説明

放送受信機、外部メモリ治具、およびこれらを備えた受信機セット

【課題】設定情報記録装置を接続させるための専用スロット等を別途設けることなく、設定情報記録装置を用いて設定情報を入力することが可能な放送受信機などを提供する。
【解決手段】スクランブルの解除に使われる解除情報が記録されたICカードが、着脱自在に挿入されるように形成されたスロットと、スロットに挿入されているICカードにアクセスし、ICカードから解除情報を読み出す情報制御装置と、設定情報を記憶する情報記憶部と、を備え、当該設定情報に基づいて動作するものであって、前記スロットは、設定情報を記録する設定情報記録装置も、着脱自在に挿入されるように形成されており、情報制御装置は、スロットに挿入されている設定情報記録装置から設定情報を読出し、情報記憶部に記憶させる処理、および、情報記憶部に記憶されている設定情報を、スロットに挿入されている設定情報記録装置に書出す処理、を行う放送受信機とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送信号を受信する放送受信機、これに用いられる外部メモリ治具、およびこれらを備えた受信機セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタル放送の普及に伴う著作権保護などの要請から、テレビ放送などの放送信号の受信に一定の制限を設けるための、限定受信システム(CAS)が採用されている。限定受信システムとしては、ICカード(B−CASカードやC−CASカード)を利用するものが、一般的に採用されている。
【0003】
このシステムでは、放送信号には予めスクランブルが施されており、放送受信機において適正なICカードが用意されている場合に限り、スクランブルが解除されるようになっている。なお放送受信機においては、通常、ICカードが着脱自在に挿入されるように形成されたスロットが設けられている。
【0004】
一方、放送受信機においては、その動作に関する設定情報が予め記憶(設定)されており、この設定情報に従って、種々の動作が実行されるようになっている場合がある。このような放送受信機によれば、使用環境やユーザの嗜好などに適合した設定情報を記憶させておくことにより、その利便性等を向上させることが可能となる。
【0005】
例えば、放送受信機を宿泊施設の各部屋に設置する場合、放送受信機は不特定の者に逐次利用されることとなる。そのため通常、放送受信機の初期設定(電源投入時の入力設定や音量設定など)は、前回の使用状態(前回の利用者の好みが反映されている)が引継がれるのではなく、標準的な設定となっていることが望ましい。そこで、初期設定がこのような標準的な設定となるように、各放送受信機に設定情報を記憶させておけば、当該放送受信機を宿泊施設に適した仕様とすることができる。
【0006】
なお放送受信機への設定情報の入力は、一般的に、当該放送受信機に設定画面を表示させ、人が操作ボタンを操作すること等によって実現される。また放送受信機に、外部メモリ(例えばUSBメモリやSDカード)を接続させるための専用スロット等が、先述したICカード用のスロットとは別に設けられている場合もある。このような場合、設定情報を記録させておいた外部メモリを用いて、放送受信機に設定情報を入力することが可能となっている場合もある。
【0007】
外部メモリを用いて設定情報を入力することが可能となっていれば、特に、複数台の放送受信機に対して共通の設定情報を入力するにあたり、入力作業を効率良く行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−369089号公報
【特許文献2】特許第3439141号公報
【特許文献3】特許第3663027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、外部メモリ(設定情報を記録する設定情報記録装置の一例と見ることができる)を用いて設定情報を入力することが可能となっていれば、放送受信機への設定情報の入力作業を、効率良く行うことができる。しかしながら、放送受信機に、設定情報記録装置を接続させるための専用スロット等を別途設ける場合、その分だけ放送受信機の製造工程や製造に必要な部品などが増大し、放送受信機自体のコストアップを招くことになる。また放送受信機に、専用スロット等を配置するためのスペースを確保する必要もあり、放送受信機の小型化や薄型化が妨げられる場合もある。
【0010】
