付加物の計算されたマスを詳述している。
【図6】図6はウシ結核菌BCG GroMM(D)と比較した1H NMR分析(δ1H:3.0−4.4)による合成GroMM(B及びC)の構造決定を示す。(A)中に示されているウシ結核菌BCG GroMMの主要な、すなわち、ケトミコール酸によりエステル化された型の構造。n1=19、21又は23;n2 et n4=15、17又は19;n3=12〜17、そしてグリセロールプロトンシグナルにa〜cまで注釈を付けている。(B)及び(C)中に示されている構造はそれぞれ、(S)−1−O−ミコールオイル−グリセロール(1−O−ミコールオイル−sn−グリセロール)及び(R)−1−O−ミコールオイル−グリセロール(3−O−ミコールオイル−sn−グリセロール)に対応する。Rはミコール酸に対応する。
【図7】図7は半合成GroMMの生物学的活性を示す。C32又はC80 s(S)−又はs(R)−GroMMにおいて、C32はコリノミコール酸に、そしてC80はミコール酸に対応する一方で、(S)は(S)−1−O−ミコールオイル−グリセロール(1−O−ミコールオイル−sn−グリセロール)に、そして(R)は(R)−1−O−ミコールオイル−グリセロール(3−O−ミコールオイル−sn−グリセロール)に対応する。Z5B71 T細胞クローンによるIFN−γの放出をELISAにより計測した。棒はSDを示している。
【図8−1】図8はTHP−1トランスフェクト細胞(A)及びCD1a〜c抗体(B)を用いた、GroMMのCD1b拘束性及びCD1e非依存性提示を示す。(C)において、THP−1−CD1b(黒四角)及びTHP−1−CD1b−CD1e(●)細胞を使用した。Z5B71 T細胞クローンによるTNF−α(A及びB)又はIFN−γ(C)の放出をELISAにより計測した。棒はSDを示している。
【図8−2】図8−1の続き。
【図9】図9はAc2SGL(A)、PIM6(B)及びGroMM(C)に特異的なCD1b拘束性T細胞による熱で殺したヒト結核菌でパルス処理した、及び生きたヒト結核菌に感染した(D)、DCsの認識を示す。Z5B71 T細胞クローンによるIFN−γの放出をELISAにより計測した。棒はSDを示している。
【図10】図10はPPDネガティブ及びPPDポジティブドナーのGroMMに対する反応性を示す:ヒトドナーのPBMCsを自己由来の、CD1を発現するDCsの存在下でGroMMで刺激した。6日後、培養上清を回収し、そしてIFN−γ濃度をELISAにより決定した:(A)GroMMに対する反応性を未感染(n=10)、BCG免疫化(22)又は潜伏感染の健康なドナー(n=19)及びTB患者(n=11)の間で比較した。(B)制限エレメントを調査するために、GroMM反応性を10人のPPDポジティブの健康なドナーにおいてCD1bブロッキング抗体の存在下又は不在下で試験した。黒丸は個々のドナーを示し、水平な棒は各群についての平均を示す。
【図11−1】図11はウシ結核菌BCGからのGroMMの精製スキームを示す(A)。精製後、脂質画分の抗原強度が続いた(B及びC)。Z5B71 T細胞クローンにより放出されたIFN−γをELISAにより計測した。棒はSDを示している。脂質画分はクロロフォルム相をいう。
【図11−2】図11−1の続き。
【図12−1】図12は(S)−1−O−ミコールオイル−グリセロール(1−O−ミコールオイル−sn−グリセロール)及び(R)−1−O−ミコールオイル−グリセロール(3−O−ミコールオイル−sn−グリセロール)の合成スキームを示す。
【図12−2】図12−1の続き。
【図13】図13はウシ結核菌BCGから得られたマイコバクテリウム生成物の及び還元により得られた対応する還元生成物の生物学的活性を示す。
【図14】図14はBCGから得られたマイコバクテリウム生成物とさまざまな脂質との混合物の生物学的活性を示す。マイコバクテリウム脂質:LAM(リポアラビノマンナン)、LM(リポマンナン)、PIM2及びPIM6(2又は6のマンノース単位を含むフォスファチヂル−myo−イノシトール−マンノシド)。リン脂質:PS:フォスファチジルセリン、PE:フォスファチジルエタノールアミン、PC:フォスファチジルコリン、PI:フォスファチジルイノシトール。
【実施例】
【0082】
材料及び方法
試薬。L−1,3−O−イソプロピリデン−sn−グリセロール及びD−1,2−O−イソプロピリデン−sn−グリセロール、グリセリールトリパルミチン酸塩、1,2ジパルミトイル−sn−グリセロール及びモノパルミトイルグリセロールをSigmaから購入した。カルヂオ脂質をGilleron et al.(2001) J Biol Chem 276, 34896−904中に示されているように、ウシ結核菌BCG脂質抽出物から精製した。
【0083】
細菌株及び培養条件。ノカルジアアステロイズ及びコリネバクテリウムグルタミカムをそれぞれ、Luria Broth及びBrain Heart Infusion培地上で32℃で2〜3日間懸濁物中で生育させた。マイコバクテリウムを表面バイオフィルムとしてのSauton’s培地上で37℃で4〜8週間生育させた。細胞を回収し、培養培地から分離し、そして細菌を殺すために室温のクロロフォルム/メタノール(2:1,v/v)中に置いた。
【0084】