本発明は上述した問題に鑑み、設定情報記録装置を接続させるための専用スロット等を別途設けることなく、設定情報記録装置を用いて設定情報を入力することが可能となる放送受信機の提供を目的とする。また、当該放送受信機に用いられる外部メモリ治具、ならびに、当該放送受信機と外部メモリ治具を有する受信機セットの提供をも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る放送受信機は、スクランブルの施された放送信号を受信する受信部と、前記スクランブルの解除に使われる解除情報が記録されたICカードが、着脱自在に挿入されるように形成されたスロットと、前記スロットに挿入されている前記ICカードにアクセスし、該ICカードから解除情報を読み出す情報読出処理を行う情報制御装置と、前記情報制御装置によって読み出された解除情報を用いて、前記スクランブルを解除するデスクランブラ回路と、自機の動作に関わる設定情報を記憶する情報記憶部と、を備え、前記情報記憶部に記憶されている設定情報に基づいて動作する放送受信機であって、前記スロットは、設定情報を記録する設定情報記録装置も、着脱自在に挿入されるように形成されており、前記情報制御装置は、前記スロットに挿入されている設定情報記録装置から設定情報を読出し、前記情報記憶部に記憶させる情報取得処理、および、前記情報記憶部に記憶されている設定情報を、前記スロットに挿入されている設定情報記録装置に書出す情報書出処理、を行う構成とする。
【0012】
本構成によれば、ICカード(例えばB−CASカード)の解除情報を用いて放送信号のスクランブルを解除することが可能であるとともに、ICカードの接続に用いられるスロットを、設定情報記録装置の接続に用いられるスロットとしても利用可能となる。そのため、設定情報記録装置を接続させるための専用スロット等を別途設けることなく、設定情報記録装置を接続させることが可能となる。
【0013】
また更に、本構成によれば、スロットに挿入された設定情報記録装置に設定情報を書出したり、スロットに挿入された設定情報記録装置から設定情報を取得したりすることが可能となる。そのため、放送受信機を使って設定情報記録装置に設定情報を書出しておき、この設定情報記録装置を用いて、他の放送受信機に設定情報を入力するといった作業が可能となる。
【0014】
また上記構成としてより具体的には、前記情報制御装置は、前記スロットに挿入されている前記ICカードに繋がる第1通信ポート、および、前記スロットに挿入されている前記設定情報記録装置に繋がる第2通信ポートが設けられており、前記情報読出処理を行うときは、第1通信ポートを用いて、該ICカードとの通信を行い、前記情報取得処理または情報書出処理を行うときは、第2通信ポートを用いて、該設定情報記録装置との通信を行う構成としてもよい。
【0015】
また本発明に係る外部メモリ治具は、上記構成の放送受信機におけるスロットに、着脱自在に挿入されるように形成された挿入部と、設定情報の記録が可能な外部メモリが接続されるように形成された、メモリ接続部と、を備え、前記メモリ接続部に前記外部メモリが取付けられ、かつ、前記挿入部が前記スロットに挿入されることにより、前記外部メモリを前記放送受信機に接続する構成とする。
【0016】
本構成によれば、外部メモリを接続させることにより、設定情報記録装置を実現することが可能となる。またメモリ接続部を、汎用的な外部メモリ(例えば、microSDカードやUSBメモリ等)が接続されるように形成しておけば、設定情報記録装置を容易に実現することが可能となる。
【0017】
また上記構成の放送受信機としてより具体的には、前記設定情報記録装置は、上記構成の外部メモリ治具に、前記外部メモリが接続されたものとしても良い。また上記構成の外部メモリ治具と、上記構成の放送受信機と、を備えた受信機セットによれば、外部メモリを用意するだけで、放送受信機に情報取得処理や情報書出処理を実行させることが可能となる。
【0018】
また上記構成の放送受信機としてより具体的には、前記ICカードは、B−CASカードまたはC−CASカードであり、前記スクランブルの解除された放送信号に基づいて、映像および音声の信号を生成する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0019】
上述した通り、本発明に係る放送受信機によれば、ICカードの解除情報を用いて放送信号のスクランブルを解除することが可能であるとともに、ICカードの接続に用いられるスロットを、設定情報記録装置の接続に用いられるスロットとしても利用可能となる。そのため、設定情報記録装置を接続させるための専用スロット等を別途設けることなく、設定情報記録装置を接続させることが可能となる。
【0020】
また更に、本発明に係る放送受信機によれば、スロットに挿入された設定情報記録装置に設定情報を書出したり、スロットに挿入された設定情報記録装置から設定情報を取得したりすることが可能となる。そのため、放送受信機を使って設定情報記録装置に設定情報を書出しておき、この設定情報記録装置を用いて、他の放送受信機に設定情報を入力するといった作業が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る、受信機セットに関する構成図(ブロック図)である。
【図2】設定画面に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態について、放送受信機を主な構成要素とする受信機セットを例に挙げて、以下に説明する。
【0023】
図1は、当該受信機セットの構成図である。本図に示すように受信機セット1は、放送受信機10、外部メモリ治具20、microSDカードもしくはSDカード(以下、「SDカード」と総称する)21、およびICカード30などから構成されている。なお本実施形態では、ICカード30は、B−CAS(BS-Conditional Access Systems、ともに登録商標)カードであるとして説明するが、その他、例えばC−CASカード等であっても構わない。
【0024】
放送受信機10は、B−CASスロット11、アンテナ12、チューナ13、再生処理回路14、デスクランブラ回路15、再生部16、マイクロコントローラ17、ユーザ入力部18、および不揮発性メモリ19などを備えている。
【0025】
B−CASスロット11は、ICカード30を着脱自在に挿入することが可能な、スロットとして形成されている。またB−CASスロット11の挿入口の奥には、ICカード30との接続に用いられる接続端子が配置されている。ICカード30がB−CASスロット11に挿入されると、この接続端子がICカード30の端子に電気的に接続可能となり、マイクロコントローラ17はICカード30にアクセス可能となる。
【0026】
またB−CASスロット11は、外部メモリ治具20を着脱自在に挿入することも可能となっており、挿入口の奥には、外部メモリ治具20との接続に用いられる接続端子も配置されている。なお、ICカード30との接続に用いられる接続端子と、外部メモリ治具20との接続に用いられる接続端子は、共通となっていても良く、別々に形成されていても良い。これによりB−CASスロット11は、ICカード30の接続だけでなく、SDカード21の接続にも利用することが可能となっている。
【0027】
アンテナ12は、放送受信機10側の入力端子に接続されており、放送局から放送されるテレビ放送(本実施形態では一例として、地上デジタル放送とする)の信号を受信して、チューナ13に送出する。なお当該信号には、周知の通り、所定のスクランブル(暗号化)が施されている。
【0028】
チューナ13は、アンテナ12から送られてきた受信信号に選局処理などを施し、再生処理回路14に送出する。なお選局処理において、何れの局が選局されるか等については、マイクロコントローラ17の指示によって決められる。
【0029】
再生処理回路14は、チューナ13から送られてきた受信信号に復調や復号等の処理を施して、画像および音声の信号を生成する。またデスクランブラ回路15は、スクランブルを解除するための処理を行う。
【0030】
再生部16は、ディスプレイを有する画像表示部161と、スピーカを有する音声再生部162からなっている。画像表示部161は、再生処理回路14から送られてきた画像信号に基づいて画像を表示し、音声再生部162は、再生処理回路14から送られてきた音声信号に基づいて音声を出力する。なお音声再生部162は、マイクロコントローラ17の指示に応じて、音量の設定(例えば、レベル0からレベル30までの音量レベル)を変えることが可能となっている。
【0031】
なお放送受信機10には、種々の入力端子(例えば、HDMI端子やコンポーネント端子など)も準備されており、これらの入力端子から画像や音声の信号入力を受付けることも可能となっている。何れの入力端子から信号入力を受付けるかは、マイクロコントローラ17によって決定される。
【0032】
マイクロコントローラ17は、例えばCPU等によって形成されており、放送受信機10を全体的に制御するように動作する。またマイクロコントローラ17には、B−CASスロット11を介して外部媒体(ICカード30やSDカード21)との通信を行うための通信ポートとして、第1通信ポート17aと第2通信ポート17bが設けられている。
【0033】
第1通信ポート17aは、ICカード30との接続に用いられる接続端子に繋がっており、B−CASスロット11に挿入されたICカード30に繋がるようになっている。一方、第2通信ポート17bは、外部メモリ治具20との接続に用いられる接続端子に繋がっており、B−CASスロット11に挿入された外部メモリ治具20を介して、これに取付けられたSDカード21に繋がるようになっている。
【0034】
またマイクロコントローラ17は、設定情報(例えば初期設定を表す情報であり、詳しくは後述する)に関する制御を行う設定情報制御部171や、実行する動作に応じて、使用する通信ポートや回路の切替等を行う切替処理部172などの、各機能部を有している。マイクロコントローラ17が行う主な動作の内容については、改めて説明する。
【0035】