細胞培養。ヒト前骨髄球THP−1をエレクトロポーレーションによりBCMGS−Neo及び−Hygroベクターを用いてヒトCD1A又はCD1B又はCD1CのcDNAでトランスフェクトし又はCD1B及びCD1Eでダブルトランスフェクトした。細胞を10%ウシ胎児血清(FCS)、10mM HEPES、2mM UltraGlutamine II、MEM非必須アミノ酸、1mM Na−ピルビン酸塩(全てCambrex, Brussels, Belgiumから)及び100μg/mlカナマイシン(Invitrogen, Basel, Switzerland)で補充したRPMI−1640中で生育させた。DCsを以前に示されているように(Porcelli et al.(1992), Nature 360, 593−7)、組換えIL−4及びGM−CSFの存在下で培養することにより健康なドナーの末梢血単核細胞(PBMCs)から単離した。T細胞クローンを示されているように(De Libero(1997), ed. Butcher, N.F. a. G. (IRL, Oxford), pp.123−40)作出し、そして5%ABヒト血清(Swiss Red Cross)、10mM HEPES、2mM UltraGlutamine II、MEM非必須アミノ酸、1mM Na−ピルビン酸塩、100μg/mlカナマイシン及び100ユニット/mlヒト組換えIL−2で補充したRPMI−1640中で生育させた。
【0085】
T細胞活性化分析。10%FCSを含むRPMI−1640培地中のDCs(3×104/ウェル)又はCD1トランスフェクトTHP−1細胞(3×104/ウェル)を異なる濃度の超音波処理抗原と共に37℃で2時間インキュベートし、T細胞(三重で105/ウェル)を添加した。上清を36時間のインキュベーション後に回収し、そしてサイトカイン放出を酵素結合免疫吸着分析(ELISA)キット(Instrumentation Laboratory, Schlieren, SwitzerlandからのIFN−γ;BD Pharmingen, Basel, SwitzerlandからのTNF−α)を用いることにより計測した。データを三重の平均pg/ml±標準偏差(SD)として表す。
【0086】
CD1拘束の分析。CD1拘束をT細胞の添加前に以下のモノクローナル抗体(mAb)を10μg/mlで30分間用いてT細胞活性化を阻害することにより調査した:OKT6(抗−CD1a, American Type Culture Collection ATCC CRL−8019)、WM−25(抗−CD1b;Immunokontakt, Lugano, Switzerland)、L161(抗−CD1c;Instrumentation Laboratory)、W6−32(抗−MHCクラスI、ATCC)及びL243(抗−MHCクラスII、ATCC)。抗−TCRVγ9(B3)mAbを関連性のないmAbとして使用した。
【0087】
ヒト結核菌でのDCsのパルス処理及び感染。ヒト結核菌を80℃20分間で殺し、そしてDCs(3×104/ウェル)と共に10%FCSを含むRPMI−1640培地中で37℃で2時間インキュベートし、T細胞(三重で105/ウェル)を添加した。DCsを以前に示されているように(De Libero et al.(2005)Immunity 22, 763−72)感染させ、そしてIFN−γ放出をELISAによりモニターした。
【0088】
T細胞クローンの作出のために使用される脂質画分。Z5B71 T細胞クローンを以前に得られた(Gilleron et al.(2001) J Biol Chem 276, 34896−904)ウシ結核菌BCG PIM2−エンリッチド画分で作出した。簡単に述べると、ウシ結核菌BCG細胞をクロロフォルム/メタノール(1:1,v/v)中に懸濁し、そして4回フィルターにかけた。上記クロロフォルム/メタノール抽出物を濃縮し、そして脂質画分を構成し、それを水及びクロロフォルムの間でさらに分割した。上記クロロフォルム相を蒸発させ、そして最小限の容量のクロロフォルム中に懸濁した。アセトンを4℃で一晩添加して沈殿物の形成を導き、それを遠心分離し(3,000g、4℃、15分間)、「アセトン可溶」相及び「アセトン不溶」相を作出した。上記「アセトン可溶」相をQMA−Spherosil M(BioSepra SA, Villeneuve−la−Garonne, France)カラムに適用し、クロロフォルム、クロロフォルム/メタノール(1:1,v/v)、メタノールで連続溶離して中性化合物を溶離し、そしてその後0.1M酢酸アンモニウムを含むクロロフォルム/メタノール(1:2,v/v)で溶離して負に荷電した化合物を(PIM2として)溶離した。
【0089】
いくつかの放線菌類からの脂質画分。異なる脂質画分をいくつかの放線菌類種から(上記に示されているように)調製し、そしてZ5B71 T細胞クローンに対して試験した:スメグマ菌、ヒト結核菌H37Ra、マイコバクテリウムフォルツイタム、カメ結核菌、マイコバクテリウムゼノピ、ノカルジアアステロイズ及びコリネバクテリウムグルタミカムからの脂質画分、スメグマ菌、ヒト結核菌H37Rv、マイコバクテリウムガストリ、マイコバクテリウムカンサシイ、マイコバクテリウムマリナム及びウシ結核菌BCGからの「アセトン可溶」相及びヒト結核菌H37Rv、マイコバクテリウムガストリ、マイコバクテリウムカンサシイ、マイコバクテリウムマリナム及びウシ結核菌BCGからの「アセトン不溶」相。
【0090】
ウシ結核菌BCGからのGroMMの精製。上記に示されているように得られたウシ結核菌BCGからの「アセトン不溶性」画分をメタノール沈殿にかけ、「メタノール可溶性」及び「メタノール不溶性」画分を得た。上記「メタノール不溶性」画分(150mg)をシリカ酸カラム(1.3×23cm)上で画分化し、7×175mlのクロロフォルム(画分1−7)、8×200mlのクロロフォルム−メタノール(95:5,v/v)(画分8−15)、9×225mlのクロロフォルム−メタノール(9:1,v/v)(画分16−24)、7×175mlのクロロフォルム−メタノール(85:15,v/v)(画分25−31)及び7×175mlのクロロフォルム−メタノール(7:3,v/v)(画分32−38)で溶離した。画分5〜8がGroMMを含むことがわかり、そしてそれらをプールした。
【0091】
精製をアルミニウム裏打ちシリカゲルプレート(Alugram Sil G; Macherey−Nagel)上のTLCにより移動溶媒としてクロロフォルム/メタノール(95:5,v/v)を用いてチェックした。85%のH2SO4中に溶解した0.2%のアントロン(9,10−ジヒドロ−9−オキソ−アントラセン)(Sigma)を糖脂質を検出するために使用した。
【0092】
GroMMアセチル化。過アセチル化を、200μgのGroMMを酢酸無水物/無水ピリジン(1:1,v/v)中に溶解し、そして80℃で30分間加熱することにより行った。上記反応混合物を窒素流下で乾燥させ、そしてMALDI−Tof−MS分析のためにクロロフォルム中に溶解した。GroMMヒドロキシル官能基の選択的アセチル化のために、16μlの酢酸無水物を150μlのピリジン中に溶解した10mgのGroMMに添加し、そして0℃で3時間保った。モノ−及びヂ−アセチル化GroMMをCHCl3により抽出し、そしてシリカカラム上でCHCl3及びCHCl3/CH3OH 95/5(v/v)により連続溶離して精製した。アセチル置換基の数及びGroMM上でのそれらの位置をMALDI−Tof−MS及びNMR分析により決定した。
【0093】
GroMM鹸化。800μlのメトキシエタノール/KOH 20%(7:1,v/v)を500μgのGroMMに添加した。上記混合物をその後100℃のオーブン内で3時間加熱した。冷却及び水性硫酸pH3による酸性化後、ミコール酸をヂエチルエーテル(v/v)により3回抽出した。エーテル相をプールし、水で5回洗浄し、そして窒素流下で乾燥させた。ミコール酸をMALDI−Tof−MS分析のために100μlクロロフォルム中に再溶解した。
【0094】
GroMM還元。BCGから精製した1mgのGroMMを140μlTHF中の1.3mgのNaBH4と室温で15分間攪拌下で反応させた。反応を酢酸の添加により停止させた。上記反応混合物を蒸発させ、ヂクロロメタンと共に攪拌し、そして水で2回洗浄した。
【0095】
GroMM合成。反応を無水溶媒中でアルゴン下で行った。
【0096】
1−O−(4−メチルベンゼンスルフォニル)−2,3−O,O−イソプロピリデン−sn−グリセロール(Sowden et al.(1942) J Am Chem Soc 42, 1291−3):p−トルエンスルフォニル塩化物(0.3g,1.57mmol)を無水ピリジン(0.8ml)中に溶解した2,3−O,O−イソプロピリデン−sn−グリセロール(230mg,1.74mmol)に0℃で添加した。室温で24時間後、ジエチルエーテルを上記反応混合物に添加し、そして上記有機相を冷1M塩酸、水、飽和重炭酸ナトリウム溶液及び水で連続して洗浄した。上記エーテル抽出物を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、そして濃縮した。シリカゲル上でのクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル 4/1,v/vでの溶離)は生成物(約100mg,0.35mmol)を与えた。同じ様式で、3−O−(4メチルベンゼンスルフォニル)−1,2−O,O−イソプロピリデン−sn−グリセロールを1,2−O,O−イソプロピリデン−sn−グリセロールから得た。
【0097】
ミコール酸カリウム:ミコール酸(M. A. Laneelle, IPBS, Toulouseから提供された)をLaval et al. (2001) Anal Chem 73, 4537−44中に示されている方法にしたがってヒト結核菌H37Rv細胞から放出させた。ミコール酸カリウムを10mM塩酸及び5M水酸化カリウムでのクロロフォルム中に溶解したミコール酸の2の連続洗浄により得た。クロロフォルムでの抽出後、ミコール酸カリウムを硫酸マグネシウム上で乾燥させ、そして濃縮した。
【0098】
1−O−ミコールオイル−2,3−O,O−イソプロピリデン−sn−グリセロール(Defaye et al.(1956) Bull Soc Chim Biol(Paris)38,1301−4):ミコール酸カリウム(8mg,約6μmol)を無水ジメチルフォルムアミド(0.150ml)中の1−O−(4メチルベンゼンスルフォニル)−2,3−O,O−イソプロピリデン−sn−グリセロール(2mg,7μmol)に添加し、そして135℃で3日間攪拌した。上記反応混合物を1M塩酸により酸性化し、そしてジエチルエーテルにより抽出した。エーテル抽出物をその後水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、そして濃縮した。シリカゲル上でのクロマトグラフィー(石油エーテル/ジエチルエーテル 5/1,v/vでの溶離)は生成物(約4mg,2.9μmol)を与えた。同様の方法で、3−O−ミコールオイル−1,2−O,O−イソプロピリデン−sn−グリセロールを3−O−(4−メチルベンゼンスルフォニル)−1,2−O,O−イソプロピリデン−sn−グリセロールから得た。
【0099】
1−O−ミコールオイル−sn−グリセロール(GroMM)(Sowden et al.(1942) J Am Chem Soc 42, 1291−3):100μlの濃塩酸(d=1.017)をジエチルエーテル(0.1ml)中に溶解した1−O−ミコールオイル−2,3−O,O−イソプロピリデン−sn−グリセロール(4mg,2.9μmol)に添加した。室温で10分間の攪拌後、水を上記反応混合物に添加し、そして生成物(3mg,2.3μmol)をジエチルエーテルで抽出した。上記エーテル抽出物を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、そして濃縮した。補足精製は必要ではなかった。3−O−ミコールオイル−sn−グリセロールもまた3−O−ミコールオイル−1,2−O,O−イソプロピリデン−sn−グリセロールを用いて得た。