ユーザ入力部18は、放送受信機10の本体に設けられた操作ボタンや、リモートコントロール(リモコン)送信機などを有するユーザインタフェースとして形成されており、操作者の操作入力を受付ける。この操作内容はマイクロコントローラ17に伝送され、各種動作に反映される。なおユーザ入力18は、マイクロコントローラ17の指示に応じて、リモコン操作を受付けないようにすることも可能となっている。
【0036】
不揮発性メモリ19は、書換え可能である不揮発性のメモリ(例えばフラッシュメモリ)として形成されており、マイクロコントローラ17がアクセス可能となっている。不揮発性メモリ19は、設定情報などの各種情報を記憶する。
【0037】
なおマイクロコントローラ17は、不揮発性メモリ19に記憶されている設定情報に基づいて、各種動作を行うようになっている。換言すれば、設定情報に関係した動作がなされるときは、その動作に、当該設定情報が反映されるようになっている。なお、不揮発性メモリ19への設定情報の入力は、ユーザの操作入力(後述する「設定情報の操作入力の受付」の欄を参照)によってなされるが、後述する「設定情報の取得処理」の欄で説明するように、SDカード21を取付けた外部メモリ治具20を用いて行うことも可能である。
【0038】
外部メモリ治具20は、信号形式の変換(シリアル形式への変換等)を行うSD−シリアル変換回路201の他、SDカード21が着脱自在に取付けられる取付部、および、B−CASスロット11に着脱自在に挿入される挿入部(何れも不図示)などを備えている。挿入部は、B−CASスロット11にスムーズに挿入されるよう適切な形状に形成されている。また挿入部は、B−CASスロット11に挿入された状態において、取付部に取付けられたSDカード21が、第2通信ポート17bに繋がった接続端子に、電気的に接続されるように形成されている。
【0039】
外部メモリ治具20によれば、取付部にSDカード21が取付けられ、かつ、挿入部がB−CASスロット11に挿入されることにより、SDカード21がSD−シリアル変換回路201を介して、接続端子11aに接続されるようになっている。なお、SD−シリアル変換回路201を介することにより、マイクロコントローラ17は、ICカード30との通信(シリアル通信)とほぼ同様の通信方式により、SDカード21との通信を行うことが可能となっている。
【0040】
当該接続がなされた状態では、マイクロコンピュータ17は、SDカード21にアクセス可能となり、SDカード21に対する情報の読書きが可能となる。なお本実施形態では、外部メモリ治具20に取付可能な外部メモリの例としてSDカード21を挙げたが、その他、USBメモリなどであっても構わない。また外部メモリ治具20においては、複数種の外部メモリが取付可能となっていても構わない。
【0041】
ICカード(B−CASカード)30は、放送信号のスクランブルを解除する解除コードの生成に必要な情報など(「B−CAS情報」と称する)を記録している。B−CAS情報は、マイクロコンピュータ17によって、適宜読み出される。
【0042】
次に、放送受信機10において実行される主な動作について、より詳細に説明する。
【0043】
[設定情報の操作入力の受付]
放送受信機10は、設定情報の操作入力を受付ける処理を行うことが、可能となっている。当該処理の内容について、以下に説明する。
【0044】
作業者によって当該処理の実行指示がなされたら、マイクロコントローラ17は、画像表示部161に、図2に示すような設定画面(下線部は、操作者によって入力される部分)を表示させる。設定画面を表示させるための情報は、予め不揮発性メモリ19に登録されている。ここでは、設定情報の項目として、「リモコン操作の可否」、「電源投入時の入力設定」、および「電源投入時の音量設定」などが設けられている。
【0045】
なお、「リモコン操作の可否」は、リモコン操作を受付けるか否かを表す。また「電源投入時の入力設定」は、電源投入時(電源OFFの状態から電源ONの状態とされた時点)に、どの入力端子から信号入力を受付けるかを表す。また「電源投入時の音量設定」は、電源投入時において、音量レベルがどのように設定されるかを表す。
【0046】
このように設定情報は、放送受信機10の動作に関わる情報(動作に何らかの影響を与える情報)となっている。設定画面が表示された状態において、作業者は、ユーザ入力部18を通じて、設定情報を操作入力することが可能となっている。作業者は、設定画面を見ながら所望の設定情報を操作入力した後、操作入力を受付ける処理を終了させる。
【0047】
[初期設定の動作]
放送受信機10は、電源OFFの状態(待機状態)においては、電力の消費量が極力抑えられるように、一部動作(電源ONの指示の受付け等)を除き、殆どの動作が停止される。この状態で、ユーザによる電源ONの指示を受けると、マイクロコンピュータ17は、放送受信機10の通常の機能を発揮させるための動作を開始する。
【0048】
このときマイクロコンピュータ17は、不揮発性メモリ19に記憶されている設定情報を読出し、この設定情報に従って初期設定の動作を行う。例えば設定情報が図2に示す通りである場合、マイクロコンピュータ17は、ユーザ入力部18を、リモコン操作を受付ける状態とする。また同じくマイクロコンピュータ17は、「入力端子A」からの信号入力が受付けられる(つまり、入力端子Aを有効とする)状態とし、音声再生部162における音量レベルを「レベル15」の状態とする。
【0049】
このように放送受信機10では、予め不揮発性メモリ19に記憶されている設定情報に従って、初期設定の動作が行われるようになっている。そのため、使用環境やユーザの嗜好に適合した設定情報を予め記憶させておくことにより、放送受信機10の利便性などを向上させることが可能となっている。なお初期設定によって設定された各状態は、事後的に、ユーザの指示に応じて変更可能である。
【0050】
初期設定の動作が行われた後、放送受信機10は、外部から入力された信号を適切に処理し、映像表示や音声出力を実行する。またユーザによる各種指示(例えば、有効とする入力端子の切替指示、選局チャンネルの切替指示、音量レベルの切替指示、電源OFFの指示、後述する設定情報の書出処理や取得処理の実行指示など)がなされたときは、放送受信機10は、当該指示に従って動作する。
【0051】
[放送信号の処理]
上述した通り、初期設定の動作が行われた後は、外部から入力された信号の処理が実行される。ここで、アンテナ12によって受信された放送信号(テレビ放送の信号)が入力される場合における、信号処理の内容について説明する。
【0052】
マイクロコントローラ17は、B−CASスロット11を介して、ICカード30にアクセスする。なおICカード30との通信には、第1通信ポート17aが用いられる。そしてICカード30に記録されているB−CAS情報(特に、カードのIDコードや秘密鍵)を読み出し、デスクランブラ回路15に入力する。このとき、切替処理部172は、取得したB−CAS情報がデスクランブラ回路15に入力されるように、適宜回路の接続などの切り替えを行う。
【0053】
なおICカード30へのアクセスがなされる際、B−CASスロット11には、予めICカード30が挿入されている必要がある。誤って外部メモリ治具20が挿入されている場合や、何も挿入されていない場合等には、何らかの警告(例えば画像表示部161における、「B−CASカードを挿入して下さい」というメッセージの表示など)がなされるようにしても構わない。
【0054】
一方、アンテナ12で受信された放送信号(受信信号)は、チューナ13において選局処理が施される。またチューナ13は、受信信号の周波数を低周波数へと変換したり、受信信号の強度を適切な大きさに調整したりする。このような処理が施された受信信号は、再生処理回路14に送出される。
【0055】
再生処理回路14は、受信信号に施されている変調の方法(例えば、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)やQAM(Quadrature Amplitude Modulation)など)に対応した復調方法により、受信信号を復調する。またマイクロコントローラ17は、受信信号に含まれる一部情報(解除コードの生成に必要な情報)を取得して、デスクランブラ回路15に送出する。
【0056】
デスクランブラ回路15は、この一部情報と、ICカード30から取得されているB−CAS情報とを用いて、受信信号に施されたスクランブルの解除を行い、再生処理回路14に送出する。これを受けて再生処理回路14は、誤り訂正などの、種々の復号処理を施す。
【0057】
また再生処理回路14は、適切な画像や音声の信号を生成するために、復号後の受信信号に対して所定の調整処理を行う。このようにして生成された画像や音声の信号は、再生部16に送出され、画像表示や音声出力に用いられることとなる。
【0058】
[設定情報の書出処理]
放送受信機10は、不揮発性メモリ19に記憶されている設定情報を、SDカード21に書出す処理(「設定情報の書出処理」と称する)を行うことが可能となっている。当該処理の内容について、以下に説明する。
【0059】
ユーザによって設定情報の書出処理の実行指示がなされたら、マイクロコントローラ17は、B−CASスロット11を介して、SDカード21にアクセスする。なおSDカード21との通信には、第2通信ポート17bが用いられる。
【0060】
なおSDカード21へのアクセスがなされる際、予め、SDカード21の取付けられた外部メモリ治具20が、B−CASスロット11に挿入されている必要がある。誤ってICカード30が挿入されている場合や、何も挿入されていない場合等には、ユーザによる実行指示はキャンセルされる。
【0061】