【0100】
MALDI−Tof−MS。MALDI−Tof−MSによる分析を(Tof−Tof Optics, Applied Biosystemsを伴う)4700 Proteomics Analyser上でリフレクトロンモードを用いて行った。イオン化をNd:YAGレーザーからのパルス化UV光(355nm)での照射により行った。GroMMサンプルを20nsに設定された抽出遅延時間を用いてポジティブイオンモードで20kVで操作する上記装置により分析した。典型的に、100〜250レーザーショットのスペクトルを最終スペクトルを得るために合計した。HABA(2−[4−ヒドロキシ−フェニルアゾ]−安息香酸)マトリックス(Sigma−Aldrich)をエタノール/水(1:1,v/v)中で約10mg/mlの濃度で使用した。その後、0.5μlサンプル溶液及び0.5μlの上記マトリックス溶液を標的上に置き、マイクロピペットで混合し、そして暖かい空気のおだやかな流れの下で乾燥させた。計測をマイコバクテリウムPIMで2点で外部較正した。
【0101】
核磁気共鳴(NMR)分析。NMRスペクトルをOrigin 200 SGIで装備したAvance DMX500スペクトロメーター(Bruker)でXwinnmx2.6を用いて記録した。GroMMをCDCl3−CD3OD(9:1,v/v)中に溶解し、そして298Kで200×5mm 535−PP NMR管中で分析した。プロトン化学シフトをクロロフォルムのシグナルからのparts per million downfieldで表す(H/TMS 7.27)。使用された相関スペクトロスコピー及び同一核Hartmann−Hahnスペクトロスコピーシークエンスに関連する全ての詳細及び実験手順は以前に示されているとおりであった(Gilleron et al.(2003) J Biol Chem 278, 29880−9)。
【0102】
結核患者及び健康なドナーからのリンパ球によるGroMMの認識。PBMCsをインフォームドコンセントを与えた後に健康なドナー及び結核患者の血液から精製した。この研究に含まれる全ての患者は培養で証明された肺結核を患っており、そして抗結核薬での治療を血液提供の時点で2〜8週間受けていた。PBMCs(105/ウェル)を10μg/ml GroMMの存在下又は不在下で自己由来DCs(2×104/ウェル)と共に培養した。6日後、上清を回収し、そしてサンドウィッチELISAによりIFN−γの存在について試験した。PBMCsを補充したRPMI 1640培地(上記を参照のこと)中で37℃で2日間の自己由来単球のDCsへの分化の間保った。GroMMと並行して、PBMCsを10μg/ml PPD(Chiron)及び組換えESAT6(Lionex)で刺激した。PPDに応答して少なくとも250pg/ml IFN−γを放出することにより応答した健康なドナーをBCG免疫化として得点をつけた。両方の抗原に応答したドナーをヒト結核菌に潜伏感染していると考えた。PPDに応答しなかったドナーをPPDネガティブとして得点をつけた。個々の実験について、CD1b及びCD1cブロッキング抗体(それぞれBCD1b3.1及びF10−10μg/ml)をCD1提示をブロックするためにGroMMの前に30分間添加した。
【0103】
結果
脂質反応性T細胞クローンの特徴づけ
ヒト結核菌CD1拘束性T細胞脂質抗原レパートリーを同定するために、3つの異なる型の粗マイコバクテリウム脂質画分によりそれらの極性及び電荷にしたがって刺激したT細胞系の作出に基づく方法を開発した(Gilleron et al. (2004) J Exp Med 199, 649−59)。1人の高いPPD反応性を有する健康なドナーのPBMCに由来するこれらの系から、T細胞クローンを限界希釈により確立し、そしてCD1拘束性であることがわかった10の個々のクローンをさらに調査した。CD4+であるZ5B71と呼ばれるこれらのクローンの1を調査した。それはウシ結核菌BCG細胞壁抽出物から得られた、フォスファチジル−myo−イノシトールジマンノシド(PIM2)が豊富な画分に対して得られた。このクローンは異なるマイコバクテリウム種(ウシ結核菌BCG、スメグマ菌、マイコバクテリウムガストリ、マイコバクテリウムマリナム、マイコバクテリウムフォルツイタム、マイコバクテリウムゼノピ、マイコバクテリウムカンサシイ及びヒト結核菌H37Ra)からの及びコリネバクテリウムグルタミカム及びノカルジアアステロイズからの脂質抽出物に反応する(図1)。上記認識された脂質抗原はしたがってマイコバクテリウム属中に明らかに広く分布されており、そしてCMN群の細菌中にもまた存在している。興味深いことに、試験された脂質抽出物のうち、ウシ結核菌BCGからのものはいつも最も刺激性であるようであり、それはこの抗原がこれらの細菌においてより豊富であることを示す。
【0104】
Z5B71細胞を刺激する脂質抗原の精製
脂質抗原の精製を、ウシ結核菌BCG脂質抽出物が最も強い刺激活性を示したので、そしてまたこの種の細胞エンベロープ中の糖脂質の多様性はヒト結核菌のそれにおける多様性より低いので、ウシ結核菌BCG脂質抽出物を用いて行った。脂質抽出物をリン脂質を沈殿することが知られる溶媒であるアセトン沈殿により分割した。「アセトン可溶性」及び「アセトン不溶性」画分(図11A)の両方はZ5B71 T細胞クローンを刺激し(図11B)、それはi)上記抗原は1の画分中で優先的に分割しないこと又はii)共通のエピトープを有する異なる抗原がこれらのT細胞により認識されることを示した。より強い反応性が「アセトン不溶性」画分で観察されたので、この画分をメタノールによりさらに沈殿させた。Z5B71 T細胞は再び両方の相に反応した(図11C)が、その応答は「メタノール不溶性」画分でより高かった。