ただしキャンセルがなされる前に、SDカード21へのアクセスが何度か試みられるようにしても良く、ユーザへの報知(例えば画像表示部161における、「SDカードを取付けた治具を挿入して下さい」というメッセージの表示など)がなされるようにしても良い。また、SDカード21の空き容量が不足しているような場合にも、その旨がユーザに報知されるようにしても良い。
【0062】
そしてマイクロコントローラ17は、不揮発性メモリ19に記憶されている設定情報を読み出し、SDカード21へ書き出す。なお、SDカード21に別の設定情報が既に記録されていた場合、これに上書きされるようにしても良く、別の領域に書き出される(複数の設定情報が並存することになる)ようにしても良い。
【0063】
設定情報の書き出しが完了したら、マイクロコントローラ17は、例えば再生部16における所定メッセージの表示や音声出力を通じて、書き出しが完了した旨をユーザに通知し、設定情報の書出処理を終了させる。このように設定情報の書出処理が実行されることによって、放送受信機10内に記憶されている設定情報を、SDカード21に複製することが可能となっている。なお設定情報の書出処理が終了した後は、B−CASスロット11から外部メモリ治具20を引抜き、代わりにICカード30を挿入することによって、以降、放送受信機10に放送信号のスクランブルを解除させることが可能となる。
【0064】
[設定情報の取得処理]
放送受信機10は、SDカード21に記録されている設定情報を取得する(読み出した上で、不揮発性メモリ19に記憶させる)処理(「設定情報の取得処理」と称する)を行うことが可能となっている。当該処理の内容について、以下に説明する。
【0065】
ユーザによって設定情報の取得処理の実行指示がなされたら、マイクロコントローラ17は、B−CASスロット11を介して、SDカード21にアクセスする。なおSDカード21との通信には、第2通信ポート17bが用いられる。
【0066】
なおSDカード21へのアクセスがなされる際、予め、SDカード21(設定情報が記録済み)の取付けられた外部メモリ治具20が、B−CASスロット11に挿入されている必要がある。誤ってICカード30が挿入されている場合や、何も挿入されていない場合等には、ユーザによる実行指示はキャンセルされる。
【0067】
ただしキャンセルがなされる前に、SDカード21へのアクセスが何度か試みられるようにしても良く、ユーザへの報知(例えば画像表示部161における、「SDカードを取付けた治具を挿入して下さい」というメッセージの表示など)がなされるようにしても良い。また、SDカード21に設定情報が記録されていない場合にも、その旨がユーザに報知されるようにしても良い。
【0068】
そしてマイクロコントローラ17は、SDカード21に記録されている設定情報を読み出して、不揮発性メモリ19に記憶させる。なお不揮発性メモリ19において、既に設定情報が記憶されていた場合は、新たに取得された設定情報がこれに上書きされる。つまり、設定情報の取得処理がなされる度に、不揮発性メモリ19が記憶する設定情報は、最新のものに更新されることとなる。
【0069】
設定情報の取得が完了したら、マイクロコントローラ17は、例えば再生部16における所定メッセージの表示や音声出力を通じて、設定情報の取得が完了した旨をユーザに通知し、設定情報の取得処理を終了させる。このように設定情報の取得処理が実行されることによって、SDカード21に記録されている設定情報を、放送受信機10内に複製することが可能となっている。なお設定情報の取得処理が終了した後は、B−CASスロット11から外部メモリ治具20を引抜き、代わりにICカード30を挿入することによって、以降、放送受信機10に放送信号のスクランブルを解除させることが可能となる。
【0070】
[各放送受信機に共通の設定情報を記憶させる作業]
上述した放送受信機10が複数台設置されている場合、以下に説明する作業によって、それぞれの放送受信機10に、共通の設定情報を効率よく記憶させることができる。
【0071】
まず作業者は、複数台のうちの何れかの放送受信機10(便宜上、「マスター機」と称する)に対して、ユーザ入力部18の操作入力を通じて、適切な設定情報を入力する(第1作業)。これにより、マスター機の不揮発性メモリ19に、設定情報が記憶される。
【0072】
次に作業者は、SDカード21を取付けた外部メモリ治具20を、マスター機のB−CASスロット11に挿入した上で、マスター機に、設定情報の書出処理の実行指示を与える(第2作業)。これによりSDカード21には、マスター機に入力したものと同じ設定情報が記録される。
【0073】
その後作業者は、挿入されている外部メモリ治具20を引抜き、これを他の放送受信機10のB−CASスロット11に挿入した上で、当該放送受信機10に、設定情報の取得処理の実行指示を与える(第3作業)。これにより、当該放送受信機10の不揮発性メモリ19には、マスター機に入力したものと同じ設定情報が記憶される。この作業(第3作業)が、残りの放送受信機10に対して順次なされることで、それぞれの放送受信機10に、共通の設定情報を記憶させることができる。
【0074】
なお複数台の放送受信機10に共通の設定情報を記憶させることは、例えば、宿泊施設(ホテル等)の各部屋に放送受信機10が設置された場合等に有効である。このような使用態様では、放送受信機10は不特定の者に逐次利用されるため、放送受信機10の初期設定(電源投入時の入力設定や音量設定など)は、前回の使用状態(前回の利用者の好み)が引継がれるのではなく、標準的な設定となっていることが望ましい。
【0075】
そこで、初期設定がこのような標準的な設定となるように、各放送受信機10に共通の設定情報を記憶させておけば、各放送受信機10を宿泊施設に適した仕様とすることができる。
【0076】
[その他]
外部メモリを用いて共通の設定情報を記憶させ得るようにした放送受信機の仕様としては、外部メモリを接続するための専用スロット(接続端子)を、B−CASスロットとは別個に設けた仕様(別スロット仕様)も考えられる。
【0077】
しかしながら、別スロット仕様によれば、専用スロットを設ける分だけ放送受信機の製造工程や製造に必要な部品などが増大し、放送受信機自体のコストアップを招くことになる。また放送受信機に、専用スロットを設けるためのスペースを確保する必要もあり、放送受信機の小型化や薄型化が妨げられる場合もある。
【0078】
この点、本実施形態の放送受信機10によれば、外部メモリ治具20やSDカード21の用意が必要となるものの、専用スロットを設ける必要がないため、このような問題点は解消される。また先述した一連の作業は、外部メモリ治具20やSDカードが1セット用意されていれば、実現可能である。
【0079】
そのため、必要となる外部メモリ治具20やSDカード21の個数は少なくても良く(例えば、10台程度の放送受信機に対して、1セットの割合で用意されていれば良く)、放送受信機の各々に専用スロットを設けるために必要なコストに比べれば、外部メモリ治具20やSDカード21を用意するために必要なコストは、十分に小さくすることが可能である。またSDカード21は、広く流通している製品であるため、入手は容易である。
【0080】
また設定情報には、先述した項目(図2に示した各項目)以外にも、種々の項目が含まれるようにすることが可能である。例えば設定情報には、画像表示部161や音声再生部162の表示特性や再生特性(「クセ」とも表現し得る)に対応した情報、即ち、良好な表示や再生を行うための信号の補正内容を示す情報も含まれ得る。また例えば、管理者や製造者などが設定する制限(例えば、表示可能チャンネルや音量の最大値など)などの各種設定を示す情報も含まれ得る。
【0081】
また設定情報には、各放送受信機10において共通に利用できる情報として、各チャンネルに係る放送局の名称、各放送局が使用するロゴ、および番組情報(電子番組表の情報等)などが含まれていても良い。各放送受信機10はこれらの情報を、放送信号から抽出することによっても取得可能であるが、設定情報の取得処理によって取得するようにすれば、より短時間で取得することが可能である。なおこれらの情報は、電子番組表や受信中の放送局に係る名称やロゴなどを、画像表示部181に表示させるための動作等に利用され得る。
【0082】
上述した通り、本実施形態に係る放送受信機10は、スクランブルの施された放送信号を受信する機能部(受信部)と、B−CAS情報(スクランブルの解除に使われる解除情報を含む)が記録されたICカード30が、着脱自在に挿入されるように形成されたB−CASスロット11(スロット)と、B−CASスロット11に挿入されているICカード30にアクセスし、ICカード30からB−CAS情報を読み出す処理を行うマイクロコントローラ17(情報制御装置)と、マイクロコントローラ17によって読み出されたB−CAS情報を用いて、スクランブルを解除するデスクランブラ回路15と、自機の動作に関わる設定情報を記憶する不揮発性メモリ19(情報記憶部)と、を備えており、不揮発性メモリ19に記憶されている設定情報に基づいて動作するようになっている。
【0083】
そして更に、B−CASスロット11は、設定情報を記録する設定情報記録装置(SDカード21が取付けられた外部メモリ治具20)も、着脱自在に挿入されるように形成されており、マイクロコントローラ17は、設定情報記録装置から設定情報を読出し、不揮発性メモリ19に記憶させる処理、および、不揮発性メモリ19に記憶されている設定情報を、設定情報記録装置に書出す処理、を行うようになっている。
【0084】
そのため放送受信機10によれば、ICカード30のB−CAS情報を用いて放送信号のスクランブルを解除することが可能であるとともに、ICカード30の接続に用いられるB−CASスロット11を、設定情報記録装置の接続に用いられるスロットとしても利用可能となっている。そのため、設定情報記録装置を接続させるための専用スロット等を別途設けることなく、設定情報記録装置を接続させることが可能となっている。