【0105】
「メタノール不溶性」画分をその後増加する量のメタノールを含むクロロフォルムにより溶離されるシリカゲルカラム上で画分化した(図11A)。Z5B71 T細胞を画分5〜9により刺激し(図2B)、クロロフォルム又はクロロフォルム/メタノール,95/5(v/v)により溶離した。TLCにより分析したとき、上記活性画分は同一の生成物を含むように見えた(図2A)。画分5〜9をプールし、そして合成された画分をMALDI−Tof−MS及びNMRによりさらに分析した。
【0106】
新規マイコバクテリウム脂質抗原の化学的特徴づけ
ポジティブモードMALDIマススペクトルは陽イオン化ナトリウム化分子イオン[M+Na]+に割り当てられたピークの複雑なパターンを示した(図3A)。マッシーフ中の主なピークは28マス単位の距離であり、それはおそらく脂肪酸の長さにおける不均一さの結果としての、異なる分子種間の2のメチレン単位の差を示す。この仮定を確認するために、上記生成物をアルカリ条件下で加水分解し、そして脂肪酸をGC(データは示されていない)及びMALDI−Tof−MS(図3B)により分析した。ポジティブモードMALDIスペクトルはミコール酸に特徴的な1連のピークを強調した(Laval et al.,(2001) Anal Chem. 73(18):4537−44)。メロミコール鎖上のさまざまな化学官能基の存在にしたがって、ミコール酸はα−ミコール酸、メトキシミコール酸及びケトミコール酸に分けられる(Daffe and Draper(1998) Adv. Microb. Physiol 39:131−203)。ヒト結核菌は1/1の割合のα−ミコール酸/酸素化ミコール酸(メトキシミコール酸+ケトミコール酸)を含み、一方でウシ結核菌BCGは主にケトミコール酸を含む(Watanabe et al.(2001) Microbiology 147, 1825−37)。これらのデータと一致して、m/z 1232、1260、1274、1288及び1302のピーク(図3B)をケトミコール酸の[M+Na]+型に割り当てた(図3C)。
【0107】
ネイティブ生成物及びアルカリ処理後に生じたミコール酸の間のマス差(Δ74amu)はミコール酸がグリセロール残基をエステル化することを示した。上記分子上のアルコール官能基の数を上記分子の過アセチル化及びMALDI MSによる上記反応生成物の分析により証明した(示されていない)。126マス単位の置換は3のアルコール官能基の存在を証明した。その後、グリセロールモノミコール酸塩(GroMM)に対する新規抗原の割当ては1D 1H NMR分析によりさらに支持された(図4A)。ミコール酸に典型的な共鳴を公開された研究(Watanabe et al.(2001) Microbiology 147, 1825−37; Schroeder et al.(2001)Bioorg Chem 29, 164−77; Quemard et al.(1997) Eur J Biochem 250, 758−63)にしたがって割り当てた。メロミコール鎖のプロトンのいくつかは容易に解釈されうる:COSYスペクトル(示されていない)上で共に相関するプロトンd(δ2.31)及びe(δ3.53,多重項)をそれぞれα鎖及びβヒドロキシル基を有するメチンに割り当てた。これもまたCOSYスペクトル上で共に相関するプロトンj(δ2.41、多重項)及びk(δ0.92、二重項)をそれぞれメロミコール鎖の遠位部分における、メチル基を有するメチンに及びこのメチルに割り当てた。シグナルl(δ0.75、三重項)をα鎖及びメロミコール鎖の末端メチル基のプロトンに割り当てている。COSYスペクトル上で共に相関するδ−0.46、δ0.44及びδ0.52の多重項(hと標識される)はシクロプロパン官能基プロトンの特徴的なシグナルである。5ppmあたりのシグナル(δ5.16のg及びδ4.83のf)はオレフィンプロトンに対応し、それは小さな割合のミコール酸がエチレン基を含むことを示す。HOHAHAスペクトル上で共に相関する(示されていない)プロトンa(δ4.11、4.06及び3.99)、b(δ3.75)及びc(δ3.47)をグリセロールプロトンに割り当てた。しかしながら、プロトンaは2の独立した系a1(δ4.11及び3.99)及びa2(δ4.06)に分けられ、それらの正確な割当ては合成GroMMアナログのNMR分析により可能になった。
半合成GroMM(sGroMM)は免疫原性である。
【0108】
上記抗原の構造を確認するために、GroMMアナログをヒト結核菌H37Rvから単離したミコール酸を用いて化学合成した(図12)。MALDI−MSによるヒト結核菌H37Rvミコール酸分析(図5B)は主要な種としてm/z 1248、1276、1304及び1332でメトキシミコール酸の[M+Na]+型を示した。ケトミコール酸(m/z 1260、1288、1302及び1316のピーク)及びα−ミコール酸(m/z 1160、1188及び1216のピーク)に対応するイオンもまた以前に示されているように(Laval et al. (2001) Anal Chem 73,4537−44)、より少ない量で観察された。
【0109】