【0085】
また更に、放送受信機10によれば、B−CASスロット11に挿入された設定情報記録装置に設定情報を書出したり、B−CASスロット11に挿入された設定情報記録装置から設定情報を取得したりすることが可能となる。そのため、放送受信機を使って設定情報記録装置に設定情報を書出しておき、この設定情報記録装置を用いて、他の放送受信機に設定情報を入力するといった作業が可能となっている。
【0086】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの内容に限定されるものではない。また本発明の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない限り、種々の改変を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、テレビ放送を受信する放送受信機などに利用することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 受信機セット
10 放送受信機
11 B−CASスロット(スロット)
12 アンテナ
13 チューナ
14 再生処理回路
15 デスクランブラ回路
16 再生部
17 マイクロコントローラ(情報制御装置)
17a 第1通信ポート
17b 第2通信ポート
18 ユーザ入力部
19 不揮発性メモリ(情報記憶部)
20 外部メモリ治具(設定情報記録装置の一部)
21 SDカード(外部メモリ、設定情報記録装置の一部)
30 ICカード
161 画像表示部
162 音声再生部
171 設定情報制御部
172 切替処理部
201 SD−シリアル変換回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクランブルの施された放送信号を受信する受信部と、
前記スクランブルの解除に使われる解除情報が記録されたICカードが、着脱自在に挿入されるように形成されたスロットと、
前記スロットに挿入されている前記ICカードにアクセスし、該ICカードから解除情報を読み出す情報読出処理を行う情報制御装置と、
前記情報制御装置によって読み出された解除情報を用いて、前記スクランブルを解除するデスクランブラ回路と、
自機の動作に関わる設定情報を記憶する情報記憶部と、を備え、
前記情報記憶部に記憶されている設定情報に基づいて動作する放送受信機であって、
前記スロットは、設定情報を記録する設定情報記録装置も、着脱自在に挿入されるように形成されており、
前記情報制御装置は、
前記スロットに挿入されている設定情報記録装置から設定情報を読出し、前記情報記憶部に記憶させる情報取得処理、および、
前記情報記憶部に記憶されている設定情報を、前記スロットに挿入されている設定情報記録装置に書出す情報書出処理、
を行うことを特徴とする放送受信機。
【請求項2】
前記情報制御装置は、
前記スロットに挿入されている前記ICカードに繋がる第1通信ポート、および、前記スロットに挿入されている前記設定情報記録装置に繋がる第2通信ポートが設けられており、
前記情報読出処理を行うときは、第1通信ポートを用いて、該ICカードとの通信を行い、
前記情報取得処理または情報書出処理を行うときは、第2通信ポートを用いて、該設定情報記録装置との通信を行うことを特徴とする請求項1に記載の放送受信機。
【請求項3】
請求項2に記載の放送受信機におけるスロットに、着脱自在に挿入されるように形成された挿入部と、
設定情報の記録が可能な外部メモリが接続されるように形成された、メモリ接続部と、
を備え、
前記メモリ接続部に前記外部メモリが取付けられ、かつ、前記挿入部が前記スロットに挿入されることにより、前記外部メモリを前記放送受信機に接続することを特徴とする外部メモリ治具。
【請求項4】
前記設定情報記録装置は、
請求項3に記載の外部メモリ治具に、前記外部メモリが接続されたものであることを特徴とする請求項2に記載の放送受信機。
【請求項5】
請求項3に記載の外部メモリ治具と、
請求項4に記載の放送受信機と、
を備えたことを特徴とする受信機セット。
【請求項6】
前記ICカードは、B−CASカードまたはC−CASカードであり、
前記スクランブルの解除された放送信号に基づいて、映像および音声の信号を生成することを特徴とする請求項1、請求項2、または請求項4に記載の放送受信機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−55207(P2011−55207A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201676(P2009−201676)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】