化学合成をp−トルエン−スルフォニルにより活性化される(R)−及び(S)−イソプロピリデン−グリセロールを用いて出発させた(Sowden et al.(1942) J Am Chem Soc 42, 1291−3)(図12)。ミコール酸によるグリセロールのエステル化をミコール酸カリウムの存在下で(R)又は(S)−イソプロピリデン−グリセロールを加熱することにより行った(Defaye et al. (1956) Bull Soc Chim Biol(Paris)38, 1301−4)。両方のイソプロピリデン−ミコールオイル−グリセロールアイソマーをその後酸性条件下で脱保護し、合成(R)−又は(S)−GroMMを得た(それぞれ、s(R)−GroMM及びs(S)−GroMM)。両方のsGroMMのMALDIマススペクトル(図5A)はヒト結核菌H37Rvミコール酸を有するGroMMの予想されるマス分布と一致した(図5C)。両方のsGroMMをその後1D 1H NMRにより分析した(図6B及びC)。1−O−ミコールオイル−sn−グリセロール(s(S)−GroMM)の分析は4.05ppmのaプロトン(a1と示されている)(図6B)を示し、一方で3−O−ミコールオイル−sn−グリセロール(s(R)−GroMM)の分析は4.00及び4.12ppmのaプロトン(a2と示されている)(図6C)を示した。これらのデータはそれから両方のアイソマーの混合物に対応する、天然GroMMのスペクトル上のグリセロールプロトンaのマッシーフの複雑さを説明することを許容した(図6D)。a1及びa2共鳴の強度から(図6D)、天然GroMMは同じ割合の両方の立体異性体から成ることが推理されうる。
【0110】
s(R)−GroMMはs(S)−GroMMより、より効果的にZ5B71 T細胞を刺激し、一方で上記精製天然化合物は中間の活性を有している(図7)。まとめて考えると、NMR分析及びT細胞反応性の両方は天然抗原の構造を確実にした。
【0111】
GroMMはCD1bにより提示され、そしてCD1eの存在を必要としない。
【0112】
GroMMのCD1拘束エレメントを1パネルのCD1トランスフェクトAPCsを用いてT細胞クローンを刺激することにより調査した。CD1b発現細胞のみがT細胞を刺激することができた(図8A)。さらに、CD1b拘束はブロッキング実験によりさらに支持され、ここで抗CD1b mAbsのみが上記クローンの反応性を阻害することができた(図8B)。CD1eがマイコバクテリウム脂質の提示を援助しうることが以前に示されているので(de la Salle et al.,(2005) Science 310(5752):1321−4)、GroMMの抗原性をCD1eの参加の可能性を調査するために、CD1b及びCD1eの両方又はCD1bのみを発現するAPCsを用いてもまた試験した。両方のAPCsは非常に似たT細胞応答を誘発し(図8C)、したがってそれはGroMMの提示におけるCD1eの参加を除外した。
【0113】
感染細胞におけるGroMM免疫原性
重要な論点は、マイコバクテリウム脂質抗原は感染の間、すなわち、それらが食胞中の細菌レジデントの細胞壁から放出されるとき、それらの抗原性を維持するかどうかである。このことを熱で殺したヒト結核菌でパルス処理された又は生きた細菌に感染したDCsを用いることにより調査した。熱で殺した細菌でパルス処理されたDCsを3の異なるヒト結核菌脂質抗原、すなわち、GroMM(Z5B71)、Ac2SGL(Z4B27)及びPIM6(Z5B11)を認識する3のT細胞クローンを刺激するために使用した。AC2SGL及びPIM6反応性細胞(de la Salle et al.(2005) Science 310, 1321−4; Gilleron et al.(2004) J Exp Med 199, 649−59)は以前に示されている。高い用量の熱で殺された細菌(100μg/ml)は強いT細胞応答を誘発し(図9A−C)、それは全ての3の脂質は、細菌細胞壁と結合されたときCD1bローディングのために使用可能になることを確実にした。GroMMはAPCsが生きたヒト結核菌に感染したときもまた高く免疫原性であり、それはGroMMが感染の間にDCsにより提示されることを示した(図9D)。
【0114】
PPDポジティブの健康なドナーからのT細胞はGroMMを認識する。
【0115】
ヒトドナーの末梢血中のT細胞が新規脂質化合物を認識するかどうかを直接的に試験するために、血液サンプルを結核患者(n=11)、PPDネガティブ(n=10)及びBCG免疫化(n=22)及びヒト結核菌潜伏感染(n=19)の健康なドナーから回収し、そしてGroMM刺激後にIFN−γ放出を計測した。顕著な応答はBCG免疫化又は潜伏感染の健康なドナーにおいてのみ観察された(それぞれ73pg/ml及び117pg/mlの平均で;図10A)。結核患者からのPBMCsはPPDに対して活発に応答したが(データは示されていない)、GroMMはこのドナー集団においてバックグラウンド値を超えるIFN−γ分泌を誘発しなかった。同様に、未感染のPPDネガティブドナーにおいては応答が全く観察されなかった。1型CD1分子に対して方向づけられたブロッキング抗体はMHC−Iブロッキング抗体と対照的に(データは示されていない)反応性を排除したので(図10B)、GroMMが誘発したIFN−γ分泌はCD1拘束性であった。ヒトドナーの末梢血中のGroMM特異的CD1拘束性T細胞の存在はそれゆえマイコバクテリウム誘発性T細胞記憶を示す。しかしながら、このことは健康なドナーについてのみ適用し、一方で活性な結核を伴う患者はGroMMを認識することができなかった。
【0116】
還元化合物の増大された活性
上記還元化合物の活性を試験するために、GroMM及び還元GroMMのIFN−γ放出を計測することによるZ5B71 T細胞クローンの刺激を計測した。図13中に示されている結果は還元GroMMの増大された活性を示す。
【0117】
マイコバクテリウムGroMMと脂質との組み合わせの相乗的活性
脂質がマイコバクテリウムGroMMの活性を増強しうるかどうかを試験するために、両方の剤単独又は組み合わせのIFN−γ放出を計測することによるZ5B71 T細胞クローンの刺激をさまざまなマイコバクテリウム脂質(A)又はリン脂質(B)について計測した。図14中に示されている結果は相乗効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1の式(I)の化合物:
【化1】

{式中、Rは20〜90の炭素原子を含むα−アルキル化、β−ヒドロキシル化カルボン酸の残基である;
R’は水素原子又はアシル基(−C(=O)−アルキル)を示し、ここでアルキルは1〜10の炭素原子を含む;及び
*は不斉炭素原子を示す}
及びそのエナンチオマー、ジアステレオアイソマー、それらの混合物を含む医薬組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の医薬組成物であって、Rが以下の式:
【化2】

のものであり、ここで(I)が
【化3】

をとおしてRに結合されている;及び
Tがメチル基又は1又は複数の二重結合(単数又は複数)、−(C=O)−基、シクロプロピル及び/又はエポキシを任意に含み、そして/又はOH、Oメチルから選択される1又は複数の基で任意に置換される有枝鎖又は直鎖C10−C60炭化水素鎖を示す;
**が不斉炭素を示す;
n1、n2が互いに独立して同一又は異なる整数を示す、
医薬組成物。
【請求項3】
n1が5〜40の整数である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
n2が5〜30の整数である、請求項2又は3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
請求項2、3又は4に記載の医薬組成物であって、Tが:
−メチル基;又は
−1〜5の二重結合(単数又は複数)を任意に含む有枝鎖又は直鎖C10−C60;又は
−式:
【化4】

の基
から選択される
ここで
Xが:
【化5】

から選択される
Yが:
【化6】

から選択される
そしてn3、n4が互いに独立して同一又は異なる5〜30の整数を示す、
ここで、Yが
【化7】

であるとき、Tは
【化8】

である、
医薬組成物。
【請求項6】
n3が12〜16の整数を示す、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
n4が11、13、15、17、18及び19から選択される、請求項5又は6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記請求項のいずれか1項に定義されるような少なくとも2の異なる式(I)の化合物を含む前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記請求項のいずれか1項に定義されるような式(I)の化合物の混合物を含む前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記医薬組成物が経口又は注入経路による投与のために意図される形態で提示される点で特徴づけられる、前記請求項のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記医薬組成物が結核の治療又は予防に有用な1又は複数の他の製品を含む点で特徴づけられる、前記請求項のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
結核の治療又は予防に有用な前記製品がBCG又はマイコバクテリウム脂質から選択される、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記マイコバクテリウム脂質がマイコバクテリウムリン脂質、マイコバクテリウムリポグリカン、マイコバクテリウム糖脂質及びリン脂質から成る群から選択される、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項14】
結核の治療又は予防における同時の、別々の又は連続した使用のための混合調製物としての請求項11、12又は13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
ワクチンである、前記請求項のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
式(I)の化合物:
【化9】

{式中、R’は水素原子又はアシル基(−C(=O)−アルキル)を示し、ここでアルキルは1〜10の炭素原子を含む;
*は不斉炭素原子を示す;及び
Rは式:
【化10】

のものであり、ここで(I)は
【化11】

をとおしてRに結合されている;
**は不斉炭素を示す;
同一である又は異なるn1、n2は独立に整数を示す;及び
Tは式:
【化12】

の基であり、ここで:
n3、n4は互いに独立して同一又は異なる5〜30の整数を示す
Xは:
【化13】

から選択される
及びYは
【化14】

である}
及びそのエナンチオマー、ジアステレオアイソマー、それらの混合物。
【請求項17】
式(I)の化合物:
【化15】

{Rは20〜90の炭素原子を含むα−アルキル化、β−ヒドロキシル化カルボン酸の残基である;
R’はアシル基(−C(=O)−アルキル)を示し、ここでアルキルは1〜10の炭素原子を含む;及び
*は不斉炭素原子を示す}
及びそのエナンチオマー、ジアステレオアイソマー、それらの混合物。
【請求項18】
請求項17に記載の化合物であって、Rが式:
【化16】

のものである、ここで(I)が
【化17】

をとおしてRに結合されている;及び
Tがメチル基又は1又は複数の二重結合(単数又は複数)、−(C=O)−基、シクロプロピル及び/又はエポキシを任意に含み、そして/又はOH、Oメチルから選択される1又は複数の基で任意に置換される有枝鎖又は直鎖C10−C60炭化水素鎖を示す;
**が不斉炭素を示す;
n1、n2が互いに独立して同一又は異なる整数を示す、
化合物。
【請求項19】
n1が5〜40の整数であり、そしてn2が5〜30の整数である、請求項16、17又は18に記載の化合物。
【請求項20】
請求項18又は19に記載の化合物であって、Tが:
−メチル基;又は
−1〜5個の二重結合(単数又は複数)を任意に含む、有枝鎖又は直鎖C10−C60;又は
−式:
【化18】

{Xは:
【化19】

から選択される
Yは:
【化20】

から選択される}
の基
から選択され、そしてn3、n4が互いに独立して同一又は異なる5〜30の整数を示し、ここでYが
【化21】

であるとき、Tは
【化22】

である、化合物。
【請求項21】
n3が12〜16の整数を示し、そしてn4が11、13、15、17、18及び19から選択される、請求項16又は20に記載の化合物。
【請求項22】
式(I)においてC*が(R)配置を示す点で特徴づけられる、請求項1〜15のいずれか1項に定義される化合物。
【請求項23】
結核の治療又は予防のために意図される医薬の調製のための請求項1〜22のいずれか1項に定義される少なくとも1つの式(I)の化合物の使用。
【請求項24】
結核の治療又は予防のための医薬としての請求項1〜22のいずれか1項に定義される化合物。
【請求項25】
免疫反応アクチベーターとしての請求項1〜22のいずれか1項に定義される少なくとも1つの化合物の使用。
【請求項26】
Tリンパ球の活性化を誘発するための請求項1〜22のいずれか1項に定義される少なくとも1つの化合物の使用。
【請求項27】
IFN−γ、TNF−α、IL−2、IL−4又はGM−CSFの生成を誘発するための請求項1〜22のいずれか1項に定義される少なくとも1つの化合物の使用。
【請求項28】
請求項1〜22のいずれか1項に定義される式(I)の化合物に特異的なT細胞クローンの作出のためのプロセスであって、以下の段階:
1)抗原提示細胞(APCs)、特に樹状細胞をヒト結核菌脂質調製物を除く放線菌類脂質調製物又は式(I)の化合物とインキュベートする、
2)増殖T細胞を得るために末梢血単核細胞をエンベロープ抗原ロードAPCsと接触させる、
3)限界希釈し、そして式(I)の化合物に接触されるときIFN−γ、TNF−α、GM−CSF、IL−2又はIL−4の如きサイトカインを含む群から選択される分子を放出するクローンを選択することにより増殖T細胞をクローニングする
を含む点で特徴づけられる、プロセス。
【請求項29】
段階1)において、放線菌類脂質調製物がウシ結核菌BCG脂質調製物である、請求項28に記載のプロセス。
【請求項30】
請求項29に記載のプロセスにより得られるT細胞クローン。
【請求項31】
生成物をスクリーニングするためのプロセスであって、以下の段階:
−スクリーニングする生成物を持っている樹状細胞を請求項30に記載のT細胞クローンと接触させる、
−上記T細胞クローンにより放出される、IFN−γ、TNF−α、GM−CSF、IL−2又はIL−4の如きサイトカインを含む群から選択される分子を検出する
を含む点で特徴づけられる、プロセス。
【請求項32】
放線菌類からの請求項1〜22のいずれか1項に定義される化合物の抽出のためのプロセスであって、以下の段階:
a.クロロフォルム/メタノール抽出物を得るためのメタノール及びクロロフォルムの混合物での上記細菌の処理、
b.上記クロロフォルム/メタノール抽出物の濃縮、続いてクロロフォルム相(本明細書中で脂質画分と呼ばれる)及び水相の間でのその分割、
c.上記脂質画分を取り去ること
を含む点で特徴づけられる、プロセス。
【請求項33】
請求項32に記載のプロセスであって、以下の追加の段階:
d.ほとんどのクロロフォルムの蒸発、続いてそれへのアセトンの添加により沈殿物及び可溶性アセトン相を得ること、
e.アセトン不溶相を取ること、続いてその濃縮、続いてメタノールの添加により沈殿物及びメタノール不溶相を得ること、
f.メタノール不溶相を取ること、続いてその濃縮及び濃縮されたメタノール不溶相の珪酸カラムへの適用
g.クロロフォルム、メタノール及びそれらの混合物による上記に挙げられる珪酸カラムからの画分の溶離、ここで前記画分は上記に定義される組成物に対応する、
h.必要な場合、上記珪酸カラムから溶離された画分の精製によりそれぞれ上記に定義される化合物の1つのみを実質的に含む異なる調製物を得ること
をさらに含む、プロセス。
【請求項34】
請求項32又は33に記載のプロセスにより得られる組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9】
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【図10】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2011−500540(P2011−500540A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528431(P2010−528431)
【出願日】平成20年10月13日(2008.10.13)
【国際出願番号】PCT/EP2008/063736
【国際公開番号】WO2009/047363
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(501089863)サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェサイアンティフィク(セエヌエールエス) (173)
【Fターム(参考)】